説明

野菜汁及び果汁入り炭酸飲料、野菜汁及び果汁入り容器詰炭酸飲料、野菜汁及び果汁入り炭酸飲料の製造方法、並びに野菜汁及び果汁入り炭酸飲料における沈殿抑制方法

【課題】野菜汁及び果汁を含有しつつ、野菜や果実中の固形物(例えば、食物繊維等の不溶性成分等)の凝集・沈殿による見栄えの悪さを改善することのできる野菜汁及び果汁入り炭酸飲料、当該炭酸飲料を容器に充填してなる野菜汁及び果汁入り容器詰炭酸飲料、当該炭酸飲料の製造方法、並びに当該炭酸飲料における沈殿抑制方法を提供する。
【解決手段】野菜汁及び果汁入り炭酸飲料は、野菜汁として少なくともニンジン汁を、果汁として少なくともオレンジ果汁を含有するとともに、パプリカ色素を含有し、野菜及び果実に由来する固形物量が、炭酸飲料全量に対して0.05〜0.6質量%であり、オレンジ果汁の含有量が、ストレート果汁換算で炭酸飲料全量に対して5〜11質量%であり、パプリカ色素の含有量が、炭酸飲料全量に対して0.04〜0.08質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜汁及び果汁入り炭酸飲料、野菜汁及び果汁入り容器詰炭酸飲料、野菜汁及び果汁入り炭酸飲料の製造方法、並びに野菜汁及び果汁入り炭酸飲料における沈殿抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜や果実の摂取不足を背景とし、野菜や果実に含まれる栄養素等(食物繊維等の不溶性成分等)を手軽に摂取することのできる野菜汁及び/又は果汁入り飲料が知られている(特許文献1参照)。一方で、炭酸ガスによる清涼感、爽快感等を得ることのできる炭酸飲料も知られている。近年、これらの野菜や果実に含まれる栄養素を手軽に摂取しつつ、炭酸ガスによる清涼感、爽快感等を味わうことのできる野菜汁及び/又は果汁入り炭酸飲料が望まれている。
【0003】
しかしながら、野菜汁及び/又は果汁を含有した飲料を長時間静置させておくと、飲料に含まれる野菜や果実中の不溶性成分(例えば、食物繊維等)の凝集・沈澱が生じてしまい、飲料の性状が安定し難いため、それらの不溶性成分を飲料とともに摂取するためには、飲料を攪拌等することにより、沈殿した不溶性成分を飲料中に分散させる必要がある。一方で、炭酸飲料は、飲料中に炭酸ガスを高圧下で溶解させていることから、飲料を攪拌等してしまうと飲料から炭酸ガスが抜けてしまうため、炭酸ガスによる清涼感、爽快感等を得ることができなくなってしまう。また、炭酸飲料が容器に充填されてなる容器詰炭酸飲料においては、飲料を攪拌するために容器を振とうすると、飲料が噴出したり、容器が変形したりするおそれがある。
【0004】
また、近年、飲料はペットボトル等の透明性を有する容器に充填された形態で販売されることが多いため、野菜汁及び/又は果汁を含む飲料においては、不溶性成分の凝集・沈殿により容器詰飲料の見栄えが悪化してしまうという問題がある。このような問題を解決し得る野菜汁及び/又は果汁を含有する炭酸飲料としては、アルコール飲料ではあるが、トマトの透明汁のみを配合してなる炭酸入りアルコール飲料が従来知られているが(特許文献2参照)、透明汁のみを配合することで不溶性成分の沈殿を抑制し得るものの、透明汁を得る段階で野菜や果実に含まれる栄養素等が除去されてしまい、当該栄養素等を十分に摂取することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−189724号公報
【特許文献2】特開2007−189934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、野菜汁及び果汁を含有しつつ、野菜や果実中の固形物(例えば、食物繊維等の不溶性成分等)の凝集・沈殿による見栄えの悪さを改善することのできる野菜汁及び果汁入り炭酸飲料、当該炭酸飲料を容器に充填してなる野菜汁及び果汁入り容器詰炭酸飲料、当該炭酸飲料の製造方法、並びに当該炭酸飲料における沈殿抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、野菜汁及び果汁を含有する炭酸飲料であって、前記野菜汁として少なくともニンジン汁を、前記果汁として少なくともオレンジ果汁を含有するとともに、パプリカ色素を含有し、野菜及び果実に由来する固形物量が、前記炭酸飲料全量に対して0.05〜0.6質量%であり、前記オレンジ果汁の含有量が、ストレート果汁換算で前記炭酸飲料全量に対して5〜11質量%であり、前記パプリカ色素の含有量が、前記炭酸飲料全量に対して0.04〜0.08質量%であることを特徴とする野菜汁及び果汁入り炭酸飲料を提供する(請求項1)。
【0008】
上記発明(請求項1)によれば、野菜汁としてニンジン汁を含有するとともに、オレンジ果汁を上記範囲内にて含有することで、ニンジン汁に由来する固形物(例えば、食物繊維等の不溶性成分等)の凝集・沈殿を抑制することができる。また、パプリカ色素を上記範囲内にて含有することで、炭酸飲料の液色をオレンジ色にし、野菜汁及び果汁入り炭酸飲料における固形物(例えば、食物繊維等の不溶性成分等)の凝集・沈殿を目立ち難くすることができるため、見栄えの良好な野菜汁及び果汁入り炭酸飲料とすることができる。
【0009】
上記発明(請求項1)においては、前記オレンジ果汁の含有量が、ストレート果汁換算で前記炭酸飲料全量に対して6〜8質量%であるのが好ましく(請求項2)、上記発明(請求項1,2)においては、前記パプリカ色素の含有量が、前記炭酸飲料全量に対して0.04〜0.06質量%であるのが好ましく(請求項3)、上記発明(請求項1〜3)においては、前記ニンジン汁の含有量が、搾汁液換算で前記炭酸飲料全量に対して10〜25質量%であるのが好ましい(請求項4)。
【0010】
上記発明(請求項2〜4)によれば、野菜汁及び果汁入り炭酸飲料における固形物(例えば、食物繊維等の不溶性成分等)の凝集・沈殿をより目立たなくすることができ、見栄えのさらに良好な野菜汁及び果汁入り炭酸飲料とすることができる。
【0011】
上記発明(請求項1〜4)においては、ガスボリュームが、1.7〜2.7であるのが好ましい(請求項5)。かかる発明(請求項5)のようにガスボリュームが上記範囲内であることで、炭酸ガスによる適度な清涼感や爽快感等を得ることができる。
【0012】
また、本発明は、上記発明(請求項1〜5)に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料を容器に充填してなることを特徴とする野菜汁及び果汁入り容器詰炭酸飲料を提供する(請求項6)。
【0013】
上記発明(請求項6)においては、前記容器が、透明性を有する容器であるのが好ましい(請求項7)。かかる発明(請求項7)によれば、透明性を有する容器に充填されていたとしても、固形物(例えば、食物繊維等の不溶性成分等)の凝集・沈殿が目立ち難いため、容器詰炭酸飲料の見栄えを良好にすることができる。
【0014】
さらに、本発明は、野菜汁及び果汁を含有する炭酸飲料を製造する方法であって、少なくとも、前記野菜汁としてのニンジン汁、前記果汁としてのオレンジ果汁及びパプリカ色素を前記炭酸飲料の飲料原料として用い、野菜及び果実に由来する固形物量が、得られる前記炭酸飲料全量に対して0.05〜0.6質量%となり、前記オレンジ果汁の含有量が、ストレート果汁換算で、得られる前記炭酸飲料全量に対して5〜11質量%となり、前記パプリカ色素の含有量が、得られる前記炭酸飲料全量に対して0.04〜0.08質量%となるように、前記飲料原料を混合することを特徴とする野菜汁及び果汁入り炭酸飲料の製造方法を提供する(請求項8)。
【0015】
上記発明(請求項8)によれば、野菜や果実に由来する固形物(例えば、食物繊維等の不溶性成分等)の沈殿を抑制することができるとともに、そのような沈殿を目立ち難くすることのできる野菜汁及び果汁入り炭酸飲料を製造することができる。
【0016】
さらにまた、本発明は、野菜汁及び果汁入り炭酸飲料における固形物の沈殿を抑制する方法であって、少なくとも、前記野菜汁としてのニンジン汁、前記果汁としてのオレンジ果汁及びパプリカ色素を前記炭酸飲料に含有せしめ、野菜及び果実に由来する固形物量を前記炭酸飲料全量に対して0.05〜0.6質量%とし、前記オレンジ果汁の含有量がストレート果汁換算で前記炭酸飲料全量に対して5〜11質量%とし、前記パプリカ色素の含有量が前記炭酸飲料全量に対して0.04〜0.08質量%とすることを特徴とする沈殿抑制方法を提供する(請求項9)。
【0017】
上記発明(請求項9)によれば、野菜汁及び果汁入り炭酸飲料において、野菜や果実に由来する固形物(例えば、食物繊維等の不溶性成分等)の沈殿を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本発明は、野菜汁及び果汁を含有しつつ、野菜や果実中の固形物(例えば、食物繊維等の不溶性成分等)の凝集・沈殿による見栄えの悪さを改善することのできる野菜汁及び果汁入り炭酸飲料、当該炭酸飲料を容器に充填してなる野菜汁及び果汁入り容器詰炭酸飲料、当該炭酸飲料の製造方法、並びに当該炭酸飲料における沈殿抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料は、野菜汁として少なくともニンジン汁を、果汁として少なくともオレンジ汁を含有する。
【0020】
本実施形態において、野菜汁には、野菜の搾汁液、搾汁液を濃縮した濃縮汁、野菜の搾汁液に酵素処理等を施すことで清澄化した透明汁等が含まれ、果汁には、果実の搾汁液、搾汁液を濃縮した濃縮果汁、濃縮果汁をさらに希釈した還元果汁、搾汁液に酵素処理等を施すことで清澄化した透明果汁等が含まれる。
【0021】
本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料は、野菜汁として少なくともニンジン汁を含むものであればよいが、所望により他の野菜汁を含むものであってもよい。当該炭酸飲料に含有され得る野菜汁としては、例えば、レタス汁、キャベツ汁、ホウレンソウ汁、トマト汁、パセリ汁、セロリ汁、タマネギ汁、有色甘藷汁、インゲン豆汁、ブロッコリー汁、ケール汁、カボチャ汁、ピーマン汁、アスパラガス汁、白菜汁、小松菜汁、明日葉汁、クレソン汁、ダイコン汁及び三つ葉汁等が挙げられる。
【0022】
本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料は、果汁として少なくともオレンジ果汁を含むものである。果汁としてオレンジ果汁を配合することで、オレンジ果汁に由来するパルプ質が、野菜汁として含まれるニンジン汁に由来する不溶性成分等の凝集・沈殿を抑制することができる。
【0023】
本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料は、果汁として少なくともオレンジ果汁を含むものであればよいが、所望により他の果汁を含むものであってもよい。当該炭酸飲料に含有され得る果汁としては、例えば、リンゴ果汁、レモン果汁、グレープフルーツ果汁、パイナップル果汁、ブドウ果汁、ピーチ果汁、温州ミカン汁等が挙げられる。
【0024】
なお、本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料に含まれ得る野菜汁及び果汁のうち、少なくともニンジン汁の一部又は全部及びオレンジ果汁は、食物繊維、タンパク質、タンニン、ペクチン質等の固形物(不溶性成分)を含むものである。このような不溶性成分を含むことで、炭酸飲料に野菜(ニンジン)及び/又は果実(オレンジ)に由来する栄養素を十分に含有せしめることができるとともに、飲料における野菜汁及び/又は果汁の呈味や食感を良好にすることができる。
【0025】
本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料は、さらにパプリカ色素を含有するものである。パプリカ色素を炭酸飲料に配合することで、炭酸飲料の液色をオレンジ系の液色にすることができるため、ニンジンやオレンジに由来する不溶性成分の凝集・沈殿を目立ち難くすることができ、炭酸飲料の見栄えを良好にすることができる。
【0026】
本実施形態において、パプリカ色素(別名:トウガラシ色素)は、色素成分カプサンチンを主要成分とする、黄橙〜赤色を呈する色素であり、ナス科トウガラシ属に属する植物(例えば、パプリカ(学名:Capsicum annum L.)等)を乾燥させ、有機溶剤で抽出してなる抽出液から溶媒を留去することで、例えば、濃縮物、乾燥物等として得ることができる。
【0027】
本実施形態に係る炭酸飲料において、オレンジ果汁の含有量は、オレンジストレート果汁(オレンジの果実からの搾汁液)に換算して、炭酸飲料全量に対して5〜11質量%であって、パプリカ色素の含有量は、炭酸飲料全量に対して0.04〜0.08質量%である。好ましくは、オレンジ果汁の含有量が6〜8質量%であって、パプリカ色素の含有量が0.04〜0.06質量%である。
【0028】
オレンジ果汁の含有量が5質量%未満であると、ニンジンに由来する不溶性成分の凝集・沈殿を抑制するのが困難となるおそれがあり、11質量%を超えると、ニンジン由来の不溶性成分の凝集・沈殿を抑制することができるものの、オレンジ由来の不溶性成分の凝集・沈殿が目立ち易くなり、炭酸飲料の見栄えに影響を及ぼすおそれがある。
【0029】
また、パプリカ色素の含有量が0.04質量%未満であると、炭酸飲料の液色が薄く、ニンジンやオレンジに由来する不溶性成分の凝集・沈殿が目立ち、炭酸飲料の見栄えが悪くなるおそれがあり、0.08質量%を超えると、パプリカ色素が炭酸飲料の香味に影響を及ぼすおそれがあり、かつ経時劣化による退色が目立つおそれがある。
【0030】
ニンジン汁の含有量は、ニンジン搾汁液に換算して、炭酸飲料全量に対して10〜25質量%であるのが好ましく、特に15〜20質量%であるのが好ましい。ニンジン汁の含有量が上記範囲内であることで、ニンジンに由来する不溶性成分の凝集・沈殿を抑制しつつ、炭酸飲料にニンジン特有の呈味、食感等を付与することができる。
【0031】
野菜及び果実に由来する固形物(不溶性成分)量は、炭酸飲料全量に対して0.05〜0.6質量%であるのが好ましく、0.2〜0.4質量%であるのがより好ましい。固形物(不溶性成分)量が上記範囲内であることで、野菜及び果実に由来する固形物(不溶性成分)の沈殿を目立ち難くすることができ、炭酸飲料の見栄えを良好にすることができる。
【0032】
本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料におけるガスボリュームは、1.7〜2.7であるのが好ましく、2.0〜2.5であるのがより好ましい。ガスボリュームが上記範囲内であれば、野菜や果実による呈味、食感等を損なうことなく、炭酸ガスによる清涼感、爽快感等を付与することができる。なお、本実施形態におけるガスボリュームとは、1気圧15.6℃において、炭酸飲料中に溶解している炭酸ガスの体積を炭酸飲料の体積で割ったものをいう。
【0033】
本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料のpHは、3.5〜4.2であるのが好ましく、3.7〜4.0であるのがより好ましい。炭酸飲料のpHが上記範囲であれば、野菜や果実の呈味を損なうことなくほどよい酸味を与えることができる。
【0034】
また、本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料は、所望により、砂糖、ブドウ糖、果糖、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、高果糖液糖、オリゴ糖、トレハロース、キシリトール、スクラロース、ステビア抽出物、ソルビトール、カンゾウ抽出物やラカンカ抽出物等の砂糖類及び甘味料;ペクチン、ゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、大豆多糖類、アラビアガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム等の増粘安定剤;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料;酸化防止剤;炭酸水素ナトリウム(重曹)等のpH調整剤;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤;食物繊維、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナイアシン、パントテン酸等の強化剤;各種乳酸菌等をさらに含有していてもよい。
【0035】
本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料は、容器に充填した形態で提供することができる。当該容器としては、例えば、金属缶、PETボトル、紙容器、ガラスビン等が挙げられるが、これらのうちPETボトルやガラスビン等の透明性を有する容器であるのが好ましい。本実施形態に係る炭酸飲料は、野菜や果実に由来する不溶性成分の凝集・沈殿が抑制され、目立ち難いものであるため、透明性を有する容器に充填し、長時間静置されたとしても、炭酸飲料の見栄えを良好に維持することができる。
【0036】
本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、飲用に適した水(例えば、イオン交換水、井水、市水等)にニンジン汁、オレンジ果汁、パプリカ色素を上述したような含有量となるように添加し、所望によりその他の野菜汁、果汁、食品添加物等をさらに添加して攪拌し、飲料原液を調製する。そして、飲料原液にpH調整剤やレモン透明果汁等を添加することにより、飲料原液のpHを所定の範囲に調整する。その後、pHを調整した飲料原液を加熱殺菌して容器に充填し、冷却してガスボリュームが所定の範囲になるように炭酸ガスを封入(カーボネーション)する。このようにして、本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料を製造することができる。
【0037】
このようにして得られた本実施形態に係る野菜汁及び果汁入り炭酸飲料は、ニンジン汁等の野菜汁やオレンジ果汁等の果汁に由来する不溶性成分の凝集・沈殿を抑制することができるとともに、パプリカ色素を配合することにより、このような不溶性成分の凝集・沈殿を目立ち難くすることができるため、野菜汁及び果汁入り炭酸飲料の見栄えを良好にすることができる。
【実施例】
【0038】
以下、試験例を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。
【0039】
〔試験例1〕
搾汁液換算で炭酸飲料全量に対して6.3質量%のニンジン混濁汁、搾汁液換算で飲料全量に対して14.4質量%のニンジン透明汁、オレンジ果汁、パプリカ色素、甘味料、香料及び水を飲料原料として用い、飲料原液を調製した。なお、オレンジ果汁のストレート果汁換算での炭酸飲料全量に対する配合率、パプリカ色素の炭酸飲料全量に対する配合率、炭酸飲料全量に対する固形物の配合率を表1に示す。また、甘味料及び香料の配合量は、得られる炭酸飲料の呈味等を考慮して適宜調整した。
【0040】
なお、固形物量の測定は、下記のようにして行った。
試料を10.00g取り、3000rpm、10分間の条件で遠心分離した。試料の上清を取り出し、残った沈殿物を、予め重量を測定しておいた濾紙上にあけた。その後、濾紙を乾燥させてから濾紙と沈殿物との合計重量を測定し、測定結果から濾紙の重量を減算し、固形物量とした。
【0041】
得られた飲料原液にレモン透明果汁を添加して、pH3.8に調整した後、加熱殺菌し、透明容器に充填して10℃以下に冷却し、炭酸ガスを封入して、ガスボリュームを2.5に調整した野菜汁及び果汁入り炭酸飲料を製造した(試料1〜9)。
【0042】
【表1】

【0043】
上述のようにして得られた野菜汁及び果汁入り炭酸飲料(試料1〜9)を、一週間37℃の条件下で静置し、目視による色調(液色)、沈殿及び経時劣化の程度を評価した。結果を表2に示す。なお、表2中、液色、沈澱及び経時劣化の評価点は、飲料として大変好ましいものを5点、適当であるものを3点、許容範囲であるものを0点、不適当であるものを−5点とした。また、総合評価点は、各試料における液色、沈澱及び経時劣化の評価点をすべて合計したものであり、3点以下のものは「飲料として不適当」、4〜6点のものは「飲料として適当」、7点以上のものは「飲料として大変好ましい」として評価した。
【0044】
【表2】

【0045】
表2に示すように、オレンジ果汁の配合率が3.34質量%である試料1〜3の炭酸飲料においては、ニンジン由来の不溶性成分の沈殿が抑制されず、当該沈殿が目立ってしまうが、オレンジ果汁の配合率が6.68質量%の試料4〜6の炭酸飲料においては、ニンジン由来の不溶性成分の沈殿を抑制可能であることが判明した。また、オレンジ果汁の配合率が10.02質量%の試料7〜9の炭酸飲料においては、ニンジン由来の不溶性成分の沈殿は抑制できるものの、オレンジ果汁に由来する沈殿が生じてしまうことが判明した。
【0046】
また、パプリカ色素の配合率が0.025質量%の試料1,4においては、炭酸飲料の液色がかなり薄く、ニンジン由来の不溶性成分の沈殿が目立つが、パプリカ色素の配合率が0.05質量%以上の試料5,6,8,9においては、ニンジン由来の不溶性成分の沈殿が目立ち難いことが判明した。なお、試料7の飲料においては、パプリカ色素の配合率が0.025質量%であるが、オレンジ果汁の配合率が10.02質量%であることで、液色が若干薄いものの、ニンジン由来の不溶性成分の沈殿が抑制されているためにニンジン由来の不溶性成分の沈殿が目立ち難くなるものと考えられる。
【0047】
この結果から、野菜汁及び果汁入り炭酸飲料全量に対する固形物含有量が0.05〜0.6質量%である炭酸飲料において、オレンジ果汁の配合率を5〜11質量%、特に6〜8質量%とし、パプリカ色素の配合率を0.04〜0.8質量%、特に0.4〜0.6質量%とすることで、ニンジン及びオレンジに由来する不溶性成分の沈殿を抑制し、目立ち難くすることができ、野菜汁及び果汁入り炭酸飲料の見栄えを良好にすることができると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜汁及び果汁を含有する炭酸飲料であって、
前記野菜汁として少なくともニンジン汁を、前記果汁として少なくともオレンジ果汁を含有するとともに、パプリカ色素を含有し、
野菜及び果実に由来する固形物量が、前記炭酸飲料全量に対して0.05〜0.6質量%であり、
前記オレンジ果汁の含有量が、ストレート果汁換算で前記炭酸飲料全量に対して5〜11質量%であり、
前記パプリカ色素の含有量が、前記炭酸飲料全量に対して0.04〜0.08質量%であることを特徴とする野菜汁及び果汁入り炭酸飲料。
【請求項2】
前記オレンジ果汁の含有量が、ストレート果汁換算で前記炭酸飲料全量に対して6〜8質量%であることを特徴とする請求項1に記載の野菜汁及び果汁入り炭酸飲料。
【請求項3】
前記パプリカ色素の含有量が、前記炭酸飲料全量に対して0.04〜0.06質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の野菜汁及び果汁入り炭酸飲料。
【請求項4】
前記ニンジン汁の含有量が、搾汁液換算で前記炭酸飲料全量に対して10〜25質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の野菜汁及び果汁入り炭酸飲料。
【請求項5】
ガスボリュームが、1.7〜2.7であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の野菜汁及び果汁入り炭酸飲料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の野菜汁及び果汁入り炭酸飲料を容器に充填してなることを特徴とする野菜汁及び果汁入り容器詰炭酸飲料。
【請求項7】
前記容器が、透明性を有する容器であることを特徴とする請求項6に記載の野菜汁及び果汁入り容器詰炭酸飲料。
【請求項8】
野菜汁及び果汁を含有する炭酸飲料を製造する方法であって、
少なくとも、前記野菜汁としてのニンジン汁、前記果汁としてのオレンジ果汁及びパプリカ色素を前記炭酸飲料の飲料原料として用い、
野菜及び果実に由来する固形物量が、得られる前記炭酸飲料全量に対して0.05〜0.6質量%となり、前記オレンジ果汁の含有量が、ストレート果汁換算で、得られる前記炭酸飲料全量に対して5〜11質量%となり、前記パプリカ色素の含有量が、得られる前記炭酸飲料全量に対して0.04〜0.08質量%となるように、前記飲料原料を混合することを特徴とする野菜汁及び果汁入り炭酸飲料の製造方法。
【請求項9】
野菜汁及び果汁入り炭酸飲料における固形物の沈殿を抑制する方法であって、
少なくとも、前記野菜汁としてのニンジン汁、前記果汁としてのオレンジ果汁及びパプリカ色素を前記炭酸飲料に含有せしめ、
野菜及び果実に由来する固形物量を前記炭酸飲料全量に対して0.05〜0.6質量%とし、
前記オレンジ果汁の含有量がストレート果汁換算で前記炭酸飲料全量に対して5〜11質量%とし、
前記パプリカ色素の含有量が前記炭酸飲料全量に対して0.04〜0.08質量%とすることを特徴とする沈殿抑制方法。