説明

野菜粒子含有液状調味料の製造方法

【課題】粒状乾燥野菜(例えば粒状乾燥玉ねぎ、粒状乾燥ニンニク、粒状乾燥大根、粒状乾燥ねぎ)を原料として使用しているにもかかわらず、玉ねぎ、ニンニク、大根、ねぎなどの野菜粒子そのものの具材感、食感及び風味が良好な野菜粒子含有液状調味料を提供する。
【解決手段】液状調味液に、粒径0.1mm〜10.0mmの粒状乾燥野菜を加えて、加熱温度10℃〜80℃の範囲、加熱時間が1分〜120分間の範囲で加熱をしながら若しくは加熱をしないで1分〜120分間攪拌混合して、粒状乾燥野菜を液状調味液全体に均一に分散させ、次に、加熱温度50℃〜120℃の範囲、加熱時間が10秒〜30分の範囲で加熱殺菌させ、次いで、野菜粒子を液状調味液全体に均一に分散させた状態で包装容器に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状乾燥野菜を原料として使用する野菜粒子を含有する液状調味料(以下、野菜粒子含有液状調味料という)の製造方法の改良に関し、粒状乾燥野菜(例えば、粒状乾燥玉ねぎ、粒状乾燥ニンニク、粒状乾燥大根、粒状乾燥ねぎ)を原料として使用しているにもかかわらず、玉ねぎ、ニンニク、大根、ねぎなどの野菜粒子そのものの具材感、食感及び風味が良好な、野菜粒子含有液状調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サラダなどの野菜類や焼き肉などの食肉類に用いるドレッシング類やタレ類などには、液状調味料が多数開発されており、特に、近年は、野菜粒子が独特の具材感や風味を有することなどから、野菜粒子含有液状調味料が、消費者に好まれ、多数市場に出回っている。
野菜粒子含有液状調味料の製造方法としては、野菜粒子を一定の攪拌状態で攪拌しながら液状調味液に加える方法(例えば、特許文献1参照)、及びおろし野菜と乾燥野菜を併用して具材感を付与する方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0003】
しかし、一般に、細かく切った野菜、粉砕した野菜等の野菜粒子を含有する野菜粒子含有液状調味料を製造する際に、野菜粒子は、攪拌や殺菌の工程において組織が軟化し、粒径が小さくなり過ぎたり、野菜粒子の独特の具材感や風味は損なわれたりしている。
また、従来、野菜粒子として、乾燥野菜を使用する場合において、乾燥野菜を十分に膨潤させてから攪拌や殺菌の工程を行うと、野菜粒子は工程途中で組織が軟化したり、粒径が小さくなり過ぎたりしている。上記の野菜粒子含有液状調味料をサラダなどの野菜類や焼き肉などの食肉類にドレッシング類やタレ類として使用する場合、野菜粒子の独特の具材感、食感や風味を食品に十分には付与できず、また、外観的にも良好ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2736873号公報
【特許文献2】特許第3479203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、粒状乾燥野菜(例えば、粒状乾燥玉ねぎ、粒状乾燥ニンニク、粒状乾燥大根、粒状乾燥ねぎ)を原料として使用しているにもかかわらず、玉ねぎ、ニンニク、大根、ねぎなどの野菜粒子そのものの具材感、食感、及び風味が良好な野菜粒子含有液状調味料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、液状調味液に粒状乾燥野菜を混和して野菜粒子含有液状調味料を製造する方法において、該粒状乾燥野菜を予め水で膨潤させることなくそのまま混和するときに、上記課題を解決できることを知り、この知見に基いて本発明を完成した。
【0007】
従って、本発明は、
(1)液状調味液に粒状乾燥野菜を混和して野菜粒子含有液状調味料を製造する方法において、該粒状乾燥野菜を予め水で膨潤させることなく、そのまま混和することを特徴とする野菜粒子含有液状調味料の製造方法。
(2)粒状乾燥野菜が液状調味料全体に対して0.5〜10重量%(W/W)の範囲となるように混和する上記(1)記載の野菜粒子含有液状調味料の製造方法。
(3)粒状乾燥野菜が、粒状の乾燥玉ねぎ、乾燥ニンニク、乾燥大根、乾燥ねぎから選ばれる1種又は2種以上である上記(1)の野菜粒子含有液状調味料の製造方法。
(4)液状調味液に粒状乾燥野菜を混和して野菜粒子含有液状調味料を製造する方法において、液状調味液に、粒径0.1mm〜10.0mmの粒状乾燥野菜を加えて、加熱温度10℃〜80℃の範囲、加熱時間が1分〜120分間の範囲で加熱をしながら若しくは加熱をしないで1分〜120分間攪拌混合して、粒状乾燥野菜を液状調味液全体に均一に分散させ、次に、加熱温度50℃〜120℃の範囲、加熱時間が10秒〜30分の範囲で加熱殺菌させ、次いで、野菜粒子を液状調味液全体に均一に分散させた状態で包装容器に充填することを特徴とする野菜粒子含有液状調味料の製造方法。
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粒状乾燥野菜(例えば、粒状乾燥玉ねぎ、粒状乾燥ニンニク、粒状乾燥大根、粒状乾燥ねぎ)を原料として使用しているにもかかわらず、玉ねぎ、ニンニク、大根、ねぎなどの野菜粒子そのものの具材感、食感及び風味が良好な野菜粒子含有液状調味料を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に用いられる粒状乾燥野菜は、通常市販されているいずれのものも採用可能である。そして、これらの粒状乾燥野菜の使用量は野菜粒子含有液状調味料の0.1〜20重量%(W/W)が好ましく、0.5〜10.0重量%(W/W)がより好ましく、2.0〜5.0重量%(W/W)が最も好ましい。0.1〜20.0重量%(W/W)の範囲に粒状乾燥野菜が含有されることにより、野菜粒子の風味と独特な歯ごたえ感が得られるものとなる。0.1重量%未満の含有量であると、野菜粒子の風味も弱く、歯ごたえ感が得られないものとなる。反対に20.0重量%(W/W)より多い含有量であると歯ごたえ感もしつこいものとなる。
【0010】
粒状乾燥野菜の粒径としては、粒状乾燥野菜全体の50重量%(W/W)が粒径0.1mm〜10mmからなる粒状乾燥野菜、好ましくは粒状乾燥野菜全体の50重量%(W/W)が粒径1mm〜8mmからなる粒状乾燥野菜、さらに好ましくは粒状乾燥野菜全体の80重量%(W/W)が粒径2mm〜5mmからなる粒状乾燥野菜を使用する。この範囲の粒径の粒状乾燥野菜が液状調味液に含有されることにより、野菜粒子含有液状調味料中に野菜粒子が良好な外観を呈し、野菜粒子の風味と独特な歯ごたえ感が得られるものとなる。0.1mm未満の粒径であると、野菜粒子の風味も弱く、歯ごたえ感が得られないものとなる。反対に10mmより大きい粒径であると野菜粒子含有液状調味料中の野菜粒子の外観が望ましいものではなくなる。
【0011】
そして、本発明の液状調味液とは、野菜粒子含有液状調味料から野菜粒子を除いた液状調味液を意味し、醤油、糖類、甘味糖類、甘味料、酒精含有甘味調味料及び香辛料類等の1種又は2種以上が含まれる。例えば、醤油としては、濃口醤油、淡色醤油、溜り醤油、再仕込み醤油、白醤油などの醤油類の1種又は2 種以上が用いられる。また、糖類としては、砂糖、乳糖、麦芽糖、ぶどう糖、果糖、液糖、水飴、デキストリン、異性化糖、及び澱粉などの1種又は2種以上が用いられる。また、甘味糖類としては、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコールなどが用いられる。また、酒精含有甘味調味料としては、みりんなどが用いられる。また、甘味料としてはサッカリン、グリチルリチン、ステビオサイド、アスパラテームなどの1 種又は2 種以上が用いられる。また、香辛料としては、ガーリック、オニオン、オレガノ、タイム、セージ、ジンジャー、レッドペパー、ペパー、オールスパイス、クローブ、ナツメグ、カルダモンなどの1種又は2種以上が用いられる。
【0012】
また、必要により味噌、魚醤、酸味調味料、食酢類、有機酸類、清酒、ワインなどの酒類、発酵調味料、また、例えば、鰹節、鯖節類などの魚節類やコンブ、しいたけなどのきのこ類などからのだし汁、魚介類、野菜類のエキス、ビーフエキス、酵母エキスなどのエキス類、蛋白質加水分解物、グルタミン酸ナトリウム、グリシンなどのアミノ酸系調味料類、イノシン酸などの核酸系調味料類など、また、香料、着色料、でん粉、増粘剤などの原材料が1種又は2種以上用いられる。
【0013】
次に、本発明の野菜粒子含有液状調味料の製造方法は、まず、上記の醤油、甘味糖類、酒類、食酢類、エキス類、アミノ酸系調味料類、旨み調味料、香辛料類などの食品原材料を含有した液状調味液を調製し、この液状調味液の調整と同時、若しくは液状調味液の調整後に粒状乾燥野菜を含有させ、これが液状調味液全体に均一に分散する程度に攪拌を行う。この攪拌工程は、10℃〜80℃程度の温度下で行い、加熱を要する場合は、好ましくは1分から120分の短時間に、さらに好ましくは1分から30分の短時間に加熱を終了する。このとき80℃以上で30分間以上に加熱した場合は、風味が損われたり、具材の軟化や固形がくずれる現象が起こるので好ましくない。
次いで野菜粒子含有液状調味料の殺菌などの理由から、好ましくは10秒から30分の短時間に50℃〜120℃程度の加熱殺菌、さらに好ましくは10秒から2分の短時間に85℃〜105℃程度の加熱殺菌を行う。
【0014】
本発明では、この加熱殺菌処理により乾燥具材を十分に膨潤させることができ、食感の良好な野菜粒子含有液状調味料を得ることができる。
充填時あるいは充填前加熱において、このような温度・時間で処理した場合、乾燥具材が適性に膨潤され、歯ざわり、固さが良好な具材感や食感を得ることができる。また、風味も良好で野菜粒子含有液状調味料として好ましい品質を得ることができる。
すなわち、乾燥野菜を液状調味液に含有させ、その液状調味液全体にそれらを分散させるに際して、まず、液状調味液全体に乾燥野菜を短時間で分散させて、次いで高温短時間の加熱殺菌させることが、本発明における野菜粒子含有液状調味料の製造方法の重要な要素である。したがって、乾燥野菜を液状調味液全体に分散させて、十分に膨潤させてしまったりする調製方法や、長時間の殺菌方法などでは、本発明の目的は達成できない。
次に、実施例を挙げて本発明を説明する。
【実施例1】
【0015】
(液状調味液の調製)
濃口醤油400kg、異性化糖液糖210kg、醸造酢20kg、リンゴのすりおろしたもの12kg、にんにく15kg、コショウ2kg、味噌15kg、キサンタンガム2.5kg、水300kgを混和し、均一に攪拌して液状調味液を調製した。
【実施例2】
【0016】
(液状調味液に、粒状乾燥野菜を予め水で膨潤させることなく、そのまま混和する野菜粒子含有液状調味料の調製)
上記で得た液状調味液に平均粒径3mmの乾燥玉ねぎ40kgを加えた。
次いでこれを均一に攪拌しつつ50℃に加熱し、この温度で10分間の加熱処理を施した。次いで、連続的に、95℃に加熱し、この温度で0.5分間の加熱殺菌処理を施した。次いで、これを60℃にまで冷却した後、PETボトルに充填・密栓して、野菜粒子含有液状調味料を得た。このようにして製造した野菜粒子含有液状調味料は、食味及び風味の優れたドレッシングタイプの野菜粒子含有液状調味料であり、かつ野菜粒子含有液状調味料中に良好な外観を呈する野菜粒子が十分に含まれたものであった。
【0017】
(比較例1)
(液状調味液に、粒状乾燥野菜を十分膨潤させた後、そのまま混和する野菜粒子含有液状調味料の調製)
上記実施例1で得た液状調味液に平均粒径3mmの乾燥玉ねぎ40kgを加えた。
次いでこれを均一に攪拌しつつ室温15℃で、一晩放置し十分膨潤させた。次いで、連続的に、95℃に加熱し、この温度で0.5分間の加熱殺菌処理を施した。次いで、これを60℃にまで冷却した後、PETボトルに充填・密栓して、野菜粒子含有液状調味料を得た。このようにして製造した野菜粒子含有液状調味料は、風味が損なわれ、具材の軟化や固形がくずれる現象が起き、ドレッシングタイプの野菜粒子含有液状調味料として十分ではなかった。
【0018】
(比較例2)
(液状調味液に、粒状乾燥野菜を高温で予備加熱した後、そのまま混和する野菜粒子含有液状調味料の調製)
上記実施例1で得た液状調味液に平均粒径3mmの乾燥玉ねぎ40kgを加えた。
次いでこれを均一に攪拌しつつ90℃に予備加熱し、この温度で10分間の加熱処理を施した。次いで、連続的に、95℃に加熱し、この温度で0.5分間の加熱殺菌処理を施した。次いで、これを60℃にまで冷却した後、PETボトルに充填・密栓して、野菜粒子含有液状調味料を得た。このようにして製造した野菜粒子含有液状調味料は、風味が損なわれ、具材の軟化や固形がくずれる現象が起き、ドレッシングタイプの野菜粒子含有液状調味料として十分ではなかった。
これらの結果を表1に示す。
【0019】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状調味液に粒状乾燥野菜を混和して野菜粒子含有液状調味料を製造する方法において、
液状調味液に、粒径0.1mm〜10.0mmの粒状乾燥野菜を加えて、加熱温度10℃〜80℃の範囲、加熱時間が1分〜120分間の範囲で加熱をしながら若しくは加熱をしないで1分〜120分間攪拌混合して、粒状乾燥野菜を液状調味液全体に均一に分散させ、次に、加熱温度50℃〜120℃の範囲、加熱時間が10秒〜30分の範囲で加熱殺菌させ、次いで、野菜粒子を液状調味液全体に均一に分散させた状態で包装容器に充填することを特徴とする野菜粒子含有液状調味料の製造方法。

【公開番号】特開2011−152147(P2011−152147A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84818(P2011−84818)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【分割の表示】特願2006−34873(P2006−34873)の分割
【原出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】