説明

金属化フィルムの製造方法、金属化フィルム、フィルム材、フィルムコンデンサの製造方法及びフィルムコンデンサ

【課題】フィルムコンデンサの静電容量に与える影響を可及的に抑えつつ、フィルム材の引っ張り強度を向上させる。
【解決手段】フィルム本体(71)とフィルム本体(71)に設けられた補強用フィルム(72)とを有し、ロール状に巻回された誘電体フィルム(7)を準備する。誘電体フィルム(7)をロール状に巻回された状態から引き出しながら、誘電体フィルム(7)の表面に金属を蒸着させる。補強用フィルム(72)は、引き出し方向に直交する、誘電体フィルム(7)の幅方向に対して直交するように配向されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化フィルムの製造方法、金属化フィルム、フィルム材、フィルムコンデンサの製造方法及びフィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属化フィルムを巻回してなるフィルムコンデンサが知られている。この金属化フィルムは、フィルム材の表面に金属を蒸着させて構成されている。
【0003】
そして、金属化フィルムは、例えば、特許文献1に開示されているように、ロール状に巻回されたフィルム材を引き出しながら、該フィルム材の表面に金属を蒸着させることで製造される。
【特許文献1】特開2005−15848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述の金属蒸着時にロール状に巻回されたフィルム材を引き出す際には、フィルム材に張力が作用する。ここで、フィルムコンデンサの小型化・大容量化を図るべく、フィルム材の厚さを薄くすると、フィルム材の引っ張り強度が低下してしまい、前述の金属蒸着時にフィルム材が切れてしまう虞がある。また、フィルム材が切れないまでも、フィルム材が伸びて局所的に薄くなったり、ひび割れたりして、フィルム材の誘電率が部分的に変化してしまう虞もある。
【0005】
さらに、フィルムコンデンサの小型化・大容量化を図るべく、高誘電率の材料を選択した場合には、フィルム材の材料によっては引っ張り強度が低下する場合もあり、このような場合でも、フィルム材の引っ張り強度が問題となる。
【0006】
ここで、フィルム材の引っ張り強度を向上させるべく、フィルム材に別の補強用フィルム材を重ね合わせた二重構造にしてフィルム材を構成することが考えられる。
【0007】
しかしながら、通常、所望の静電容量が得られるようにフィルム材の材料を選択するが、前述の二重構造では、補強用フィルム材による静電容量がフィルム材による静電容量に直列に合成されるため、フィルムコンデンサとしての静電容量は所望の静電容量、即ち、フィルム材による静電容量からずれてしまう。
【0008】
そして、フィルム材による静電容量と補強用フィルム材による静電容量との差が大きければ大きいほど、フィルムコンデンサの静電容量はフィルム材のみによる静電容量からかけ離れてしまう。特に、前述の如く、高誘電率の材料を採用した場合には、高誘電率且つ引っ張り強度が強い材料は少ないため、該高誘電率のフィルム材よりも誘電率が低い材料が補強用フィルム材として採用されることが多くなる。その結果、前述の如く、フィルムコンデンサとしての合成容量は、フィルム材のみによる静電容量よりも大きく低下してしまい、高誘電率化を図れなくなってしまう。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フィルムコンデンサの静電容量に与える影響を可及的に抑えつつ、フィルム材の引っ張り強度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、フィルム材(7)の表面に金属を蒸着させた金属化フィルム(8)を製造する金属化フィルムの製造方法が対象である。そして、フィルム本体(71)と該フィルム本体(71)に設けられた補強用線条体(72)とを有し、ロール状に巻回されたフィルム材(7)を準備する工程と、前記フィルム材(7)をロール状に巻回された状態から引き出しながら、該フィルム材(7)の表面に金属を蒸着させる蒸着工程とを含み、前記補強用線条体(72)は、前記蒸着工程における引き出し方向に直交する、前記フィルム材(7)の幅方向に対して交差するように配向されているものとする。
【0011】
前記の構成の場合、前記蒸着工程においてフィルム材(7)には引き出し方向へ張力が作用するが、前記補強用線条体(72)を該引き出し方向に直交する前記フィルム材(7)の幅方向に対して交差するように設けることによって、フィルム材(7)の引っ張り強度を向上させることができる。つまり、補強用線条体(72)を設けることによって、該補強用線条体(72)でその長手方向に作用する力、特に張力を受け止めて、フィルム材(7)の引っ張り強度を向上させることができる。ただし、補強用線条体(72)をフィルム材(7)の幅方向と平行に配向してしまうと、フィルム材(7)に作用する張力は、補強用線条体(72)に対してその長手方向には作用せず、該補強用線条体(72)はフィルム材(7)の引っ張り強度の向上にほとんど寄与しない。それに対して、補強用線条体(72)を少なくともフィルム材(7)の幅方向に交差するように配向することによって、フィルム材(7)に作用する張力の一部は、補強用線条体(72)の長手方向へ作用するようになり、フィルム材(7)の引っ張り強度を向上させることができる。
【0012】
そして、フィルム本体(71)の全面に別の補強用フィルム材を設けてフィルム材(7)を補強するのではなく、補強用の部材を線条体で構成することによって、フィルム材(7)の誘電率に与える影響を可及的に抑制することができる。つまり、フィルム本体(71)の全面に別の補強用フィルム材を設けると、フィルム材(7)の幅方向全域に亘って、フィルム本体(71)と補強用フィルム材とが厚み方向に重なり、フィルム材(7)の誘電率は、フィルム本体(71)の誘電率と補強用フィルム材の誘電率とを合成したものとなる。その結果、フィルム材(7)を用いて構成したフィルムコンデンサの静電容量は、フィルム本体(71)による静電容量と補強用フィルム材による静電容量とを直列に合成した合成容量となる。この場合、フィルムコンデンサの静電容量を所望の値にすべくフィルム本体(71)の材料を適宜選択しても、フィルム本体(71)による静電容量と補強用フィルム材による静電容量とに大きな差があると、フィルムコンデンサの静電容量は、フィルム本体(71)による静電容量から大きくずれてしまう。それに対して、補強用の部材を線条体で構成する場合には、補強用線条体(72)が設けられた部分ではフィルム本体(71)による静電容量と補強用線条体(72)による静電容量とを直列に合成した合成容量となるが、それ以外の部分ではフィルム本体(71)のみによる静電容量となり、フィルムコンデンサとしては、フィルム本体(71)による静電容量及び補強用線条体(72)による静電容量の合成容量と、フィルム本体(71)のみによる静電容量とを並列に合成した合成容量となる。そして、補強用線条体(72)は線条に形成されていて、フィルム本体(71)の幅に対して細いため、静電容量がフィルム本体(71)による静電容量と補強用線条体(72)による静電容量との直列合成容量となる部分を小さくすることができる。つまり、補強用の部材を線条体で構成することによって、補強用線条体(72)がフィルム材(7)の誘電率に与える影響を可及的に小さくすることができる。その結果、フィルム本体(71)の材料を適宜選択することで、フィルム材(7)の誘電率を所望の値に容易に設定することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記補強用線条体(72)は、前記蒸着工程における引き出し方向と平行に配向されているものとする。
【0014】
前記の構成の場合、補強用線条体(72)を前記引き出し方向と平行に配向することによって、引き出し時にフィルム材(7)に作用する張力の方向が補強用線条体(72)の長手方向と一致する。ここで、補強用線条体(72)を有するフィルム材(7)においては、補強用線条体(72)の長手方向への引っ張り強度が最も強化される。つまり、補強用線条体(72)を前記引き出し方向と平行に配向することによって、フィルム材(7)の、引き出し時の張力が作用する方向の引っ張り強度を確実に強化することができる。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記フィルム材(7)は、前記補強用線条体(72)を複数有すると共に、該補強用線条体(72)をそれぞれ連結する連結用線条体(73)をさらに有しているものとする。
【0016】
前記の構成の場合、補強用線条体(72)を複数設けることによって、フィルム材(7)の引っ張り強度をさらに向上させることができる。また、連結用線条体(73)を設けることによって、該連結用線条体(73)の方向にもフィルム材(7)の引っ張り強度を向上させることができる。さらに、複数の補強用線条体(72)のそれぞれを連結用線条体(73)で連結することによって、フィルム材(7)の製造時に複数の補強用線条体(72)を一体として取り扱うことができるため、補強用線条体(72)の位置決め精度を向上させることができ、その結果、フィルム材(7)の所望の部分を確実に補強することができる。
【0017】
第4の発明は、第1〜第3の何れか1つの発明において、前記蒸着工程では、前記フィルム材(7)のうち前記補強用線条体(72)が設けられている部分の少なくとも一方の表面に、金属が蒸着されていないマージン部(82)を形成するものとする。
【0018】
前記の構成の場合、フィルム材(7)のうち前記補強用線条体(72)が設けられている部分の少なくとも一方の表面にマージン部(82)を形成することによって、該補強用線条体(72)が設けられた部分は金属膜で挟持されない。そのため、該金属化フィルム(8)がフィルムコンデンサとして組み込まれたとしても、該補強用線条体(72)が設けられた部分はコンデンサとして機能しない。つまり、フィルムコンデンサの静電容量に寄与しない部分に補強用線条体(72)を設けて、フィルムコンデンサの静電容量への影響を可及的に抑制しつつ、フィルム材(7)を補強することができる。
【0019】
第5の発明は、フィルム材(7)の表面に金属が蒸着された金属化フィルムが対象である。そして、前記フィルム材(7)は、フィルム本体(71)と、該フィルム本体(71)に設けられた補強用線条体(72)とを有しているものとする。
【0020】
前記の構成の場合、フィルム材(7)に補強用線条体(72)を設けることによって、前述の如く、フィルム材(7)が補強されるため、金属化フィルム製造時において、フィルム材(7)が変形したり、フィルム材(7)にひび割れが生じたりすることを防止することができる。つまり、製造された金属化フィルムにおいては、フィルム材(7)の変形やひび割れ等が防止されており、フィルム材(7)の品質を安定させることができる。
【0021】
また、フィルム材(7)を補強することによって、金属化フィルム製造時のフィルム材(7)の切断を防止できるだけでなく、金属化フィルムを補強することができる。特に、補強用線条体(72)の長手方向への金属化フィルムの引っ張り強度を向上させることができる。その結果、金属化フィルムを引き出す際の該金属化フィルムの切断を防止することができる。
【0022】
さらに、フィルム本体(71)の全面に別の補強用フィルム材を設けてフィルム材(7)を補強するのではなく、補強用の部材を線条体で構成することによって、前述の如く、フィルム材(7)の誘電率に与える影響を可及的に抑制することができる。その結果、フィルム本体(71)の材料を適宜選択することで、フィルム材(7)の誘電率を所望の値に容易に設定することができる。
【0023】
第6の発明は、第5の発明において、前記フィルム材(7)は、ロール状に巻回されており、前記補強用線条体(72)は、巻回方向に直交する、前記フィルム材(7)の幅方向に対して交差するように配向されているものとする。
【0024】
前記の構成の場合、金属化フィルムはロール状に巻回されており、該金属化フィルムを用いてフィルムコンデンサを製造するときには、該ロール状に巻回された金属化フィルムを引き出す必要がある。ここで、金属化フィルムを引き出す際には該金属化フィルムに対して引き出し方向に張力が作用し、この引き出し方向は金属化フィルムの巻回方向(即ち、長手方向)と一致する。つまり、引き出し時の張力は、金属化フィルムの巻回方向へ作用する。そこで、前記補強用線条体(72)を、フィルム材(7)の、巻回方向に直交する幅方向に対して交差するように配向することによって、金属化フィルムを引き出す際に該金属化フィルムに作用する張力の一部を補強用線条体(72)で受け止めることができ、金属化フィルムの引っ張り強度を向上させることができる。
【0025】
第7の発明は、第6の発明において、前記補強用線条体(72)は、前記巻回方向と平行に配向されているものとする。
【0026】
前記の構成の場合、補強用線条体(72)を、引き出し時の張力が作用する方向である前記巻回方向と平行に配向することによって、引き出し時に金属化フィルムに作用する張力の方向が補強用線条体(72)の長手方向と一致する。つまり、補強用線条体(72)を前記巻回方向と平行に配向することによって、金属化フィルムの、引き出し時の張力が作用する方向の引っ張り強度を確実に強化することができる。
【0027】
第8の発明は、第5〜第7の何れか1つの発明において、前記フィルム材(7)は、前記補強用線条体(72)を複数有すると共に、該補強用線条体(72)をそれぞれ連結する連結用線条体(73)をさらに有しているものとする。
【0028】
前記の構成の場合、補強用線条体(72)を複数設けることによって、フィルム材(7)、ひいては、金属化フィルムの引っ張り強度をさらに向上させることができる。また、連結用線条体(73)を設けることによって、該連結用線条体(73)の方向にも金属化フィルムの引っ張り強度を向上させることができる。さらに、複数の補強用線条体(72)のそれぞれを連結用線条体(73)で連結することによって、フィルム材(7)の製造時に複数の補強用線条体(72)を一体として取り扱うことができるため、補強用線条体(72)の位置決め精度を向上させることができ、その結果、金属化フィルムの所望の部分を確実に補強することができる。
【0029】
第9の発明は、第5〜第8の何れか1つの発明において、前記フィルム材(7)の表面には、金属が蒸着されていないマージン部(82)が設けられており、前記補強用線条体(72)は、前記マージン部(82)に対応する位置に設けられているものとする。
【0030】
前記の構成の場合、フィルムコンデンサとして組み込まれた際に、フィルム材(7)のうち金属膜によって厚み方向から挟持された部分がコンデンサとして機能する。よって、金属が蒸着されていないマージン部(82)に対応する部分はコンデンサとして機能しない。つまり、フィルムコンデンサの静電容量に寄与しない部分に補強用線条体(72)を設けることによって、フィルムコンデンサの静電容量への影響を可及的に抑制しつつ、フィルム材(7)、ひいては金属化フィルムを補強することができる。
【0031】
第10の発明は、表面に金属が蒸着されることで金属化フィルムを構成する、金属化フィルム用のフィルム材が対象である。そして、ロール状に巻回されており、フィルム本体(71)と、前記フィルム本体(71)に設けられた補強用線条体(72)とを備え、前記補強用線条体(72)は、巻回方向に直交する、前記フィルム材の幅方向に対して交差するように配向されているものとする。
【0032】
前記の構成の場合、フィルム材のフィルム本体(71)に補強用線条体(72)を設け、この補強用線条体(72)をフィルム材の幅方向に対して交差するように配向することによって、フィルム材の引っ張り強度を向上させることができる。つまり、ロール状に巻回されたフィルム材には引き出し時にその巻回方向(即ち、長手方向)へ張力が作用するが、補強用線条体(72)をフィルム材の幅方向と平行に配向してしまうと、フィルム材に作用する張力は、補強用線条体(72)に対してその長手方向には作用せず、該補強用線条体(72)はフィルム材の引っ張り強度の向上にほとんど寄与しない。それに対して、補強用線条体(72)を少なくともフィルム材の幅方向に交差するように配向することによって、フィルム材に作用する張力の一部は、補強用線条体(72)の長手方向へ作用するようになり、フィルム材の引っ張り強度を向上させることができる。
【0033】
そして、フィルム本体(71)の全面に別の補強用フィルム材を設けてフィルム材を補強するのではなく、補強用の部材を線条体で構成することによって、フィルム材の誘電率に与える影響を可及的に抑制することができる。その結果、フィルム本体(71)の材料を適宜選択することで、フィルム材の誘電率を所望の値に容易に設定することができる。
【0034】
第11の発明は、第10の発明において、前記補強用線条体(72)は、前記巻回方向と平行に配向されているものとする。
【0035】
前記の構成の場合、補強用線条体(72)を、引き出し時の張力が作用する方向である前記巻回方向と平行に配向することによって、引き出し時にフィルム材に作用する張力の方向が補強用線条体(72)の長手方向と一致する。つまり、補強用線条体(72)を前記巻回方向と平行に配向することによって、フィルム材の、引き出し時の張力が作用する方向の引っ張り強度を確実に強化することができる。
【0036】
第12の発明は、第10又は第11の発明において、前記補強用線条体(72)は、複数設けられており、前記補強用線条体(72)をそれぞれ連結する連結用線条体(73)をさらに備えるものとする。
【0037】
前記の構成の場合、補強用線条体(72)を複数設けることによって、フィルム材の引っ張り強度をさらに向上させることができる。また、連結用線条体(73)を設けることによって、該連結用線条体(73)の方向にもフィルム材の引っ張り強度を向上させることができる。さらに、複数の補強用線条体(72)のそれぞれを連結用線条体(73)で連結することによって、複数の補強用線条体(72)を一体として取り扱うことができるため、フィルム本体(71)と補強用線条体(72)とからフィルム材を製造する際に、補強用線条体(72)の取り扱い及び位置決めを容易にすることができる。
【0038】
第13の発明は、フィルム材(70)の表面に金属が蒸着された金属化フィルム(80)を巻回してなるフィルムコンデンサ(1)を製造するフィルムコンデンサの製造方法が対象である。そして、フィルム本体(71)及び該フィルム本体(71)に設けられた補強用線条体(72)を有するフィルム材(7)の表面に金属が蒸着され且つ、ロール状に巻回された金属化フィルム(8)を準備する工程と、前記金属化フィルム(8)を所定の幅に切り出す切り出し工程と、前記切り出し工程によって切り出した金属化フィルム(80)を用いてフィルムコンデンサ(1)を製造するコンデンサ製造工程とを含むものとする。
【0039】
前記の構成の場合、フィルム材(7)に補強用線条体(72)を設けることによって、前述の如く、フィルム材(7)が補強されるため、それを用いて製造された金属化フィルム(8)においては、フィルム材(7)の変形やひび割れ等が防止されており、金属化フィルム(80)の品質を安定させることができる。
【0040】
また、フィルム材(7)を補強することによって、金属化フィルム(8)を補強することができる。特に、補強用線条体(72)の長手方向への金属化フィルム(8)の引っ張り強度を向上させることができる。
【0041】
こうして、フィルム材(7)及び金属化フィルム(8)を補強することによって、金属化フィルム(8)の製造時にフィルム材(7)が変形等したり、フィルムコンデンサ(1)の製造時に金属化フィルム(8)が変形等したりすることが防止されているため、フィルムコンデンサ(1)におけるフィルム材(7)及び金属化フィルム(8)の品質を安定させることができ、ひいては、フィルムコンデンサ(1)の品質を安定させることができる。
【0042】
さらに、フィルム本体(71)の全面に別の補強用フィルム材を設けてフィルム材(7)を補強するのではなく、補強用の部材を線条体で構成することによって、前述の如く、フィルム材(7)の誘電率に与える影響を可及的に抑制することができる。その結果、フィルム本体(71)の材料を適宜選択することで、フィルム材(7)の誘電率及びフィルムコンデンサ(1)の静電容量を所望の値に容易に設定することができる。
【0043】
第14の発明は、第13の発明において、前記フィルム材(7)の表面には、金属が蒸着されていないマージン部(82)が設けられていて、前記補強用線条体(72)は、前記マージン部(82)に対応する位置に設けられており、前記切り出し工程においては、前記マージン部(82)が前記金属化フィルム(80)の幅方向端縁に沿って配置されるように、前記金属化フィルム(8)を切り出すものとする。
【0044】
前記の構成の場合、切り出された金属化フィルム(80)においては、幅方向端縁に沿って、金属が蒸着されていないマージン部(82)が形成されている。
【0045】
通常、フィルムコンデンサにおいては、巻回された金属化フィルム(80)の幅方向端部にはメタリコン電極(4)が設けられる。そして、該メタリコン電極(4)と金属化フィルム(80)の金属膜(81)とを電気的に導通させる場合には、金属膜(81)を金属化フィルム(8)の幅方向端縁まで設けてメタリコン電極(4)と接合させる。一方、該メタリコン電極(4)と該金属膜(81)とを電気的に絶縁させる場合には、金属化フィルム(80)の幅方向端縁にマージン部(82)を設けることによって、金属膜が金属化フィルム(80)の幅方向端部に露出しないようにして、金属膜(81)とメタリコン電極(4)との間に間隔を設けている。このマージン部(82)が設けられた部分は、フィルム材(70)が金属膜(81,81)で挟持されていないため、コンデンサとしては機能しない。
【0046】
そして、このマージン部(82)に対応する位置に前記補強用線条体(72)を設けることによって、フィルムコンデンサ(1)の静電容量への影響を可及的に抑制しつつ、フィルム材(7)、ひいては金属化フィルム(8)を補強することができる。
【0047】
第15の発明は、第13の発明において、前記切り出し工程においては、前記補強用線条体(72)が含まれないように前記金属化フィルム(80)を切り出すものとする。
【0048】
前記の構成の場合、金属化フィルム(80)が切り出されるまでの間、すなわち、フィルム材(7)から金属化フィルム(8)を製造する際、金属化フィルム(8)を切り出すべく金属化フィルム(8)を引き出す際には、前記補強用線条体(72)によってフィルム材(7)及び金属化フィルム(8)を補強することができ、フィルム材(7)及び金属化フィルム(8)が切れたり、変形したりすることを防止することができる。
【0049】
そして、金属化フィルム(8)を切り出す際には、補強用線条体(72)が含まれないように切り出すことによって、切り出された金属化フィルム(80)によって構成されるフィルムコンデンサ(1)には補強用線条体(72)が含まれず、該フィルムコンデンサ(1)の静電容量が補強用線条体(72)の影響を受けることを防止することができる。つまり、フィルムコンデンサ(1)の静電容量は、フィルム本体(71)の誘電率に基づいて決定されるため、フィルム本体(71)の材料を適宜選択することによって、フィルム材(7)の誘電率を所望の値に容易に設定して、フィルムコンデンサ(1)の静電容量を容易且つ適切に設定することができる。
【0050】
第16の発明は、フィルム材(70)の表面に金属が蒸着された金属化フィルム(80)を巻回してなるフィルムコンデンサが対象である。そして、前記フィルム材(70)は、フィルム本体(71)と、該フィルム本体(71)に設けられた補強用線条体(72)とを有しているものとする。
【0051】
前記の構成の場合、フィルム材(70)に補強用線条体(72)を設けることによって、前述の如く、フィルム材(70)が補強されるため、金属化フィルム製造時において、フィルム材(7)が変形したり、フィルム材(7)にひび割れが生じたりすることを防止することができる。また、製造された金属化フィルム(8)も補強用線条体(72)によって補強されているため、フィルムコンデンサ製造時において、金属化フィルム(8)が変形したり、金属化フィルム(8)にひび割れが生じたりすることを防止することができる。こうして、製造されたフィルムコンデンサ(1)においては、フィルム材(70)及び金属化フィルム(80)の変形やひび割れ等が防止されており、フィルム材(70)及び金属化フィルム(80)の品質を安定させることができる。
【0052】
また、フィルム本体(71)の全面に別の補強用フィルム材を設けてフィルム材(7)を補強するのではなく、補強用の部材を線条体で構成することによって、前述の如く、フィルム材(70)の誘電率に与える影響を可及的に抑制することができる。その結果、フィルム本体(71)の材料を適宜選択することで、フィルム材(70)の誘電率を所望の値に容易に設定して、フィルムコンデンサ(1)の静電容量を容易且つ適切に設定することができる。
【0053】
第17の発明は、第16の発明において、前記金属化フィルム(80)には、前記フィルム材(70)の表面において金属が蒸着されていないマージン部(82)が設けられており、前記補強用線条体(72)は、前記マージン部(82)に対応する位置に設けられているものとする。
【0054】
前記の構成の場合、金属化フィルム(80)には金属が蒸着されていない、即ち、静電容量に寄与しないマージン部(82)が設けられている。そして、補強用線条体(72)をこのマージン部(82)に対応する位置に設けることによって、補強用線条体(72)がフィルムコンデンサ(1)の静電容量に影響を与えることを防止しつつ、前述の如く補強用線条体(72)でフィルム材(70)及び金属化フィルム(80)の強度を補強することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、前記補強用線条体(72)を前記蒸着工程における引き出し方向に直交する、前記フィルム材(7)の幅方向に対して交差するように設けることによって、フィルム材(7)の引っ張り強度を向上させることができると共に、補強用の部材を線条体で構成することによって、フィルム材(7)の誘電率に与える影響を可及的に抑制することができる。
【0056】
第2の発明によれば、補強用線条体(72)を前記引き出し方向と平行に配向することによって、フィルム材(7)の、引き出し時の張力が作用する方向の引っ張り強度を確実に強化することができる。
【0057】
第3の発明によれば、補強用線条体(72)を複数設けることによって、フィルム材(7)の引っ張り強度をさらに向上させることができる。また、連結用線条体(73)を設けることによって、該連結用線条体(73)の長手方向にもフィルム材(7)の引っ張り強度を向上させることができる。それに加えて、複数の補強用線条体(72)のそれぞれを連結用線条体(73)で連結することによって、補強用線条体(72)の取り扱いを容易にすると共に、フィルム本体(71)に対する補強用線条体(72)の位置決め精度を向上させて、フィルム材(7)の所望の部分を的確に補強することができる。
【0058】
第4の発明によれば、コンデンサとして機能しない前記マージン部(82)に対応する位置に補強用線条体(72)を設けることによって、フィルムコンデンサの静電容量への影響を可及的に抑制しつつ、フィルム材(7)を補強することができる。
【0059】
第5の発明によれば、金属化フィルムにおいて、フィルム材(7)に補強用線条体(72)を設けることによって、金属化フィルム製造時における、フィルム材(7)の変形及びひび割れを防止することができ、その結果、製造された金属化フィルムの品質を安定させることができる。また、フィルム材(7)を補強することによって、金属化フィルムの引っ張り強度も向上させることができる。さらに、補強用の部材を線条体で構成することによって、フィルム材(7)の誘電率に与える影響を可及的に抑制することができる。
【0060】
第6の発明によれば、前記補強用線条体(72)を、金属化フィルムの、巻回方向に直交する幅方向に対して交差するように配向することによって、金属化フィルムを引き出す際に該金属化フィルムに作用する張力の一部を補強用線条体(72)で受け止めることができ、金属化フィルムの、巻回方向への引っ張り強度を向上させることができる。
【0061】
第7の発明によれば、補強用線条体(72)を前記巻回方向と平行に配向することによって、金属化フィルムの、引き出し時の張力が作用する方向の引っ張り強度を確実に強化することができる。
【0062】
第8の発明によれば、補強用線条体(72)を複数設けることによって、金属化フィルムの引っ張り強度をさらに向上させることができる。また、連結用線条体(73)を設けることによって、該連結用線条体(73)の長手方向にも金属化フィルムの引っ張り強度を向上させることができる。それに加えて、複数の補強用線条体(72)のそれぞれを連結用線条体(73)で連結することによって、補強用線条体(72)の取り扱いを容易にすると共に、フィルム本体(71)に対する補強用線条体(72)の位置決め精度を向上させて、金属化フィルムの所望の部分を的確に補強することができる。
【0063】
第9の発明によれば、コンデンサとして機能しない前記マージン部(82)に対応する位置に補強用線条体(72)を設けることによって、フィルムコンデンサの静電容量への影響を可及的に抑制しつつ、金属化フィルムを補強することができる。
【0064】
第10の発明によれば、フィルム材のフィルム本体(71)に補強用線条体(72)を設け、この補強用線条体(72)をフィルム材の幅方向に対して交差するように配向することによって、フィルム材の、巻回方向への引っ張り強度を向上させることができると共に、補強用の部材を線条体で構成することによって、フィルム材の誘電率に与える影響を可及的に抑制することができる。
【0065】
第11の発明によれば、補強用線条体(72)を前記巻回方向と平行に配向することによって、フィルム材の、引き出し時の張力が作用する方向の引っ張り強度を確実に強化することができる。
【0066】
第12の発明によれば、補強用線条体(72)を複数設けることによって、フィルム材の引っ張り強度をさらに向上させることができると共に、複数の補強用線条体(72)のそれぞれを連結用線条体(73)で連結することによって、フィルム材を製造する際に補強用線条体(72)の取り扱い及び位置決めを容易にすることができる。
【0067】
第13の発明によれば、フィルム材(7)に補強用線条体(72)を設けることによって、フィルム材(7)が補強されるため、それを用いて製造された金属化フィルム(8)においては、フィルム材(7)の変形やひび割れ等が防止されており、金属化フィルム(8)の品質を安定させることができる。また、フィルム材(7)を補強することによって、金属化フィルム(8)を補強することができる。こうして、フィルム材(7)及び金属化フィルム(8)を補強することによって、フィルムコンデンサ(1)におけるフィルム材(7)及び金属化フィルム(8)の品質を安定させることができる。さらに、補強用の部材を線条体で構成することによって、補強用線条体(72)がフィルム材(7)の誘電率及びフィルムコンデンサ(1)の静電容量に与える影響を可及的に抑制することができる。
【0068】
第14の発明によれば、前記マージン部(82)に対応する位置に補強用線条体(72)を設けると共に、切り出された金属化フィルム(80)において該マージン部(82)が幅方向端縁に配置されるように金属化フィルム(80)を切り出すことによって、切り出された金属化フィルム(80)においてコンデンサとして機能しない、幅方向端縁に設けられたマージン部(82)に補強用線条体(72)が設けられることになるため、フィルム材(7)を補強しつつ、フィルムコンデンサ(1)の静電容量への影響を可及的に抑制することができる。
【0069】
第15の発明によれば、前記切り出し工程において補強用線条体(72)が含まれないように金属化フィルム(80)を切り出すことによって、金属化フィルム(8)の製造時や金属化フィルム(8)の引き出し時におけるフィルム材(7)及び金属化フィルム(8)の引っ張り強度を向上させることができると共に、製造されたフィルムコンデンサ(1)の静電容量に補強用線条体(72)が影響を与えることを完全に防止することができる。
【0070】
第16の発明によれば、フィルム材(7)に補強用線条体(72)を設けて該フィルム材(7)を補強することによって、フィルム材(7)及び金属化フィルム(8)の変形やひび割れ等が防止することできるため、フィルム材(70)及び金属化フィルム(80)の品質を安定させることができ、ひいてはフィルムコンデンサ(1)の品質を安定させることできる。
【0071】
第17の発明によれば、補強用線条体(72)をマージン部(82)に対応する位置に設けることによって、補強用線条体(72)でフィルム材(70)及び金属化フィルム(80)の強度を補強しつつ、補強用線条体(72)がフィルムコンデンサ(1)の静電容量に影響を与えることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0073】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態に係る誘電体フィルム(7)は、図1に示すように、帯状に形成されてロール状に巻回されている。この誘電体フィルム(7)は、後述するフィルムコンデンサ(1)に用いられる金属化フィルム(8)の原材料となる。
【0074】
−誘電体フィルムの構成−
詳しくは、前記誘電体フィルム(7)は、帯状のフィルム本体(71)と、フィルム本体(71)中に設けられた複数の補強用フィルム(72)とを有している。この誘電体フィルム(7)がフィルム材を構成する。
【0075】
前記フィルム本体(71)は、帯状の部材であって、無機酸化物を添加した、少なくとも補強用フィルム(72)よりも誘電率が高い材料で構成されている。本実施形態のフィルム本体(71)は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)よりも誘電率が高いフィルムであって、例えば、VdF系ポリマーと、チタン酸バリウム系酸化物粒子及び/又はチタン酸ジルコン酸鉛系酸化物粒子と、カップリング剤及び/又は界面活性剤とを含む誘電体フィルムで構成されている。
【0076】
前記補強用フィルム(72)は、少なくともフィルム本体(71)よりも引っ張り強度が強い材料で構成されている。本実施形態の補強用フィルム(72)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で構成されている。
【0077】
前記補強用フィルム(72)は、四角柱状に形成された線条体である。この補強用フィルム(72)は、フィルム本体(71)の幅方向に間隔を開けて複数設けられ、その長手方向がフィルム本体(71)の長手方向と平行となるように配向されている。この補強用フィルム(72)が補強用線条体を構成する。
【0078】
補強用フィルム(72)の、フィルム本体(71)の厚み方向への寸法は、フィルム本体(71)の厚みよりも細くなっている。さらに、補強用フィルム(72)の、フィルム本体(71)の幅方向への寸法は、該補強用フィルム(72)の、フィルム本体(71)の厚み方向への寸法よりも細くなっている。
【0079】
このように構成された誘電体フィルム(7)は、その幅(短手)方向と平行な所定の軸回りに巻回されてロール状に形成されている。すなわち、誘電体フィルム(7)は、その長手方向がロールの周方向(即ち、巻回方向)と一致する。その結果、補強用フィルム(72,72,…)も、その長手方向がロールの周方向と一致する。
【0080】
−誘電体フィルムの製造方法−
このように構成された誘電体フィルム(7)の製造方法について、以下に説明する。
【0081】
誘電体フィルム(7)は、誘電体フィルム製造装置(図示省略)を用いて製造される。
【0082】
まず、複数の前記補強用フィルム(72,72,…)を準備する。そして、複数の補強用フィルム(72,72,…)を、誘電体フィルム製造装置における、表面が平滑なベルト状の搬送台の上に、幅方向に所定の間隔を開けて平行に並べる。そして、搬送台が送られていくのに合わせて、補強用フィルム(72,72,…)も連続的に搬送台上に送られていく。
【0083】
次に、誘電体フィルム製造装置の塗布部において、溶媒にフィルム本体(71)の材料を溶融させた溶液を、補強用フィルム(72,72…)の上から搬送台上に塗布する。
【0084】
その後、誘電体フィルム製造装置の乾燥部において、溶媒を蒸発させて、フィルム本体(71)を硬化させることで、フィルム本体(71)と補強用フィルム(72,72,…)とが一体となった誘電体フィルム(7)が形成される。
【0085】
以上の工程を、搬送台を送りながら連続的に行うことによって、帯状の誘電体フィルム(7)が製造される。最終的には、形成された誘電体フィルム(7)は搬送台から引き離され、ロール状に巻回される。
【0086】
このように製造された誘電体フィルム(7)において、補強用フィルム(72,72,…)は、その長手方向が誘電体フィルム(7)の長手方向と平行になるように配向される。また、誘電体フィルム(7)は、その長手方向が巻回方向と一致するようにしてロール状に巻回されているため、補強用フィルム(72,72,…)の長手方向も巻回方向と一致している。
【0087】
−金属化フィルムの構成−
続いて、以上、説明してきた誘電体フィルム(7)を用いて製造される金属化フィルム(8)について説明する。
【0088】
金属化フィルム(8)は、図2に示すように、帯状の誘電体フィルム(7)の表面(詳しくは、両面)に金属膜(81)が蒸着されて構成されている。金属膜(81)は、アルミニウム等の金属箔である。
【0089】
また、金属化フィルム(8)の表面には、金属膜(81)が設けられていない非蒸着部、即ち、マージン部(82,82,…)が設けられている。すなわち、マージン部(82)は、金属膜(81,81)で両側から挟持されていない。
【0090】
このマージン部(82,82,…)は、金属化フィルム(8)の幅方向に複数並んで設けられていて、金属化フィルム(8)の長手方向に延びている。さらに、マージン部(82,82,…)は、金属化フィルム(8)の一方の面と他方の面とで、金属化フィルム(8)の幅方向位置がずれて配置されている。詳しくは、金属化フィルム(8)の幅方向において、金属化フィルム(8)の一方の面のマージン部(82)と他方の面のマージン部(82)とが交互に並んでいる。
【0091】
そして、マージン部(82)は、補強用フィルム(72)と金属化フィルム(8)の厚み方向に並ぶ位置に設けられている。すなわち、マージン部(82)と補強用フィルム(72)との、金属化フィルム(8)の幅方向位置は一致している。
【0092】
また、金属化フィルム(8)は、詳しくは後述するが、フィルムコンデンサを製造する際に各マージン部(82)に沿って切断されて、所定の幅の金属化フィルム(80)が切り出される。つまり、金属化フィルム(8)の幅方向に並ぶマージン部(82,82)間の間隔、即ち、金属化フィルム(8)の一方の面のマージン部(82)と他方の面のマージン部(82)との間隔は、製造予定のフィルムコンデンサに組み込まれる金属化フィルム(80)の幅に設定されている。
【0093】
また、金属化フィルム(8)が切り出される際に、マージン部(82)もその長手方向に沿って2つに分割されて、切断によって2つに分割される両方の金属化フィルム(80,80)の端縁に配置されたマージン部(82,82)となる。つまり、切り出される前の金属化フィルム(8)のマージン部(82)は、フィルムコンデンサに組み込まれる金属化フィルム(80)として必要なマージン部(82)の幅を2つ合わせた幅に設定されている。
【0094】
換言すれば、補強用フィルム(72,72,…)はマージン部(82,82,…)に対応する位置に設けられているため、誘電体フィルム(7)中の補強用フィルム(72,72,…)は、切り出される予定の金属化フィルム(80)の幅に対応した間隔で、該誘電体フィルム(7)の幅方向に並んで配置されている。そして、各補強用フィルム(72)の幅は、フィルムコンデンサに組み込まれる金属化フィルム(80)として必要なマージン部(82)の幅の2倍の幅よりも狭く設定されている。つまり、金属化フィルム(8)において、補強用フィルム(72)はマージン部(82)に対応する位置にのみ設けられており、金属膜(81,81)で両面から挟持されている部分には設けられていない。
【0095】
−金属化フィルムの製造方法−
このように構成された金属化フィルム(8)の製造方法について、以下に説明する。
【0096】
まず、フィルム材準備工程において、前述のように構成された誘電体フィルム(7)を準備する。詳しくは、フィルム本体(71)中に補強用フィルム(72,72,…)が含まれ且つ、補強用フィルム(72,72,…)が巻回方向に沿って延びるようにしてロール状に巻回された誘電体フィルム(7)を準備する。
【0097】
そして、蒸着工程において、図3に示すような蒸着装置(9)を用いて、誘電体フィルム(7)の表面に金属を蒸着させる。
【0098】
詳しくは、回転自在に支持されたロール状の誘電体フィルム(7)から該誘電体フィルム(7)を引き出して、ガイド(91)で案内しながら搬送する。
【0099】
そして、第1蒸着部(92)において誘電体フィルム(7)の一方の面に金属を蒸着させ、第2蒸着部(93)において誘電体フィルム(7)の他方の面に金属を蒸着させる。
【0100】
こうして、両面に金属が蒸着された金属化フィルム(8)は、ロール状に巻回される。
【0101】
また、詳しい説明は省略するが、蒸着装置(9)にはマージン形成部が設けられており、金属化フィルム(8)の表面には金属が蒸着されていない前記マージン部(82,82,…)が形成される。このマージン形成部は、オイルマージン法やレーザーマージン法等、公知の方法でマージン部(82,82,…)を形成する。
【0102】
ここで、ロール状に巻回された誘電体フィルム(7)においては、補強用フィルム(72,72,…)が巻回方向に沿って延びているため、誘電体フィルム(7)が蒸着時に引き出されていくときには、補強用フィルム(72,72,…)は引き出し方向と平行に配向されていることになる。そのため、誘電体フィルム(7)に引き出し方向への張力が作用しても、その張力を誘電体フィルム(7)のフィルム本体(71)だけでなく、補強用フィルム(72,72,…)でも受け止めることができるため、誘電体フィルム(7)は張力に対して変形したり、ひび割れしたり、切れたりすることなく耐えることができる。
【0103】
そして、製造された金属化フィルム(8)においても、補強用フィルム(72,72,…)が金属化フィルム(8)の長手方向に沿って配向されている。この金属化フィルム(8)は、長手方向が巻回方向と一致するように巻回されたロール状に形成されるため、補強用フィルム(72,72,…)は、ロール状の金属化フィルム(8)において、巻回方向に沿って延びている。
【0104】
−フィルムコンデンサの構成−
続いて、以上、説明してきた金属化フィルム(8)を用いて製造されるフィルムコンデンサ(1)について説明する。
【0105】
フィルムコンデンサ(1)は、図4に示すように、巻芯(2)と、該巻芯(2)に巻回されたコンデンサ素子(3)と、巻回された該コンデンサ素子(3)の両端部に設けられたメタリコン電極(4,4)と、それらメタリコン電極(4,4)にそれぞれ電気的に接続された外部端子(5,5)と、該巻芯(2)、コンデンサ素子(3)、メタリコン電極(4,4)及び外部端子(5,5)を封止するための封止樹脂(6)とを備えている。このフィルムコンデンサ(1)は、例えば、インバータ回路とコンバータ回路との間の平滑コンデンサ等として用いられる。
【0106】
前記コンデンサ素子(3)は、図5に示すように、両面に金属が蒸着された金属化フィルム(80)を2枚重ね合わせて、それを巻回して構成されている。この金属化フィルム(80)は、フィルムコンデンサ(1)の寸法に合わせて、金属化フィルム(8)から細く切り出されたものである。すなわち、金属化フィルム(80)は、誘電体フィルム(70)とその両面に蒸着された金属膜(81,81)とで構成されている。
【0107】
詳しくは、金属化フィルム(80)の一方の面に形成された金属膜(81)は、金属化フィルム(80)の幅方向の一方に片寄っていて、金属化フィルム(80)の幅方向一方側の端縁まで形成されている。すなわち、金属化フィルム(80)の一方の面には、幅方向他方側の縁部において、長手方向に延びるマージン部(82)が形成されている。一方、金属化フィルム(80)の他方の面に形成された金属膜(81)は、金属化フィルム(80)の幅方向の他方に片寄っていて、金属化フィルム(80)の幅方向他方側の端縁まで形成されている。すなわち、金属化フィルム(80)の他方の面には、幅方向一方側の縁部において、長手方向に延びるマージン部(82)が形成されている。つまり、金属化フィルム(80)においては、一方の面と他方の面とにおいて、金属膜(81,81)がそれぞれ幅方向の反対側にずれており、マージン部(82,82)がそれぞれ幅方向の反対側の縁部に設けられている。
【0108】
このように構成された金属化フィルム(80,80)は、対向して重なり合う金属膜(81,81)が幅方向の同じ側にずれているようにして、重ね合わされる。つまり、重ね合わされた2枚の金属化フィルム(80,80)において、内側に位置する金属膜(81,81)は共に幅方向の一方側の縁部に露出するようにずれて配置されている一方、外側に位置する金属膜(81,81)は共に幅方向の他方側の縁部に露出するようにずれて配置されている。
【0109】
このように重ね合わされた2枚の金属化フィルム(80,80)を円柱状に巻回すると、軸方向一端部には2枚の金属化フィルム(80,80)の内側の金属膜(81,81)が露出する一方、軸方向他端部には2枚の金属化フィルム(80,80)の外側の金属膜(81,81)が露出する。
【0110】
前記メタリコン電極(4,4)は、円柱状に形成されたコンデンサ素子(3)の軸方向両端部にそれぞれ設けられている。このメタリコン電極(4,4)は、該コンデンサ素子(3)の軸方向端部において露出している、金属化フィルム(80,80)の金属膜(81,81)と電気的に導通している。すなわち、一方のメタリコン電極(4)は、2枚の金属化フィルム(80,80)の内側の金属膜(81,81)と電気的に導通しており、他方のメタリコン電極(4)は、2枚の金属化フィルム(80,80)の外側の金属膜(81,81)と電気的に導通している。
【0111】
前記外部端子(5,5)は、その基端部が巻芯(2)に対応する位置で、前記メタリコン電極(4,4)と電気的に接続されている。これらの外部端子(5,5)は、メタリコン電極(4,4)の径方向外方に向かって延びて、その先端部が前記封止樹脂(6)から外方に突出している。外部端子(5,5)の先端部は、例えば、基板(図示省略)に接続される。
【0112】
前記封止樹脂(6)は、前記コンデンサ素子(3)の外周側、メタリコン電極(4,4)及び外部端子(5,5)の基端部を封止するように設けられている。すなわち、この封止樹脂(6)は、外部端子(5,5)の先端側を除いて、フィルムコンデンサ(1)の構成部品全体を覆うように設けられている。
【0113】
−フィルムコンデンサの製造方法−
このように構成されたフィルムコンデンサ(1)の製造方法について、以下に説明する。
【0114】
まず、金属化フィルム準備工程において、前述のように構成された金属化フィルム(8)を準備する。詳しくは、ロール状に巻回されていると共に、フィルム本体(71)中に補強用フィルム(72,72,…)が含まれ且つ、補強用フィルム(72,72,…)が巻回方向に沿って延びるように配向された誘電体フィルム(7)の表面に金属が蒸着されて構成された金属化フィルム(8)を準備する。
【0115】
次に、切り出し工程において、この金属化フィルム(8)を、製造するフィルムコンデンサ(1)の寸法に合わせて所定幅の帯状に切り出す。
【0116】
詳しくは、ロール状に巻回された金属化フィルム(8)を引き出しながら、該金属化フィルム(8)を所定の幅に切断していく。そして、切断後の金属化フィルム(80)を再び、ロール状に巻回する。
【0117】
ここで、金属化フィルム(8)の表面には、一方の面と他方の面とにその幅方向において交互にマージン部(82,82,…)が形成されており、このマージン部(82,82,…)に沿って金属化フィルム(8)を切断する。詳しくは、各マージン部(82)の幅方向中央に沿って、金属化フィルム(8)を切断する。つまり、マージン部(82)もその長手方向に沿って2つに分割されて、切断によって2つに分割される両方の金属化フィルム(80,80)の端縁に沿ってマージン部(82,82)が配置されることになる。
【0118】
そして、マージン部(82,82,…)は、金属化フィルム(8)の幅方向において、該金属化フィルム(8)の一方の面と他方の面とに交互に設けられているため、該マージン(82,82)に沿って切り出された金属化フィルム(80)は、図5に示すように、一方の面と他方の面とにおいて、金属膜(81,81)がそれぞれ幅方向の反対側にずれており、マージン部(82,82)がそれぞれ幅方向の反対側の縁部に設けられている。
【0119】
その後、コンデンサ製造工程において、所定の幅に切り出され且つロール状に巻回された金属化フィルム(80)を用いて、フィルムコンデンサ(1)を製造する。
【0120】
詳しくは、まず、ロール状の金属化フィルム(80)を連続的に引き出しながら、巻芯(2)に巻回してコンデンサ素子(3)を形成する。次に、円柱状に形成されたコンデンサ素子(3)の両端面に金属を溶射することによってメタリコン電極(4,4)を形成する。続いて、メタリコン電極(4,4)に外部電極(5,5)を接続する。その後、これらを封止樹脂(6)で封止する。
【0121】
このとき、金属化フィルム(80)の誘電体フィルム(70)内には補強用フィルム(72,72)が巻回方向に平行に設けられているため、ロール状態から金属化フィルム(80)を引き出す際に、その引き出し方向への引っ張り強度が強化されており、金属化フィルム(80)が切れたり、ひび割れたり、変形したりすることが防止される。そして、この補強用フィルム(72,72)は、金属化フィルム(80)の幅方向両端縁に形成されたマージン部(82,82)に対応する位置に設けられているため、フィルムコンデンサ(1)の静電容量には影響を与えない。つまり、フィルムコンデンサ(1)の静電容量は、誘電体フィルム(70)のフィルム本体(71)の誘電率に基づいて決まる。
【0122】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態によれば、誘電体フィルム(7)に補強用フィルム(72,72,…)を設け且つ、該補強用フィルム(72,72,…)を誘電体フィルム(7)の幅方向に直交するように設けることによって、該補強用フィルム(72,72,…)が金属化フィルム(8)製造時における誘電体フィルム(7)の引き出し方向に平行に配置されるため、誘電体フィルム(7)に作用する張力の一部を該補強用フィルム(72,72,…)で受け止めることができ、誘電体フィルム(7)が蒸着時に切れたり、変形したり、誘電体フィルム(7)にひび割れたりすることを防止することができる。尚、補強用フィルム(72,72,…)は、前記引き出し方向に平行ではなくても、少なくとも誘電体フィルム(7)の幅方向に交差するように配置することによって、該引き出し方向に対して少なくとも傾斜して(即ち、直交することなく)配置されるため、誘電体フィルム(7)に対して該引き出し方向に作用する張力の一部を補強用フィルム(72,72,…)で受け止めることができ、該誘電体フィルム(72,72,…)の該引き出し方向への引っ張り強度を向上させることができる。ただし、補強用フィルム(72,72,…)を含む誘電体フィルム(7)は、該補強用フィルム(72,72,…)の長手方向への引っ張り強度が最も強化されるため、補強用フィルム(72,72,…)を本実施形態のように、誘電体フィルム(7)の引き出し方向と平行に配置することによって、該誘電体フィルム(7)の引き出し方向への引っ張り強度を効率良く向上させることができる。
【0123】
それに加えて、補強用フィルム(72,72,…)を線条体で構成することによって、誘電体フィルム(7)にフィルム本体(71)とは異なる補強用フィルム(72,72,…)を含む構成であっても、補強用フィルム(72,72,…)が誘電体フィルム(7)の誘電率、ひいては、フィルムコンデンサ(1)の静電容量に与える影響を可及的に抑制することができる。その結果、フィルム本体(71)の材料を適宜選択することで、誘電体フィルム(7)の誘電率を所望の値に設定することができ、ひいては、フィルムコンデンサ(1)の静電容量を所望の値に設定することができる。
【0124】
また、補強用フィルム(72,72,…)を設けて誘電体フィルム(7)の引っ張り強度を向上させることによって、該誘電体フィルム(7)を用いて製造された金属化フィルム(8)は、誘電体フィルム(7)の変形やひび割れが抑制されているため、その品質、即ち、誘電率をフィルム全体に亘って安定させることができる。
【0125】
さらに、補強用フィルム(72,72,…)により誘電体フィルム(7)の引っ張り強度を向上させることによって、該誘電体フィルム(7)を用いて製造された金属化フィルム(8)の引っ張り強度も向上させることができる。
【0126】
そして、本実施形態では、ロール状の誘電体フィルム(7)から引き出して製造した金属化フィルム(8)をそのまま長手方向に巻回していくため、ロール状に巻回された金属化フィルム(8)においても、補強用フィルム(72,72,…)が巻回方向と平行に配向されている。その結果、ロール状に巻回された金属化フィルム(8)を引き出して、フィルムコンデンサ(1)を製造する際においても、金属化フィルム(8)に作用する引き出し方向への張力を補強用フィルム(72,72,…)で受け止めて、該金属化フィルム(8)が変形したり、ひび割れしたりすることを防止することができる。尚、所定の幅に切り出して、再び巻回された金属化フィルム(80)においても、同様に、補強用フィルム(72,72)が巻回方向と平行に配向されているため、金属化フィルム(80)に作用する引き出し方向への張力を補強用フィルム(72,72)で受け止めて、該金属化フィルム(80)が変形したり、ひび割れしたりすることを防止することができる。
【0127】
このように、フィルムコンデンサ(1)を製造時に張力が作用する引き出し方向(即ち、巻回方向)への、金属化フィルム(80)の引っ張り強度を向上させることによって、金属化フィルム(80)が変形したり、ひび割れしたりすることが防止されるため、該金属化フィルム(8)を用いて製造されたフィルムコンデンサ(1)の品質を安定させることができる。
【0128】
さらに、金属化フィルム(80)のマージン部(82)はコンデンサとして機能しないため、補強用フィルム(72,72)をマージン部(82)に対応する位置に配置することによって、補強用フィルム(72,72)がフィルムコンデンサ(1)の静電容量に影響を与えることを防止することができる。
【0129】
フィルムコンデンサ(1)においては、マージン部(82)は金属化フィルム(80)の幅方向端縁に沿って設けられる。こうすることで、金属化フィルム(80)の金属膜(81)を絶縁させる側のメタリコン電極(4)に対して接触しないようにしている。そのため、金属化フィルム(8)をフィルムコンデンサ(1)に用いられる所定幅の金属化フィルム(80)に切り出す際には、マージン部(82)を金属化フィルム(80)の幅方向端縁に配置させるべく、該金属化フィルム(8)をマージン部(82)に沿って切り出している。ここで、金属化フィルム(8)の、マージン部(82)に対応する部分には、前述の如く、補強用フィルム(72)が設けられているため、金属化フィルム(8)を補強用フィルム(72)に沿って切り出すことになる。その結果、切断時に金属化フィルム(8)に作用する剪断力等の力を補強用フィルム(72)で受け止めることができ、金属化フィルム(8)の変形等を抑制することができる。
【0130】
さらに、補強用フィルム(72,72,…)を複数設けることによって、誘電体フィルム(7)及び金属化フィルム(8)の引っ張り強度を確実に向上させることができる。
【0131】
《発明の実施形態2》
続いて、本発明の実施形態2に係るフィルムコンデンサ及びその製造方法について説明する。
【0132】
実施形態2に係るフィルムコンデンサは、金属化フィルム中に補強用フィルム(72)を含まない点において実施形態1と異なる。そこで、実施形態1と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0133】
−フィルムコンデンサの構成−
実施形態2に係るフィルムコンデンサの基本的な構成は、実施形態1に係るフィルムコンデンサ(1)と同様である。ただし、図6に示すように、金属化フィルム(280)の誘電体フィルム(270)内に補強用フィルム(72)が設けられていない。
【0134】
−フィルムコンデンサの製造方法−
このように構成されたフィルムコンデンサの製造方法について、以下に説明する。
【0135】
まず、金属化フィルム準備工程において、実施形態1と同様の金属化フィルム(8)を準備する。詳しくは、ロール状に巻回されていると共に、フィルム本体(71)中に補強用フィルム(72,72,…)が含まれ且つ、補強用フィルム(72,72,…)が巻回方向に沿って延びるように配向された誘電体フィルム(7)の表面に金属が蒸着されて構成された金属化フィルム(8)を準備する。
【0136】
この金属化フィルム(8)は、実施形態1に係る金属化フィルム(8)と基本的な構成は同様であるが、各マージン部(82)の幅が異なる。この金属化フィルム(8)のマージン部(82)の幅は、フィルムコンデンサに組み込まれる金属化フィルム(280)として必要なマージン部(82)の幅を2つ合わせた幅に、補強用フィルム(72)の幅を加えた幅に設定されている。詳しくは、金属化フィルム(8)において、補強用フィルム(72)の幅方向両側に、金属化フィルム(280)として必要なマージン部(82)をそれぞれ加えた部分には、金属が蒸着されておらず、マージン部(82)となっている。
【0137】
次に、切り出し工程において、この金属化フィルム(8)を、製造するフィルムコンデンサの寸法に合わせて切り出す。
【0138】
詳しくは、ロール状に巻回された金属化フィルム(8)を引き出しながら、該金属化フィルム(8)を所定の幅に切断していく。そして、切断後の金属化フィルム(280)を再び、ロール状に巻回する。
【0139】
ここで、金属化フィルム(8)の表面には、一方の面と他方の面とにその幅方向において交互にマージン部(82,82,…)が形成されており、このマージン部(82,82,…)に沿って金属化フィルム(208)を切断する。このとき、切り出される金属化フィルム(280)に補強用フィルム(72)が含まれないように、即ち、補強用フィルム(72)を切り落とすように、金属化フィルム(8)を切断していく。ここで、切り出される前の金属化フィルム(8)のマージン部(82)の幅は、前述の如く、補強用フィルム(72)の幅方向両側に、金属化フィルム(280)として必要なマージン部(82)をそれぞれ加えた幅となっているため、金属化フィルム(8)を補強用フィルム(72)を取り除くように切断した場合であっても、切り出された金属化フィルム(280)において、金属化フィルム(280)の幅方向端縁には所望幅のマージン部(82)が形成される。
【0140】
その結果、前述の如く、図6に示すように、一方の面と他方の面とにおいて、金属膜(81,81)がそれぞれ幅方向の反対側にずれており、マージン部(82,82)がそれぞれ幅方向の反対側の縁部に設けられた金属化フィルム(280)が形成される。このとき、実施形態1と異なり、金属化フィルム(280)の、マージン部(82,82)に対応する部分には補強用フィルム(72)が含まれていない。
【0141】
その後、コンデンサ製造工程において、所定の幅に切り出された金属化フィルム(280)を用いて、フィルムコンデンサが製造される。
【0142】
このように構成されたフィルムコンデンサにおいて、金属化フィルム(280)の誘電体フィルム(270)内に補強用フィルム(72)が含まれていないため、誘電体フィルム(270)の誘電率は、フィルム本体(71)の誘電率のみで決定される。その結果、フィルム本体(71)を適宜選択することによって、フィルムコンデンサの静電容量を適切且つ容易に設定することができる。
【0143】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態によれば、実施形態1と同様に、誘電体フィルム(7)に、該誘電体フィルム(7)の幅方向に交差するようにして補強用フィルム(72,72,…)を設けることによって、誘電体フィルム(7)の引き出し方向への引っ張り強度を向上させることができる。
【0144】
そして、本実施形態においては、フィルムコンデンサを製造すべく、金属化フィルム(208)を切り出す際に、補強用フィルム(72)を含まないように金属化フィルム(280)を切り出すことによって、補強用フィルム(72,72,…)がフィルムコンデンサの静電容量に影響を与えないようにすることができる。
【0145】
また、このように切り出し時に補強用フィルム(72)が含まれる部分を切り落とす構成において、該補強用フィルム(72)を線条体で形成することによって、金属化フィルム(208)の切り落とす量を低減することができる。
【0146】
その他、実施形態1と同様の作用・効果を奏することができる。
【0147】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0148】
例えば、前記実施形態では、誘電体フィルム(7)の両面に金属を蒸着させた両面金属化フィルムを用いているが、これに限られるものではない。すなわち、図7に示すように、誘電体フィルム(7)の片面だけに金属膜(81)を設けた2枚の片面金属化フィルム(380,380)を、一方の金属化フィルム(380)の誘電体フィルム(70)と他方の金属化フィルム(380)の金属膜(81)とが接触するように重なり合わせるように構成してもよい。このとき、一方の金属化フィルム(380)においては、金属膜(81)が誘電体フィルム(70)に対して幅方向(即ち、巻芯(2)の軸方向)の一方へずれて、マージン部(82)が幅方向の他方に設けられている。一方、他方の金属化フィルム(380)においては、金属膜(81)が誘電体フィルム(70)に対して幅方向の他方(前述の一方の金属化フィルム(80)とは逆側)へずれて、マージン部(82)が幅方向の一方に設けられている。つまり、巻回された円柱状に形成されたコンデンサ素子(303)においては、巻芯(2)の軸方向の一端部には一方の金属化フィルム(380)の金属膜(81)だけが露出し、該巻芯(2)の軸方向の他端部には他方の金属化フィルム(380)の金属膜(81)だけが露出した状態となっている。ここで、マージン部(82,82)は、金属膜(81,81)で挟持されておらず、コンデンサとして機能しない。そして、補強用フィルム(72)は、金属化フィルム(380)のマージン部(82)に対応する部分に設けられている。
【0149】
このような片面金属化フィルム(380)であっても、誘電体フィルム(70)に補強用フィルム(72)を設けることで、該誘電体フィルム(70)及び片面金属化フィルム(380)の引っ張り強度を向上させることができる。
【0150】
また、誘電体フィルム(407)は、図8に示すように、さらに、連結用フィルム(73,73,…)を有する構成であってもよい。各連結用フィルム(73)は、その両端が隣り合う補強用フィルム(72,72)に接合され、該補強用フィルム(72,72)を互いに連結している。このように連結用フィルム(73,73,…)で補強用フィルム(72,72,…)を連結することによって、誘電体フィルム(407)の製造時において、複数の補強用フィルム(72,72,…)を一体的に取り扱うことができるため、その配置及び位置決めを容易に行うことができる。その結果、生産性を向上させることができると共に、誘電体フィルム(407)及び金属化フィルム(8)における所望の位置を的確に補強することができる。また、連結用フィルム(73,73,…)を設けることによって、連結用フィルム(73,73,…)の長手方向にも誘電体フィルム(407)及び金属化フィルム(8)の引っ張り強度を向上させることができる。そして、この連結用フィルム(73)も補強用フィルム(72)と同様に線条体で形成することによって、誘電体フィルム(407)の誘電率に与える影響を可及的に抑制することができる。この連結用フィルム(73)が連結用線条体を構成する。
【0151】
また、前記実施形態では、補強用フィルム(72,72,…)を複数設けているが、これに限られず、補強用フィルム(72)1本だけ設ける構成であってもよい。
【0152】
さらに、補強用フィルム(72,72,…)は、誘電体フィルム(7)の引き出し方向(即ち、長手方向又は巻回方向)と平行に配置されるものに限られない。つまり、補強用フィルム(72)は、誘電体フィルム(7)の幅方向と交差していればよく、即ち、誘電体フィルム(7)の引き出し方向に対して傾斜していればもよい。
【0153】
また、フィルムコンデンサ(1)において、補強用フィルム(72,72)は、マージン部(82,82)に対応する位置に設けられているが、これに限られるものではない。すなわち、補強用フィルム(72)は線条体で形成され、誘電体フィルム(70)の誘電率に与える影響が小さいため、マージン部(82)以外の金属膜(81,81)で両側から挟持された部分に補強用フィルム(72)を設ける構成であってもよい。
【0154】
さらに、誘電体フィルム(7)を補強する補強用線条体として、補強用フィルム(72)を採用しているが、これに限られるものではない。線条体であればよく、例えば、繊維状、針状のものであってもよい。
【0155】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0156】
以上説明したように、本発明は、金属化フィルムの製造方法、金属化フィルム、フィルム材、フィルムコンデンサの製造方法及びフィルムコンデンサについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明の実施形態に係る誘電体フィルムを示す斜視図である。
【図2】金属化フィルムを示す斜視図である。
【図3】蒸着装置の概略構成図である。
【図4】フィルムコンデンサの概略構成を示す縦断面図である。
【図5】コンデンサ素子の横断面図である。
【図6】実施形態2に係るコンデンサ素子の横断面図である。
【図7】その他の実施形態に係るコンデンサ素子の横断面図である。
【図8】別のその他の実施形態に係る誘電体フィルムを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0158】
1 フィルムコンデンサ
7,407 誘電体フィルム(フィルム材)
71 フィルム本体
72 補強用フィルム(補強用線条体)
73 連結用フィルム(連結用線条体)
8 金属化フィルム
80,280,380 金属化フィルム
82 マージン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム材(7)の表面に金属を蒸着させた金属化フィルム(8)を製造する金属化フィルムの製造方法であって、
フィルム本体(71)と該フィルム本体(71)に設けられた補強用線条体(72)とを有し、ロール状に巻回されたフィルム材(7)を準備する工程と、
前記フィルム材(7)をロール状に巻回された状態から引き出しながら、該フィルム材(7)の表面に金属を蒸着させる蒸着工程とを含み、
前記補強用線条体(72)は、前記蒸着工程における引き出し方向に直交する、前記フィルム材(7)の幅方向に対して交差するように配向されていることを特徴とする金属化フィルムの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記補強用線条体(72)は、前記蒸着工程における引き出し方向と平行に配向されていることを特徴とする金属化フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記フィルム材(7)は、前記補強用線条体(72)を複数有すると共に、該補強用線条体(72)をそれぞれ連結する連結用線条体(73)をさらに有していることを特徴とする金属化フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つにおいて、
前記蒸着工程では、前記フィルム材(7)のうち前記補強用線条体(72)が設けられている部分の少なくとも一方の表面に、金属が蒸着されていないマージン部(82)を形成することを特徴とする金属化フィルムの製造方法。
【請求項5】
フィルム材(7)の表面に金属が蒸着された金属化フィルムであって、
前記フィルム材(7)は、フィルム本体(71)と、該フィルム本体(71)に設けられた補強用線条体(72)とを有していることを特徴とする金属化フィルム。
【請求項6】
請求項5において、
前記フィルム材(7)は、ロール状に巻回されており、
前記補強用線条体(72)は、巻回方向に直交する、前記フィルム材(7)の幅方向に対して交差するように配向されていることを特徴とする金属化フィルム。
【請求項7】
請求項6において、
前記補強用線条体(72)は、前記巻回方向と平行に配向されていることを特徴とする金属化フィルム。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れか1つにおいて、
前記フィルム材(7)は、前記補強用線条体(72)を複数有すると共に、該補強用線条体(72)をそれぞれ連結する連結用線条体(73)をさらに有していることを特徴とする金属化フィルム。
【請求項9】
請求項5乃至8の何れか1つにおいて、
前記フィルム材(7)の表面には、金属が蒸着されていないマージン部(82)が設けられており、
前記補強用線条体(72)は、前記マージン部(82)に対応する位置に設けられていることを特徴とする金属化フィルム。
【請求項10】
表面に金属が蒸着されることで金属化フィルム(8)を構成する、金属化フィルム用のフィルム材であって、
ロール状に巻回されており、
フィルム本体(71)と、
前記フィルム本体(71)に設けられた補強用線条体(72)とを備え、
前記補強用線条体(72)は、巻回方向に直交する、前記フィルム材の幅方向に対して交差するように配向されていることを特徴とするフィルム材。
【請求項11】
請求項10において、
前記補強用線条体(72)は、前記巻回方向と平行に配向されていることを特徴とするフィルム材。
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記補強用線条体(72)は、複数設けられており、
前記補強用線条体(72)をそれぞれ連結する連結用線条体(73)をさらに備えることを特徴とするフィルム材。
【請求項13】
フィルム材(70)の表面に金属が蒸着された金属化フィルム(80)を巻回してなるフィルムコンデンサ(1)を製造するフィルムコンデンサの製造方法であって、
フィルム本体(71)及び該フィルム本体(71)に設けられた補強用線条体(72)を有するフィルム材(7)の表面に金属が蒸着され且つ、ロール状に巻回された金属化フィルム(8)を準備する工程と、
前記金属化フィルム(8)を所定の幅に切り出す切り出し工程と、
前記切り出し工程によって切り出した金属化フィルム(80)を用いてフィルムコンデンサ(1)を製造するコンデンサ製造工程とを含むことを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記フィルム材(7)の表面には、金属が蒸着されていないマージン部(82)が設けられていて、
前記補強用線条体(72)は、前記マージン部(82)に対応する位置に設けられており、
前記切り出し工程においては、前記マージン部(82)が前記金属化フィルム(80)の幅方向端縁に沿って配置されるように、前記金属化フィルム(8)を切り出すことを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
【請求項15】
請求項13において、
前記切り出し工程においては、前記補強用線条体(72)が含まれないように前記金属化フィルム(80)を切り出すことを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
【請求項16】
フィルム材(70)の表面に金属が蒸着された金属化フィルム(80)を巻回してなるフィルムコンデンサであって、
前記フィルム材(70)は、フィルム本体(71)と、該フィルム本体(71)に設けられた補強用線条体(72)とを有していることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項17】
請求項16において、
前記金属化フィルム(80)には、前記フィルム材(70)の表面において金属が蒸着されていないマージン部(82)が設けられており、
前記補強用線条体(72)は、前記マージン部(82)に対応する位置に設けられていることを特徴とするフィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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