説明

金属又は非金属フタロシアニンの調製方法及び装置

溶媒の存在下においてマイクロ波及び超音波エネルギーの両方を用いることによるか、又は溶媒の不存在下においてマイクロ波エネルギーを用いることによる金属又は非金属フタロシアニンの調製方法を開示する。具体的には、無水フタル酸、フタルイミド、1,3-ジイミノイソインドリン、1,2-ジシアノベンゼン、そのハロゲン誘導体、そのアルキル誘導体又はそのアルコキシ誘導体を、溶媒の存在下で0.1〜1,000Hzの周波数及び100〜3,000Wのパワーのマイクロ波及び1〜1,000GHzの周波数及び100〜5,000Wのパワーの超音波エネルギーを用いることによるか、又は溶媒の不存在下で0.1〜100GHzの周波数及び100〜4,000Wのパワーのマイクロ波を用いることにより、130〜250℃で0.25〜15時間、金属塩化物又はアルコキシ金属と均一に混合する。さらに、溶媒の不存在下又は存在下における金属又は非金属フタロシアニンの調製装置を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒の不存在下又は存在下で、マイクロ波及び超音波エネルギーの両方を用いる金属又は非金属フタロシアニンの調製方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フタロシアニンは、図1の構造式で表される化合物であり、独特の化学構造のために優れた安定性及び良好な光電性特性を示す。これらの理由のため、フタロシアニンは、染料、色素、化学センサー、エレクトロミックディスプレー、光電池、ラジエーター、フォトディスク、触媒、非線形オプティクスなどの幅広い用途に現在用いられている。
フタロシアニンは一般的に、窒素源として尿素又はアンモニアを用い、180℃以上の温度、触媒の存在下、不活性溶媒において又は溶媒を用いずに、無水フタル酸、フタルイミド、1,3-ジイミノイソインドリン、1,2-ジシアノベンゼン及びそれらの誘導体から選択される出発物質を、金属塩化物又はアルコキシ金属と反応させることによって調製される。
そのように調製されたフタロシアニンは本質的に、色素として用いるために色素沈着をしなければならない。フタロシアニンの色素沈着は、主に以下の技法によって達成される。
1)捏和:フタロシアニン及び微細に分割された塩又は金属塩を捏和機に入れ、予定された時間練り、
2)粉砕及び有機溶媒処理:フタロシアニンを乾式又は湿式粉砕に付し、続いて有機溶媒で処理し、及び
3)粉砕及び捏和:フタロシアニンを乾式又は湿式粉砕に付し、続いて練る。
【0003】
日本特許出願公開平8-291,261号公報は、クロロナフタレンなどの溶媒の存在下で、200〜250℃の熱源を用いるフタロシアニンの調製方法を開示している。しかし、この方法は、以下の問題を有する:i)反応物の内部及び外部温度間の差により、除去困難な不純物が高温部上に形成される、ii)フタロシアニン粒子が不均一的に分散して針状に凝集することにより、色素として用いる前に長時間の色素沈着をしなければならない、iii)反応に用いた溶媒を回収するのに、大量のエネルギーを必要とする、及びiv)加工効率及び環境管理の点で不利である。
一般に、フタロシアニンは、溶媒の不存在下で従来の熱源を用いて調製されてもよい。この調製方法は、さらに種々の問題を有する。第一に、反応物が調製中に均一に混合されず、且つ電気又は熱媒油を用いて加熱されることにより、反応器の内部温度が均一にならず、熱源から相対的に高い熱が与えられている高温部上に除去困難な不純物が形成されるため、低収率及び低質なフタロシアニンを引き起こすこととなる。これらの理由により、いくつかの溶媒を用いない方法が文献に報告されている。しかし、ほとんど方法がフタロシアニンの大量生産に適用できない。いくつかのチェコ及び中国の企業がフタロシアニンの大量生産を試み、最終的に成功したが、色素沈着を行ったフタロシアニンの低質さのため、生産途中で止めてしまった。
【0004】
不均一な熱伝導に関連した上記の問題を解決するために、熱源としての電気及び熱媒油がマイクロ波に置き換えられた。そのような試みは、多くの引例(米国特許第6,491,796号明細書、及びFifth International Electronic Conference on Synthetic Organic Chemistry (ECSOC-5), 1-30 September 2001, pp 4-5)で見出すことができる。マイクロ波は、波長範囲0.001m〜1mの電磁波であり、急速加熱、選択加熱及び塊状加熱などの作用を有する。マイクロ波は加熱しようとする物体を直接加熱するため、外部加熱を必要としない。従って、マイクロ波の使用は、除去困難な不純物の形成を最小化する。しかし、マイクロ波の使用にも関わらず反応中に反応物が均一に混合されないことにより、フタロシアニンの収率は大きくは増加せず、フタロシアニンの大量生産は困難であり、且つフタロシアニンの質は溶媒方法によって調製されたフタロシアニンに匹敵しない。その結果、マイクロ波を用いるフタロシアニンの調製は、大量生産及び商業化に好適ではない。
【0005】
従って、本発明は、従来の溶媒方法又は溶媒を用いない方法における上記の問題に鑑みてなされた。本発明は、金属又は非金属(すなわち、金属を含まない)フタロシアニンの新規調製方法を提供し、この方法は、従来の熱源、例えば電気又は熱媒油をマイクロ波エネルギーに置き換えることにより、不均一な熱伝導から生じる問題を回避することができ、且つ反応物を均一に混合するために乾式又は湿式粉砕装置を用いることにより、金属又は非金属フタロシアニンを高収率で調製することができ、且つフタロシアニン粒子を形成後すぐに粉砕することができ、それによってフタロシアニン粒子の固い凝集を防ぐ。このために、本発明はさらに、溶媒の不存在下でマイクロ波を用いる金属又は非金属フタロシアニンを調製するための粉砕型装置(以下、“溶媒を用いない粉砕型マイクロ波装置”と呼ぶ)を提供し、この装置は、粉砕装置、例えば鉛直型の磨砕機又はボール粉砕機で30mmよりも大きくない直径を有するアルミナ又はガラスビーズで充填されているもの;粉砕装置の上部カバー上に設置され、0.1〜100GHzの周波数及び100〜4,000Wのパワーを提供する少なくとも1種のマグネトロン;反応物の温度を正確に測定及び制御するためのマイクロ波遮蔽赤外温度検出器;マグネトロンのパワーを制御するためのPID温度制御装置;反応中に発生したガス、例えばアンモニアを排気するための排気口;攪拌機を回転させて粉砕装置の中を均一に混合及び粉砕するための攪拌モーター;及び反応後に調製されたフタロシアニン生成物を排出するための排出バルブを含む。
【0006】
さらに、本発明は、熱源及びマイクロ波を用いる従来の溶媒方法における上記の問題、例えば長時間の色素沈着に鑑みてなされた。本発明は、マイクロ波及び超音波エネルギーの両方を用いて、フタロシアニンの収率、純度及び物理的特性を高める金属又は非金属フタロシアニンの調製方法を提供する。
このために、本発明はさらに、金属又は非金属フタロシアニンの調製装置を提供し、この装置は、0.1〜100GHzの周波数及び100〜3,000Wのパワーを提供するマグネトロン;マイクロ波容器においてマイクロ波の波長を均一にするためのモード攪拌機;反応物の温度を正確に測定及び制御するためのPID温度制御装置;マイクロ波容器の頂部に形成されている3つの穴にそれぞれ適合するマイクロ波遮蔽K型熱電対、コンデンサー及び攪拌機;マイクロ波容器の底部に形成されている穴に適合する超音波チップ;反応物を収容するためのパイレックス(登録商標)容器;及び溶媒タンクを含む。
【0007】
本発明の上記及び他の物体、特徴及び他の利点は、以下の詳細な記載及び添付図から、より明らかに理解される。
【0008】
ここで、本発明をより詳細に記載する。
本発明は、溶媒の存在下でマイクロ波及び超音波エネルギーを用いることによる、又は溶媒の不存在下で鉛直型の乾式又は湿式粉砕装置、例えば磨砕機又はボール粉砕機において熱源としてマイクロ波エネルギーを用いることによる金属又は非金属フタロシアニンの調製方法を提供する。
無水フタル酸、フタルイミド、1,3-ジイミノイソインドリン、1,2-ジシアノベンゼン、その水素誘導体、そのアルキル誘導体、そのアルコキシ誘導体などを出発物質として用い、尿素又はアンモニアを窒素源として用いる。金属フタロシアニンの調製に使用するのに好適な金属源として、金属塩化物(例えば塩化銅、塩化鉄、塩化チタンなど)又はアルコキシ金属(例えばエトキシチタン、プロポキシチタン、ブトキシチタンなど)が用いられる。反応触媒として、モリブデン酸アンモニウム、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)又は1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-ノン-5-エン(DBN)が用いられる。溶媒として、アルキルベンゼン、N-メチル-2-ピロリドン、キノリン、トリクロロベンゼン及び1-クロロナフタレンから選択されるハロゲン化芳香族炭化水素、又はイソアミルアルコール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール及びエチレングリコールから選択されるアルコールが用いられる。
【0009】
図2は、本発明の第一の実施態様における装置を示している。この装置は、0.1〜100GHzの周波数及び100〜3,000Wのパワーを提供するマグネトロン1;マイクロ波容器2においてマイクロ波の波長を均一にするためのモード攪拌機3;反応物の温度を正確に測定及び制御するためのステンレス鋼製PID温度制御装置8;マイクロ波容器の頂部に形成されている3つの穴(直径約1cm)にそれぞれ適合するマイクロ波遮蔽K型熱電対4、コンデンサー5及び攪拌機6;マイクロ波容器の底部に形成されている穴(直径約1cm)に適合する超音波チップ7;反応物を収容するためのパイレックス(登録商標)容器9;及びマイクロ波と反応することなく超音波エネルギーを反応物に伝導することのできるデカリン(デカヒドロナフタレン)で充填されている溶媒タンク10を含む。
本発明の装置では、反応物を、0.1〜100GHzの周波数及び100〜3,000Wのパワーのマイクロ波エネルギーを用い、溶媒の存在下で均一に攪拌しながら約2〜20℃/分の割合で120℃まで加熱し、さらに約0.25〜10℃/分の割合で、最終的な調製温度である130〜250℃まで加熱する。反応中、反応物の温度をPID温度制御装置8を用いて±1℃の誤差内で正確に制御することができ、0.1〜100GHzの周波数及び100〜3,000Wのパワーのマイクロ波及び1〜1,000kHzの周波数及び100〜5,000Wのパワーの超音波エネルギーを同時に用いて反応の初期段階を開始する。
【0010】
図3は、本発明の第二の実施態様における別の装置を示している。図2に示されているマイクロ波発生装置とは異なり、図3に示されている装置は、0.1〜100GHzの周波数及び100〜4,000Wのパワーを提供する4つのマグネトロン11、及び粉砕装置12、例えば粉砕媒体としての30mmよりも大きくない直径を有するアルミナビーズ又はガラスボールで充填されている鉛直型磨砕機又はボール粉砕機を用いる。マイクロ波発生装置として、0.1〜100GHzの周波数及び100〜4,000Wのパワーを提供する4つのマグネトロンを、粉砕装置12の上部カバーの4端に設置することにより、マイクロ波の波長を均一に分散させることができる。加えて、この装置はさらに、反応物の温度を正確に測定及び制御するためのマイクロ波遮蔽赤外温度検出器14、マグネトロン11のエネルギーを制御するためのPID温度制御装置15、反応中に発生したガス、例えばアンモニアを放出するための排気口18、攪拌機17を回転させて粉砕装置の中を均一に混合及び粉砕するための攪拌モーター16、及び反応後に調製されたフタロシアニン生成物を排出するための排出バルブ19を含む。
【0011】
まず、反応物を、溶媒を用いない粉砕型マイクロ波装置に入れる。その後、その反応物を300〜400rpmの攪拌速度で攪拌しながら、約2〜20℃/分の割合で120℃まで加熱し、さらに約0.25〜10℃/分の割合で、最終的な調製温度である130〜250℃まで加熱する。反応中、その反応物の温度を、PID温度制御装置を用いて±1℃の誤差内で正確に制御し、マイクロ波のパワーを100〜4,000Wの範囲内に制御する。最終的な調製温度を保持しながら、その反応物を0.25〜10時間均一に攪拌し、フタロシアニンを調製する。調製完了後、未反応の反応物を以下の手順で除去する。調製されたフタロシアニンを5%硫酸溶液に加え、85℃で1時間酸処理し、及び90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄する。酸処理したフタロシアニンを1%水酸化ナトリウム水溶液に再分散させ、85℃で1時間アルカリ処理し、90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、及び約105℃の乾燥機で24時間乾燥する。
本発明では、マイクロ波及び超音波エネルギーの組み合せが反応懸濁液内でのフタロシアニン粒子の凝集を防ぎ、且つ懸濁液の均一性を促すことができるため、小さな針状の金属又は非金属フタロシアニン粒子を、温度及び時間が同様の調製条件下で凝集させることなく調製することができる。従って、本発明の方法は、色素沈着時間をかなり短縮し、且つフタロシアニン顔料の質を高めることができるため、産業的用途に好適である。
【0012】
さらに、本発明の方法で製造されたフタロシアニンは、色素沈着に必要な時間を著しく短縮することができる。従来の溶媒を用いない方法によって調製されたフタロシアニンの長時間の色素沈着、例えば捏和、又は乾式又は湿式粉砕の後に得られるフタロシアニン顔料は、従来の溶媒を用いない方法によって調製されたフタロシアニン顔料よりも質が劣り、従って実際に用いることができない。すでに多くの引例で報告されているように、乾式又は湿式粉砕は大きな粒子を微細に分割し、固く凝集した粒子を解くことができるため、捏和時間が短縮される。特に、そのような乾式又は湿式粉砕は、有機溶媒の処理において必須の工程である。従って、すでに既知の方法では、フタロシアニンの調製後に粉砕工程をさらに含む。対照的に、本発明の方法で調製されるフタロシアニンは、フタロシアニンの調製後すぐに粉砕されるため、フタロシアニンが従来の方法で調製されたフタロシアニンよりも50〜60%小さいサイズの粒子を有する。さらに、本発明の方法で調製されたフタロシアニン粒子の形状はほぼ球状であり、さらなる粉砕は不必要であるため、色素沈着に必要な時間を約50%以上短縮することができ、目的の用途に応じてさらなる色素沈着を行うこと無く、フタロシアニン顔料として直接用いることができる。従って、不可能であると考えられていたフタロシアニンの溶媒を用いない調製方法を、実用的に使用することができる。
【0013】
本発明の方法で調製されたフタロシアニンの色素沈着は、以下の技法で行う。
-色素沈着1:捏和
金属又は非金属フタロシアニン及び微細に分割された塩を、S字形のブレードを備えた捏和機内に入れ、続いて適量のジエチレングリコール(DEG)をその中に加える。その混合物を100〜110℃で予定された時間捏和する。捏和された混合物を取り出した後、それを5%硫酸溶液に分散させ、90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、蒸留水に再び分散させ、濾過し、90℃で濾液の導電率が250μS/cm以下になるまで蒸留水で洗浄し、及び約105℃の乾燥機で24時間乾燥する。
-色素沈着2:粉砕及び有機溶媒処理
金属又は非金属フタロシアニンを磨砕又は振動粉砕機に入れ、続いて鋼の棒又は球をその中に入れる。フタロシアニンを予定された時間乾式粉砕する。それとは別に、ロジン溶液を、PCT出願公開WO 99/54,410号(出願人:Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.)の例1に記載の手順に基づいて調製する。すなわち、水酸化カリウム水溶液及びロジンを適量の水に加える。その混合物を完全に溶解させてロジン溶液を調製し、その後に水を加えて希釈する。粉砕されたフタロシアニンを溶媒としてのIPS2(Charles Tennant, UK)に分散させ、続いてロジン溶液をその中に加える。得られた混合物を4時間還流する。その後、還流した混合物に水を加え、蒸留して溶媒を回収する。塩酸を溶媒の無い懸濁液に加え、懸濁液を酸性にする。その懸濁液を濾過し、pHが中性になるまで洗浄し、及び乾燥機で乾燥する。
-色素沈着3:粉砕及び捏和
フタロシアニンを磨砕又は振動粉砕機に入れ、続いて鋼の棒及び球をその中に入れる。フタロシアニンを予定された時間乾式粉砕する。粉砕されたフタロシアニンを色素沈着1と同様の手法で処理する。
【0014】
ここで、本発明を、以下の例及び比較例を参照してより詳細に記載する。しかし、これらの例は本発明の範囲を限定するものとは解釈しない。
【0015】
例1
銅フタロシアニンの調製
本例は、本発明の溶媒型装置で行った。具体的には、42gの無水フタル酸、49gの尿素、7gの塩化銅、0.1gのモリブデン酸アンモニウム及び100gのアルキルベンゼンを、パイレックス(登録商標)容器9に入れ、次にその反応物を、28kHzのマイクロ波及び250Wの超音波エネルギーを用いて180〜185℃で3時間均一に攪拌し、銅フタロシアニンを調製した。反応中、反応物の温度をPID温度制御装置8を用いて±1℃の誤差内で正確に制御し、マイクロ波のパワーを100〜3,000Wに保持した。マイクロ波及び超音波エネルギーを同時に用い、反応の初期段階を開始した。調製完了後、溶媒除去を減圧蒸留によって行った。乾燥した銅フタロシアニンを500mLの5%硫酸溶液に加えて85℃で1時間酸処理し、90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、500mLの1%水酸化ナトリウム水溶液により85℃で1時間アルカリ処理し、90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、及び約105℃の乾燥機で24時間乾燥した。
【0016】
例2
他のフタロシアニンの調製
無水フタル酸の代わりに1,2-ジシアノベンゼンを用い、且つ塩化銅の代わりに金属源としてのチタン、鉄、コバルト、アルミニウム、マンガン、スズ及びニッケルから選択される同当量の金属塩を用いたことを除き、例1と同様の手法で種々のフタロシアニンを調製した(非金属フタロシアニンの場合、金属源は用いない)。
【0017】
例3
銅フタロシアニンの調製
30mmの直径を有する300mLのアルミナビーズをマイクロ波発生装置を備えた磨砕粉砕機12に入れ、次に42gの無水フタル酸、49gの尿素、7gの塩化銅及び0.1gのモリブデン酸アンモニウムをその中に入れた。攪拌機17を300〜400rpmで用いて攪拌しながら、その反応物を10℃/分の割合で120℃まで加熱し、さらに5℃/分の割合で最終的な調製温度(180℃)まで加熱した。最終的な調製温度を3時間保持しながら、その反応物を均一に攪拌して銅フタロシアニンを調製した。反応中、反応物の温度を、PID温度制御装置を用いて±1℃の誤差内で正確に制御し、マイクロ波のパワーを100〜4,000Wに保持した。調製終了後、磨砕粉砕機を60℃まで冷却し、500mLの5%硫酸溶液をそこに加えた。得られた混合物を300〜400rpmで30分間攪拌した後、それを取り出した。銅フタロシアニン懸濁液を85℃で1時間酸処理に付し、濾過し、及び90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄した。酸処理した銅フタロシアニンを500mLの1%水酸化ナトリウム水溶液に再分散させ、続いて85℃で1時間アルカリ処理した。アルカリ処理した銅フタロシアニンを濾過し、90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、及び約105℃の乾燥機で24時間乾燥した。図4は、本発明の方法で調製された銅フタロシアニンの電子顕微鏡写真(1,500倍)を示している。
【0018】
例4
銅フタロシアニンの調製
無水フタル酸及び尿素の代わりに41.2gの1,3-ジイミノイソインドリン及び10gの尿素を用いたことを除き、例1と同様の手法で銅フタロシアニンを調製した。
【0019】
例5
銅フタロシアニンの調製
無水フタル酸及び尿素の代わりに36.3gの1,2-ジシアノベンゼン及び10gの尿素を用いたことを除き、例1と同様の手法で銅フタロシアニンを調製した。
【0020】
比較例1
銅フタロシアニンの調製(従来の溶媒方法)
42gの無水フタル酸、49gの尿素、7gの塩化銅、0.1gのモリブデン酸アンモニウム及び100gのアルキルベンゼンを、コンデンサー、温度計及び攪拌機が備えられた1Lの三つ口ガラスフラスコ内に入れた。その反応物を180〜185℃で3時間均一に攪拌し、銅フタロシアニンを調製した。調製終了後、溶媒除去を減圧蒸留によって行った。乾燥した銅フタロシアニンを500mLの5%硫酸溶液に加えて85℃で1時間酸処理し、90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、500mLの1%水酸化ナトリウム水溶液により85℃で1時間アルカリ処理し、90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、及び約105℃の乾燥機で24時間乾燥した。
【0021】
比較例2
銅フタロシアニンの調製(従来の溶媒方法)
マイクロ波エネルギーを用いないことを除き、例1と同様の手法で銅フタロシアニンを調製した。
【0022】
比較例3
銅フタロシアニンの調製(従来の溶媒を用いない方法)
アルキルベンゼンを溶媒として用いないことを除き、比較例1と同様の手法で銅フタロシアニンを調製した。
【0023】
比較例4
銅フタロシアニンの調製(マイクロ波を用いる従来の溶媒を用いない方法)
アルキルベンゼンを溶媒として用いないことを除き、比較例2と同様の手法で銅フタロシアニンを調製した。
例1及び比較例1〜4における銅フタロシアニンの反応収率を以下の表1に示す。
【0024】
表1

表1から分かるように、本発明の方法で調製された銅フタロシアニンの収率は、溶媒の不存在下又は存在下における従来の方法及びマイクロ波方法で調製された銅フタロシアニンよりも高い。
例1及び比較例1〜4で調製された銅フタロシアニンの粒子直径及び粒子サイズ分布を以下の表2に示す。
【0025】
表2

注)mv=平均値
表2から明らかなように、本発明の方法で調製された銅フタロシアニンは、溶媒の不存在下又は存在下における従来の方法及びマイクロ波方法で調製された銅フタロシアニンと比べて、均一な粒子直径及び狭い粒子サイズ分布を有する。
以下の表3の結果は、例1及び2で調製された金属又は非金属フタロシアニンの収率が比較的高いことを明白に示している。
【0026】
表3

注)◎:非常に高収率、○:比較的高収率
【0027】
比較例5
銅フタロシアニンの調製(従来の溶媒を用いない方法)
42gの無水フタル酸、49gの尿素、7gの塩化銅及び0.1gのモリブデン酸アンモニウムを、コンデンサー、温度計及び攪拌機が備えられた1Lの三つ口ガラスフラスコに入れた。その反応物を300〜400rpmで攪拌しながら10℃/分の割合で120℃まで加熱し、さらに5℃/分の割合で最終的な調製温度(180℃)まで加熱した。最終的な調製温度を3時間保持しながら、その反応物を均一に攪拌して銅フタロシアニンを調製した。調製終了後、500mLの5%硫酸溶液をそのフラスコに入れた。得られた混合物を30分間攪拌した後、それを取り出した。得られた銅フタロシアニン懸濁液を85℃で1時間酸処理に付し、濾過し、及び90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄した。酸処理した銅フタロシアニンを500mLの1%水酸化ナトリウム水溶液に再分散させ、続いて85℃で1時間アルカリ処理した。アルカリ処理した銅フタロシアニンを濾過し、90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、及び約105℃の乾燥機で24時間乾燥した。図6は、従来の溶媒を用いない方法で調製された銅フタロシアニンの電子顕微鏡写真(1,500倍)を示している。
【0028】
比較例6
銅フタロシアニンの調製(マイクロ波を用い、溶媒を用いない方法)
三つ口ガラスフラスコの代わりに図2に示されているマイクロ波発生装置(2.45GHz、100〜3,000W)を用いたことを除き、比較例1と同様の手法で銅フタロシアニンを調製した。図7は、マイクロ波を用いる従来の溶媒を用いない方法で調製された銅フタロシアニンの電子顕微鏡写真(1,500倍)を示している。
【0029】
比較例7
銅フタロシアニンの調製(溶媒方法)
100mLのAS-P2(新日本石油化学)を溶媒として用いたことを除き、比較例1と同様の手法で銅フタロシアニンを調製した。図5は、従来の溶媒方法で調製された銅フタロシアニンの電子顕微鏡写真(1,500倍)を示している。
【0030】
銅フタロシアニンの純度及び反応収率は、以下のように測定した。
<純度>
“A”gの銅フタロシアニンを濃硫酸に溶解し、続いて得られた硫酸溶液を蒸留水で希釈して銅フタロシアニンを再結晶させる。銅フタロシアニンの結晶をガラスフィルター(2G4)で濾過して“B”gを秤量し、pHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、3%のアンモニア水溶液に再分散させ、濾過し、pHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、及び約105℃の乾燥機で24時間乾燥する。その後、ガラスフィルターをデシケーターに入れ、室温まで冷却し、及び秤量する(“C”g)。
銅フタロシアニンの純度は、以下の式によって計算する。
純度(%)={(C-B)/A}*100
<反応収率>
まず、下準備及び精製せずに調製された粗製の銅フタロシアニンの重量(A)に、純度(B)を掛ける。得られた積を銅フタロシアニンの分子量(C)で割り、銅フタロシアニンのモル数(D)が得られ、モル数(D)を出発材料として加えられた無水フタル酸(又はその誘導体)のモル数(E)を4で割ることによって得られた値で割り、続いてその得られた値に100を掛け、銅フタロシアニンの反応収率を決定する。
銅フタロシアニンのモル数(D)={A*(B/100)}/C
収率(%)={D/(E/4)}*100
例1及び比較例1〜3で調製された銅フタロシアニンの純度及び反応収率を以下の表4に示す。

【0031】
表4

表4から分かるように、粉砕型マイクロ波装置を用い、溶媒を用いない方法は、従来の溶媒方法に匹敵する高収率で高純度銅フタロシアニンの調製を可能にする。
【0032】
例6
銅フタロシアニン顔料の調製(捏和)
例1及び比較例1〜7で調製された50gの各銅フタロシアニン、300gの微細に分割された塩及び50gのジエチレングリコール(DEG)を捏和機に入れ、続いてその混合物をそれぞれ4、6及び8時間100〜110℃で捏和し、銅フタロシアニン顔料を調製した。捏和後、各捏和された混合物を取り出し、5%の硫酸溶液に分散させ、90℃でpHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、蒸留水に再分散させ、濾過し、90℃で濾液の導電率が250μS/cm以下になるまで蒸留水で洗浄し、及び約105℃の乾燥機で24時間乾燥した。
【0033】
例7
銅フタロシアニン顔料の調製(捏和及び有機溶媒処理)
例1〜5及び比較例1〜7で調製された100gの各銅フタロシアニンを、15mmの直径を有する14gの鋼の棒で充填されている振動粉砕機(CHUOKAKOKI、日本)に入れ、それぞれ60、90及び120分間粉砕した。それとは別に、15.3gの50%水酸化カリウム溶液及び40gのロジンを250gの水に加え、完全に溶解させてロジン溶液を調製した。全体積が267mLになるまで水をロジン溶液に加えた。70gの粉砕された銅フタロシアニンを溶媒としての200mLのIPS2(CHARLES TENNANT、英国)に分散させ、10.5gのロジン溶液をそこへ加えた。その混合物を4時間還流した。その後、200mLの水をその還流した混合物に加え、蒸留して溶媒を集めた。30mLの36%塩酸溶液を溶媒の無い懸濁液に加え、懸濁液を酸性にした。その懸濁液を濾過し、pHが中性になるまで洗浄し、及び75℃の乾燥機で乾燥した。
【0034】
例8
銅フタロシアニン顔料の調製(粉砕+捏和)
例1〜5及び比較例1〜7で調製された100gの各銅フタロシアニンを、15mmの直径を有する14gの鋼の棒で充填されている振動粉砕機(CHUOKAKOKI、日本)に入れて60分間粉砕した。50gの粉砕した銅フタロシアニン、300gの微細に分割された塩及び50gのジエチレングリコール(DEG)を捏和機に入れ、続いてその混合物を100〜110℃でそれぞれ4、6及び8時間捏和し、銅フタロシアニン顔料を調製した。
色素沈着方法で調製された銅フタロシアニン顔料の質を以下の試験によって評価し、以下の基準に基づいて類別した。
類別 鮮明さ(dC) 色密度(%)
/=/ 0.00〜0.10 0〜1
1 0.11〜0.30 1〜2
2 0.31〜0.80 2〜5
3 0.81〜1.40 5〜10
4 1.41〜2.20 10〜20
5 2.21〜3.00 20〜40
6 3.01〜 40〜
+ 鮮明 高い
- 鮮明でない 低い
【0035】
試験1 オイルインク試験
銅フタロシアニン及び銅フタロシアニン顔料を以下に示す組成で混合した。
銅フタロシアニン(顔料):10g
オイルインク樹脂(ロジン修飾フェノール樹脂):40g
3つのロールを有する粉砕機を用いてその混合物を2回分散させ、その色及びその分散性を評価した。
このようにして得られた0.3gの濃いインクサンプル及び3gの白いインクを均一に混合して有色のインクサンプルを調製し、その色を評価した。
【0036】
試験2 分散性試験
銅フタロシアニン及び銅フタロシアニン顔料の分散度を、試験1で得られた濃いインクサンプルからGrind-O-メーターを用いて試験及び評価した。
例及び比較例における銅フタロシアニン、及び本発明の色素沈着方法で調製された銅フタロシアニン顔料のオイルインク試験及び分散性試験を行い、その結果を以下の表5〜8に示す。
【0037】
表5















【0038】
表6

【0039】
表7




【0040】
表8

【0041】
試験3 塗料試験
銅フタロシアニン及び銅フタロシアニン顔料を、以下に示す組成に基づいて混合した。
ガラスボール:100g
透明な塗料樹脂(アルキド/メラミン樹脂):50g
銅フタロシアニン(顔料):3g
この混合物をプラスチックのたらいに入れ、45分間塗料粉砕機に分散させて、濃い塗料サンプルを調製した。塗料サンプルの色を評価した。
5gの濃い塗料サンプルを20gの白い塗料と混合し、有色の塗料サンプルを調製した。有色の塗料サンプルの色を評価した。塗料増量剤を用いて濃い及び有色の塗料サンプルを塗料拡張ペーパー上に塗り、乾燥機で乾燥し、それらの色を評価した。それらの結果を以下の表9〜11に示す。














【0042】
表9

【0043】
表10







【0044】
表11

【0045】
上記の表から明らかなように、従来の溶媒を用いない方法(比較例5)で調製された銅フタロシアニン、及びマイクロ波を用いる溶媒を用いない方法(比較例6)で調製された銅フタロシアニンは、溶媒方法(比較例7)で調製された銅フタロシアニンと比べて、分散性、鮮明さ(dC)及び色密度が非常に乏しい。対照的に、本発明の粉砕型でマイクロ波を用いる溶媒を用いない方法で調製された銅フタロシアニンは、全ての点において、溶媒方法(比較例7)で調製された銅フタロシアニンに匹敵する質を有する。特に、本発明の粉砕型でマイクロ波を用いる溶媒を用いない方法で調製された銅フタロシアニンは、溶媒方法(比較例7)で調製された銅フタロシアニンよりも優れた鮮明さを有する。
さらに、従来の溶媒を用いない方法(比較例5)で調製された銅フタロシアニンの色素沈着によって得られた顔料、及びマイクロ波を用いる溶媒を用いない方法(比較例6)で調製された銅フタロシアニンの色素沈着によって得られた顔料は、同条件の溶媒方法(比較例7)で調製された銅フタロシアニンの色素沈着によって得られた顔料と比べて、鮮明さ、色密度及び分散性が非常に乏しい。対照的に、色素沈着時間が短縮されたにも関わらず、本発明の粉砕型でマイクロ波を用いる溶媒を用いない方法(例3〜7)で調製された銅フタロシアニンの色素沈着によって得られた色素は、溶媒方法(比較例7)で調製された銅フタロシアニンの色素沈着によって得られた色素と比べて、実質的に同一の質及び優れた鮮明さを有する。
【0046】
上記の記載から明らかなように、本発明は、溶媒の存在下におけるマイクロ波及び超音波エネルギーの組み合せが、反応懸濁液内の凝集を防ぎ、且つ懸濁液の均一性を促すことができるため、小さな針状の均一な金属又は非金属フタロシアニン粒子を凝集させることなく、同様の温度及び時間の調製条件で調製することができる。従って、色素沈着に必要な時間をかなり短縮させることができる。さらに、本発明の溶媒を用いない粉砕型マイクロ波装置は低い収率を増加させ、且つ従来の溶媒を用いない方法の代表的な問題である不均一な熱伝導によって生じる除去困難な不純物の形成を最小化することができる。さらに、本発明の装置は、問題、すなわち、長時間の色素沈着にも関わらず、溶媒を用いない方法で調製された銅フタロシアニンの顔料の質が、溶媒方法で調製された銅フタロシアニンの顔料よりも乏しいことを解決することができるため、短時間の色素沈着で、溶媒方法で調製されたフタロシアニンの色素に匹敵する質、及び溶媒方法で調製されたフタロシアニンよりも優れた鮮明さを有する顔料の調製が可能である。従って、不可能であると考えられていた溶媒を用いないフタロシアニンの調製方法を、実用的に用いることができる。
本発明の好ましい実施態様は例証する目的で開示されたが、当業者は、特許請求の範囲に開示されている本発明の範囲及び意図からはずれることなく、種々の改良、追加及び置換が可能であると理解する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、金属又は非金属フタロシアニン、又はその誘導体の構造式(式中、Mは、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム、ガリウム、バナジウム、パラジウム、鉛、スズ、チタン、ルビジウム、テルビウム、セリウム、ランタン、亜鉛又は水素;Xは、水素、フッ素、塩素、臭素、アルキル基又はアルコキシ基;及びk、l、m及びnは、1〜4の整数である。)を表す。
【図2】図2は、本発明に基づく、マイクロ波及び超音波エネルギーの両方を用いる金属又は非金属フタロシアニンの調製装置を表す。
【図3】図3は、本発明の一つの実施態様の溶媒を用いない粉砕型マイクロ波装置を表す。
【図4】図4は、図3に示される溶媒を用いない粉砕型マイクロ波装置を用いて調製される銅フタロシアニンの電子顕微鏡写真(1,500倍)を表す。
【図5】図5は、従来の溶媒方法を用いて調製された銅フタロシアニンの電子顕微鏡写真(1,500倍)を表す。
【図6】図6は、従来の溶媒を用いない方法を用いて調製された銅フタロシアニンの電子顕微鏡写真(1,500倍)を表す。
【図7】図7は、マイクロ波を用いる従来の溶媒を用いない方法を用いて調製された銅フタロシアニンの電子顕微鏡写真(1,500倍)を表す。
【符号の説明】
【0048】
1 マグネトロン
2 マイクロ波容器
3 モード攪拌機
4 マイクロ波遮蔽K型熱電対
5 コンデンサー
6 攪拌機
7 超音波チップ
8 PID温度制御装置
9 パイレックス(登録商標)容器
10 溶媒タンク
11 マグネトロン
12 粉砕装置
14 マイクロ波遮蔽赤外温度検出器
15 PID温度制御装置
16 攪拌モーター
17 攪拌機
18 排気口
19 排出バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を用い、無水フタル酸、フタルイミド、1,3-ジイミノイソインドリン、1,2-ジシアノベンゼン、そのハロゲン誘導体、そのアルキル誘導体又はそのアルコキシ誘導体を、金属塩化物又はアルコキシ金属と反応させることによる、金属又は非金属フタロシアニンの調製方法。
【請求項2】
溶媒が用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
超音波がさらに用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
溶媒の不存在下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
金属が、銅、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム、パラジウム、スズ、鉛、チタン、ルビジウム、バナジウム、ガリウム、テルビウム、セリウム、ランタン及び亜鉛からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
金属が銅である、請求項1又は5記載の方法。
【請求項7】
窒素源として尿素が用いられる、請求項1又は5記載の方法。
【請求項8】
反応が、尿素又はアンモニア雰囲気下で行われる、請求項1又は5記載の方法。
【請求項9】
反応が、モリブデン酸アンモニウム、DBU及びDBNから選択される触媒の存在下で行われる、請求項1又は5記載の方法。
【請求項10】
溶媒が、アルキルベンゼン、N-メチル-2-ピロリドン、キノリン、トリクロロベンゼン及び1-クロロナフタレンから選択されるハロゲン化芳香族炭化水素、又はイソアミルアルコール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール及びエチレングリコールから選択されるアルコールである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項11】
マイクロ波エネルギーを用い、約2〜20℃/分の割合で120℃まで加熱し、さらに約0.25〜10℃/分の割合で最終的な調製温度である130〜250℃まで加熱することを含む、請求項1又は5記載の方法。
【請求項12】
金属又は非金属フタロシアニンの調製装置であって、0.1〜100GHzの周波数及び100〜3,000Wのパワーを提供するマグネトロン1;マイクロ波容器2においてマイクロ波の波長を均一にするためのモード攪拌機3;反応物の温度を正確に測定及び制御するためのPID温度制御装置8;マイクロ波容器2の頂部に形成されている3つの穴にそれぞれ適合するマイクロ波遮蔽K型熱電対4、コンデンサー5及び攪拌機6;マイクロ波容器2の底部に形成されている穴に適合する超音波チップ7;反応物を収容するためのパイレックス(登録商標)容器9;及び溶媒タンク10を含み、
無水フタル酸、フタルイミド、1,3-ジイミノイソインドリン、1,2-ジシアノベンゼン、そのハロゲン誘導体、そのアルキル誘導体又はそのアルコキシ誘導体を、K型熱電対4及びPID温度制御装置8を用いて反応物の温度を正確に制御しながら、0.1〜100GHzの周波数及び100〜3,000Wのパワーのマイクロ波及び1〜1,000kHzの周波数及び100〜5,000Wのパワーの超音波エネルギーを用いることにより、130〜250℃で0.25〜15時間、パイレックス(登録商標)容器9における溶媒において、金属塩化物又はアルコキシ金属と均一に混合する、装置。
【請求項13】
金属又は非金属フタロシアニンの調製装置であって、鉛直型粉砕装置12;粉砕装置12の上部カバーに設置される0.1〜100GHzの周波数及び100〜4,000Wのエネルギーを提供する少なくとも1つのマグネトロン11;反応物の温度を正確に測定及び制御するためのマイクロ波遮蔽赤外温度検出器14;マグネトロン11のエネルギーを制御するためのPID温度制御装置15;反応中に発生したアンモニアを排気するための排気口18;攪拌機17を回転させて粉砕装置12の中を均一に混合及び粉砕するための攪拌モーター16;及び反応後に調製されたフタロシアニン生成物を排出するための排出バルブ19を含み、
無水フタル酸、フタルイミド、1,3-ジイミノイソインドリン、1,2-ジシアノベンゼン、そのハロゲン誘導体、そのアルキル誘導体又はそのアルコキシ誘導体を、PID温度制御装置18を用いて±1℃の誤差内で正確に制御しながら、0.1〜100GHzの周波数及び100〜4,000Wのパワーのマイクロ波を用いることにより、130〜250℃で0.25〜15時間、溶媒を用いずに金属塩化物又はアルコキシ金属と均一に混合し、且つ粉砕装置12で粉砕する、装置。
【請求項14】
金属が、銅、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム、パラジウム、スズ、鉛、チタン、ルビジウム、バナジウム、ガリウム、テルビウム、セリウム、ランタン及び亜鉛からなる群から選択される、請求項12又は13記載の装置。
【請求項15】
金属が銅である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
窒素源として尿素が用いられる、請求項12〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
尿素又はアンモニア雰囲気下で行われる、請求項12〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
モリブデン酸アンモニウム、DBU及びDBNから選択される触媒の存在下で行われる、請求項12〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
溶媒が、アルキルベンゼン、N-メチル-2-ピロリドン、キノリン、トリクロロベンゼン及び1-クロロナフタレンから選択されるハロゲン化芳香族炭化水素、又はイソアミルアルコール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール及びエチレングリコールから選択されるアルコールである、請求項12〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
混合物が、マイクロ波を用いて約2〜20℃/分の割合で120℃まで加熱され、さらに約0.25〜10℃/分の割合で最終的な調製温度である130〜250℃まで加熱される、請求項12〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
粉砕装置2が、粉砕媒体としての30mmよりも大きくない直径を有するアルミナビーズ又はガラスボールで充填されている、請求項13又は14記載の装置。
【請求項22】
粉砕装置2が、磨砕機又はボール粉砕機である、請求項13又は14記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−504346(P2007−504346A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532042(P2006−532042)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001144
【国際公開番号】WO2004/101574
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505422660)デハン スペシャリティー ケミカルズ カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】