説明

金属体の表面温度測定装置及び表面温度測定方法並びに金属体の製造方法

【課題】 装置構成を小型化できると共に高精度に金属体の表面温度を測定できる表面温度測定装置等を提供する。
【解決手段】 表面温度測定装置100は、放射温度計1と、放射温度計1の受光部11と測温対象である金属体M表面との間において、金属体M表面に対向し且つ金属体M表面に略平行に配置した第1の反射体2と、金属体M表面から放射され、金属体M表面と第1の反射体2との間を交互に反射した熱放射光Rを、放射温度計1の受光部11に向けて反射させるように配設した第2の反射体3とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延、連続焼鈍、連続鋳造など、鋼材等の金属体の製造工程において、金属体の表面温度を多重反射を利用した放射測温によって測定する装置及び方法並びにこの方法によって表面温度を測定する工程を含む金属体の製造方法に関し、特に、装置構成を小型化できると共に高精度に金属体の表面温度を測定できる表面温度測定装置及び方法並びにこの方法によって表面温度を測定する工程を含む金属体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、連続焼鈍炉等、連続して通板される鋼板を連続的に処理するプロセスにおいて、鋼板の表面温度を測定する手段として、接触式の温度計が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、鋼板の表面温度を測定する手段として接触式の温度計を用いた場合、連続して鋼板を通板させるプロセスにおいては、鋼板の表面を温度計で傷つけるおそれがあることや、温度計が摩耗するといった問題がある。
【0004】
このため、非接触式の温度計を用いて鋼板表面温度を測定する方法が種々提案されており、一般的には放射温度計が用いられる。放射温度計は、測温対象からの熱放射光を検出することにより温度を測定するものである。
【0005】
ここで、放射温度計を用いた温度測定方法には、測温対象の放射率が低かったり、周囲からの雑光が多い場合には、測温誤差が大きくなるという問題がある。
【0006】
この問題を解決するため、鋼板に対向する位置に反射体を設置し、鋼板から放射された熱放射光を鋼板表面と反射体との間で多重反射させることにより鋼板の見かけ上の放射率を大きくして、測温対象を黒体とみなす(黒体条件を得る)方法が種々提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1〜3には、反射体の傾斜角度と、多重反射した熱放射光を受光する角度とを所定の値に規定した方法が提案されている。また、特許文献4、5には、竪型炉等において平行に向き合った鋼板間で熱放射光を多重反射させる方法が提案されている。
【特許文献1】特開昭59−87329号公報
【特許文献2】特開昭59−111026号公報
【特許文献3】特開昭60−119425号公報
【特許文献4】特開昭60−86431号公報
【特許文献5】特開昭61−96425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、多重反射を利用した放射温度計による温度測定方法は、非接触式の測温方法ではあるものの、鋼板表面での熱放射光の散乱角が比較的大きいため、測温精度を高めるには、鋼板表面に測定装置を近づける必要がある。例えば、反射体と鋼板表面との離間距離が100mm以上であれば、現実的には測定不可能である。このため、連続焼鈍炉等、連続して通板される鋼板を測温する環境下では、長時間の設置によって、測定装置を構成する各部品に熱膨張による歪みが生じ、精度の良い測温が困難となることから、装置全体を冷却する必要が生じる。従って、熱放射の影響と冷却効率の両面から考えて、装置全体の寸法は極力小型化することが肝要である。
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法では、反射体の側方に放射温度計の受光部を配置し、比較的大きな反射角の熱放射光(すなわち、鋼板との成す角度が小さい熱放射光)を直接受光するように構成されているため、必然的に装置全体が大型化(熱放射光が多重反射される方向に沿って大型化)してしまうという問題がある。
【0010】
また、特許文献1〜3に記載の方法によれば、鋼板表面と反射体との間の多重反射の回数が最大となるように反射体の傾斜角度が決定されるが、パスライン変動等によって鋼板表面の傾きが変化した場合、前記多重反射の回数が大きく変動してしまい、鋼板表面温度を精度良く測定できないという問題もある。
【0011】
さらに、特許文献4、5に記載の方法は、竪型炉等、鋼板が平行に向き合った状態で通板される条件でしか適用できないという問題がある。
【0012】
以上に説明した従来技術の問題は、鋼板に限らず、各種金属体の表面温度を多重反射を利用した放射温度計によって測定する場合において共通する問題である。
【0013】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、装置構成を小型化できると共に高精度に金属体の表面温度を測定できる表面温度測定装置及び方法並びにこの方法によって表面温度を測定する工程を含む金属体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するべく、本発明は、放射温度計と、前記放射温度計の受光部と測温対象である金属体表面との間において、前記金属体表面に対向し且つ前記金属体表面に略平行に配置した第1の反射体と、前記金属体表面から放射され、前記金属体表面と前記第1の反射体との間を交互に反射した熱放射光を、前記放射温度計の受光部に向けて反射させるように配設した第2の反射体とを備えることを特徴とする金属体の表面温度測定装置を提供するものである。
【0015】
本発明に係る表面温度測定装置は、放射温度計の受光部と測温対象である金属体表面との間において、金属体表面に対向し且つ金属体表面に略平行に配置した第1の反射体を備える。すなわち、第1の反射体の背面側(金属体表面に対向する側と反対側)に放射温度計の受光部を備える構成であるため、放射温度計の受光部を金属体表面から離間させることが可能であり、放射温度計への金属体表面からの熱放射の影響を軽減することが可能である。また、本発明に係る表面温度測定装置は、金属体表面から放射され、金属体表面と第1の反射体との間を交互に反射した熱放射光を、放射温度計の受光部に向けて反射させるように配設した第2の反射体を備える構成であるため、例えば、第2の反射体を第1の反射体の端部外方において金属体表面に略垂直になるように配設すれば、第2の反射体を配設せずに放射温度計の受光部で直接受光する場合に比べて、放射光の反射される方向に沿った装置の長さを小型化できるという利点を有する。従って、装置構成を小型化できるために、装置全体の効率的な冷却を行うことができ、ひいては熱放射による装置構成部材の熱膨張による歪みが低減され、高精度に金属体の表面温度を測定することが可能である。
【0016】
なお、好ましくは、前記第1の反射体は、平板状に形成され、前記熱放射光の反射される方向に沿った長さLが下記の式(1)を満足するように構成される。
L≧(2lp/tan(90°−θa))・(n−1)+d/cosθa・・・(1)
ここで、上記式(1)において、lpは第1の反射体と金属体表面との離間距離を意味し、θaは金属体表面と第1の反射体との間を反射する熱放射光の反射角を意味し、下記の式(2)を満足する値である。また、nは放射温度計の受光部で受光される熱放射光の内、第1の反射体で反射する回数が最大となる熱放射光の反射回数を意味し、下記の式(3)を満足する値である。さらに、dは第1の反射体近傍における放射温度計の視野径を意味する。
θa>sin−1(d/(2lp))・・・(2)
εmin≦ε+Σε・(ρ・(1−ε))・・・(3)
なお、上記式(3)において、εminは測温に必要となる放射率の最小値を、εは金属体の放射率を、ρは第1の反射体の反射率を、Σはi=1〜nまで加算することを意味する。
【0017】
斯かる好ましい構成によれば、後述するように、測温に必要となる放射率の最小値以上の見かけの放射率を得ることが可能となり、より一層高精度に金属体の表面温度を測定することが可能である。
【0018】
また、好ましくは、前記第1の反射体の前記熱放射光の反射される方向と直交する方向の幅Wが下記の式(4)を満足するように構成される。
(W−d)/(2lp)≧tanθb・・・(4)
ここで、上記式(4)において、θbは金属体表面での熱放射光の散乱角を意味する。
【0019】
斯かる好ましい構成によれば、後述するように、金属体表面での熱放射光の散乱角が大きい場合であっても、見かけの放射率を高めることが可能であり、より一層高精度に金属体の表面温度を測定することが可能である。
【0020】
前記第1の反射体としては、例えば、ガラスに酸化チタンと酸化シリコンとを積層した干渉ミラーを好適に用いることができる。
【0021】
また、前記課題を解決するべく、本発明は、放射温度計の受光部と測温対象である金属体表面との間において、前記金属体表面に対向し且つ前記金属体表面に略平行に第1の反射体を配置し、前記金属体表面から放射され、前記金属体表面と前記第1の反射体との間を交互に反射した熱放射光を、第2の反射体で前記放射温度計の受光部に向けて反射させることを特徴とする金属体の表面温度測定方法としても提供される。
【0022】
好ましくは、前記放射温度計の受光部で受光される熱放射光の内、前記第1の反射体で反射する回数が最大となる熱放射光の反射回数nが下記の式(3)を満足するように構成される。
εmin≦ε+Σε・(ρ・(1−ε))・・・(3)
なお、上記式(3)において、εminは測温に必要となる放射率の最小値を、εは金属体の放射率を、ρは第1の反射体の反射率を、Σはi=1〜nまで加算することを意味する。
【0023】
本発明に係る表面温度測定方法は、金属体が連続して通板される鋼板である場合に好ましく適用することが可能である。
【0024】
また、本発明は、方法によって表面温度を測定する工程を含むことを特徴とする金属体の製造方法としても提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、装置構成を小型化できると共に高精度に金属体の表面温度を測定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について、鋼板の表面温度を測定する場合を例に挙げて説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る表面温度測定装置の概略構成を示す図であり、図1(a)は側面図を、図1(b)は平面図を示す。図1に示すように、本実施形態に係る表面温度測定装置100は、放射温度計1と、放射温度計1の受光部11と測温対象である鋼板M表面との間において、鋼板M表面に対向し且つ鋼板M表面に略平行に配置した第1の反射体2と、鋼板M表面から放射され、鋼板M表面と第1の反射体2との間を交互に反射(多重反射)した熱放射光Rを、放射温度計1の受光部11に向けて反射させるように配設した第2の反射体3とを備えている。なお、本実施形態に係る表面温度測定装置100は、水平方向(図1(b)の矢符の方向)に連続して通板される鋼板Mの表面温度を、その上面側から測定する場合を例に挙げて説明する。
【0028】
放射温度計1は、パージガスを噴出するためのノズル内に熱放射光を受光するための光ファイバが配置された受光部11と、受光部11で受光した熱放射光を放射温度計本体(図示せず)に伝送するための光ファイバ12と、放射温度計本体とを備えている。なお、放射温度計本体は、受光部11で受光され光ファイバ12によって伝送された熱放射光を光電変換し、温度に換算するように構成されている。
【0029】
第1の反射体2は、前述のように、放射温度計1の受光部11と鋼板M表面との間において、鋼板M表面に対向し且つ鋼板M表面に略平行に配置されている。換言すれば、第1の反射体2の背面側(鋼板M表面に対向する側と反対側)に放射温度計1の受光部11が配置された構成であるため、放射温度計1の受光部11は鋼板M表面から離間されており、鋼板M表面からの熱放射の影響を軽減することが可能である。
【0030】
第1の反射体2は、高温となる鋼板Mに比較的近接して配置されるため、高温となり得る。第1の反射体2として、一般的に反射体として多用されるアルミをメッキしたアルミミラーを用いた場合、600℃以上になると、アルミの酸化が進行し、その反射率が急激に低下するため、多重反射の回数が同じであっても見かけの放射率の上昇が抑制される結果、測温精度が低下するという問題がある。アルミミラーを冷却し、高温になることを抑制することも考えられるものの、装置構成が大きくなってしまうという欠点がある。
【0031】
そこで、第1の反射体2としては、石英ガラス等の耐熱母材に多層の誘電膜をコーティングすることにより形成され、干渉現象により高い反射率を得ることが可能な干渉ミラーを用いることが好ましい。特に、上記誘電膜として、酸化による反射率の変化が少ない酸化チタンと酸化シリコンとを用いるのが好ましい。図2は、アルミミラー及び石英ガラスに酸化チタン膜と酸化シリコン膜を多層に積層した干渉ミラーのそれぞれについて、温度による反射率の変化を調査した結果を示すグラフである。図2に示すように、干渉ミラーは、アルミミラーと異なり、反射率が約98%と極めて高い上、たとえ800℃の高温となっても反射率の劣化が生じないという利点がある。
【0032】
また、第1の反射体2が高温になると、第1の反射体2自体から熱放射光(外乱光)が発生し、この外乱光が放射温度計1の受光部11で受光されることにより測温誤差が生じるという問題もある。この際、第1の反射体2の反射率が高いと、逆に放射率は小さくなる(放射率=1−反射率)ため、外乱光による測温誤差を小さくすることが可能である。例えば、測温対象である鋼板Mの放射率が0.4で、温度が600℃であるとき、第1の反射体2の温度が650℃の条件においてその反射率が90%の場合には、測温誤差が17℃と大きくなってしまう。一方、第1の反射体2の反射率が98%の場合には、測温誤差は4℃となり、実用的に問題とならない測温誤差に抑制することが可能である。以上のように、第1の反射体2自体に起因した外乱光の影響を抑制するという点でも、第1の反射体2として干渉ミラーを用いることが好ましい。
【0033】
第2の反射体3は、前述のように、鋼板M表面から放射され、鋼板M表面と第1の反射体2との間を交互に反射した熱放射光Rを、放射温度計1の受光部11に向けて反射させるように配設されている。より具体的には、第2の反射体3は、第1の反射体2の端部外方において鋼板M表面に略垂直になるように、そして、第2の反射体3の下端部が第1の反射体2と鉛直方向に見て略同位置又は上方に位置するように配設されている。そして、後述する反射角θaで鋼板M表面を反射した熱放射光Rが第2の反射体3に入射し、第2の反射体3で反射した熱放射光R(熱放射光Rの中心)が、ちょうど放射温度計1の受光部11(受光部11の中心)に入射されるように第2の反射体3の向きが微調整されている。
【0034】
第2の反射体3は、第1の反射体2と異なり、その反射面が鋼板Mに対向しないため第1の反射体2に比べて高温とはならない。また、反射率が既知で安定している限り、高い反射率は不要である。従って、第2の反射体3としては、アルミや金をメッキした一般的な反射ミラーや、金属表面を鏡面研磨した反射ミラーを用いることが可能である。
【0035】
本実施形態に係る表面温度測定装置100は、以上の構成を有するため、装置全体の寸法(特に、熱放射光Rの反射される方向に沿った装置100の長さ)を小型化することが可能であり、鋼板M表面からの熱放射を直接受ける部材を第1の反射体2のみにすることが可能である。従って、装置100全体の効率的な冷却を行うことができ(本実施形態では、冷却用ジャケット4内に装置100を収容している)、ひいては熱放射による装置構成部材の熱膨張による歪みが低減され、高精度に鋼板Mの表面温度を測定することが可能である。
【0036】
ここで、好ましい構成として、本実施形態に係る第1の反射体2は、平板状に形成され、熱放射光Rの反射される方向に沿った長さL(図1(b)参照)が下記の式(1)を満足するように構成されている。
L≧(2lp/tan(90°−θa))・(n−1)+d/cosθa・・・(1)
ここで、上記式(1)において、lpは第1の反射体2と鋼板M表面との離間距離を意味し、θaは鋼板M表面と第1の反射体2との間を反射する熱放射光Rの反射角を意味し、下記の式(2)を満足する値である。また、nは放射温度計1の受光部11で受光される熱放射光Rの内、第1の反射体2で反射する回数が最大となる熱放射光Rの反射回数を意味し、下記の式(3)を満足する値である。さらに、dは第1の反射体2近傍における放射温度計1の視野径を意味する。
θa>sin−1(d/(2lp))・・・(2)
εmin≦ε+Σε・(ρ・(1−ε))・・・(3)
なお、上記式(3)において、εminは測温に必要となる放射率の最小値を、εは鋼板Mの放射率を、ρは第1の反射体2の反射率を、Σはi=1〜nまで加算することを意味する。
【0037】
以下、第1の反射体2の熱放射光Rの反射される方向に沿った長さLが上記式(1)を満足することが好ましい理由について、具体的に説明する。
【0038】
本実施形態に係る表面温度測定装置100は、鋼板M表面から放射され、鋼板M表面と第1の反射体2との間を交互に反射(多重反射)した熱放射光Rを放射温度計1の受光部11で受光して測温する構成である。このように、熱放射光Rの多重反射を利用する場合、その原理上、熱放射光Rの反射回数が多ければ多いほど、見かけの放射率が大きくなり、測温精度を高めることが可能である。そして、熱放射光Rの反射回数を多くするには、熱放射光Rが鋼板M表面に対して垂直に近い状態、すなわち、鋼板M表面と第1の反射体2との間を反射する熱放射光Rの反射角をできるだけ小さくすることが好ましい。換言すれば、測温精度を高めるべく、反射回数のできるだけ多い熱放射光Rを受光部11で受光するには、できるだけ反射角の小さい熱放射光Rを受光部11で受光できるような位置関係で、第2の反射体2と受光部11とを配設すればよい。
【0039】
しかしながら、受光部11を構成する光ファイバには、図3に示すような、受光部11からの距離lsに応じて光を検出できる視野の広さ(視野径ds)が存在する。視野径dsは、光ファイバの規格等に応じて異なると共に、光ファイバの先端にレンズを取り付けることにより視野を拡大することも可能である。ここで、第1の反射体2近傍における放射温度計1(受光部11)の視野径をd(この視野径dは第1の反射体2と鋼板M表面との間においても略一定であるとする)と、図4に示すように、反射角度θa小さくし過ぎた場合、受光部11の視野の一部を第1の反射体2が遮ってしまい(視野欠けが生じ)、多重反射した熱放射光Rの一部を受光部11で受光できなくなる結果、測温精度が劣化してしまうという問題がある。より具体的には、図4に示すように、第1の反射体2の第2の反射体(図4には図示せず)側の最端部(図4の紙面左側の最端部)で反射した視野径dの端部に位置する熱放射光R11、R12の内、第1の反射体2側の熱放射光R12(及びその近傍の熱放射光)が鋼板Mにおいて反射した熱反射光R13(及びその近傍の熱放射光)が第1の反射体2で遮られてしまう。
【0040】
上記問題を解消するには、図5に示すように、第1の反射体2が受光部11の視野(視野径d)を遮らないように反射角度θaを設定する必要がある。より具体的には、第1の反射体2の第2の反射体(図5には図示せず)側の最端部(図5の紙面左側の最端部)で反射した視野径dの端部に位置する熱放射光R11、R12の内、第1の反射体2側の熱放射光R12が鋼板Mにおいて反射した熱反射光R13が第1の反射体2で遮られない条件とする必要がある。これは、幾何学的な関係より、下記の式(2)を満足する反射角度θaとする必要があることを意味する。
θa>sin−1(d/(2lp))・・・(2)
ここで、lpは第1の反射体2と鋼板M表面との離間距離を意味する。
【0041】
なお、第1の反射体2と鋼板M表面との離間距離lpは、鋼板Mのパスライン変動や、第1の反射体2の耐熱性の他、第1の反射体2と鋼板M表面との間にパージを施す場合にはそのパージ能力等に応じて、適宜の値が設定される。具体的には、離間距離lpを大きく設定すればするほど、視野欠けが生じない反射角θaの最小値(すなわち、式(2)の右辺)を小さくできる反面、第1の反射体2と鋼板M表面との間にパージを施すことが困難となる他、後述するように、熱放射光Rの反射回数を多くするには第1の反射体2の長さLを大きくする必要が生じる。従って、離間距離lpは、鋼板Mのパスライン変動や、第1の反射体2の耐熱性が許す限り、小さく設定することが好ましい。
【0042】
次に、放射温度計1の受光部11で受光される熱放射光Rの内、第1の反射体2で反射する回数が最大となる熱放射光Rの反射回数n(すなわち、第1の反射体2の第2の反射体3配設側と反対側の端部で最初に反射した熱放射光Rが、第2の反射体3に到達するまでに第1の反射体2によって反射された回数。図1(b)に図示した例ではn=7である)は、以下のようにして算出される。
【0043】
図6は、多重反射を利用せずに放射温度計で直接測温する場合における、測温対象の実際の放射率と測温誤差(放射率設定値を0.7にした場合における測温誤差)との関係を示すグラフである。放射率は、測温対象の物性や酸化状態等によって大きく異なる。例えば、連続焼鈍炉等、連続して通板される鋼板Mを連続的に処理するプロセスにおいては、最も放射率の小さい材質からなる鋼板Mの放射率(例えば、0.4)から、鋼板Mが酸化した状態における放射率1.0まで大きく変動することになる。図6に示すように、測温対象である鋼板Mの最も小さな放射率を0.4、最も大きな放射率を1.0とし、放射温度計の放射率設定値をその中間値である0.7に設定(固定)したとすると、鋼板Mの実際の表面温度が800℃である場合、±30℃程度の測温誤差が生じることになる。従って、測温誤差を低減するには、放射率の小さな測温対象については、多重反射によって見かけの放射率を大きくし、酸化した状態における放射率との差を小さくすることが必要である(放射率が1.0に近い測温対象については、多重反射による見かけの放射率の上昇無し)。
【0044】
図7は、多重反射を利用して見かけの放射率を大きくした後、放射温度計で測温した場合における、測温対象の見かけの放射率と測温誤差(鋼板Mの実際の表面温度が800℃であり、放射率設定値を1.0にした場合における測温誤差)との関係を示すグラフである。許容される測温誤差から、測温に必要となる放射率(見かけの放射率)の最小値εminが決まる。例えば、図7に示す例において、5℃以内の測温精度を得るには、見かけの放射率を0.9以上(すなわち、εmin=0.9)にする必要がある。
【0045】
図8は、放射温度計1の受光部11で受光される熱放射光Rの内、第1の反射体2で反射する回数が最大となる熱放射光Rの反射回数nと、この反射回数nのときに得られる見かけの放射率εとの関係を示すグラフである。そして、見かけの放射率εと反射回数nとの間には、下記の式(5)の関係式が成立する。
ε=ε+Σε・(ρ・(1−ε))・・・(5)
ここで、上記式(5)において、εは鋼板Mの放射率(実際の放射率)を、ρは第1の反射体2の反射率を、Σはi=1〜nまで加算することを意味する。
【0046】
そして、前述した測温に必要となる放射率の最小値εmin≦εとなるように、反射回数nを設定すればよい。すなわち、下記の式(3)を満足するように反射回数nを設定すればよい。
εmin≦ε+Σε・(ρ・(1−ε))・・・(3)
反射回数nが上記式(3)を満足すれば、実際の放射率がどのような鋼板Mであっても、測温誤差を許容範囲内にすることが可能である。
【0047】
そして、上記の式(2)を満足する反射角θaで、式(3)を満足する反射回数nを得るためには、幾何学的な条件より、第1の反射体2の熱放射光Rの反射される方向に沿った長さLを、前述した式(1)を満足するように構成すればよい。換言すれば、第1の反射体2の熱放射光Rの反射される方向に沿った長さLを前述した式(1)を満足するように設定することにより、測温誤差を許容範囲内にすることができると共に、第1の反射体2の熱放射光Rの反射される方向に沿った長さLを必要最小限の寸法(L=式(1)の右辺とした場合)とすることが可能である。
【0048】
また、好ましい構成として、本実施形態に係る第1の反射体2は、熱放射光Rの反射される方向と直交する方向の幅W(図1(b)参照)が下記の式(4)を満足するように構成されている。
(W−d)/(2lp)≧tanθb・・・(4)
ここで、上記式(4)において、θbは鋼板M表面での熱放射光Rの散乱角を意味する。
【0049】
以下、第1の反射体2の熱放射光Rの反射される方向と直交する方向の幅Wが上記式(4)を満足することが好ましい理由について、具体的に説明する。
【0050】
一般に、測温対象の反射特性(散乱特性)が鏡面に近ければ近いほど、測温対象表面と第1の反射体2との間の多重反射によって見かけの放射率が高くなり易く、測温誤差の少ない温度測定が可能である。
【0051】
しかしながら、測温対象の反射特性は、鏡面性に限るものではなく、一定の拡がりをもって散乱する特性を有する場合も多い。図9は、測温対象としての鋼板の反射特性の一例を示す図であり、図9(a)は鏡面性の鋼板の反射特性の一例を、図9(b)は散乱性の鋼板の反射特性の一例を示す。具体的には、図9に示すデータは、各鋼板の法線方向から波長0.9μm帯の赤外光を照射し、各鋼板表面で反射した光を前記法線方向に対して成す角度を変更しながら光検出器で測定した結果を示す。図9の横軸は、鋼板の法線方向に対して成す角度θを、縦軸はθ=0°の時の反射強度を基準とした相対的な反射強度を示す。
【0052】
図9(a)に示す鋼板M(冷延鋼板No.1)は、散乱する光(θ≠0°の光)が非常に少ない鏡面性の反射特性を有する。このような鏡面性の鋼板Mの場合には、第1の反射体2の幅Wを前述した放射温度計1の視野径dの2倍程度に設定すれば(第1の反射体2の幅Wを視野径dと完全に等しく設定したのでは、鋼板Mで散乱した熱放射光Rの一部が第1の反射体2で反射されなくなるため、2倍程度に設定するのが好ましい)、放射温度計1の視野径d内に存在し且つ鋼板Mで反射した熱放射光Rの略全てを第1の反射体2で反射させることが可能であり、これにより見かけの放射率を効果的に高めることが可能である。
【0053】
一方、図9(b)に示す鋼板M(冷延鋼板No.2、No.3)では、θ=±15°程度の範囲まで散乱する光が存在している。このような散乱性の反射特性を有する鋼板Mの場合、図10に示すように、第1の反射体2によって反射できる熱放射光Rの最大の散乱角θmaxは、下記の式(6)で表されることになる。
tanθmax=(W−d)/(2lp)・・・(6)
【0054】
例えば、図9(a)に示す鋼板Mの場合と同様に、放射温度計の視野径d=10mmとし、第1の反射体2の幅Wを視野径dの2倍であるW=20mmに設定(離間距離lp=60mm)に設定した場合、上記式(6)より、θmax≒5°となるため、図9(b)に示す鋼板Mでは、±15°程度の範囲まで熱放射光Rを散乱するにも関わらず、±5°程度の散乱光しか第1の反射体2で反射させることができず、見かけの放射率を効果的に高めることができない。従って、測定対象の散乱性を考慮する場合には、鋼板M表面での熱放射光Rの散乱角θb(実質的に散乱光が得られなくなる角度であり、図9(b)に示す例ではθb≒15°)≦θmaxとなるように、第1の反射体2の幅Wを設定すればよい。すなわち、上記式(4)を満足するように、第1の反射体2の幅Wを設定することが好ましい。
【0055】
以上に説明した本実施形態に係る表面温度測定装置100によれば、装置構成を小型化できると共に、放射率が変動する測温対象であっても多重反射を利用して高精度に表面温度を測定することが可能である。従って、鋼板等の連続圧延、連続焼鈍、連続塗装、連続メッキ等、測温対象である金属体が連続的に移動し処理を施されるプロセスにおいて、好適に用いることが可能である。
【0056】
なお、以上に説明した本実施形態において、第1の反射体2の形状は、平面視において長方形としているが、本発明はこれに限るものではなく、熱放射光Rの経路を妨げない限りにおいて、正方形、三角形、台形、楕円形、円形等の種々の形状とすることが可能である。
【0057】
また、第1反射体2の鋼板Mに対向する側の表面や、第1の反射体2と鋼板M表面との間の空間は、ガスパージを施すことによって、できるだけ清浄化した状態とすることが好ましい。パージするガスは、空気や窒素等のように、熱放射光を遮らない無色のガスである限りにおいて、特にその種類は限定されない。また、パージ方式も、清浄化した状態を維持できる限りにおいて、特に限定されるものではない。
【0058】
また、本実施形態では、水平方向に連続して通板される鋼板Mの表面温度を、その上面側から測定する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、鋼板Mが竪型炉のように竪方向(鉛直方向)に連続して通板される場合であっても同様に測温可能である。ただし、この場合には、第2の反射体3の反射面に埃や異物が堆積しないように、第2の反射体3を第1の反射体2の下方側ではなく、上方側に配設することが好ましい。また、水平方向に連続して通板される鋼板Mの表面温度を、その下面側から測定することも可能であるが、この場合には、第1の反射体2の反射面に埃や異物が堆積しないように、第1の反射体2を十分にガスパージすることが肝要である。
【0059】
以下、本発明に係る表面温度測定方法によって表面温度を測定する工程を含む金属体の製造方法として、表面温度測定装置を熱延鋼板の製造ラインに適用して熱延鋼板を製造する方法を例に挙げて説明する。
【0060】
図11は、熱延鋼板の製造ラインの概略構成例を示す模式図である。
図11に示すように、熱延鋼板を製造するに際しては、まず加熱炉30でスラブを1000〜1200℃に加熱昇温する。次に、昇温加熱したスラブをその幅を決定すると共に、仕上圧延機60で圧延可能な厚みまで粗圧延機40で圧延し、粗バーと称される中間部材にまで圧延する。次に、必要に応じて、再加熱装置50において、誘導加熱等により粗バーを再加熱する。次に、仕上圧延機60において、粗バーを目標とする熱延鋼板の厚みになるまで圧延する。なお、仕上圧延機60における仕上圧延後の鋼板の温度はおよそ700〜1000℃、厚みは1mm前後〜十数mm程度、板速度は600mpmから1500mpmである。
【0061】
仕上圧延機60による圧延後の鋼板は、第1冷却帯70又は第2冷却帯80において目標温度にまで冷却され、ダウンコイラー90によってコイル状に巻き取られる。或いは、第1冷却帯70、第2冷却帯80及びその中間に位置する非冷却ゾーンを利用して、冷却履歴を制御する場合もある。第1冷却帯70、第2冷却帯80では、冷却水を噴出するミスト冷却又はラミナー冷却と称される多数の冷却用ノズルが配置されており、その内の適当な本数のノズルから水を噴出して鋼板を冷却する。噴出するノズル本数や位置などの冷却条件は、セットアップ学習やダイナミックフィードバックなどを利用して制御される。
【0062】
以上に説明した熱延鋼板の製造ラインにおいて、本発明に係る表面温度測定装置は、例えば、従来測温が困難であった第1冷却帯70又は第2冷却帯80の下面の温度を測定するために用いることができる(図11の適用1)。なお、厚みの薄い鋼板の場合には、下面からの測温値が、おおよそ鋼板の厚み方向の代表温度を示すと考えて問題ない。
【0063】
また、第1冷却帯70又は第2冷却帯80の前後に本発明に係る表面温度測定装置を設置し、従来の温度計の代わりに用いることも可能である(図11の適用2)。従来の温度計は、特にコイルの先端部で湯気の影響により出力値が小さくなることがあるが、本発明に係る表面温度測定装置を適用すれば、コイルの最先端部から測温可能である。
【0064】
また、第1冷却帯70又は第2冷却帯80において、鋼板上方に本発明に係る表面温度測定装置を設置し、測温することも可能である(図11の適用3)。スプレーやラミナー冷却水が鋼板に衝突している領域を除けば、鋼板上面に冷却水が乗っている状態でも当該水乗りを介して測温することが可能である。
【0065】
また、仕上圧延機60の近傍、或いは、仕上圧延機60の各スタンド間に、本発明に係る表面温度測定装置を設置し、測温することも可能である(図11の適用4)。斯かる場所でも、仕上圧延機60の冷却水や、スタンド間スプレーと称される冷却水が外乱水として存在することになるが、外乱水の影響を低減して測温することが可能である。斯かる場所での鋼板温度を測定することにより、重要な管理指標である圧延直後の温度の管理・制御に用いることができる。
【0066】
さらに、搬送ロールの冷却水などが外乱水として存在するような場所に、本発明に係る表面温度測定装置を設置して測温すれば、有用な温度管理を行うことができる(図11の適用5、6)。
【0067】
以上に説明したように、本発明に係る表面温度測定装置は、熱延鋼板の製造ラインにおいて、図11の適用1〜6で示すような箇所に設置することができる。この内、鋼板の品質制御に特に重要であるのは、適用1〜4で示す箇所の温度管理であるため、当該箇所に測温精度の高い本発明に係る表面温度測定装置を設置するのが好ましい。
【0068】
<実施例>
以下、実施例を示すことにより、本発明の特徴をより一層明らかにする。
図1に示す構成の表面温度測定装置100を用いて、連続加熱炉で処理される冷延鋼板の表面温度を測定した。第1の反射体2と鋼板M表面との離間距離lpは、鋼板Mのパスライン変動及び第1の反射体2と鋼板M表面との間のパージを考慮してlp=60mmとした。放射温度計1の受光部11を構成する光ファイバとしては、視野径d=10mmのものを採用した。
【0069】
上記の条件(lp=60mm、d=10mm)により、式(2)はθa>4.8°となるため、本実施例における反射角θa=5°とした。
【0070】
本実施例における連続加熱炉では、数十種類の冷延鋼板が処理されるが、その中で最も放射率の小さい鋼板の放射率は0.4であったため、ε=0.4とした。また、許容測温誤差を±5℃とし、そのときに必要となる見かけの放射率は0.92であるため、εmin=0.92とした。さらに、第1の反射体2の反射率ρを実測した結果、ρ=0.99であった。
【0071】
上記の条件(ε=0.4、εmin=0.92、ρ=0.99)において、式(3)を満足するnの最小値は5であったため、n=5とした。
【0072】
以上のようにして決定したθa、n及びlp、dにより、式(1)はL≧66mmとなるため、本実施例における第1の反射体2の長さLは、L=100mmとした。また、式(4)において、θb=30°とした場合、W≧79mmとなるため、本実施例における第1の反射体2の幅Wは、W=100mmとした。
【0073】
そして、第1の反射体2としては、上記の寸法を有し、石英ガラスに酸化チタンと酸化シリコンとを多層に積層した干渉ミラーを用いた。また、第2の反射体3としては、長さ50mmで幅30mmの寸法を有するアルミミラーを用いた。
【0074】
放射温度計1を構成する光電変換素子としては、測温対象の温度下限が500℃であったため、シリコンホトダイオードを用いた。
【0075】
以上の構成を有する表面温度測定装置100を接触式の温度計で検温したところ、図12に示すように、ほぼ±5℃以内の測温精度で測温できていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る表面温度測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、アルミミラー及び干渉ミラーのそれぞれについて、温度による反射率の変化を調査した結果を示すグラフである。
【図3】図3は、放射温度計の視野径を説明するための説明図である。
【図4】図4は、放射温度計の視野の一部を第1の反射体が遮った状態を示す説明図である。
【図5】図5は、放射温度計の視野を第1の反射体が遮らない状態を示す説明図である。
【図6】図6は、多重反射を利用せずに放射温度計で直接測温する場合における、測温対象の実際の放射率と測温誤差との関係を示すグラフである。
【図7】図7は、多重反射を利用して見かけの放射率を大きくした後、放射温度計で測温した場合における、測温対象の見かけの放射率と測温誤差との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、放射温度計の受光部で受光される熱放射光の内、第1の反射体で反射する回数が最大となる熱放射光の反射回数nと、この反射回数nのときに得られる見かけの放射率εとの関係を示すグラフである。
【図9】図9は、測温対象としての鋼板の反射特性の一例を示す図である。
【図10】図10は、第1の反射体の幅と第1の反射体で反射できる熱放射光の散乱角との関係を説明するための説明図である。
【図11】図11は、熱延鋼板の製造ラインの概略構成例を示す模式図である。
【図12】図12は、本発明の一実施例に係る測温結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0077】
1・・・放射温度計
2・・・第1の反射体
3・・・第3の反射体
4・・・冷却ジャケット
11・・・受光部
12・・・光ファイバ
100・・・表面温度測定装置
M・・・金属体(鋼板)
R・・・熱放射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射温度計と、
前記放射温度計の受光部と測温対象である金属体表面との間において、前記金属体表面に対向し且つ前記金属体表面に略平行に配置した第1の反射体と、
前記金属体表面から放射され、前記金属体表面と前記第1の反射体との間を交互に反射した熱放射光を、前記放射温度計の受光部に向けて反射させるように配設した第2の反射体とを備えることを特徴とする金属体の表面温度測定装置。
【請求項2】
前記第1の反射体は、平板状に形成され、前記熱放射光の反射される方向に沿った長さLが下記の式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の金属体の表面温度測定装置。
L≧(2lp/tan(90°−θa))・(n−1)+d/cosθa・・・(1)
ここで、上記式(1)において、lpは第1の反射体と金属体表面との離間距離を意味し、θaは金属体表面と第1の反射体との間を反射する熱放射光の反射角を意味し、下記の式(2)を満足する値である。また、nは放射温度計の受光部で受光される熱放射光の内、第1の反射体で反射する回数が最大となる熱放射光の反射回数を意味し、下記の式(3)を満足する値である。さらに、dは第1の反射体近傍における放射温度計の視野径を意味する。
θa>sin−1(d/(2lp))・・・(2)
εmin≦ε+Σε・(ρ・(1−ε))・・・(3)
なお、上記式(3)において、εminは測温に必要となる放射率の最小値を、εは金属体の放射率を、ρは第1の反射体の反射率を、Σはi=1〜nまで加算することを意味する。
【請求項3】
前記第1の反射体の前記熱放射光の反射される方向と直交する方向の幅Wが下記の式(4)を満足することを特徴とする請求項2に記載の金属体の表面温度測定装置。
(W−d)/(2lp)≧tanθb・・・(4)
ここで、上記式(4)において、θbは金属体表面での熱放射光の散乱角を意味する。
【請求項4】
前記第1の反射体は、ガラスに酸化チタンと酸化シリコンとを積層した干渉ミラーであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の金属体の表面温度測定装置。
【請求項5】
放射温度計の受光部と測温対象である金属体表面との間において、前記金属体表面に対向し且つ前記金属体表面に略平行に第1の反射体を配置し、
前記金属体表面から放射され、前記金属体表面と前記第1の反射体との間を交互に反射した熱放射光を、第2の反射体で前記放射温度計の受光部に向けて反射させることを特徴とする金属体の表面温度測定方法。
【請求項6】
前記放射温度計の受光部で受光される熱放射光の内、前記第1の反射体で反射する回数が最大となる熱放射光の反射回数nが下記の式(3)を満足することを特徴とする請求項5に記載の金属体の表面温度測定方法。
εmin≦ε+Σε・(ρ・(1−ε))・・・(3)
なお、上記式(3)において、εminは測温に必要となる放射率の最小値を、εは金属体の放射率を、ρは第1の反射体の反射率を、Σはi=1〜nまで加算することを意味する。
【請求項7】
前記金属体は、連続して通板される鋼板であることを特徴とする請求項5又は6に記載の金属体の表面温度測定方法。
【請求項8】
請求項5から7に記載の何れかの方法によって表面温度を測定する工程を含むことを特徴とする金属体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−78394(P2007−78394A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263579(P2005−263579)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】