説明

金型、缶切不要蓋、缶切不要蓋の製造方法及び缶切不要蓋用ラミネート鋼板

【課題】 より厳しいスコア加工条件でもラミネート鋼板を用いた缶切不要蓋の無補修化を達成するのに好適な金型、缶切不要蓋、缶切不要蓋の製造方法を提供する。
【解決手段】 蓋面の一方の面にスコアを有する、ラミネート金属板を用いた缶切不要蓋のスコア形成に使用する上下一対の金型であって、上金型はスコア形成用凸部を有し、該凸部の断面形状は、ラミネート金属板と接する部分は、相対する下金型上面に対する傾きの変化率が0.08以下である曲線又は曲線及び直線より構成され、形成するスコア最大巾は0.80mm以下とすることを特徴とする金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート鋼板を用いた缶切不要蓋のスコア形成に好適な金型、缶切不要蓋、缶切不要蓋の製造方法及び缶切不要蓋用ラミネート鋼板に関する。より具体的には缶切不要蓋のスコア部の無補修化に好適な金型、缶切不要蓋、缶切不要蓋の製造方法及び缶切不要蓋用ラミネート鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
缶切不要蓋(本明細書では、イージーオープンエンドとも記載する。)材料には、主としてアルミニウムが用いられてきている。塗装された鋼板は素材としては安価であるが蓋加工後に補修塗装工程が必要となるため経済的なメリットが少ない。これらの理由から積極的に鋼板が利用されない状況にあるのである。この様な背景のもと、蓋の加工法を工夫することと、その加工法に応じたラミネート鋼板を用いることで鋼板製イージーオープンエンドの補修塗装工程の省略化が様々に試みられてきた。
【0003】
特許文献1では、ポリエステル樹脂を用い、スコア底部に平坦部が形成される従来のV字型スコアの加工法を工夫することで無補修化を試みている。特許文献2では、樹脂層の厚さや破断伸びを規定する一方、スコア加工法を工夫している。特許文献3では、スコア加工は曲面金型を用いる事で無補修化を試みている。
【0004】
以下に先行技術文献情報について記載する。
【特許文献1】特開平06−115546号公報
【特許文献2】特開平09−234534号公報
【特許文献3】特開平11−91775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの発明にも関わらず市場ではアルミニウム製蓋が独占的である。飲料缶市場は言うに及ばず、食缶市場においても、イージーオープン化の流れと相俟って、むしろアルミニウム製イージーオープンエンドが増えてきている状況にさえある。この事はアルミニウム製蓋からラミネート鋼板製蓋に切り替えるメリットを市場が認めていない証左である。
【0006】
ラミネート鋼板製蓋が市場に受け入れられにくい理由は、缶のデザイン、製蓋方法、製造方法等の要求レベルによっては適用可能なものもあるが、適用できないものが多くある為だと考えている。即ち、スチール蓋の無補修化が達成困難な蓋種や製蓋条件が存在するのである。具体的には、より開缶力を低くする為に、より厳しいスコア加工を施したデザインの蓋であったり、連続製蓋による金型温度の上昇が、樹脂の加工性に悪影響を与える条件であったりした場合などである。
【0007】
従って、ほとんどの蓋種において無補修化を達成するには、これらの厳しい加工条件下でも樹脂層が破断しない加工法、及び樹脂を新たに用意する必要がある。
【0008】
これら、厳しいスコア加工条件下においては既存のスコア加工法では完全に無補修化が達成できない。例えば、発明者らの調査によると、従来技術の範囲では特許文献3のスコア加工技術が最も有望であった。この特許文献では、曲率一定の曲面金型によるスコア加工が記載されており、その金型の曲率半径が0.1mm〜1.0mmで、スコア残厚を0.025〜0.080mmとすることが開示がされている。この開示に従うと、確かに、従来の鋭いノッチ型に比較して格段に加工性は向上したが、前述の厳しいスコア加工条件に対しては十分ではなかった。
【0009】
前記の問題を解決することで、ラミネート鋼板の本格的市場参入が可能となる。安価なラミネート鋼板の本格的市場参入は、単に缶コストの低減に留まらない。オールスチール缶がリサイクルの観点で優れる事は言うまでもなく、スチール素材そのものがアルミニウムに比較して低環境負荷素材であるため、この素材移行は産業的にも意義が大きい。
【0010】
本件発明の目的は、前記諸問題を解決し、より厳しいスコア加工条件でもラミネート鋼板を用いた缶切不要蓋の無補修化を達成するのに好適な金型、缶切不要蓋、缶切不要蓋の製造方法を提供することにある。また、本件発明の目的は、スコア部の無補修化に好適な缶切不要蓋用ラミネート鋼板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
【0012】
第1発明は、蓋面の一方の面にスコアを有する、ラミネート金属板を用いた缶切不要蓋のスコア形成に使用する上下一対の金型であって、上金型はスコア形成用凸部を有し、該凸部の断面形状は、ラミネート金属板と接する部分は、相対する下金型上面に対する傾きの変化率が0.08以下である曲線又は曲線及び直線より構成され、形成するスコア最大巾は0.80mm以下とすることを特徴とする金型である。
【0013】
第2発明は、第1発明において、上金型のスコア形成用凸部の金属板と接する部分に相対する少なくとも凸部の金属板と接する部分に相対する下金型上面は平坦で蓋面に対して平行であることを特徴とする金型である。
【0014】
第3発明は、第1発明または第2発明において、前記凸部の断面形状は、ラミネート金属板と接する部分は、相対する下金型上面に対する傾きの変化率が0.050以下である曲線又は曲線及び直線より構成されていることを特徴とする金型である。
【0015】
第4発明は、第1発明または第2発明において、前記凸部の断面形状は、ラミネート金属板と接する部分は、相対する下金型上面に対する傾きの変化率が0.01以下である曲線又は曲線及び直線より構成され、形成するスコア最大巾は0.75mm以下とすることを特徴とする金型である。
【0016】
第5発明は、第1発明〜第4発明の金型を用いてラミネート金属板を押圧加工成形してなる缶切不要蓋である。
【0017】
第6発明は、第1発明〜第4発明の金型を用いてラミネート金属板を押圧加工成形してスコアを形成することを特徴とする缶切不要蓋の製造方法である。
【0018】
第7発明は、第5発明の缶切不要蓋または第6発明の缶切不要蓋の製造に用いられるポリエステル樹脂ラミネート鋼板であって、該ポリエステル樹脂層は、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分がテレフタル酸、またはテレフタル酸及びイソフタル酸からなり、ジオール成分がエチレングリコール及び/またはブチレングリコールからなり、かつ、エチレンテレフタレートまたはブチレンテレフタレートからなる繰り返し単位がモル%比率で85%以上である下記(1)〜(5)のうちから選ばれるいずれかの延伸フィルムを熱融着法によりラミネートしてなり、ラミネート樹脂層の面配向係数が0.06以下であることを特徴とする缶切不要蓋用ラミネート鋼板である。
(1)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合体
(2)ポリエチレンテレフタレート
(3)ポリブチレンテレフタレート−ポリエチレンテレフタレート共重合体
(4)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体
(5)ポリブチレンテレフタレート
第8発明は、第5発明の缶切不要蓋または第6発明の缶切不要蓋の製造に用いられるポリエステル樹脂ラミネート鋼板であって、該ポリエステル樹脂層は、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分がテレフタル酸、またはテレフタル酸及びイソフタル酸からなり、ジオール成分がエチレングリコール及び/またはブチレングリコールからなり、かつ、エチレンテレフタレートまたはブチレンテレフタレートからなる繰り返し単位がモル%比率で85%以上である下記(1)〜(5)のうちから選ばれるいずれかの延伸フィルムを熱圧着法によりラミネートしてなることを特徴とする缶切不要蓋用ラミネート鋼板である。
(1)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合体
(2)ポリエチレンテレフタレート
(3)ポリブチレンテレフタレート−ポリエチレンテレフタレート共重合体
(4)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体
(5)ポリブチレンテレフタレート
第9発明は、第5発明の缶切不要蓋または第6発明の缶切不要蓋の製造に用いられるポリエステル樹脂ラミネート鋼板であって、該ポリエステル樹脂層は、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分がテレフタル酸、またはテレフタル酸及びイソフタル酸からなり、ジオール成分がエチレングリコール及び/またはブチレングリコールからなり、かつ、エチレンテレフタレートまたはブチレンテレフタレートからなる繰り返し単位がモル%比率で85%以上である下記(1)〜(5)のうちから選ばれるいずれかの延伸フィルムを押出し法によりラミネートしてなることを特徴とする缶切不要蓋用ラミネート鋼板である。
(1)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合体
(2)ポリエチレンテレフタレート
(3)ポリブチレンテレフタレート−ポリエチレンテレフタレート共重合体
(4)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体
(5)ポリブチレンテレフタレート
【発明の効果】
【0019】
本発明の金型を用いてラミネート鋼板の缶切不要蓋にスコア加工すると、厳しいスコア加工においても樹脂層の破断を防止でき、スコア部の無補修化が可能になる。これによって、安価な缶切不要蓋を製造できるようになる。
【0020】
本発明のラミネート鋼板は、伸び性と強度のバランスが優れる。缶切不要蓋の素材として本発明のラミネート鋼板を用い、本発明の金型を用いてスコア加工することで、スコア部の樹脂層破断を防止する効果が効果的に発現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明が対象とする金型は、缶切不要蓋の一方の面のみにスコアを形成する金型、具体的には缶外面側になる蓋面にスコア(スコア溝)を形成する金型である。係る点から、本発明においては、上金型のみにスコア形成用凸部を有する。上金型で蓋面の一方のみにスコアを形成するのは、下金型に接する側にもスコアが形成される(即ち両面にスコアが形成される)と、金型の消耗が激しくなること、スコア残厚の管理が難しくなること、下金型の形状に応じてラミネート金属板の傾きが変化しないなどの不都合が生じるからである。また、内容物に触れる缶内面側の耐食性が外面側に比べ良好である必要があるが、この意味からも、缶内面側にはスコアを形成せずに、缶外面側だけスコアを形成することが有利であることに基く。
【0022】
発明者らは、従来技術で有望であった特許文献3の曲面(単一曲率)スコア形成用金型について詳細な検討を試みた。即ち、上金型は単一曲率のスコア形成用凸部を有し、下金型は平坦で平滑な形状からなる一対の金型(図1参照)を用いてポリエステル系樹脂ラミネート鋼板の加工性の検討を行った。なお、本明細書では、スコア形成用凸部を有する金型をスコア金型と記載する。上記の例では、上金型がスコア形成用凸部を有するので、発明を実施するための最良の形態の項では上金型をスコア金型とも記載する。
【0023】
まず、加工温度上昇に伴う加工性の劣化について検討を行った。加工温度の上昇に伴って、樹脂層は破断しやすくなる傾向にあったが、スコア内の破断位置を詳細に調べると、破断位置は樹脂層の加工度が最も大きくなるスコア中心部(スコア深さが最も深い部分)近傍ではなく、比較的加工程度の小さいスコア端部で破断する傾向にあった。一般的に、ポリエステル系樹脂は、温度が上昇すると伸び性が上昇し強度が低下する傾向にある。この事から、温度上昇によって樹脂の強度が低下することが破断の要因であると考えられた。
【0024】
更に、スコアの加工程度と樹脂破断の関係について調査を行った。その結果、スコアの曲率半径が小さい範囲ではスコア加工の程度が大きくなると、スコア端部が破断する傾向にあり、曲率半径が大きい範囲では樹脂層が最も薄くなるスコア中心部が破断する傾向にあることが判明した。同じスコア残厚となるようにスコア加工条件を定めた場合、曲率半径が大きいほど加工量が大きくなる。この事から、樹脂層が最薄部で破断するのは、樹脂層の伸び限界で破断したものと考えられた。
【0025】
以上を整理すると、曲面形状のスコア金型によるスコア加工において、樹脂層の破断形態は大別すると2種あり、スコア中央部(樹脂層最薄部)が破断する場合と、スコア端部が破断する場合があった。そして、スコア中央部近傍の破断は伸び限界による破断であると考えられた。また、スコア端部での破断メカニズムは不明であるが、温度上昇によって端部の加工性が悪化することから、樹脂の強度に関連する因子が関わっているものと考えられた。樹脂強度の低下による破断が、スコア端部で起こること、金型の曲率半径が小さいと破断しやすいことから、スコア端部と曲率半径の小さいスコアに共通の因子が作用しているものと考えられる。スコア端部や曲率半径の小さい金型に共通する因子としては、(i)スコア金型の鋼板に接する部分の鋼板面に対する傾きが大きいこと、(ii)スコア金型の鋼板に接する部分の鋼板面に対する傾きの変化率が大きいことが考えられる。
【0026】
ここで、上金型(スコア金型)が単一曲率のスコア形成用凸部を有し、下金型上面が平坦で平滑な形状からなる一対の金型でスコア形成する場合、上金型凸部1の傾斜部の点A(図1において、水平方向位置x。原点は上金型の凸部の最低部。)における接線と加工前の鋼板3面との挟角をθとしたとき、傾斜部の点Aにおける上金型の鋼板面に対する傾きはtanθで定義され、また点Aにおける上金型の鋼板面に対する傾きの変化率は、dtanθ/dxで定義される。下金型上面が平坦で蓋面(ラミネート金属板面)に平行である本金型の例では、点Aにおける上金型の鋼板面に対する傾きは、点Aに相対する下金型上面に対する傾きと同じであり、点Aにおける上金型の鋼板面に対する傾きの変化率は、上金型の点Aに相対する下金型上面に対する傾きの変化率と同じになる。
【0027】
本発明において、上金型の凸部の金属板と接する部分の断面形状を、該部分に相対する下金型上面に対する傾きの変化率で規定した理由について説明する。
【0028】
前述の如く、スコア加工においては、加工直前のラミネート金属板に対する上金型の傾きの変化率が重要となる。そして、加工直前のラミネート金属板は、下金型上面の傾きと略同じであるから、下金型上面に対する傾きの変化率で規定することとした。
【0029】
前記傾きの変化率は、例えば、金型の断面形状をレーザー粗さ測定機で測定する手法(一定ピッチ(x)で高さ(y)の変化を測定)で求めることができる。この場合、dtanθ/dxは測定点の集合から、傾き(1)=(y2−y1)/Δx、傾き(2)=(y3−y2)/Δx、傾きの変化率=(傾き(2)−傾き(1))/Δx(Δxは測定間隔)として求める。この際、測定間隔が小さいほど金型の形状を詳細に把握することができる。本発明に対しては、少なくとも測定間隔は10μm以下にする必要があり、望ましくは1μm程度とすると良い。傾きの変化率は、測定間隔1μmあたりの値である。
【0030】
凸部形状寸法の異なる各種上金型を作製した。下金型として、上面が平坦で平滑な形状からなる金型を準備した(図2の符号12参照)。この上金型と下金型を用いて、前記(i)、(ii)のどちらの因子が支配的に作用しているかを調査した。上金型の鋼板面に対する傾きは、相対する下金型上面に対する傾きと同じであり、上金型の鋼板面に対する傾きの変化率は、上金型に相対する下金型上面に対する傾きの変化率と同じである。以下の説明では、上金型の鋼板面に対する傾きの変化率と記載するが、これは上金型に相対する下金型上面に対する傾きの変化率と同じことである。
【0031】
作製したスコア金型(上金型)は、そのスコア形成用凸部の断面形状が逆三角形状の金型で2斜辺の鋼板に対する傾きがtanθ=0.7(θは鋼板面と斜辺の狭角。)、逆三角形の先端部分が、一定曲率の曲線形状となるスコア金型である(図2の符号11参照)。曲線部と斜辺部はその接点で傾きの急激な変化がないように滑らかに接する、即ち曲線を構成する正円に対して斜辺が外接する関係にある。このような金型の凸部の先端曲率が異なるものを各種用意し実験に供した。これらのスコア金型の特徴は、鋼板面に対する最大傾きはどれも等しいが、先端部において傾きの変化率が異なる点である。もし、先端曲率によらずスコア加工性が同等であれば、金型の鋼板に対する傾きが支配因子であると推定され、先端曲率半径が小さいほど加工性が悪ければ傾きの変化率が支配的であると推定される。
【0032】
調査の結果、スコア金型の鋼板面に対する傾きの最大値は同じでも、先端曲率半径が小さいほど加工性が悪化することが判明した。しかも、破断箇所の観察結果、曲線部で破断していることが判明した。即ち、樹脂の破断は傾きが大きい部分で発生するのではなく、スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率が大きい部分で発生することが突き止められたのである。
【0033】
以上のスコア加工に関する一連の調査及び考察の結果を整理すると下記2点となる。(i)加工量が大きいと樹脂は伸び限界で破断しやすくなる。
(ii)スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率が大きいと樹脂は強度限界で破断しやすくなる。
【0034】
発明者らは、これら新しい知見に基づいてスコア金型を設計すれば、格段のスコア加工性を得ることができる可能性があるとの考えに至り、新たなスコア金型の設計を試みた。
【0035】
まず、加工量に関しては金型による鋼板の排除体積(スコア金型で押しのけられる鋼板の体積)と相関があると考えられ、単純にスコアサイズが小さいほど望ましいと考えられる。
【0036】
スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率に関しては些か状況が複雑となる。まず、スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率がどのような範囲にあれば適切であるかが問題となる。発明者らは、スコアの巾を一定、80℃の加工温度において、様々な形状で鋼板面に対する傾きの変化率が異なるスコア金型を作成し、加工性を比較する検討を行った。様々な形状とは、スコア金型の凸部形状が、単一曲率形状、前記の逆三角形形状、楕円形状、単一曲率形状の中央部に平坦部を設けた形状、逆三角形形状の中央部に平坦部を設けた形状、楕円形状の中央部に平坦部を設けた形状などであった。その結果、スコア金型の形状とは無関係に、スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率で加工性が整理できることが判明した。スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率が0.08を超えるとその部分での加工程度(伸び程度)に関わらず、樹脂破断が発生しやすい傾向にあった。即ち、樹脂の強度限界による破断は、スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率を0.08以下にすることで効果的に抑制できることが判明した。
【0037】
スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率を0.08以下となるような金型を設計する場合、目標の加工程度を設定してやる必要がある。例えば、単一曲率の曲面金型を考えた場合、曲率のみならず加工の程度によってスコア金型の鋼板面に対する傾きの最大変化率が異なるからである。即ち、加工程度が小さい(スコア形成用凸部の押込み深さが浅い)場合は、加工に影響する部分はスコア形成用凸部の先端のみであるが、加工程度が大きい(スコア形成用凸部の押し込み深さが深い)場合は、より広い範囲が加工に影響を及ぼす。単一曲率のスコア金型の場合、スコアの中心から端に遠ざかるほどスコア金型の鋼板面に対する傾きは大きくなり、一定距離以上では急激に大きくなる傾向がある。例えば、単一曲率半径0.2mmrのスコアを用いて板厚0.200mmの鋼板を加工する場合、目標スコア残厚が100μmであればスコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率の最大値は0.039(dtanθ/dx)に止まるが、目標スコア残厚が75μmであれば0.093、50μmであれば0.311となり、単一曲率でもスコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率は目標スコア残厚によって大きく異なることがわかる。
【0038】
本発明が解決しようとしている課題は、従来技術では無補修化が困難であった缶種や加工条件下でも無補修化を達成する事である。従って、目標の加工度及び加工条件は、現在生産されている蓋の内で、最も厳しいレベルに適用可能である必要がある。このような観点から、板厚を0.230mm、スコア残厚を60μm、加工時の温度を25℃及び80℃、樹脂層の厚みを30μmで評価とする事を一つの指標とした。加工時の温度が2種あるのは、加工温度が上昇すると樹脂強度は低下するが、伸び性は上昇する傾向にある為、伸び限界での破断に対しては低温度での加工が厳しく、強度限界での破断は高温度で厳しいからである。実用上はいずれの温度でも良好な加工性が得られなければならない。また、樹脂層の厚みは厚いほど有利であるが、厚いほどコストが高くなる。樹脂層の厚みを30μmとしたのは、無補修化によるコストメリットが効果的にでる範囲に設定する必要があるからである。
【0039】
この厳しい指標に対しても、前述の如く、スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率が0.08以下であれば強度限界による破断を防ぐことが可能である。一方、伸び限界による破断を防ぐには、スコア巾が0.80mm以下であれば問題ないことがわかった。金型の形状によってはスコア巾が0.80mmを超えても伸び限界による破断が生じないものも多数存在したが、金型の鋼板面に対する傾きの変化率が0.08以下である任意のスコア形状を考慮し、スコア幅を0.80mm以下に規定した。また、スコア巾が0.80mm以下であれば蓋のデザイン上の問題もない。
【0040】
本発明のスコア形状はスコア巾を0.80mm、スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率を0.08以下に設定すれば、任意の形状を取ることが可能であるが、具体的には、例えば、単一曲率形状(図3(a)参照)、逆三角形状(図3(b)参照)、楕円形状(図3(c)参照)、単一曲率形状の中央部に平坦部を挿入した形状(図3(e)参照)、逆三角形形状の中央部に平坦部を挿入した形状(図3(f)参照)、楕円形状の中央部に平坦部を挿入した形状(図3(g)参照)などを例示できる。更に形状例の詳細を列挙すると、例えば単一曲率の場合、曲率半径0.28mm〜0.53mmの範囲が本発明の範囲に該当する。更には、単一曲率の中央部に0.020mmの平坦部を挿入した構造ではこの曲率半径は0.28〜0.50mmが本発明の例となる。また、前述したような逆三角形状のタイプのものでは、例えば、先端曲率半径0.10mm、斜辺の傾きを1.5とした形状や先端曲率半径0.32mm、斜辺の傾き0.67のものが例として挙げられる。この例の中央部に0.020mmの平坦部を挿入した形状のものも例として挙げられる。楕円形状では長径0.30mm、短径0.25mmの形状のもの、あるいは、長径0.40mm、短径0.30mmの形状で長径を鋼板面と水平にしたもの等が挙げられるし、その中央部に0.020mmの平坦部を設けた形状例も挙げられる。
【0041】
また、本発明では、更なるコスト低減などを目的としてより厳しい条件(例えば樹脂層の厚みを低減)でスコア形成することにも対応可能である。即ち、前記に対しては、スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率の最大値を0.050以下とすることで対処できる。スコア金型の凸部が単一曲率の例では曲率半径は0.31〜0.53mmとなる。その他の例としては、スコア金型の凸部が逆三角形状でその先端曲率0.25mm、斜辺の傾き傾き2.0のような形状や、凸部が楕円形状では、例えば、長径0.4mm、短径0.27mmとなる形状などが挙げられる。また、更に厳しい条件(例えば、より開缶性を向上させる目的でスコア残厚を薄くする)に対しては、傾きの変化率の最大値を0.01以下とし、スコア巾の最大値を0.75mmとすることで対処できる。スコア金型の凸部が単一曲率の例では曲率半径0.46〜0.48mmという非常に狭い範囲となる。その他の例としては、スコア金型の凸部が逆三角形状でその先端曲率0.30mm、斜辺の傾き0.7のような形状や、凸部が楕円状で前記と同様な斜辺を設けた形状(例えば長径0.30mm、短径0.25mm、斜辺の傾き0.92で長径が鋼板に水平となるようにした形状)などが挙げられる。
【0042】
以上の説明は、下金型上面が平坦であることを前提とした説明であるが、スコア加工の際の樹脂破断を防止する観点から、下金型上面が平坦でない金型であっても、上金型のラミネート金属板に対する傾きの変化率が重要であることがわかった。従って、上金型の鋼板に対する傾きの変化率が本発明で規定する範囲内にすれば、下金型上面は平坦なものに限定されない。例えば、下金型上面の上金型の凸部に相対する部分が凹状であってもよい。この場合、加工中のラミネート金属板はほぼ下金型上面に沿って凹状に変形しているとみなすことができる。そのため、下金型上面を凹状にすると、下金型上面が平坦な場合に比較して、鋼板に対する上金型の傾きの変化率を低減させることが可能になり、スコア加工の際の樹脂破断を防止する作用効果がより優れる。
【0043】
下金型上面が凹状である場合、上金型凸部のラミネート金属板と接する部分の下金型に対する傾きの変化率は、下金型上面が平坦である場合と同様にして求めることができる。すなわち、上金型、下金型の各々の断面形状をレーザー粗さ測定機で測定し、一定ピッチ(x)で、下金型上面を基準として、それに対する上金型の高さ(y)の変化を計算し、前記と同様の手法で求めることができる。
【0044】
ここで、凹状とは、例えば、スコア近傍の曲率半径が3.0mmの単曲率形状である場合などである。また、下金型は、スコアのような鋭利な形状でなければ凸状であってもよい。ただし、傾きの変化率に対しては不利な方向である為、本発明の範囲に入るよう上金型との組み合わせを十分考慮する必要がある。例えば、下金型の曲率半径が5.0mmrであるような
形状が挙げられる。
【0045】
これまでは、外面側(容器外面側となる蓋面)の樹脂層の破断について述べてきた。スコア加工においては上金型が接する蓋外面側の加工が内面側に比較して厳しい傾向にある。しかし、内面側もスコア加工に応じて加工を受ける為、加工程度が大きくなれば破断にいたる。評価に際しては、より厳しい外面側を指標とし、その後、内面側の加工性を確認した。その結果、本発明の範囲において外面側の樹脂層が破断に至らない場合、内面側(容器内面側となる蓋面)の樹脂層の破断が無いこと、さらに耐食性をより良好にできることを確認した。
【0046】
また、第7発明〜第9発明でラミネート鋼板の樹脂種を規定したが、これはこれらの樹脂が本発明のスコア金型を用いたスコア形成において伸び性と強度のバランスが優れるからである。また、樹脂種が本発明と同様であっても延伸などによって樹脂内の配向結晶量が増加すると不適となる。このため、第7発明は、面配向係数を0.06以下と規定しており、これを上回る場合、本発明のスコア加工の範囲であっても伸び限界で破断に到る場合がある。
【0047】
面配向係数を0.06以下にするには、任意の延伸条件のフィルムラミネートに対して、ラミネート温度を高くしたり、ラミネート速度を遅くしたり、フィルムを圧着するラミネートロールの温度を上げたり、ラミネート後のクエンチまでの時間を長くしたりするなどの方法を単独で、あるいは組み合わせて用いると可能である。また、延伸条件を制御して、予め面配向係数が0.06以下となるフィルムを使用しても良い。
【0048】
また、エチレンテレフタレートあるいはブチレンテレフタレートからなる繰り返し単位がモル%比率で樹脂中に85%以上含有されることを規定しているのは残余のエチレンイソフタレートの比率が高くなるためで、この場合、製膜が困難となりフィルムコスト及び製膜コストの増大につながる為である。
【0049】
また、本発明に規定する樹脂層に顔料や滑材、その他一般的に用いられる添加物を添加しても発明の効果を阻害しない限り有効である。あるいは、表面潤滑の為、表層にワックスを塗布したり、ワックス成分を添加したりするのも有効である。
【0050】
本発明では、缶切不要蓋用のラミネート金属板として、ラミネート鋼板を基本的な対象としているが、ラミネート鋼板以外のラミネート金属板、例えばラミネートアルミニウム板においても同様の効果を発現できる。
【実施例1】
【0051】
「ラミネート鋼板の作製」
下地金属板として厚さ0.23mmのT4CA、TFS(金属クロム層:100〜120mg/m2、クロム水和酸化物層:14〜18mg/m2(金属クロム換算)を用いることとした。この原板に対して、熱圧着によるフィルムラミネート法、あるいは押し出し法を用いて本発明規定の樹脂層及び比較樹脂層を形成させた。樹脂層の厚みは20μm及び25μm、30μmのものを用いた。下記の方法で樹脂層の面配向係数を測定した。
「面配向係数の測定」
アッベ屈折計を用い、光源:ナトリウム/D線、中間液:ヨウ化メチレン、温度:25℃の条件で、フィルム面の縦方向の屈折率Nx、フィルム面の横方向の屈折率Ny、フィルムの厚み方向の屈折率Nzを各々測定し、下式により面配向係数Nsを算出した。
面配向係数(Ns)=(Nx+Ny)/2−Nz
作製したラミネート鋼板を表1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
「スコア加工性評価」
作製したラミネート鋼板に表2、表3に示すスコア金型(上金型)を用いてスコア加工を施した。スコア部に対応する下金型は全て平坦な形状とした。残厚は全て60μmとし、加工温度は80℃及び25℃で行った。
【0054】
表2、表3中のタイプ(a)〜(i)の凸部の断面形状は各々図3(a)〜(i)に対応する。(a)は凸部断面が単一曲率(正円)で構成されている。(b)は凸部断面が逆三角形状で、先端が単一曲率(正円)で構成され、斜辺が先端を構成する正円に対して外接するように構成されている。(c)は凸部断面が楕円状の曲線で構成されている。(d)は凸部断面が逆三角形状で、先端が楕円状の曲線で構成され、斜辺が先端を構成する楕円に対して外接するように構成されている。(e)は、(a)の金型を頂部で鉛直方向に分割して左右に広げ、広げた頂部の間に平坦部を設けたものである。傾斜面は単一曲率(元の正円の円弧)で構成され、平坦部は分割した元の正円の円弧に外接している。(f)は、(b)の金型を頂部で鉛直方向に分割して左右に広げ、広げた頂部の間に平坦部を設けたものである。傾斜面の下部は元の正円の円弧で構成され、平坦部は分割した元の正円の円弧に外接している。(g)は、(c)の頂部(最低部)で鉛直方向に分割して左右に広げ、広げた頂部の間に平坦部を設けたものである。傾斜面は元の楕円の弧で構成され、平坦部は分割した元の楕円の弧に外接している。(h)は、(d)の金型を頂部で鉛直方向に分割して左右に広げ、広げた頂部の間に平坦部を設けたものである。傾斜面の下部は元の楕円の弧で構成され、平坦部は分割した元の楕円の弧に外接している。(i)は、凸部断面が楔形(逆三角形状)で、頂部に平坦部が設けられている。
【0055】
加工部に20mmφの小窓を開けたシールを貼り、測定長が20mmとなるようにした。次に、小窓部分を電解液(kcl:5%溶液、温度は常温)に浸し、鋼板と電解液間に6.2Vの電圧をかけた。この時測定される電流値が0.001ma以下の場合は「3」、0.001ma超、0.01ma以下の場合は「2」、0.01ma超、0.1ma以下の場合は「1」、0.1ma超、0.1ma超の場合は「×」と評価した。評価は上金型が接触する外面側、及び内面側の双方について行った。評価は、「1」〜「3」が合格、「×」が不合格(NG)となる。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
スコア加工性を評価した結果を表4、表5に示した。
【0059】
【表4】

【0060】
【表5】

【0061】
(発明例及び比較例の説明)
本発明で規定するラミネート鋼板(発明例A−1〜A−18)を、本発明で規定する金型(発明例C−1〜C−17)を使用してスコア加工した本発明例E−1〜E−68は、いずれも良好なスコア加工性となっている。
【0062】
発明例A−13は樹脂層の厚みが20μmと薄いものであるが、より望ましいスコア加工法である発明例C−3、C−4、C−9、C−11、C−16、C−17を適用することで良好なスコア加工性となっている。
【0063】
比較例F−1は比較例B−1のラミネート鋼板を使用した例であるが、比較例B−1の面配向係数が発明の範囲を超えているので本発明のスコア加工法を適用してもスコア加工性がNGとなっている。
【0064】
比較例F−2、F−3はオレフィン樹脂ラミネート鋼板(比較例B−2、B−3)を適用した例であるが加工性がNGとなっている。オレフィン樹脂は伸び性に優れるが、強度が低いため強度不足により破断したものと考えられた。
【0065】
比較例F−4はポリカーボネートラミネート鋼板(比較例B−4)を適用した例であるが加工性がNGとなっている。ポリカーボネート樹脂は、強度が高いものの伸び性が低く、伸び限界によって破断したものと考えられた。
【0066】
比較例F−5はスコア金型が楔形状の例(比較例D−1)である。この金型のタイプは従来の一般的なスコア加工に適用される金型であるが加工性がNGとなっている。傾きの変化率が大幅に本発明の範囲を越えており、この為、剪断破断となった。
【0067】
比較例F−6は、スコア金型が単一曲率で傾きの変化率が本発明の範囲を超えている例(比較例D−2)であり加工性がNGとなっている。傾きの変化率が大幅に越えており、この為、剪断破断となった。
【0068】
比較例F−7は、スコア金型が単一曲率でスコア巾が本発明の範囲を超えている例(比較例D−3)であり25℃での加工性がNGとなっている。スコア巾が広く加工量が大きい為、伸び限界による破断が生じていた。
【0069】
比較例F−8は、単一曲率のスコア金型の中央に平坦部を設けた形状例(比較例D−4)である。スコア巾が本発明の範囲を超えており、加工性がNGとなっている。スコア巾が広く加工量が大きい為、伸び限界による破断が生じていた。
【0070】
比較例F−9は、逆三角形状のスコアで先端が単一曲率の例(比較例D−5)である。傾きの変化率が本発明の範囲を超えており、加工性がNGとなっている。剪断破断が生じていた。
【0071】
比較例F−10は、逆三角形状のスコア中央部に平坦部を設けた形状となっている例(比較例D−6)である。スコア巾が本発明の範囲を超えており、25℃での加工性がNGとなっている。スコア巾が広く加工量が大きい為、伸び限界による破断が生じていた。
【0072】
比較例F−11は、楕円形状のスコア例(比較例D−7)である。傾きの変化率が本発明の範囲を超えており、加工性がNGとなっている。剪断破断が生じていた。
【0073】
比較例F−12は、楕円形状のスコアの中央に平坦部を設けた形状例(比較例D−8)である。スコア巾が本発明の範囲を超えており、25℃での加工性がNGとなっている。スコア巾が広く加工量が大きい為、伸び限界による破断が生じていた。
【0074】
比較例F−13は、逆三角形状のスコアで先端が楕円形状の例(比較例D−9)である。傾きの変化率が本発明の範囲を超えており、更にスコア巾も本発明の範囲を超えていた為、加工性がNGとなった。
【0075】
比較例F−14は、逆三角形状のスコアで先端が楕円形状の中央に平坦部分を設けた形状例(比較例D−10)である。スコア巾が本発明の範囲を超えており、25℃での加工性がNGとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のスコア金型は、ラミネート鋼板を用いた缶切不要蓋のスコア形成に使用する金型として利用することができる。
本発明の缶切不要蓋の製造方法は、スコア部を無補修化できる缶切不要蓋の製造方法として利用することができる。
本発明の缶切不要蓋は、飲料缶等の食缶用の用途に使用される安価な缶切不要蓋として利用することができる。
本発明のラミネート鋼板は、上記の缶切不要蓋を製造するための素材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】スコア金型の鋼板面に対する傾きの変化率を説明する図である。
【図2】凸部の断面形状が逆三角形状で、逆三角形の先端部分が一定曲率の曲線形状を有するスコア金を説明する図である。
【図3】実施例1で使用した上金型のスコア形成用凸部の形状を説明する図である。
【符号の説明】
【0078】
1、11 上金型(凸部)
2、12 下金型
3、13 ラミネート鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋面の一方の面にスコアを有する、ラミネート金属板を用いた缶切不要蓋のスコア形成に使用する上下一対の金型であって、上金型はスコア形成用凸部を有し、該凸部の断面形状は、ラミネート金属板と接する部分は、相対する下金型上面に対する傾きの変化率が0.08以下である曲線又は曲線及び直線より構成され、形成するスコア最大巾は0.80mm以下とすることを特徴とする金型。
【請求項2】
上金型のスコア形成用凸部の金属板と接する部分に相対する少なくとも凸部の金属板と接する部分に相対する下金型上面は平坦で蓋面に対して平行であることを特徴とする請求項1記載の金型。
【請求項3】
前記凸部の断面形状は、ラミネート金属板と接する部分は、相対する下金型上面に対する傾きの変化率が0.050以下である曲線又は曲線及び直線より構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の金型。
【請求項4】
前記凸部の断面形状は、ラミネート金属板と接する部分は、相対する下金型上面に対する傾きの変化率が0.01以下である曲線又は曲線及び直線より構成され、形成するスコア最大巾は0.75mm以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の金型。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれかの項に記載の金型を用いてラミネート金属板を押圧加工成形してなる缶切不要蓋。
【請求項6】
請求項1〜4のうちのいずれかの項に記載の金型を用いてラミネート金属板を押圧加工成形してスコアを形成することを特徴とする缶切不要蓋の製造方法。
【請求項7】
請求項5記載の缶切不要蓋または請求項6記載の缶切不要蓋の製造に用いられるポリエステル樹脂ラミネート鋼板であって、該ポリエステル樹脂層は、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分がテレフタル酸、またはテレフタル酸及びイソフタル酸からなり、ジオール成分がエチレングリコール及び/またはブチレングリコールからなり、かつ、エチレンテレフタレートまたはブチレンテレフタレートからなる繰り返し単位がモル%比率で85%以上である下記(1)〜(5)のうちから選ばれるいずれかの延伸フィルムを熱融着法によりラミネートしてなり、ラミネート樹脂層の面配向係数が0.06以下であることを特徴とする缶切不要蓋用ラミネート鋼板。
(1)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合体
(2)ポリエチレンテレフタレート
(3)ポリブチレンテレフタレート−ポリエチレンテレフタレート共重合体
(4)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体
(5)ポリブチレンテレフタレート
【請求項8】
請求項5記載の缶切不要蓋または請求項6記載の缶切不要蓋の製造に用いられるポリエステル樹脂ラミネート鋼板であって、該ポリエステル樹脂層は、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分がテレフタル酸、またはテレフタル酸及びイソフタル酸からなり、ジオール成分がエチレングリコール及び/またはブチレングリコールからなり、かつ、エチレンテレフタレートまたはブチレンテレフタレートからなる繰り返し単位がモル%比率で85%以上である下記(1)〜(5)のうちから選ばれるいずれかの延伸フィルムを熱圧着法によりラミネートしてなることを特徴とする缶切不要蓋用ラミネート鋼板。
(1)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合体
(2)ポリエチレンテレフタレート
(3)ポリブチレンテレフタレート−ポリエチレンテレフタレート共重合体
(4)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体
(5)ポリブチレンテレフタレート
【請求項9】
請求項5記載の缶切不要蓋または請求項6記載の缶切不要蓋の製造に用いられるポリエステル樹脂ラミネート鋼板であって、該ポリエステル樹脂層は、ジカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られ、ジカルボン酸成分がテレフタル酸、またはテレフタル酸及びイソフタル酸からなり、ジオール成分がエチレングリコール及び/またはブチレングリコールからなり、かつ、エチレンテレフタレートまたはブチレンテレフタレートからなる繰り返し単位がモル%比率で85%以上である下記(1)〜(5)のうちから選ばれるいずれかの延伸フィルムを押出し法によりラミネートしてなることを特徴とする缶切不要蓋用ラミネート鋼板。
(1)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合体
(2)ポリエチレンテレフタレート
(3)ポリブチレンテレフタレート−ポリエチレンテレフタレート共重合体
(4)ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体
(5)ポリブチレンテレフタレート

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−88209(P2006−88209A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279241(P2004−279241)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】