説明

金属−炭素複合体

金属及び炭素を含む金属−炭素複合体であって、前記金属及び炭素は単相材料を形成し、前記炭素は前記単相材料が溶融温度に加熱された際に金属から相分離せず、前記金属は金、銀、錫、鉛及び亜鉛の一群から選択されることを特徴とする金属−炭素複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年2月4日提出の米国暫定出願第61/301382号、2010年2月4日提出の米国暫定出願第61/301398号、2010年2月4日提出の米国暫定出願第61/301412号、2010年2月4日提出の米国暫定出願第61/301432号及び2010年2月4日提出の米国暫定出願第61/301446号の利益を請求する。
【0002】
本発明は、単相材料中で形成される金属及び炭素を含む化合物及び/又は複合体に関するものであり、特に金属−炭素複合体が溶融又は再溶融された際に炭素が金属から相分離しない金−炭素、銀−炭素、錫−炭素、亜鉛−炭素及び鉛−炭素複合体に関するものである。
【背景技術】
【0003】
金は、大気及び水中での酸化に高い耐性を有し、さらに、腐食剤にも比較的耐性を有している。銀及び銅の金合金のような金合金も所望の特性を備えている。それでもなお、当業者は金の特性の向上を探求し続けている。
【0004】
銀は、審美的、化学的及び物理的特性の観点から高く評価されている。例えば、銀は電気的及び熱的な伝導性が高い。しかしながら、銀は、高いコストや大気状態に曝された場合に変色する特性により、工業的用途での使用に制限がある。したがって、当業者は銀の物理的及び化学的特性の改善を試み続けている。
【0005】
錫は、広範囲な様々な用途に用いられる可鍛の耐食性金属である。それでもなお、当業者は錫の物理的及び化学的特性の改善を試み続けている。
【0006】
亜鉛は、広範囲な様々な用途に用いられる脆弱な反応金属である。それでもなお、当業者は亜鉛の物理的及び化学的特性の改善を試み続けている。
【0007】
鉛は、広範囲な様々な用途に用いられる可鍛の耐食性反応金属である。それでもなお、当業者は鉛の物理的及び化学的特性の改善を試み続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属−炭素複合体の一態様においては、金及び炭素、銀及び炭素、鉛及び炭素、亜鉛及び炭素、又は、錫及び炭素を含んでもよく、前記金属及び炭素は単相材料を形成し、前記炭素は前記単相材料が溶融温度に加熱された際に金属から相分離しない。
【0009】
本発明の金属−炭素複合体の他の態様においては、本質的に金属及び炭素からなってもよい。前記金属及び炭素は単相材料を形成し、前記炭素は前記単相材料が溶融温度に加熱された際に金属から相分離しない。前記金属−炭素複合体は金及び炭素、銀及び炭素、鉛及び炭素、亜鉛及び炭素、又は、錫及び炭素であってもよい。
【0010】
本発明の金−炭素複合体の他の態様は、以下の記載及び添付の請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】湾曲によって破断された実施例Ag−3の銀−炭素複合体の破断面の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
炭素が取り込まれた金属系化合物及び/又は複合体を開示する。この化合物又は複合体は単相材料を形成し、材料が溶融された際に炭素が金属から相分離しない金属−炭素材料である。金属は、金、銀、錫、鉛又は亜鉛であってもよい。炭素は、炭素が金属中に取り込まれ、単相金属−炭素材料を形成するように、金属を溶融し、溶融した金属中に炭素を混合し、混合しながら溶融混合物に十分なアンペア数の電流を負荷することによって、これらの金属中に取り込まれる。溶融金属中に炭素を混合しながら電流を負荷することが重要である。電流はDC電流であることが好ましいが、これに限定される必要はない。電流は、周期的又は非周期的な増加量で断続的に負荷されてもよい。例えば、電流は、1秒毎に1パルス、2秒毎に1パルス、3秒毎に1パルス、4秒ごとに1パルス、5秒ごとに1パルス、6秒ごとに1パルス、7秒ごとに1パルス、8秒ごとに1パルス、9秒ごとに1パルス、10秒ごとに1パルス、及び、これらの組み合わせや改良で、任意に負荷されてもよい。電流の断続的な負荷は、装置の寿命を保つために有利であり、エネルギー消費コストを低減することができる。
【0013】
電流は、アーク溶接機を用いて提供されてもよい。アーク溶接機は、カーボン電極のような金属中に溶融しない電極を備えるべきである。この方法の実施において、電流の負荷前に、溶融金属を収納する容器を電気的にアースに接続してもよい。また、陽極及び陰極の電極は、概ね互いに約2〜7インチ以内に配置され、電流密度を向上させ、その結果、金属及び炭素のの結合比率を増加させることができる。
【0014】
ここで用いられる用語「相」は、化学的組成及び物理的状態が同一であり、裸眼で又は基本的な顕微鏡(例えば多くても一万倍の倍率)を用いて識別可能な物質の異なった状態を意味する。したがって、裸眼では単相に見えるが、ナノスケールで観察すると異なる2相に見られる材料は、2相として解釈すべきではない。
【0015】
ここで用いられる用語「単相」は、材料が単一の相になるように材料を構成する成分が互いに結合することを意味する。
【0016】
本発明の金属−炭素材料の明確な化学的構造は特定の理論に限定されることなく公知となっていないが、混合及び電気エネルギーの負荷の工程が金属と炭素との間の化学結合を形成することにより、公知の金属−炭素複合体及び金属と炭素との溶液と比較して本発明の金属−炭素複合体をユニークにしていると一般に考えられている。理論による結合なしに、本発明の金属−炭素材料における金属に炭素が共有結合的に結合すると考えられる。理論による結合なしに、結合が大概二重又は三重結合であると考えられるが、結合は一重、二重及び三重の共有結合又はこれらの組み合わせでもよい。したがって、金属と炭素との間に形成される共有結合は壊れない、すなわち、単に単相金属−炭素材料の溶融又は上記のような「再溶融」しても炭素が金属から離れない。さらに、特定の理論に限定されることなく、本発明の金属−炭素材料はナノ複合材料であり、本願の実施例により立証しているように、本発明の金属−炭素複合体を形成するために負荷される電気エネルギー量(例えば、電流)は吸熱化学反応を開始する。
【0017】
本発明の金属−炭素材料は、溶融温度(すなわち、金属−炭素材料が溶融する温度又は非固体になる温度に又はそれ以上)に材料を加熱することにより再溶融された場合の形成後に、相分離しない。このように、金属−炭素材料は単相複合体である。ここに開示された5つの金属−炭素材料の安定複合体のそれぞれは、続く再溶融によっても相分離しない。さらに、金属−炭素材料は、マグネトロンスパッタリング試験によって立証されるように、真空環境下で同一化学的組成が完全に維持される。様々な金属−炭素材料の試料はスパッタリングされ、スパッタリングは基材上に薄層を析出し、スパッタリングされた大量の材料の電気的抵抗率を維持する。金属及び炭素が互いに結合しない場合には、電気的技術原理及び物理学から、電気的抵抗率が概ね2桁高くなるであろうことが期待されるであろう。しかしながら、これは生じなかった。
【0018】
本発明の金属−炭素化合物における炭素は、本発明の金属−炭素複合体を製造し得るいずれの炭素材料から得てもよい。非限定的な例示には、活性炭素、機能性又は相溶化炭素(金属及びプラスチック工業においてよく知られている)のような高表面積炭素が含まれる。活性炭素の適切な非限定例示は、ペンシルバニア州ピッツバーグのカルゴンカーボン社製の商品名WPH(登録商標)−Mとして市販されている粉末活性炭素である。機能性炭素は、ここに開示されているように、炭素が反応する金属に対する炭素の溶解度又は他の特性を向上させるために、他の金属又は基材を含むものであってもよい。一態様においては、炭素は、公知の技術を用いて、ニッケル、銅、アルミニウム、鉄又はシリコンと機能化させてもよい。
【0019】
一実施形態においては、金属−炭素化合物における金属は金である。金は、本発明の金属−炭素化合物を製造し得るいずれの金又は金合金であってもよい。得られる金−炭素化合物の意図された用途によって金の選択が要求されることを当業者は認識するであろう。一実施形態においては、金は0.9999金である。
【0020】
他の実施形態においては、金属−炭素化合物における金属は銀である。銀は、本発明の銀−炭素化合物を製造し得るいずれの銀又は銀合金であってもよい。得られる銀−炭素化合物の意図された用途によって銀の選択が要求されることを当業者は認識するであろう。一実施形態においては、銀は0.9995銀である。一実施形態においては、銀は純銀である。
【0021】
他の実施形態においては、金属−炭素化合物における金属は錫である。錫は、本発明の錫−炭素化合物を製造し得るいずれの錫又は錫合金であってもよい。得られる錫−炭素化合物の意図された用途によって錫の選択が要求されることを当業者は認識するであろう。一実施形態においては、錫は0.999錫である。一実施形態においては、錫はブロンズ、ハンダ、しろめのような合金である。
【0022】
他の実施形態においては、金属−炭素化合物における金属は鉛である。鉛は、本発明の鉛−炭素化合物を製造し得るいずれの鉛又は鉛合金であってもよい。得られる鉛−炭素化合物の意図された用途によって鉛の選択が要求されることを当業者は認識するであろう。一実施形態においては、鉛は0.999鉛である。一実施形態においては、鉛は、両者とも鉛を含むハンダ、しろめのような合金である。
【0023】
他の実施形態においては、金属−炭素化合物における金属は亜鉛である。亜鉛は、本発明の亜鉛−炭素化合物を製造し得るいずれの亜鉛又は亜鉛合金であってもよい。得られる亜鉛−炭素化合物の意図された用途によって亜鉛の選択が要求されることを当業者は認識するであろう。一実施形態においては、亜鉛は0.999亜鉛である。一実施形態においては、亜鉛は、真鍮のような合金である。
【0024】
他の態様においては、金属及び/又は金属合金に含まれる他の不純物又は他の合金成分の存在により、単相金属−炭素材料は複合体に含まれてもよく、複合体とみなしてもよい。
【0025】
ここに開示された金属−炭素複合体は、一種は金属である少なくとも2成分の材料を含む金属マトリクス複合体に類似する金属−炭素マトリクス複合体を形成するために用いてもよい。金属−炭素マトリクス複合体に含まれた他の材料は、セラミック、ガラス、カーボンフレーク、ファイバー、マット又は他の形態に限定されないような異なる金属又は他の材料であってもよい。金属−炭素マトリクス複合体は、金属マトリクス複合体の技術に類する公知で適当な技術を用いて製造又は形成してもよい。
【0026】
一態様においては、本発明の金属−炭素化合物又は複合体は、少なくとも約0.01重量%の炭素を含んでもよい。他の態様においては、本発明の金属−炭素化合物又は複合体は、少なくとも約0.1重量%の炭素を含んでもよい。他の態様においては、本発明の金属−炭素化合物又は複合体は、少なくとも約1重量%の炭素を含んでもよい。他の態様においては、本発明の金属−炭素化合物又は複合体は、少なくとも約5重量%の炭素を含んでもよい。他の態様においては、本発明の金属−炭素化合物又は複合体は、少なくとも約10重量%の炭素を含んでもよい。さらなる他の態様においては、本発明の金属−炭素化合物又は複合体は、少なくとも約20重量%の炭素を含んでもよい。
【0027】
他の態様においては、本発明の金属−炭素化合物又は複合体は、最大1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%又は40重量%の炭素を含んでもよい。他の実施形態においては、本発明の金属−炭素化合物又は複合体は、特異な特性を提供するために最適化された炭素の最大重量%を有してもよい。
【0028】
化合物又は複合体に含まれる炭素の重量%は、熱伝導度、延性、電気伝導度、耐食性、酸化、成形性、強度性能、及び/又は他の物理的又は化学的特性を変更することができる。銀−炭素化合物又は複合体においては、炭素含有量の増加が材料の延性の促進を決定する。しかしながら、驚いたことに、亜鉛−炭素化合物又は複合体は、炭素含有量の増加に伴って延性が減少する。したがって、金属−炭素化合物又は複合体の物理的又は化学的特性の最適化は、選択された金属にわたって均一ではなく、注意深い研究及び分析が求められる。
【0029】
金属−炭素複合体の形成は、金属とは異なる少なくともひとつの顕著な特性を備えた材料を生じさせてもよい。例えば、銀−炭素複合体及び銅−炭素複合体は銀及び銅の抗菌特性を有していなくともよく、鉛−炭素複合体は鉛の毒性を有していなくともよい。
【0030】
一実施形態においては、炭素は、複合体の約0.01〜40重量%で金属−炭素材料に含まれる。他の実施形態においては、炭素は、複合体の約1〜70重量%で金属−炭素材料に含まれる。
【0031】
したがって、本発明の金属−炭素複合体は、単相材料が冷却及び続く再溶融された際に炭素材料由来の炭素が金属から相分離せず、単相材料を形成するために選択された金属とある炭素材料との組み合わせにより形成されてもよい。金属−炭素複合体は、多くの従来の金属又は金属合金及び/又はプラスチックへの置換のような様々な用途並びに以下に開発された技術及び用途に用いられる。
【実施例】
【0032】

実施例 金−1
体積65inの(電気的にアースに接続された)グラファイトるつぼをKerr製の誘導電気炉内に配置した。るつぼに純度99.99%プラスの金を151g入れた。金を華氏2000度に加熱した。
【0033】
溶融された金に回転ミキサーの攪拌端を挿入し、回転ミキサーを作動させて渦を形成させた。攪拌しつつ、注文製の供給ユニットを用いて粉末活性炭素7.5gを溶融金内に導入した。粉末活性炭素はペンシルバニア州ピッツバーグのカルゴンカーボン社製の商品名WPH(登録商標)−Mを用いた。
【0034】
アーク溶接機に備えられた炭素電極をるつぼ内に配置した。アーク溶接機はオハイオ州クリーブランドのリンカーンエレクトリック社製のPro−Mig135アーク溶接機を用いた。溶融金と炭素との混合物に電流を供給するために、粉末活性炭素を溶融金に添加した直後、及び、溶融金に炭素を混合し続けながら、アーク溶接機を作動させた(設定:D)。グラファイト電極は、溶融のために断続的に負荷される電流を供給するために、アーク溶接機及び電源回路に適切なように溶接ロッドに取り付けられた。吸熱反応を生じさせて材料の温度を華氏1700度まで急速に低下させ、材料を固体化した。
【0035】
その後、材料を華氏2048度に再加熱し、粉末活性炭素7.5gを追加し、電流を負荷し、華氏1948度に温度を下げた。そして、材料を華氏2048度に再加熱し、粉末活性炭素7.5gを追加し、電流を負荷し、華氏1957度に温度を下げた。さらに、材料を華氏2048度に再加熱し、粉末活性炭素7.5gを追加し、電流を負荷し、華氏1981度に温度を下げた。次いで、材料を華氏2048度に再加熱し、粉末活性炭素7.5gを追加し、電流を負荷し、華氏1970度に温度を下げた。
【0036】
冷却後、金−炭素複合体に裸眼で単相の存在を観測した。なお、材料は急速に冷却された。次いで、冷却された金−炭素複合体を華氏2048度に再加熱したが、相分離は見られなかった。
【0037】
さらに、金−炭素複合体は、熱伝導度及び薄膜に圧延された際の破壊靱性が向上することが試験により示された。
【0038】

実施例 銀−1
体積65inの(電気的にアースに接続された)グラファイトるつぼをKerr製の誘導電気炉内に配置した。るつぼに純度99.99%プラスの銀を15g入れた。銀を華氏1860度に加熱した。
【0039】
溶融された銀に回転ミキサーの攪拌端を挿入し、回転ミキサーを作動させて渦を形成させた。攪拌しつつ、注文製の供給ユニットを用いて粉末活性炭素(凝集なし)30gを溶融銀内に導入した。粉末活性炭素はペンシルバニア州ピッツバーグのカルゴンカーボン社製の商品名WPH(登録商標)−Mを用いた。
【0040】
アーク溶接機に備えられた炭素電極をるつぼ内に配置した。アーク溶接機はオハイオ州クリーブランドのリンカーンエレクトリック社製のPro−Mig135アーク溶接機を用いた。溶融銀と炭素との混合物に電流を供給するために、粉末活性炭素を溶融銀に添加した直後、及び、溶融銀に炭素を混合し続けながら、アーク溶接機を作動させた(設定:A−1)。グラファイト電極は、溶融のために断続的に負荷される電流を供給するために、アーク溶接機及び電源回路に適切なように溶接ロッドに取り付けられた。次いで、冷却のため保持容器内に溶融材料を流し込んだ。
【0041】
冷却後、銀−炭素複合体に裸眼で単相の存在を観測した。なお、材料は急速に冷却された。次いで、冷却された銀−炭素複合体をるつぼ内で華氏2048度に再加熱したが、相分離は見られなかった。
【0042】
さらに、銀−炭素複合体は、硫化水素の存在下でさえ変色に耐性を有し、熱伝導度及び薄膜に圧延された際の破壊靱性が向上することが試験により示された。粒子配向及び粒子サイズの著しい減少も観測された。
【0043】
実施例 銀−2
実施例銀−1に記載された実験装置と同じものを用いて、純度99.99%プラスの銀137gを華氏2000度に加熱し、粉末活性炭素7.5gを追加した。電流負荷後、吸熱反応を生じさせて材料の温度を華氏1670度まで急速に低下させた。材料を華氏2000度に再加熱し、粉末活性炭素(7.5g)を追加し、攪拌しつつ材料に再度電流を負荷した。
【0044】
冷却後、銀−炭素複合体を151g秤量し、裸眼で単相の存在を観測した。なお、材料は急速に冷却された。次いで、冷却された銀−炭素複合体を華氏2048度に再加熱したが、相分離は見られなかった。
【0045】
さらに、得られた銀−炭素複合体から形成された棒状部材は、破壊靱性が著しく向上され、繰り返し曲げた後でも破壊耐性を示した。
【0046】
実施例 銀−3
実施例銀−1に記載された実験装置と同じものを用いて、純度99.99%プラスの銀110gを華氏1880度に再加熱し、粉末活性炭素を適量追加し、混合物に電流を負荷した。材料の温度を華氏1700度まで急速に低下させた。材料を華氏1920度に再加熱し、粉末活性炭素を適量追加し、材料に再度電流を負荷した。
【0047】
得られた材料を鋳型に注ぎ、一晩炉内に放置した。翌日、冷却された銀−炭素複合体を鋳型から取り出し、破壊されるまで折り曲げた。図1に示されたような折り曲げ構造は異常な配向である。
【0048】

実施例 錫−1
体積65inの(電気的にアースに接続された)グラファイトるつぼをKerr製の誘導電気炉内に配置した。るつぼに純度99.9%の錫を90g入れた。錫を華氏550度に加熱した。
【0049】
溶融された錫に回転ミキサーの攪拌端を挿入し、回転ミキサーを作動させて渦を形成させた。攪拌しつつ、注文製の供給ユニットを用いて粉末活性炭素を適量溶融錫内に導入した。粉末活性炭素はペンシルバニア州ピッツバーグのカルゴンカーボン社製の商品名WPH(登録商標)−Mを用いた。
【0050】
アーク溶接機に備えられた炭素電極をるつぼ内に配置した。アーク溶接機はオハイオ州クリーブランドのリンカーンエレクトリック社製のPro−Mig135アーク溶接機を用いた。溶融錫と炭素との混合物に電流を供給するために、粉末活性炭素を溶融錫に添加した直後、及び、溶融錫に炭素を混合し続けながら、アーク溶接機を作動させた(設定:A−1)。グラファイト電極は、溶融のために断続的に負荷される電流を供給するために、アーク溶接機及び電源回路に適切なように溶接ロッドに取り付けられた。僅かな温度上昇が観測され、錫−炭素複合体は粘性ゲルとして得られた。
【0051】
冷却後、錫−炭素複合体に裸眼で単相の存在を観測した。なお、材料は急速に冷却された。次いで、冷却された錫−炭素複合体を華氏1000度に再加熱したが、相分離は見られなかった。
【0052】
さらに、錫−炭素複合体は溶融温度未満であるが錫金属よりもパテ状で得られた。得られた錫−炭素材料は灰色から金色に変色した。錫−炭素複合体では、粒径が縮小し、熱伝導度が増大し、破壊靱性が向上することが試験により示された。
【0053】
実施例 錫−2
実施例錫−1に記載された実験装置と同じものを用いて、純度99.9%の錫238gを華氏604度に加熱し、粉末活性炭素を適量追加した。電流負荷(設定:D)後、材料をゲル化し、材料の温度を僅かに上昇させた。材料を華氏700度に再加熱し、粉末活性炭素を追加し、攪拌しつつ材料に再度電流を負荷した。次いで、材料を華氏800度に再加熱し、粉末活性炭素を追加し、攪拌しつつ材料に再度電流を負荷した。
【0054】
冷却後、錫−炭素複合体を評価したところ、実施例錫−1において記載された特性と同じ特性を有していた。なお、材料は急速に冷却された。
【0055】
亜鉛
実施例 亜鉛−1
体積65inの(電気的にアースに接続された)グラファイトるつぼをKerr製の誘導電気炉内に配置した。るつぼに純度99.9%の亜鉛を213g入れた。亜鉛を華氏893度に加熱した。
【0056】
溶融された亜鉛に回転ミキサーの攪拌端を挿入し、回転ミキサーを作動させて渦を形成させた。攪拌しつつ、注文製の供給ユニットを用いて粉末活性炭素を適量溶融亜鉛内に導入した。粉末活性炭素はペンシルバニア州ピッツバーグのカルゴンカーボン社製の商品名WPH(登録商標)−Mを用いた。
【0057】
アーク溶接機に備えられた炭素電極をるつぼ内に配置した。アーク溶接機はオハイオ州クリーブランドのリンカーンエレクトリック社製のPro−Mig135アーク溶接機を用いた。溶融亜鉛と炭素との混合物に電流を供給するために、粉末活性炭素を溶融亜鉛に添加した直後、及び、溶融亜鉛に炭素を混合し続けながら、アーク溶接機を作動させた(設定:D)。グラファイト電極は、溶融のために断続的に負荷される電流を供給するために、アーク溶接機及び電源回路に適切なように溶接ロッドに取り付けられた。材料の温度を華氏917度まで上昇させ、材料を粘性ゲルとした。不純物を取り除き、亜鉛の溶融温度より高い華氏100度であるにもかかわらず材料がゲル状を維持する華氏888度に材料を再加熱する前に僅かに冷却した。
【0058】
冷却後、亜鉛−炭素複合体に裸眼で単相の存在を観測した。なお、材料は急速に冷却された。次いで、冷却された亜鉛−炭素複合体を華氏1000度超に再加熱したが、相分離は見られなかった。
【0059】
亜鉛−炭素複合体では、粒径が縮小し、熱伝導度が増大し、反射率が増大することが試験により示された。しかしながら、延性又は破壊靱性の促進は観測されなかった。
【0060】
実施例 亜鉛−2
実施例亜鉛−1に記載された実験装置と同じものを用いて、純度99.9%の亜鉛622gを華氏900度に加熱し、溶融亜鉛に粉末活性炭素を適量追加した。電流負荷(設定:D)後、材料をゲル化し、材料の温度を約華氏900度に保持した。華氏1087度に加熱すると、非常に光沢のある黄色がかったオレンジ色に変色するため、華氏987度に加熱して材料をゲル状に維持した。華氏1087度の材料に粉末活性炭素を追加し、攪拌しつつ材料に再度電流を負荷しながら材料を冷却した。なお、材料は急速に冷却された。
【0061】
得られた亜鉛−炭素複合体を評価したところ、実施例亜鉛−1において記載された特性と同じ特性を有していた。
【0062】

実施例 鉛−1
体積65inの(電気的にアースに接続された)グラファイトるつぼをKerr製の誘導電気炉内に配置した。るつぼに純度99.9%の鉛を201g入れた。鉛を華氏721度に加熱した。
【0063】
溶融された鉛に回転ミキサーの攪拌端を挿入し、回転ミキサーを作動させて渦を形成させた。攪拌しつつ、注文製の供給ユニットを用いて粉末活性炭素を適量溶融鉛内に導入した。粉末活性炭素はペンシルバニア州ピッツバーグのカルゴンカーボン社製の商品名WPH(登録商標)−Mを用いた。
【0064】
アーク溶接機に備えられた炭素電極をるつぼ内に配置した。アーク溶接機はオハイオ州クリーブランドのリンカーンエレクトリック社製のPro−Mig135アーク溶接機を用いた。溶融鉛と炭素との混合物に電流を供給するために、粉末活性炭素を溶融鉛に添加した直後、及び、溶融鉛に炭素を混合し続けながら、アーク溶接機を作動させた。グラファイト電極は、溶融のために断続的に負荷される電流を供給するために、アーク溶接機及び電源回路に適切なように溶接ロッドに取り付けられた。材料の温度を華氏821度に上昇させた。その後、材料を華氏784度に冷却し、鋳型内に注ぎ、室温まで材料を急速に冷却した。材料は通常の溶融鉛のように注ぐことはできず、熱可塑性物質のように鋳型内で異常な層状となった。なお、材料は急速に冷却された。
【0065】
鉛−炭素複合体に裸眼で単相の存在を観測した。次いで、冷却された鉛−炭素複合体を華氏1000度超に再加熱したが、相分離は見られなかった。
【0066】
本発明の金属−炭素複合体の様々な態様が記載されているが、当業者は本明細書の記載に基づいて変更し得ることを理解するであろう。また、本願はそのような変更をも含んでおり、請求の範囲にのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素に化学的に結合された金属を含む金属−炭素複合体であって、前記金属及び炭素は単相材料を形成し、前記炭素は前記単相材料が溶融温度に加熱された際に金属から相分離せず、前記金属は金、銀、錫、鉛及び亜鉛の一群から選択されることを特徴とする金属−炭素複合体。
【請求項2】
前記金属は金属合金からなり、前記金属は前記炭素に結合し、前記複合体は前記金属合金の残留合金成分及び不純物を含むことを特徴とする請求項1に記載の金属−炭素複合体。
【請求項3】
前記炭素は前記材料の約0.01〜40重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の金属−炭素複合体。
【請求項4】
前記炭素は前記材料の少なくとも約1重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の金属−炭素複合体。
【請求項5】
前記炭素は前記材料の少なくとも約5重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の金属−炭素複合体。
【請求項6】
前記炭素は前記材料の多くとも約10重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の金属−炭素複合体。
【請求項7】
前記炭素は前記材料の多くとも約25重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の金属−炭素複合体。
【請求項8】
前記複合体の物理的又は機械的特性に変化を与える添加物をさらに含有させることを特徴とする請求項1に記載の金属−炭素複合体。
【請求項9】
本質的に炭素に化学的に結合された金属からなる金属−炭素複合体であって、前記金属及び炭素は単相材料を形成し、前記炭素は前記単相材料が溶融温度に加熱された際に金属から相分離せず、前記金属は金、銀、錫、鉛及び亜鉛の一群から選択されることを特徴とする金属−炭素複合体。
【請求項10】
前記金属は金属合金からなり、前記金属は前記炭素に結合し、前記複合体は前記金属合金の残留合金成分及び不純物を含むことを特徴とする請求項9に記載の金属−炭素複合体。
【請求項11】
前記炭素は前記材料の約0.01〜40重量%含まれることを特徴とする請求項9に記載の金属−炭素複合体。
【請求項12】
前記炭素は前記材料の少なくとも約1重量%含まれることを特徴とする請求項9に記載の金属−炭素複合体。
【請求項13】
前記炭素は前記材料の少なくとも約5重量%含まれることを特徴とする請求項9に記載の金属−炭素複合体。
【請求項14】
前記炭素は前記材料の多くとも約10重量%含まれることを特徴とする請求項9に記載の金属−炭素複合体。
【請求項15】
前記炭素は前記材料の多くとも約25重量%含まれることを特徴とする請求項9に記載の金属−炭素複合体。

【図1】
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【公表番号】特表2013−518991(P2013−518991A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552095(P2012−552095)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/023688
【国際公開番号】WO2011/097438
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(511312171)サード ミレニアム メタルズ エル エル シー (2)