説明

金属ワークピース用耐食コーティング組成物、それを有するワークピースおよびその生成方法

本発明は、金属ワークピース用耐食コーティング剤に関する。良好な陰極腐食防止のために、耐食コーティング剤は、シリコーン有機化合物および微粒子金属を含む有機バインダーを含む。耐食コーティングを有するワークピースは、耐食コーティングが、シリコーン有機化合物および微粒子金属を含む有機バインダーを含むことを特徴としている。ワークピース上に耐食コーティングを生成する方法は、耐食コーティングとしてシリコーン有機化合物および微粒子金属を含む有機バインダーを含む第1のコーティングを、液体の形態で塗布し、次いで、好ましくは耐食コーティングと異なる組成の第2のコーティングを塗布することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ワークピースおよび金属材料用の耐食(腐食抑制)コーティング組成物、耐食コーティングを有するワークピース、およびワークピースに耐食コーティングを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐食コーティングおよびコーティング組成物は、本技術分野で一般に知られている。一例として、US5,334,631は、樹脂、硬化剤および粒子の形の亜鉛からなる耐食粉体について記載している。このコーティング組成物を含む耐食コーティングを塗布するために、ワークピースを、まず、240℃に加熱する。次いで、コーティングを、50μmの厚みで、静電法により塗布する。その後、ポリエステル樹脂から構成される、さらなるトップコートを塗布する。次いで、得られたコートを180℃で硬化する。この方法での不利な点は、その導電性、すなわち耐食の有効性が最適に行われないことである。
【0003】
EP0939111は、特にワークピースの水素脆化に抵抗するように作用する金属ワークピースのためのコーティングについて記載している。そのコーティングは、エポキシ樹脂、亜鉛粉末および温度の影響下で膨張する粉体からなる。任意成分は、シラン・エポキシドタイプの接着促進剤である。膨張する粉体の目的は、亜鉛粉末の実効面積を増加させることである。ワークピースに塗布されたコーティングには、次いで、トップコートが施されている。しかし、このコーティングの不利な点は、塗布後に十分な機械的柔軟性を保証しないということである。
【特許文献1】米国特許US5,334,631
【特許文献2】欧州特許EP0939111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、金属ワークピース用耐食コーティング組成物、耐食コーティング組成物を有するワークピース、および有効な陰極腐食抑制をすることができるワークピース上に耐食コーティングを生成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、有機珪素化合物を含む有機バインダー(有機結合剤)と、微粒子金属とを含む金属ワークピース用耐食コーティング組成物によって達成される。
耐食コーティングを有するワークピースは、少なくとも、有機珪素化合物を含む有機バインダーと、微粒子金属とを含む。
本発明に係るワークピース上に耐食コーティングを生成する方法においては、有機珪素化合物および微粒子金属を含む有機バインダーを含む第1のコーティングを、耐食コーティングとして液体の形態で塗布し、次いで、好ましくは耐食コーティングと異なる組成の第2のコーティングを塗布する。
【0006】
有機バインダーとしての使用に適する材料は、特に、非常に低温下においても架橋し、次いで、相応する機械的および化学的に強固なコーティングを形成する材料を含む。使用可能なバインダーとしては、例えば、エポキシ化合物、ポリエステルおよびアクリル酸塩が挙げられる。有機珪素化合物は、Si−R結合を有するこれらの化合物を意味し、Rは、オルガノ基である。Si−O−Si(シロキサン)型の有機珪素化合物が好ましい。この種の有機珪素化合物は、金属面に容易に付着しかつ弾性コーティングを形成する典型的な有機バインダーを含む共重合体を形成する。
【0007】
使用される微粒子金属は、バインダーと容易に混和するべきであることが好ましく、陰極腐食抑制の非常に高いレベルを確立するのに好適な導電性を有するべきであり、微粒子金属は、均一のコーティングを形成するために好適であるべきである。適切な例としては、亜鉛、アルミニウム、錫、マンガンまたはそれら金属の合金が挙げられる。導電性フィラーの添加物も同様に可能である。
【0008】
コーティング組成物は、塗布の際、液体であることが有利である。これは、公知の塗布方法で簡単に、均一コートを塗布することを可能にする。しかしながら、輸送および保存中に、耐食コーティング組成物は、特に輸送コストおよび保存コストを最小限にするために、ペースト状から固体状にかなり濃縮されてもよい。
【0009】
本発明の1つの特徴としては、バインダーは、アクリル酸塩、ポリエステルまたは樹脂であり、特に、エポキシ樹脂、または有機珪素化合物とこれらの組み合わせである。対応する物質および物質の組み合わせは、本技術分野で公知である。エポキシ樹脂は、特に、機械的および化学的な堅牢性の点から非常に良好な特性を有し、堅牢性は、耐食コーティングの状況で必要である。
有機珪素化合物は、ポリオルガノシロキサンを含むことが好ましい。この種の物質は、特に、エポキシ樹脂と併用して、容易に付着する耐食コーティングの形成に有利である。更に、これらの無機/有機バインダーは、効果的に金属粒子を固結する。
【0010】
本発明の特徴によれば、バインダーは、ポリオルガノシロキサン樹脂、特に、シリコーン変性エポキシ樹脂である。この種の樹脂は、例えば、Wacker ChemieのSILRES EP7、またはDegussaのSILIKOFTAL EW7で、工業的に利用可能である。好ましくは、メチルフェニルシリコーン、フェニルシリコーンおよびメチルシリコーン樹脂である。また、ビニル基またはアリル基、アクリル酸エステル、エチレンイミノ基、ハロゲン化フェニル基、フッ素誘導体、ヒドロキシルオルガノ基、カルボキシオルガノ基、アミノアルキル基、シロキサン−シラザン共重合体、フェニレン基、または有機樹脂との共縮合物を含む樹脂が好適である。シリコーン変性エポキシ樹脂の利点は、そのような樹脂が、このコーティング組成物で生成されたコーティングにおいて、高い柔軟性で高い割合の微粒子金属を結合するということである。シャーシバネなどのばね鋼ワークピースを、例えば被覆する場合、コーティングが、高い機械的負荷の下であっても剥げ落ちないほどに、コーティングの柔軟性は十分である。
【0011】
微粒子金属は亜鉛であることが有利である。アルミニウム、錫、マンガンおよびそれらの合金も適切である。本発明に関しては、微粒子金属は、小片、好ましくは球状粒子の形態、特に粉末および/または層状粒子、特に薄片として使用される金属として理解される。亜鉛および他の前述の金属は、良好な導電性を有し、有効に陰極腐食を抑制することができる。また、もちろん、さらなる金属の使用が考えられる。亜鉛および/または他の規定の金属に基づいて対応するコーティングは、金属基板が陰極になるとき、これらの材料が、陽極として溶液に浸漬される事によって、腐食から金属基板を保護する。このメカニズムは、分解現象から基板を保護する。粉末および薄片の使用は、それらが比較的大きな表面積を有するという利点である。さらに、薄片は、有効な耐食に必要な粒子間の接触が確実に形成される薄いコートを形成することが可能であるという長所を提供する。しかしながら、薄片または粉末は、十分微細であり、1μm、5μm、10μm以上の十分に滑らかな薄いコーティングを可能とすることが保証されるべきである。
【0012】
本発明の特徴によれば、供給される形態のバインダーは、コーティング組成物の10〜35重量パーセントの割合であることが好ましく、特に好ましくは14〜24重量パーセントの割合である。したがって、比較的少量のバインダーで、有効な陰極腐食を抑制する耐食コーティングを積み重ねることが可能である。供給される形態では、バインダーは、49%〜55%の固形分を有することが好ましいが、塗布の必要条件によって、この量は、広範囲で変えることができる。また、特に、コーティング組成物の特性を調整するために、またはコストの理由で、コバインダー(補助結合剤)、特に、アクリル酸塩バインダー、ポリフッ化ビニリデンまたは他のフッ素化ポリマーなどの有機コバインダーを使用することが可能である。
【0013】
また、供給される形態でコーティング組成物の10〜90重量パーセントの割合であることが、金属に有利であり、好ましくは、35〜85重量パーセント、特に好ましくは、45〜70重量パーセントである。試験によれば、この種のコーティング組成物が、特に高いレベルの陰極腐食抑制をすることができることが分かった。概して、バインダーおよび微粒子金属は、塗布の必要条件に依存して、広範囲で変えることができることは有利であると見なされる。しかしながら、原則として、非常に高い割合の金属粒子を、コーティング組成物に組み入れることが好ましい。
【0014】
有利には、コーティング組成物は、次の成分、すなわち、架橋剤、接着促進剤、添加剤、増粘剤、触媒、フィラー、腐食防止剤、耐食顔料、着色顔料および溶剤、特に有機溶媒の1つまたは2つ以上を含む。望まれるかあるいは必要とされるならば、架橋剤を加えることによって、完全に硬化されたコーティングを提供することは可能である。基板の被覆が困難な場合、接着促進剤を使用することができる。しかし、基本的に、請求項1の耐食コーティング組成物は、それ自体、金属基板に対して優れた付着性を有することを留意すべきである。コーティング組成物の粘性またはレオロジーが調整される場合、または生成物の塗布特性を調整しなければならない場合、添加剤および増粘剤を添加することができる。触媒は、反応挙動、特に、反応速度を制御する役目をする。活性および不活性フィラーは、コーティングの機械的および熱的特性を向上するために添加され、例えば、珪酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、マイカ顔料、黒鉛および硫化モリブデンを使用することができる。特に、腐食環境で、腐食防止剤または耐食顔料を添加することができる。しかしながら、これに関しては、請求項1の耐食コーティング組成物が、それ自体、十分に陰極腐食を抑制することができるということに留意するべきである。顔料は、着色として役立つ。溶剤および液体の添加剤は、処理特性(噴霧性)を調整するために使用することができる。
【0015】
耐食コーティング組成物は、広い温度範囲で、好ましくは50℃〜300℃、特に好ましくは80℃〜150℃の低温で、予備的な架橋がなされるという事実の1つの有利な構成によって注目に値する。したがって、物理的特性の理由により、いかなる大きな熱にも晒すことができない金属ワークピースでの使用に特に適する。この代表例は、ばね鋼のコーティングであり、長時間に亘って160℃を超えて加熱される場合、その形成後に望まれない微構造の変化を受ける。本発明は、他のすべての金属材料との使用に等しく同様に適する。コーティングを定着するために、通常より少ないエネルギーを消費する必要があるので、低温での予備架橋は、そこで有利な効果を有する。さらなる結果としては、定着に必要な温度と時間との間の適度な妥協である。
【0016】
本発明によれば、耐食コーティングを有するワークピースは、有機珪素化合物および微粒子金属を含む少なくとも1つの有機バインダーを含む。被覆されたワークピースは、単にこのコーティングと共に使用することができる。しかしながら、接着促進剤の適切な次の塗布では、さらなるコーティングを備えていることが好ましく、例としては、さらに向上された化学および/または機械的保護または向上された耐候性を可能とする色付与塗料系または塗料系である。
塗布されたコーティングは、乾燥塗膜厚が1〜50μmであり、好ましくは15〜30μmである。このような薄いコート厚は、柔軟性が向上したコーティングをもたらす。ばね材料上へのコーティングの場合には、例えば、このようにして、コーティングが剥げ落ちることを防止することができる。
【0017】
有利には、ワークピースは、コーティングに先立って予め前処理される。前処理は、さらに、コーティングの付着および耐食を向上させる。前処理は、材料に適応されるべきである。前処理の方法は、本技術分野で公知である。前処理は、好ましくは吹き付け洗浄によって行われる。これらの方法は、ワークピースから汚染物質さらには表面のいかなる錆をも取り除く。特に、材料表面の薄い酸化膜は、耐食に有害であり、吹き付け洗浄によって一般的に取り除かれる。前処理は、前処理に伴う材料へのダメージがなく、ワークピースの表面上で使用されるいかなる清浄剤の残留物もないような方法で行うべきである。
【0018】
本発明の特徴においては、ワークピースは、耐食コーティングに塗布された少なくとも1つのさらなるコーティングを有し、次の成分、すなわち、熱可塑性重縮合物、特に、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアミド(PA)、ポリ(アミド−イミド)(PAI)、ポリ(エーテル−イミド)(PEI)、ポリ(イミド−スルホン)(PISO)、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK);フッ素化ポリマー、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ペルフルオロアルコキシ共重合体(PFA)、ペルフルオロプロピレンおよびペルフルオロアルキルビニルエーテルとテトラフロオルエチレンの共重合体(EPE)、テトラフロオルエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルの共重合体(MFA)、エチレンとテトラフロオルエチレンの共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンの共重合体(ECTFE)、およびフェノール樹脂系熱硬化性樹脂の1つまたは複数を含む。この種のさらなるコーティングは、化学的および機械的ダメージに対し、および風化作用の影響に対して、耐食コーティングの保護のためのトップコートとして有利に役立つ。必要に応じて、それらは、また、着色に役立ってもよい。例えば、自動車セグメントでは、例えば、石のピッチングによるキズおよび風化作用に対して、耐食コーティングが保護されるように、これらのさらなるコーティングを設計するべきである。
【0019】
好ましくは、少なくとも1つのさらなるコーティング、特に、トップコート、好ましくは粉体コーティングが、定着耐食コーティングに塗布され、特に、予備架橋された耐食コーティングに塗布される。この種のコーティングは、有利には、工業的に利用可能であり、機械的、化学的および天候影響から耐食コーティングを保護する。適切な粉体コーティング材料は、すべて市販の粉体コーティング材料であり、例としては、エポキシ、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびアクリル酸塩粉体コーティング材料、およびハイブリッド粉体コーティング材料である。
【0020】
本発明によれば、ワークピース上に耐食コーティングを生成する方法では、有機珪素化合物および微粒子金属を含む有機バインダーを含む第1のコーティングを、耐食コーティングとして液体の形態で塗布する。次いで、好ましくは耐食コーティングと異なる組成の第2のコーティングを塗布する。第2のコートは、もはや、陰極腐食抑制のために役立つことはできないので、このコートは、さらなるストレス(化学的、機械的負荷、風化作用)に対してワークピースを強化するために有利に設計することができ、および/または装飾の目的として機能させてもよい。
【0021】
第2のコーティングは、好ましくは粉体コーティングとして塗布される。既に述べたように、粉体コーティング材料は、有利には、工業的に利用可能である。それらの適切な材料としては、市販の慣習的な粉体コーティング材料が挙げられ、例としては、エポキシ、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびアクリル酸塩粉体コーティング材料、ハイブリッド粉体コーティング材料が挙げられる。それらは、ダメージおよび外部影響に対して十分な保護の下でコートを提供する。更に、上述の熱可塑性重縮合物、フッ素化ポリマー、またはフェノール樹脂系熱硬化性樹脂も適切である。
【0022】
本発明の特徴においては、第1のコーティングは、塗布後に定着されるが、完全に硬化されない。用語「定着」は、次のコートの塗布を可能とする条件のすべてに当てはまる。第1のコーティングの定着は、まず、基板に対する十分な付着を確実にし、次に、さらなるコーティングの塗布を可能とするべきである。さらなるコートを塗布する場合、特に、第1のコートのブレークダウンは起こり得るべきではない。第2のコートを塗布した後だけ、好ましくは、最終コートを塗布した後、少なくともワークピースの2度塗りコーティングを完全に硬化する。用語「完全に」は、コートが、ワークピースのそれぞれの使用の目的で、便利、または実質的に完全に架橋される状態をすべて包含する。これは、ワークピース上の熱負荷を低減し、特に、ばね鋼材料または同様の材料に関して特に有利である。硬化は、極低温で、極短時間で起こるべきである。
【0023】
本発明の1つの特徴によれば、第1のコーティングは、1〜50μm、好ましくは15〜30μmの乾燥被覆厚で塗布される。非常に薄い均一の乾燥被覆厚は、さらに、コーティングの柔軟性を向上する。
ワークピースは、処理に先立って、予め前処理されるのが有利である。前処理には、吹き付け洗浄処理が好適である。既に述べたように、適切な清浄表面は、陰極腐食抑制の向上に有利である。しかしながら、同様に、被覆される表面に、いかなる清浄剤の残留物もなく、ワークピースは破損されないことをさらに確実にするべきである。
【0024】
本発明の1つの特徴によれば、第1のコーティング後、塗布されたコートは、50℃〜300℃、好ましくは80℃〜150℃の温度に晒され、第2のコーティング後、塗布されたコートは、400℃以下の温度、好ましくは、130℃〜240℃、特に好ましくは、130℃〜160℃の温度に晒される。このように第1のコートを処理することは、コーティングの熱定着を確実にする。この場合のコーティングは、完全には架橋されないが、さらなるコーティングの塗布に適する。続く第2のコートの塗布は、400℃まで至る高い温度、好ましくは130℃〜240℃、特に好ましくは、130℃〜160℃でコーティングを硬化する。しかしながら、400℃まで至る温度は、特別のコーティングおよび乾燥方法の場合のみに使用される。温度に敏感なワークピースの場合には、かなりの低温を使用することが一般に必要である。また、適切なバインダーと共に、この方法は低温で有利に使用することができ、それによって、ばね材料などの感熱材料の物理的特性を、例えば変化させないまま残す。ワークピースは、前述の温度(基板温度)に加熱されることが好ましい。しかしながら、原則として、誘導加熱の例の場合、ワークピース全体よりはむしろ、コーティング、または直接被覆される表面をこの温度に加熱することで十分である。
第1のコーティングは、少なくとも5秒内で有利に定着し、好ましくは15〜90分以内である。誘導加熱方法の場合、特に、短時間を使用し、一方、従来の加熱方法では、定着は、長時間持続する可能性がある。有利には、第2のコーティングを塗布した後、コートを、少なくとも10秒間、好ましくは15〜90分間硬化する。
【実施例】
【0025】
実施例を用いて、本発明を以下に例証する。
耐食コーティング組成物については、以下の物質を最初にバッチ処理する。
【0026】


【0027】
上述の原料を、15〜25分間、40℃を超えない温度で溶解槽にて分散する。コーティング組成物は、本技術分野で公知の方法を用いてワークピースに塗布することができる。一例として、コートは、HVLP(高い体積低圧)スプレー方法で塗布することができる。液体の形態でワークピースに次いで塗布されたコーティング組成物を、30分間以上、130℃の基板温度で予備架橋をする。次いで、市販の慣習的な黒エポキシ樹脂粉体コーティング材料を、定着されたコーティングに塗布する。この粉体コーティングの乾燥被覆厚は、60〜100μmである。次いで、被覆されたワークピースを、160℃〜200℃の基板温度とし、それによって、2度塗り塗布されたコートを一緒に硬化する。この基板温度を、15〜25分間維持する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機珪素化合物を含む有機バインダーと、
微粒子金属と、を含む、
金属ワークピース用耐食コーティング組成物。
【請求項2】
前記コーティング組成物は、塗布時には液体である、
ことを特徴とする請求項1記載の金属ワークピース用耐食コーティング組成物。
【請求項3】
前記有機バインダーは、アクリル酸塩、ポリエステル、または樹脂、特に、エポキシ樹脂、または有機珪素化合物とこれらの組み合わせである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属ワークピース用耐食コーティング組成物。
【請求項4】
前記有機珪素化合物は、ポリオルガノシロキサンを含む、
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1つに記載の金属ワークピース用耐食コーティング組成物。
【請求項5】
前記バインダーは、ポリオルガノシロキサン樹脂、特に、シリコーン変性エポキシ樹脂である、
ことを特徴とする請求項1〜4いずれか1つに記載の金属ワークピース用耐食コーティング組成物。
【請求項6】
前記微粒子金属は、好ましくは、球状粒子、特に粉末および/または層状粒子、特に薄片の形態をなす、亜鉛、アルミニウム、錫、マンガン、またはこれらの合金である、
ことを特徴とする請求項1〜5いずれか1つに記載の金属ワークピース用耐食コーティング組成物。
【請求項7】
供給された形態の前記バインダーは、前記コーティング組成物の10〜35重量パーセントの割合、好ましくは14〜24重量パーセントの割合である、
ことを特徴とする請求項1〜6いずれか1つに記載の金属ワークピース用耐食コーティング組成物。
【請求項8】
前記金属は、供給された形態の前記コーティング組成物の10〜90重量パーセントの割合、好ましくは、35〜85重量パーセント、特に好ましくは、45〜70重量パーセントの割合である、
ことを特徴とする請求項1〜7いずれか1つに記載の金属ワークピース用耐食コーティング組成物。
【請求項9】
前記コーティング組成物は、架橋剤、接着促進剤、添加剤、増粘剤、触媒、フィラー、腐食防止剤、耐食顔料、着色顔料および溶剤、特に有機溶媒の1つまたは複数の成分を含む、
ことを特徴とする請求項1〜8いずれか1つに記載の金属ワークピース用耐食コーティング組成物。
【請求項10】
前記コーティング組成物は、50℃〜300℃、好ましくは、80℃〜150℃の温度範囲で予備架橋されている、
ことを特徴とする請求項1〜9いずれか1つに記載の金属ワークピース用耐食コーティング組成物。
【請求項11】
少なくとも有機珪素化合物を含む有機バインダーと、
微粒子金属と、を含む、
耐食コーティングを有するワークピース。
【請求項12】
塗布された前記コーティングは、乾燥被覆厚が1〜50μm、好ましくは15〜30μmである、
ことを特徴とする請求項11記載の耐食コーティングを有するワークピース。
【請求項13】
コーティングに先立って予め前処理されている、
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の耐食コーティングを有するワークピース。
【請求項14】
前記前処理は、吹き付け洗浄によって行われる、
ことを特徴とする請求項13記載の耐食コーティングを有するワークピース。
【請求項15】
少なくとも1つのさらなるコーティングは、定着された前記耐食コーティング、特に、予備架橋された前記耐食コーティングに塗布され、
前記さらなるコーティングは、
熱可塑性重縮合物、特に、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアミド(PA)、ポリ(アミド−イミド)(PAI)、ポリ(エーテル−イミド)(PEI)、ポリ(イミド−スルホン)(PISO)、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK);及び
フッ素化ポリマー、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ペルフルオロアルコキシ共重合体(PFA)、ペルフルオロプロピレンおよびペルフルオロアルキルビニルエーテルとテトラフロオルエチレンの共重合体(EPE)、テトラフロオルエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルの共重合体(MFA)、エチレンとテトラフロオルエチレンの共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンの共重合体(ECTFE);及び
フェノール樹脂系熱硬化性樹脂
の1つ又は複数の成分を含む、
ことを特徴とする請求項11〜14いずれか1つに記載の耐食コーティングを有するワークピース。
【請求項16】
少なくとも1つのさらなるコーティング、特に、トップコート、好ましくは、粉体コーティングは、前記定着された耐食コーティング、特に、予備架橋された前記耐食コーティングに塗布されている、
ことを特徴とする請求項11〜15いずれか1つに記載の耐食コーティングを有するワークピース。
【請求項17】
有機珪素化合物および微粒子金属を含む有機バインダーを含む第1のコーティングを、耐食コーティングとして液体の形態で塗布し、
次いで、好ましくは前記耐食コーティングとは異なる組成の第2のコーティングを塗布する、
ワークピース上に耐食コーティングを生成する方法。
【請求項18】
前記第2のコーティングを粉体コーティング材料として塗布する、
ことを特徴とする請求項17記載のワークピース上に耐食コーティングを生成する方法。
【請求項19】
前記第1のコーティングを、塗布後定着するが、完全に硬化しない、
ことを特徴とする請求項17又は18に記載のワークピース上に耐食コーティングを生成する方法。
【請求項20】
前記第2のコートを塗布した後のみ、好ましくは最終コートを塗布した後に、ワークピースの少なくとも2度塗りコーティングを完全に硬化する、
ことを特徴とする請求項17〜19いずれか1つに記載のワークピース上に耐食コーティングを生成する方法。
【請求項21】
前記第1のコーティングを、1〜50μm、好ましくは、15〜30μmの乾燥被覆厚で塗布する、
ことを特徴とする請求項17〜20いずれか1つに記載のワークピース上に耐食コーティングを生成する方法。
【請求項22】
前記ワークピースを、コーティングに先立って予め前処理する、
ことを特徴とする請求項17〜21いずれか1つに記載のワークピース上に耐食コーティングを生成する方法。
【請求項23】
前記前処理は、吹き付け洗浄処理である、
ことを特徴とする請求項22記載のワークピース上に耐食コーティングを生成する方法。
【請求項24】
前記第1のコーティング後、塗布されたコートを、50℃〜300℃、好ましくは、80℃〜150℃の温度に晒らし、
前記第2のコーティング後、塗布されたコートを、400℃まで至る温度、好ましくは、130℃〜240℃、特に好ましくは、130℃〜160℃の温度に晒す、
ことを特徴とする請求項17〜23いずれか1つに記載のワークピース上に耐食コーティングを生成する方法。
【請求項25】
前記第1のコーティングを、少なくとも5秒、好ましくは15〜90分間、定着する、
ことを特徴とする請求項17〜24いずれか1つに記載のワークピース上に耐食コーティングを生成する方法。
【請求項26】
前記第2のコーティングを塗布した後、少なくとも10秒、好ましくは15〜90分間、前記コートを硬化する、
ことを特徴とする請求項17〜25いずれか1つに記載のワークピース上に耐食コーティングを生成する方法。


【公表番号】特表2008−506835(P2008−506835A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520719(P2007−520719)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007360
【国際公開番号】WO2006/007985
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(501241173)エーヴァルト デルケン アーゲー (7)
【Fターム(参考)】