説明

金型支持装置

【課題】天井面板の両側に高さ寸法の大きな側面板を備えたワークの折曲げ加工を行うときに、前記側面板とダイホルダとの干渉を生じることのない金型支持装置を提供する。
【解決手段】プレスブレーキにおける下部テーブル3上に着脱可能なダイホルダ9の左右方向の寸法を、前記下部テーブル3の左右方向の寸法よりも小さく設け、このダイホルダ9上に着脱可能に備えたダイ13の左右方向の寸法を、前記ダイホルダ9の左右方向の寸法と等しく、又は前記ダイホルダ9の左右方向の寸法よりも長く設けてあり、前記ダイホルダ9は左右方向に複数に分割してある。また、前記ダイ13は左右方向に複数に分割してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキにおける下部テーブル上に、下金型としてのダイを支持するための金型支持装置に係り、さらに詳細には、板材の折曲げ加工を行うときに、水平な天井面板の両側部に、高さ寸法の大きな側面板を備えた構成であっても、前記天井面板をV字形状に容易に折曲げることのできる金型支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレスブレーキによって板状のワークの折曲げ加工を行って、例えば箱状体を製作するようなとき、例えば図6に示すように、水平な天井面板TPの左右両側部に高さ寸法の大きな側面板SPを備えた構成において、天井面板TPをV字形状に折曲げるとき、前記天井面板TPの折曲げ線Lの位置をダイでもって支持する必要がある。しかし、従来のダイの高さ寸法は、前記側面板SPの高さ寸法Hより小さいので、上記高さ寸法Hよりも高さ寸法の大きな格別なダイを製作する必要がある。この場合、上記格別なダイは、前記側面板SPの間隔寸法Wに対応して製作する必要がある。
【0003】
すなわち、従来は、通常使用しているダイの高さ寸法よりも、折曲げ加工を行なおうとするワークに備えられている側面板の高さ寸法が大きい場合には、高さ寸法の大きな格別なダイを製作する必要があった。そこで、高さ寸法の異なる複数のダイを予め準備しておくことも可能であるが、この場合には無駄が多いという問題がある。
【0004】
なお、本発明に関係あると思われる先行技術文献としては特許文献1,2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−219517号公報
【特許文献2】特開2008−194714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の金型支持装置の構成は、プレスブレーキにおける下部テーブルの上部に、左右方向に長いベースを備え、このベース上に着脱可能に備えた、左右方向に長いダイホルダ上に、標準金型よりも高さ寸法の大きな分割金型(ダイ)を装着する構成である。すなわち、特許文献1に記載の構成においても、格別なダイを製作する必要があるという問題を有するものである。
【0007】
特許文献2に記載の金型支持装置の構成は、プレスブレーキにおける下部テーブル上に、左右方向に長いダイホルダ(特許文献2においては分割式同芯2Vダイ用ダイレール3と称している)とダイとの間に、ダイよりも左右方向に長い高ハイト分割ダイレールを備えた構成である。したがって、特許文献2に記載の構成においては、高ハイト分割ダイレールという余分な構成部材の保守、管理が厄介であると共に、前述したように、天井板TPの両側に高さ寸法の大きな側面板SPを備えた構成のワークにおける前記天井板TPをV字形状に折曲げ加工を行うとき、前記側面板SPが高ハイト分割ダイレールと干渉し、折曲げ加工を行うことができない、という問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、プレスブレーキにおける下部テーブル上に着脱可能なダイホルダの左右方向の寸法を、前記下部テーブルの左右方向の寸法よりも小さく設け、このダイホルダ上に着脱可能に備えたダイの左右方向の寸法を、前記ダイホルダの左右方向の寸法と等しく、又は前記ダイホルダの左右方向の寸法よりも長く設けてあることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記金型支持装置において、前記ダイホルダは左右方向に複数に分割してあることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記金型支持装置において、前記ダイは左右方向に複数に分割してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ダイの左右方向の寸法が、ダイを支持するダイホルダの左右方向の長さ寸法と等しい、又はダイホルダの左右方向の寸法よりも長いので、天井面板の左右両側部に高さ寸法の大きな側面板SPを備えた構成のワークにおける前記天井面板をV字形状に折曲げ加工するとき、上記側面板SPをダイホルダの側方に位置せしめることができる。すなわち、側面板SPの高さ寸法が、ダイの高さ寸法より大きい場合であっても、ダイの高さ寸法とダイホルダの高さ寸法との和より小さい場合には、前記側面板SPがダイホルダと干渉するようなことがないものである。
【0012】
したがって、従来の一般的な標準金型であるダイを使用して、当該ダイの高さ寸法よりも高さ寸法が大きな側面板を両側に備えた天井面板の折曲げ加工を容易に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る金型支持装置の側断面説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る金型支持装置の正面説明図である。
【図3】第2実施形態の説明図である。
【図4】第3実施形態の説明図である。
【図5】第4実施形態の説明図である。
【図6】折曲げ対象とするワークの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1,2を参照するに、本発明の実施形態に係る金型支持装置1は、プレスブレーキ(図示省略)における下部テーブル3上に着脱可能に装着してある。より詳細には、前記金型支持装置1は、前記下部テーブル3の上部に備えた左右方向(図1において紙面に垂直な方向、図2において左右方向)に長いベース5上に着脱自在なホルダベース7を備えている。このホルダベース7の左右方向の長さは、前記ベース5の左右方向の長さよりも短く形成してある。
【0015】
上記ホルダベース7には、ダイホルダ9がボルトなどのごとき固定具11を介して一体的に取付けてある。このダイホルダ9の左右方向の寸法は前記ホルダベース7の左右方向の寸法とほぼ等しく設けてある。そして、このホルダベース7の上部には、パンチ(図示省略)と協働してワークWPの折曲げ加工を行うダイ13を着脱可能なダイ装着部15が備えられている。このダイ装着部15には、ダイ13を支持する水平な支持面17が形成してあると共に、ダイ13を挟持する挟持面19を垂直に備えた突出部21が上方向に突設してある。そして、前記ダイホルダ9には、前記ダイ13を前記挟持面19へ押圧し固定するクランプ部材23がボルト等のごとき締付具25を介して着脱可能に取付けてある。
【0016】
前記ダイ13の左右方向の長さ寸法は、前記ワークWPにおける左右両側の側面板SPにおける内側面の間隔寸法に等しい寸法であって、前記ダイホルダ9の左右方向の寸法と等しく、又はダイホルダ9の左右方向の長さ寸法よりも僅かに長く設けてある。
【0017】
したがって、ワークWPに備えた側面板SPの高さ寸法Hが、標準金型としての前記ダイ13の高さ寸法よりも大きい場合であっても、図1,2に示すように、上記側面板SPを、ダイホルダ9と干渉することなくワークWPをダイ13上に載置位置決めすることができる。よって、パンチと協働してワークWPの天井面板TPをV字形状に折曲げ加工することができるものである。
【0018】
前記説明より理解されるように、ダイホルダ9の左右方向の長さ寸法を、ダイ13の左右方向の長さ寸法と等しく、又は僅かに短く設けてあるので、天井面板TPの両側に、高さ寸法が標準のダイ13の高さ寸法よりも大きな側面板SPを備えた構成であっても、上記ダイホルダ9と側面板SPとを干渉することなく、ワークWPの天井面板TPの折曲げ加工を行い得るものである。
【0019】
ところで、前記説明においては、ダイホルダ9とダイ13との左右方向の寸法がほぼ等しい場合について説明したが、図3に示すように、左右方向に長いダイ13を、左右方向に適宜間隔(互に接触している場合も含む)に配置した複数の金型支持装置1によって支持することも可能である。なお、この場合、金型支持装置1におけるホルダベース7はそれぞれ別個であっても、左右方向に長い一体物であってもよいものである。すなわち、ホルダベース7が左右方向に長い場合には、各ダイホルダ9に共用されるものであって、左右方向に複数に分割してあるダイホルダ9を、左右方向に長いホルダベース7に対して左右方向に位置調節可能に取付けるものである。
【0020】
上記構成においては、複数に分割した左右両側のダイホルダ9の間隔、すなわち左側のダイホルダ9の左側面と右側のダイホルダ9の右側面との間の左右方向の寸法(ダイホルダ9全体の左右方向の寸法)とダイ13の左右方向の寸法を等しく、又はダイホルダ9全体の左右方向の寸法(ダイホルダの左右方向の寸法)がダイ13の左右方向の寸法よりも僅かに短くなるように、複数のダイホルダ9を配置するものである。
【0021】
また、図4に示すように、1つの金型支持装置1によって複数の分割ダイ13A,13B,13Cを支持することも可能である。この場合、複数の分割ダイ13A,13B,13Cを配置した左右方向の長さ寸法を、金型支持装置1におけるダイホルダ9の左右方向の寸法と等しく、又は僅かに長く配置するものである。なお、前記分割ダイ13A,13B,13Cは左右方向を互に接触して配置することが望ましいものである。しかし、既に知られているように、折曲げ対象とするワークの板厚よりも狭い間隔で僅かに離した状態に配置することも可能である。
【0022】
また、図5に概略的に示すように、左右方向の長さ寸法が同一又は異なる複数のダイホルダ9A,9B,9Cをプレスブレーキの下部テーブル上に左右方向に適宜間隔に配置し、この複数のダイホルダ9A,9B,9Cによって左右方向の長さ寸法が同一又は異なる複数の分割ダイ13D,13E,13Fを支持する構成とすることも可能である。
【0023】
上記構成とすることにより、複数のダイホルダを適宜に組合せることにより、ダイホルダの左右方向の長さ寸法を任意の寸法とすることができる。また、複数の分割ダイを適宜に組合せることにより、ダイの左右方向の寸法を任意寸法とすることができる。したがって、ワークにおける天井面板の左右両側に備えた両側面板の間隔寸法が種々の場合であっても容易に対応することができる。
【0024】
既に理解されるように、プレスブレーキにおいてダイを支持するダイホルダを複数に分割した分割ダイホルダの構成とし、この複数の分割ダイホルダでもって複数の分割ダイを支持することにより、前述したごとく、標準ダイの高さ寸法よりも大きな高さ寸法の側面板を天井面板の両側に備えたワークに容易に対応することができるものである。この場合、複数の分割ダイホルダ9A,9B,9C,‥‥はプレスブレーキにおける下部テーブル上に常に装着しておくことができ、分割ダイホルダ9A,9B,9C,‥‥の組合せの必要性によって左右方向に位置調節すればよいものである。換言すれば、複数の分割ダイホルダ9A,9B,9C,‥‥の格別の格納棚等を必要とするものではなく、その保守、管理が容易なものである。
【符号の説明】
【0025】
1 金型装置
3 下部テーブル
7 ホルダベース
9 ダイホルダ
13 ダイ
15 ダイ装着部
17 支持面
19 挟持面
21 突出部
23 クランプ部材
25 締付具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスブレーキにおける下部テーブル上に着脱可能なダイホルダの左右方向の寸法を、前記下部テーブルの左右方向の寸法よりも小さく設け、このダイホルダ上に着脱可能に備えたダイの左右方向の寸法を、前記ダイホルダの左右方向の寸法と等しく、又は前記ダイホルダの左右方向の寸法よりも長く設けてあることを特徴とする金型支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金型支持装置において、前記ダイホルダは左右方向に複数に分割してあることを特徴とする金型支持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の金型支持装置において、前記ダイは左右方向に複数に分割してあることを特徴とする金型支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−131221(P2011−131221A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290608(P2009−290608)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】