説明

金属コイル用スペーサ

【課題】金属コイルから結束バンドを容易に除去することができると共に、運搬中及び巻き解き中における金属コイルの移動を抑制する金属コイル用スペーサを提供することを課題とする。
【解決手段】金属コイル用スペーサ1は、一端面用スペーサ1a及び他端面用スペーサ11bからなる。一端面用スペーサ1aは、金属コイルRの空間部Jに嵌合される凸部4が設けられているため、金属コイルR及び一端面用スペーサ1aの移動を抑制することができる。また、一端面用スペーサ1a及び他端面用スペーサ1bは、金属コイルRと対向する面に、結束バンドDに対応して形成された凹溝部3(3a,3b)が設けられているため、結束バンドDを容易に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管や板等をコイル状に巻回した金属コイルに使用される金属コイル用スペーサに係り、特に、金属コイルを結束した結束バンドの切断除去が容易である金属コイル用スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属製の長尺状材料である管や板は、コイル状に巻回され、例えばレベルワウンドコイルやパンケーキコイルの形態で運搬された後、巻き解いて使用される。この金属コイルに使用される金属コイル用スペーサは、運搬中や巻き解き中における金属コイルの変形や損傷を防止するため、金属コイルの下端や、段積みされた金属コイルと金属コイルの間に設置され、金属コイルと共に樹脂フィルム等で覆われて、梱包される。
また、金属コイルは運搬及び保管の間に解けないように、金属コイル毎に金属製、樹脂製等の結束バンドで結束されている。従って、このような金属コイルの梱包体より管や板を巻き解いて供給するには、梱包を解いた上で、結束バンドを除去する必要がある。
【0003】
ここで、例えば、銅管レベルワウンドコイル(以下、単に金属コイルともいう)より管を連続的に巻き解く方法として、金属コイルの内側より管を上方に引出して所定位置まで導く方法(以下、ETS方法(EYE TO THE SKY METHOD)という)が知られている(特許文献1:図14参照)。この方法によると、巻き解き時にアンコイラーやターンテーブル等の特別な装置が不要になることから、エアコンメーカー等において採用が拡大している。
【0004】
金属コイルの梱包体よりETS方法により銅管を供給するには、前記したように梱包を解いた後、結束バンドを取り除かなければならない。この際、結束バンドを完全に除去するには、金属コイルに結束された結束バンドを切断し、金属コイルを持ち上げ、結束バンドを取り除く必要がある。ところが、金属コイルを持ち上げると、銅管にへこみや折れ等の不良箇所が生じる可能性がある。このような不良箇所があると、当該箇所で銅管の供給を一旦止め、不良箇所を除去する必要があるため、巻き解きの歩留まりや熱交換器組立の生産性が低下してしまうという問題が発生していた。
【0005】
この問題を解決するため、金属コイルの上部で結束バンドを切断し、切断した結束バンドを金属コイル内側の空間に折りたたんで収容した状態でETS方法が行われている。しかし、この方法を用いても、上方に巻き解かれる銅管に、折りたたんだ結束バンドが引っかかり、銅管に疵が発生し、供給が止まる等の問題が発生していた。
【0006】
このような問題に対して、従来、金属コイルを持ち上げることなく切断した結束バンドを除去することができる金属コイル用スペーサが特許文献2に提案されている。即ち、この金属コイル用スペーサは、平坦な円板状で、その外側の縁又は該外側の縁近くから中央までのある距離にわたって伸びる放射状のスロット(貫通穴)が形成されている。このような構成の金属コイル用スペーサを用いることにより、金属コイルを金属コイル用スペーサに載せたまま、切断した結束バンドを除去することが可能になる。また、この金属コイル用スペーサは、ダンボールで形成されているため、緩衝材としても有効である。
【特許文献1】特開2002−370869号公報
【特許文献2】特開2004−521833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に係る金属コイル用スペーサは、金属コイルから結束バンドを容易に除去することができるが、平坦なダンボール板から形成されているため、金属コイルと接触する面が滑りやすいという問題があった。そのため、この金属コイル用スペーサを用いて金属コイルの梱包体を製作し、それを運搬した場合、運搬中に前記梱包体に加わる水平方向の力により、金属コイルが移動して(滑って)しまう可能性があった。また、金属コイルが運搬中に移動すると、巻回された銅管が崩れたり(金属コイルの変形)、銅管が変形したりする可能性があった。さらに、複数の金属コイルを段積みにする場合、段積みした金属コイル(以下、多段積み金属コイル体ともいう)が荷崩れする可能性があった。
【0008】
本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、金属コイルから結束バンドを容易に除去することができると共に、運搬中及び巻き解き中における金属コイル及び金属コイル用スペーサの移動を抑制し、金属コイルの変形や多段積み金属コイル体の荷崩れを防止する金属コイル用スペーサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような思想に基づき創案された発明は、金属材を巻回してなり、中央部に連通した空間部を有し、かつ、前記空間部を通じてその一部が結束バンドで結束されている金属コイルの一端面及び他端面に設置される金属コイル用スペーサであって、前記金属コイルの一端面と当接し、前記金属コイルと対向する面に、前記金属コイルの空間部と嵌合する凸部を有する一端面用スペーサと、前記金属コイルの他端面と当接し、前記金属コイルと対向する面に、前記結束バンドに対応して形成された凹溝部を有する他端面用スペーサと、でなることを特徴とする。
【0010】
かかる発明によれば、一端面用スペーサの金属コイルと当接する面に凸部を有するため、金属コイルの空間部に凸部を嵌め合わせることにより、金属コイル及び一端面用スペーサの移動を抑制することができる。また、他端面用スペーサの上面には、結束バンドに対応して形成された凹溝部が備えられているため、一端面用スペーサを取り外した後、凹溝部から容易に結束バンドを除去することができる。
【0011】
また、本発明は、前記一端面用スペーサの前記金属コイルと対向する面に、前記結束バンドに対応して形成された凹溝部を有することを特徴とする。
【0012】
かかる発明によれば、一端面用スペーサ及び他端面用スペーサの金属コイルと対向する面に、結束バンドに対応した凹溝部が形成されているため、金属コイルに一端面用スペーサ及び他端面用スペーサが設置されている状態(以下、設置状態という)であっても容易に、結束バンドを除去することができる。
【0013】
また、本発明は、前記一端面用スペーサの中心と、前記一端面用スペーサの前記凸部の中心を略同心としたことを特徴とする。
【0014】
かかる発明によれば、一端面用スペーサの中心と、一端面用スペーサの凸部の中心は略等しいため、金属コイルの空間部に凸部を嵌め合わせると、金属コイルと一端面用スペーサの中心は略重なる。これにより、形状が整った梱包体を形成することができるため、運搬時の金属コイルRの変形を防止することができる。
【0015】
また、本発明は、前記金属コイルを複数個段積みする際に、これらの金属コイルの間に介設される介設用スペーサをさらに有し、前記介設用スペーサは、その一端面に前記結束バンドに対応して形成された凹溝部と、他端面に前記金属コイルの空間部に嵌合される凸部と、を有することを特徴とする。
【0016】
かかる発明によれば、金属コイルを複数個段積みする場合において、金属コイルと金属コイルの間に、凹溝部が形成された介設用スペーサを介設することにより、結束バンドを容易に除去することができる。
また、介設用スペーサの他端面に、凸部を有するため、この凸部と金属コイルの空間部を嵌め合わせることにより、金属コイル及び介設用スペーサの移動を抑制することができる。
【0017】
また、本発明は、前記介設用スペーサの他端面に前記結束バンドに対応して形成された凹溝部を有することを特徴とする。
【0018】
かかる発明によれば、金属コイルを複数個多段積みにした場合において、設置状態であっても、容易に結束バンドを除去することができる。即ち、介設用スペーサの一端面及び他端面に結束バンドに対応して形成された凹溝部を有するため、複数の介設用スペーサに介設された金属コイルの結束バンドは、設置状態であっても容易に除去することができる。
【0019】
また、本発明は、前記介設用スペーサの中心と、前記介設用スペーサの前記凸部の中心を略同心としたことを特徴とする。
【0020】
かかる発明によれば、介設用スペーサの中心と、介設用スペーサの凸部の中心は略等しいため、金属コイルの空間部にこの凸部を嵌め合わせると、金属コイルと介設用スペーサの中心は略重なる。これにより、金属コイルを積み上げた場合において、多段積み金属コイル体の傾きを抑制することができるため、多段積み金属コイル体の荷崩れを防止することができる。
【0021】
また、本発明は、前記一端面用スペーサ、前記他端面用スペーサ及び介設用スペーサにおいて、前記金属コイルと対向する面のうち少なくとも一面に、滑り止め層を設けることを特徴とする。
【0022】
かかる発明によれば、金属コイル用スペーサのうち、金属コイルと対向する面に、滑り止め層が設置されるため、接触面の静止摩擦係数を高めることができ、金属コイル及び金属コイル用スペーサの移動を抑制することができる。
【0023】
また、本発明は、前記金属コイル用スペーサにおいて、前記滑り止め層が発泡樹脂により形成されることを特徴とする。
かかる発明によれば、滑り止め層は、静止摩擦係数を高めるだけでなく、金属コイルの荷重や運搬時に生じる衝撃を吸収することができる。従って、運搬中及び巻き解き中における金属コイルの移動を抑制すると共に、金属コイルの変形や多段積み金属コイル体の荷崩れを防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る金属コイル用スペーサは、結束バンドに対応するように形成された凹溝部を有するため、結束バンドを容易に除去することができる。また、凸部を設けることにより、運搬中及び巻き解き中における金属コイル及び金属コイル用スペーサの移動を抑制することができる。
また、金属コイル用スペーサは、その金属コイルと対向する面に、滑り止め層を設けることにより、より金属コイルの移動を抑制することができる。さらに、滑り止め層を発泡樹脂で形成することにより、金属コイルに作用する衝撃を緩衝することができる。従って、金属コイルの変形や多段積み金属コイル体の荷崩れを防止することができるため、金属コイルの歩留まりが向上し、銅管等を連続供給する生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態における寸法は、あくまで例示であって、本実施形態を限定されるものではない。また、本実施形態に係る図面は、説明をわかりやすくするため、縦と横の縮尺を変えて示している。
【0026】
図1は、一端面用スペーサ、金属コイル及び他端面用スペーサを示した展開斜視図であって、一端面用スペーサは下方から見た場合の斜視図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、図2のB−B断面図である。図4は、第二実施形態を示した斜視図である。図5は、図4のC−C断面図である。図6は、第三実施形態を示した斜視図である。図7は、第四実施形態を示した展開斜視図である。
【0027】
<金属コイル用スペーサの構造>
図1に示すように、本実施形態における金属コイル用スペーサ1は、金属コイルRの上端に設置される一端面用スペーサ1a及び、金属コイルRの下端に設置される他端面用スペーサ1bからなる。
【0028】
なお、本実施形態においては、金属コイルRは、例えば、銅管を整列巻回したレベルワウンドコイルを用いる。即ち、本実施形態における金属コイルRは、図1及び図2に示すように、銅管を直径方向に巻回し、中央に、金属コイルRの上端面から下端面を連通する空間部Jを形成している。空間部Jの直径s(図3参照)は約650mm、金属コイルRの直径は約1000mm、高さは、約500mmである。図1乃至図3に示すように、結束バンドDの厚さpは、約1mm、幅qは、約30mmである。また、金属コイルRの上端に係る結束バンドDの長さrは、約175mmである。また、本実施形態で使用される結束バンドDは、脱酸銅からなる。なお、金属コイルR及び結束バンドDの大きさ、形状、素材等は本実施形態を限定されるものではなく、他の形状等であってもよい。例えば、金属コイルRの銅管は、りん脱酸銅軟質材製であり、外径が9.52mmの内面溝付管(底肉厚が0.20mm、溝深さが0.18mm、溝数が60、リード角が18°)のものを用いてもよい。また、金属コイルRは、巻き層数が50層のものであって、奇数層では25巻き、偶数層では24巻きであるものを用いてもよい。
【0029】
金属コイル用スペーサ1の説明においては、主に、一端面用スペーサ1aを用いて説明する。
一端面用スペーサ1aは、図1に示すように、例えば、樹脂性ダンボールで形成した円板2と、この円板2の下面に設けられた凹溝部3(3a)と、この凹溝部3(3a)の中央で円板2に設置された凸部4とを備え、ここでは、さらに、円板2の下面(金属コイルRとの当接面)に滑り止め層5,5を有している。
【0030】
円板2は、図1に示すように、本実施形態においては、金属コイルRの直径より大きな直径となるように形成された基礎円板2aと、この基礎円板2aの下面で同一平面上となるように離間した状態で固着される下層三日月状板2b,2bと、からなる2層で形成されている。基礎円板2aの半径、下層三日月状板2bに係る円弧の半径は、いずれも約550mmであり、かつ、全ての層(板)が同心となるように形成されている。基礎円板2a及び下層三日月状板2bは、いずれも厚さ約20mmであるため、円板2の厚さは、約40mmである。
【0031】
滑り止め層5は、図1に示すように、下層三日月状板2b,2b下面に設けられている。この滑り止め層5は、金属コイルRと一端面用スペーサ1aが接触する面の静止摩擦係数を高め、かつ、金属コイルRに傷をつけることがないものであり、例えば、発泡樹脂シートなどにより形成されることにより、金属コイルR及び一端面用スペーサ1aの水平方向の移動を抑制するものである。本実施形態における滑り止め層5の厚さは、例えば、約30mmである。
【0032】
本実施形態においては、滑り止め層5は、発泡樹脂シート(イノアック:P・E−ライトM−082F)を用いることにより形成しているので、静止摩擦係数が高められ、かつ、衝撃を吸収する緩衝作用も得ることができる。即ち、滑り止め層5は、静止摩擦係数を高め、金属コイルRの移動を抑制するだけでなく、運搬時や巻き解き時において、金属コイルRに作用する荷重や衝撃を吸収し、金属コイルRの変形や、銅管の変形、ひいては段積み金属コイル体の荷崩れを防止することができる。なお、滑り止め層5の厚さは、ここでは、約30mmとして説明したが、金属コイルRの質量及び滑り止め層5(発泡樹脂シート)の強度より適宜設定すればよい。
【0033】
凹溝部3(3a)は、本実施形態においては、図1に示すように、円板2の外縁の一端から、他の外縁の一端まで直径を含むように形成され、基礎円板2aの下面に設けられている。本実施形態においては、凹溝部3(3a)の深さxは(図2参照)、約50mm、幅yは、約50mm、長さz(図3参照)は、約270mmである。
凹溝部3(3a)は、金属コイルRを結束する結束バンドDの幅に対応して形成されており、結束バンドDを挿通させることにより、結束バンドDを除去する場合において、スムーズに引き抜くためのものである。
【0034】
即ち、凹溝部3は、結束バンドDと金属コイルRがなるべく接触せずに引き抜くことができるように、形成することが望ましい。従って、図1乃至図3に示すように、凹溝部3の深さx、幅y及び長さzと、結束バンドの厚さp、幅q及び長さrの関係は、x>p,y>q,z>rとなる。
つまり、本実施形態においては、金属コイルRに結束された結束バンドDに合わせて凹溝部3を前記の寸法、形状で形成したが、これに限定されるものではない。凹溝部3の寸法は、結束バンドDの本数、寸法及び形状に合わせて適宜設定される。
【0035】
即ち、凹溝部3は、例えば、金属コイルRに、4本の結束バンドDが、平面視略十字を呈するように結束されている場合は、2つの凹溝部3,3をそれぞれ直交するように設置してもよい(図示せず)。
【0036】
凸部4は、図1に示すように、円柱であって、円板2(下層三日月状板2b,2b)の下面に設置されている。円板2と、凸部4は、略同心円状に形成されている。凸部4の直径t(図3参照)は、約560mm、高さ(厚さ)は、約60mmである。
凸部4は、図1に示すように、金属コイルRの空間部Jに嵌め合わせることにより、金属コイルRの中心部と一端面用スペーサ1aの中心部を容易に重ねることができる共に、金属コイルR及び一端面用スペーサ1aの移動を抑制するものである。
【0037】
なお、本実施形態においては、凸部4の高さを前記のように設けたが、これに限定されるものではない。凸部4の高さ(厚さ)は、嵌合される金属コイルRの高さよりも短いものであればよい。
また、凸部4の形状は、本実施形態においては、円柱であったが、これに限定されるものではなく、角柱であってもよい。また、凸部4は、例えば、下方に向って幅狭となる錐台形状であってもよい。また、空間部Jの形状と凸部4の平面視した形状が異なってもよい。
【0038】
なお、凸部4は、図2に示すように、一端面用スペーサ1aの円板2の上部には設置されない。これは、仮に、円板2の上面に凸部4を設置すると、例えば、ETS法により銅管を巻き解く場合に、金属コイルRの最下層に巻かれた銅管と凸部4が接触して巻き解きの歩留まりが低下するためである。
【0039】
一方、図1に示すように、他端面用スペーサ1bは、金属コイルRの下端に設置されるものであって、例えば、樹脂性ダンボールで形成した基礎円板2aと、この基礎円板2aの上面に固着される上層三日月状板2c,2cと、この上層三日月状板2c,2cの上面に設けられる滑り止め層5,5と、凹溝部3(3b)と、からなる。
他端面用スペーサ1bは、凸部4を設けない点を除いては、一端面用スペーサ1aと略同等であるため、詳細な説明を省略する。
【0040】
なお、本実施形態においては、金属コイル用スペーサ1は、平面視円を呈するように形成されたがこれに限定するものではなく、他の形状であってもよい。即ち、金属コイルRの形状に合わせて適宜設定すればよい。また、金属コイル用スペーサ1は、金属コイルRの平面視した形状と異なる形状であってもよい。
【0041】
<金属コイル用スペーサの製造方法>
次に、本実施形態に係る金属コイル用スペーサ1の製造方法について、主に一端面用スペーサ1aを用いて説明する。
まず、半径550mmからなる基礎円板2a及び半径約550mmの円弧を有し、弦の長さが約1098mmである下層三日月状板2b,2bを形成する。そして、基礎円板2aの中心と、下層三日月状板2bの円弧に係る中心が、略重なるように接着剤で固着し、円板2を形成する(図1参照)。
【0042】
本実施形態においては、基礎円板2a及び下層三日月状板2bは、共に樹脂製ダンボール(プラパールハモニ5−100(登録商標):川上産業)を用いる。なお、図1に示すように、基礎円板2aと下層三日月状板2bのフルート目が略直角になるように固着するのが望ましい。これにより、強度及び耐久性に優れた円板2を形成することができる。
【0043】
なお、円板2は、本実施形態においては、樹脂製ダンボールを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、木製板、金属製板、紙製ダンボール、厚紙等であってもよい。円板2は、金属コイルRの荷重を支えるだけの強度及び耐久性を有する素材から形成されることが望ましい。また、本実施形態のように、金属コイルRが銅管で形成されている場合においては、円板2の温度による銅管の変色を防止するために、樹脂製の素材を用いることが望ましい。また、円板2は、運搬性を向上させるために、軽量な素材を用いることが望ましい。
【0044】
次に、凸部4を、基礎円板2aの中心と凸部4の中心が略重なるように下層三日月状板2b,2bに固着させる。本実施形態においては、凸部4は、樹脂製ダンボール(プラパールハモニ5−100)を用いる。下層三日月状板2b,2bと凸部4は、接着剤を用いて固着する。なお、凸部4の素材は、本実施形態においては樹脂製ダンボールを用いたが、これに限定されるものではない。
【0045】
次に、半径約550mmからなる円弧を有し、平面視略C字状を呈する滑り止め層5,5を、下層三日月状板2b,2bの下面に接着剤を用いて固着する。滑り止め層5の円弧に係る中心は、円板2の中心と略重なるように固着する。
【0046】
本実施形態においては、滑り止め層5は発泡樹脂シート(イノアック:P・E−ライトM−082F)を用いる。これにより、静止摩擦係数が高まることから、金属コイルR及び一端面用スペーサ1aの移動を抑制することができる。
なお、本実施形態のように、滑り止め層5を発泡樹脂シートで形成することにより、滑り止め作用だけでなく、衝撃を吸収する緩衝作用も得ることができる。即ち、滑り止め層5は、静止摩擦係数を高め、金属コイルRの移動を抑制するだけでなく、運搬時や巻き解き時において、金属コイルRに作用する荷重や衝撃を吸収し、金属コイルRの変形や、銅管の変形、ひいては段積み金属コイル体の荷崩れを防止することができる。
【0047】
なお、滑り止め層5の厚さは、金属コイルRの質量及び滑り止め層5(発泡樹脂シート)の強度より適宜設定すればよい。
また、本実施形態においては、滑り止め層5は、発泡樹脂シートを用いたが、他の素材を用いてもよい。滑り止め層5は、例えば、静止摩擦係数が高く、弾性を有するゴム等の素材(衝撃を吸収するもの)でもよい。
【0048】
また、本実施形態においては、接着剤は、公知の接着剤を用いればよい。また、本実施形態においては、接着剤を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、両面テープ等を用いて金属コイル用スペーサ1を形成してもよい。
【0049】
なお、本実施形態においては、前記の製造方法で製造したが他の製造方法でもよい。例えば、一枚の板からなる円板2を形成し、この円板2の上面及び/又は下面を切削することにより、凹溝部3を形成してもよい。また、凹溝部3は、円板2を貫通するように形成してもよい。
【0050】
また、本実施形態においては、凸部4と下層三日月状板2b(円板2)を固着させたが、これに限定されるものではない。例えば、下層三日月状板2bの下面に、滑り止め層5を固着した後、この滑り止め層5の下面に凸部4を固着させてもよい。
なお、図1に示す他端面用スペーサ1bの製造方法は、凸部4を設けることを除けば、一端面用スペーサ1aと略同様にして製造することができるので、詳細な説明を省略する。
【0051】
<金属コイル用スペーサの使用方法>
次に、金属コイル用スペーサ1の使用方法について説明する。
(金属コイルに金属コイル用スペーサを設置する場合)
図1に示すように、他端面用スペーサ1bをパレット(図示外)等に載置した後、金属コイルRの結束バンドDが、他端面用スペーサ1bの凹溝部3(3b)を挿通するように、設置する。
次に、一端面用スペーサ1aに係る凸部4を金属コイルRの空間部Jに嵌合させると共に、一端面用スペーサ1aの凹溝部3(3a)を結束バンドDが挿通するように、設置する。
【0052】
(金属コイルを巻き解く場合)
金属コイルRの巻回を解く場合は、金属コイルRの結束バンドDを切断除去した後、一端面用スペーサ1aを取り外し、例えば、前記したETS方法により、金属コイルRの空間部Jから銅管を上方に引き上げて行う。
【0053】
以上説明した金属コイル用スペーサ1は、図1乃至図3に示すように、結束バンドDの厚さp、幅q、長さrよりも、凹溝部3の深さx、幅y、長さrの方が大きくなるように形成されている。従って、設置状態のままで、結束バンドDを容易に除去することができる。また、一端面用スペーサ1aには、金属コイルRの空間部Jに嵌め合わされる凸部4が設けられているため、空間部Jと凸部4を嵌め合わせることにより、一端面用スペーサ1a及び金属コイルRの移動が抑制される。これにより、運搬中及び巻き解き中における金属コイルRの移動を抑制することができる。
【0054】
また、円板2と、凸部4の中心は略等しく形成されているため、金属コイルRの中心部と金属コイル用スペーサ1の中心部を容易に重ね合わせることができる。これにより、一端面用スペーサ1a、金属コイルR及び他端面用スペーサ1bからなる形状が整った梱包体を形成することができるため、運搬時の金属コイルRの変形を防止することができる。
【0055】
また、金属コイルRと一端面用スペーサ1a及び他端面用スペーサ1bが対向する面には、滑り止め層5が設置されているため、接触面の静止摩擦係数を高めることで、金属コイルRの移動を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態においては、滑り止め層5は、発泡樹脂シートを用いているため、金属コイルRが受ける衝撃を吸収することができる。即ち、運搬時や巻き解き時において、金属コイルRに作用する荷重や衝撃を吸収することで、金属コイルRの変形や、銅管の変形防止することができる。
【0057】
以上、本発明に係る実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。なお、他の実施形態の説明において、本実施形態と重複する説明は省略する。
【0058】
<第二実施形態>
図4は、金属コイルR1,R2を段積みにして多段積み金属コイル体Tを形成した場合を示した斜視図である。
金属コイル用スペーサ1は、多段積み金属コイル体Tの上端面に設置される一端面用スペーサ1a、多段積み金属コイル体Tの下端面に設置される他端面用スペーサ1b及び金属コイルR(R1)と金属コイルR(R2)に介設される介設用スペーサ1cからなる。
【0059】
介設用スペーサ1cは、図4に示すように、基礎円板2aと基礎円板2aの上面及び下面に設置される下層三日月状板2b,2b及び上層三日月状板2c,2cを有する。さらに、下層三日月状板2b,2bの下面及び上層三日月状板2c,2cの上面に滑り止め層5,5・・・が設置されている。また、図5に示すように、介設用スペーサ1cの円板2の下面には、凸部4が設置されている。
【0060】
第二実施形態によれば、金属コイルR(R1)と金属コイルR(R2)の間に、下面に凸部4を有する介設用スペーサ1cが介設されるため、金属コイルRを複数個積み上げて段積み金属コイル体Tを形成する場合であっても、金属コイルR及び介設用コイルのスペーサ1cの移動を抑制することができる。また、介設用スペーサ1cの上面及び下面には、滑り止め層5が設置されていることから、介設用スペーサ1cと金属コイルR(R1)及び金属コイルR(R2)の接触面の静止摩擦係数が高まることから、より金属コイルRの移動を抑制することができる。
【0061】
また、介設用スペーサ1cに係る凸部4と円板2の中心は、略同心に形成されているため、金属コイルR(R1)と介設用スペーサ1cの中心を容易に合わせることができる。これにより、段積み金属コイル体Tを形成する場合であっても、多段積み金属コイル体の傾きを抑制することができるため、多段積み金属コイル体Tの荷崩れを防止することができる。
【0062】
また、介設用スペーサ1cの上面及び下面には凹溝部3(3c,3d)が形成されていることから、設置状態であっても金属コイルR(R1,R2)の結束バンドD,Dを容易に除去することができる。
【0063】
なお、第二実施形態においては、金属コイルRを2個段積みにしたが、金属コイルRの大きさ、金属コイル用スペーサ1の大きさ等によっては何個段積みしてもよい。即ち、金属コイルRをn個段積みさせる場合は、(n−1)個の介設用スペーサ1cを用いて金属コイルRと金属コイルRの間に介設させると共に、最上段に設置される金属コイルRnの上端には、一端面用スペーサ1aを設置すればよい。
【0064】
<第三実施形態>
また、例えば、図6に示すように、金属コイルRの巻回を解く場合において、一端面用スペーサ1a及び介設用スペーサ1cを取り外す工程と、結束バンドDを切断除去する工程の順序によっては、一端面用スペーサ1a及び介設用スペーサ1cの下面に係る凹溝部3を設けなくてもよい。
【0065】
即ち、本実施形態においては、金属コイルRの巻回を解くときに、一端面用スペーサ1aを取り外す前に、金属コイルR(R1)の結束バンドDを切断除去した。しかし、まず、一端面用スペーサ1aを取り外してから、金属コイルR(R2)の結束バンドDを切断除去してもよい。この場合、金属コイルRの上端に係る結束バンドDと接触する部材は存在しない。そのため、図6に示すように、一端面用スペーサ1aの下面に係る凹溝部は設けなくてもよい。
また、図6に示すように、介設用スペーサ1cの下面にも、一端面用スペーサと同様の理由により、凹溝部3を設けなくてもよい。
【0066】
<第四実施形態>
また、本実施形態においては、凹溝部3は、円板2の外縁の一端から、外縁の他の端まで直径を含むように形成されたが、これに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、円板2の中心部から外縁までの間に凹溝部3(3e),3(3e),3(3e)を形成してもよい。即ち、凹溝部3の深さ、幅、長さは、結束バンドDをスムーズに除去するために、結束バンドDの厚さ、幅、長さよりも大きく形成されればよい。従って、凹溝部3(3e)は、結束バンドDの本数、配向方向、大きさ等に合わせて、適宜設定すればよい。
なお、第四実施形態における一端面用スペーサ1e及び他端面用スペーサ1dに係る凹溝部3(3e),3(3e)・・・は、一端面用スペーサ1e及び他端面用スペーサ1dを貫通するように形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る金属コイル用スペーサを示し、一端面用スペーサ、金属コイル及び他端面用スペーサを分解した状態を示す展開斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】本発明に係る金属コイル用スペーサの第二実施形態を示した斜視図である。
【図5】図4のC−C断面図である。
【図6】本発明に係る金属コイル用スペーサの第三実施形態を示した斜視図である。
【図7】本発明に係る金属コイル用スペーサの第四実施形態を示した展開斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1 金属コイル用スペーサ
1a 一端面用スペーサ
1b 他端面用スペーサ
1c 介設用スペーサ
2 円板
3 凹溝部
4 凸部
5 滑り止め層
D 結束バンド
J 空間部
R 金属コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材を巻回してなり、中央部に連通した空間部を有し、かつ、前記空間部を通じてその一部が結束バンドで結束されている金属コイルの一端面及び他端面に設置される金属コイル用スペーサであって、
前記金属コイルの一端面と当接し、前記金属コイルと対向する面に、前記金属コイルの空間部と嵌合する凸部を有する一端面用スペーサと、
前記金属コイルの他端面と当接し、前記金属コイルと対向する面に、前記結束バンドに
対応して形成された凹溝部を有する他端面用スペーサと、でなることを特徴とする金属コイル用スペーサ。
【請求項2】
前記一端面用スペーサの前記金属コイルと対向する面に、前記結束バンドに対応して形成された凹溝部を有することを特徴とする請求項1に記載の金属コイル用スペーサ。
【請求項3】
前記一端面用スペーサの中心と、前記一端面用スペーサの前記凸部の中心を略同心としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属コイル用スペーサ。
【請求項4】
前記金属コイルを複数個段積みする際に、これらの金属コイルの間に介設される介設用スペーサをさらに有し、
前記介設用スペーサは、
その一端面に前記結束バンドに対応して形成された凹溝部と、
他端面に前記金属コイルの空間部に嵌合される凸部と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の金属コイル用スペーサ。
【請求項5】
前記介設用スペーサの他端面に前記結束バンドに対応して形成された凹溝部を有することを特徴とする請求項4に記載の金属コイル用スペーサ。
【請求項6】
前記介設用スペーサの中心と、前記介設用スペーサの前記凸部の中心を略同心としたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の金属コイル用スペーサ。
【請求項7】
前記一端面用スペーサ、前記他端面用スペーサ及び介設用スペーサにおいて、前記金属コイルと対向する面のうち少なくとも一面に、滑り止め層を設けることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の金属コイル用スペーサ。
【請求項8】
前記滑り止め層は、発泡樹脂により形成されることを特徴とする請求項7に記載の金属コイル用スペーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−269382(P2007−269382A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98754(P2006−98754)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(504136753)株式会社コベルコ マテリアル銅管 (79)
【Fターム(参考)】