金属ナノ粒子電極触媒増幅のための方法及び装置
本発明は、測定装置に接続された電気化学セルを伴う、化学分析物を分析するための方法、組成物、及びキットを含む。前記電気化学セルは、1又は複数のナノ粒子を有する溶液、1又は複数の化学分析物、及びインジケータを含む。さらに、電気化学セルは、溶液と連通した1又は複数の電極を含む。1又は複数の電極触媒特性は、1又は複数のナノ粒子と液体試料の相互作用によって生成され、前記1又は複数の電極において測定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ナノ粒子の分野に関し、特に、本発明は、金属ナノ粒子を使用する触媒反応からのシグナルを増幅するための機器、方法及び試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲を限定することなく、その背景をナノ粒子に関連して説明する。ナノ粒子の物理的性質(例えば、高い表面対体積比、表面エネルギーの上昇、圧力荷重後の延性の増大、より高い硬度、より大きな比熱など)により、材料指向産業及び材料科学において用途が増大した。例えば、様々な金属ナノ粒子が、多数の反応を触媒するのに使用されている。
【0003】
ナノ粒子のサイズは0.5〜100nmの範囲であり、電子エネルギーバンド構成はサイズ依存性であり、これはさらには、物理的及び化学的性質に影響する。ナノ粒子とそのバルク材料の間の基本的な区別は、表面原子の割合及び表面の曲率半径が、格子定数と同等であることである。結果として、ナノ構造触媒は、バルク材料に基づくその類似体と比較した場合、高い触媒活性を有する。ナノ粒子を形成する方法は、当業者に知られており、原子(又はより複雑なラジカル及び分子)の混合、並びにバルク材料の分散、例えば、熱蒸発、イオンスパッタリング、溶液の還元、マイクロエマルジョンの還元、及び凝縮による形成を含む。
【0004】
例えば、「Colloidal particles used in sensing arrays」という表題の米国特許第6,537,498号明細書には、流体中で分析物を検出するための、導電性ナノ粒子材料の複数の交互になった非導電性領域及び導電性領域を有する化学センサーが開示されている。センサーごとの化学的な感受性の可変性は、導電性及び/又は非導電性領域の組成を定性的又は定量的に変更することによって提供される。
【0005】
別の例には、名称が「Methods to increase nucleotide signals by Raman scattering」である米国特許第6,972,173号明細書が含まれ、銀又は金ナノ粒子に共有結合的に連結したヌクレオチドを使用する、増強ラマン分光法による核酸配列決定に関する方法及び装置が教示されている。分析目的のためのナノ粒子における電極触媒作用は、当技術分野で記載されているが、そのような記述では、電極表面上で単層又はほぼ単層の膜として、少なくとも数十万の多数のナノ粒子が関与する(Polsky, R; Gill, R; Kaganovsky, L; Willner, I, Analytical Chemistry, 2006, 78, 2268-2271)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,537,498号明細書
【特許文献2】米国特許第6,972,173号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Polsky, R; Gill, R; Kaganovsky, L; Willner, I, Analytical Chemistry, 2006, 78, 2268-2271
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、特に、nmスケールで、及びこれらの電極反応に関連する、非常に小さな電流又は電荷を測定することにおいて、1個のナノ粒子を電気化学的に生成し、位置づけ、特徴づけることが困難であることを認識した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電極における1個のナノ粒子(NP)の衝突を電気化学的に観察するための方法及び装置を提供する。本発明は、1個のナノ粒子における電極触媒作用、並びに高感度電気分析法の基盤を提供する。金属、炭素、及び半導体ナノ粒子は、電子工学、光学及び触媒学において広範囲の用途を有する。
【0010】
本発明は、試料チャンバー内で試料を分析する方法及びデバイスに関する。本発明の方法は、試料チャンバーで液体試料に1又は複数のナノ粒子を添加するステップと、1又は複数の電極を使用して、ナノ粒子と液体試料の相互作用によって生成される、1又は複数の電極触媒特性を観察するステップとを含む。一般に、電極触媒特性は、金属ナノ粒子によって触媒される反応の増幅であるが、電極触媒特性は、それだけに限らないが、電流、抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス若しくはこれらの任意の組合せ、又は電極で電子移動事象を認識する任意の他の手段も含むことができる。
【0011】
さらに、本発明は、生体分子を検出及び分析するためのナノ粒子の使用を含む。例えば、目的の分子(例えば、抗体、ポリヌクレオチド、単鎖DNA又はRNA)は、電極表面と相互作用するか又はかかる表面に接着するナノ粒子で連結又は標識することによって、ナノ粒子を電極の近傍に運ぶことができ、ここでその電極触媒特性を用いて検出及び分析を行う。
【0012】
本発明のデバイスは、測定装置に接続された電気化学セルを含む。電気化学セルは一般に、1又は複数の電極、試料チャンバー内に置かれた1又は複数のナノ粒子、及び電極とコミュニケーションした検出器を有する。置かれたナノ粒子は、試料と相互作用し、検出器によって捕らえることができる1又は複数の電極触媒特性を生成する。必要に応じてデバイスは、溶液中にインジケータ(indicator)を含んでいてもよい。さらに、前記電気化学セルは、超微小電極を有するナノメートルレベルの大きさであってよい。
【0013】
本発明は、少なくとも1つのナノ粒子、少なくとも1つの化学指示薬、少なくとも1つの電極、並びにナノ粒子(複数も)、電極(複数も)及び化学分析物(複数も)の間の相互作用によって生成される1又は複数の電極触媒特性を読み取る測定装置を有する、1又は複数の化学分析物(複数も)を分析するためのキットを含む。
【0014】
本発明の特徴及び利点をより完全に理解するために、添付の図面とともに発明の詳細な説明をこれから参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】白金ナノ粒子の衝突事象の概略図である。
【図2】Ptナノ粒子を伴った、及び伴わない炭素繊維電極における、プロトンの電気化学的還元のグラフである。
【図3A】炭素繊維電極における、白金コロイド溶液を注入する前後の電流遷移のグラフである。
【図3B】1個の粒子の固着を示すグラフである。
【図3C】粒子凝集体の固着を示すグラフである。
【図4】図4A及び図4Bは、白金粒子を注入する前後の、溶液中の炭素電極における電流トランジェント(current transient)のグラフである。図4Cは、衝突数対そのピーク電流の統計のプロットである。
【図5】異なる印加電位での炭素電極における電流トランジェントを例示するグラフである。
【図6】衝突の頻度を粒子濃度と関連づけるための、個々の粒子濃度での炭素繊維電極における電流トランジェントのグラフである。
【図7】様々なサイズの粒子から生じる電流振幅のグラフである。
【図8】様々なサイズの粒子から生じる電流振幅のグラフである。
【図9A】クエン酸白金ナノ粒子の存在下での、超微小電極における電流トランジェントのグラフである。
【図9B】クエン酸白金ナノ粒子の存在下での、超微小電極における電流トランジェントのグラフである。
【図9C】炭素超微小電極曲線22及び白金超微小電極のサイクリックボルタモグラムである。
【図10A】B及びCタイプの衝突を例示するための、大きな白金ナノ粒子の存在下での電流トランジェントのグラフである。
【図10B】配合物中のより小さい白金粒子によって生じるプロトン還元において観察されるCタイプの衝突において示された変動を例示するグラフである。
【図11】白金ナノ粒子の衝突事象の別の実施形態の概略図である。
【図12】代表的な電流−時間曲線を示すグラフである。
【図13】1msの時間分解能で記録した、2つの一般的な電流トランジェントを示すグラフである。
【図14A】電流対時間特性のグラフである。
【図14B】統計的なピーク電流対ピーク頻度のプロットである。
【図14C】試料のTEM像である。
【図14D】対応するPtナノ粒子のサイズ分布のプロットである。
【図15A】ヒドラジン濃度でのピーク電流分布シフトのプロットである。
【図15B】ヒドラジン濃度でのピーク電流分布シフトのプロットである。
【図15C】ヒドラジン濃度でのピーク電流分布シフトのプロットである。
【図15D】主要ピーク電流対ヒドラジン濃度のプロットである。
【図16A】個々のPt粒子濃度で記録した電流トランジェントのプロットである。
【図16B】対応する一次微分係数のプロットである。
【図17A】50及び100mMのクエン酸二水素ナトリウム電解液並びに10mMの過塩素酸電解液中の、Pt UME及びC UMEにおけるサイクリックボルタモグラムである。
【図17B】C及びPtナノ粒子溶液を注入する前後に記録した電流トランジェントのグラフである。
【図17C】個々の電流特性の拡大図である。
【図17D】個々の電流特性の拡大図である。
【図18】様々な溶液中の電流トランジェント及びサイクリックボルタモグラムのイメージである。
【図19】異なる粒径の個々のPtナノ粒子について記録した電流トランジェントのグラフである。
【図20A】サイクリックボルタモグラムのイメージである。
【図20B】電流トランジェントのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用を以下に詳細に論じるが、本発明は、多種多様な特定の状況において具体化することができる、多くの適用可能な発明概念を提供することが理解されるべきである。本明細書で論じる特定の実施形態は、本発明を作製及び使用するための特定の方法の単に例示的なものであり、本発明の範囲を定めない。
【0017】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書で定義される用語は、本発明に関連した分野における当業者によって一般に理解される意味を有する。単数で示した用語は、単数形の実体のみを指すことが意図されているのではなく、そのクラス全体を含むことができ、かかるクラス中の特定の例を説明のために用いた。本明細書の専門用語は、本発明の特定の実施形態を説明するのに使用されるが、その使用は、特許請求の範囲で略述されている場合を除いて、本発明の範囲を定めない。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「連結された」又は「連結している」は、2つの部分間の会合を指す。会合は、共有結合とすることができる。会合は、それだけに限らないが、イオン相互作用、水素結合、及びファンデルワールス力を含めた非共有結合とすることができる。例示的な非共有結合には、相補性のオリゴヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーション、ビオチン/ストレプトアビジン相互作用、並びに抗体/抗原相互作用が含まれる。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「ナノ粒子」は、本明細書で使用する場合、別段の指定のない限り、個々のナノ粒子を指す。本明細書で開示する場合、ナノ粒子は、約0.5nm〜約100nmの範囲である、ナノスケールの大きさを有する物質である。本開示によれば、ナノ粒子は、金属並びに非金属を含むことができ、コーティングされていても、キャップされていてもよい。本発明による、用語「ナノ粒子」は、生物学的化合物を包含しない。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「電極」は、電気化学セルの電気的に伝導性の測定部分を指す。本明細書で開示する場合、電極は、レドックス反応物にとって低電極触媒特性であり、接触しているナノ粒子への電荷移動を可能にするのに十分な導電性を有する。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「接触」は、互いにトンネリング距離内にある2つの物体を指す。この距離内で、電荷移動が起こり得る。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「レドックス反応物」は、本明細書で使用する場合、還元又は酸化反応を起こすことができる、ナノ粒子及び電極と異なる、電気化学セル内の物質を指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「連結された」又は「連結している」は、2つの部分間の会合を指す。会合は、共有結合とすることができる。会合は、それだけに限らないが、イオン相互作用、水素結合、及びファンデルワールス力を含めた非共有結合とすることができる。例示的な非共有結合には、相補性のオリゴヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーション、ビオチン/ストレプトアビジン相互作用、並びに抗体/抗原相互作用が含まれる。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「電極触媒」は、レドックス反応物の電気化学的な酸化又は還元の速度を増幅することができる物質を指す。少なくとも1つの実施形態では、ナノ粒子と電極の間の接触により、ナノ粒子と電極の間の電荷移動が可能になり、ナノ粒子が、レドックス反応物に対する電極触媒になることが可能になる。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「微量」は、物質が、仮にあったとしても、かかる物質の電極触媒反応に対する寄与が測定可能でない量で存在することを意味する。
【0026】
本発明は、1個の粒子衝突事象における、化学種の急速な電極触媒反応に関与する、大きな電流増幅定数に基づく方法を提供する。ナノ粒子における、溶液中の相対的に高濃度の化学種の反応は、導電性であるが触媒的ではない測定超微小電極(UME)では起こらない。当業者は、測定微小電極表面は、処理することによって、例えば、酸化膜を形成し、又はある特定の化合物を吸着させることによって、特定の電極反応に関する活性を低下させることができることを認識するであろう。電極はまた、処理することによって、触媒粒子の吸着又は固着を促進することができ、これにより、様々な分析スキームの基盤を提供することができる。
【0027】
図1は、1個の白金ナノ粒子の衝突事象の概略図である。粒子は、電極に拡散し、そこで滞留時間の間にこれは衝突し、還元(この概略図ではプロトンの)を触媒する。超微小電極12における1個の白金ナノ粒子10の衝突は、粒子触媒反応14についての、その特徴的な電流−時間過渡現象によって、電気化学的に観察された。1個の事象は、溶液中に存在する指標種16(例えば、プロトン、過酸化水素)の電極触媒反応(electrocatalyzed reaction)によって生成される電流によって特徴づけられる。指標反応14は、選択された超微小電極12で起こらず、ナノ粒子10よりはるかに大きな拡散係数を有する、高濃度の指標種16を伴うことができるので、電流の大きな増幅(例えば、10桁以上)が起こる。衝突ごとに独特の電流−時間特性が生成され、これは、粒径、粒子の滞留時間、及び超微小電極12の表面とのナノ粒子10の相互作用の性質に相関し得る。本発明により、1個のナノ粒子10における不均一反応速度の研究、粒径分布の判定、及び非常に高感度な電気分析法の適用も可能になる。本明細書で説明するこの例は還元反応であるが、当業者は、例えば、適切な電位のUMEにおけるメタノールの白金粒子との触媒酸化反応について、同じ原理が当てはまることを認識するであろう。
【0028】
図2は、空気飽和した、50mMのクエン酸二水素ナトリウム溶液中のガラス電極中のディスク状炭素繊維におけるプロトンの電気化学的還元のグラフであり、下の曲線18では、表面上に白金ナノ粒子を伴わず、上の曲線20では白金粒子を伴う(繊維直径:8μm、掃引速度:100mV/s)。電極は、軟質ガラス中に直径8μmの炭素繊維を密封し、次いで底部を研磨して炭素のディスクのみが溶液に曝されるようにすることによって作製される。例として、酸性水溶液中の白金ナノ粒子の分散系中に浸漬した炭素繊維の超微小電極を考慮されたい。定常状態の、超微小電極表面への粒子の拡散に制御されたフラックスJp,sは、
【0029】
【数1】
【0030】
によって与えられ、式中、Dpは、粒子の拡散係数であり、Cpは、粒子の濃度であり、aは、炭素の超微小電極ディスク電極の半径である(Bard, A. J.; Faulkner, L. R. Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, 2nd ed.; John Wiley & Sons: New York, 2001)。通常、単純なナノ粒子の帯電過程では、1個又は数個の電子のみが、ナノ粒子と超微小電極の間を移動し(np)、電流、ip,s=npFπa2Jp,sを生じ、これは、はるかに小さすぎてノイズ及びバックグラウンドレベルの上で観察することができない(Fはファラデーである)。しかし、ナノ粒子は、超微小電極に接触すると、指標種(例えば、プロトン、過酸化水素)の別の反応、及び化学種OのRへの還元を電極触媒することができ(例えば、白金粒子での水素発生)、はるかに大きな電流、iOが流れることができる。即ち、ナノ粒子が電極表面に衝突するとき、これは、OのRへの反応を、この反応が超微小電極において起こらない電位で可能にする。例えば、粒子が、衝突後に超微小電極表面に固着する場合、粒子における定常状態の拡散に制御された電流は、
【0031】
【数2】
【0032】
で与えられ、式中、JO,pは、Oの粒子へのフラックスであり、DOは、溶液中のOの拡散係数であり、COは、Oの濃度であり、r0は、粒子の半径である。係数の、Ap、即ち粒子の面積、及びBは、粒子形状、及び、粒子が超微小電極上にどのように位置しているかに依存する。無限の面上の球を考えることができる場合、Ap=4πr02及びB=4πln2=8.71である。CO及びDOは、Cp及びDpよりもはるかに大きくなり得るので、aとr0の差があっても、Oの1個の粒子への拡散のフラックスは、粒子の超微小電極へのフラックスより10桁以上大きくなることができる。
【0033】
衝突についての電流は、Oの還元のための粒子帯電、及び約r02/DOの時間で定常状態に達する、変化中のファラデー電流を含む過渡現象である。様々な種類の衝突が起こり得るので、それぞれの衝突事象についての電流−時間(i−t)過渡現象は、電極での粒子の滞留時間、τ、即ち、電極が粒子に電子を送ることができる時間によって決定されることになる。粒子が、定常状態電流に達するのに十分な時間電極に固着し、反応物Oは、粒子においてのみ還元される場合、粒子及びOの相対的な定常状態のフラックスによって与えられる増幅定数は、約(B/16)(DOCOa)/(DpCpr0)である。これにより、相対的な定常状態電流である、約B(DOCOr0)/4(DpCpa)が導かれる(np=nOと仮定して)。1pMの粒子の溶液及び10mMのインジケータOについて、反応物Oの拡散係数と粒子の拡散係数が約1桁異なると仮定すると、1nmの半径の粒子についての推定増幅定数は、9〜10桁となり得る。
【0034】
2つの電気化学的反応、即ち、プロトンの還元及び過酸化水素の還元をこの効果を例示するのに選択した。当業者は、触媒還元又は触媒酸化を起こす他の物質を使用することができることを認識するであろう。これらの反応の両方は、炭素の超微小電極において緩慢であるが、白金においてより急速である。図2に示すように、50mMのクエン酸二水素ナトリウム(NaH2Citr)中の炭素電極において、SHEに対して−0.5Vの正の電位で、プロトン還元は起こらず、0〜−0.5Vの電流の小さな増加は、溶液中の酸素の一部の還元によるものである。Pt粒子で覆われた炭素電極、又は純粋な白金電極については、−0.3Vより負の電位で、プロトン還元により定常状態電流が生じる(Bobbert, P. A.; Wind, M. M.; Vlieger, J. Physica 1987 141A, 58-72)。これらの電位で、酸素還元も著しく促進される。白金粒子における定常状態電流は、反応しない面と接触している球への定常状態電流から推定することができ、但し、粒子は、超微小電極とのオーム接触を維持し、印加される電位は、拡散制御下でOをRに変化させるのに十分である。説明した条件下でのプロトン還元についてのこの電流は、直径が2nmの球状粒子について約30pAであるはずである。粒子当たりのより高い電流は、プロトン濃度を増加させることによって、例えば、より高い濃度のクエン酸二水素ナトリウム、又は数十ミリモルの濃度の過塩素酸(水素気泡の形成を防止するために60mM未満でなければならない)を使用して実現することができるが、図3に見られるように、これらの条件下では、粒子は凝集し、沈殿する。
【0035】
図3Aは、20mMのHClO4及び0.1MのNaClO4中の炭素繊維電極において、白金コロイド粒子の溶液を注入する前後の電流遷移のグラフである。図3Bは、1個の粒子の固着を示すグラフであり、図3Cは、粒子凝集体を示すグラフである。
【0036】
図4は、白金粒子を注入する前後の、溶液中の炭素電極における電流トランジェントを示す。図4Aは、下の曲線22に見られる、クエン酸白金ナノ粒子の非存在下、上の曲線24に見られる、クエン酸白金ナノ粒子の存在下での、50mMのクエン酸二水素ナトリウム溶液中の炭素繊維電極における電流トランジェントのグラフである。粒子濃度は約50pMである。図4Bは、図4Aの拡大部分のグラフであり、それぞれA、B、及びCの、電流、振幅、及び頻度によって区別される3種類の衝突を示している。図4Cは、衝突数対そのピーク電流の統計のプロットである。一般に頻度(C)のタイプであった、15pA未満のピーク電流を有する衝突は含まれておらず、40pAを超えるピーク電流を有する衝突は、ほとんど粒子の固着によるものである。挿入図は、代表的な白金ナノ粒子のTEM像である。
【0037】
炭素の超微小電極の電位は−0.4Vであった。白金コロイド溶液は、クエン酸ナトリウムの存在下で、H2PtCl6を水素化ホウ素ナトリウムで還元することによって得た(Zhou, J. F.; Zu, Y. B.; Bard, A. J. J. Electroanal. Chem. 2000, 491, 22-29)。粒径の範囲は約2〜6nmであり、主な分布は、直径4±0.8nmであった。一般に、約2、5、及び10μLのコロイド溶液(ナノ粒子を形成するための還元前の、初発濃度はH2PtCl6中0.5mM)を、窒素をバブリングさせながら、約50mLの電気化学セル中に順次注入し、ナノ粒子のpM溶液を得、次いで窒素雰囲気下でi−t応答を記録した。粒子溶液を注入する前は、電流トランジェントは、小さい一定のノイズレベルを有する滑らかな曲線であったが、注入後に、大きな電流トランジェントが出現した。これらの変動は、粒子の補助電極との衝突によるものである。不可逆の衝突についての、即ち、粒子が表面に固着し、したがって電流レベルを増大させる場合の、定常状態電流の振幅は、約40〜80pAであり、これは、注入された粒子のサイズと一致している。
【0038】
図5は、異なる印加電位での炭素電極における電流トランジェントを例示するグラフである。電極電位が正にシフトするとともに、電流スパイクの振幅は減少し、これは、白金超微小電極において記録された定常状態電流と一致している。プロトン濃度は、電流スパイクの、観察される特性周波数及び振幅に大きな影響を有し、これは図3に示す。図6に見られるように、衝突の頻度は、粒子濃度にほぼ比例した。
【0039】
図6は、白金ナノ粒子の5つの個々の注入に対応する、50mMのクエン酸二水素ナトリウム溶液中の炭素繊維電極における電流トランジェントのグラフである。平均頻度は、使用した炭素超微小電極において、1秒当たり、粒子濃度1pM当たり約0.02であり、これは、8μmの炭素電極について、式1によって推定された平均頻度の、1秒当たり、粒子濃度1pM当たり0.03に非常に近い。本発明者らは、粒子の拡散係数は、1×10−8cm2/sであり、粒子濃度は、合成において使用したH2PtCl6の濃度の約1000〜2000分の1未満であり、即ち、1個の粒子は、約1000〜2000個のPt原子を有すると仮定した。電流振幅は、注入した粒子のサイズとともに変化し、約8nm超の粒子及び約2nm未満の粒子についてそれぞれ図7及び8に示すように、粒子が大きいほどスパイクが大きい。
【0040】
電極との粒子の衝突は、一般に、図4Bに示すように、3つのタイプのi−t応答を生じさせる。それぞれのi−t特性は、個々の1個の粒子衝突に関連する。個々のi−t特性の特徴は、粒径、粒子の滞留時間、及び粒子と電極表面の間の相互作用によって影響される。多くの場合では、粒子は、その衝突後に電極を離れ、したがって電流は増加するが、次いでバックグラウンドに戻る。これは、負に帯電した粒子と負に帯電した表面の間の反発的な相互作用に帰することができ、この効果は、さらにより負の値で電位を設定することによって試験し、本発明者らは、より少ない衝突を観察した。図4BにおいてA、B、及びCを示した特徴を有する過渡現象によって例示したように、それぞれの個々の衝突事象において生成される電流が変化する理由は、衝突の性質(例えば、粒子が、電子トンネリングが可能な距離内に、電極表面にどのように密接に接近することができるか)、滞留時間、及びまた粒径効果のためである。時間とともに触媒的な効率を失うことを意味する粒子の非活性化も要因である。
【0041】
図9A及び9Bは、超微小電極における電流トランジェントのグラフである。図9A及び9Bは、代表的なスパイクの一般的な形状を示す。個々のスパイクの電流最大値は変化し、主として粒径、基板表面と粒子表面の間の伝達特性に関係する、個々の1個の粒子の非常に高感度な検出を知らせる。図9Aは、クエン酸白金ナノ粒子の存在下で、10mMの過塩素酸及び20mMの過塩素酸ナトリウム中の炭素の超微小電極における電流トランジェントのグラフである。粒子濃度は、約25pMである。図9Bは、図9Aの拡大図である。図9Cは、炭素の超微小電極の曲線22、並びに50mMのクエン酸二水素ナトリウムの曲線24、及び10mMの過塩素酸と20mMの過塩素酸ナトリウムの曲線26中の白金超微小電極のサイクリックボルタモグラムである。
【0042】
強酸を使用することの利点は、図9Cに示すように、弱酸の脱プロトン化の動力学的プロセスを無視することができることである。しかし、過塩素酸などの強酸を使用してプロトン濃度を10mMに増加させる場合、粒子を負に安定化させる、シトレートのカルボン酸基のプロトン化のために、白金ナノ粒子は安定ではない。粒子の安定性は、クエン酸白金粒子の存在下で電流トランジェントを記録することによっても立証することができる。一般に、図3Aに示すように、粒子を注入した直後に、約600秒未満の期間内に、非常に急激なスパイクが出現する。興味深いことに、この場合、それぞれのスパイクの後に、電流の有意な増加はまったくなく、これは、粒子は、表面に十分に固着しないが、比較的短時間の間のみ触媒電流を生じさせることを明確に示す。
【0043】
大きな白金ナノ粒子、典型的には直径8nm超の白金ナノ粒子の存在下での電流トランジェントも測定した。この粒子は、オキサレートによって安定化される。同じ時間及び同じ白金濃度内で、わずか数個の電流スパイクを捕らえることができる。より大きな粒径のために、粒子濃度及び粒子の拡散係数の両方が小さくなるので、この結果は妥当である。しかし、図7の電流トランジェントのグラフに示すように、上述したB及びCのタイプの衝突は、明確に観察されない。
【0044】
1個のナノ粒子の衝突事象は、プロトンの代わりにインジケータとして過酸化水素を使用して試験されており、当業者は、他の化合物並びにインジケータ、例えば、還元反応に対して酸素、並びに酸化に対して水素、メタノール及びヒドラジンを使用することができることが分かるであろう。バックグラウンド電流を低減し、粒子の電極表面への結合を促進するために、金の超微小電極(これは、H2O2還元にとって触媒的ではない)を、溶液の化学種への電子トンネリングができる安定な単層を形成する、ベンゼンジメタンチオールの表面組織化単分子層(surface assembled monolayer)でコーティングした(Yang, J.; Lee, J. Y.; Too, H. P. Anal. Chim. Acta 2006, 571, 206-210)。末端のチオール基は、白金粒子に強く結合することができる。粒子を注入すると、固定化された白金粒子の近接のために、電流の即時の増加が観察される。粘着性の衝突の特徴である、i−t応答における不連続なステップに加えて、本発明者らは、より小さい振幅であるが、より高い頻度を有する、より小さい電流変動も観察した。これらの頻度は、不連続な電流ステップの頻度よりも約2桁高い。図10Bに示した変動は、図4Bに示したプロトン還元において観察されたCタイプの衝突に類似しており、配合物中のより小さい白金粒子によって生じた可能性がある。超微小電極又は電極は、金、炭素繊維の微小電極及びITOのような他の材料を含むことができる。さらに、指標種は、プロトン、過酸化水素、酸素又は当業者に既知の他の物質とすることができる。
【0045】
本発明は、超微小電極を用いて1個の粒子の衝突事象を観察する、新規の方法を提供する。1つの事象は、溶液中に存在するインジケータの粒子触媒反応を通じて生成される電流によって特徴づけられる。インジケータは、高濃度及び高拡散係数を有するように選択することができるので、大きな増幅が起こる。衝突ごとに独特のi−t特性が生成され、これは、粒径、粒子の滞留時間、及び電極表面との粒子の相互作用に関連する場合がある。粒子濃度、粒径(例えば、クエン酸白金ナノ粒子対白金デンドリマーナノ粒子)、印加基板電位、及び前記インジケータの濃度を変更することによって、i−t特性を使用して、1個の粒子におけるインジケータ反応についての情報を得ることが可能であるはずである。ナノ粒子を使用して、光学的シグナル、伝導率シグナル、及び質量シグナルを増幅することと比較して(Xiao, X. Y.; Xu, B. Q.; Tao N. J. Nano Lett. 2004, 4, 267-271、Sonnichsen, C.; Reinhard, B. M.; Liphardt, J.; et al. Nature Biotech. 2005, 23, 741-745)、本発明の触媒電流増幅は、1個の粒子の衝突事象の観察、及びi−t曲線を通じて、1個の粒子レベルでの電気化学的速度の研究を可能にする。さらに、これは、粒径分布を求めることにおいて、及びおそらく1つの結合事象レベルに対する、非常に高感度な電気分析法として有用となり得る。
【0046】
白金ナノ粒子溶液は、60mLの2mMのH2PtCl6水溶液を、3mLの50mMのクエン酸ナトリウム水溶液と混合することによって調製し、次いで、勢いよく撹拌しながら、7mLの120mMのNaBH4水溶液を液滴で添加した。この溶液をさらに30分間撹拌し続けた。
【0047】
サブナノメートルから数ナノメートルの範囲の様々なサイズの金属ナノ粒子(MNP)を所望するが、これは、その大きな表面対体積比、サイズに依存した光学的性質、及び高密度の表面欠陥のためであり、これらの粒子は、独特の物理的及び化学的性質を示す。当業者は、他のナノ粒子溶液、例えば、白金、パラジウム、銅、銀、ルテニウム、鉄、アルミニウム、ニッケル、スズ及び金、並びに炭素及び酸化スズのような非金属を同様に調製することができることを認識するであろう。粒子物質の選択は、触媒される電極反応に依存する。例えば、ナノ粒子は、元素の少なくとも50、100、300、1000、又は3000個の原子を含むことができる。例えば、ナノ粒子は、元素の少なくとも10,000、30,000、100,000、300,000、又は1,000,000個の原子を含むことができる。ある特定の実施形態では、ナノ粒子は、元素の炭素、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びフラーレンのうちの少なくとも1つを含む。例えば、ナノ粒子は、金、白金、パラジウム、ロジウム、炭素、及び銅から選択される元素の原子を少なくとも100個含むことができる。ナノ粒子は、純粋に元素(例えば、純粋な白金)である必要はなく、合金、酸化物、及び化合物、並びにコアシェル型構造を含むことができる。様々な実施形態では、ナノ粒子は、均質でなくてもよい。いくつかの実施形態では、異なる組成を有するナノ粒子を同時に使用することができる。
【0048】
電気化学的研究では、MNPは、通常、不活性な支持材料において固定化されることによって電極を形成し、プロトン還元又は酸素還元などの電極触媒反応おけるその効果がプローブされる。MNPの電極触媒効果を特徴づけることにおいて、支持材料に対して表面被覆率が果たすように、MNPのサイズ及び形状の均質性は、複雑な役割を果たす。通常、平均効果が見られ、活性をMNPの性質と関連づけることは、表面被覆率及び総面積の効果、並びに粒子の支持材料との相互作用によって複雑になっている。したがって、電極触媒の挙動に対する粒径の効果について意見の相違がある。一般に、1個のナノ粒子レベルでの電極特徴づけは、当技術分野において限られており、多数の課題を有し、実験的な研究が比較的少ない。
【0049】
ナノ電極又はMNP電極は、1個の分子検出から細胞エキソサイトーシスのリアルタイム画像法に及ぶ用途を見出すことも提唱されている。これらの電極のサイズは、生体分子、及び生体膜中のイオンチャネルのサイズに匹敵する。しかし、当業者は、ナノメートルスケールで電極を作製することは、依然として技術的に困難であることを認識している。さらに、nmサイズでは、そのような電極において生成される電流は、通常、pAレベルであり、良好な信号対雑音レベルを伴った測定を困難にしている。MNPのサイズ及びサイズ分布を求めるために、様々な分析手段、例えば、電子顕微鏡法、走査プローブ顕微鏡法、UV−可視分光法、表面プラズマ共鳴、質量分析法、動的光散乱、並びにX線吸収分光法(XRD及びEXAFS)が開発されている。例えば、透過電子顕微鏡法(TEM)は、直径が数nmのMNPのサイズを、炭素グリッド支持体上にキャストすることによって、正確に求めるために、一般に且つ広く使用されている。本発明は、液体溶液中でMNPのサイズをスクリーニングすることができる電気化学的方法を提供し、1個のMNPにおける電極触媒作用の速度を研究するためのプラットフォームも提供する。
【0050】
簡単に言えば、所与の検出器の電極材料、例えば、Cにおいて不活発に起こるが、MNPが電極で衝突し、固着するとMNPにおいて起こる、異種の電子移動反応が選択される。MNPが検出器の電極と接触すると、電子は、MNP中に、又はMNPから流れ、MNP表面における触媒反応を維持する。図11Aは、Au UME表面における1個のナノ粒子の衝突についての、白金ナノ粒子の衝突事象の概略図であり、反応は、粒子が検出電極と接触するとき開始される。平面の電極と接触した1個の球状のMNPにおいて生成される限界電流は、
【0051】
【数3】
【0052】
によって与えられ、式中、Dは、濃度Cでの反応物の拡散係数であり、rは、1個のMNPの半径である。この式は、球状のUMEについての式と、ln2の項によって異なり、これは、支持平面による、MNPに対する拡散経路のブロッキングを説明する。
【0053】
明らかに、粒径、又は半径は、反応物の所与の濃度で記録される触媒電流に比例し、但し、Dは、大抵100mM未満である、反応物及び支持電解液のある特定の濃度範囲において一定に維持されると仮定する。
【0054】
1個のMNP衝突を観察するための第1のステップは、触媒反応を選択することによって電流を増幅することである。MNPにおける反応速度は、第1に、ある特定の電位範囲内で、基板における反応速度より著しく速いべきであり、例えば、Pt対Cにおけるプロトン還元である。第2に、触媒反応は、無視できる動力学的な影響とともに、質量輸送制御された条件下で起こるべきであり、その場合電流は、1個のMNPのサイズに比例しており、即ち、式(3)が適用される。MNPにおける電極触媒作用の不均一反応速度は、その形状及びキャッピング剤の関数となる場合があるので、MNPにおける拡散限界電流が常に維持される電位で、電極にバイアスをかけることによって、これらの効果を最小限にすることが有用である。最後に、反応物は、検出限界より十分上の、即ち、数十pA以上の十分に大きな電流が得られるように、高い濃度であり、大きな拡散係数を有するべきである。
【0055】
プロトン還元に加えて、Pt、Au、及びCの微小電極における、酸素還元、メタノール及びギ酸酸化、過酸化水素の酸化又は還元、並びにヒドラジン酸化などの反応は、これらの電極におけるその電極触媒応答において電位差を示す。しかし、酸素還元についての電流は、水中でのその低い溶解度によって制限され、メタノール及びギ酸などの小さい有機分子の酸化は、COのような中間体の吸着によって表面の毒作用を招き、これは、酸化電流を制限し、酸化電流の不安定性を引き起こす。H2O2の使用は、過酸化水素の異種の触媒的分解によって乱され、Pt MNPが、過酸化水素試験溶液中に注入されると、気泡が生成される。ヒドラジン酸化及びプロトン還元は、Pt、Au及びC電極の間で区別可能な触媒的挙動を示し、ある特定のpH領域において再現可能な応答を生じる。
【0056】
図11Bは、Au UMEとPt UMEとの間で、ヒドラジン酸化速度を合わせる電流増幅のグラフであり、ここで走査速度は、50mV/sであり、電解液は、10mMのヒドラジン及び50mMのPBS緩衝液であり、pHは約7.5である。図11Bは、例として、ヒドラジン酸化は、pH7.5のリン酸緩衝液中、0.4Vを超える電位で、Au UMEにおいて定常状態の限界電流を生じさせ、一方、PtのUMEにおいて、酸化のための電位は、約−0.5Vシフトすることを示す。そのような電位シフトは、Ptにおける反応速度が、Auにおける反応速度より著しく大きくなるように調整するのに十分大きい電位ウインドウを導く。定常状態の限界電流は、半径5μmを有するUMEにおいて、pH7.5で、10mMのヒドラジンについて約50nAであり、15mMのヒドラジンについて75nAである。
【0057】
図11Cは、1個のナノ粒子の衝突事象において観察される、代表的な電流特性のグラフである。図11Cの個々の段階的な電流特性は、以下に説明するように、粒径を求めるのに使用することができる。そのような電流特性は、粒子表面において電極触媒ヒドラジン酸化を開始する前後の、検出器の電極におけるMNPの衝突及び接着の1つの事象を表す。電流特性は、UMEにおいて記録されたものと類似しており、このMNPにおける定常状態の電流が実現されたことを示す。粒径を求めるために、ピーク高さを、同じ試験電解液について、PtのUMEにおいて得た限界電流と直接関連づける。粒径分布を評価するために、本発明者らは、ヒドラジン及びPBS緩衝電解液を含む試験溶液中に、非常に希薄なPtコロイド溶液を注入することによって、粒子衝突頻度を制御した。十分に分離した電流特性は、個々の1個のMNPの衝突事象を示した。
【0058】
Ptナノ粒子(Pt NP)溶液は、クエン酸ナトリウムの存在下で、Pt前駆体である、H2PtCl6又はK2PtCl4を、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)により還元することによって調製した。簡単に言えば、40mLの2mMのH2PtCl6(99.9%、Alfa Alsar)を、28mgのクエン酸ナトリウム(99+%、Aldrich)と混合し、その後、勢いよく磁気撹拌しながら、新鮮な水素化ホウ素ナトリウム溶液(99%、Aldrich)を液滴で添加した。水素化ホウ素ナトリウムの濃度を56〜500mMに変化させることによって粒径を制御し、溶液をさらに30分間撹拌した。H2PtCl6を用いて調製したナノ粒子溶液は、TEMによって求めた場合、注入したNaBH4の濃度に応じて、3.2〜5.3nmの直径付近で比較的狭いサイズ分布を有していた。3.6nm付近に分布した粒径を有するPt NP溶液を、説明される粒子衝突において主に使用した。これらのコロイド溶液は、合成溶液中で数カ月間安定であった。NaBH4によるK2PtCl4の還元では、1.3nmの直径付近の非常に小さいNP、又は粒子凝集体に至った。粒子凝集体は、星形であり、サイズは、13〜25nmの範囲であった。これらのコロイド溶液はともに安定ではなかった。Pt粒子溶液は、シュウ酸カリウムの存在下で、K2PtCl4を水素還元することによっても調製した。この調製において、Pt粒子は、より良好な結晶子を有するが、粒径は、5〜16nmで広く分布している。当業者は、これらの合成経路を修正又は微調整することによって、様々な結果を生じさせることができることを認識するであろう。
【0059】
NP濃度は、通常、それぞれの粒子が含むPt原子の平均数で除したPt前駆体の濃度から計算した。例えば、3.6nmのPt粒子は、約1400のPt原子を含むと仮定され、したがって、Pt粒子の濃度は、Pt前駆体の濃度の1400分の1未満である。ICP−MSによって確認されるように、調製されたばかりのコロイド溶液については、Pt損失は無視でき、例えば、5%未満のPt濃度の減少は、おそらくPt粒子が、磁気撹拌子及びガラス壁に接着するためである。
【0060】
粒径は、TEMによって求めた。Pt粒子を、TEMグリッドにおいて、遠く離して間隔をおいて配置するために、TEMグリッドを、水で約20倍希釈したPtコロイド合成溶液中に一晩浸漬し、次いでこれをコロイド溶液から垂直に取り出し、水で徹底的にすすいだ。炭素膜は、依然として十分に疎水性であるため、このすすぎの後で通常乾燥していた。この手順を使用することによって、グリッド表面上でのMNPの凝集を最小限にし、粒子の凝集体であるかどうかの判定を可能にした。液滴をキャストすることによって調製したTEM試料を、比較のために使用した。TEM像は、JEOL 2010F透過電子顕微鏡(JEOL社製)から得た。点像に対するTEM分解能は、0.194nmであった。TEMグリッドは、200メッシュの銅上に支持された炭素膜であった(Electron Microscope Sciences)。
【0061】
10μm及び25μmのAu、Pt UMEは、金属ワイヤを溶かして軟質ガラス中に入れることによって調製した。金属ワイヤを、銀エポキシを用いてNi−Crリードと接続した後、電極を、鏡面が得られるまで、0.3μmのアルミナで研磨した。予定した表面積と品質のUMEは、水溶液中のフェロセンメタノール酸化のボルタンメトリーから得た。それぞれを使用する前に、電極を、0.3μm及び0.05μmのAl2O3粉末で研磨した。
【0062】
1−ヘキサデカンチオール(C16SH)及び16−メルカプトヘキサデカン酸(HSC15COOH)の自己組織化単分子層(SAM)は、以下に論じるように、清潔なAu電極を、約1mMのC16SH又はHSC15COOHを含むエタノール溶液中に異なる時間浸漬することによって調製した。次いで電極を、エタノール、アセトン及び水で徹底的にすすいだ。
【0063】
サイクリックボルタンメトリー及びクロノアンペロメトリーは、約50mLの電解液を含む3つの電極セル(CH Instruments、Austin、TX、モデル660)を用いて実施した。炭素棒を対電極として使用し、ポリピロールでコーティングしたステンレス鋼ワイヤを参照電極として使用した。電極の電位は、標準Ag/AgCl参照電極によって較正し、リスケールすることによって電位対標準水素電極(SHE)を得た。電気化学セルは、ファラデー箱内に維持し、電流トランジェントは、通常、約10msの分解能で記録した。Ptコロイド溶液を注入する前に、電極を数回の電位サイクルにかけることによって表面を浄化し、次いでバックグラウンド電流が300pA未満である電位で保持した。MNP注入のためにファラデー箱を開けるといつも、ノイズが出現した。箱を閉じた後、セルをAr雰囲気中で維持した。MNPの衝突によって生成される電流は、ファラデー箱のドアが閉じているとき、使用した増幅レベルでバックグラウンドノイズから容易に区別することができた。
【0064】
電流は、Ptコロイド溶液を注入する前後で、時間に対して記録した。コロイド溶液をArで約10秒間バブリングする間に、この溶液を試験電解液中に注入した。この手順により、試験電解液全体に、Pt NPが均一に素早く分布したが、この期間により高いノイズレベルが生じた。一般に、Pt NPにおける電流増幅のためのインジケータ反応として、ヒドラジン酸化及びプロトン還元を使用した。
【0065】
図12は、機械的研磨及び電気化学的クリーニング後に、0.1Vの電位で維持し、Au UMEにおいて記録した、代表的な電流−時間曲線を示すグラフである。バックグラウンド電流は、約220pAであり、本質的に一定であり、時間とともに非常に徐々に減衰した(図12A、青色の曲線)。5〜15秒で観察された大きいノイズは、ファラデー箱の開閉によって生じ、その間にPt粒子溶液を注入した。その期間の後に、電流はわずかにずれ、これは、この期間の1個又は数個の粒子の衝突のためである可能性がある。この期間の後に、溶液を可能な限り無振動に維持し、電流をモニターした。示したように、電流は、段階的な様式で陽極的に(anodically)に増加した。
【0066】
図12Bに示した、初期の時間の間に電流振幅で20pA未満の数個の電流ステップが出現した。これらの小さい電流ステップは、その後にも頻繁に観察されたことに注意されたい。この期間の後のほとんどの電流ステップは、40〜65pAの範囲であった。それぞれの電流ステップにおいて、電流は、非常に急速に増加し、次いで、定常状態値に維持された。数個の電流ステップは、より長い過渡現象時間を示したが(図12、青色の矢印)、これは、基板との粒子衝突の性質についての微視的な詳細を示す可能性がある(図12C)。例えば、低濃度では起こりそうもないが、粒子は、表面上に既にある別の粒子と相互作用する場合がある。2つの別々の粒子が再配列又は融合して1つの単位になることによっても、実用的な表面積が減少し、したがって電極触媒電流が減少する。MNPは、溶液中の外来性の不純物によって不活性化される場合がある。本発明者らは、一般に後の記録時間での電流の減衰を述べた。衝突ステップの詳細な形状において明らかに微妙なことが存在し、これはさらに研究される必要があるが、制御することは困難である。
【0067】
図13は、1msの時間分解能で記録した2つの一般的な電流トランジェントを示す。図13は、1個のPtナノ粒子の衝突についての、高分解能電流トランジェントである。電流は、1msに設定した、本発明者らのポテンシオスタットの限界分解能で切り替えた。粒径は、約3.6nm及び10μmのAu UMEであり、15mMのヒドラジン及び50mMのPBS緩衝液のpHは約7.5である。図13A及び13Bは、1msの時間分解能で記録した、2つの一般的な電流トランジェントを示す。立ち上がり時間は、1ms以内である。ポテンシオスタットに直接接続した、より高い時間分解能のオシロスコープ(Tektronix 2440)を使用して、本発明者らは、電流ステップの立ち上がり時間は、約40〜100μsであることを見出した。この立ち上がり時間は、おそらくポテンシオスタットの機器限界も表す。
【0068】
図14Aは、電流対時間特性についての電流ステップグラフのグラフである。図14Bは、200s以内に分析した統計的なピーク電流対ピーク頻度のプロットである。図14CはTEM像であり、図14Dは、対応するPtナノ粒子のサイズ分布のプロットである。図14Aは、ほぼ等しい高さ(約60pA)のいくつかのステップを含む、一般的な電流対時間特性を示す。これにより、式(3)を介して粒子半径が導かれる。より多数のステップについて、所与のピーク電流の出現の数をプロットすることができ、これは、40〜65pAの主な分布を示し、100及び160pA付近のより少数のより大きなピーク電流を伴っている(図14B)。それぞれの電流特性は、1個の粒子の衝突事象を伝えるので、ピーク電流の分布は、NPのサイズの分布を反映するはずである。実際にこれは、TEM像の図14C及び分布の図14Dによって求めた粒径分布とよく一致する。これらのPt NPは、炭素表面において開路電位に付着しているが、粒子のランダムな衝突を通じてTEMグリッドの表面にも付着していることに注意されたい。MNPのサイズ分布は、上述した衝突実験において、電極表面に付着した粒子を表すはずである。より大きなピーク電流は、おそらく、MNP凝集体の衝突によって起こる。
【0069】
図15A、15B及び15Cは、ヒドラジン濃度に伴うピーク電流分布のシフトのプロットであり、図15Dは、主要ピーク電流対ヒドラジン濃度のプロットである。分布の形状がわずかに変化しているが、これは、統計的分析についての時間スケールが異なるためであり、通常、時間がより長いと、大きなピークのカウントがより多いことに注意されたい。
【0070】
個々の電流特性は、異なる条件、例えば、ヒドラジン濃度、粒子濃度、検出電極(C及びAu UME)の性質及び面積、並びに粒径の下で研究を実施することによる1個のMNPの衝突によるものであることが示された。ヒドラジン濃度を変化させたとき、注入した同じコロイドPt溶液について、電流ステップの振幅は、比例して変化した。したがって、所与の濃度のヒドラジンに対して、ピーク電流の分布によって粒径分布を直接評価することができる。
【0071】
図16Aは、個々のPt粒子濃度で記録した電流トランジェントのプロットであり、図16Bは、対応する一次微分係数のプロットである。図16B中の青銅色の曲線は、MNPの非存在下で記録した電流トランジェントに由来する。トレースは、明確にするためにゼロからずらした。青色の矢印は、20pAを超える電流ステップを生じさせるスパイクを示し、赤色の矢印は、20pA未満の電流ステップを示す。粒径は、約3.6nmであり、10μmのAu UMEであり、約7.5のpHを有する、15mMのヒドラジン及び50mMのPBS緩衝液の溶液を用いる。漸増濃度のPt NPで、図16に見られるように、ピークの頻度は増加したが、ピーク電流の振幅は変化しないままであった。10μmのAu UMEの代わりに25μmの直径のAu UMEを使用したとき、衝突頻度は約2倍増加した。
【0072】
図16Bに示すように、ステップをカウントし、出現の頻度を得るために、電流の一次の時間微分係数を使用した。ここでは、それぞれのスパイクは、電流ステップ、したがって粒子衝突の1つの事象を表す。個々のスパイク間の分離は、数秒から数ミリ秒の範囲である。時間とともに頻度が変動してスパイクが観察されることは、バルクの電解液からのMNPの電極との衝突が、ランダムプロセスであることを示す。この衝突プロセスは、粒子の吸着に至らない、検出器の電極におけるMNPのいくつかの衝突も含む場合があり、即ち、電極における粒子の滞留時間は、粒子によって変化する場合がある。
【0073】
図16B中の青銅色の曲線は、MNPの非存在下で記録した信号対雑音レベルを示す。変動の振幅は、上向き及び下向きの両方向にほとんど等しく分布している。青色の矢印によって示されたものより大きい振幅を有するスパイクは、20pAより大きい電流ステップに対応する。これらのスパイクは、衝突後に基板に固着するMNPによるものである。これらのスパイクの頻度は、約0.012〜0.02pM−1s−1である(即ち、25pMの粒子濃度について、頻度は、約0.4s−1、又は約2秒という衝突間の平均時間である(図16B、赤色曲線を参照されたい))。赤色の矢印によって示されたスパイクはまた、MNPの衝突によるものである場合がある。これらの衝突は、電流ステップよりむしろ電流スパイクを導くので、これらはおそらく、検出電極における非常に短い滞留時間のMNPの衝突と関連づけられる。
【0074】
衝突頻度は、拡散限界の定常状態条件で、すべてのMNPが検出器の電極において衝突し、次いで固着すると仮定することによって求めることができ、
【0075】
【数4】
【0076】
(式中、Dp及びCpは、Pt粒子の拡散係数及び濃度であり、aは、UMEの半径である)によって与えられるフラックスJを生じる。既知の粒子濃度及びAu UMEの半径で、観察される衝突頻度は、約1×10−8cm2/sのNPの拡散係数に対応する。しかし、3〜4nmの範囲のPt NPの拡散係数は、NPの拡散及び他のデータに関するストークス−アインシュタインの関係に基づくと約1×10−7cm2/sであると推定される。
【0077】
電流ステップが観察されるために、粒子は、観察可能な電流を生成するのに十分長いある特定の時間、電極表面に接触して留まらなければならない。したがって、本発明者らが観察したのは、衝突頻度の代わりに固着頻度である。したがって粒子が固着する確率は、この実験では、衝突の約1〜10%である。
【0078】
試験電解液が粒子を安定に維持するかどうかということは、非常に重要な役割を果たす。粒子濃度当たりの電流ステップの数は、50mMのPBSの代わりに支持電解液として10mMのクエン酸ナトリウムを使用したとき、劇的に減少した。これは、Pt粒子は、クエン酸塩溶液中で比較的安定であるためである。粒子は液相中に有利に残存し、固着確率が低くなる。一方、PBS溶液中では、粒子は安定ではなく、凝集及び沈殿する傾向があり、これは、粒子が衝突後に表面に固着するのをより容易にする。これはまた、本発明者らが、電流ステップの出現を時間とともに次第に少なく観察した理由を説明するものである。検出電極の表面修飾は、粒子の固着確率に影響する場合があるが、これまでのところ大きな差は見られておらず、大部分は同じ桁内である。本発明者らは、検出電極の電位を次第により正に設定したとき、電流ステップのわずかな増大を観察し、Au表面を、負に帯電した3−メルカプトプロピオン酸で修飾したとき、わずかな減少を観察した。
【0079】
TEMグリットからカウントされた粒子数は、式4を通じて計算した数よりはるかに小さいことは述べるに値する。25pMのPtコロイド溶液中に一晩浸漬したTEM試料グリッドについて、1×10−7cm2/sの拡散係数を使用して式2によって推定される、1μm2当たり1000個を超える粒子を有することが予期される。代わりに、様々な表面領域は、1μm2当たり20個未満の粒子を有する。
【0080】
図17Aは、50mM及び100mMのクエン酸二水素ナトリウム電解液(緑色及び青色)、並びに10mMの過塩素酸電解液(赤色)中のPt並びにC UMEにおけるサイクリックボルタモグラムである。100mV/s。図17Bは、C(赤色)及びPt(青色)ナノ粒子溶液の注入の前(黒色)及び後に記録した電流トランジェントのグラフである。図17C及び17Dは、個々の電流特性の拡大図である。試料は、50mMのクエン酸二水素ナトリウムを含み、−0.5Vの電極電位、約3.6nmのPtナノ粒子サイズ、約25nmのCナノ粒子サイズを有し、直径10μmの検出C UME電極を使用する。
【0081】
図17Aに見られるように、強酸及び弱酸電解液中のPt及びC UMEでのサイクリックボルタモグラムで実証したように、炭素電極におけるプロトン還元は、不活発に起こり、高い過電圧を必要とするが、この反応は、Ptにおいては急速である。定常状態の拡散限界電流は、HClO4及びクエン酸二水素ナトリウム(NaH2Cit)の両方において観察された。50mMのNaH2Citがプロトン供給源として使用されるが、これは、Pt NPは、この環境中で比較的安定であるが、これらは5mMのHClO4中で凝集する傾向があるためである。定常状態の限界電流は、10μmのPt UMEにおいて約70nAである。100mMのNaH2Cit又は純粋なHClO4にPtコロイド溶液を注入すると凝集する。図17Bは、炭素繊維の微小電極において記録した、3つの電流−時間曲線を示す。バックグラウンドにおいて、又はC NPの溶液(Pt NPの代わりに)を試験電解液中に注入したときにおいて、明白な電流スパイクは全く観察されなかった。Pt NPを注入したとき、全体的な電流は増加し、電流スパイクと重なった。これらの電流スパイクは、ヒドラジン酸化の場合に観察されたものと類似している。しかし、電流は、ヒドラジン酸化で観察されたように、より長い時間一定の定常状態レベルを維持しなかった。電流が最大値に維持されたのは1秒未満であり、次いでほとんどバックグラウンドレベルまで徐々に減衰した(例えば、図17C及び17Dを参照されたい)。ほとんど全ての電流特性は、そのような電流の減衰を示したことに注意されたい。ピーク電流は、30〜80pAの範囲であり、これは、約4nmの範囲の粒径に相関する。
【0082】
図18A、18B及び18Cは、Pt UMEにおける電流トランジェント及びサイクリックボルタモグラムのイメージであり、図18Aでは、3mMのFc−メタノール+0.1Mの過塩素酸ナトリウム、図18Bでは、12mMのヒドラジン+50mMのPBS緩衝液、及び図18Cでは、2mM過塩素酸+20mM過塩素酸ナトリウムである。黒色の矢印は、パルス電位を示す。直径10μmのPt、図18Cは、直径25μmのPt(黒色)、及び直径8μmの、炭素繊維において堆積したPt(青色)を有する。
【0083】
衝突後の電流の減衰は、ヒドラジン酸化よりもプロトン還元でより顕著である。プロトン還元及びヒドラジン酸化についてのPt UMEにおける電流トランジェントを、フェロセン−メタノール酸化と比較した。Fc−メタノール酸化についての電流トランジェントは、20ms以内に定常状態電流に到達した後、無視できる電流減衰を示す(図18Aに見られるように)。ヒドラジン酸化は、フェロセン−メタノールの挙動と類似した挙動を示すが(図18Bに見られるように)、プロトン還元は、特にPt NPで修飾した炭素電極において、少し長い過渡現象時間を示す(図18Cに見られるように)。0.5〜10sで、電流は、フェロセン−メタノールについて約6%、ヒドラジンについて3%、及びプロトンについて32%(図18C、青色に見られるように)減衰した。10〜20秒で、電流の減衰は、フェロセン酸化及びヒドラジン酸化の両方について約1%、並びにプロトン還元について5%であった。長い分極時間での小さな差は、電流の減衰が主に、漸進的な表面汚染のためであることを示す。漸進的な表面汚染はまた、連続的な電位パルスにおいて電流を減少させ得る。ヒドラジン酸化の場合では、本発明者らは、電流の減衰は、Au UMEよりPt UMEにおいてより厳しいことを見出した。MNPにおける表面汚染は、その高い相対的な表面積のために、マクロ電極より悪い場合がある。これは、水素原子のPt上への吸着に依存する水素発生反応にとって特に重要になるであろう。電流の減衰を引き起こすことができる別の様式は、Pt MNPの格子中への水素原子の吸収である。
【0084】
リン酸の濃度を200mMに増大させたとき、Pt UMEにおける類似の電流減少が見られ、電流の減衰は、MNPの安定性に有利である、低濃度の支持電解液によるものではなかったことを示す。しかし、電流の減衰は、Au UMEにおいてかなり減速し、これは、電流の減衰が、Pt表面の触媒的な性質にほとんど相関することを示す。
【0085】
図19A、19B及び19Cは、異なる粒径の個々のPtナノ粒子について記録した電流トランジェントのグラフである。対応するPtナノ粒子のTEM像は、それぞれ下に示されている。Pt原子に基づく濃度は、図19Aにおいて約50nM、図19Bにおいて500nM、及び図19Cにおいて250nMである。約7.5のpHで、12mMのヒドラジン及び50mMのPBS緩衝液中で、10μmのAu UMEを用いた。
【0086】
図19は、異なる粒径を有するいくつかのPtコロイド溶液について記録した、いくつかの代表的な電流トランジェントを示す。Pt NPは、類似のキャッピング分子、シトレート又はオキサレートによって安定化されるので、これらは、類似の触媒的な性質を有する。これらのNP溶液を、ヒドラジン試験電解液中に注入する場合、記録される電流トランジェントは、非常に異なる電流振幅の、不連続な電流ステップを示す。約3.6nmであるPt NPについて、電流ステップは、ほとんど均一な振幅を有し、これは、45pA付近に主に分布していた(図19Aに見られるように)。星状のPt NPの場合では(図19Bに見られるように)、ピーク電流は、約20nmの粒径に対応する、240pA付近に主に分布していた。電流ピークのうちのわずかな部分は、おそらく、小さい粒子及び2〜3単位の凝集体の存在による、約120pA未満又は約300pA超のピーク電流を有する。図19Cは、多分散系のPt NPについて記録した電流トランジェントを示す。ピーク電流は、5〜16nmの範囲の粒径に対応する、60〜200pAの広い範囲にわたって分布していた。研究したケースについてのピーク電流の振幅は、粒径分布とよく相関するように思われる。
【0087】
MNP衝突の別の可能な用途は、絶縁膜の多孔性の評価である。アルカンチオールの表面自己組織化単分子層膜を有するAu UMEを使用して、むき出しの電極における衝突数と比較した衝突数、及びMNPサイズの効果を示すことができる。SAMの頂部での粒子衝突を、SAM内の孔を通じた粒子衝突と区別するために、Au検出器の電極を、単層を通じた電子移動を阻害するのに十分長いC16SH単層で修飾した。Au上のC16SH SAMの多孔性は、アセンブル時間を30分から一晩に変更することによって変化させた。本発明者らは、Au表面上に残存する水層は、疎水性分子の吸着を減速するので、Au基板の乾燥の程度は、膜の品質に重要な役割を果たすことも見出した。
【0088】
図20Aは、サイクリックボルタモグラムのイメージであり、図20Bは、電流トランジェントのグラフであり、無垢(黒色)及びC16SH又はHSC15COOHでアセンブルしたAu UMEにおいて記録し、PtにおけるCVを比較のためにプロットし、走査速度は100mV/sである。さらに、図20B中のトレースは、明確にするためにわずかにずらした。挿入図は、代表的な電流特性、及び非常に速い電流変動を示す。36pMの粒子濃度、及び約3.6nmのPt粒子、及び50mMのPBS緩衝液中の15mMのヒドラジンを含み、約7.5のpHの溶液を用いて示した、クロノアンペロメトリーにおける基板電位。
【0089】
SAMの品質は、ヒドラジン酸化の抑制から直接推定することができた(図20Aに見られるように)。多孔性のより小さい膜は、ヒドラジン酸化のより大きい抑制、したがってより小さい電流をもたらす。図20Aは、酸化電位は正にシフトしただけでなく、0.5Vの負の電位での無垢のAu電極と比較した場合、酸化電流も減少したことを示す。これらの修飾電極でのヒドラジン酸化の抑制の程度から、サイクリックボルタモグラムは、HSC15COOH膜は、C16SH膜より多孔性であることを示す。
【0090】
しかし、ヒドラジンは小分子であるので、これは、おそらくすべての種類の孔を貫通することができ、したがって、ヒドラジン酸化の阻害は、孔のサイズ分布を示さない。孔のサイズ分布は、サイズの定められたMNPを使用して求められる可能性がある。例として、本発明者らは、約3.6nmのPt NP溶液を同じ試験電解液中に注入し、これらの修飾電極における電流トランジェントを記録した。衝突頻度又は衝突数は、明らかに減少した。C16SH膜及びHSC15COOH膜の両方について、多孔性のより小さい膜は、より少ない衝突を示した。これは、サイクリックボルタモグラムで示したヒドラジン酸化の抑制と一致している。表面をHSC15COOH及びC16SHで一晩アセンブルした場合、明白な衝突はまったく観察されないか、非常にわずかな衝突しか観察されなかった。
【0091】
これらの修飾電極において、ほとんどの電流トランジェントは、非常に長い過渡現象時間を示し、これは、Pt NPは、周囲のアルカンチオールによって不活性化されることを示している可能性がある。2つの一般的な過渡現象を挿入曲線で示す(図20B中に示され、黒色の矢印によって示されている)。アルカンのマトリックスは、Au表面からPt表面に再配置し、したがって、電気化学的なヒドラジン酸化を妨げることができる。第2に、電流は多くの場合、ほぼ同じ電流振幅で、前後に急速に変動し(図20B中に示され、赤色の矢印によって示されている)、同じ粒子が、Au表面に付着し、Au表面から脱離することができることを示した。そのような変動は、周囲のマトリックスのために、粒子が電極表面とより弱く相互作用することを示す。
【0092】
C16SH膜のHSC15COOH膜との比較により、衝突がより少ないこと示されたが、より高いヒドラジン酸化のピーク電流が、HSC15COOH膜で覆われた電極において観察された。これは、膜内の微視的な孔は、容易な触媒的なヒドラジン酸化を依然として可能にするが、MNPを通過させることはできないことを示す。孔のサイズに加えて、露出した末端カルボン酸基も、孔を介したMNPの貫通を妨げる役割を果たすことができる。これらの効果を確認し、どれが重要な役割を果たすかを理解するために、異なる粒径を用いたより多くの実験を実施する必要がある。
【0093】
電極触媒増幅は、1個のMNPの衝突の観察を可能にし、これは、Pt NPが検出器の電極において衝突し、固着するとき生成される、個々の電流ステップによって特徴づけられる。電流は、MNPがその表面において、検出器の電極が、無視できるほど小さい電気化学的な活性を示す電位で、電極触媒反応を開始するとき生じる。それぞれの衝突の間の、観察された電流特性は、UMEにおいて記録された電流トランジェントに類似しており、NPの半径の関数である。電極触媒反応の速度(kinetics)は、観察された電流減衰において重要な役割を果たし、これは、ナノメートルスケールでの電極との粒子の相互作用及び電極触媒作用のカイネティクスに関係するより微視的な詳細の調査を必要とする。
【0094】
質量輸送で制御された条件で、それぞれの電流ステップの振幅は、粒径に相関するので、電流振幅対ピーク出現の頻度のプロットは、TEMで見出されるような粒径分布とよく相関し、したがって、NP分散系の迅速なスクリーニングに対する電気化学的手法を提供する。衝突頻度は、検出器の電極の有効表面積にも相関するので、この技法は、電極表面上の絶縁膜の多孔性を評価することにおいて有用となり得る。
【0095】
本発明は、微小電極及び超微小電極の使用を企図し、半導体製造方法及びシルクスクリーニングを含めた当技術分野で既知の方法によって作製することができる。電極は、様々なサイズ並びに形状(例えば、ディスク、円形、正方形、長方形、及び楕円形)、並びに結果として様々な面積(例えば、電極は、約5μm2〜約3mm2の面積を有することができる)を有することができる。電極表面は、粗くても滑らかであってもよい。いくつかの実施形態では、電極表面は、滑らかであることによって、ナノ粒子の非存在下でのレドックス反応物に対する電極触媒速度を低減することができる。
【0096】
類似の又は異なる対/補助/参照電極を使用することによって、電気回路を完成することができる。いくつかの実施形態では、直径1cmのグラファイト棒を対電極として使用することができ、参照電極は、飽和した白金−水素又はポリピロールステンレス鋼とすることができる。他の一般的な参照電極には、Ag/AgClが含まれる。これらの標準的な電気化学的技法に対する詳細については、Bard, A. J.; Faulkner, L. R. Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, 2nd ed.; John Wiley & Sons: New York, 2001を参照されたい。対電極、任意選択の参照電極、及び電極は、電気化学セル内に一緒に配置することができる。このセルは、レドックス反応物を含む溶液も保持することができる。
【0097】
本明細書で使用する場合、用語「レドックス反応物」は、還元又は酸化反応を起こすことができる、ナノ粒子及び電極と異なる、電気化学セル内の物質を指す。さらに、電極と接触するナノ粒子は、溶液中のレドックス反応物に対する電極触媒となることができる。レドックス反応物は、電荷担体、例えば、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Cl−、PO32−、NH4+などを含む溶液中に見出すことができる。溶液は、pH緩衝液を含むことができる。溶液は、他の化合物、例えば、界面活性剤、糖、脂肪、タンパク質などを含むことができる。本明細書で使用する場合、用語「電極触媒」は、レドックス反応物の電気化学的な酸化又は還元の速度を増幅することができる物質を指す。少なくとも1つの実施形態では、ナノ粒子と電極の間の接触により、ナノ粒子と電極の間の電荷移動が可能になり、ナノ粒子が、レドックス反応物に対する電極触媒になることが可能になる。特定の実施形態について、レドックス反応物は、ナノ粒子及び電極を考慮して選択することができ、その結果ナノ粒子は、レドックス反応物に対する電極触媒として作用するが、電極は、レドックス反応物に対して皆無かそれに近い電極触媒能を有する。例示的なレドックス反応物には、白金含有ナノ粒子、及び炭素含有電極を伴った、メタノール、過酸化水素、及びプロトンが含まれる。他の例示的なレドックス反応物には、白金含有ナノ粒子、及び金含有電極を伴った、過酸化水素、プロトン、ヒドラジン、及び酸素が含まれる。他の例示的なレドックス反応物には、炭素含有ナノ粒子、及びニッケル含有電極を伴った、トリプロピルアミンが含まれる。
【0098】
検出器又は検出器のアレイを使用することによって、レドックス反応物に対するナノ粒子の電極触媒能からのシグナル増幅を介して、電極とのナノ粒子の衝突を検出することができ、例えば、検出器は衝突数をカウントすることができ、検出器は、電流変化をモニターすることによって、ナノ粒子の衝突を測定することができ、又は検出器は、衝突を1又は複数のタイプに分類することができる(例えば、電流増加の規模を使用することによって、ナノ粒子を分類することができる)。様々な実施形態では、検出器は、電位変化をモニターすることによってナノ粒子の衝突を測定することができる。例えば、電極は、一定の電流を用いて駆動することができる。ナノ粒子の非存在下で、電流を通すのに必要な電極の電圧は、大きくなり得る。ナノ粒子が衝突すると、必要とされる電圧は、実質的に降下することができ、したがって、速く、大きな電圧降下は、ナノ粒子の衝突として解釈することができる。電圧降下の規模は、例えば、ナノ粒子のサイズによってナノ粒子を分類するのに使用することができる。時間応答も、例えば、異なる滞留時間にナノ粒子を分類するのに使用することができる。
【0099】
本発明は、測定装置に接続された電気化学セルを有する、化学分析物を分析するための方法、組成物、及びキットを含む。電気化学セルは、1又は複数の金属ナノ粒子を有する溶液、1又は複数の化学分析物、インジケータを含む。さらに、電気化学セルは、溶液とコミュニケーションした1又は複数の電極を含む。1又は複数の電極触媒特性は、1又は複数の金属ナノ粒子と液体試料の相互作用によって生成され、1又は複数の電極において測定される。
【0100】
本発明は、電気化学セル内の溶液中の1又は複数のナノ粒子を含む。ナノ粒子は、完全に、又は部分的に金属物質又は炭素質物質又は半導体物質とすることができる。例えば、1又は複数の金属ナノ粒子は、白金ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、ルテニウムナノ粒子、パラジウムナノ粒子又はその混合物及び組合せとすることができる。ナノ粒子は、ナノ粒子の外側の物質と異なる物質のコアも有することができる。ナノ粒子は、約0.5nm〜約100nmのサイズの直径のものとすることができるが、一実施形態についての一般的なサイズの範囲は、直径が約1nm〜7nmであり、平均の直径が4nmである。さらに、ナノ粒子の直径のサイズ分布は、一般に均一であっても、分散性であっても、又は変動していてもよい。ナノ粒子は、群内で一般に同じ直径であるが、溶液中の他の群と比べて異なる直径を有する、異なる群の粒子を有することができる。
【0101】
電気化学的反応は、電極の電位を制御することによって推進することができる。電極の電位は、酸化又は還元が電極で起きることができるように選択することができる。電位は、ナノ粒子の非存在下でのレドックス反応物及び他の電気化学的反応から生じる電流を最小限にするように設定することができる。電位は、対電極に対して、又は参照電極に対して設定することができる。これらの標準的な電気化学的技法に対する詳細については、Bard, A. J.; Faulkner, L. R. Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, 2nd ed.; John Wiley & Sons: New York, 2001を参照されたい。例えば、電位は、標準水素電極(SHE)に対して、ゼロから1V以内とすることができる。例えば、電位は、対電極に対してゼロから1V以内とすることができる。より小さい電圧規模(例えば、0.5V、0.3V、0.25V、又は0.1V)も有用となり得る。電位は、時間とともに変化し、又は一定であることができる。ある特定の実施形態では、一定の電位を使用することによって、電極の二重層荷電による容量性の過渡現象を排除することができる。いくつかの実施形態では、電流は、電極を通して流すことができ、電位をモニターすることができる。ナノ粒子が接触すると、インピーダンス及び電圧が大いに低減する。ナノ粒子の存在をモニターするのに必要な電気化学的反応を進めるための他のスキームは、当業者に明白となるであろう。
【0102】
電極上にナノ粒子が接触すると、レドックス反応物についての反応速度は、大いに増大する。例えば、ナノ粒子の表面積に対して正規化したナノ粒子に起因するレドックス反応物の反応速度は、電極の表面積に対して正規化した電極に起因するレドックス反応物の反応速度より、少なくとも200倍大きくなることができる。電流を測定する場合、上述したことは、(iNP−ie)/ANP>200ie/Aeとして数学的に表すことができ、式中、iNPは、ナノ粒子の存在下で測定される電流であり、ieは、ナノ粒子の非存在下で測定される電流であり、ANP及びAeは、それぞれ、ナノ粒子及び電極の表面積である。
【0103】
いくつかの実施形態では、増大の係数は、103、104、105、106、107、108、又は109超である。約100pAのナノ粒子に起因する電流、約70pAの電極に起因する電流、並びに、それぞれ電極及びナノ粒子についての、50μm2及び5×10−5μm2の面積を用いて計算した場合、係数は約106であった。一定の電位で生成される電流は、大きくなることができるが、これは、レドックス反応物が高濃度であることができ、速い拡散体となることができるためである。例として、レドックス反応物を含む溶液中のナノ粒子の分散系中に浸漬したディスク電極を考えられたい。電極表面に対する、ナノ粒子(NP)の定常状態の拡散制御フラックス、JNP,eは、
【0104】
【数5】
【0105】
によって与えられ、式中、DNPは、ナノ粒子の拡散係数であり、CNPは、ナノ粒子の濃度であり、aは、電極の半径である(Bard, A. J.; Faulkner, L. R. Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, 2nd ed.; John Wiley & Sons: New York, 2001)。通常、単純なナノ粒子の帯電過程では、わずか1個又は数個の電子がナノ粒子と電極(nNP)の間を移動し、電流、iNP,e=nNPFπa2JNP,e=4nNPFaDNPCNPを生じ、これは、はるかに小さくすぎてノイズ及びバックグラウンドレベルの上で観察することができない(Fはファラデーである)。しかし、ナノ粒子は、電極と接触すると、レドックス反応物(RR)を電極触媒し、例えば、化学種RRを還元又は酸化して生成物Pにすることができ、その結果、はるかに大きい電流、iRRが流れることができる。即ち、ナノ粒子が電極表面と衝突すると、これは、RRのPへの反応を、ナノ粒子がない電極では、いかなる大きな程度にもこの反応が起こらない電位で可能にする。
【0106】
いくつかの実施形態では、電極と接触しているナノ粒子を検出することができる。ナノ粒子における定常状態の拡散制御電流は、
【0107】
【数6】
【0108】
で与えられ、式中、JRR,NPは、レドックス反応物RRのナノ粒子へのフラックスであり、DRRは、RRの拡散係数であり、CRRはRRの濃度であり、rNPはナノ粒子の半径であり、nRRは、RRが生成物Pに変換されるための、レドックス反応当たりに必要な電子数である。係数の、ANP、即ちナノ粒子の表面積、及びBは、ナノ粒子の形状、及び、この粒子が電極上にどのように位置しているかに依存する。無限の面上の球を考えることができる場合、ANP=4πrNP2及びB=4πln2≒8.71(Bobbert, P. A.; Wind, M. M.; Vlieger, J. Physica 1987 141A, 58-72)。CRR及びDRRは、CNP及びDNPよりはるかに大きくなることができるので、aとrNPの差であっても、1個のナノ粒子においてレドックス反応物の電極触媒作用から生じる電流は、電極において同じナノ粒子を容量性に荷電することから生じる電流よりも10桁以上大きくなることができる。
【0109】
様々な実施形態では、電極電流の時間応答を測定することができる。電流トランジェントは、粒子帯電、及び時間約rNP2/DRRで定常状態に達する、レドックス反応物の電極触媒作用のための、変化中のファラデー電流を含む。異なるタイプの衝突が起こり得るので、それぞれの衝突事象についての電流−時間(i−t)過渡現象は、ナノ粒子の電極における滞留時間、即ち、電極がナノ粒子に電子を送ることができる時間によって求められることになる。ナノ粒子が、定常状態電流を達成するのに十分な時間電極に固着し、レドックス反応物は、粒子においてのみ生成物に変換される場合、充電電流に対する電気化学的電流の増幅定数は、粒子及びRRの相対的な定常状態のフラックスによって与えられ、これは、約(B/16)(DRRCRRa)/(DNPCNPrNP)である。これにより、nRR=nNPを仮定して、約(BDRRCRRrNP)/(4DNPCNPa)の相対的な定常状態電流が導かれる。1pMのナノ粒子及び10mMのレドックス反応物の分散系について、レドックス反応物の拡散定数が、ナノ粒子の拡散定数より約1桁大きいと仮定すると、半径1nmの粒子についての推定増幅定数は、9〜10桁となり得る。言い換えると、レドックス反応物の生成物への電気化学的変換によって生じる電流は、ナノ粒子の容量性の充電電流より9〜10桁大きくなることができる。
【0110】
さらに、本発明は、ナノ粒子の濃縮溶液を使用する、試料の分析を提供する。当業者は、特定のパラメータに応じて、広範囲のナノ粒子濃度(例えば、1個のナノ粒子溶液からモル溶液まで)を本発明によって使用することができることを認識するであろう。さらに、異なるサイズ、異なる粒子組成、及び異なる粒子を有する粒子の混合物を、本発明とともに使用することができる。事象は、溶液中に存在するインジケータの粒子触媒反応を通じて生成される電流によって特徴づけられる。インジケータは、高濃度及び高拡散係数を有するように選択することができるので、大きな増幅が起こる。
【0111】
1又は複数の電極触媒特性は、装置によって測定することができる任意の性質とすることができるが、最も一般的な性質は、金属ナノ粒子によって触媒される還元又は酸化反応からの電極触媒増幅である。しかし、他の性質は、電流、抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス若しくはこれらの組合せ、又は電極における電子移動反応を示す別の技法とすることができる。
【0112】
ナノ粒子を安定化させるための例示的なコーティング又はキャッピング化合物として、アルカンチオール、メルカプトアルコール、メルカプトカルボン酸、チオフェノール、チオール官能化オリゴヌクレオチド、ベンゼンジメタンチオール、オキサレート、及びシトレートが挙げられる。そのような安定性改善化合物は、十分に小さく、その結果、電子トンネリングは依然として起きることによって、電極からナノ粒子への電荷移動を可能にすることができる。
【0113】
本明細書で論じた任意の実施形態は、本発明の任意の方法、キット、試薬、又は組成物に対して実施することができ、逆の場合も同様であることが企図されている。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を実現するために使用することができる。
【0114】
本明細書に記載した特定の実施形態は、例として示されており、本発明の制限として示されていないことが理解されよう。本発明の主な特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく様々な実施形態において使用することができる。当業者は、日常程度の実験を使用して、本明細書に記載した特定の手順に対する多数の均等物を認識することなり、又は確認することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲内であるとみなされ、特許請求の範囲によって包含されている。
【0115】
本明細書で述べたすべての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者のスキルのレベルを示す。すべての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が、具体的に且つ個々に参照により組み込まれていると示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0116】
特許請求の範囲及び/又は本明細書において、用語「含む」とともに使用されるとき、単数の使用は、「1つ」を意味することができるが、「1又は複数の」、「少なくとも1つの」及び「1又は1を超える」の意味とも一致する。特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、代替物のみを指すか、代替物が相互に排他的であることが明確に示されていない限り、「及び/又は」を意味するのに使用されるが、本開示は、代替物のみ並びに「及び/又は」を指す定義を支持する。本願全体にわたって、用語「約」は、値は、その値を求めるために使用されるデバイス、方法に対する誤差の固有の変動、又は研究対象の中に存在する変動を含むことを示すのに使用される。
【0117】
本明細書及び請求項(複数も)で使用する場合、単語「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」などの含む(including)の任意の形態)、又は「含む(containing)」(並びに「含む(contains)」及び「含む(contain)」などの含む(containing)の任意の形態)は、包括的又は無制限であり、追加の、列挙していない要素又は方法ステップを除外しない。
【0118】
本明細書で使用する場合、用語「又はこれらの組合せ」は、本明細書で使用する場合、この用語に先行して列挙される項目のすべての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はこれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、及び特定の状況において順序が重要である場合、また、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことが意図されている。この例に続いて、1又は複数の項目又は用語の繰り返し、例えば、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどを含む組合せは特に含まれる。当業者は、状況から明らかでない限り、任意の組合せにおける項目又は用語の数に制限は一般にないことを理解するであろう。
【0119】
本明細書で開示及び主張した組成物及び/又は方法のすべては、本開示を考慮すると、過度の実験を伴うことなく、作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法を、好適な実施形態に関して説明してきたが、組成物及び/又は方法に対して、並びに本明細書に記載した方法のステップ又はステップの順序において、本発明の概念、精神並びに範囲から逸脱することなく、変形を適用することができることは当業者に明らかとなるであろう。当業者に明らかなすべてのそのような類似の代替及び改変は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の精神、範囲及び概念の中にあるとみなされる。
【0120】
(参考文献)
1. Polsky, R; Gill, R; Kaganovsky, L; Willner, I, Analytical Chemistry, 2006, 78, 2268-2271
2. Bard, A. J.; Faulkner, L. R. Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, 2nd ed.; John Wiley & Sons: New York, 2001
3. Bobbert, P. A.; Wind, M. M.; Vlieger, J. Physica 1987 141A, 58-72
4. Zhou, J. F.; Zu, Y. B.; Bard, A. J. J. Electroanal. Chem. 2000, 491, 22-29
5. Yang, J.; Lee, J. Y.; Too, H. P. Anal. Chim. Acta 2006, 571, 206-210
6. Xiao, X. Y.; Xu, B. Q.; Tao N. J. Nano Lett. 2004, 4, 267-271
7. Sonnichsen, C.; Reinhard, B. M.; Liphardt, J.; et al. Nature Biotech. 2005, 23, 741-745
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ナノ粒子の分野に関し、特に、本発明は、金属ナノ粒子を使用する触媒反応からのシグナルを増幅するための機器、方法及び試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲を限定することなく、その背景をナノ粒子に関連して説明する。ナノ粒子の物理的性質(例えば、高い表面対体積比、表面エネルギーの上昇、圧力荷重後の延性の増大、より高い硬度、より大きな比熱など)により、材料指向産業及び材料科学において用途が増大した。例えば、様々な金属ナノ粒子が、多数の反応を触媒するのに使用されている。
【0003】
ナノ粒子のサイズは0.5〜100nmの範囲であり、電子エネルギーバンド構成はサイズ依存性であり、これはさらには、物理的及び化学的性質に影響する。ナノ粒子とそのバルク材料の間の基本的な区別は、表面原子の割合及び表面の曲率半径が、格子定数と同等であることである。結果として、ナノ構造触媒は、バルク材料に基づくその類似体と比較した場合、高い触媒活性を有する。ナノ粒子を形成する方法は、当業者に知られており、原子(又はより複雑なラジカル及び分子)の混合、並びにバルク材料の分散、例えば、熱蒸発、イオンスパッタリング、溶液の還元、マイクロエマルジョンの還元、及び凝縮による形成を含む。
【0004】
例えば、「Colloidal particles used in sensing arrays」という表題の米国特許第6,537,498号明細書には、流体中で分析物を検出するための、導電性ナノ粒子材料の複数の交互になった非導電性領域及び導電性領域を有する化学センサーが開示されている。センサーごとの化学的な感受性の可変性は、導電性及び/又は非導電性領域の組成を定性的又は定量的に変更することによって提供される。
【0005】
別の例には、名称が「Methods to increase nucleotide signals by Raman scattering」である米国特許第6,972,173号明細書が含まれ、銀又は金ナノ粒子に共有結合的に連結したヌクレオチドを使用する、増強ラマン分光法による核酸配列決定に関する方法及び装置が教示されている。分析目的のためのナノ粒子における電極触媒作用は、当技術分野で記載されているが、そのような記述では、電極表面上で単層又はほぼ単層の膜として、少なくとも数十万の多数のナノ粒子が関与する(Polsky, R; Gill, R; Kaganovsky, L; Willner, I, Analytical Chemistry, 2006, 78, 2268-2271)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,537,498号明細書
【特許文献2】米国特許第6,972,173号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Polsky, R; Gill, R; Kaganovsky, L; Willner, I, Analytical Chemistry, 2006, 78, 2268-2271
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、特に、nmスケールで、及びこれらの電極反応に関連する、非常に小さな電流又は電荷を測定することにおいて、1個のナノ粒子を電気化学的に生成し、位置づけ、特徴づけることが困難であることを認識した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電極における1個のナノ粒子(NP)の衝突を電気化学的に観察するための方法及び装置を提供する。本発明は、1個のナノ粒子における電極触媒作用、並びに高感度電気分析法の基盤を提供する。金属、炭素、及び半導体ナノ粒子は、電子工学、光学及び触媒学において広範囲の用途を有する。
【0010】
本発明は、試料チャンバー内で試料を分析する方法及びデバイスに関する。本発明の方法は、試料チャンバーで液体試料に1又は複数のナノ粒子を添加するステップと、1又は複数の電極を使用して、ナノ粒子と液体試料の相互作用によって生成される、1又は複数の電極触媒特性を観察するステップとを含む。一般に、電極触媒特性は、金属ナノ粒子によって触媒される反応の増幅であるが、電極触媒特性は、それだけに限らないが、電流、抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス若しくはこれらの任意の組合せ、又は電極で電子移動事象を認識する任意の他の手段も含むことができる。
【0011】
さらに、本発明は、生体分子を検出及び分析するためのナノ粒子の使用を含む。例えば、目的の分子(例えば、抗体、ポリヌクレオチド、単鎖DNA又はRNA)は、電極表面と相互作用するか又はかかる表面に接着するナノ粒子で連結又は標識することによって、ナノ粒子を電極の近傍に運ぶことができ、ここでその電極触媒特性を用いて検出及び分析を行う。
【0012】
本発明のデバイスは、測定装置に接続された電気化学セルを含む。電気化学セルは一般に、1又は複数の電極、試料チャンバー内に置かれた1又は複数のナノ粒子、及び電極とコミュニケーションした検出器を有する。置かれたナノ粒子は、試料と相互作用し、検出器によって捕らえることができる1又は複数の電極触媒特性を生成する。必要に応じてデバイスは、溶液中にインジケータ(indicator)を含んでいてもよい。さらに、前記電気化学セルは、超微小電極を有するナノメートルレベルの大きさであってよい。
【0013】
本発明は、少なくとも1つのナノ粒子、少なくとも1つの化学指示薬、少なくとも1つの電極、並びにナノ粒子(複数も)、電極(複数も)及び化学分析物(複数も)の間の相互作用によって生成される1又は複数の電極触媒特性を読み取る測定装置を有する、1又は複数の化学分析物(複数も)を分析するためのキットを含む。
【0014】
本発明の特徴及び利点をより完全に理解するために、添付の図面とともに発明の詳細な説明をこれから参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】白金ナノ粒子の衝突事象の概略図である。
【図2】Ptナノ粒子を伴った、及び伴わない炭素繊維電極における、プロトンの電気化学的還元のグラフである。
【図3A】炭素繊維電極における、白金コロイド溶液を注入する前後の電流遷移のグラフである。
【図3B】1個の粒子の固着を示すグラフである。
【図3C】粒子凝集体の固着を示すグラフである。
【図4】図4A及び図4Bは、白金粒子を注入する前後の、溶液中の炭素電極における電流トランジェント(current transient)のグラフである。図4Cは、衝突数対そのピーク電流の統計のプロットである。
【図5】異なる印加電位での炭素電極における電流トランジェントを例示するグラフである。
【図6】衝突の頻度を粒子濃度と関連づけるための、個々の粒子濃度での炭素繊維電極における電流トランジェントのグラフである。
【図7】様々なサイズの粒子から生じる電流振幅のグラフである。
【図8】様々なサイズの粒子から生じる電流振幅のグラフである。
【図9A】クエン酸白金ナノ粒子の存在下での、超微小電極における電流トランジェントのグラフである。
【図9B】クエン酸白金ナノ粒子の存在下での、超微小電極における電流トランジェントのグラフである。
【図9C】炭素超微小電極曲線22及び白金超微小電極のサイクリックボルタモグラムである。
【図10A】B及びCタイプの衝突を例示するための、大きな白金ナノ粒子の存在下での電流トランジェントのグラフである。
【図10B】配合物中のより小さい白金粒子によって生じるプロトン還元において観察されるCタイプの衝突において示された変動を例示するグラフである。
【図11】白金ナノ粒子の衝突事象の別の実施形態の概略図である。
【図12】代表的な電流−時間曲線を示すグラフである。
【図13】1msの時間分解能で記録した、2つの一般的な電流トランジェントを示すグラフである。
【図14A】電流対時間特性のグラフである。
【図14B】統計的なピーク電流対ピーク頻度のプロットである。
【図14C】試料のTEM像である。
【図14D】対応するPtナノ粒子のサイズ分布のプロットである。
【図15A】ヒドラジン濃度でのピーク電流分布シフトのプロットである。
【図15B】ヒドラジン濃度でのピーク電流分布シフトのプロットである。
【図15C】ヒドラジン濃度でのピーク電流分布シフトのプロットである。
【図15D】主要ピーク電流対ヒドラジン濃度のプロットである。
【図16A】個々のPt粒子濃度で記録した電流トランジェントのプロットである。
【図16B】対応する一次微分係数のプロットである。
【図17A】50及び100mMのクエン酸二水素ナトリウム電解液並びに10mMの過塩素酸電解液中の、Pt UME及びC UMEにおけるサイクリックボルタモグラムである。
【図17B】C及びPtナノ粒子溶液を注入する前後に記録した電流トランジェントのグラフである。
【図17C】個々の電流特性の拡大図である。
【図17D】個々の電流特性の拡大図である。
【図18】様々な溶液中の電流トランジェント及びサイクリックボルタモグラムのイメージである。
【図19】異なる粒径の個々のPtナノ粒子について記録した電流トランジェントのグラフである。
【図20A】サイクリックボルタモグラムのイメージである。
【図20B】電流トランジェントのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用を以下に詳細に論じるが、本発明は、多種多様な特定の状況において具体化することができる、多くの適用可能な発明概念を提供することが理解されるべきである。本明細書で論じる特定の実施形態は、本発明を作製及び使用するための特定の方法の単に例示的なものであり、本発明の範囲を定めない。
【0017】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書で定義される用語は、本発明に関連した分野における当業者によって一般に理解される意味を有する。単数で示した用語は、単数形の実体のみを指すことが意図されているのではなく、そのクラス全体を含むことができ、かかるクラス中の特定の例を説明のために用いた。本明細書の専門用語は、本発明の特定の実施形態を説明するのに使用されるが、その使用は、特許請求の範囲で略述されている場合を除いて、本発明の範囲を定めない。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「連結された」又は「連結している」は、2つの部分間の会合を指す。会合は、共有結合とすることができる。会合は、それだけに限らないが、イオン相互作用、水素結合、及びファンデルワールス力を含めた非共有結合とすることができる。例示的な非共有結合には、相補性のオリゴヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーション、ビオチン/ストレプトアビジン相互作用、並びに抗体/抗原相互作用が含まれる。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「ナノ粒子」は、本明細書で使用する場合、別段の指定のない限り、個々のナノ粒子を指す。本明細書で開示する場合、ナノ粒子は、約0.5nm〜約100nmの範囲である、ナノスケールの大きさを有する物質である。本開示によれば、ナノ粒子は、金属並びに非金属を含むことができ、コーティングされていても、キャップされていてもよい。本発明による、用語「ナノ粒子」は、生物学的化合物を包含しない。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「電極」は、電気化学セルの電気的に伝導性の測定部分を指す。本明細書で開示する場合、電極は、レドックス反応物にとって低電極触媒特性であり、接触しているナノ粒子への電荷移動を可能にするのに十分な導電性を有する。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「接触」は、互いにトンネリング距離内にある2つの物体を指す。この距離内で、電荷移動が起こり得る。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「レドックス反応物」は、本明細書で使用する場合、還元又は酸化反応を起こすことができる、ナノ粒子及び電極と異なる、電気化学セル内の物質を指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「連結された」又は「連結している」は、2つの部分間の会合を指す。会合は、共有結合とすることができる。会合は、それだけに限らないが、イオン相互作用、水素結合、及びファンデルワールス力を含めた非共有結合とすることができる。例示的な非共有結合には、相補性のオリゴヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーション、ビオチン/ストレプトアビジン相互作用、並びに抗体/抗原相互作用が含まれる。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「電極触媒」は、レドックス反応物の電気化学的な酸化又は還元の速度を増幅することができる物質を指す。少なくとも1つの実施形態では、ナノ粒子と電極の間の接触により、ナノ粒子と電極の間の電荷移動が可能になり、ナノ粒子が、レドックス反応物に対する電極触媒になることが可能になる。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「微量」は、物質が、仮にあったとしても、かかる物質の電極触媒反応に対する寄与が測定可能でない量で存在することを意味する。
【0026】
本発明は、1個の粒子衝突事象における、化学種の急速な電極触媒反応に関与する、大きな電流増幅定数に基づく方法を提供する。ナノ粒子における、溶液中の相対的に高濃度の化学種の反応は、導電性であるが触媒的ではない測定超微小電極(UME)では起こらない。当業者は、測定微小電極表面は、処理することによって、例えば、酸化膜を形成し、又はある特定の化合物を吸着させることによって、特定の電極反応に関する活性を低下させることができることを認識するであろう。電極はまた、処理することによって、触媒粒子の吸着又は固着を促進することができ、これにより、様々な分析スキームの基盤を提供することができる。
【0027】
図1は、1個の白金ナノ粒子の衝突事象の概略図である。粒子は、電極に拡散し、そこで滞留時間の間にこれは衝突し、還元(この概略図ではプロトンの)を触媒する。超微小電極12における1個の白金ナノ粒子10の衝突は、粒子触媒反応14についての、その特徴的な電流−時間過渡現象によって、電気化学的に観察された。1個の事象は、溶液中に存在する指標種16(例えば、プロトン、過酸化水素)の電極触媒反応(electrocatalyzed reaction)によって生成される電流によって特徴づけられる。指標反応14は、選択された超微小電極12で起こらず、ナノ粒子10よりはるかに大きな拡散係数を有する、高濃度の指標種16を伴うことができるので、電流の大きな増幅(例えば、10桁以上)が起こる。衝突ごとに独特の電流−時間特性が生成され、これは、粒径、粒子の滞留時間、及び超微小電極12の表面とのナノ粒子10の相互作用の性質に相関し得る。本発明により、1個のナノ粒子10における不均一反応速度の研究、粒径分布の判定、及び非常に高感度な電気分析法の適用も可能になる。本明細書で説明するこの例は還元反応であるが、当業者は、例えば、適切な電位のUMEにおけるメタノールの白金粒子との触媒酸化反応について、同じ原理が当てはまることを認識するであろう。
【0028】
図2は、空気飽和した、50mMのクエン酸二水素ナトリウム溶液中のガラス電極中のディスク状炭素繊維におけるプロトンの電気化学的還元のグラフであり、下の曲線18では、表面上に白金ナノ粒子を伴わず、上の曲線20では白金粒子を伴う(繊維直径:8μm、掃引速度:100mV/s)。電極は、軟質ガラス中に直径8μmの炭素繊維を密封し、次いで底部を研磨して炭素のディスクのみが溶液に曝されるようにすることによって作製される。例として、酸性水溶液中の白金ナノ粒子の分散系中に浸漬した炭素繊維の超微小電極を考慮されたい。定常状態の、超微小電極表面への粒子の拡散に制御されたフラックスJp,sは、
【0029】
【数1】
【0030】
によって与えられ、式中、Dpは、粒子の拡散係数であり、Cpは、粒子の濃度であり、aは、炭素の超微小電極ディスク電極の半径である(Bard, A. J.; Faulkner, L. R. Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, 2nd ed.; John Wiley & Sons: New York, 2001)。通常、単純なナノ粒子の帯電過程では、1個又は数個の電子のみが、ナノ粒子と超微小電極の間を移動し(np)、電流、ip,s=npFπa2Jp,sを生じ、これは、はるかに小さすぎてノイズ及びバックグラウンドレベルの上で観察することができない(Fはファラデーである)。しかし、ナノ粒子は、超微小電極に接触すると、指標種(例えば、プロトン、過酸化水素)の別の反応、及び化学種OのRへの還元を電極触媒することができ(例えば、白金粒子での水素発生)、はるかに大きな電流、iOが流れることができる。即ち、ナノ粒子が電極表面に衝突するとき、これは、OのRへの反応を、この反応が超微小電極において起こらない電位で可能にする。例えば、粒子が、衝突後に超微小電極表面に固着する場合、粒子における定常状態の拡散に制御された電流は、
【0031】
【数2】
【0032】
で与えられ、式中、JO,pは、Oの粒子へのフラックスであり、DOは、溶液中のOの拡散係数であり、COは、Oの濃度であり、r0は、粒子の半径である。係数の、Ap、即ち粒子の面積、及びBは、粒子形状、及び、粒子が超微小電極上にどのように位置しているかに依存する。無限の面上の球を考えることができる場合、Ap=4πr02及びB=4πln2=8.71である。CO及びDOは、Cp及びDpよりもはるかに大きくなり得るので、aとr0の差があっても、Oの1個の粒子への拡散のフラックスは、粒子の超微小電極へのフラックスより10桁以上大きくなることができる。
【0033】
衝突についての電流は、Oの還元のための粒子帯電、及び約r02/DOの時間で定常状態に達する、変化中のファラデー電流を含む過渡現象である。様々な種類の衝突が起こり得るので、それぞれの衝突事象についての電流−時間(i−t)過渡現象は、電極での粒子の滞留時間、τ、即ち、電極が粒子に電子を送ることができる時間によって決定されることになる。粒子が、定常状態電流に達するのに十分な時間電極に固着し、反応物Oは、粒子においてのみ還元される場合、粒子及びOの相対的な定常状態のフラックスによって与えられる増幅定数は、約(B/16)(DOCOa)/(DpCpr0)である。これにより、相対的な定常状態電流である、約B(DOCOr0)/4(DpCpa)が導かれる(np=nOと仮定して)。1pMの粒子の溶液及び10mMのインジケータOについて、反応物Oの拡散係数と粒子の拡散係数が約1桁異なると仮定すると、1nmの半径の粒子についての推定増幅定数は、9〜10桁となり得る。
【0034】
2つの電気化学的反応、即ち、プロトンの還元及び過酸化水素の還元をこの効果を例示するのに選択した。当業者は、触媒還元又は触媒酸化を起こす他の物質を使用することができることを認識するであろう。これらの反応の両方は、炭素の超微小電極において緩慢であるが、白金においてより急速である。図2に示すように、50mMのクエン酸二水素ナトリウム(NaH2Citr)中の炭素電極において、SHEに対して−0.5Vの正の電位で、プロトン還元は起こらず、0〜−0.5Vの電流の小さな増加は、溶液中の酸素の一部の還元によるものである。Pt粒子で覆われた炭素電極、又は純粋な白金電極については、−0.3Vより負の電位で、プロトン還元により定常状態電流が生じる(Bobbert, P. A.; Wind, M. M.; Vlieger, J. Physica 1987 141A, 58-72)。これらの電位で、酸素還元も著しく促進される。白金粒子における定常状態電流は、反応しない面と接触している球への定常状態電流から推定することができ、但し、粒子は、超微小電極とのオーム接触を維持し、印加される電位は、拡散制御下でOをRに変化させるのに十分である。説明した条件下でのプロトン還元についてのこの電流は、直径が2nmの球状粒子について約30pAであるはずである。粒子当たりのより高い電流は、プロトン濃度を増加させることによって、例えば、より高い濃度のクエン酸二水素ナトリウム、又は数十ミリモルの濃度の過塩素酸(水素気泡の形成を防止するために60mM未満でなければならない)を使用して実現することができるが、図3に見られるように、これらの条件下では、粒子は凝集し、沈殿する。
【0035】
図3Aは、20mMのHClO4及び0.1MのNaClO4中の炭素繊維電極において、白金コロイド粒子の溶液を注入する前後の電流遷移のグラフである。図3Bは、1個の粒子の固着を示すグラフであり、図3Cは、粒子凝集体を示すグラフである。
【0036】
図4は、白金粒子を注入する前後の、溶液中の炭素電極における電流トランジェントを示す。図4Aは、下の曲線22に見られる、クエン酸白金ナノ粒子の非存在下、上の曲線24に見られる、クエン酸白金ナノ粒子の存在下での、50mMのクエン酸二水素ナトリウム溶液中の炭素繊維電極における電流トランジェントのグラフである。粒子濃度は約50pMである。図4Bは、図4Aの拡大部分のグラフであり、それぞれA、B、及びCの、電流、振幅、及び頻度によって区別される3種類の衝突を示している。図4Cは、衝突数対そのピーク電流の統計のプロットである。一般に頻度(C)のタイプであった、15pA未満のピーク電流を有する衝突は含まれておらず、40pAを超えるピーク電流を有する衝突は、ほとんど粒子の固着によるものである。挿入図は、代表的な白金ナノ粒子のTEM像である。
【0037】
炭素の超微小電極の電位は−0.4Vであった。白金コロイド溶液は、クエン酸ナトリウムの存在下で、H2PtCl6を水素化ホウ素ナトリウムで還元することによって得た(Zhou, J. F.; Zu, Y. B.; Bard, A. J. J. Electroanal. Chem. 2000, 491, 22-29)。粒径の範囲は約2〜6nmであり、主な分布は、直径4±0.8nmであった。一般に、約2、5、及び10μLのコロイド溶液(ナノ粒子を形成するための還元前の、初発濃度はH2PtCl6中0.5mM)を、窒素をバブリングさせながら、約50mLの電気化学セル中に順次注入し、ナノ粒子のpM溶液を得、次いで窒素雰囲気下でi−t応答を記録した。粒子溶液を注入する前は、電流トランジェントは、小さい一定のノイズレベルを有する滑らかな曲線であったが、注入後に、大きな電流トランジェントが出現した。これらの変動は、粒子の補助電極との衝突によるものである。不可逆の衝突についての、即ち、粒子が表面に固着し、したがって電流レベルを増大させる場合の、定常状態電流の振幅は、約40〜80pAであり、これは、注入された粒子のサイズと一致している。
【0038】
図5は、異なる印加電位での炭素電極における電流トランジェントを例示するグラフである。電極電位が正にシフトするとともに、電流スパイクの振幅は減少し、これは、白金超微小電極において記録された定常状態電流と一致している。プロトン濃度は、電流スパイクの、観察される特性周波数及び振幅に大きな影響を有し、これは図3に示す。図6に見られるように、衝突の頻度は、粒子濃度にほぼ比例した。
【0039】
図6は、白金ナノ粒子の5つの個々の注入に対応する、50mMのクエン酸二水素ナトリウム溶液中の炭素繊維電極における電流トランジェントのグラフである。平均頻度は、使用した炭素超微小電極において、1秒当たり、粒子濃度1pM当たり約0.02であり、これは、8μmの炭素電極について、式1によって推定された平均頻度の、1秒当たり、粒子濃度1pM当たり0.03に非常に近い。本発明者らは、粒子の拡散係数は、1×10−8cm2/sであり、粒子濃度は、合成において使用したH2PtCl6の濃度の約1000〜2000分の1未満であり、即ち、1個の粒子は、約1000〜2000個のPt原子を有すると仮定した。電流振幅は、注入した粒子のサイズとともに変化し、約8nm超の粒子及び約2nm未満の粒子についてそれぞれ図7及び8に示すように、粒子が大きいほどスパイクが大きい。
【0040】
電極との粒子の衝突は、一般に、図4Bに示すように、3つのタイプのi−t応答を生じさせる。それぞれのi−t特性は、個々の1個の粒子衝突に関連する。個々のi−t特性の特徴は、粒径、粒子の滞留時間、及び粒子と電極表面の間の相互作用によって影響される。多くの場合では、粒子は、その衝突後に電極を離れ、したがって電流は増加するが、次いでバックグラウンドに戻る。これは、負に帯電した粒子と負に帯電した表面の間の反発的な相互作用に帰することができ、この効果は、さらにより負の値で電位を設定することによって試験し、本発明者らは、より少ない衝突を観察した。図4BにおいてA、B、及びCを示した特徴を有する過渡現象によって例示したように、それぞれの個々の衝突事象において生成される電流が変化する理由は、衝突の性質(例えば、粒子が、電子トンネリングが可能な距離内に、電極表面にどのように密接に接近することができるか)、滞留時間、及びまた粒径効果のためである。時間とともに触媒的な効率を失うことを意味する粒子の非活性化も要因である。
【0041】
図9A及び9Bは、超微小電極における電流トランジェントのグラフである。図9A及び9Bは、代表的なスパイクの一般的な形状を示す。個々のスパイクの電流最大値は変化し、主として粒径、基板表面と粒子表面の間の伝達特性に関係する、個々の1個の粒子の非常に高感度な検出を知らせる。図9Aは、クエン酸白金ナノ粒子の存在下で、10mMの過塩素酸及び20mMの過塩素酸ナトリウム中の炭素の超微小電極における電流トランジェントのグラフである。粒子濃度は、約25pMである。図9Bは、図9Aの拡大図である。図9Cは、炭素の超微小電極の曲線22、並びに50mMのクエン酸二水素ナトリウムの曲線24、及び10mMの過塩素酸と20mMの過塩素酸ナトリウムの曲線26中の白金超微小電極のサイクリックボルタモグラムである。
【0042】
強酸を使用することの利点は、図9Cに示すように、弱酸の脱プロトン化の動力学的プロセスを無視することができることである。しかし、過塩素酸などの強酸を使用してプロトン濃度を10mMに増加させる場合、粒子を負に安定化させる、シトレートのカルボン酸基のプロトン化のために、白金ナノ粒子は安定ではない。粒子の安定性は、クエン酸白金粒子の存在下で電流トランジェントを記録することによっても立証することができる。一般に、図3Aに示すように、粒子を注入した直後に、約600秒未満の期間内に、非常に急激なスパイクが出現する。興味深いことに、この場合、それぞれのスパイクの後に、電流の有意な増加はまったくなく、これは、粒子は、表面に十分に固着しないが、比較的短時間の間のみ触媒電流を生じさせることを明確に示す。
【0043】
大きな白金ナノ粒子、典型的には直径8nm超の白金ナノ粒子の存在下での電流トランジェントも測定した。この粒子は、オキサレートによって安定化される。同じ時間及び同じ白金濃度内で、わずか数個の電流スパイクを捕らえることができる。より大きな粒径のために、粒子濃度及び粒子の拡散係数の両方が小さくなるので、この結果は妥当である。しかし、図7の電流トランジェントのグラフに示すように、上述したB及びCのタイプの衝突は、明確に観察されない。
【0044】
1個のナノ粒子の衝突事象は、プロトンの代わりにインジケータとして過酸化水素を使用して試験されており、当業者は、他の化合物並びにインジケータ、例えば、還元反応に対して酸素、並びに酸化に対して水素、メタノール及びヒドラジンを使用することができることが分かるであろう。バックグラウンド電流を低減し、粒子の電極表面への結合を促進するために、金の超微小電極(これは、H2O2還元にとって触媒的ではない)を、溶液の化学種への電子トンネリングができる安定な単層を形成する、ベンゼンジメタンチオールの表面組織化単分子層(surface assembled monolayer)でコーティングした(Yang, J.; Lee, J. Y.; Too, H. P. Anal. Chim. Acta 2006, 571, 206-210)。末端のチオール基は、白金粒子に強く結合することができる。粒子を注入すると、固定化された白金粒子の近接のために、電流の即時の増加が観察される。粘着性の衝突の特徴である、i−t応答における不連続なステップに加えて、本発明者らは、より小さい振幅であるが、より高い頻度を有する、より小さい電流変動も観察した。これらの頻度は、不連続な電流ステップの頻度よりも約2桁高い。図10Bに示した変動は、図4Bに示したプロトン還元において観察されたCタイプの衝突に類似しており、配合物中のより小さい白金粒子によって生じた可能性がある。超微小電極又は電極は、金、炭素繊維の微小電極及びITOのような他の材料を含むことができる。さらに、指標種は、プロトン、過酸化水素、酸素又は当業者に既知の他の物質とすることができる。
【0045】
本発明は、超微小電極を用いて1個の粒子の衝突事象を観察する、新規の方法を提供する。1つの事象は、溶液中に存在するインジケータの粒子触媒反応を通じて生成される電流によって特徴づけられる。インジケータは、高濃度及び高拡散係数を有するように選択することができるので、大きな増幅が起こる。衝突ごとに独特のi−t特性が生成され、これは、粒径、粒子の滞留時間、及び電極表面との粒子の相互作用に関連する場合がある。粒子濃度、粒径(例えば、クエン酸白金ナノ粒子対白金デンドリマーナノ粒子)、印加基板電位、及び前記インジケータの濃度を変更することによって、i−t特性を使用して、1個の粒子におけるインジケータ反応についての情報を得ることが可能であるはずである。ナノ粒子を使用して、光学的シグナル、伝導率シグナル、及び質量シグナルを増幅することと比較して(Xiao, X. Y.; Xu, B. Q.; Tao N. J. Nano Lett. 2004, 4, 267-271、Sonnichsen, C.; Reinhard, B. M.; Liphardt, J.; et al. Nature Biotech. 2005, 23, 741-745)、本発明の触媒電流増幅は、1個の粒子の衝突事象の観察、及びi−t曲線を通じて、1個の粒子レベルでの電気化学的速度の研究を可能にする。さらに、これは、粒径分布を求めることにおいて、及びおそらく1つの結合事象レベルに対する、非常に高感度な電気分析法として有用となり得る。
【0046】
白金ナノ粒子溶液は、60mLの2mMのH2PtCl6水溶液を、3mLの50mMのクエン酸ナトリウム水溶液と混合することによって調製し、次いで、勢いよく撹拌しながら、7mLの120mMのNaBH4水溶液を液滴で添加した。この溶液をさらに30分間撹拌し続けた。
【0047】
サブナノメートルから数ナノメートルの範囲の様々なサイズの金属ナノ粒子(MNP)を所望するが、これは、その大きな表面対体積比、サイズに依存した光学的性質、及び高密度の表面欠陥のためであり、これらの粒子は、独特の物理的及び化学的性質を示す。当業者は、他のナノ粒子溶液、例えば、白金、パラジウム、銅、銀、ルテニウム、鉄、アルミニウム、ニッケル、スズ及び金、並びに炭素及び酸化スズのような非金属を同様に調製することができることを認識するであろう。粒子物質の選択は、触媒される電極反応に依存する。例えば、ナノ粒子は、元素の少なくとも50、100、300、1000、又は3000個の原子を含むことができる。例えば、ナノ粒子は、元素の少なくとも10,000、30,000、100,000、300,000、又は1,000,000個の原子を含むことができる。ある特定の実施形態では、ナノ粒子は、元素の炭素、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びフラーレンのうちの少なくとも1つを含む。例えば、ナノ粒子は、金、白金、パラジウム、ロジウム、炭素、及び銅から選択される元素の原子を少なくとも100個含むことができる。ナノ粒子は、純粋に元素(例えば、純粋な白金)である必要はなく、合金、酸化物、及び化合物、並びにコアシェル型構造を含むことができる。様々な実施形態では、ナノ粒子は、均質でなくてもよい。いくつかの実施形態では、異なる組成を有するナノ粒子を同時に使用することができる。
【0048】
電気化学的研究では、MNPは、通常、不活性な支持材料において固定化されることによって電極を形成し、プロトン還元又は酸素還元などの電極触媒反応おけるその効果がプローブされる。MNPの電極触媒効果を特徴づけることにおいて、支持材料に対して表面被覆率が果たすように、MNPのサイズ及び形状の均質性は、複雑な役割を果たす。通常、平均効果が見られ、活性をMNPの性質と関連づけることは、表面被覆率及び総面積の効果、並びに粒子の支持材料との相互作用によって複雑になっている。したがって、電極触媒の挙動に対する粒径の効果について意見の相違がある。一般に、1個のナノ粒子レベルでの電極特徴づけは、当技術分野において限られており、多数の課題を有し、実験的な研究が比較的少ない。
【0049】
ナノ電極又はMNP電極は、1個の分子検出から細胞エキソサイトーシスのリアルタイム画像法に及ぶ用途を見出すことも提唱されている。これらの電極のサイズは、生体分子、及び生体膜中のイオンチャネルのサイズに匹敵する。しかし、当業者は、ナノメートルスケールで電極を作製することは、依然として技術的に困難であることを認識している。さらに、nmサイズでは、そのような電極において生成される電流は、通常、pAレベルであり、良好な信号対雑音レベルを伴った測定を困難にしている。MNPのサイズ及びサイズ分布を求めるために、様々な分析手段、例えば、電子顕微鏡法、走査プローブ顕微鏡法、UV−可視分光法、表面プラズマ共鳴、質量分析法、動的光散乱、並びにX線吸収分光法(XRD及びEXAFS)が開発されている。例えば、透過電子顕微鏡法(TEM)は、直径が数nmのMNPのサイズを、炭素グリッド支持体上にキャストすることによって、正確に求めるために、一般に且つ広く使用されている。本発明は、液体溶液中でMNPのサイズをスクリーニングすることができる電気化学的方法を提供し、1個のMNPにおける電極触媒作用の速度を研究するためのプラットフォームも提供する。
【0050】
簡単に言えば、所与の検出器の電極材料、例えば、Cにおいて不活発に起こるが、MNPが電極で衝突し、固着するとMNPにおいて起こる、異種の電子移動反応が選択される。MNPが検出器の電極と接触すると、電子は、MNP中に、又はMNPから流れ、MNP表面における触媒反応を維持する。図11Aは、Au UME表面における1個のナノ粒子の衝突についての、白金ナノ粒子の衝突事象の概略図であり、反応は、粒子が検出電極と接触するとき開始される。平面の電極と接触した1個の球状のMNPにおいて生成される限界電流は、
【0051】
【数3】
【0052】
によって与えられ、式中、Dは、濃度Cでの反応物の拡散係数であり、rは、1個のMNPの半径である。この式は、球状のUMEについての式と、ln2の項によって異なり、これは、支持平面による、MNPに対する拡散経路のブロッキングを説明する。
【0053】
明らかに、粒径、又は半径は、反応物の所与の濃度で記録される触媒電流に比例し、但し、Dは、大抵100mM未満である、反応物及び支持電解液のある特定の濃度範囲において一定に維持されると仮定する。
【0054】
1個のMNP衝突を観察するための第1のステップは、触媒反応を選択することによって電流を増幅することである。MNPにおける反応速度は、第1に、ある特定の電位範囲内で、基板における反応速度より著しく速いべきであり、例えば、Pt対Cにおけるプロトン還元である。第2に、触媒反応は、無視できる動力学的な影響とともに、質量輸送制御された条件下で起こるべきであり、その場合電流は、1個のMNPのサイズに比例しており、即ち、式(3)が適用される。MNPにおける電極触媒作用の不均一反応速度は、その形状及びキャッピング剤の関数となる場合があるので、MNPにおける拡散限界電流が常に維持される電位で、電極にバイアスをかけることによって、これらの効果を最小限にすることが有用である。最後に、反応物は、検出限界より十分上の、即ち、数十pA以上の十分に大きな電流が得られるように、高い濃度であり、大きな拡散係数を有するべきである。
【0055】
プロトン還元に加えて、Pt、Au、及びCの微小電極における、酸素還元、メタノール及びギ酸酸化、過酸化水素の酸化又は還元、並びにヒドラジン酸化などの反応は、これらの電極におけるその電極触媒応答において電位差を示す。しかし、酸素還元についての電流は、水中でのその低い溶解度によって制限され、メタノール及びギ酸などの小さい有機分子の酸化は、COのような中間体の吸着によって表面の毒作用を招き、これは、酸化電流を制限し、酸化電流の不安定性を引き起こす。H2O2の使用は、過酸化水素の異種の触媒的分解によって乱され、Pt MNPが、過酸化水素試験溶液中に注入されると、気泡が生成される。ヒドラジン酸化及びプロトン還元は、Pt、Au及びC電極の間で区別可能な触媒的挙動を示し、ある特定のpH領域において再現可能な応答を生じる。
【0056】
図11Bは、Au UMEとPt UMEとの間で、ヒドラジン酸化速度を合わせる電流増幅のグラフであり、ここで走査速度は、50mV/sであり、電解液は、10mMのヒドラジン及び50mMのPBS緩衝液であり、pHは約7.5である。図11Bは、例として、ヒドラジン酸化は、pH7.5のリン酸緩衝液中、0.4Vを超える電位で、Au UMEにおいて定常状態の限界電流を生じさせ、一方、PtのUMEにおいて、酸化のための電位は、約−0.5Vシフトすることを示す。そのような電位シフトは、Ptにおける反応速度が、Auにおける反応速度より著しく大きくなるように調整するのに十分大きい電位ウインドウを導く。定常状態の限界電流は、半径5μmを有するUMEにおいて、pH7.5で、10mMのヒドラジンについて約50nAであり、15mMのヒドラジンについて75nAである。
【0057】
図11Cは、1個のナノ粒子の衝突事象において観察される、代表的な電流特性のグラフである。図11Cの個々の段階的な電流特性は、以下に説明するように、粒径を求めるのに使用することができる。そのような電流特性は、粒子表面において電極触媒ヒドラジン酸化を開始する前後の、検出器の電極におけるMNPの衝突及び接着の1つの事象を表す。電流特性は、UMEにおいて記録されたものと類似しており、このMNPにおける定常状態の電流が実現されたことを示す。粒径を求めるために、ピーク高さを、同じ試験電解液について、PtのUMEにおいて得た限界電流と直接関連づける。粒径分布を評価するために、本発明者らは、ヒドラジン及びPBS緩衝電解液を含む試験溶液中に、非常に希薄なPtコロイド溶液を注入することによって、粒子衝突頻度を制御した。十分に分離した電流特性は、個々の1個のMNPの衝突事象を示した。
【0058】
Ptナノ粒子(Pt NP)溶液は、クエン酸ナトリウムの存在下で、Pt前駆体である、H2PtCl6又はK2PtCl4を、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)により還元することによって調製した。簡単に言えば、40mLの2mMのH2PtCl6(99.9%、Alfa Alsar)を、28mgのクエン酸ナトリウム(99+%、Aldrich)と混合し、その後、勢いよく磁気撹拌しながら、新鮮な水素化ホウ素ナトリウム溶液(99%、Aldrich)を液滴で添加した。水素化ホウ素ナトリウムの濃度を56〜500mMに変化させることによって粒径を制御し、溶液をさらに30分間撹拌した。H2PtCl6を用いて調製したナノ粒子溶液は、TEMによって求めた場合、注入したNaBH4の濃度に応じて、3.2〜5.3nmの直径付近で比較的狭いサイズ分布を有していた。3.6nm付近に分布した粒径を有するPt NP溶液を、説明される粒子衝突において主に使用した。これらのコロイド溶液は、合成溶液中で数カ月間安定であった。NaBH4によるK2PtCl4の還元では、1.3nmの直径付近の非常に小さいNP、又は粒子凝集体に至った。粒子凝集体は、星形であり、サイズは、13〜25nmの範囲であった。これらのコロイド溶液はともに安定ではなかった。Pt粒子溶液は、シュウ酸カリウムの存在下で、K2PtCl4を水素還元することによっても調製した。この調製において、Pt粒子は、より良好な結晶子を有するが、粒径は、5〜16nmで広く分布している。当業者は、これらの合成経路を修正又は微調整することによって、様々な結果を生じさせることができることを認識するであろう。
【0059】
NP濃度は、通常、それぞれの粒子が含むPt原子の平均数で除したPt前駆体の濃度から計算した。例えば、3.6nmのPt粒子は、約1400のPt原子を含むと仮定され、したがって、Pt粒子の濃度は、Pt前駆体の濃度の1400分の1未満である。ICP−MSによって確認されるように、調製されたばかりのコロイド溶液については、Pt損失は無視でき、例えば、5%未満のPt濃度の減少は、おそらくPt粒子が、磁気撹拌子及びガラス壁に接着するためである。
【0060】
粒径は、TEMによって求めた。Pt粒子を、TEMグリッドにおいて、遠く離して間隔をおいて配置するために、TEMグリッドを、水で約20倍希釈したPtコロイド合成溶液中に一晩浸漬し、次いでこれをコロイド溶液から垂直に取り出し、水で徹底的にすすいだ。炭素膜は、依然として十分に疎水性であるため、このすすぎの後で通常乾燥していた。この手順を使用することによって、グリッド表面上でのMNPの凝集を最小限にし、粒子の凝集体であるかどうかの判定を可能にした。液滴をキャストすることによって調製したTEM試料を、比較のために使用した。TEM像は、JEOL 2010F透過電子顕微鏡(JEOL社製)から得た。点像に対するTEM分解能は、0.194nmであった。TEMグリッドは、200メッシュの銅上に支持された炭素膜であった(Electron Microscope Sciences)。
【0061】
10μm及び25μmのAu、Pt UMEは、金属ワイヤを溶かして軟質ガラス中に入れることによって調製した。金属ワイヤを、銀エポキシを用いてNi−Crリードと接続した後、電極を、鏡面が得られるまで、0.3μmのアルミナで研磨した。予定した表面積と品質のUMEは、水溶液中のフェロセンメタノール酸化のボルタンメトリーから得た。それぞれを使用する前に、電極を、0.3μm及び0.05μmのAl2O3粉末で研磨した。
【0062】
1−ヘキサデカンチオール(C16SH)及び16−メルカプトヘキサデカン酸(HSC15COOH)の自己組織化単分子層(SAM)は、以下に論じるように、清潔なAu電極を、約1mMのC16SH又はHSC15COOHを含むエタノール溶液中に異なる時間浸漬することによって調製した。次いで電極を、エタノール、アセトン及び水で徹底的にすすいだ。
【0063】
サイクリックボルタンメトリー及びクロノアンペロメトリーは、約50mLの電解液を含む3つの電極セル(CH Instruments、Austin、TX、モデル660)を用いて実施した。炭素棒を対電極として使用し、ポリピロールでコーティングしたステンレス鋼ワイヤを参照電極として使用した。電極の電位は、標準Ag/AgCl参照電極によって較正し、リスケールすることによって電位対標準水素電極(SHE)を得た。電気化学セルは、ファラデー箱内に維持し、電流トランジェントは、通常、約10msの分解能で記録した。Ptコロイド溶液を注入する前に、電極を数回の電位サイクルにかけることによって表面を浄化し、次いでバックグラウンド電流が300pA未満である電位で保持した。MNP注入のためにファラデー箱を開けるといつも、ノイズが出現した。箱を閉じた後、セルをAr雰囲気中で維持した。MNPの衝突によって生成される電流は、ファラデー箱のドアが閉じているとき、使用した増幅レベルでバックグラウンドノイズから容易に区別することができた。
【0064】
電流は、Ptコロイド溶液を注入する前後で、時間に対して記録した。コロイド溶液をArで約10秒間バブリングする間に、この溶液を試験電解液中に注入した。この手順により、試験電解液全体に、Pt NPが均一に素早く分布したが、この期間により高いノイズレベルが生じた。一般に、Pt NPにおける電流増幅のためのインジケータ反応として、ヒドラジン酸化及びプロトン還元を使用した。
【0065】
図12は、機械的研磨及び電気化学的クリーニング後に、0.1Vの電位で維持し、Au UMEにおいて記録した、代表的な電流−時間曲線を示すグラフである。バックグラウンド電流は、約220pAであり、本質的に一定であり、時間とともに非常に徐々に減衰した(図12A、青色の曲線)。5〜15秒で観察された大きいノイズは、ファラデー箱の開閉によって生じ、その間にPt粒子溶液を注入した。その期間の後に、電流はわずかにずれ、これは、この期間の1個又は数個の粒子の衝突のためである可能性がある。この期間の後に、溶液を可能な限り無振動に維持し、電流をモニターした。示したように、電流は、段階的な様式で陽極的に(anodically)に増加した。
【0066】
図12Bに示した、初期の時間の間に電流振幅で20pA未満の数個の電流ステップが出現した。これらの小さい電流ステップは、その後にも頻繁に観察されたことに注意されたい。この期間の後のほとんどの電流ステップは、40〜65pAの範囲であった。それぞれの電流ステップにおいて、電流は、非常に急速に増加し、次いで、定常状態値に維持された。数個の電流ステップは、より長い過渡現象時間を示したが(図12、青色の矢印)、これは、基板との粒子衝突の性質についての微視的な詳細を示す可能性がある(図12C)。例えば、低濃度では起こりそうもないが、粒子は、表面上に既にある別の粒子と相互作用する場合がある。2つの別々の粒子が再配列又は融合して1つの単位になることによっても、実用的な表面積が減少し、したがって電極触媒電流が減少する。MNPは、溶液中の外来性の不純物によって不活性化される場合がある。本発明者らは、一般に後の記録時間での電流の減衰を述べた。衝突ステップの詳細な形状において明らかに微妙なことが存在し、これはさらに研究される必要があるが、制御することは困難である。
【0067】
図13は、1msの時間分解能で記録した2つの一般的な電流トランジェントを示す。図13は、1個のPtナノ粒子の衝突についての、高分解能電流トランジェントである。電流は、1msに設定した、本発明者らのポテンシオスタットの限界分解能で切り替えた。粒径は、約3.6nm及び10μmのAu UMEであり、15mMのヒドラジン及び50mMのPBS緩衝液のpHは約7.5である。図13A及び13Bは、1msの時間分解能で記録した、2つの一般的な電流トランジェントを示す。立ち上がり時間は、1ms以内である。ポテンシオスタットに直接接続した、より高い時間分解能のオシロスコープ(Tektronix 2440)を使用して、本発明者らは、電流ステップの立ち上がり時間は、約40〜100μsであることを見出した。この立ち上がり時間は、おそらくポテンシオスタットの機器限界も表す。
【0068】
図14Aは、電流対時間特性についての電流ステップグラフのグラフである。図14Bは、200s以内に分析した統計的なピーク電流対ピーク頻度のプロットである。図14CはTEM像であり、図14Dは、対応するPtナノ粒子のサイズ分布のプロットである。図14Aは、ほぼ等しい高さ(約60pA)のいくつかのステップを含む、一般的な電流対時間特性を示す。これにより、式(3)を介して粒子半径が導かれる。より多数のステップについて、所与のピーク電流の出現の数をプロットすることができ、これは、40〜65pAの主な分布を示し、100及び160pA付近のより少数のより大きなピーク電流を伴っている(図14B)。それぞれの電流特性は、1個の粒子の衝突事象を伝えるので、ピーク電流の分布は、NPのサイズの分布を反映するはずである。実際にこれは、TEM像の図14C及び分布の図14Dによって求めた粒径分布とよく一致する。これらのPt NPは、炭素表面において開路電位に付着しているが、粒子のランダムな衝突を通じてTEMグリッドの表面にも付着していることに注意されたい。MNPのサイズ分布は、上述した衝突実験において、電極表面に付着した粒子を表すはずである。より大きなピーク電流は、おそらく、MNP凝集体の衝突によって起こる。
【0069】
図15A、15B及び15Cは、ヒドラジン濃度に伴うピーク電流分布のシフトのプロットであり、図15Dは、主要ピーク電流対ヒドラジン濃度のプロットである。分布の形状がわずかに変化しているが、これは、統計的分析についての時間スケールが異なるためであり、通常、時間がより長いと、大きなピークのカウントがより多いことに注意されたい。
【0070】
個々の電流特性は、異なる条件、例えば、ヒドラジン濃度、粒子濃度、検出電極(C及びAu UME)の性質及び面積、並びに粒径の下で研究を実施することによる1個のMNPの衝突によるものであることが示された。ヒドラジン濃度を変化させたとき、注入した同じコロイドPt溶液について、電流ステップの振幅は、比例して変化した。したがって、所与の濃度のヒドラジンに対して、ピーク電流の分布によって粒径分布を直接評価することができる。
【0071】
図16Aは、個々のPt粒子濃度で記録した電流トランジェントのプロットであり、図16Bは、対応する一次微分係数のプロットである。図16B中の青銅色の曲線は、MNPの非存在下で記録した電流トランジェントに由来する。トレースは、明確にするためにゼロからずらした。青色の矢印は、20pAを超える電流ステップを生じさせるスパイクを示し、赤色の矢印は、20pA未満の電流ステップを示す。粒径は、約3.6nmであり、10μmのAu UMEであり、約7.5のpHを有する、15mMのヒドラジン及び50mMのPBS緩衝液の溶液を用いる。漸増濃度のPt NPで、図16に見られるように、ピークの頻度は増加したが、ピーク電流の振幅は変化しないままであった。10μmのAu UMEの代わりに25μmの直径のAu UMEを使用したとき、衝突頻度は約2倍増加した。
【0072】
図16Bに示すように、ステップをカウントし、出現の頻度を得るために、電流の一次の時間微分係数を使用した。ここでは、それぞれのスパイクは、電流ステップ、したがって粒子衝突の1つの事象を表す。個々のスパイク間の分離は、数秒から数ミリ秒の範囲である。時間とともに頻度が変動してスパイクが観察されることは、バルクの電解液からのMNPの電極との衝突が、ランダムプロセスであることを示す。この衝突プロセスは、粒子の吸着に至らない、検出器の電極におけるMNPのいくつかの衝突も含む場合があり、即ち、電極における粒子の滞留時間は、粒子によって変化する場合がある。
【0073】
図16B中の青銅色の曲線は、MNPの非存在下で記録した信号対雑音レベルを示す。変動の振幅は、上向き及び下向きの両方向にほとんど等しく分布している。青色の矢印によって示されたものより大きい振幅を有するスパイクは、20pAより大きい電流ステップに対応する。これらのスパイクは、衝突後に基板に固着するMNPによるものである。これらのスパイクの頻度は、約0.012〜0.02pM−1s−1である(即ち、25pMの粒子濃度について、頻度は、約0.4s−1、又は約2秒という衝突間の平均時間である(図16B、赤色曲線を参照されたい))。赤色の矢印によって示されたスパイクはまた、MNPの衝突によるものである場合がある。これらの衝突は、電流ステップよりむしろ電流スパイクを導くので、これらはおそらく、検出電極における非常に短い滞留時間のMNPの衝突と関連づけられる。
【0074】
衝突頻度は、拡散限界の定常状態条件で、すべてのMNPが検出器の電極において衝突し、次いで固着すると仮定することによって求めることができ、
【0075】
【数4】
【0076】
(式中、Dp及びCpは、Pt粒子の拡散係数及び濃度であり、aは、UMEの半径である)によって与えられるフラックスJを生じる。既知の粒子濃度及びAu UMEの半径で、観察される衝突頻度は、約1×10−8cm2/sのNPの拡散係数に対応する。しかし、3〜4nmの範囲のPt NPの拡散係数は、NPの拡散及び他のデータに関するストークス−アインシュタインの関係に基づくと約1×10−7cm2/sであると推定される。
【0077】
電流ステップが観察されるために、粒子は、観察可能な電流を生成するのに十分長いある特定の時間、電極表面に接触して留まらなければならない。したがって、本発明者らが観察したのは、衝突頻度の代わりに固着頻度である。したがって粒子が固着する確率は、この実験では、衝突の約1〜10%である。
【0078】
試験電解液が粒子を安定に維持するかどうかということは、非常に重要な役割を果たす。粒子濃度当たりの電流ステップの数は、50mMのPBSの代わりに支持電解液として10mMのクエン酸ナトリウムを使用したとき、劇的に減少した。これは、Pt粒子は、クエン酸塩溶液中で比較的安定であるためである。粒子は液相中に有利に残存し、固着確率が低くなる。一方、PBS溶液中では、粒子は安定ではなく、凝集及び沈殿する傾向があり、これは、粒子が衝突後に表面に固着するのをより容易にする。これはまた、本発明者らが、電流ステップの出現を時間とともに次第に少なく観察した理由を説明するものである。検出電極の表面修飾は、粒子の固着確率に影響する場合があるが、これまでのところ大きな差は見られておらず、大部分は同じ桁内である。本発明者らは、検出電極の電位を次第により正に設定したとき、電流ステップのわずかな増大を観察し、Au表面を、負に帯電した3−メルカプトプロピオン酸で修飾したとき、わずかな減少を観察した。
【0079】
TEMグリットからカウントされた粒子数は、式4を通じて計算した数よりはるかに小さいことは述べるに値する。25pMのPtコロイド溶液中に一晩浸漬したTEM試料グリッドについて、1×10−7cm2/sの拡散係数を使用して式2によって推定される、1μm2当たり1000個を超える粒子を有することが予期される。代わりに、様々な表面領域は、1μm2当たり20個未満の粒子を有する。
【0080】
図17Aは、50mM及び100mMのクエン酸二水素ナトリウム電解液(緑色及び青色)、並びに10mMの過塩素酸電解液(赤色)中のPt並びにC UMEにおけるサイクリックボルタモグラムである。100mV/s。図17Bは、C(赤色)及びPt(青色)ナノ粒子溶液の注入の前(黒色)及び後に記録した電流トランジェントのグラフである。図17C及び17Dは、個々の電流特性の拡大図である。試料は、50mMのクエン酸二水素ナトリウムを含み、−0.5Vの電極電位、約3.6nmのPtナノ粒子サイズ、約25nmのCナノ粒子サイズを有し、直径10μmの検出C UME電極を使用する。
【0081】
図17Aに見られるように、強酸及び弱酸電解液中のPt及びC UMEでのサイクリックボルタモグラムで実証したように、炭素電極におけるプロトン還元は、不活発に起こり、高い過電圧を必要とするが、この反応は、Ptにおいては急速である。定常状態の拡散限界電流は、HClO4及びクエン酸二水素ナトリウム(NaH2Cit)の両方において観察された。50mMのNaH2Citがプロトン供給源として使用されるが、これは、Pt NPは、この環境中で比較的安定であるが、これらは5mMのHClO4中で凝集する傾向があるためである。定常状態の限界電流は、10μmのPt UMEにおいて約70nAである。100mMのNaH2Cit又は純粋なHClO4にPtコロイド溶液を注入すると凝集する。図17Bは、炭素繊維の微小電極において記録した、3つの電流−時間曲線を示す。バックグラウンドにおいて、又はC NPの溶液(Pt NPの代わりに)を試験電解液中に注入したときにおいて、明白な電流スパイクは全く観察されなかった。Pt NPを注入したとき、全体的な電流は増加し、電流スパイクと重なった。これらの電流スパイクは、ヒドラジン酸化の場合に観察されたものと類似している。しかし、電流は、ヒドラジン酸化で観察されたように、より長い時間一定の定常状態レベルを維持しなかった。電流が最大値に維持されたのは1秒未満であり、次いでほとんどバックグラウンドレベルまで徐々に減衰した(例えば、図17C及び17Dを参照されたい)。ほとんど全ての電流特性は、そのような電流の減衰を示したことに注意されたい。ピーク電流は、30〜80pAの範囲であり、これは、約4nmの範囲の粒径に相関する。
【0082】
図18A、18B及び18Cは、Pt UMEにおける電流トランジェント及びサイクリックボルタモグラムのイメージであり、図18Aでは、3mMのFc−メタノール+0.1Mの過塩素酸ナトリウム、図18Bでは、12mMのヒドラジン+50mMのPBS緩衝液、及び図18Cでは、2mM過塩素酸+20mM過塩素酸ナトリウムである。黒色の矢印は、パルス電位を示す。直径10μmのPt、図18Cは、直径25μmのPt(黒色)、及び直径8μmの、炭素繊維において堆積したPt(青色)を有する。
【0083】
衝突後の電流の減衰は、ヒドラジン酸化よりもプロトン還元でより顕著である。プロトン還元及びヒドラジン酸化についてのPt UMEにおける電流トランジェントを、フェロセン−メタノール酸化と比較した。Fc−メタノール酸化についての電流トランジェントは、20ms以内に定常状態電流に到達した後、無視できる電流減衰を示す(図18Aに見られるように)。ヒドラジン酸化は、フェロセン−メタノールの挙動と類似した挙動を示すが(図18Bに見られるように)、プロトン還元は、特にPt NPで修飾した炭素電極において、少し長い過渡現象時間を示す(図18Cに見られるように)。0.5〜10sで、電流は、フェロセン−メタノールについて約6%、ヒドラジンについて3%、及びプロトンについて32%(図18C、青色に見られるように)減衰した。10〜20秒で、電流の減衰は、フェロセン酸化及びヒドラジン酸化の両方について約1%、並びにプロトン還元について5%であった。長い分極時間での小さな差は、電流の減衰が主に、漸進的な表面汚染のためであることを示す。漸進的な表面汚染はまた、連続的な電位パルスにおいて電流を減少させ得る。ヒドラジン酸化の場合では、本発明者らは、電流の減衰は、Au UMEよりPt UMEにおいてより厳しいことを見出した。MNPにおける表面汚染は、その高い相対的な表面積のために、マクロ電極より悪い場合がある。これは、水素原子のPt上への吸着に依存する水素発生反応にとって特に重要になるであろう。電流の減衰を引き起こすことができる別の様式は、Pt MNPの格子中への水素原子の吸収である。
【0084】
リン酸の濃度を200mMに増大させたとき、Pt UMEにおける類似の電流減少が見られ、電流の減衰は、MNPの安定性に有利である、低濃度の支持電解液によるものではなかったことを示す。しかし、電流の減衰は、Au UMEにおいてかなり減速し、これは、電流の減衰が、Pt表面の触媒的な性質にほとんど相関することを示す。
【0085】
図19A、19B及び19Cは、異なる粒径の個々のPtナノ粒子について記録した電流トランジェントのグラフである。対応するPtナノ粒子のTEM像は、それぞれ下に示されている。Pt原子に基づく濃度は、図19Aにおいて約50nM、図19Bにおいて500nM、及び図19Cにおいて250nMである。約7.5のpHで、12mMのヒドラジン及び50mMのPBS緩衝液中で、10μmのAu UMEを用いた。
【0086】
図19は、異なる粒径を有するいくつかのPtコロイド溶液について記録した、いくつかの代表的な電流トランジェントを示す。Pt NPは、類似のキャッピング分子、シトレート又はオキサレートによって安定化されるので、これらは、類似の触媒的な性質を有する。これらのNP溶液を、ヒドラジン試験電解液中に注入する場合、記録される電流トランジェントは、非常に異なる電流振幅の、不連続な電流ステップを示す。約3.6nmであるPt NPについて、電流ステップは、ほとんど均一な振幅を有し、これは、45pA付近に主に分布していた(図19Aに見られるように)。星状のPt NPの場合では(図19Bに見られるように)、ピーク電流は、約20nmの粒径に対応する、240pA付近に主に分布していた。電流ピークのうちのわずかな部分は、おそらく、小さい粒子及び2〜3単位の凝集体の存在による、約120pA未満又は約300pA超のピーク電流を有する。図19Cは、多分散系のPt NPについて記録した電流トランジェントを示す。ピーク電流は、5〜16nmの範囲の粒径に対応する、60〜200pAの広い範囲にわたって分布していた。研究したケースについてのピーク電流の振幅は、粒径分布とよく相関するように思われる。
【0087】
MNP衝突の別の可能な用途は、絶縁膜の多孔性の評価である。アルカンチオールの表面自己組織化単分子層膜を有するAu UMEを使用して、むき出しの電極における衝突数と比較した衝突数、及びMNPサイズの効果を示すことができる。SAMの頂部での粒子衝突を、SAM内の孔を通じた粒子衝突と区別するために、Au検出器の電極を、単層を通じた電子移動を阻害するのに十分長いC16SH単層で修飾した。Au上のC16SH SAMの多孔性は、アセンブル時間を30分から一晩に変更することによって変化させた。本発明者らは、Au表面上に残存する水層は、疎水性分子の吸着を減速するので、Au基板の乾燥の程度は、膜の品質に重要な役割を果たすことも見出した。
【0088】
図20Aは、サイクリックボルタモグラムのイメージであり、図20Bは、電流トランジェントのグラフであり、無垢(黒色)及びC16SH又はHSC15COOHでアセンブルしたAu UMEにおいて記録し、PtにおけるCVを比較のためにプロットし、走査速度は100mV/sである。さらに、図20B中のトレースは、明確にするためにわずかにずらした。挿入図は、代表的な電流特性、及び非常に速い電流変動を示す。36pMの粒子濃度、及び約3.6nmのPt粒子、及び50mMのPBS緩衝液中の15mMのヒドラジンを含み、約7.5のpHの溶液を用いて示した、クロノアンペロメトリーにおける基板電位。
【0089】
SAMの品質は、ヒドラジン酸化の抑制から直接推定することができた(図20Aに見られるように)。多孔性のより小さい膜は、ヒドラジン酸化のより大きい抑制、したがってより小さい電流をもたらす。図20Aは、酸化電位は正にシフトしただけでなく、0.5Vの負の電位での無垢のAu電極と比較した場合、酸化電流も減少したことを示す。これらの修飾電極でのヒドラジン酸化の抑制の程度から、サイクリックボルタモグラムは、HSC15COOH膜は、C16SH膜より多孔性であることを示す。
【0090】
しかし、ヒドラジンは小分子であるので、これは、おそらくすべての種類の孔を貫通することができ、したがって、ヒドラジン酸化の阻害は、孔のサイズ分布を示さない。孔のサイズ分布は、サイズの定められたMNPを使用して求められる可能性がある。例として、本発明者らは、約3.6nmのPt NP溶液を同じ試験電解液中に注入し、これらの修飾電極における電流トランジェントを記録した。衝突頻度又は衝突数は、明らかに減少した。C16SH膜及びHSC15COOH膜の両方について、多孔性のより小さい膜は、より少ない衝突を示した。これは、サイクリックボルタモグラムで示したヒドラジン酸化の抑制と一致している。表面をHSC15COOH及びC16SHで一晩アセンブルした場合、明白な衝突はまったく観察されないか、非常にわずかな衝突しか観察されなかった。
【0091】
これらの修飾電極において、ほとんどの電流トランジェントは、非常に長い過渡現象時間を示し、これは、Pt NPは、周囲のアルカンチオールによって不活性化されることを示している可能性がある。2つの一般的な過渡現象を挿入曲線で示す(図20B中に示され、黒色の矢印によって示されている)。アルカンのマトリックスは、Au表面からPt表面に再配置し、したがって、電気化学的なヒドラジン酸化を妨げることができる。第2に、電流は多くの場合、ほぼ同じ電流振幅で、前後に急速に変動し(図20B中に示され、赤色の矢印によって示されている)、同じ粒子が、Au表面に付着し、Au表面から脱離することができることを示した。そのような変動は、周囲のマトリックスのために、粒子が電極表面とより弱く相互作用することを示す。
【0092】
C16SH膜のHSC15COOH膜との比較により、衝突がより少ないこと示されたが、より高いヒドラジン酸化のピーク電流が、HSC15COOH膜で覆われた電極において観察された。これは、膜内の微視的な孔は、容易な触媒的なヒドラジン酸化を依然として可能にするが、MNPを通過させることはできないことを示す。孔のサイズに加えて、露出した末端カルボン酸基も、孔を介したMNPの貫通を妨げる役割を果たすことができる。これらの効果を確認し、どれが重要な役割を果たすかを理解するために、異なる粒径を用いたより多くの実験を実施する必要がある。
【0093】
電極触媒増幅は、1個のMNPの衝突の観察を可能にし、これは、Pt NPが検出器の電極において衝突し、固着するとき生成される、個々の電流ステップによって特徴づけられる。電流は、MNPがその表面において、検出器の電極が、無視できるほど小さい電気化学的な活性を示す電位で、電極触媒反応を開始するとき生じる。それぞれの衝突の間の、観察された電流特性は、UMEにおいて記録された電流トランジェントに類似しており、NPの半径の関数である。電極触媒反応の速度(kinetics)は、観察された電流減衰において重要な役割を果たし、これは、ナノメートルスケールでの電極との粒子の相互作用及び電極触媒作用のカイネティクスに関係するより微視的な詳細の調査を必要とする。
【0094】
質量輸送で制御された条件で、それぞれの電流ステップの振幅は、粒径に相関するので、電流振幅対ピーク出現の頻度のプロットは、TEMで見出されるような粒径分布とよく相関し、したがって、NP分散系の迅速なスクリーニングに対する電気化学的手法を提供する。衝突頻度は、検出器の電極の有効表面積にも相関するので、この技法は、電極表面上の絶縁膜の多孔性を評価することにおいて有用となり得る。
【0095】
本発明は、微小電極及び超微小電極の使用を企図し、半導体製造方法及びシルクスクリーニングを含めた当技術分野で既知の方法によって作製することができる。電極は、様々なサイズ並びに形状(例えば、ディスク、円形、正方形、長方形、及び楕円形)、並びに結果として様々な面積(例えば、電極は、約5μm2〜約3mm2の面積を有することができる)を有することができる。電極表面は、粗くても滑らかであってもよい。いくつかの実施形態では、電極表面は、滑らかであることによって、ナノ粒子の非存在下でのレドックス反応物に対する電極触媒速度を低減することができる。
【0096】
類似の又は異なる対/補助/参照電極を使用することによって、電気回路を完成することができる。いくつかの実施形態では、直径1cmのグラファイト棒を対電極として使用することができ、参照電極は、飽和した白金−水素又はポリピロールステンレス鋼とすることができる。他の一般的な参照電極には、Ag/AgClが含まれる。これらの標準的な電気化学的技法に対する詳細については、Bard, A. J.; Faulkner, L. R. Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, 2nd ed.; John Wiley & Sons: New York, 2001を参照されたい。対電極、任意選択の参照電極、及び電極は、電気化学セル内に一緒に配置することができる。このセルは、レドックス反応物を含む溶液も保持することができる。
【0097】
本明細書で使用する場合、用語「レドックス反応物」は、還元又は酸化反応を起こすことができる、ナノ粒子及び電極と異なる、電気化学セル内の物質を指す。さらに、電極と接触するナノ粒子は、溶液中のレドックス反応物に対する電極触媒となることができる。レドックス反応物は、電荷担体、例えば、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Cl−、PO32−、NH4+などを含む溶液中に見出すことができる。溶液は、pH緩衝液を含むことができる。溶液は、他の化合物、例えば、界面活性剤、糖、脂肪、タンパク質などを含むことができる。本明細書で使用する場合、用語「電極触媒」は、レドックス反応物の電気化学的な酸化又は還元の速度を増幅することができる物質を指す。少なくとも1つの実施形態では、ナノ粒子と電極の間の接触により、ナノ粒子と電極の間の電荷移動が可能になり、ナノ粒子が、レドックス反応物に対する電極触媒になることが可能になる。特定の実施形態について、レドックス反応物は、ナノ粒子及び電極を考慮して選択することができ、その結果ナノ粒子は、レドックス反応物に対する電極触媒として作用するが、電極は、レドックス反応物に対して皆無かそれに近い電極触媒能を有する。例示的なレドックス反応物には、白金含有ナノ粒子、及び炭素含有電極を伴った、メタノール、過酸化水素、及びプロトンが含まれる。他の例示的なレドックス反応物には、白金含有ナノ粒子、及び金含有電極を伴った、過酸化水素、プロトン、ヒドラジン、及び酸素が含まれる。他の例示的なレドックス反応物には、炭素含有ナノ粒子、及びニッケル含有電極を伴った、トリプロピルアミンが含まれる。
【0098】
検出器又は検出器のアレイを使用することによって、レドックス反応物に対するナノ粒子の電極触媒能からのシグナル増幅を介して、電極とのナノ粒子の衝突を検出することができ、例えば、検出器は衝突数をカウントすることができ、検出器は、電流変化をモニターすることによって、ナノ粒子の衝突を測定することができ、又は検出器は、衝突を1又は複数のタイプに分類することができる(例えば、電流増加の規模を使用することによって、ナノ粒子を分類することができる)。様々な実施形態では、検出器は、電位変化をモニターすることによってナノ粒子の衝突を測定することができる。例えば、電極は、一定の電流を用いて駆動することができる。ナノ粒子の非存在下で、電流を通すのに必要な電極の電圧は、大きくなり得る。ナノ粒子が衝突すると、必要とされる電圧は、実質的に降下することができ、したがって、速く、大きな電圧降下は、ナノ粒子の衝突として解釈することができる。電圧降下の規模は、例えば、ナノ粒子のサイズによってナノ粒子を分類するのに使用することができる。時間応答も、例えば、異なる滞留時間にナノ粒子を分類するのに使用することができる。
【0099】
本発明は、測定装置に接続された電気化学セルを有する、化学分析物を分析するための方法、組成物、及びキットを含む。電気化学セルは、1又は複数の金属ナノ粒子を有する溶液、1又は複数の化学分析物、インジケータを含む。さらに、電気化学セルは、溶液とコミュニケーションした1又は複数の電極を含む。1又は複数の電極触媒特性は、1又は複数の金属ナノ粒子と液体試料の相互作用によって生成され、1又は複数の電極において測定される。
【0100】
本発明は、電気化学セル内の溶液中の1又は複数のナノ粒子を含む。ナノ粒子は、完全に、又は部分的に金属物質又は炭素質物質又は半導体物質とすることができる。例えば、1又は複数の金属ナノ粒子は、白金ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、ルテニウムナノ粒子、パラジウムナノ粒子又はその混合物及び組合せとすることができる。ナノ粒子は、ナノ粒子の外側の物質と異なる物質のコアも有することができる。ナノ粒子は、約0.5nm〜約100nmのサイズの直径のものとすることができるが、一実施形態についての一般的なサイズの範囲は、直径が約1nm〜7nmであり、平均の直径が4nmである。さらに、ナノ粒子の直径のサイズ分布は、一般に均一であっても、分散性であっても、又は変動していてもよい。ナノ粒子は、群内で一般に同じ直径であるが、溶液中の他の群と比べて異なる直径を有する、異なる群の粒子を有することができる。
【0101】
電気化学的反応は、電極の電位を制御することによって推進することができる。電極の電位は、酸化又は還元が電極で起きることができるように選択することができる。電位は、ナノ粒子の非存在下でのレドックス反応物及び他の電気化学的反応から生じる電流を最小限にするように設定することができる。電位は、対電極に対して、又は参照電極に対して設定することができる。これらの標準的な電気化学的技法に対する詳細については、Bard, A. J.; Faulkner, L. R. Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, 2nd ed.; John Wiley & Sons: New York, 2001を参照されたい。例えば、電位は、標準水素電極(SHE)に対して、ゼロから1V以内とすることができる。例えば、電位は、対電極に対してゼロから1V以内とすることができる。より小さい電圧規模(例えば、0.5V、0.3V、0.25V、又は0.1V)も有用となり得る。電位は、時間とともに変化し、又は一定であることができる。ある特定の実施形態では、一定の電位を使用することによって、電極の二重層荷電による容量性の過渡現象を排除することができる。いくつかの実施形態では、電流は、電極を通して流すことができ、電位をモニターすることができる。ナノ粒子が接触すると、インピーダンス及び電圧が大いに低減する。ナノ粒子の存在をモニターするのに必要な電気化学的反応を進めるための他のスキームは、当業者に明白となるであろう。
【0102】
電極上にナノ粒子が接触すると、レドックス反応物についての反応速度は、大いに増大する。例えば、ナノ粒子の表面積に対して正規化したナノ粒子に起因するレドックス反応物の反応速度は、電極の表面積に対して正規化した電極に起因するレドックス反応物の反応速度より、少なくとも200倍大きくなることができる。電流を測定する場合、上述したことは、(iNP−ie)/ANP>200ie/Aeとして数学的に表すことができ、式中、iNPは、ナノ粒子の存在下で測定される電流であり、ieは、ナノ粒子の非存在下で測定される電流であり、ANP及びAeは、それぞれ、ナノ粒子及び電極の表面積である。
【0103】
いくつかの実施形態では、増大の係数は、103、104、105、106、107、108、又は109超である。約100pAのナノ粒子に起因する電流、約70pAの電極に起因する電流、並びに、それぞれ電極及びナノ粒子についての、50μm2及び5×10−5μm2の面積を用いて計算した場合、係数は約106であった。一定の電位で生成される電流は、大きくなることができるが、これは、レドックス反応物が高濃度であることができ、速い拡散体となることができるためである。例として、レドックス反応物を含む溶液中のナノ粒子の分散系中に浸漬したディスク電極を考えられたい。電極表面に対する、ナノ粒子(NP)の定常状態の拡散制御フラックス、JNP,eは、
【0104】
【数5】
【0105】
によって与えられ、式中、DNPは、ナノ粒子の拡散係数であり、CNPは、ナノ粒子の濃度であり、aは、電極の半径である(Bard, A. J.; Faulkner, L. R. Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, 2nd ed.; John Wiley & Sons: New York, 2001)。通常、単純なナノ粒子の帯電過程では、わずか1個又は数個の電子がナノ粒子と電極(nNP)の間を移動し、電流、iNP,e=nNPFπa2JNP,e=4nNPFaDNPCNPを生じ、これは、はるかに小さくすぎてノイズ及びバックグラウンドレベルの上で観察することができない(Fはファラデーである)。しかし、ナノ粒子は、電極と接触すると、レドックス反応物(RR)を電極触媒し、例えば、化学種RRを還元又は酸化して生成物Pにすることができ、その結果、はるかに大きい電流、iRRが流れることができる。即ち、ナノ粒子が電極表面と衝突すると、これは、RRのPへの反応を、ナノ粒子がない電極では、いかなる大きな程度にもこの反応が起こらない電位で可能にする。
【0106】
いくつかの実施形態では、電極と接触しているナノ粒子を検出することができる。ナノ粒子における定常状態の拡散制御電流は、
【0107】
【数6】
【0108】
で与えられ、式中、JRR,NPは、レドックス反応物RRのナノ粒子へのフラックスであり、DRRは、RRの拡散係数であり、CRRはRRの濃度であり、rNPはナノ粒子の半径であり、nRRは、RRが生成物Pに変換されるための、レドックス反応当たりに必要な電子数である。係数の、ANP、即ちナノ粒子の表面積、及びBは、ナノ粒子の形状、及び、この粒子が電極上にどのように位置しているかに依存する。無限の面上の球を考えることができる場合、ANP=4πrNP2及びB=4πln2≒8.71(Bobbert, P. A.; Wind, M. M.; Vlieger, J. Physica 1987 141A, 58-72)。CRR及びDRRは、CNP及びDNPよりはるかに大きくなることができるので、aとrNPの差であっても、1個のナノ粒子においてレドックス反応物の電極触媒作用から生じる電流は、電極において同じナノ粒子を容量性に荷電することから生じる電流よりも10桁以上大きくなることができる。
【0109】
様々な実施形態では、電極電流の時間応答を測定することができる。電流トランジェントは、粒子帯電、及び時間約rNP2/DRRで定常状態に達する、レドックス反応物の電極触媒作用のための、変化中のファラデー電流を含む。異なるタイプの衝突が起こり得るので、それぞれの衝突事象についての電流−時間(i−t)過渡現象は、ナノ粒子の電極における滞留時間、即ち、電極がナノ粒子に電子を送ることができる時間によって求められることになる。ナノ粒子が、定常状態電流を達成するのに十分な時間電極に固着し、レドックス反応物は、粒子においてのみ生成物に変換される場合、充電電流に対する電気化学的電流の増幅定数は、粒子及びRRの相対的な定常状態のフラックスによって与えられ、これは、約(B/16)(DRRCRRa)/(DNPCNPrNP)である。これにより、nRR=nNPを仮定して、約(BDRRCRRrNP)/(4DNPCNPa)の相対的な定常状態電流が導かれる。1pMのナノ粒子及び10mMのレドックス反応物の分散系について、レドックス反応物の拡散定数が、ナノ粒子の拡散定数より約1桁大きいと仮定すると、半径1nmの粒子についての推定増幅定数は、9〜10桁となり得る。言い換えると、レドックス反応物の生成物への電気化学的変換によって生じる電流は、ナノ粒子の容量性の充電電流より9〜10桁大きくなることができる。
【0110】
さらに、本発明は、ナノ粒子の濃縮溶液を使用する、試料の分析を提供する。当業者は、特定のパラメータに応じて、広範囲のナノ粒子濃度(例えば、1個のナノ粒子溶液からモル溶液まで)を本発明によって使用することができることを認識するであろう。さらに、異なるサイズ、異なる粒子組成、及び異なる粒子を有する粒子の混合物を、本発明とともに使用することができる。事象は、溶液中に存在するインジケータの粒子触媒反応を通じて生成される電流によって特徴づけられる。インジケータは、高濃度及び高拡散係数を有するように選択することができるので、大きな増幅が起こる。
【0111】
1又は複数の電極触媒特性は、装置によって測定することができる任意の性質とすることができるが、最も一般的な性質は、金属ナノ粒子によって触媒される還元又は酸化反応からの電極触媒増幅である。しかし、他の性質は、電流、抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス若しくはこれらの組合せ、又は電極における電子移動反応を示す別の技法とすることができる。
【0112】
ナノ粒子を安定化させるための例示的なコーティング又はキャッピング化合物として、アルカンチオール、メルカプトアルコール、メルカプトカルボン酸、チオフェノール、チオール官能化オリゴヌクレオチド、ベンゼンジメタンチオール、オキサレート、及びシトレートが挙げられる。そのような安定性改善化合物は、十分に小さく、その結果、電子トンネリングは依然として起きることによって、電極からナノ粒子への電荷移動を可能にすることができる。
【0113】
本明細書で論じた任意の実施形態は、本発明の任意の方法、キット、試薬、又は組成物に対して実施することができ、逆の場合も同様であることが企図されている。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を実現するために使用することができる。
【0114】
本明細書に記載した特定の実施形態は、例として示されており、本発明の制限として示されていないことが理解されよう。本発明の主な特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく様々な実施形態において使用することができる。当業者は、日常程度の実験を使用して、本明細書に記載した特定の手順に対する多数の均等物を認識することなり、又は確認することができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲内であるとみなされ、特許請求の範囲によって包含されている。
【0115】
本明細書で述べたすべての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者のスキルのレベルを示す。すべての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が、具体的に且つ個々に参照により組み込まれていると示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0116】
特許請求の範囲及び/又は本明細書において、用語「含む」とともに使用されるとき、単数の使用は、「1つ」を意味することができるが、「1又は複数の」、「少なくとも1つの」及び「1又は1を超える」の意味とも一致する。特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、代替物のみを指すか、代替物が相互に排他的であることが明確に示されていない限り、「及び/又は」を意味するのに使用されるが、本開示は、代替物のみ並びに「及び/又は」を指す定義を支持する。本願全体にわたって、用語「約」は、値は、その値を求めるために使用されるデバイス、方法に対する誤差の固有の変動、又は研究対象の中に存在する変動を含むことを示すのに使用される。
【0117】
本明細書及び請求項(複数も)で使用する場合、単語「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」などの含む(including)の任意の形態)、又は「含む(containing)」(並びに「含む(contains)」及び「含む(contain)」などの含む(containing)の任意の形態)は、包括的又は無制限であり、追加の、列挙していない要素又は方法ステップを除外しない。
【0118】
本明細書で使用する場合、用語「又はこれらの組合せ」は、本明細書で使用する場合、この用語に先行して列挙される項目のすべての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はこれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、及び特定の状況において順序が重要である場合、また、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことが意図されている。この例に続いて、1又は複数の項目又は用語の繰り返し、例えば、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどを含む組合せは特に含まれる。当業者は、状況から明らかでない限り、任意の組合せにおける項目又は用語の数に制限は一般にないことを理解するであろう。
【0119】
本明細書で開示及び主張した組成物及び/又は方法のすべては、本開示を考慮すると、過度の実験を伴うことなく、作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法を、好適な実施形態に関して説明してきたが、組成物及び/又は方法に対して、並びに本明細書に記載した方法のステップ又はステップの順序において、本発明の概念、精神並びに範囲から逸脱することなく、変形を適用することができることは当業者に明らかとなるであろう。当業者に明らかなすべてのそのような類似の代替及び改変は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の精神、範囲及び概念の中にあるとみなされる。
【0120】
(参考文献)
1. Polsky, R; Gill, R; Kaganovsky, L; Willner, I, Analytical Chemistry, 2006, 78, 2268-2271
2. Bard, A. J.; Faulkner, L. R. Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, 2nd ed.; John Wiley & Sons: New York, 2001
3. Bobbert, P. A.; Wind, M. M.; Vlieger, J. Physica 1987 141A, 58-72
4. Zhou, J. F.; Zu, Y. B.; Bard, A. J. J. Electroanal. Chem. 2000, 491, 22-29
5. Yang, J.; Lee, J. Y.; Too, H. P. Anal. Chim. Acta 2006, 571, 206-210
6. Xiao, X. Y.; Xu, B. Q.; Tao N. J. Nano Lett. 2004, 4, 267-271
7. Sonnichsen, C.; Reinhard, B. M.; Liphardt, J.; et al. Nature Biotech. 2005, 23, 741-745
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の分析方法であって、
個々に約1μm〜約2mmの直径を有する少なくとも2つの電極を含む試料チャンバー内で、液体試料に1又は複数の金属ナノ粒子を添加するステップと、
前記少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つにおいて、前記1又は複数のナノ粒子と前記液体試料との間の酸化又は還元反応を検出するステップであって、検出器が、電流、電位、電荷、インピーダンス、光、及び色のうちの少なくとも1つを測定することによって、前記電極に接触している個々のナノ粒子を検出することができるステップと、
前記酸化又は還元反応によって生成される、1又は複数の電極触媒特性を観察するステップと
を含む方法。
【請求項2】
酸化又は還元反応が、1又は複数のナノ粒子によって触媒される還元反応又は酸化反応からの電極触媒増幅を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1又は複数の電極触媒特性が、電流、抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1又は複数のナノ粒子が、白金ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、ルテニウムナノ粒子、パラジウムナノ粒子、酸化スズナノ粒子、炭素ナノ粒子、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1又は複数のナノ粒子の直径が0.5nm〜100nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
電極が約20μm2〜約3mm2の面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ナノ粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、銅、銀、ルテニウム、鉄、アルミニウム、ニッケル、及びスズから選択される元素の原子を少なくとも50個含み、電極が、微量以下の前記元素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
検出器のアレイを形成するように、少なくとも1つの追加の検出器をさらに含み、前記検出器のアレイが、複数の電極における個々のナノ粒子を検出することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ナノ粒子の表面積に対して正規化したナノ粒子に起因する反応の速度が、電極の表面積に対して正規化した電極に起因するレドックス反応物の反応速度の少なくとも200倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ナノ粒子の表面積に対して正規化したナノ粒子に起因する反応の速度が、電極の表面積に対して正規化した電極に起因するレドックス反応物の反応速度の少なくとも10000倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのナノ粒子を有する試料を分析するための電気化学セルであって、
試料チャンバー内に入れた試料とコミュニケーションするように配置された、1又は複数の電極と、
前記試料チャンバー内に置かれた1又は複数のナノ粒子であって、前記試料と相互作用することによって1又は複数の電極触媒特性を生成する1又は複数のナノ粒子と、
前記1又は複数の電極触媒特性を検出するための、前記1又は複数の電極と連絡した検出器であって、電流、電位、電荷、インピーダンス、光、及び色のうちの少なくとも1つを測定することによって、前記電極と接触している個々のナノ粒子を検出することができる検出器と
を含む電気化学セル。
【請求項12】
1又は複数の電極が、1又は複数の超微小電極を含む、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項13】
1又は複数の電極触媒特性が、電流、抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、又はこれらの組合せを含む、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項14】
1又は複数の電極触媒特性が、1又は複数のナノ粒子によって触媒される還元反応又は酸化反応からの電極触媒増幅である、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項15】
1又は金属ナノ粒子が、白金ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、ルテニウムナノ粒子、パラジウムナノ粒子、酸化スズナノ粒子、炭素ナノ粒子、又はこれらの組合せを含む、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項16】
1又は複数のナノ粒子の直径が0.5nm〜100nmである、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項17】
化学分析物を分析するための、少なくとも1つのナノ粒子を有するデバイスであって、
測定装置に接続された電気化学セルであって、容器及び少なくとも1つの電極を含む電気化学セルと、
前記容器内に1又は複数の化学分析物を含み、インジケータとコミュニケーションしている溶液と、
前記溶液中の1又は複数の金属ナノ粒子であって、1又は複数の電極触媒特性が、前記少なくとも1つの電極において、前記1又は複数の金属ナノ粒子によって生成され、個々のナノ粒子の接触を測定することができる金属ナノ粒子と
を含むデバイス。
【請求項18】
1又は複数の電極触媒特性が、1又は複数のナノ粒子によって触媒される還元反応又は酸化反応からの電極触媒増幅である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
測定装置が電流を検出し、1又は複数の金属ナノ粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、炭素、及び銅から選択される元素の原子を少なくとも100個含み、少なくとも1つの電極が、約20μm2〜1mm2の範囲の面積を有し、前記ナノ粒子の直径が1nm〜10nmの範囲である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
1又は複数のナノ粒子が、白金ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、ルテニウムナノ粒子、パラジウムナノ粒子、酸化スズナノ粒子、炭素ナノ粒子、又はこれらの組合せを含む、請求項17に記載のデバイス。
【請求項1】
試料の分析方法であって、
個々に約1μm〜約2mmの直径を有する少なくとも2つの電極を含む試料チャンバー内で、液体試料に1又は複数の金属ナノ粒子を添加するステップと、
前記少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つにおいて、前記1又は複数のナノ粒子と前記液体試料との間の酸化又は還元反応を検出するステップであって、検出器が、電流、電位、電荷、インピーダンス、光、及び色のうちの少なくとも1つを測定することによって、前記電極に接触している個々のナノ粒子を検出することができるステップと、
前記酸化又は還元反応によって生成される、1又は複数の電極触媒特性を観察するステップと
を含む方法。
【請求項2】
酸化又は還元反応が、1又は複数のナノ粒子によって触媒される還元反応又は酸化反応からの電極触媒増幅を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1又は複数の電極触媒特性が、電流、抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1又は複数のナノ粒子が、白金ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、ルテニウムナノ粒子、パラジウムナノ粒子、酸化スズナノ粒子、炭素ナノ粒子、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1又は複数のナノ粒子の直径が0.5nm〜100nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
電極が約20μm2〜約3mm2の面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ナノ粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、銅、銀、ルテニウム、鉄、アルミニウム、ニッケル、及びスズから選択される元素の原子を少なくとも50個含み、電極が、微量以下の前記元素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
検出器のアレイを形成するように、少なくとも1つの追加の検出器をさらに含み、前記検出器のアレイが、複数の電極における個々のナノ粒子を検出することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ナノ粒子の表面積に対して正規化したナノ粒子に起因する反応の速度が、電極の表面積に対して正規化した電極に起因するレドックス反応物の反応速度の少なくとも200倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ナノ粒子の表面積に対して正規化したナノ粒子に起因する反応の速度が、電極の表面積に対して正規化した電極に起因するレドックス反応物の反応速度の少なくとも10000倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのナノ粒子を有する試料を分析するための電気化学セルであって、
試料チャンバー内に入れた試料とコミュニケーションするように配置された、1又は複数の電極と、
前記試料チャンバー内に置かれた1又は複数のナノ粒子であって、前記試料と相互作用することによって1又は複数の電極触媒特性を生成する1又は複数のナノ粒子と、
前記1又は複数の電極触媒特性を検出するための、前記1又は複数の電極と連絡した検出器であって、電流、電位、電荷、インピーダンス、光、及び色のうちの少なくとも1つを測定することによって、前記電極と接触している個々のナノ粒子を検出することができる検出器と
を含む電気化学セル。
【請求項12】
1又は複数の電極が、1又は複数の超微小電極を含む、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項13】
1又は複数の電極触媒特性が、電流、抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、又はこれらの組合せを含む、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項14】
1又は複数の電極触媒特性が、1又は複数のナノ粒子によって触媒される還元反応又は酸化反応からの電極触媒増幅である、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項15】
1又は金属ナノ粒子が、白金ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、ルテニウムナノ粒子、パラジウムナノ粒子、酸化スズナノ粒子、炭素ナノ粒子、又はこれらの組合せを含む、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項16】
1又は複数のナノ粒子の直径が0.5nm〜100nmである、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項17】
化学分析物を分析するための、少なくとも1つのナノ粒子を有するデバイスであって、
測定装置に接続された電気化学セルであって、容器及び少なくとも1つの電極を含む電気化学セルと、
前記容器内に1又は複数の化学分析物を含み、インジケータとコミュニケーションしている溶液と、
前記溶液中の1又は複数の金属ナノ粒子であって、1又は複数の電極触媒特性が、前記少なくとも1つの電極において、前記1又は複数の金属ナノ粒子によって生成され、個々のナノ粒子の接触を測定することができる金属ナノ粒子と
を含むデバイス。
【請求項18】
1又は複数の電極触媒特性が、1又は複数のナノ粒子によって触媒される還元反応又は酸化反応からの電極触媒増幅である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
測定装置が電流を検出し、1又は複数の金属ナノ粒子が、金、白金、パラジウム、ロジウム、炭素、及び銅から選択される元素の原子を少なくとも100個含み、少なくとも1つの電極が、約20μm2〜1mm2の範囲の面積を有し、前記ナノ粒子の直径が1nm〜10nmの範囲である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
1又は複数のナノ粒子が、白金ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、ルテニウムナノ粒子、パラジウムナノ粒子、酸化スズナノ粒子、炭素ナノ粒子、又はこれらの組合せを含む、請求項17に記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【公表番号】特表2010−531975(P2010−531975A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512398(P2010−512398)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/066983
【国際公開番号】WO2008/157403
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/066983
【国際公開番号】WO2008/157403
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]