金属インク
導電性フィルムの形成は、基板表面上に複数の銅ナノ粒子を含む非導電性フィルムを堆積させる段階と、フィルムの少なくとも一部を露光して、その露光部分を導電性にする段階とを備える。フィルムの露光は、銅ナノ粒子を光焼結又は融合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2007年5月18日出願の米国仮出願第60/938975号の優先権(米国特許法第119条(e))を主張するものであり、その全内容は参照として本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本願は銅等の金属インクを対象としている。フレックステープコネクタ及び印刷回路板(PCB,printed circuit board)上の金属導体は一般的に銅(Cu)線であり、PCB上に積層されるか、電気メッキ法によって堆積される。銅物質をパターン化して導電線、ワイヤ、部品間の接続リードを形成するには、ブランケット銅フィルムのフォトリソグラフィ及び酸エッチングが必要である。代わりに、このような方法を用いて、メッキプロセス中に銅線パターンを画定することができる。いずれの場合にも、銅をエッチングするのに用いられる化学剤及びプロセスから生じる結果物の化学廃棄物は、製造される製品のコストを顕著に増加させる。そのコストは、エッチング及びフォトパターニングプロセス段階に必要な時間及び労力によって更に増加する。
【0003】
PCB上に金属導体を形成するための積層及び電気メッキの代替法は、金属線を印刷することを含む。銀金属系インク及びペーストが、インクジェット印刷、スクリーン印刷や他の印刷法用に存在している。銀は高導電性で、低温において処理可能であるが、高価な金属であり、多くの応用においてコスト的に手が出せない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S.Maruo、O.Nakamura、S.Kawata、“Three‐dimensional microfabrication with two−photon absorped photopolymerization”、Opt.Lett.、1997年、第22巻、p.132−134
【非特許文献2】S.Maruo、H.B.Sun、T.Tanaka、S.Kawata、“Finer features for functional devices”、Nature、2001年、第412巻、p.697−698
【非特許文献3】T.Tanaka、A.Ishikawa、S.Kawata、“Two−photon−induced reduction of metal ions for fabricating three−dimension electrically conductive metallic microstructure”、Apply.Phys.Lett.、2006年、第88巻、p.081107
【非特許文献4】T.Baldacchini、A.C.Pons他、“Multiphoton laser direct writing of two dimensional silver structures”、Opt.Express、2005年、第13巻、p.1275−1280
【非特許文献5】D.S.Ginley他、Electrochemical and Solid−State Letters、2001年、第4巻、第8号、p.C58
【非特許文献6】B.Kim、T.Ritzdorf、SEMI Technology Symposium (STS) Proceedings、Semicon Korea、2006年、p.269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
銀とは対照的に、銅金属は電子機器産業において標準的であり、コストは略十分の一である。よって、銅は、特に電気的配線、無線周波数IDタグ、ディスプレイ製造プロセス等の応用において銀の適切な代替物である。
【0006】
本発明の一以上の実施形態の詳細について、以下の説明及び添付図面で説明する。他の特徴は、明細書、特許請求の範囲、図面から明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】基板表面上に導体を形成するためのシステムを示す。
【図2A】X線回折グラフである。
【図2B】光焼結の前後の純銅酸化物フィルムのXRDパターンのグラフである。
【図3A】X線回折グラフである。
【図3B】X線回折グラフである。
【図4】多様なインク配合に対するフィルムの抵抗率対フラッシュランプ又は光焼結電圧を示すグラフである。
【図5】多様なライン厚さに対するフィルムの抵抗率対フラッシュランプ電圧を示すグラフである。
【図6】キセノンランプのスペクトル放射強度を示すグラフである。
【図7】多様なインク配合に対するフィルムの抵抗率対フラッシュランプ電圧を示すグラフである。
【図8A】ナノ粒子フィルムのインクジェット及び光焼結用のシステムを示す。
【図8B】光焼結プロセスを示すフローチャートである。
【図9A】ナノ粒子フィルムを印刷及び光焼結させる一例を示す。
【図9B】光焼結プロセスを示すフローチャートである。
【図10A】ハードマスクを用いてナノ粒子フィルムを光焼結させるプロセスを示す。
【図10B】ハードマスクを用いてナノ粒子フィルムを光焼結させるプロセスを示す。
【図10C】ハードマスクを用いてナノ粒子フィルムを光焼結させるプロセスを示す。
【図10D】ハードマスクを用いてナノ粒子フィルムを光焼結させるプロセスを示す。
【図11】繊維をコーティングするロールツーロールプロセスを示す。
【図12】異なるサイズの銅ナノ粒子から作製された前処理インクに対する抵抗率データのグラフである。
【図13】異なるサイズの銅ナノ粒子から作製された前処理インクに対する抵抗率対粒径のグラフである。
【図14】異なるサイズの銅ナノ粒子のX線回折グラフである。
【図15】異なるサイズの銅ナノ粒子のX線回折グラフである。
【図16】異なるサイズの銅ナノ粒子のX線回折グラフである。
【図17】異なるサイズの銅ナノ粒子のX線回折グラフである。
【図18】プロパン、ヘキサン及びデカンの直鎖構造を示す。
【図19】接着性及び厚さ対抵抗率のグラフである。
【図20】銅ナノ粒子上の二層の分散剤の図である。
【図21】銅ナノ粒子上の二層のポリマー分散剤の図である。
【図22】ビア内に銅ナノインクを充填して、高速位置決め及び合焦レーザの走査によって銅ナノ粒子を焼結させるためのプロセスを示す。
【図23】RFIDアンテナ導電性パターンの例を示す。
【図24A】如何にしてフォトマスクを用いて基板上に銅ナノ粒子をパターン化するのかを示す。
【図24B】如何にしてフォトマスクを用いて基板上に銅ナノ粒子をパターン化するのかを示す。
【図25A】如何にしてシャドウマスクを用いて基板上に銅ナノ粒子をパターン化するのかを示す。
【図25B】如何にしてシャドウマスクを用いて基板上に銅ナノ粒子をパターン化するのかを示す。
【図26】パッシベーション層として銅酸化物を備えた銅ナノ粒子を示す。
【図27】フィルム中の粒状性をもたらす光焼結中に形成される融合点の形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、基板102の表面上に導体を形成するためのシステム100が示されている。システム100は、基板表面上に金属インクを印刷することのできるプリンタ装置104(インクジェットプリンタ等)を含む。しかしながら、エアロゾルジェット等のインクを印刷することのいずれかの印刷装置も用いることができる。同様に、他の堆積装置も用いることができる。例えば、特に、スプレー、ドローダウン(draw−down)法、スピンキャスティングを用いて、金属インクを堆積させることができる。インクは、特定パターンに印刷されるか、又は、基板表面全体を覆い得る。プリンタ装置104は、印刷されるインク溶液を貯蔵するための貯蔵区画106を含む。代わりに、インク溶液は、外部のインク源からプリンタ装置104に提供され得る。
【0009】
インクジェット印刷に適した金属インクから銅系導体を生成するため、インク溶液は、インクジェットヘッドによって処理されるのに十分小さな銅粒子から作られ得る。一般的に、銅粒子は1マイクロメートル以下の直径を有し、場合によっては、0.1マイクロメートル(100ナノメートル)以下の直径となる。銅粒子は、貯蔵及び印刷中に、溶媒及び/又は懸濁液中に保持される。インクジェット溶液は、ガラス等のフレキシブルではない無機基板、又はポリイミドやポリエチレン等のフレキシブル有機基板を含む多数の基板上に印刷され得る。一部の実施では、紙基板を用いることができる。他の基板も用いられ得る。
【0010】
銅系インク溶液を基板表面上に印刷した後、インクをプレ硬化又は乾燥させる。インク溶液がポリマー基板上に印刷される場合、プレ硬化は、一般的に200℃未満、好ましくは100℃未満の温度で実施されて、基板の変化を防止する。変化としては、弾性/可塑性の変化、収縮、湾曲、及び/又は、基板に対する損傷が挙げられる。インク溶液は、空気中、又は窒素、アルゴン等の他のガス雰囲気で硬化され得る。不活性雰囲気でのプレ硬化は、インクジェット印刷システムのコスト及び複雑性を増加させ得る。典型的には、銅粒子は暗色又は黒色で、光を吸収するので、プレ硬化されたものも、暗色又は黒色で光を吸収する色を示す。更に、プレ硬化インクは高抵抗率を有する。プレ硬化インクの抵抗率は、溶融中に銅粒子同士を融合させることによって減じることができる。
【0011】
印刷された金属ナノ粒子を光フラッシュによって焼結させる前に、印刷されたイメージが乾燥していて液体成分が存在しないものとすることが望ましい。これは、印刷された金属ナノ粒子のホール形成をもたらす可能性のある液体の急速蒸発を防止するためである。このプレ焼結乾燥段階は、印刷された物質を空気中最大140℃の温度で最大1時間の期間にわたって加熱することによって、行われ得る。温度及び時間は、金属ナノ粒子の酸化を防止するために可能な限り低く、短いものとされる。このようなプレ焼結条件を用いることには、金属ナノ粒子インクの成分が、このような実験条件下で揮発性であることが必要とされる。このような条件下において急速酸化を経た印刷物質に対しては、又はその成分が残っている印刷物質に対しては、他の条件を用いてこれを除去し得る。これには、窒素、水素又はガス形成雰囲気下での高温への加熱、高真空条件下での加熱が含まれる。金属インクの配合に不揮発性成分が含まれることは避けるべきである。何故ならば、最終的な金属フィルム内での吸蔵によって、バルク金属のものよりも高い抵抗率を有するようになるからである。この乾燥段階を促進するため、低沸点及び低蒸発熱を有する液体が好ましく、このような条件下において完全に昇華する固体を用いることが望ましい。このような成分が得られない場合、このような熱条件下において揮発性生成物に分解する化合物という代替案を用いることができる。
【0012】
しかしながら、バルク銅は、略1000℃を超えるまで溶融しない。60nm以下の直径を有する銅粒子に対してはその溶融温度は低くなり得るが、それでも、その温度は、ポリマー基板に適したプロセス温度を超えている。更に、銅は、空気中高温において容易に酸化して、抵抗率の低下ではなく上昇に繋がり得る。
【0013】
基板を加熱し過ぎずに、及び/又は、ほとんど若しくは全く酸化させずに、銅粒子を融合させるため、プレ硬化フィルムを、キセノンランプ等の光源からの光の強力ではあるが短いパルスに晒すことによって、光焼結させ得る。光源からの光は、フィルムの暗色又は黒色に起因して、フィルムに吸収される。従って、直接加熱されるのでは基板ではなくてフィルムである。光強度が十分高く(数ジュール/平方センチメートルのオーダ)、パルス長が十分短いと(300マイクロ秒以下のオーダ)、プレ硬化フィルムに移されるエネルギーは、基板に実質的なエネルギーを移すことなく、銅粒子を互いに融合させるのに十分なものとなる。
【0014】
光焼結は、銀及び/又は銅粒子を含むフィルムに対して適用され得る。光焼結プロセスは、他の金属粒子フィルムに対しても機能する。光焼結銀フィルムの抵抗率は、バルクの銀の抵抗率の略四倍である。銅の光焼結フィルムに対して、抵抗率は、バルクの銅よりも10から40倍のオーダで高い。例えば、光焼結銅ナノ粒子フィルムの抵抗率は、10−5から10−7オーム・cmの範囲内である。このような抵抗率の値は、電気的配線、RFIDタグ等の応用における使用に対して、また、ガラス基板及びフレキシブル基板に対するディスプレイ製造プロセスに対して、十分なものである。更に、光焼結は、位置合わせのために正確な光学系を必要とせず、大面積の物質の製造に対してスケールアップ可能である。
【0015】
金属ナノ粒子のインクへの配合には、分散剤の添加が必要となり得る。分散剤は、金属ナノ粒子と結び付く頭部基と、インクの液相成分混合物中に用いられる媒体(溶媒)に対して相溶性の末端基を有する。このような分散剤は一般的に、疎水性の端部、親水性の端部を有し、末端基は、長鎖アルキル又はアルコキシ基官能性を優先的に有することが望ましい。頭部基のデザインは、“HSAB則(hard and soft acid and base principle)”に基づいて排除体積計算を用いて、行われ得る。
【0016】
金属及びリガンド(分散剤)の異なる錯体形成挙動は、電子対供与ルイス塩基及び電子対受容ルイス酸の観点から説明される。これらの間の関連性は、以下の式に示される:
ルイス酸 + ルイス塩基 → ルイス酸/ルイス塩基錯体
【0017】
ルイス酸及びルイス塩基は、硬い、中間、又は軟らかいとして分類される。HSAB則によると、“硬い酸は硬い塩基と結合することを好み”、“軟らかい酸は軟らかい塩基と結合することを好む”。
【0018】
多様な原子、イオン、分子及び分子イオンが、硬い、中間、軟らかいルイス酸又はルイス塩基として分類されていて、従来の金属/リガンド無機化学から、有機化学の領域にまで分析が及んでいる。表A及び表Bは、ルイス酸及び塩基を三つのカテゴリーに分類する簡単な表を提供する。
【0019】
【表1】
【0020】
表Aから重要な点が明らかになる。第一に、元素の銅は軟らかい。そして、銅ナノ粒子はCu2+のような挙動を示し中間として分類されるが、より大きな銅ナノ粒子は、軟らかいルイス酸の挙動を示し得る。同様に、Cu2Oから形成されるCu+も、軟らかいと分類される。
【0021】
【表2】
【0022】
銅ナノ粒子が中間又は軟らかいのいずれかとして分類されるということを前提に続けると、中間又は軟らかいルイス塩基に分類される分散剤を対象とすることが有利となる。
【0023】
硬い[ルイス]酸は硬い[ルイス]塩基に結合して、電荷の制御された(イオン)錯体を与える。このような相互作用は、ルイス酸及びルイス塩基種の+/−電荷によって左右される。軟らかい[ルイス]酸は、軟らかい[ルイス]塩基に結合して、FMOの制御された(共有結合)錯体を与える。このような相互作用は、参加しているフロンティア分子軌道(FMO,frontier molecular orbital)、最高占有分子軌道(HOMO,highest occupied molecular orbital)、最低空分子軌道(LUMO,lowest unoccupied molecular orbital)のエネルギーによって左右される。この分析を用いて、電荷の制御された及びFMOの制御されたルイス酸/塩基錯体形成の寄与を分離及び定量化する。
【0024】
硬いルイス酸は、
小さなイオン半径の原子中心を有し、
高い正電荷を有し、
その原子価殻に電子対を含まない種であり、
低い電子親和力を有し、
強く溶媒和する傾向があり、
高エネルギーLUMOのものである。
【0025】
軟らかいルイス酸は、
大きな半径を有し、
低い又は部分正電荷を有し、
その原子価殻に電子対を有し、
分極及び酸化し易く、
低エネルギーLUMOのものであるが、大きな強度のLUMO係数を有する。
【0026】
硬いルイス塩基は、
小さいが、高溶媒和で電気陰性原子中心(3.0〜4.0)を有し、
弱く分極可能な種であり、
酸化し難く、
高エネルギーHOMOのものである。
【0027】
軟らかいルイス塩基は、
2.5〜3.0の範囲の中程度の電気陰性度の大型の原子を有し、
分極及び酸化し易く、
低エネルギーHOMOのものであるが、大きな強度のHOMO係数を有する。
【0028】
中間の種は、中間の性質を有する。種が全ての性質を有する必要はない。HSABは理論ではない。何故ならば、化学結合の強さの変化を説明しないからである。HSAB則における‘好む’という用語は、むしろ適度な効果を意味するものであり、HSABは、ルイス酸‐ルイス塩基のペアを選択する際のガイドとして使用されるべきものであり、鉄則として使用されるべきものではない。
【0029】
化学的な硬さの定量的な定義によって、定性的なHSAB理論に拡張される。マリケンの定義による電気陰性度は、原子又は分子中の固定核電荷でのエネルギー対電子量のプロットの一次導関数であり、化学的な硬さは二次導関数である。従って、硬さ及び電気陰性度は関係していて、この意味において、硬さは、変形又は変化に対する耐性の尺度である。値がゼロだと、最大の軟らかさを示す(表C)。
【0030】
【表3】
【0031】
分散剤として使用される化合物は、長鎖アルキル(CH2)n又はエトキシ(CH2CH2O)n基を有する。これらの基は、炭素‐炭素又は炭素‐酸素の単結合によって互いに結合している。このような単結合は、3次元的な振動及び回転を許容するので、高度なフレキシビリティが与えられる。フレキシブルで長鎖の末端基を有する分散剤を用いることの必要性に対する説明は、振動及び回転の組み合わせに対して、これらの基は、短鎖の末端基よりも多くの空間を占有し、その空間が、近づいてくる第二の銅ナノ粒子に対してアクセス可能なものではないということである。この排除体積効果を定量化するため、プロパン(C3H8)、ヘキサン(C6H14)、デカン(C12H26)に対して計算を行った。これらのアルキル鎖化合物の構造が、図18に示されている。それぞれのケースにおいて、鎖状構造が示されていて、C‐C‐Cの角度は、109°28’に近く、四面体角である。
【0032】
計算結果を表Dにまとめる。
【0033】
【表4】
【0034】
長さ(オングストローム(Å))‐延伸した構造での端から端までの(重原子の)距離。プロパンに対しては、C1からC3までの距離であり、ヘキサンに対しては、C1からC6までの距離であり、デカンに対しては、C1からC12までの距離である。
【0035】
“排除”体積(Å)‐(1/6)πd3としての長さ(d)に基づいた体積。所定の対象に対する排除体積は、所定の対象を取り囲み含有し他の対象が排除される体積として定義される。排除体積は、常に一対の対象に対して定義される。
【0036】
ファンデルワールス体積(Å)‐ファンデルワールス半径に基づいた体積。共有結合していない二つの原子は互いに、特定の最低距離よりも近づくことができない。どれだけ近接するかは含まれる原子の種類に依存する。この現象は、各原子タイプに対してファンデルワールス半径と呼ばれる値を割り当てることによって説明可能であり、所定の原子対に対するそれらの量の和が、最も近づくことのできる距離に等しいとする。ここで、ファンデルワールス半径は、アルキル又はエトキシ鎖の水素原子の“接触点”である。ファンデルワールス体積は、各重原子がそのファンデルワールス半径の分子表面によって表される分子の体積である。ここで、分子表面は、ファンデルワールス表示における分子を回転させた球(典型的には半径1.4Å)によって形成される表面である。
【0037】
分子体積(Å)‐1.4Åの球形プローブを回転させることによって閉じられる体積。これは、一モルの化合物によって占有される体積であり、分子量を密度で割ったものに数値的に等しい。分子体積は、上記排除体積の体積、又は分子のゼロではないサイズに起因して占有され得ない体積である。
【0038】
分子表面(Å)‐1.4Åの球形プローブを回転させることによって閉じられる面積。これは、表面積を求めることと等価である。
【0039】
これらのデータは、その距離に対する三乗での依存性に起因して、鎖の長さが増大すると、排除体積が大きく増大するということを示す。この“排除”体積は、フレキシブルなアルキル(又はエトキシ)鎖によって“占有される”空間を表し、第二の銅ナノ粒子によって占有され得ない空間である。この“排除”体積が大きくなると、より効果的に分散剤が銅ナノ粒子を分離されたままに保つ状態になる。この“排除”体積の第二の側面は、大きな値が、低濃度の化合物に対して、ナノ粒子の高レベル被覆、よって、分散剤としての高度の有効性の提供を効果的なものにすることを可能にすることである。
【0040】
光硬化によって硬化して優れた導電体を与えるインクの配合において適切に用いられているポリマーは、トリトン(Triton)X‐100、トリトンX‐15、トリトンX‐45、トリトンQS‐15、BYK111、MA、SMA、PT、HCS‐P、HCS‐N、PVP、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリシロキサンである。
【0041】
分散剤としてのポリマーの使用の背後にある論拠は、導電性インクの媒体として用いられる典型的な液体よりも高い粘度を有すること、そして、金属ナノ粒子に対する多数の結合サイトに起因して、モノマーの分散剤よりも低い濃度で使用することができるが、それでもなお金属ナノ粒子の単層被覆を提供することである。より高い粘度が、インクジェット法を用いて印刷可能な優れた分散液及びインクの生成を容易にするので、重要である。より低い濃度の分散剤が、硬化(焼結)プロセス中に除去される有機物質が少なくなるので、好ましい。
【0042】
粉末を安定に分散させるには三つの作用が必要とされる。その三つは、表面を濡らすこと、凝集体をばらばらにすること、分散した粒子を凝集に対して安定化することである。分散剤及び界面活性剤は各段階において重要な役割を果たすことが多いが、或る一つの段階で最高の性能を提供する分散剤が、後続段階に対して最高のものとは限らない。結果として、複数の洗浄剤及び界面活性剤が必要とされ得る。
【0043】
粉末を濡らすことは、優れた分散に必ずしも繋がらない。何故ならば、単にプロセス中において濡れている凝集体になり得るからである。一部の場合、ナノ粒子は塩橋を介して凝集し得る。塩橋は、ナノ粒子と共に沈殿した可溶性塩を備える。このような塩橋は、分散剤によって分解され得て、凝集体をばらばらにする。隙間に吸着する分散剤も、固体中にクラックを伝えるのに必要とされるエネルギーを減じることができるので、粉砕助剤として機能し得る。
【0044】
非凝集化が生じると、分散の安定性を維持することが必要となる。引力及び斥力の間のバランスは、粒子がクラスターに向けて移動して凝集体に戻るかどうか、又は、分散したままであるかどうかによって決まる。分散の維持は、ボールミルや同様の装置で凝集体を機械的にばらばらにすることによって補助することができる。プロセスが停止した際の再凝集化を回避するために、このような機械的プロセスが分散剤の存在下で行われる。
【0045】
分散剤の選択においては二つの方針が用いられ得て、立体安定化と静電的安定化である。立体安定化は一般的に、非イオン性分散剤又はポリマーによって達成され、静電的安定化はイオン分散剤又はポリマーによって達成される。高い親水性・親油性バランス(HLB,hydrophile‐lipophile balance)を備えた分散剤が、水分散液に対して用いられ、低いHLBを備えたものが、非分極有機液体に対して用いられる。金属ナノ粒子は帯電可能であり、この性質が、静電的安定化を用いて分散させることを可能にする。用いられる分散剤の量は、単層被覆を与えるのに適したものであることが望ましい。
【0046】
分散剤の機能は、ナノ粒子が互いに凝集することを防止することである。小さな金属ナノ粒子は反応性があり、分散していないと、互いに接触して凝集体を形成する。このような大きな凝集体は導電性インクを生成するのに不適切である。分散剤は、金属ナノ粒子と結び付く頭部基と、他の金属ナノ粒子を近づかせない末端基とを有する。立体分散剤は、他の金属ナノ粒子によって占有され得ない大きな“排除体積”を曲げ及び回転によって掃く長鎖末端基を有する。高排除体積が望ましい。
【0047】
分散剤の濃度は、分散剤の頭部基によってナノ粒子の単層被覆が達成されるように選択される。この状況によって、凝集に対して他のナノ粒子がアクセス可能であるサイトがナノ粒子上に残存しないことが確実になる。また、単層被覆は、最高の分散液及びインクを作製するためにも利用される。分散剤は、ナノ粒子に化学的に適合する頭部基と、媒体(溶媒)と化学的に適合する末端基とを有するようにデザインされる。分散液中において、分散剤がナノ粒子と媒体との間の分子ブリッジとして機能することによって、複数の分子層によってナノ粒子が広範に分離されることが保たれる。
【0048】
金属ナノ粒子は帯電した表面を有する。この帯電は、乾式又は湿式プロセスよって作製された金属ナノ粒子中に生じ得る。その電荷は正又は負である。金属インクは、ハロゲン化物やカルボン酸イオン等のアニオン成分を用いて、又は、水素イオンやI族カチオン等のカチオン成分で作製される。
【0049】
分散剤の選択において、固定(アンカー)用頭部基として機能する機能性の選択は重要である。ナノ粒子に対するアンカーの吸収は、系内の媒体の吸収よりも強力でなければならない。吸収は電荷の引力、非共有電子対と空の分子軌道との間の特定のドナー・アクセプターバンド、水素結合、分極性分子の電場トラッピングに起因し得る。複数の吸収アンカーを有するポリマーの使用も検討する必要がある。何故ならば、これによって、固定用サイトが追加され、銅ナノ粒子の多重サイト被覆が達成されるからである。
【0050】
媒体中の分散剤の末端の可溶性も考慮しなければならない。何故ならば、分散剤は、銅ナノ粒子と媒体との間の境界として作用するからである。分散剤は、固定用頭部基が銅と優先的に結び付き、末端基が媒体と結び付く場合に、最も効果的である。分散剤(界面活性剤)が分散を安定化すると、固体上の単層は、その系に対して達成可能な最大の分散安定性を達成する。単層に満たないものを使用すると、凝集する可能性のある銅上のオープンサイトが残る。単層を超えるものが吸収されると、第二の分子層が、第一の層から反対方向に向く傾向があり、媒体に対する銅ナノ粒子の相溶性が減少する(図20)。
【0051】
所定の体積Vの液体中に所定の質量mcの銅を分散させるのに必要な分散剤の量mdは、銅の表面積(Ac)、界面活性剤の分子量Md、分散剤の分子面積被覆率Adから以下の式によって計算可能である:
md=MdmcAc/Ad
【0052】
図21に示されるように、ポリマー分散剤中の複数の頭部基が有利となり得る。何故ならば、銅ナノ粒子上に複数の固定用サイトを有することができるからである。これは、ナノ粒子と分散剤との間の引力の上昇に繋がり得る。また、分散剤が銅ナノ粒子上の複数のサイトを占有するので、より低い濃度を用いることができる。
【0053】
液体中に沈降すると、重力、浮力及び抗力がナノ粒子に働く。重力及び浮力は以下のように与えられる:
重力:FG=ρsVg
浮力:Fb=ρVg
ここで、ρs、ρは堆積物、流体の密度であり、Vは堆積粒子の体積、gは重力加速度である。
【0054】
抗力は、ナノ粒子の形状、サイズ、相対速度に依存し、また、流体の密度及び粘度に依存する、抗力は以下のように与えられる:
FD=(1/2)CDu2A
ここで、uはナノ粒子の速度、Aは粒子の軌跡に垂直な粒子の断面積、CDは抗力係数(粒子の形状、流体の粘度、粒径に依存する無次元数)である。
【0055】
沈降速度は式1によって与えられる:
V=(1/(18η))(ρs−ρ)gD2
ここで、ηは流体の動的粘度、ρs、ρは堆積物、流体の密度、Dはナノ粒子の直径、gは重力である。
【0056】
ナノ粒子の体積濃度(CS)を考慮する場合、沈降速度を以下のように表すことができる:
V=(1/(18η))(ρs−ρ)gD2(1−CS)n
ここで、nは、ナノ粒子のレイノルド数に依存して、2.3から4.6までで変化する。
【0057】
この式から、
1)ナノ粒子の高い添加濃度が分散を改善し;
2)媒体の粘度の増大が分散を改善し;
3)より小さな粒径のナノ粒子がより長い時間浮遊する。
【0058】
媒体中に3ヶ月、更には6か月にわたってナノ粒子が浮遊することを可能にする臨界ナノ粒子サイズはどのようなものであろうか。式1を用いたこのサイズの概算を表Eに与える。
【0059】
【表5】
【0060】
この計算においてブラウン運動は考慮していない。
【0061】
ナノ粒子の添加濃度を増大させることを考慮すると、沈降速度に、(1−CS)3を掛ける。
【0062】
例えば、表Fに示されるように、100nm又は50nmのナノ粒子に対して、ナノ粒子の体積添加濃度を10から60%に増大させると、沈降速度が減少する。
【0063】
【表6】
【0064】
この結果は、ナノ粒子の添加濃度を10%から40%に増大させると、ナノ粒子が1ヶ月で移動する距離が2桁減少することを示す。
【0065】
表Fの計算データは2g/cm・sの粘度に対するものである。表Gには、粘度が20g/cm・sに増大した際の速度変化に対するデータを示す。
【0066】
【表7】
【0067】
まとめ
1)長期間の分散を達成するためには、ナノ粒子の体積添加濃度を増大させることが有用な方法となる可能性がある。
2)ナノ粒子の高い添加濃度を用いると、50nmのナノ粒子に対して良好な分散を得ることができる。
3)媒体の粘度を増大させることは速度の減少に繋がる。
【0068】
金属ナノ粒子は湿式でも乾式でも製造可能である。湿式には、金属塩の元素への還元が含まれ、乾式には、気相での元素のアブレーション又は蒸発及び金属ナノ粒子(ナノ粉末)への凝集が含まれる。いずれの方法によって作製された金属ナノ粒子も、導電性金属インクへと適切に配合可能である。湿式によって作製された金属ナノ粒子に対して重視しなければならないことは、製造中に入り込んだ含有塩を、金属ナノ粒子を導電性インク中に配合する前に洗浄することによって、金属ナノ粒子から完全に取り除くべきであるということである。残存している不揮発性塩は、得られる導体が、望まれる又は許容可能なものよりも高い抵抗率を有し、接着性に優れないということをもたらす。
【0069】
金属ナノ粒子は、その表面上の酸化物層によってパッシベーションされ得る。酸化物層は、例えば略1nmから略20nmの厚さを有する。ナノ粒子がパッシベーションされると、更なる酸化は非常に緩やかに生じる。光焼結法を用いることによって、銅酸化物のより小さな層を、空気中室温で金属銅に光還元することができて、互いに融合して銅導体を形成する。
【0070】
実施例1.銅インク用の非イオン性ポリマー分散剤
その“排除”体積は、フレキシブルなアルカリ(又はエトキシ)鎖によって“占有される”空間を表し、第二の銅ナノ粒子によって占有され得ない空間である。この“排除”体積が大きくなると、分散剤がより効果的に銅ナノ粒子の分離された状態を保つ。この“排除”体積の第二の側面は、その大きな値が、低濃度の化合物がナノ粒子の高レベルの被覆、よって分散剤としての高度の有効性の提供を可能にするのに有効であるということである。
【0071】
光硬化によって硬化して優れた導体を与えるインクの配合において適切に用いられているポリマーは、トリトンX‐100、トリトンX‐15、トリトンX‐45、トリトンQS‐15、直鎖アルキルエーテル(colar Cap MA259、colar Cap MA1610)、四級化アルキルイミダゾリン(Cola Solv IES、Cola Solv TES)、ポリビニルピロリドン(PVP,polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリシロキサンである。2‐ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート等の溶媒を用いて、銅ナノ粒子を銅インクに配合することができる。分散剤の重量パーセンテージは、0.5%から20%の範囲となり得る。銅ナノ粒子の添加濃度は10%から最大60%までとなり得る。配合にはバインダー物質は必要とされない。
【0072】
分散剤としてのポリマーの使用の背後にある論拠は、導電性インクの媒体として用いられる典型的な液体よりも高い粘度を有すること、そして、金属ナノ粒子に対する多数の結合サイトに起因して、モノマーの分散剤よりも低い濃度で使用することができるが、それでもなお金属ナノ粒子の単層被覆を提供することである。より高い粘度が、インクジェット法を用いて印刷可能な優れた分散液及びインクの生成を容易にするので、重要である。より低い濃度の分散剤が、硬化(焼結)中に除去される有機物質が少なくなるので、好ましい。
【0073】
分散の優れたインクは、ポリイミド、PET等のフレキシブル基板上に、インクジェット印刷可能であり、又は、ドローダウン、スピンキャスティング、ロールツーロール印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等の他の方法によって印刷可能である。プレ硬化プロセスが、空気中150℃未満の温度でインクコーティングされた基板に適用される。その後、光焼結を用いて、数マイクロ秒から1ミリ秒未満で銅ナノ粒子を銅フィルムに焼結させるのと同時に、銅ナノ粒子上の銅酸化物層を金属銅に光還元して、高純度の金属銅導体がもたらされる。銅フィルムと基板との間の接着は、バインダー物質を用いずとも優れている。何故ならば、銅の溶融による熱は、比較的低い融点を有するプラスチックと銅との間に溶接効果を生じさせるからである。3.6〜10μΩ・cmもの低さの抵抗率(バルクの銅に対しては1.7μΩ・cm)が達成される。レーザ(連続レーザ、パルスレーザを含む)を用いて、銅インクを銅導体に焼結させることができる。ナノ秒からフェムト秒レーザのパルスレーザを用いても、銅インクを焼結させることができる。
【0074】
実施例2.銅インク用のイオンポリマー分散剤
酸性基を備えたコポリマーを分散剤として用いて、相溶性媒体で銅インクを配合する。ディスパービック(Disperbyk)180、ディスパービック111、スチレン無水マレイン酸コポリマー(SMA1440フレーク)、PT、HCS‐P、HCS‐N等のイオン基を備えたコポリマーはイオン性のものであり、静電的分散が達成可能である。2‐ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングルコールジアセテート、テルピネオール、イソブチルアルコール等の相溶性媒体のいずれか一つ又はそれらの組み合わせを用いて、銅ナノ粒子を銅インクに配合することができる。銅インクはフレキシブル基板上にインクジェット印刷される。その後、プレ硬化プロセスを用いて、空気中150℃未満の低温で媒体及び分散剤を除去する。最後に、光焼結を印刷銅インクに適用して、銅ナノ粒子を導体に溶融する。分散剤の重量パーセンテージは0.5%から20%の範囲であり得る。銅ナノ粒子の添加濃度は10%から最大60%までであり得る。
【0075】
分散の優れたインクは、ポリイミド、PET等のフレキシブル基板上に、インクジェット印刷可能であり、又は、ドローダウン、スピンキャスティング、ロールツーロール印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等の他の方法によって印刷可能である。プレ硬化プロセスが、空気中150℃未満の温度でインクコーティングされた基板に適用される。その後、光焼結を用いて、銅ナノ粒子を銅フィルムに焼結させるのと同時に、銅ナノ粒子上の銅酸化物層を金属銅に光還元して、高純度の金属銅導体がもたらされる。銅フィルムと基板との間の接着は、バインダー物質を用いずとも優れている。何故ならば、銅の溶融による熱は、比較的低い融点を有するプラスチックと銅との間に溶接効果を生じさせるからである。3.6〜10μΩ・cmもの低さの抵抗率(バルクの銅に対しては1.7μΩ・cm)が達成される。レーザ(連続レーザ、パルスレーザを含む)を用いて、銅インクを銅導体に焼結させることもできる。ナノ秒からフェムト秒レーザのパルスレーザを用いても、銅インクを焼結させることができる。
【0076】
実施例3.非イオン性分散剤及びイオン分散剤の両方の配合
より良い分散を得るために、非イオン性分散剤及びイオン分散剤の両方を用いて銅インクを配合する。トリトンX‐100、トリトンX‐15、トリトンX‐45、トリトンQS‐15、直鎖アルキルエーテル(colar Cap MA259、colar Cap MA1610)、四級化アルキルイミダゾリン(Cola Solv IES、Cola Solv TES)、ポリビニルピロリドン(PVP)等の非イオン性分散剤と、ディスパービック180、ディスパービック111、スチレン無水マレイン酸コポリマー(SMA1440フレーク)、PT、HCS‐P、HCS‐N等のイオン基を備えたコポリマーとを用いて、銅インクを配合する。銅酸化物でパッシベーションされた銅ナノ粒子を配合に用いる。2‐ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール等の相溶性媒体を選択して、銅ナノ粒子で銅インクを配合し得る。特に、2‐ブトキシエチルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの組み合わせ、2‐エトキシエチルアセテート及び2‐エトキシエチルアセテートの組み合わせ、エチレングリコールジアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの組み合わせが、イオン分散剤及び非イオン性分散剤の両方と相溶性であるとして用いられ得る。分散剤の重量パーセンテージは0.5%から20%の範囲であり得る。銅ナノ粒子の添加濃度は10%から最大60%までであり得る。
【0077】
優れた分散が得られ、配合された銅インクが形成される。インクは、ポリイミドやPET等のフレキシブル基板上に、ドローダウン、スピンキャスティング、ロールツーロール印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等によって印刷可能である。プレ硬化プロセスを、空気中150℃未満の温度でインクコーティングされた基板に適用する。4μΩ・cmもの低さの抵抗率が得られる。レーザ(連続レーザ、パルスレーザを含む)を用いて、銅インクを銅導体に焼結させることもできる。ナノ秒からフェムト秒レーザのパルスレーザを用いても、銅インクを焼結させることができる。
【0078】
実施例4.低有機残留物銅インク
光焼結で高純度銅フィルムを得るためには、有機残留物が少ないことが高導電率に繋がる。沸点の低い媒体及び分散剤が銅インクを配合するのに選択される。分散剤の重量パーセンテージは0.5%から20%の範囲であり得る。銅ナノ粒子の添加濃度は10%から最大60%までであり得る。低沸点のアルコール又は他の溶媒、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、ブチルベンゼン及び水等を媒体として用いることができる。比較的分子量の小さい低沸点アミンをインク配合用の分散剤として用いることができて、ヘキシルアミン、オクチルアミン等が挙げられる。プレ硬化プロセスが150℃未満の低温でコーティングされたインクに適用されると、これらの低沸点媒体及びアミンは容易に蒸発し得る。アミンは150℃未満の低い沸点を有することが望ましく、その大半がプレ硬化プロセス中に蒸発するようになる。プレ硬化段階は、印刷された又はコーティングされた金属ナノ粒子が光焼結される前に乾燥していることを確実にするために必要である。この段階は、空気中150℃未満で行われる。この段階が必要な理由は以下のとおりである。光焼結される金属ナノ粒子が揮発性の化合物を含有する場合、フォトニック硬化中の急速加熱がその化合物の急速な蒸発を生じさせて、金属ナノ粒子のコーティングされたフィルムが不連続で非常に粗い表面となるプロセスになってしまうからである。
【0079】
分散の優れたインクは、ポリイミド、PET等のフレキシブル基板上に、ドローダウン、スピンキャスティング、ロールツーロール印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等によって印刷可能である。プレ硬化プロセスが、空気中150℃未満の温度でインクコーティングされた基板に適用される。低沸点媒体及び分散剤を用いると、光焼結によって、高純度銅フィルムを得ることができ、3.5μΩ・cmの抵抗率が得られる。レーザ(連続レーザ、パルスレーザを含む)を用いて、銅インクを銅導体に焼結させることもできる。ナノ秒からフェムト秒レーザのパルスレーザを用いても、銅インクを焼結させることができる。
【0080】
プリンタノズルの詰まりを避けるため、銅ナノ粒子の直径は1000ナノメートル未満であることが望ましい。ナノ粒子が互いにクラスター化しているナノ粒子の集合化についても同じことがいえる。凝集体(二次的な粒径として知られる)の直径も、1000ナノメートル未満であることが望ましい。
【0081】
銅ナノ粒子のサイズも、光焼結フィルムの性質に対して影響を有し得る。例えば、一部の場合、光焼結の後で、大きなナノ粒子を有するインクが、小さなナノ粒子を有する光焼結インクのものよりも実質的に低い抵抗率を有し得る。抵抗率の違いは、一部には、銅同士の融合に起因し、一部には、硬化前のフィルム中の銅酸化物の量に対する光焼結後のフィルム中の銅酸化物の量に起因する。
【0082】
金属ナノ粒子の融合により金属導体を作製することには二段階含まれる。段階の一方は、ナノ粒子が互いに融合して完全に接続した金属フィルムを与えることであり、他方は、個々の金属ナノ粒子に対する融合を達成することである。両段階が達成されると、個々の金属ナノ粒子はバルク金属に変換される。両段階が達成されないと、金属はバルク金属よりも高い抵抗率を有する。何故ならば、ナノ粒子間の融合が生じていない場所において導体にホールが存在するからである。そして、個々の金属ナノ粒子に対する完全な融合が生じていないと、金属導体のプロファイルが滑らかでなく、依然として個々の金属ナノ粒子のプロファイルを示す。両段階は、金属導体を作製するために用いられる金属ナノ粒子のサイズ及びサイズ分布に影響を受ける。
【0083】
複数の因子が、金属導体を生成するために用いられる金属ナノ粒子のサイズに依存する。金属ナノ粒子のサイズが減少すると、その抵抗率は増大し、その融点は低下する。これらの因子はいずれも金属ナノ粒子を融合した金属導体に焼結させることに有利に働く。個々の金属ナノ粒子を完全に融合した金属導体に変換するには、各金属ナノ粒子が互いに、結晶性銅原子の連続的なアレイに融合することを要する。これを達成するための接続の数は金属ナノ粒子のサイズに依存する。より小さな金属ナノ粒子はより低い融点を有し、より反応性のものではあるが、連続的な金属導体を生成するために、より多くの接続が必要となる。連続的な金属導体への金属ナノ粒子の融合は、より低い融点を有しより反応性である小さな金属ナノ粒子の利点と、焼成(硬化プロセス)中に必要な接続の数の少ない大きな金属ナノ粒子の利点と間のバランスとなる。
【0084】
これら二つの因子の間のバランスを、多様なサイズを有する銅ナノ粒子を用いて調べた。30ナノメートルのサイズから100ナノメートルを超えるサイズにまでの範囲である。各サイズの銅ナノ粒子をインクに配合し、コーティングし、プレ硬化し、空気中で光焼結した。結果は、30nm、50nm、80nm、120nmのサイズの範囲に対して、80nmのサイズの銅ナノ粒子で最も低い抵抗率が得られることを示した。
【0085】
図12を参照すると、一組の異なるサイズの銅ナノ粒子を得た。ナノ粒子は、30nm、50nm、80nm、120nmのサイズを有し、保護剤でコーティングされていた。各サンプルに対してインクを作製した。直接比較用の一貫性のある配合とするため、前処理では、1‐ヘキシルアミン(2mL)及びイソプロピルアルコール(4mL)の混合物を用い、続いてイソプロピルアルコール(10mL)を加えた。50nmのサイズの銅ナノ粒子の二つのバッチをA及びBとした。コーティング、プレ硬化及びフォトニック硬化を実施した後に得られた抵抗率を図12に示す。
【0086】
図13に示されるように、データは、抵抗率が80nm<120<nm<30nm<50nmの順であることを示す。
【0087】
抵抗率の順が酸化物含有量と相関を示すかどうかを求めるために、得られたままで処理される前の銅粒子に対して、XRD(X線回折,x−ray diffraction)のグラフを得た。80nm、120nm、30nm、50nmのサンプルに対するXRDをそれぞれ、図14〜17に示す。
【0088】
サイズの異なる銅ナノ粒子のXRDは、ナノ粒子上に存在している銅酸化物の量の顕著な違いを示していない。各ケースにおいて、酸化物の量は少ない。従って、銅ナノ粒子のサイズの変化に対する硬化導体の抵抗率の違いは、銅酸化物含有量に起因するものではありそうにない。金属ナノ粒子からの導体の形成においては、二つの検討事項が考慮される。ナノ粒子が小さくなると、より反応性のものになり、その銅導体への焼結がより好ましいものになる。しかしながら、より小さなナノ粒子は連続的な導体を形成するためにより多くの接続を形成する必要があり、これが小さなナノ粒子を用いることの欠点である。80nmの銅ナノ粒子の利点は、それが二つの検討事項が最大限に活かされる点であるということである。銅ナノ粒子のサイズと形成される導体の抵抗率との間には線形な相関は存在しない。図26を参照すると、銅ナノ粒子は銅酸化物(主にCu2O、パッシベーション層として)を含むが、その割合は30%を超えないことが望ましい。ナノ粒子の形状は、球形、楕円形、又は他の不規則な形状であり得る。
【0089】
光焼結プロセスは、光の単一の高強度パルスを含む。この光エネルギーは、金属ナノ粒子によって吸収されて、熱に変換される。この熱エネルギーは、金属ナノ粒子を密着した金属導体に焼結させて、金属導体が基板に接着する。この二つの手順は、光パルスの強度を変更することによって(ランプに印加される電圧を変更することによって)、又はパルス幅を変更することによって、最大化され得る。プロセス全体には、金属ナノ粒子の全体的なフィルムへの融合が含まれ、全粒子が金属導体に焼結されて、金属導体の底部層が基板と融合して、優れた導体内部の接着、及び金属導体と基板との間の接着の両方が達成される。基板が十分に低い融点を有している場合、金属導体と基板との間の直接的な接着が達成可能である。基板が金属導体に直に接着しない場合、基板と金属導体との間に接着促進剤を用いることができる。光フラッシュの強度及びパルス幅を制御することによって、基板の物的な性質の変化に繋がる基板に対する損傷を生じさせることなく、金属ナノ粒子の金属導体への焼結、及び基板に対する接着を達成することができる。図19は、フレキシブル基板上の銅ナノ粒子の光焼結によって形成された銅の抵抗率及び接着に対するエネルギー光フラッシュ電圧及びパルス幅の影響を示す。電圧及びパルス幅の正しい組み合わせを選択することによって、低い抵抗率及び高い接着性の両方が達成される。0.1から10マイクロメートルの粒子コーティングの厚さが、0.1から20ジュール/cm2の範囲内で最適化されたエネルギーで光焼結される。抵抗率対光焼結エネルギーのプロットは、放物線状であり、部分的に焼結された領域とブロウンオフ(blown off)領域との間に生じる最低の地効率を有する。0.1から20ジュール/cm2のエネルギー範囲内では、より平坦な放物線が望ましく、この光焼結プロファイルを達成するように金属インクが配合される。光焼結プロセス中に、フレキシブル基板の表面は粗さを有しはじめ、これが接着を改善する。フレキシブル基板の湾曲は、表面を加熱することによって最小化可能である。図2Aは、光焼結の前後における、20ナノメートルの銅ナノ粒子を含むフィルムのX線回折(XRD)を示すグラフである。グラフから見て取れるように、光焼結後のフィルム中のCuOの含有量は本質的になくなっている。一方、Cu2Oの含有量は顕著には変化していない。これは、低い2シータ値におけるCu2Oラインの細さによって示されている。しかしながら、より大きな粒子に対して、Cu2Oの含有量は減少し得る。例えば、図3A及び図3Bはそれぞれ、フィルムを光焼結される前と後とにおける、50ナノメートルの銅粒子を含むインクジェット金属フィルムのXRDグラフを示す。光焼結前の50nmの粒子フィルム中のCu2Oの形状の銅酸化物の割合は28%である。対照的に、光焼結後のフィルム中のCu2Oの形状の銅酸化物の割合は略7%であり、これは、Cu/Cu2Oの比が13:1であることに対応する。100ナノメートルの銅粒子を含むフィルム中の相対的なCu2O含有量は、光焼結後には更に小さなものであり、抵抗率の更なる減少に繋がる。また、100ナノメートルのフィルムは、光焼結の前及び後において、CuO物質の含有量がより低い。
【0090】
CuOは、CuOが銅及びCu2Oに変換される還元プロセスによって、光焼結中に除去される。より小さなナノ粒子、例えば、略20nmの直径を有するナノ粒子を備えたフィルムに対して、Cu2Oの含有量は、光焼結前のものと同じ量を本質的に保っている。銅とナノ粒子との間の融合プロセス中に、Cu2O物質は、粒子間の融合点から大部分がなくなり、融合領域の辺縁に向けて押し出される。更に、銅粒子間の界面における結晶構造が、光焼結インクの導電性に影響を与える。銅粒子境界における転移の効果的なブロックに起因して、高い導電性が観測される。CuO及びCu2Oの結晶構造の検査によって、CuOは典型的に単斜晶系である一方、Cu2Oは立方晶系であることが明らかになっている。従って、二つの立方晶構造(Cu2O中のような)の間の境界では、境界が異種の結晶構造(CuO中のような)を含む構造よりも、転移が少ない傾向にある。従って、20nmのインクの配合に示されるように、抵抗率の低下は、CuOの消滅に部分的に起因し得る。純酸化銅(I)(Cu2O、純度99%)を用いて、IPA及びヘキシルアミンと共に溶液を配合する。Cu2O粉末のサイズは、光学顕微鏡で見積もって、数マイクロメートルから略20マイクロメートルである。滴下堆積を用いて、ポリイミド上に溶液をコーティングして、連続的なフィルムを形成する。フィルムの厚さは一様ではない。フィルムはフラッシュランプに露光される。XRDを用いて、露光領域及び非露光領域を調べる。図2Bに示されるように、非露光領域は、Cu2Oの特徴的なXRDパターンを明確に示す。図2Bにおいて、露光領域は、43.4°及び50.5°に強い金属銅ピークを示す。銅酸化物が銅に変換される露光領域(これはXRDによって確かめられる)は事実上導電性である。その抵抗率は略3.7×104Ω・cmである。
【0091】
光焼結下における或る種の酸化物の還元は、酸化物のエネルギーバンドギャップ、酸化物の生成エンタルピー、光焼結中に印加される放射エネルギーに基づいて、生じ得る。例えば、Cu2O及びCuOのバンドギャップはそれぞれ、1.9eV(188kJ/モル)、2.6eV(257kJ/モル)である。対応するCu2O及びCuOの生成エンタルピーはそれぞれ、157kJ/モル、168kJ/モルである。従って、略100nmから400nmの波長範囲でのUV放射で、Cu2Oを金属銅に還元することができる。光焼結プロセスは、銅ナノ粒子間の界面の酸化を防止する。
【0092】
インクジェット可能な銅溶液がほとんど又は全く銅酸化物含有量を有さない場合においても、フィルムを高温に晒すことの結果としてプレ硬化中においてフィルム中に銅酸化物が導入され得る。例えば、空気中でプレ硬化される20nmの粒子を含むフィルムは、フォーミングガス中でプレ硬化される20nmフィルムよりも一桁高い抵抗率を有し得る。空気中でのプレ硬化中のCu2Oの生成はより高い抵抗率に繋がる。
【0093】
更に、より小さなナノ粒子を備えたフィルムは、単位長さ当たりに対し、より多くの数の融合点を有する。よって、融合点は抵抗がゼロではないので、より小さなナノ粒子を備えた光焼結フィルムはより高い抵抗率を有する。従って、100nmの粒子を用いて形成された光焼結フィルムの抵抗率は、50nmの粒子を用いて形成された光焼結フィルムのものよりも低く、50nmの粒子を用いて形成された光焼結フィルムは、20nmの粒子を用いて形成された光焼結フィルムよりも低い抵抗率を有する。ナノ粒子に起因するフィルムの粒状性は光焼結後においても見て取れる。図27は、光焼結中に形成された融合点の形成がフィルム中の粒状性に繋がることを示す。金属ナノ粒子のコーティングによる導電性金属フィルムの生成には、個々のナノ粒子間の多数の接続の発生を要する。更に、導体が純粋な金属状態のものに近づく場合、融合は、金属ナノ粒子間で生じるだけではなく、個々のナノ粒子自体に対しても生じる必要がある。このプロセス全体の結果は、金属ナノ粒子粉末のものからバルク金属のものに近づくという密度の上昇である。これは収縮に繋がる。光焼結プロセスは非常に高速なものなので、金属ナノ粒子のアレイからバルク金属への完全な変換が生じるとは考えられない。結果として、全ての粒子が、その周囲全体の周りに、又はその体積全体にわたって、融合点を有するわけではない。従って、光焼結導体は、滑らかな金属表面の形態を有しているというよりはむしろ、依然として元々の金属ナノ粒子の形状プロファイルを一部保っている。
【0094】
追加因子も、光焼結プロセスに関してインクジェットされた銅フィルムの抵抗率に影響を与える。例えば、最初に堆積させる銅フィルムの厚さが増加すると、より多くの入射光エネルギーが、より薄いフィルムと同じ抵抗率を得るために必要とされる。層が厚過ぎると、光は金属粒子フィルムを完全には突き抜けない。従って、層は完全には光焼結しない。不完全な光焼結プロセスは、抵抗率が高く基板の接着の優れないフィルムに繋がる。焼結前の堆積させたナノ粒子インクの典型的な厚さは、0.5から10マイクロメートルの範囲内である。
【0095】
光焼結プロセスに用いられる最適なエネルギー量に影響を与える変数は多数存在する。例えば、インクジェット可能な銅インクは異なる配合を有し得るが、その配合は、液体混合物の化学組成、その液体混合物に添加される銅ナノ粒子のパーセンテージである。用いられる配合及び基板に応じて、様々な光焼結フラックス強度(つまり出力)において最低の抵抗率が得られる。図4は、カプトン(登録商標)(Kapton(登録商標))基板上の多様なインク配合に対する抵抗率対電圧(光焼結ランプに印加される)を示す。この光フラックス強度の違いは、一部にはインク配合及びナノ粒子のサイズに起因するものであり、粒子の融合プロセスに影響し、特定のインクでは、他のインクよりも融合を誘発させるためにより強い入射光フラックス強度が要されるようになる。更に、印加されるエネルギーに応じて、銅粒子のアブレーション及び基板の損傷が生じ得る。これらの変数を考慮すると、最適な光焼結光フラックス強度は、図4に示される放物線の底に対応して求めることができる。インク層の厚さが増大すると、アブレーション効果は小さくなる。結果として、特定のインク配合に対して最低の抵抗率を得るために、光焼結ランプによって広範なフラックス密度が提供され得る(図5を参照)。一部の場合、入射光フラックス密度が高過ぎると、又はナノ粒子フィルムが薄過ぎると、不連続性が光焼結フィルムに生じ得て、フィルム中の抵抗の増大に繋がる。
【0096】
光焼結に用いられるランプからの光フラックス強度及びエネルギースペクトルは、インク堆積面積に基づいて、更に最適化可能である。例えば、明確で局在化したトレースに堆積したインクでは、基板の大きな領域にわたって堆積したインクよりも必要とされる光強度が少なくなり得る。従って、銅インクのフィルム全体に対するよりも少ない光強度が、小さなフィーチャ(feature)を光焼結させるのに必要とされ得る。
【0097】
典型的には、UV放射(略380nm未満)として放出される出力は、キセノンランプから放出される全出力の略6%である。例えば、図6は、NovaCentrix(TM)フラッシュランプから放出された波長対スペクトル放射強度を示す。キセノンランプの代替物としては、エキシマUVランプや真空UVランプ、崩壊エキシマ複合体を含むレーザが挙げられる。エキシマレーザは典型的に、不活性ガス(アルゴン、クリプトン又はキセノン)及び反応ガス(フッ素又は塩素)の組み合わせを用いる。電気的刺激の適切な条件下では、ダイマと呼ばれる擬分子が生成される。ダイマは、励起状態においてのみ存在することができ、紫外領域のレーザ光を生じさせることができる。エキシマの利用はいくつかの利点を提供する。例えば、一部の場合、崩壊エキシマ複合体は、銅酸化物を同時に融合及び光還元する光硬化ランプに適している。一部の例では、エキシマランプは、多様なUV波長において、高強度ナローバンド放射を発する。多くの場合、エキシマフォーミングガス混合物は単一の支配的なナロー放出バンドを示す。更に、エキシマは、電子の運動エネルギーをUV放射に変換する効率的なエネルギー変換体であり、エキシマは典型的に自己吸収を示さない。エキシマシステムは、飽和効果が始まる前に超高出力密度にポンピングされて、自然放出を制限することができる。従って、非常に明るいUV及び真空UV源を、光エネルギーを金属粒子フィルム内に吸収させるように最適化されたスペクトル出力で構築することができる。
【0098】
一部の場合、特に、インクの粘度、表面エネルギー、光熱容量、エネルギー吸収度を調整するため、添加剤がインクの配合に含まれ得る。粘度及び表面張力の低いインクは基板表面上に急速且つ容易に拡散する傾向がある一方、高い粘度及び表面張力は、液体の拡散の優れた制御を可能にする。インクの粘度及び表面張力を変更する添加剤の一例はエチレングリコールである。インクジェット可能な銅インクの粘度は20センチポアズ未満であることが望ましく、好ましくは8から20センチポアズの間である。表面張力は60ダイン/cm2未満であることが望ましく、好ましくは20から60ダイン/cm2の間である。
【0099】
一部の例では、堆積させたまま(as−deposited)のインクの抵抗率は、添加剤の量の関数として変化する。例えば、エチレングリコールを添加剤として用いる場合、インクの抵抗率は、エチレングリコールの量を増大させると、上昇する。好ましくは、インク配合中に存在するエチレングリコールの体積は10%未満である。
【0100】
一部の実施において、インク内の導電性粒子が、インクノズルに適合するには大き過ぎるサイズに凝集する。小さな粒径を維持するため、大きな凝集体を機械的手段で粉砕することができる。例えば、ボールミリングプロセスを用いて、大きな粒子凝集体のサイズを減じることができる。図7に示されるように、マイクロ流体化又はボールミリングプロセスは、光焼結された多様なインク配合に対して、抵抗率を低下させることができる(このことは、マイクロ流体化されたB1‐100B4インクに対して示されている)。
【0101】
フレキシブル電子機器を製造するため、ナノ粒子インクをポリイミドやポリエチレン等のフレキシブル基板上に堆積させる。インクジェット堆積に適したポリイミド基板の一例はデュポン社のカプトン(登録商標)物質である。光焼結の後において、カプトン(登録商標)及び他のポリイミド基板は銅に対する接着性を提供しない。一部の場合、ポリイミド表面は、基板を損傷することなく、光焼結プロセス中に粗くなる。更に、ポリイミドは典型的に、光焼結中に基板に対するインクの接着性の増大を示す。
【0102】
一部の実施において、フレキシブル基板は光焼結の後に湾曲し得る。湾曲は、光焼結プロセス中の銅及びフレキシブル基板の熱的性質の不整合の結果である。湾曲効果は、フレキシブル基板の厚さを増大すること、銅層の厚さを変更すること、又は、基板の裏側に補償層を印刷及び硬化することによって、補償又は低減可能である。更に、湾曲効果は、基板表面上に連続的な大面積フィルムを一枚以上堆積させる代わりに、光焼結の前に基板上に銅トレースを形成することによって低減可能である。湾曲効果は、光焼結プロセス中に基板を加熱することによって更に低減可能である。
【0103】
図8Aを参照すると、ナノ粒子銅フィルムを同時に又はほぼ同時にインクジェット及び光焼結するための装置800が示されている。本装置は、基板804の表面上に銅インク801を分配するためのインクジェット分配器802を含む。また、本装置800は、インクジェット分配器802によって堆積させたインクフィルム803を硬化させるための光源806も含む。光源はレーザ光源(パルス又は連続)、パルスランプ、又は合焦ビームであり得る。一部の例では、分配器802は、所定の経路に沿って基板上を自動で通過するように構成される。更に、分配器802は基板上804の上の複数の所定の位置及び時間において銅インクを分配するように構成可能である。光源806はインクジェット分配器802に取り付けることができ、又は、分配器802とは別に基板上を移動するように構成可能である。光源806は、分配器802によってインクジェットされたフィルムが堆積された後にそのインクジェットされたフィルムを直ちに光焼結するように構成可能である。代わりに、光源806は、光焼結の前にインクを乾燥させるために、フィルムの堆積に引き続いて、所定の回数フィルムを光焼結させるように構成可能である。光源806及び分配器802の移動は、コンピュータシステム/制御装置808によって制御可能である。使用者は、制御装置が所定の経路にわたって分配器802及び光源806を自動的に並進移動させるようにコンピュータ808をプログラムすることができる。一部の例では、光源806及び分配器802が固定されて、基板が、コンピュータ/制御装置808によって制御される可動プラットフォーム上に配置される。
【0104】
光焼結プロセスのフローチャートが図8Bに示されている。金属インク溶液が混合されて(810)、その後、分配器802を用いて基板804上に印刷又は分配される(812)。フィルムの堆積は、明確なパターンが形成されるように厳しく制御される。その後、フィルムを乾燥させて、水又は溶媒を除去する(814)。
【0105】
一部の場合、フィルムの分配後であって、光焼結段階の前に、熱硬化段階が導入され得る。基板及び堆積させたフィルムを、オーブンを用いることによって、又はヒータ(ホットプレート等)の表面上に基板を置くことによって、硬化させることができる。例えば、一部の実施では、フィルムは、光焼結の前に空気中100℃で30分間プレ硬化される。代わりに、熱硬化は、フィルム表面上にレーザを向けることによって実施可能である。乾燥及び/又は熱硬化段階に引き続いて、光源806からのレーザビーム又は合焦光を、ダイレクトライティングとして知られているプロセスで、フィルム表面上に向ける(816)。光はフィルムを光焼結させる機能を果たし、フィルムが低抵抗率を有するようになる。一般的に、金属フィルムは、印刷/分配段階及び乾燥段階の後では絶縁性である。しかしながら、光焼結プロセス後に、その絶縁性フィルムは、導電性フィルムになる(図8Aを参照)。
【0106】
一部の例では、分配器802を用いて、ブランケットフィルム又はパターンのおおまかなアウトラインを堆積させる。典型的には、印刷法は、10〜50マイクロメートル又はそれ以上のオーダのフィーチャサイズを達成することができる。より微細なフィーチャが必要な場合、パターン/ブランケットフィルムを、光の合焦ビーム又はレーザを用いて微細化又は縮小させることができる。この場合、フィーチャは、レーザのスポットサイズ又は光ビームの焦点によって定義される。典型的には、光は1マイクロメートル以下に合焦可能である。従って、サブミクロンフィーチャが可能である。究極的には、フィーチャサイズは導電性フィルムに用いられるナノ粒子にサイズによって限定される。金属粒子は、1〜5nmのオーダのフィーチャを有するように形成可能である。
【0107】
図9Aは、おおまかなパターンアウトライン805にナノ粒子フィルムを印刷して、その後、光焼結を用いてパターン805を微細化する一例を示す。まず、標準的な印刷法を用いて基板804上にナノ粒子インク溶液を印刷することによって、パターン805の金属ラインを形成する。その後、インクを乾燥させる。図9Aのライン幅は略50マイクロメートルである。図9Aには、上面図及び側面図が示されている。その後、印刷ライン805は、レーザビーム又は他の合焦光源806で少なくとも部分的に光焼結される。露光時間は500ms以下のオーダであり得る。光焼結された領域は、クロスハッチングされた領域として示されている。ミラー807及び他の光学系並びに可動テーブル及び光学系によって、光源806が基板804を走査して特定のイメージを形成することができる。
【0108】
図9Aの光焼結プロセスのフローチャートが図9Bに示されている。金属インク溶液を混合して(910)、その後、分配器802を用いて、ブランケットフィルムとしてパターン化せずに、又は、パターンのおおまかなアウトラインとして、印刷又は分配する(912)。その後、フィルムを乾燥させて水又は溶媒を除去する(914)。乾燥及び/又は熱硬化段階に引き続いて、光源806からのレーザビーム又は合焦光をフィルム表面上に向ける(916)。レーザ又は合焦ビームに露光されていない金属フィルムは一般的に、基板804に緩く結合していて、基板を洗浄することによって除去可能である(918)。一部の場合、光焼結されていないフィルムは、フィルム表面に接着テープを貼ってそのテープを剥がすことによって除去可能である。プロセスにおいて使用されない余剰インク又は金属粉末は再利用可能であり、更にインクが作製される。代わりに、非硬化領域が絶縁性であることを条件として、フィルムの非硬化部分を基板上に残すことができる。
【0109】
堆積フィルムをレーザ806で光焼結することによって、明確な銅トレースが、低エネルギーを用いながらも、基板表面上に空気中で形成可能である。更に、レーザ光焼結は、その上にインクフィルムを有していない基板領域に対する損傷を減じる。一部の場合、光焼結は、レーザの代わりに光の合焦ビームを用いて達成される。ダイレクトライティング法によって、用いられる各基板に対してパターンを変更することができる。更に、パターン化段階がプロセスの終了に近い場合、基板が後で必要とされるまで、レーザ焼結の前に、印刷されたサンプルを保持するベッド上に基板を製造及び保有可能である。
【0110】
レーザ、光の合焦ビーム又はフラッシュランプを用いる場合、光焼結プロセスを大気環境で行うことができる点には留意されたい。また、不活性ガス雰囲気も用いられ得る。更には、反応ガス雰囲気も用いられ得る。反応ガス雰囲気は、光焼結プロセス段階の前及び/又は後に化学反応を生じさせる一以上の元素を含有するガスである。
【0111】
レーザビームの小さなスポットサイズに起因して、大きな面積にわたるレーザ光焼結は時間のかかるプロセスであり、製造のスループットの低さに繋がる可能性がある。対照的に、短パルスランプを用いて、ナノ粒子フィルムで覆われた大きなサンプルを素早く光焼結させることができる。ハードマスクを用いて、所望のパターンがサンプルに転写される。25マイクロメートル未満のフィーチャサイズを備えた微細パターンが、半導体産業のリソグラフィプロセスにおいて用いられるマスクと同様のマスクを用いて、達成可能である。マスクは、透明基板(例えば石英やガラス)を含み、またクロムや他の金属の薄いマスク用フィルムを含む。マスク用フィルムを含むマスク領域は、光がサンプルに到達することを防止する一方、マスク用フィルムを含まないマスク領域は、光が通過してインクフィルムを光焼結させることを可能にする。
【0112】
ハードマスクを用いる光焼結プロセスの一例が図10A〜図10Dに示されている。まず、銅ナノ粒子インクフィルム1000を基板1002上に堆積させる。その後、マスク1004をフィルム1000及び基板1002の上方に配置する。マスク1004は、透明プレート1005及びそのプレート上に形成された金属パターン1006を含み得る。その後、インクフィルム1000をマスク1004を介して光源に露光することによって、インクフィルム1000を選択的に光焼結させる。光源(図示せず)は、500ms未満のパルス幅、好ましくは350ms未満のパルス幅で2J/cmのエネルギー密度を提供するパルスランプであり得る。また、他の光源も使用可能である。空気中大気温度及び大気圧において、又は水素フォーミングガスや窒素等のガスを含む不活性ガス雰囲気において、光焼結が生じ得る。露光後、導電性フィルム1008及び非導電性フィルム1010の層が基板1002上に存在している(図10Cを参照)。その後、非導電性フィルム1010は除去される(図10Dを参照)。
【0113】
一般的に、ナノ粒子インクフィルムは、前側(つまり、インクが堆積している側)からフィルムを露光することによって光焼結され得る。この方法では、光は、基板を通過する必要なく、インクに直接当たる。この方法には多数の利点があり、特に基板が、使用される光に対して吸収性である場合が挙げられる。また、基板を介して堆積させたナノ粒子フィルムを露光してインクを光焼結させることが有利である場合もある。例えば、カプトン(登録商標)基板上の銅ナノ粒子インクフィルムの場合、基板の裏側からインクを露光することは、ナノ粒子フィルムと基板との間の接着性を改善することができる。何故ならば、光の大部分を吸収し最高温度に達する銅の層がカプトン(登録商標)基板の表面付近にあるからである。これは、露光がナノ粒子フィルムと基板との間の界面に到達しないような厚いフィルムの場合に、特に有利である。界面層が硬化されない場合、その接着は非常に弱い。
【0114】
フレキシブルディスプレイ、スマートパッケージング及び低コスト電子タグの応用に対して、ポリイミド、ポリエチレン等のフレキシブル基板上に導体を適用することはますます関心が持たれている。導電性パターンを生じさせる主な方法は、100μmを越えるフィーチャに対してはスクリーン印刷であり、100μm未満のフィーチャに対しては薄膜及びエッチング法である。導体のインクジェット印刷は、明確なフィーチャを形成するための方法として有望である。しかしながら、50μm未満の微細パターンを達成するのがインクジェット印刷では非常に困難であり、コストがかかる。後続の熱処理が、所望の導電性を達成するために通常必要とされる。銅については、銅を熱処理する際の銅の酸化を防止するために、不活性雰囲気が必ず必要とされる。ポスト硬化の温度が高いほど、達成される導電性が良くなる。これは、熱的に安定な基板のみが使用可能であることを意味する。また、印刷金属粒子の性能は、導電性、接着性及び一様性に関して、基板により顕著に異なる。インクジェットは元来、低粘度の技術であるので、金属ナノ粒子インク中の金属の体積含有量は低い。これは事実上インライン印刷の速度を制限する。何故ならば、必要な金属含有量を堆積させるのに多重パスが必要とされ得るからである。最後に、今日において、ナノ粒子法は主に銀に限定されている。何故ならば、他の金属はより高い温度及び/又は不活性雰囲気を必要とするからである。このような物質のコストは、大量生産の応用においては比較的高い。従って、銅のようなはるかに安い金属が、コスト効率の高い大量生産が必要とされる多数の応用における可能性を有する。
【0115】
急速光硬化(適切な波長のパルスレーザ、短パルスランプを含む)が、金属インクを硬化させるのに用いられてきた。レーザダイレクトライティング法を用いて、金属フィルムをパターン化することができる。しかしながら、レーザビームの小さな面積に起因して、ハードマスクを直接用いることによって、大面積にわたって明確なパターンを生じさせることはできない。他方、レーザダイレクトライティング法では、高スループット製造を達成することが非常に難しい。しかしながら、短パルスランプは、比較的大面積にわたって金属フィルムを硬化させることができるだけでなく、半導体産業のリソグラフィプロセス用に広く用いられているようなハードマスクを用いることによって金属フィルムをパターン化することもできる。しかしながら、ランプを用いることによる通常のリソグラフィプロセスは単に、フォトレジストを露光することによって所望のパターンを生じさせるだけのものである。
【0116】
本願では、高エネルギーで短パルスの光ランプ又はレーザを用いて、低温で金属インクを硬化させると同時に、ハードマスクで金属インクをパターン化する。この方法は、半導体産業のリソグラフィプロセスにおいて用いられるようなマスクを用いることによって、50μm未満の超微細パターンを提供する可能性を有する。最も重要なのは、低コストの銅インクを空気中で硬化及びパターン化させて、多様な応用(RFID(Radio‐frequency identification)アンテナ等)用の導電性パターンを生じさせることができるということである。
【0117】
金属インク(低コストの銅インク等)は、ポリマー又は紙基板上に堆積可能である。スプレー、ドローダウン、スピンキャスティングや他の印刷法を用いて、金属インクを堆積させ得る。空気中でのプレ硬化の後において、銅フィルム(未だ絶縁性)は、急速光硬化の準備が出来ている状態にある。図23に示されるようなRFIDアンテナ等の所望のパターンを備えたマスクを用いて、デザインどおりのパターンを得ることができる。
【0118】
非硬化領域(ハードマスクによって画定される)は一般的に、基板に対する接着性が非常に悪く、絶縁性(>2×107Ω)であり、硬化領域は、接着性が非常に良く高導電性である。非硬化領域上の金属は、溶媒又は水によって容易に洗い流すことができ、新たな金属インクを作製するために収集及び再利用可能である。非硬化領域は絶縁性であるので、金属粒子は、パターン化された導電性パターンに対して影響を与えない。よって、基板上に金属ナノ粒子を残留させることもできる。
【0119】
実施例1. ポリイミド基板上の銅インクの硬化
スプレー、ドローダウン、スピンキャスティング等の低コスト堆積法用に、銅インクを配合する。銅インクは、銅ナノ粒子、媒体、分散剤を含む。媒体は、イソプロピルアルコール(IPA,isopropyl alcohol)、トルエン、ブチルベンゼン又は水等であり得る。アミン(例えばヘキシルアミン)を、銅ナノ粒子用の分散剤として使用する。銅ナノ粒子のサイズの範囲は、2nmから200nmである。銅の添加濃度は10%から50%であり得る。インク中の分散剤の添加濃度は1%から30%であり得る。銅インクは、ドローダウンプロセスを用いて、ポリイミド基板上に堆積される。硬化前の銅フィルムの厚さは1μmから10μmであり得る。銅フィルムは、光硬化の前に、空気中100℃で30分間プレ硬化される。プレ硬化されたフィルムは絶縁性であり、2×107Ωを超える抵抗を有する。
【0120】
半導体産業のリソグラフィプロセス用にマスクを作るために採用されているような方法によって、溶融シリカ又は石英上にデザインパターンを作る。100nmを超える厚さの金属フィルム(クロム等)を、赤外線から紫外線の波長に対して透明な基板上に堆積させ得る。透明基板の厚さは、パターンに対する解像度の高さがどのようなものであるかに応じて、0.2mm以上の薄さとなり得る。デザインパターンは、リソグラフィツール及びエッチングを用いることによって、作られ得る。
【0121】
図10A〜Dに示されるように、高出力キセノンランプを採用し、最大350ミリ秒のパルス幅で2J/cmのエネルギー密度を伝える光学システムを用いて、銅インクを硬化させる。光硬化は、空気中室温で行うことができる。また、必要であれば、硬化プロセスは、低温及び不活性雰囲気においても行うことができる。光硬化後の銅フィルムからは、略10−5オーム・cmから3×10−6オーム・cmの範囲の抵抗率が得られうる。フィルムの不揮発性成分は全量の10%未満である。堆積及び露光段階を繰り返すことによって、多層の導電性フィルムが生成される。硬化フィルム中の銅酸化物の濃度は30%を超えない。図23に示されるRFIDアンテナ導電性パターンを、銅インクから形成することができる。
【0122】
実施例2.標準的なフォトマスクを用いた、ポリイミド基板上の銅インクの硬化
図24Aは、半導体産業において用いられる石英プレート上に形成した標準的なフォトマスクを示す。暗色領域は、高エネルギー光を通過させることのできる開口部であり、残りの領域は、受光した高エネルギー光を反射及び吸収する金属フィルムでコーティングされている。フォトマスクの開口部を介して受光された高エネルギー光は、基板上の銅インクを選択的に焼結させて、銅インクの他の領域は高エネルギー光に露光されないままである。銅インクの露光領域は、融合してポリイミド基板に接着し、非露光領域は基板に対する接着性が非常に弱い。図24Bは、銅インクの非露光領域を、水又は他の溶媒で洗い流すことによって、又は単純にテープによって除去した後に、フォトマスクに対応して正確にパターン化された銅フィルムが得られ、使用されたフォトマスクによって画定された銅トレースと同じ解像度が達成される。これは、銅パターンの解像度がフォトマスクの解像度に依存することを示す。
【0123】
銅トレースのマイクロメートル又はサブマイクロメートルの解像度が、高解像度フォトマスクを用いることによって、達成可能である。
【0124】
実施例3.標準的な光マスクを用いた、ポリイミド基板上の銅インクの硬化
図25Aは、カプトンフィルムから作製されたシャドウマスクを示す。白色領域はカプトン基板の開口部であり、高エネルギー光を通過させる。カプトンフィルムは、UV光、可視光及び赤外光を一部吸収して、その通過光がナノ粒子を焼結させるのに十分なエネルギーを有さないようにする一方で、開口部を通過した高エネルギー光は、ナノ粒子を焼結させるのに十分なエネルギーを有する。図25Bは、非焼結領域を水又は溶媒で洗い流すことによって、又はテープによって除去した後に、カプトンシャドウマスクに対応してパターン化された銅フィルムが得られることを示す。
【0125】
ナノ粒子インクの配合には、一以上の媒体(例えば溶媒)が含まれ得て、その中にナノ粒子が保存される。例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、トルエン、ブチルベンゼン、水等が挙げられる。また、インクの配合には、媒体中のナノ粒子の分散を促進する分散剤も含まれ得る。分散剤の一例はアミン(例えばヘキシルアミン)である。ナノ粒子のサイズは直径2nmから1000nmの範囲であり得る。溶媒中のナノ粒子の濃度は、10%から50%の範囲であり得る。分散剤の濃度は、1%から30%の範囲であり得る。
【0126】
上述のように、銅酸化物の存在は、ナノ粒子フィルムの抵抗率を上昇させる傾向にある。銅酸化物の量を減少又は削除する方法は多数存在している。これらの方法は典型的に、インク溶液の配合の前にナノ粒子から酸化物を除去することを伴う。例えば、銅酸化物は、銅ナノ粒子にアスコルビン酸又はエチレンジアミンの溶液を加えることによって除去可能である。アスコルビン又はエチレンジアミン溶液は銅酸化物を銅に還元する。酸化物が除去されると、ナノ粒子をインク溶媒に加えることができる。ナノ粒子上に酸化物が再形成されることを防止するため、ナノ粒子は、フォーミングガス、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気で加えられ得る。一部の場合、熱硬化又は光焼結プロセス中の酸化物形成を回避するため、ナノ粒子を封止することができる。このような封止物質は、NanoSal(TM)(Salvona Technologies社から入手可能な固体ナノスフィアから成る特許物質)である。一部の場合、インクの配合には、インサイチュー(in situ)でナノ粒子から酸化物を除去する物質が含まれ得る。このような化合物はグリオキシル酸である。
【0127】
一部の実施では、酸化物を、インク配合中に含まれる溶液を用いて除去することができる。例えば、或る種のインク配合は、銅酸化物を除去するためにグリオキシル酸を含むことができる。まず、ナノ粒子上存在している銅ナノ粒子の少なくとも一部を除去するグリオキシル酸が、銅ナノ粒子に加えられる。その後、ナノ粒子‐酸溶液が、水及び/又はIPAを含む溶液に加えられて、インク配合が提供される。残留している銅酸化物を、インク配合の超音波処理を用いて更に除去することができる。その後、溶液を基板上に滴下堆積又は印刷して、乾燥させる。
【0128】
以下の表1は、空気中で乾燥させたグリオキシル処理ナノ粒子フィルムに対する、及び、60℃のオーブンで1時間にわたって乾燥させた他のグリオキシル処理フィルムに対する銅酸化物含有量の減少を表すXRDデータを示す。また、この表は、グリオキシル酸で処理されていないナノ粒子フィルムに対するデータも含む。インク配合には、20〜40nmの銅ナノ粒子が含まれていた。グリオキシル酸溶液は、1グラムの銅、4ミリリットルの水及び0.1グラムのグリオキシル酸を含んでいた。表から見て取れるように、XRDピークの高さ及び面積におけるCu2O対銅の相対比は、60℃で1時間にわたってオーブン乾燥させたグリオキシル酸処理フィルムに対して低い。
【0129】
【表8】
【0130】
パルスレーザビームを用いた微細加工は、100nmに近い解像度で2次元又は3次元(2D又は3D)微細構造を形成できる性能によって、かなりの注目を集めている(非特許文献1、非特許文献2)。しかしながら、フォトポリマー製の2D又は3D微細構造は、非導電性であるので、そのマイクロエレクトロニクス装置及びMEMS(Micro‐electromechanical system)における使用は制限されている。この制限を克服するため、いくつかのグループが、二光子プロセスを採用した金属微細構造の3Dダイレクトライティングを研究している(非特許文献3)。このような方法は、銀や金等の金属イオンの光還元に基づいている。他のグループは、金属微細構造を形成するために金属イオンを含有するポリマーフィルムを用いている(非特許文献4)。このような方法では、製造後の残留ポリマーマトリクス又は残留物に起因して、高導電性の導体を生成することができない。銅は広範に応用されている電子物質であり、銀や金よりもはるかに安価である。より高性能を達成するために、半導体装置の密度が増大し、回路素子のサイズが減少すると、BEOL(back−end−of−line)におけるRC(resistance capacitance)遅延時間が増大し、回路性能を左右する。銅配線は、従来のアルミニウム配線と比較してのこの低い抵抗に起因して、シリコン集積回路において適用されている。また、銅は、銀等の他の金属が有さない高いエレクトロマイグレーション耐性を有し、半導体産業における配線として最良の選択となっている。
【0131】
電気メッキ銅、化学エッチング銅、物理及び化学気相堆積銅が、電子産業において最も広範に用いられている。フォトリソグラフィプロセスは一般的に、デザインされた銅トレースを生成することを要する。銅のレーザ誘起堆積は、導電性トラック及び回路の高速製造及び修復の有望な方法として知られている。導電性の銅微細構造の高スループット且つ低コスト製造を可能にするレーザダイレクトライティング法の利点は、以下のとおりである:
1)高導電性微細構造のダイレクトライティングは、何らフォトリソグラフィプロセスを必要としない。残留する未処理物質は容易に取り除くことができる。
2)電気メッキ銅に対して広範に用いられているシード層が必要とされない。
3)この追加のマイクロリソグラフィ法は安価であり(フォトリソグラフィが必要とされない)、高スループットである。微細構造及びサブマイクロ構造は、大気中で高速位置決めシステム及び走査レーザビームを用いることによって、予定位置に直接形成可能である。
4)導電性3D微細構造は、何らフォトリソグラフィプロセスを用いずに、レーザバイレーザプロセスで構築可能である。
【0132】
マスクを用いた光焼結又はレーザライティングにおいては、対象の装置の要求に応じて、多様なインク前駆体の化学的性質が選択される(非特許文献5)。銅ナノインクは、短い高強度光パルスのマイクロ秒パルス期間を有する光焼結システムを用いて、優れた接着性でプラスチック基板に対して焼結される。鏡のように滑らかな表面、非常に低い有機残留物の量、優れた接着性及び低抵抗率(バルク銅に近い)を備えた銅フィルムが、空気中室温でこのマイクロ秒パルスランプを用いて、フレキシブル基板上に得られる。このプロセスは、単一のパルスで大面積にわたって銅ナノインクを焼結させて、低解像度の銅トレースを生成することができ、フレキシブル基板上のロールツーロールのコスト効率的な製造に適している。しかしながら、この相対的に長いパルスでは、優れた接着力、及びシリコン基板上の銅ナノ粒子を光焼結させるのに十分なパルスエネルギーを達成することが非常に難しい。その理由は、シリコン等の無機基板ははるかに高い熱伝導率及び融点を有するからである。長パルスの光では、基板及び周辺に移ってしまう高密度光子からの変換熱の割合が、短いパルスレーザを用いた場合よりもはるかに高い。超短波レーザシステムでは、銅ナノ粒子の完全な焼結を達成することができ、シリコン基板上への優れた接着を得ることができる。更に、超短波パルスレーザは、その焼結プロセスの非常に短い期間に起因して、再酸化なしで、銅酸化物を金属銅に効率的に光還元し得る。ナノ秒更にはフェムト秒レーザは、ナノ粒子の焼結に対してはるかに高い温度をもたらし、マイクロフィーチャの銅トレースを再酸化及び生成する可能性が少ない。
【0133】
TSVチップ接続で採用されている技術には、TSV形成、絶縁体/バリア/シード堆積、ビア銅充填プロセス、表面銅除去、ウェーハ薄化、検査、試験等が含まれる。特に、プロセスロバスト性及び銅堆積の速度がSTVチップ集積を実現するのに最も重要である。現時点では、電気メッキ銅が、ビアを充填する主要な選択肢である。ビアを充填するプロセスには一般的に三種類存在している。即ち、ビアの側壁に沿ったライニング、ビア内部の完全充填、ビア上方のスタッド形成での完全充填である(非特許文献6)。製造プロセス中の何時ビアが形成されるのかによって、多様なスルーシリコンビア(TSV,through−silicon via)を分類可能である。一般的に、ディープ反応性イオンエッチングプロセスを用いて、シリコンに対してビア又はホールがエッチングされる。その後、このホールは、CVD法によって堆積させた誘電体スリーブでライニングされる。その後、物理気相堆積(PVD,physical vapor deposition)によって、拡散バリア及び銅シード層を堆積させる。そして、ホールを電気メッキ銅で充填する。ビアを充填するのに銅の電気メッキを用いることに対してはいくつかの主な欠点がある:
1)電気メッキプロセスでは、高アスペクト比でビアを充填するのに時間がかかり過ぎる。
2)銅の電気メッキ用のバリア/シード層の堆積用のPVD設備を、高アスペクト比のビアの一様なコーティングを有するために開発しなければならない。
3)ビアを充填するため、化学薬品及び添加剤を改良する必要がある。化学添加剤の消費量も重要である。
4)銅トレースを生成するのに、フォトリソグラフィプロセスが必要とされる。
【0134】
10〜40μmの範囲で、50〜100μmの深さ、20〜50μmの間隔でビア開口部を充填することが、半導体産業によって現在追求されている。同様のフィーチャも必要とされている。現状では、TSV技術での主な挑戦は、如何にして高い生産性でコスト効率的に作製し、ボイド無しにビアを充填し、良好な電気的結果を達成するかということである。
【0135】
低粘性銅ナノインクを用いることによって、ビアを、インクジェット印刷又は浸漬堆積によって充填することができる。空気中100℃でのプレ硬化後、ナノ粒子は、マスクを用いた高エネルギーフラッシュランプ又はパルスレーザビームによって焼結される。走査システム及び多層堆積によって、レーザ焼結又は光焼結銅3D微細構造を形成して、空気中室温でビアを充填することができる。ビア中の堆積にシード層は必要とされない。この方法は単純で高速であり、基板上の所望の位置にのみ物質を堆積させることによって高価な物質の使用を節約する。一方、従来の方法(リソグラフィ)は、基板全体に対して金属コーティングを適用し、化学的エッチングによって必要ではない層を除去するので、高有毒廃棄物が生じる。従って、このレーザ誘起導電性微細構造化は、電子産業に対して、コスト効率的で高スループットな方法を提供する。
【0136】
図22は、ビア内に銅ナノインクを充填し、高速位置決め及び合焦レーザの走査によって銅ナノ粒子を焼結させ、高スループットで低コストの2D又は3D導電性微細構造の製造を提供するプロセスを示す。段階(a)では、インクジェット又は浸漬堆積を用いて、ビア内に銅ナノインクを充填することができる。段階(b)では、インク中の溶媒を乾燥及び除去する。段階(c)では、高速位置決めと、レーザビームの走査又はマスクを用いた高エネルギー光フラッシュとを組み合わせて、銅インクを非常に短い時間で焼結させて、基板に接着させる。未焼結銅インクは、接着性が優れないので、容易に除去可能である。
【0137】
単一のチップの配線用の銅の微細トレースは無数存在しているが、レーザダイレクトライティングで製造するには時間がかかり過ぎる。現状では、“ダマシン電気メッキ銅”が、当該分野において主流である。チップ間のTSVの数は非常に限られている。従って、市販の高速高精度位置決め装置を組み合わせると、3Dパッケージングに対するナノ粒子のレーザ焼結は、高スループット且つ低コスト製造の要求を満たす適切な方法となる。一部の実施では、ナノ粒子インク配合を用いて、平坦な基板上の導電性パターン以外の装置を形成することができる。例えば、ナノ粒子インク配合を用いて、金属コーティングされた繊維を提供することができる。金属コーティングされた繊維(ニッケル及び銅コーティングされた繊維)は典型的に、炭素複合材又は金属複合材産業において用いられ、高強度で導電性の物質を提供する。しかしながら、電着によって金属コーティングされた繊維を形成するためには、一般的に、繊維が導電性であることが要される。炭素繊維はある程度導電性であり得るが、他の繊維(ナイロン、カプトン(登録商標)、ケブラー(登録商標)(Kevlar(登録商標))や他のポリマー系物質は非導電性である。従って、これらの繊維上に電着を実施することは難しい。
【0138】
導電性繊維及び非導電性繊維を両方とも金属でコーティングするために、ニッケル、クロム、銅及び/又は他の金属ナノ粒子を含むナノ粒子インク配合中に、繊維を浸漬させることができる。インクを乾燥させて溶媒を除去した後、光焼結のために、繊維を光源に露光することができる。インク配合に依存して、光パワーは変化する。上述のように、金属ナノ粒子は、光焼結段階中に融合して、繊維に接着する高導電性金属コーティングを提供する。一部の場合、図11の例に示されるようなバッチプロセスにおいて、プロセスを完了させることができる。
【0139】
図11は、金属インク及び光焼結を用いた繊維のコーティングのロールツーロールプロセスを示す。繊維1100はスプール1102から分配されて、その後、インクバス1104に入れられる。他の方法(スプレー等)を用いて、繊維上にインクをコーティングすることもできる。更に、繊維の周囲の全体未満をコーティングする方法を用いることができる。その後、コーティングされた繊維1106は、乾燥器1108を通過して、インクから水及び/又は溶媒を除去する。乾燥しインクコーティングされた繊維1110は、光焼結ステーション1112を通過する。ステーション1112は、インクコーティングされた繊維を短期間露光するように稼動される一続きのフラッシュランプを含むことができる。ランプの稼動間隔は、繊維の部分部分が一度よりも多く露光されないように構成可能である。更に、ステーション1112は、繊維1110の周囲の全体未満を露光及び硬化するように構成可能である。その後、光焼結された繊維1114は、繊維巻き取りスプール1116によって巻き取られる。代わりに、繊維1114を断片に切断して積層させることができる。このプロセスは、個々の繊維又は繊維の束に対して機能する。
【0140】
本発明の多数の実施形態を説明してきた。しかしながら、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、多様な変更を行うことができるということは理解されたい。他の実施形態も特許請求の範囲内に存する。
【0141】
同様のプロセスは、短い繊維又は切断された繊維にも適用可能である。繊維を金属粒子インクと混合して、その後、繊維を溶液から取り出して乾燥させることができる。繊維は、乾燥の前又は後のいずれかにおいて可動表面上に置かれ得る。その表面は、光焼結ステーション内を移動して、その後、収集及びパッケージングされるか、又は、更なる処理段階に送られる。また、可動表面は、光を通過させるように透明であり得る。
【符号の説明】
【0142】
100 システム
102 基板
104 プリンタ装置
106 貯蔵区画
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2007年5月18日出願の米国仮出願第60/938975号の優先権(米国特許法第119条(e))を主張するものであり、その全内容は参照として本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本願は銅等の金属インクを対象としている。フレックステープコネクタ及び印刷回路板(PCB,printed circuit board)上の金属導体は一般的に銅(Cu)線であり、PCB上に積層されるか、電気メッキ法によって堆積される。銅物質をパターン化して導電線、ワイヤ、部品間の接続リードを形成するには、ブランケット銅フィルムのフォトリソグラフィ及び酸エッチングが必要である。代わりに、このような方法を用いて、メッキプロセス中に銅線パターンを画定することができる。いずれの場合にも、銅をエッチングするのに用いられる化学剤及びプロセスから生じる結果物の化学廃棄物は、製造される製品のコストを顕著に増加させる。そのコストは、エッチング及びフォトパターニングプロセス段階に必要な時間及び労力によって更に増加する。
【0003】
PCB上に金属導体を形成するための積層及び電気メッキの代替法は、金属線を印刷することを含む。銀金属系インク及びペーストが、インクジェット印刷、スクリーン印刷や他の印刷法用に存在している。銀は高導電性で、低温において処理可能であるが、高価な金属であり、多くの応用においてコスト的に手が出せない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S.Maruo、O.Nakamura、S.Kawata、“Three‐dimensional microfabrication with two−photon absorped photopolymerization”、Opt.Lett.、1997年、第22巻、p.132−134
【非特許文献2】S.Maruo、H.B.Sun、T.Tanaka、S.Kawata、“Finer features for functional devices”、Nature、2001年、第412巻、p.697−698
【非特許文献3】T.Tanaka、A.Ishikawa、S.Kawata、“Two−photon−induced reduction of metal ions for fabricating three−dimension electrically conductive metallic microstructure”、Apply.Phys.Lett.、2006年、第88巻、p.081107
【非特許文献4】T.Baldacchini、A.C.Pons他、“Multiphoton laser direct writing of two dimensional silver structures”、Opt.Express、2005年、第13巻、p.1275−1280
【非特許文献5】D.S.Ginley他、Electrochemical and Solid−State Letters、2001年、第4巻、第8号、p.C58
【非特許文献6】B.Kim、T.Ritzdorf、SEMI Technology Symposium (STS) Proceedings、Semicon Korea、2006年、p.269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
銀とは対照的に、銅金属は電子機器産業において標準的であり、コストは略十分の一である。よって、銅は、特に電気的配線、無線周波数IDタグ、ディスプレイ製造プロセス等の応用において銀の適切な代替物である。
【0006】
本発明の一以上の実施形態の詳細について、以下の説明及び添付図面で説明する。他の特徴は、明細書、特許請求の範囲、図面から明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】基板表面上に導体を形成するためのシステムを示す。
【図2A】X線回折グラフである。
【図2B】光焼結の前後の純銅酸化物フィルムのXRDパターンのグラフである。
【図3A】X線回折グラフである。
【図3B】X線回折グラフである。
【図4】多様なインク配合に対するフィルムの抵抗率対フラッシュランプ又は光焼結電圧を示すグラフである。
【図5】多様なライン厚さに対するフィルムの抵抗率対フラッシュランプ電圧を示すグラフである。
【図6】キセノンランプのスペクトル放射強度を示すグラフである。
【図7】多様なインク配合に対するフィルムの抵抗率対フラッシュランプ電圧を示すグラフである。
【図8A】ナノ粒子フィルムのインクジェット及び光焼結用のシステムを示す。
【図8B】光焼結プロセスを示すフローチャートである。
【図9A】ナノ粒子フィルムを印刷及び光焼結させる一例を示す。
【図9B】光焼結プロセスを示すフローチャートである。
【図10A】ハードマスクを用いてナノ粒子フィルムを光焼結させるプロセスを示す。
【図10B】ハードマスクを用いてナノ粒子フィルムを光焼結させるプロセスを示す。
【図10C】ハードマスクを用いてナノ粒子フィルムを光焼結させるプロセスを示す。
【図10D】ハードマスクを用いてナノ粒子フィルムを光焼結させるプロセスを示す。
【図11】繊維をコーティングするロールツーロールプロセスを示す。
【図12】異なるサイズの銅ナノ粒子から作製された前処理インクに対する抵抗率データのグラフである。
【図13】異なるサイズの銅ナノ粒子から作製された前処理インクに対する抵抗率対粒径のグラフである。
【図14】異なるサイズの銅ナノ粒子のX線回折グラフである。
【図15】異なるサイズの銅ナノ粒子のX線回折グラフである。
【図16】異なるサイズの銅ナノ粒子のX線回折グラフである。
【図17】異なるサイズの銅ナノ粒子のX線回折グラフである。
【図18】プロパン、ヘキサン及びデカンの直鎖構造を示す。
【図19】接着性及び厚さ対抵抗率のグラフである。
【図20】銅ナノ粒子上の二層の分散剤の図である。
【図21】銅ナノ粒子上の二層のポリマー分散剤の図である。
【図22】ビア内に銅ナノインクを充填して、高速位置決め及び合焦レーザの走査によって銅ナノ粒子を焼結させるためのプロセスを示す。
【図23】RFIDアンテナ導電性パターンの例を示す。
【図24A】如何にしてフォトマスクを用いて基板上に銅ナノ粒子をパターン化するのかを示す。
【図24B】如何にしてフォトマスクを用いて基板上に銅ナノ粒子をパターン化するのかを示す。
【図25A】如何にしてシャドウマスクを用いて基板上に銅ナノ粒子をパターン化するのかを示す。
【図25B】如何にしてシャドウマスクを用いて基板上に銅ナノ粒子をパターン化するのかを示す。
【図26】パッシベーション層として銅酸化物を備えた銅ナノ粒子を示す。
【図27】フィルム中の粒状性をもたらす光焼結中に形成される融合点の形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、基板102の表面上に導体を形成するためのシステム100が示されている。システム100は、基板表面上に金属インクを印刷することのできるプリンタ装置104(インクジェットプリンタ等)を含む。しかしながら、エアロゾルジェット等のインクを印刷することのいずれかの印刷装置も用いることができる。同様に、他の堆積装置も用いることができる。例えば、特に、スプレー、ドローダウン(draw−down)法、スピンキャスティングを用いて、金属インクを堆積させることができる。インクは、特定パターンに印刷されるか、又は、基板表面全体を覆い得る。プリンタ装置104は、印刷されるインク溶液を貯蔵するための貯蔵区画106を含む。代わりに、インク溶液は、外部のインク源からプリンタ装置104に提供され得る。
【0009】
インクジェット印刷に適した金属インクから銅系導体を生成するため、インク溶液は、インクジェットヘッドによって処理されるのに十分小さな銅粒子から作られ得る。一般的に、銅粒子は1マイクロメートル以下の直径を有し、場合によっては、0.1マイクロメートル(100ナノメートル)以下の直径となる。銅粒子は、貯蔵及び印刷中に、溶媒及び/又は懸濁液中に保持される。インクジェット溶液は、ガラス等のフレキシブルではない無機基板、又はポリイミドやポリエチレン等のフレキシブル有機基板を含む多数の基板上に印刷され得る。一部の実施では、紙基板を用いることができる。他の基板も用いられ得る。
【0010】
銅系インク溶液を基板表面上に印刷した後、インクをプレ硬化又は乾燥させる。インク溶液がポリマー基板上に印刷される場合、プレ硬化は、一般的に200℃未満、好ましくは100℃未満の温度で実施されて、基板の変化を防止する。変化としては、弾性/可塑性の変化、収縮、湾曲、及び/又は、基板に対する損傷が挙げられる。インク溶液は、空気中、又は窒素、アルゴン等の他のガス雰囲気で硬化され得る。不活性雰囲気でのプレ硬化は、インクジェット印刷システムのコスト及び複雑性を増加させ得る。典型的には、銅粒子は暗色又は黒色で、光を吸収するので、プレ硬化されたものも、暗色又は黒色で光を吸収する色を示す。更に、プレ硬化インクは高抵抗率を有する。プレ硬化インクの抵抗率は、溶融中に銅粒子同士を融合させることによって減じることができる。
【0011】
印刷された金属ナノ粒子を光フラッシュによって焼結させる前に、印刷されたイメージが乾燥していて液体成分が存在しないものとすることが望ましい。これは、印刷された金属ナノ粒子のホール形成をもたらす可能性のある液体の急速蒸発を防止するためである。このプレ焼結乾燥段階は、印刷された物質を空気中最大140℃の温度で最大1時間の期間にわたって加熱することによって、行われ得る。温度及び時間は、金属ナノ粒子の酸化を防止するために可能な限り低く、短いものとされる。このようなプレ焼結条件を用いることには、金属ナノ粒子インクの成分が、このような実験条件下で揮発性であることが必要とされる。このような条件下において急速酸化を経た印刷物質に対しては、又はその成分が残っている印刷物質に対しては、他の条件を用いてこれを除去し得る。これには、窒素、水素又はガス形成雰囲気下での高温への加熱、高真空条件下での加熱が含まれる。金属インクの配合に不揮発性成分が含まれることは避けるべきである。何故ならば、最終的な金属フィルム内での吸蔵によって、バルク金属のものよりも高い抵抗率を有するようになるからである。この乾燥段階を促進するため、低沸点及び低蒸発熱を有する液体が好ましく、このような条件下において完全に昇華する固体を用いることが望ましい。このような成分が得られない場合、このような熱条件下において揮発性生成物に分解する化合物という代替案を用いることができる。
【0012】
しかしながら、バルク銅は、略1000℃を超えるまで溶融しない。60nm以下の直径を有する銅粒子に対してはその溶融温度は低くなり得るが、それでも、その温度は、ポリマー基板に適したプロセス温度を超えている。更に、銅は、空気中高温において容易に酸化して、抵抗率の低下ではなく上昇に繋がり得る。
【0013】
基板を加熱し過ぎずに、及び/又は、ほとんど若しくは全く酸化させずに、銅粒子を融合させるため、プレ硬化フィルムを、キセノンランプ等の光源からの光の強力ではあるが短いパルスに晒すことによって、光焼結させ得る。光源からの光は、フィルムの暗色又は黒色に起因して、フィルムに吸収される。従って、直接加熱されるのでは基板ではなくてフィルムである。光強度が十分高く(数ジュール/平方センチメートルのオーダ)、パルス長が十分短いと(300マイクロ秒以下のオーダ)、プレ硬化フィルムに移されるエネルギーは、基板に実質的なエネルギーを移すことなく、銅粒子を互いに融合させるのに十分なものとなる。
【0014】
光焼結は、銀及び/又は銅粒子を含むフィルムに対して適用され得る。光焼結プロセスは、他の金属粒子フィルムに対しても機能する。光焼結銀フィルムの抵抗率は、バルクの銀の抵抗率の略四倍である。銅の光焼結フィルムに対して、抵抗率は、バルクの銅よりも10から40倍のオーダで高い。例えば、光焼結銅ナノ粒子フィルムの抵抗率は、10−5から10−7オーム・cmの範囲内である。このような抵抗率の値は、電気的配線、RFIDタグ等の応用における使用に対して、また、ガラス基板及びフレキシブル基板に対するディスプレイ製造プロセスに対して、十分なものである。更に、光焼結は、位置合わせのために正確な光学系を必要とせず、大面積の物質の製造に対してスケールアップ可能である。
【0015】
金属ナノ粒子のインクへの配合には、分散剤の添加が必要となり得る。分散剤は、金属ナノ粒子と結び付く頭部基と、インクの液相成分混合物中に用いられる媒体(溶媒)に対して相溶性の末端基を有する。このような分散剤は一般的に、疎水性の端部、親水性の端部を有し、末端基は、長鎖アルキル又はアルコキシ基官能性を優先的に有することが望ましい。頭部基のデザインは、“HSAB則(hard and soft acid and base principle)”に基づいて排除体積計算を用いて、行われ得る。
【0016】
金属及びリガンド(分散剤)の異なる錯体形成挙動は、電子対供与ルイス塩基及び電子対受容ルイス酸の観点から説明される。これらの間の関連性は、以下の式に示される:
ルイス酸 + ルイス塩基 → ルイス酸/ルイス塩基錯体
【0017】
ルイス酸及びルイス塩基は、硬い、中間、又は軟らかいとして分類される。HSAB則によると、“硬い酸は硬い塩基と結合することを好み”、“軟らかい酸は軟らかい塩基と結合することを好む”。
【0018】
多様な原子、イオン、分子及び分子イオンが、硬い、中間、軟らかいルイス酸又はルイス塩基として分類されていて、従来の金属/リガンド無機化学から、有機化学の領域にまで分析が及んでいる。表A及び表Bは、ルイス酸及び塩基を三つのカテゴリーに分類する簡単な表を提供する。
【0019】
【表1】
【0020】
表Aから重要な点が明らかになる。第一に、元素の銅は軟らかい。そして、銅ナノ粒子はCu2+のような挙動を示し中間として分類されるが、より大きな銅ナノ粒子は、軟らかいルイス酸の挙動を示し得る。同様に、Cu2Oから形成されるCu+も、軟らかいと分類される。
【0021】
【表2】
【0022】
銅ナノ粒子が中間又は軟らかいのいずれかとして分類されるということを前提に続けると、中間又は軟らかいルイス塩基に分類される分散剤を対象とすることが有利となる。
【0023】
硬い[ルイス]酸は硬い[ルイス]塩基に結合して、電荷の制御された(イオン)錯体を与える。このような相互作用は、ルイス酸及びルイス塩基種の+/−電荷によって左右される。軟らかい[ルイス]酸は、軟らかい[ルイス]塩基に結合して、FMOの制御された(共有結合)錯体を与える。このような相互作用は、参加しているフロンティア分子軌道(FMO,frontier molecular orbital)、最高占有分子軌道(HOMO,highest occupied molecular orbital)、最低空分子軌道(LUMO,lowest unoccupied molecular orbital)のエネルギーによって左右される。この分析を用いて、電荷の制御された及びFMOの制御されたルイス酸/塩基錯体形成の寄与を分離及び定量化する。
【0024】
硬いルイス酸は、
小さなイオン半径の原子中心を有し、
高い正電荷を有し、
その原子価殻に電子対を含まない種であり、
低い電子親和力を有し、
強く溶媒和する傾向があり、
高エネルギーLUMOのものである。
【0025】
軟らかいルイス酸は、
大きな半径を有し、
低い又は部分正電荷を有し、
その原子価殻に電子対を有し、
分極及び酸化し易く、
低エネルギーLUMOのものであるが、大きな強度のLUMO係数を有する。
【0026】
硬いルイス塩基は、
小さいが、高溶媒和で電気陰性原子中心(3.0〜4.0)を有し、
弱く分極可能な種であり、
酸化し難く、
高エネルギーHOMOのものである。
【0027】
軟らかいルイス塩基は、
2.5〜3.0の範囲の中程度の電気陰性度の大型の原子を有し、
分極及び酸化し易く、
低エネルギーHOMOのものであるが、大きな強度のHOMO係数を有する。
【0028】
中間の種は、中間の性質を有する。種が全ての性質を有する必要はない。HSABは理論ではない。何故ならば、化学結合の強さの変化を説明しないからである。HSAB則における‘好む’という用語は、むしろ適度な効果を意味するものであり、HSABは、ルイス酸‐ルイス塩基のペアを選択する際のガイドとして使用されるべきものであり、鉄則として使用されるべきものではない。
【0029】
化学的な硬さの定量的な定義によって、定性的なHSAB理論に拡張される。マリケンの定義による電気陰性度は、原子又は分子中の固定核電荷でのエネルギー対電子量のプロットの一次導関数であり、化学的な硬さは二次導関数である。従って、硬さ及び電気陰性度は関係していて、この意味において、硬さは、変形又は変化に対する耐性の尺度である。値がゼロだと、最大の軟らかさを示す(表C)。
【0030】
【表3】
【0031】
分散剤として使用される化合物は、長鎖アルキル(CH2)n又はエトキシ(CH2CH2O)n基を有する。これらの基は、炭素‐炭素又は炭素‐酸素の単結合によって互いに結合している。このような単結合は、3次元的な振動及び回転を許容するので、高度なフレキシビリティが与えられる。フレキシブルで長鎖の末端基を有する分散剤を用いることの必要性に対する説明は、振動及び回転の組み合わせに対して、これらの基は、短鎖の末端基よりも多くの空間を占有し、その空間が、近づいてくる第二の銅ナノ粒子に対してアクセス可能なものではないということである。この排除体積効果を定量化するため、プロパン(C3H8)、ヘキサン(C6H14)、デカン(C12H26)に対して計算を行った。これらのアルキル鎖化合物の構造が、図18に示されている。それぞれのケースにおいて、鎖状構造が示されていて、C‐C‐Cの角度は、109°28’に近く、四面体角である。
【0032】
計算結果を表Dにまとめる。
【0033】
【表4】
【0034】
長さ(オングストローム(Å))‐延伸した構造での端から端までの(重原子の)距離。プロパンに対しては、C1からC3までの距離であり、ヘキサンに対しては、C1からC6までの距離であり、デカンに対しては、C1からC12までの距離である。
【0035】
“排除”体積(Å)‐(1/6)πd3としての長さ(d)に基づいた体積。所定の対象に対する排除体積は、所定の対象を取り囲み含有し他の対象が排除される体積として定義される。排除体積は、常に一対の対象に対して定義される。
【0036】
ファンデルワールス体積(Å)‐ファンデルワールス半径に基づいた体積。共有結合していない二つの原子は互いに、特定の最低距離よりも近づくことができない。どれだけ近接するかは含まれる原子の種類に依存する。この現象は、各原子タイプに対してファンデルワールス半径と呼ばれる値を割り当てることによって説明可能であり、所定の原子対に対するそれらの量の和が、最も近づくことのできる距離に等しいとする。ここで、ファンデルワールス半径は、アルキル又はエトキシ鎖の水素原子の“接触点”である。ファンデルワールス体積は、各重原子がそのファンデルワールス半径の分子表面によって表される分子の体積である。ここで、分子表面は、ファンデルワールス表示における分子を回転させた球(典型的には半径1.4Å)によって形成される表面である。
【0037】
分子体積(Å)‐1.4Åの球形プローブを回転させることによって閉じられる体積。これは、一モルの化合物によって占有される体積であり、分子量を密度で割ったものに数値的に等しい。分子体積は、上記排除体積の体積、又は分子のゼロではないサイズに起因して占有され得ない体積である。
【0038】
分子表面(Å)‐1.4Åの球形プローブを回転させることによって閉じられる面積。これは、表面積を求めることと等価である。
【0039】
これらのデータは、その距離に対する三乗での依存性に起因して、鎖の長さが増大すると、排除体積が大きく増大するということを示す。この“排除”体積は、フレキシブルなアルキル(又はエトキシ)鎖によって“占有される”空間を表し、第二の銅ナノ粒子によって占有され得ない空間である。この“排除”体積が大きくなると、より効果的に分散剤が銅ナノ粒子を分離されたままに保つ状態になる。この“排除”体積の第二の側面は、大きな値が、低濃度の化合物に対して、ナノ粒子の高レベル被覆、よって、分散剤としての高度の有効性の提供を効果的なものにすることを可能にすることである。
【0040】
光硬化によって硬化して優れた導電体を与えるインクの配合において適切に用いられているポリマーは、トリトン(Triton)X‐100、トリトンX‐15、トリトンX‐45、トリトンQS‐15、BYK111、MA、SMA、PT、HCS‐P、HCS‐N、PVP、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリシロキサンである。
【0041】
分散剤としてのポリマーの使用の背後にある論拠は、導電性インクの媒体として用いられる典型的な液体よりも高い粘度を有すること、そして、金属ナノ粒子に対する多数の結合サイトに起因して、モノマーの分散剤よりも低い濃度で使用することができるが、それでもなお金属ナノ粒子の単層被覆を提供することである。より高い粘度が、インクジェット法を用いて印刷可能な優れた分散液及びインクの生成を容易にするので、重要である。より低い濃度の分散剤が、硬化(焼結)プロセス中に除去される有機物質が少なくなるので、好ましい。
【0042】
粉末を安定に分散させるには三つの作用が必要とされる。その三つは、表面を濡らすこと、凝集体をばらばらにすること、分散した粒子を凝集に対して安定化することである。分散剤及び界面活性剤は各段階において重要な役割を果たすことが多いが、或る一つの段階で最高の性能を提供する分散剤が、後続段階に対して最高のものとは限らない。結果として、複数の洗浄剤及び界面活性剤が必要とされ得る。
【0043】
粉末を濡らすことは、優れた分散に必ずしも繋がらない。何故ならば、単にプロセス中において濡れている凝集体になり得るからである。一部の場合、ナノ粒子は塩橋を介して凝集し得る。塩橋は、ナノ粒子と共に沈殿した可溶性塩を備える。このような塩橋は、分散剤によって分解され得て、凝集体をばらばらにする。隙間に吸着する分散剤も、固体中にクラックを伝えるのに必要とされるエネルギーを減じることができるので、粉砕助剤として機能し得る。
【0044】
非凝集化が生じると、分散の安定性を維持することが必要となる。引力及び斥力の間のバランスは、粒子がクラスターに向けて移動して凝集体に戻るかどうか、又は、分散したままであるかどうかによって決まる。分散の維持は、ボールミルや同様の装置で凝集体を機械的にばらばらにすることによって補助することができる。プロセスが停止した際の再凝集化を回避するために、このような機械的プロセスが分散剤の存在下で行われる。
【0045】
分散剤の選択においては二つの方針が用いられ得て、立体安定化と静電的安定化である。立体安定化は一般的に、非イオン性分散剤又はポリマーによって達成され、静電的安定化はイオン分散剤又はポリマーによって達成される。高い親水性・親油性バランス(HLB,hydrophile‐lipophile balance)を備えた分散剤が、水分散液に対して用いられ、低いHLBを備えたものが、非分極有機液体に対して用いられる。金属ナノ粒子は帯電可能であり、この性質が、静電的安定化を用いて分散させることを可能にする。用いられる分散剤の量は、単層被覆を与えるのに適したものであることが望ましい。
【0046】
分散剤の機能は、ナノ粒子が互いに凝集することを防止することである。小さな金属ナノ粒子は反応性があり、分散していないと、互いに接触して凝集体を形成する。このような大きな凝集体は導電性インクを生成するのに不適切である。分散剤は、金属ナノ粒子と結び付く頭部基と、他の金属ナノ粒子を近づかせない末端基とを有する。立体分散剤は、他の金属ナノ粒子によって占有され得ない大きな“排除体積”を曲げ及び回転によって掃く長鎖末端基を有する。高排除体積が望ましい。
【0047】
分散剤の濃度は、分散剤の頭部基によってナノ粒子の単層被覆が達成されるように選択される。この状況によって、凝集に対して他のナノ粒子がアクセス可能であるサイトがナノ粒子上に残存しないことが確実になる。また、単層被覆は、最高の分散液及びインクを作製するためにも利用される。分散剤は、ナノ粒子に化学的に適合する頭部基と、媒体(溶媒)と化学的に適合する末端基とを有するようにデザインされる。分散液中において、分散剤がナノ粒子と媒体との間の分子ブリッジとして機能することによって、複数の分子層によってナノ粒子が広範に分離されることが保たれる。
【0048】
金属ナノ粒子は帯電した表面を有する。この帯電は、乾式又は湿式プロセスよって作製された金属ナノ粒子中に生じ得る。その電荷は正又は負である。金属インクは、ハロゲン化物やカルボン酸イオン等のアニオン成分を用いて、又は、水素イオンやI族カチオン等のカチオン成分で作製される。
【0049】
分散剤の選択において、固定(アンカー)用頭部基として機能する機能性の選択は重要である。ナノ粒子に対するアンカーの吸収は、系内の媒体の吸収よりも強力でなければならない。吸収は電荷の引力、非共有電子対と空の分子軌道との間の特定のドナー・アクセプターバンド、水素結合、分極性分子の電場トラッピングに起因し得る。複数の吸収アンカーを有するポリマーの使用も検討する必要がある。何故ならば、これによって、固定用サイトが追加され、銅ナノ粒子の多重サイト被覆が達成されるからである。
【0050】
媒体中の分散剤の末端の可溶性も考慮しなければならない。何故ならば、分散剤は、銅ナノ粒子と媒体との間の境界として作用するからである。分散剤は、固定用頭部基が銅と優先的に結び付き、末端基が媒体と結び付く場合に、最も効果的である。分散剤(界面活性剤)が分散を安定化すると、固体上の単層は、その系に対して達成可能な最大の分散安定性を達成する。単層に満たないものを使用すると、凝集する可能性のある銅上のオープンサイトが残る。単層を超えるものが吸収されると、第二の分子層が、第一の層から反対方向に向く傾向があり、媒体に対する銅ナノ粒子の相溶性が減少する(図20)。
【0051】
所定の体積Vの液体中に所定の質量mcの銅を分散させるのに必要な分散剤の量mdは、銅の表面積(Ac)、界面活性剤の分子量Md、分散剤の分子面積被覆率Adから以下の式によって計算可能である:
md=MdmcAc/Ad
【0052】
図21に示されるように、ポリマー分散剤中の複数の頭部基が有利となり得る。何故ならば、銅ナノ粒子上に複数の固定用サイトを有することができるからである。これは、ナノ粒子と分散剤との間の引力の上昇に繋がり得る。また、分散剤が銅ナノ粒子上の複数のサイトを占有するので、より低い濃度を用いることができる。
【0053】
液体中に沈降すると、重力、浮力及び抗力がナノ粒子に働く。重力及び浮力は以下のように与えられる:
重力:FG=ρsVg
浮力:Fb=ρVg
ここで、ρs、ρは堆積物、流体の密度であり、Vは堆積粒子の体積、gは重力加速度である。
【0054】
抗力は、ナノ粒子の形状、サイズ、相対速度に依存し、また、流体の密度及び粘度に依存する、抗力は以下のように与えられる:
FD=(1/2)CDu2A
ここで、uはナノ粒子の速度、Aは粒子の軌跡に垂直な粒子の断面積、CDは抗力係数(粒子の形状、流体の粘度、粒径に依存する無次元数)である。
【0055】
沈降速度は式1によって与えられる:
V=(1/(18η))(ρs−ρ)gD2
ここで、ηは流体の動的粘度、ρs、ρは堆積物、流体の密度、Dはナノ粒子の直径、gは重力である。
【0056】
ナノ粒子の体積濃度(CS)を考慮する場合、沈降速度を以下のように表すことができる:
V=(1/(18η))(ρs−ρ)gD2(1−CS)n
ここで、nは、ナノ粒子のレイノルド数に依存して、2.3から4.6までで変化する。
【0057】
この式から、
1)ナノ粒子の高い添加濃度が分散を改善し;
2)媒体の粘度の増大が分散を改善し;
3)より小さな粒径のナノ粒子がより長い時間浮遊する。
【0058】
媒体中に3ヶ月、更には6か月にわたってナノ粒子が浮遊することを可能にする臨界ナノ粒子サイズはどのようなものであろうか。式1を用いたこのサイズの概算を表Eに与える。
【0059】
【表5】
【0060】
この計算においてブラウン運動は考慮していない。
【0061】
ナノ粒子の添加濃度を増大させることを考慮すると、沈降速度に、(1−CS)3を掛ける。
【0062】
例えば、表Fに示されるように、100nm又は50nmのナノ粒子に対して、ナノ粒子の体積添加濃度を10から60%に増大させると、沈降速度が減少する。
【0063】
【表6】
【0064】
この結果は、ナノ粒子の添加濃度を10%から40%に増大させると、ナノ粒子が1ヶ月で移動する距離が2桁減少することを示す。
【0065】
表Fの計算データは2g/cm・sの粘度に対するものである。表Gには、粘度が20g/cm・sに増大した際の速度変化に対するデータを示す。
【0066】
【表7】
【0067】
まとめ
1)長期間の分散を達成するためには、ナノ粒子の体積添加濃度を増大させることが有用な方法となる可能性がある。
2)ナノ粒子の高い添加濃度を用いると、50nmのナノ粒子に対して良好な分散を得ることができる。
3)媒体の粘度を増大させることは速度の減少に繋がる。
【0068】
金属ナノ粒子は湿式でも乾式でも製造可能である。湿式には、金属塩の元素への還元が含まれ、乾式には、気相での元素のアブレーション又は蒸発及び金属ナノ粒子(ナノ粉末)への凝集が含まれる。いずれの方法によって作製された金属ナノ粒子も、導電性金属インクへと適切に配合可能である。湿式によって作製された金属ナノ粒子に対して重視しなければならないことは、製造中に入り込んだ含有塩を、金属ナノ粒子を導電性インク中に配合する前に洗浄することによって、金属ナノ粒子から完全に取り除くべきであるということである。残存している不揮発性塩は、得られる導体が、望まれる又は許容可能なものよりも高い抵抗率を有し、接着性に優れないということをもたらす。
【0069】
金属ナノ粒子は、その表面上の酸化物層によってパッシベーションされ得る。酸化物層は、例えば略1nmから略20nmの厚さを有する。ナノ粒子がパッシベーションされると、更なる酸化は非常に緩やかに生じる。光焼結法を用いることによって、銅酸化物のより小さな層を、空気中室温で金属銅に光還元することができて、互いに融合して銅導体を形成する。
【0070】
実施例1.銅インク用の非イオン性ポリマー分散剤
その“排除”体積は、フレキシブルなアルカリ(又はエトキシ)鎖によって“占有される”空間を表し、第二の銅ナノ粒子によって占有され得ない空間である。この“排除”体積が大きくなると、分散剤がより効果的に銅ナノ粒子の分離された状態を保つ。この“排除”体積の第二の側面は、その大きな値が、低濃度の化合物がナノ粒子の高レベルの被覆、よって分散剤としての高度の有効性の提供を可能にするのに有効であるということである。
【0071】
光硬化によって硬化して優れた導体を与えるインクの配合において適切に用いられているポリマーは、トリトンX‐100、トリトンX‐15、トリトンX‐45、トリトンQS‐15、直鎖アルキルエーテル(colar Cap MA259、colar Cap MA1610)、四級化アルキルイミダゾリン(Cola Solv IES、Cola Solv TES)、ポリビニルピロリドン(PVP,polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリシロキサンである。2‐ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート等の溶媒を用いて、銅ナノ粒子を銅インクに配合することができる。分散剤の重量パーセンテージは、0.5%から20%の範囲となり得る。銅ナノ粒子の添加濃度は10%から最大60%までとなり得る。配合にはバインダー物質は必要とされない。
【0072】
分散剤としてのポリマーの使用の背後にある論拠は、導電性インクの媒体として用いられる典型的な液体よりも高い粘度を有すること、そして、金属ナノ粒子に対する多数の結合サイトに起因して、モノマーの分散剤よりも低い濃度で使用することができるが、それでもなお金属ナノ粒子の単層被覆を提供することである。より高い粘度が、インクジェット法を用いて印刷可能な優れた分散液及びインクの生成を容易にするので、重要である。より低い濃度の分散剤が、硬化(焼結)中に除去される有機物質が少なくなるので、好ましい。
【0073】
分散の優れたインクは、ポリイミド、PET等のフレキシブル基板上に、インクジェット印刷可能であり、又は、ドローダウン、スピンキャスティング、ロールツーロール印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等の他の方法によって印刷可能である。プレ硬化プロセスが、空気中150℃未満の温度でインクコーティングされた基板に適用される。その後、光焼結を用いて、数マイクロ秒から1ミリ秒未満で銅ナノ粒子を銅フィルムに焼結させるのと同時に、銅ナノ粒子上の銅酸化物層を金属銅に光還元して、高純度の金属銅導体がもたらされる。銅フィルムと基板との間の接着は、バインダー物質を用いずとも優れている。何故ならば、銅の溶融による熱は、比較的低い融点を有するプラスチックと銅との間に溶接効果を生じさせるからである。3.6〜10μΩ・cmもの低さの抵抗率(バルクの銅に対しては1.7μΩ・cm)が達成される。レーザ(連続レーザ、パルスレーザを含む)を用いて、銅インクを銅導体に焼結させることができる。ナノ秒からフェムト秒レーザのパルスレーザを用いても、銅インクを焼結させることができる。
【0074】
実施例2.銅インク用のイオンポリマー分散剤
酸性基を備えたコポリマーを分散剤として用いて、相溶性媒体で銅インクを配合する。ディスパービック(Disperbyk)180、ディスパービック111、スチレン無水マレイン酸コポリマー(SMA1440フレーク)、PT、HCS‐P、HCS‐N等のイオン基を備えたコポリマーはイオン性のものであり、静電的分散が達成可能である。2‐ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングルコールジアセテート、テルピネオール、イソブチルアルコール等の相溶性媒体のいずれか一つ又はそれらの組み合わせを用いて、銅ナノ粒子を銅インクに配合することができる。銅インクはフレキシブル基板上にインクジェット印刷される。その後、プレ硬化プロセスを用いて、空気中150℃未満の低温で媒体及び分散剤を除去する。最後に、光焼結を印刷銅インクに適用して、銅ナノ粒子を導体に溶融する。分散剤の重量パーセンテージは0.5%から20%の範囲であり得る。銅ナノ粒子の添加濃度は10%から最大60%までであり得る。
【0075】
分散の優れたインクは、ポリイミド、PET等のフレキシブル基板上に、インクジェット印刷可能であり、又は、ドローダウン、スピンキャスティング、ロールツーロール印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等の他の方法によって印刷可能である。プレ硬化プロセスが、空気中150℃未満の温度でインクコーティングされた基板に適用される。その後、光焼結を用いて、銅ナノ粒子を銅フィルムに焼結させるのと同時に、銅ナノ粒子上の銅酸化物層を金属銅に光還元して、高純度の金属銅導体がもたらされる。銅フィルムと基板との間の接着は、バインダー物質を用いずとも優れている。何故ならば、銅の溶融による熱は、比較的低い融点を有するプラスチックと銅との間に溶接効果を生じさせるからである。3.6〜10μΩ・cmもの低さの抵抗率(バルクの銅に対しては1.7μΩ・cm)が達成される。レーザ(連続レーザ、パルスレーザを含む)を用いて、銅インクを銅導体に焼結させることもできる。ナノ秒からフェムト秒レーザのパルスレーザを用いても、銅インクを焼結させることができる。
【0076】
実施例3.非イオン性分散剤及びイオン分散剤の両方の配合
より良い分散を得るために、非イオン性分散剤及びイオン分散剤の両方を用いて銅インクを配合する。トリトンX‐100、トリトンX‐15、トリトンX‐45、トリトンQS‐15、直鎖アルキルエーテル(colar Cap MA259、colar Cap MA1610)、四級化アルキルイミダゾリン(Cola Solv IES、Cola Solv TES)、ポリビニルピロリドン(PVP)等の非イオン性分散剤と、ディスパービック180、ディスパービック111、スチレン無水マレイン酸コポリマー(SMA1440フレーク)、PT、HCS‐P、HCS‐N等のイオン基を備えたコポリマーとを用いて、銅インクを配合する。銅酸化物でパッシベーションされた銅ナノ粒子を配合に用いる。2‐ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール等の相溶性媒体を選択して、銅ナノ粒子で銅インクを配合し得る。特に、2‐ブトキシエチルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの組み合わせ、2‐エトキシエチルアセテート及び2‐エトキシエチルアセテートの組み合わせ、エチレングリコールジアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの組み合わせが、イオン分散剤及び非イオン性分散剤の両方と相溶性であるとして用いられ得る。分散剤の重量パーセンテージは0.5%から20%の範囲であり得る。銅ナノ粒子の添加濃度は10%から最大60%までであり得る。
【0077】
優れた分散が得られ、配合された銅インクが形成される。インクは、ポリイミドやPET等のフレキシブル基板上に、ドローダウン、スピンキャスティング、ロールツーロール印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等によって印刷可能である。プレ硬化プロセスを、空気中150℃未満の温度でインクコーティングされた基板に適用する。4μΩ・cmもの低さの抵抗率が得られる。レーザ(連続レーザ、パルスレーザを含む)を用いて、銅インクを銅導体に焼結させることもできる。ナノ秒からフェムト秒レーザのパルスレーザを用いても、銅インクを焼結させることができる。
【0078】
実施例4.低有機残留物銅インク
光焼結で高純度銅フィルムを得るためには、有機残留物が少ないことが高導電率に繋がる。沸点の低い媒体及び分散剤が銅インクを配合するのに選択される。分散剤の重量パーセンテージは0.5%から20%の範囲であり得る。銅ナノ粒子の添加濃度は10%から最大60%までであり得る。低沸点のアルコール又は他の溶媒、イソプロピルアルコール、エタノール、トルエン、ブチルベンゼン及び水等を媒体として用いることができる。比較的分子量の小さい低沸点アミンをインク配合用の分散剤として用いることができて、ヘキシルアミン、オクチルアミン等が挙げられる。プレ硬化プロセスが150℃未満の低温でコーティングされたインクに適用されると、これらの低沸点媒体及びアミンは容易に蒸発し得る。アミンは150℃未満の低い沸点を有することが望ましく、その大半がプレ硬化プロセス中に蒸発するようになる。プレ硬化段階は、印刷された又はコーティングされた金属ナノ粒子が光焼結される前に乾燥していることを確実にするために必要である。この段階は、空気中150℃未満で行われる。この段階が必要な理由は以下のとおりである。光焼結される金属ナノ粒子が揮発性の化合物を含有する場合、フォトニック硬化中の急速加熱がその化合物の急速な蒸発を生じさせて、金属ナノ粒子のコーティングされたフィルムが不連続で非常に粗い表面となるプロセスになってしまうからである。
【0079】
分散の優れたインクは、ポリイミド、PET等のフレキシブル基板上に、ドローダウン、スピンキャスティング、ロールツーロール印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等によって印刷可能である。プレ硬化プロセスが、空気中150℃未満の温度でインクコーティングされた基板に適用される。低沸点媒体及び分散剤を用いると、光焼結によって、高純度銅フィルムを得ることができ、3.5μΩ・cmの抵抗率が得られる。レーザ(連続レーザ、パルスレーザを含む)を用いて、銅インクを銅導体に焼結させることもできる。ナノ秒からフェムト秒レーザのパルスレーザを用いても、銅インクを焼結させることができる。
【0080】
プリンタノズルの詰まりを避けるため、銅ナノ粒子の直径は1000ナノメートル未満であることが望ましい。ナノ粒子が互いにクラスター化しているナノ粒子の集合化についても同じことがいえる。凝集体(二次的な粒径として知られる)の直径も、1000ナノメートル未満であることが望ましい。
【0081】
銅ナノ粒子のサイズも、光焼結フィルムの性質に対して影響を有し得る。例えば、一部の場合、光焼結の後で、大きなナノ粒子を有するインクが、小さなナノ粒子を有する光焼結インクのものよりも実質的に低い抵抗率を有し得る。抵抗率の違いは、一部には、銅同士の融合に起因し、一部には、硬化前のフィルム中の銅酸化物の量に対する光焼結後のフィルム中の銅酸化物の量に起因する。
【0082】
金属ナノ粒子の融合により金属導体を作製することには二段階含まれる。段階の一方は、ナノ粒子が互いに融合して完全に接続した金属フィルムを与えることであり、他方は、個々の金属ナノ粒子に対する融合を達成することである。両段階が達成されると、個々の金属ナノ粒子はバルク金属に変換される。両段階が達成されないと、金属はバルク金属よりも高い抵抗率を有する。何故ならば、ナノ粒子間の融合が生じていない場所において導体にホールが存在するからである。そして、個々の金属ナノ粒子に対する完全な融合が生じていないと、金属導体のプロファイルが滑らかでなく、依然として個々の金属ナノ粒子のプロファイルを示す。両段階は、金属導体を作製するために用いられる金属ナノ粒子のサイズ及びサイズ分布に影響を受ける。
【0083】
複数の因子が、金属導体を生成するために用いられる金属ナノ粒子のサイズに依存する。金属ナノ粒子のサイズが減少すると、その抵抗率は増大し、その融点は低下する。これらの因子はいずれも金属ナノ粒子を融合した金属導体に焼結させることに有利に働く。個々の金属ナノ粒子を完全に融合した金属導体に変換するには、各金属ナノ粒子が互いに、結晶性銅原子の連続的なアレイに融合することを要する。これを達成するための接続の数は金属ナノ粒子のサイズに依存する。より小さな金属ナノ粒子はより低い融点を有し、より反応性のものではあるが、連続的な金属導体を生成するために、より多くの接続が必要となる。連続的な金属導体への金属ナノ粒子の融合は、より低い融点を有しより反応性である小さな金属ナノ粒子の利点と、焼成(硬化プロセス)中に必要な接続の数の少ない大きな金属ナノ粒子の利点と間のバランスとなる。
【0084】
これら二つの因子の間のバランスを、多様なサイズを有する銅ナノ粒子を用いて調べた。30ナノメートルのサイズから100ナノメートルを超えるサイズにまでの範囲である。各サイズの銅ナノ粒子をインクに配合し、コーティングし、プレ硬化し、空気中で光焼結した。結果は、30nm、50nm、80nm、120nmのサイズの範囲に対して、80nmのサイズの銅ナノ粒子で最も低い抵抗率が得られることを示した。
【0085】
図12を参照すると、一組の異なるサイズの銅ナノ粒子を得た。ナノ粒子は、30nm、50nm、80nm、120nmのサイズを有し、保護剤でコーティングされていた。各サンプルに対してインクを作製した。直接比較用の一貫性のある配合とするため、前処理では、1‐ヘキシルアミン(2mL)及びイソプロピルアルコール(4mL)の混合物を用い、続いてイソプロピルアルコール(10mL)を加えた。50nmのサイズの銅ナノ粒子の二つのバッチをA及びBとした。コーティング、プレ硬化及びフォトニック硬化を実施した後に得られた抵抗率を図12に示す。
【0086】
図13に示されるように、データは、抵抗率が80nm<120<nm<30nm<50nmの順であることを示す。
【0087】
抵抗率の順が酸化物含有量と相関を示すかどうかを求めるために、得られたままで処理される前の銅粒子に対して、XRD(X線回折,x−ray diffraction)のグラフを得た。80nm、120nm、30nm、50nmのサンプルに対するXRDをそれぞれ、図14〜17に示す。
【0088】
サイズの異なる銅ナノ粒子のXRDは、ナノ粒子上に存在している銅酸化物の量の顕著な違いを示していない。各ケースにおいて、酸化物の量は少ない。従って、銅ナノ粒子のサイズの変化に対する硬化導体の抵抗率の違いは、銅酸化物含有量に起因するものではありそうにない。金属ナノ粒子からの導体の形成においては、二つの検討事項が考慮される。ナノ粒子が小さくなると、より反応性のものになり、その銅導体への焼結がより好ましいものになる。しかしながら、より小さなナノ粒子は連続的な導体を形成するためにより多くの接続を形成する必要があり、これが小さなナノ粒子を用いることの欠点である。80nmの銅ナノ粒子の利点は、それが二つの検討事項が最大限に活かされる点であるということである。銅ナノ粒子のサイズと形成される導体の抵抗率との間には線形な相関は存在しない。図26を参照すると、銅ナノ粒子は銅酸化物(主にCu2O、パッシベーション層として)を含むが、その割合は30%を超えないことが望ましい。ナノ粒子の形状は、球形、楕円形、又は他の不規則な形状であり得る。
【0089】
光焼結プロセスは、光の単一の高強度パルスを含む。この光エネルギーは、金属ナノ粒子によって吸収されて、熱に変換される。この熱エネルギーは、金属ナノ粒子を密着した金属導体に焼結させて、金属導体が基板に接着する。この二つの手順は、光パルスの強度を変更することによって(ランプに印加される電圧を変更することによって)、又はパルス幅を変更することによって、最大化され得る。プロセス全体には、金属ナノ粒子の全体的なフィルムへの融合が含まれ、全粒子が金属導体に焼結されて、金属導体の底部層が基板と融合して、優れた導体内部の接着、及び金属導体と基板との間の接着の両方が達成される。基板が十分に低い融点を有している場合、金属導体と基板との間の直接的な接着が達成可能である。基板が金属導体に直に接着しない場合、基板と金属導体との間に接着促進剤を用いることができる。光フラッシュの強度及びパルス幅を制御することによって、基板の物的な性質の変化に繋がる基板に対する損傷を生じさせることなく、金属ナノ粒子の金属導体への焼結、及び基板に対する接着を達成することができる。図19は、フレキシブル基板上の銅ナノ粒子の光焼結によって形成された銅の抵抗率及び接着に対するエネルギー光フラッシュ電圧及びパルス幅の影響を示す。電圧及びパルス幅の正しい組み合わせを選択することによって、低い抵抗率及び高い接着性の両方が達成される。0.1から10マイクロメートルの粒子コーティングの厚さが、0.1から20ジュール/cm2の範囲内で最適化されたエネルギーで光焼結される。抵抗率対光焼結エネルギーのプロットは、放物線状であり、部分的に焼結された領域とブロウンオフ(blown off)領域との間に生じる最低の地効率を有する。0.1から20ジュール/cm2のエネルギー範囲内では、より平坦な放物線が望ましく、この光焼結プロファイルを達成するように金属インクが配合される。光焼結プロセス中に、フレキシブル基板の表面は粗さを有しはじめ、これが接着を改善する。フレキシブル基板の湾曲は、表面を加熱することによって最小化可能である。図2Aは、光焼結の前後における、20ナノメートルの銅ナノ粒子を含むフィルムのX線回折(XRD)を示すグラフである。グラフから見て取れるように、光焼結後のフィルム中のCuOの含有量は本質的になくなっている。一方、Cu2Oの含有量は顕著には変化していない。これは、低い2シータ値におけるCu2Oラインの細さによって示されている。しかしながら、より大きな粒子に対して、Cu2Oの含有量は減少し得る。例えば、図3A及び図3Bはそれぞれ、フィルムを光焼結される前と後とにおける、50ナノメートルの銅粒子を含むインクジェット金属フィルムのXRDグラフを示す。光焼結前の50nmの粒子フィルム中のCu2Oの形状の銅酸化物の割合は28%である。対照的に、光焼結後のフィルム中のCu2Oの形状の銅酸化物の割合は略7%であり、これは、Cu/Cu2Oの比が13:1であることに対応する。100ナノメートルの銅粒子を含むフィルム中の相対的なCu2O含有量は、光焼結後には更に小さなものであり、抵抗率の更なる減少に繋がる。また、100ナノメートルのフィルムは、光焼結の前及び後において、CuO物質の含有量がより低い。
【0090】
CuOは、CuOが銅及びCu2Oに変換される還元プロセスによって、光焼結中に除去される。より小さなナノ粒子、例えば、略20nmの直径を有するナノ粒子を備えたフィルムに対して、Cu2Oの含有量は、光焼結前のものと同じ量を本質的に保っている。銅とナノ粒子との間の融合プロセス中に、Cu2O物質は、粒子間の融合点から大部分がなくなり、融合領域の辺縁に向けて押し出される。更に、銅粒子間の界面における結晶構造が、光焼結インクの導電性に影響を与える。銅粒子境界における転移の効果的なブロックに起因して、高い導電性が観測される。CuO及びCu2Oの結晶構造の検査によって、CuOは典型的に単斜晶系である一方、Cu2Oは立方晶系であることが明らかになっている。従って、二つの立方晶構造(Cu2O中のような)の間の境界では、境界が異種の結晶構造(CuO中のような)を含む構造よりも、転移が少ない傾向にある。従って、20nmのインクの配合に示されるように、抵抗率の低下は、CuOの消滅に部分的に起因し得る。純酸化銅(I)(Cu2O、純度99%)を用いて、IPA及びヘキシルアミンと共に溶液を配合する。Cu2O粉末のサイズは、光学顕微鏡で見積もって、数マイクロメートルから略20マイクロメートルである。滴下堆積を用いて、ポリイミド上に溶液をコーティングして、連続的なフィルムを形成する。フィルムの厚さは一様ではない。フィルムはフラッシュランプに露光される。XRDを用いて、露光領域及び非露光領域を調べる。図2Bに示されるように、非露光領域は、Cu2Oの特徴的なXRDパターンを明確に示す。図2Bにおいて、露光領域は、43.4°及び50.5°に強い金属銅ピークを示す。銅酸化物が銅に変換される露光領域(これはXRDによって確かめられる)は事実上導電性である。その抵抗率は略3.7×104Ω・cmである。
【0091】
光焼結下における或る種の酸化物の還元は、酸化物のエネルギーバンドギャップ、酸化物の生成エンタルピー、光焼結中に印加される放射エネルギーに基づいて、生じ得る。例えば、Cu2O及びCuOのバンドギャップはそれぞれ、1.9eV(188kJ/モル)、2.6eV(257kJ/モル)である。対応するCu2O及びCuOの生成エンタルピーはそれぞれ、157kJ/モル、168kJ/モルである。従って、略100nmから400nmの波長範囲でのUV放射で、Cu2Oを金属銅に還元することができる。光焼結プロセスは、銅ナノ粒子間の界面の酸化を防止する。
【0092】
インクジェット可能な銅溶液がほとんど又は全く銅酸化物含有量を有さない場合においても、フィルムを高温に晒すことの結果としてプレ硬化中においてフィルム中に銅酸化物が導入され得る。例えば、空気中でプレ硬化される20nmの粒子を含むフィルムは、フォーミングガス中でプレ硬化される20nmフィルムよりも一桁高い抵抗率を有し得る。空気中でのプレ硬化中のCu2Oの生成はより高い抵抗率に繋がる。
【0093】
更に、より小さなナノ粒子を備えたフィルムは、単位長さ当たりに対し、より多くの数の融合点を有する。よって、融合点は抵抗がゼロではないので、より小さなナノ粒子を備えた光焼結フィルムはより高い抵抗率を有する。従って、100nmの粒子を用いて形成された光焼結フィルムの抵抗率は、50nmの粒子を用いて形成された光焼結フィルムのものよりも低く、50nmの粒子を用いて形成された光焼結フィルムは、20nmの粒子を用いて形成された光焼結フィルムよりも低い抵抗率を有する。ナノ粒子に起因するフィルムの粒状性は光焼結後においても見て取れる。図27は、光焼結中に形成された融合点の形成がフィルム中の粒状性に繋がることを示す。金属ナノ粒子のコーティングによる導電性金属フィルムの生成には、個々のナノ粒子間の多数の接続の発生を要する。更に、導体が純粋な金属状態のものに近づく場合、融合は、金属ナノ粒子間で生じるだけではなく、個々のナノ粒子自体に対しても生じる必要がある。このプロセス全体の結果は、金属ナノ粒子粉末のものからバルク金属のものに近づくという密度の上昇である。これは収縮に繋がる。光焼結プロセスは非常に高速なものなので、金属ナノ粒子のアレイからバルク金属への完全な変換が生じるとは考えられない。結果として、全ての粒子が、その周囲全体の周りに、又はその体積全体にわたって、融合点を有するわけではない。従って、光焼結導体は、滑らかな金属表面の形態を有しているというよりはむしろ、依然として元々の金属ナノ粒子の形状プロファイルを一部保っている。
【0094】
追加因子も、光焼結プロセスに関してインクジェットされた銅フィルムの抵抗率に影響を与える。例えば、最初に堆積させる銅フィルムの厚さが増加すると、より多くの入射光エネルギーが、より薄いフィルムと同じ抵抗率を得るために必要とされる。層が厚過ぎると、光は金属粒子フィルムを完全には突き抜けない。従って、層は完全には光焼結しない。不完全な光焼結プロセスは、抵抗率が高く基板の接着の優れないフィルムに繋がる。焼結前の堆積させたナノ粒子インクの典型的な厚さは、0.5から10マイクロメートルの範囲内である。
【0095】
光焼結プロセスに用いられる最適なエネルギー量に影響を与える変数は多数存在する。例えば、インクジェット可能な銅インクは異なる配合を有し得るが、その配合は、液体混合物の化学組成、その液体混合物に添加される銅ナノ粒子のパーセンテージである。用いられる配合及び基板に応じて、様々な光焼結フラックス強度(つまり出力)において最低の抵抗率が得られる。図4は、カプトン(登録商標)(Kapton(登録商標))基板上の多様なインク配合に対する抵抗率対電圧(光焼結ランプに印加される)を示す。この光フラックス強度の違いは、一部にはインク配合及びナノ粒子のサイズに起因するものであり、粒子の融合プロセスに影響し、特定のインクでは、他のインクよりも融合を誘発させるためにより強い入射光フラックス強度が要されるようになる。更に、印加されるエネルギーに応じて、銅粒子のアブレーション及び基板の損傷が生じ得る。これらの変数を考慮すると、最適な光焼結光フラックス強度は、図4に示される放物線の底に対応して求めることができる。インク層の厚さが増大すると、アブレーション効果は小さくなる。結果として、特定のインク配合に対して最低の抵抗率を得るために、光焼結ランプによって広範なフラックス密度が提供され得る(図5を参照)。一部の場合、入射光フラックス密度が高過ぎると、又はナノ粒子フィルムが薄過ぎると、不連続性が光焼結フィルムに生じ得て、フィルム中の抵抗の増大に繋がる。
【0096】
光焼結に用いられるランプからの光フラックス強度及びエネルギースペクトルは、インク堆積面積に基づいて、更に最適化可能である。例えば、明確で局在化したトレースに堆積したインクでは、基板の大きな領域にわたって堆積したインクよりも必要とされる光強度が少なくなり得る。従って、銅インクのフィルム全体に対するよりも少ない光強度が、小さなフィーチャ(feature)を光焼結させるのに必要とされ得る。
【0097】
典型的には、UV放射(略380nm未満)として放出される出力は、キセノンランプから放出される全出力の略6%である。例えば、図6は、NovaCentrix(TM)フラッシュランプから放出された波長対スペクトル放射強度を示す。キセノンランプの代替物としては、エキシマUVランプや真空UVランプ、崩壊エキシマ複合体を含むレーザが挙げられる。エキシマレーザは典型的に、不活性ガス(アルゴン、クリプトン又はキセノン)及び反応ガス(フッ素又は塩素)の組み合わせを用いる。電気的刺激の適切な条件下では、ダイマと呼ばれる擬分子が生成される。ダイマは、励起状態においてのみ存在することができ、紫外領域のレーザ光を生じさせることができる。エキシマの利用はいくつかの利点を提供する。例えば、一部の場合、崩壊エキシマ複合体は、銅酸化物を同時に融合及び光還元する光硬化ランプに適している。一部の例では、エキシマランプは、多様なUV波長において、高強度ナローバンド放射を発する。多くの場合、エキシマフォーミングガス混合物は単一の支配的なナロー放出バンドを示す。更に、エキシマは、電子の運動エネルギーをUV放射に変換する効率的なエネルギー変換体であり、エキシマは典型的に自己吸収を示さない。エキシマシステムは、飽和効果が始まる前に超高出力密度にポンピングされて、自然放出を制限することができる。従って、非常に明るいUV及び真空UV源を、光エネルギーを金属粒子フィルム内に吸収させるように最適化されたスペクトル出力で構築することができる。
【0098】
一部の場合、特に、インクの粘度、表面エネルギー、光熱容量、エネルギー吸収度を調整するため、添加剤がインクの配合に含まれ得る。粘度及び表面張力の低いインクは基板表面上に急速且つ容易に拡散する傾向がある一方、高い粘度及び表面張力は、液体の拡散の優れた制御を可能にする。インクの粘度及び表面張力を変更する添加剤の一例はエチレングリコールである。インクジェット可能な銅インクの粘度は20センチポアズ未満であることが望ましく、好ましくは8から20センチポアズの間である。表面張力は60ダイン/cm2未満であることが望ましく、好ましくは20から60ダイン/cm2の間である。
【0099】
一部の例では、堆積させたまま(as−deposited)のインクの抵抗率は、添加剤の量の関数として変化する。例えば、エチレングリコールを添加剤として用いる場合、インクの抵抗率は、エチレングリコールの量を増大させると、上昇する。好ましくは、インク配合中に存在するエチレングリコールの体積は10%未満である。
【0100】
一部の実施において、インク内の導電性粒子が、インクノズルに適合するには大き過ぎるサイズに凝集する。小さな粒径を維持するため、大きな凝集体を機械的手段で粉砕することができる。例えば、ボールミリングプロセスを用いて、大きな粒子凝集体のサイズを減じることができる。図7に示されるように、マイクロ流体化又はボールミリングプロセスは、光焼結された多様なインク配合に対して、抵抗率を低下させることができる(このことは、マイクロ流体化されたB1‐100B4インクに対して示されている)。
【0101】
フレキシブル電子機器を製造するため、ナノ粒子インクをポリイミドやポリエチレン等のフレキシブル基板上に堆積させる。インクジェット堆積に適したポリイミド基板の一例はデュポン社のカプトン(登録商標)物質である。光焼結の後において、カプトン(登録商標)及び他のポリイミド基板は銅に対する接着性を提供しない。一部の場合、ポリイミド表面は、基板を損傷することなく、光焼結プロセス中に粗くなる。更に、ポリイミドは典型的に、光焼結中に基板に対するインクの接着性の増大を示す。
【0102】
一部の実施において、フレキシブル基板は光焼結の後に湾曲し得る。湾曲は、光焼結プロセス中の銅及びフレキシブル基板の熱的性質の不整合の結果である。湾曲効果は、フレキシブル基板の厚さを増大すること、銅層の厚さを変更すること、又は、基板の裏側に補償層を印刷及び硬化することによって、補償又は低減可能である。更に、湾曲効果は、基板表面上に連続的な大面積フィルムを一枚以上堆積させる代わりに、光焼結の前に基板上に銅トレースを形成することによって低減可能である。湾曲効果は、光焼結プロセス中に基板を加熱することによって更に低減可能である。
【0103】
図8Aを参照すると、ナノ粒子銅フィルムを同時に又はほぼ同時にインクジェット及び光焼結するための装置800が示されている。本装置は、基板804の表面上に銅インク801を分配するためのインクジェット分配器802を含む。また、本装置800は、インクジェット分配器802によって堆積させたインクフィルム803を硬化させるための光源806も含む。光源はレーザ光源(パルス又は連続)、パルスランプ、又は合焦ビームであり得る。一部の例では、分配器802は、所定の経路に沿って基板上を自動で通過するように構成される。更に、分配器802は基板上804の上の複数の所定の位置及び時間において銅インクを分配するように構成可能である。光源806はインクジェット分配器802に取り付けることができ、又は、分配器802とは別に基板上を移動するように構成可能である。光源806は、分配器802によってインクジェットされたフィルムが堆積された後にそのインクジェットされたフィルムを直ちに光焼結するように構成可能である。代わりに、光源806は、光焼結の前にインクを乾燥させるために、フィルムの堆積に引き続いて、所定の回数フィルムを光焼結させるように構成可能である。光源806及び分配器802の移動は、コンピュータシステム/制御装置808によって制御可能である。使用者は、制御装置が所定の経路にわたって分配器802及び光源806を自動的に並進移動させるようにコンピュータ808をプログラムすることができる。一部の例では、光源806及び分配器802が固定されて、基板が、コンピュータ/制御装置808によって制御される可動プラットフォーム上に配置される。
【0104】
光焼結プロセスのフローチャートが図8Bに示されている。金属インク溶液が混合されて(810)、その後、分配器802を用いて基板804上に印刷又は分配される(812)。フィルムの堆積は、明確なパターンが形成されるように厳しく制御される。その後、フィルムを乾燥させて、水又は溶媒を除去する(814)。
【0105】
一部の場合、フィルムの分配後であって、光焼結段階の前に、熱硬化段階が導入され得る。基板及び堆積させたフィルムを、オーブンを用いることによって、又はヒータ(ホットプレート等)の表面上に基板を置くことによって、硬化させることができる。例えば、一部の実施では、フィルムは、光焼結の前に空気中100℃で30分間プレ硬化される。代わりに、熱硬化は、フィルム表面上にレーザを向けることによって実施可能である。乾燥及び/又は熱硬化段階に引き続いて、光源806からのレーザビーム又は合焦光を、ダイレクトライティングとして知られているプロセスで、フィルム表面上に向ける(816)。光はフィルムを光焼結させる機能を果たし、フィルムが低抵抗率を有するようになる。一般的に、金属フィルムは、印刷/分配段階及び乾燥段階の後では絶縁性である。しかしながら、光焼結プロセス後に、その絶縁性フィルムは、導電性フィルムになる(図8Aを参照)。
【0106】
一部の例では、分配器802を用いて、ブランケットフィルム又はパターンのおおまかなアウトラインを堆積させる。典型的には、印刷法は、10〜50マイクロメートル又はそれ以上のオーダのフィーチャサイズを達成することができる。より微細なフィーチャが必要な場合、パターン/ブランケットフィルムを、光の合焦ビーム又はレーザを用いて微細化又は縮小させることができる。この場合、フィーチャは、レーザのスポットサイズ又は光ビームの焦点によって定義される。典型的には、光は1マイクロメートル以下に合焦可能である。従って、サブミクロンフィーチャが可能である。究極的には、フィーチャサイズは導電性フィルムに用いられるナノ粒子にサイズによって限定される。金属粒子は、1〜5nmのオーダのフィーチャを有するように形成可能である。
【0107】
図9Aは、おおまかなパターンアウトライン805にナノ粒子フィルムを印刷して、その後、光焼結を用いてパターン805を微細化する一例を示す。まず、標準的な印刷法を用いて基板804上にナノ粒子インク溶液を印刷することによって、パターン805の金属ラインを形成する。その後、インクを乾燥させる。図9Aのライン幅は略50マイクロメートルである。図9Aには、上面図及び側面図が示されている。その後、印刷ライン805は、レーザビーム又は他の合焦光源806で少なくとも部分的に光焼結される。露光時間は500ms以下のオーダであり得る。光焼結された領域は、クロスハッチングされた領域として示されている。ミラー807及び他の光学系並びに可動テーブル及び光学系によって、光源806が基板804を走査して特定のイメージを形成することができる。
【0108】
図9Aの光焼結プロセスのフローチャートが図9Bに示されている。金属インク溶液を混合して(910)、その後、分配器802を用いて、ブランケットフィルムとしてパターン化せずに、又は、パターンのおおまかなアウトラインとして、印刷又は分配する(912)。その後、フィルムを乾燥させて水又は溶媒を除去する(914)。乾燥及び/又は熱硬化段階に引き続いて、光源806からのレーザビーム又は合焦光をフィルム表面上に向ける(916)。レーザ又は合焦ビームに露光されていない金属フィルムは一般的に、基板804に緩く結合していて、基板を洗浄することによって除去可能である(918)。一部の場合、光焼結されていないフィルムは、フィルム表面に接着テープを貼ってそのテープを剥がすことによって除去可能である。プロセスにおいて使用されない余剰インク又は金属粉末は再利用可能であり、更にインクが作製される。代わりに、非硬化領域が絶縁性であることを条件として、フィルムの非硬化部分を基板上に残すことができる。
【0109】
堆積フィルムをレーザ806で光焼結することによって、明確な銅トレースが、低エネルギーを用いながらも、基板表面上に空気中で形成可能である。更に、レーザ光焼結は、その上にインクフィルムを有していない基板領域に対する損傷を減じる。一部の場合、光焼結は、レーザの代わりに光の合焦ビームを用いて達成される。ダイレクトライティング法によって、用いられる各基板に対してパターンを変更することができる。更に、パターン化段階がプロセスの終了に近い場合、基板が後で必要とされるまで、レーザ焼結の前に、印刷されたサンプルを保持するベッド上に基板を製造及び保有可能である。
【0110】
レーザ、光の合焦ビーム又はフラッシュランプを用いる場合、光焼結プロセスを大気環境で行うことができる点には留意されたい。また、不活性ガス雰囲気も用いられ得る。更には、反応ガス雰囲気も用いられ得る。反応ガス雰囲気は、光焼結プロセス段階の前及び/又は後に化学反応を生じさせる一以上の元素を含有するガスである。
【0111】
レーザビームの小さなスポットサイズに起因して、大きな面積にわたるレーザ光焼結は時間のかかるプロセスであり、製造のスループットの低さに繋がる可能性がある。対照的に、短パルスランプを用いて、ナノ粒子フィルムで覆われた大きなサンプルを素早く光焼結させることができる。ハードマスクを用いて、所望のパターンがサンプルに転写される。25マイクロメートル未満のフィーチャサイズを備えた微細パターンが、半導体産業のリソグラフィプロセスにおいて用いられるマスクと同様のマスクを用いて、達成可能である。マスクは、透明基板(例えば石英やガラス)を含み、またクロムや他の金属の薄いマスク用フィルムを含む。マスク用フィルムを含むマスク領域は、光がサンプルに到達することを防止する一方、マスク用フィルムを含まないマスク領域は、光が通過してインクフィルムを光焼結させることを可能にする。
【0112】
ハードマスクを用いる光焼結プロセスの一例が図10A〜図10Dに示されている。まず、銅ナノ粒子インクフィルム1000を基板1002上に堆積させる。その後、マスク1004をフィルム1000及び基板1002の上方に配置する。マスク1004は、透明プレート1005及びそのプレート上に形成された金属パターン1006を含み得る。その後、インクフィルム1000をマスク1004を介して光源に露光することによって、インクフィルム1000を選択的に光焼結させる。光源(図示せず)は、500ms未満のパルス幅、好ましくは350ms未満のパルス幅で2J/cmのエネルギー密度を提供するパルスランプであり得る。また、他の光源も使用可能である。空気中大気温度及び大気圧において、又は水素フォーミングガスや窒素等のガスを含む不活性ガス雰囲気において、光焼結が生じ得る。露光後、導電性フィルム1008及び非導電性フィルム1010の層が基板1002上に存在している(図10Cを参照)。その後、非導電性フィルム1010は除去される(図10Dを参照)。
【0113】
一般的に、ナノ粒子インクフィルムは、前側(つまり、インクが堆積している側)からフィルムを露光することによって光焼結され得る。この方法では、光は、基板を通過する必要なく、インクに直接当たる。この方法には多数の利点があり、特に基板が、使用される光に対して吸収性である場合が挙げられる。また、基板を介して堆積させたナノ粒子フィルムを露光してインクを光焼結させることが有利である場合もある。例えば、カプトン(登録商標)基板上の銅ナノ粒子インクフィルムの場合、基板の裏側からインクを露光することは、ナノ粒子フィルムと基板との間の接着性を改善することができる。何故ならば、光の大部分を吸収し最高温度に達する銅の層がカプトン(登録商標)基板の表面付近にあるからである。これは、露光がナノ粒子フィルムと基板との間の界面に到達しないような厚いフィルムの場合に、特に有利である。界面層が硬化されない場合、その接着は非常に弱い。
【0114】
フレキシブルディスプレイ、スマートパッケージング及び低コスト電子タグの応用に対して、ポリイミド、ポリエチレン等のフレキシブル基板上に導体を適用することはますます関心が持たれている。導電性パターンを生じさせる主な方法は、100μmを越えるフィーチャに対してはスクリーン印刷であり、100μm未満のフィーチャに対しては薄膜及びエッチング法である。導体のインクジェット印刷は、明確なフィーチャを形成するための方法として有望である。しかしながら、50μm未満の微細パターンを達成するのがインクジェット印刷では非常に困難であり、コストがかかる。後続の熱処理が、所望の導電性を達成するために通常必要とされる。銅については、銅を熱処理する際の銅の酸化を防止するために、不活性雰囲気が必ず必要とされる。ポスト硬化の温度が高いほど、達成される導電性が良くなる。これは、熱的に安定な基板のみが使用可能であることを意味する。また、印刷金属粒子の性能は、導電性、接着性及び一様性に関して、基板により顕著に異なる。インクジェットは元来、低粘度の技術であるので、金属ナノ粒子インク中の金属の体積含有量は低い。これは事実上インライン印刷の速度を制限する。何故ならば、必要な金属含有量を堆積させるのに多重パスが必要とされ得るからである。最後に、今日において、ナノ粒子法は主に銀に限定されている。何故ならば、他の金属はより高い温度及び/又は不活性雰囲気を必要とするからである。このような物質のコストは、大量生産の応用においては比較的高い。従って、銅のようなはるかに安い金属が、コスト効率の高い大量生産が必要とされる多数の応用における可能性を有する。
【0115】
急速光硬化(適切な波長のパルスレーザ、短パルスランプを含む)が、金属インクを硬化させるのに用いられてきた。レーザダイレクトライティング法を用いて、金属フィルムをパターン化することができる。しかしながら、レーザビームの小さな面積に起因して、ハードマスクを直接用いることによって、大面積にわたって明確なパターンを生じさせることはできない。他方、レーザダイレクトライティング法では、高スループット製造を達成することが非常に難しい。しかしながら、短パルスランプは、比較的大面積にわたって金属フィルムを硬化させることができるだけでなく、半導体産業のリソグラフィプロセス用に広く用いられているようなハードマスクを用いることによって金属フィルムをパターン化することもできる。しかしながら、ランプを用いることによる通常のリソグラフィプロセスは単に、フォトレジストを露光することによって所望のパターンを生じさせるだけのものである。
【0116】
本願では、高エネルギーで短パルスの光ランプ又はレーザを用いて、低温で金属インクを硬化させると同時に、ハードマスクで金属インクをパターン化する。この方法は、半導体産業のリソグラフィプロセスにおいて用いられるようなマスクを用いることによって、50μm未満の超微細パターンを提供する可能性を有する。最も重要なのは、低コストの銅インクを空気中で硬化及びパターン化させて、多様な応用(RFID(Radio‐frequency identification)アンテナ等)用の導電性パターンを生じさせることができるということである。
【0117】
金属インク(低コストの銅インク等)は、ポリマー又は紙基板上に堆積可能である。スプレー、ドローダウン、スピンキャスティングや他の印刷法を用いて、金属インクを堆積させ得る。空気中でのプレ硬化の後において、銅フィルム(未だ絶縁性)は、急速光硬化の準備が出来ている状態にある。図23に示されるようなRFIDアンテナ等の所望のパターンを備えたマスクを用いて、デザインどおりのパターンを得ることができる。
【0118】
非硬化領域(ハードマスクによって画定される)は一般的に、基板に対する接着性が非常に悪く、絶縁性(>2×107Ω)であり、硬化領域は、接着性が非常に良く高導電性である。非硬化領域上の金属は、溶媒又は水によって容易に洗い流すことができ、新たな金属インクを作製するために収集及び再利用可能である。非硬化領域は絶縁性であるので、金属粒子は、パターン化された導電性パターンに対して影響を与えない。よって、基板上に金属ナノ粒子を残留させることもできる。
【0119】
実施例1. ポリイミド基板上の銅インクの硬化
スプレー、ドローダウン、スピンキャスティング等の低コスト堆積法用に、銅インクを配合する。銅インクは、銅ナノ粒子、媒体、分散剤を含む。媒体は、イソプロピルアルコール(IPA,isopropyl alcohol)、トルエン、ブチルベンゼン又は水等であり得る。アミン(例えばヘキシルアミン)を、銅ナノ粒子用の分散剤として使用する。銅ナノ粒子のサイズの範囲は、2nmから200nmである。銅の添加濃度は10%から50%であり得る。インク中の分散剤の添加濃度は1%から30%であり得る。銅インクは、ドローダウンプロセスを用いて、ポリイミド基板上に堆積される。硬化前の銅フィルムの厚さは1μmから10μmであり得る。銅フィルムは、光硬化の前に、空気中100℃で30分間プレ硬化される。プレ硬化されたフィルムは絶縁性であり、2×107Ωを超える抵抗を有する。
【0120】
半導体産業のリソグラフィプロセス用にマスクを作るために採用されているような方法によって、溶融シリカ又は石英上にデザインパターンを作る。100nmを超える厚さの金属フィルム(クロム等)を、赤外線から紫外線の波長に対して透明な基板上に堆積させ得る。透明基板の厚さは、パターンに対する解像度の高さがどのようなものであるかに応じて、0.2mm以上の薄さとなり得る。デザインパターンは、リソグラフィツール及びエッチングを用いることによって、作られ得る。
【0121】
図10A〜Dに示されるように、高出力キセノンランプを採用し、最大350ミリ秒のパルス幅で2J/cmのエネルギー密度を伝える光学システムを用いて、銅インクを硬化させる。光硬化は、空気中室温で行うことができる。また、必要であれば、硬化プロセスは、低温及び不活性雰囲気においても行うことができる。光硬化後の銅フィルムからは、略10−5オーム・cmから3×10−6オーム・cmの範囲の抵抗率が得られうる。フィルムの不揮発性成分は全量の10%未満である。堆積及び露光段階を繰り返すことによって、多層の導電性フィルムが生成される。硬化フィルム中の銅酸化物の濃度は30%を超えない。図23に示されるRFIDアンテナ導電性パターンを、銅インクから形成することができる。
【0122】
実施例2.標準的なフォトマスクを用いた、ポリイミド基板上の銅インクの硬化
図24Aは、半導体産業において用いられる石英プレート上に形成した標準的なフォトマスクを示す。暗色領域は、高エネルギー光を通過させることのできる開口部であり、残りの領域は、受光した高エネルギー光を反射及び吸収する金属フィルムでコーティングされている。フォトマスクの開口部を介して受光された高エネルギー光は、基板上の銅インクを選択的に焼結させて、銅インクの他の領域は高エネルギー光に露光されないままである。銅インクの露光領域は、融合してポリイミド基板に接着し、非露光領域は基板に対する接着性が非常に弱い。図24Bは、銅インクの非露光領域を、水又は他の溶媒で洗い流すことによって、又は単純にテープによって除去した後に、フォトマスクに対応して正確にパターン化された銅フィルムが得られ、使用されたフォトマスクによって画定された銅トレースと同じ解像度が達成される。これは、銅パターンの解像度がフォトマスクの解像度に依存することを示す。
【0123】
銅トレースのマイクロメートル又はサブマイクロメートルの解像度が、高解像度フォトマスクを用いることによって、達成可能である。
【0124】
実施例3.標準的な光マスクを用いた、ポリイミド基板上の銅インクの硬化
図25Aは、カプトンフィルムから作製されたシャドウマスクを示す。白色領域はカプトン基板の開口部であり、高エネルギー光を通過させる。カプトンフィルムは、UV光、可視光及び赤外光を一部吸収して、その通過光がナノ粒子を焼結させるのに十分なエネルギーを有さないようにする一方で、開口部を通過した高エネルギー光は、ナノ粒子を焼結させるのに十分なエネルギーを有する。図25Bは、非焼結領域を水又は溶媒で洗い流すことによって、又はテープによって除去した後に、カプトンシャドウマスクに対応してパターン化された銅フィルムが得られることを示す。
【0125】
ナノ粒子インクの配合には、一以上の媒体(例えば溶媒)が含まれ得て、その中にナノ粒子が保存される。例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、トルエン、ブチルベンゼン、水等が挙げられる。また、インクの配合には、媒体中のナノ粒子の分散を促進する分散剤も含まれ得る。分散剤の一例はアミン(例えばヘキシルアミン)である。ナノ粒子のサイズは直径2nmから1000nmの範囲であり得る。溶媒中のナノ粒子の濃度は、10%から50%の範囲であり得る。分散剤の濃度は、1%から30%の範囲であり得る。
【0126】
上述のように、銅酸化物の存在は、ナノ粒子フィルムの抵抗率を上昇させる傾向にある。銅酸化物の量を減少又は削除する方法は多数存在している。これらの方法は典型的に、インク溶液の配合の前にナノ粒子から酸化物を除去することを伴う。例えば、銅酸化物は、銅ナノ粒子にアスコルビン酸又はエチレンジアミンの溶液を加えることによって除去可能である。アスコルビン又はエチレンジアミン溶液は銅酸化物を銅に還元する。酸化物が除去されると、ナノ粒子をインク溶媒に加えることができる。ナノ粒子上に酸化物が再形成されることを防止するため、ナノ粒子は、フォーミングガス、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気で加えられ得る。一部の場合、熱硬化又は光焼結プロセス中の酸化物形成を回避するため、ナノ粒子を封止することができる。このような封止物質は、NanoSal(TM)(Salvona Technologies社から入手可能な固体ナノスフィアから成る特許物質)である。一部の場合、インクの配合には、インサイチュー(in situ)でナノ粒子から酸化物を除去する物質が含まれ得る。このような化合物はグリオキシル酸である。
【0127】
一部の実施では、酸化物を、インク配合中に含まれる溶液を用いて除去することができる。例えば、或る種のインク配合は、銅酸化物を除去するためにグリオキシル酸を含むことができる。まず、ナノ粒子上存在している銅ナノ粒子の少なくとも一部を除去するグリオキシル酸が、銅ナノ粒子に加えられる。その後、ナノ粒子‐酸溶液が、水及び/又はIPAを含む溶液に加えられて、インク配合が提供される。残留している銅酸化物を、インク配合の超音波処理を用いて更に除去することができる。その後、溶液を基板上に滴下堆積又は印刷して、乾燥させる。
【0128】
以下の表1は、空気中で乾燥させたグリオキシル処理ナノ粒子フィルムに対する、及び、60℃のオーブンで1時間にわたって乾燥させた他のグリオキシル処理フィルムに対する銅酸化物含有量の減少を表すXRDデータを示す。また、この表は、グリオキシル酸で処理されていないナノ粒子フィルムに対するデータも含む。インク配合には、20〜40nmの銅ナノ粒子が含まれていた。グリオキシル酸溶液は、1グラムの銅、4ミリリットルの水及び0.1グラムのグリオキシル酸を含んでいた。表から見て取れるように、XRDピークの高さ及び面積におけるCu2O対銅の相対比は、60℃で1時間にわたってオーブン乾燥させたグリオキシル酸処理フィルムに対して低い。
【0129】
【表8】
【0130】
パルスレーザビームを用いた微細加工は、100nmに近い解像度で2次元又は3次元(2D又は3D)微細構造を形成できる性能によって、かなりの注目を集めている(非特許文献1、非特許文献2)。しかしながら、フォトポリマー製の2D又は3D微細構造は、非導電性であるので、そのマイクロエレクトロニクス装置及びMEMS(Micro‐electromechanical system)における使用は制限されている。この制限を克服するため、いくつかのグループが、二光子プロセスを採用した金属微細構造の3Dダイレクトライティングを研究している(非特許文献3)。このような方法は、銀や金等の金属イオンの光還元に基づいている。他のグループは、金属微細構造を形成するために金属イオンを含有するポリマーフィルムを用いている(非特許文献4)。このような方法では、製造後の残留ポリマーマトリクス又は残留物に起因して、高導電性の導体を生成することができない。銅は広範に応用されている電子物質であり、銀や金よりもはるかに安価である。より高性能を達成するために、半導体装置の密度が増大し、回路素子のサイズが減少すると、BEOL(back−end−of−line)におけるRC(resistance capacitance)遅延時間が増大し、回路性能を左右する。銅配線は、従来のアルミニウム配線と比較してのこの低い抵抗に起因して、シリコン集積回路において適用されている。また、銅は、銀等の他の金属が有さない高いエレクトロマイグレーション耐性を有し、半導体産業における配線として最良の選択となっている。
【0131】
電気メッキ銅、化学エッチング銅、物理及び化学気相堆積銅が、電子産業において最も広範に用いられている。フォトリソグラフィプロセスは一般的に、デザインされた銅トレースを生成することを要する。銅のレーザ誘起堆積は、導電性トラック及び回路の高速製造及び修復の有望な方法として知られている。導電性の銅微細構造の高スループット且つ低コスト製造を可能にするレーザダイレクトライティング法の利点は、以下のとおりである:
1)高導電性微細構造のダイレクトライティングは、何らフォトリソグラフィプロセスを必要としない。残留する未処理物質は容易に取り除くことができる。
2)電気メッキ銅に対して広範に用いられているシード層が必要とされない。
3)この追加のマイクロリソグラフィ法は安価であり(フォトリソグラフィが必要とされない)、高スループットである。微細構造及びサブマイクロ構造は、大気中で高速位置決めシステム及び走査レーザビームを用いることによって、予定位置に直接形成可能である。
4)導電性3D微細構造は、何らフォトリソグラフィプロセスを用いずに、レーザバイレーザプロセスで構築可能である。
【0132】
マスクを用いた光焼結又はレーザライティングにおいては、対象の装置の要求に応じて、多様なインク前駆体の化学的性質が選択される(非特許文献5)。銅ナノインクは、短い高強度光パルスのマイクロ秒パルス期間を有する光焼結システムを用いて、優れた接着性でプラスチック基板に対して焼結される。鏡のように滑らかな表面、非常に低い有機残留物の量、優れた接着性及び低抵抗率(バルク銅に近い)を備えた銅フィルムが、空気中室温でこのマイクロ秒パルスランプを用いて、フレキシブル基板上に得られる。このプロセスは、単一のパルスで大面積にわたって銅ナノインクを焼結させて、低解像度の銅トレースを生成することができ、フレキシブル基板上のロールツーロールのコスト効率的な製造に適している。しかしながら、この相対的に長いパルスでは、優れた接着力、及びシリコン基板上の銅ナノ粒子を光焼結させるのに十分なパルスエネルギーを達成することが非常に難しい。その理由は、シリコン等の無機基板ははるかに高い熱伝導率及び融点を有するからである。長パルスの光では、基板及び周辺に移ってしまう高密度光子からの変換熱の割合が、短いパルスレーザを用いた場合よりもはるかに高い。超短波レーザシステムでは、銅ナノ粒子の完全な焼結を達成することができ、シリコン基板上への優れた接着を得ることができる。更に、超短波パルスレーザは、その焼結プロセスの非常に短い期間に起因して、再酸化なしで、銅酸化物を金属銅に効率的に光還元し得る。ナノ秒更にはフェムト秒レーザは、ナノ粒子の焼結に対してはるかに高い温度をもたらし、マイクロフィーチャの銅トレースを再酸化及び生成する可能性が少ない。
【0133】
TSVチップ接続で採用されている技術には、TSV形成、絶縁体/バリア/シード堆積、ビア銅充填プロセス、表面銅除去、ウェーハ薄化、検査、試験等が含まれる。特に、プロセスロバスト性及び銅堆積の速度がSTVチップ集積を実現するのに最も重要である。現時点では、電気メッキ銅が、ビアを充填する主要な選択肢である。ビアを充填するプロセスには一般的に三種類存在している。即ち、ビアの側壁に沿ったライニング、ビア内部の完全充填、ビア上方のスタッド形成での完全充填である(非特許文献6)。製造プロセス中の何時ビアが形成されるのかによって、多様なスルーシリコンビア(TSV,through−silicon via)を分類可能である。一般的に、ディープ反応性イオンエッチングプロセスを用いて、シリコンに対してビア又はホールがエッチングされる。その後、このホールは、CVD法によって堆積させた誘電体スリーブでライニングされる。その後、物理気相堆積(PVD,physical vapor deposition)によって、拡散バリア及び銅シード層を堆積させる。そして、ホールを電気メッキ銅で充填する。ビアを充填するのに銅の電気メッキを用いることに対してはいくつかの主な欠点がある:
1)電気メッキプロセスでは、高アスペクト比でビアを充填するのに時間がかかり過ぎる。
2)銅の電気メッキ用のバリア/シード層の堆積用のPVD設備を、高アスペクト比のビアの一様なコーティングを有するために開発しなければならない。
3)ビアを充填するため、化学薬品及び添加剤を改良する必要がある。化学添加剤の消費量も重要である。
4)銅トレースを生成するのに、フォトリソグラフィプロセスが必要とされる。
【0134】
10〜40μmの範囲で、50〜100μmの深さ、20〜50μmの間隔でビア開口部を充填することが、半導体産業によって現在追求されている。同様のフィーチャも必要とされている。現状では、TSV技術での主な挑戦は、如何にして高い生産性でコスト効率的に作製し、ボイド無しにビアを充填し、良好な電気的結果を達成するかということである。
【0135】
低粘性銅ナノインクを用いることによって、ビアを、インクジェット印刷又は浸漬堆積によって充填することができる。空気中100℃でのプレ硬化後、ナノ粒子は、マスクを用いた高エネルギーフラッシュランプ又はパルスレーザビームによって焼結される。走査システム及び多層堆積によって、レーザ焼結又は光焼結銅3D微細構造を形成して、空気中室温でビアを充填することができる。ビア中の堆積にシード層は必要とされない。この方法は単純で高速であり、基板上の所望の位置にのみ物質を堆積させることによって高価な物質の使用を節約する。一方、従来の方法(リソグラフィ)は、基板全体に対して金属コーティングを適用し、化学的エッチングによって必要ではない層を除去するので、高有毒廃棄物が生じる。従って、このレーザ誘起導電性微細構造化は、電子産業に対して、コスト効率的で高スループットな方法を提供する。
【0136】
図22は、ビア内に銅ナノインクを充填し、高速位置決め及び合焦レーザの走査によって銅ナノ粒子を焼結させ、高スループットで低コストの2D又は3D導電性微細構造の製造を提供するプロセスを示す。段階(a)では、インクジェット又は浸漬堆積を用いて、ビア内に銅ナノインクを充填することができる。段階(b)では、インク中の溶媒を乾燥及び除去する。段階(c)では、高速位置決めと、レーザビームの走査又はマスクを用いた高エネルギー光フラッシュとを組み合わせて、銅インクを非常に短い時間で焼結させて、基板に接着させる。未焼結銅インクは、接着性が優れないので、容易に除去可能である。
【0137】
単一のチップの配線用の銅の微細トレースは無数存在しているが、レーザダイレクトライティングで製造するには時間がかかり過ぎる。現状では、“ダマシン電気メッキ銅”が、当該分野において主流である。チップ間のTSVの数は非常に限られている。従って、市販の高速高精度位置決め装置を組み合わせると、3Dパッケージングに対するナノ粒子のレーザ焼結は、高スループット且つ低コスト製造の要求を満たす適切な方法となる。一部の実施では、ナノ粒子インク配合を用いて、平坦な基板上の導電性パターン以外の装置を形成することができる。例えば、ナノ粒子インク配合を用いて、金属コーティングされた繊維を提供することができる。金属コーティングされた繊維(ニッケル及び銅コーティングされた繊維)は典型的に、炭素複合材又は金属複合材産業において用いられ、高強度で導電性の物質を提供する。しかしながら、電着によって金属コーティングされた繊維を形成するためには、一般的に、繊維が導電性であることが要される。炭素繊維はある程度導電性であり得るが、他の繊維(ナイロン、カプトン(登録商標)、ケブラー(登録商標)(Kevlar(登録商標))や他のポリマー系物質は非導電性である。従って、これらの繊維上に電着を実施することは難しい。
【0138】
導電性繊維及び非導電性繊維を両方とも金属でコーティングするために、ニッケル、クロム、銅及び/又は他の金属ナノ粒子を含むナノ粒子インク配合中に、繊維を浸漬させることができる。インクを乾燥させて溶媒を除去した後、光焼結のために、繊維を光源に露光することができる。インク配合に依存して、光パワーは変化する。上述のように、金属ナノ粒子は、光焼結段階中に融合して、繊維に接着する高導電性金属コーティングを提供する。一部の場合、図11の例に示されるようなバッチプロセスにおいて、プロセスを完了させることができる。
【0139】
図11は、金属インク及び光焼結を用いた繊維のコーティングのロールツーロールプロセスを示す。繊維1100はスプール1102から分配されて、その後、インクバス1104に入れられる。他の方法(スプレー等)を用いて、繊維上にインクをコーティングすることもできる。更に、繊維の周囲の全体未満をコーティングする方法を用いることができる。その後、コーティングされた繊維1106は、乾燥器1108を通過して、インクから水及び/又は溶媒を除去する。乾燥しインクコーティングされた繊維1110は、光焼結ステーション1112を通過する。ステーション1112は、インクコーティングされた繊維を短期間露光するように稼動される一続きのフラッシュランプを含むことができる。ランプの稼動間隔は、繊維の部分部分が一度よりも多く露光されないように構成可能である。更に、ステーション1112は、繊維1110の周囲の全体未満を露光及び硬化するように構成可能である。その後、光焼結された繊維1114は、繊維巻き取りスプール1116によって巻き取られる。代わりに、繊維1114を断片に切断して積層させることができる。このプロセスは、個々の繊維又は繊維の束に対して機能する。
【0140】
本発明の多数の実施形態を説明してきた。しかしながら、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、多様な変更を行うことができるということは理解されたい。他の実施形態も特許請求の範囲内に存する。
【0141】
同様のプロセスは、短い繊維又は切断された繊維にも適用可能である。繊維を金属粒子インクと混合して、その後、繊維を溶液から取り出して乾燥させることができる。繊維は、乾燥の前又は後のいずれかにおいて可動表面上に置かれ得る。その表面は、光焼結ステーション内を移動して、その後、収集及びパッケージングされるか、又は、更なる処理段階に送られる。また、可動表面は、光を通過させるように透明であり得る。
【符号の説明】
【0142】
100 システム
102 基板
104 プリンタ装置
106 貯蔵区画
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィルムを形成する方法であって、
基板の表面上に複数の銅ナノ粒子を含有するフィルムを堆積させる段階と、
前記フィルムの少なくとも一部を露光して、露光部分を導電性にする段階とを備えた方法。
【請求項2】
前記フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記銅ナノ粒子の少なくとも一部を互いに融合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、銅ナノ粒子の少なくとも一部を光焼結させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記銅ナノ粒子の光焼結が、CuO及びCu2OからCu2Oへの第一の変換と、Cu2OからCuへの第二の変換とを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
光焼結プロセス中に、銅酸化物が、ナノ粒子の融合している領域から離れるように移動する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記フィルムにレーザを向ける段階を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記フィルムをフラッシュランプに露光する段階を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記フィルムを光の合焦ビームに露光する段階を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
光の強度及び露光時間が、前記露光部分を導電性にするのに十分なものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルムの露光が周囲空気中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルムの露光が不活性雰囲気で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
各ナノ粒子のサイズが1000nm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
各ナノ粒子のサイズが200nm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記フィルムが、銅ナノ粒子を含有する溶液から堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
非導電性のフィルムを堆積させる段階の前に、前記ナノ粒子を溶媒に加えて、溶液を形成する段階を更に備えた請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶液に分散剤を加える段階を更に備えた請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子を溶媒に加える段階の前に、ナノ粒子を粉砕する段階を更に備えた請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液中に添加剤を含有させる段階を更に備え、該添加剤が、前記溶液の粘度、表面張力、光熱容量、エネルギー吸収度を変更する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ粒子を処理して酸化物を除去する段階を更に備えた請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化物を除去した後に、前記ナノ粒子を封止する段階を更に備えた請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記フィルムが前記基板の裏側を介して露光される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記基板がフレキシブルである、請求項3に記載の方法。
【請求項23】
前記基板が繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ロールツーロールプロセスで繊維上に導電性フィルムを形成する方法であって、
ナノ粒子インク溶液で短い繊維又は切断された繊維をコーティングする段階と、
前記繊維上の前記ナノ粒子溶液をプレ硬化させて、前記繊維上に非導電性フィルムを形成する段階と、
前記非導電性フィルムの少なくとも一部を露光して、該フィルムを導電性にする段階とを備えた方法。
【請求項25】
スプールから前記ファイバを分配する段階を更に備えた請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記繊維をコーティングする段階が、前記ファイバをナノ粒子インクバスに浸漬させる段階を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記繊維をコーティングする段階が、前記ファイバ上にナノ粒子インク溶液をスプレーする段階を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記ナノ粒子溶液をプレ硬化させる段階が、前記ファイバを乾燥ステーションを通過させてインクを乾燥させる段階を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記非導電性フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記ファイバを光焼結ステーションを通過させる段階を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記非導電性フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記光焼結ステーションの一つ以上のフラッシュランプを稼動させる段階を更に備える、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
露光された繊維を巻き取りスプールに収集する段階を更に備えた請求項24に記載の方法。
【請求項32】
露光された繊維を切断する段階を更に備えた請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記銅ナノ粒子の融合が、周囲空気中室温で光焼結プロセスによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項34】
前記光焼結プロセスが、前記銅ナノ粒子間の界面の酸化を防止する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記CuO及び前記Cu2Oは融合中に還元される、請求項2に記載の方法。
【請求項36】
前記CuOが最小化される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
融合した銅ナノ粒子が2nm以上且つ200nm以下のサイズを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項38】
前記フィルムの不揮発性成分が全体の量の10%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記フィルムが、8〜20センチポアズの範囲内の粘度と、20〜60ダイン/cm2の範囲内の表面張力とを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
多層の導電性フィルムを生成するために、堆積段階及び露光段階を繰り返すことを更に備える請求項1に記載の方法。
【請求項41】
融合したフィルム中の銅酸化物の濃度が30%を超えない、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
光焼結がフレキシブル基板の表面を粗くする、請求項22に記載の方法。
【請求項43】
前記酸化物が、グリオキシル酸を用いて前記ナノ粒子から除去される、請求項19に記載の方法。
【請求項44】
前記酸化物が、アスコルビン酸を用いて前記ナノ粒子から除去される、請求項19に記載の方法。
【請求項45】
前記酸化物が、エチレンジアミンを用いて前記ナノ粒子から除去される、請求項19に記載の方法。
【請求項46】
融合した複数の銅ナノ粒子が、それらの間に前記銅ナノ粒子の直径よりも小さな直径の融合部分を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項47】
前記溶液が溶媒及び分散剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項48】
前記溶媒が、2‐ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、テルピネオール、イソブチルアルコール及びイソプロピルアルコールから成る群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記分散剤が、トリトンX‐100、トリトンX‐15、トリトンX‐45、トリトンQS‐15、直鎖アルキルエーテル、四級化アルキルイミダゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ポリエチレンイミン、アミン、ポリシロキサンから成る群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記分散剤が、ディスパービック180、ディスパービック111及びスチレン無水マレイン酸コポリマーから成る群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記分散剤の重量パーセンテージが0.5%から20%である、請求項47に記載の方法。
【請求項1】
導電性フィルムを形成する方法であって、
基板の表面上に複数の銅ナノ粒子を含有するフィルムを堆積させる段階と、
前記フィルムの少なくとも一部を露光して、露光部分を導電性にする段階とを備えた方法。
【請求項2】
前記フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記銅ナノ粒子の少なくとも一部を互いに融合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、銅ナノ粒子の少なくとも一部を光焼結させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記銅ナノ粒子の光焼結が、CuO及びCu2OからCu2Oへの第一の変換と、Cu2OからCuへの第二の変換とを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
光焼結プロセス中に、銅酸化物が、ナノ粒子の融合している領域から離れるように移動する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記フィルムにレーザを向ける段階を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記フィルムをフラッシュランプに露光する段階を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記フィルムを光の合焦ビームに露光する段階を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
光の強度及び露光時間が、前記露光部分を導電性にするのに十分なものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルムの露光が周囲空気中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルムの露光が不活性雰囲気で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
各ナノ粒子のサイズが1000nm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
各ナノ粒子のサイズが200nm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記フィルムが、銅ナノ粒子を含有する溶液から堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
非導電性のフィルムを堆積させる段階の前に、前記ナノ粒子を溶媒に加えて、溶液を形成する段階を更に備えた請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶液に分散剤を加える段階を更に備えた請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子を溶媒に加える段階の前に、ナノ粒子を粉砕する段階を更に備えた請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液中に添加剤を含有させる段階を更に備え、該添加剤が、前記溶液の粘度、表面張力、光熱容量、エネルギー吸収度を変更する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ粒子を処理して酸化物を除去する段階を更に備えた請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化物を除去した後に、前記ナノ粒子を封止する段階を更に備えた請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記フィルムが前記基板の裏側を介して露光される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記基板がフレキシブルである、請求項3に記載の方法。
【請求項23】
前記基板が繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ロールツーロールプロセスで繊維上に導電性フィルムを形成する方法であって、
ナノ粒子インク溶液で短い繊維又は切断された繊維をコーティングする段階と、
前記繊維上の前記ナノ粒子溶液をプレ硬化させて、前記繊維上に非導電性フィルムを形成する段階と、
前記非導電性フィルムの少なくとも一部を露光して、該フィルムを導電性にする段階とを備えた方法。
【請求項25】
スプールから前記ファイバを分配する段階を更に備えた請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記繊維をコーティングする段階が、前記ファイバをナノ粒子インクバスに浸漬させる段階を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記繊維をコーティングする段階が、前記ファイバ上にナノ粒子インク溶液をスプレーする段階を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記ナノ粒子溶液をプレ硬化させる段階が、前記ファイバを乾燥ステーションを通過させてインクを乾燥させる段階を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記非導電性フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記ファイバを光焼結ステーションを通過させる段階を備える、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記非導電性フィルムの少なくとも一部を露光する段階が、前記光焼結ステーションの一つ以上のフラッシュランプを稼動させる段階を更に備える、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
露光された繊維を巻き取りスプールに収集する段階を更に備えた請求項24に記載の方法。
【請求項32】
露光された繊維を切断する段階を更に備えた請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記銅ナノ粒子の融合が、周囲空気中室温で光焼結プロセスによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項34】
前記光焼結プロセスが、前記銅ナノ粒子間の界面の酸化を防止する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記CuO及び前記Cu2Oは融合中に還元される、請求項2に記載の方法。
【請求項36】
前記CuOが最小化される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
融合した銅ナノ粒子が2nm以上且つ200nm以下のサイズを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項38】
前記フィルムの不揮発性成分が全体の量の10%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記フィルムが、8〜20センチポアズの範囲内の粘度と、20〜60ダイン/cm2の範囲内の表面張力とを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
多層の導電性フィルムを生成するために、堆積段階及び露光段階を繰り返すことを更に備える請求項1に記載の方法。
【請求項41】
融合したフィルム中の銅酸化物の濃度が30%を超えない、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
光焼結がフレキシブル基板の表面を粗くする、請求項22に記載の方法。
【請求項43】
前記酸化物が、グリオキシル酸を用いて前記ナノ粒子から除去される、請求項19に記載の方法。
【請求項44】
前記酸化物が、アスコルビン酸を用いて前記ナノ粒子から除去される、請求項19に記載の方法。
【請求項45】
前記酸化物が、エチレンジアミンを用いて前記ナノ粒子から除去される、請求項19に記載の方法。
【請求項46】
融合した複数の銅ナノ粒子が、それらの間に前記銅ナノ粒子の直径よりも小さな直径の融合部分を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項47】
前記溶液が溶媒及び分散剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項48】
前記溶媒が、2‐ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2‐エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、テルピネオール、イソブチルアルコール及びイソプロピルアルコールから成る群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記分散剤が、トリトンX‐100、トリトンX‐15、トリトンX‐45、トリトンQS‐15、直鎖アルキルエーテル、四級化アルキルイミダゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ポリエチレンイミン、アミン、ポリシロキサンから成る群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記分散剤が、ディスパービック180、ディスパービック111及びスチレン無水マレイン酸コポリマーから成る群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記分散剤の重量パーセンテージが0.5%から20%である、請求項47に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図26】
【図27】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2010−528428(P2010−528428A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509476(P2010−509476)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/063890
【国際公開番号】WO2008/144504
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(505131522)アプライド・ナノテック・ホールディングス・インコーポレーテッド (27)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/063890
【国際公開番号】WO2008/144504
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(505131522)アプライド・ナノテック・ホールディングス・インコーポレーテッド (27)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】
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