説明

金属及び合金を磁気処理して、次世代材料を調整するための連続生産システム

物質の特性を産み出すためのシステム及び方法が記載されている。高磁場を備えた磁気処理チャンバはワーク片を処理する。そして、コンベア又は搬送部(26)は磁気チャンバにおいて高磁場を通過するワーク片(22)を連続して移動させる。摩擦による又は機械的な係合システム(40a、40b)は高磁場を通過しかつ高磁場から出て行くワーク片を引き出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、磁気的な生産システムに関し、特に、磁気処理される材料用の連続生産システムに関する。
【0002】
[関連出願に対するクロスリファレンス]
この出願は、全体を参照することによってここに組み込まれる、「金属及び合金を磁気処理し、次に作製される材料を調整するための連続生産システム」のために、アレックス ボジセヴィック、アクイ アーマッド、アラア エルモアジ、ボーダン リソヴィスキ及びマイケル キリアンの名で、2008年6月30日付けで出願された、米国仮特許出願第61/133,540号に係る特許出願である。
【背景技術】
【0003】
材料はその特性を調整することにより、特殊な用途のためにカストマイズされることが可能である。材料の磁気処理は、材料の特性を変更できる。例えば、磁気処理は、構造的、磁気的、電気的、光学的、音響学的及び摩擦学的な特性を変更するのに利用されることが可能である。
【0004】
材料の磁気処理は、後述するように異なる形式で適用されることが可能である。磁気処理は、多くの現存する材料の処理と代替可能である。例えば、熱処理によって一般に行われる材料の硬化は、磁気処理によってなされることが可能である。多くの材料に対して、他の形式の処理が適切なものでない場合に磁気処理が利用されることが可能である。例えば、ある材料の溶解性が熱力学的な限界に拘束される合金は、磁気処理を利用して形成されることが可能である。ある用途では、従来の熱処理は、微細構造や組成の所望の材料特性を達成するために役立たないことがある。特別な、力、磨耗、展性、及び磁石の透磁率は、熱処理のような非磁性処理によっては得られない。
【0005】
材料の磁気処理は、材料の特性を変更するために利用されてきた。磁気処理は、特別な材料の特性を得るために、材料を現存する処理と共に組み合わせることも可能である。例えば、キスナーらの米国特許第7,161,124号では、導電性材料を含むワーク片の特性を変更する技術を記載している。さらに、キスナーの特許は、その材料の特性を変更するために、ワーク片に磁気処理と熱処理を二重に利用することを記載している。
【発明の概要】
【0006】
特殊な材料の特性を得るための材料処理システムが記載されている。投入される材料又は部材は、磁場又は熱磁気ゾーンで処理される。磁場は、例えば2テスラを超えるような高強度のものである。投入される材料又はフィードストックの部材は、コンベアベルトのような搬送機構上で連続移動される。部材は、把持部を用いて処理チャンバに配置されることが可能であり、さらに、回転、平行移動又は他の移動源を利用して位置決めされる。クエンチ機構は、熱磁気処理後に部材をクエンチするために使用されることが可能である。クエンチ機構は、熱磁気処理システム及び部材を移動させるコンベアベルトと一体化されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施例に係る、材料処理のための連続生産システムの概念的な断面図を示す。
【図2】図2は、実施例に係る、磁気処理システムの断面概略図を示す。
【図3】図3は、実施例に係る、比較的大きな寸法の部材への磁気処理システムの適用例を示す。
【図4】図4は、実施例に係る、磁気処理システムにおいてコンベアの動きのための機械的な係合部の断面概略図を示す。
【図5】図5は、実施例に係る、磁気処理システムにおいてコンベアの平行移動のための摩擦係合部の断面概略図を示す。
【図5A】図5Aは、実施例に係る、回転するワーク片のハンドリングシステムの断面図を示す。
【図5B】図5Bは、実施例に係る、平行移動するワーク片のハンドリングシステムの断面図を示す。
【図6】図6は、実施例に係る、クエンチ機構を備えた磁気システムの断面概略図を示す。
【発明の実施の形態】
【0008】
図1は、材料処理のための、実施例に係る連続生産システムの概略断面図である。連続処理システム10は処理されるべきフィードストック12を受け取る。フィードストック12は様々な材料でよい。一例として、フィードストック12は、最終製品のための所望の金属特性と機械特性を産することができる合金材料でありえる。合金の特性は、特殊な応用のために、力、摩耗、延性及び透磁率の特殊な要求を満足するように調整されることが可能である。
【0009】
フィードストック12は、異なる物理的かつ構造的な形態を採ることが可能である。例えば、フィードストック12は、ロッド、バーストック、ワイヤ、プレート、チェーン、シート等のような連続材料、分離している部材又は接続されている部材であることが可能であろう。フィードストック12の実施例は、鋼(SAE 8600シリーズ又はその他)が可能であろう。鋼は、鋼用のフィードストックを用いながら形成されるトランスミッションギアの機械的特性の改変を達成させるためにここに記載されているシステム及びプロセスを使用しながら磁気的に処理される。トランスミッションギアの特性は、磁気的処理を使用しながら改変が可能である。例えば、引張り強さや摩耗のようなギアの機械的特性は、磁気的処理によって改変が可能である。
【0010】
フィードストック12は、比較的、より高価な材料の特性を達成するために比較的、安価な材料としての原料とされ得る。例えば、フィードストック12は、例えばSAE 1215のような比較的安価な鋼でよい。ここに記載されたような連続した態様で取り扱われるときに、上記の鋼は、電気鋼のより高価なグレードに匹敵する、透磁率、低保持力及びより優れた磁気飽和の、改変された特性をもたらす。
【0011】
使用可能なフィードストック12の他の実施例が次に記載されている。例えば、フィードストック12は、工具鋼でよく、それは、磁場で処理されるときに、例えば改善されたクリープ抵抗のような、比較的優れた温度性能を提供するであろう。他の実施例では、フィードストック12は、ステンレス鋼又は鋳鉄であることが可能であり、これらは連続して磁気処理されるときに、処理されたステンレス鋼又は鋳鉄を使用する応用のために、より優れた応用時の性能をもたらすであろう。処理可能な合金の他の実施例は、ニッケル、銅及びコバルトの合金を含み、これら合金が処理されるときに所望の応用に対して特異な微細構造と特性を生成するであろう。
【0012】
フィードストック12は、様々な材料であることが可能である。例えば、フィードストック12は鉄材料又は非鉄材料であり、これは、このような材料のための所望の特性を得るために磁気的に処理可能である。フィードストック12は、強磁性、非強磁性、他の磁気状態のタイプ、化合物、合金、可変可能な傾斜材料、メタル、非メタル、半導体、絶縁体、セラミックス、エンジニアリング材、ナノ材料、合成材料、磁性粉材料、結晶面の配向を持つと共に材料の異方性を持つ結晶材料やポリ結晶材料、無機材料、有機ポリマー材料、結晶性材料、アモルファス材料等であることが可能である。当業者は、上記の実施例は、ここに記載された連続磁気処理に使用を例示するが他の応用もまた可能であることを理解するであろう。
【0013】
処理チャンバ14は、磁気的な処理又はその他の種類の処理を採用するのに使用することが可能である。処理チャンバ14は、磁気的、熱磁気、インダクション硬化、熱処理、融合化、非融合化、クエンチ化、他の種類の標準的な材料処理のために使用可能である。これらの処理は、独立した処理として適用され又は他の処理と共に使用されることが可能である。
【0014】
フィードストック12の磁気的処理を次に記載する。材料の磁場処理は、磁場内で目標とする材料を処理することが必要とされる。必要とされる磁場力を得る手段の1つは、電磁石を使用することによる。ソレノイドコイル16は、コイルを励起すると電磁石を形成する。例えば、約2から30テスラ又はそれ以上の高い磁場が、磁気処理システム10で材料の特性を変更するのに使用される。一手段では、このような高い磁場は超伝導用のソレノイドコイルによって発生可能である。フィードストック12は事前クリーニング又は他の準備プロセスの影響を受けることが可能である。
【0015】
処理チャンバ14は、フィードストック12の磁気的処理のためのチャンバを提供する。処理チャンバ14は、磁場を発生するソレノイドコイル16を含む。処理チャンバ14は、処理チャンバ14を通過するフィードストック12を移動させる機構を含む。(図示しないが)いかなる機構も、処理チャンバ14を通過するフィードストック12を移動させるのに使用することが可能である。例えば、コンベア、ウォームギア駆動機構又はリニアアクチュエータが使用されることが可能であろう。移動処理中、フィードストック12はその材料の特性を変更するために磁気的に処理されることが可能である。フィードストック12は、出口ストック18のように磁気的チャンバ14から離れる。処理チャンバ14を通過したフィードストック12の連続処理は、フィードストック12の物質の特性を変化させて、出口ストック18を得る。
【0016】
処理チャンバ14は、フィードストック12のワーク片又はサンプルを連続的に移動させる、引き出す力のシステムの一部を形成する。(図示しない)引き出す力は、908,000グラム(2000ポンド)又はそれ以上であり、(1)磁場を通過する材料又は部材の通過速度、及び(2)処理チャンバ14における磁場力に依存する。引き出す力の役割は、処理される部品に印加される磁場に打ち克つことである。処理チャンバ14における引き出す力は他の要因のうち、サンプルの立体的形状及び寸法に依存するであろう。軸状及び交差軸状の引き出す力は、連続サンプルの取り扱いを介して制御されることが必要となるであろう。引き出す力は、電気モータ及び/又は駆動部、油圧モータ及び/又は駆動部、或いは電動-油圧モータ及び/又は駆動部を介し供給されることが可能である。
【0017】
連続磁気処理を実行すると、各ワーク片を別々に処理することに比較して、処理時間を短縮する。翻ると、このことは材料又は部材を処理するため、よりコストを下げる。ここで記載されているような連続磁気処理は、ワイヤー、ロッドや、(例えば鍛造加工、マシニング加工、曲げ加工等)の他の形成プロセスを容易にするような他の材料を創り出すために基礎となる材料を取り扱うために使用されることが可能である。ワイヤ、ロッド及び他のこのような材料は、成形性を向上させるための連続態様でさらに磁気処理されることが可能である。これらの成形性が向上された材料及び部材は、より低い形成温度、より低いエネルギ消費及びより長い工具寿命を必要とするであろう。他の実施例は、ここで記載された連続磁気処理システムを利用する連続した鋼片鋳造プロセスであろう。磁気処理を用いて鋳造される鋼片は、含有物の偏析を低減し、並びに、比較的より均一化された微細構造及び鋼片の等方性の機械的特性を備える。
【0018】
いくつかの要素の溶解性が熱力学的な限界によって制約される合金は、ここに記載された連続磁気処理の下で作製されることが可能である。しかし、現場における温度が、キュリー温度を超える特定の場合には、磁気処理は適用できない。連続磁気処理は、磁場又は磁場外で作用させながら、他の標準的な変形方法、硬化方法、後処理方法等と共に組み合わせ或いは連動して使用することが可能である。
【0019】
図2は、実施例に係る磁気処理システム20の概略断面図を示す。磁気処理システムは、単独起動式の磁気システム或いは熱処理と磁気処理の組み合わせのいずれかの適用が可能である。磁気処理は、熱処理と同時にまたは順次に適用されることが可能である。未処理部材22a〜22cは、連続態様で当該システムに供給される部材の代表例である。一実施形態では、熱磁気システム24は、例えば、ソレノイドコイル16(図1参照)のようなインダクションによる加熱システム(不図示)と磁気処理システムとを含み、熱磁気ゾーンを創出する。熱磁気システム24は、図2に示される単一の完成部材28で表される完成部材を作り出すために、熱処理及び磁気処理によって部材22a〜22cの特性を変える。
【0020】
熱磁気システム24は、後述のように代表的な部材22a〜22cに、熱と磁気の力の二つの処理を連続して提供する。インダクションによる硬化、インダクションによる加熱及び熱磁気処理の、内部の相変態のための温度は、低温度から高温度の範囲を採ることが可能である。低温度は例えば約華氏200度であり、これはクエンチ機構、テンパー処理又は低温熱磁気変態のための温度であり、高温度は約華氏2000度であり、これは熱磁気変態のための温度である。熱磁気システム24は、物質の極低温処理との組み合わせた、処理用の極低温度のために使用されることが可能である。この極低温処理は、鉄材料と非鉄材料の両方に適用されることが可能である。
【0021】
コンベア26は、熱磁気システム24を介して、部材22a〜22cを移動させる。当業者であれば、単に、熱磁気システム24を介して、部材22a〜22cを搬送するのに使用可能な異なる機構を例示していることが理解されるであろう。コンベア26は、熱磁気システム24を介して連続的に部材22a〜22cを移動し、熱磁気システム24は磁場及び加熱されたゾーン又はエリアを介して連続的に部材22a〜22cを処理する。
【0022】
ここで示された部材22a〜22cは、例示目的のためにシリンダとして示されている。いずれか他の種類の部材は熱磁気システム24を介して処理することが可能である。実施例に係る部材22a〜22cは、比較的より小さな部品がどのようにして熱磁気処理システム24で連続処理可能であるかを示す。部材22a〜22cは、熱磁気システム24の磁場を通過して排出されるにつれ、部材22a〜22cに作用していた磁力は打ち負かされる。熱磁気処理システム24の磁場は、超伝導磁石(不図示)を使用し発生することが可能である。超伝導化用の磁石の磁場は、磁力を介した磁場の中央に部材を保持するであろう。ゆえに、引き出す力が要求され、かつ、引き出す力はコンベア機構によって供給され、磁場領域外に部材を移動させる。
【0023】
熱処理の制御は、様々な特性を持つ材料を生み出すことを異なる次元で可能とする。例えば、1つの部材が異なる領域で異なる硬さをもつような、一定の応用は複雑な熱処理を要求する。例えば、ギア(不図示)は、OD(外径)の歯のためにある一定の硬さを要求し、かつ、ID(内径)のスプラインには異なる硬さを要求することができる。熱磁気システム24は、インダクションコイル(不図示)を含み、インダクションコイルが異なる周波数を用いて、後者の様々な硬さを備えた、後者のギアを例とする部材を創出するための処理を可能とする。
【0024】
熱磁気システム24は、表面コーティングや被覆処理される蒸着物の連続処理のために使用することが可能である。例えば、連続して処理可能な表面コーティングのいくつかは、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、レーザ蒸着、プラズマトランスファーアーク蒸着、めっき、プラズマ蒸着、蒸着、スパッタリング、イオンビーム蒸着、反応性プラズマ蒸着又は化学的ビームによるエピタキシャル蒸着である。表面コーティング処理は、熱処理、熱磁気処理又は磁気処理と関連付けて成されることが可能である。例えば、表面コーティング処理は、(摩耗性、延性、潤滑性等)の改変された性能のために転用されたコーティングに可能性があるだろう。当業者は、ここで述べられた表面コーティングは例示であり、かつ、連続処理を用いる他の表面コーティング処理が可能であることを理解するであろう。
【0025】
図3は、実施例に係る磁気処理システムを比較的大きな寸法の部材に応用する、概略断面図である。図2では、実施例に係る部材22a〜22cは、比較的小さな部材であるように示されていた。ここでは、大きな部材のための熱磁気処理が記載されている。大きな部材は、ロッド、ワイヤ、ブロック等の形態でよい。個々の片のような部品のこのようなハンドリングは、要求された処理チャンバの寸法次第では困難になりえる。このような大きな部品の連続処理がここで達成される。例えば、比較的大きな寸法のロッド30は、コンベア30上で移動される。熱磁気システム24は、その特性を変更しかつロッド30内の所望の微細構造を得るために、ロッド30を取り扱う。加えて、大きな部品に対する必要な変形例と共に、図2の要旨において上述されたような熱磁気処理を達成するために熱処理が併用されることが可能である。当業者は、ロッド30が実施例としてここに示されていること、そして、ワイヤ、ロッド、シリンダ、ブロック及びバーのストック等が同様に処理されることを理解するであろう。
【0026】
図4は、磁気処理システムにおいてコンベアの並進のための実施例に係る機械的移動の概略断面図を示す。機械的に係合された磁気的処理システム32は、所望の物質の特性を得るためにロッド30を処理するのに使用される。磁場は、ロッド30を処理するために熱磁気システム24によって提供される。さらに、熱磁気処理を行えるようにするために熱処理機構(不図示)が含めることが可能である。ロッド30は、処理可能な部品又は材料の実施例である。当業者ならば、この実施例でロッド30と同様な態様で、いかなる寸法の部材又は材料の取り扱いが可能であろうことを理解するであろう。
【0027】
コンベア26は、ロック用歯36と噛合する歯34を支持する。ロック用歯36はロッド30を支持する。歯4及びロック用歯36は共に、熱磁気システム24を通過するロッド30を搬送するために使用されるインターロックシステムを形成する。搬送中、ロッド32はその特性を変更するために磁気的な処理を受ける。コンベア24の移動速度は歯34及びロック用歯36によって形成されるインターロック用の歯機構によって制御される。機械的に係合されている磁気処理システム32は、ロッド30が熱磁気システム24から搬送されるにつれて、引き出す力により磁気力に打ち克つ。引き出す力の役割は、処理される部品に印加される磁場に打ち克つことである。ロッド30は、ロッド30が磁場から引き出されることが可能となるようにコンベア26に装着されるか、保持されるか又はクランプされる必要がある。ロッド30がそのようにコンベア26にクランプ、保持又は装着されず、そして、それが磁場から除かれると、磁場のスイッチをオフにしなければならない。一方、コンベア26にロッド30を装着、保持又はクランプすることによって、連続磁気又は熱磁気処理が達成され得る。
【0028】
図5は、磁気処理システムにおけるコンベアの移動のための実施例に係る摩擦係合の概略断面図を示す。摩擦に基づく磁気処理システム38が示されている。ロッド30は摩擦保持機構によって保持されている。実施例に係る摩擦に基づく保持機構は、把持プレート40aから40bとしてここに示されている。当業者ならば、把持プレート40aから40bは例示であり、ロッドはコンベア26によって移動される一方、他の摩擦に基づく保持機構がさらにロッド30を保持するのに使用される。
【0029】
図5Aは、実施例に係る回転ワーク片のハンドリングシステムの断面図を示す。図5Bは、実施例に係る並進ワーク片のハンドリングシステムの断面図を示す。軸方向及び交差軸方向における引き出す力は、次に述べられるような連続サンプルのハンドリングを介して制御される必要がある。把持プレート40a、40bはモータ44によって駆動される回転ドラム42に取り付けられることが可能であり、ロッド30に回転運動を提供する。ロッド30は、実施例に係るワーク片である。実施例に係る摩擦板40a、40bによって作用する摩擦は、ロッドハンドリング機構の一種類を示す。他のハンドリング機構は、ワーク片の並進操作を提供する機構を含むことができる。(例えばここではロッド30がワーク片である)。ローラ46a、46b及び摩擦板40a、40bは共に、複数の方向にロッド30のための並進運動を提供するために使用されることが可能である。他の種類のワーク片のハンドリング機構は、ワーク片において所望の特性を得るために提供されることが可能である。
【0030】
並進、回転、把持又は他のワーク片の操作のための力は、電動モータ、電動駆動部、電気-油圧駆動部、油圧駆動部等によって提供されることが可能である。このような動力源によって提供される力はロッド30又は類似のワーク片様々な角度、方向、位置に方向付けし、所望の材料特性のために目標とされる処理を達成する。並進、回転の把持のための力は、ワーク片を磁気処理システム38の磁場から引き出すようにすることを可能にする。磁気処理システム38は、熱磁気処理を提供するために熱処理システム(不図示)に関連して使用されることが可能である。熱処理は、磁気処理システム38の磁気処理と同時又は逐次に施されることが可能である。
【0031】
上述のワーク片のハンドリングは、特殊な物性をワーク片に施すことを可能にする。例えば、上述の磁場におけるワーク片の回転及び/又は並進の操作は、ギア歯、フィレ状特徴部、摩耗エリア、延性エリアの硬化及び処理、並びに、比較的複雑な三次元形状のワーク上の表面処理やバルク処理を可能とする。
【0032】
図6は、クエンチ機構を用いた実施例に係る磁気的なシステムの概略断面図を示す。クエンチシステム48を用いた磁気処理システムは、コンベア26と熱磁気システム24を含む。さらにクエンチ機構50は、それが熱磁気システム24から出た後でロッド30に向けて急速冷却を提供するために包含される。クエンチ機構50は、使用されるべきクエンチ用材料を搬送して、ロッド30を処理するクエンチ搬送部52a、52を含み、かつ、ロッド30の上のクエンチ用材料をスプレーする装着されたスプリンクラー54a、54bを含む。スプレーされるクエンチ材料は、気体、液体又はクエンチ媒体物や他のタイプのものでよい。
【0033】
クエンチ処理は、次に記載されるような実施例に係るロッド30のワーク片の熱と磁気とが組み合わされた処理に関連して使用される。クエンチ機構50は水平方向に示される。しかし、垂直方向のクエンチ機構はさらに、熱磁気システム24、コンベア26、クエンチ用搬送部52a、52b及びスプリンクラー54a、54bを備えることが可能である。スプリンクラー54a、54bは図6に示される水平方向とは対照的に垂直方向に向けられている。当業者ならば、クエンチ機構50を備えた磁気システムの水平方向と垂直方向の選択が所望の材料特性を得るためにシステムの特別な応用に依存するであろうことを理解するであろう。
【0034】
クエンチシステム48内部でのクエンチ用搬送装置52a、52bとスプリンクラー54a、54bの配置は、次に記載されたような構成次第であろう。クエンチ用搬送装置52a、52bとスプリンクラー54a、54bは、クエンチシステム48において異なる位置に配置されることが可能である。例えば、それらは、コンベア26と一体化し或いはコンベア26から分離している、熱磁気システム24の磁場の外側で、熱磁気処理(図2及び関連する上記記述を参照されたい)に関連した磁場において、熱磁気システム24を用いてその場に配置されることが可能である。クエンチ機構は、気体、油、ポリマー、水及び他の標準的若しくは非標準的な手段でよい。当業者であれば、クエンチ機構50、クエンチ搬送装置52a、52b及び/又はスプリンクラー54a、54bの位置は当該応用及び望まれる結果次第であろうことが理解されよう。
【0035】
温度及び磁気のプロファイルは、コンベア26上のワーク片(実施例に係るロッド30としてここに示されている)の連続移動に沿って変更されることが可能である。このことは、ワーク片の特性を適宜変えることを可能とする。さらに、クエンチプロセスは、ワーク片において特別な材料特性を達成するために急速冷却又はやや遅い冷却によって制御されることが可能である。連続処理は、所望の処理特性を提供するために、温度ゾーンを通過するワーク片の移動量及び速度を制御し、並びに、特別な時間内の磁気プロファイルを制御することを含む。
【0036】
本発明の様々な見地が、上記明細書に記載されてきた。そして、本出願の様々な変更や改変が当該明細書を読みかつ理解することから当業者に明らかになるであろうと思われる。かかる変更や改変のすべては、これらが添付の特許請求の範囲内に入るため、本発明に包含されると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク片に材料の特性を産み出すためのシステムであって、
該システムは、
高磁場を発生する磁気処理チャンバ(14)と、
前記ワーク片(22)を磁気処理チャンバ(14)の前記高磁場を通過させてワーク片(22)を連続移動させるための搬送部(26)と、
前記搬送部と結合されており、かつ、前記高磁場を通過する前記ワーク片を引き出す摩擦係合システム(40a、40b)と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記ワーク片を熱処理するための熱処理システム(24)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記熱処理システム(24)は、前記熱処理チャンバ(14)に配置されたワーク片を加熱することを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記熱処理システム(24)は、前記搬送部が前記磁気処理チャンバ(14)を通過するワーク片を移動した後、前記ワーク片を加熱することを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記高磁場は少なくとも2テスラの強度を持つことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ワーク片から熱をクエンチするためのクエンチシステム(50)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記クエンチシステムは、少なくとも1つのスプリンクラー(54a、54b)を含むことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記摩擦係合システムは、歯(34、36)を含み、該歯は、前記ワーク片を前記搬送部(26)に対して把持することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記摩擦係合システム(40a、40b)は、少なくとも1つの把持プレート(40a、40b)を含み、該把持プレートは前記搬送部(26)に対して前記ワーク片を保持することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記摩擦係合システムは、回転機構(42)を含み、該回転機構は前記磁気処理チャンバにおいてワーク片を回転させることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記摩擦係合システムは、並進機構(40a、40b、46a、46b)を含み、該並進機構は少なくとも二方向において磁気処理チャンバにおいて前記ワーク片を配置することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
ワーク片において物質の特性を産み出すシステムであって、
該システムは、
熱磁気ゾーンを発生させる熱磁気処理システム(24)と、
熱磁気チャンバ(14)において前記熱磁気ゾーンを通過する前記ワーク片(22)を連続的に移動させる搬送部(26)と、
前記熱磁気ゾーンにおいて前記ワーク片を位置決めする把持部(40a、40b)と、
前記ワーク片から熱をクエンチするためのクエンチシステム(50)と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記把持部は、前記熱磁気ゾーンの内部において前記把持部で保持されたワーク片を回転させる回転ハンドル部(42)を含むことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記把持部は、熱磁気ゾーンの内部において把持部に保持されたワーク片の位置を並進させる、並進ハンドル部(40a、40b、46a、46b)を含むことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記熱磁気システムは、高磁場を発生するソレノイドコイル(16)と、
ヒータが熱を発生するインダクションヒータと、
を含むことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
クエンチシステムは少なくとも少なくとも1つのスプリンクラー(54a、54b)を含むことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
ワーク片(22)内の物質の特徴を産み出すための方法であって、
磁場でワーク片を連続処理し、
熱エリアでワーク片を処理し、
磁場でワーク片を配置し、かつ、
前記磁場と前記熱エリアを通過する搬送部(26)の使用を介して前記ワーク片を移動することを特徴とする方法。
【請求項18】
前記配置のステップは前記ワーク片(22)を回転することを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項19】
前記配置のステップは前記ワーク片(22)を並進位置に移動することを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ワーク片(22)をクエンチすることをさらに含むことを特徴とする請求項18の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−526653(P2011−526653A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515650(P2011−515650)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006118
【国際公開番号】WO2010/001223
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(390033020)イートン コーポレーション (290)
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
【Fターム(参考)】