説明

金属埋設物の調査用掘削装置及び調査用掘削工法

【課題】金属埋設物に損傷を与えることなく金属埋設物に到達する調査用掘削穴を形成する。
【解決手段】掘削刃21を有する推進駆動軸20と、推進駆動軸20を回転駆動する駆動手段22とを備え、推進駆動軸20の先端に推進駆動軸20の軸中心に対して自由回転可能に軸支された先端接触部材24を設け、金属管1の地上部1Aに一端が導通接続される導線4の他端を電源30とこれに接続される報知手段31とを介して推進駆動軸20の基端側に設けた接続端子26に接続し、接続端子26と先端接触部材24とを導通させて、先端接触部材24が金属管1の表面に接触することによって閉じて報知手段31を作動させる回路を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された金属管等の金属埋設物を目視調査するために用いられる掘削装置及びそれを用いた掘削工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に埋設された金属管を探査する方法としては、金属管に交流電流を流し、それによって形成される交番磁界を磁気検出器で検出する方法が一般に採用されている。
【0003】
これは、発信器からの接続線を金属管の地上露出部に接続すると共に、大地に差し込まれたアース電極からの接続線を発信器に接続することで、発信器からの信号電流が金属管と大地を経由して発信器に戻る電気回路を形成し、信号電流の供給によって金属管の周囲に発生する交番磁界を検出器によって検出するものである。検出器には、信号電流によって発生する交番磁界の強さを誘導電流の大きさとして検出する検出コイルが設けられ、この検出器を地表面に沿って移動させることで、検出コイルによって検出された信号が受信器に送られて、受信器側の各種表示機能や報知機能によって金属管の埋設位置を探知することができる(下記特許文献1等参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平07−253473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような埋設金属管探査方法によって、金属管の埋設位置を探知した後には、その周辺を掘削して、埋設金属管を露出させ、金属管の腐食状態等を目視調査する作業が行われる。
【0006】
この際には、埋設金属管を含んだ1.0m四方の矩形開口穴又は直径0.75〜0.9mの円形開口穴を垂直に形成して、この開口穴内に調査対象の金属管を露出させることが行われている。しかしながら、この工法では、埋設金属管は舗装道路の下に敷設されていることが多いことから、舗装道路の表層を剥がして掘削作業を行うことになり、工事完了まで多大の時間と費用を要する問題がある。また、舗装道路の表層を剥がして掘削作業を行うときにアスコンガラ等の産業廃棄物が発生し、この産業廃棄物の処理が必要になるという問題がある。
【0007】
この問題に対処するためには、前述した探査方法で埋設金属管の直上位置を探査し、小口径の掘削工具を用いて非開削で埋設金属管に到達する小口径掘削穴を形成することが考えられるが、一般に使用されるオーガ式等の掘削工具で縦穴推進を行うと、掘削穴が埋設金属管に到達した時点で掘削工具の先端が埋設金属管に接触することになり、埋設金属管に損傷を与えてしまう問題が生じる。
【0008】
また、小口径掘削穴を形成する作業中は地上から推進穴の形成状況を確認することができないので、掘削工具の推進に抵抗が生じたときに、石等の障害物による抵抗か到達目的の埋設金属管に接触したことによる抵抗かを把握することができず、障害物との接触時に推進力を緩める等して作業進行が妨げられるといった問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものであって、金属埋設物の目視調査をするに際して、非開削で金属埋設物に到達する小口径掘削穴を形成することで、工事を短時間で且つ安価に行うことができ、工事に伴って発生する産業廃棄物を極力なくすことができ、しかも、金属埋設物に損傷を与えることがないこと、更には、金属埋設物への推進穴の到達を地上で確認できるようにすることで、円滑な掘削作業の進行を可能にすること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明は以下の特徴を具備するものである。
【0011】
一つには、地中に埋設された金属埋設物を目視調査するために用いられる掘削装置であって、掘削刃を有する推進駆動軸と、該推進駆動軸を回転駆動する駆動手段とを備え、前記推進駆動軸の先端に該推進駆動軸の軸中心に対して自由回転可能に軸支された先端接触部材を設け、前記金属埋設物の地上部に一端が導通接続される導線の他端を電源とこれに接続される報知手段とを介して前記推進駆動軸の基端側に設けた接続端子に接続し、該接続端子と前記先端接触部材とを導通させて、前記先端接触部材が前記金属埋設物の表面に接触することによって閉じて前記報知手段を作動させる回路を形成することを特徴とする。
【0012】
また一つには、前述した特徴に加えて、前記先端接触部材は、前記金属埋設物の表面に接触する曲面状の先端接触面を有することを特徴とする。
【0013】
また一つには、前述した特徴に加えて、前記推進駆動軸を導電性部材で形成し、前記推進駆動軸を通じて前記接続端子と前記先端接触部材とを導通させることを特徴とする。
【0014】
また一つには、前述した特徴に加えて、前記先端接触部材の接触面を磁気吸着面にしたことを特徴とする。
【0015】
更に、地中に埋設された金属埋設物を目視調査する掘削工法であって、掘削刃を有する推進駆動軸と、該推進駆動軸を回転駆動する駆動手段とを備え、前記推進駆動軸の先端に該推進駆動軸の軸中心に対して自由回転可能に軸支された先端接触部材を設けた掘削工具を用い、前記金属埋設物の地上部に一端が導通接続される導線の他端を電源とこれに接続される報知手段とを介して前記推進駆動軸の基端側に設けた接続端子に接続し、該接続端子と前記先端接触部材とを導通させて、前記先端接触部材が前記金属埋設物の表面に接触することによって閉じて前記報知手段を駆動させる回路を形成し、地上から探査された前記金属埋設物に向けて前記掘削工具の推進駆動軸を推進させて、地上から前記金属埋設物に到達する小口径掘削穴を形成することを特徴とする。
【0016】
このような特徴によると、地上から推進駆動軸を駆動させて金属埋設物に到達する小口径掘削穴を形成することができ、その際に、推進駆動軸の先端が金属埋設物に到達すると、その先端に設けた先端接触部材が金属埋設物に接触して、推進駆動軸の回転駆動に対して自由回転するので、接触時にも金属埋設物が損傷することがない。
【0017】
また、先端接触部材と金属埋設物が接触すると前述した回路が閉じて報知手段が作動するので、地上からの小口径掘削穴が金属埋設物に到達したことを報知手段の作動によって知ることができる。
【0018】
これによると、推進駆動軸を推進させる過程で推進に抵抗が感じられても、報知手段の作動がなければ、その抵抗は障害物によるものと察することができ、引き続き強い推進力で作業を進めることができる。また、報知手段の作動がなされた時点で即座に推進を止めることで、金属埋設物に無用な力が掛かるのを防ぐことができる。
【0019】
更に、先端接触部材の金属埋設物表面に接触する面を曲面状の面にすることで、推進駆動軸が斜めに金属埋設物に到達したときにも、適正な接触で報知手段を作動させることができ、また、曲面状の面での接触によって、金属埋設物表面の損傷を更に防止することができる。
【0020】
更には、推進駆動軸を導電性部材で形成し、推進駆動軸を通じて接続端子と先端接触部材とを導通させるようにすることで、推進駆動軸内に導線等を設ける必要がなくなり、装置の構造を簡略化することができる。
【0021】
また、先端接触部材の接触面を磁気吸着面にすることで、金属埋設物への接触を磁気吸着面の吸着によって更に確認することができる。
【発明の効果】
【0022】
このような特徴によると、金属埋設物の目視調査をするに際して、非開削で金属埋設物に到達する小口径掘削穴を形成することで、工事を短時間で且つ安価に行うことができ、工事に伴って発生する産業廃棄物を極力なくすことができ、しかも、金属埋設物に損傷を与えることがない。また、報知手段の作動によって金属埋設物への推進穴の到達を地上で確認できるようにしているので、掘削作業を円滑に進めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る調査用掘削装置の全体構成を説明する説明図である。本装置は、地中に埋設された金属埋設物を目視調査するために用いられる掘削装置であって、掘削工具2と接触報知器3とを備えるものである。以下の説明では金属埋設物として金属管1を例に説明するが特にこれに限定されるものではない。
【0024】
掘削工具2は、掘削刃21を有する推進駆動軸20と、推進駆動軸20を回転駆動する駆動手段22とを備えるもので、推進駆動軸20の基端側で電動機等の駆動手段22が内蔵される操作部23のハンドル23Aを持って下方に力を加えることで、推進駆動軸20が下方に推進されて小口径掘削穴Aを形成することができるものである。
【0025】
この掘削工具2における推進駆動軸20の先端には、推進駆動軸20の軸中心に対して自由回転可能に軸支された先端接触部材24が設けられている。図2は、推進駆動軸20の先端構造を拡大した図であるが、図示の例では、掘削刃21を有する推進駆動軸20の先端に先端ビット25を装着し、その先端に自由回転可能に先端接触部材24が軸支されている。また、図示の例では、先端接触部材24は、金属管1の表面に接触する曲面状の先端接触面24Aを有するものである。また、この先端接触部材24内に磁石を内蔵するなどして、先端接触面24Aを磁気吸着面にしたものであってもよい。図2は、先端接触部材24が金属管1に接触した状態を示しているが、この状態で先端接触部材24が金属管1から接触抵抗を受けると、回転駆動される推進駆動軸20に対して先端接触部材24は停止した状態になり、金属管1の表面に損傷を与えることを回避できる。
【0026】
推進駆動軸20の基端側には接続端子26が設けられ、金属管1の地上部1Aには接続端子1Bが設けられており、接続端子1Bに一端が導通接続される導線4Aの他端を接触報知器3の接続端子3Aに接続し、接続端子26に一端が導通接続される導線4Bの他端を接触報知器3の接続端子3Bに接続することで接触報知回路の一部が形成されている。
【0027】
接触報知器3は、電源30と報知手段31とが接続端子3A,3B間で接続されたもので、接続端子3A,3B間を導通接続することで、前述した接触報知回路が閉じて電源30によって報知手段31が作動するものである。報知手段31は、電源30からの通電によって点灯表示するものや報知音を発信するもの等、通電状態を報知できるものであればどのようなものであってもよい。
【0028】
また、先端接触部材24は、導電性材料で形成され、接続端子26と先端接触部材24とは、導電性部材からなる推進駆動軸20を介するか又は推進駆動軸内に導線を設けるなどして導通接続されており、接触報知回路は、電源30とこれに接続される報知手段31とを介して推進駆動軸20の基端側に設けた接続端子26に接続し、接続端子26と先端接触部材24とを導通させて、先端接触部材24が金属管1の表面に接触することによって閉じて報知手段31を作動させる回路を形成している。
【0029】
このような調査用掘削装置を用いた工法を以下に説明する。
【0030】
先ず、背景技術で示したような埋設金属管の探査方法を用いて、地上から金属管1の埋設位置を探知し、その直上を掘削位置に定める。
【0031】
掘削位置が舗装道路上の場合には、表層掘削用の工具を用いて、掘削工具2で形成される小口径掘削穴に見合う径の掘穴を表層部に形成し、その掘穴に掘削工具2の先端を挿入して、掘削工具2を推進駆動させ、金属管1に到達する小口径掘削穴を形成する。
【0032】
掘削工具2の先端接触部材24が金属管1の表面に接触したことが報知手段31によって報知されると、直ちに掘削工具2の推進を止め、掘削工具2を形成された小口径掘削穴から取り出す。
【0033】
その後は、形成された小口径掘削穴内に水圧ジェット掘削機の先端を挿入して金属管1の周辺を掘削し、水圧ジェットにより生じた泥水を泥水吸引機で吸引して、金属管1の周辺に空洞部を形成する。そして、形成された小口径掘削穴内に照明装置を挿入する等して、金属管1の表面の状態を目視調査する。
【0034】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る調査用掘削装置及びこれを用いた工法によると、埋設された金属管1の目視調査をするに際して、非開削で金属管1に到達する小口径掘削穴を形成することができるので、工事を短時間で且つ安価に行うことができる。また、掘削箇所が舗装道路上であっても工事に伴って発生する産業廃棄物を極力なくすことができ、しかも、金属管1に損傷を与えることがなく、調査用の小口径掘削穴を形成することができる。更には、金属管1への掘削工具2の到達を地上で確認できるので、到達までの掘削を円滑に進めることできると共に到達後は直ちに掘削工具2の推進を止めて、金属管への損傷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る調査用掘削装置の全体構成を示した説明図である。
【図2】本発明の実施形態における掘削工具の先端部を示した説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 金属管
1A 地上部
1B 接続端子
2 掘削工具
20 推進駆動軸
21 掘削刃
22 駆動手段
23 操作部
23A ハンドル
24 先端接触部材
25 先端ビット
26 接続端子
3 接触報知器
3A,3B 接続端子
30 電源
31 報知手段
4,4A,4B 導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された金属埋設物を目視調査するために用いられる掘削装置であって、
掘削刃を有する推進駆動軸と、該推進駆動軸を回転駆動する駆動手段とを備え、
前記推進駆動軸の先端に該推進駆動軸の軸中心に対して自由回転可能に軸支された先端接触部材を設け、
前記金属埋設物の地上部に一端が導通接続される導線の他端を電源とこれに接続される報知手段とを介して前記推進駆動軸の基端側に設けた接続端子に接続し、該接続端子と前記先端接触部材とを導通させて、前記先端接触部材が前記金属埋設物の表面に接触することによって閉じて前記報知手段を作動させる回路を形成することを特徴とする金属埋設物の調査用掘削装置。
【請求項2】
前記先端接触部材は、前記金属埋設物の表面に接触する曲面状の先端接触面を有することを特徴とする請求項1に記載された金属埋設物の調査用掘削装置。
【請求項3】
前記推進駆動軸を導電性部材で形成し、前記推進駆動軸を通じて前記接続端子と前記先端接触部材とを導通させることを特徴とする請求項1又は2に記載された金属埋設物の調査用掘削装置。
【請求項4】
前記先端接触部材の接触面を磁気吸着面にしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された金属埋設物の調査用掘削装置。
【請求項5】
地中に埋設された金属埋設物を目視調査する掘削工法であって、
掘削刃を有する推進駆動軸と、該推進駆動軸を回転駆動する駆動手段とを備え、前記推進駆動軸の先端に該推進駆動軸の軸中心に対して自由回転可能に軸支された先端接触部材を設けた掘削工具を用い、
前記金属埋設物の地上部に一端が導通接続される導線の他端を電源とこれに接続される報知手段とを介して前記推進駆動軸の基端側に設けた接続端子に接続し、該接続端子と前記先端接触部材とを導通させて、前記先端接触部材が前記金属埋設物の表面に接触することによって閉じて前記報知手段を駆動させる回路を形成し、
地上から探査された前記金属埋設物に向けて前記掘削工具の推進駆動軸を推進させて、地上から前記金属埋設物に到達する小口径掘削穴を形成することを特徴とする金属埋設物の調査用掘削工法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−284910(P2007−284910A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110852(P2006−110852)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】