説明

重金属評価方法

【目的】 シリコン基板中の重金属の簡便で迅速で高感度に分析する。
【構成】 シリコン基板1の表面にボロンイオン2を加速エネルギー50keV、ドーズ量3×1014cm-2で注入する。そのあとに900℃、30分の熱処理を行い注入層3を形成してある。重金属4の汚染の程度を評価した半導体処理装置中に図1の試料をセットする。この後、その半導体処理装置でその処理を行う。このように、イオン注入をシリコン基板1に施しておくことで、シリコン基板1中に注入ダメージを意図的に形成できる。特にボロンイオンを注入することで、後の熱処理工程によって重金属をゲッターさせることができる。それを全反射蛍光X線によって分析することで、感度を一桁以上上昇させることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は超LSIの工程での重金属汚染の評価を簡便にする重金属評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】超LSIの製造工程において、重金属による汚染が半導体素子の特性を劣化させることが大きな問題になっている。半導体素子の特性に影響を与える量は、約10×1011cm-2程度である。しかし、このような量を測定するためには、非常に感度の高い分析が必要である。しかしながら、高感度の評価方法としては、例えば硝酸と弗酸の溶液に溶かして、その試料を分析する原子吸光法、あるいはプラズマ質量分析法等がある。これらの方法を用いて分析するためには多くの時間と分析コストと手間が必要で、十分に短期間でその結果をフィードバックできない。このため問題発生を検知するのが遅れ製造での多大な損失を生じてしまう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】また、全反射蛍光X線を用いてウェーハ状態で、迅速に測定評価する方法として広く用いられている。しかしながら、この方法では、X線が入り込むことのできる表面付近の浅いところの原子だけを評価することになる。このため高い感度を実現することはむずかしい。そのため全反射蛍光X線装置は、感度において前記の二つの装置には及ばないという問題点を有していた。
【0004】本発明はかかる点に鑑みなされたもので、ウェーハ状態のままで簡便に重金属の評価を行うことができる評価方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の重金属評価方法は、シリコン基板にイオン注入を施し、ゲッター層を形成する工程と、前記シリコン基板に熱処理を行ない、重金属を前記ゲッター層にゲッターさせる工程と、その後、重金属の表面分析を行う。
【0006】
【作用】本発明は前記した構成により、イオン注入することによりシリコン基板中に注入ダメージを意図的に形成する。特にボロンイオンを注入することで、後の熱処理工程によって重金属をゲッターさせる。それを全反射蛍光X線によって分析することで、感度を一桁以上上昇させることができる。
【0007】
【実施例】図1から図3は本発明の第1の実施例における評価のフローの図を示すものである。図1において、シリコン基板1の表面にボロンイオン2を加速エネルギー50keV、ドーズ量3×1014cm-2で注入する。そのあとに900℃、30分の熱処理を行い注入層3を形成してある。
【0008】図2は、重金属4の汚染の程度を評価した半導体処理装置中に図1の試料をセットする。この後、その半導体処理装置でその処理を行う。例えば、熱処理を行う炉がどの程度、重金属4によって汚染されているかどうかを調べたい場合には、図1の試料を炉内に入れ所望の温度で熱処理を行う。これによって重金属のゲッター層5が形成される。
【0009】また、半導体処理装置が、高温熱処理が伴わない処理のような場合、例えばイオン注入装置やプラズマアッシング装置等では、図3に示すように熱処理を施し重金属のゲッター層5を形成する。高温熱処理とは、少なくも600℃以上で処理を伴うような炉や薄膜堆積装置のときを指す。
【0010】このように、イオン注入をシリコン基板1に施しておくことで、シリコン基板1中に注入ダメージを意図的に形成できる。特にボロンイオンを注入することで、後の熱処理工程によって重金属をゲッターさせることができる。それを全反射蛍光X線によって分析することで、感度を一桁以上上昇させることができる。
【0011】第2の実施例としては、図4から図6に示す。図4において、ベアーのシリコン基板11を重金属14の評価を行いたい処理装置の工程で処理を行い、意図的に重金属14の汚染を行う。これによって重金属14による汚染部15が形成される。その後、図5において表面にボロンイオン12を加速エネルギー50keV、ドーズ量3×1014cm-2で注入し、注入欠陥層13を形成する。そして図6に示すように、900℃、30分の熱処理を行い重金属14の汚染部15を注入欠陥層13にゲッターして、重金属ゲッター層16を形成する。そして全反射蛍光X線にて重金属の評価を行う。
【0012】以上のように構成されたこの重金属の評価方法において、ボロンを注入した層はダメージを残留した状態で残っている。それを評価したい処理装置内で重金属にさらす。通常重金属はシリコン基板内部に拡散し、シリコン基板全体にわたって平均化された値になる。しかし、本実施例では、重金属は注入ダメージ層に吸い寄せられるため、表面のダメージ層では一桁以上しかも固溶限界以上の重金属が溜まる。そのために全反射蛍光X線にて分析できなかった量の重金属が検出できる。
【0013】以上のようにこの実施例によれば、イオン注入ダメージの効果によって鉄(Fe)原子、銅(Cu)原子やその他の重金属が、この層にゲッターされて浅い部分に重金属が集中する。
【0014】図7に50keVの加速エネルギーで注入したボロンの注入量と、鉄によって故意に汚染を行った場合の分析結果を示す。熱処理は900℃、1時間処理を行っている。汚染量は1011cm-2程度である。この結果、イオン注入と熱処理とを施した試料は、一桁の感度アップが実現できる。本実施例では、原子吸光分析やプラズマ発光分析法並みの感度を期待することができる。また、イオン注入エネルギーを1MeVにてイオン注入すると、さらに大きなゲッタリング効果を得ることができる。
【0015】この方法を用いることによって全反射蛍光X線のような手軽な方法で、従来より一桁以上高感度に重金属を分析することができる。
【0016】なお、本実施例ではボロンイオンを用いているが他のイオン、例えばカーボン等のイオンを用いても重金属ゲッター効果が大きく同様の効果が得られる。当然注入ダメージがゲッター効果を持つため、いかなるイオンを用いてもある程度の効果が存在することは言うまでもない。
【0017】また、ボロンでは注入ドーズ量が1014cm-2のオーダーであれば、熱処理による残留欠陥が多くなるためゲッタリング効果が大きい。
【0018】また高エネルギーイオン注入を用いると、シリコン基板の表面側からと基板内部からの二つの方向から結晶欠陥の回復が進む。このため、その中間領域に残留欠陥が多くなりゲッター効果が増大する。このためその測定感度はさらに向上させ得る。特に、高エネルギーイオン注入を用いた場合には、熱処理温度は900℃以下、700℃以上の温度が優れている。
【0019】また、ボロンでは注入ドーズ量が1015cm-2オーダーと多い場合には、イオン注入機からの汚染が検知されることになる。このため本実施例では、ボロンのドーズ量が1014cm-2のオーダーであることが適当である。
【0020】また、BF2イオンの様なボロン分子イオンを用いたとしてもその効果は同様ある。ただし、その場合、ドーズ量は1013cm-2程度まで低くしても同様の効果がある。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、全反射蛍光X線装置の感度を一桁以上上昇させことができ迅速に評価可能であり、工場の重金属汚染管理に大きな効果を引き出すことができ、その実用的効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例における重金属評価方法の評価のフロー図
【図2】本発明の第1の実施例における重金属評価方法の評価のフロー図
【図3】本発明の第1の実施例における重金属評価方法の評価のフロー図
【図4】本発明の第2の実施例における重金属評価方法の評価のフロー図
【図5】本発明の第2の実施例における重金属評価方法の評価のフロー図
【図6】本発明の第2の実施例における重金属評価方法の評価のフロー図
【図7】ボロンの注入量と鉄濃度との関係を示す図
【符号の説明】
1 シリコン基板
2 ボロンビーム
3 注入ダメージ層
4 重金属
5 ゲッター層

【特許請求の範囲】
【請求項1】シリコン基板にイオン注入を施し、ゲッター層を形成する工程と、前記シリコン基板に熱処理を行ない、重金属を前記ゲッター層にゲッターさせる工程と、その後、重金属の表面分析を行うことを特徴とする重金属評価方法。
【請求項2】イオン注入のイオンがボロンイオンあるいはボロン分子イオンあるいはカーボンイオンであることを特徴とする請求項1記載の重金属評価方法。
【請求項3】ボロンイオンの注入量が1014cm-2以上であることを特徴とする請求項2記載の重金属評価方法。
【請求項4】表面分析を蛍光X線あるいは全反射蛍光X線による分析で行うことを特徴とする請求項1記載の重金属評価方法。
【請求項5】イオン注入の加速エネルギーをゲッター層が基板内部に埋め込まれる値とすることを特徴とする請求項1記載の重金属評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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