説明

重大な平坦性の欠如を伴う支持面のための変形可能な合成シール

このシールは、PTFEから成り得る外側のエンベロープ(4)と、部分的に粒状の流体(10)が充填された通気性のバック(9)から成る内側のコア(8)と、を備える。シールされるべき支持面(1、2)が互いに近づくとき、バック(9)は押しつぶされ、空気(11)の上部の体積が外側へ逃げ、グレイン(10)が、エンベロープ(4)の縁部(5、6)と、支持面(1、2)との間に実質的な接触圧力を伝達する。それらは、支持面(1、2)の間の平坦性が著しく欠如している場合であっても、押しつぶされる動きの間に、バック内でそれらを再分配することによって、圧力を一様にするように移動されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重大な平坦性の欠如を伴う支持面のための変形可能な合成シールに関する。
【背景技術】
【0002】
支持面とシールとの間の十分な接触圧力を伝えることを目的とする場合、圧力はできる限り均一でなければならない。シールの気密性を確保する最小限の圧力が要求される。しかしながら、シールがあまりに硬すぎてそこに適合せず、圧力の均一性が失われる場合には、支持面の平坦性の欠如によって、気密性が低下する可能性もある。さらに、平坦性を欠いた支持面との剛性シールの接触は、特に支持面がもろい材料でできているときは、過度の局部的な圧力を生じ得る。これは、例えばエナメルのフランジの場合であり、ドイツの基準DIN 28 007-2は、例えば、1000から2000ミリメートルの間の直径のフランジに対し、8ミリメートルまでの平坦性の欠如を認めている。
【0003】
したがって、通常、シールは、非平坦面上での過度の圧力、あるいはその正反対に、気密性の欠如を生じる際に硬すぎるか、柔軟過ぎるかのいずれかであり、適正な接触圧力を付与することができない。
【0004】
エラストマーからなるシールは、特定の場合には満足をもたらし得るが、高温で、あるいはシールされるべきいくつかの流体の存在下では失われる。したがってその使用はあらゆる場合に対応するものではない。いくつかの、特に中空のまたは膨張性のものは、柔軟すぎて支持面に十分な力を伝えることができない。
【0005】
他の既知のタイプの気密シールは、一つのあるいは複数の支持面へのエンベロープの接触を確保する波形スプリングを有するPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)エンベロープである。特許文献1に例が挙げられる。PTFEは、ほとんどの流体に耐え、したがって、処理過程の流体との化学的親和性に対して、エラストマーからなるシールの不足を解決する。波形スプリングが変形した支持面に均一な圧力を付与することができない、ということが欠点である。
【0006】
当業者は、スプリングと、局所的に欠如した平坦性の振幅に依存する、程度の差はあるがより大きい厚さのアラミド繊維からなるエンベロープ状のシムとの間に挿入することにより、そのようなシールを改良する方法を知っている。それから相対的に均一な接触圧力が得られるが、この方法は信頼性がなく、実施するのに時間がかかる。平坦性が著しく欠如したときに満足できる結果が得られるということは、いずれにしても疑わしい。そのような概念は、特許文献2または3に記載されている。特許文献4は記載されなければならない。ここでは、シールの弾性部が、互いに溶着され、圧力下でガスが充填された2つの波形のバネで構成されている。この、より複雑な設計は、接触圧力の不均一性を減少させるのに寄与するが、それを完全に除去することはない。この文献はさらに、このタイプの気密性が、まず213ミリメートルより小さい直径のエナメルのフランジを対象としている。
【0007】
特許文献5は、有孔性の、従って高い圧縮率のPTFE材料からなる平坦なシールを開示している。その構造は多孔質であるが、ある有害な液体とは許容されず、シールは洗浄するのが困難である。
【0008】
特許文献6は、高い粘性の部分からなるシールを開示し、これは、必要であれば、その材料が熱可塑性である場合には、シールの極端な面により良く適合するために、物理的な変換の前には粉末状あるいは粒状であり得る。しかしながら、圧力下で役立つように設計されていないシールについては、力の伝達が想定されない。
【0009】
特許文献7は、本発明にもっとも近い思想であるように見えるが、人間の耳の周囲のような高度にむらがある表面のための防音シールに関する。シールとこれらの表面との接触は、互いに対して摺動することによって、それ自身で閉じられたビードの形態の、そのなかで円運動するボールが充填された、非通気性のバッグの介在により形成される。このバッグは、その形状を失って、接触の表面の形状に沿うことができる。しかしながら、このようなシールは、支持面の間の力の伝達の許容量が制限されたままなので、均一な圧力で付与されるのには適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE−U−89 14536
【特許文献2】DE−A−3601346
【特許文献3】DE−A−195−39761
【特許文献4】US−A−558347
【特許文献5】US−A−49961891
【特許文献6】EP−0100228
【特許文献7】FR−A−2190317
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、平坦性の著しい欠如に適合するのに十分に変形可能であることと、十分な接触圧力を付与するために剛性であることとの、両方の必要性を満たす改良されたシールを表す。要約するに、本発明は、変形可能なエンベロープと、該エンベロープに含まれるコアとを備え、該コアは、柔軟性を有するバッグ内の粒状の流体から構成され、該バッグは通気性で粒状の流体で一部満たされていることを特徴とする。この“粒状の流体”とは、二相性であり、バッグの壁を通過することが可能であって、互いに摺動可能な周囲の空気、あるいは、より一般的には気体から構成される。つまり、バッグはエンベロープ内で可動である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
バッグを粒状の流体で部分的に満たすことは、空気の体積が、積み重ねられたグレインの間の隙間に加えて、バッグ内に残るということを意味する。しかしながら、バッグは多孔性なので、シールの圧縮が、内部体積を十分に減少させるのに十分大きい場合には、この空気の体積の一部は消失し得る。流体を構成するグレインは、空気の体積がそこに残る限りは、バッグ内で高い流動性を有する。したがって、それらは、平坦性の著しい欠如に適合するに至るまで容易に摺動する。空気の体積が消失すると、圧力の伝達がボールの接触によって起こり、これは、それらの剛性とそれらの集合体の安定性のおかげで高い接触圧力に耐えるが、摺動能力は残り、これは、最後まで、シールの異なる点での超過圧力の差違を調整することを可能にする。エンベロープにおけるバッグの流動性は、ボールの良好な分布およびシールの支持面間でのそれらの流動を助ける。
【0013】
バッグのある種の弾性は、該バッグが力に対して応答して拡張し、さらにグレインが摺動するのを助けるために、許容され、あるいは望まれる。しかしながら、より高い弾性は、シールが柔軟になりすぎるので望ましくない。これが、本来非伸張性のバッグが提案され得る理由である。それが弾性であり、したがって伸張性である場合には、スレッドまたは、バッグの一方向に延びる本体非伸張性の材料から成る他の部分で補強されてもよく、他の方向にのみ伸張を可能にする。
【0014】
バッグの局所的な補強するのに役立つために、あるいは、バッグを局所的に完全に剛性にするようにその動きおよび変形を制限するために、ディスクのような剛性の要素がバッグの近くに配置されていてもよい。
【0015】
シールの操作は、エンベロープが、その上でバッグが容易に摺動するPTFEから成る場合に改良される。より具体的な好ましい実施形態において、エンベロープは、バッグを包むようにそれ自体の上に捲り上げられた細片から形成される再構成PTFEから成る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、ここで、図1、2、および3を参照して説明される。
【図1】自由状態におけるシールの横断面。
【図2】圧縮状態におけるシールの横断面。
【図3】シールの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
2つの支持面1および2は、図1によると、向かい合って平行になっており、シール3はそれらの間に挿入されている。シール3は、C字状の断面の再構成PTFEから成り、それぞれ支持面1、2上にある2つの縁部5、6と、縁部5および6を連結する湾曲した接続部7とから構成されるエンベロープ4を備えている。エンベロープ4は、粒状の流体10が充填された自由状態でおおよそ円形状の断面のバッグ9から構成されたコア8を含み、しかしながら、バッグ9が圧縮されない限りは空気11の体積はバッグ9内に残っている。
【0018】
バッグ9は変形可能で、通気性で、ほとんどあるいは全く伸張性を有しない。グレイン10を保持するため、バッグ9は完全に閉じられており、孔はグレイン10よりも小さい。バッグ9は、織った、あるいは編まれた材料から成っていてもよい。表面1および2を寄せることにより、圧縮がシール3に付与されたときに、図2の状態が得られる。エンベロープ4は変形し、コア8は縁部5および6の間で圧縮される。空気11の体積は消失し、バッグ9の孔を介して排出され、グレイン10の充填が、縁部5、6およびバッグ9の媒介のみによって、一方の支持面1から他方の支持面2へ広がる。これらの要素は変形可能であるので、図2の状態は、縁部1および2の間の1つの位置からその次の位置への間隔が異なるにもかかわらず、集合体の全ての断面について考えられる。グレインの摺動は局所的な圧力変化を減少させ、あるいは除去する。バッグ9の材料は伸びており、グレイン10によって伝達された内部圧力が生じるのを可能にする。本発明のシールは、図3に示されるように、従来の形状の円形シールであってもよく、他の形状も排除されない。
【0019】
このシールの適用例は、カバーが載せられた容器から成るエナメル加工された化学反応器に関する。シール3はそれらの間に配置され、気密性を確立する。温度条件は−60℃と+250℃の限度の間である。反応器内の内部圧力は0絶対バール(真空)と7絶対バールの間であってもよい。エンベロープはガルロックカンパニー(Garlock Company)によって製造され、ジロンスタイル(Gylon style)3504型の再構成PTFE材料から成り、バッグ9はポリアクリロニトリル繊維から成る。グレインは小さな鋼鉄のボールである。2相性の気体−固体の流体に潤滑油が付加されてもよい。
【0020】
いくつかの改良の可能性がここで述べられる。バッグ9の誇張された弾性は望まれなかったということを見てきた。自然の弾性は非伸張性のスレッドあるいは繊維13でそれを補強することによって減少されてもよい。それらを一方向、例えば図3に示される、断面の周方向にのみ付与することが可能である。したがってコア8の過度の平坦化および伝達された圧力の減少は避けられるが、より大きい弾性がシール3の接線方向に維持され、支持面1、2の間隔の不均一性に応じてバッグ9の一つの断面から他の断面へのボールの動きを容易にする。
【0021】
コア8の過度の変形あるいはバッグ9の断面の過度の平坦化は、シール3を囲む円柱状のディスク14のような、適切な障壁によって、避けられてもよい。他の円柱状ディスクが、示されていないが、バッグ9の他方に配置され得る。他のディスク15、16あるいは平板が、バッグ9と、縁部5、6との間に挿入されても良い。それらは、シール3が支持面1、2の著しい変形に適合するように固有の圧力を局所的に広げなければならない。その弾性特性により、ディスク15、16のそれぞれが対応する縁部5、6の生じうるクリープを補うのに役立ち得る。他の弾性要素は、同じ効果をともなってエンベロープ4とコア8との間に挿入され得る。しかしながら、再構成されたPTFEは非有孔性構造を有しているので、それは改善されたクリープ抵抗もまた有し得る。ディスク15、16は、グレインの押す力をより均一に広げるためにより硬い材料から成ることもまた可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形可能なエンベロープ(4)と、該エンベロープに含まれるコア(8)とを備え、
前記コアは柔軟性を有するバッグと、該バッグ(9)に含まれた粒状の流体(10)と、から形成され、
前記粒状の流体は、気体と剛性のボールとの混合物であり、
前記バッグは、通気性であって、前記ボールによって部分的に満たされるのみであり、前記バッグはエンベロープ内を移動可能であることを特徴とするシール(3)。
【請求項2】
前記グレインの押す力は、前記バッグと前記エンベロープとの間に挿入された中間ディスク(15、16)を介してシールされるべき前記支持面上に広げられることを特徴とする、請求項1に記載のシール。
【請求項3】
前記バッグ(9)は、織られまたは編まれた材料から成ることを特徴とする、請求項1に記載のシール。
【請求項4】
前記バッグ(9)は、制限された弾性を有し、
前記バッグの周囲または長さに沿って摺動することにより、前記グレインの配置の再調整を可能にすることを特徴とする、請求項1または2に記載のシール。
【請求項5】
前記グレイン(10)間の摺動は、潤滑油によって容易にされることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のシール。
【請求項6】
前記バッグ(9)の一方向に本来的に非伸張性の材料のスレッド(13)を備えていることを特徴とする、請求項4に記載のシール。
【請求項7】
前記バッグ(9)の近くに配置された剛性の要素(14)を備え、その動きを制限していることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1つに記載のシール。
【請求項8】
前記要素は前記バッグを囲むディスクであることを特徴とする、請求項7に記載のシール。
【請求項9】
前記エンベロープは、PTFEから成ることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1つに記載のシール。
【請求項10】
前記エンベロープは、それ自体の上に捲り上げられた再構成PTFEの細片であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1つに記載のシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−505355(P2012−505355A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530499(P2011−530499)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063199
【国際公開番号】WO2010/040836
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【出願人】(503389714)ガルロック フランス エスアーエス (2)
【Fターム(参考)】