説明

金属容器の製造方法及び金属容器

【課題】 胴部に、転動加工により直線、曲線等の形状を自由自在に成形できる、金属容器の製造方法に関する。
【解決手段】
金属容器の胴部に転動工具を押圧しながら、転動加工を施す金属容器の製造方法において、金属容器の一端から他端に向かって、転動工具を直進又は回転させて、胴部に縦リブ、横リブ、傾斜リブ、曲線リブ等の形状を組み合わせた所望形状のリブを、形成することを特徴とする金属容器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属容器の製造方法及び金属容器に関し、さらに詳しくは、ねじ付金属容器、エアゾール容器等の金属容器の胴部に、転動加工により縦リブ、横リブ、傾斜リブ、曲線リブ等の所望する任意のリブを自由自在に成形できる、金属容器の製造方法及び金属容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のねじ付金属容器、エアゾール容器等の胴部には、外観に意匠性を付与し、容器デザインの向上を図ることを目的として、縦リブ、横リブ等の加工を施すことが行われている。図8は、エアゾール容器である金属容器50であり、開口部51近傍に、公知の方法でネッキング加工、カーリング加工が施されている。そして、その胴部52外周には、転動工具53を用いて、転動加工が施されている。転動工具53は、内周面に等間隔ごとに複数のボール54が内装されている。転動工具53は、金属容器50の開口部51側から嵌込され、胴部52の下方まで押下げられる。転動工具53のボール54の内接円の径は、金属容器50の外径より、いくらか小さく形成されているため、金属容器50の胴部52には、多数の縦リブ55が形成される。又、図9は、エアゾール容器である金属容器60の胴部61に、エンボス加工を施して、横リブ65を形成する従来の装置である。金属容器60の胴部61に押圧される成形体62は、金属、セラミック、硬質樹脂等の材料で造られ、軸体63で、回転自在に支持されている。この成形体62の外周には、金属容器60の胴部61に、凹所64を形成するための突起66が形成されている。この突起66により金属容器60の胴部61には、横リブ65が押圧成形される。このような従来の金属容器の製造方法によって、図10(a)及び(b)に示すような、金属容器50、60の胴部52、61に、複数の縦リブ55又は横リブ65をデザインした金属容器が製造される。
【特許文献1】特公平2−43566号公報
【特許文献2】特開2000−84636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の製造方法においては、以下に示す欠点があった。
(1)図10に示すように、従来の胴部に形成される転動加工によるリブ形状は、縦リブのみ又は横リブのみの単調なデザインであり、縦リブ、横リブ、傾斜リブ及び曲線リブを任意に組み合わせたリブを形成できないという欠点があった。
(2)図8、図9に示す転動工具による縦リブ、横リブの転動加工は、いずれも、一連の金属容器の生産ラインとは別に設けられた装置により行われるので、金型費用、設備費用等のコストが高いという欠点があった。
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、ねじ付金属容器、エアゾール容器等の金属容器の胴部に、転動加工により縦リブ、横リブ、傾斜リブ、曲線リブ等の所望する任意のリブを自由自在に成形でき、製造コストが安価な金属容器の製造方法及び金属容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明の解決手段は、金属容器の胴部に転動工具を押圧しながら、転動加工を施す金属容器の製造方法において、金属容器の一端から他端に向かって、転動工具を直進又は回転させて、胴部に縦リブ、横リブ、傾斜リブ、曲線リブ等の形状を組み合わせた所望形状のリブを、形成することを特徴とする金属容器の製造方法である。本発明は、転動工具を直進させ、又は回転させる転動加工により、金属容器の胴部に、所望の縦リブ、横リブ、傾斜リブ及び曲線リブ等を自由自在に組み合わせた、意匠性の高い金属容器を提供することができる。
【0005】
請求項2記載の発明の解決手段は、本発明に係る金属容器の製造方法である転動加工が、ネッキング加工、カーリング加工、ねじ切り加工等の一連の金属容器の生産ラインの中で行われることを特徴とする金属容器の製造方法である。本発明に係る転動加工は、ネッキングマシンの各加工ステーションである、ネッキング加工、カーリング加工、ねじ切り加工等の一連の加工の最終工程又は上記一連の加工工程の中で行われ、一連の生産ラインと別途に行うものではないから、金型、装置等の設備費用のコストが安価であるという利点がある。
【0006】
請求項3記載の発明の解決手段は、上記の製造方法で製造される金属容器であって、金属容器の胴部に、縦リブ、横リブ、傾斜リブ、曲線リブ等が、任意に組み合わされて形成されることを特徴とする金属容器である。本発明に係る製造方法によれば、デザイン性に優れた意匠性の高い金属容器を得ることができる。
【0007】
請求項4記載の発明の解決手段は、金属容器が、ねじ付金属容器であることを特徴とする金属容器である。
【0008】
請求項5記載の発明の解決手段は、金属容器が、エアゾール容器であることを特徴とする金属容器である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ねじ付金属容器、エアゾール容器等の金属容器の胴部に、自由自在に転動加工を施すことにより、縦リブ、横リブ、傾斜リブ及び曲線リブ等を任意に組み合わせた形状のリブを施すことができる効果がある。又本発明は、製造コストが安価であるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1、図3及び図4は、本発明の実施例1を示す図面である。図1に示す転動工具1は、図4に示すようなネッキングマシンの工具取付テーブル2に取付けられている。この転動工具1に、相対する位置には金属容器3が取付られ、この金属容器3は、ターンテーブル4に固設されたグリップ5に支持されている。ターンテーブル4は間欠的に回転して、金属容器3を各成形ステーションへと移動する。工具取付テーブル2には、各ステーションごとに加工治具が取付られ、往復運動することにより、金属容器3に種々の成形を施すものである。すなわち、ターンテーブル4の間欠的回転に合わせて、軸方向に相対的に近づき又は離れる動作(往復運動)を繰り返すことにより、金属容器3が転動加工のステーションにきたとき、胴部3aに本発明に係る転動加工を施すものである。したがって、転動工具1も、工具取付テーブル2の加工ステーションに固定されている。転動工具1は、図1に示すように、溝部7を有する取付基材6と、この取付基材6内で直進又は回転する回転工具8と、この回転工具8を押圧するばね体9とから構成されている。取付基材6の溝部7は、回転工具8の支持部10と溝部7に沿って、取付基材6内を直進又は回転する溝カム機構により制御されている。回転工具8の内周面には、複数のボール11が円周方向に等間隔で設けられている。ボール11の内接円は、金属容器3の胴部3aの外径より、若干小さく形成されている。
【0012】
転動工具1は、工具取付テーブル2がターンテーブル4に近づいたとき、図1の矢印方向に、回転工具8が取付基材6の溝部7に沿って、直進し、次ぎに溝部7に沿って回転するように移動する。回転工具8の移動は、溝カム機構により制御されている。これにより、金属容器3の胴部3aの外周には、所望のリブ30が形成される。胴部3aの成形後、ターンテーブル4が離れると同時に、回転工具8は、再度溝部7に沿って戻り、金属容器3から離れ、転動加工は終了する。溝カム機構の溝部7の形状は、図3(a)〜(e)に示すように、所望のリブの形状に応じて、種々の形状を選択することができる。例えば、溝カム機構の溝部7が、図3(a)に示す形状である場合は、金属容器3の胴部3aのリブ形状は、図5又は図7に示すようなリブ形状になる。又、溝カム機構の溝部7が、図3(b)に示す形状である場合は、図6に示すようなリブ形成になる。これらのリブ形状は、溝カム機構の溝形状と、回転工具8の移動速度、ボール11の取付ピッチ等の変更、組み合わせにより、より多くのリブ形状を案出することができる。なお、溝カム機構の他に、スプラインを利用することもできる。
【実施例2】
【0013】
図2は、本発明の実施例2を示す図面である。図2に示す転動工具21は、同様に図4に示すようなネッキングマシンの工具取付テーブル2に取付けられている。この転動工具21に相対する位置には、金属容器13が取付られ、この金属容器13は、ターンテーブル14に固設されたグリップ15に支持されている。ターンテーブル14は間欠的に回転して、金属容器13を各成形ステーションへと移動する。工具取付テーブル12には、各ステーションごとに加工治具が取付られ、往復運動することにより、金属容器13に種々の成形を施すものである。すなわち、ターンテーブル4の間欠的回転に合わせて、軸方向に相対的に近づき又は離れる動作(往復運動)を繰り返すことにより、金属容器13が転動加工のステーションにきたとき、胴部13aに転動加工を施すものである。したがって、転動工具21も、工具取付テーブル2の加工ステーションに固定されている。
転動工具21は、支持基材23内を移動する溝部17を有する取付基材16と、この取付基材16内で直進又は回転する回転工具18と、この回転工具18を押圧するばね体19とから構成されている。回転工具18は、支持基材23の先端部に、ベアリング24を介して、回転自在に設けられている。取付基材16の溝部17は、回転工具18の支持部20と溝部17に沿って、取付基材16内を直進又は回転する溝カム機構により制御されている。回転工具18の内周面には、複数のボール22が等間隔で保持されている。ボール22の内接円は、金属容器13の胴部13aの外径より、若干小さく形成されている。
【0014】
転動工具21は、工具取付テーブル12が、軸方向においてターンテーブル14に近づいたとき、図2の矢印方向に取付基材16が前進し、グリップ15に当接する。次ぎに、支持基材23と回転工具18が一体となり前進する。同時に、回転工具18が、金属容器13の胴部13aの一端から他端へ、溝部17に沿って直進し又は回転する。支持基材23の先端部23aには、ベアリング24を解して、回転工具18が回転自在に支持されているので、金属容器13の胴部13aには、所望する形状のリブ40が形成される。リブ40の成形後、ターンテーブル14が離れると同時に、回転工具18は溝部17に沿って後退し、金属容器13から離れ、転動加工は終了する。溝部17の形状は、同様に、図3(a)〜(e)に示すように、種々の形状を任意に選択することができる。そして、胴部13aには、種々の所望するリブを形成することができる。なお、上記製造方法で製造された金属容器は、例えば図6に示すようなねじ付金属容器に適用される。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明に係る製造方法は、金属容器として、図5に示すような、DI加工により成形されるねじ付金属容器3又は図6に示すような、インパクト加工により成形されるねじ付金属容器13、さらには、図7に示すような、インパクト加工により成形されるエアゾール容器33等の胴部表面に、広く適用することができる。したがって、本発明に係る製造方法によれば、頗るバラエティーに富んだ意匠性のある金属容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る製造方法の実施例1を示す断面図。
【図2】本発明に係る製造方法の実施例2を示す断面図。
【図3】本発明に係る製造方法における溝カムの実施例を示す断面図。
【図4】本発明に係る製造方法を、ネッキングマシンで行う実施例を示す断面図。
【図5】本発明に係る製造方法で成形された、ねじ付金属容器を示す正面図。
【図6】本発明に係る製造方法で成形された、ねじ付金属容器を示す正面図。
【図7】本発明に係る製造方法で成形された、エアゾール容器を示す正面図。
【図8】従来の製造方法で、縦リブを成形する状態を示す断面図。
【図9】従来の製造方法で、横リブを成形する状態を示す断面図。
【図10】従来の製造方法で成形された、縦リブ缶(a)及び横リブ缶(b)を示す 正面図。
【符号の説明】
【0017】
3、13 33 金属容器
3a、13a 33a 胴部
1、21 転動工具
30 40 45 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属容器の胴部に転動工具を押圧しながら、転動加工を施す金属容器の製造方法において、金属容器の一端から他端に向かって、転動工具を直進又は回転させて、胴部に縦リブ、横リブ、傾斜リブ、曲線リブ等の形状を組み合わせた所望形状のリブを、形成することを特徴とする金属容器の製造方法。
【請求項2】
前記転動加工が、ネッキング加工、カーリング加工、ねじ切り加工等の一連の金属容器の生産ラインの中で行われることを特徴とする請求項1記載の金属容器の製造方法。
【請求項3】
前記請求項1又は2記載の製造方法で製造される金属容器であって、該金属容器の胴部に、縦リブ、横リブ、傾斜リブ、曲線リブ等が、任意に組み合わされて形成されることを特徴とする金属容器。
【請求項4】
前記金属容器が、ねじ付金属容器であることを特徴とする請求項3記載の金属容器。
【請求項5】
前記金属容器が、エアゾール容器であることを特徴とする請求項3記載の金属容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−152400(P2007−152400A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351734(P2005−351734)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】