量子コヒーレントシステム及び動作
非線形素子(200)が、制御移相器(400)、パリティ検出器(1290) を含む非吸収検出器、量子部分空間プロジェクタ(600)、非吸収ベル状態解析器(800)、非吸収エンコーダ/エンタングラ(1200)、及びCNOTゲート(1300)のような基本量子ゲート等の量子情報処理システムを効率的に実現することができる。非吸収検出器(1640、1650)によれば、確率的量子ゲート(1720)を何度も通過する間に同じフォトニック資源を再利用できるようにすることによって、確率的量子ゲート(1720)の効率を改善することが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
量子情報処理は概して、量子状態を操作又は使用して、情報を格納又は伝達すること、又は計算を実行することを含む。量子情報処理において、量子状態を有する種々のシステムが提案又は使用されている。例えば、光学システムは、光の量子状態を操作して、特定の量子情報処理タスクを実行することができる。
【0002】
光検出及びフィードフォワードシステムによって非線形性が誘起される線形光学素子に基づく量子コンピュータアーキテクチャが、最初に、E. Knill、R. Laflamme及びG. J. Milburn著「A Scheme for Efficient Quantum Computation with Linear Optics」(Nature 409, 47 (2001))によって提案された。この提案は、線形光学系量子計算(linear optics quantum computaion:LOQC)が原理的には実現可能であることを実証したが、この手法に基づく拡張性のあるシステムは、信頼性のある演算を行うために、実用的でないほど大量の量子資源の供給を必要とした。Knill他の提案に対する改善形態が開発されており(そして、実験的に実証されており)、それは必要とする資源が少なくて済むが、最近になってなされたこれらの提案は、確率的に挙動する量子回路素子を禁止する。例えば、T. B. Pittman、B. C. Jacobs及びJ. D. Franson著「Probabilistic Quantum Logic Operations Using Polarizing Beam Splitters」(Phys. Rev. A 64, 062311 (2001))によって説明される量子制御NOTゲートは、Knill他によって提案された対応するシステムよりも必要とする資源が少なくて済むが、確定的に動作しない。
【0003】
Pittman他によって提案されたシステムは、1つ又は複数の入力光キュービット及び第1の組の補助光キュービットの測定を用いる。その測定結果によって、第1の組の補助光キュービットとエンタングルした第2の組の補助光キュービットから、1つ又は複数の光キュービットを選択することが可能になる。この技術に伴う問題は、選択された出力光キュービットが、実現されているゲートに対して正しくないという固有の確率を有することである。そのシステムが正しい出力を生成し損なうことになる確率は一般に、75%である(完全な光検出器を仮定した場合)。それゆえ、いくつかのそのようなゲートを有する、このタイプの線形量子光学コンピュータは、オフラインの量子資源(例えば、エンタングルした光子)を極端に浪費し、複雑なシステムの場合には実用的でないかもしれない。例えば、いくつかの線形光学量子ゲートを含む量子回路は、それらのゲートを並列に動作させることによって計算を実行することができる。それらのゲート出力は、ゲートが適切に機能した場合には、その計算にテレポートされることができる。この手法は拡張性があるが、計算が成功するまで、個々のゲート動作を何度も繰り返す必要があるので、多くのエンタングルした光子及び補助光子を無駄にするであろう。
【0004】
確定的であるか、又は量子資源を効率的に利用する光学量子情報処理システムが望まれている。そのような光学システムは、ナノメートルスケールまで小型化するのに適していることも理想的である。
【0005】
概要
本発明の一態様によれば、制御移相器のような非線形光学素子を用いて、量子部分空間プロジェクタ、ベル状態解析器、量子エンコーダ、パリティ検出器、及び概ね確定的に動作する破壊及び非破壊CNOTゲート等の素子を実現することができる。
【0006】
異なる図面において同じ参照符号が用いられる場合、類似又は同一の要素を示す。
【0007】
詳細な説明
本発明の一態様によれば、非線形光学素子が、制御位相シフト、非吸収状態検出、非吸収ベル状態解析、告知(heralded)状態準備、非吸収符号化、及び制御NOT(CNOT)ゲートのような基本量子ゲート動作等の量子情報処理タスクを効率的に実現することができる。光学的非線形性を直接的に使用して、小さな位相シフトを増幅することができ、高い動作効率で概ね確定的にフィードフォワードシステムを使用することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、電磁誘導透過(EIT)のような非線形効果を用いて、測定可能な位相シフトを生成し、ナノスケール構造を用いて製造され得る導波路及び相互作用サイト(例えば、EIT原子)とを用いて実現され得る。例えば、R. G. Beausoleil、W. J. Munro及びT. P. Spiller著「Applications of Coherent Population Transfer to Quantum Information Processing」(quant-ph/0302109 (2003))(Journal of Modern Optics, Vol. 51, No. 11, pp.1559-1601 (2004)にも発表されている)は、ナノスケール構造を用いて製造され得る量子光学システムにおいてEIT相互作用を用いることを説明する。また、R. G. Beausoleil他著「Applications of Electromagnetically Induced Transparency to Quantum Information Processing」(Journal of Modern Optics, Vol. 51, pp.2441-2448 (2004))及びW. J. Munro他著「A High-Efficiency Quantum Non-Demolition Single Photon Number Resolving Detector」(Phys. Rev. A 71, 033819 (2005))も参照されたい。しかしながら、本発明の実施形態は、EIT、一般的なクロスカー非線形性(cross-Kerr non-linearity)、又は他の非線形光子相互作用を用いる、より大きなスケールの構造で実現され得る。
【0009】
図1は、本発明の1つの例示的な実施形態による制御移相器100を概略的に示す。制御移相器100は、プローブモード110と、入力モード120と、測定モード130とを有する。図1に示される移相器100の1つの例示的な動作おいて、コヒーレント光子状態|α〉がプローブモード110に加えられ、n光子フォック状態|n〉が入力モード120に加えられる。制御移相器100のコヒーレント光子状態|α〉及びフォック状態|n〉の非線形相互作用は、位相シフトnθを引き起こし、測定モード130上に出力コヒーレント光子状態|αeinθ〉を生成する。W. J. Munro、K. Nemoto、R. G. Beausoleil及びT. P. Spiller著「A High-Efficiency Quantum Non-Demolition Single Photon Number Resolving Detector」(Phys. Rev. A 71, 033819 (2005))にさらに説明されるように、制御移相器100の特徴又は特性が位相定数θを固定し、コヒーレントプローブ状態の位相シフトnθを測定することによって、入力モード120のフォック状態|n〉内の光子の数nが求められるようにする。
【0010】
図2A、図2B及び図2Cは、電磁誘導透過(EIT)を用いて、位相シフトを引き起こす制御移相器200A、200B及び200Cの具体的な具現化形態を示す。これらのEIT系は一般的に、物質系に光子状態を加え、この場合、物質系との非線形相互作用が、光子の量子状態を破壊又はそうでなければ変更することなく、位相シフトを引き起こすことができる。
【0011】
図2Aは、自由空間内にある物質系210を含む、構造的に簡単な移相器200Aを示す。物質系210は、ガスセル、又はEITに適した量子エネルギー準位を有する1つ又は複数のサイトを有する任意の構造とすることができる。移相器200Aでは、それぞれ図1の光子状態|n〉及び|α〉に対応する、光子状態|na〉及び|αc〉が、物質系210の場所において重なるように送られる。状態|na〉及び|αc〉のための下付き文字は、それぞれの状態の光子の周波数を特定する。駆動レーザ220がさらに、物質系210内で光子状態|na〉及び|αc〉と重なるように光子状態|αb〉を送る。適切に選択された周波数を有する3つの光子状態|na〉、|αb〉及び|αc〉の重なりによって、EITが4準位物質系と相互作用して、後にさらに説明されるように位相シフトを引き起こすことが可能になる。
【0012】
図2Bは、固体システムにおいて製造するのに適した制御移相器200Bを示す。制御移相器200Bは、導波路232及び234を含むフォトニック結晶230を含む。図1の制御移相器100と比べる場合、導波路232は入力モード120に対応し、導波路234は光子モード110及び130に対応する。また、レーザ220も、後にさらに説明される特定のEIT相互作用のために必要とされる制御光子状態|αb〉で導波路234を駆動する。伝搬光子状態|αb〉及び|αc〉の方向を逆にして、測定又は使用するためのモードの分離を簡単にすることができる。EIT相互作用の場合、導波路232及び234内の光子に対応するエバネッセント場が物質系210と相互作用し、その相互作用が導波路234内のプローブ光子状態に位相シフトを引き起こすような場所において、物質系210がフォトニック結晶230内に閉じ込められることが好ましい。
【0013】
図2Cは、周期的な一連のセル260を有する導波路250を含む移相器200Cを示す。導波路250は、空気又は他の低屈折率材料(例えば、ε=1)で包囲された高屈折率材料(例えば、ε=12)から形成され得る。1つの例示的な実施形態では、導波路250は厚み0.55tを有する。ただし、tはセル260の周期である。各セル260は、厚いセグメント(例えば、厚み1.25t及び長さ0.4t)と、それに続く薄いセグメント(例えば、厚み0.25t及び長さ0.6t)とすることができる。周期的な構造260に欠陥を導入することによって、キャビティ270を実現することができる。例えば、中央の厚い素子の長さを0.3tまで短くし、2つの隣接する薄い素子の長さを0.25tまで短くすることによって、キャビティ/欠陥270を導入することができる。キャビティ270の中に物質系210を配置することができる。
【0014】
光子状態|na〉、|αb〉及び|αc〉は全て導波路250に入力され、物質系210を含むキャビティ270を通過する。周期的なセル260及びキャビティ270を用いて引き起こされる低群速度効果(slow light effect)が光子状態|na〉、|αb〉及び|αc〉と物質系210との相互作用時間を長くし、それに応じて、移相器200Cの位相シフトを大きくすることができる。導波路250からの出力光子状態|na〉、|αb〉及び
は、既知の偏光及び/又は周波数に基づく技術等のビーム分離法を用いて分離され得る。例えば、光子状態|na〉は、導波路250内でTE偏光を有することができるが、|αb〉及び|αc〉は直交TM偏光を有する。その際、偏光ビームスプリッタが、状態|na〉を状態|αb〉及び
から分離することができ、周波数フィルタが状態|αb〉を除去して、分離された状態
を残すことができる。
【0015】
1つの例示的な実施形態では、制御移相器200A、200B又は200C内の物質系210は、図3に示されるような量子エネルギー準位を有する4つの状態|1〉、|2〉、|3〉及び|4〉を有する少なくとも1つの原子、分子又は他の構造を含む。光子状態|na〉、|αb〉及び|αc〉は、物質系210のエネルギー準位に従って選択される角周波数ωa、ωb及びωcをそれぞれ有するモードに対応するが、そうでなければ、光周波数、無線/マイクロ波周波数、及び他の通信周波数を含む任意の範囲の電磁スペクトルとすることができる。一般に、角周波数ωa、ωb及びωcは、物質系210の量子エネルギー準位間の対応する遷移に結び付けられる。詳細には、図3のエネルギー準位の場合、角周波数ωaの光子は、原子のエネルギー状態|1〉をエネルギー状態|2〉に結合する。角周波数ωb及びωcの光子は、準安定エネルギー状態|3〉をそれぞれエネルギー状態|2〉及び|4〉に結合する。
【0016】
図3に示されるエネルギー準位の相対的な順序は一例にすぎず、より一般的には、エネルギー準位を並べ替えても依然としてEITを引き起こすことができるであろう。詳細には、図3は、第4のエネルギー状態|4〉が第2のエネルギー状態|2〉よりも高いエネルギー状態にあり、第2の状態|2〉が第3のエネルギー状態|3〉よりも高いエネルギー状態にあり、さらに第3のエネルギー状態|3〉が第1のエネルギー状態|1〉よりも高いエネルギー状態にあるものとして示すが、これらのエネルギー準位が任意に順序付けられている物質系であっても、EITを引き起こすことができる。
【0017】
第3のエネルギー状態|3〉は、単光子の自然放出が許されないという点で準安定であることが好ましい。例えば、保存則によって、エネルギー状態|3〉から低いエネルギー状態への物質系の遷移中に単光子の放出が禁止されるような、エネルギー状態|3〉及びそれよりも低い利用可能なエネルギー状態のスピン/角運動量が存在する場合には、結果としてそのような準安定性を生じることができる。第4のエネルギー状態|4〉から(例えば、第1の状態|1〉又は第2の状態|2〉へ)の自然遷移も、第4のエネルギー状態|4〉が準安定になるような物質系210を選択することによって、又は第4のエネルギー状態|4〉からの遷移に対応する角周波数を有する光子の伝搬を抑制又は禁止するように、フォトニック結晶230の特性を選択することによって、同じように抑圧され得る。
【0018】
図3の離調パラメータνa、νb及びνcは、式1に示されるような物質系210のエネルギー準位遷移の共鳴からの角周波数ωa、ωb及びωcのそれぞれの離調量を示す。式1において、状態|1〉と|2〉との間、状態|3〉と|2〉との間、及び状態|3〉と|4〉との間のエネルギー差はそれぞれω12、ω32及びω34である。
式1 ωa=(ω12+νa)
ωb=(ω32+νb)
ωc=(ω43+νc)
【0019】
レーザ220が角周波数ωbを有する光子で物質系210を駆動している間に、EITによって、物質系210が角周波数ωa又はωcの光子に対して透過性になる。角周波数ωa、ωb及びωcの光子が物質系210と同時に相互作用する場合、角周波数ωa及びωcを有する光子の状態は、角周波数ωaを有する光子の数na、及び角周波数ωcを有する光子の数ncに依存する全位相シフトを獲得する。また、位相シフトの大きさは、離調パラメータνa、νb及びνc、光子の相対的な偏光、及び物質系210の特性にも依存する可能性がある。
【0020】
コヒーレントプローブ状態|αc〉の位相シフト又は漸進的変化(evolution)は、フォック状態の漸進的変化から導出され得る。詳細には、na、nb及びnc個の光子を含むフォック状態成分はそれぞれ、物質系210の共鳴4準位マニホールドの3つの周波数チャネルを駆動する。固定され、且つ光学波長と比べて小さな体積内に静止しているN個の4準位原子を、物質系210が含む場合には、及びフォック状態の3つのパルス包絡関数の持続時間が原子準位2の寿命に比べて長い場合には、非摂動光子数固有状態|l,na,nb,nc〉が、式2に示されるように変化する。ただし、lは物質系の状態を特定し、na、nb、ncはそれぞれのモードにおける光子の数である。
【0021】
【数1】
【0022】
式2内の量Wは一般的に、物質系210の特性、及び角周波数ωa、ωb、ωcに依存する。式3A及び式3Bは、角周波数ωa及びωbがそれぞれの原子遷移の角周波数ω12及びω32に正確に同調し、位相の散逸を無視することができ、原子準位2及び4からの自然放出分岐比が概ね1である場合の量Wを与える。式3Aでは、Nは4準位原子の数であり、Ωa、Ωb及びΩcは式3Bにおいて与えられるような実効真空ラビ周波数であり、νcは離調パラメータ(ωc−ω43)であり、γ2及びγ4は自然放出率A21及びA43に概ね等しい。式3Bでは、kは値a、b及びcを有する添え字であり、σkは定義により、波長λk≒2πc/ωkにおける共鳴原子吸収断面3λk2/2πであり、πw2は実効レーザモード断面積であり、Akは2つの対応する原子準位間の自然放出率であり、Δωkはパルスレーザ場と静止している原子との断熱的な相互作用を記述するプロファイル関数の帯域幅である。
【0023】
【数2】
【0024】
式3Aは、4準位EIT系のためのWが複素数であり、周波数ωaの光子の潜在的な吸収を示す。しかしながら、式4の不等式が満たされるパラメータの状況においては、原子のうちの1つが角周波数ωaの単光子を散乱させる確率は小さくなる(式4は、|Ωb|2|αb|2/γ2が|Ωc|2|αc|2/γ4に概ね等しいとき、νc/γ4が大きいという要件まで簡単になる)。この状況において動作する場合、状態|1,na,nb,nc〉は純粋に、非線形機構から位相シフトを獲得する。この位相シフトは、量子情報処理のための高効率の非線形光学素子の基本にすることができる。
【0025】
【数3】
【0026】
コヒーレント状態|αb〉及びコヒーレントプローブ状態|αc〉を含む原子場状態の漸進的変化は、各コヒーレント状態を表す、フォック状態にわたる和を用いて求められ得る。詳細には、式5は、aチャネル内のna光子フォック状態との相互作用中のN原子量子状態の時間t後の漸進的変化と、b及びcチャネル内のそれぞれαb及びαcによってパラメータ化される弱いコヒーレント状態とを示す。式6は、位相シフトθを定義する。式5及び式6は、元のbチャネルコヒーレント状態のパラメータαbの大きさが大きくなり、その場合、変化した後の状態|Ψ’(na)〉が
に概ね等しくならない限り、変化した後の状態|Ψ’(na)〉がフォック状態と2つのコヒーレント状態との単なるテンソル積でないことを示す。それゆえ、結合場(coupling field)駆動チャネルbが古典場であるときにのみ、EIT物質系が厳密なクロスカー非線形性を与える。弱いコヒーレント状態入力パルスの場合、この制御場を古典場として取り扱うことは許されない。また、式5及び式6は、図2Cのキャビティによって強化された実施形態では、ラビ周波数がデコヒーレンス速度よりもはるかに大きくなることができるので、その漸進的変化は、より大きな位相シフトθを達成できることも示す。
【0027】
【数4】
【0028】
従って、状態|αc〉がわかっており、状態|na〉内の光子の偏光のような測定されない特性が一定である場合、制御移相器200A、200B又は200Cは、入力状態|na〉内の光子の数naに概ね比例する位相シフトを提供することができる。これらの結果は、上述のEIT系における、プローブ状態のための角周波数ωc又はコヒーレント状態の光子の選択、或いは入力状態のための角周波数ωaの光子の選択に固有のものでない。さらに、クロスカー非線形性を導入する他のシステムでも同様に、プローブ状態に位相シフトを導入することができる。従って、EITを用いる特定の実施形態において、光子の角周波数を、先に説明されたように選択できるという条件で、以下の説明では、プローブ状態|α〉及び入力状態|n〉から下付き文字が省略される。
【0029】
プローブ状態|α〉と制御状態|n〉との相互作用、それゆえ位相定数θが一般に、光子の偏光に依存するので、プローブ状態|α〉の位相シフトは一般に、状態|α〉及び|n〉の偏光に依存する。移相器100、200A、200B又は200C内の位相シフトを測定することによって、光子の偏光を特定することができ、それゆえ、入力モード内の光子の偏光状態を投影/変更することができる。しかしながら、上述の制御移相器の位相シフト能力は、入力状態光子の数を測定している間に、入力状態光子の偏光を保持するシステムにおいて使用され得る。
【0030】
図4Aは、入力状態|φ〉の光子の数、偏光又は他の特性に依存する位相シフト量だけプローブ状態|α〉の位相をシフトする一般的な移相器400を示す。移相器400の1つの例示的な応用形態では、入力状態|φ〉は、一定数pの水平偏光した光子及び一定数qの垂直偏光した光子を有する偏光の固有状態である(即ち、その例示的な事例では、|φ〉≡|HpVq〉)。移相器400のこの例示的な応用形態は、偏光符号化を用いてキュービットを表す量子システムにおいて特に有用である。
【0031】
システム400は、固定移相器410と、2つの制御移相器100−1及び100−2とを含む。移相器410は、プローブ状態|α〉の位相において一定のシフトθ’’を引き起こし、線形リターダを用いて実現され得る(又は、一定のシフトθ’’が0に等しい場合には省かれる)。制御移相器100−1及び100−2はいずれも、プローブ状態|α〉に作用するが、状態|φ〉の異なる成分の制御下にある。制御移相器100−1及び100−2は、上述のようなEIT非線形性を用いて、又は近似的なカー非線形性を与える任意の他のシステムを用いて実現され得る。制御移相器100−1及び100−2のいくつかの例は、ウィスパリングギャラリーマイクロ共鳴器、光ファイバ、ドープト光ファイバ又はフォトニック結晶ファイバ、或いはキャビティQEDシステムを用いることができる。移相器100−1及び100−2は、それぞれの位相定数θ及びθ’を有し、それは一般に互いに異なるであろう。
【0032】
図4Aに示されるように、偏光ビームスプリッタ430が、入力状態|α〉を、偏光によって区別される成分に分割する。第1の成分(例えば、水平偏光した光子に対応する成分状態)は、制御移相器100−1を制御する。状態|HpVq〉の水平偏光成分が移相器100−1を制御する場合には、制御移相器100−1は、プローブ状態|α〉に対して位相シフトpθを導入する。必要に応じて、偏光変更素子440が、状態|φ〉の第2の偏光成分の偏光を、第1の偏光成分と同じ偏光に変更することができる。例えば、偏光変更素子440は、第2の成分の光子の偏光を垂直偏光から水平偏光に変更するように配向された半波長板とすることができる。素子440から出力される変換された状態の偏光が、移相器100−2を制御する。第2の偏光変更素子450は、素子440が第2の偏光成分において引き起こした偏光変更を元に戻すか、又は反転し、ビームコンバイナ460が第1の偏光成分及び第2の偏光成分を再結合して、出力状態|φ’〉を構成することができる。そのような偏光変更は、同じ位相定数を有する、即ち特定の事例では、定数θ及びθ’が等しい移相器100−1及び100−2の実現を簡単にすることができる。しかしながら、偏光変更素子440及び450は、定数θ及びθ’が同じでない本発明の一実施形態において必要でない場合もある。
【0033】
状態|HpVq〉の垂直偏光成分が移相器100−2を制御する事例では、制御移相器100−2は位相シフトqθ’を導入する。移相器400内のプローブ状態|α〉内の全位相シフトは、移相器100−1、100−2及び410からの位相シフトの和であり、即ちpθ+qθ’+θ’’である。
【0034】
移相器100−1及び100−2が全く同じである場合には、移相器400は偏光保持移相器であろう。詳細には、移相器100−1において生じるシフトは、状態|φ〉の第1の偏光成分の光子の数に比例し、移相器100−2において生じるシフトは、状態|φ〉の第2の偏光成分の光子の数に比例する。しかしながら、素子440によって、両方の制御移相器100−1及び100−2のための制御光子が同じ偏光を有する場合、移相器100−1及び100−2が同じである場合には、移相器100−1及び100−2の偏光定数θは同じである。同じ移相器100−1及び100−2を使用し、固定移相器410を使用しない場合、プローブ状態|α’〉における全位相シフトは、状態|φ’〉の光子の数p+qに比例し、0以外の固定位相シフトを用いる場合であっても、移相器400からの出力状態は、状態|φ’〉及び位相シフトされた状態|α’〉の積として表すことができる。全位相シフトを測定することによって、状態|φ’〉の光子の全数p+qが求められるが、その測定によって、p及びq又は偏光の個々の値は求められず、偏光状態は変更されない。従って、移相器100−1及び100−2が同じである場合、移相器400は、光子の数p+qが測定されるときでも、入力状態|φ〉の偏光状態を保持する。
【0035】
移相器400の偏光保持の一実施形態は、固定位相シフトθ’’と同じ大きさであるが、固定位相シフトθ’’の負の値である位相定数θ及びθ’を有する。この実施形態では、プローブ状態|α〉における位相シフトθは、状態|φ’〉が2つの光子を含むときに生じる。入力状態|φ’〉が1つの光子を含むときには、プローブ状態|α〉において位相シフトが生じることはなく、入力状態|φ’〉が真空状態であるときには、プローブ状態|α〉において位相シフト−θが生じる。こうして、プローブ状態|α’〉を測定することによって、測定された位相シフトの符号から出力状態|φ’〉が光子を含まないか、1個の光子を含むか、2個の光子を含むかを求めることができ、さらに、測定された位相シフトが0でないか否かを求めることができる。入力状態|φ〉がフォック状態の重ね合わせである場合には、位相シフト測定は、入力状態|φ〉を、測定結果に対応する光子の数p+qを有するフォック状態の部分空間に投影するが、その偏光を明らかにしたり、又は変更しない。
【0036】
図4Bは、限定はしないが、偏光を含む入力状態特性を同様に保持することができる光子数分解移相器400Bを示す。例えば、移相器400Bへの入力状態|φ〉は、一定の角運動量を有するか、又は明確な時間ビンを有する光子状態の一次結合とすることができる。移相器400Bでは、状態セパレータ435が、保持された特性の異なる量子数に関連付けられた状態を分離する。例えば、セパレータ435は、異なる角運動量を有する光子状態を分離することができるホログラム、又は1つの時間ビン内の光子に移相器100−1を制御するように指示し、別の時間ビン内の光子に移相器100−2を制御するように指示するために動作する光スイッチとすることができる。移相器100−1の制御モード内の光学系442、及び移相器100−2の制御モード内の光学系444を用いて、分離された光子制御状態を、個々の移相器100−1及び100−2を制御するのに望ましい形に変換することができる。光学系452及び452は、分離された制御状態の変換を元に戻して、制御移相器100−1及び100−2がプローブ状態|α〉を処理した後に、コンバイナ465が分離された状態を再結合して、出力状態|φ’〉を生成できるようにする。上述されたのと同じようにして、制御移相器100−1及び100−2の位相定数θ及びθ’が同じである場合には、プローブ状態|α〉の全位相シフトは、個々の分離された状態の光子の数に関する任意の情報を求めることなく、出力状態|φ’〉の光子の全数を示すであろう。こうして、位相シフトを測定することによって、保持された特性を変更することなく、光子の全数を求めることができる。
【0037】
また、移相器400又は400Bの構成は、入力状態|φ〉を光子状態の特定された、又は告知された部分空間内に投影するシステムにおいても使用され得る。例えば、移相器400のための1つの構成は、−θに等しい固定位相シフトθ’’を有し、0に等しい位相定数θ’を有する。移相器400のこの構成は、必ずしも偏光を保持しないが、入力状態を、特定された数の水平偏光した光子と、未定数の垂直偏光した光子とを有する部分空間上に投影するために位相シフトを使用することに関する一例を提供する。例えば、プローブ状態|α〉の位相シフトが、2つの水平偏光した光子を含む状態によって張られた部分空間を特定する。プローブ状態|α〉の位相シフトは、1つの水平偏光した光子を含む状態の部分空間を特定せず、プローブ状態|α〉の位相シフト−θは、真空状態、及び垂直偏光した光子だけを含む状態によって張られた部分空間を特定する。従って、プローブ状態|α〉の位相シフトの測定は、状態|φ〉を、位相シフトの符号及び大きさから求められる水平偏光した光子の数を有する部分空間上に投影するであろう。
【0038】
より一般的には、図4A又は図4Bに示されるような移相器をプローブ状態の適切な測定と組み合わせることによって、一般的な入力状態を、他の所望のヒルベルト部分空間上に投影することができる。例えば、図5は、n個の移相器400−1〜400−nと測定システム530とを用いる、本発明の一実施形態によるnモード量子部分空間プロジェクタ500を示す。図示されるように、プロジェクタ500は、プローブ状態、例えばコヒーレント状態|α〉を入力するためのモードM0と、一般的なnモード光子状態|Ψ〉を入力するためのn個のモードM1〜Mnとを有する。各移相器400−iは、光子モードMiに対応し、一般に、3つの位相定数θi、θi’及びθi’’を有する。図5では、位相定数θiは、モードi内の水平偏光した光子に関連付けられる位相シフトに当てはまる。位相定数θi’はモードi内の垂直偏光した光子に関連付けられる位相シフトに当てはまり、位相定数θi’’は、移相器400−iがプローブ状態|α〉に適用する固定位相シフトに対応する。
【0039】
測定システム530は、移相器400−1〜400−nにおいてプローブモードM0が獲得する全位相シフトについての情報を抽出する。測定の結果として、プロジェクタ500は、モードM1〜Mnの状態を、その測定と一致する状態によって張られるヒルベルト部分空間内に投影する。その投影のターゲットであるヒルベルト部分空間は一般に、位相定数θ1〜θn、θ1’〜θn’及びθ1’’〜θn’’と、測定システム530によって得られる特定の測定結果とに依存するであろう。このシステムに付加的な光学成分を加えて、相対的な位相を調整するか、又は測定の結果に基づく他の補正を与えることができる。
【0040】
1つの有用な2モード量子部分空間プロジェクタは、一般的な2モード状態を、「対称な」ベル状態によって張られるヒルベルト部分空間上に、又は反対称なベル状態上に投影する。図6Aは、プローブ状態|α〉の位相シフトを測定し、2キュービット入力状態|Ψ〉の対称性に関する情報を得る、本発明の一実施形態による非吸収対称性解析器600を示す。2キュービット状態|Ψ〉は一般に、それぞれがモード612の光子状態とモード614の光子状態との積である項の重ね合わせである。これらの入力モードは、2モード量子部分空間プロジェクタ500Aに入る出力モードM1及びM2を有するビームスプリッタ610上で交わる。第2のビームスプリッタ620が、入力モードとして、プロジェクタ500AからのモードM1及びM2を有し、入力モード612及び614に関連付けられる光子状態をそれぞれ出力モード622及び624に戻すように動作する。
【0041】
2モード量子部分空間プロジェクタ500Aは、モードの数が2である場合の図5のプロジェクタ500の具体的な例である。詳細には、プロジェクタ500Aは、モードM0のプローブ状態に作用し、モードM1及びM2の光子状態によってそれぞれ制御される、偏光保持移相器400−1及び400−2を含む。各移相器400−1及び400−2は、図4の移相器400と概ね同じすることができ、同じようにして構成され得る。プロジェクタ500A内の移相器400−1のための位相定数の具体的な選択は、θ1=θ、θ1’=θ及びθ1’’=0であり、移相器400−2のための位相定数は、θ2=−θ、θ2’=−θ及びθ2’’=0であり、それにより、移相器400−1及び400−2がいずれも偏光保持移相器になる。
【0042】
2キュービット入力状態|Ψ〉は、一般性を失うことなく、式7において示されるようなベル状態の一次結合として表すことができる。ただし、状態|B1〉、|B2〉、|B3〉及び|B4〉は正規化されたベル状態であり、係数a1、a2、a3及びa4はそれぞれ、ベル状態|B1〉、|B2〉、|B3〉及び|B4〉のための複素確率振幅である。量子力学の線形性により、全ての結果が重ね合わせ及び混合状態にも有効であることが保証される。
【0043】
【数5】
【0044】
ベル状態|B1〉、|B2〉、|B3〉及び|B4〉は、各キュービットの2値の値0及び1がそれぞれ光子の水平(H)偏光及び垂直(V)偏光に対応するような表現において、式8において与えられる形を有する。ここで、状態|HpVq,HrVs〉は、第1のモード(例えば、モード612)においてp個の水平偏光した光子及びq個の垂直偏光した光子を有し、第2のモード(例えば、モード614)においてr個の水平偏光した光子及びs個の垂直偏光した光子を有する状態を示す。ベル状態の重要な特徴は、光子モードをスワップ(交換)する(例えば、光子モード612及び614を入れ替える)動作が、ベル状態|B1〉をその負のベル状態−|B1〉にするが、他のベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉の各々をそれ自体にそれぞれ戻すことである。従って、ベル状態|B1〉は、この変換の下では反対称であり、本明細書において一重項状態と呼ばれる場合もある。対照的に、他の3つのベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉は、スワップ変換によって変更されないので、本明細書において対称状態と呼ばれる場合もある。
【0045】
【数6】
【0046】
非吸収対称性解析器600では、ビームスプリッタ610がモード612及び614からの光子を干渉させて、(ビームスプリッタ610のための位相の取り決めを特に選択する場合に)式9に示されるようにベル状態を変換する。式9から明らかなように、ビームスプリッタ610は、一重項状態|B1〉を変換して、その状態の負の値に戻し、対称なベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉を、一方のモードM1又はM2において2つの光子を有し、他方のモードM2又はM1において光子を持たない状態の一次結合に変換する。この特性によって、状態|Ψ〉を解析することが可能になり、詳細には、状態|Ψ〉を反対称ヒルベルト部分空間内(即ち一重項状態|B1〉上)に、又はベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉によって張られる対称ヒルベルト空間上に投影することが可能になる。
【0047】
【数7】
【0048】
先に言及されたように、偏光ビームスプリッタ610の出力モードM1及びM2の光子状態はそれぞれ、偏光保持移相器400−1及び400−2を制御する。より具体的には、モードM1においてビームスプリッタ610から出力される光子状態は、偏光保持移相器400−1を制御して、移相器400−1がプローブ状態|α〉に対して位相シフトn1θを導入するようにする。従って、位相シフトは、モードM1の光子の数n1、及び偏光保持移相器400−1の位相定数θに依存する。
【0049】
偏光保持移相器400−2は、移相器400−1の位相定数θの負の値である位相定数−θを有する。一般に、4準位EIT移相器は、複数の位相シフトを引き起こすことができる。一方の移相器の物質系のうちの1つに対する角周波数ωcの離調定数νcが、他方の移相器の物質系のための対応する離調定数νcの負の値である場合には、2つの移相器は、反対の符号を有する位相シフトを引き起こすことができる。ビームスプリッタ610からの出力モードM2は偏光保持移相器400−2を制御して、移相器400−2がプローブ状態|α〉の第2の位相シフト−n2θを導入するようにする。ただし、n2はモードM2における光子の数である。
【0050】
状態|Ψ〉が一重項状態|B1〉である場合には、ビームスプリッタ400−1からのモードM1及びM2はそれぞれ1つの光子を含むであろう。こうして、移相器620は、位相シフトθ、例えば|α’〉=|αeiθ〉を導入することになり、移相器400−2は反対の位相シフト−θを導入する。結果として、状態|Ψ〉が一重項状態|B1〉である場合には、正味の位相シフトは生じず、即ち|α’’〉=|α〉である。
【0051】
状態|Ψ〉がヒルベルト空間の対称な部分にある場合、即ち対称ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉の一次結合である場合には、ビームスプリッタ610からの出力モードM1及びM2は、モードM1の2光子状態とモードM2の真空状態との重ね合わせ、及びモードM2の2光子状態とモードM1の真空状態との重ね合わせになる。モードM1において2つの光子を有する状態は、プローブ状態|α〉において2θの位相シフトを引き起こし、モードM2において2つの光子を有する状態は、プローブ状態|α〉において−2θの位相シフトを引き起こす。それゆえ、位相シフトの大きさを測定することができる検出器630が、一重項状態|B1〉を、ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉によって張られる対称ヒルベルト空間内にある状態から区別することができる。所望の投影の場合、その測定は位相シフトの符号を求めないことが重要である。
【0052】
解析された状態|Ψ〉が式7のようなベル状態の一般的な一次結合である場合、移相器400−1及び400−2の動作は、モードM0プローブ状態がモードM1及びM2状態とエンタングルされた状態|Ψ2〉を生成する。例えば、ビームスプリッタ610が式10の形の状態|Ψ0〉を生成する場合には、移相器400−1の動作は、式11に示される状態|Ψ1〉を生成する。その後、移相器400−2が、式12に示される形を有する状態|Ψ2〉を生成する(偏光保持移相器400−1及び400−2に関連する位相シフトは偏光とは無関係であるので、式10、式11及び式12では、光子の偏光は無視される)。
【0053】
【数8】
【0054】
本発明の1つの例示的な実施形態では、測定システム530は、図7Aに示されるようなホモダイン検出器である。ホモダイン検出器530は、局部発振器710と、ビームスプリッタ720と、フォトダイオード又は検出器730及び740と、差動増幅器750とを含む。局部発振器710は、プローブ状態|α〉と同じ波長の基準コヒーレント状態を生成することが好ましい。ビームスプリッタ720は、モードM0からの状態と、基準状態とを干渉させる。ビームスプリッタ720からの2つの出力モードは、相対的に異なる符号を有する。フォトダイオード730及び740は、ビームスプリッタ720からのそれぞれの出力モードにおける、干渉している光子状態のそれぞれの強度に比例する電流を生成し、差動増幅器750は、フォトダイオード電流間の差を示す測定信号xを生成する。
【0055】
図7Aの検出器530のようなホモダイン検出器は、式13において与えられる形の直交演算子
の値を有効に測定することが知られている。式13において、演算子
及びaはそれぞれプローブモードM0のための生成演算子及び消滅演算子であり、φは、プローブ状態|α〉と局部発振器710からの基準状態との間の位相差である。ホモダイン検出器による1回の測定が、演算子
の固有値を生成するであろう。位相差φが0である特別な場合には、検出器530による測定は一般に、X−直交の測定と呼ばれる。
【0056】
【数9】
【0057】
図6Aの対称性解析器600におけるホモダイン測定は、モードM0の光子状態を、演算子
の固有状態に投影する。式14に示されるのは、位相差φが0であり、状態|Ψ2〉が式12に示される形を有する特別な場合に、固有状態|x〉上に投影することから生じる正規化されていない状態|Ψ3〉である。式15は、式14の内積の計算結果を示す。式15から、2αにほぼ等しい測定結果x、即ちx≒2αが、M1及びM2モード光子の状態を、状態|1,1〉にほぼ等しい状態に投影し、それゆえ、一重項状態|B1〉に対応する。2αcos(2θ)にほぼ等しい測定結果x、即ちx≒2αcos(2θ)は、モードM1及びM2光子を、eiφ(x)|2,0〉−e−iφ(x)|0,2〉に投影し、それは、ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉の対称ヒルベルト状態にある状態に対応する。
【0058】
【数10】
【0059】
図7Bは、確率分布700を、状態|Ψ2〉のホモダイン測定から生じる測定結果xの関数として示す。確率分布700は、2α及び2αcos(2θ)にそれぞれ中心があり、式15の状態|Ψ3〉の対称部分空間項及び反対称部分空間項の係数にそれぞれ対応する、2つのガウスピーク710及び720を含む。ガウスピーク710の下で固有値xに等しい測定結果は、状態|Ψ3〉の対称成分に対応する概ね確定的な確率を有し、それゆえ、モードM1及びM2状態を、対称ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉によって張られるヒルベルト部分空間上に効率的に投影する。ガウスピーク720の下で固有値xに等しい測定結果は、状態|Ψ3〉の反対称成分に対応する概ね確定的な確率を有し、それゆえ、モードM1及びM2状態を、単一の状態|B1〉上に効率的に投影する。しかしながら、領域730における測定結果は、その領域においてガウス分布710及び720の両方の裾野部分が小さいので(しかしながら、理論的には0ではない)、その対称項及び反対称項を明確に区別することはできない。
【0060】
対称性解析器600は、ガウス分布710及び720のピーク間にある境界点より上にある、例えば中間点x=α(1−cos(2θ))よりも上にある測定結果xが反対称状態を特定し、境界点よりも下にある測定結果xが対称状態を特定するという規則を利用することができる。この規則によって導入される誤差の確率は、境界点よりも上に延在するガウス分布710の部分の積分、及び境界点よりも下に延在するガウス分布720の部分の積分に依存する。式15の投影された状態に基づいて、誤差が生じる確率PERRORが式16に与えられており、ピーク間の距離、即ちθが小さいものとすると4αθ2が約9よりも大きく、弱いクロスカー非線形性の状況(即ち、θ≪π)における動作が可能であることを示すときに、10−5未満である。
【0061】
【数11】
【0062】
対称性分析器600が、選択された領域(例えば、領域730)内にある測定結果xを解析失敗としてカウントし、選択された領域の境界の上又は下にある測定結果を、反対称測定結果又は対称測定結果に対応するものとしてカウントする測定解釈規則を用いる場合には、誤差PERRORを減らすことができる。このタイプの規則は、対称性を解析するのに失敗する可能性をもたらすことを犠牲にして、誤差確率を減らすことができる。
【0063】
測定結果が反対称状態を示す場合には、プロジェクタ600内の測定システム530が、移相器550及び560を起動して、状態|2,0〉及び状態|0,2〉に関連付けられる、測定に依存する位相シフトφ(x)及び−φ(x)を除去する。1つの例示的な実施形態では、各移相器550及び560は、光学遅延線と、それに続く2つのポッケルスセルとを含む。後に説明される循環量子バッファ、又はK. Banaszek及びI. Walmsley著「Photon Counting with a Loop Detector」(Opt. Lett. 28, 52(2003))に説明されるようなファイバループ遅延線等の、光学遅延を導入するための種々の方法がある。ポッケルスセルは、各状態の水平偏光成分及び垂直偏光成分のための線形位相シフトを導入し、適用される位相シフトは測定結果に依存し、電気信号を用いて選択され得る。
【0064】
部分空間プロジェクタの動作と誤差の上記の説明は、クロスカー非線形性を用いて位相シフトを導入することを仮定する。先に説明されたようなEIT系は一般に、完全なクロスカー非線形性を生成しないことがあるが、EIT系は、例えば、位相シフトが概ね0.1ラジアンであり、αが概ね100であるときに、典型的な動作状況においてクロスカー非線形性の適切な近似を与える。また、EIT系以外のシステムによっても、完全なクロスカー非線形性に相応に近い相互作用を与えることができる。
【0065】
解析器600における対称性解析は、一方のモードM1又はM2において2つの光子を有する状態の場合に位相シフトに0以外の大きさを与えるが、各モードM1及びM2において1つの光子を有する状態の場合に位相シフトを与えない移相器400−1及び400−2を用いる。異なる位相定数を選択した状態の移相器を用いる他の部分空間プロジェクタも、一般的な2キュービット状態|Ψ〉の対称解析に同様に適した類似の位相シフトを与えることができる。例えば、図6Bは、代替の2モード部分空間プロジェクタ500Bを用いる対称性解析器600Bを示す。部分空間プロジェクタ500Bでは、移相器400−1に対する位相定数の具体的な選択はθ1=2θ、θ1’=2θ及びθ1’’=−2θであり、それにより移相器400−1は偏光保持移相器になる。移相器400−2の位相定数θ2、θ2’及びθ2’’は全て0である。従って、移相器400−2は影響を及ぼさないので、省くことができる。
【0066】
プロジェクタ500B内の移相器400−1は、モードM1において2つの光子が存在する場合には2θだけ、モードM2において2つの光子が存在する場合には−2θだけ、プローブ状態の位相をシフトし、モードM1及びM2のそれぞれにおいて1つの光子が存在する場合には位相をシフトしない。従って、プロジェクタ500B内の関連する状態の位相シフトは、プロジェクタ500A内の位相シフトと同じであり、対称性解析器600Bからの出力状態は、図6Aの対称性解析器600に関して先に説明されたのと同じように、測定に依存するであろう。
【0067】
対称性解析器600Bは、1つの偏光保持移相器400−1しか必要としないという利点を有する。この利点は、例えば、等しいけれども、反対の位相シフトを実現するのが難しいことがあるEIT系を用いて移相器が実現される際に重要であるかもしれない。しかしながら、プロジェクタ500B内の偏光保持移相器400−1は、θに等しい位相定数の代わりに、2θに等しい位相定数を有する制御移相器を使用し、それゆえ、プロジェクタ500A内の移相器400−1及び400−2と同じ全位相シフトを提供する。
【0068】
図6Aの対称性解析器600A、又は図6Bの対称性解析器600Bを上述したように用いて、任意の2キュービット状態を、一重項状態上に、又は対称ベル状態によって張られるヒルベルト空間上に投影することができる。その投影は、その投影において信号光子が失われないように非吸収性である。さらに、異なる光子状態間の位相関係は元のままである。これらの特性を用いて、解析された状態|Ψ〉のどのベル状態投影がその解析器から出力されるかを決定することができるベル状態解析器を構成することができる。
【0069】
図8Aは、本発明の一実施形態による非吸収ベル状態解析器800を示す。ベル状態解析器800は、3つの非吸収性の対称性解析器600−1、600−2及び600−3を含み、それらの解析器は、図6A又は図6Bの非吸収性の対称性解析器600又は600Bと同じにすることができる。解析器600−1、600−2及び600−3にそれぞれ続く光学系810、820及び830が、後にさらに説明されるように、ベル状態を有効に並べ替える。
【0070】
ベル状態解析器800に入力される解析された状態|Ψ〉は、式7において表されるような、一般的な2キュービット状態とすることができる。非吸収性の対称性解析器600−1は、上述されたように、解析された状態|Ψ〉を処理して、入力状態|Ψ〉の対称性を測定する。上述のように、対称性解析器600−1は、プローブ状態(図示せず)を測定し、測定結果x1を示す測定信号を出力する。その測定は、解析された状態|Ψ〉を、一重項状態|B1〉内に、又は対称ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉によって張られるヒルベルト空間内に投影し、測定結果x1は、解析器600−1からの出力状態が、一重項状態|B1〉にあるか、又は対称ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉の一次結合である状態にあるかを示す。
【0071】
光学系810が、対称性解析器600−1からそれぞれ出力される状態|B1〉、|B2〉、|B3〉及び|B4〉を、ベル状態|B2〉、|B1〉、|B4〉及び|B3〉に変換する。本発明の1つの例示的な実施形態では、光学系810はモードM1の半波長板である。その半波長板は、モードM1の垂直偏光した光子に対応する状態に負の符号を導入し、水平偏光した光子の状態が変わらないように配向され得る。これは、所望の態様でベル状態を有効に並べ替える。
【0072】
その後、対称性解析器600−2は、光学系810からの変換された状態が一重項状態|B1〉であるか否かを検出する。対称性解析器600−2内のプローブ状態の測定が、測定結果x2を提供し、それは再び、2キュービット状態を、一重項状態|B1〉内に、又は対称ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉によって張られるヒルベルト空間内に投影する。より具体的には、測定結果x2が反対称ベル状態を示す場合には、解析器600−2の出力状態は一重項状態|B1〉になり、解析器600−1からの測定結果x1が反対称ベル状態を示す場合には、ベル状態|B2〉になり、いずれの測定結果X1及びx2も反対称状態を示さない場合には、ベル状態|B3〉及び|B4〉の一次結合になるであろう。
【0073】
光学系820がさらに、対称性解析器600−2からのモードM1及びM2の出力状態を変換する。本発明の1つの例示的な実施形態では、光学系820は、モードM2の半波長板である。その半波長板は、状態|B2〉を|B3〉に、状態|B1〉を|B4〉に、状態|B4〉を|B1〉に、及び状態|B3〉を|B2〉に変換するように配向される。結果として、元の入力状態|Ψ〉のベル状態成分|B1〉、|B2〉、|B3〉及び|B4〉はそれぞれ、光学系820から出力される際に、状態|B3〉、|B4〉、|B1〉及び|B2〉に対応する。
【0074】
その後、対称性解析器600−3が、光学系820からの変換された状態が一重項状態|B1〉にあるか否かを解析する。対称性解析器600−3からの測定結果x3が一重項状態|B1〉に対応する場合には、解析器600−3からの出力状態は状態|B1〉である。そうでない場合には、解析器600−3からの出力状態は対称ヒルベルト部分空間内にある。より具体的には、解析器600−3の出力状態は、解析器600−3からの測定結果x3が反対称ベル状態を示す場合には、一重項状態|B1〉であり、解析器600−2からの測定結果x2が反対称状態を示した場合にはベル状態|B4〉であり、解析器600−1からの測定結果x1が反対称ベル状態を示した場合には、ベル状態|B3〉であり、測定結果x1、x2及びx3がいずれも反対称状態を示さない場合には、ベル状態|B2〉である。
【0075】
モードM2において適切な向きを有する半波長板を用いて実現され得る光学系830は、状態|B3〉を|B1〉に、状態|B4〉を|B2〉に、状態|B1〉を|B3〉に、及び状態|B2〉を|B4〉に変換することによって、対称性解析器600−3からの出力状態を変換する。従って、解析器800からの出力状態は、解析器600−1からの測定結果x1が反対称性を示す場合には、ベル状態|B1〉であり、解析器600−2からの測定結果x2が反対称性を示す場合には、ベル状態|B2〉であり、解析器600−3からの測定結果x3が反対称性を示す場合には、ベル状態|B3〉であり、測定結果x1、x2及びx3がいずれも反対称性を示さない場合には、ベル状態|B4〉である。従って、解析器600−1〜600−3からの測定信号は、解析器800から出力される出力ベル状態を示す。
【0076】
非吸収ベル状態解析器800は、測定の痕跡、及び対応するベル状態|B4〉上への投影として反対称性を検出するために、検出器600−1、600−2及び600−3の失敗に依存する。この場合、測定値中の非効率又は誤差により、解析器600−1、600−2及び600−3が一重項状態を検出できない結果になる可能性があり、それにより、ベル状態|B4〉を誤って特定する結果になる。図8Bに示されるベル状態解析器800Bは、付加的な対称性解析器600−4を用いて、検出器の失敗を、ベル状態|B4〉の検出から区別する。
【0077】
解析器800Bは、対称性解析器600−3の後で変換光学系835を用いる。光学系810及び820の先行の変換を元に戻す代わりに、光学系835は、状態|B3〉を|B4〉に、状態|B4〉を|B3〉に、状態|B1〉を|B2〉に、及び状態|B2〉を|B1〉に変換する。従って、解析器600−3からの出力状態がベル状態|B2〉であった場合には、解析器600−4からの測定信号は反対称状態|B1〉を示すことになる。光学系840が、状態|B4〉を|B1〉に、状態|B3〉を|B2〉に、状態|B2〉を|B3〉に、及び状態|B1〉を|B4〉に変換する。解析器800Bからの出力状態は、解析器600−1からの測定信号結果x1が反対称性を示す場合には、ベル状態|B1〉であり、解析器600−2からの測定結果x2が反対称性を示す場合には、ベル状態|B2〉であり、解析器600−3からの測定結果x3が反対称性を示す場合には、ベル状態|B3〉であり、解析器600−3からの測定結果x4が反対称性を示す場合には、ベル状態|B4〉である。測定値x1、x2、x3又はx4がいずれも反対称性を示すのに失敗する場合、又は2つ以上の測定値が反対称性を示す場合には、解析失敗が示される。
【0078】
解析器600及び600Bのような非吸収対称性解析器、並びに解析器800及び800Bのようなベル状態解析器は、入力状態を解析し、次いで、解析結果を用いて、フィードフォワード動作を制御する量子情報処理システムにおいて使用され得る。フィードフォワードシステムに有用なデバイスは循環量子バッファ(Cyclical Quantum Buffer:CQB)である。
【0079】
図9は、2つの偏光ビームスプリッタ910及び920と、2つの電気光学ポッケルスセル930及び940とを含むCQB900の一実施形態を示す。偏光ビームスプリッタ910は入力ポート912を有し、水平偏光成分状態及び垂直偏光成分状態を含む入力光子状態を受け取ることができる。偏光ビームスプリッタ920は出力ポート922を有する。各偏光ビームスプリッタ910及び920は、例えば、水平偏光した光子を透過し、垂直偏光した光子を反射するように、同じ向きを有する。
【0080】
各ポッケルスセル930及び940は、ポッケルスセル930又は940が「オン」である際に、ポッケルスセル930又は940が水平偏光した光子を垂直偏光した光子に変換し、且つ垂直偏光した光子を水平偏光した光子に変換する、例えば偏光状態をスワップする(|H〉⇔|V〉)ように構成される。「オフ」の場合、ポッケルスセル930又は940は、光子状態を変更しない。ポッケルスセル930は関連する反射ミラー932及び934を有し、ポッケルスセル930を通過する光路が、ミラー932上に1つの頂点、ミラー934上に1つの頂点及びPBS910内の偏光コーティング上に1つの頂点を有する三角形リングを形成するように、それらのミラーが配向されている。同様に、ポッケルスセル940は関連する反射ミラー942及び944を有し、ポッケルスセル940を通過する光路が、ミラー942上、ミラー944上及びPBS920内に頂点を有する三角形リングを形成するように、それらのミラーが配向されている。
【0081】
CQB900は、直線偏光をスワップした後に、光子状態を格納するか、光子状態を透過するか、又は光子を反射するように動作することができる。水平偏光及び垂直偏光をスワップすることなく、光子状態を即時に伝送する場合、ポッケルスセル930及び940はいずれもオフに切り替えられる。入力ポート912を介して状態が入力される場合、PBS910は水平偏光成分を透過し、その後、その成分はポッケルスセル930を含むリングを時計回りに通過し、PBS910及びPBS920を通って伝搬し、ポッケルスセル940を含むリングを反時計回りに通過して、PBS920を介して出射する。PBS910は垂直偏光成分を反射し、その後、その成分はポッケルスセル930を含むリングを反時計回りに通過し、再びPBS910から反射され、PBS920に伝搬して、そこから反射され、ポッケルスセル940を含むリングを時計回りに通過して、PBS920から二度目に反射された後に、出力ポート922上に出射する。偏光をスワップすることなく即時に伝送するとき、CQB900の光路長は、両方の偏光成分状態に対して同じである。
【0082】
水平偏光及び垂直偏光をスワップして光子状態を即時に反射する場合、一方のポッケルスセル930をオンに切り替えることができるが、他方のポッケルスセル940はオン又はオフのいずれかにすることができる。入力ポート912からの水平偏光成分はPBS910を通過して、反射ミラー932から反射されて、ポッケルスセル930に入り、ポッケルスセル930は水平偏光した光子(単数又は複数)を垂直偏光した光子(単数又は複数)に変換する。変換された光子状態はその後、PBS910から反射されて、入力ポート912に沿って戻るように出射する。入力垂直偏光成分は最初に、PBS910から反射され、ポッケルスセル930を含むリングを通過し、ポッケルスセル930において、垂直偏光が水平偏光に切り替えられて、水平偏光がPBS910を通って、入力ポート912に沿って戻るように出射する。
【0083】
格納するためのEOM900の動作は、光子がポッケルスセル930又は940に関連付けられたリングを通過する即時伝送時間に対応するクロックサイクルを用いることができる。CQB900内の他の場所の伝搬時間、例えば、PBS910からPBS920まで伝送するための伝搬時間もクロックサイクルに同期することができるが、PBS910とPBS920との間の距離は、光学遅延を与えるために長くなる可能性がある。格納動作の場合、ポッケルスセル930及び940はいずれも、光子状態がポッケルスセル930を含むリングを最初に通過した後にのみオンに切り替えられる。両方のポッケルスセル930及び940がオンの場合、水平偏光成分及び垂直偏光成分は、ポッケルスセル930及び940を通過するリングを含む8の字の経路をたどる。最初に水平偏光である成分状態は、最初に垂直偏光である成分状態とは異なる方向に8の字の経路を通過する。(選択された遅延時間後に)元の偏光の状態で光子状態を伝送するために、ポッケルスセル940がオフに切り替えられ、光子状態は、出力ポート922を介して、PBS920から出射する。(選択された遅延時間後に)偏光をスワップして光子状態を反射するために、ポッケルスセル930がオフに切り替えられ、光子状態は、入力ポート912に沿って戻り、PBS910から出射する。
【0084】
格納デバイスとして用いられる場合、各偏光成分が各リングの中を通って循環するのに応じて、その偏光成分が垂直偏光と水平偏光との間で交互に切り替わるので、CQB900は、複屈折による位相の散逸の影響を受けないという利点を有する。さらに、方向は逆であっても、異なる偏光が同じ経路を通過するので、反射ミラー932、934、942及び944のような構造の音響振動が両方の成分に関して一致する影響を及ぼす。CQB900内の主なデコヒーレンス機構は、光子の散乱及び吸収に起因する損失である。
【0085】
図10は、2モード量子部分空間プロジェクタ500と、5つのCQB900−1〜900−5とを用いる非吸収エンコーダ1000を示す。量子部分空間プロジェクタ500は、図6A及び図6Bの量子部分空間プロジェクタ500A又は500Bと概ね同じにすることができ、CQB900−1〜900−5はそれぞれ、上述されたような図9のCQB900と概ね同じにすることができる。非吸収エンコーダ1000はさらに、エンタングルした光子対の発生源1010と、電気光学ポッケルスセル1020及び1030と、偏光ビームスプリッタ1040と、検出器1050とを含む。
【0086】
動作時に、CQB900−1及び900−4並びにポッケルスセル1020は、即時伝送のために最初にオフである。次に、符号化されるキュービットを表す入力状態|Ψ1〉が、CQB900−1を介して、エンコーダ1000に入ることができる。状態|Ψ1〉の入力と同時に、パラメトリックダウンコンバータ、ベル状態解析器、又はエンタングルした光子の任意の適切な発生源とすることができる発生源1010が、ベル状態|B4〉においてエンタングルした光子対を生成する。式17は、水平偏光状態|Hi〉及び垂直偏光状態|Vi〉の項で状態|Ψ1〉及び|B4〉を与える。ただし、下付き文字iはCQB900−iを通過する光子モードを示す。
【0087】
【数12】
【0088】
モード1及び4の光子がPBS1040に入射し、PBS1040は、モード2及び3において光子を出力する。PBS1040の作用によって、入力積状態が、式18に示されるように変換される。図示されるように、式18の変換された状態の最初の2つの項は、モード2及び3のそれぞれにおいて1つの光子を有する。式18の変換された状態の最後の2つの項は、モード3又は2のいずれかにおいて2つの光子を有し、他のモード2又は3においては光子を持たない。
【0089】
【数13】
【0090】
量子部分空間プロジェクタ500は、モード2及び3に対応する状態を解析し、変換された状態のモード2及び3を、モード2及び3のそれぞれの中に1つの光子が存在することに対応するヒルベルト部分空間上に、又はモード2において0又は2つの光子、及びモード3において2つ又は0の光子のいずれかによって記述されるヒルベルト部分空間上に投影する。プロジェクタ500からの測定結果xがモード2において1つの光子を特定する場合には、測定後の投影された状態|P1〉は式19によって与えられ、エンコーダ1000は、|Ψ1〉を、最大にエンタングルした光子の三重項として符号化することに成功している。
【0091】
【数14】
【0092】
量子部分空間プロジェクタ500が一重項状態を示す測定結果を生成しない場合には、測定後の投影された状態|P0〉は式20によって与えられる。プロジェクタ500からの測定信号は、CQB900−2及び900−3を制御して、モード2及び3の光子がPBS1040に戻るようにし、PBS1040は式20の状態を、式21において与えられる形に変換する。また、測定信号に応答して、CQB900−5はその後、モード2及び3光子が戻されている間に、モード5光子状態を格納することができる。本発明の代替の実施形態では、CQB900−5は、モード2及び3光子が準備できるまで、モード5光子の出力を単に遅らせる光学遅延線で置き換えられ得る。
【0093】
【数15】
【0094】
その際、CQB900−1及び900−4はモード1及び4光子を反射するように構成され、電気光学ポッケルスセル1020は、4分の1波長板としての役割を果たすように動作する。セル1020を2度通過すると、CQB900−1における反射中にモード1において引き起こされる偏光スワップは元に戻される。しかしながら、CQB900−4内の反射が、モード4状態の水平偏光及び垂直偏光をスワップし、その状態を、式22の左辺の項によって与えられる形に変換する。PBS1040は、CQB900−1及び900−4から反射した後のこの状態を、式22の右辺によって与えられる形に変換する。CQB900−2及び900−3はその後、モード2及び3光子を伝送するように切り替えられ、EOM900−5は同時に、モード5光子を放出する。その後、電気光学ポッケルスセル1030が、偏光スワップを実行し、それにより、モード2、3及び5光子が、式19において与えられる望ましい状態|P1〉にされる。従って、損失を無視すると、エンコーダ1000は、特定の測定結果xにかかわらず、その時間の状態|P1〉の100%を生成することができる。
【0095】
【数16】
【0096】
検出器1050は、モード2の光子状態が偏光状態|F2〉を有するか、又は|S2〉を有するかを検出することができる。この測定は、状態|P1〉を、測定結果に応じた部分空間内に投影する。その後、その測定に或る程度基づくフィードフォワード動作が、後に説明されるような破壊CNOTゲート、又はT. B. Pittman、B. C. Jacobs及びJ. D. Franson著「Probabilistic Quantum Logic Operations Using Polarizing Beam Splitters」(Phys. Rev. A, Vol. 64, 062311(2001))によって説明されるような破壊CNOTゲートで用いるために、投影された状態を必要に応じて補正することができる。検出後にモード2光子を使用できるようにするために、検出器1050は、W. J. Munro、K. Nemoto、R. G. Beausoleil及びT. P. Spiller著「A High-Efficiency Quantum Non-Demolition Single Photon Number Resolving Detector」(Phys. Rev. A 71, 033819 (2005))によって説明されるような、非吸収検出器とすることができる。さらに、検出器1050からの測定値は、電気光学ポッケルスセル1040を制御して、Pittman他のCNOTゲートにおいて必要とされるように、モード3光子状態を補正することができる。
【0097】
図11は、量子部分空間プロジェクタ500及び4つのCQB900−1〜900−4を用いる、本発明の一実施形態による破壊CNOTゲート1100を示す。また、CNOTゲート1100は、45°偏光ビームスプリッタ1120と、3つの電気光学ポッケルスセル1110、1130及び1140とを含む。後にさらに説明される1つの例示的な動作では、ターゲット状態|Ψ1〉がCQB900−1に入力され、制御状態|Ψ2〉がCQB900−2に入力される。しかしながら、CNOTゲート1100の入力モードの状態は互いにエンタングルされることができるか、又は他のシステム(図示せず)の量子状態とエンタングルされることができることは理解されたい。
【0098】
CQB900−1及び900−2並びにポッケルスセル1110が全てオフである状態で、式17において与えられる形の一般的な入力状態|Ψ1〉がEOM900−1に入力される。CNOTゲート1100が入力状態|Ψ1〉に及ぼす影響を求めるために、CQB900−2への入力として、垂直偏光状態|V2〉である制御状態|Ψ2〉が最初に仮定される。制御状態が水平偏光である事例については、後に考察する。
【0099】
式23によって与えられ、上述されたような積状態が、45°PBS1120に適用され、PBS1120は、入力状態を、式24によって与えられる形に変換する。式24は、45°PBS1120からの出力状態(検出器1150によって測定されるHVに基づいて表される)が、モード3及び4のそれぞれで1つの光子を有する状態の重ね合わせである項と、一方のモード3又は4において2つの光子を有し、他方のモード4又は3において光子を持たない状態の重ね合わせである項とを含むことを示す。
【0100】
【数17】
【0101】
量子部分空間プロジェクタ500は、モード3及び4に対応する状態を解析し、測定結果xに応じて、その状態を、式24の単一光子の項、又は0/2光子の項のいずれかに投影する。その後、モード3及び4の状態がそれぞれ、CQB900−3及び900−4に格納される。測定結果xが単一光子の項への投影を示す場合には、CQB900−3及び900−4に格納された光子は、変化することなく放出され得る。偏光検出器1150からの測定値を、Pittman他によって説明されるように使用して、ポッケルスセル1130を制御し、非破壊CNOTゲートを実現することができる。図10の検出器1050に関する他の実施形態を説明する際に上記でなされた解説は、図11の検出器1150にも適用され得る。
【0102】
測定結果xが、式24の0/2光子の項への投影を示す場合には、CQB900−3及び900−4は、格納された光子状態を45°PBS1020に戻すことができる。45°PBS1020は、式25において示されるように、戻された状態を変換する。その後、CQB900−1及びポッケルスセル1110が起動され、偏光を入れ替えることなく、モード1の光子状態を反射し、CQB900−2が起動され、偏光を入れ替えて、モード2の光子状態を反射する。
【0103】
【数18】
【0104】
45°PBS1020を通って戻った後に、その状態は、式26の左辺において与えられる形をとる。CQB900−3及びポッケルスセル1130が起動され、モード3の光子の偏光状態が入れ替えられ、CQB900−4及びポッケルスセル1140が起動され、モード4の光子の偏光状態が入れ替えられて、結果として、入力制御状態が垂直偏光である場合に、式26において示されるように、適切な出力状態に変換される。式26の右辺は、式24の左辺の最初の項と同じである。従って、ここで、そのゲートは必ずうまくいく(Pittman他のプロトコルに従う)。
【0105】
【数19】
【0106】
制御状態が、EOM900−2に入力されるときに水平偏光であるものと仮定すると、上述した同様の解析を実行して、45°PBS1120から出力される状態が式27によって与えられることを示すことができる。式27は、状態|H3〉及び|V3〉のスワップを除いて、式24と同じである。これはまさに、破壊CNOTゲートが良好に動作するために必要とされる、予想される挙動である。従って、垂直偏光の制御状態に関する上述された手順に従って、CNOTゲート1100が、水平偏光の制御状態でも適切に機能することを保証することができる。
【0107】
【数20】
【0108】
量子エンコーダ1000を破壊CNOTゲート1100と組み合わせることによって、非破壊CNOTゲートを構成することができる。この場合、図10のポッケルスセル1030の出力を、図11のCQB900−2の入力に送ることができる。検出器1050及び1150からの測定値を、Pittman他によって説明されるように使用して、概ね確率的に動作する非破壊CNOTゲートを実現することができる。
【0109】
本発明の別の実施形態による非破壊CNOTゲートは、概ね確定的なエンタングラ、パリティ検出器、又は制御移相器を含む他の量子ゲートを用いることができる。図12Aは、本発明の一実施形態による、パリティ検出器1290に基づいたエンタングラ1200の一実施形態を示す。パリティ検出器1290は、コヒーレントプローブ状態|α〉に作用する4つの制御移相器1210、1215、1220及び1225を含む。各移相器1210、1215、1220又は1225は、例えば、図1及び図2Aに関して上述されたようなEITを用いるシステム、又はウィスパリングギャラリーマイクロ共振器、光ファイバ、ドープト光ファイバ又はフォトニック結晶ファイバのような構造を用いるシステム、或いは近似的なクロスカー非線形性を生成することもできるキャビティQEDシステムを含む、種々の構造を用いて実現され得る。図12Aに示されるように、移相器1210及び1225は等しい正の位相定数+θを有し、移相器1220及び1215は等しい負の位相定数−θを有する。第1の入力モードの異なる偏光成分が、制御移相器1210及び1215を制御し、第2の入力モードの異なる偏光成分が、制御移相器1220及び1225を制御する。
【0110】
図12Aは、2つの入力モードがそれぞれ、エンタングルされるべき光子状態|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2にあるが、パリティ検出器1290の入力モードが、さらに一般的には、入力状態の積として表すことができないエンタングル状態にある一例を示す。図示された例の場合、2つの入力状態は、偏光表現を用いてキュービットを表すために、一般的な形|ΨIN〉1=c0|H1〉+c1|V1〉、及び|ΨIN〉2=d0|H2〉+d1|V2〉を有する。偏光ビームスプリッタ1230及び1240がそれぞれ、入力状態|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2を、直交する直線偏光を有する空間モードに分割し、それらの直線偏光はその後、移相器1210、1215、1220及び1225において実現されるクロスカー非線形性を介してプローブ状態|α〉と相互作用する。より具体的には、状態|ΨIN〉1の水平偏光成分c0|H〉1は移相器1210を制御し、状態|ΨIN〉1の垂直偏光成分c1|V〉1は移相器1215を制御する。状態|ΨIN〉2の水平偏光成分d0|H〉2は移相器1220を制御し、状態|ΨIN〉2の垂直偏光成分d1|V〉2は移相器1225を制御する。PBS1235及び1245は、移相器1210、1215、1220及び1225が動作した後に、水平成分及び垂直成分を再結合する。
【0111】
ホモダイン検出器1250がプローブ状態を測定する前に、パリティ検出器1290の作用によって、式28に示されるように、結合された入力状態|Ψ1〉|Ψ2〉|α〉が生成される。式28は、偶数パリティ成分|HH〉及び|VV〉がプローブ状態|α〉に位相シフトを引き起こさず、互いに対してコヒーレントのままであることを示す。奇数パリティ成分|HV〉及び|VH〉はそれぞれの位相シフト2θ及び2θを引き起こし、それにより、一般的なホモダイン/ヘテロダイン測定が状態|HV〉及び|VH〉を区別できることを可能にする。しかしながら、上述したようなX直交ホモダイン測定は、αが最初に実数である場合には、状態|αe±i2θ〉を区別しないであろう。より具体的には、αが実数である場合、X直交ホモダイン測定は、式28の状態を、式29に示されるように、X直交演算子の固有状態に投影する。
【0112】
【数21】
【0113】
従って、ホモダイン検出器1250からの測定結果xは、測定結果xの値に応じて、PBS1235及び1245から出力される状態を、高い確率で、状態c0d0|HH〉+c1d1|VV〉(偶数パリティ状態)か、又は状態c0d1eiφ(x)|HV〉+c1d0eーiφ(x)|VH〉(奇数パリティ)のいずれかに投影する。こうして、その測定はパリティを検出し、それにより、概ね確定的に、偶数パリティ項を奇数パリティ項から分割する。状態|HH〉及び|VV〉を偶数パリティ状態と呼び、状態|HV〉及び|VH〉を奇数パリティ状態と呼ぶ選択は、偏光符号化されたキュービット|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2を経路符号化されたキュービットに変換するために用いられるPBS1230及び1240の形/タイプに主に依存する任意の選択である。任意の他の選択も許容することができ、2つのキュービット|ΨIN〉1と|ΨIN〉2との間で対称である必要はない。
【0114】
出力奇数パリティ状態c0d1eiφ(x)|HV〉+c1d0eーiφ(x)|VH〉は、測定結果xに依存する。しかしながら、測定信号xに応答する1つ又は複数の移相器1260が、奇数パリティ状態を、測定結果xに依存しない状態c0d1|HV〉+c1d0|VH〉に変更することができる。特に、PBS1235及び1245の4つの入力モードのうちの1つにおいて一度だけφ(x)又は−φ(x)の位相シフトをすることにより、最大で全位相因子までの状態c0d1|HV〉+c1d0|VH〉を生成することができる。位相を補正する場合、ホモダイン測定は、フィードフォワードが測定値xに依存しない状態を生成するのに十分に正確でなければならない。実際には、これは、X直交測定の不確定性が、約2π/(αsin(θ))よりもはるかに小さくなければならないことを意味し、それは一般に、プローブ状態のものよりもはるかに強力な局部発振器を用いて達成され得る。
【0115】
従って、パリティ検出器1290は、測定されたパリティを概ね確定的に示す古典的な出力信号xを有する。さらに、パリティ検出器1290が、測定パリティ、例えば偶数パリティ測定結果に対してc0d0|HH〉+c1d1|VV〉を有し、又は奇数パリティ測定結果に対してc0d1|HV〉+c1d0|VH〉を有する出力光子状態を与えるという点で、そのパリティ検出器は非吸収性である。
【0116】
非吸収パリティ検出器1290は、上述のように動作して、2キュービット入力状態を、偶数パリティ状態の2次元部分空間上に、又は奇数パリティ状態の2次元部分空間上に投影することができる。図6A及び図6Bに関連して上述されたような非吸収対称性解析器が、同様に、2キュービット入力状態を、反対称又は一重項ベル状態に対応する一次元部分空間上に、又は対称ベル状態に対応する3次元部分空間上に投影することができる。2キュービット状態の他の1次元、2次元又は3次元の部分空間への投影は、状態変換光学系、例えば、入力状態及び出力状態の偏光を変更する波長板を追加することによって達成され得る。
【0117】
入力状態キュービット|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2の振幅c0、c1、d0及びd1を適切に選択して、エンタングラ1200におけるフィードフォワード変換が、任意のエンタングル状態を概ね確定的に生成することができる。例えば、d0及びd1が1/21/2に等しい場合には、エンタングラ1200は、偶数パリティ状態c0|HH〉+c1|VV〉、又は奇数パリティ状態c0|HV〉+c1|VH〉のいずれかを出力する。この例示的な実施形態では、状態c0|HH〉+c1|VV〉は、キュービット係数c0及びc1を符号化するための望ましいエンタングル状態である。従って、測定信号xが偶数パリティを示す場合に、非吸収パリティ検出器1290の出力状態の変化は不要である。測定信号xが奇数パリティ状態を示す場合、古典的に制御される偏光回転子を用いて実現され得るビットフリップ1270が第2の出力モードに作用することができ、そのため、奇数パリティ状態c0|HV〉+c1|VH〉が望ましいエンタングル状態c0|HH〉+c1|VV〉になる。従って、システム1200は、概ね確定的なエンタングラとしての役割を果たすように構成され得る。
【0118】
エンタングラ1200の特徴は、本発明のいくつかの代替の実施形態によるエンタングラを形成するために、種々の構成の非吸収パリティ検出器を用いるために変更され得る。例えば、図12Aに示される上記の実施形態では、第1の入力モード/キュービットの水平偏光成分及び垂直偏光成分がそれぞれ、制御移相器1210及び1215を制御し、第2の入力モード/キュービットの水平偏光成分及び垂直偏光成分がそれぞれ、制御移相器1220及び1225を制御する。水平偏光成分が制御する、移相器1210及び1220の位相定数は逆であり、そのため、状態|HH〉がプローブ状態において正味の位相シフトを引き起こさない。同様に、垂直偏光成分が制御する、移相器1215及び1225の位相定数は逆であり、そのため、状態|VV〉がプローブ状態において正味の位相シフトを引き起こさない。代替の構成は、例えば、移相器1210、1215、1220及び1215を制御するための入力モード/キュービットの異なる成分を用いて、状態|HV〉及び|VH〉が正味の位相シフトを引き起こさないようにすることができる。代案として、偏光変更素子を有する1つ又は複数の45°偏光ビームスプリッタを用いて、異なる偏光成分が正味の位相シフトを引き起こさないようにすることができ、例えば、状態|H+V,H+V〉及び|H−V,H−V〉又は別の一対の偏光状態が正味の位相シフトを引き起こさないようにすることができる。より一般的には、パリティ検出器内のホモダイン測定が、入力状態を、2キュービット状態の任意の所望の2次元部分空間上に投影するように、パリティ検出器を設計することができる。上述のようなフィードフォワードの場合、容易に明らかな変更を加えて、そのパリティ検出器を用いて、エンタングル状態を生成することができる。
【0119】
パリティ検出器及び/又はエンタングラの他の実施形態は、移相器を制御する成分を分離するために偏光以外の特性を用いることができる。例えば、図12Bは、図12Aのパリティ検出器1290及びエンタングラ1200に類似しているが、偏光ビームスプリッタ1230、1240、1235及び1245の代わりに、状態セパレータ1232及び1242と、状態コンバイナ1237及び1247とを用いるパリティ検出器1290B及びエンタングラ1200Bを示す。状態セパレータ1232及び1242、並びに状態コンバイナ1237及び1247の具現化形態は一般に、成分の特徴的な特性に依存するであろう。例えば、個々の角運動量成分が制御移相器を制御するように、ホログラムが入力状態の角運動量成分を分離して再結合することができる。時間ビン符号化を用いる一実施形態では、適切にタイミングを制御された光スイッチが同様に、成分セパレータ及びコンバイナとしての役割を果たすことができる。そのように変更する場合、パリティ検出器1290B内のホモダイン測定が、入力状態|ΨIN〉12を、分離された成分によって定義され、且つ測定結果xによって特定される2次元部分空間に投影する。
【0120】
また、図12Bは、分離された成分を再結合した後に、エンタングラ1200Bがフィードフォワード状態の補正を如何にして実行することができるかも示す。詳細には、エンタングラ1200Bは、状態コンバイナ1237及び1247の後方に配置され、且つエンタングラ1200の古典的な制御移相器1260及びビットフリップ1270に取って代わたフィードフォワード補正システム1275を有する。エンタングラ1200Bの一実施形態では、補正システム1275が移相器1260及びビットフリップ1270に対応する光学素子を含み、測定信号xの制御下で上記の機能を実行する。これは、1つ又は複数のモード/キュービットの成分の再分割を必要とする場合もあるが、全ての条件付き位相シフト及びビットフリップが一緒に実行することが可能になるという点で有利である可能性がある。例えば、エンタングラ1200Bは、フィードフォワード状態補正も必要とする他の量子ゲート又はシステム1280とともに使用され得る。そのようなシステムでは、補正システム1275は、パリティ検出器1290B及び他の量子システム1280から複数の測定信号x及びx’を受信して、システム1200B及び1280に必要とされる正味の補正を同時に実行することができる。
【0121】
図12Cは、必要な制御移相器が少なくて済む、本発明の一実施形態によるエンタングラ1200Cを示す。詳細には、エンタングラ1200Cは、エンタングラ1200又は1200Bにおいて用いられるような4つの移相器ではなく、2つの移相器1210及び1220だけを用いる非吸収パリティ検出器1290Cを含む。図12Cでは、制御移相器1210は位相定数θを有し、入力光子状態|ΨIN〉12の第1のモード/キュービットの1つの成分の制御下で、プローブ状態に作用する。制御移相器1220は、制御移相器1210の位相定数θの負の値である位相定数−θを有し、入力光子状態|ΨIN〉12の第2のモード/キュービットの一致する成分の制御下で、プローブ状態に作用する。従って、入力キュービットの一致する成分、例えば水平偏光成分がそれぞれ、プローブ状態|α〉への制御移相器1210及び1220の作用を制御するが、他の構成も実現可能である。例示された構成の場合、制御移相器1210及び1220が逆の位相シフトを引き起こすので、状態|HH〉はプローブ状態において正味の位相シフトを引き起こさない。状態|VV〉は位相シフトを引き起こさず、状態|HV〉及び|VH〉はプローブ状態において、0でない逆の位相シフトを引き起こす。従って、図12Cのパリティ検出器1290C及びエンタングラ1200Cの動作は、位相シフトの大きさを除いて、パリティ検出器1290又は1290C、及びエンタングラ1200又は1200Bの動作と実質的に同じである。
【0122】
図13は、本発明のさらに別の実施形態によるエンタングラ1300を示す。エンタングラ1300は、入力偏光ビームスプリッタ1310と、部分空間プロジェクタ1320と、出力偏光ビームスプリッタ(又はコンバイナ)1330と、古典的に制御されるビットフリップシステム1340とを含む。
【0123】
偏光ビームスプリッタ(PBS)1310は、状態|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2によって、偏光に基づいて表現される入力キュービットを受け取る。1つの例示的な実施形態では、状態|ΨIN〉1はエンタングル状態、例えば|ΨIN〉1=c0|H1〉+c1|V1〉として符号化されるべきキュービットを表し、状態|ΨIN〉2は既知の状態、例えば|ΨIN〉2=(1/21/2)|H2〉+(1/21/2)|V2〉である。PBS1310の動作は、対称状態|HH〉及び|VV〉を維持するが、状態|HV〉又は|VH〉が入力される場合に、一方のモードにおいて2つの光子を有し、他方のモードにおいて光子を持たない状態|HV,0〉又は|0,HV〉を出力する。従って、エンタングラ1300の例示的な実施形態におけるPBS1310からの出力状態は、c0/21/2|H1H2〉+c1/21/2|V1V2〉+c0/21/2|H1V1,0〉+c1/21/2|0,H2V2〉の形をとることができる。
【0124】
部分空間プロジェクタ1320が、PBS1310の出力状態を、各モードに1つの光子を有する状態を含む部分空間か、又は一方のモードに2つの光子を有し、他方のモードに光子を持たない状態を含む部分空間かのいずれかに投影する。詳細には、例示的な入力状態の場合に、部分空間プロジェクタ1320は、測定結果xに応じて、状態c0|H1H2〉+c1|V1V2〉又はc0|H1V1,0〉+c1|0,H2V2〉を出力する。適切な部分空間プロジェクタ1320は、例えば、上記の部分空間プロジェクタ500A又は500Bと同じ構造を有し、同じ動作をすることができるが、代案として、PBS1310の出力状態が対称であるか否かを示す測定値を与える任意のシステムを用いることができる。
【0125】
出力PBS1330は、一方のモードに2つの光子を有する状態|HV,0〉及び|0,HV〉を、各モードにおいて1つの光子を有する状態|HV〉又は|VH〉に変換して戻す。結果として、本発明の例示的な実施形態におけるPBS330からの出力状態は、状態c0|H1H2〉+c1|V1V2〉又はc0|H1V2〉+c1|V1H2〉のいずれかである。従って、1つの測定結果に関して、PBS330は、所望のエンタングル状態c0|H1H2〉+c1|V1V2〉を出力し、状態補正は不要である。他の測定結果に関して、PBS330は状態c0|H1V2〉+c1|V1H2〉を出力し、測定信号xの制御下にあるビットフリップ1340が、その出力状態を、所望の形c0|H1H2〉+c1|V1V2〉に変換する(ビットフリップは、水平偏光及び垂直偏光のスワップに対応し、ポッケルスセルで達成され得る)。
【0126】
エンタングラ1200、1200B,1200C及び1300は、上述のように概ね確定的であり、効率的な非吸収CNOTゲートにおいて使用され得る。図14Aは、本発明の一実施形態による非吸収CNOTゲート1400の一例を示す。CNOTゲート1400は、エンタングラ1410と、45°エンタングラ1415とを含む。エンタングラ1410は上記のエンタングラの任意のものと同じにすることができる。45°エンタングラ1415は、基底状態に対して45°の角度を成す偏光に対応する状態をエンタングルする。45°エンタングラ1415は、入力ビーム及び出力ビームの偏光ベクトルを45°だけ回転させる光学素子1417、例えば4分の1波長板を追加することによって構成され得る。代案として、45°エンタングラ1415は、PBS1230、1235、1240及び1245を45°偏光ビームスプリッタで置き換えた後のエンタングラ1200、1200B又は1200Cと同じにすることができる。
【0127】
また、CNOTゲート1400は、最大にエンタングルした状態1/21/2(|H3H4〉+|V3V4〉)の発生源1405も含む。発生源1405は、限定はしないが、パラメトリックダウンコンバージョンを用いるシステム、非線形光ファイバ、又は所望のエンタングル状態を生成するための上記のようなエンタングラを含む、エンタングルした光子対を生成することができる任意のシステムとすることができる。
【0128】
式30において与えられる形の初期状態の場合、エンタングラ1410の動作によって、式31に示されるような入力状態が生成され、入力状態|ΨIN〉1のモード1光子が、発生源1405からのモード3光子と最大にエンタングルされる。検出器1460は、モード3状態が偏光状態|S3〉=1/21/2[|H3〉+|V3〉]にあるか、又は偏光状態|F3〉=1/21/2[|H3〉−|V3〉]にあるかを測定する。本発明の1つの例示的な実施形態では、検出器1460は、モード3状態を状態|S3〉及び|F3〉にそれぞれ比例する偏光成分に分割し、非吸収検出器1430を用いて、それぞれの偏光を有する光子を検出する、45°−PBS1420を含む非吸収検出器1460である。非吸収検出器を用いる必要はないが、それを用いることにより、他の場所において用いるために光子状態を再構成して出力することが可能になる。
【0129】
【数22】
【0130】
検出器1460の測定後の条件付き状態は、式32に示す形からなる。ただし、プラス符号は、測定結果が状態|S3〉を特定する場合に得られ、マイナス符号は、測定結果が状態|F3〉を特定する場合に生じる。検出器1460からの測定値が状態|F3〉を特定する場合に、簡単なフィードフォワードシステムが符号フリップ1470を実行することができ、検出器1460からの測定結果にかかわらず、左辺の演算が式33の状態を生成するようにする。
【0131】
【数23】
【0132】
45°エンタングラ1415は、発生源1405からのモード4光子状態及びモード2入力状態|ΨIN〉2をエンタングルして、全状態を、式34に示される形に変換する。検出器1465は、モード4における光子の偏光状態を測定する。1つの例示的な実施形態では、検出器1465は、モード4光子状態を分割するPBS1425と、モード4光子の分離された成分を測定する非吸収検出器1435及び1445とを含む非吸収検出器である。より一般的には、検出器1435及び1445は非吸収である必要はないが、非吸収検出器1435及び1445を用いることによって、成分を再結合して、他の用途に利用することができる出力状態を形成することが可能になる。検出器1465がモード4において垂直偏光した光子を検出する場合には、水平偏光及び垂直偏光をスワップするビットフリップ1475が実行される。これらの相互作用及びフィードフォワード動作からの最終的な状態が、式35において与えられており、それは、偏光符号化を用いてキュービットを表す、入力状態|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2へのCNOT演算のための正しい結果である。
【0133】
【数24】
【0134】
式35は、ゲート1400がCNOT演算を実行したことを示す。さらに、CNOT演算はエンタングラ1410及び1415における測定結果とは実質的に無関係であるので、その演算は概ね確定的であり、高い効率で正しく成功する。異なる観点から、エンタングラ1410及び1415は有効に、光子の集群効果(photon bunching effects)を許さない偏光ビームスプリッタのように動作する。これらの光子集群効果が生じない場合、簡単なフィードフォワード動作によって、CNOTゲート1400は、概ね確定的に形成されることが可能になる。これは、単光子量子ロジックを実現するための物理的な資源を大幅に節約することを表す。
【0135】
図14Bは、図14AのCNOTゲート1400において用いられる4つの状態ではなく、3つの入力光子状態を使用する概ね確定的なCNOTゲート1400Bの別の例を示す。CNOTゲート1400Bへの3つの入力状態は、偏光符号化されている制御キュービット及びターゲットキュービットを表す状態|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2と、形(|H3〉+|V3〉)/21/2の補助的な「モード3」状態である。この実施形態では、エンタングラ1410から45°エンタングラ1415への出力モードは、モード4と呼ばれる。この取り決めを用いるとき、エンタングラ1410が制御状態|ΨIN〉1及びモード3状態を処理することから生じる状態が、上記の式33によって与えられることを示すことができる。CNOTゲート内のエンタングラの類似した動作に関するさらなる説明は、T. B. Pittman、M.J. Fitch、B. C. Jacobs及びJ. D. Franson著「Experimental Controlled-NOT Logic Gate For Single Photons In The Coincidence Basis」(Phys. Rev. A 68, 032316(2003))において見出され得る。45°エンタングラ1415、検出器1465及びビットフリップ1475の動作及び構成は、図14AのCNOTゲート1400に関して上述されている。従って、その説明はここでは繰り返されない。
【0136】
図14Bはさらに、エンタングラ1410が図12Cのエンタングラ1200Cと実質的に同じであり、45°エンタングラ1415が、偏光ビームスプリッタの代わりに45°偏光ビームスプリッタを用いることを除いて、エンタングラ1410と同じである、具体的な具現化形態を示す。しかしながら、代案として、エンタングラの他の実施形態を用いることもできる。
【0137】
また、非吸収検出を用いて、既存の確率的な量子ゲートを概ね確定的な量子ゲートにすることもできる。本明細書においてKLM CNOTと呼ばれる、既知の確率的なCNOTゲートの一例が、Knill他著「A Scheme for Efficient Quantum Computation with Linear Optics」(Nature 409, 47(2001))によって説明される。図15は、確率的なKLM CNOTに基づいた概ね確定的なCNOTゲート1500を示す。KLM CNOTゲートと同様に、CNOTゲート1500は、入力偏光ビームスプリッタ1510及び1515と、非偏光ビームスプリッタ1520及び1525と、非線形符号(NS)ゲート1530及び1535と、非偏光ビームスプリッタ1540及び1545と、出力偏光ビームスプリッタ1550及び1555とを含む。しかしながら、CNOTゲート1500において、後にさらに説明されるように、非吸収検出を用いることによって、NSゲート1530及び1535をさらに効率的に形成することができる。
【0138】
例示的なCNOT演算中に、偏光ビームスプリッタ1510及び1515はそれぞれ、偏光符号化された単光子状態である制御キュービット及びターゲットキュービットを受け取る。各ビームスプリッタ1510又は1515は、対応する入力状態の偏光成分を分離し、対応するキュービットをフイッチパス(which-path)符号化に変換する。PBS1525の出力モードのうちの1つに、偏光回転子(図示せず)を追加して、両方のモードが同じ光子偏光に対応するようにする。ビームスプリッタ1525が制御キュービットからの成分とターゲットキュービットからの成分とを干渉させる前に、ビームスプリッタ1520がターゲットキュービットにおいてアダマール変換を実行する。非偏光ビームスプリッタ1525によって、2つの光子が同じモードに集群することができる。詳細には、ビームスプリッタ1525の各入力モードに1つの光子を与える状態は、2つの光子がいずれも、NSシフトゲート1520に向けられる出力モードにあるか、又はNSシフトゲート1535に向けられる出力モードにある状態を生成することができる。各NSゲート1530及び1535が、式36に示されるように、0、1つ、及び2つの光子を含むフォック状態の一次結合である状態を変換し、その結果、各NSゲート1530が2光子成分状態に対してだけ符号シフトを導入することが理想的である。ビームスプリッタ1540が集群を元に戻して、ビームスプリッタ1540の出力モードの状態が、各出力モードに1つの光子を有する成分において符号が変化していることを除いて、ビームスプリッタ1525の入力モード状態と同じであるようにする。この符号変化の結果として、ビームスプリッタ1545から出力されるフイッチパス符号化されたキュービットは、CNOT演算のために必要とされる状態になる。その後、偏光ビームスプリッタ1550及び1560が、フイッチパスキュービットを変換して、偏光符号化されたキュービットに戻すことができる。
【0139】
【数25】
【0140】
既知のKLM CNOTゲートは、非線形符号(NS)ゲートを除いて、確定的である。従来の確率的NSゲートは、特定の測定結果の符号定数に対して式36の動作を実行する際にのみ成功し、そのような状況が生じるのは、実行回数のうち25%未満であるかもしれない。従って、従来のKLM CNOTは、16回のうち1回しかCNOT演算の実行に成功しない場合もある。CNOTゲート1500は、後にさらに説明されるように、NSゲート1530及び1535の効率を改善するために非吸収検出を使用する、NSゲート1530及び1535を用いて強化される。
【0141】
図16Aは、概ね確定的な非線形符号(NS)ゲート1600の一実施形態を示す。NSゲート1600は、3つの非偏光ビームスプリッタ1610、1620及び1630と、2つの非吸収検出器1640及び1650と、NSゲート1600の出力側及び入力側にある循環量子バッファ1660及び1670とを含む。動作時に、それぞれ0及び1つの光子を含む既知のフォック状態|0〉及び|1〉がビームスプリッタ1610の入力モードに適用される。式36に示される形の入力状態|φ〉及びビームスプリッタ1610の出力モードのうちの1つが、ビームスプリッタ1620の入力モードに適用され、各ビームスプリッタ1610及び1620からの1つの出力モードが、ビームスプリッタ1630の対応する入力モードに適用される。一般に、入力信号のタイミング、及びNSゲート内の光路長は、ビームスプリッタ1610、1620及び1630によって入力光子状態の干渉が生じるようになっている。
【0142】
非吸収検出器1640及び1650は、光子状態の他の特性を維持しながら、ビームスプリッタ1630の出力モードにおいて光子数を測定する。非吸収検出器1640及び1650は、それぞれの測定信号X1及びX2、及びそれぞれの測定された光子状態を出力する。例示的な実施形態において、各非吸収検出器1640及び1650は、ビームスプリッタ1630の出力モードの制御下にある偏光保持位相ゲートと、上記のようにプローブ状態における位相変化を測定する測定システムとを含む。非偏光ビームスプリッタ1610、1620及び1630を特徴付ける、それぞれの透過率T1、T2及びT3と、角度θ1、θ2及びθ3とを適切に選択すると、非吸収検出器1640が1つの光子を検出し、非吸収検出器1650が光子を検出しない場合には、ビームスプリッタ1620の1つの出力モードの状態が式36の状態|φ’〉になるであろう。NSゲートの一実施形態の場合に、角度θ1、θ2及びθ3は式37を満たす(Knill他著「A Scheme for Efficient Quantum Computation with Linear Optics」(Nature 409, 47 (2001))及びこの結果を達成するビームスプリッタ特性を説明するためのオンラインによる補足的な情報を参照されたい)。しかしながら、検出器1640及び1650がそれぞれ1つ及び0の光子を検出できない場合には、その出力状態は、状態|φ’〉の所望の形を有することができないであろう。図16Aに対応する従来のKLM CNOTの場合、所望の出力状態を生成し損なうことが、実行回数のうち約75%において生じ、従来のKLM CNOTゲートを非効率的にしている。
【0143】
【数26】
【0144】
NSゲート1600は、ビームスプリッタ1630からの出力モードが、所望の状態|φ’〉の生成に成功したことに対応する状態にあるか、又は所望の状態|φ’〉の生成に失敗したことに対応する状態にあるかを特定する非吸収検出器1640及び1650を用いる。例えば、検出器1640からの測定信号X1が、光子が1つであることを示し、検出器1650からの測定信号X2が、光子がないことを示す場合には、測定結果Xが、ゲート動作に成功したことを示すことができる。測定結果Xが所望の状態|φ’〉の生成を示す場合には、バッファ1660が所望の状態|φ’〉を伝送し、NSゲート1600は、補正動作を実行するのに成功している。測定結果Xが所望の状態を生成するのに失敗したことを示す場合には、測定信号は、光子状態を反射してNSゲート1600を通して戻すようにバッファ1660を設定し、光子が、NSゲート1600の入力側にあるバッファ1670まで、その経路を有効に逆戻りするようにする。その逆戻りは変化を元に戻し、光子を状態|φ〉、|0〉及び|1〉に戻す。その際、バッファ1670は反射性になり、そのため、もう一度所望の状態|φ’〉を生成しようとするために、状態|φ〉、|0〉及び|1〉が戻される。このようにして、元の光子状態がNSゲート1600を通って往復することができ、それゆえ、NSゲート1600を以前に通過した際に所望の状態|φ’〉を生成できなかった光子状態でも、後に通る際に所望の状態|φ’〉を生成するのに成功することができる。こうして、NSゲート1600は、はるかに高い成功の効率又は確率を与えることができ、十分な回数だけ通過することによって、概ね確定的な成功に近づくことができる。
【0145】
図16Bは、非吸収検出器を用いて、動作が成功する確率を高める別のNSゲート1600Bを示す。NSゲート1600Bにおいて、状態|φ〉及び|1〉がビームスプリッタ1610の入力モードに適用され、状態|0〉及びビームスプリッタ1610の一方の出力モードが、ビームスプリッタ1620の入力モードに適用される。非吸収検出器1640及び1650はそれぞれ、ビームスプリッタ1620の一方の出力モード上、及びビームスプリッタ1610の利用可能な出力モード上にある。ビームスプリッタ1610及び1620を特徴付ける角度θ1及びθ2を適切に選択すると、非吸収検出器1650が1つの光子を検出し、非吸収検出器1640が光子を検出しない測定結果によって、ビームスプリッタ1620の測定されていない出力モードが所望の状態|φ’〉にあることが示される。NSゲート1600Bを最初に通過する際に状態|φ’〉を生成するのに成功する確率は約23%であり、それは、NSゲート1600Bに類似した構造を有する従来の確率的なNSゲートの成功確率である。しかしながら、NSゲート1600Bは、循環量子バッファ1660を含み、それにより、測定結果が失敗を示す場合に、出力光子が反射されて、NSゲート1600Bに戻され、バッファ1660は、バッファ1670と協働して、所望の状態|φ’〉が生成されるまで光子を繰返し戻すことができる。
【0146】
非吸収検出器をさらに全般的に用いて、他の確率的ゲートの効率を改善することができる。図17は、既知の確率的ゲートに基づいている一般的な量子ゲート1700を示す。量子ゲート1700は、入力コヒーレント量子バッファ1710と、確率的ゲート1720と、出力コヒーレント量子バッファ1730とを含む。確率的量子ゲート1720は、光学系1722(例えば、線形光学系)と、非吸収検出器1724とを含む。光学系1722は、検出器測定値を用いて光子状態の非線形相互作用を生じさせる既知の確率的量子ゲートにおいて用いられる光学系と同じにすることができるが、本発明の一態様によれば、確率的量子ゲート1720は、測定されている光子状態を破壊する従来の検出器の代わりに、非吸収検出器1724を使用する。動作時に、確率的ゲート1720に必要とされる入力光子状態及び補助光子状態が、CQB1710を通して入力され、非吸収検出器1724は、ゲート1720が正確な出力状態を生成するのに成功しているか否かを判定する。成功している場合には、出力状態がCQB1730を通して伝送される。成功していない場合には、検出器1724からの測定信号が、CQB1710及び1730を、それらの反射状態に切り替える。その後、出力光子状態及び補助光子状態が、ゲート1720を通ってCQB1710に戻り、CQB1710は、所望の出力を生成するための別の機会を得るために、光子状態をゲート1720に戻すように再入力する。ゲート1720を何度も通過することによって、ゲート動作に成功するための別の機会が与えられる。従って、ゲート1700は、ゲート1720よりも、又は対応する従来の確率的ゲートよりも、動作に成功する確率が高くなる。
【0147】
本発明は特定の実施形態に関連して説明されてきたが、その説明は本発明の応用形態の例を提供するだけであり、限定するものと解釈されるべきではない。例えば、本発明の特定の実施形態の動作は、積状態のような特定の入力状態で説明又は図示される場合があるが、上記の実施形態は、より一般的には、エンタングル状態及び混合された状態を含む、任意の適切な量子状態を処理することができる。開示された実施形態の特徴の種々の他の改変及び組み合わせが、添付の特許請求の範囲によって規定されるような、本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】量子非破壊検出器のために適した制御移相器を実現する非線形光学素子を示す図である。
【図2A】電磁誘導透過を用いる、本発明の代替の実施形態による制御移相器を示す図である。
【図2B】電磁誘導透過を用いる、本発明の代替の実施形態による制御移相器を示す図である。
【図2C】電磁誘導透過を用いる、本発明の代替の実施形態による制御移相器を示す図である。
【図3】図2A、図2B及び図2Cの制御移相器において用いられる物質系のためのエネルギー準位図である。
【図4A】入力状態の偏光又は他の特性を保持することができる、本発明の一実施形態による光子数分解移相器を示す図である。
【図4B】入力状態の偏光又は他の特性を保持することができる、本発明の一実施形態による光子数分解移相器を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態によるnモード量子部分空間プロジェクタを示す図である。
【図6A】2モード量子部分空間プロジェクタを用いる、本発明の代替の実施形態による非吸収対称性解析器を示す図である。
【図6B】図6Aとは異なる2モード量子部分空間プロジェクタを用いる、本発明の代替の実施形態による非吸収対称性解析器を示す図である。
【図7A】図5の部分空間プロジェクタ、又は図6A又は図6Bの対称性解析器において用いるのに適しているホモダイン検出器を示す図である。
【図7B】2キュービット状態の対称性の解析中に行われるホモダイン測定のための確率分布を示す図である。
【図8A】本発明の一実施形態による非吸収ベル状態解析器を示す図である。
【図8B】本発明の代替の実施形態による非吸収ベル状態解析器を示す図である。
【図9】本発明の実施形態による、量子情報処理システムにおいて用いるのに適している、光子を格納する電気光学ミラーシステムを示す図である。
【図10】本発明の一実施形態による非吸収エンコーダを示す図である。
【図11】量子部分空間プロジェクタを利用する、本発明の一実施形態によるCNOTゲートを示す図である。
【図12A】本発明の一実施形態によるエンタングラを示す図である。
【図12B】本発明の代替の実施形態によるエンタングラを示す図である。
【図12C】本発明の代替の実施形態によるエンタングラを示す図である。
【図13】図6A又は図6Bに示されるような対称性解析器からのフィードフォワードを用いる一実施形態によるエンタングラを示す図である。
【図14A】本発明の一実施形態による、エンタングラ及びフィードフォワード技術を利用する、CNOTゲートの一実施形態を示す図である。
【図14B】本発明の一実施形態による、エンタングラ及びフィードフォワード技術を利用する、CNOTゲートの代替の実施形態を示す図である。
【図15】効率的な非線形符号ゲートを利用することができる効率的なCNOTゲートの一実施形態を示す図である。
【図16A】非吸収状態検出器を用いるマルチパス非線形符号ゲートの一実施形態を示す図である。
【図16B】非吸収状態検出器を用いるマルチパス非線形符号ゲートの代替の実施形態を示す図である。
【図17】本発明の一実施形態による、マルチパス確率的量子ゲートを示す図である。
【背景技術】
【0001】
背景
量子情報処理は概して、量子状態を操作又は使用して、情報を格納又は伝達すること、又は計算を実行することを含む。量子情報処理において、量子状態を有する種々のシステムが提案又は使用されている。例えば、光学システムは、光の量子状態を操作して、特定の量子情報処理タスクを実行することができる。
【0002】
光検出及びフィードフォワードシステムによって非線形性が誘起される線形光学素子に基づく量子コンピュータアーキテクチャが、最初に、E. Knill、R. Laflamme及びG. J. Milburn著「A Scheme for Efficient Quantum Computation with Linear Optics」(Nature 409, 47 (2001))によって提案された。この提案は、線形光学系量子計算(linear optics quantum computaion:LOQC)が原理的には実現可能であることを実証したが、この手法に基づく拡張性のあるシステムは、信頼性のある演算を行うために、実用的でないほど大量の量子資源の供給を必要とした。Knill他の提案に対する改善形態が開発されており(そして、実験的に実証されており)、それは必要とする資源が少なくて済むが、最近になってなされたこれらの提案は、確率的に挙動する量子回路素子を禁止する。例えば、T. B. Pittman、B. C. Jacobs及びJ. D. Franson著「Probabilistic Quantum Logic Operations Using Polarizing Beam Splitters」(Phys. Rev. A 64, 062311 (2001))によって説明される量子制御NOTゲートは、Knill他によって提案された対応するシステムよりも必要とする資源が少なくて済むが、確定的に動作しない。
【0003】
Pittman他によって提案されたシステムは、1つ又は複数の入力光キュービット及び第1の組の補助光キュービットの測定を用いる。その測定結果によって、第1の組の補助光キュービットとエンタングルした第2の組の補助光キュービットから、1つ又は複数の光キュービットを選択することが可能になる。この技術に伴う問題は、選択された出力光キュービットが、実現されているゲートに対して正しくないという固有の確率を有することである。そのシステムが正しい出力を生成し損なうことになる確率は一般に、75%である(完全な光検出器を仮定した場合)。それゆえ、いくつかのそのようなゲートを有する、このタイプの線形量子光学コンピュータは、オフラインの量子資源(例えば、エンタングルした光子)を極端に浪費し、複雑なシステムの場合には実用的でないかもしれない。例えば、いくつかの線形光学量子ゲートを含む量子回路は、それらのゲートを並列に動作させることによって計算を実行することができる。それらのゲート出力は、ゲートが適切に機能した場合には、その計算にテレポートされることができる。この手法は拡張性があるが、計算が成功するまで、個々のゲート動作を何度も繰り返す必要があるので、多くのエンタングルした光子及び補助光子を無駄にするであろう。
【0004】
確定的であるか、又は量子資源を効率的に利用する光学量子情報処理システムが望まれている。そのような光学システムは、ナノメートルスケールまで小型化するのに適していることも理想的である。
【0005】
概要
本発明の一態様によれば、制御移相器のような非線形光学素子を用いて、量子部分空間プロジェクタ、ベル状態解析器、量子エンコーダ、パリティ検出器、及び概ね確定的に動作する破壊及び非破壊CNOTゲート等の素子を実現することができる。
【0006】
異なる図面において同じ参照符号が用いられる場合、類似又は同一の要素を示す。
【0007】
詳細な説明
本発明の一態様によれば、非線形光学素子が、制御位相シフト、非吸収状態検出、非吸収ベル状態解析、告知(heralded)状態準備、非吸収符号化、及び制御NOT(CNOT)ゲートのような基本量子ゲート動作等の量子情報処理タスクを効率的に実現することができる。光学的非線形性を直接的に使用して、小さな位相シフトを増幅することができ、高い動作効率で概ね確定的にフィードフォワードシステムを使用することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、電磁誘導透過(EIT)のような非線形効果を用いて、測定可能な位相シフトを生成し、ナノスケール構造を用いて製造され得る導波路及び相互作用サイト(例えば、EIT原子)とを用いて実現され得る。例えば、R. G. Beausoleil、W. J. Munro及びT. P. Spiller著「Applications of Coherent Population Transfer to Quantum Information Processing」(quant-ph/0302109 (2003))(Journal of Modern Optics, Vol. 51, No. 11, pp.1559-1601 (2004)にも発表されている)は、ナノスケール構造を用いて製造され得る量子光学システムにおいてEIT相互作用を用いることを説明する。また、R. G. Beausoleil他著「Applications of Electromagnetically Induced Transparency to Quantum Information Processing」(Journal of Modern Optics, Vol. 51, pp.2441-2448 (2004))及びW. J. Munro他著「A High-Efficiency Quantum Non-Demolition Single Photon Number Resolving Detector」(Phys. Rev. A 71, 033819 (2005))も参照されたい。しかしながら、本発明の実施形態は、EIT、一般的なクロスカー非線形性(cross-Kerr non-linearity)、又は他の非線形光子相互作用を用いる、より大きなスケールの構造で実現され得る。
【0009】
図1は、本発明の1つの例示的な実施形態による制御移相器100を概略的に示す。制御移相器100は、プローブモード110と、入力モード120と、測定モード130とを有する。図1に示される移相器100の1つの例示的な動作おいて、コヒーレント光子状態|α〉がプローブモード110に加えられ、n光子フォック状態|n〉が入力モード120に加えられる。制御移相器100のコヒーレント光子状態|α〉及びフォック状態|n〉の非線形相互作用は、位相シフトnθを引き起こし、測定モード130上に出力コヒーレント光子状態|αeinθ〉を生成する。W. J. Munro、K. Nemoto、R. G. Beausoleil及びT. P. Spiller著「A High-Efficiency Quantum Non-Demolition Single Photon Number Resolving Detector」(Phys. Rev. A 71, 033819 (2005))にさらに説明されるように、制御移相器100の特徴又は特性が位相定数θを固定し、コヒーレントプローブ状態の位相シフトnθを測定することによって、入力モード120のフォック状態|n〉内の光子の数nが求められるようにする。
【0010】
図2A、図2B及び図2Cは、電磁誘導透過(EIT)を用いて、位相シフトを引き起こす制御移相器200A、200B及び200Cの具体的な具現化形態を示す。これらのEIT系は一般的に、物質系に光子状態を加え、この場合、物質系との非線形相互作用が、光子の量子状態を破壊又はそうでなければ変更することなく、位相シフトを引き起こすことができる。
【0011】
図2Aは、自由空間内にある物質系210を含む、構造的に簡単な移相器200Aを示す。物質系210は、ガスセル、又はEITに適した量子エネルギー準位を有する1つ又は複数のサイトを有する任意の構造とすることができる。移相器200Aでは、それぞれ図1の光子状態|n〉及び|α〉に対応する、光子状態|na〉及び|αc〉が、物質系210の場所において重なるように送られる。状態|na〉及び|αc〉のための下付き文字は、それぞれの状態の光子の周波数を特定する。駆動レーザ220がさらに、物質系210内で光子状態|na〉及び|αc〉と重なるように光子状態|αb〉を送る。適切に選択された周波数を有する3つの光子状態|na〉、|αb〉及び|αc〉の重なりによって、EITが4準位物質系と相互作用して、後にさらに説明されるように位相シフトを引き起こすことが可能になる。
【0012】
図2Bは、固体システムにおいて製造するのに適した制御移相器200Bを示す。制御移相器200Bは、導波路232及び234を含むフォトニック結晶230を含む。図1の制御移相器100と比べる場合、導波路232は入力モード120に対応し、導波路234は光子モード110及び130に対応する。また、レーザ220も、後にさらに説明される特定のEIT相互作用のために必要とされる制御光子状態|αb〉で導波路234を駆動する。伝搬光子状態|αb〉及び|αc〉の方向を逆にして、測定又は使用するためのモードの分離を簡単にすることができる。EIT相互作用の場合、導波路232及び234内の光子に対応するエバネッセント場が物質系210と相互作用し、その相互作用が導波路234内のプローブ光子状態に位相シフトを引き起こすような場所において、物質系210がフォトニック結晶230内に閉じ込められることが好ましい。
【0013】
図2Cは、周期的な一連のセル260を有する導波路250を含む移相器200Cを示す。導波路250は、空気又は他の低屈折率材料(例えば、ε=1)で包囲された高屈折率材料(例えば、ε=12)から形成され得る。1つの例示的な実施形態では、導波路250は厚み0.55tを有する。ただし、tはセル260の周期である。各セル260は、厚いセグメント(例えば、厚み1.25t及び長さ0.4t)と、それに続く薄いセグメント(例えば、厚み0.25t及び長さ0.6t)とすることができる。周期的な構造260に欠陥を導入することによって、キャビティ270を実現することができる。例えば、中央の厚い素子の長さを0.3tまで短くし、2つの隣接する薄い素子の長さを0.25tまで短くすることによって、キャビティ/欠陥270を導入することができる。キャビティ270の中に物質系210を配置することができる。
【0014】
光子状態|na〉、|αb〉及び|αc〉は全て導波路250に入力され、物質系210を含むキャビティ270を通過する。周期的なセル260及びキャビティ270を用いて引き起こされる低群速度効果(slow light effect)が光子状態|na〉、|αb〉及び|αc〉と物質系210との相互作用時間を長くし、それに応じて、移相器200Cの位相シフトを大きくすることができる。導波路250からの出力光子状態|na〉、|αb〉及び
は、既知の偏光及び/又は周波数に基づく技術等のビーム分離法を用いて分離され得る。例えば、光子状態|na〉は、導波路250内でTE偏光を有することができるが、|αb〉及び|αc〉は直交TM偏光を有する。その際、偏光ビームスプリッタが、状態|na〉を状態|αb〉及び
から分離することができ、周波数フィルタが状態|αb〉を除去して、分離された状態
を残すことができる。
【0015】
1つの例示的な実施形態では、制御移相器200A、200B又は200C内の物質系210は、図3に示されるような量子エネルギー準位を有する4つの状態|1〉、|2〉、|3〉及び|4〉を有する少なくとも1つの原子、分子又は他の構造を含む。光子状態|na〉、|αb〉及び|αc〉は、物質系210のエネルギー準位に従って選択される角周波数ωa、ωb及びωcをそれぞれ有するモードに対応するが、そうでなければ、光周波数、無線/マイクロ波周波数、及び他の通信周波数を含む任意の範囲の電磁スペクトルとすることができる。一般に、角周波数ωa、ωb及びωcは、物質系210の量子エネルギー準位間の対応する遷移に結び付けられる。詳細には、図3のエネルギー準位の場合、角周波数ωaの光子は、原子のエネルギー状態|1〉をエネルギー状態|2〉に結合する。角周波数ωb及びωcの光子は、準安定エネルギー状態|3〉をそれぞれエネルギー状態|2〉及び|4〉に結合する。
【0016】
図3に示されるエネルギー準位の相対的な順序は一例にすぎず、より一般的には、エネルギー準位を並べ替えても依然としてEITを引き起こすことができるであろう。詳細には、図3は、第4のエネルギー状態|4〉が第2のエネルギー状態|2〉よりも高いエネルギー状態にあり、第2の状態|2〉が第3のエネルギー状態|3〉よりも高いエネルギー状態にあり、さらに第3のエネルギー状態|3〉が第1のエネルギー状態|1〉よりも高いエネルギー状態にあるものとして示すが、これらのエネルギー準位が任意に順序付けられている物質系であっても、EITを引き起こすことができる。
【0017】
第3のエネルギー状態|3〉は、単光子の自然放出が許されないという点で準安定であることが好ましい。例えば、保存則によって、エネルギー状態|3〉から低いエネルギー状態への物質系の遷移中に単光子の放出が禁止されるような、エネルギー状態|3〉及びそれよりも低い利用可能なエネルギー状態のスピン/角運動量が存在する場合には、結果としてそのような準安定性を生じることができる。第4のエネルギー状態|4〉から(例えば、第1の状態|1〉又は第2の状態|2〉へ)の自然遷移も、第4のエネルギー状態|4〉が準安定になるような物質系210を選択することによって、又は第4のエネルギー状態|4〉からの遷移に対応する角周波数を有する光子の伝搬を抑制又は禁止するように、フォトニック結晶230の特性を選択することによって、同じように抑圧され得る。
【0018】
図3の離調パラメータνa、νb及びνcは、式1に示されるような物質系210のエネルギー準位遷移の共鳴からの角周波数ωa、ωb及びωcのそれぞれの離調量を示す。式1において、状態|1〉と|2〉との間、状態|3〉と|2〉との間、及び状態|3〉と|4〉との間のエネルギー差はそれぞれω12、ω32及びω34である。
式1 ωa=(ω12+νa)
ωb=(ω32+νb)
ωc=(ω43+νc)
【0019】
レーザ220が角周波数ωbを有する光子で物質系210を駆動している間に、EITによって、物質系210が角周波数ωa又はωcの光子に対して透過性になる。角周波数ωa、ωb及びωcの光子が物質系210と同時に相互作用する場合、角周波数ωa及びωcを有する光子の状態は、角周波数ωaを有する光子の数na、及び角周波数ωcを有する光子の数ncに依存する全位相シフトを獲得する。また、位相シフトの大きさは、離調パラメータνa、νb及びνc、光子の相対的な偏光、及び物質系210の特性にも依存する可能性がある。
【0020】
コヒーレントプローブ状態|αc〉の位相シフト又は漸進的変化(evolution)は、フォック状態の漸進的変化から導出され得る。詳細には、na、nb及びnc個の光子を含むフォック状態成分はそれぞれ、物質系210の共鳴4準位マニホールドの3つの周波数チャネルを駆動する。固定され、且つ光学波長と比べて小さな体積内に静止しているN個の4準位原子を、物質系210が含む場合には、及びフォック状態の3つのパルス包絡関数の持続時間が原子準位2の寿命に比べて長い場合には、非摂動光子数固有状態|l,na,nb,nc〉が、式2に示されるように変化する。ただし、lは物質系の状態を特定し、na、nb、ncはそれぞれのモードにおける光子の数である。
【0021】
【数1】
【0022】
式2内の量Wは一般的に、物質系210の特性、及び角周波数ωa、ωb、ωcに依存する。式3A及び式3Bは、角周波数ωa及びωbがそれぞれの原子遷移の角周波数ω12及びω32に正確に同調し、位相の散逸を無視することができ、原子準位2及び4からの自然放出分岐比が概ね1である場合の量Wを与える。式3Aでは、Nは4準位原子の数であり、Ωa、Ωb及びΩcは式3Bにおいて与えられるような実効真空ラビ周波数であり、νcは離調パラメータ(ωc−ω43)であり、γ2及びγ4は自然放出率A21及びA43に概ね等しい。式3Bでは、kは値a、b及びcを有する添え字であり、σkは定義により、波長λk≒2πc/ωkにおける共鳴原子吸収断面3λk2/2πであり、πw2は実効レーザモード断面積であり、Akは2つの対応する原子準位間の自然放出率であり、Δωkはパルスレーザ場と静止している原子との断熱的な相互作用を記述するプロファイル関数の帯域幅である。
【0023】
【数2】
【0024】
式3Aは、4準位EIT系のためのWが複素数であり、周波数ωaの光子の潜在的な吸収を示す。しかしながら、式4の不等式が満たされるパラメータの状況においては、原子のうちの1つが角周波数ωaの単光子を散乱させる確率は小さくなる(式4は、|Ωb|2|αb|2/γ2が|Ωc|2|αc|2/γ4に概ね等しいとき、νc/γ4が大きいという要件まで簡単になる)。この状況において動作する場合、状態|1,na,nb,nc〉は純粋に、非線形機構から位相シフトを獲得する。この位相シフトは、量子情報処理のための高効率の非線形光学素子の基本にすることができる。
【0025】
【数3】
【0026】
コヒーレント状態|αb〉及びコヒーレントプローブ状態|αc〉を含む原子場状態の漸進的変化は、各コヒーレント状態を表す、フォック状態にわたる和を用いて求められ得る。詳細には、式5は、aチャネル内のna光子フォック状態との相互作用中のN原子量子状態の時間t後の漸進的変化と、b及びcチャネル内のそれぞれαb及びαcによってパラメータ化される弱いコヒーレント状態とを示す。式6は、位相シフトθを定義する。式5及び式6は、元のbチャネルコヒーレント状態のパラメータαbの大きさが大きくなり、その場合、変化した後の状態|Ψ’(na)〉が
に概ね等しくならない限り、変化した後の状態|Ψ’(na)〉がフォック状態と2つのコヒーレント状態との単なるテンソル積でないことを示す。それゆえ、結合場(coupling field)駆動チャネルbが古典場であるときにのみ、EIT物質系が厳密なクロスカー非線形性を与える。弱いコヒーレント状態入力パルスの場合、この制御場を古典場として取り扱うことは許されない。また、式5及び式6は、図2Cのキャビティによって強化された実施形態では、ラビ周波数がデコヒーレンス速度よりもはるかに大きくなることができるので、その漸進的変化は、より大きな位相シフトθを達成できることも示す。
【0027】
【数4】
【0028】
従って、状態|αc〉がわかっており、状態|na〉内の光子の偏光のような測定されない特性が一定である場合、制御移相器200A、200B又は200Cは、入力状態|na〉内の光子の数naに概ね比例する位相シフトを提供することができる。これらの結果は、上述のEIT系における、プローブ状態のための角周波数ωc又はコヒーレント状態の光子の選択、或いは入力状態のための角周波数ωaの光子の選択に固有のものでない。さらに、クロスカー非線形性を導入する他のシステムでも同様に、プローブ状態に位相シフトを導入することができる。従って、EITを用いる特定の実施形態において、光子の角周波数を、先に説明されたように選択できるという条件で、以下の説明では、プローブ状態|α〉及び入力状態|n〉から下付き文字が省略される。
【0029】
プローブ状態|α〉と制御状態|n〉との相互作用、それゆえ位相定数θが一般に、光子の偏光に依存するので、プローブ状態|α〉の位相シフトは一般に、状態|α〉及び|n〉の偏光に依存する。移相器100、200A、200B又は200C内の位相シフトを測定することによって、光子の偏光を特定することができ、それゆえ、入力モード内の光子の偏光状態を投影/変更することができる。しかしながら、上述の制御移相器の位相シフト能力は、入力状態光子の数を測定している間に、入力状態光子の偏光を保持するシステムにおいて使用され得る。
【0030】
図4Aは、入力状態|φ〉の光子の数、偏光又は他の特性に依存する位相シフト量だけプローブ状態|α〉の位相をシフトする一般的な移相器400を示す。移相器400の1つの例示的な応用形態では、入力状態|φ〉は、一定数pの水平偏光した光子及び一定数qの垂直偏光した光子を有する偏光の固有状態である(即ち、その例示的な事例では、|φ〉≡|HpVq〉)。移相器400のこの例示的な応用形態は、偏光符号化を用いてキュービットを表す量子システムにおいて特に有用である。
【0031】
システム400は、固定移相器410と、2つの制御移相器100−1及び100−2とを含む。移相器410は、プローブ状態|α〉の位相において一定のシフトθ’’を引き起こし、線形リターダを用いて実現され得る(又は、一定のシフトθ’’が0に等しい場合には省かれる)。制御移相器100−1及び100−2はいずれも、プローブ状態|α〉に作用するが、状態|φ〉の異なる成分の制御下にある。制御移相器100−1及び100−2は、上述のようなEIT非線形性を用いて、又は近似的なカー非線形性を与える任意の他のシステムを用いて実現され得る。制御移相器100−1及び100−2のいくつかの例は、ウィスパリングギャラリーマイクロ共鳴器、光ファイバ、ドープト光ファイバ又はフォトニック結晶ファイバ、或いはキャビティQEDシステムを用いることができる。移相器100−1及び100−2は、それぞれの位相定数θ及びθ’を有し、それは一般に互いに異なるであろう。
【0032】
図4Aに示されるように、偏光ビームスプリッタ430が、入力状態|α〉を、偏光によって区別される成分に分割する。第1の成分(例えば、水平偏光した光子に対応する成分状態)は、制御移相器100−1を制御する。状態|HpVq〉の水平偏光成分が移相器100−1を制御する場合には、制御移相器100−1は、プローブ状態|α〉に対して位相シフトpθを導入する。必要に応じて、偏光変更素子440が、状態|φ〉の第2の偏光成分の偏光を、第1の偏光成分と同じ偏光に変更することができる。例えば、偏光変更素子440は、第2の成分の光子の偏光を垂直偏光から水平偏光に変更するように配向された半波長板とすることができる。素子440から出力される変換された状態の偏光が、移相器100−2を制御する。第2の偏光変更素子450は、素子440が第2の偏光成分において引き起こした偏光変更を元に戻すか、又は反転し、ビームコンバイナ460が第1の偏光成分及び第2の偏光成分を再結合して、出力状態|φ’〉を構成することができる。そのような偏光変更は、同じ位相定数を有する、即ち特定の事例では、定数θ及びθ’が等しい移相器100−1及び100−2の実現を簡単にすることができる。しかしながら、偏光変更素子440及び450は、定数θ及びθ’が同じでない本発明の一実施形態において必要でない場合もある。
【0033】
状態|HpVq〉の垂直偏光成分が移相器100−2を制御する事例では、制御移相器100−2は位相シフトqθ’を導入する。移相器400内のプローブ状態|α〉内の全位相シフトは、移相器100−1、100−2及び410からの位相シフトの和であり、即ちpθ+qθ’+θ’’である。
【0034】
移相器100−1及び100−2が全く同じである場合には、移相器400は偏光保持移相器であろう。詳細には、移相器100−1において生じるシフトは、状態|φ〉の第1の偏光成分の光子の数に比例し、移相器100−2において生じるシフトは、状態|φ〉の第2の偏光成分の光子の数に比例する。しかしながら、素子440によって、両方の制御移相器100−1及び100−2のための制御光子が同じ偏光を有する場合、移相器100−1及び100−2が同じである場合には、移相器100−1及び100−2の偏光定数θは同じである。同じ移相器100−1及び100−2を使用し、固定移相器410を使用しない場合、プローブ状態|α’〉における全位相シフトは、状態|φ’〉の光子の数p+qに比例し、0以外の固定位相シフトを用いる場合であっても、移相器400からの出力状態は、状態|φ’〉及び位相シフトされた状態|α’〉の積として表すことができる。全位相シフトを測定することによって、状態|φ’〉の光子の全数p+qが求められるが、その測定によって、p及びq又は偏光の個々の値は求められず、偏光状態は変更されない。従って、移相器100−1及び100−2が同じである場合、移相器400は、光子の数p+qが測定されるときでも、入力状態|φ〉の偏光状態を保持する。
【0035】
移相器400の偏光保持の一実施形態は、固定位相シフトθ’’と同じ大きさであるが、固定位相シフトθ’’の負の値である位相定数θ及びθ’を有する。この実施形態では、プローブ状態|α〉における位相シフトθは、状態|φ’〉が2つの光子を含むときに生じる。入力状態|φ’〉が1つの光子を含むときには、プローブ状態|α〉において位相シフトが生じることはなく、入力状態|φ’〉が真空状態であるときには、プローブ状態|α〉において位相シフト−θが生じる。こうして、プローブ状態|α’〉を測定することによって、測定された位相シフトの符号から出力状態|φ’〉が光子を含まないか、1個の光子を含むか、2個の光子を含むかを求めることができ、さらに、測定された位相シフトが0でないか否かを求めることができる。入力状態|φ〉がフォック状態の重ね合わせである場合には、位相シフト測定は、入力状態|φ〉を、測定結果に対応する光子の数p+qを有するフォック状態の部分空間に投影するが、その偏光を明らかにしたり、又は変更しない。
【0036】
図4Bは、限定はしないが、偏光を含む入力状態特性を同様に保持することができる光子数分解移相器400Bを示す。例えば、移相器400Bへの入力状態|φ〉は、一定の角運動量を有するか、又は明確な時間ビンを有する光子状態の一次結合とすることができる。移相器400Bでは、状態セパレータ435が、保持された特性の異なる量子数に関連付けられた状態を分離する。例えば、セパレータ435は、異なる角運動量を有する光子状態を分離することができるホログラム、又は1つの時間ビン内の光子に移相器100−1を制御するように指示し、別の時間ビン内の光子に移相器100−2を制御するように指示するために動作する光スイッチとすることができる。移相器100−1の制御モード内の光学系442、及び移相器100−2の制御モード内の光学系444を用いて、分離された光子制御状態を、個々の移相器100−1及び100−2を制御するのに望ましい形に変換することができる。光学系452及び452は、分離された制御状態の変換を元に戻して、制御移相器100−1及び100−2がプローブ状態|α〉を処理した後に、コンバイナ465が分離された状態を再結合して、出力状態|φ’〉を生成できるようにする。上述されたのと同じようにして、制御移相器100−1及び100−2の位相定数θ及びθ’が同じである場合には、プローブ状態|α〉の全位相シフトは、個々の分離された状態の光子の数に関する任意の情報を求めることなく、出力状態|φ’〉の光子の全数を示すであろう。こうして、位相シフトを測定することによって、保持された特性を変更することなく、光子の全数を求めることができる。
【0037】
また、移相器400又は400Bの構成は、入力状態|φ〉を光子状態の特定された、又は告知された部分空間内に投影するシステムにおいても使用され得る。例えば、移相器400のための1つの構成は、−θに等しい固定位相シフトθ’’を有し、0に等しい位相定数θ’を有する。移相器400のこの構成は、必ずしも偏光を保持しないが、入力状態を、特定された数の水平偏光した光子と、未定数の垂直偏光した光子とを有する部分空間上に投影するために位相シフトを使用することに関する一例を提供する。例えば、プローブ状態|α〉の位相シフトが、2つの水平偏光した光子を含む状態によって張られた部分空間を特定する。プローブ状態|α〉の位相シフトは、1つの水平偏光した光子を含む状態の部分空間を特定せず、プローブ状態|α〉の位相シフト−θは、真空状態、及び垂直偏光した光子だけを含む状態によって張られた部分空間を特定する。従って、プローブ状態|α〉の位相シフトの測定は、状態|φ〉を、位相シフトの符号及び大きさから求められる水平偏光した光子の数を有する部分空間上に投影するであろう。
【0038】
より一般的には、図4A又は図4Bに示されるような移相器をプローブ状態の適切な測定と組み合わせることによって、一般的な入力状態を、他の所望のヒルベルト部分空間上に投影することができる。例えば、図5は、n個の移相器400−1〜400−nと測定システム530とを用いる、本発明の一実施形態によるnモード量子部分空間プロジェクタ500を示す。図示されるように、プロジェクタ500は、プローブ状態、例えばコヒーレント状態|α〉を入力するためのモードM0と、一般的なnモード光子状態|Ψ〉を入力するためのn個のモードM1〜Mnとを有する。各移相器400−iは、光子モードMiに対応し、一般に、3つの位相定数θi、θi’及びθi’’を有する。図5では、位相定数θiは、モードi内の水平偏光した光子に関連付けられる位相シフトに当てはまる。位相定数θi’はモードi内の垂直偏光した光子に関連付けられる位相シフトに当てはまり、位相定数θi’’は、移相器400−iがプローブ状態|α〉に適用する固定位相シフトに対応する。
【0039】
測定システム530は、移相器400−1〜400−nにおいてプローブモードM0が獲得する全位相シフトについての情報を抽出する。測定の結果として、プロジェクタ500は、モードM1〜Mnの状態を、その測定と一致する状態によって張られるヒルベルト部分空間内に投影する。その投影のターゲットであるヒルベルト部分空間は一般に、位相定数θ1〜θn、θ1’〜θn’及びθ1’’〜θn’’と、測定システム530によって得られる特定の測定結果とに依存するであろう。このシステムに付加的な光学成分を加えて、相対的な位相を調整するか、又は測定の結果に基づく他の補正を与えることができる。
【0040】
1つの有用な2モード量子部分空間プロジェクタは、一般的な2モード状態を、「対称な」ベル状態によって張られるヒルベルト部分空間上に、又は反対称なベル状態上に投影する。図6Aは、プローブ状態|α〉の位相シフトを測定し、2キュービット入力状態|Ψ〉の対称性に関する情報を得る、本発明の一実施形態による非吸収対称性解析器600を示す。2キュービット状態|Ψ〉は一般に、それぞれがモード612の光子状態とモード614の光子状態との積である項の重ね合わせである。これらの入力モードは、2モード量子部分空間プロジェクタ500Aに入る出力モードM1及びM2を有するビームスプリッタ610上で交わる。第2のビームスプリッタ620が、入力モードとして、プロジェクタ500AからのモードM1及びM2を有し、入力モード612及び614に関連付けられる光子状態をそれぞれ出力モード622及び624に戻すように動作する。
【0041】
2モード量子部分空間プロジェクタ500Aは、モードの数が2である場合の図5のプロジェクタ500の具体的な例である。詳細には、プロジェクタ500Aは、モードM0のプローブ状態に作用し、モードM1及びM2の光子状態によってそれぞれ制御される、偏光保持移相器400−1及び400−2を含む。各移相器400−1及び400−2は、図4の移相器400と概ね同じすることができ、同じようにして構成され得る。プロジェクタ500A内の移相器400−1のための位相定数の具体的な選択は、θ1=θ、θ1’=θ及びθ1’’=0であり、移相器400−2のための位相定数は、θ2=−θ、θ2’=−θ及びθ2’’=0であり、それにより、移相器400−1及び400−2がいずれも偏光保持移相器になる。
【0042】
2キュービット入力状態|Ψ〉は、一般性を失うことなく、式7において示されるようなベル状態の一次結合として表すことができる。ただし、状態|B1〉、|B2〉、|B3〉及び|B4〉は正規化されたベル状態であり、係数a1、a2、a3及びa4はそれぞれ、ベル状態|B1〉、|B2〉、|B3〉及び|B4〉のための複素確率振幅である。量子力学の線形性により、全ての結果が重ね合わせ及び混合状態にも有効であることが保証される。
【0043】
【数5】
【0044】
ベル状態|B1〉、|B2〉、|B3〉及び|B4〉は、各キュービットの2値の値0及び1がそれぞれ光子の水平(H)偏光及び垂直(V)偏光に対応するような表現において、式8において与えられる形を有する。ここで、状態|HpVq,HrVs〉は、第1のモード(例えば、モード612)においてp個の水平偏光した光子及びq個の垂直偏光した光子を有し、第2のモード(例えば、モード614)においてr個の水平偏光した光子及びs個の垂直偏光した光子を有する状態を示す。ベル状態の重要な特徴は、光子モードをスワップ(交換)する(例えば、光子モード612及び614を入れ替える)動作が、ベル状態|B1〉をその負のベル状態−|B1〉にするが、他のベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉の各々をそれ自体にそれぞれ戻すことである。従って、ベル状態|B1〉は、この変換の下では反対称であり、本明細書において一重項状態と呼ばれる場合もある。対照的に、他の3つのベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉は、スワップ変換によって変更されないので、本明細書において対称状態と呼ばれる場合もある。
【0045】
【数6】
【0046】
非吸収対称性解析器600では、ビームスプリッタ610がモード612及び614からの光子を干渉させて、(ビームスプリッタ610のための位相の取り決めを特に選択する場合に)式9に示されるようにベル状態を変換する。式9から明らかなように、ビームスプリッタ610は、一重項状態|B1〉を変換して、その状態の負の値に戻し、対称なベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉を、一方のモードM1又はM2において2つの光子を有し、他方のモードM2又はM1において光子を持たない状態の一次結合に変換する。この特性によって、状態|Ψ〉を解析することが可能になり、詳細には、状態|Ψ〉を反対称ヒルベルト部分空間内(即ち一重項状態|B1〉上)に、又はベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉によって張られる対称ヒルベルト空間上に投影することが可能になる。
【0047】
【数7】
【0048】
先に言及されたように、偏光ビームスプリッタ610の出力モードM1及びM2の光子状態はそれぞれ、偏光保持移相器400−1及び400−2を制御する。より具体的には、モードM1においてビームスプリッタ610から出力される光子状態は、偏光保持移相器400−1を制御して、移相器400−1がプローブ状態|α〉に対して位相シフトn1θを導入するようにする。従って、位相シフトは、モードM1の光子の数n1、及び偏光保持移相器400−1の位相定数θに依存する。
【0049】
偏光保持移相器400−2は、移相器400−1の位相定数θの負の値である位相定数−θを有する。一般に、4準位EIT移相器は、複数の位相シフトを引き起こすことができる。一方の移相器の物質系のうちの1つに対する角周波数ωcの離調定数νcが、他方の移相器の物質系のための対応する離調定数νcの負の値である場合には、2つの移相器は、反対の符号を有する位相シフトを引き起こすことができる。ビームスプリッタ610からの出力モードM2は偏光保持移相器400−2を制御して、移相器400−2がプローブ状態|α〉の第2の位相シフト−n2θを導入するようにする。ただし、n2はモードM2における光子の数である。
【0050】
状態|Ψ〉が一重項状態|B1〉である場合には、ビームスプリッタ400−1からのモードM1及びM2はそれぞれ1つの光子を含むであろう。こうして、移相器620は、位相シフトθ、例えば|α’〉=|αeiθ〉を導入することになり、移相器400−2は反対の位相シフト−θを導入する。結果として、状態|Ψ〉が一重項状態|B1〉である場合には、正味の位相シフトは生じず、即ち|α’’〉=|α〉である。
【0051】
状態|Ψ〉がヒルベルト空間の対称な部分にある場合、即ち対称ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉の一次結合である場合には、ビームスプリッタ610からの出力モードM1及びM2は、モードM1の2光子状態とモードM2の真空状態との重ね合わせ、及びモードM2の2光子状態とモードM1の真空状態との重ね合わせになる。モードM1において2つの光子を有する状態は、プローブ状態|α〉において2θの位相シフトを引き起こし、モードM2において2つの光子を有する状態は、プローブ状態|α〉において−2θの位相シフトを引き起こす。それゆえ、位相シフトの大きさを測定することができる検出器630が、一重項状態|B1〉を、ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉によって張られる対称ヒルベルト空間内にある状態から区別することができる。所望の投影の場合、その測定は位相シフトの符号を求めないことが重要である。
【0052】
解析された状態|Ψ〉が式7のようなベル状態の一般的な一次結合である場合、移相器400−1及び400−2の動作は、モードM0プローブ状態がモードM1及びM2状態とエンタングルされた状態|Ψ2〉を生成する。例えば、ビームスプリッタ610が式10の形の状態|Ψ0〉を生成する場合には、移相器400−1の動作は、式11に示される状態|Ψ1〉を生成する。その後、移相器400−2が、式12に示される形を有する状態|Ψ2〉を生成する(偏光保持移相器400−1及び400−2に関連する位相シフトは偏光とは無関係であるので、式10、式11及び式12では、光子の偏光は無視される)。
【0053】
【数8】
【0054】
本発明の1つの例示的な実施形態では、測定システム530は、図7Aに示されるようなホモダイン検出器である。ホモダイン検出器530は、局部発振器710と、ビームスプリッタ720と、フォトダイオード又は検出器730及び740と、差動増幅器750とを含む。局部発振器710は、プローブ状態|α〉と同じ波長の基準コヒーレント状態を生成することが好ましい。ビームスプリッタ720は、モードM0からの状態と、基準状態とを干渉させる。ビームスプリッタ720からの2つの出力モードは、相対的に異なる符号を有する。フォトダイオード730及び740は、ビームスプリッタ720からのそれぞれの出力モードにおける、干渉している光子状態のそれぞれの強度に比例する電流を生成し、差動増幅器750は、フォトダイオード電流間の差を示す測定信号xを生成する。
【0055】
図7Aの検出器530のようなホモダイン検出器は、式13において与えられる形の直交演算子
の値を有効に測定することが知られている。式13において、演算子
及びaはそれぞれプローブモードM0のための生成演算子及び消滅演算子であり、φは、プローブ状態|α〉と局部発振器710からの基準状態との間の位相差である。ホモダイン検出器による1回の測定が、演算子
の固有値を生成するであろう。位相差φが0である特別な場合には、検出器530による測定は一般に、X−直交の測定と呼ばれる。
【0056】
【数9】
【0057】
図6Aの対称性解析器600におけるホモダイン測定は、モードM0の光子状態を、演算子
の固有状態に投影する。式14に示されるのは、位相差φが0であり、状態|Ψ2〉が式12に示される形を有する特別な場合に、固有状態|x〉上に投影することから生じる正規化されていない状態|Ψ3〉である。式15は、式14の内積の計算結果を示す。式15から、2αにほぼ等しい測定結果x、即ちx≒2αが、M1及びM2モード光子の状態を、状態|1,1〉にほぼ等しい状態に投影し、それゆえ、一重項状態|B1〉に対応する。2αcos(2θ)にほぼ等しい測定結果x、即ちx≒2αcos(2θ)は、モードM1及びM2光子を、eiφ(x)|2,0〉−e−iφ(x)|0,2〉に投影し、それは、ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉の対称ヒルベルト状態にある状態に対応する。
【0058】
【数10】
【0059】
図7Bは、確率分布700を、状態|Ψ2〉のホモダイン測定から生じる測定結果xの関数として示す。確率分布700は、2α及び2αcos(2θ)にそれぞれ中心があり、式15の状態|Ψ3〉の対称部分空間項及び反対称部分空間項の係数にそれぞれ対応する、2つのガウスピーク710及び720を含む。ガウスピーク710の下で固有値xに等しい測定結果は、状態|Ψ3〉の対称成分に対応する概ね確定的な確率を有し、それゆえ、モードM1及びM2状態を、対称ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉によって張られるヒルベルト部分空間上に効率的に投影する。ガウスピーク720の下で固有値xに等しい測定結果は、状態|Ψ3〉の反対称成分に対応する概ね確定的な確率を有し、それゆえ、モードM1及びM2状態を、単一の状態|B1〉上に効率的に投影する。しかしながら、領域730における測定結果は、その領域においてガウス分布710及び720の両方の裾野部分が小さいので(しかしながら、理論的には0ではない)、その対称項及び反対称項を明確に区別することはできない。
【0060】
対称性解析器600は、ガウス分布710及び720のピーク間にある境界点より上にある、例えば中間点x=α(1−cos(2θ))よりも上にある測定結果xが反対称状態を特定し、境界点よりも下にある測定結果xが対称状態を特定するという規則を利用することができる。この規則によって導入される誤差の確率は、境界点よりも上に延在するガウス分布710の部分の積分、及び境界点よりも下に延在するガウス分布720の部分の積分に依存する。式15の投影された状態に基づいて、誤差が生じる確率PERRORが式16に与えられており、ピーク間の距離、即ちθが小さいものとすると4αθ2が約9よりも大きく、弱いクロスカー非線形性の状況(即ち、θ≪π)における動作が可能であることを示すときに、10−5未満である。
【0061】
【数11】
【0062】
対称性分析器600が、選択された領域(例えば、領域730)内にある測定結果xを解析失敗としてカウントし、選択された領域の境界の上又は下にある測定結果を、反対称測定結果又は対称測定結果に対応するものとしてカウントする測定解釈規則を用いる場合には、誤差PERRORを減らすことができる。このタイプの規則は、対称性を解析するのに失敗する可能性をもたらすことを犠牲にして、誤差確率を減らすことができる。
【0063】
測定結果が反対称状態を示す場合には、プロジェクタ600内の測定システム530が、移相器550及び560を起動して、状態|2,0〉及び状態|0,2〉に関連付けられる、測定に依存する位相シフトφ(x)及び−φ(x)を除去する。1つの例示的な実施形態では、各移相器550及び560は、光学遅延線と、それに続く2つのポッケルスセルとを含む。後に説明される循環量子バッファ、又はK. Banaszek及びI. Walmsley著「Photon Counting with a Loop Detector」(Opt. Lett. 28, 52(2003))に説明されるようなファイバループ遅延線等の、光学遅延を導入するための種々の方法がある。ポッケルスセルは、各状態の水平偏光成分及び垂直偏光成分のための線形位相シフトを導入し、適用される位相シフトは測定結果に依存し、電気信号を用いて選択され得る。
【0064】
部分空間プロジェクタの動作と誤差の上記の説明は、クロスカー非線形性を用いて位相シフトを導入することを仮定する。先に説明されたようなEIT系は一般に、完全なクロスカー非線形性を生成しないことがあるが、EIT系は、例えば、位相シフトが概ね0.1ラジアンであり、αが概ね100であるときに、典型的な動作状況においてクロスカー非線形性の適切な近似を与える。また、EIT系以外のシステムによっても、完全なクロスカー非線形性に相応に近い相互作用を与えることができる。
【0065】
解析器600における対称性解析は、一方のモードM1又はM2において2つの光子を有する状態の場合に位相シフトに0以外の大きさを与えるが、各モードM1及びM2において1つの光子を有する状態の場合に位相シフトを与えない移相器400−1及び400−2を用いる。異なる位相定数を選択した状態の移相器を用いる他の部分空間プロジェクタも、一般的な2キュービット状態|Ψ〉の対称解析に同様に適した類似の位相シフトを与えることができる。例えば、図6Bは、代替の2モード部分空間プロジェクタ500Bを用いる対称性解析器600Bを示す。部分空間プロジェクタ500Bでは、移相器400−1に対する位相定数の具体的な選択はθ1=2θ、θ1’=2θ及びθ1’’=−2θであり、それにより移相器400−1は偏光保持移相器になる。移相器400−2の位相定数θ2、θ2’及びθ2’’は全て0である。従って、移相器400−2は影響を及ぼさないので、省くことができる。
【0066】
プロジェクタ500B内の移相器400−1は、モードM1において2つの光子が存在する場合には2θだけ、モードM2において2つの光子が存在する場合には−2θだけ、プローブ状態の位相をシフトし、モードM1及びM2のそれぞれにおいて1つの光子が存在する場合には位相をシフトしない。従って、プロジェクタ500B内の関連する状態の位相シフトは、プロジェクタ500A内の位相シフトと同じであり、対称性解析器600Bからの出力状態は、図6Aの対称性解析器600に関して先に説明されたのと同じように、測定に依存するであろう。
【0067】
対称性解析器600Bは、1つの偏光保持移相器400−1しか必要としないという利点を有する。この利点は、例えば、等しいけれども、反対の位相シフトを実現するのが難しいことがあるEIT系を用いて移相器が実現される際に重要であるかもしれない。しかしながら、プロジェクタ500B内の偏光保持移相器400−1は、θに等しい位相定数の代わりに、2θに等しい位相定数を有する制御移相器を使用し、それゆえ、プロジェクタ500A内の移相器400−1及び400−2と同じ全位相シフトを提供する。
【0068】
図6Aの対称性解析器600A、又は図6Bの対称性解析器600Bを上述したように用いて、任意の2キュービット状態を、一重項状態上に、又は対称ベル状態によって張られるヒルベルト空間上に投影することができる。その投影は、その投影において信号光子が失われないように非吸収性である。さらに、異なる光子状態間の位相関係は元のままである。これらの特性を用いて、解析された状態|Ψ〉のどのベル状態投影がその解析器から出力されるかを決定することができるベル状態解析器を構成することができる。
【0069】
図8Aは、本発明の一実施形態による非吸収ベル状態解析器800を示す。ベル状態解析器800は、3つの非吸収性の対称性解析器600−1、600−2及び600−3を含み、それらの解析器は、図6A又は図6Bの非吸収性の対称性解析器600又は600Bと同じにすることができる。解析器600−1、600−2及び600−3にそれぞれ続く光学系810、820及び830が、後にさらに説明されるように、ベル状態を有効に並べ替える。
【0070】
ベル状態解析器800に入力される解析された状態|Ψ〉は、式7において表されるような、一般的な2キュービット状態とすることができる。非吸収性の対称性解析器600−1は、上述されたように、解析された状態|Ψ〉を処理して、入力状態|Ψ〉の対称性を測定する。上述のように、対称性解析器600−1は、プローブ状態(図示せず)を測定し、測定結果x1を示す測定信号を出力する。その測定は、解析された状態|Ψ〉を、一重項状態|B1〉内に、又は対称ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉によって張られるヒルベルト空間内に投影し、測定結果x1は、解析器600−1からの出力状態が、一重項状態|B1〉にあるか、又は対称ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉の一次結合である状態にあるかを示す。
【0071】
光学系810が、対称性解析器600−1からそれぞれ出力される状態|B1〉、|B2〉、|B3〉及び|B4〉を、ベル状態|B2〉、|B1〉、|B4〉及び|B3〉に変換する。本発明の1つの例示的な実施形態では、光学系810はモードM1の半波長板である。その半波長板は、モードM1の垂直偏光した光子に対応する状態に負の符号を導入し、水平偏光した光子の状態が変わらないように配向され得る。これは、所望の態様でベル状態を有効に並べ替える。
【0072】
その後、対称性解析器600−2は、光学系810からの変換された状態が一重項状態|B1〉であるか否かを検出する。対称性解析器600−2内のプローブ状態の測定が、測定結果x2を提供し、それは再び、2キュービット状態を、一重項状態|B1〉内に、又は対称ベル状態|B2〉、|B3〉及び|B4〉によって張られるヒルベルト空間内に投影する。より具体的には、測定結果x2が反対称ベル状態を示す場合には、解析器600−2の出力状態は一重項状態|B1〉になり、解析器600−1からの測定結果x1が反対称ベル状態を示す場合には、ベル状態|B2〉になり、いずれの測定結果X1及びx2も反対称状態を示さない場合には、ベル状態|B3〉及び|B4〉の一次結合になるであろう。
【0073】
光学系820がさらに、対称性解析器600−2からのモードM1及びM2の出力状態を変換する。本発明の1つの例示的な実施形態では、光学系820は、モードM2の半波長板である。その半波長板は、状態|B2〉を|B3〉に、状態|B1〉を|B4〉に、状態|B4〉を|B1〉に、及び状態|B3〉を|B2〉に変換するように配向される。結果として、元の入力状態|Ψ〉のベル状態成分|B1〉、|B2〉、|B3〉及び|B4〉はそれぞれ、光学系820から出力される際に、状態|B3〉、|B4〉、|B1〉及び|B2〉に対応する。
【0074】
その後、対称性解析器600−3が、光学系820からの変換された状態が一重項状態|B1〉にあるか否かを解析する。対称性解析器600−3からの測定結果x3が一重項状態|B1〉に対応する場合には、解析器600−3からの出力状態は状態|B1〉である。そうでない場合には、解析器600−3からの出力状態は対称ヒルベルト部分空間内にある。より具体的には、解析器600−3の出力状態は、解析器600−3からの測定結果x3が反対称ベル状態を示す場合には、一重項状態|B1〉であり、解析器600−2からの測定結果x2が反対称状態を示した場合にはベル状態|B4〉であり、解析器600−1からの測定結果x1が反対称ベル状態を示した場合には、ベル状態|B3〉であり、測定結果x1、x2及びx3がいずれも反対称状態を示さない場合には、ベル状態|B2〉である。
【0075】
モードM2において適切な向きを有する半波長板を用いて実現され得る光学系830は、状態|B3〉を|B1〉に、状態|B4〉を|B2〉に、状態|B1〉を|B3〉に、及び状態|B2〉を|B4〉に変換することによって、対称性解析器600−3からの出力状態を変換する。従って、解析器800からの出力状態は、解析器600−1からの測定結果x1が反対称性を示す場合には、ベル状態|B1〉であり、解析器600−2からの測定結果x2が反対称性を示す場合には、ベル状態|B2〉であり、解析器600−3からの測定結果x3が反対称性を示す場合には、ベル状態|B3〉であり、測定結果x1、x2及びx3がいずれも反対称性を示さない場合には、ベル状態|B4〉である。従って、解析器600−1〜600−3からの測定信号は、解析器800から出力される出力ベル状態を示す。
【0076】
非吸収ベル状態解析器800は、測定の痕跡、及び対応するベル状態|B4〉上への投影として反対称性を検出するために、検出器600−1、600−2及び600−3の失敗に依存する。この場合、測定値中の非効率又は誤差により、解析器600−1、600−2及び600−3が一重項状態を検出できない結果になる可能性があり、それにより、ベル状態|B4〉を誤って特定する結果になる。図8Bに示されるベル状態解析器800Bは、付加的な対称性解析器600−4を用いて、検出器の失敗を、ベル状態|B4〉の検出から区別する。
【0077】
解析器800Bは、対称性解析器600−3の後で変換光学系835を用いる。光学系810及び820の先行の変換を元に戻す代わりに、光学系835は、状態|B3〉を|B4〉に、状態|B4〉を|B3〉に、状態|B1〉を|B2〉に、及び状態|B2〉を|B1〉に変換する。従って、解析器600−3からの出力状態がベル状態|B2〉であった場合には、解析器600−4からの測定信号は反対称状態|B1〉を示すことになる。光学系840が、状態|B4〉を|B1〉に、状態|B3〉を|B2〉に、状態|B2〉を|B3〉に、及び状態|B1〉を|B4〉に変換する。解析器800Bからの出力状態は、解析器600−1からの測定信号結果x1が反対称性を示す場合には、ベル状態|B1〉であり、解析器600−2からの測定結果x2が反対称性を示す場合には、ベル状態|B2〉であり、解析器600−3からの測定結果x3が反対称性を示す場合には、ベル状態|B3〉であり、解析器600−3からの測定結果x4が反対称性を示す場合には、ベル状態|B4〉である。測定値x1、x2、x3又はx4がいずれも反対称性を示すのに失敗する場合、又は2つ以上の測定値が反対称性を示す場合には、解析失敗が示される。
【0078】
解析器600及び600Bのような非吸収対称性解析器、並びに解析器800及び800Bのようなベル状態解析器は、入力状態を解析し、次いで、解析結果を用いて、フィードフォワード動作を制御する量子情報処理システムにおいて使用され得る。フィードフォワードシステムに有用なデバイスは循環量子バッファ(Cyclical Quantum Buffer:CQB)である。
【0079】
図9は、2つの偏光ビームスプリッタ910及び920と、2つの電気光学ポッケルスセル930及び940とを含むCQB900の一実施形態を示す。偏光ビームスプリッタ910は入力ポート912を有し、水平偏光成分状態及び垂直偏光成分状態を含む入力光子状態を受け取ることができる。偏光ビームスプリッタ920は出力ポート922を有する。各偏光ビームスプリッタ910及び920は、例えば、水平偏光した光子を透過し、垂直偏光した光子を反射するように、同じ向きを有する。
【0080】
各ポッケルスセル930及び940は、ポッケルスセル930又は940が「オン」である際に、ポッケルスセル930又は940が水平偏光した光子を垂直偏光した光子に変換し、且つ垂直偏光した光子を水平偏光した光子に変換する、例えば偏光状態をスワップする(|H〉⇔|V〉)ように構成される。「オフ」の場合、ポッケルスセル930又は940は、光子状態を変更しない。ポッケルスセル930は関連する反射ミラー932及び934を有し、ポッケルスセル930を通過する光路が、ミラー932上に1つの頂点、ミラー934上に1つの頂点及びPBS910内の偏光コーティング上に1つの頂点を有する三角形リングを形成するように、それらのミラーが配向されている。同様に、ポッケルスセル940は関連する反射ミラー942及び944を有し、ポッケルスセル940を通過する光路が、ミラー942上、ミラー944上及びPBS920内に頂点を有する三角形リングを形成するように、それらのミラーが配向されている。
【0081】
CQB900は、直線偏光をスワップした後に、光子状態を格納するか、光子状態を透過するか、又は光子を反射するように動作することができる。水平偏光及び垂直偏光をスワップすることなく、光子状態を即時に伝送する場合、ポッケルスセル930及び940はいずれもオフに切り替えられる。入力ポート912を介して状態が入力される場合、PBS910は水平偏光成分を透過し、その後、その成分はポッケルスセル930を含むリングを時計回りに通過し、PBS910及びPBS920を通って伝搬し、ポッケルスセル940を含むリングを反時計回りに通過して、PBS920を介して出射する。PBS910は垂直偏光成分を反射し、その後、その成分はポッケルスセル930を含むリングを反時計回りに通過し、再びPBS910から反射され、PBS920に伝搬して、そこから反射され、ポッケルスセル940を含むリングを時計回りに通過して、PBS920から二度目に反射された後に、出力ポート922上に出射する。偏光をスワップすることなく即時に伝送するとき、CQB900の光路長は、両方の偏光成分状態に対して同じである。
【0082】
水平偏光及び垂直偏光をスワップして光子状態を即時に反射する場合、一方のポッケルスセル930をオンに切り替えることができるが、他方のポッケルスセル940はオン又はオフのいずれかにすることができる。入力ポート912からの水平偏光成分はPBS910を通過して、反射ミラー932から反射されて、ポッケルスセル930に入り、ポッケルスセル930は水平偏光した光子(単数又は複数)を垂直偏光した光子(単数又は複数)に変換する。変換された光子状態はその後、PBS910から反射されて、入力ポート912に沿って戻るように出射する。入力垂直偏光成分は最初に、PBS910から反射され、ポッケルスセル930を含むリングを通過し、ポッケルスセル930において、垂直偏光が水平偏光に切り替えられて、水平偏光がPBS910を通って、入力ポート912に沿って戻るように出射する。
【0083】
格納するためのEOM900の動作は、光子がポッケルスセル930又は940に関連付けられたリングを通過する即時伝送時間に対応するクロックサイクルを用いることができる。CQB900内の他の場所の伝搬時間、例えば、PBS910からPBS920まで伝送するための伝搬時間もクロックサイクルに同期することができるが、PBS910とPBS920との間の距離は、光学遅延を与えるために長くなる可能性がある。格納動作の場合、ポッケルスセル930及び940はいずれも、光子状態がポッケルスセル930を含むリングを最初に通過した後にのみオンに切り替えられる。両方のポッケルスセル930及び940がオンの場合、水平偏光成分及び垂直偏光成分は、ポッケルスセル930及び940を通過するリングを含む8の字の経路をたどる。最初に水平偏光である成分状態は、最初に垂直偏光である成分状態とは異なる方向に8の字の経路を通過する。(選択された遅延時間後に)元の偏光の状態で光子状態を伝送するために、ポッケルスセル940がオフに切り替えられ、光子状態は、出力ポート922を介して、PBS920から出射する。(選択された遅延時間後に)偏光をスワップして光子状態を反射するために、ポッケルスセル930がオフに切り替えられ、光子状態は、入力ポート912に沿って戻り、PBS910から出射する。
【0084】
格納デバイスとして用いられる場合、各偏光成分が各リングの中を通って循環するのに応じて、その偏光成分が垂直偏光と水平偏光との間で交互に切り替わるので、CQB900は、複屈折による位相の散逸の影響を受けないという利点を有する。さらに、方向は逆であっても、異なる偏光が同じ経路を通過するので、反射ミラー932、934、942及び944のような構造の音響振動が両方の成分に関して一致する影響を及ぼす。CQB900内の主なデコヒーレンス機構は、光子の散乱及び吸収に起因する損失である。
【0085】
図10は、2モード量子部分空間プロジェクタ500と、5つのCQB900−1〜900−5とを用いる非吸収エンコーダ1000を示す。量子部分空間プロジェクタ500は、図6A及び図6Bの量子部分空間プロジェクタ500A又は500Bと概ね同じにすることができ、CQB900−1〜900−5はそれぞれ、上述されたような図9のCQB900と概ね同じにすることができる。非吸収エンコーダ1000はさらに、エンタングルした光子対の発生源1010と、電気光学ポッケルスセル1020及び1030と、偏光ビームスプリッタ1040と、検出器1050とを含む。
【0086】
動作時に、CQB900−1及び900−4並びにポッケルスセル1020は、即時伝送のために最初にオフである。次に、符号化されるキュービットを表す入力状態|Ψ1〉が、CQB900−1を介して、エンコーダ1000に入ることができる。状態|Ψ1〉の入力と同時に、パラメトリックダウンコンバータ、ベル状態解析器、又はエンタングルした光子の任意の適切な発生源とすることができる発生源1010が、ベル状態|B4〉においてエンタングルした光子対を生成する。式17は、水平偏光状態|Hi〉及び垂直偏光状態|Vi〉の項で状態|Ψ1〉及び|B4〉を与える。ただし、下付き文字iはCQB900−iを通過する光子モードを示す。
【0087】
【数12】
【0088】
モード1及び4の光子がPBS1040に入射し、PBS1040は、モード2及び3において光子を出力する。PBS1040の作用によって、入力積状態が、式18に示されるように変換される。図示されるように、式18の変換された状態の最初の2つの項は、モード2及び3のそれぞれにおいて1つの光子を有する。式18の変換された状態の最後の2つの項は、モード3又は2のいずれかにおいて2つの光子を有し、他のモード2又は3においては光子を持たない。
【0089】
【数13】
【0090】
量子部分空間プロジェクタ500は、モード2及び3に対応する状態を解析し、変換された状態のモード2及び3を、モード2及び3のそれぞれの中に1つの光子が存在することに対応するヒルベルト部分空間上に、又はモード2において0又は2つの光子、及びモード3において2つ又は0の光子のいずれかによって記述されるヒルベルト部分空間上に投影する。プロジェクタ500からの測定結果xがモード2において1つの光子を特定する場合には、測定後の投影された状態|P1〉は式19によって与えられ、エンコーダ1000は、|Ψ1〉を、最大にエンタングルした光子の三重項として符号化することに成功している。
【0091】
【数14】
【0092】
量子部分空間プロジェクタ500が一重項状態を示す測定結果を生成しない場合には、測定後の投影された状態|P0〉は式20によって与えられる。プロジェクタ500からの測定信号は、CQB900−2及び900−3を制御して、モード2及び3の光子がPBS1040に戻るようにし、PBS1040は式20の状態を、式21において与えられる形に変換する。また、測定信号に応答して、CQB900−5はその後、モード2及び3光子が戻されている間に、モード5光子状態を格納することができる。本発明の代替の実施形態では、CQB900−5は、モード2及び3光子が準備できるまで、モード5光子の出力を単に遅らせる光学遅延線で置き換えられ得る。
【0093】
【数15】
【0094】
その際、CQB900−1及び900−4はモード1及び4光子を反射するように構成され、電気光学ポッケルスセル1020は、4分の1波長板としての役割を果たすように動作する。セル1020を2度通過すると、CQB900−1における反射中にモード1において引き起こされる偏光スワップは元に戻される。しかしながら、CQB900−4内の反射が、モード4状態の水平偏光及び垂直偏光をスワップし、その状態を、式22の左辺の項によって与えられる形に変換する。PBS1040は、CQB900−1及び900−4から反射した後のこの状態を、式22の右辺によって与えられる形に変換する。CQB900−2及び900−3はその後、モード2及び3光子を伝送するように切り替えられ、EOM900−5は同時に、モード5光子を放出する。その後、電気光学ポッケルスセル1030が、偏光スワップを実行し、それにより、モード2、3及び5光子が、式19において与えられる望ましい状態|P1〉にされる。従って、損失を無視すると、エンコーダ1000は、特定の測定結果xにかかわらず、その時間の状態|P1〉の100%を生成することができる。
【0095】
【数16】
【0096】
検出器1050は、モード2の光子状態が偏光状態|F2〉を有するか、又は|S2〉を有するかを検出することができる。この測定は、状態|P1〉を、測定結果に応じた部分空間内に投影する。その後、その測定に或る程度基づくフィードフォワード動作が、後に説明されるような破壊CNOTゲート、又はT. B. Pittman、B. C. Jacobs及びJ. D. Franson著「Probabilistic Quantum Logic Operations Using Polarizing Beam Splitters」(Phys. Rev. A, Vol. 64, 062311(2001))によって説明されるような破壊CNOTゲートで用いるために、投影された状態を必要に応じて補正することができる。検出後にモード2光子を使用できるようにするために、検出器1050は、W. J. Munro、K. Nemoto、R. G. Beausoleil及びT. P. Spiller著「A High-Efficiency Quantum Non-Demolition Single Photon Number Resolving Detector」(Phys. Rev. A 71, 033819 (2005))によって説明されるような、非吸収検出器とすることができる。さらに、検出器1050からの測定値は、電気光学ポッケルスセル1040を制御して、Pittman他のCNOTゲートにおいて必要とされるように、モード3光子状態を補正することができる。
【0097】
図11は、量子部分空間プロジェクタ500及び4つのCQB900−1〜900−4を用いる、本発明の一実施形態による破壊CNOTゲート1100を示す。また、CNOTゲート1100は、45°偏光ビームスプリッタ1120と、3つの電気光学ポッケルスセル1110、1130及び1140とを含む。後にさらに説明される1つの例示的な動作では、ターゲット状態|Ψ1〉がCQB900−1に入力され、制御状態|Ψ2〉がCQB900−2に入力される。しかしながら、CNOTゲート1100の入力モードの状態は互いにエンタングルされることができるか、又は他のシステム(図示せず)の量子状態とエンタングルされることができることは理解されたい。
【0098】
CQB900−1及び900−2並びにポッケルスセル1110が全てオフである状態で、式17において与えられる形の一般的な入力状態|Ψ1〉がEOM900−1に入力される。CNOTゲート1100が入力状態|Ψ1〉に及ぼす影響を求めるために、CQB900−2への入力として、垂直偏光状態|V2〉である制御状態|Ψ2〉が最初に仮定される。制御状態が水平偏光である事例については、後に考察する。
【0099】
式23によって与えられ、上述されたような積状態が、45°PBS1120に適用され、PBS1120は、入力状態を、式24によって与えられる形に変換する。式24は、45°PBS1120からの出力状態(検出器1150によって測定されるHVに基づいて表される)が、モード3及び4のそれぞれで1つの光子を有する状態の重ね合わせである項と、一方のモード3又は4において2つの光子を有し、他方のモード4又は3において光子を持たない状態の重ね合わせである項とを含むことを示す。
【0100】
【数17】
【0101】
量子部分空間プロジェクタ500は、モード3及び4に対応する状態を解析し、測定結果xに応じて、その状態を、式24の単一光子の項、又は0/2光子の項のいずれかに投影する。その後、モード3及び4の状態がそれぞれ、CQB900−3及び900−4に格納される。測定結果xが単一光子の項への投影を示す場合には、CQB900−3及び900−4に格納された光子は、変化することなく放出され得る。偏光検出器1150からの測定値を、Pittman他によって説明されるように使用して、ポッケルスセル1130を制御し、非破壊CNOTゲートを実現することができる。図10の検出器1050に関する他の実施形態を説明する際に上記でなされた解説は、図11の検出器1150にも適用され得る。
【0102】
測定結果xが、式24の0/2光子の項への投影を示す場合には、CQB900−3及び900−4は、格納された光子状態を45°PBS1020に戻すことができる。45°PBS1020は、式25において示されるように、戻された状態を変換する。その後、CQB900−1及びポッケルスセル1110が起動され、偏光を入れ替えることなく、モード1の光子状態を反射し、CQB900−2が起動され、偏光を入れ替えて、モード2の光子状態を反射する。
【0103】
【数18】
【0104】
45°PBS1020を通って戻った後に、その状態は、式26の左辺において与えられる形をとる。CQB900−3及びポッケルスセル1130が起動され、モード3の光子の偏光状態が入れ替えられ、CQB900−4及びポッケルスセル1140が起動され、モード4の光子の偏光状態が入れ替えられて、結果として、入力制御状態が垂直偏光である場合に、式26において示されるように、適切な出力状態に変換される。式26の右辺は、式24の左辺の最初の項と同じである。従って、ここで、そのゲートは必ずうまくいく(Pittman他のプロトコルに従う)。
【0105】
【数19】
【0106】
制御状態が、EOM900−2に入力されるときに水平偏光であるものと仮定すると、上述した同様の解析を実行して、45°PBS1120から出力される状態が式27によって与えられることを示すことができる。式27は、状態|H3〉及び|V3〉のスワップを除いて、式24と同じである。これはまさに、破壊CNOTゲートが良好に動作するために必要とされる、予想される挙動である。従って、垂直偏光の制御状態に関する上述された手順に従って、CNOTゲート1100が、水平偏光の制御状態でも適切に機能することを保証することができる。
【0107】
【数20】
【0108】
量子エンコーダ1000を破壊CNOTゲート1100と組み合わせることによって、非破壊CNOTゲートを構成することができる。この場合、図10のポッケルスセル1030の出力を、図11のCQB900−2の入力に送ることができる。検出器1050及び1150からの測定値を、Pittman他によって説明されるように使用して、概ね確率的に動作する非破壊CNOTゲートを実現することができる。
【0109】
本発明の別の実施形態による非破壊CNOTゲートは、概ね確定的なエンタングラ、パリティ検出器、又は制御移相器を含む他の量子ゲートを用いることができる。図12Aは、本発明の一実施形態による、パリティ検出器1290に基づいたエンタングラ1200の一実施形態を示す。パリティ検出器1290は、コヒーレントプローブ状態|α〉に作用する4つの制御移相器1210、1215、1220及び1225を含む。各移相器1210、1215、1220又は1225は、例えば、図1及び図2Aに関して上述されたようなEITを用いるシステム、又はウィスパリングギャラリーマイクロ共振器、光ファイバ、ドープト光ファイバ又はフォトニック結晶ファイバのような構造を用いるシステム、或いは近似的なクロスカー非線形性を生成することもできるキャビティQEDシステムを含む、種々の構造を用いて実現され得る。図12Aに示されるように、移相器1210及び1225は等しい正の位相定数+θを有し、移相器1220及び1215は等しい負の位相定数−θを有する。第1の入力モードの異なる偏光成分が、制御移相器1210及び1215を制御し、第2の入力モードの異なる偏光成分が、制御移相器1220及び1225を制御する。
【0110】
図12Aは、2つの入力モードがそれぞれ、エンタングルされるべき光子状態|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2にあるが、パリティ検出器1290の入力モードが、さらに一般的には、入力状態の積として表すことができないエンタングル状態にある一例を示す。図示された例の場合、2つの入力状態は、偏光表現を用いてキュービットを表すために、一般的な形|ΨIN〉1=c0|H1〉+c1|V1〉、及び|ΨIN〉2=d0|H2〉+d1|V2〉を有する。偏光ビームスプリッタ1230及び1240がそれぞれ、入力状態|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2を、直交する直線偏光を有する空間モードに分割し、それらの直線偏光はその後、移相器1210、1215、1220及び1225において実現されるクロスカー非線形性を介してプローブ状態|α〉と相互作用する。より具体的には、状態|ΨIN〉1の水平偏光成分c0|H〉1は移相器1210を制御し、状態|ΨIN〉1の垂直偏光成分c1|V〉1は移相器1215を制御する。状態|ΨIN〉2の水平偏光成分d0|H〉2は移相器1220を制御し、状態|ΨIN〉2の垂直偏光成分d1|V〉2は移相器1225を制御する。PBS1235及び1245は、移相器1210、1215、1220及び1225が動作した後に、水平成分及び垂直成分を再結合する。
【0111】
ホモダイン検出器1250がプローブ状態を測定する前に、パリティ検出器1290の作用によって、式28に示されるように、結合された入力状態|Ψ1〉|Ψ2〉|α〉が生成される。式28は、偶数パリティ成分|HH〉及び|VV〉がプローブ状態|α〉に位相シフトを引き起こさず、互いに対してコヒーレントのままであることを示す。奇数パリティ成分|HV〉及び|VH〉はそれぞれの位相シフト2θ及び2θを引き起こし、それにより、一般的なホモダイン/ヘテロダイン測定が状態|HV〉及び|VH〉を区別できることを可能にする。しかしながら、上述したようなX直交ホモダイン測定は、αが最初に実数である場合には、状態|αe±i2θ〉を区別しないであろう。より具体的には、αが実数である場合、X直交ホモダイン測定は、式28の状態を、式29に示されるように、X直交演算子の固有状態に投影する。
【0112】
【数21】
【0113】
従って、ホモダイン検出器1250からの測定結果xは、測定結果xの値に応じて、PBS1235及び1245から出力される状態を、高い確率で、状態c0d0|HH〉+c1d1|VV〉(偶数パリティ状態)か、又は状態c0d1eiφ(x)|HV〉+c1d0eーiφ(x)|VH〉(奇数パリティ)のいずれかに投影する。こうして、その測定はパリティを検出し、それにより、概ね確定的に、偶数パリティ項を奇数パリティ項から分割する。状態|HH〉及び|VV〉を偶数パリティ状態と呼び、状態|HV〉及び|VH〉を奇数パリティ状態と呼ぶ選択は、偏光符号化されたキュービット|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2を経路符号化されたキュービットに変換するために用いられるPBS1230及び1240の形/タイプに主に依存する任意の選択である。任意の他の選択も許容することができ、2つのキュービット|ΨIN〉1と|ΨIN〉2との間で対称である必要はない。
【0114】
出力奇数パリティ状態c0d1eiφ(x)|HV〉+c1d0eーiφ(x)|VH〉は、測定結果xに依存する。しかしながら、測定信号xに応答する1つ又は複数の移相器1260が、奇数パリティ状態を、測定結果xに依存しない状態c0d1|HV〉+c1d0|VH〉に変更することができる。特に、PBS1235及び1245の4つの入力モードのうちの1つにおいて一度だけφ(x)又は−φ(x)の位相シフトをすることにより、最大で全位相因子までの状態c0d1|HV〉+c1d0|VH〉を生成することができる。位相を補正する場合、ホモダイン測定は、フィードフォワードが測定値xに依存しない状態を生成するのに十分に正確でなければならない。実際には、これは、X直交測定の不確定性が、約2π/(αsin(θ))よりもはるかに小さくなければならないことを意味し、それは一般に、プローブ状態のものよりもはるかに強力な局部発振器を用いて達成され得る。
【0115】
従って、パリティ検出器1290は、測定されたパリティを概ね確定的に示す古典的な出力信号xを有する。さらに、パリティ検出器1290が、測定パリティ、例えば偶数パリティ測定結果に対してc0d0|HH〉+c1d1|VV〉を有し、又は奇数パリティ測定結果に対してc0d1|HV〉+c1d0|VH〉を有する出力光子状態を与えるという点で、そのパリティ検出器は非吸収性である。
【0116】
非吸収パリティ検出器1290は、上述のように動作して、2キュービット入力状態を、偶数パリティ状態の2次元部分空間上に、又は奇数パリティ状態の2次元部分空間上に投影することができる。図6A及び図6Bに関連して上述されたような非吸収対称性解析器が、同様に、2キュービット入力状態を、反対称又は一重項ベル状態に対応する一次元部分空間上に、又は対称ベル状態に対応する3次元部分空間上に投影することができる。2キュービット状態の他の1次元、2次元又は3次元の部分空間への投影は、状態変換光学系、例えば、入力状態及び出力状態の偏光を変更する波長板を追加することによって達成され得る。
【0117】
入力状態キュービット|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2の振幅c0、c1、d0及びd1を適切に選択して、エンタングラ1200におけるフィードフォワード変換が、任意のエンタングル状態を概ね確定的に生成することができる。例えば、d0及びd1が1/21/2に等しい場合には、エンタングラ1200は、偶数パリティ状態c0|HH〉+c1|VV〉、又は奇数パリティ状態c0|HV〉+c1|VH〉のいずれかを出力する。この例示的な実施形態では、状態c0|HH〉+c1|VV〉は、キュービット係数c0及びc1を符号化するための望ましいエンタングル状態である。従って、測定信号xが偶数パリティを示す場合に、非吸収パリティ検出器1290の出力状態の変化は不要である。測定信号xが奇数パリティ状態を示す場合、古典的に制御される偏光回転子を用いて実現され得るビットフリップ1270が第2の出力モードに作用することができ、そのため、奇数パリティ状態c0|HV〉+c1|VH〉が望ましいエンタングル状態c0|HH〉+c1|VV〉になる。従って、システム1200は、概ね確定的なエンタングラとしての役割を果たすように構成され得る。
【0118】
エンタングラ1200の特徴は、本発明のいくつかの代替の実施形態によるエンタングラを形成するために、種々の構成の非吸収パリティ検出器を用いるために変更され得る。例えば、図12Aに示される上記の実施形態では、第1の入力モード/キュービットの水平偏光成分及び垂直偏光成分がそれぞれ、制御移相器1210及び1215を制御し、第2の入力モード/キュービットの水平偏光成分及び垂直偏光成分がそれぞれ、制御移相器1220及び1225を制御する。水平偏光成分が制御する、移相器1210及び1220の位相定数は逆であり、そのため、状態|HH〉がプローブ状態において正味の位相シフトを引き起こさない。同様に、垂直偏光成分が制御する、移相器1215及び1225の位相定数は逆であり、そのため、状態|VV〉がプローブ状態において正味の位相シフトを引き起こさない。代替の構成は、例えば、移相器1210、1215、1220及び1215を制御するための入力モード/キュービットの異なる成分を用いて、状態|HV〉及び|VH〉が正味の位相シフトを引き起こさないようにすることができる。代案として、偏光変更素子を有する1つ又は複数の45°偏光ビームスプリッタを用いて、異なる偏光成分が正味の位相シフトを引き起こさないようにすることができ、例えば、状態|H+V,H+V〉及び|H−V,H−V〉又は別の一対の偏光状態が正味の位相シフトを引き起こさないようにすることができる。より一般的には、パリティ検出器内のホモダイン測定が、入力状態を、2キュービット状態の任意の所望の2次元部分空間上に投影するように、パリティ検出器を設計することができる。上述のようなフィードフォワードの場合、容易に明らかな変更を加えて、そのパリティ検出器を用いて、エンタングル状態を生成することができる。
【0119】
パリティ検出器及び/又はエンタングラの他の実施形態は、移相器を制御する成分を分離するために偏光以外の特性を用いることができる。例えば、図12Bは、図12Aのパリティ検出器1290及びエンタングラ1200に類似しているが、偏光ビームスプリッタ1230、1240、1235及び1245の代わりに、状態セパレータ1232及び1242と、状態コンバイナ1237及び1247とを用いるパリティ検出器1290B及びエンタングラ1200Bを示す。状態セパレータ1232及び1242、並びに状態コンバイナ1237及び1247の具現化形態は一般に、成分の特徴的な特性に依存するであろう。例えば、個々の角運動量成分が制御移相器を制御するように、ホログラムが入力状態の角運動量成分を分離して再結合することができる。時間ビン符号化を用いる一実施形態では、適切にタイミングを制御された光スイッチが同様に、成分セパレータ及びコンバイナとしての役割を果たすことができる。そのように変更する場合、パリティ検出器1290B内のホモダイン測定が、入力状態|ΨIN〉12を、分離された成分によって定義され、且つ測定結果xによって特定される2次元部分空間に投影する。
【0120】
また、図12Bは、分離された成分を再結合した後に、エンタングラ1200Bがフィードフォワード状態の補正を如何にして実行することができるかも示す。詳細には、エンタングラ1200Bは、状態コンバイナ1237及び1247の後方に配置され、且つエンタングラ1200の古典的な制御移相器1260及びビットフリップ1270に取って代わたフィードフォワード補正システム1275を有する。エンタングラ1200Bの一実施形態では、補正システム1275が移相器1260及びビットフリップ1270に対応する光学素子を含み、測定信号xの制御下で上記の機能を実行する。これは、1つ又は複数のモード/キュービットの成分の再分割を必要とする場合もあるが、全ての条件付き位相シフト及びビットフリップが一緒に実行することが可能になるという点で有利である可能性がある。例えば、エンタングラ1200Bは、フィードフォワード状態補正も必要とする他の量子ゲート又はシステム1280とともに使用され得る。そのようなシステムでは、補正システム1275は、パリティ検出器1290B及び他の量子システム1280から複数の測定信号x及びx’を受信して、システム1200B及び1280に必要とされる正味の補正を同時に実行することができる。
【0121】
図12Cは、必要な制御移相器が少なくて済む、本発明の一実施形態によるエンタングラ1200Cを示す。詳細には、エンタングラ1200Cは、エンタングラ1200又は1200Bにおいて用いられるような4つの移相器ではなく、2つの移相器1210及び1220だけを用いる非吸収パリティ検出器1290Cを含む。図12Cでは、制御移相器1210は位相定数θを有し、入力光子状態|ΨIN〉12の第1のモード/キュービットの1つの成分の制御下で、プローブ状態に作用する。制御移相器1220は、制御移相器1210の位相定数θの負の値である位相定数−θを有し、入力光子状態|ΨIN〉12の第2のモード/キュービットの一致する成分の制御下で、プローブ状態に作用する。従って、入力キュービットの一致する成分、例えば水平偏光成分がそれぞれ、プローブ状態|α〉への制御移相器1210及び1220の作用を制御するが、他の構成も実現可能である。例示された構成の場合、制御移相器1210及び1220が逆の位相シフトを引き起こすので、状態|HH〉はプローブ状態において正味の位相シフトを引き起こさない。状態|VV〉は位相シフトを引き起こさず、状態|HV〉及び|VH〉はプローブ状態において、0でない逆の位相シフトを引き起こす。従って、図12Cのパリティ検出器1290C及びエンタングラ1200Cの動作は、位相シフトの大きさを除いて、パリティ検出器1290又は1290C、及びエンタングラ1200又は1200Bの動作と実質的に同じである。
【0122】
図13は、本発明のさらに別の実施形態によるエンタングラ1300を示す。エンタングラ1300は、入力偏光ビームスプリッタ1310と、部分空間プロジェクタ1320と、出力偏光ビームスプリッタ(又はコンバイナ)1330と、古典的に制御されるビットフリップシステム1340とを含む。
【0123】
偏光ビームスプリッタ(PBS)1310は、状態|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2によって、偏光に基づいて表現される入力キュービットを受け取る。1つの例示的な実施形態では、状態|ΨIN〉1はエンタングル状態、例えば|ΨIN〉1=c0|H1〉+c1|V1〉として符号化されるべきキュービットを表し、状態|ΨIN〉2は既知の状態、例えば|ΨIN〉2=(1/21/2)|H2〉+(1/21/2)|V2〉である。PBS1310の動作は、対称状態|HH〉及び|VV〉を維持するが、状態|HV〉又は|VH〉が入力される場合に、一方のモードにおいて2つの光子を有し、他方のモードにおいて光子を持たない状態|HV,0〉又は|0,HV〉を出力する。従って、エンタングラ1300の例示的な実施形態におけるPBS1310からの出力状態は、c0/21/2|H1H2〉+c1/21/2|V1V2〉+c0/21/2|H1V1,0〉+c1/21/2|0,H2V2〉の形をとることができる。
【0124】
部分空間プロジェクタ1320が、PBS1310の出力状態を、各モードに1つの光子を有する状態を含む部分空間か、又は一方のモードに2つの光子を有し、他方のモードに光子を持たない状態を含む部分空間かのいずれかに投影する。詳細には、例示的な入力状態の場合に、部分空間プロジェクタ1320は、測定結果xに応じて、状態c0|H1H2〉+c1|V1V2〉又はc0|H1V1,0〉+c1|0,H2V2〉を出力する。適切な部分空間プロジェクタ1320は、例えば、上記の部分空間プロジェクタ500A又は500Bと同じ構造を有し、同じ動作をすることができるが、代案として、PBS1310の出力状態が対称であるか否かを示す測定値を与える任意のシステムを用いることができる。
【0125】
出力PBS1330は、一方のモードに2つの光子を有する状態|HV,0〉及び|0,HV〉を、各モードにおいて1つの光子を有する状態|HV〉又は|VH〉に変換して戻す。結果として、本発明の例示的な実施形態におけるPBS330からの出力状態は、状態c0|H1H2〉+c1|V1V2〉又はc0|H1V2〉+c1|V1H2〉のいずれかである。従って、1つの測定結果に関して、PBS330は、所望のエンタングル状態c0|H1H2〉+c1|V1V2〉を出力し、状態補正は不要である。他の測定結果に関して、PBS330は状態c0|H1V2〉+c1|V1H2〉を出力し、測定信号xの制御下にあるビットフリップ1340が、その出力状態を、所望の形c0|H1H2〉+c1|V1V2〉に変換する(ビットフリップは、水平偏光及び垂直偏光のスワップに対応し、ポッケルスセルで達成され得る)。
【0126】
エンタングラ1200、1200B,1200C及び1300は、上述のように概ね確定的であり、効率的な非吸収CNOTゲートにおいて使用され得る。図14Aは、本発明の一実施形態による非吸収CNOTゲート1400の一例を示す。CNOTゲート1400は、エンタングラ1410と、45°エンタングラ1415とを含む。エンタングラ1410は上記のエンタングラの任意のものと同じにすることができる。45°エンタングラ1415は、基底状態に対して45°の角度を成す偏光に対応する状態をエンタングルする。45°エンタングラ1415は、入力ビーム及び出力ビームの偏光ベクトルを45°だけ回転させる光学素子1417、例えば4分の1波長板を追加することによって構成され得る。代案として、45°エンタングラ1415は、PBS1230、1235、1240及び1245を45°偏光ビームスプリッタで置き換えた後のエンタングラ1200、1200B又は1200Cと同じにすることができる。
【0127】
また、CNOTゲート1400は、最大にエンタングルした状態1/21/2(|H3H4〉+|V3V4〉)の発生源1405も含む。発生源1405は、限定はしないが、パラメトリックダウンコンバージョンを用いるシステム、非線形光ファイバ、又は所望のエンタングル状態を生成するための上記のようなエンタングラを含む、エンタングルした光子対を生成することができる任意のシステムとすることができる。
【0128】
式30において与えられる形の初期状態の場合、エンタングラ1410の動作によって、式31に示されるような入力状態が生成され、入力状態|ΨIN〉1のモード1光子が、発生源1405からのモード3光子と最大にエンタングルされる。検出器1460は、モード3状態が偏光状態|S3〉=1/21/2[|H3〉+|V3〉]にあるか、又は偏光状態|F3〉=1/21/2[|H3〉−|V3〉]にあるかを測定する。本発明の1つの例示的な実施形態では、検出器1460は、モード3状態を状態|S3〉及び|F3〉にそれぞれ比例する偏光成分に分割し、非吸収検出器1430を用いて、それぞれの偏光を有する光子を検出する、45°−PBS1420を含む非吸収検出器1460である。非吸収検出器を用いる必要はないが、それを用いることにより、他の場所において用いるために光子状態を再構成して出力することが可能になる。
【0129】
【数22】
【0130】
検出器1460の測定後の条件付き状態は、式32に示す形からなる。ただし、プラス符号は、測定結果が状態|S3〉を特定する場合に得られ、マイナス符号は、測定結果が状態|F3〉を特定する場合に生じる。検出器1460からの測定値が状態|F3〉を特定する場合に、簡単なフィードフォワードシステムが符号フリップ1470を実行することができ、検出器1460からの測定結果にかかわらず、左辺の演算が式33の状態を生成するようにする。
【0131】
【数23】
【0132】
45°エンタングラ1415は、発生源1405からのモード4光子状態及びモード2入力状態|ΨIN〉2をエンタングルして、全状態を、式34に示される形に変換する。検出器1465は、モード4における光子の偏光状態を測定する。1つの例示的な実施形態では、検出器1465は、モード4光子状態を分割するPBS1425と、モード4光子の分離された成分を測定する非吸収検出器1435及び1445とを含む非吸収検出器である。より一般的には、検出器1435及び1445は非吸収である必要はないが、非吸収検出器1435及び1445を用いることによって、成分を再結合して、他の用途に利用することができる出力状態を形成することが可能になる。検出器1465がモード4において垂直偏光した光子を検出する場合には、水平偏光及び垂直偏光をスワップするビットフリップ1475が実行される。これらの相互作用及びフィードフォワード動作からの最終的な状態が、式35において与えられており、それは、偏光符号化を用いてキュービットを表す、入力状態|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2へのCNOT演算のための正しい結果である。
【0133】
【数24】
【0134】
式35は、ゲート1400がCNOT演算を実行したことを示す。さらに、CNOT演算はエンタングラ1410及び1415における測定結果とは実質的に無関係であるので、その演算は概ね確定的であり、高い効率で正しく成功する。異なる観点から、エンタングラ1410及び1415は有効に、光子の集群効果(photon bunching effects)を許さない偏光ビームスプリッタのように動作する。これらの光子集群効果が生じない場合、簡単なフィードフォワード動作によって、CNOTゲート1400は、概ね確定的に形成されることが可能になる。これは、単光子量子ロジックを実現するための物理的な資源を大幅に節約することを表す。
【0135】
図14Bは、図14AのCNOTゲート1400において用いられる4つの状態ではなく、3つの入力光子状態を使用する概ね確定的なCNOTゲート1400Bの別の例を示す。CNOTゲート1400Bへの3つの入力状態は、偏光符号化されている制御キュービット及びターゲットキュービットを表す状態|ΨIN〉1及び|ΨIN〉2と、形(|H3〉+|V3〉)/21/2の補助的な「モード3」状態である。この実施形態では、エンタングラ1410から45°エンタングラ1415への出力モードは、モード4と呼ばれる。この取り決めを用いるとき、エンタングラ1410が制御状態|ΨIN〉1及びモード3状態を処理することから生じる状態が、上記の式33によって与えられることを示すことができる。CNOTゲート内のエンタングラの類似した動作に関するさらなる説明は、T. B. Pittman、M.J. Fitch、B. C. Jacobs及びJ. D. Franson著「Experimental Controlled-NOT Logic Gate For Single Photons In The Coincidence Basis」(Phys. Rev. A 68, 032316(2003))において見出され得る。45°エンタングラ1415、検出器1465及びビットフリップ1475の動作及び構成は、図14AのCNOTゲート1400に関して上述されている。従って、その説明はここでは繰り返されない。
【0136】
図14Bはさらに、エンタングラ1410が図12Cのエンタングラ1200Cと実質的に同じであり、45°エンタングラ1415が、偏光ビームスプリッタの代わりに45°偏光ビームスプリッタを用いることを除いて、エンタングラ1410と同じである、具体的な具現化形態を示す。しかしながら、代案として、エンタングラの他の実施形態を用いることもできる。
【0137】
また、非吸収検出を用いて、既存の確率的な量子ゲートを概ね確定的な量子ゲートにすることもできる。本明細書においてKLM CNOTと呼ばれる、既知の確率的なCNOTゲートの一例が、Knill他著「A Scheme for Efficient Quantum Computation with Linear Optics」(Nature 409, 47(2001))によって説明される。図15は、確率的なKLM CNOTに基づいた概ね確定的なCNOTゲート1500を示す。KLM CNOTゲートと同様に、CNOTゲート1500は、入力偏光ビームスプリッタ1510及び1515と、非偏光ビームスプリッタ1520及び1525と、非線形符号(NS)ゲート1530及び1535と、非偏光ビームスプリッタ1540及び1545と、出力偏光ビームスプリッタ1550及び1555とを含む。しかしながら、CNOTゲート1500において、後にさらに説明されるように、非吸収検出を用いることによって、NSゲート1530及び1535をさらに効率的に形成することができる。
【0138】
例示的なCNOT演算中に、偏光ビームスプリッタ1510及び1515はそれぞれ、偏光符号化された単光子状態である制御キュービット及びターゲットキュービットを受け取る。各ビームスプリッタ1510又は1515は、対応する入力状態の偏光成分を分離し、対応するキュービットをフイッチパス(which-path)符号化に変換する。PBS1525の出力モードのうちの1つに、偏光回転子(図示せず)を追加して、両方のモードが同じ光子偏光に対応するようにする。ビームスプリッタ1525が制御キュービットからの成分とターゲットキュービットからの成分とを干渉させる前に、ビームスプリッタ1520がターゲットキュービットにおいてアダマール変換を実行する。非偏光ビームスプリッタ1525によって、2つの光子が同じモードに集群することができる。詳細には、ビームスプリッタ1525の各入力モードに1つの光子を与える状態は、2つの光子がいずれも、NSシフトゲート1520に向けられる出力モードにあるか、又はNSシフトゲート1535に向けられる出力モードにある状態を生成することができる。各NSゲート1530及び1535が、式36に示されるように、0、1つ、及び2つの光子を含むフォック状態の一次結合である状態を変換し、その結果、各NSゲート1530が2光子成分状態に対してだけ符号シフトを導入することが理想的である。ビームスプリッタ1540が集群を元に戻して、ビームスプリッタ1540の出力モードの状態が、各出力モードに1つの光子を有する成分において符号が変化していることを除いて、ビームスプリッタ1525の入力モード状態と同じであるようにする。この符号変化の結果として、ビームスプリッタ1545から出力されるフイッチパス符号化されたキュービットは、CNOT演算のために必要とされる状態になる。その後、偏光ビームスプリッタ1550及び1560が、フイッチパスキュービットを変換して、偏光符号化されたキュービットに戻すことができる。
【0139】
【数25】
【0140】
既知のKLM CNOTゲートは、非線形符号(NS)ゲートを除いて、確定的である。従来の確率的NSゲートは、特定の測定結果の符号定数に対して式36の動作を実行する際にのみ成功し、そのような状況が生じるのは、実行回数のうち25%未満であるかもしれない。従って、従来のKLM CNOTは、16回のうち1回しかCNOT演算の実行に成功しない場合もある。CNOTゲート1500は、後にさらに説明されるように、NSゲート1530及び1535の効率を改善するために非吸収検出を使用する、NSゲート1530及び1535を用いて強化される。
【0141】
図16Aは、概ね確定的な非線形符号(NS)ゲート1600の一実施形態を示す。NSゲート1600は、3つの非偏光ビームスプリッタ1610、1620及び1630と、2つの非吸収検出器1640及び1650と、NSゲート1600の出力側及び入力側にある循環量子バッファ1660及び1670とを含む。動作時に、それぞれ0及び1つの光子を含む既知のフォック状態|0〉及び|1〉がビームスプリッタ1610の入力モードに適用される。式36に示される形の入力状態|φ〉及びビームスプリッタ1610の出力モードのうちの1つが、ビームスプリッタ1620の入力モードに適用され、各ビームスプリッタ1610及び1620からの1つの出力モードが、ビームスプリッタ1630の対応する入力モードに適用される。一般に、入力信号のタイミング、及びNSゲート内の光路長は、ビームスプリッタ1610、1620及び1630によって入力光子状態の干渉が生じるようになっている。
【0142】
非吸収検出器1640及び1650は、光子状態の他の特性を維持しながら、ビームスプリッタ1630の出力モードにおいて光子数を測定する。非吸収検出器1640及び1650は、それぞれの測定信号X1及びX2、及びそれぞれの測定された光子状態を出力する。例示的な実施形態において、各非吸収検出器1640及び1650は、ビームスプリッタ1630の出力モードの制御下にある偏光保持位相ゲートと、上記のようにプローブ状態における位相変化を測定する測定システムとを含む。非偏光ビームスプリッタ1610、1620及び1630を特徴付ける、それぞれの透過率T1、T2及びT3と、角度θ1、θ2及びθ3とを適切に選択すると、非吸収検出器1640が1つの光子を検出し、非吸収検出器1650が光子を検出しない場合には、ビームスプリッタ1620の1つの出力モードの状態が式36の状態|φ’〉になるであろう。NSゲートの一実施形態の場合に、角度θ1、θ2及びθ3は式37を満たす(Knill他著「A Scheme for Efficient Quantum Computation with Linear Optics」(Nature 409, 47 (2001))及びこの結果を達成するビームスプリッタ特性を説明するためのオンラインによる補足的な情報を参照されたい)。しかしながら、検出器1640及び1650がそれぞれ1つ及び0の光子を検出できない場合には、その出力状態は、状態|φ’〉の所望の形を有することができないであろう。図16Aに対応する従来のKLM CNOTの場合、所望の出力状態を生成し損なうことが、実行回数のうち約75%において生じ、従来のKLM CNOTゲートを非効率的にしている。
【0143】
【数26】
【0144】
NSゲート1600は、ビームスプリッタ1630からの出力モードが、所望の状態|φ’〉の生成に成功したことに対応する状態にあるか、又は所望の状態|φ’〉の生成に失敗したことに対応する状態にあるかを特定する非吸収検出器1640及び1650を用いる。例えば、検出器1640からの測定信号X1が、光子が1つであることを示し、検出器1650からの測定信号X2が、光子がないことを示す場合には、測定結果Xが、ゲート動作に成功したことを示すことができる。測定結果Xが所望の状態|φ’〉の生成を示す場合には、バッファ1660が所望の状態|φ’〉を伝送し、NSゲート1600は、補正動作を実行するのに成功している。測定結果Xが所望の状態を生成するのに失敗したことを示す場合には、測定信号は、光子状態を反射してNSゲート1600を通して戻すようにバッファ1660を設定し、光子が、NSゲート1600の入力側にあるバッファ1670まで、その経路を有効に逆戻りするようにする。その逆戻りは変化を元に戻し、光子を状態|φ〉、|0〉及び|1〉に戻す。その際、バッファ1670は反射性になり、そのため、もう一度所望の状態|φ’〉を生成しようとするために、状態|φ〉、|0〉及び|1〉が戻される。このようにして、元の光子状態がNSゲート1600を通って往復することができ、それゆえ、NSゲート1600を以前に通過した際に所望の状態|φ’〉を生成できなかった光子状態でも、後に通る際に所望の状態|φ’〉を生成するのに成功することができる。こうして、NSゲート1600は、はるかに高い成功の効率又は確率を与えることができ、十分な回数だけ通過することによって、概ね確定的な成功に近づくことができる。
【0145】
図16Bは、非吸収検出器を用いて、動作が成功する確率を高める別のNSゲート1600Bを示す。NSゲート1600Bにおいて、状態|φ〉及び|1〉がビームスプリッタ1610の入力モードに適用され、状態|0〉及びビームスプリッタ1610の一方の出力モードが、ビームスプリッタ1620の入力モードに適用される。非吸収検出器1640及び1650はそれぞれ、ビームスプリッタ1620の一方の出力モード上、及びビームスプリッタ1610の利用可能な出力モード上にある。ビームスプリッタ1610及び1620を特徴付ける角度θ1及びθ2を適切に選択すると、非吸収検出器1650が1つの光子を検出し、非吸収検出器1640が光子を検出しない測定結果によって、ビームスプリッタ1620の測定されていない出力モードが所望の状態|φ’〉にあることが示される。NSゲート1600Bを最初に通過する際に状態|φ’〉を生成するのに成功する確率は約23%であり、それは、NSゲート1600Bに類似した構造を有する従来の確率的なNSゲートの成功確率である。しかしながら、NSゲート1600Bは、循環量子バッファ1660を含み、それにより、測定結果が失敗を示す場合に、出力光子が反射されて、NSゲート1600Bに戻され、バッファ1660は、バッファ1670と協働して、所望の状態|φ’〉が生成されるまで光子を繰返し戻すことができる。
【0146】
非吸収検出器をさらに全般的に用いて、他の確率的ゲートの効率を改善することができる。図17は、既知の確率的ゲートに基づいている一般的な量子ゲート1700を示す。量子ゲート1700は、入力コヒーレント量子バッファ1710と、確率的ゲート1720と、出力コヒーレント量子バッファ1730とを含む。確率的量子ゲート1720は、光学系1722(例えば、線形光学系)と、非吸収検出器1724とを含む。光学系1722は、検出器測定値を用いて光子状態の非線形相互作用を生じさせる既知の確率的量子ゲートにおいて用いられる光学系と同じにすることができるが、本発明の一態様によれば、確率的量子ゲート1720は、測定されている光子状態を破壊する従来の検出器の代わりに、非吸収検出器1724を使用する。動作時に、確率的ゲート1720に必要とされる入力光子状態及び補助光子状態が、CQB1710を通して入力され、非吸収検出器1724は、ゲート1720が正確な出力状態を生成するのに成功しているか否かを判定する。成功している場合には、出力状態がCQB1730を通して伝送される。成功していない場合には、検出器1724からの測定信号が、CQB1710及び1730を、それらの反射状態に切り替える。その後、出力光子状態及び補助光子状態が、ゲート1720を通ってCQB1710に戻り、CQB1710は、所望の出力を生成するための別の機会を得るために、光子状態をゲート1720に戻すように再入力する。ゲート1720を何度も通過することによって、ゲート動作に成功するための別の機会が与えられる。従って、ゲート1700は、ゲート1720よりも、又は対応する従来の確率的ゲートよりも、動作に成功する確率が高くなる。
【0147】
本発明は特定の実施形態に関連して説明されてきたが、その説明は本発明の応用形態の例を提供するだけであり、限定するものと解釈されるべきではない。例えば、本発明の特定の実施形態の動作は、積状態のような特定の入力状態で説明又は図示される場合があるが、上記の実施形態は、より一般的には、エンタングル状態及び混合された状態を含む、任意の適切な量子状態を処理することができる。開示された実施形態の特徴の種々の他の改変及び組み合わせが、添付の特許請求の範囲によって規定されるような、本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】量子非破壊検出器のために適した制御移相器を実現する非線形光学素子を示す図である。
【図2A】電磁誘導透過を用いる、本発明の代替の実施形態による制御移相器を示す図である。
【図2B】電磁誘導透過を用いる、本発明の代替の実施形態による制御移相器を示す図である。
【図2C】電磁誘導透過を用いる、本発明の代替の実施形態による制御移相器を示す図である。
【図3】図2A、図2B及び図2Cの制御移相器において用いられる物質系のためのエネルギー準位図である。
【図4A】入力状態の偏光又は他の特性を保持することができる、本発明の一実施形態による光子数分解移相器を示す図である。
【図4B】入力状態の偏光又は他の特性を保持することができる、本発明の一実施形態による光子数分解移相器を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態によるnモード量子部分空間プロジェクタを示す図である。
【図6A】2モード量子部分空間プロジェクタを用いる、本発明の代替の実施形態による非吸収対称性解析器を示す図である。
【図6B】図6Aとは異なる2モード量子部分空間プロジェクタを用いる、本発明の代替の実施形態による非吸収対称性解析器を示す図である。
【図7A】図5の部分空間プロジェクタ、又は図6A又は図6Bの対称性解析器において用いるのに適しているホモダイン検出器を示す図である。
【図7B】2キュービット状態の対称性の解析中に行われるホモダイン測定のための確率分布を示す図である。
【図8A】本発明の一実施形態による非吸収ベル状態解析器を示す図である。
【図8B】本発明の代替の実施形態による非吸収ベル状態解析器を示す図である。
【図9】本発明の実施形態による、量子情報処理システムにおいて用いるのに適している、光子を格納する電気光学ミラーシステムを示す図である。
【図10】本発明の一実施形態による非吸収エンコーダを示す図である。
【図11】量子部分空間プロジェクタを利用する、本発明の一実施形態によるCNOTゲートを示す図である。
【図12A】本発明の一実施形態によるエンタングラを示す図である。
【図12B】本発明の代替の実施形態によるエンタングラを示す図である。
【図12C】本発明の代替の実施形態によるエンタングラを示す図である。
【図13】図6A又は図6Bに示されるような対称性解析器からのフィードフォワードを用いる一実施形態によるエンタングラを示す図である。
【図14A】本発明の一実施形態による、エンタングラ及びフィードフォワード技術を利用する、CNOTゲートの一実施形態を示す図である。
【図14B】本発明の一実施形態による、エンタングラ及びフィードフォワード技術を利用する、CNOTゲートの代替の実施形態を示す図である。
【図15】効率的な非線形符号ゲートを利用することができる効率的なCNOTゲートの一実施形態を示す図である。
【図16A】非吸収状態検出器を用いるマルチパス非線形符号ゲートの一実施形態を示す図である。
【図16B】非吸収状態検出器を用いるマルチパス非線形符号ゲートの代替の実施形態を示す図である。
【図17】本発明の一実施形態による、マルチパス確率的量子ゲートを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子コヒーレントシステムであって、
第1の位相定数を有する第1の制御移相器(1210)と、
前記第1の位相定数の負の値である第2の位相定数を有する第2の制御移相器(1220)と、
前記第1の制御移相器(1210)及び前記第2の制御移相器(1220)を通過するプローブ電磁モードと、
前記プローブ電磁モードの位相シフトを測定するように配置された検出器(1250)と、
第1の出力モード及び第2の出力モードを有する第1の状態セパレータ(1232)であって、前記第1の状態セパレータ(1232)の前記第1の出力モードが、前記第1の制御移相器(1210)を制御する、第1の状態セパレータと、
第1の出力モード及び第2の出力モードを有する第2の状態セパレータ(1242)であって、前記第2の状態セパレータ(1242)の前記第1の出力モードが、前記第2の制御移相器(1220)を制御する、第2の状態セパレータとを含む、量子コヒーレントシステム。
【請求項2】
前記第1の状態セパレータ(1232)が、第1の偏光ビームスプリッタ(1230)からなり、前記第2の状態セパレータ(1242)が、第2の偏光ビームスプリッタ(1240)からなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の位相定数を有し、前記第1の状態セパレータ(1232)の前記第2の出力モードによって制御される第3の制御移相器(1215)と、
前記第1の位相定数を有し、前記第2の状態セパレータ(1242)の前記第2の出力モードによって制御される第4の制御移相器(1225)とをさらに含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の状態セパレータ(1232)の前記第1のモード及び前記第2のモードを再結合するように配置された第1の状態コンバイナ(1237)と、
前記第2の状態セパレータ(1242)の前記第1のモード及び前記第2のモードを再結合するように配置された第2の状態コンバイナ(1247)とをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記検出器(1250)からの測定信号の制御下にある状態補正光学系(1260)をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムがエンタングラ(1200)として動作する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記エンタングラ(1200)がCNOTゲート(1400)において使用される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムがパリティ検出器(1290)として動作する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
パリティ検出器であって、
第1の位相定数を有する第1の制御移相器(1210)と、
前記第1の位相定数の負の値である第2の位相定数を有する第2の制御移相器(1220)と、
前記第1の制御移相器(1210)及び前記第2の制御移相器(1220)を通過するプローブ電磁モードと、
前記プローブ電磁モードの位相シフトを測定するように配置された測定システム(1250)と、
第1の出力モード及び第2の出力モードを有する第1の偏光ビームスプリッタ(1230)であって、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1230)の前記第1の出力モードが、前記第1の制御移相器(1210)を制御する、第1の偏光ビームスプリッタと、
第1の出力モード及び第2の出力モードを有する第2の偏光ビームスプリッタ(1240)であって、前記第2の偏光ビームスプリッタ(1240)の前記第1の出力モードが、前記第2の制御移相器(1220)を制御する、第2の偏光ビームスプリッタとを含む、パリティ検出器。
【請求項10】
前記第2の位相定数を有し、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1230)の前記第2の出力モードによって制御される第3の制御移相器(1215)と、
前記第1の位相定数を有し、前記第2の偏光ビームスプリッタ(1240)の前記第2の出力モードによって制御される第4の制御移相器(1225)とをさらに含む、請求項9に記載のパリティ検出器。
【請求項11】
前記測定システム(1250)からの信号の制御下にある状態補正光学系(1260)をさらに含む、請求項9又は10に記載のパリティ検出器。
【請求項12】
前記補正光学系(1260)は、前記状態が第1のパリティを有することを前記測定システム(1250)が示すことに応答して、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1230)及び前記第2の偏光ビームスプリッタ(1240)の前記出力モードの状態を変更する、請求項11に記載のパリティ検出器。
【請求項13】
前記測定システム(1250)は、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1230)及び前記第2の偏光ビームスプリッタ(1240)の前記出力モードの状態を、高い確率で、第1の状態及び第2の状態のうちの1つに投影し、前記第1の状態が第1のパリティを有し、前記第2の状態が、前記第1のパリティとは異なる第2のパリティを有する、請求項9〜11のいずれか一項に記載のパリティ検出器。
【請求項14】
前記測定システム(1250)がホモダイン検出器を含む、請求項9〜13のいずれか一項に記載のパリティ検出器。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか一項に記載のパリティ検出器を含み、前記測定システム(1250)からの古典信号に応答して、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1230)及び前記第2の偏光ビームスプリッタ(1240)のうちの一方の前記出力モードの状態を処理するビットフリップシステム(1270)をさらに含む、エンタングラ。
【請求項16】
CNOTゲートであって、
前記CNOTゲートの制御モードの光子状態を補助モードの光子状態とエンタングルするための第1のエンタングル手段(1410)であって、前記第1のエンタングル手段は、第1の偏光成分に対応する前記光子状態の成分をエンタングルする、第1のエンタングル手段と、
前記第1のエンタングル手段の出力補助モードの光子状態と前記CNOTゲートのターゲットモードの光子状態とエンタングルするための第2のエンタングル手段(1415)であって、前記第2のエンタングル手段が、前記第1の偏光成分とは異なる第2の偏光成分に対応する前記光子状態の成分をエンタングルする、第2のエンタングル手段と、
前記第2のエンタングル手段(1415)の出力補助モードの偏光状態を測定するための手段(1465)と、
前記第2のエンタングル手段(1415)の出力ターゲットモードの偏光状態を変更するための手段(1475)とを含み、
前記第1のエンタングル手段(1410)及び前記第2のエンタングル手段(1415)のうちの少なくとも一方が請求項15に記載のエンタングラを含む、CNOTゲート。
【請求項17】
パリティ検出器であって、
第1の光子状態の第1の成分と第2の成分とを分離するための手段(1230)と、
第2の光子状態の第1の成分と第2の成分とを分離するための手段(1240)と、
第1の位相定数と、前記第1の光子状態の前記第1の成分内の光子の数との積に等しいシフトだけ、光子プローブ状態の位相をシフトするための手段(1210)と、
第2の位相定数と、前記第2の光子状態の前記第1の成分内の光子の数との積に等しいシフトだけ、前記光子プローブ状態の前記位相をシフトするための手段(1210)と、
前記光子プローブ状態の正味のシフトを測定するための手段(1250)とを含む、パリティ検出器。
【請求項18】
前記第2の位相定数が前記第1の位相定数の負の値である、請求項17に記載のパリティ検出器。
【請求項19】
前記第2の位相定数と、前記第1の光子状態の前記第2の成分内の光子の数との積に等しいシフトだけ、前記光子プローブ状態の前記位相をシフトするための手段(1215)と、
前記第1の位相定数と、前記第2の光子状態の前記第2の成分内の光子の数との積に等しいシフトだけ、前記光子プローブ状態の前記位相をシフトするための手段(1225)とをさらに含む、請求項17又は18に記載のパリティ検出器。
【請求項20】
前記測定手段(1260)により、前記正味のシフトが第1の値を有することが検出されることに応答して、前記第1の光子状態及び前記第2の光子状態のうちの少なくとも一方を変更するための手段(1260)をさらに含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載のパリティ検出器。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか一項に記載のパリティ検出器を含み、前記測定手段(1260)により、前記正味のシフトが前記第1の値を有することが検出されることに応答して、前記第1の光子状態及び前記第2の光子状態のうちの一方においてビットフリップ演算を実行するための手段(1270)をさらに含む、エンタングラ。
【請求項22】
CNOTゲートであって、
前記CNOTゲートの制御モードの光子状態を補助モードの光子状態とエンタングルするための第1のエンタングル手段(1410)であって、前記第1のエンタングル手段が、第1の偏光成分に対応する前記光子状態の成分を区別してエンタングルする、第1のエンタングル手段と、
前記第1のエンタングル手段の出力補助モードの光子状態と前記CNOTゲートのターゲットモードの光子状態とエンタングルするための第2のエンタングル手段(1415)であって、前記第2のエンタングル手段が、前記第1の偏光成分とは異なる第2の偏光成分に対応する前記光子状態の成分を区別してエンタングルする、第2のエンタングル手段と、
前記第2のエンタングル手段(1415)の出力補助モードの偏光状態を測定するための手段(1465)と、
前記第2のエンタングル手段(1415)の出力ターゲットモードの偏光状態を変更するための手段(1475)とを含み、前記第1のエンタングル手段(1410)及び前記第2のエンタングル手段(1415)のうちの少なくとも一方が、請求項21に記載のエンタングラを含む、CNOTゲート。
【請求項23】
エンタングラであって、
第1及び第2の入力モードと、第1の出力モード及び第2の出力モードとを有する第1の偏光ビームスプリッタ(1310)と、
前記第1の偏光ビームスプリッタ(1310)の前記第1の出力モード及び前記第2の出力モードの状態を、前記第1の出力モード及び前記第2の出力モードのそれぞれにおいて1つの光子を有する状態の第1の部分空間、並びに前記第1の出力モード及び前記第2の出力モードのうちの一方において2つの光子を有し、前記第1の出力モード及び前記第2の出力モードのうちの他方において光子を持たない状態の第2の部分空間のうちの一方に投影する非吸収部分空間プロジェクタ(1320)と、
第1の入力モード及び第2の入力モードとしてそれぞれ、前記第1の偏光ビームスプリッタの前記第1の出力モード及び前記第2の出力モードを有する第2の偏光ビームスプリッタ(1330)と、
前記非吸収部分空間プロジェクタ(1320)からの信号に応答して、前記第2の偏光ビームスプリッタ(1330)の出力モードにおいてビットフリップ演算を実行する偏光変更システム(1340)とを含む、エンタングラ。
【請求項24】
前記非吸収部分空間プロジェクタ(1320)が、
第1の位相定数と、前記第1の偏光移相器(1310)の前記第1の出力モード内の光子の数との積に等しいシフトだけ、光子プローブ状態の位相をシフトする第1の偏光保持制御移相器(400−1)と、
第2の位相定数と、前記第1の偏光移相器(1310)の前記第2の出力モード内の光子の数との積に等しいシフトだけ、前記光子プローブ状態の前記位相をシフトする第2の偏光保持制御移相器(400−2)であって、前記第2の位相定数が前記第1の位相定数の負の値である、第2の偏光保持制御移相器と、
前記光子プローブ状態の正味のシフトを測定して、前記偏光変更システム(1340)を制御する古典信号を生成する測定システム(530)とを含む、請求項23に記載のエンタングラ。
【請求項25】
符号化されるべきキュービットをエンタングル状態として表す光子状態が、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1310)の前記第1の入力モードに入力され、既知の状態が、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1310)の前記第2の入力モードに入力される、請求項23又は24に記載のエンタングラ。
【請求項26】
量子コヒーレントシステムであって、
確率的量子ゲート(1720)の光学系(1722)と、
前記確率的量子ゲート(1720)の補助状態を測定するために結合された非吸収検出器システム(1724)と、
前記非吸収検出器システム(1724)の制御下にある出力反射システム(1730)であって、前記非吸収検出器システム(1724)により、動作が成功したことを示す測定結果が与えられることに応答して、前記確率的量子ゲート(1720)のターゲット出力状態を出力し、前記非吸収検出器システム(1724)により、動作が失敗したことを示す測定結果が与えられることに応答して、前記確率的量子ゲート(1720)を通って、前記ターゲット状態及び前記補助状態を逆行して戻す、出力反射システムと、
前記確率的量子ゲート(1720)への入力として、任意の戻された状態を循環させる入力反射システム(1710)とを含む、量子コヒーレントシステム。
【請求項27】
前記確率的量子ゲート(1720)が非線形符号ゲートを含む、請求項26に記載の量子コヒーレントシステム。
【請求項28】
量子コヒーレント演算を実行するための方法であって、
前記量子コヒーレント演算が実行されるべき1つ又は複数のターゲット状態と、1つ又は複数の補助状態とを、確率的量子ゲート(1720)に送り、
非吸収検出器システム(1724)を用いて、前記確率的量子ゲート(1720)の1つ又は複数の補助状態を測定し、
前記確率的量子ゲート(1720)が前記量子コヒーレント演算を実行するのに成功したことを、前記非吸収検出器システム(1724)からの測定結果が示すことに応答して、所望の状態を出力し、
前記確率的量子ゲート(1720)が前記量子コヒーレント演算を実行するのに失敗したことを、前記測定結果が示すことに応答して、前記非吸収検出器システム(1724)及び前記確率的量子ゲート(1720)から出力される状態を前記確率的量子ゲート(1720)に戻し、それにより前記戻された状態が、前記確率的量子ゲート(1720)に入力される前記ターゲット状態及び前記補助状態になり、
前記送ること、前記測定すること、及び前記出力すること又は前記戻すことを繰り返すことを含む、量子コヒーレント演算を実行するための方法。
【請求項29】
前記確率的量子ゲート(1720)が非線形符号ゲートを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項1】
量子コヒーレントシステムであって、
第1の位相定数を有する第1の制御移相器(1210)と、
前記第1の位相定数の負の値である第2の位相定数を有する第2の制御移相器(1220)と、
前記第1の制御移相器(1210)及び前記第2の制御移相器(1220)を通過するプローブ電磁モードと、
前記プローブ電磁モードの位相シフトを測定するように配置された検出器(1250)と、
第1の出力モード及び第2の出力モードを有する第1の状態セパレータ(1232)であって、前記第1の状態セパレータ(1232)の前記第1の出力モードが、前記第1の制御移相器(1210)を制御する、第1の状態セパレータと、
第1の出力モード及び第2の出力モードを有する第2の状態セパレータ(1242)であって、前記第2の状態セパレータ(1242)の前記第1の出力モードが、前記第2の制御移相器(1220)を制御する、第2の状態セパレータとを含む、量子コヒーレントシステム。
【請求項2】
前記第1の状態セパレータ(1232)が、第1の偏光ビームスプリッタ(1230)からなり、前記第2の状態セパレータ(1242)が、第2の偏光ビームスプリッタ(1240)からなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の位相定数を有し、前記第1の状態セパレータ(1232)の前記第2の出力モードによって制御される第3の制御移相器(1215)と、
前記第1の位相定数を有し、前記第2の状態セパレータ(1242)の前記第2の出力モードによって制御される第4の制御移相器(1225)とをさらに含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の状態セパレータ(1232)の前記第1のモード及び前記第2のモードを再結合するように配置された第1の状態コンバイナ(1237)と、
前記第2の状態セパレータ(1242)の前記第1のモード及び前記第2のモードを再結合するように配置された第2の状態コンバイナ(1247)とをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記検出器(1250)からの測定信号の制御下にある状態補正光学系(1260)をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムがエンタングラ(1200)として動作する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記エンタングラ(1200)がCNOTゲート(1400)において使用される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムがパリティ検出器(1290)として動作する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
パリティ検出器であって、
第1の位相定数を有する第1の制御移相器(1210)と、
前記第1の位相定数の負の値である第2の位相定数を有する第2の制御移相器(1220)と、
前記第1の制御移相器(1210)及び前記第2の制御移相器(1220)を通過するプローブ電磁モードと、
前記プローブ電磁モードの位相シフトを測定するように配置された測定システム(1250)と、
第1の出力モード及び第2の出力モードを有する第1の偏光ビームスプリッタ(1230)であって、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1230)の前記第1の出力モードが、前記第1の制御移相器(1210)を制御する、第1の偏光ビームスプリッタと、
第1の出力モード及び第2の出力モードを有する第2の偏光ビームスプリッタ(1240)であって、前記第2の偏光ビームスプリッタ(1240)の前記第1の出力モードが、前記第2の制御移相器(1220)を制御する、第2の偏光ビームスプリッタとを含む、パリティ検出器。
【請求項10】
前記第2の位相定数を有し、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1230)の前記第2の出力モードによって制御される第3の制御移相器(1215)と、
前記第1の位相定数を有し、前記第2の偏光ビームスプリッタ(1240)の前記第2の出力モードによって制御される第4の制御移相器(1225)とをさらに含む、請求項9に記載のパリティ検出器。
【請求項11】
前記測定システム(1250)からの信号の制御下にある状態補正光学系(1260)をさらに含む、請求項9又は10に記載のパリティ検出器。
【請求項12】
前記補正光学系(1260)は、前記状態が第1のパリティを有することを前記測定システム(1250)が示すことに応答して、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1230)及び前記第2の偏光ビームスプリッタ(1240)の前記出力モードの状態を変更する、請求項11に記載のパリティ検出器。
【請求項13】
前記測定システム(1250)は、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1230)及び前記第2の偏光ビームスプリッタ(1240)の前記出力モードの状態を、高い確率で、第1の状態及び第2の状態のうちの1つに投影し、前記第1の状態が第1のパリティを有し、前記第2の状態が、前記第1のパリティとは異なる第2のパリティを有する、請求項9〜11のいずれか一項に記載のパリティ検出器。
【請求項14】
前記測定システム(1250)がホモダイン検出器を含む、請求項9〜13のいずれか一項に記載のパリティ検出器。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか一項に記載のパリティ検出器を含み、前記測定システム(1250)からの古典信号に応答して、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1230)及び前記第2の偏光ビームスプリッタ(1240)のうちの一方の前記出力モードの状態を処理するビットフリップシステム(1270)をさらに含む、エンタングラ。
【請求項16】
CNOTゲートであって、
前記CNOTゲートの制御モードの光子状態を補助モードの光子状態とエンタングルするための第1のエンタングル手段(1410)であって、前記第1のエンタングル手段は、第1の偏光成分に対応する前記光子状態の成分をエンタングルする、第1のエンタングル手段と、
前記第1のエンタングル手段の出力補助モードの光子状態と前記CNOTゲートのターゲットモードの光子状態とエンタングルするための第2のエンタングル手段(1415)であって、前記第2のエンタングル手段が、前記第1の偏光成分とは異なる第2の偏光成分に対応する前記光子状態の成分をエンタングルする、第2のエンタングル手段と、
前記第2のエンタングル手段(1415)の出力補助モードの偏光状態を測定するための手段(1465)と、
前記第2のエンタングル手段(1415)の出力ターゲットモードの偏光状態を変更するための手段(1475)とを含み、
前記第1のエンタングル手段(1410)及び前記第2のエンタングル手段(1415)のうちの少なくとも一方が請求項15に記載のエンタングラを含む、CNOTゲート。
【請求項17】
パリティ検出器であって、
第1の光子状態の第1の成分と第2の成分とを分離するための手段(1230)と、
第2の光子状態の第1の成分と第2の成分とを分離するための手段(1240)と、
第1の位相定数と、前記第1の光子状態の前記第1の成分内の光子の数との積に等しいシフトだけ、光子プローブ状態の位相をシフトするための手段(1210)と、
第2の位相定数と、前記第2の光子状態の前記第1の成分内の光子の数との積に等しいシフトだけ、前記光子プローブ状態の前記位相をシフトするための手段(1210)と、
前記光子プローブ状態の正味のシフトを測定するための手段(1250)とを含む、パリティ検出器。
【請求項18】
前記第2の位相定数が前記第1の位相定数の負の値である、請求項17に記載のパリティ検出器。
【請求項19】
前記第2の位相定数と、前記第1の光子状態の前記第2の成分内の光子の数との積に等しいシフトだけ、前記光子プローブ状態の前記位相をシフトするための手段(1215)と、
前記第1の位相定数と、前記第2の光子状態の前記第2の成分内の光子の数との積に等しいシフトだけ、前記光子プローブ状態の前記位相をシフトするための手段(1225)とをさらに含む、請求項17又は18に記載のパリティ検出器。
【請求項20】
前記測定手段(1260)により、前記正味のシフトが第1の値を有することが検出されることに応答して、前記第1の光子状態及び前記第2の光子状態のうちの少なくとも一方を変更するための手段(1260)をさらに含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載のパリティ検出器。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか一項に記載のパリティ検出器を含み、前記測定手段(1260)により、前記正味のシフトが前記第1の値を有することが検出されることに応答して、前記第1の光子状態及び前記第2の光子状態のうちの一方においてビットフリップ演算を実行するための手段(1270)をさらに含む、エンタングラ。
【請求項22】
CNOTゲートであって、
前記CNOTゲートの制御モードの光子状態を補助モードの光子状態とエンタングルするための第1のエンタングル手段(1410)であって、前記第1のエンタングル手段が、第1の偏光成分に対応する前記光子状態の成分を区別してエンタングルする、第1のエンタングル手段と、
前記第1のエンタングル手段の出力補助モードの光子状態と前記CNOTゲートのターゲットモードの光子状態とエンタングルするための第2のエンタングル手段(1415)であって、前記第2のエンタングル手段が、前記第1の偏光成分とは異なる第2の偏光成分に対応する前記光子状態の成分を区別してエンタングルする、第2のエンタングル手段と、
前記第2のエンタングル手段(1415)の出力補助モードの偏光状態を測定するための手段(1465)と、
前記第2のエンタングル手段(1415)の出力ターゲットモードの偏光状態を変更するための手段(1475)とを含み、前記第1のエンタングル手段(1410)及び前記第2のエンタングル手段(1415)のうちの少なくとも一方が、請求項21に記載のエンタングラを含む、CNOTゲート。
【請求項23】
エンタングラであって、
第1及び第2の入力モードと、第1の出力モード及び第2の出力モードとを有する第1の偏光ビームスプリッタ(1310)と、
前記第1の偏光ビームスプリッタ(1310)の前記第1の出力モード及び前記第2の出力モードの状態を、前記第1の出力モード及び前記第2の出力モードのそれぞれにおいて1つの光子を有する状態の第1の部分空間、並びに前記第1の出力モード及び前記第2の出力モードのうちの一方において2つの光子を有し、前記第1の出力モード及び前記第2の出力モードのうちの他方において光子を持たない状態の第2の部分空間のうちの一方に投影する非吸収部分空間プロジェクタ(1320)と、
第1の入力モード及び第2の入力モードとしてそれぞれ、前記第1の偏光ビームスプリッタの前記第1の出力モード及び前記第2の出力モードを有する第2の偏光ビームスプリッタ(1330)と、
前記非吸収部分空間プロジェクタ(1320)からの信号に応答して、前記第2の偏光ビームスプリッタ(1330)の出力モードにおいてビットフリップ演算を実行する偏光変更システム(1340)とを含む、エンタングラ。
【請求項24】
前記非吸収部分空間プロジェクタ(1320)が、
第1の位相定数と、前記第1の偏光移相器(1310)の前記第1の出力モード内の光子の数との積に等しいシフトだけ、光子プローブ状態の位相をシフトする第1の偏光保持制御移相器(400−1)と、
第2の位相定数と、前記第1の偏光移相器(1310)の前記第2の出力モード内の光子の数との積に等しいシフトだけ、前記光子プローブ状態の前記位相をシフトする第2の偏光保持制御移相器(400−2)であって、前記第2の位相定数が前記第1の位相定数の負の値である、第2の偏光保持制御移相器と、
前記光子プローブ状態の正味のシフトを測定して、前記偏光変更システム(1340)を制御する古典信号を生成する測定システム(530)とを含む、請求項23に記載のエンタングラ。
【請求項25】
符号化されるべきキュービットをエンタングル状態として表す光子状態が、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1310)の前記第1の入力モードに入力され、既知の状態が、前記第1の偏光ビームスプリッタ(1310)の前記第2の入力モードに入力される、請求項23又は24に記載のエンタングラ。
【請求項26】
量子コヒーレントシステムであって、
確率的量子ゲート(1720)の光学系(1722)と、
前記確率的量子ゲート(1720)の補助状態を測定するために結合された非吸収検出器システム(1724)と、
前記非吸収検出器システム(1724)の制御下にある出力反射システム(1730)であって、前記非吸収検出器システム(1724)により、動作が成功したことを示す測定結果が与えられることに応答して、前記確率的量子ゲート(1720)のターゲット出力状態を出力し、前記非吸収検出器システム(1724)により、動作が失敗したことを示す測定結果が与えられることに応答して、前記確率的量子ゲート(1720)を通って、前記ターゲット状態及び前記補助状態を逆行して戻す、出力反射システムと、
前記確率的量子ゲート(1720)への入力として、任意の戻された状態を循環させる入力反射システム(1710)とを含む、量子コヒーレントシステム。
【請求項27】
前記確率的量子ゲート(1720)が非線形符号ゲートを含む、請求項26に記載の量子コヒーレントシステム。
【請求項28】
量子コヒーレント演算を実行するための方法であって、
前記量子コヒーレント演算が実行されるべき1つ又は複数のターゲット状態と、1つ又は複数の補助状態とを、確率的量子ゲート(1720)に送り、
非吸収検出器システム(1724)を用いて、前記確率的量子ゲート(1720)の1つ又は複数の補助状態を測定し、
前記確率的量子ゲート(1720)が前記量子コヒーレント演算を実行するのに成功したことを、前記非吸収検出器システム(1724)からの測定結果が示すことに応答して、所望の状態を出力し、
前記確率的量子ゲート(1720)が前記量子コヒーレント演算を実行するのに失敗したことを、前記測定結果が示すことに応答して、前記非吸収検出器システム(1724)及び前記確率的量子ゲート(1720)から出力される状態を前記確率的量子ゲート(1720)に戻し、それにより前記戻された状態が、前記確率的量子ゲート(1720)に入力される前記ターゲット状態及び前記補助状態になり、
前記送ること、前記測定すること、及び前記出力すること又は前記戻すことを繰り返すことを含む、量子コヒーレント演算を実行するための方法。
【請求項29】
前記確率的量子ゲート(1720)が非線形符号ゲートを含む、請求項28に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【公表番号】特表2008−507739(P2008−507739A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523576(P2007−523576)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/022969
【国際公開番号】WO2006/023082
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/022969
【国際公開番号】WO2006/023082
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
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