説明

金属光沢糸用積層体及び金属光沢糸

【課題】安価で、かつ精錬処理への耐性に優れた金属光沢糸、及び該金属光沢糸を得ることができる金属光沢糸用積層体を目的とする。
【解決手段】第1の透明プラスチックフィルム10上に、アルミニウムからなる第1の金属薄膜層12と、ポリオレフィン樹脂からなる第1の樹脂層14と、接着剤層16と、ポリオレフィン樹脂からなる第2の樹脂層18と、アルミニウムからなる第2の金属薄膜層20と、第2の透明プラスチックフィルム22とが、この順に積層されている金属光沢糸用積層体1。また、金属光沢糸用積層体1が幅2.0mm以下にスリットされてなる金属光沢糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属光沢糸用積層体及び金属光沢糸に関する。
【背景技術】
【0002】
金銀糸に代表される金属光沢糸は、絹織物等の金属光沢が求められる織物等の用途に広く用いられている。
金銀糸の製造方法としては、通常、2枚の基材フィルムのそれぞれの片面に金属蒸着を施して金属薄膜層を形成し、それら2枚の基材フィルムを互いの金属薄膜層が内側になるように接着剤により貼り合わせて積層体とし、該積層体をマイクロスリットする方法が用いられる。
【0003】
一方、絹糸は、絹織物の光沢感及び柔軟性を向上させるため、生糸の表面に含まれているセリシンという蛋白質を除く精錬処理を施すことにより得られる。この精錬処理には、アルカリ性の薬品を用いる。
従来、予め精錬処理を施した絹糸と金銀糸とを織り込んで絹織物としていた。そのため、金銀糸には精錬処理に対する耐性が求められていなかった。しかし、近年、生糸と金銀糸とを織り込んで織物とした後に、織り込まれた金銀糸と共に該織物に精錬処理を施す方法が主流となっており、金銀糸に精錬処理への耐性が求められている。
【0004】
一般にプラスチックフィルム上に金属薄膜層を形成する金属としては、生産コストの面からアルミニウムが広く用いられている。しかし、特にアルミニウムからなる金属薄膜層の場合、精錬処理の際に、積層体をマイクロスリットした端面からアルカリ性の薬品が金銀糸内に浸入し、アルミニウムが侵食されてしまう。これにより、アルミニウムの金属光沢が失われたり、アルミニウム自体の一部又は全部が消失したりすることがあった。
【0005】
そのため、精錬処理への耐性に優れた金銀糸が得られる金銀糸用積層体として、基材フィルムの片面に、ステンレス鋼からなる薄膜(特許文献1)、プラチナ合金からなる薄膜(特許文献2)、又はロジウムからなる薄膜(特許文献3)を形成した金銀糸用積層体が示されている。
また、2枚の基材フィルムのそれぞれの片面に、金属蒸着層、及びアクリル樹脂や尿素−メラミン樹脂等からなる腐食防止塗膜層をこの順に積層し、これら2枚の基材フィルムを、腐食防止塗膜層を内側にして接着剤層を介して貼り合わせた金銀糸用積層体が示されている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平1−201542号公報
【特許文献2】特開平3−269127号公報
【特許文献3】特開平4−34030号公報
【特許文献4】特開平7−197340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜3の金銀糸用積層体は、用いる金属が一般的なものではなく、生産コストが高くなってしまうため、いまだ上市には至っていない。また、特許文献4の金銀糸用積層体は、安価な金属を用いることも可能であるが、精錬処理への耐性については検討されていなかった。そのため、特殊な金属を用いずに安価に製造でき、かつ精錬処理への耐性に優れた金銀糸を得ることができる金銀糸用積層体が望まれている。
【0007】
そこで本発明は、安価で、かつ精錬処理への耐性に優れた金属光沢糸、及び該金属光沢糸を得ることができる金属光沢糸用積層体を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属光沢糸用積層体は、第1の透明プラスチックフィルム上に、アルミニウムからなる第1の金属薄膜層と、ポリオレフィン樹脂からなる第1の樹脂層と、接着剤層と、ポリオレフィン樹脂からなる第2の樹脂層と、アルミニウムからなる第2の金属薄膜層と、第2の透明プラスチックフィルムとが、この順に積層されている積層体である。
また、本発明の金属光沢糸用積層体は、第1の透明プラスチックフィルム上に、透明接着剤層と、ポリオレフィン樹脂からなる透明樹脂層と、アルミニウムからなる金属薄膜層と、第2の透明プラスチックフィルムとが、この順に積層されている積層体である。
また、前記金属光沢糸用積層体は、前記第1の透明プラスチックフィルムの外側の面上及び前記第2の透明プラスチックフィルム外側の面上に透明着色層が形成されていてもよい。
また、本発明の金属光沢糸用積層体における前記ポリオレフィン樹脂はエチレン系共重合体の水性分散体であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の金属光沢糸は、前記いずれかの金属光沢糸用積層体が幅2.0mm以下にスリットされてなる金属光沢糸である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属光沢糸用積層体は、安価で、かつ精錬処理への耐性に優れた金属光沢糸を得ることができる。
また、本発明の金属光沢糸は、安価で、かつ精錬処理への耐性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<金属光沢糸用積層体>
本発明の金属光沢糸用積層体は、アルミニウムからなる金属薄膜層及びポリオレフィン樹脂からなる樹脂層がこの順に形成された透明プラスチックフィルムを有する積層体である。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本発明の金属光沢糸用積層体の実施形態の一例を示した断面図である。
本実施形態の金属光沢糸用積層体1(以下、積層体1という。)は、図1に示すように、第1の透明プラスチックフィルム10(以下、透明フィルム10という。)上に、アルミニウムからなる第1の金属薄膜層12(以下、金属薄膜層12という。)と、ポリオレフィン樹脂からなる第1の樹脂層14(以下、樹脂層14という。)と、接着剤層16と、ポリオレフィン樹脂からなる第2の樹脂層18(以下、樹脂層18という。)と、アルミニウムからなる第2の金属薄膜層20(以下、金属薄膜層20という。)と、第2の透明プラスチックフィルム22(以下、透明フィルム22という。)とが、この順に積層されている。
【0013】
(第1の透明プラスチックフィルム)
透明フィルム10は、透明なプラスチックフィルムである。ここで、本発明における透明とは、可視光透過率が25%以上であることを意味する(以下、同じ。)。
透明フィルム10の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等が挙げられる。
なかでも、耐熱性及び寸法安定性に優れる点からポリエステルが好ましく、さらに入手が容易で比較的安価である点からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
透明フィルム10は、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよく、寸法安定性の点から二軸延伸フィルムが好ましい。
【0014】
透明フィルム10の厚さは、4〜100μmであることが好ましく、9〜25μmであることがより好ましい。
透明フィルム10の厚さが4μm以上であれば、透明フィルム10が柔らかくなりすぎず皺が発生しにくいので、該透明フィルム10上に形成される金属薄膜層12に斑が生じにくい。また、透明フィルム10の厚さが100μm以下であれば、充分な柔軟性を有する積層体1が得られやすいため、該積層体1から得られた金属光沢糸で製造された衣料の風合いが損なわれにくい。
【0015】
(第1の金属薄膜層)
金属薄膜層12は、アルミニウムからなる薄膜層である。
金属薄膜層12の厚さは、10〜100nmであることが好ましく、40〜70nmであることがより好ましい。
金属薄膜層12の厚さが10nm以上であれば、充分な金属光沢が得られやすい。また、金属薄膜層12の厚さが100nm以下であれば、金属薄膜層12にクラックが生じにくい。
【0016】
(第1の樹脂層)
樹脂層14は、ポリオレフィン樹脂からなる層であり、精錬処理への耐性を付与する役割を果たす。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のオレフィンの単独重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−不飽和二塩基酸無水物共重合体及びプロピレン−不飽和二塩基酸無水物共重合体等のエチレン系並びにプロピレン系のポリオレフィン系共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体のナトリウム又は亜鉛塩であるアイオノマー等が挙げられる。
【0017】
ポリオレフィン系共重合体における(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチル−ヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
不飽和二塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸及び無水シトラコン酸等が挙げられる。
また、ポリオレフィン系共重合体とは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。なお、ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を示すものである。
【0018】
これらポリオレフィン樹脂のなかでも、接着性に優れることからポリオレフィン系共重合体及びアイオノマーが好ましい。また、ポリオレフィン系共重合体については、エチレン系のランダム共重合体及びポリプロピレン系のグラフト共重合体がより好ましく、エチレン系のランダム共重合体が特に好ましい。
また、これらの水性分散体を用いることで、ポリオレフィン樹脂層の厚みを薄くすることができ、柔軟な積層体1がより得られやすくなるためより好ましい。
特に好ましいポリオレフィン樹脂は、エチレン系共重合体の水性分散体である。
【0019】
ポリオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル等のラジカル共重合体、ポリエチレンと無水マレイン酸、ポリプロピレンと無水マレイン酸等のグラフト共重合体等が挙げられる。なかでも、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体が精錬処理への耐性に対してより好ましい。
【0020】
これらポリオレフィン系共重合体の市販品としては、住友化学(株)製のアクリフトやボンドファスト、アトケム社製のボンダイン等が挙げられる。
また、ポリオレフィン系共重合体の水性分散体の市販品としては、ユニチカ(株)製のアローベースシリーズ、住友精化(株)製のザイクセンシリーズ、三井化学(株)製のケミパールシリーズ、東邦化学工業(株)製のハイテックシリーズ等が挙げられる。
また、アイオノマーの市販品としては、三井デュポンポリケミカル(株)製のハイミラン等が挙げられる。
【0021】
樹脂層14の厚さは、0.1〜15μmであることが好ましく、0.5〜1.5μmであることがより好ましい。
樹脂層14の厚さが0.1μm以上であれば、積層体1をスリットして得られた金属光沢糸に精錬処理を施す際、金属薄膜層12のアルミニウムが脱落、流出したり、変質したりしにくい。また、樹脂層14の厚さが15μm以下であれば、充分な柔軟性を有する積層体1が得られやすいため、該積層体1から得られた金属光沢糸で製造された衣料の風合いが損なわれにくい。
【0022】
(接着剤層)
接着剤層16は、樹脂層14と樹脂層18とを接着させる層である。
接着剤層16に用いることのできる接着剤は、金属光沢糸の製造に通常用いられているものであればよく、例えば、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等の接着剤が挙げられる。
【0023】
接着剤層16の厚さは、1.0〜5.0μmであることが好ましく、2.0〜3.5μmであることがより好ましい。
接着剤層16の厚さが1.0μm以上であれば、充分な接着性が得られやすい。また、接着剤層16の厚さが5.0μm以下であれば、積層体1の柔軟性が得られやすく、金属光沢糸とした際も柔軟性に優れている。
【0024】
(第2の樹脂層)
樹脂層18は、樹脂層14と同じポリオレフィン樹脂からなる層であり、精錬処理への耐性を付与する役割を果たす。
樹脂層18に用いるポリオレフィン樹脂は、樹脂層14と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。樹脂層18には、樹脂層14と同じポリオレフィン樹脂を用いてもよく、樹脂層14と異なるポリオレフィン樹脂を用いてもよい。
【0025】
樹脂層18の厚さは、樹脂層14と同じく、0.1〜15μmであることが好ましく、0.5〜1.5μmであることがより好ましい。
樹脂層18の厚さが0.1μm以上であれば、積層体1をスリットして得られた金属光沢糸に精錬処理を施す際、金属薄膜層20のアルミニウムが脱落、流出したり、変質したりしにくい。また、樹脂層18の厚さが15μm以下であれば、充分な柔軟性を有する積層体1が得られやすいため、積層体1から得られた金属光沢糸で製造された衣料の風合いが損なわれにくい。
【0026】
(第2の金属薄膜層)
金属薄膜層20は、金属薄膜層12と同じ、アルミニウムからなる薄膜層である。
金属薄膜層20の厚さの好ましい態様は金属薄膜層12と同じである。
【0027】
(第2の透明プラスチックフィルム)
透明フィルム22は、透明フィルム10と同じ透明なプラスチックフィルムである。
透明フィルム22の材料は、透明フィルム10で挙げたものと同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
透明フィルム22の材料は透明フィルム10と同じ材料であることが好ましく、透明フィルム10及び透明フィルム22の材料が共にポリエチレンテレフタレートであることが特に好ましい。
また、透明フィルム22の厚さの好ましい態様は、透明フィルム10と同じである。
【0028】
積層体1は、透明フィルム10及び透明フィルム22が共に透明であり、その内側にある金属薄膜層12及び金属薄膜層20を外側から視認することができるため、銀色の金属光沢を有している。
積層体1は、透明フィルム10側及び透明フィルム22側のどちらの面から見ても外観に差がない金属光沢糸が得られる点から、透明フィルム10及び22、金属薄膜層12及び20、並びに樹脂層14及び18の厚さ及び材質を同じにすることが特に好ましい。
【0029】
また、金属薄膜層12及び金属薄膜層20の外側は、それぞれ透明フィルム10及び透明フィルム22により保護されているため、耐薬品性、耐擦傷性に優れている。一方、金属薄膜層12及び金属薄膜層20の内側は、それぞれ樹脂層14及び樹脂層18により保護されている。そのため、積層体1から得られた金属光沢糸が精錬処理される際、スリット端面からアルカリ性の薬品が浸入してきても金属薄膜層12及び金属薄膜層20からのアルミニウムの脱落、流出、及び変質が抑えられる。
【0030】
(製造方法)
以下、積層体1の製造方法について説明する。
まず、透明フィルム10及び透明フィルム22を用意し、これらのそれぞれの片面に金属薄膜層12及び金属薄膜層20を形成する。
金属薄膜層12及び金属薄膜層20を形成する方法は、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。なかでも、大量生産が可能な点から真空蒸着法が好ましい。
また、金属薄膜層12を形成した透明フィルム10、金属薄膜層20を形成した透明フィルム22として、市販の金属蒸着フィルムを用いてもよい。
【0031】
ついで、金属薄膜層12及び金属薄膜層20のそれぞれの表面上に、樹脂層14及び樹脂層18を形成する。
樹脂層14及び樹脂層18を形成する方法は、特に限定されず、例えばポリオレフィン樹脂を含有する塗布液を塗布した後に乾燥する方法、溶融樹脂を押出す方法が挙げられる。前記塗布液としては、例えば、アローベースSシリーズ(ユニチカ(株)製)等のポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体等が挙げられる。
【0032】
塗布液を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、グラビアコート法、ディップコート法、スピンコート法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法等が挙げられる。
塗布液の塗布量は、0.1〜2.0g/mとすることが好ましく、0.5〜1.5g/mとすることがより好ましい。
また、塗布液の乾燥温度は、塗布液中の溶媒により異なるが、多くの溶媒の場合、40〜120℃であることが好ましい。
【0033】
ついで、金属薄膜層12及び樹脂層14が形成された透明フィルム10と、金属薄膜層20及び樹脂層18が形成された透明フィルム22とを、樹脂層14及び樹脂層18が内側になるように、接着剤(接着剤層16となる。)により貼り合わせる。
以上のような方法により、積層体1が得られる。
【0034】
以上説明した積層体1は、精練処理への耐性に優れている。そのため、積層体1から得られる金属光沢糸は精錬処理後も金属光沢を維持することができる。
尚、積層体1は、精錬処理への耐性を低下させすぎない範囲内で、透明フィルム10と金属薄膜層12の間、及び透明フィルム22と金属薄膜層20の間に、それらの密着性を向上させるためにアンカーコート層が設けられていてもよい。
アンカーコート層を形成するアンカーコート剤としては、例えば、硝化綿系等が挙げられる。アンカーコート層の厚さは、0.01〜2.0μmであることが好ましく、0.05〜1.5μmであることがより好ましい。
【0035】
[第2実施形態]
図2は、本発明の金属光沢糸用積層体の他の実施形態である金属光沢糸用積層体2(以下、積層体2という。)を示した断面図である。積層体2において積層体1と同じ部分については、同符号を付して説明を省略する。
本実施形態の積層体2は、図2に示すように、透明フィルム10上に、金属薄膜層12と、樹脂層14と、接着剤層16と、樹脂層18と、金属薄膜層20と、透明フィルム22とが、この順に積層されている。また、透明フィルム10の外側の面上及び透明フィルム22の外側の面上にはそれぞれ透明着色層24及び透明着色層26が形成されている。
【0036】
(透明着色層)
透明着色層24、26を赤色、橙色、黄色、茶色等の色調とすることにより、金属光沢糸の用途に応じて積層体2の色調を調節することができる。
透明着色層24及び透明着色層26は、金属光沢糸の製造に通常用いられる層であればよく、例えば、透明な樹脂に顔料や染料を含有させた樹脂層が挙げられる。
【0037】
透明な樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素−メラミン樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系化樹脂等を用いることができる。
また、透明着色層24及び透明着色層26には、必要に応じて、ブロッキング防止剤、帯電防止剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0038】
透明着色層24及び透明着色層26の厚さは、0.1〜4.0μmであることが好ましく、0.5〜1.5μmであることがより好ましい。
透明着色層24及び透明着色層26の厚さが0.1μm以上であれば、積層体2の色調の調節が容易になり、所望の色調を有する金属光沢糸が得られやすくなる。また、透明着色層24及び透明着色層26の厚さが4.0μm以下であれば、充分な柔軟性を有する積層体2が得られやすいため、積層体2から得られた金属光沢糸で製造された衣料の風合いが損なわれにくい。
また、透明着色層24及び透明着色層26の厚さは、外観に差がなくなる点から、同じ厚さとすることが特に好ましい。
【0039】
積層体2は、透明着色層24及び透明着色層26を通して内側の金属薄膜層12及び金属薄膜層20を外側から視認するため、様々な色調の金属光沢を付与することができる。また、積層体2は、透明フィルム10側及び透明フィルム22側のどちらの面から見ても外観に差がない金属光沢糸が得られる点から、透明フィルム10及び22、金属薄膜層12及び20、樹脂層14及び18、並びに透明着色層24及び26の厚さと材質を同じにすることが特に好ましい。
【0040】
また、積層体2は、透明着色層以外は積層体1と同様の構成を有している。そのため、金属薄膜層の外側は透明プラスチックフィルムにより耐薬品性に優れており、内側は樹脂層によりアルカリ性の薬品への耐性に優れている。また、金属薄膜層に対する耐擦傷性も優れている。
【0041】
(製造方法)
以下、積層体2の製造方法について説明する。
透明フィルム10上に金属薄膜層12及び樹脂層14を形成する方法、及び透明フィルム22上に金属薄膜層20及び樹脂層18を形成する方法については、積層体1と同じ方法を用いることができ、好ましい態様も同じである。
【0042】
透明フィルム10の外側の面上及び透明フィルム22外側の面上に、それぞれ透明着色層24及び26を形成する方法は、金属光沢糸用積層体の透明着色層の形成に通常用いられる方法を用いることができる。例えば、前記透明樹脂を有機溶剤等に溶解した塗布液を、グラビアコート法、ディップコート法、スピンコート法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法等により塗布し、乾燥する方法等が挙げられる。
【0043】
透明着色層24の形成は、金属薄膜層12の形成前であってもよく、金属薄膜層12の形成後から樹脂層14の形成前までであってもよく、樹脂層14の形成後であってもよい。透明着色層26の形成も同様に、金属薄膜層20の形成前であってもよく、金属薄膜層20の形成後から樹脂層18の形成前までであってもよく、樹脂層18の形成後であってもよい。
以上のような方法により、積層体2が得られる。
【0044】
以上説明した積層体2は、精練処理への耐性に優れている。そのため、積層体2から得られた金属光沢糸は精錬処理後も金属光沢を維持することができる。
尚、積層体2は、積層体1と同様に、精錬処理への耐性を低下させすぎない範囲内で、透明フィルム10と金属薄膜層12の間、及び透明フィルム22と金属薄膜層20の間に、それらの密着性を向上させるためにアンカーコート層が設けられていてもよい。
【0045】
[第3実施形態]
次に、第1の透明プラスチックフィルム上に、透明接着剤層と、ポリオレフィン樹脂からなる透明樹脂層と、アルミニウムからなる金属薄膜層と、第2の透明プラスチックフィルムとが、この順に積層されている金属光沢糸用積層体の実施形態の一例について説明する。ただし、本実施形態の金属光沢糸用積層体3(以下、積層体3という。)において、積層体1と同じ部分については、同符号を付して説明を省略する。
【0046】
本実施形態の積層体3は、図3に示すように、透明フィルム10上に、透明接着剤層28と、ポリオレフィン樹脂からなる透明樹脂層30と、金属薄膜層20と、透明フィルム22とがこの順に積層されている。
【0047】
(透明接着剤層)
透明接着剤層28は、透明フィルム10と樹脂層18とを接着させる透明な層である。
透明接着剤層28に用いることのできる透明な接着剤としては、例えば、接着剤層16で挙げたものと同じものを使用することができる。
【0048】
透明接着剤層28の厚さは、1.0〜5.0μmであることが好ましく、2.0〜3.5μmであることがより好ましい。
透明接着剤層28の厚さが1.0μm以上であれば、充分な接着性が得られやすい。また、透明接着剤層28の厚さが5.0μm以下であれば、積層体1又は積層体1から得られる金属光沢糸の柔軟性が得られやすい。
【0049】
(透明樹脂層)
透明樹脂層30は、ポリオレフィン樹脂からなる透明な層であり、精錬処理への耐性を付与する役割を果たす。
透明樹脂層30におけるポリオレフィン樹脂としては、例えば、樹脂層14で挙げたものと同じものを用いることができ、好ましい態様も同じである。
【0050】
透明樹脂層30の厚さは、0.1〜15μmであることが好ましく、0.5〜1.5μmであることがより好ましい。
透明樹脂層30の厚さが0.1μm以上であれば、積層体3をスリットして得られた金属光沢糸に精錬処理を施す際、金属薄膜層20のアルミニウムが脱落、流出したり、変質したりしにくい。また、透明樹脂層30の厚さが15μm以下であれば、充分な柔軟性を有する積層体3が得られやすいため、該積層体3から得られた金属光沢糸で製造された衣料の風合いが損なわれにくい。
【0051】
積層体3の透明フィルム22側は、積層体1と同様に金属薄膜層20が視認できるため銀色の金属光沢を有している。一方、積層体3の透明フィルム10側は、積層体1と異なり金属薄膜層12を有していない。しかし、透明接着剤層28及び透明樹脂層30が透明であるため、透明フィルム10側からも金属薄膜層20が視認できるため、積層体3の両面が銀色の金属光沢を有している。
【0052】
積層体3の透明フィルム22側は、積層体1と同様の構成を有している。そのため、金属薄膜層20の外側は透明フィルム22により耐薬品性、耐擦傷性に優れており、内側は透明樹脂層30によりアルカリ性の薬品への耐性に優れている。
また、積層体3は、金属薄膜層12を有していないことから、アルカリ性の薬品から金属薄膜層12を保護する樹脂層14も設ける必要はないため、低コストで生産できる点で好ましい。
【0053】
(製造方法)
以下、積層体3の製造方法について説明する。
まず、透明フィルム22上に金属薄膜層20及び透明樹脂層30を形成する。透明フィルム22上に金属薄膜層20を形成する方法については、積層体1と同じ方法を用いることができ、好ましい態様も同じである。
また、金属薄膜20上に透明樹脂層30を形成する方法についても、積層体1における金属薄膜層20上に樹脂層18を形成する方法と同様の方法で行うことができる。
透明樹脂層30の形成にポリオレフィン樹脂を含有する塗布液を塗布した後に乾燥する方法を用いる場合、該塗布液の塗布量は、0.1〜4.0g/mとすることが好ましく、0.5〜1.5g/mとすることがより好ましい。
【0054】
ついで、透明フィルム10と透明フィルム22とを、透明フィルム22の透明樹脂層18が透明フィルム10側となるように透明な接着剤(透明接着剤層28となる。)により貼り合わせる。
以上のような方法により、積層体3が得られる。
【0055】
以上説明した積層体3は、精練処理への耐性に優れている。そのため、積層体3から得られた金属光沢糸は、精錬処理後も金属光沢を維持することができる。
尚、積層体3は、積層体1と同様に密着性を向上させるため、精錬処理への耐性を低下させすぎない範囲内で、透明フィルム22と金属薄膜層20の間にアンカーコート層が設けられていてもよい。
また、本発明の積層体は、積層体3の透明フィルム10の外側の面上及び透明フィルム22の外側の面上に、図2に例示した積層体2と同様の透明着色層が設けられている積層体であってもよい。
【0056】
<金属光沢糸>
本発明の金属光沢糸は、前述の金属光沢糸用積層体がスリットされてなる金属光沢糸である。
金属光沢糸用積層体をスリットする幅は、2.0mm以下であり、0.02〜2.0mmであることが好ましい。
金属光沢糸用積層体をスリットする方法は、所望の幅でスリットできる方法であれば特に限定されず、例えば、レザー刃や回転刃による方法等が挙げられる。
【0057】
本発明の金属光沢糸は、金属薄膜層の内側にポリオレフィン樹脂からなる樹脂層が形成されているため、精錬処理におけるアルカリ性の薬品、加熱への耐性に優れており、アルミニウムが脱落、流出したり、変質したりすることが抑えられる。そのため、生糸と共に織り込んで織物等とした後に精錬処理を行っても、金属光沢糸の金属光沢が失われない。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(商品名:BR−PET1312、厚さ12μm、東レフィルム加工(株)製)を2枚用意し、それぞれのアルミニウム蒸着層上に、ポリオレフィン樹脂として、エチレン系のランダム共重合体を含有する水性分散体(商品名:アローベースSEN−1203、融点92℃、ユニチカ(株)製)をグラビアコート法により1.0g/m塗布し、100℃で乾燥させ、ポリオレフィン樹脂からなる樹脂層を形成して2枚のコートフィルムを作製した。
ついで、2枚のコートフィルムを、互いのポリオレフィン樹脂からなる樹脂層が内側となるように、ウレタン系接着剤(商品名:LX−500、DIC(株)製)により貼り合わせ、金属光沢糸用積層体(積層体1A、図1参照)を得た。その後、得られた積層体1Aを幅0.25mmでスリットして銀糸A(金属光沢糸)を作製した。
【0059】
ついで、得られた銀糸Aを束にして、表1に示す条件で精錬処理を施した。
銀糸Aに精錬処理を施したところ、アルミニウム蒸着層の脱落、流出及び変質は確認されず、アルミニウム蒸着層の金属光沢が維持されていた。また、表面は平滑であり外観にも優れていた。
【0060】
【表1】

【0061】
[実施例2]
実施例1で用いたエチレン系のランダム共重合体を含有する水性分散体に代えて、ポリオレフィン樹脂として未処理PP用プライマーポリプロピレン系のグラフト共重合体のトルエン分散体(商品名:THS−3421、東洋モートン(株)製)を使用し、120℃で乾燥させた以外は、実施例1と同様にして銀糸B(金属光沢糸)を作製し、該銀糸Bについて精錬処理を施した。
精錬処理を施したところ、銀糸Bの端面からアルミニウム蒸着層の脱落、流出及び変質は確認されず、アルミニウム蒸着層の金属光沢が維持されていた。ただし、表面には若干凹凸が見られるが外観は良好であった。
【0062】
[比較例1]
実施例1で用いたポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして銀糸C(金属光沢糸)を作製し、該銀糸Cについて精錬処理を施した。
その結果、精錬処理中に、銀糸Cの端面からアルミニウム蒸着層のアルミニウムが脱落もしくは流出し、又は変質することによって銀糸Cが透明化してしまった。
【0063】
[比較例2]
実施例1で用いたポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体に代えて、変性ポリエステル系樹脂(商品名:プレスコートVH−11、和信化学工業(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様にして銀糸D(金属光沢糸)を作製し、該銀糸Dについて精錬処理を施した。
その結果、精錬処理中に、銀糸Dの端面からアルミニウム蒸着層のアルミニウムが脱落もしくは流出し、又は変質することによって銀糸Dが透明化してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の金属光沢糸用積層体は、安価に製造することができ、かつ精錬処理への耐性に優れた金属光沢糸を得ることができる。そのため、本発明の金属光沢糸用積層体及び金属光沢糸は、生糸と共に織り込んだ後に精錬処理を施す絹織物等の用途に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の金属光沢糸用積層体の実施形態の一例を示した断面図である。
【図2】本発明の金属光沢糸用積層体の他の実施形態例を示した断面図である。
【図3】本発明の金属光沢糸用積層体の他の実施形態例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 金属光沢糸用積層体 2 金属光沢糸用積層体 3 金属光沢糸用積層体 10 第1の透明プラスチックフィルム 12 第1の金属薄膜層 14 第1の樹脂層 16 接着剤層 18 第2の樹脂層 20 第2の金属薄膜層 22 第2の透明プラスチックフィルム 24、26 透明着色層 28 透明接着剤層 30 透明樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明プラスチックフィルム上に、アルミニウムからなる第1の金属薄膜層と、ポリオレフィン樹脂からなる第1の樹脂層と、接着剤層と、ポリオレフィン樹脂からなる第2の樹脂層と、アルミニウムからなる第2の金属薄膜層と、第2の透明プラスチックフィルムとが、この順に積層されている金属光沢糸用積層体。
【請求項2】
第1の透明プラスチックフィルム上に、透明接着剤層と、ポリオレフィン樹脂からなる透明樹脂層と、アルミニウムからなる金属薄膜層と、第2の透明プラスチックフィルムとが、この順に積層されている金属光沢糸用積層体。
【請求項3】
前記第1の透明プラスチックフィルムの外側の面上及び前記第2の透明プラスチックフィルム外側の面上に透明着色層が形成されている、請求項1又は2に記載の金属光沢糸用積層体。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂がエチレン系共重合体の水性分散体である、請求項1〜3のいずれかに記載の金属光沢糸用積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の金属光沢糸用積層体が幅2.0mm以下にスリットされてなる金属光沢糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−42541(P2010−42541A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206749(P2008−206749)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】