説明

重縮合反応において優れた活性及び選択性を示す新規チタン系触媒

チタンアトラン触媒を用いるポリエステルの製造方法を開示する。本発明のチタンアトラン触媒の製造方法も開示する。チタンアトラン触媒はエステル化及び/又は重縮合触媒として有用であり、従来の触媒系と同様な活性及び色を有し且つ同様な副生成物を形成するが、毒性及び規制の問題が低減されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートは、重要な工業用ポリマーの一種である。これらは熱可塑性繊維、フィルム及び成形用途に広範に使用されている。
【0002】
ポリエステルはグリコールによるテレフタル酸(TPA)のような酸のエステル化とそれに続く重縮合によって製造できる。触媒が、重縮合を触媒するのに用いられ、そしてエステル化を触媒するのにも使用できる。
【0003】
エステル化及び重縮合反応用の触媒としてはアンチモンが用いられることが多い。しかし、アンチモン系触媒は、特に食品接触及び繊維用途において、増大した環境圧力と法規制を受けている。アンチモン系触媒はグレー変色の問題を引き起こすおそれもある。錫化合物もエステル化及び重縮合反応に使用できる。しかし、錫系触媒は同様な毒性及び規制の問題がある。
【0004】
単独の又は他の化合物と組み合わされたチタン系触媒が、特許文献1〜6においてポリエステルの製造への使用に関して記載されている。特許文献7は、特に環状エステルの重合へのチタンアルコキシド触媒の使用について記載している。特許文献8に記載されるように、チタン触媒は、エステル化及び重縮合反応に使用される場合には、水形成性のグリコール不溶性オリゴマー種との接触時に加水分解して触媒活性を失う傾向があると懸念されている。特許文献9及び10に記載されるように、一部のチタン化合物を触媒として用いて製造されるエステル及びポリエステルは、黄変を生じるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,482,700号
【特許文献2】米国特許第4,131,601号
【特許文献3】米国特許第5,302,690号
【特許文献4】米国特許第5,744,571号
【特許文献5】米国特許第5,905,136号
【特許文献6】WO97/45470
【特許文献7】米国特許出願公開公報第2005/0009687号
【特許文献8】米国特許出願公開公報第2005/0215425号
【特許文献9】米国特許第4,131,601号
【特許文献10】米国特許第4,482,700号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
触媒活性が増加し、ポリエステルの性質に影響を全く与えないか又はごくわずかしか影響を与えず且つ毒性の問題が低減された、ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレート及びそのコポリエステル)の合成のための触媒系に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一面において、本発明は、ポリ酸とポリオールをエステル化させてオリゴマーを生成させ;そしてアトラン(atrane)含有触媒の存在下に重縮合によって前記オリゴマーを重合させて非環状ポリエステル(acyclic polyester)を形成することを含んでなるポリエステルの製造方法である。
【0008】
第二の面において、本発明は非環状エステル重縮合用のチタンアトラン含有触媒である。
【0009】
第三の面において、本発明は(a)チタン(IV)アルコキシド化合物及び第1の溶媒を含む溶液を有機酸と接触させ;(b)工程(a)で形成された溶液を置換又は非置換トリアルカノールアミンと接触させて非純粋触媒を形成させ;そして(c)前記非純粋触媒を精製してチタンアトラン触媒を形成させることを含んでなる、チタンアトラン触媒の製造方法である。
【0010】
本発明の目的は、これまで使用されたアンチモン系触媒系と同様な活性を有するが、毒性及び規制の問題が低減された非環状ポリエステル製造用の重縮合触媒を提供することである。本発明の目的は、非環状ポリエステルの加工時にもたらされる着色及び副生成物形成が、一般に使用されるアンチモン系触媒系に比較して許容できるものである触媒系を提供することにもある。副生成物形成の一例はアセトアルデヒドの形成である。アセトアルデヒドは、樹脂生成時に形成され、加工時に再生される。ほとんどのチタン触媒は、アンチモンに比較してアセトアルデヒド再生速度が速いが、本発明の触媒は再生アセトアルデヒドの問題に対する解決策を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
高分子量非環状ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)及びポリエチレンナフタレート(PEN))の製造においては、いくつかの主反応が行われる。第1の反応は、ポリ酸とポリオールがエステル化されるエステル化反応である。適当なポリ酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸;並びに長鎖分岐鎖ポリ酸、例えばトリメシン酸、トリメリット酸及びその無水物が挙げられる。適当なポリオールとしては、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール−1,3,1,4−ブタンジオール、イソソルビド;芳香族ポリオール、例えばレソルシノール、ヒドロキノン;並びに長鎖分岐鎖ポリオール、例えばトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールが挙げられる。PETの場合には、ポリ酸はテレフタル酸であり、ポリオールは典型的にはエチレングリコールである。
【0012】
エステル化工程は、いかなる触媒も用いずに(自触媒作用で)実施できるが、典型的にはアンチモン化合物はエステル化反応を触媒できる。エステル化工程は、典型的には、200℃超、より好ましくは240〜270℃の温度及び1〜10barの圧力において実施する。エステル化反応の間に、水が反応生成物として形成される。場合によっては、ビニルアルコールが副生成物として形成され、これは非常に速くアセトアルデヒドに異性化する。
【0013】
第2の主反応は重縮合と称し、ポリエステルの分子量増加に極めて重要である。重縮合反応は、溶融相及び固体状態(solid state)相の2相を含むと考えられる。典型的には、重縮合工程の溶融相は、240〜290℃の温度において3〜0.1mbarの真空下で実施する。典型的には、重縮合工程の固体状態相は、190〜230℃の温度において実施し、窒素流下又は3〜0.1mbarの真空下で実施できる。
【0014】
ポリマーの分子量が増加するに従って、重縮合反応はエチレングリコールと若干の水を生成する。チタン化合物は加水分解を受けて、触媒として不活性なチタン種を生成するので、チタン化合物は典型的には水に極めて感受性である。従って、重縮合反応の間じゅう活性を維持するためには、チタン化合物の構造が非常に重要である。意外なことに、本発明のチタンアトラン触媒は、重縮合反応の両相(溶融相及び固体状態相)においてかなりの触媒活性を持ち続ける。
【0015】
アトランは3つの原子部分によって架橋された2つの橋頭原子を含んでなる。橋頭(bridgehead)原子が相互作用すると、(3.3.3.0)三環系が生成される(Vercade et al.;Coordination Chemistry Review(1994),137,233-295)。本発明の触媒においては、アトランは下記構造:
【0016】
【化1】

【0017】
[式中、RはH、C1〜C26アルキル−、アリール−又はヘタリールであり;R1はH、又はメチル−、又はエチル−又はエテニル−又はアリール、又はヘタリールであり;R2はH、又はメチル−又はエチル−又はエテニル−、又はアリール、又はヘタリールであり;そしてR3はH、又はメチル−又はエチル−、又はエテニル−、又はアリール、又はヘタリールである]
を有するチタンアトランである。
【0018】
本発明のチタンアトラン触媒において、チタン原子上の6つの配位座は全て占有されている。4つの配位座は第1の配位子(通常の結合が3つ及び供与結合が1つ)によって占有され、2つの配位座は第2の配位子(通常の結合が1つ及び供与結合が1つ)によって占有されている。第1の配位子は、置換又は非置換トリアルカノールアミンであり、好ましくはトリエタノールアミン、トリ−イソプロパノールアミン又は置換トリエタノールアミンである。第2の配位子は有機酸である。任意の酸を使用できるが、好ましくは酸はカルボン酸であり、更に好ましくは第2の配位子は酢酸又はプロピオン酸である。本発明のチタンアトラン触媒は、チタン原子を分子当たり1個だけ含むので、他の分子との架橋はほとんど起こらない。
【0019】
本発明のチタンアトラン触媒は、重縮合工程の溶融相及び固体状態相のいずれにおいても5〜250ppmの濃度で使用する。触媒は、粉末の形態で添加でき、その場合には、エステル化反応の前にポリ酸及びポリオール(これらの混合物を本明細書中では「ペースト」と称する)に添加できる。或いは、触媒とエチレングリコールのような適当なポリオールを含む触媒含有溶液を調製できる。この触媒含有溶液はペーストに、エステル化反応に直接、又は重縮合反応に直接添加できる。反応混合物への触媒の添加前において水との直接接触(特に比較的高温において)が回避されるならば、添加方法は重要でない。触媒は、先行技術において典型的に記載されたアンチモン触媒と同じ温度及び圧力において作用する。
【0020】
本発明のチタンアトラン触媒は下記工程を用いて合成できる:最初に、チタン(IV)アルコキシドを第1の溶媒に添加することによって、アルコール溶液を調製する。好ましくは、第1の溶媒は、チタネート中のアルコキシドに相当するアルコールである。例えばチタンn−ブチレートが使用チタネートである場合には、第1の溶媒は好ましくはn−ブタノールである。同様に、チタンn−プロピレートがチタネートである場合には、1−プロパノールが好ましい第1の溶媒であり;チタンイソプロピレートがチタネートである場合には、イソプロピルアルコールが好ましい第1の溶媒であり;チタンt−ブチレートがチタネートである場合には、t−ブタノールが好ましい第1の溶媒であり;チタンエチレートがチタネートである場合には、エチルアルコールが好ましい第1の溶媒であるなどである。アルコール溶液は窒素下で調製する。
【0021】
次いで、有機酸を窒素下において前記アルコール溶液に、チタネート対有機酸のモル比が1:1となるような量で、ゆっくりと加える。酸置換チタネートの溶液が得られる。好ましくは、酸はカルボン酸である。より好ましくは、カルボン酸は酢酸である。好ましくは、有機酸を前記アルコール溶液に20〜50℃の温度において常圧で加える。
【0022】
次に、置換又は非置換トリアルカノールアミンを窒素下において酸置換チタネート溶液に、チタネート対トリアルカノールアミンのモル比が1:1となるような量で、ゆっくりと加える。好ましくは、トリアルカノールアミンは、トリエタノールアミン、トリ−イソプロパノールアミン又は置換トリエタノールアミンである。好ましくは、トリアルカノールアミンは、酸修飾チタネートの溶液に20〜50℃の温度において常圧で加える。固体沈殿物の形態の非純粋触媒、液体アルコール及び液体アルコール中に溶解された非純粋触媒を含む混合物が得られる。
【0023】
任意的に、固体沈殿物を混合物の他の部分から、例えば濾過によって分離する。固体沈殿触媒は次に下記のようにして精製できる。しかし、好ましくは、固体沈殿物は混合物の他の部分と共に残しておき、混合物全体を下記のようにして精製する。
【0024】
次いで、非純粋触媒を精製する。最初に、第1の溶媒を50℃未満の温度において真空下で蒸発によって除去し、固体沈殿物を残す。次に、この固体沈殿物を第2の溶媒、例えばトルエンに加え(トルエンの重量に基づき触媒1〜50重量%)、煮沸して残留物質、例えばアルコール、エステル及びトレース量の水を除去する。得られた懸濁液を熱時濾過し、(白色)フィルターケークを乾燥させ、真空下で貯蔵する。
【0025】
得られたチタンアトラン触媒は、ボトル、フィルム、繊維及び他の用途で用いられる樹脂の製造に使用できる。本発明のチタンアトラン触媒は、種々のプロセス、例えば「高IVプロセス」と称するプロセスにも使用できる。
【0026】
アンチモン又はゲルマニウム系触媒のような従来の触媒に、本明細書中に記載したチタンアトラン触媒を少量添加して、能力を増加させることも可能である。チタンアトラン10ppm(チタン2ppm)以下であっても重縮合及びエステル化の速度を増大させて、能力を増加させることができる。
【実施例】
【0027】
方法
以下の方法を実施例において用いる。
極限粘度数の測定
サンプルの調製
樹脂ペレット20gを、冷却剤として液体窒素を用いて粉砕する。得られた粉末を100℃において2分間乾燥させる。溶媒(o−ジクロロベンゼン50%とフェノール50%の混合物)を、濃度0.5g/dlの溶液を得るのに充分な量で、乾燥粉末250mgに加える。溶液を130℃において30分間撹拌しながら加熱し、次いで25℃に冷却する。得られた冷却溶液をショットビスコシメータ(Schott Viscosimeter)に入れる。
【0028】
測定
測定は、Micro−UBBELOHDE−Viscosimeter Type No.536 20 Capillary MII(DIN 51 562 Part2と一致)を用いて実施する。滴下時間の測定回数は3回である。許容される滴下時間偏差の上限は0.2%である。温度許容度の上限は25℃±0.03Kである。計算は、BILLMEYER式に従ってdl/gで行う。
【0029】
測色
装置
分光光度計LUCI 100(Dr.Lange GmbH)とSPECTRAL QCソフトフェア
スペクトル域: 380〜720nm
方式: 拡散反射,d/8°
キュベット: 34mm,高さ25mm
測定スポット: 10mm
光源: 昼光D65/10
【0030】
対照:
標準黒色板及び標準白色板(LZM 128)
参照標準が以下のXYZ値に達した場合に、装置を用いる。
変動が大きくなるにつれて、LUCI 100において新しい較正工程が必要となる。
【0031】
【表1】

【0032】
手順:
サンプルはペレットとして測定する。キュベットは清浄でなければならず、少なくとも3/4までいっぱいに充填する。サンプルは8回測定し、測定ごとにキュベットに新しいペレットを充填する。8回の全測定の平均値を、SPECTRAL QCソフトフェアを用いて計算する。
【0033】
アセトアルデヒド発生の測定
樹脂を、直径30mmのスクリュー及び長さ:直径比20を有するES 200−50射出成形機(Engel Co.)で加工する。乾燥樹脂を射出成形機の材料ホッパーに供給し、それに窒素カーテンを適用する。樹脂を270〜300℃の温度で加工する。次に、得られたメルトを、加圧下で冷却金型中に射出する。加工パラメーターは以下の通りである:
乾燥:
機器: 空気循環乾燥炉UT20(Heraeus Instruments製)
温度: 120℃
持続時間: 12時間
射出成形:
機械: ES 200−50(Engel Co.製)
シリンダー温度: 277/277/277/277℃
スクリュー速度: 42rpm
冷却時間: 10秒
保圧時間(dwell pressure time): 10秒
メルト保持時間: 2.5分
【0034】
加工された樹脂のアセトアルデヒド含量を、以下の方法に従って測定する:最初に、種々の材料を、液体窒素の存在下においてRETSCH Co.(ZM1)によって遠心ミル中で1mmのスクリーンを用いて粉砕する。約0.1〜0.3gの粉砕材料を22mlのサンプルボトル中に入れ、ポリテトラフルオロエチレンシールでシールする。サンプルボトルを、150℃のヘッドスペースオーブン(HS−40 XLヘッドスペースオートサンプラー,Pekin Elmer製)で制御温度下で90分加熱し、続いて、外部標準を用いてガスクロマトグラフィー(XL GC AutoSystem,Pekin Elmer製)に通して分析する。種々のアセトアルデヒド含量の水溶液の完全蒸発によって、較正曲線を作成する。
【0035】
アセトアルデヒド測定に関する装置の仕様は以下の通りである:
ヘッドスペースオートサンプラーの条件:
オーブン温度: 150℃
ニードル温度: 160℃
トランスファーライン温度: 170℃
保持時間: 90分
ガスクロマトグラフ条件:
カラム: 1.8m×1/8in.ステンレス鋼
充填物: Porapack Q,80/100メッシュ
キャリヤーガス: 窒素,30ml/分
燃料ガス: 水素
空気: 合成空気
カラム温度: 140℃
検出器濃度 220℃
【0036】
実験は、200Lバッチ反応器(Pisticci Mini Plant)中で実施する。この反応器に、油圧式駆動装置(一定速度/トルク測定のための速度制御システム)を有するスパイラルアジテーター(撹拌機)並びに反応器用の油加熱システム(最大温度300℃)及び出口弁/孔プレート用の第2の加熱システム(275℃)を装着する。スパイラルアジテーターは、壁まで1.5cmのスペースを空けて、生成物を底部から壁表面を上方へ輸送する。反応器中の充填レベルは約40%である。
【0037】
実施例1−チタンアトラン触媒の製造
室温において窒素雰囲気中で撹拌しながら、n−ブタノ−ル500mLにチタンn−ブチレート0.4モルを加える。この後、室温でn−ブタノール中チタンn−ブチレートの溶液に氷酢酸24g(0.4モル)をゆっくりと加える。溶液の色が淡黄色に変化する。これを更に10分間撹拌する。この撹拌溶液にトリエタノールアミン59.67gを滴加する。アミンの添加中に、温度が約2K増加する。混合物を室温で攪拌する。この間に、白色沈殿物が生じる。混合物を一定期間(0.5〜50時間)撹拌する。
【0038】
溶媒(及び反応生成物)n−ブタノールを50℃未満の温度において真空下で蒸発させる。
【0039】
得られたオフホワイト〜琥珀色の固体をトルエン500mlに加える。それをこの溶媒中で煮沸して、アルコール、エステル及び微量の水を除去する。得られた懸濁液を熱時濾過し、(白色)濾過ケークを乾燥させ、真空下で貯蔵する。得られたアトランは、200℃超の融点を有する。収率は60〜90%(チタンに基づく)の範囲である。
【0040】
実施例2−チタンアトラン触媒を用いて製造されるPET
チタン触媒を用いる実験のレシピ:
モノエチレングリコール(MEG)(29.5kg)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH,ジエチレングリコールの形成を阻害するために使用)の水溶液34.65g(50ppm)、触媒としてのチタン15ppm(チタンアトラン5.9gとして添加)及びPolysynthren RBL(0.288g,即ち4ppm)及びPolysynthren GFP(4ppm)を含む着色剤を、ペーストミキサー中に供給する。撹拌(3600min-1の2つの撹拌機)下で、精製テレフタル酸(PTA)60.675kg及びイソフタル酸(IPA)1.44kgをペーストミキサー中に加える。ペーストミキサーは、反応器中に供給する前の原料を混合するために用いる容器である。反応器を約5分間窒素でパージする。次いで、MEG/PTAペーストを反応器中に供給する。エステル化後、圧力を10分で1.5bar(絶対)まで低下させ;次いで安定剤として燐化合物(燐酸2.675g,即ち燐10ppm)を添加する。
【0041】
エステル化:
エステル化の第1の工程に関する反応器の温度及び圧力の設定値は約235℃及び2.6bar(絶対)である。撹拌機の速度は80min-1である。カラム中で、気相をエチレングリコール(EG)と水に分離させる。EGを反応器に循還させる。凝縮水(カラム上部)をタンク中に収集する。エステル化時間の間に、生成物の温度が270℃まで上昇する。エステル化ランは約200分持続する。
【0042】
溶融相重縮合:
エステル化後、反応器の絶対圧を4工程で低下させる:
1.圧力を10分で1.5bar(絶対)まで低下させ;燐安定剤化合物(燐酸)を添加する;
2.圧力を1bar(絶対)まで低下させる;
3.圧力を15分で400mbar(絶対)まで低下させる;
4.圧力を15分で100mbar(絶対)まで低下させた後、2〜4mbar(絶対)まで急速に低下させる。
【0043】
燐化合物は別の触媒タンクから反応器中に供給する。触媒タンクを窒素でパージしてから、エチレングリコール中に燐酸溶液を加える。油圧を固定値(5bar)として、撹拌機の速度を35min-1まで低下させる。重縮合の間に、生成物の温度が275℃まで上昇した。油圧式駆動装置の油圧の固定値において、重縮合を完了させる。溶融相後の反応器の中身を出している間に、高粘度ポリエステルを水浴中で冷却し、こうして形成されたストランドをペレット化する。
【0044】
固相重縮合(Solid State Polycondensation)(SSP):
SSP反応器は、BUHLER社製の流動床反応器(パルスベッド)である。反応器は3kgのバッチ容量を有する。PETペレットを常圧で高温窒素流(125Nm3/時)中で処理する。結晶化、乾燥及びSSPは、同じ窒素流を用いるバッチプロセスである。ペレットを通した後の流れから窒素の約10%を除去し、新鮮な窒素と置き換える。窒素の露点は−55℃である。下記表Iに結果を示す。
【0045】
比較例3−従来のアンチモン系触媒を用いて製造されるPET
実施例2のレシピの代わりに以下のレシピを用いる以外は、実施例2に関して記載した方法に従う:
MEG(29.5kg)、TMAH34.65g(50ppm)、アンチモン230ppm(酢酸アンチモン40.25gとして添加,触媒として使用)及びコバルト10ppm(酢酸コバルト3.035gとして添加,着色剤として使用)をペーストミキサー中に供給する。撹拌(3,600min-1の2つの撹拌機)下で、PTA 60.675kg及びIPA 1.44kgをペーストミキサー中に加える。反応器を約5分間、窒素でパージする。MEG/PTAペーストを反応器中に供給する。エステル化後、圧力を10分で1.5bar(絶対)まで低下させ、次いで安定剤として用いられる燐化合物(燐酸2.675g、即ち燐10ppm)を添加する。エステル化、溶融相重縮合及び固相重縮合は、実施例2に記載したようにして実施する。下記表Iに結果を示す。
【0046】
【表2】

【0047】
これらの結果は、本発明のチタンアトラン触媒の結果と、エステル化反応及び重縮合反応に従来用いられているアンチモン触媒の結果とが同等であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ酸及びポリオールをエステル化させてモノマーを生成させ;そして
アトラン含有触媒の存在下に重縮合によって前記モノマーを重合させて非環状ポリエステルを形成させること
を含んでなるポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記アトラン含有触媒がチタンアトラン触媒である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリ酸がテレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸又はその無水物である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリオールがエチレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、イソソルビド、レソルシノール、ヒドロキノン、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、重縮合工程において、5〜250ppmの濃度で存在する請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記エステル化工程を200℃超の温度で実施する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
溶融相及び固体状態相を含む前記重縮合工程を、溶融相に対しては260〜290℃の温度で、そして固体状態相に対しては190〜230℃の温度で、実施する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エステル化工程を1〜10barの圧力において実施する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
溶融相及び固相状態を含む前記重縮合工程を、3.0〜0.1mbarの圧力において実施する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
非環状エステル重縮合に使用するチタンアトラン含有触媒。
【請求項12】
前記触媒が構造:
【化1】

[式中、RはH、C1〜C26−アルキル−、アリール−、又はヘタリールであり;R1はH、又はメチル−、又はエチル−又はエテニル−アリール、又はヘタリールであり;R2はH、又はメチル−、又はエチル−、又はエテニル−アリール、又はヘタリールであり;そしてR3はH、又はメチル−又はエチル−、又はエテニル−アリール、ヘタリールである]
を有する請求項11に記載の触媒。
【請求項13】
(a)チタン(IV)アルコキシド化合物及び第1の溶媒を含む溶液を有機酸と接触させ;
(b)工程(a)で形成された溶液を置換又は非置換トリアルカノールアミンと接触させて非純粋触媒を形成させ;そして
(c)前記非純粋触媒を精製してチタンアトラン触媒を形成させる
ことを含んでなるチタンアトラン触媒の製造方法。
【請求項14】
前記チタン(IV)アルコキシド化合物がチタンn−ブチレート、チタンイソプロピレート、チタンn−プロピレート、チタンt−ブチレート又はチタンエチレートである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の溶媒が第一アルコール、第二アルコール又は第三アルコールである請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記有機酸がカルボン酸である請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記有機酸が酢酸又はプロピオン酸である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記トリアルカノールアミンがトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン又は置換トリエタノールアミンである請求項13〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記工程(c)が、
c1)前記非純粋触媒から第1の溶媒を蒸発させて、不所望の副生成物を除去し;
c2)前記工程c1)の生成物を第2の溶媒と接触させて、懸濁固体を形成させ;そして
c3)前記懸濁固体を煮沸して、精製チタンアトラン触媒を形成させる
ことを更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記工程c2)の前記第2の溶媒がトルエン、アルキル置換芳香族及び長鎖アルカンからなる群から選ばれる請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2011−515554(P2011−515554A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501310(P2011−501310)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【国際出願番号】PCT/IB2009/000574
【国際公開番号】WO2009/118600
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(505225094)エクイポリマーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】