説明

金属キレート構造を有するグリセリンエステル誘導体

【課題】溶解性等に優れ、病巣選択的なリポソーム造影剤に適した化合物の提供。
【解決手段】下記の一般式(I):
【化1】


(式中、R1及びR2は炭素数8〜30個のアルキル基又はアルケニル基を示し;X1及びX2はに−O−又は−N(Z)−を示し;Zは水素原子、又は炭素数1〜5個のアルキル基を示し;Lは、アルキレン基、アルケニレン基、−CO−、−O−等を含む連結基鎖長を構成する原子数が1〜10個である2価の連結基を示し;Chは、下記の置換基を有していてもよい3個以上の窒素原子を含むキレート形成可能な部分構造を示す]で表される化合物、該化合物を有するキレート化合物、又はこれらいずれかの塩。該化合物等を含むリポソームを含む造影剤を用いたMRI造影又はシンチグラフィー造影により血管の病巣を選択的に造影できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属キレート構造を形成可能なグリセリンエステル誘導体又はその塩及び該誘導体を含むキレート化合物又はその塩に関する。本発明はさらに、該誘導体もしくはその塩又は該キレート化合物もしくはその塩を膜構成成分として含むリポソーム及び該リポソームを含む造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲的な動脈硬化の診断法としては、主にX線血管造影法が挙げられる。しかし、この方法は、水溶性のヨード造影剤で血液の流れを造影する方法であるため、病変組織と正常組織との区別がつけにくかった。そのため、狭窄が50%以上進んだ病巣しか検出することができず、虚血性疾患の発作が発症する前に病巣を検出することが困難であった。
【0003】
上記以外の診断法として、近年、動脈硬化巣プラーク中に多く動態分布される造影剤を用いて核磁気共鳴トモグラフィー(MRI)により疾患を検出する方法が報告されている。しかし、該造影剤として報告されている化合物はいずれも診断法に用いることには問題がある。例えば、ヘマトポルフィリン誘導体(特許文献1参照)は皮膚への沈着・着色の欠点が指摘されており、また、脂質に富んだプラークに集積するとの報告があるパーフルオロ側鎖を有するガドリニウム錯体(非特許文献1参照)は、脂肪肝・腎臓上皮・筋組織の腱などの、生体における脂質豊富な組織、器官への集積が危惧されている。
【0004】
化合物の観点からは、フォスファチジルエタノールアミン(PE)とジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)をアミド結合した化合物が知られており(例えば、非特許文献2)、このような化合物のガドリニウム錯体のリポソームに関する報告(非特許文献3)もある。しかし、この錯体は難溶解性であるためリポソーム化の際の操作性が悪く、生体内での蓄積性や毒性における懸念もある。
【特許文献1】米国特許第4577636号明細書
【非特許文献1】サーキュレーション(Circulation), 109, 2890 (2004)
【非特許文献2】ポリメリック マテリアルズ サイエンス アンド エンジニアリング(Polymeric Materials Science and Engineering), 89, 148 (2003)
【非特許文献3】インオーガニカ キミカ アクタ(Inorganica Chimica Acta), 331, 151 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、病巣選択的なリポソーム造影剤に適した化合物であって溶解性に優れた化合物、並びに該化合物を含むMRI造影剤及びシンチグラフィー造影剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記の課題を解決すべく研究を行った結果、金属キレート構造を有するグリセリンエステル誘導体が溶解性に富み、また、MRI造影剤としてのリポソームの構成成分として優れた性質を有していることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の一般式(I):
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数8〜30個のアルキル基又はアルケニル基を示し;X1及びX2はそれぞれ独立に−O−又は−N(Z)−を示し;Zは水素原子、又は炭素数1〜5個のアルキル基を示し;Lは、アルキレン基、アルケニレン基、−CO−、−O−、−NH−、―N=、−S−、−SO−、及び−SO2−からなる群から選択される1以上の部分構造を含み、かつ連結基鎖長を構成する原子数が1〜10個である2価の連結基を示し、該連結基は置換基を有していてもよく;Chは、下記の置換基群(置換基群=ヒドロキシル基;アルコキシ基;カルボキシル基;カルバモイル基;アミノ基;アルキルアミノ基;スルホ基;ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、アルキルアミノ基、及びスルホ基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭素数1〜5個のアルキル基;及びこれらの組み合わせ;ただし該置換基群における個々の置換基の、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の総数は1〜20個である)から選択される置換基を有していてもよい3個以上の窒素原子を含むキレート形成可能な部分構造を示す]で表される化合物又はその塩を提供するものである。
【0008】
本発明の好ましい態様としては、Chが、下記の一般式(II):
【化2】

[式中、m1及びm2はそれぞれ独立に1又は2の整数を示す]で表される上記の化合物又はその塩;Chが、下記の一般式(III):
【化3】

で表される上記の化合物又はその塩;Chが、下記の一般式(IV):
【化4】

で表される上記の化合物又はその塩;Chが、下記の一般式(V):
【化5】

[式中、n1、n2、n3、及びn4はそれぞれ独立に1又は2の整数を示す]で表される上記の化合物又はその塩が提供される。
【0009】
本発明の別の好ましい態様としては、R1及びR2がそれぞれ独立に炭素数8〜30個のアルキル基である上記いずれかの化合物又はその塩;R1及びR2がそれぞれ独立に炭素数8〜30個のアルケニル基である上記いずれかの化合物又はその塩;R1及びR2がそれぞれ独立に炭素数10〜20個のアルキル基又はアルケニル基である上記いずれかの化合物又はその塩;Lが、アルキレン基、アルケニレン基、−CO−、及び−O−からなる群から選択される1以上の部分構造を含みかつ連結基鎖長を構成する原子数が1〜10個である2価の連結基である上記いずれかの化合物又はその塩が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の好ましい態様としては、上記いずれかの化合物及び金属イオンからなるキレート化合物又はその塩;金属イオンが原子番号21-29、31、32、37〜39、42〜44、49、及び57〜83から選択される元素の金属イオンである該キレート化合物又はその塩;金属イオンが原子番号21〜29、42、44、及び57〜71から選択される常磁性元素の金属イオンである該キレート化合物又はその塩が提供される。
【0011】
本発明の別の観点からは、本発明により、上記の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソームが提供され、その好ましい態様によれば、ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンを膜構成成分として含む該リポソームが提供される。
本発明のさらに別の観点からは、上記のリポソームを含むMRI造影剤が提供される。この発明の好ましい態様によれば、血管疾患の造影に用いる上記MRI造影剤;泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる上記MRI造影剤;マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる上記のMRI造影剤;マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる上記のMRI造影剤;マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる上記のMRI造影剤が提供される。
【0012】
また、同様に、本発明により上記のリポソームを含むシンチグラフィー造影剤が提供される。この発明の好ましい態様によれば、血管疾患の造影に用いる上記シンチグラフィー造影剤;泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる上記シンチグラフィー造影剤;マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる上記のシンチグラフィー造影剤;マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる上記のシンチグラフィー造影剤;マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる上記のシンチグラフィー造影剤が提供される。
【0013】
さらに、上記MRI造影剤/シンチグラフィー造影剤の製造のための上記の化合物又はその塩の使用;MRI造影/シンチグラフィー造影法であって、上記の化合物を膜構成成分として含むリポソームを、ヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;血管疾患の病巣の造影方法であって、上記の化合物を膜構成成分として含むリポソームを、ヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が本発明により提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化合物、キレート化合物及びこれらいずれかの塩は、溶解性が高くリポソーム造影剤の構成脂質に適しており、この化合物を含むリポソームを用いてMRI造影又はシンチグラフィー造影を行うことにより血管の病巣を選択的に造影できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書において、ある官能基について「置換されていてもよい」又は「置換基を有していてもよい」という場合には、その官能基が1又は2以上の置換基を有する場合があることを示しているが、特に言及しない場合には、結合する置換基の個数、置換位置、及び種類は特に限定されない。ある官能基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。本明細書において、「アルキル基」とは、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらの組み合わせを含む意味であり、環状アルキル基にはビシクロアルキル基などの多環性アルキル基が含まれる。アルキル部分を含む他の置換基のアルキル部分についても同様である。また、本明細書において、「アルケニル基」とは、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらの組み合わせを含む意味であり、また、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む意味である。
【0016】
Chにおける「3個以上の窒素原子を含むキレート形成可能な部分構造」は、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれであってもよい。該部分構造としては、ジエチレントリアミンユニット、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンユニット、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカンユニットなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0017】
Chにおいて、3個以上の窒素原子を含むキレート形成可能な部分構造に置換する置換基の個数は通常20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下であり、5以下であることが最も好ましい。置換位置は特に限定されないが、窒素原子への置換が好ましい。また、全ての窒素原子が置換基を1個又は2個有していることが好ましい。
3個以上の窒素原子を含むキレート形成可能な部分構造に置換する置換基群において、「これらの組み合わせ」とは、例えばアミノ基置換炭素数1〜5個のアルキル基のアミノ基がカルボキシル置換炭素数1〜5個のアルキル基で置換されている官能基などを意味する。Chにおいて、3個以上の窒素原子を含むキレート形成可能な部分構造に置換する置換基の種類としては置換炭素数1〜5個のアルキル基が好ましく、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はアミノ基が置換した炭素数1〜5個のアルキル基がより好ましい。好ましいChの例としては、ジエチレントリアミン五酢酸〔DTPA〕ユニット、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸〔DOTA〕ユニット、及び1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸〔TETA〕ユニットなどを挙げることができる。
【0018】
また、Chとしては、下記一般式(II)、
【化6】

で表される場合も好ましい。一般式(II)においてm1及びm2はそれぞれ独立に1又は2の整数を示し、それぞれ、一般式(II)における直鎖アルキレン中のメチレンの個数を示す。m1及びm2は、ともに1である場合がより好ましい。
【0019】
さらに、Chは下記一般式(III)、
【化7】

【0020】
下記一般式(IV)、
【化8】

【0021】
又は、下記一般式(V)、
【化9】

で表される構造を有することも好ましい。一般式(V)において、n1、n2、n3、及びn4はそれぞれ独立に1又は2の数字を示し、それぞれ、一般式(V)における直鎖アルキレン中のメチレンの個数を示す。このうち、n1、n2、n3、及びn4が全て1を表す場合、又はn1とn3とが1を表しかつn2とn4とが2を表す場合がより好ましい。
【0022】
1及びR2はそれぞれ独立に8〜30個の炭素原子からなるアルキル基又はアルケニル基を表す。該アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状である場合が好ましく、直鎖状である場合がより好ましい。該アルキル基又はアルケニル基は置換基を有していてもよいが、無置換である場合が好ましい。置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のいずれでもよい)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0023】
1又はR2が示すアルケニル基において、1個又は2個以上存在する二重結合は、特に限定されないがいずれもZ配置であることが好ましい。また、二重結合の位置、及び個数は特に規定されないが、個数は通常5個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましい。
1又はR2を構成する炭素原子の数は8〜25個がより好ましく、10〜20個が最も好ましい。また、R1及びR2は、ともにそれぞれ独立の炭素数8〜30個のアルキル基であることが好ましく、同様に、ともにそれぞれ独立の炭素数8〜30個のアルケニル基であることが好ましい。
【0024】
1及びX2はそれぞれ独立に−O−又は−N(Z)−を表す。Zは水素原子、又は炭素原子1〜5個のアルキル基を示す。Zとしては、炭素原子1〜3個のアルキル基がより好ましい。X1及びX2としては、それぞれ独立に−O−、−NH−、又は−NCH3−が最も好ましい。
【0025】
Lが示す2価の連結基は、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれでもよいが、直鎖状、分岐鎖状である場合が好ましく、直鎖状である場合が最も好ましい。また、該連結基は飽和の基であっても、不飽和結合を含んでいてもよい。不飽和結合を含む場合、その種類、位置、個数は特に規定されない。Lが示す2価の連結基は、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、アルコキシ、アシルオキシ、カルバモイルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アミノ、アシルアミノ、アミノカルボニルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、スルファモイル、スルホ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アゾ、又はイミドなどの置換基を有していてもよい。Lは、置換基を構成する水素以外の原子を含めて原子数が1〜10個であることがより好ましい。
好ましいLの例としては、アルキレン基、アルケニレン基、−CO−、及び−O−からなる群から選択される1以上の部分構造を含み、かつ連結基鎖長を構成する原子数が1〜10個である2価の連結基が挙げられる。この中でさらに、アルキレン基、アルケニレン基、又は−O−CH2CH2−O−構造もしくは−O−CH2CH2CH2−O−構造をその部分構造として含む連結基が好ましい。
【0026】
以下に本発明の化合物の好ましい例を示すが、本発明の化合物はこれらの例に限定されることはない。
【化10】

【0027】
【化11】

【0028】
以下に、本発明の化合物の一般的な合成法について説明するが、本発明の化合物の合成法はこれらに限定されるものではない。本発明の化合物の部分構造である長鎖脂肪酸は、通常市販されているものを使用してもよく、あるいは用途に応じて適宜合成してもよい。合成により入手する場合には、例えばRichard C. Larock著、Comprehensive organic transformations(VCH)に記載の方法により、対応するアルコールやアルキルハライド等を原料として用いることができる。
【0029】
上記の長鎖脂肪酸は、グリセリン、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、1-クロロ-2,3-プロパンジオールの誘導体と縮合してジアシルグリセリド誘導体へと導くことができる。この際、必要な場合には保護基を用いることもできるが、この場合の保護基としては、例えば、T. W. Green & P. G. M. Wuts著、Protecting groups in organic synthesis(John Wiley & sonc, inc.)に記載の保護基を適宜選択して用いることができる。
【0030】
上記のジアシルグリセリド誘導体に適宜必要な連結基を結合した後、金属配位能を有するポリアミン誘導体と連結しで本発明の化合物を合成することができる。その方法は、例えば、Bioconjugate Chem., 10, 137 (1999)や Tetrahedron Lett., 37, 4685 (1996) 、J. Chem. Soc., Perkin Trans 2, 348 (2002) 、又は J. Heterocycl. Chem., 37, 387 (2000) に記載の手法に従って行うことができる。しかし、これらの方法は一例であり、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明のキレート化合物は上述の化合物及び金属イオンからなるキレート化合物である。金属イオンとしては、特に限定されないが、MRI、X線、超音波コントラスト、シンチグラフィーなどの造影、放射線治療の目的に適切な金属イオンとして、常磁性金属、重金属、放射性金属同位体の放射性金属の金属イオンを用いることが好ましい。より具体的には、原子番号21-29、31、32、37〜39、42〜44、49、及び57〜83から選択される元素の金属イオンが好ましい。MRI造影剤として本発明のキレート化合物を使用する場合に適切な金属イオンとしては、原子番号21〜29、42、44、及び57〜71から選択される元素の金属イオンが挙げられる。正のMRI剤の調製に用いるために、より好ましい金属は原子番号24(Cr)、25(Mn)、26(Fe)、63(Eu)、64(Gd)、66(Dy)、67(Ho)であり、原子番号25(Mn)、26(Fe)、64(Gd)がより好ましく、特にMn(II)、Fe(III)、Gd(III)が好ましい。負のMRI剤の調製に用いるために、より好ましい金属は、原子番号62(Sm)、65(Tb)、66(Dy)である。
【0032】
本発明の化合物又はキレート化合物は1以上の不斉中心を有する場合があるが、この場合、不斉中心に基づく光学活性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する。純粋な形態の任意の立体異性体、任意の立体異性体の混合物、又はラセミ体などは、いずれも本発明の範囲に包含される。また、本発明の化合物はオレフィン性の二重結合を1個又は2個以上有する場合があるが、その配置はE又はZのいずれであってもよく、両者の混合物として存在していてもよい。本発明の化合物は互変異性体として存在する場合もあるが、任意の互変異性体、又はそれらの混合物は本発明の範囲に包含される。さらに、本発明の化合物又はキレート化合物は塩を形成する場合があり、遊離形態の化合物又は塩の形態の化合物が水和物又は溶媒和物を形成する場合もあるが、このような場合も本発明の範囲に包含される。塩の種類は特に限定されず、酸付加塩又は塩基付加塩のいずれであってもよい。
【0033】
本発明の化合物、キレート化合物、又はこれらいずれかの塩は、リポソームの膜構成成分として用いることができる。本発明の化合物、キレート化合物、又はこれらいずれかの塩を用いてリポソームを調製する場合、本発明の化合物、キレート化合物又はこれらいずれかの塩の使用量は、膜構成成分の全質量に対して10から90質量%程度、好ましくは10から80質量%、さらに好ましくは20から80質量%である。本発明の化合物、キレート化合物、又はこれらいずれかの塩は膜構成成分として1種類を用いてもよいが、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リポソームの他の膜構成成分としては、リポソームの製造に通常用いられている脂質化合物のいずれを用いてもよい。例えば、Biochim. Biophys. Acta 150(4), 44 (1982)、Adv. In Lipid. Res. 16(1), 1 (1978)、_RESEARCH IN LIPOSOMES_ (P. Machy, L. Leserman著、John Libbey EUROTEXT社)、「リポソーム」(野島、砂本、井上編、南江堂)等に記載されている。脂質化合物としてはリン脂質が好ましく、特に好ましいのはホスファチジルコリン(PC)類である。ホスファチジルコリン類の好ましい例としては、eggPC、ジミリストイルPC(DMPC)、ジパルミトイルPC(DPPC)、ジステアロイルPC(DSPC)、ジオレイルPC(DOPC)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
リポソームの膜構成成分として好ましい例としては、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリン(PS)の組み合せを挙げることができる。ホスファチジルセリンとしては、ホスファチジルコリンの好ましい例として挙げたリン脂質と同様の脂質部位を有する化合物が挙げられる。ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンを組み合せて用いる場合、PCとPSの好ましい使用モル比はPC:PS=90:10〜10:90である。
本発明のリポソームとして好ましい別の例としては、膜構成成分として、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンを含み、さらにリン酸ジアルキルエステルを含むリポソームが挙げられる。リン酸ジアルキルエステルのジアルキルエステルを構成する2個のアルキル基は同一であることが好ましく、それぞれのアルキル基の炭素数は6以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。好ましいリン酸ジアルキルエステルの例としては、ジラウリルフォスフェート、ジミリスチルフォスフェート、ジセチルフォスフェート等が挙げられるが、これに限定されることはない。この態様において、ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンの合計質量に対するリン酸ジアルキルエステルの好ましい使用量は1から50質量%であり、好ましくは1から30質量%であり、さらに好ましくは1から20質量%である。
【0035】
ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リン酸ジアルキルエステ及び本発明の化合物を膜構成成分として含むリポソームにおいて、上記成分の好ましい質量比(PC:PS:リン酸ジアルキルエステル:本発明の化合物、キレート化合物、又はこれらいずれかの塩)は、5〜40質量%:5〜40質量%:1〜10質量%:15〜80質量%である。
本発明のリポソームの構成成分は上記4者に限定されず、他の成分を加えることができる。その例としては、コレステロール、コレステロールエステル、スフィンゴエミリン、FEBS Lett. 223, 42 (1987); Proc. Natl. Acad. Sci., USA 85, 6949 (1988)等に記載のモノシアルガングリオキシドGM1誘導体、Chem. Lett. 2145 (1989); Biochim. Biophys. Acta 1148, 77 (1992)等に記載のグルクロン酸誘導体、Biochim. Biophys. Acta 1029, 91 (1990); FEBS Lett. 268, 235 (1990)等に記載のポリエチレングリコール誘導体が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0036】
本発明のリポソームは、当業者が利用可能ないかなる方法で製造してもよい。製造法の例としては、先に挙げたリポソームの総説成書類の他、Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9, 467 (1980)、"Liposomes" (M. J. Ostro編、MARCELL DEKKER、INC.)等に記載されている。具体例としては、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、コール酸法、カルシウム融合法、凍結融解法、逆相蒸発法等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のリポソームのサイズは、上記の方法で作製できるサイズのいずれであってもよいが、通常は平均が400 nm以下であり、200 nm以下が好ましい。リポソームの構造は特に限定されず、ユニラメラ又はマルチラメラなどのいずれの形態でもよい。また、リポソームの内部に適宜の薬物や他の造影剤の1種又は2種以上を配合することも可能である。
【0037】
本発明のリポソームを造影剤として用いる場合には、好ましくは非経口的に投与することができ、より好ましくは静脈内投与することができる。例えば、注射剤や点滴剤などの形態の製剤を凍結乾燥形態の粉末状組成物として提供し、使用時に水又は他の適当な媒体(例えば生理食塩水、ブドウ等輸液、緩衝液など)に溶解ないし再懸濁して用いることができる。本発明のリポソームを造影剤として用いる場合、投与量はリポソーム中の化合物含有量が従来の造影剤の化合物含有量と同程度になるように適宜決定することが可能である。
【0038】
いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、動脈硬化、若しくはPTCA後の再狭窄等の血管疾患においては、血管の中膜を形成する血管平滑筋細胞が異常増殖を起こすと同時に内膜に遊走し、血流路を狭くすることが知られている。正常の血管平滑筋細胞が異常増殖を始めるトリガーはまだ完全に明らかにされていないが、マクロファージの内膜への遊走と泡沫化が重要な要因であることが知られており、その後に血管平滑筋細胞がフェノタイプ変換(収縮型から合成型)をおこすことが報告されている。
【0039】
本発明のリポソームを用いると、泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋に対して規定の造影剤となる化合物を選択的に取り込ませることができる。その結果、病巣と非疾患部位とをコントラストをつけて造影することが可能である。従って、本発明の造影剤は、特に血管疾患のMRI造影に好適に使用でき、例えば、動脈硬化巣やPTCA後の再狭窄等の造影を行うことができる。
【0040】
また、例えば J. Biol. Chem., 265, 5226 (1990)に記載されているように、リン脂質よりなるリポソーム、特にPCとPSから形成されるリポソームが、スカベンジャーレセプターを介してマクロファージに集積しやすいことが知られている。従ってリポソームを使用することにより、本発明の化合物をマクロファージが局在化している組織又は疾患部位に集積させることができる。本発明のリポソームを用いると、公知技術であるサスペンジョン又はオイルエマルジョンを用いる場合に比べて、より多くの規定の化合物をマクロファージに集積させることが可能である。
【0041】
マクロファージの局在化が認められ、本発明の方法で好適に造影可能な組織としては、例えば、血管、肝臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、腎臓上皮を挙げることができる。また、ある種の疾患においては、疾患部位にはマクロファージが集積していることが知られている。こうした疾患としては、腫瘍、動脈硬化、炎症、感染等を挙げることができる。従って、本発明のリポソームを用いることにより、これらの疾患部位を特定することができる。特に、アテローム性動脈硬化病変の初期過程において、スカベンジャーレセプターを介して変性LDLを大量に取り込んだ泡沫化マクロファージが集積していることが知られており〔Am. J. Pathol., 103, 181(1981)、Annu. Rev. Biochem., 52, 223(1983)〕、このマクロファージに本発明のリポソームを集積化させてMRI造影をすることにより、他の手段では困難な動脈硬化初期病変の位置を特定することが可能である。
【0042】
本発明のリポソームを用いた造影方法は特に限定されない。例えば、通常のMRI造影剤を用いた造影方法と同様にして水のT1/T2緩和時間の変化を測定することにより造影を行うことができる。また、適宜、適切な金属イオンを用いることで、シンチグラフィー造影剤、X線造影剤、光像形成剤、超音波コントラスト剤としても使用することも可能である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。なお、下記の実施例中の化合物番号は上記に示した化合物例の番号に対応している。また、実施例中の化合物の構造はNMRスペクトル及びマススペクトルにより確認した。
【0044】
製造例1:化合物2−1の調製
(1) パルミトレイン酸(5.23 g)と1-ブロモ-2,3-ジヒドロキシプロパン(1.46 g)をジクロロメタン(25 ml) に溶かし、N,N-ジメチルアミノピリジン(55 mg)とエチル-N,N-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(4.30 g)を加えて室温で1日撹拌した。除媒し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して1-ブロモ-2,3-ジヒドロキシプロパンのジアシル体を5.74g (97%)得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) ・: 5.40-5.29 (4H, m) 5.21 (1H, quin) 4.34 (1H, dd) 4.23 (1H, dd) 3.53 (1H, dd) 3.48 (1H, dd) 2.38-2.29 (4H, m) 2.05-1.95 (8H, m) 1.68-1.55 (4H, m) 1.39-1.21 (32H, m) 0.89 (6H, t).
【0045】
(2)(1)で得られたジエステル化合物(3.77 g)をジオキサン(30 ml)に溶かし、N,N'-ジメチルエチレンジアミン(5.34 g)を加えて、90℃で6時間撹拌した。この溶液にジクロロメタンと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて、ジクロロメタンで2度抽出した後、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、3-アミノ-1,2-プロパンジオール誘導体を2.29 g (60%)得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) ・: 5.40-5.29 (4H, m) 5.18 (1H, dq) 4.36 (1H, dd) 4.09 (1H, dd) 2.61 (2H, t) 2.55-2.50 (4H, m) 2.42 (3H, s) 2.30 (4H, dt) 2.27 (3H, s) 2.05-1.93 (8H, m) 1.68-1.52 (4H, m) 1.38-1.22 (32H, m) 0.89 (6H, t).
【0046】
(3)(2)で得られた-プロパンジオール誘導体(0.38 g)をクロロホルム(50 ml)に溶かし、ジエチレントリアミン五酢酸 二無水物(1.07 g)を加えて、60℃で30分間撹拌した。ついで、トリエチルアミン(0.84 ml)を加え、さらに60℃で4時間撹拌を続けた。不溶物をろ過により除き、1規定塩酸を加えてジクロロメタンで2度抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒し、化合物2−1を0.50 g (83%)得た。
化合物2−1:
1H-NMR (400 MHz, CD3OD) ・: 5.59 (1H, bs) 5.42-5.37 (4H, m) 4.58-4.51 (1H, m) 4.35-4.26 (1H, m) 3.98-3.38 (18H, m) 3.30-3.21 (4H, m) 3.09 (3H, s) 3.01 (3H, s) 2.50-2.35 (4H, m) 1.73-1.58 (4H, m) 1.48-1.25 (32H, m) 0.99-0.92 (6H, m).
Mass(MALDI-TOFF) : m/z (a-cyano-4-hydroxycinnamic acid) 1008 (M-H)
【0047】
(4)塩化ガドリニウム(III)(81 mg )を1.5 mlのメタノールに溶かし、メタノール(3 ml 9に化合物2−1(0.28 g)を溶かした溶液を滴下した。水 1mlを加えた後、1規定水酸化ナトリウム水溶液でpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、乾燥させて化合物2−1のガドリニウム錯体0.17 g (51%)を得た。
【0048】
試験例1:溶解性試験
化合物2−1のガドリニウム錯体、及び既知の比較化合物1をそれぞれ1mMになるように秤量し、それぞれの溶媒を1ml加え、その際の溶解性(室温25℃)を調べた。結果を表1に示す。表1から、本発明の化合物2−1のガドリニウム錯体は、比較化合物1に比べて、特にジクロロメタン、クロロホルムに対する溶解性が向上しており、リポソーム製剤化するための優れた特性を有していることが分かる。
【0049】
【表1】

【0050】
試験例2:リポソームの作製方法
J. Med. Chem., 25(12), 1500 (1982) に記載の方法に従い、下記に示した割合のジ・パルミトイル PC(フナコシ社製、No.1201-41-0225)、ジ・パルミトイル PS(フナコシ社製、No.1201-42-0237)を、本発明の化合物とともにナス型フラスコ内でクロロホルムに溶解して均一溶液とした後、溶媒を減圧で留去してフラスコ底面に薄膜を形成した。この薄膜を真空で乾燥後、0.9 %生理食塩水(光製薬社製、No512)を適当量加え、超音波照射(Branson社製、No.3542プローブ型発振器、0.1 mW)を氷冷下5分実施することにより、均一なリポソーム分散液を得た。得られた分散液の粒径をWBCアナライザー(日本光電社製、A-1042)で測定した結果、粒子径は40から65 nmであった。

PC 45nmol + PS 5nmol + 化合物2−1のガドリニウム錯体10 nmol

【0051】
試験例3:マウス3日間連続投与毒性試験
ICRマウス雄6週齢(日本チャールスリバー)を購入し、1週間の検疫期間の後、クリーン動物舎内(空調:へパフィルター クラス1000、室温:20℃〜24℃ 湿度:35%〜60%)で1週間馴化した。その後、MTD値を求めるため、尾静脈よりマウス血清懸濁液を投与した。マウス血清懸濁液は、生理食塩水(光製薬社製)又はグルコース溶液(大塚製薬社製)のいずれかを溶媒として投与した。次に求められたMTD値をもとに、その1/2量を3日間、尾静脈より3日間連続で投与した(n=3匹とする)。症状観察は各投与後6時間までとし、神経毒性を観察後、剖検を行ない、主要臓器について所見を取った。本発明の化合物は低毒性で、神経毒性も示さないことが明らかであり、MRI造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有することが明らかである。

化合物:MTD(mg/kg);神経毒性(「−」は神経毒性陰性、「+」は神経毒性陽性を示す)
化合物2−1のガドリニウム錯体(100mg/kg):−

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数8〜30個のアルキル基又はアルケニル基を示し;X1及びX2はそれぞれ独立に−O−又は−N(Z)−を示し;Zは水素原子、又は炭素数1〜5個のアルキル基を示し;Lは、アルキレン基、アルケニレン基、−CO−、−O−、−NH−、―N=、−S−、−SO−、及び−SO2−からなる群から選択される1以上の部分構造を含み、かつ連結基鎖長を構成する原子数が1〜10個である2価の連結基を示し、該連結基は置換基を有していてもよく;Chは、下記の置換基群(置換基群=ヒドロキシル基;アルコキシ基;カルボキシル基;カルバモイル基;アミノ基;アルキルアミノ基;スルホ基;ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、アルキルアミノ基、及びスルホ基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭素数1〜5個のアルキル基;及びこれらの組み合わせ;ただし該置換基群における個々の置換基の、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の総数は1〜20個である)から選択される置換基を有していてもよい3個以上の窒素原子を含むキレート形成可能な部分構造を示す]で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
Chが、下記の一般式(II):
【化2】

[式中、m1及びm2はそれぞれ独立に1又は2の整数を示す]で表される請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
Chが、下記の一般式(III):
【化3】

で表される請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
Chが、下記の一般式(IV):
【化4】

で表される請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
Chが、下記の一般式(V):
【化5】

[式中、n1、n2、n3、及びn4はそれぞれ独立に1又は2の整数を示す]で表される請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項6】
1及びR2がそれぞれ独立に炭素数8〜30個のアルキル基である請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項7】
1及びR2がそれぞれ独立に炭素数8〜30個のアルケニル基である請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項8】
1及びR2がそれぞれ独立に炭素数10〜20個のアルキル基又はアルケニル基である請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項9】
Lが、アルキレン基、アルケニレン基、−CO−、及び−O−からなる群から選択される1以上の部分構造を含みかつ連結基鎖長を構成する原子数が1〜10個である2価の連結基である請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物及び金属イオンからなるキレート化合物又はその塩。
【請求項11】
金属イオンが原子番号21-29、31、32、37〜39、42〜44、49、及び57〜83から選択される元素の金属イオンである請求項10に記載のキレート化合物又はその塩。
【請求項12】
金属イオンが原子番号21〜29、42、44、及び57〜71から選択される常磁性元素の金属イオンである請求項10に記載のキレート化合物又はその塩。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソーム。
【請求項14】
ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンを膜構成成分として含む請求項13に記載のリポソーム。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のリポソームを含むMRI造影剤。
【請求項16】
血管疾患の造影に用いるための請求項15に記載のMRI造影剤。
【請求項17】
泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる請求項15に記載のMRI造影剤。
【請求項18】
マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影のための請求項15に記載のMRI造影剤。
【請求項19】
マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選択される請求項15に記載のMRI造影剤。
【請求項20】
マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選択される請求項15に記載のMRI造影剤。
【請求項21】
請求項13又は14に記載のリポソームを含むシンチグラフィー造影剤。
【請求項22】
血管疾患の造影に用いるための請求項21に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項23】
泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる請求項21に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項24】
マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影のための請求項21に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項25】
マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選択される請求項21に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項26】
マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選択される請求項21に記載のシンチグラフィー造影剤。

【公開番号】特開2006−282604(P2006−282604A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105800(P2005−105800)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】