説明

重炭酸イオン濃度測定方法及び該方法に用いる溶液

【課題】測定用試薬が長時間大気にふれていても測定能が低下することのない、重炭酸イオン濃度測定方法及び当該方法に用いられる溶液(試薬)を提供する。
【解決手段】重炭酸イオン濃度の測定方法であって、(A)試料中の重炭酸イオン、及びホスホエノールピルビン酸を、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ存在下で反応させ、オキザロ酢酸を生成させる工程、(B)A工程で生成したオキザロ酢酸、及びNADHもしくはその類似体を、マレイン酸デヒドロゲナーゼ存在下で反応させる工程、(C)NADH若しくはその類似体の減少を測定する工程を含み、前記工程のうち少なくともA工程はpH7以上8未満の溶液中で行われ、当該溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比が0.2未満であり、前記ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼである、重炭酸イオン濃度測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中(特に血清又は血漿中)の重炭酸イオン濃度を測定する方法、及び当該方法に用いる溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
血液は、非常に大量の炭酸ガスを溶かすことができる。血液に溶けた炭酸ガスは、炭酸として存在している。血液中の炭酸(HCO)は、重炭酸イオン(HCO)と平衡状態にある。重炭酸イオンは、血液中では塩化物イオンに次いで多く存在するイオンであり、血液中で重要な生理学的緩衝作用系を形成している。特に、炭酸と重炭酸イオンとの平衡は体液の酸性度を調節する上で非常に重要である。このため、血清または血漿の重炭酸イオン濃度の測定値は電解質分散及びアニオン不足等の有意な標識として用いることができ、呼吸、代謝系の酸−塩基不均衡の医学的診断の助けになっている。例えば血清および血漿中の正常重炭酸イオン濃度は22〜32mmol/Lであるが、異常時には15mmol/L以下の低値または40mmol/L以上の高値へと変動する。
【0003】
血清および血漿中の重炭酸イオン濃度を測定する方法として、例えばホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼを用いる方法が知られている。ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼは、ホスホエノールピルビン酸及び重炭酸イオンに作用して、オキザロ酢酸とリン酸イオンを生成する反応を触媒する酵素である。当該酵素は、臨床検査薬の分野において体液(特に血清及び血漿)中の重炭酸イオン測定のために従来から用いられてきた。
【0004】
体液中の重炭酸イオン量の測定は様々な方法で実施可能であるが、例えば次に述べる酵素反応によって生じる変化を追跡することにより行われている。まず、重炭酸イオンとホスホエノールピルビン酸(PEP)にホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)を作用させる。これにより、オキザロ酢酸とリン酸が生成する。生成したオキザロ酢酸を還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)存在下、マレイン酸デヒドロゲナーゼ(MDH)と反応させる。当該反応の際のNADHの減少量を公知方法(例えばエンド法もしくはレート法)で測定し、当該測定値から重炭酸イオン濃度を算出する。当該方法の概要を以下に示す。
【0005】
【化1】

【0006】
【化2】

【0007】
溶液中に溶解した炭酸ガスは炭酸となって存在するが、炭酸と重炭酸イオンの平衡は特に酸性pHにおいては炭酸形成側に偏るため、炭酸ガスとなって大気中に放出されてしまう。また、酸性pHでは補酵素として働くNADHも不安定となってしまう。従って溶液中の炭酸測定は、できるだけアルカリ性pH条件下で行われることが好ましい。上記の重炭酸イオン濃度測定方法においてもpH8.0以上の緩衝液が汎用されている。しかしながら、炭酸と重炭酸イオンの平衡はアルカリ性pHにおいては重炭酸イオン形成側に偏るため、重炭酸イオン濃度測定に用いられる緩衝液には炭酸ガスが溶けやすくなる。このため、従来、重炭酸イオン濃度測定に用いられる溶液は、アルカリ性pHであること、かつ、密閉するなどして炭酸ガス又は炭酸ガスを含む気体(例えば大気)にふれない状態で保管すること、が求められてきた。
【0008】
しかし、例えば、臨床検査の現場等では、通常自動分析機の保冷庫に試薬を設置したまま分析が行なわれる。そのため、試薬は冷蔵で保存されるものの数時間から数日開封状態が維持されることもしばしばある。その結果、重炭酸イオン濃度測定においては、弱アルカリ性からアルカリ性の試薬(重炭酸イオン濃度測定に用いられる溶液)へ空気中の二酸化炭素が溶け込んで炭酸イオンとなり、酵素反応が進行するため、開封状態では試薬の安定性が著しく低下するという課題が指摘されていた。
【0009】
その上、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼはアルカリ側のpHで不安定な酵素であり、このため該酵素を含むアルカリ性の重炭酸イオン濃度測定試薬は液状で長時間保存できないという問題もある。ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼとして通常市販されているものは、大部分がトウモロコシの葉や小麦の胚等の植物由来の酵素であり、これらはpH8.0での安定性が極めて低い。
【0010】
他生物由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの探索も行われている。例えば、ハイフォミクロビウム由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼを使用する重炭酸イオンの測定法が公知である(特許文献1) 。該酵素は微生物起源によるものであり、植物起源のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが有する“アルカリ側のpHで不安定”という欠点を有していない。しかしながら、重炭酸イオン測定試薬で用いられる酵素濃度(通常0.05〜5U/mL)では安定性が不十分である。また、特許文献2に記載の重炭酸イオン濃度測定法では、Escherichia coli由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが使用されている。しかしながら、該酵素も弱アルカリ性である重炭酸イオン測定試薬中では安定性が低く、さらに該酵素は活性化のために高価なアセチルCoAを必要とする。
【0011】
このように、重炭酸イオン濃度測定に用いられる溶液(試薬)は、重炭酸イオンが炭酸ガスとなって大気中に放出されるのを防ぐためアルカリ性であることが好ましいが、アルカリ性であることにより、大気中の二酸化炭素により酵素反応が進んでしまい、また、当該試薬に用いるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼも不安定となって、試薬の安定性が著しく低下するいう問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平4−228074号公報
【特許文献2】米国特許第3,974,037号
【特許文献3】特開平6−269300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、測定用試薬が長時間大気にふれていても、測定能が低下することのない重炭酸イオン濃度測定方法及び当該方法に用いられる溶液(試薬)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、驚くべき事に、上で概要を記した重炭酸イオン濃度測定方法において、測定をpH7以上8未満の溶液中で行うこととし、さらに当該溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比が0.2未満とし、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼとして酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼを用いることで、前記課題を解決し得ることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明は例えば以下の項1〜6に記載の重炭酸イオン濃度測定方法、重炭酸イオン濃度測定用溶液、及び重炭酸イオン濃度測定用溶液製造用粉体組成物を包含する。
項1.
試料中の重炭酸イオン濃度を測定する方法であって、
(A):試料中の重炭酸イオン、及びホスホエノールピルビン酸を、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ存在下で反応させ、オキザロ酢酸を生成させる工程
(B):(A)工程で生成したオキザロ酢酸、及び還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体を、マレイン酸デヒドロゲナーゼ存在下で反応させる工程
(C):還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド若しくはその類似体の減少を測定する工程
を含み、
前記(A)〜(C)工程のうち少なくとも(A)工程はpH7以上8未満の溶液中で行われ、当該溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比が0.2未満であり、
前記ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼである、
重炭酸イオン濃度測定方法。
項2.
前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体が、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくは還元型3−アセチルピリジンアデニンジヌクレオチドである、項1に記載の重炭酸イオン濃度測定方法。
項3.
前記酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが、アセトバクター・パスツリアヌス由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アセトバクター・アセチ由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アセトバクター・ザイリナム由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アセトバクター・ハンゼニイ由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、及びグルコノバクター・オキシダンス由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼからなる群より選択される少なくとも1種のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼである、項1又は2に記載の重炭酸イオン濃度測定方法。
項4.
ホスホエノールピルビン酸、酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体、及びマレイン酸デヒドロゲナーゼを含み、pH7以上8未満である、重炭酸イオン濃度測定用溶液。
項5.
外気と接触する表面積と体積の比が0.2未満となるよう容器に格納された、項4に記載の重炭酸イオン濃度測定用溶液。
項6.
重炭酸イオン濃度測定用溶液の製造用粉体組成物であって、
ホスホエノールピルビン酸、酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体、及びマレイン酸デヒドロゲナーゼを含む、項5に記載の重炭酸イオン濃度測定用溶液の製造用粉体組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の、試料中の重炭酸イオン濃度を測定する方法であれば、測定用溶液(測定用試薬)を大気にふれさせた状態で長時間保存したとしても、測定能が低下しない。当該溶液はアルカリ性であるが、溶解させたホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼは安定に保持され、大気中の炭酸ガスもほとんど溶解せず、長時間大気にふれたままで安定に保存できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の重炭酸イオン濃度測定方法により、試料中の重炭酸イオン濃度を測定した結果を示す。
【図2】本発明の重炭酸イオン濃度測定方法を用いず、公知の方法で試料中の重炭酸イオン濃度を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。なお、以下、酵素の説明に関しては、特に断らない限り、好適温度において1分間に1μmolの基質を変化させる量を1単位(ユニット:U)とする。
【0019】
<重炭酸イオン濃度測定方法>
本発明の、試料中の重炭酸イオン濃度を測定する方法は、以下の(A)〜(C)工程を含む。
【0020】
(A):試料中の重炭酸イオン、及びホスホエノールピルビン酸を、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ存在下で反応させ、オキザロ酢酸を生成させる工程
(B):(A)工程で生成したオキザロ酢酸、及び還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体を、マレイン酸デヒドロゲナーゼ存在下で反応させる工程
(C):還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド若しくはその類似体の吸光度の減少を測定する工程
【0021】
本発明の、試料中の重炭酸イオン濃度を測定する方法では、上記(A)〜(C)工程のうち少なくとも(A)工程は、pH7以上8未満の溶液中で行われることが好ましい。また、上記(A)〜(C)工程のうち少なくとも(A)工程は、当該溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比が0.2未満であることが好ましい。さらに、(A)工程で用いるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼは、pH7以上8未満の溶液中であっても安定であり、触媒能が低下し難いものを用いるのが好ましい。
【0022】
(A)工程
(A)工程は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸、及び重炭酸イオンを含有する試料を混合し、反応させることで行われる。当該反応により、オキザロ酢酸が生成される。より詳細には、当該反応により、ホスホエノールピルビン酸及び重炭酸イオンから、オキザロ酢酸及びリン酸が生成される。
【0023】
当該工程は通常溶液中で行う。特に、緩衝液中で行うことが好ましい。特に制限はされないが、例えばホスホエノールピルビン酸及びホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼを溶解した緩衝液に、重炭酸イオンを含有する試料を添加することにより当該工程を行うことができる。用いる緩衝液としては、特に制限はされないが、pH7以上8未満を実現する緩衝液が好ましく、例えばトリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、グット緩衝液(Good NEet al.Biochemistry5p467−77(1966 Feb))等を挙げることができる。緩衝液を調製するために溶解させる物質(例えばトリス塩、ホウ酸塩、リン酸塩等の緩衝塩)の量は、当該物質が溶解したときに示す緩衝能等に応じて適宜設定することができ、特に制限されないが、例えば5〜100mM、好ましくは10〜50mMとなるように用いればよい。
【0024】
当該工程で用いるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼは、pH7以上8未満の溶液中であっても安定であり、触媒能が低下し難いものであることが好ましい。例えば、酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが好ましい。酢酸菌由来ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼは、弱アルカリ性でも比較的安定であるからである。当該工程に用いる好適なホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼを産生する酢酸菌としては、特に制限はされないが、例えばアセトバクター(Acetobacter)属、グルコノバクター(Gluconobacter )属、フラチュリア(Frateuria )属およびアシドモナス(Acidomonas) 属などが挙げられる。これらの酢酸菌のうち、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼを著量生産する酢酸菌から該酵素を精製することが経済的には望ましい。特に好適なホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼとしては、例えばアセトバクター・パスツリアヌス(Acetobacter pasteurianus )、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti )、アセトバクター・ザイリナム(Acetobacter xylinum )、アセトバクター・ハンゼニイ(Acetobacter hansenii)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans )由来のものが挙げられる。より具体的には、例えばアセトバクター・ハンゼニイ(Acetobacter hansenii)IFO14820、アセトバクター・パスツリアヌス(Acetobacter pasteurianus)IFO14814、アセトバクター・ザイリナム((Acetobacter xylinum)IFO15237 又はグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)IFO3462等由来のものを挙げることができる。
【0025】
本発明に好適なアセトバクター・ハンゼニイ(Acetobacter hansenii)からのホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの精製例を次に記載する。例えばアセトバクター・ハンゼニイIFO148320 を栄養培地で生育させ、集菌後、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁させ、フレンチプレスで破砕する。この破砕物を遠心後、得られた上清の30〜50%硫酸アンモニウム画分を取得する。得られた画分(酵素を含む液)は次いでイオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー等で精製し、約25U/mg蛋白の酵素液を得ることができる。該方法は酢酸菌に属する他の菌株のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの精製にも適用可能である。
【0026】
また、酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼには、既に報告されているものもあり、例えばアセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti )(Arch.Microbiol.,122,109(1979))、アセトバクター・ザイリナム(Acetobacter xylinum )(J.Bacteriol.,98,1005(1969 )等由来のものが知られている。このような文献には酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの精製方法も報告されており、当該精製方法は他の酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼを精製するのにも利用できる。本発明に、例えば上記の論文に記載の方法に従って酢酸菌から精製したホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼを用いることもできる。ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
用いるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの量は特に制限されないが、当該工程が溶液中で行われる場合、好ましくは0.005〜50U/mL、より好ましくは0.01〜10U/mL、さらに好ましくは0.05〜1U/mLである。
【0028】
また、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼは、触媒として働くためにマグネシウムイオン(Mg2+)又はマンガンイオン(Mn2+)が存在することが好ましいため、マグネシウム塩又はマンガン塩を併せて用いることが望ましい。このような塩としては特に制限されず、例えば硫酸マグネシウム及び/又は硫酸マンガンを用いることができる。当該塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。用いる当該塩の量も特に制限されないが、好ましくは濃度が1〜200mM、より好ましくは3〜100mMである。
【0029】
ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの活性は、例えば次の方法によって算出できる。50mM Tris−HCl、10mM NaCO 、3.2mMホスホエノールピルビン酸、100 mM MgSO、0.14mM NADH、50U/mLマレイン酸デヒドロゲナーゼを含む反応混液2.9mLをキュベット(d=1cm)に調製し、30℃で約5分間予備加温する。次に酵素溶液0.1mLを添加し、ゆるやかに混和後、水を対照に30℃に制御された分光光度計で340nmの吸光度変化を2〜3分間記録し、その初期直線部分から1分間当りの吸光度変化を求める(ΔODtest)。盲検は酵素溶液の代わりに50mM リン酸緩衝液(pH7.0)を加え、同様に操作を行って、1分間当りの吸光度変化を求める(ΔODblank)。1mMのNADH溶液を340nmの測定波長で吸光度を測定すると6.22Absとなることがよく知られているため、上記のように吸光度変化を求めれば酵素活性を算出することができる。例えば、吸光度変化量を測定し、1分間に6.22mAbsの変化(減少)が生じれば、1μmol/LのNADHが減少したことになる。ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの活性は、上記条件で1分間に1μmolのNADHを消費する酵素量を1単位(U)とする。
【0030】
上述のように、当該工程は通常溶液中で行われる。よって、例えばホスホエノールピルビン酸塩を溶液に溶解させてホスホエノールピルビン酸を溶液中に存在させ、反応に用いることで、当該工程を行うことができる。ホスホエノールピルビン酸塩としては、特に制限されないが、例えばホスホエノールピルビン酸のカリウム塩、ナトリウム塩、トリシクロヘキシルアンモニウム塩、又はモノシクロヘキシルアンモニウム塩等が挙げられる。当該塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるホスホエノールピルビン酸塩量は特に制限されないが、好ましくは濃度が1〜10mM、より好ましくは2〜5mMである。
【0031】
本発明において、(A)〜(C)工程のうち、少なくとも(A)工程は、当該工程が行われる溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比が0.2未満となる条件下で行うことが好ましい。ここでの外気は炭酸ガスを含有するものである。通常、溶液がアルカリ性である場合、外気に溶液の表面が接触している以上、外気中の炭酸ガスは溶液中に溶解し、重炭酸イオン濃度の測定に悪影響を及ぼしてしまう。しかし、意外なことに、溶液のpHを7以上8未満の弱アルカリ性とし、かつ溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比が0.2未満(より好ましくは1.8以下)とすることにより、外気中の炭酸ガスが重炭酸イオン濃度測定に与える影響を無くすことができる。
【0032】
「溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比」とは、当該表面積をcmで表記したときの値を、当該体積をcmで表記したときの値で除したものである。例えば、溶液の外気接触表面積が10cmであり、当該溶液の体積が100cmである場合、「溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比」は(10/100)=0.1である。
【0033】
このような条件下で(A)工程を行うためには、(A)工程を行う溶液を格納する容器や当該容器に格納する液量を適宜選択すればよい。容器の形状は特に制限されず、例えば、口が比較的狭く容量が大きい容器や、長細い容器から、このような条件を満たすものを見出して適宜利用することができる。また、容器の材質は特に制限されず、例えばガラス、プラスチック等であってよい。
【0034】
(B)工程
(B)工程は、(A)工程で生成したオキザロ酢酸、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、及び還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体を混合し、反応させることで行われる。当該反応により、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体は、酸化型へと変わる。例えば、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を用いた場合、酸化されて、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)へと変わる。これにより、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体は、減少することになる。
【0035】
当該工程は通常溶液中で行う。特に、緩衝液中で行うことが好ましい。特に制限はされないが、例えば(A)工程に用いた緩衝液へ、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、及び還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体を添加することにより当該工程を行うことができる。また、例えば(A)工程を行うに際し、ホスホエノールピルビン酸及びホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼだけではなく、さらにマレイン酸デヒドロゲナーゼ、及び還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体を混合させた溶液(好ましくは緩衝液)を用いれば、当該溶液中で(A)工程及び(B)工程の反応が連鎖的に起こるため、好ましい。
【0036】
(B)工程に用いる緩衝液は特に制限されず、例えばトリス塩酸緩衝液、グット緩衝液、ホウ酸緩衝液リン酸緩衝液等を挙げることができる。また、上記のように(A)工程及び(B)工程を同一緩衝液中で行う場合は、(B)工程もpH7以上8未満の緩衝液中で行うことが好ましい。
【0037】
マレイン酸デヒドロゲナーゼとしては、例えば豚心臓由来、サーマス属由来、又はバチルス属由来のもの等を用いることができ、由来の異なるもの1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、用いるマレイン酸デヒドロゲナーゼ量は、特に制限されないが、好ましくは1〜100U/mL、より好ましくは5〜50U/mLである。
【0038】
還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類似体としては、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)と同様に電子供与体として働き得るものであれば特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、3−アセチルピリジンアデニンジヌクレオチド(アセチルNADH、又はaNADH)を挙げることができる。
【0039】
用いる還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体の量は特に制限されないが、好ましくは濃度が0.01〜5mM、より好ましくは0.05〜1mM、さらに好ましくは0.1〜0.5mMである。
【0040】
なお、試料中にラクテートデヒドロゲナーゼ及びピルビン酸が存在すると、妨害反応を起こすおそれがあるため、これを抑えるために例えばオキザメートのようなラクテートインヒビターを溶液中に約1〜20mM程度添加してもよい。
【0041】
(C)工程
(C)工程は、(B)工程における還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体の減少を測定する工程である。これにより得られる測定値から、試料中の重炭酸イオン量を算出することができる。(B)工程における変化を測定することから、(C)工程は(B)工程と並行して行われることが好ましい。
【0042】
還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体の減少を測定できる方法であれば、測定方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、好適な測定方法として、吸光度測定を挙げることができる。還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体は340nm付近に吸収極大をもつことがよく知られており、340nm吸収度変化は種々の酵素活性の測定及び指示反応に広く応用されている。測定は、例えばエンド法(反応の終末点で測定する方法)又はレート法(一定時間の反応速度を測定する方法)のいずれでも行うことができる。
【0043】
例えば、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを用いたレート法による測定において、340nm吸収度減少量が6.22mAbs/minの場合、1μmolのNADHが1分間に減少したことになる。また、予め標準液(重炭酸イオン既知濃度溶液)を測定した場合の吸光度変化量を求め、試料を測定した場合の吸光度変化量が標準液の何倍になるかを求めることによって、試料中の重炭酸イオン量を算出することもできる。
【0044】
なお、(A)〜(C)工程は、異なった容器に格納された溶液中で行ってもよい(つまり、それぞれの工程を行うたび、他の容器へと移しかえてもよい)が、上述のとおり、(A)工程及び(B)工程を同一溶液中で行うことができ、(C)工程は(B)工程と並行して行われることが好ましいため、(A)〜(C)工程は全て一の容器に格納された同一溶液中で行うことができる。(A)〜(C)工程は全て一の容器に格納された同一溶液中で行う場合も、用いる容器の形状は特に制限されず、例えば、口が比較的狭く容量が大きい容器や、長細い容器から、このような条件を満たすものを見出して適宜利用することができる。また、容器の材質は特に制限されず、例えばガラス、プラスチック等であってよい。コスト及び手間の観点から、(A)〜(C)工程は同一溶液中で行うことが好ましい。この場合、(A)〜(C)の工程は、溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比が0.2未満となる条件下で行うことが好ましい。また、各工程で述べた溶液に溶解させる物質を同一溶液内に溶解させて用いることができる。
【0045】
特に制限される訳ではないが、例えば、ホスホエノールピルビン酸、酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体、及びマレイン酸デヒドロゲナーゼを含有する弱アルカリ性緩衝液を調製し、当該緩衝液1.5〜3.0mLと重炭酸イオンを含む試料0.01mLを混合し、37℃で5〜10分間反応させ、NADH濃度に応じて、例えば340nm、365nm、380nm等、あるいはアセチルNADHの濃度に応じて400nm、405nm、410nm等における吸光度の減少を測定することで、(A)〜(C)工程は全て一の容器に格納された同一溶液中で行うことができる。
【0046】
<重炭酸イオン濃度測定試薬>
また、本発明は、上述した重炭酸イオン濃度を測定する方法に用いるための試薬をも提供する。特に、(A)〜(C)工程を同一溶液内で行えるように調製した溶液は、長時間開封状態で保存しても、大気中の二酸化炭素(炭酸ガス)の影響を受けることなく安定であり、重炭酸イオン濃度測定に好ましく用いることができる。
【0047】
本発明の、重炭酸イオン濃度測定用試薬として用いることができる溶液の一態様は、ホスホエノールピルビン酸、酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体、及びマレイン酸デヒドロゲナーゼを含み、pH7以上8未満である、重炭酸イオン濃度測定用溶液である。
【0048】
本発明の重炭酸イオン濃度測定試薬に用いる、好ましいホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ及びその量、好ましい還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体及びその量、並びに、好ましいマレイン酸デヒドロゲナーゼ及びその量、は上記「重炭酸イオン濃度測定方法」欄で述べたのと同様である。これらを、pH7以上8未満となるよう、溶液に溶解させたものを、本発明の重炭酸イオン濃度測定用溶液として好ましく用いることができる。
【0049】
当該溶液は緩衝液であることが好ましい。特に制限はされないが、pH7以上8未満を実現する緩衝液が好ましく、例えばトリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、グット緩衝液(Good NEet al.Biochemistry5p467−77(1966 Feb))等の弱アルカリ性緩衝液を挙げることができる。緩衝液を調製するために溶解させる物質(例えばトリス塩、ホウ酸塩、リン酸塩等の緩衝塩)の量は、当該物質が溶解したときに示す緩衝能等に応じて適宜設定することができ、特に制限されないが、例えば5〜100mM、好ましくは10〜50mMとなるように用いればよい。
【0050】
例えば、本発明の重炭酸イオン濃度測定用溶液の一態様として、下記の組成を有するものを挙げることができる。
【0051】
弱アルカリ性緩衝液 (pH7以上8未満)10〜50mM
ホスホエノールピルビン酸塩 2〜5mM
マグネシウムイオン 3〜100mM
NADH 0.1〜0.5mM
マレイン酸デヒドロゲナーゼ 5〜50U/mL
酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ 0.05〜10U/mL
【0052】
より具体的には、例えば下記組成を有するものを挙げることができる。
【0053】
トリス塩酸緩衝液(pH7.8) 10〜50mM
ホスホエノールピルビン酸カリウム塩 2〜5mM
硫酸マグネシウム 3〜100mM
NADH 0.1〜0.5mM
マレイン酸デヒドロゲナーゼ 5〜50U/mL
酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ 0.5〜5U/mL
【0054】
また、試料中にラクテートデヒドロゲナーゼ及びピルビン酸が存在すると、妨害反応を起こすおそれがあるため、これを抑えるために例えばオキザメートのようなラクテートインヒビターを約1〜20mM程度添加してもよい。
【0055】
このようにして調製される、本発明の重炭酸イオン濃度測定用溶液は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが溶液中で安定であり、重炭酸イオン濃度測定に好ましく用いることができる。
【0056】
このように調製できる本発明の重炭酸イオン濃度測定用溶液は、特に当該溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比が0.2未満となる条件を満たすように、容器に格納されることが好ましい。「溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比」については、前述したのと同様である。当該条件を満たすことにより、外気中の炭酸ガスが重炭酸イオン濃度測定に与える影響をほぼ無くすことができる。容器の形状は特に制限されず、例えば、口が比較的狭く容量が大きい容器や、長細い容器から、このような条件を満たすものを見出して適宜利用することができる。また、容器の材質は特に制限されず、例えばガラス、プラスチック等であってよい。
【0057】
また、特定量の水に溶解させることで、上述した本発明の本発明の重炭酸イオン濃度測定用溶液を調製することができるように予め秤量された、ホスホエノールピルビン酸、酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、及び緩衝液を調製するために溶解させる物質を混合したもの(重炭酸イオン濃度測定用溶液製造用粉体組成物)も、本発明の重炭酸イオン濃度測定用試薬に包含される。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0059】
実施例1
下記の試薬組成に従い、重炭酸イオン濃度測定用溶液(以下「実施例1試薬溶液」という)を調製した。
【0060】
〔試薬組成〕
トリス(pH7.8)
トリトンX−100 0.1%
PEPナトリウム塩 5mM
aNADH 0.3mM
PEPC 0.4U/mL
MDH 5U/mL
【0061】
なお、トリスはナカライテスク社製、トリトンX−100は和光純薬社製、硫酸マグネシウムはナカライテスク社製、PEPナトリウム塩(ホスホエノールピルビン酸ナトリウム塩)はシグマアルドリッチ社製、aNADH(3−アセチルピリジンアデニンジヌクレオチド)はオリエンタル酵母工業製、PEPC(ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ)及びMDH(マレイン酸デヒドロゲナーゼ)は東洋紡績社製(それぞれPPC−301及びMAD−211)を用いた。
【0062】
実施例1試薬溶液を用い、下記の4種類の試料中の重炭酸イオン濃度を測定した。
〔試料〕
精製水、
キャリブレーター(既知濃度(31.4mM)重炭酸ナトリウム水溶液)、
プール血清(2種類:血清α及び血清β(いずれも管理血清))
【0063】
具体的には、プラスチックキュベットにおいて、各試料3μLに実施例1試薬溶液300μLを添加し37℃でインキュベーション後1分後と4分後の405nmにおける吸光度を測定し、1分間当たりの吸光度変化量を求めた。そして、キャリブレーターの吸光度変化量を基準として、プール血清中に存在した重炭酸イオン量を算出した。
【0064】
また、測定は、初日、3日後、7日後、11日後、14日後、17日後に行った。測定期間中実施例1試薬溶液は9℃で開封状態で保存した。実施例1試薬溶液は開口表面積と体積の比が0.2未満となるよう維持した。その結果を図1に示す。図1から、14日後も実施例1試薬溶液の重炭酸イオン濃度測定能は維持されることがわかった。
【0065】
比較例1
下記の試薬組成に従い、重炭酸イオン濃度測定用溶液(以下「比較例1試薬溶液」という)を調製した。
【0066】
〔試薬組成〕
トリス(pH8.0)
トリトンX−100 0.1%
PEPナトリウム塩 5mM
aNADH 0.3mM
PEPC 0.4U/mL
MDH 5U/mL
【0067】
なお、各成分の販社は上記と同じである。
【0068】
比較例1試薬溶液を用い、下記の4種類の試料中の重炭酸イオン濃度を測定した。
〔試料〕
精製水、
キャリブレーター(既知濃度(31.4mM)重炭酸ナトリウム水溶液)、
プール血清(2種類:血清α及び血清β(いずれも管理血清))
【0069】
具体的には、プラスチックキュベットにおいて、各試料3μLに比較例1試薬溶液300μLを添加し37℃でインキュベーション後1分後と4分後の405nmにおける吸光度を測定し、1分間当たりの吸光度変化量を求めた。そして、キャリブレーターの吸光度変化量を基準として、プール血清中に存在した重炭酸イオン量を算出した。
【0070】
また、測定は、初日、3日後、7日後、11日後、14日後、17日後に行った。測定期間中比較例1試薬溶液は9℃で開封状態で保存した。また、開口表面積と体積の比が0.3以上で保存した。結果を図2に示す。図2から、保存期間が長くなるにつれ、比較例1試薬溶液の重炭酸イオン濃度測定能は低下し、14日後には測定が不能になることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の重炭酸イオン濃度を測定する方法であって、
(A):試料中の重炭酸イオン、及びホスホエノールピルビン酸を、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ存在下で反応させ、オキザロ酢酸を生成させる工程
(B):(A)工程で生成したオキザロ酢酸、及び還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体を、マレイン酸デヒドロゲナーゼ存在下で反応させる工程
(C):還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド若しくはその類似体の減少を測定する工程
を含み、
前記(A)〜(C)工程のうち少なくとも(A)工程はpH7以上8未満の溶液中で行われ、当該溶液の外気と接触する表面積と当該溶液の体積の比が0.2未満であり、
前記ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼである、
重炭酸イオン濃度測定方法。
【請求項2】
前記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体が、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくは還元型3−アセチルピリジンアデニンジヌクレオチドである、請求項1に記載の重炭酸イオン濃度測定方法。
【請求項3】
前記酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが、アセトバクター・パスツリアヌス由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アセトバクター・アセチ由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アセトバクター・ザイリナム由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アセトバクター・ハンゼニイ由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、及びグルコノバクター・オキシダンス由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼからなる群より選択される少なくとも1種のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼである、請求項1又は2に記載の重炭酸イオン濃度測定方法。
【請求項4】
ホスホエノールピルビン酸、酢酸菌由来のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくはその類似体、及びマレイン酸デヒドロゲナーゼを含み、pH7以上8未満である、重炭酸イオン濃度測定用溶液。
【請求項5】
外気と接触する表面積と体積の比が0.2未満となるよう容器に格納された、請求項4に記載の重炭酸イオン濃度測定用溶液。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−92143(P2011−92143A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251380(P2009−251380)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】