説明

重荷重用空気入りラジアルタイヤ

【課題】軽量化のためにベルトを3層構造とした重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルトを更に軽量化しつつ、ベルトの耐久性を更に向上させる。
【解決手段】インナーライナー5と3層のゴム被覆コード層からなるベルト6とを備えた重荷重用空気入りラジアルタイヤ1において、ベルト6の最内コード層7及び中間コード層8の各コード7a,8aの傾斜角度をトレッド部円周を含む平面に対し10〜25°とし、最外コード層9のコード9aの傾斜角度を45〜115°とし、該最外コード層9を互いに対をなす周方向ショルダ溝11の溝縁のうちタイヤ赤道面に最も近い溝縁相互間の幅以下の幅を有するものとした上で、ゴム成分に対してアスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合してなるゴム組成物をインナーライナー5に適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りラジアルタイヤ、より詳細には、トラック及びバス等の重車両用のタイヤに関し、特に、軽量化のためにベルトを3層のゴム被覆コード層から構成し、且つ3層構造のベルトの重量を更に軽量にすると共に、インナーライナーに層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物を適用することで、タイヤ重量を軽量に維持したまま、ベルトゴムの耐劣化性を向上させ、その結果として、良路走行でのベルトの耐カット性を向上させた重荷重用空気入りラジアルタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラック及びバス等の重車両に使用する重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいては、一般に、トレッド部のベルトは4層のゴム被覆コード層からなり、カーカスに最も近く位置する第一コード層のコードをトレッド部の円周を含む平面(即ち、タイヤ赤道面と平行な平面)に対して比較的大きな傾斜角度で配列し、第二コード層及び第三コード層のコードを上記平面を挟んで交差する配列とし(この為、第二コード層及び第三コードはコード交差層と呼ばれる)、更に、第四コード層のコードを第三コード層のコードと同じ向きの配列とし且つ傾斜角度も第三コード層のコードとほぼ同じ傾斜角度としている。なお、ベルトのコード層のコードには一般にスチールコードが用いられる。
【0003】
上記4層のゴム被覆コード層からなるベルトを備えたタイヤが、小石や金属片等の異物が散在する路面を荷重負荷の下で転動すると、たまたま小石や金属片等の鋭い角縁部を踏みつけたトレッド部は、往々にしてベルトに達するカット傷を受けることがある。そのため、カットによるベルト損傷が致命傷となるのを少しでも回避することを目的として、ベルトのカット受傷を最外コード層である第四コード層で止めるように、第四コード層の主たる役割を保護層とする構成が提案されている。
【0004】
一方、乗用車用空気入りラジアルタイヤ等と同様に、重荷重用空気入りラジアルタイヤにも軽量化の要請が強まり、タイヤ重量の中で大きな割合を占めるベルトを4層のコード層から3層のコード層とすることが提案されている。該3層コード層からなるベルトは、カーカスに最も近い第一コード層のコードを前述の平面に対し比較的大きな傾斜角度で配列し、第二コード層と第三コード層とを先に触れたコード交差層とし、該コード交差層の各コードを上記の平面に対し比較的小さな傾斜角度で配列するものである。
【0005】
この種の3層ベルト構成をもつタイヤについて、例えば、特開平7−186613号公報(下記特許文献1)に記載のタイヤは、ベルトを3枚のコード層(ブレーカ)で構成し、カーカスから数えて3番目の第三コード層の強力が最も不足するという知見の下、第三コード層の単位幅当りの強力を第一コード層及び第二コード層の強力より高めることに特徴がある。これにより、タイヤのトレッド部が異物に乗り上げた際に、少なくとも第三コード層のコード切れに止め、バースト等の致命的故障を安価に且つ有効に阻止することができるとしている。
【0006】
しかしながら、特開平7−186613号公報に記載のタイヤについて実際に検証したところ、該タイヤのベルトは、第二コード層と第三コード層とを交差コード層とし、かつこれら各層のコードの交差角度を比較的小さくしているため、タイヤに所定内圧を充填した際、第二コード層及び第三コード層の各層のコードに大きな張力が作用し、第三コード層の単位幅当りのコード強力(具体的には引張強さ)を折角高めても、小石や金属片等の異物によるコード切れを十分に抑制することができないことが分った。なぜなら、大きな張力が作用しているコードは、カット入力に対抗する余力が大幅に減少しているからである。
【0007】
また、タイヤのトレッド部が路面上に存在する、ある程度大きな石又は金属片等の突起異物に乗り上げた際、ベルトに曲げ力が作用する結果、最外コード層のコードに局部的な座屈(バックリング)現象が生じ易く、この座屈が繰り返し生じることでコードの疲労が進み、ついにはコード切れに至る故障も見られる。
【0008】
更に、荷重負荷の下で転動するタイヤのトレッド部が小石や金属片に乗り上げる際、トレッド部にパターンを形成するためにトレッドゴムに設けた溝のうち、特にトレッド部の周方向に延びる周方向溝に小石や金属片が食い込むと、周方向溝底からベルトまでのトレッドゴム厚さが薄いため、小石や金属片の鋭い角縁部が比較的容易にトレッドゴムを貫通してベルトに至り、容易に貫通する分、小石や金属片の鋭い角縁部がベルトを切断し易いという問題があった。
【0009】
一方、タイヤ軽量化の要請は益々強まる傾向にあり、例えば、特開平7−186613号公報に開示の3層のコード層からなるベルトを備えたタイヤであっても、軽量化の要請に十分に応えることができず、そのため、最外コード層コードの耐座屈疲労性向上を含め、トレッド部の耐カット性向上と、より一層の軽量化とを達成したタイヤが強く要望されている。
【0010】
これに対して、特開2000−229504号公報(下記特許文献2)には、ベルトを最内コード層、中間コード層及び最外コード層の3層から構成すると共に、最内コード層及び中間コード層をコード交差層とし、該最内コード層及び中間コード層の各コードの傾斜角度をタイヤ赤道面に対し10〜25°とした上、最外コード層のコードをタイヤ赤道面に対し45〜115°の傾斜角度とし、更に、該最外コード層の幅を互い対をなす周方向ショルダ溝の溝縁のうちタイヤ赤道面に最も近い溝縁相互間の幅以下とすることで、ベルトの耐セパレーション性、コーナリング性能及び耐カット性等を従来タイヤと同等以上としつつ、タイヤのより一層の軽量化を実現し、併せてベルトの最外コード層の耐疲労性を向上させた重荷重用空気入りラジアルタイヤが開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開平7−186613号公報
【特許文献2】特開2000−229504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特開2000−229504号公報に記載のタイヤでも、タイヤ内部から透過してベルトに到達する酸素によって、コード層のコード被覆ゴム中の酸素濃度が増加して、該コード被覆ゴムが酸素劣化して耐久性が低下するという問題がある。
【0013】
これに対して、ベルトのコード被覆ゴム中の酸素濃度の増加を抑制するには、インナーライナーのゲージを厚くすることが特に有効である。しかしながら、この場合、タイヤ重量が増加するため、走行時にタイヤケースを構成するゴムの温度が上昇してしまい、結果として、ケースゴムの空気(酸素)透過速度が上昇して、ベルトのコード被覆ゴムが酸素劣化してしまうという問題がある。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決し、ベルトを3層のコード層で構成して軽量化することを前提とし、該ベルトの重量を更に軽量にすると共に、インナーライナーのゲージを厚くすることなく、ベルトのコード被覆ゴム中の酸素濃度の増加を抑制して、ベルトの耐久性を向上させ、良路走行でのベルトの耐カット性を大幅に向上させた重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、3層のコード層で構成したベルトの構造を特定の構造とすると共に、インナーライナーに適用するゴム組成物に特定のアスペクト比の層状又は板状鉱物を配合することで、ベルトを更に軽量化しつつ、インナーライナーの空気(酸素)透過速度を低下させてベルトのコード被覆ゴムの耐久性を向上させて、ベルトの良路走行での耐カット性を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
即ち、本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤは、
一対のビード部内に夫々埋設したビードコア相互間に渡り一対のサイドウォール部及びトレッド部を補強する1プライ以上のゴム被覆ラジアル配列コードからなるカーカスと、該カーカスの内側に配置したインナーライナーと、前記カーカスの外周でトレッド部を強化するベルトとを備え、該ベルトが3層のゴム被覆コード層からなり、該コード層のうちの最内コード層及び中間コード層がコード交差層を形成し、前記トレッド部が少なくとも両側領域で互いに対をなす周方向ショルダ溝を備える重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記最内コード層及び中間コード層の各コードの傾斜角度が前記トレッド部円周を含む平面に対し10〜25°であり、前記最外コード層のコードの傾斜角度が、前記中間コード層のコードの前記平面からの傾斜角度を測る向きと同じ向きに測って、前記平面に対し45〜115°であり、前記最外コード層が、前記互いに対をなす周方向ショルダ溝の溝縁のうち、タイヤ赤道面に最も近い溝縁相互間の幅以下の幅を有し、
前記インナーライナーに、ゴム成分に対してアスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合してなるゴム組成物を適用したことを特徴とする。
【0017】
ここで、上記トレッド部の両側領域とは、トレッド部の踏面幅を4等分した、その1/4幅をタイヤ赤道面の両側に振り分けた中央領域の両側領域をいう。
【0018】
本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤの好適例においては、前記層状又は板状鉱物の面が前記インナーライナーの厚さ方向と交差する方向に配向している。
【0019】
本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤの他の好適例においては、前記最外コード層のコード被覆ゴムの圧縮弾性率が200kgf/cm2以上である。ここで、上記圧縮弾性率は、以下の方法に従って算出した値である。即ち、直径dが14mm、高さhが28mmの円柱状の空洞部をもつ金属製、例えばスチール製の治具の空洞部にゴム試験片を隙間無く充填し、この治具を圧縮試験機にセットし、ゴム試験片の上下面に対し速度0.6mm/分で荷重Wを負荷させ、このときのゴム試験片の変位量をレーザー変位計で測定し、荷重Wと変位との関係から圧縮弾性率を算出する。
【0020】
本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤのインナーライナーにおいては、前記ゴム成分がブチル系ゴム40〜100質量%とジエン系ゴム60質量%以下とからなり、該ゴム成分100質量部に対する前記層状又は板状鉱物の配合量A(質量部)と、前記インナーライナーの厚さD(mm)とが、下記式(I):
1 < A×D < 200 ・・・ (I)
の関係を満たすのが好ましい。ここで、前記ブチル系ゴムは、ハロゲン化ブチルゴムを含むのが好ましい。また、該ハロゲン化ブチルゴムが臭素化ブチルゴム及び塩素化ブチルゴムからなる群から選択される少なくとも一種のブチル系ゴムであるのが更に好ましい。
【0021】
本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤのインナーライナーにおいては、前記ゴム成分がジエン系ゴム60〜100質量%を含有するのも好ましい。この場合、本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤは、航空機用タイヤや極低温条件で使用されるトラック・バス用タイヤとして好適である。
【0022】
また、前記層状又は板状鉱物としては、カオリン質クレイ、セリサイト質クレイ、並びにシリカ及びアルミナの含水複合体が好ましい。
【0023】
上記インナーライナーに適用するゴム組成物は、更に、前記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比面積(N2SA)が26〜170m2/gのカーボンブラック0.1〜40質量部と、軟化剤1質量部以上とを配合してなるものが好ましい。ここで、前記層状又は板状鉱物の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して20〜160質量部であり、該層状又は板状鉱物と前記カーボンブラックとの総配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して60〜220質量部であるゴム組成物が更に好ましい。また、前記ゴム成分100質量部に対して前記層状又は板状鉱物10〜50質量部と前記カーボンブラック10〜60質量部とを配合してなり、前記ゴム成分がブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムから選ばれる少なくとも一種のブチル系ゴムからなるゴム組成物も好ましく、前記層状又は板状鉱物及び前記カーボンブラックの総配合量が前記ゴム成分100質量部に対して50質量部以上であるのが更に層好ましい。なお、前記カーボンブラックは、ヨウ素吸着量が40mg/g以下で且つジブチルフタレート吸油量が100mL/100g以下であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ベルトを3層のコード層で構成してタイヤを軽量化すると共に、最外コード層の幅を周方向ショルダ溝の溝縁のうちタイヤ赤道面に最も近い溝縁相互間の幅以下としてタイヤを更に軽量化した上で、インナーライナーに層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物を適用することで、タイヤ重量を軽量に維持したまま、インナーライナーの空気(酸素)透過速度を低下させて、ベルトのコード被覆ゴムの耐久性を大幅に向上させ、その結果として、良路走行でのベルトの耐カット性を大幅に向上させた重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤを図を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に従う重荷重用空気入りラジアルタイヤのトレッド部の一部を取り出し、トレッドゴムの一部を切り取り、ベルト及びカーカスを露出させた斜視図であり、図2は、図1に示すタイヤのトレッド部の一部の正面展開を示し、トレッドゴムを切り取りステップダウンカットを施したベルト展開図と、トレッドパターン展開図とを合わせ示す説明図である。また、図3は、本発明に従うタイヤのインナーライナーの部分断面図である。
【0026】
図1において、重荷重用空気入りラジアルタイヤ1は、一対のビード部(図示省略)及び一対のサイドウォール部(図示省略)と、両サイドウォール部に連なるトレッド部2とを有し、トレッド部2は踏面側にトレッドゴム3を備える。また、タイヤ1は、一対のビード部内に埋設したビードコア(図示省略)相互間に渡り一対のビード部、一対のサイドウォール部及びトレッド部2を補強する1プライ以上(図示例では、1プライ)のゴム被覆ラジアル配列コードからなるカーカス4と、カーカス4の内側に配置したインナーライナー5と、カーカス4の外周でトレッド部2を強化するベルト6とを備える。
【0027】
図1及び図2において、ベルト6は、3層のゴム被覆スチールコード層7,8,9からなり、カーカス4に最も近い最内コード層7及び中間コード層8の各コード7a,8aをトレッド部2の円周を含む平面P(図示例では、タイヤ赤道面)を挟み互いに交差する配列とし、最内コード層7と中間コード層8とがコード交差層10を形成する。最内コード層7のコード7aと中間コード層8のコード8aとは、平面Pに対し10〜25°の範囲内、好ましくは15〜22°の範囲内の傾斜配列とする。コード7aの平面Pに対する傾斜角度δの測定方向を矢印で示し、コード8aの平面Pに対する傾斜角度αの測定方向を矢印で示す。なお、図1及び図2に示す平面Pはタイヤ赤道面上に存在するが、平面Pはトレッド部2のいずれに位置してもよい。
【0028】
図2の下方図において、最外コード層9のコード9aは、中間コード層8のコード8aの平面Pからの傾斜角度αを測る向き(図の矢印の向き)と同じ向き(図の矢印の向き)に測って、平面Pに対し45〜115°の範囲内、好ましくは50〜100°の範囲内の傾斜角度βを有するものとし、最外コード層9のコード9aの被覆ゴム9bは200kgf/cm2以上の圧縮弾性率を有するのが好ましい。
【0029】
本発明のタイヤのトレッド部2は、少なくとも両側領域Rsに1本以上の周方向ショルダ溝を有し(図示例では、1本の周方向に直状に延びる周方向ショルダ溝11を有する)、また、図示例のトレッド部2は、中央領域Rcに、タイヤ赤道面Pを挟む両側に直状の周方向中央溝12を備える。なお、図2に示すトレッド部2の展開図における、トレッド部踏面3tの端縁TE間の展開幅wで言えば、中央領域Rcは、タイヤ赤道面Pを挟む両側の(1/4)×w幅の領域であり、両側領域Rsは、中央領域Rc両側の(1/4)×w幅の領域である。
【0030】
図2の上方に示すトレッドパターンの展開図において、このタイヤのトレッドパターンは、互いに隣り合う周方向中央溝12,12相互間にわたり各溝12に開口する多数本の横方向溝13と、周方向ショルダ溝11と周方向中央溝12との相互間にわたり溝11,12にそれぞれ開口する多数本の横方向溝14,15とを有し、これら多数本の横方向溝13,14,15と、周方向溝11,12とにより区画形成した各ブロック16,17,18のブロック列をトレッド部2の中央領域Rcに備え、トレッド部の両側領域Rsには周方向ショルダ溝11とこれに開口する多数本の横方向溝19とにより区画形成したブロック20のブロック列を備える。
【0031】
図2に示す例は、トレッド部2の全領域がブロックで形成されたブロックパターンの例であるが、他の例では、中央領域Rcをブロック以外のリブ等の陸部とし、トレッド部2の両側領域Rsも同様のリブとしてもよく、即ち、トレッド部2を総てリブパターンとしたり、リブとブロックとの組み合わせパターンとすることもできる。なお、図示例の周方向溝11,12は直状溝であるが、ジグザグ状溝であってもよい。
【0032】
本発明のタイヤにおいて、最外コード層9は、トレッド部2の両側領域Rsで対をなす周方向ショルダ溝のうちタイヤ赤道面Pに最も近い周方向ショルダ溝、ここでは周方向ショルダ溝11の両溝縁のなかでタイヤ赤道面Pに最も近い溝縁相互間の幅以下の幅、即ち、図2の展開図では展開幅Lg1以下の幅を有するものとする。換言すれば、最外コード層の幅端9Eを、タイヤ赤道面Pに最も近い周方向ショルダ溝11の両溝縁のうち、赤道面Pに最も近い溝縁位置と赤道面Pとの間に位置させる。
【0033】
また、本発明のタイヤにおいて、最外コード層9は、タイヤ赤道面P両側の中央領域Rcの周方向中央溝12の溝縁のうち、タイヤ赤道面Pから最も離れた溝縁相互間の幅以上の幅、即ち、図2の展開図では展開幅Lg2以上の幅を有するのが好ましい。換言すれば、最外コード層の幅端9Eを、赤道面Pに最も近い周方向ショルダ溝11の溝縁と、タイヤ赤道面Pから最も離れた周方向中央溝12の溝縁との間に位置させるのが好ましい。
【0034】
本発明のタイヤにおいては、最内コード層7のコード7aと、中間コード層8のコード8aとを、平面Pに対し10〜25°の範囲内、好ましくは15〜22°の範囲内の傾斜配列とする一方、最外コード層9のコード9aを、中間コード層8のコード8aの平面Pからの傾斜角度αを測る向きと同じ向きに測って平面Pに対し45〜115°の範囲内、好ましくは50〜100°の範囲内の傾斜角度βとすることにより、図2の下方に矢印Fxで示すような、タイヤ1に内圧を充填した際にベルト6に生じるトレッド部2の周方向張力Fxを、平面Pに対し傾斜角度が小さなコード交差層10を形成する最内コード層7及び中間コード層8のコード7a及びコード8aが主として負担し、最外コード層9が負担すべき張力を大幅に減少させることができる。そのため、荷重負荷の下で転動するタイヤ1のトレッド部2が鋭利な角縁を有する小石や金属片等の異物に乗り上げ、角縁がトレッドゴム3を貫通してベルト6に達した場合でも、最外コード層9のコード9aが切れ難くなり、耐カット性に基づくタイヤ1の耐久性が向上する。
【0035】
また、図2において、ベルト6は、タイヤ1に内圧を充填した際にベルト6に生じる張力Fxにより、タイヤ1の放射方向に張り出す傾向を有し、その結果、ベルト6が全体として幅方向内側に収縮し、ベルト6の各層7,8,9のコード7a,8a,9aが、それぞれ傾斜角度δ,α,βが減少する方向へ変化しようとする。しかしながら、このベルト6の構成下では、最外コード層9のコード9aは、傾斜角度βが最内コード層7及び中間コード層8のそれぞれのコード7a,8aの傾斜角度に比べ著しく大きいため、傾斜角度の減少度合いがコード7a,8aに比べて極めて少なく、その結果、最外コード層9は、幅方向へ収縮し難い。このため、最外コード層9のコード9aがコード交差層10に対し、所謂、つっかえ棒のような作用を及ぼし、最外コード層9がコード交差層10の幅方向収縮を抑制するように働く。幅方向収縮が抑制されたコード交差層10は、トレッド部2の周方向剛性が増大し、その結果、3層構成のベルト6を備えるタイヤ1でもコーナリングパワー(以下CPという)が向上して、従来の4層構成のベルトを備えるタイヤと同等以上のコーナリング性能を発揮することができる。更に、コード交差層10の周方向剛性増大は、タイヤ1への内圧充填時のタイヤの径成長を抑制し、その結果、ベルト6の端部、特にコード交差層10端部の耐セパレーション性の向上に大きく貢献する。
【0036】
なお、最内コード層7及び中間コード層8の各コード7a,8aの平面P,P1,P2に対する傾斜角度α,δは、コード7a,8aに均等に張力を負担させる観点から、互いにほぼ等しくするのが好ましい。なお、コード7a,8aの傾斜角度α,δを10〜25°の範囲内としたのは、傾斜角度α,δが10°未満では、最内コード層7と中間コード層8との端部に生じる層間せん断ひずみが大きくなり過ぎ、該端部にセパレーション故障が発生し易くなる一方、傾斜角度α,δが25°を超えると、内圧充填タイヤ1においてベルト6に作用する張力Fxにより、最外コード層9の幅方向収縮抑制効果が十分に発揮されなくなり、コード交差層10の周方向剛性が著しく低下して、CP特性が劣化すると共に、タイヤの径成長を十分に抑制することができなくなるからである。更に、最外コード層9のコード9aの傾斜角度βを45〜115°の範囲内としたのは、傾斜角度βが45°未満でも、傾斜角度βが115°を超えても、従来タイヤよりCP特性が低下するためである。
【0037】
また、小石や金属片等の異物が疎らに存在する良路をタイヤが荷重負荷の下で転動するとき、これら異物によるトレッド部のカット受傷位置を多数本のタイヤにつき測定集計し、統計的に解析したところ、良路が舗装路面であるか非舗装路面であるかの別なく、カット受傷位置が、タイヤ赤道面Pを中央軸として中央領域Rcにほぼ正規分布状に集中していることが分った。そのため、良路走行に供する機会が殆ど総てであるタイヤ1は、少なくとも中央領域Rcに最外コード層9を備えていれば、異物によるベルト6のカット損傷に起因する故障が生じるおそれが少ない。
【0038】
従って、図1及び図2に示すように、トレッド部2の両側領域Rsに周方向ショルダ溝11を備えているタイヤ1の場合は、最外コード層9の幅を、周方向ショルダ溝11の両溝縁のなかでタイヤ赤道面Pに最も近い溝縁相互間の幅以下とすることにより、カット受傷機会をより一層少なくすることができ、実際上、カット受傷に基づくベルト故障が生じることがない。また、最外コード層9の幅を上記のように、従来の最外コード層の幅より一層狭くすることでタイヤの一層の軽量化を達成することができる。
【0039】
また、図1及び図2に示すように、トレッド部2の中央領域Rcに周方向中央溝12を備えているタイヤ1の場合は、最外コード層9の幅を、周方向中央溝12の溝縁のうち、タイヤ赤道面Pから最も離れた溝縁相互間の幅以上の幅とすることにより、カット受傷機会が多い中央領域Rcの周方向中央溝12の溝底に受けるカットに対し、中間コード層8や最内コード層7のカット保護層の役を最外コード層9に担わせることができ、ベルト6の十分な耐カット性を保証することができる。なぜなら、たとえ異物の角縁が、周方向中央溝12の溝底下の薄いトレッドゴム3を貫通してベルト6に達したとしても、そこには必ず最外コード層9の多数本のコード9aが存在し、該コード9aが以下に述べるようにカット入力に対し十分な抵抗力を示すからである。
【0040】
異物の角縁が周方向中央溝12の溝底に沿って食い込むとき、異物の角縁の先に最外コード層9の多数本のコード9aが存在するのは、周方向中央溝12が直状溝であれば、溝底と最外コード層9のコード9aとがなす角度は45°以上であるからであり、この点で周方向中央溝12がジグザグ状溝であれば、溝の平面P1,P2に対する傾斜角度と最外コード層9のコード9aの傾斜角度差は、傾斜角度βを測る向きと同じ向きに測って20°以上とするのが好ましい。なぜなら、傾斜角度差が20°未満では、異物の角縁の進入を受け止めるコード9a本数が少なくなり過ぎるからである。
【0041】
なお、トレッド部2の中央領域Rcに周方向中央溝12のような溝を備えていないタイヤ1の場合は、最外コード層9の幅を、中間コード層8の幅の25〜70%の範囲内とするのが好ましい。なぜなら、中間コード層8は、最内コード層7と協働してトレッド部2が備えるべき剛性をタイヤ1に付与する必要があり、そのため中間コード層8は、トレッド部2の踏面3t(図1参照)の幅に近い幅をもつことが必要であり、そのため、最外コード層9の幅が中間コード層8の幅の25%未満では、中央領域Rcのカットに対し抵抗し得ない領域が広くなり過ぎ、70%を超えては軽量化の意味がなくなるからである。
【0042】
いずれにしても異物の鋭利な角縁のカット入力を受け止める最外コード層9のコード9aは、張力負担率が僅かで、カットに対抗する十分な余力を有しているため、異物の角縁の進入は最外コード層9で止めることができ、中間コード層8のコード8aの切断を阻止することができる。このため、最外コード層9の幅は、周方向中央溝12の最外側溝縁を超える幅を有するのが好ましい。なお、周方向中央溝12がジグザグ状溝の場合は、最外コード層9は山形をなす溝の最外側位置の溝縁頂点をタイヤ1の外側方向へ超えて延びる幅を有するものとするのが好ましい。
【0043】
更に、本発明のタイヤにおいては、最外コード層9のコード被覆ゴム9bの圧縮弾性率が200kgf/cm2以上であるのが好ましい。比較的大きな石や金属片等の異物が疎らに存在する路面上をタイヤ1が転動し、これら大きな異物に乗り上げたとき、ベルト6の最外コード層9は、大きな曲率での曲げ変形が強いられる結果、局所的に大きな圧縮力が作用し、最外コード層9のコード9aに座屈が生じるところ、最外コード層9のコード9aの被覆ゴム9bに圧縮弾性率が200kgf/cm2以上のゴムを適用することにより、被覆ゴム9bの圧縮抵抗力を増大させ、最外コード層9のコード9aの座屈変形を阻止することが可能となる。その結果、タイヤ1が比較的大きな異物にしばしば乗り上げても、最外コード層9のコード9aの座屈疲労によるコード切れの発生を防止することができる。なお、被覆ゴム9bの圧縮弾性率が200kgf/cm2未満では、この効果が不十分でである。
【0044】
また、本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいては、上記インナーライナー5に、ゴム成分に対してアスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合してなるゴム組成物を適用する。図3に示すように、インナーライナー5中に分散した層状又は板状鉱物の粒子21は、その面がインナーライナー5の厚さ方向と交差する向き(即ち、インナーライナー5の面と平行もしくは平行に近い向き)に配向している。なお、図3中、矢印は、タイヤ内部からラジアルカーカス4への空気の流れ(エア漏れ)である。ここで、インナーライナー5を通過する空気は、層状又は板状鉱物粒子21の存在によって迂回を強いられインナーライナー5を通過するまでの距離が長くなる。そのため、本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤのインナーライナー5においては、タイヤ内部からの空気の通過が妨げられ、空気透過性が低減されている。しかしながら、従来インナーライナーに使用されてきたクレイ等の高アスペクト比の充填剤を用いた場合、該充填剤をゴム組成物の混練時に均一に分散させることが難しく、凝集塊が生じてしまい、該凝集塊が加硫ゴム組成物中で破壊核となって、インナーライナー5の耐屈曲性や低温耐久性の低下を招き、タイヤ全体の耐久性を低下させるという問題がある。そのため、本発明においては、3以上30未満という特定のアスペクト比を有する板状又は層状鉱物を用いることにより、耐屈曲性や低温耐久性を損なうことなく、インナーライナー5の空気透過性を低減する。このように、本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤのインナーライナー5は、そのゲージを厚くせずとも、空気透過性が十分に低減されているため、タイヤ重量を増加させること無く、ベルトに到達する酸素量を低減し、ベルトの被覆ゴム中の酸素濃度を低減して、該被覆ゴムの酸素劣化を抑制することができる。その結果、良路走行でのベルトの耐カット性が向上して、タイヤの長寿命化を達成することができる。
【0045】
上記インナーライナー用ゴム組成物のゴム成分としては、ブチル系ゴム及びジエン系ゴムを用いることができる。なお、ブチル系ゴムを用いる場合は、ハロゲン化ブチルゴムを含むものが好ましい。該ハロゲン化ブチルゴムには、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム及びその変性ゴム等が含まれる。ここで、塩素化ブチルゴムとしては、エンジェイケミカル社製の商標「Enjay Butyl HT10-66」等が挙げられ、臭素化ブチルゴムとしては、エクソン社製の商標「ブロモブチル2255」等が挙げられる。また、変性ゴムとしては、イソモノオレフィンとパラメチルスチレンとの共重合体の塩素化又は臭素化変性共重合体を用いることができ、具体的には、エクソン社製の商標「Exxpro50」等が挙げられる。また、上記ハロゲン化ブチルゴムとブレンドされるジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン合成ゴム(IR)、シス-1,4-ポリブタジエンゴム(BR)、シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエンゴム(1,2BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられ、これらジエン系ゴムは、一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。上記ゴム成分は、耐酸素(空気)透過性の観点から、ブチル系ゴム40〜100質量%とジエン系ゴム60質量%以下とからなるのが好ましい。但し、航空機用タイヤや極低温条件で使用されるトラック・バス用タイヤの場合は、ゴム成分がジエン系ゴムを60〜100質量%以上含むのが好ましく、特に天然ゴム主体のゴム成分が好ましい。
【0046】
上記インナーライナー用ゴム組成物に用いられる層状又は板状鉱物は、天然品、合成品のいずれもよく、アスペクト比が3以上30未満である限り特に制限はなく、例えば、カオリン質クレイ及びセリサイト質クレイ等のクレイ、マイカ、長石、シリカ及びアルミナの含水複合体等が挙げられる。これらの中でも、カオリン質クレイ、セリサイト質クレイ及びマイカが好ましく、特にカオリン質クレイが好ましい。これら層状又は板状鉱物は、粒径が0.2〜2μmであるのが好ましく、また、アスペクト比が5以上30未満であるのが好ましく、8〜20であるのが更に好ましい。アスペクト比を3以上とすることにより、耐酸素(空気)透過性の改質効果が充分に得られ、30未満とすることにより、ゴム組成物の加工性の悪化を抑制することができる。ここで、アスペクト比は、層状又は板状鉱物を電子顕微鏡で観察し、任意の粒子50個について長径と短径とを測定し、その平均長径aと平均短径bとからa/bとして求められる。なお、上記層状又は板状鉱物の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して20〜160質量部の範囲が好ましい。
【0047】
また、上記ゴム成分100質量部に対する上記層状又は板状鉱物の配合量A(質量部)と、上記インナーライナーの厚さD(mm)とは、絶対値として、下記式(I):
1 < A×D < 200 ・・・ (I)
の関係を満たすのが好ましい。この場合、耐酸素(空気)透過性を十分に改良することができる。
【0048】
上記インナーライナー用ゴム組成物には、充填剤としてカーボンブラックを用いることができる。該カーボンブラックの配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して0〜60質量部の範囲が好ましく、0.1〜40質量部の範囲が更に好ましく、5〜35質量部の範囲が特に好ましい。また、上記層状又は板状鉱物とカーボンブラックとの総配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して50質量部以上が好ましく、耐空気透過性、耐屈曲疲労性及び加工性の観点から、60〜220質量部の範囲が更に好ましい。上記カーボンブラックの種類は、特に限定されず、従来ゴム組成物の補強用充填剤として慣用されているものの中から適宜選択して使用することができ、例えば、FEF,SRF,HAF,ISAF,SAFグレードのカーボンブラックを用いることができる。これらカーボンブラックの中でも、窒素吸着比面積(N2SA)が26〜170m2/gのものが好ましい。なお、N2SAは、ASTM D3037-88に準拠して測定される。また、上記カーボンブラックは、ヨウ素吸着量(IA)が40mg/g以下であるのが好ましく、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が100mL/100g以下であるのが好ましい。なお、ヨウ素吸着量は、ASTM D1510-95、ジブチルフタレート吸油量はASTM D2414-97に準拠して測定される。
【0049】
なお、上記インナーライナー用ゴム組成物としては、上記ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムから選ばれる少なくとも一種のブチル系ゴムからなるゴム成分100質量部に対して、上記層状又は板状鉱物10〜50質量部と、上記カーボンブラック10〜60質量部とを配合してなるゴム組成物も好ましく、ここで、層状又は板状鉱物及びカーボンブラックの総配合量が50質量部以上であるものが更に好ましい。
【0050】
また、上記インナーライナー用ゴム組成物には、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマオイル、ブローンアスファルト等の軟化剤を配合してもよい。該軟化剤の配合量は、特に限定されるものではないが、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上の範囲が好ましく、3〜20質量部の範囲が更に好ましい。ここで、ナフテン系オイルは、環分析(m-d-M添)による%CNが30以上のものであり、パラフィン系オイルは、%CPが60以上のものである。
【0051】
上記インナーライナー用ゴム組成物には、上記ゴム成分、層状又は板状鉱物、カーボンブラック、軟化剤の他、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば、シランカップリング剤、ジメチルステアリルアミン、トリエタノールアミン等の分散改良剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤は、市販品を好適に使用することができる。
【0052】
上記インナーライナー用ゴム組成物は、例えば、ゴム成分に、層状又は板状鉱物と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。なお、混練りは、1ステージで行ってもよいし、2ステージ以上に分けて行なってもよく、充填剤の総配合量等に応じて、適宜選択できる。
【0053】
本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤは、上記三層構造のベルト6及びインナーライナー5を用いて通常の方法によって製造される。上記インナーライナーを用いることにより、インナーライナーのゲージを厚くすること無く、空気(酸素)透過性を低減して、ベルト中の酸素濃度を低減して、耐カット性等のベルトの耐久性を改善することができる。なお、インナーライナー5の厚さDは、タイヤサイズに応じ適宜変更することができ、通常0.2〜2.5mmの範囲であるが、トラック・バス用タイヤでは0.8〜2.5mmの範囲が好ましく、航空機用タイヤでは1〜2mmの範囲が好ましい。なお、本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0054】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
塩素化ブチルゴム100phr、カーボンブラック(GPF)70phr、偏平クレイ0phr、ステアリン酸3phr、硫黄1phr、加硫促進剤(DM, ジベンゾチアジルジスルフィド)2phr、オイル15phrからなるゴム組成物を調製し、該ゴム組成物からインナーライナーAを作製し、また、塩素化ブチルゴム100phr、カーボンブラック(GPF)30phr、偏平クレイ40phr、ステアリン酸3phr、硫黄1phr、加硫促進剤(DM)2phr、オイル15phrからなるゴム組成物を調製し、該ゴム組成物からインナーライナーBを作製し、下記の方法で空気透過性を測定した。なお、上記塩素化ブチルゴムは、エンジェイケミカル社製, 商標「Enjay Butyl HT10−66」であり、上記カーボンブラック(GPF)は、N2SAが35m2/gで、ヨウ素吸着量が36mg/gで、DBP吸油量が90mL/100gであり、上記偏平クレイは、J. M. Huber社製, 商標「POLYFIL DL」, アスペクト比(L/D)=10である。
【0056】
(1)空気透過性
JIS K7126-1987「プラスチックスフィルム及びシートの気体透過度試験方法」のA法(差圧式)に準拠して各インナーライナーの空気透過係数を測定し、比較例1のインナーライナーの空気透過係数を100として指数表示した。指数値が小さい程、空気透過性が低く、良好であることを示す。
【0057】
上記インナーライナーA又はBを用い、図1及び図2に示す構造で、トレッド部2が一対の周方向ショルダ溝11と、一対の周方向中央溝12とを有し、図2に示す展開幅Lg1に相当する周方向ショルダ溝11の最内側溝縁相互間の幅が100mmで、図2に示す展開幅Lg2に相当する周方向中央溝12の最外側溝縁相互間の幅が35mmで、サイズが11R22.5のトラック及びバス用ラジアルタイヤを試作した。表中、コード傾斜角度は、カーカス4側から順に符号1B、2B、3B、4Bを付したコード層のコード傾斜角度として示した。なお、傾斜角度の数値の前に付した符号Rはコードが右上がり配列を表し、符号Lはコードが左上がり配列を表す。各コード層のコードはいずれも1×0.34+6×0.34のスチールコードであり、コード打込数は18.0本/50mmである。また、カーカス4は1プライであり、該プライは(3+9+15)×0.175のスチールコードのラジアル配列をゴム被覆したものである。その他の構成は慣例に従うものとした。次に、供試タイヤを2ヶ月間酸素劣化させた後、下記の方法で、中間コード層端部の酸素濃度及び耐久性を評価した。比較例1のタイヤ重量を100として指数表示した、各タイヤの重量指数(指数値が小さい程、軽量であることを示す)と共に、結果を表1に示す。
【0058】
(2)中間コード層端部の酸素濃度
中間コード層端部のコード間ゴムを採取し、ゴム中のO2重量%を測定することで評価し、比較例1のO2重量%を100として指数表示した。
【0059】
(3)耐久性
サイズ11R22.5のトラック・バス用ラジアルプライタイヤを、充填内圧7.5kgf/cm2、負荷荷重2750kgf、走行距離1000kmの条件下で走行させ、比較例1を100として指数表示した。
【0060】
【表1】

【0061】
比較例2〜5のタイヤと比較例6〜9のタイヤとの比較から明らかなように、インナーライナーのゲージを厚くして空気透過性を下げた場合、耐久性の改善幅が小さかった。これに対して、比較例2〜5のタイヤと実施例1〜4のタイヤとの比較から明らかなように、インナーライナーに偏平クレイを充填して空気透過性を下げた場合、耐久性の改善幅が大きかった。但し、比較例10の結果から明らかなように、ベルトの構造を3層構造として、最内コード層と中間コード層とでコード交差層を形成し、各層の傾斜角度を本発明で規定する範囲にしなければ、十分な耐久性の改善効果は得られない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤの一例のトレッド部の一部の斜視図である。
【図2】図1に示すタイヤのトレッド部の一部の正面を展開した説明図である。
【図3】本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤのインナーライナーの一例の部分断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 重荷重用空気入りラジアルタイヤ
2 トレッド部
3 トレッドゴム
3t トレッド部踏面
4 カーカス
5 インナーライナー
6 ベルト
7 最内コード層
7a 最内コード層のコード
8 中間コード層
8a 中間コード層のコード
9 最外コード層
9a 最外コード層のコード
9b 最外コード層のコード被覆ゴム
9E 最外コード層の幅端
10 コード交差層
11 周方向ショルダ溝
12 周方向中央溝
13,14,15,19 横方向溝
16,17,18,20 ブロック
21 層状又は板状鉱物の粒子
P,P1,P2 トレッド部円周を含む平面
α 中間コード層のコード傾斜角度
β 最外コード層のコード傾斜角度
δ 最内コード層のコード傾斜角度
Lg1 周方向ショルダ溝の最内側溝縁間展開幅
Lg2 周方向中央溝の最外側溝縁間展開幅
Lb 最外コード層の展開幅
Rc トレッド部中央領域
Rs トレッド部両側領域
w トレッド部展開幅
TE トレッド部踏面端縁
Fx 張力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部内にそれぞれ埋設したビードコア相互間にわたり一対のサイドウォール部とトレッド部とを補強する1プライ以上のゴム被覆ラジアル配列コードになるカーカスと、該カーカスの内側に配置したインナーライナーと、前記カーカスの外周でトレッド部を強化するベルトとを備え、該ベルトが3層のゴム被覆コード層を有し、これらコード層のうち最内コード層と中間コード層とはコード交差層を形成してなり、トレッド部が少なくとも両側領域で互いに対をなす周方向ショルダ溝を備える重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記最内コード層及び中間コード層の各コードが、トレッド部円周を含む平面に対し10〜25°の範囲内の傾斜角度を有し、前記最外コード層のコードが、中間コード層のコードの前記平面からの傾斜角度を測る向きと同じ向きに測って前記平面に対し45〜115°の範囲内の傾斜角度を有し、前記最外コード層が、前記互いに対をなす周方向ショルダ溝の溝縁のうち、タイヤ赤道面に最も近い溝縁相互間の幅以下の幅を有し、
前記インナーライナーに、ゴム成分に対してアスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合してなるゴム組成物を適用したことを特徴とする重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
前記層状又は板状鉱物の面が前記インナーライナーの厚さ方向と交差する方向に配向していることを特徴とする請求項1に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
前記最外コード層のコード被覆ゴムが200kgf/cm2以上の圧縮弾性率を有することを特徴とする請求項1に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記ゴム成分がブチル系ゴム40〜100質量%とジエン系ゴム60質量%以下とからなり、該ゴム成分100質量部に対する前記層状又は板状鉱物の配合量A(質量部)と、前記インナーライナーの厚さD(mm)とが、下記式(I):
1 < A×D < 200 ・・・ (I)
の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項5】
前記ゴム成分がジエン系ゴム60〜100質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項6】
前記ブチル系ゴムがハロゲン化ブチルゴムを含むことを特徴とする請求項4に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項7】
前記層状又は板状鉱物がカオリン質クレイ又はセリサイト質クレイを含むことを特徴とする請求項1、2及び4のいずれかに記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項8】
前記層状又は板状鉱物がシリカ及びアルミナの含水複合体を含むことを特徴とする請求項1、2及び4のいずれかに記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項9】
前記インナーライナーに適用するゴム組成物が、更に、前記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比面積(N2SA)が26〜170m2/gのカーボンブラック0.1〜40質量部と、軟化剤1質量部以上とを配合してなることを特徴とする請求項1に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項10】
前記層状又は板状鉱物の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して20〜160質量部であり、該層状又は板状鉱物と前記カーボンブラックとの総配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して60〜220質量部であることを特徴とする請求項9に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項11】
前記インナーライナーに適用するゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して前記層状又は板状鉱物10〜50質量部と前記カーボンブラック10〜60質量部とを配合してなり、前記ゴム成分がブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムから選ばれる少なくとも一種のブチル系ゴムからなることを特徴とする請求項4又は7に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項12】
前記層状又は板状鉱物及び前記カーボンブラックの総配合量が前記ゴム成分100質量部に対して50質量部以上であることを特徴とする請求項11に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項13】
前記カーボンブラックは、ヨウ素吸着量が40mg/g以下で且つジブチルフタレート吸油量が100mL/100g以下であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項14】
前記ハロゲン化ブチルゴムが臭素化ブチルゴム及び塩素化ブチルゴムからなる群から選択される少なくとも一種のブチル系ゴムであることを特徴とする請求項6に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−96152(P2006−96152A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284077(P2004−284077)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】