説明

金属シートと、高分子フィルムとを含む缶を作るための積層体

【課題】パンチ及び/又はダイの磨耗を抑制し、缶の表面に傷が付きにくい缶用積層体を得る。
【解決手段】金属シートと、ポリエチレンテレフタレートの第一の層高分子フィルムとを含む缶を作るための積層体であって、第一の層厚みが1〜15μmの範囲、且つ第二の層がエチレンテレフタレート/エチレンイソフタレートのコポリエステルで、第二の層を基準として1〜30重量%の0.2〜5μmの範囲の二酸化チタンとを含み、第二の層の融点が第一の層の融点よりも20〜60℃低く、前記層は金属シートと接触しており、以下の(a)〜(c)の条件を満たす積層体。(a)第一層に対する第二層の厚さの比が2〜10:1の範囲、(b)第二層の透過光学密度が0.2〜1.5の範囲、(c)第一層の透過光学密度が0.005〜0.2の範囲。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子フィルムに関し、より詳細には、金属シートに積層するための高分子フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料と積層された金属シートは知られており、引抜缶及び壁に鉄を張った缶(DWI缶として知られている)及び引抜缶及び再引抜缶(DRD缶として知られている)のような缶の形成に用いられている。アルミニウムもしくは錫プレートのような缶製造用の金属シートは、缶が白色の外観を必要とする場合には白色顔料を含む高分子フィルムが積層される。DWI缶は高分子材料が積層された金属シートのシートからカップを形成し、ダイ内でこの金属カップにパンチを押しつけて缶本体を形成することにより製造されている。不幸にも、従来の白色顔料を含む高分子材料を使用すると、パンチ及び/又はダイの磨耗が大きくなり、得られる缶の表面に傷が付いてしまう。
【0003】
【特許文献1】GB−A−838708
【特許文献2】EP−A−0312304
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
我々は、上記問題を克服する金属シートへの積層に適した高分子フィルムを開発した。
【0005】
本発明は、金属シートと、ポリエチレンテレフタレートの第一の層を含有する高分子フィルムとを含む缶を作るための積層体であって、この第一の層は、1〜15μmの範囲の厚さを有し且つその第一の面上に不透明なポリエステルの第二の層を有し、この第二の層は、エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレートのコポリエステルと、このポリエステルの第二の層を基準として1〜30重量%の0.2〜5μmの範囲の体積分布中央粒径を有する二酸化チタンとを含み、第二の層のポリエステル材料の融点が第一の層のポリエチレンテレフタレートの融点よりも20〜60℃低く、前記ポリエステルの第二の層は金属シートと接触しており、以下の(a)〜(c)の条件を満たす積層体である。
(a)第一層に対する第二層の厚さの比が2〜10:1の範囲であること、
(b)第二層の透過光学密度が0.2〜1.5の範囲であること、
(c)第一層の透過光学密度が0.005〜0.2の範囲であること。
【0006】
また、本発明は、前記缶がダイ内で積層体にパンチを押し付けることにより製造されことを特徴とする上記の積層体、および上記の積層体から製造されることを特徴とする缶である。
【0007】
さらに本発明は、ポリエチレンテレフタレートの第一の層を含む缶の製造のために、金属シートに積層するための高分子フィルムであって、この第一の層は、1〜15μmの範囲の厚さを有し且つその第一の面上に不透明なポリエステルの第二の層を有し、この第二の層は、エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレートのコポリエステルと、このポリエステルの第二の層を基準として1〜30重量%の0.2〜5μmの範囲の体積分布中央粒径を有する二酸化チタンとを含み、第二の層のポリエステル材料の融点が第一の層のポリエチレンテレフタレートの融点よりも20〜60℃低く、以下の(a)〜(c)の条件を満たす高分子フィルムである。
(a)第一層に対する第二層の厚さの比が2〜10:1の範囲であること、
(b)第二層の透過光学密度が0.2〜1.5の範囲であること、
(c)第二層の結晶度が33〜37%の範囲であること。
【0008】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートの第一の層と、この第一の層の第一の表面上の、不透明なポリエステルの第二の層を含み、前記第二の層のポリエステル材料の融点が第一の層のポリエチレンテレフタレートの融点よりも20℃〜60℃低い高分子フィルムを提供する。
【0009】
本発明はまた、ポリエチレンテレフタレートの第一の層を形成すること、この第一の層の第一の表面上に不透明なポリエステルの第二の層を提供すること、を含み、前記第二の層のポリエステル材料の融点が第一の層のポリエチレンテレフタレートの融点よりも20℃〜60℃低い、高分子フィルムを製造する方法を提供する。
【0010】
第一の層のポリエチレンテレフタレートはテレフタル酸とエチレングリコールの縮重合により得られるものであってよい。ポリエチレンテレフタレートとは、ホモポリマーであってよく、及び他のグリコール及び二酸より得られるユニットを少量含むコポリマーであってもよいが、このホモポリマー又はコポリマーの融点は256 ℃より高く、好ましくは258 ℃〜265 ℃、より好ましくは259 ℃〜262 ℃である。このポリエチレンテレフタレートはエチレングリコール以外のグリコールより得られるユニットを少量、例えば4モル%以下、好ましくは2モル%以下含んでいてもよい。好適な他のグリコールは、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールを含む。このポリエチレンテレフタレートは好ましくはテレフタレートユニットを100 モル%含む。このポリエチレンテレフタレートは好ましくはエチレンテレフタレートユニットを100 モル%含むホモポリマーである。
【0011】
ポリエチレンテレフタレートフィルムは、例えばGB-A-838708に記載のように、好ましくは70〜125 ℃の温度において互いに垂直な2つの方向に逐次延伸により二軸延伸され、そして好ましくは150〜250 ℃の温度において熱硬化されたものである。
【0012】
本発明に係る高分子フィルムの第一の層は一軸延伸されたものであってもよいが、好ましくは機械特性と物理特性の満足な組合せを達成するために、フィルムの面において互いに垂直な方向に延伸することによって二軸延伸されたものである。フィルムの形成は、チューブ状もしくはフラットフィルムプロセスのような延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムの製造において当該分野において知られたあらゆる方法により行ってよい。
【0013】
チューブ状プロセスにおいて、熱可塑性ポリエチレンテレフタレートチューブを押し出し、次いで急冷し、再加熱し、そして内部ガス圧により膨張させて横方向に延伸させ、長手方向に延伸を起こす速度で引き抜くことにより同時二軸延伸を行ってもよい。
【0014】
好ましいフラットフィルムプロセスにおいて、フィルムを形成するポリエチレンテレフタレートはスロットダイを通して押し出され、冷却された流延用ドラム上で急冷され、ポリエステルを非晶質状態に急冷する。次いで、この急冷された押出品をポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度より高い温度において少なくとも一方向に延伸することにより延伸を行う。平坦な急冷された押出品をまず一方向(通常は長手方向、すなわちフィルム延伸機の進行方向)に延伸し、次いで横方向に延伸することにより逐次延伸を行ってもよい。押出品の進行方向の延伸は、一連の回転するロール上又は一対のニップロールの間で行われ、次いで横方向の延伸がテンター装置で行われる。ポリエチレンテレフタレートは好ましくは、延伸されたフィルムの寸法が各延伸方向においてその当初の寸法の2.5〜4.5倍となるように延伸される。
【0015】
延伸されたフィルムは、フィルムを形成するポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度より高いがその融点よりも低い温度において拘束下で加熱硬化させ、ポリエチレンテレフタレートを結晶化させることによって寸法安定化してもよい。
【0016】
第二の層は、この第二の層のポリエステル材料を加熱して軟化させ、第一の層のポリエチレンテレフタレートを軟化もしくは溶融させることなく圧力を加えることによって金属シートに熱シール結合を形成することができるべきである。
【0017】
この第二の層はポリエステル樹脂、詳細には、1種以上の二塩基芳香族カルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、琥珀酸、アゼライン酸、アジピン酸、及びセバシン酸、並びに1種以上のグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル1,3-プロパンジオール及びネオペンチルグリコールより得られるポリエステル樹脂を含む。満足な熱シール可能な特性を与えるポリエステルは、コポリエステル、例えばエチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートのコポリエステル、特に50〜90モル%のエチレンテレフタレートと10〜50モル%のエチレンイソフタレートのコポリエステルを含む。好ましいコポリエステルは、65〜85モル%、より好ましくは75〜85モル%のエチレンテレフタレートと15〜35モル%、より好ましくは15〜25モル%のエチレンイソフタレートを含み、約82モル%のエチレンテレフタレートと約18モル%のエチレンイソフタレートのコポリエステルが特に好ましい。
【0018】
本発明の他の態様において、第二の層は好ましくは50〜100 モル%、より好ましくは80〜100 モル%、特に95〜100 モル%、とりわけ100 モル%のポリブチレンテレフタレートを含む。この第二の層はブチレンテレフタレートと1種以上の上記ジカルボン酸及び/又はグリコールのコポリエステル、好ましくはブロックコポリエステルを含む。好ましいコポリエステルはブチレンテレフタレートとエチレンテレフタレートのブロックコポリマーであり、特に50〜95モル%のブチレンテレフタレートと5〜50モル%のエチレンテレフタレートのモル比のブロックコポリマーである。
【0019】
本発明に係る高分子フィルムの形成は、従来の方法、例えば事前に形成された第一の層と第二の層を積層することにより、又は第一の層を事前に形成した第二の層にキャスティングすることにより行ってよい。しかしながら、高分子フィルムの形成は、それぞれのフィルムを形成する層をマルチオリフィスダイの別個のオリフィスを通して同時に押し出し、その後溶融状態の層を接合することにより、又は好ましくは、それぞれのポリマーの溶融流をまずダイマニホールドに至るチャンネルダイ内で合流させ、その後互いに混合しない条件でダイオリフィスをとおして押し出して多層高分子フィルムを形成する同時押し出しによって行ってもよい。
【0020】
好ましい同時押し出しされた高分子フィルムは延伸され、第一の層及び/又は第二の層の分子配向を行い、そして好ましくは加熱硬化させる。通常、高分子フィルムの延伸に用いる条件は第二の層のポリマーの結晶化をおこし、従って第二の層の所望の形態を発生させるよう選ばれた温度において寸法拘束下で加熱硬化することが好ましい。従って、第二の層のポリマーの結晶化融点以下の温度で加熱硬化を行い、高分子フィルムを冷却させることにより、第二の層のポリマーは結晶質もしくは半結晶質を本質的に維持している。しかしながら、熱シールするポリマーの結晶化融点より高い温度で加熱硬化を行うことにより、本質的に非晶質となる。ポリエチレンテレフタレートの第一の層及びコポリエステルの第二の層を含む高分子フィルムの加熱硬化は、140 〜200 ℃の温度において行われると実質的に結晶質の第二の層が得られ、200 〜250 ℃の温度では実質的に非晶質の第二の層が得られる。加熱硬化は好ましくは140 〜180 ℃、より好ましくは145 〜155 ℃の温度において行われる。
【0021】
本発明の特に好ましい態様において、第二の層のポリエステル材料の融点は、第一の層のポリエチレンテレフタレートの融点よりも30〜55℃、より好ましくは40〜50℃、特に好ましくは44〜47℃低い。第二の層のポリエステル材料の融点は好ましくは200 〜240 ℃、より好ましくは205 〜230 ℃、特に好ましくは210 〜220 ℃である。
【0022】
本発明の好ましい態様において、第一の層と第二の層は共に結晶質であるか半結晶質である。第一の層は好ましくは30〜50%、より好ましくは35〜45%、特に好ましくは38〜42%の結晶度を有する。第二の層は好ましくは25〜45%、より好ましくは30〜40%、特に好ましくは33〜37%の結晶度を有する。
【0023】
第一の層は好ましくは透明であり、これは可視光が実質的に透過できることを意味する。第一の層は好ましくは0.005 〜0.2 、より好ましくは0.02〜0.15、特に好ましくは0.03〜0.1 の透過光学密度(Transmission Optical Density 、TOD)(SaKura デンシトメーター、タイプPDA 65、透過モード)を示す。このTOD値は5μmの厚さを有する第一の層に適用可能である。第一の層は好ましくは本質的に充填材を含まないが、フィルムの取扱性を向上させるために比較的少量の充填材が存在していてもよい。第一の層は充填材を、この第一の層のポリエチレンテレフタレートの重量を基準として好ましくは2%未満、より好ましくは0.5 %未満、特に好ましくは0.25%未満含む。第一の層に存在する無機充填材は好ましくはボイドを発生しないタイプである。第一の層に好ましい充填材はチャイナクレーである。このチャイナクレーは好ましくは0.1 〜10μm、より好ましくは0.5 〜1.5 μmの平均粒度を有する。
【0024】
本発明に係る高分子フィルムの第一の層は好ましくは第二の層よりも低い変形指数(DI)を有する。第一の層のDIは好ましくは4.0 %以下、より好ましくは3.5 %以下、特に好ましくは2.5 %以下である。
【0025】
第二の層は不透明であり、これは可視光が実質的に不透過性であることを意味する。この第二の層は好ましくは0.2 〜1.5 、より好ましくは0.25〜1.25、特に好ましくは0.35〜0.75、最も好ましくは0.45〜0.65の透過光学密度(Transmission Optical Density 、TOD)(Sakura デンシトメーター、タイプPDA 65、透過モード)を示す。このTOD 値は20μmの厚さを有する第二の層に適用可能である。第二の層は、ポリエステル材料に有効な量の不透明化剤を混入させることにより不透明にされる。好適な不透明化剤は、不混和性樹脂充填材、粒状無機充填材、又はこれらの充填材の2種以上の混合物を含む。
【0026】
「不混和性樹脂」とは、層の加工及び押し出しの際の高温においてポリマーに溶融しないもしくはポリマーと実質的に混和しない樹脂を意味する。不混和性樹脂の存在によって第二の層にボイドが存在することになり、これは第二の層が分離した独立気泡を少なくとも一部含む気泡質構造を含むことを意味する。ポリエステルの第二の層に混入させるためには、好適な不混和性樹脂はポリアミド及びオレフィンポリマーを含み、特にその分子内に6個以下の炭素原子を含むモノαオレフィンのモノもしくはコポリマーが好ましい。好ましい材料は低密度もしくは高密度オレフィンホモポリマー(詳細にはポリエチレン、ポリプロピレンもしくはポリ-4- メチルペンテン-1)、オレフィンコポリマー(詳細にはエチレン−プロピレンコポリマー)、又はこれらの2種以上の混合物を含む。ランダム、ブロックもしくはグラフトコポリマーも用いてよい。
【0027】
第二の層に存在する不混和性樹脂充填材の量は、第二の層のポリマーの重量を基準として、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは3〜20重量%、特に好ましくは4〜14重量%、最も好ましくは5〜10重量%である。
【0028】
不透明な第二の層に適した粒状無機充填材は、従来の無機顔料及び充填材、特に金属もしくはメタロイド酸化物、例えばアルミナ、シリカ及びチタニア、並びにアルカリ金属塩、例えばカルシウム及びバリウムの炭酸塩及び硫酸塩を含む。この粒状無機充填材はボイドを発生させるタイプであってもボイドを発生させないタイプであってもよい。好適な粒状無機充填材は均質であり、本質的に単一の充填材材料もしくは化合物、例えば二酸化チタンもしくは硫酸バリウムのみからなる。また、充填材の少なくとも一部は不均質であってもよく、主要な充填材材料が追加改質剤成分を含んでいてもよい。例えば、第二の層のポリエステルと充填材の相溶性を向上させるもしくは変えるために、主要な充填材粒子を表面改質剤、例えば顔料、石鹸、界面活性剤カップリング剤もしくは他の改質剤で処理してもよい。
【0029】
本発明の特に好ましい態様において、粒状無機充填材は二酸化チタンを含む。
【0030】
十分な不透明度、好ましくは白色度を有する第二の層の製造には、無機充填材、特に二酸化チタンが微粉砕され、そしてその体積分布された中央粒子直径(すべての粒子の体積の50%に対応する球直径、粒子の直径に対し累積分布曲線で読み取られる、これは「D(v,0.5)」値ともいわれる)が好ましくは0.2〜5μm、より好ましくは0.4〜1.5μm、特に好ましくは0.8〜1.2μmであることか必要である。
【0031】
無機充填材、特に二酸化チタン粒子のサイズ分布も重要なパラメーターであり、例えば過度に大きな粒子の存在は「スペックル」を示すフィルムを与えることになる。すなわち、フィルム中の充填材粒子の存在が肉眼によって認識されるようになる。第二の層に混入された無機充填材粒子のすべてが30μmを越えない粒度を有するべきである。そのようなサイズを越える粒子は当該分野において公知のふるい分けによって除去してもよい。しかしながら、ふるい分けは、選択したサイズを越える粒子をすべて除去できるわけではない。実際には、無機充填材粒子の数の99.9%の大きさは30μmを越えるべきではなく、好ましくは20μmを越えるべきではなく、さらに好ましくは15μmを越えるべきではない。
【0032】
好ましくは、無機充填材粒子の少なくとも90体積%、より好ましくは少なくとも95体積%が±0.8 μm、とりわけ±0.5 μmの体積分布中央粒子直径の範囲内にある。
【0033】
充填材粒子の粒度は、電子顕微鏡、コールター(coulter)カウンター、沈降分析及び静的もしくは動的光散乱によって測定してよい。レーザー光回析に基づく方法が好ましい。中央粒度は、選択された粒度以下の粒子体積の割合を表す累積分布曲線をプロットし、50番目の百分位を求めることにより決定される。
【0034】
第二の層に混入される充填材、特に二酸化チタンの量は、層に存在するポリエステルの重量を基準として、望ましくは1%以上30%以下であるべきである。特に好ましい不透明レベルは、充填材の濃度が、第二の層のポリエステルの重量を基準として、約5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%、より好ましくは12〜13重量%である場合に達成される。
【0035】
好ましい二酸化チタン粒子は、アナターゼもしくはルチル結晶形態のものである。二酸化チタン粒子は好ましくはルチル形態を主要部とし、より好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくはほぼ100 重量%がルチル形態である。この粒子は、塩化物法又はスルフェート法のような標準的方法によって製造される。
【0036】
本発明の一態様において、二酸化チタン粒子は好ましくは無機酸化物、例えばアルミニウム、珪素、亜鉛、マグネシウムもしくはこれらの混合物によりコートされる。このコーティングは有機化合物、例えばアルカノール及び脂肪酸、好ましくは8〜30個、より好ましくは12〜24個の炭素原子を有するもの、をさらに含むことが好ましい。ポリジオルガノシロキサンもしくはポリオルガノ水素シロキサン、例えばポリジメチルシロキサンもしくはポリメチル水素シロキサンが特に好ましい。
【0037】
このコーティングは水性懸濁液中で二酸化チタン粒子にコートされる。無機酸化物は水性懸濁液中で、水溶性化合物、例えばナトリウムアルミネート、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、珪酸もしくは珪酸ナトリウムより沈澱する。
【0038】
二酸化チタン粒子上のコーティング層は、二酸化チタンの重量を基準として、好ましくは1〜12%、より好ましくは2〜6%の無機酸化物、及び好ましくは0.5 〜3%、より好ましくは0.7 〜1.5 %の有機化合物である。
【0039】
不混和性樹脂充填材、好ましくはポリオレフィン、と粒状無機充填材、好ましくは二酸化チタン、が共に第二の層に存在する場合、粒状無機充填材の濃度は、第二の層のポリエステルの重量を基準として、好ましくは1〜30%、より好ましくは1〜15%、特に好ましくは2〜8%、最も好ましくは3〜7%である。
【0040】
第二の層の成分は従来の方法で混合してもよい。例えば、第二の層のポリエステルを形成するモノマー反応体と混合してもよく、又は成分をタンブルもしくは乾燥混合よりポリエステルと混合してもよく、又は押出機内で混合してもよく、次いで冷却し、粒子もしくはチップにする。マスターバッチ法も用いてよい。
【0041】
本発明に係る高分子フィルムの第二の層は好ましくは2.5 %以上の変形指数(DI)を示し、好ましい層は約50%以下のDIを示す。好ましくは、第二の層は3.5 〜20%、より好ましくは4.0 〜10%のDIを示す。特に望ましい特性は、4.5 〜7%のDIにおいてみられる。このDIは、以下に記載の試験法により、200 ℃の温度においてこの層のフィルムにシートの面に対して垂直に2メガパスカルの圧力を加えた際にみられる、層の当初の厚さの割合として表される(5回の測定の平均値)。
【0042】
本発明の好ましい態様において、高分子フィルムは150 ℃において2〜20%、好ましくは4〜15%、さらに好ましくは5〜10%の熱収縮率(横方向(TD)と長手もしくは機械方向の平均)を有する。
【0043】
本発明に係る高分子フィルムの厚さは、好ましくは5〜400 μm、より好ましくは8〜100 μm、さらに好ましくは12〜30μmである。
【0044】
本発明の特に好ましい態様において、高分子フィルムは第一の層よりも厚い第二の層を含む。第一の層の厚さに対する第二の層の厚さに比は、好ましくは1.1 〜20:1、より好ましくは2〜10:1、さらに好ましくは3〜7:1、最も好ましくは4〜6:1である。第二の層の厚さは通常300 μmを越えず、好ましくは5〜80μm、より好ましくは10〜25μmである。第一の層の厚さは0.5 〜100μm、より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは1〜15μm、最も好ましくは2〜6μmである。
【0045】
他の添加剤(通常、比較的少量)も所望により第一の層及び/又は第二の層に混入してもよい。例えば、ポリマーの重量を基準として、白色度を向上させるために1500ppm 以下の蛍光増白剤、及び色を変えるために10ppm 以下の染料を混入させてもよい。
【0046】
本発明に係る高分子フィルムを積層する金属シートは好ましくはアルミニウムもしくはスチール、又はこれらの合金である。アルミニウムシートの厚さは好ましくは0.02〜0.4mmであり、スチールシートの厚さは好ましくは0.05〜0.4mmである。スチールはニッケル、亜鉛もしくは錫プレート、ブラックプレート、リン酸化ブラックプレート又はクロム金属と酸化クロムの両者を電気によりコートしたクロムであってもよい。積層金属シート及び引抜缶及び壁に鉄を張った缶(DWIの好適な形成方法はEP−A−0312304に記載されている。好ましい方法において、金属シートは140〜350℃の温度に事前に加熱され、高分子フィルムを金属シートの片面にのせ(金属シートにポリエステルの第二の層が接触するように)、全体をニップロールに通す。得られる積層体を260 〜300 ℃に再加熱し、水槽内で急冷する。
【0047】
本発明を添付する図面を参照して説明する。
【0048】
図1を参照し、高分子フィルムは第一の層(1)と、この第一の層(1)の第一の面(3)に結合した不透明な第二の層(2)を含む。
【0049】
図2のフィルムは第二の層(2)の離れた面(5)に結合した金属シート(4)をさらに含む。
本発明を以下の実施例を参照してさらに説明する。
【0050】
以下の試験法を用いた。
1)変形指数は0.785mm2の表面積を有するテストプローブを有する熱機械分析機、Perkin Elmer、タイプTMA7を用いて測定した。高分子フィルムのサンプルをサンプルホルダーに入れ、これをTMA7のファーネスに入れ、そして200 ℃の温度において平衡にした。プローブをのせ、熱いフィルムサンプルの面に対し垂直に0.125 メガパスカルの圧力を加え、変形がゼロになるまで観察した。プローブへの負荷を高め、2メガパスカルの圧力をサンプルに加えた。負荷をためながらプローブの観察された変位を記録し、変形していない熱いサンプル(0.125メガパスカルの圧力における)の厚さの割合として表した。この割合が試験されたフィルム材料の変形指数(DI)である。この方法を同じフィルムの異なるサンプルにおいて4回繰り返し、5回の測定の平均値を計算した。
2)フィルム結晶度はレーザーラマン分光分析により測定した。
3)熱収縮は150 ℃において30分間オーブン内でストリップを加熱することにより測定した。5つのサンプルの平均変化率を計算した。
【実施例】
【0051】
(実施例1)0.8μmの平均粒度を有するチャイナクレーをポリマーの0.15重量%含むポリエチレンテレフタレートの第一の層のポリマーと平均粒度1μmの二酸化チタンをポリマーの12.5重量%含む82モル%のエチレンテレフタレートと18モル%のエチレンイソフタレートのコポリエステルの第二の層のポリマーの別個の流れを別個の押出機から1つのチャンネルの同時押出機に供給した。フィルム形成ダイを通して水冷した回転している冷却ドラム上にポリマーフィルムを押し出し、非晶質流延複合押出品を得た。この押出品を約80℃の温度に加熱し、次いで3.2:1の長手方向の延伸比で長手方向に延伸した。この高分子フィルムをテンターオーブンに入れ、シートを乾燥し、その当初の寸法の約3.4 倍まで横方向に延伸した。この2軸延伸した高分子フィルムを約145 ℃の温度で熱硬化させた。最終フィルムの厚さは25μmであった。第一の層の厚さは約4μmであり第二の層の厚さは約21μmであった。
【0052】
この高分子フィルムは0.53の透過光学密度(TOD)、及び150 ℃において8%の平均熱収縮率を示した。第一の層は2.1 %の変形指数(DI)を有し、第二の層は5.1 %のDIを有していた。第一の層は40%の結晶度を有し、第二の層は35%の結晶度を有していた。第一の層のポリエチレンテレフタレートの融点は260 ℃であり、第二の層のコポリエステルの融点は215 ℃であった。
【0053】
金属シートを200 〜230 ℃の温度に事前に加熱し、金属シートの片面に高分子フィルムを配置し(コポリエステルの第二の層を金属シートと接触させる)、そして高分子フィルム/金属シートの全体をニップロールに通すことによって金属シートを高分子フィルムと積層した。得られた積層体を260 〜300 ℃に再加熱し、水槽内ですぐに冷却した。この積層体からDWI缶を形成した。缶製造工程において用いたダイもしくはパンチの磨耗はみられなかった。さらに、得られた缶の表面には傷はみられなかった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、第一の層と第二の層を有する高分子フィルムの略断面図である。
【図2】図2は、第二の層の反対面に金属シートを有する高分子フィルムの略拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シートと、ポリエチレンテレフタレートの第一の層を含有する高分子フィルムとを含む缶を作るための積層体であって、
この第一の層は、1〜15μmの範囲の厚さを有し且つその第一の面上に不透明なポリエステルの第二の層を有し、
この第二の層は、エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレートのコポリエステルと、このポリエステルの第二の層を基準として1〜30重量%の0.2〜5μmの範囲の体積分布中央粒径を有する二酸化チタンとを含み、
第二の層のポリエステル材料の融点が第一の層のポリエチレンテレフタレートの融点よりも20〜60℃低く、前記ポリエステルの第二の層は金属シートと接触しており、以下の(a)〜(c)の条件を満たす積層体:
(a)第一層に対する第二層の厚さの比が2〜10:1の範囲であること、
(b)第二層の透過光学密度が0.2〜1.5の範囲であること、
(c)第一層の透過光学密度が0.005〜0.2の範囲であること。
【請求項2】
前記缶がダイ内で積層体にパンチを押し付けることにより製造されことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
請求項1または2の積層体から製造されることを特徴とする缶。
【請求項4】
ポリエチレンテレフタレートの第一の層を含む缶の製造のために、金属シートに積層するための高分子フィルムであって、
この第一の層は、1〜15μmの範囲の厚さを有し且つその第一の面上に不透明なポリエステルの第二の層を有し、
この第二の層は、エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレートのコポリエステルと、このポリエステルの第二の層を基準として1〜30重量%の0.2〜5μmの範囲の体積分布中央粒径を有する二酸化チタンとを含み、第二の層のポリエステル材料の融点が第一の層のポリエチレンテレフタレートの融点よりも20〜60℃低く、以下の(a)〜(c)の条件を満たす高分子フィルム:
(a)第一層に対する第二層の厚さの比が2〜10:1の範囲であること、
(b)第二層の透過光学密度が0.2〜1.5の範囲であること、
(c)第二層の結晶度が33〜37%の範囲であること。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−168949(P2008−168949A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2462(P2008−2462)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【分割の表示】特願平8−516654の分割
【原出願日】平成7年11月15日(1995.11.15)
【出願人】(300038826)デュポン テイジン フィルムズ ユー.エス.リミテッド パートナーシップ (36)
【Fターム(参考)】