説明

重複した測定を用いた歪みに対して免疫性の位置追跡

【課題】物体の位置を追跡する方法およびシステムを提供する。
【解決手段】物体の位置を追跡する方法は、2つ以上の磁界発生器によって生み出された磁界の磁界強度を測定するために物体に関連する磁界センサーを用いる工程を含み、磁界強度のうち少なくとも一つの測定値は、歪みを受けている。物体の回転不変の配置座標は、測定された磁界強度に対応して、計算される。物体の補正された配置座標は、測定された磁界強度の歪みに対応して、補正された配置座標に対する測定された磁界強度の各々の相対的な寄与を調整するように、回転不変の配置座標に座標補正関数を適用することによって、求められる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の技術分野〕
本発明は、大まかに言って、磁気的位置追跡システムに関し、より詳しくは、磁界を歪める物体が存在する状態で正確な位置測定を行う方法およびシステムに関する。
【0002】
〔発明の背景〕
当該分野では、医療手技に含まれる物体の座標を追跡するためのさまざまな方法およびシステムが知られている。これらのシステムのいくつかは、磁界測定を用いる。例えば、米国特許第5,391,199号および同第5,443,489号は、その開示内容が参照することによって本明細書に組み込まれるが、体内プローブの座標が一つ以上の磁界トランスデューサー(field transducers)を用いて求められるシステムを記載している。そのようなシステムは、医療用プローブまたはカテーテルに関する配置情報を生み出すために用いられる。コイルなどのセンサーが、プローブ内に置かれていて、外部から加えられた磁界に応答して信号を生み出す。磁界は、既知の外部基準フレームに固定され、相互に離れて配置された、放射器コイル(radiator coils)のような磁界トランスデューサーによって生み出される。
【0003】
磁気的位置追跡に関連する別の方法およびシステムも、例えば、国際公開第96/05768号、米国特許第6,690,963号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、および、同第6,332,089号、ならびに、米国特許出願公開第2002/0065455A1号、同第2003/0120150A1号、および、同第2004/0068178A1号、に記載されていて、これらの刊行物の開示内容は、参照することによって本明細書にすべて組み込まれる。これらの刊行物は、心臓カテーテル、整形外科用インプラント、および、さまざまな医療手技で用いられる医療器具、のような体内の物体の位置を追跡する方法およびシステムを記載している。
【0004】
磁気的位置追跡システムの磁界中に金属製の、常磁性の、または、強磁性の、物体が存在すると、そのシステムの測定が歪められることが多いことが当該分野ではよく知られている。その歪みは、そのシステムの磁界によってそのような物体中に誘起される渦電流によって、ならびに、その他の効果によって、引き起こされることがある。
【0005】
そのような干渉が存在する状態で位置追跡を行うためのさまざまな方法およびシステムが当該分野では記載されてきた。例えば、米国特許第6,147,480号は、その開示内容が参照することによって本明細書に組み込まれるが、追跡される物体中に誘起された信号が、寄生信号成分(parasitic signal components)を引き起こす可能性のあるどのような物品も存在しない状態で最初に検出される、方法を記載している。信号の基準位相(baseline phases)が求められる。寄生磁界を生み出す物品が追跡される物体の近傍に導入されると、寄生成分に起因する、誘起された信号の位相シフトが、検出される。測定された位相シフトは、物体の位置がおそらく不正確であることを示すために用いられる。位相シフトは、寄生信号成分の少なくとも一部を除去するために信号を分析するのにも用いられる。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明の実施の形態は、重複した測定(redundant measurements)を用いて、金属製の、常磁性の、および/または、強磁性の、物体(磁界を歪める物体(field-distorting objects)と総称される)が存在する状態で、磁気的な位置追跡測定を行うための、改善された方法およびシステムを、提供する。
【0007】
本発明のシステムは、追跡される物体の近傍に磁界を生み出す2つ以上の磁界発生器を含む。磁界は、物体に関連する位置センサーによって感知され、物体の位置(配置および方向)座標(position (location and orientation) coordinates)を計算するために用いられる位置信号に変換される。システムは、重複した磁界強度測定を行い、磁界を歪める物体の存在によって引き起こされた測定誤差を減らすために重複した情報を利用する。
【0008】
重複した測定は、異なる磁界発生器によって生み出され、かつ位置センサー内の磁界センサーによって感知される磁界の、磁界強度の測定を含む。本明細書に記載されたある例示的な実施の形態では、9個の磁界発生器、および3個の磁界感知コイルが、27個の異なる磁界強度の測定値を得るために、用いられる。27個の測定値は、追跡される物体の6個の配置座標および方向座標を計算するために用いられ、したがって、多量の重複した情報を含んでいる。
【0009】
いくつかの実施の形態では、回転不変の座標補正関数(rotation-invariant coordinate correcting function)が、測定された磁界強度に適用されて、追跡される物体の、歪み補正された配置座標(distortion-corrected location coordinate)を生み出す。本明細書で以下に示されるように、座標補正関数は、補正された配置座標の歪みレベルを低減するように重複した配置情報を利用する。
【0010】
座標補正関数は、測定された磁界強度の各々に存在する歪みの対応するレベルに応答して、補正された配置座標に対する、測定された磁界強度の相対的な寄与を調整するもの、としてみなされてよい。開示されたクラスタリングプロセスは、異なる配置に対して異なる座標補正関数を定めることによって、座標補正関数の正確さをさらに改善する。
【0011】
いくつかの実施の形態では、追跡される物体の方向座標は、配置の計算に続いて、計算される。別の開示された方法は、歪みが存在する状態での方向の計算の正確さを改善し、位置センサーの磁界センサーの非同心性を補償する。
【0012】
いくつかの実施の形態では、重複した磁界強度の測定が、有意な歪みに寄与する、磁界発生器および/または位置センサーの磁界感知要素、のような一つ以上のシステム要素を特定するために、用いられる。これらのシステム要素に関連する磁界測定値は、位置計算を行うときに、無視される。いくつかの実施の形態では、歪みに寄与する要素は、非作動状態にされてよい。
【0013】
したがって、本発明のある実施の形態に基づけば、物体の位置を追跡する方法が提供され、その方法は、
2つ以上の磁界発生器によって生み出された磁界の、磁界強度を測定するために、物体に関連した磁界センサーを用いる工程であって、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値が歪みを受けている、工程と、
測定された磁界強度に対応して、物体の回転不変の配置座標を計算する工程と、
回転不変の配置座標に座標補正関数を適用することによって物体の補正された配置座標を求める工程であって、測定された磁界強度の歪みに対応して、補正された配置座標に対する、測定された磁界強度の各々の相対的な寄与を調整するようにする、工程と、
を含む。
【0014】
いくつかの実施の形態では、その方法は、物体を患者の器官内に挿入する工程を含み、物体の補正された配置座標を求める工程は、器官内での物体の位置を追跡する工程を含む。
【0015】
ある実施の形態では、歪みは、磁界のうち少なくともいくつかにさらされた、磁界を歪める物体によって引き起こされ、物体は、金属材料と、常磁性材料と、強磁性材料と、からなる群から選択された、少なくとも一つの材料を含む。
【0016】
ある開示された実施の形態では、その方法は、2つ以上の磁界発生器に対して、対応する既知の座標で磁界の較正測定を実行する工程と、較正測定に対応して座標補正関数を導く工程と、を含む。別の実施の形態では、歪みは、移動可能な、磁界を歪める物体によって引き起こされ、較正測定を実行する工程は、磁界を歪める物体の異なる配置で測定を実行する工程を含む。それに加えて、または、それに代わって、座標補正関数を導く工程は、既知の座標に対する較正測定の依存性に適合プロセスを適用する工程を含む。
【0017】
さらに別の実施の形態では、座標補正関数を適用する工程は、回転不変の配置座標の少なくともいくつかのうちのべき指数(exponents)を含む係数を有する多項式関数を適用する工程を含む。
【0018】
さらに別の実施の形態では、座標補正関数を適用する工程は、測定された磁界強度に対応して歪みに寄与する要素を特定する工程と、歪みに寄与する要素に関連する、測定された磁界強度を無視するように、座標補正関数を生み出す工程と、を含む。
【0019】
いくつかの実施の形態では、磁界センサーは、一つ以上の磁界感知要素を含み、歪みに寄与する要素を特定する工程は、磁界感知要素および磁界発生器のうち一つ以上が歪みに寄与していることを判定する工程を含む。
【0020】
ある実施の形態では、その方法は、物体の角度方向座標(angular orientation coordinates)を計算する工程を含む。
【0021】
別の実施の形態では、磁界センサーは、2つ以上の磁界発生器に関連する作業範囲(working volume)内で使用され、補正された配置座標を求める工程は、
作業範囲を2つ以上のクラスターに分割する工程と、
2つ以上のクラスターのそれぞれに対して対応する2つ以上のクラスター座標補正関数を定める工程と、
回転不変の配置座標が含まれるクラスターに対応して、回転不変の配置座標の各々にクラスター座標補正関数のうちの一つを適用する工程と、
を含む。
【0022】
クラスター座標補正関数を適用する工程は、隣接するクラスター間の移行部を滑らかにするように、重み関数(weighting function)を適用する工程を含んでいることもある。
【0023】
さらに別の実施の形態では、その方法は、非同心の配置を有する2つ以上の磁界センサーを用いて磁界強度を測定する工程と、補正された配置座標での非同心の配置によって引き起こされた不正確さを補償する工程と、を含む。
【0024】
本発明のある実施の形態に基づけば、物体の位置を追跡する方法がさらに提供され、その方法は、
重複した配置情報を提供するように、2つ以上の磁界発生器によって生み出された磁界の、磁界強度の測定を実行するために、物体に関連する磁界センサーを用いる工程であって、磁界強度の測定値のうち少なくともいくつかは、歪みを受けている、工程と、
重複した配置情報を利用する座標補正関数を測定値に適用することによって2つ以上の磁界発生器に対する物体の配置座標を求める工程であって、配置座標への歪みの影響を低減するようにする、工程と、
を含む。
【0025】
本発明の実施の形態に基づけば、物体の位置を追跡する方法も提供され、その方法は、
2つ以上の磁界発生器によって生み出された磁界の、磁界強度を測定するために、物体に関連する一つ以上の磁界感知要素を含む磁界センサーを用いる工程であって、磁界強度のうち少なくとも一つの測定値は、歪みを受けている、工程と、
測定された磁界強度に対応して、少なくとも一つの、歪みに寄与するシステム要素を特定する工程であって、このシステム要素は、一つ以上の磁界感知要素と、2つ以上の磁界発生器と、からなる群から選択される、工程と、
歪みに寄与するシステム要素に関連する磁界の測定値を無視しながら、測定された磁界強度に対応して、2つ以上の磁界発生器に対する物体の位置を求める工程と、
を含む。
【0026】
ある実施の形態では、この方法は、患者の器官内に物体を挿入する工程を含み、物体の位置を求める工程は、器官内での物体の位置を追跡する工程を含む。別の実施の形態では、2つ以上の磁界発生器は、物体に関連していて、磁界センサーは、器官の外側に位置する。さらに別の実施の形態では、歪みに寄与するシステム要素を特定する工程は、歪みの特性方向と、歪みに寄与するシステム要素の同一性(identity)と、からなる群から選択された演繹的な表示を受容する工程を含む。
【0027】
さらに別の実施の形態では、歪みに寄与するシステム要素を特定する工程は、歪みに寄与するシステム要素に関連する磁界測定値に歪みが存在することを感知する工程を含む。ある実施の形態では、歪みに寄与するシステム要素は、磁界感知要素のうち一つと磁界発生器のうち一つとの対を含む。別の実施の形態では、歪みに寄与するシステム要素に関連した磁界測定値を無視する工程は、歪みに寄与するシステム要素を非作動状態にする工程を含む。
【0028】
本発明のある実施の形態に基づけば、物体の位置を追跡するシステムがさらに提供され、そのシステムは、
物体の近傍にそれぞれの磁界を生み出すように構成された、2つ以上の磁界発生器と、
磁界の磁界強度を測定するように構成された、物体に関連する磁界センサーであって、磁界強度のうちの少なくとも一つの測定が歪みを受けている、磁界センサーと、
測定された磁界強度に対応して物体の回転不変の配置座標を計算するように、かつ、回転不変の配置座標に座標補正関数を適用することによって物体の補正された配置座標を求めるように構成されたプロセッサであって、測定された磁界強度中の歪みに対応して、補正された配置座標に対する、測定された磁界強度の各々の相対的な寄与を調整するようにする、プロセッサと、
を含む。
【0029】
本発明のある実施の形態に基づけば、物体の位置を追跡するシステムがさらに提供され、そのシステムは、
物体の近傍にそれぞれの磁界を生み出すように構成された、2つ以上の磁界発生器と、
重複した配置情報を提供するように、磁界の磁界強度の測定を実行するように構成された、物体に関連する磁界センサーであって、磁界強度の測定値のうち少なくともいくつかは、歪みを受けている、磁界センサーと、
重複した配置情報を利用する座標補正関数を測定値に適用することによって、2つ以上の磁界発生器に対する物体の配置座標を求めるように構成されたプロセッサであって、配置座標に対する歪みの影響を低減するようにする、プロセッサと、
を含む。
【0030】
本発明のある実施の形態に基づけば、物体の位置を追跡するシステムがさらに提供され、そのシステムは、
物体の近傍にそれぞれの磁界を生み出すように構成された、2つ以上の磁界発生器と、
物体に関連し、一つ以上の磁界感知要素を含む、磁界センサーであって、磁界センサーは、磁界の磁界強度を測定するように構成されていて、磁界強度のうち少なくとも一つの測定値は、歪みを受けている、磁界センサーと、
プロセッサであって、測定された磁界強度に対応して、一つ以上の磁界感知要素と、2つ以上の磁界発生器と、からなる群から選択される、歪みに寄与するシステム要素を特定するように、かつ、歪みに寄与するシステム要素に関連する磁界測定を無視しながら、2つ以上の磁界発生器に対する物体の位置を求めるように、構成されている、プロセッサと、
を含む。
【0031】
本発明のある実施の形態に基づけば、物体の位置を追跡するシステムで用いられるコンピュータソフトウェア製品がさらに提供され、そのコンピュータソフトウェア製品は、コンピュータ可読媒体を含み、その媒体中には、プログラム命令が記憶されていて、その命令は、コンピュータによって読み取られたときに、コンピュータが、物体の近傍に磁界を生み出すように2つ以上の磁界発生器を制御する工程と、物体に関連した磁界センサーによって実行された、磁界の磁界強度の測定値を受容する工程であって、磁界強度のうち少なくとも一つの測定値は、歪みを受けている、工程と、測定された磁界強度に対応して物体の回転不変の配置座標を計算する工程と、回転不変の配置座標に座標補正関数を適用することによって、物体の補正された配置座標を求める工程であって、測定された磁界強度の歪みに対応して、補正された配置座標に対する、測定された磁界強度の各々の相対的な寄与を調整するようにする、工程と、を実行するようにする。
【0032】
本発明のある実施の形態に基づけば、物体の位置を追跡するシステムで用いられるコンピュータソフトウェア製品がさらに提供され、そのコンピュータソフトウェア製品は、コンピュータ可読媒体を含み、その媒体内には、プログラム命令が記憶されていて、そのプログラム命令は、コンピュータによって読み取られたときに、コンピュータが、物体の近傍に磁界を生み出すように、2つ以上の磁界発生器を制御する工程と、物体に関連する磁界センサーによって実行された、磁界の磁界強度の測定値を受容する工程であって、測定値は重複した配置情報を含み、測定値のうち少なくともいくつかは、歪みを受けている、磁界工程と、重複した配置情報を利用する座標補正関数を測定値に適用することによって、2つ以上の磁界発生器に対する物体の配置座標を求める工程であって、配置座標に対する歪みの影響を低減するようにする、工程と、を実行するようにする。
【0033】
本発明のある実施の形態に基づけば、物体の位置を追跡するシステムで用いられるコンピュータソフトウェア製品がさらに提供され、そのコンピュータソフトウェア製品は、コンピュータ可読媒体を含み、その媒体内には、プログラム命令が記憶されていて、プログラム命令は、コンピュータによって読み取られたときに、コンピュータが、物体の近傍に磁界を生み出すように2つ以上の磁界発生器を制御する工程と、磁界センサーによって実行された、磁界の磁界強度の測定値を受容する工程であって、磁界センサーは、物体に関連し、一つ以上の磁界感知要素を含み、磁界強度のうち少なくとも一つの測定値は歪みを受けている、工程と、測定された磁界強度に対応して、歪みに寄与するシステム要素を特定する工程であって、歪みに寄与するシステム要素は、2つ以上の磁界発生器、および一つ以上の磁界感知要素、からなる群から選択される、工程と、歪みに寄与するシステム要素に関連する磁界測定値を無視しながら、2つ以上の磁界発生器に対する物体の位置を求める工程と、を実行するようにする。
【0034】
本発明は、図面と共に参照される本発明の実施の形態の以下の詳細な説明からより十分に理解されるはずである。
【0035】
〔実施の形態の詳細な説明〕
システムの説明
図1は、本発明のある実施の形態に基づく、体内の物体の位置を追跡し操縦するためのシステム20の模式的な絵図である。システム20は、患者の心臓28のような器官内に挿入された心臓カテーテル24のような体内の物体を追跡および操縦する。システム20は、さらに、カテーテル24の位置(すなわち、配置およひ方向)を測定し、追跡し、そして、表示する。いくつかの実施の形態では、カテーテルの位置は、心臓または心臓の一部の3次元モデルと位置合わせされる。心臓に対するカテーテルの位置は、ディスプレイ30上で医者に表示される。医者は、オペレーターコンソール31を用いて、医療手技の間に、カテーテルを操縦し、カテーテルの位置を目視する。
【0036】
システム20は、カテーテルの航行(navigation)および操縦がシステムによって自動的にまたは半自動的に実行され、医者によって手動で行われない、さまざまな心臓内手術および診断手技を実行するために用いられてよい。システム20のカテーテル操縦機能は、例えば、ステレオタクシス・インコーポレイテッド(Stereotaxis, Inc.)(アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス(St. Louis, Missouri))によって製造されたニオーブ(Niobe)(登録商標)磁気航行システムを用いて実現されてよい。このシステムに関する詳細は、www.stereotaxis.com.から入手可能である。磁気カテーテル航行方法は、例えば、米国特許第5,654,864号および同第6,755,816号にも記載されていて、これらの米国特許は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。
【0037】
システム20は、カテーテルを含む作業範囲において、本明細書では操縦磁界(steering field)と呼ばれる磁界を適用することによって、カテーテル24を位置させ、方向付け、かつ、操縦する。内部磁石が、カテーテル24の遠位の先端内に嵌め合わされている(カテーテル24は、以下に、図3で詳しく示されている。)。操縦磁界は、内部磁石を操縦し(すなわち、回転させ、および、移動させ)、したがって、カテーテル24の遠位の先端を操縦する。
【0038】
操縦磁界は、典型的には患者の両側に位置させられた、一対の外部磁石36によって生み出される。いくつかの実施の形態では、磁石36は、コンソール31によって生み出された適切な操縦制御信号に対応して操縦磁界を生み出す電磁石を含む。いくつかの実施の形態では、操縦磁界は、外部磁石36または外部磁石36の一部を物理的に移動させる(例えば、回転させる)ことによって、回転させられ、そうでなければ制御される。磁石36のような、時間と共にその位置が変わることがある大きな金属製の物体を作業範囲のごく近傍に有することから生起する課題が、本明細書で以下に説明される。
【0039】
システム20は、医療手技の間に、カテーテル24の配置および方向を測定し追跡する。この目的のために、システムは、配置パッド40を含む。
【0040】
図2は、本発明のある実施の形態に基づく、配置パッド40の模式的な絵図である。配置パッド40は、磁界発生コイル44のような、磁界発生器を含む。コイル44は、作業範囲の近傍の一定の既知の配置および方向に位置させられている。図1および図2の例示的な構成では、配置パッド40は、患者が横たわっている病床の下に水平に置かれている。この例のパッド40は、3角形の形状を有し、3個のトライコイル(tri-coils)42を含んでいる。各トライコイル42は、3個の磁界発生コイル44を含んでいる。したがって、この例では、配置パッド40は、全部で9個の磁界発生コイルを含んでいる。各トライコイル42の3個のコイル44は、互いに垂直な平面内に方向付けられている。別の実施の形態では、配置パッド40は、任意の適切な幾何学的構成に構成された任意の個数の磁界発生器を含んでいてよい。
【0041】
図1を参照すると、コンソール31は、信号発生器46を含み、信号発生器46は、コイル44を駆動する駆動信号を生み出す。図1および図2に示された実施の形態では、9個の駆動信号が生み出される。各コイル44は、そのコイルを駆動する、対応する駆動信号に応答して、本明細書では追跡磁界(tracking field)と呼ばれる磁界を生み出す。追跡磁界は、交流(AC)磁界を含んでいる。典型的には、信号発生器46によって生み出される駆動信号の周波数(および、その結果として、対応する追跡磁界の周波数)は、数百Hzから数kHzまでの範囲内にあるが、その他の周波数範囲も同様に用いられてよい。
【0042】
カテーテル24の遠位の先端に嵌め込まれた位置センサーは、コイル44によって生み出された追跡磁界を感知し、対応する位置信号を生み出し、位置信号は、磁界発生コイルに対するセンサーの配置および方向を示している。位置信号は、典型的には、カテーテル24を通ってコンソールへ延びるケーブル伝いに、コンソール31へ送られる。コンソール31は、追跡プロセッサ48を含み、追跡プロセッサ48は、位置信号に対応してカテーテル24の配置および方向を計算する。プロセッサ48は、典型的には6次元座標で表現されたカテーテルの配置および方向を、ディスプレイ30を用いて医者に表示する。
【0043】
プロセッサ48は、さらに、信号発生器46の動作を制御および管理する。いくつかの実施の形態では、磁界発生コイル44は、異なる周波数を有する駆動信号によって駆動されて、磁界発生コイル44の磁界の間に差異を生じさせている。それに代わって、磁界発生コイルは、位置センサーが任意の所定の時間に単一のコイル44から発生した追跡磁界を測定するように、順番に駆動されてよい。これらの実施の形態では、プロセッサ48は、各コイル44の動作を交互に行い、カテーテルから受信された位置信号を適切な磁界発生コイルに関連付ける。
【0044】
典型的には、追跡プロセッサ48は、汎用コンピュータを用いて実現され、このプロセッサは、本明細書に記載された機能を実行するためのソフトウェアにプログラムされている。そのソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して、電子的な形態でコンピュータにダウンロードされてもよく、または、その代わりに、ソフトウェアは、CD−ROMのような有形の媒体でコンピュータに供給されてもよい。追跡プロセッサは、コンソール31のその他の計算機能と一体化されている場合もある。
【0045】
図3は、本発明のある実施の形態に基づく、カテーテル24の遠位の先端の模式的な絵図である。カテーテル24は、上述したように、内部磁石32と、位置センサー52と、を含んでいる。カテーテル24は、さらに、アブレーション電極、および局所電位を感知するための電極のような、一つ以上の電極56をも含んでいる場合がある。位置センサー52は、磁界感知コイル60のような、磁界感知要素を含んでいる。いくつかの実施の形態では、位置センサー52は、相互に垂直な3つの平面内に方向付けられた3つの磁界感知コイル60を含んでいる。各コイル60は、AC追跡磁界の3つの垂直な成分のうちの一つを感知し、感知した成分に応答して対応する位置信号を生み出す。センサー52および電極56は、典型的には、カテーテルを通って延びるケーブル64を介してコンソール31に接続されている。
【0046】
AC磁界内に置かれた、金属製の、常磁性の、および、強磁性の、物体(集合的に、本明細書では、磁界を歪める物体と呼ばれる)が、その物体の近傍で磁界の歪みを引き起こすことが、当該分野ではよく知られている。例えば、金属製の物体がAC磁界にさらされた場合、渦電流がその物体中に誘起され、今度は、その渦電流が、AC磁界を歪める寄生磁界を生み出す。強磁性の物体は、磁力線(field lines)を引き寄せて磁力線の密度および方向を変えることによって、磁界を歪める。
【0047】
磁気的位置追跡システムに関連して、磁界を歪める物体が位置センサー52の近傍に存在すると、センサー52によって感知される追跡磁界が歪み、誤った位置測定を引き起こす。歪みのひどさは、概して、磁界を歪める材料が存在する量、位置センサーおよび磁界発生コイルへの物体の近さ、ならびに/または、追跡磁界が磁界を歪める物体に衝突する角度、に応じて変わる。図1のシステムでは、例えば、外部磁石36は、典型的には、大量の磁界を歪める材料を含み、作業範囲のごく近傍に位置する。したがって、外部磁石36は、位置センサーによって感知される追跡磁界の著しい歪みを引き起こす場合がある。
【0048】
本明細書に以下に記載される方法およびシステムは、主に、追跡磁界のひどい歪みが存在する状態で正確な位置追跡測定を実行することに関する。図1のカテーテル操縦システムは、純粋に、例示的な適用として記載されていて、そのシステムでは、位置追跡システムの作業範囲内または作業範囲の近くに位置する物体が、時間変化する、追跡磁界のひどい歪みを引き起こす。しかし、本発明の実施の形態は、磁気的操縦の適用に決して限定されるものではない。本明細書に記載されている方法およびシステムは、そのような歪みの作用を低減するために、任意のその他の適切な位置追跡適用で用いられてよい。例えば、本明細書に記載された方法およびシステムは、CアームX線透視装置および磁気共鳴映像(MRI)装置のような物体によって引き起こされる磁界の歪みの作用を低減するために用いられてよい。
【0049】
別の実施の形態では、システム20は、カテーテル、内視鏡、および、整形外科用インプラント、のようなさまざまな種類の体内の物体を追跡するために、ならびに、医療および手術用の用具および器具に結合された位置センサーを追跡するために、用いられてよい。
【0050】
重複した測定情報を用いた歪み低減方法
上述されたように、システム20は、9個のそれぞれの追跡磁界を生み出す9個の磁界発生コイル44を含んでいる。これらの磁界はそれぞれ、3つの磁界感知コイル60により感知される。したがって、システムは、カテーテル24の6個の配置座標および方向座標を計算するために、全部で27回の磁界投影測定(field projection measurements)を行う。27個の測定値がかなりの量の重複した情報を含むことは、明らかである。この重複した情報は、外部磁石36のような磁界を歪める物体によって引き起こされた歪みに対する、システムの免疫性を改善するために用いられてよい。
【0051】
27個の磁界測定値は、27次元のベクトル空間内のベクトルとみなすことができる。このベクトル空間の各次元は、{磁界発生コイル44,磁界感知コイル60}の対に対応する。測定値の重複性に起因して、磁界の歪みに対して不変のまたはほぼ不変の、このベクトル空間のより低い次元の部分空間を決定できることが多い。以下で図4に記載される位置追跡方法は、磁界測定値に存在する重複した情報を、そのような磁界の歪みが存在する状態での位置測定の正確さを改善するために、用いている。
【0052】
原則として、本発明の方法は、最初に、3つのトライコイル42に対する位置センサー52の配置を定める3つの配置ベクトルを、各々、計算する。これらの配置ベクトルは、位置センサーの角度方向に対して不変であり、回転不変量(rotation invariants)と呼ばれる。配置ベクトルは、方向不変量(orientation-invariant)であり、その理由は、以下に示されるように、配置ベクトルが、測定された磁界強度に基づいて計算され、磁界感知コイルへの磁界強度の投影に基づいては計算されないからである。
【0053】
配置ベクトル(回転不変量)は、座標補正関数によって補正され、座標補正関数は、磁界歪みに対する免疫性を改善するために、重複した測定情報を利用する。位置センサーの方向座標が、次に計算されて、位置センサーの6次元の配置座標および方向座標を完成する。いくつかの実施の形態では、図4の方法は、さらに、較正ステップおよびクラスタリングステップ、ならびに、位置センサー52のコイル60の非同心性を補償するためのプロセス、を含む。
【0054】
以下の図4の方法は、トライコイル42内の相互に垂直な3つのグループで構成された9個の磁界発生コイルを含む配置パッドに関し、かつ、相互に垂直な3つの磁界感知コイルを含む位置センサーに関するが、この構成は、純粋に概念を明瞭にする目的のために選択された例示的な構成である。別の実施の形態では、配置パッド40および位置センサー52は、任意の適切な幾何学的構成に構成された任意の個数のコイル44およびコイル60を含んでいる場合がある。
【0055】
図4は、本発明のある実施の形態に基づく、磁界の歪みが存在する状態での位置追跡方法を模式的に示すフロー図である。その方法は、較正ステップ100で、配置パッド40によって生み出された追跡磁界をマッピングおよび較正することによって、開始される。
【0056】
典型的には、ステップ100の較正プロセスは、配置パッド40の製造中に実行され、較正結果は、配置パッドに結合された適正な記憶装置に記憶されている。この目的およびいくつかの関連する較正手順のために用いられる較正セットアップは、例えば、米国特許第6,335,617号に記載されていて、この米国特許は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。
【0057】
較正プロセスでは、位置センサー52と同様の較正センサーが、パッド40の周囲の3次元の作業範囲内の複数の配置で走査される。較正センサーの各配置では、パッド40の9個の磁界発生コイル44の各々は、対応する追跡磁界を生み出すように駆動され、較正センサーの3個の磁界感知コイル60は、この追跡磁界を測定する。各配置に関連する感知された磁界強度が、記録される。
【0058】
いくつかの実施の形態では、較正プロセスは、較正センサーの各配置で複数の磁界測定を実行する工程を含む。典型的には、これらの測定のうちのいくつかは、自由空間測定(すなわち、作業範囲および作業範囲の近傍が、磁界を歪める物体を含まないときに行われる測定)を含む。その他の測定は、磁界を歪める物体が、システムの動作中に存在すると予測されるのと同じ位置に存在する状態で実行される。例えば、磁界を歪める物体が、カテーテル24を操縦するために物理的に動かされる外部磁石36を含む場合、磁界の測定は、外部磁石が予想される外部磁石の移動範囲全体に亘って動く間に実行される。較正プロセスに含まれる可能性があるその他の磁界を歪める物体には、例えば、患者を照射するために用いられるX線透視装置、ならびに、患者が横たわる病床、などが含まれる。
【0059】
較正セットアップは、磁界の測定を実行し、較正センサーの、関連する既知の配置と共に測定結果を記録する。いくつかの実施の形態では、較正手順は、較正センサーをパッド40の周囲の作業範囲に亘って動かすロボットまたは他の自動較正セットアップによって、実行される。
【0060】
いくつかの実施の形態では、製造されるすべてのパッド40は、本明細書に記載された較正手順を用いて、較正される。それに代わって、パッド40の製造工程が十分に反復可能な場合などには、較正手順全体が、一つの配置パッドすなわち配置パッドのサンプルに対してのみ実行されてよく、その結果が残りのパッドを較正するのに用いられる。さらにその代わりに、パッドのサンプルが、較正手順全体を施されてもよい。残りのパッドに対しては、自由空間の測定値と歪みを受けた測定値との間の磁界強度の差を示す差分の結果のみが、記録される。
【0061】
いくつかの場合には、材料の組成、機械的な構造、および/または、磁界を歪める物体の配置、が既知である。そのような場合には、これらの物体によって引き起こされた干渉がモデル化されてよく、そのモデルが較正測定の一部として用いられる。いくつかの場合では、磁界を歪める複数の物体が存在するとき、較正測定は、各物体に対して別個に実行される場合がある。個々の較正測定値が、次に、組み合わされる。さらに、それに加えて、または、それに代わって、較正測定値の集合を得るための、任意の別の適切な方法が用いられてよい。
【0062】
各々が較正センサーの既知の配置に関連している複数の磁界投影測定値が、3つの回転不変の座標補正関数を導くために用いられる。補正関数は、後に、通常のシステム動作の間に、適用される。補正関数は、位置センサー52によって測定された、未処理の磁界測定値の集合を、入力として、受容する。これらの未処理の測定値は、磁界を歪める物体の存在に起因して、歪んでいる場合がある。3つの関数は、配置パッド40に対する位置センサー52の3つの対応する補正された配置座標を生み出す。いくつかの実施の形態では、補正関数は、磁界を歪める物体からの歪み、および、コイル44によって生み出された追跡磁界が理想的な双極子磁界から逸脱しているという事実に起因する誤差を、補償する。しかし、追跡磁界を双極子磁界としてモデル化することは、必須ではない。
【0063】
いくつかの実施の形態では、座標補正関数は、適合プロセスを用いて、決定される。適合プロセスは、上記の較正ステップ100の間に測定された配置座標を、較正センサーの既知の配置座標に最良に適合させる関数を決定する。当該分野で知られた任意の適切な適合方法が、この目的のために用いられてよく、例えば、多項式回帰法が用いられてよい。
【0064】
したがって、適合プロセスは、座標補正関数が、未処理の測定値に含まれた歪みのレベルに対応して、補正された配置座標に対する、未処理の配置座標各々の対応する寄与を、効果的に、調整するようにする。小さな歪みを含む未処理の配置座標は、適合プロセスによって、強調される、すなわちより重視される可能性がある。大きな歪みを含む未処理の配置座標は、あまり重視されない、または、無視さえされる可能性がある。
【0065】
座標補正関数は、したがって、未処理の磁界測定値を、歪みに対してできるだけ不変の部分空間に変換するものとみなすことができる。適合プロセスは、較正測定値の大部分を考慮しているので、部分空間は、磁界を歪める物体のさまざまな形態において引き起こされる歪みに対して不変である。
【0066】
いくつかの実施の形態では、座標補正関数は、計算に大きな歪みを与える、一つ以上の歪みに寄与するシステム要素に関連する磁界測定値を無視することができる。歪みに寄与する要素は、磁界発生コイル44、磁界感知コイル60、および/または、{コイル44,コイル60}の対、を含んでいてよい。これらの実施の形態では、座標補正関数は、歪みに寄与する要素に関連する測定値を、例えば、座標補正関数の適切な係数を零に設定することによって、または、そうでなければ、座標補正関数をこれらの歪みに寄与する要素に対して不感受性であるように決めることによって、無視する場合がある。いくつかの実施の形態では、歪みに寄与する要素は、オフ状態に切り替えられてよく、または、そうでなければ、非作動状態にされてよい。
【0067】
未処理の配置座標は、rtcで表される3つのベクトルとして表現され、ここでtc=1...3は、測定に用いられるトライコイル42の指標を示している。ベクトルrtcは、トライコイルtcによって生み出された追跡磁界に対応して計算された位置センサーの配置座標を示す3つの配置座標{xtc,ytc,ztc}を含む。慣例によって、rtcは配置パッド40の基準フレームに関して表現されている。理想的な双極子磁界を仮定すれば、測定された磁界強度に基づいてrtcを計算する例示的な数学的手順は、以下にステップ102でさらに与えられる。
【0068】
いくつかの実施の形態では、3つの座標補正関数は、多項式関数を含む。以下の説明では、各関数は、いずれの交差項(cross-terms)(すなわち、多項式は、x,x2,x3,y,y2,y3,z,z2,およびz3の項は含むことができるが、例えば、xy2,xyz,またはy2zの項は含まない)をも含まない配置座標の3次の多項式を含む。したがって、座標補正関数への入力は、Inとして表される28次元のベクトルとして表現され、そのベクトルは、In={1,r1,r2,r3,r12,r22,r32,r13,r23,r33}={1,x1,y1,z1,x2,y2,z2,x3,y3,z3,x12,y12,z12,x22,y22,z22,x32,y32,z32,x13,y13,z13,x23,y23,z23,x33,y33,z33}として定義され、ここで、最初の「1」の項は、オフセットとして役立つ。3つの座標補正関数は、以下の形を有し、
【数1】

ここで、xcor,ycor,zcorは、各々、配置パッド40に対する、位置センサー52の、歪み補正されたx,y,z配置座標を示している。係数α1...α28,β1...β28,γ1...γ28は、多項式関数の係数を示している。この例では、上記の適合プロセスは、多項式の係数の値を適合させる工程を含む。
【0069】
3つの集合の係数は、Lcoeffで表される係数行列に構成されてよく、その行列は、以下のように定義される。
【数2】

【0070】
この表現を用いると、位置センサーの補正された配置座標は、以下により得られる。
【数3】

【0071】
座標補正関数の有効性をさらに明らかにするために、較正センサーの具体的な配置について考える。ステップ100の較正プロセスの間に、複数の磁界強度の測定が、この具体的な配置で、自由空間内と、システムの通常の動作の間に起こることが予測されるようなさまざまな磁界を歪める物体からの歪みが存在する状態と、の両方で、実行される。座標補正関数は、これらの複数の測定値を一つの補正された値で置き換え、この補正された値は、較正センサーの既知の配置座標に最良に適合する。
【0072】
座標補正関数は、歪みに対する免疫性を改善するために、27個の未処理の配置測定値に含まれる重複した情報を効果的に利用する。例えば、磁界の強度は、距離と共に急速に(1/r3に比例して)減衰するので、磁界を歪める物体からかなり離れたトライコイル42を用いて実行される測定は、典型的には、より少ない歪みを含む測定値を生み出す。そのような場合、適合プロセスは、典型的には、座標補正関数の係数αi,βi,γiを計算するときに、この歪みの少ないトライコイルに関連する測定値をより重視することになる。
【0073】
別の例では、多くの場合、磁界の歪みは、磁界が磁界を歪める物体に衝突する角度に対して非常に感受性が高い。各トライコイル42の3つの磁界発生コイル44は、相互に垂直なので、少なくとも一つのコイル44であって、そのコイルの追跡磁界がほとんどまたはまったく歪みを生み出さない、少なくとも一つのコイル44が、典型的には、存在する。再度、係数αi,βi,γiを計算するために用いられる適合プロセスは、典型的には、この歪みの少ないコイル44に関連する測定値をより重視することになる。
【0074】
要約すると、較正ステップ100は、配置パッド40の周囲の作業範囲をマッピングする工程と、それに続く、測定された未処理の配置座標を位置センサー52の歪み補正された配置座標に後で翻訳する座標補正関数を導く工程と、を含む。
【0075】
以下のステップ102〜ステップ110は、システム20の通常の動作の間に、位置追跡測定が望まれるときにはいつでも、追跡プロセッサ48によって実行される。プロセッサ48は、不変量計算ステップ102で、回転不変の配置座標rtc(未処理の位置座標とも呼ばれる)を計算する。上述したように、以下の計算は、コイル44によって生み出される追跡磁界が理想的な双極子磁界であることを仮定している。
【0076】
指標tc=1...3を有する各トライコイル42に対して、プロセッサ48は、MtMで表される磁界強度行列を計算し、その行列は、以下のように定義され、
【数4】

ここで、Utcは、位置センサー52の3つの磁界感知コイル60によって測定されるような、トライコイルtcの3つの磁界発生コイル44によって生み出される追跡磁界の磁界強度を含む3×3行列である。各行列要素(Utcijは、センサー52の第i番目の磁界感知コイル60で感知されるような、トライコイルtcの第j番目の磁界発生コイル44によって生み出される磁界強度を表している。行列Mtcは、トライコイルtcの磁気モーメント行列の逆関数を含む3×3行列である。演算子()tは、行列の転置を表している。
【0077】
プロセッサ48は、今度は、配置ベクトルrtcの半径ベクトルすなわち大きさを表す‖r‖を計算する。‖r‖は、以下の式で与えられる。
【数5】

【0078】
ベクトルrtcの向きは、最大の固有値に対応する行列MtMの固有ベクトルの向きによって近似される。この固有ベクトルを求めるために、プロセッサ48は、当該分野で知られた、特異値分解(SVD)プロセスを行列MtMに適用する。
【数6】

ここで、uは固有ベクトルを表し、wは行列MtMの固有値を表している。
【0079】
u(1)を最大の固有値に対応する固有ベクトルを表すものとする。あいまいさを解消するために、u(1)のz軸成分(慣例により、固有ベクトルの第3の成分)が、必要な場合には、ベクトルu(1)の鏡像を選択することによって、正になるようにされる。言い換えれば、もしu(1)・{0,0,1}<0ならば、u(1)=−u(1)とされる。最終的に、未処理の配置座標ベクトルrtcは、以下の式によって推定される。
【数7】

ここで、ctcは、配置パッド40の座標系でのトライコイルtcの配置座標ベクトルを表している。
【0080】
追跡プロセッサ48は、典型的には、パッド40の3つのトライコイル42すべてに対してステップ102のプロセスを繰り返す。ステップ102の出力は、トライコイル42に対する位置センサー52の未処理の配置座標を与える、3つのベクトルrtc,tc=1...3、である。上述したように、未処理の配置座標は、補正されておらず、磁界を歪める物体によって引き起こされた歪みを含む場合がある。
【0081】
プロセッサ48は、今度は、補正された座標計算ステップ104で、センサー52の歪み補正された配置座標を計算する。プロセッサ48は、この目的のために、上記の較正ステップ100で計算された座標補正関数を用いる。上記の例示的な実施の形態では、座標補正関数は3次の多項式を含み、3つの座標補正関数は、上記の式[2]で定義されたように、行列Lcoeffによって表現される。この実施の形態では、センサー52の歪み補正された配置座標を表すベクトルrcorは、以下の式により与えられる。
【数8】

ここで、Inは、上述したように、未処理の配置座標の入力ベクトルおよびその配置座標のべき指数を表している。別の実施の形態では、ベクトルrcorは、座標補正関数を測定された未処理の配置座標に適用することによって、計算される。
【0082】
いくつかの実施の形態では、追跡プロセッサ48は、クラスタリングステップ106で、配置測定値にクラスタリングプロセスを適用する。座標補正関数の正確さは、作業範囲を、クラスターと呼ばれる2つ以上の部分範囲(sub-volumes)に分割すること、および各クラスターに対して異なる座標補正関数を定義することによって、改善されることが多い。
【0083】
Nがクラスターの個数を表すとする。座標補正関数が例えば行列Lcoeffによって表現される実施の形態では、プロセッサ48が各クラスターc(c=1...N)に対して上記の較正ステップ100でLcoeff-cと表されるクラスター係数行列(cluster coefficient matrix)を計算する。上記のステップ104では、プロセッサ48は、各々の未処理の配置座標測定が属するクラスターを求め、歪み補正された配置座標を生み出すために、適切なクラスター係数行列を適用する。
【0084】
いくつかの実施の形態では、隣接するクラスター間の移行部が、重み関数を用いて、滑らかにされる。これらの実施の形態では、pcで表されるプロトタイプの座標が、各クラスターcに対して定義され、プロトタイプの座標は、典型的には、そのクラスターの中心に位置する。プロセッサ48は、各クラスターの座標補正関数を用いて計算された、補正された配置座標を合計し、クラスターのプロトタイプの座標pcからの未処理の座標rの距離を重み付けすることによって、rwで表される、重み付けされた補正された座標、を計算する。
【数9】

【0085】
重み付け関数f(r−pc)は、以下のように定義される。
【数10】

ここで、aおよびtは、重み付け関数を適正に決めるのに用いられる定数である。
【0086】
いくつかの実施の形態では、プロセッサ48は、処理されている未処理の配置座標が上記のステップ100でマッピングされた作業範囲の内側に確かに位置していることを、検証する。この有効性チェックは、使用されている座標補正関数が問題の座標に対して確かに有効であることを、確かめるために、望ましい場合がある。いくつかの実施の形態では、未処理の配置座標がマッピングされた作業範囲の外側にあることが見出された場合、プロセッサ48は、例えば異なる色またはアイコンを用いてその座標を表示することによって、もしくは、警告メッセージを提供することによって、その状態を医者に知らせる。いくつかの実施の形態では、未処理の座標は、補正を加えずに表示される。その代わりに、測定値が除かれる場合がある。
【0087】
例えば、いくつかの実施の形態では、プロセッサ48は、較正ステップ100の間に、Vで表される有効性行列(validity matrix)を生み出す。行列Vは、3次元のビット行列(bit matrix)を含み、その行列では、各ビットが、dで表される分解能を有する作業範囲内の3次元ボクセル(すなわち、ピクセルの3次元的な等価物である単位体積)に対応する。行列Vの各ビットは、対応するボクセルの座標がマッピングされた作業範囲内にあるときにはセットされ、そうでなければ、ビットはリセットされる。
【0088】
記憶空間を保存するために、行列Vは、32ビットのワードの2次元の配列として表されてよい。配列の2つの指標が、ボクセルのx座標およびy座標に対応し、指標が付けられた32ビットのワードの各ビットが、ボクセルのz軸座標に対応する。以下の擬似コードは、座標{x,y,z}が有効な作業範囲内に位置しているか否かを検証するために、行列Vに指標を付けるための例示的な方法を示している。
【数11】

ここで、round[x]は、xに最も近い整数を表し、{x0,y0,z0}は、マッピングされた作業範囲の隅の座標(corner coordinates)を表す。{xInx,yInx,zInx}は、行列Vの指標を表す。MinX,MaxX,MinY,MaxY,MinZ,MaxZは、各々、x座標、y座標、z座標の範囲の上限および下限を表している。抽出された有効ビットがセットされていると、プロセッサ48は、座標{x,y,z}がマッピングされた作業範囲内に位置していると結論付け、抽出された有効ビットがセットされていなければ、プロセッサ48は、座標{x,y,z}がマッピングされた作業範囲内に位置していないと、結論付ける。
【0089】
いくつかの実施の形態では、2つ以上の有効性行列が、定義される場合がある。例えば、作業範囲の境界すなわち周辺(outskirts)が、第2の有効性行列を用いて、個別にマッピングされて、定義される場合がある。
【0090】
この段階で、プロセッサ48は、典型的には3次元座標として表現された、位置センサー52の歪み補正された配置座標を計算し終えている。位置センサーの完全な6次元座標を得るために、プロセッサ48は、今度は、方向計算ステップ108で、位置センサーの角度方向座標を計算する。
【0091】
いくつかの実施の形態では、方向座標は、以下の関係を用いて、計算され、
【数12】

ここで、Mtcは、上記の逆モーメント行列を表し、Rは、配置パッド40の座標系に対するセンサー52の角度方向を表す回転行列を表し、Btcは、センサー52のコイル60での測定された磁界を表している。
【0092】
行列Rは、以下の式によって推定される。
【数13】

【0093】
tcの測定値は、磁界を歪める物体からの歪みを含む場合があり、歪みを含むことが、次に、行列Rの推定の正確さに影響を及ぼす場合がある。推定の正確さは、対称的分解プロセス(symmetrical decomposition process)をRに適用することによって、改善される場合がある。例えば、R2=Rt・Rであるとする。プロセッサ48は、SVDプロセスをR2に適用し、
【数14】

ここで、u12,u22,u32は、R2の固有値を表している。Sを以下のように定義する。
【数15】

【0094】
プロセッサ48は、

で表される改善された正確さの回転行列を計算し、その回転行列は、以下の式で与えられる。
【数16】

【0095】
歪み補正された配置および方向座標を計算し終えると、プロセッサ48は、こうして、位置センサー52の6次元座標のすべてを有している。
【0096】
ここまで、位置センサー52の磁界感知コイル60は、同心である、すなわち、同じ配置座標を有する、ことが仮定されていた。しかし、いくつかの場合には、センサー52は、コイル60が同心でないように、構成されている。この非同心性が、さらなる不正確さを、歪み補正された座標に導入する。いくつかの実施の形態では、追跡プロセッサ48は、非同心性補償ステップ110で、磁界感知コイルの非同心性によって引き起こされる不正確さを補償する。
【0097】

【数17】



【0098】
プロセッサ48は、上記のステップ104〜ステップ108を反復的に繰り返すことによって、MEtc,coの推定値を改善する。各反復ステップi+1で、測定された磁界は、以下の式で与えられる。
【数18】

【0099】
いくつかの実施の形態では、プロセッサ48は、予め決められた回数の反復ステップを実行する。それに代わって、収束閾値(convergence threshold)thが定められて、反復ステップは、以下の式が成り立つまで、繰り返される。
【数19】

【0100】
方向選択を用いた歪み低減方法
上述したように、いくつかの場合では、特定の磁界強度測定値に導入される歪みは、使用されている磁界発生コイル、使用されている磁界感知コイル、および、歪みを引き起こす磁界を歪める物体、の相互の配置および/または方向、に大きく依存している。したがって、重複した磁界測定が、異なる配置および方向を有する複数の磁界発生コイル44および磁界感知コイル60を用いて、実行される場合、歪みの主要な誘因である一つ以上のコイル44および/またはコイル60を特定できることが多い。これらの歪みに寄与するシステム要素に関連する測定値を除くことが、位置計算の歪みの総量を著しく低減する場合がある。
【0101】
図5は、本発明の別の実施の形態にしたがった、歪みに寄与する要素の認識および除去に基づく、磁界の歪みが存在する状態での位置追跡の方法を模式的に示すフロー図である。図5の方法は、患者の体内のカテーテル24の一つの位置での、一回の位置追跡計算を述べている。この方法は、もちろん、位置追跡システムの作業範囲全体に亘って分布した複数の位置で、適用できる。
【0102】
その方法は、測定ステップ120で、システム20が重複した磁界測定を実行することによって、始まる。典型的には、複数の磁界強度の測定は、{磁界発生コイル44,磁界感知コイル60}のさまざまな対を用いて、行われる。上述したように、図1および図2の例示的なシステム構成は、全部で27個のコイルの対を含み、その結果、最大で27個の磁界測定値をもたらす。
【0103】
追跡プロセッサ48は、今度は、特定ステップ122で、重複した磁界測定値から一つ以上の歪みに寄与する測定値を特定する。歪みに寄与する測定値は、高いレベルの歪みによって、特徴付けられる。いくつかの実施の形態では、プロセッサ48は、重複した磁界測定値の歪みのレベルを自動的に検出し定量化する場合がある。任意の適切な方法が、この目的のために用いられてよく、例えば、上記の米国特許第6,147,480号に記載された方法が用いられてよい。歪みに寄与する測定値を用いて、プロセッサ48は、一つ以上の歪みに寄与するシステム要素を特定し、歪みに寄与するシステム要素には、歪みに寄与する測定値に関連する、磁界発生コイル44、磁界感知コイル60、および/または、{コイル44,コイル60}の対、が含まれている場合がある。
【0104】
それに加えて、または、それに代わって、歪みの特性方向が、演繹的に、プロセッサ48に示される場合がある。いくつかの場合では、歪みの既知の方向が、どのコイル44および/またはコイル66が特に歪みを受けやすく、したがって、歪みに寄与する要素を含む可能性が高いかを、プロセッサに示す。さらに、それに代わって、歪みに寄与する測定値を生み出す(または、生み出す可能性がある)具体的なコイル44、コイル60、および/または、{コイル44,コイル60}の対、の独自性が、演繹的に、プロセッサに示されてよい。
【0105】
追跡プロセッサ48は、位置計算ステップ124で、位置センサー52(およびカテーテル24)の位置座標を計算し、それと同時に、歪みに寄与する要素に関連する測定値を除く。いくつかの実施の形態では、歪みに寄与する要素に関連する測定値は、位置計算からは、無視されまたは除かれる。それに代わって、特定の歪みに寄与する要素がオフ状態に切り替えられてよく、または、そうでなければ非作動状態にされてよい。
【0106】
プロセッサ48は、図5の方法と共に、上述された図4の方法ならびに上述された刊行物のいくつかに記載された方法のような、センサー52(およびカテーテル24)の位置を計算するための任意の適切な位置追跡方法、を用いる場合がある。
【0107】
いくつかの実施の形態では、上記の図5に示された方法は、そのシステム構成では、追跡磁界がカテーテル24によって生み出され、外部に位置する位置センサーによって感知される、システム構成で、同様に用いられてよい。これらの実施の形態では、信号発生器46は、追跡磁界を生み出すために、カテーテル24内の磁界発生器を駆動する駆動信号を生み出す。外部の位置センサーは、追跡磁界を感知する。感知された磁界が、次に、適切な方法に基づいて、カテーテル24の、歪みのない位置を求めるために、用いられる。
【0108】
本明細書に記載された実施の形態は、主に、医療用位置追跡および操縦システムの歪みに対する免疫性の改善を述べているが、これらの方法およびシステムは、手術室の手術台、X線透視装置、MRI装置、および/または、任意のその他の磁界を歪める物体、によって引き起こされる歪みを低減するためなどの、さらなる適用にも用いられてよい。
【0109】
したがって、上記の実施の形態が例示のために言及されたこと、および、本発明が本明細書でこれまでに具体的に図示され記載されたものに限定されないこと、が適正に評価されるはずである。むしろ、本発明の範囲は、本明細書に上述されたさまざまな特徴の組み合わせおよび部分的な組み合わせの両方、ならびに、当業者がこれまでの記載を読むことによって思いつくであろう、従来の技術に開示されていない、それら特徴の変形および変更、を含む。
【0110】
〔実施の態様〕
この発明の具体的な実施態様は以下の通りである。
(1)物体の位置を追跡する方法において、
2つ以上の磁界発生器によって生み出された磁界の、磁界強度を測定するために、前記物体に関連する磁界センサーを用いる工程であって、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値が、歪みを受けている、工程と、
測定された前記磁界強度に対応して前記物体の回転不変の配置座標を計算する工程と、
前記回転不変の配置座標に座標補正関数を適用することによって前記物体の補正された配置座標を求める工程であって、前記測定された磁界強度の前記歪みに対応して、前記補正された配置座標に対する前記測定された磁界強度の各々の相対的な寄与を調整するようにする、工程と、
を具備する、方法。
(2)実施態様(1)に記載の方法において、
前記物体を患者の器官内に挿入する工程、
をさらに具備し、
前記物体の前記補正された配置座標を求める前記工程が、前記器官の内側での前記物体の前記位置を追跡する工程を含む、方法。
(3)実施態様(1)に記載の方法において、
前記歪みが、前記磁界のうちの少なくともいくつかにさらされた磁界を歪める物体によって引き起こされ、
前記物体が、金属材料、常磁性材料、および、強磁性材料、からなる群から選択された少なくとも一つの材料を含む、方法。
(4)実施態様(1)に記載の方法において、
前記2つ以上の磁界発生器に対して対応する既知の座標での前記磁界の較正測定を実行する工程と、
前記較正測定に対応して前記座標補正関数を導く工程と、
をさらに具備する、方法。
(5)実施態様(4)に記載の方法において、
前記歪みが、移動可能な、磁界を歪める物体によって引き起こされ、
前記較正測定を実行する前記工程が、前記磁界を歪める物体のさまざまな配置で前記較正測定を実行する工程を含む、方法。
(6)実施態様(4)に記載の方法において、
前記座標補正関数を導く前記工程が、前記較正測定の前記既知の座標への依存性に対して適合プロセスを適用する工程を含む、方法。
(7)実施態様(1)に記載の方法において、
前記座標補正関数を適用する前記工程が、前記回転不変の配置座標のうちの少なくともいくつかのべき指数を含む係数を有する多項式関数を適用する工程を含む、方法。
(8)実施態様(1)に記載の方法において、
前記座標補正関数を適用する前記工程が、
前記測定された磁界強度に対応して、歪みに寄与する要素を特定する工程と、
前記歪みに寄与する要素に関連した前記測定された磁界強度を無視するように、前記座標補正関数を生み出す工程と、
を含む、方法。
(9)実施態様(8)に記載の方法において、
前記磁界センサーが、一つ以上の磁界感知要素を含み、
前記歪みに寄与する要素を特定する前記工程が、前記磁界感知要素および前記磁界発生器のうち一つ以上が前記歪みに寄与していることを判定する工程を含む、方法。
(10)実施態様(1)に記載の方法において、
前記物体の角度方向座標を計算する工程、
をさらに具備する、方法。
【0111】
(11)実施態様(1)に記載の方法において、
前記磁界センサーが、前記2つ以上の磁界発生器に関連する作業範囲内で用いられ、
前記補正された配置座標を求める前記工程が、
前記作業範囲を2つ以上のクラスターに分割する工程と、
前記2つ以上のクラスターのそれぞれに対して、対応する2つ以上のクラスター座標補正関数を定める工程と、
前記回転不変の配置座標が含まれる前記クラスターに対応して、前記回転不変の配置座標の各々に、前記クラスター座標補正関数のうちの一つを適用する工程と、
を含む、方法。
(12)実施態様(11)に記載の方法において、
前記クラスター座標補正関数を適用する前記工程が、隣接する前記クラスター間の移行部(transition)を滑らかにするように重み関数を適用する工程を含む、方法。
(13)実施態様(1)に記載の方法において、
非同心的な配置を有する2つ以上の磁界センサーを用いて、前記磁界強度を測定する工程と、
前記非同心的な配置によって引き起こされた、前記補正された配置座標の不正確さを補償する工程と、
をさらに具備する、方法。
(14)物体の位置を追跡する方法において、
重複した配置情報(redundant location information)を提供するように、2つ以上の磁界発生器によって生み出された磁界の、磁界強度の測定を実行するために、前記物体に関連する磁界センサーを用いる工程であって、前記磁界強度の測定値のうち少なくともいくつかは、歪みを受けている、工程と、
前記重複した配置情報を利用する座標補正関数を前記測定値に適用することによって、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の配置座標を求める工程であって、前記配置座標への前記歪みの影響を低減するようにする、工程と、
を具備する、方法。
(15)物体の位置を追跡する方法において、
2つ以上の磁界発生器によって生み出された磁界の、磁界強度を測定するために磁界センサーを用いる工程であって、前記磁界センサーが、前記物体に関連する一つ以上の磁界感知要素を含み、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値が、歪みを受けている、工程と、
前記測定された磁界強度に対応して、少なくとも一つの歪みに寄与するシステム要素を特定する工程であって、前記システム要素が、前記一つ以上の磁界感知要素、および前記2つ以上の磁界発生器、からなる群から選択される、工程と、
前記歪みに寄与するシステム要素に関連する磁界測定値を無視しながら、前記測定された磁界強度に対応して、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の前記位置を求める工程と、
を具備する、方法。
(16)実施態様(15)に記載の方法において、
患者の器官内に前記物体を挿入する工程、
をさらに具備し、
前記物体の前記位置を求める前記工程が、前記器官内での前記物体の前記位置を追跡する工程を含む、方法。
(17)実施態様(16)に記載の方法において、
前記2つ以上の磁界発生器が、前記物体に関連していて、
前記磁界センサーが、前記器官の外側に位置する、方法。
(18)実施態様(15)に記載の方法において、
前記歪みに寄与するシステム要素を特定する前記工程が、前記歪みの特性方向、および前記歪みに寄与するシステム要素の同一性、からなる群から選択された演繹的な表示を受容する工程を含む、方法。
(19)実施態様(15)に記載の方法において、
前記歪みに寄与するシステム要素を特定する前記工程が、前記歪みに寄与するシステム要素に関連する前記磁界測定値中の前記歪みの存在を感知する工程を含む、方法。
(20)実施態様(15)に記載の方法において、
前記歪みに寄与するシステム要素が、前記磁界感知要素のうちの一つと前記磁界発生器のうちの一つとの対を含む、方法。
【0112】
(21)実施態様(15)に記載の方法において、
前記歪みに寄与するシステム要素に関連する前記磁界測定値を無視する前記工程が、前記歪みに寄与するシステム要素を非作動状態にする工程を含む、方法。
(22)物体の位置を追跡するシステムにおいて、
前記物体の近傍にそれぞれの磁界を生み出すように構成された、2つ以上の磁界発生器と、
前記磁界の磁界強度を測定するように構成された、前記物体に関連する磁界センサーであって、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値が、歪みを受けている、磁界センサーと、
前記測定された磁界強度に対応して前記物体の回転不変の配置座標を計算するように、および、前記回転不変の配置座標に座標補正関数を適用することによって、前記物体の補正された配置座標を求めるように、構成された、プロセッサであって、前記測定された磁界強度の前記歪みに対応して前記補正された配置座標に対する前記測定された磁界強度の各々の相対的な寄与を調整するようにする、プロセッサと、
を具備する、システム。
(23)実施態様(22)に記載のシステムにおいて、
前記物体が、患者の器官内に挿入されるように構成されていて、
前記プロセッサが、前記器官内での前記物体の前記位置を追跡するように構成されている、システム。
(24)実施態様(22)に記載のシステムにおいて、
前記歪みが、前記磁界のうちの少なくともいくつかにさらされた、磁界を歪める物体によって引き起こされ、
前記物体が、金属材料、常磁性材料、および、強磁性材料、からなる群から選択された少なくとも一つの材料を含む、システム。
(25)実施態様(22)に記載のシステムにおいて、
前記座標補正関数が、前記2つ以上の磁界発生器に対して対応する既知の座標での前記磁界の較正測定を実行すること、および前記較正測定に対応して前記座標補正関数を導くことによって、求められる、システム。
(26)実施態様(25)に記載のシステムにおいて、
前記歪みが、移動可能な、磁界を歪める物体によって引き起こされ、
前記較正測定が、前記磁界を歪める物体の異なる配置において行われる測定を含む、システム。
(27)実施態様(25)に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記座標補正関数を導くために、前記既知の座標に対する前記較正測定の依存性に適合プロセスを適用するように、構成されている、システム。
(28)実施態様(22)に記載のシステムにおいて、
前記座標補正関数が、前記回転不変の配置座標のうちの少なくともいくつかのべき指数を含む係数を有する多項式関数を含む、システム。
(29)実施態様(22)に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記測定された磁界強度に対応して歪みに寄与する要素を特定するように、および、前記歪みに寄与する要素に関連する前記測定された磁界強度を無視するように前記座標補正関数を生み出すように、構成されている、システム。
(30)実施態様(29)に記載のシステムにおいて、
前記磁界センサーが、一つ以上の磁界感知要素を含み、
前記プロセッサが、前記歪みに寄与するシステム要素を特定するように、前記磁界感知要素、および前記磁界発生器、からなる群から選択された少なくとも一つの要素が前記歪みに寄与していることを特定するように、構成されている、システム。
【0113】
(31)実施態様(22)に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記物体の角度方向座標を計算するようにさらに構成されている、システム。
(32)実施態様(22)に記載のシステムにおいて、
前記磁界センサーが、前記2つ以上の磁界発生器に関連する作業範囲内で用いられ、
前記プロセッサが、前記作業範囲を2つ以上のクラスターに分割するように、前記2つ以上のクラスターの各々に対して対応する2つ以上のクラスター座標補正関数を定めるように、および、前記回転不変の配置座標が含まれるクラスターに対応して前記クラスター座標補正関数のうちの一つを前記回転不変の配置座標の各々に適用するように、構成されている、システム。
(33)実施態様(32)に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、隣接する前記クラスターの間の移行部を滑らかにするように、重み関数を適用するように、さらに構成されている、システム。
(34)実施態様(22)に記載のシステムにおいて、
非同心的な配置を有する2つ以上の磁界センサー、
をさらに含み、
前記プロセッサが、前記非同心的な配置によって引き起こされた、前記補正された配置座標の不正確さを補償するように構成されている、システム。
(35)物体の位置を追跡するシステムにおいて、
前記物体の近傍にそれぞれの磁界を生み出すように構成された、2つ以上の磁界発生器と、
重複した配置情報を提供するように、前記磁界の磁界強度の測定を実行するように構成された、前記物体に関連する磁界センサーであって、前記磁界強度の測定値のうちの少なくともいくつかは、歪みを受けている、磁界センサーと、
前記重複した配置情報を利用する座標補正関数を前記測定値に適用することによって、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の配置座標を求めるように構成されたプロセッサであって、前記配置座標への前記歪みの影響を低減するようにする、プロセッサと、
を具備する、システム。
(36)物体の位置を追跡するシステムにおいて、
前記物体の近傍にそれぞれの磁界を生み出すように構成された、2つ以上の磁界発生器と、
前記物体に関連した磁界センサーであって、前記磁界センサーは、前記磁界の磁界強度を測定するように構成された一つ以上の磁界感知要素を含み、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値は歪みを受けている、磁界センサーと、
プロセッサであって、前記測定された磁界強度に対応して、前記一つ以上の磁界感知要素、および前記2つ以上の磁界発生器、からなる群から選択される歪みに寄与するシステム要素を特定するように、かつ前記歪みに寄与するシステム要素に関連する磁界測定値を無視しながら、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の前記位置を求めるように、構成されている、プロセッサと、
を具備する、システム。
(37)実施態様(36)に記載のシステムにおいて、
前記物体が、患者の器官内に挿入されるように構成されていて、
前記プロセッサが、前記器官内での前記物体の前記位置を追跡するように構成されている、システム。
(38)実施態様(36)に記載のシステムにおいて、
前記2つ以上の磁界発生器が、前記物体に関連し、
前記磁界センサーが、前記器官の外側に位置している、システム。
(39)実施態様(36)に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記歪みの特性方向、および前記歪みに寄与するシステム要素の同一性、からなる群から選択された演繹的な表示を受容するように構成されている、システム。
(40)実施態様(36)に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記歪みに寄与するシステム要素に関連した前記磁界測定値中の前記歪みの存在を感知することによって、前記歪みに寄与するシステム要素を特定するように構成されている、システム。
【0114】
(41)実施態様(36)に記載のシステムにおいて、
前記歪みに寄与するシステム要素が、前記磁界感知要素のうちの一つと前記磁界発生器のうちの一つとの対を含む、システム。
(42)実施態様(36)に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記歪みに寄与するシステム要素を非作動状態にするように構成されている、システム。
(43)物体の位置を追跡するシステムで用いられるコンピュータソフトウェア製品において、
前記製品が、
コンピュータ可読媒体、
を含み、
前記媒体内には、プログラム命令が記憶されていて、
前記プログラム命令は、前記コンピュータによって読み取られたときに、前記コンピュータに、
前記物体の近傍に磁界を生み出すように、2つ以上の磁界発生器を制御する工程と、
前記物体に関連する磁界センサーによって実行された前記磁界の磁界強度の測定値を受容する工程であって、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値は歪みを受けている、工程と、
前記測定された磁界強度に対応して、前記物体の回転不変の配置座標を計算する工程と、
前記回転不変の配置座標に座標補正関数を適用することによって、前記物体の補正された配置座標を求める工程であって、前記測定された磁界強度中の前記歪みに対応して、前記補正された配置座標に対する前記測定された磁界強度の各々の相対的な寄与を調整するようにする、工程と、
を実行させる、コンピュータソフトウェア製品。
(44)物体の位置を追跡するシステムで用いられるコンピュータソフトウェア製品において、
前記製品が、
コンピュータ可読媒体、
を含み、
前記媒体には、プログラム命令が記憶されていて、
前記プログラム命令は、前記コンピュータによって読み取られたときに、前記コンピュータに、
前記物体の近傍に磁界を生み出すように2つ以上の磁界発生器を制御する工程と、
前記物体に関連する磁界センサーによって実行された前記磁界の磁界強度の測定値を受容する工程であって、前記測定値は、重複した配置情報を含み、前記測定値のうち少なくともいくつかは歪みを受けている、工程と、
前記重複した配置情報を利用する座標補正関数を前記測定値に適用することによって、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の配置座標を求める工程であって、前記配置座標への前記歪みの影響を低減するようにする、工程と、
を実行させる、コンピュータソフトウェア製品。
(45)物体の位置を追跡するシステムで用いられるコンピュータソフトウェア製品において、
前記製品が、
コンピュータ可読媒体、
を含み、
前記媒体内には、プログラム命令が記憶されていて、
前記プログラム命令は、前記コンピュータによって読み取られたときに、前記コンピュータに、
前記物体の近傍に磁界を生み出すように、2つ以上の磁界発生器を制御する工程と、
前記物体に関連し、一つ以上の磁界感知要素を含む、磁界センサーによって実行された前記磁界の磁界強度の測定値を受容する工程であって、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値は歪みを受けている、工程と、
前記測定された磁界強度に対応して、前記2つ以上の磁界発生器、および前記一つ以上の磁界感知要素、からなる群から選択される、歪みに寄与するシステム要素を特定する工程と、
前記歪みに寄与するシステム要素に関連する磁界測定値を無視しながら、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の前記位置を求める工程と、
を実行させる、コンピュータソフトウェア製品。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明のある実施の形態に基づく、体内の物体の位置を追跡し操縦する、システムの模式的な絵図である。
【図2】本発明のある実施の形態に基づく位置パッドの模式的な絵図である。
【図3】本発明のある実施の形態に基づくカテーテルの模式的な絵図である。
【図4】本発明のある実施の形態に基づく、磁界の歪みが存在する状態での位置追跡方法を模式的に示すフロー図である。
【図5】本発明の別の実施の形態に基づく、磁界の歪みが存在する状態での位置追跡方法を模式的に示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の位置を追跡する方法において、
2つ以上の磁界発生器によって生み出された磁界の、磁界強度を測定するために、前記物体に関連する磁界センサーを用いる工程であって、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値が、歪みを受けている、工程と、
測定された前記磁界強度に対応して前記物体の回転不変の配置座標を計算する工程と、
前記回転不変の配置座標に座標補正関数を適用することによって前記物体の補正された配置座標を求める工程であって、前記測定された磁界強度の前記歪みに対応して、前記補正された配置座標に対する前記測定された磁界強度の各々の相対的な寄与を調整するようにする、工程と、
を具備する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記物体を患者の器官内に挿入する工程、
をさらに具備し、
前記物体の前記補正された配置座標を求める前記工程が、前記器官の内側での前記物体の前記位置を追跡する工程を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記歪みが、前記磁界のうちの少なくともいくつかにさらされた磁界を歪める物体によって引き起こされ、
前記物体が、金属材料、常磁性材料、および、強磁性材料、からなる群から選択された少なくとも一つの材料を含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記2つ以上の磁界発生器に対して対応する既知の座標での前記磁界の較正測定を実行する工程と、
前記較正測定に対応して前記座標補正関数を導く工程と、
をさらに具備する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記歪みが、移動可能な、磁界を歪める物体によって引き起こされ、
前記較正測定を実行する前記工程が、前記磁界を歪める物体のさまざまな配置で前記較正測定を実行する工程を含む、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、
前記座標補正関数を導く前記工程が、前記較正測定の前記既知の座標への依存性に対して適合プロセスを適用する工程を含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記座標補正関数を適用する前記工程が、前記回転不変の配置座標のうちの少なくともいくつかのべき指数を含む係数を有する多項式関数を適用する工程を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記座標補正関数を適用する前記工程が、
前記測定された磁界強度に対応して、歪みに寄与する要素を特定する工程と、
前記歪みに寄与する要素に関連した前記測定された磁界強度を無視するように、前記座標補正関数を生み出す工程と、
を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記磁界センサーが、一つ以上の磁界感知要素を含み、
前記歪みに寄与する要素を特定する前記工程が、前記磁界感知要素および前記磁界発生器のうち一つ以上が前記歪みに寄与していることを判定する工程を含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記物体の角度方向座標を計算する工程、
をさらに具備する、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
前記磁界センサーが、前記2つ以上の磁界発生器に関連する作業範囲内で用いられ、
前記補正された配置座標を求める前記工程が、
前記作業範囲を2つ以上のクラスターに分割する工程と、
前記2つ以上のクラスターのそれぞれに対して、対応する2つ以上のクラスター座標補正関数を定める工程と、
前記回転不変の配置座標が含まれる前記クラスターに対応して、前記回転不変の配置座標の各々に、前記クラスター座標補正関数のうちの一つを適用する工程と、
を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記クラスター座標補正関数を適用する前記工程が、隣接する前記クラスター間の移行部を滑らかにするように重み関数を適用する工程を含む、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
非同心的な配置を有する2つ以上の磁界センサーを用いて、前記磁界強度を測定する工程と、
前記非同心的な配置によって引き起こされた、前記補正された配置座標の不正確さを補償する工程と、
をさらに具備する、方法。
【請求項14】
物体の位置を追跡する方法において、
重複した配置情報を提供するように、2つ以上の磁界発生器によって生み出された磁界の、磁界強度の測定を実行するために、前記物体に関連する磁界センサーを用いる工程であって、前記磁界強度の測定値のうち少なくともいくつかは、歪みを受けている、工程と、
前記重複した配置情報を利用する座標補正関数を前記測定値に適用することによって、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の配置座標を求める工程であって、前記配置座標への前記歪みの影響を低減するようにする、工程と、
を具備する、方法。
【請求項15】
物体の位置を追跡する方法において、
2つ以上の磁界発生器によって生み出された磁界の、磁界強度を測定するために磁界センサーを用いる工程であって、前記磁界センサーが、前記物体に関連する一つ以上の磁界感知要素を含み、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値が、歪みを受けている、工程と、
前記測定された磁界強度に対応して、少なくとも一つの歪みに寄与するシステム要素を特定する工程であって、前記システム要素が、前記一つ以上の磁界感知要素、および前記2つ以上の磁界発生器、からなる群から選択される、工程と、
前記歪みに寄与するシステム要素に関連する磁界測定値を無視しながら、前記測定された磁界強度に対応して、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の前記位置を求める工程と、
を具備する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
患者の器官内に前記物体を挿入する工程、
をさらに具備し、
前記物体の前記位置を求める前記工程が、前記器官内での前記物体の前記位置を追跡する工程を含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記2つ以上の磁界発生器が、前記物体に関連していて、
前記磁界センサーが、前記器官の外側に位置する、方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法において、
前記歪みに寄与するシステム要素を特定する前記工程が、前記歪みの特性方向、および前記歪みに寄与するシステム要素の同一性、からなる群から選択された演繹的な表示を受容する工程を含む、方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法において、
前記歪みに寄与するシステム要素を特定する前記工程が、前記歪みに寄与するシステム要素に関連する前記磁界測定値中の前記歪みの存在を感知する工程を含む、方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法において、
前記歪みに寄与するシステム要素が、前記磁界感知要素のうちの一つと前記磁界発生器のうちの一つとの対を含む、方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法において、
前記歪みに寄与するシステム要素に関連する前記磁界測定値を無視する前記工程が、前記歪みに寄与するシステム要素を非作動状態にする工程を含む、方法。
【請求項22】
物体の位置を追跡するシステムにおいて、
前記物体の近傍にそれぞれの磁界を生み出すように構成された、2つ以上の磁界発生器と、
前記磁界の磁界強度を測定するように構成された、前記物体に関連する磁界センサーであって、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値が、歪みを受けている、磁界センサーと、
前記測定された磁界強度に対応して前記物体の回転不変の配置座標を計算するように、および、前記回転不変の配置座標に座標補正関数を適用することによって、前記物体の補正された配置座標を求めるように、構成された、プロセッサであって、前記測定された磁界強度の前記歪みに対応して前記補正された配置座標に対する前記測定された磁界強度の各々の相対的な寄与を調整するようにする、プロセッサと、
を具備する、システム。
【請求項23】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記物体が、患者の器官内に挿入されるように構成されていて、
前記プロセッサが、前記器官内での前記物体の前記位置を追跡するように構成されている、システム。
【請求項24】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記歪みが、前記磁界のうちの少なくともいくつかにさらされた、磁界を歪める物体によって引き起こされ、
前記物体が、金属材料、常磁性材料、および、強磁性材料、からなる群から選択された少なくとも一つの材料を含む、システム。
【請求項25】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記座標補正関数が、前記2つ以上の磁界発生器に対して対応する既知の座標での前記磁界の較正測定を実行すること、および前記較正測定に対応して前記座標補正関数を導くことによって、求められる、システム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムにおいて、
前記歪みが、移動可能な、磁界を歪める物体によって引き起こされ、
前記較正測定が、前記磁界を歪める物体の異なる配置において行われる測定を含む、システム。
【請求項27】
請求項25に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記座標補正関数を導くために、前記既知の座標に対する前記較正測定の依存性に適合プロセスを適用するように、構成されている、システム。
【請求項28】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記座標補正関数が、前記回転不変の配置座標のうちの少なくともいくつかのべき指数を含む係数を有する多項式関数を含む、システム。
【請求項29】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記測定された磁界強度に対応して歪みに寄与する要素を特定するように、および、前記歪みに寄与する要素に関連する前記測定された磁界強度を無視するように前記座標補正関数を生み出すように、構成されている、システム。
【請求項30】
請求項29に記載のシステムにおいて、
前記磁界センサーが、一つ以上の磁界感知要素を含み、
前記プロセッサが、前記歪みに寄与するシステム要素を特定するように、前記磁界感知要素、および前記磁界発生器、からなる群から選択された少なくとも一つの要素が前記歪みに寄与していることを特定するように、構成されている、システム。
【請求項31】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記物体の角度方向座標を計算するようにさらに構成されている、システム。
【請求項32】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記磁界センサーが、前記2つ以上の磁界発生器に関連する作業範囲内で用いられ、
前記プロセッサが、前記作業範囲を2つ以上のクラスターに分割するように、前記2つ以上のクラスターの各々に対して対応する2つ以上のクラスター座標補正関数を定めるように、および、前記回転不変の配置座標が含まれるクラスターに対応して前記クラスター座標補正関数のうちの一つを前記回転不変の配置座標の各々に適用するように、構成されている、システム。
【請求項33】
請求項32に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、隣接する前記クラスターの間の移行部を滑らかにするように、重み関数を適用するように、さらに構成されている、システム。
【請求項34】
請求項22に記載のシステムにおいて、
非同心的な配置を有する2つ以上の磁界センサー、
をさらに含み、
前記プロセッサが、前記非同心的な配置によって引き起こされた、前記補正された配置座標の不正確さを補償するように構成されている、システム。
【請求項35】
物体の位置を追跡するシステムにおいて、
前記物体の近傍にそれぞれの磁界を生み出すように構成された、2つ以上の磁界発生器と、
重複した配置情報を提供するように、前記磁界の磁界強度の測定を実行するように構成された、前記物体に関連する磁界センサーであって、前記磁界強度の測定値のうちの少なくともいくつかは、歪みを受けている、磁界センサーと、
前記重複した配置情報を利用する座標補正関数を前記測定値に適用することによって、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の配置座標を求めるように構成されたプロセッサであって、前記配置座標への前記歪みの影響を低減するようにする、プロセッサと、
を具備する、システム。
【請求項36】
物体の位置を追跡するシステムにおいて、
前記物体の近傍にそれぞれの磁界を生み出すように構成された、2つ以上の磁界発生器と、
前記物体に関連した磁界センサーであって、前記磁界センサーは、前記磁界の磁界強度を測定するように構成された一つ以上の磁界感知要素を含み、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値は歪みを受けている、磁界センサーと、
プロセッサであって、前記測定された磁界強度に対応して、前記一つ以上の磁界感知要素、および前記2つ以上の磁界発生器、からなる群から選択される歪みに寄与するシステム要素を特定するように、かつ前記歪みに寄与するシステム要素に関連する磁界測定値を無視しながら、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の前記位置を求めるように、構成されている、プロセッサと、
を具備する、システム。
【請求項37】
請求項36に記載のシステムにおいて、
前記物体が、患者の器官内に挿入されるように構成されていて、
前記プロセッサが、前記器官内での前記物体の前記位置を追跡するように構成されている、システム。
【請求項38】
請求項36に記載のシステムにおいて、
前記2つ以上の磁界発生器が、前記物体に関連し、
前記磁界センサーが、前記器官の外側に位置している、システム。
【請求項39】
請求項36に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記歪みの特性方向、および前記歪みに寄与するシステム要素の同一性、からなる群から選択された演繹的な表示を受容するように構成されている、システム。
【請求項40】
請求項36に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記歪みに寄与するシステム要素に関連した前記磁界測定値中の前記歪みの存在を感知することによって、前記歪みに寄与するシステム要素を特定するように構成されている、システム。
【請求項41】
請求項36に記載のシステムにおいて、
前記歪みに寄与するシステム要素が、前記磁界感知要素のうちの一つと前記磁界発生器のうちの一つとの対を含む、システム。
【請求項42】
請求項36に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記歪みに寄与するシステム要素を非作動状態にするように構成されている、システム。
【請求項43】
物体の位置を追跡するシステムで用いられるコンピュータソフトウェア製品において、
前記製品が、
コンピュータ可読媒体、
を含み、
前記媒体内には、プログラム命令が記憶されていて、
前記プログラム命令は、前記コンピュータによって読み取られたときに、前記コンピュータに、
前記物体の近傍に磁界を生み出すように、2つ以上の磁界発生器を制御する工程と、
前記物体に関連する磁界センサーによって実行された前記磁界の磁界強度の測定値を受容する工程であって、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値は歪みを受けている、工程と、
前記測定された磁界強度に対応して、前記物体の回転不変の配置座標を計算する工程と、
前記回転不変の配置座標に座標補正関数を適用することによって、前記物体の補正された配置座標を求める工程であって、前記測定された磁界強度中の前記歪みに対応して、前記補正された配置座標に対する前記測定された磁界強度の各々の相対的な寄与を調整するようにする、工程と、
を実行させる、コンピュータソフトウェア製品。
【請求項44】
物体の位置を追跡するシステムで用いられるコンピュータソフトウェア製品において、
前記製品が、
コンピュータ可読媒体、
を含み、
前記媒体には、プログラム命令が記憶されていて、
前記プログラム命令は、前記コンピュータによって読み取られたときに、前記コンピュータに、
前記物体の近傍に磁界を生み出すように2つ以上の磁界発生器を制御する工程と、
前記物体に関連する磁界センサーによって実行された前記磁界の磁界強度の測定値を受容する工程であって、前記測定値は、重複した配置情報を含み、前記測定値のうち少なくともいくつかは歪みを受けている、工程と、
前記重複した配置情報を利用する座標補正関数を前記測定値に適用することによって、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の配置座標を求める工程であって、前記配置座標への前記歪みの影響を低減するようにする、工程と、
を実行させる、コンピュータソフトウェア製品。
【請求項45】
物体の位置を追跡するシステムで用いられるコンピュータソフトウェア製品において、
前記製品が、
コンピュータ可読媒体、
を含み、
前記媒体内には、プログラム命令が記憶されていて、
前記プログラム命令は、前記コンピュータによって読み取られたときに、前記コンピュータに、
前記物体の近傍に磁界を生み出すように、2つ以上の磁界発生器を制御する工程と、
前記物体に関連し、一つ以上の磁界感知要素を含む、磁界センサーによって実行された前記磁界の磁界強度の測定値を受容する工程であって、前記磁界強度のうち少なくとも一つの測定値は歪みを受けている、工程と、
前記測定された磁界強度に対応して、前記2つ以上の磁界発生器、および前記一つ以上の磁界感知要素、からなる群から選択される、歪みに寄与するシステム要素を特定する工程と、
前記歪みに寄与するシステム要素に関連する磁界測定値を無視しながら、前記2つ以上の磁界発生器に対する前記物体の前記位置を求める工程と、
を実行させる、コンピュータソフトウェア製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−62040(P2008−62040A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−204431(P2007−204431)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(500520846)バイオセンス・ウェブスター・インコーポレイテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster, Inc.
【住所又は居所原語表記】3333 Diamond Canyon Road, Diamond Bar, California 91765, U.S.A.
【Fターム(参考)】