説明

金属ケース付き回路モジュール

【課題】 金属ケース付き回路モジュールにおいて、金属ケースがたわむことにより、金属ケースと搭載された電子部品間の浮遊容量が変動し、回路モジュール特性が変動する。金属ケースを支持するための支持部の数およびそれに占める基板上の面積をなるべく抑えつつ、金属ケースのたわみ強度をできるだけ上げ、回路モジュール特性の変動を起こしにくい回路モジュールを提供すること。
【解決手段】 外形が長方形の回路モジュールに対し、金属ケースの脚部を、対向する各長辺部に2か所ずつ、各脚部を直線で結んでできる形状が正方形を成し、その中心と前記長方形の中心が一致するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に電子部品が搭載された金属ケース付き回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属ケース付き回路モジュールとしては、例えば、特許文献1に記載の図5に示すような金属ケース付き回路モジュール90が知られている。この回路モジュール90は、電子部品を実装した回路基板92上の電子部品91を包囲、収納する為に前記回路基板92の上部空間を封止する金属ケース93を備えるものである。前記回路モジュール90においては、前記回路基板92の対向する辺部中央に形成した導体パターン95と、前記金属ケース93の側壁下部であって前記導体パターン95と対応する部分を側壁の内側方向へ退避させることにより形成した退避片96とを備える。前記金属ケース93と回路基板92は、対向する辺部中央に位置する前記退避片96と導体パターン95を当接させ、また対向する辺部中央に位置する金属ケース凸部94と回路基板の端縁凹部97を嵌合させ、これら4か所が電気的及び機械的に接続固定されたものである。
【0003】
一方、特許文献2に記載の図6に示すような金属ケース付き回路モジュール80が知られている。この回路モジュール80においては、矩形の回路基板81と、該回路基板81の電子部品が実装された側を覆う金属ケース82とを備える。前記回路基板81の表面には、4つの角部にパターンランド85が形成されており、前記金属ケース82の4つの角部に設けられた脚部84は半田付けにより、パターンランド85に電気的及び機械的に接続固定されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−321445号報
【特許文献2】特開2006−344812号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の金属ケース付き回路モジュール90では、前記金属ケース93は、外形が長方形の各辺部中央の4か所で回路基板92に固定されている。一方、特許文献2に記載の金属ケース付き回路モジュール80では、前記金属ケース82は、外形が長方形の各角部の4か所で回路基板81に固定されている。
【0006】
このような構造では、前記回路モジュールに外力が加わったとき、金属ケースはたわみ易く、金属ケースのたわみが前記回路モジュールの特性変動を引き起こす問題があった。
【0007】
加えて、金属ケース付き回路モジュールの製造工程において、該金属ケースがノズルに吸着されて回路基板上の所定の位置に装着される過程で、図5の構成のものでは、回路基板に対して傾いて装着されてしまったり、図6の構成のものでは、天面が押さえられた際にへこむなど変形する、という不具合があった。そして、これらの場合も、前記回路モジュールの特性ばらつきにつながる。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑み、金属ケースのたわみに対する強さ(以下、「たわみ強度」)を上げ、場合によっては、回路モジュールの製造工程において、金属ケースの傾きや変形といった不具合に対しても強い、金属ケース付き回路モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために、以下のように構成した金属ケース付き回路モジュールを提供する。
【0010】
本発明による金属ケース付き回路モジュールは、回路基板と該回路基板に搭載された電子部品を覆う金属ケースとを含む金属ケース付き回路モジュールであって、前記金属ケースは、平面視したとき、対向する各々2つの長辺部と短辺部を有する矩形状の天面部と複数の脚部とを有し、前記複数の脚部は、前記長辺部に設けられ、各脚部を結ぶ直線で作られる形状は正方形を成すように、かつ、該正方形の中心と前記金属ケースの矩形状の天面部の中心とが一致するように配置されており、前記金属ケースは、前記複数の脚部で前記回路基板に接続固定されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、前記金属ケースのたわみ強度を上げることができ、前記金属ケースがたわむことによって起こる前記回路モジュールの特性変動を低減することが可能となる。加えて、前記回路モジュールの製造工程において、金属ケースが回路基板に対して、傾いて装着される不具合や、金属ケースがノズルで押さえられた際に、天面がへこむなどの変形を低減することが可能となる。
【0012】
本発明による金属ケース付き回路モジュールは、好ましくは、前記金属ケースの脚部は、付け根側に設けられた広い幅の当接部と、先端側に設けられた該当接部より狭い幅の爪部を備え、前記回路基板は端縁に凹部を設け、該端縁凹部の幅は、前記脚部の前記当接部より狭く、前記爪部の幅よりも広くし、前記金属ケースの爪部と前記回路基板の対応する前記端縁の凹部とは、前記当接部を前記回路基板上に当接させながら、嵌合させ、前記金属ケースと前記回路基板とが接続固定されている
上記構成によれば、前記金属ケースの高さ位置決めを容易に、かつ正確に行うことができる。また、前記金属ケースの荷重は、前記回路基板の当接部分と前記金属ケースと前記回路基板とを接続させている部分とに分散して受け留められることとなるので、前記金属ケースと前記回路基板の接続固定の安定性並びに信頼性が向上する。
【0013】
本発明による金属ケース付き回路モジュールは、好ましくは、前記回路基板の端縁の凹部の側壁面に導体が形成され、前記回路基板の端縁凹部の側壁面と前記脚部とが接続固定されている。
【0014】
上記構成によれば、前記金属ケースと前記回路基板との接合に占める前記回路基板側の領域を基板側壁に限定されるので、回路基板上のエリアを接合のために使用しない分、回路基板を小さくしたり、電子部品の配置や端子配置のために使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属ケース付き回路モジュールにおける金属ケースのたわみ強度上げることができ、外力によるたわみに対する回路モジュールの特性変動を抑えることができる。加えて、金属ケース付き回路モジュールの製造工程において、金属ケースが傾いたり、変形したりする不具合を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る金属ケース付き回路モジュールの分解斜視図である。
【図2】本実施形態に用いる金属ケースの上面図である。
【図3】本実施形態に用いる金属ケースの脚部と対応する回路基板側端子電極部の説明図である。
【図4】本実施形態に用いる金属ケースの脚部と対応する回路基板側端子電極部の嵌合の説明図である。
【図5】特許文献1の金属ケース付き回路モジュールの分解斜視図である。
【図6】特許文献2の金属ケース付き回路モジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本発明の実施の形態に係る回路モジュール1は、図1に示すように、セラミック、ガラス、エポキシ樹脂等からなる回路基板20、該回路基板20の一方主面に搭載されたコンデンサ、抵抗、フィルタ、インダクタ、IC等の電子部品21a、21b、21c、・・・、前記電子部品を覆う金属ケース10を備えている。
【0019】
前記金属ケース10は、金属薄板を折り曲げ等により加工したケース状のものである。該金属ケース10は、図2及び図1に示すように、平面視したとき、対向する各々2つの長辺部13と短辺部12を有する矩形状Aの天面部11、複数の脚部14を有する。前記複数の脚部14は、前記長辺部13に設けられ、各脚部を結ぶ直線で作られる形状は正方形Bを成すように、かつ、該正方形Bの中心B1と前記金属ケース10の矩形状Aの中心A1とが一致するように配置されている。
【0020】
図3に示すように、前記金属ケース10の脚部14は、回路基板の上面に当接する当接部14xと、回路基板の電極と電気的、機械的に接続固定される爪部14yとを備える。前記回路基板20は、その端縁に複数の凹部22が形成され、該端縁凹部22の側壁には電極23が形成されている。前記当接部14xの幅をX、前記爪部14yの幅をY、前記端縁凹部22の幅をZとすると、これらの大小関係は、Y<Z<Xとなっている。
【0021】
金属ケース10の脚部14と回路基板側の対応する端縁凹部22とは、図4に示すように、前記爪部14yが前記端縁凹部22に嵌合する形となり、前記爪部14yと前記電極23とは半田により接合されている。
【0022】
以上のように構成された金属ケース付き回路モジュール1では、金属ケースのたわみ強度を上げることができる。加えて、その製造工程において、金属ケースの天面がへこむなど、変形したり、金属ケースが回路基板に対して傾いて装着されてしまう問題を抑えることが可能となる。
【0023】
一般的な回路モジュールの金属ケースは、金属薄板を折り曲げ等によって加工したケース状のものであり、電磁気的シールド効果を有する。近年、回路モジュールは低背化が強く求められ、搭載された電子部品の天面と金属ケースの天井の間は非常に狭い空間となっており、電子部品と金属ケースの間には一定の浮遊容量が発生する。
【0024】
このような状態で、回路モジュールに外力が加わり、金属ケースがたわむと、電子部品の天面と金属ケースの天井の間の距離が変化し、その結果、該距離に依存する前記浮遊容量が変動し、回路モジュール特性も変動する。よって、回路モジュール特性が変動しないよう、金属ケースにはたわみ強度が求められる。
【0025】
金属ケースのたわみ強度には、様々の要因があるが、それを支える支持部の配置が一因となりうる。そして、その支持部の数をなるべく減らしながら、たわみ強度をできるだけ大きくすることが望まれる。
【0026】
上記した一般的な回路モジュールに対し、本実施形態においては、図2は金属ケース10の脚部、すなわち、それを支える支持部の配置を表すものである。金属ケース10の各脚部14を直線で結んだ形状が正方形Bを成し、かつ該正方形Bの中心と前記金属ケースの長方形Aの中心が一致するように脚部14が配置されているので、ある脚部14とそれ以外の3つの脚部14との距離、及び、金属ケースの任意の点から最も近い脚部14への距離、これらが極端に長くなるものがないよう、バランス良くできるので、金属ケースのたわみ強度を大きくすることが可能となる。
【0027】
これに対し、図5に開示された先行文献1の回路モジュールにおいては、金属ケースの4つの脚部は、長方形の各辺の中央に配置されており、対向する短辺の中央に配置された脚部同士の距離が、他の脚部間同士の距離よりも極端に長く、回路モジュールが外力を受けたとき、金属ケース90はたわみ易い。
【0028】
また、図6に開示された先行文献2の回路モジュールにおいては、金属ケースの4つの脚部は、長方形の各角部に配置されており、ある脚部に対し、同じ短辺上にある脚部以外の2つの脚部との距離は極端に長く、回路モジュールが外力を受けたとき、金属ケース80はたわみ易い。
【0029】
上記したように、本発明の金属ケースの支持部の配置は、図5、図6記載の先行技術に対し、たわみ強度の点で優れており、加えて、金属ケース付き回路モジュールの製造工程における、金属ケースの傾きや天面が変形する不具合に対しても、優れているといえる。
【0030】
また、近年、回路モジュールは、小型化、多機能化に伴う多端子化が強く求められるようになってきており、回路基板上の電子部品の実装密度は上がり、端子数も増えている。回路モジュールの金属ケースの支持に要する回路基板上の当接及び接合のための面積は、金属ケースの安定性確保という点で一定の広さを必要とし、その一方では回路モジュールのサイズ、端子配置、端子数確保という点で問題となる。
【0031】
本実施形態において、図3、図4は、金属ケースの脚部と回路基板の端縁凹部の当接及び接合の様子を表すものである。前記当接部によって、前記金属ケースの高さ位置決めが容易にかつ正確に行われる。また、金属ケースの当接部14xと回路基板の上面とが当接する部分は、回路基板上の占有面積を抑えつつ、一定の幅と長さが取られていることで、金属ケースの固定は安定したものとなる。
【0032】
金属ケースの爪部14yと回路基板側の電極23とが重なる部分は、一定の面積が取られており、両者の接合は安定したものとなる。また、金属ケースと回路基板の接合のために、回路基板上のエリアは使用されておらず、その分、回路基板を小さくしたり、電子部品の配置や端子配置のために使用することが可能となる。
【0033】
これに対し、図5に開示された先行文献1の回路モジュール90においては、導体パターン95が回路基板上の一定の面積を占めることとなり、回路モジュールのサイズ面や端子配置、端子数確保の点で、足かせとなる。同様に、図6に開示された先行文献2の回路モジュール80においても、導体パターン85が回路基板上の一定の面積を占めることとなり、回路モジュールのサイズ面や端子配置、端子数確保の点で、足かせとなる。
【0034】
上記したように、本発明の金属ケースの脚部及びこれに対応する回路基板側の接合部の構造は、図5、図6記載の先行技術に対し、回路モジュールのサイズ面や端子配置、端子数確保の点で優れているといえる。
【符号の説明】
【0035】
1 金属付き回路モジュール
10 金属ケース
12 金属ケース天面の短辺部
13 金属ケース天面の長辺部
14 金属ケースの脚部
20 回路基板
22 回路基板の端縁凹部
23 電極
A 長方形
B 正方形
A1 長方形の中心
B1 正方形の中心
14x 脚部の当接部
14y 脚部の爪部
X 当接部の幅
Y 爪部の幅
Z 回路基板の端縁凹部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と該回路基板に搭載された電子部品を覆う金属ケースとを含む金属ケース付き回路モジュールであって、
前記金属ケースは、平面視したとき、対向する各々2つの長辺部と短辺部を有する矩形状の天面部と複数の脚部とを有し、
前記複数の脚部は、前記長辺部に設けられ、各脚部を結ぶ直線で作られる形状は正方形を成すように、かつ、該正方形の中心と前記金属ケースの矩形状の天面部の中心とが一致するように配置されており、
前記金属ケースは、前記複数の脚部で前記回路基板に接続固定されていることを特徴とする金属ケース付き回路モジュール。
【請求項2】
前記金属ケースの脚部は、付け根側に設けられた広い幅の当接部と、先端側に設けられた該当接部より狭い幅の爪部を備え、
前記回路基板は端縁に凹部を設け、該端縁凹部の幅は、前記脚部の前記当接部より狭く、前記爪部の幅よりも広くし、
前記金属ケースの爪部と前記回路基板の対応する前記端縁の凹部とは、前記当接部を前記回路基板上に当接させながら、嵌合させ、前記金属ケースと前記回路基板とが接続固定されていることを特徴とする請求項1に記載の金属ケース付き回路モジュール。
【請求項3】
前記回路基板の端縁の凹部の側壁面に導体が形成され、
前記回路基板の端縁凹部の側壁面と前記脚部とが接続固定されたことを特徴とする請求項2に記載の金属ケース付き回路モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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