説明

野菜類スライサー

【課題】野菜等の加工品のスライス厚を規制する間隙の拡縮が自在であって、1台で以て種々のスライス厚要請に応えることができて極めて経済的な野菜類スライサーを提供することを課題とする。
【解決手段】自転すると共に公転して、投入された加工物を間隙13に対応する厚さにスライスする丸刃14を備えたスライサーであって、回転基板11の裏面に、回転基板11を駆動軸の軸方向に押し引きして、回転基板11の円形開口12と丸刃14の間隙13の拡縮調整をする間隙調整手段を設けた。間隙調整手段は、回転基板11の裏面に固定される係合突子21と、係合突子21を摺動可能に係合させる湾曲溝23を有していて、回転ケース16に枢動可能に設置される調整部材22とから成り、湾曲溝23は、その一端から他端にかけて調整部材22の枢軸25からの距離が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜類スライサーに関するものであり、より詳細には、キャベツ、ニンジン、ごぼう、長ネギ、タマネギ、きゅうりその他の野菜、果実類、キノコ類その他の食材(以下「野菜類」とする)のスライス加工品を量産するための野菜スライサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品工場、弁当工場、スーパー、レストランのみならず、最近では外食チェーン店において、野菜類のスライス品が大量に必要とされているが、この需要に応えるために野菜類のスライス品を人手によって製造していたのでは、非効率で、到底採算が取れないことは言うまでもない。そこで、この要請に応えるために、本発明者は先に、非常に簡単な装備で野菜類のスライス加工を効率よく行うことができる野菜類切断機を開発した(特許文献1:特許第3817588号公報)。
【0003】
この野菜類切断機は、切断した野菜類の落下口を形成した機枠(1)内にモータを固装し、該モータのモータ軸の貫通突出部に遊嵌した固定太陽歯車(18)を機枠(1)に固着し、固定太陽歯車(18)をその周りの中空回転盤(19)で被覆し、中空回転盤(19)をビスによってモータ軸に固定し、中空回転盤(19)内には固定太陽歯車(18)と噛み合い、その周りを自転し、公転する遊星歯車を持つ回転軸を設け、中空回転盤(19)の前面に複数の弾性体を介して複数のねじで円形回転盤(25)を取付け、円形回転盤(25)の偏心円孔にのぞませて前記回転軸の先端に円板状回転刃(26)を固着し、円板状回転刃(26)と対向して変形誘導筒(7)及び斜め切り間隙(9)を形成し、且つ、斜め切り間隙(9)に野菜類の切断角度の調整可能なガイド板(10)を装備して成るものである(図6、7参照)。
【0004】
この従来の野菜類切断機においては、変形誘導筒(7)から野菜類を挿込んで円形回転盤(25)に当て、モータ(2)を作動させると、円板状回転刃(16)は高速回転し、中空回転盤(19)及び円形回転盤(25)は低速で回転して野菜類を直角に切断する。また、斜め切りガイド板(10)を所望の傾斜角度に設定して間隙(9)より野菜類を挿込むと、斜め切りができる。
【0005】
しかるに、この従来の野菜切断機の場合、投入された野菜は、円形回転盤(25)と、円形回転盤(25)の回転に伴って自転しつつ公転する円板状回転刃(26)との間隙において、当該間隙の幅に対応する厚みに切断されていくが、この間隙は一定のものであって、円形回転盤(25)の支持軸のネジを緩めてゲージを用いて調整したり、部品交換したりしない限り、その間隙、換言すれば、野菜類のスライス厚を変更することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3817588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、上記従来の野菜類切断機の場合は、円形回転盤(25)の支持軸のネジを緩めてゲージを用いて調整したり部品交換したりしない限り、野菜類のスライス厚を変更することができない煩わしさがあって、要求されるスライス厚が均一ではない場合には実質的には1台で対応することができず、複数台用意することを余儀なくされるという問題がある。そこで本発明は、そのような問題のない、即ち、簡易な構成にして、スライス加工する野菜類のスライス厚を規制することになる間隙の拡縮が自在であって、1台で以て種々のスライス厚要請に応えることができて、極めて経済的な野菜類スライサーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、偏心的に円形開口を設けた回転基板と、前記円形開口の内縁部との間に適宜間隙を保持して前記円形開口内に臨むように配置される丸刃とを備え、前記回転基板は、回転駆動源の駆動軸に固定された回転ケースに取り付けられて回転駆動され、前記丸刃は、前記回転ケース内において前記駆動軸の回転が伝動されて回転駆動される自転軸に固定されて自転すると共に、前記回転ケースの回転に伴って公転し、投入された野菜類を前記丸刃の自転及び公転動作に伴い、前記丸刃と前記円形開口の内縁部との間の前記間隙に対応する厚さにスライスするスライサーであって、前記間隙は、前記回転基板の裏面の1個所又は複数個所に設置されて、前記回転基板の一部又は全体を前記駆動軸の軸方向に押し引きする間隙調整手段の作用で拡縮調整可能にされる。
【0009】
前記間隙調整手段は、前記回転基板の裏面に固定される係合突子と、前記係合突子を摺動可能に係合させる湾曲溝を有していて、前記回転ケースに枢動可能に設置される調整部材とから成り、前記湾曲溝は、その一端から他端にかけて前記調整部材の枢軸からの距離が変化するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述したとおりであって、回転基板の裏面に、前記回転基板の一部又は全体を駆動軸の軸方向に押し引きする間隙調整手段が設けられ、この間隙調整手段の作用により、スライス厚を決定することになる丸刃と回転基板との間の間隙の拡縮調整が可能であるので、1台のスライサーにて簡単な操作で、要求されるスライス厚が異なる複数種の野菜類のスライス加工に対応でき、種々の野菜類のスライス加工品を効率よく量産し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る野菜類スライサーの一実施形態の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る野菜類スライサーの一実施形態の分解斜視図である。
【図3】本発明に係る野菜類スライサーの一実施形態の要部斜視図である。
【図4】本発明に係る野菜類スライサーの一実施形態の要部斜視図である。
【図5】本発明に係る野菜類スライサーの一実施形態の一部切截斜視図である。
【図6】従来の野菜類切断機の構成を示す斜視図である。
【図7】従来の野菜類切断機の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態につき、添付図面に依拠して説明する。図1は、本発明に係る野菜類スライサーの全体斜視図で、そこに示されるように、本スライサーは、スタンド1に支持される本体部2と、本体部2に脱着可能に被装される外装カバー3とから成る。
【0013】
外装カバー3は、スライス加工する野菜類を投入するための投入口4と、加工済みスライス品を供出するための下方に開口する供出口5とを備えていて、その投入口4には、加工物の種類に対応する形状のガイド孔7を設けたアタッチメント6が、脱着自在に嵌め付けられる。図示してないが、供出口4の下には、供出されるスライス品を回収するための回収ケースが配置される。符号8は固定ネジで、外装カバー3を本体部2に取り付ける際に締め付け、外装カバー3を本体部2から外す際に緩める。
【0014】
図2、3に示されるように、本体部2は、投入された野菜類をスライスするスライシング部と、スライシング部の回転駆動源であるモーターを収容するモーターケース10とから成る。スライシング部は、偏心的に円形開口12を設けた回転基板11と、円形開口12の内縁部との間に適宜間隙13を保持して、円形開口12内に臨むように配置される丸刃14と、軸筒15を通して延出する回転駆動源のモーターの駆動軸に固定される回転ケース16と、回転ケース16内に配備される固定太陽歯車9とから成り(図5参照)、回転基板11は、回転ケース16に取り付けられて回転ケース16と一体に回転する。
【0015】
好ましい実施形態においては、回転基板11の円形開口12は、図示したように外端部が開放されて形成され、回転基板11は三日月型を呈する。また、回転基板11の表面に、例えば同心円状、格子状等にした低い突条を設け、野菜類が密着することを防止する。回転基板11は、その裏面に固定した数本の支持軸17を、回転ケース16の側面に設けた軸支持部18において支持させることにより、回転ケース16に取り付けられる(特に図3参照)。
【0016】
図5に示されるように、丸刃14は、回転ケース16内において軸支される回転軸(自転軸19)に取り付けられ、自転軸19には、固定太陽歯車9に噛合する遊星歯車20が設置される。固定太陽歯車9は、モーターケース10に設置されて一部が軸受16aを介して回転ケース16内に進入する軸筒15の端部に固定され、回転することはない。モーターの駆動軸は軸筒15内において軸支されて延び、軸筒15の先端部から突出するその先端部15aが、回転ケース16の内側面に固定される。
【0017】
かくして、モーターの回転駆動力がその駆動軸先端部15aから回転ケース16に伝達され、回転ケース16に取り付けられている回転基板11が、回転ケース16と一体に回転する。この回転ケース16及び回転基板11の回転に伴い、丸刃14の自転軸19も駆動軸を軸に回転(公転)するが、それに取り付けられている遊星歯車20が固定太陽歯車9に噛合しているため、公転しつつ、その公転方向と同一方向に高速に自転して、投入されてくる野菜類を、連続的にその間隙13に対応する厚みにスライスする。なお、上述した回転駆動力の伝達方法はあくまで一例で、これに限られる訳ではなく、上記丸刃14の自転・公転を達成し得る構成であれば、適用可能である。
【0018】
以上の構成は、基本的には従来のものと変わりはないが、本発明においては、回転基板11の裏面の1個所又は複数個所に、回転基板11を駆動軸の軸方向に押し引きする間隙調整手段を設け、この間隙調整手段の作用で間隙13の拡縮調整を可能にしたことを特徴としている。間隙調整手段を1個所に設ける場合は、円形開口12の縁部である嘴状部11aの裏面に配置する。
【0019】
図示した実施形態は、間隙調整手段を回転基板11の裏面の1個所に設ける場合であり、この場合間隙調整手段として、嘴状部11aの裏面に係合突子21が配備されると共に、回転ケース16に係合突子21を摺動可能に係合させる湾曲溝23を有していて、無段階に回動可能な調整部材22が配備される。調整部材22は扇形を呈していて、回転ケース16に、その端面から側面に延びるように取り付けられたブラケット24に枢支される。湾曲溝23は、その一端から他端にかけて、調整部材22の枢軸25からの距離(d1〜d2)が変化するように形成される(図3参照)。
【0020】
図示した好ましい実施形態においては、湾曲溝23に沿って間隙13に対応する数値(1〜5mm)が表示され、1mmの表示個所における枢軸25からの距離d1が最も長く、5mmの表示個所における枢軸25からの距離d2が最も短くなっている。また、調整部材22の枢動操作を容易にするために、調整部材22の両側に摘み板26が形成されている。なお、枢軸25の緊締力が強くされるため、調整部材22が運転中に不用意に回動することはない。
【0021】
かかる構成の調整部材22を摘み板26を摘んで枢動させると、係合突子21は、その枢動角度に対応する距離だけ、湾曲溝23に沿って水平方向に移動する結果、回転基板11の嘴状部11aが押され又は引かれることで、間隙13が拡がり又は狭まる。この場合は、嘴状部11a部分が反ることで間隙13が拡がることになるため、回転基板11は、少なくともその嘴状部11aが、係合突子21の動きに伴って反ることが可能な可撓性を有する必要がある。
【0022】
上記係合突子21、調整部材22及びブラケット24から成る間隙調整手段を回転基板11の裏面の複数個所に設置し、支持軸17を軸支持部18に対して摺動可能に構成することもある。この場合は、各調整部材22を所望角度回動させることにより、回転基板11全体が駆動軸の軸方向に押し引きされることになり、これにより間隙13の拡縮調整が可能となる。
【0023】
上記構成の本発明に係る野菜類スライサーを使用するには、予め、スライスする加工物の種類に応じてスライス厚を設定するため、外装カバー3を外し、調整部材22を摘み板26を摘んで枢動させて、係合突子21が所望の目盛位置(場合によっては目盛りの中間位置)にくるようにする。間隙調整手段を複数個所に設置する場合は、各調整部材22について角度調整を行う。これにより、係合突子21が湾曲溝23に沿って駆動軸の軸方向に移動して嘴状部11a(又は回転基板11全体)を押し、あるいは、引くことで、間隙13が所望のスライス厚に対応する間隙に設定される。
【0024】
このようにして間隙13を調整した後、外装カバー3を戻し、また、所望のアタッチメント6を選択してセットする。かくして準備完了となり、以後、モーターを始動させてガイド孔7からスライス加工する野菜類を連続的に投入していくことで、自転しつつ公転する丸刃14により、高速且つ連続的に野菜類の均一なスライス品を量産することができる。
【0025】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなく、更に異なる実施形態を構成することができることは明白であって、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 スタンド
2 本体部
3 外装カバー
4 投入口
5 供出口
6 アタッチメント
7 ガイド孔
8 固定ネジ
9 固定太陽歯車
10 モーターカバー
11 回転基板
11a 嘴状部
12 円形開口
13 間隙
14 丸刃
15 軸筒
15a 駆動軸先端部
16 回転ケース
16a 軸受
17 支持軸
18 軸支持部
19 自転軸
20 遊星歯車
21 係合突子
22 調整部材
23 湾曲溝
24 ブラケット
25 枢動軸
26 摘み板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心的に円形開口を設けた回転基板と、前記円形開口の内縁部との間に適宜間隙を保持して前記円形開口内に臨むように配置される丸刃とを備え、前記回転基板は、回転駆動源の駆動軸に固定された回転ケースに取り付けられて回転駆動され、前記丸刃は、前記回転ケース内において前記駆動軸の回転が伝動されて回転駆動される自転軸に固定されて自転すると共に、前記回転ケースの回転に伴って公転し、投入された野菜類を前記丸刃の自転及び公転動作に伴い、前記丸刃と前記円形開口の内縁部との間の前記間隙に対応する厚さにスライスするスライサーであって、
前記間隙は、前記回転基板の裏面の1個所又は複数個所に設置されて、前記回転基板の一部又は全体を前記駆動軸の軸方向に押し引きする間隙調整手段の作用で拡縮調整可能であり、
前記間隙調整手段は、前記回転基板の裏面に固定される係合突子と、前記係合突子を摺動可能に係合させる湾曲溝を有していて、前記回転ケースに枢動可能に設置される調整部材とから成り、前記湾曲溝は、その一端から他端にかけて前記調整部材の枢軸からの距離が変化するものであることを特徴とする野菜類スライサー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−240136(P2012−240136A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110271(P2011−110271)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(591065158)
【Fターム(参考)】