説明

金属層を有する疎水性樹脂基材の製造方法

【課題】疎水性樹脂基材上に金属層を形成させる方法を提供すること。
【解決手段】
(1)疎水性樹脂基材の表面を親水化する工程と、(2)工程(1)で得られた樹脂基材を、金属及び水溶性有機高分子を含む溶液に接触させる工程と、を含む、金属層を有する疎水性樹脂基材の製造方法。
親水化された樹脂基材表面の水接触角は45°以下が好ましい。また、水溶性有機高分子はカルボキシル基を有する化合物が好ましく、それらの中でも、カルボキシル基を有する化合物が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリアスコルビン酸及び水溶性タンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層を有する疎水性樹脂基材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貝殻や真珠、骨や歯等のように、生物が鉱物を初めとする無機物を生成する作用をバイオミネラリゼーションといい、この機構を模倣して有機物と無機物のハイブリッド材料を作り出す研究が行われている。
【0003】
バイオミネラリゼーションの特徴は、水溶液中で反応を行うので常温常圧下で結晶の生成ができること、多糖やタンパク質等の官能基を側鎖に有する有機高分子基材上に結晶が生成すること、有機高分子が無機物の結晶化を制御していることにある。
【0004】
しかしながら、生体におけるバイオミネラリゼーションはタンパク質の生成が律速となる。無機物として水への溶解度が低い鉱物を使用する場合には、有機高分子基材上に結晶を析出させるのに多大な労力と時間を要する。
【0005】
また、有機高分子とバイオミネラル(生物が作り出す無機物である)は、強固な物理的又は化学的親和性により結合している必要があるため、単なる混合成型法又は共沈法では所望の有機高分子と無機物との複合体を得ることはできない。このように、バイオミネラリゼーションは実用化には程遠いのが現状である。
【0006】
現在、バイオミネラリゼーションを起こすための有機高分子基材として、キチン、キトサン、セルロース等の多糖類、コラーゲン等のタンパク質が使用されている。
【0007】
例えば、特許文献1及び非特許文献1では、アセチルキチン、プルラン等の多糖類や、ポリビニルアルコール/ポリアクリル酸の混合有機物複合体を基材とするバイオミネラリゼーション技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−238151号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Naoya Hosoda, Ayase Sugawara, and Takashi Kato:Template Effect of Crystalline Poly(vinyl alcohol) for Selective Formation of Aragonite and Vaterite CaCO3 Thin Films. Macromolecules 36, 6449-6452 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの技術は親水性の官能基を多く有する生体成分又は高分子・樹脂(親水性樹脂)に関するもので、親水基を持たない又はほとんど持たない樹脂(疎水性樹脂)に金属結晶を生成させた例は報告されていない。
【0011】
従って、本発明の主な目的は、疎水性樹脂基材上に金属層を形成させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、疎水性樹脂基材の表面を親水化することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、(1)疎水性樹脂基材の表面を親水化する工程と、(2)工程(1)で得られた樹脂基材を、金属及び水溶性有機高分子を含む溶液に接触させる工程とを含む、金属層を有する疎水性樹脂基材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、疎水性樹脂基材の表面に容易に金属層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、オゾン処理によって水接触角を変化させたポリメタクリル酸メチル板表面に生成した官能基を示すFT−IR図である。
【図2】図2は、樹脂基材の接触角と水溶性高分子であるポリアクリル酸の濃度を変化させて炭酸カルシウム結晶の生成の有無を観察した光学顕微鏡写真である。
【図3】図3は、親水化処理した樹脂基材(水接触角30°)を、ポリアクリル酸濃度50μMにおいて、炭酸カルシウム結晶成長液中に浸漬したときの基材表面(左)及び基材断面(右)のSEM画像である。
【図4】図4は、親水化処理していない樹脂基材(水接触角65°)を、ポリアクリル酸濃度50μMにおいて、炭酸カルシウム結晶成長液中に浸漬したときの板表面(左)及び板断面(右)のSEM画像である。
【図5】図5は、亜鉛化合物結晶成長液又はマンガン化合物結晶成長液に浸漬したアクリル板表面の、浸漬していないアクリル板とのIRスペクトル差を示した図である。
【図6】図6は、親水化処理した樹脂基材(水接触角30°)を、ポリアクリル酸濃度50μMにおいて、亜鉛化合物結晶成長液中に浸漬したときの基材表面の光学顕微鏡画像(左)及び基材断面のSEM画像(右)である。
【図7】図7は、親水化処理した樹脂基材(水接触角30°)を、ポリアクリル酸濃度50μMにおいて、マンガン化合物結晶成長液中に浸漬したときの基材表面の光学顕微鏡画像(左)及び基材断面のSEM画像(右)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、疎水性樹脂基材の表面を親水化した後、当該樹脂基材を金属及び水溶性有機高分子を含む溶液に浸漬することにより、金属層を有する疎水性樹脂基材を得ることができる。
【0017】
(1)疎水性樹脂基材の表面を親水化する工程
(1−1)疎水性樹脂基材
本発明で使用する疎水性樹脂基材とは、基材の表面が疎水性である基材をいい、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基等の親水性側鎖(親水性基)をその表面に含まないか又は実質的に含まないものをいう。本発明では、疎水性樹脂基材を、表面の水接触角が55°以上、好ましくは60°以上の樹脂であると定義することも可能である。
【0018】
疎水性樹脂としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の1種以上の重合体であるアクリル系樹脂;
スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−,及びp−メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等の1種以上の重合体であるスチレン系樹脂;
ポリ塩化ビニル、又は塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能なコモノマー(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、ジブチルマレエート、ジエチルマレエート等のマレイン酸エステル類、ビニルブチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、エチレン、プロピレン、スチレン等のα−オレフィン類、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデンまたはハロゲン化ビニル類等)との共重合体を含む塩化ビニル系樹脂;
ポリ塩化ビニリデン、又は塩化ビニリデンと共重合可能なコモノマー(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、ジブチルマレエート、ジエチルマレエート等の、マレイン酸エステル類、ビニルブチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、エチレン、プロピレン、スチレン等のα−オレフィン類、塩化ビニル等)との共重合体を含む塩化ビニリデン系樹脂;
ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;
(イ)ポリヘキサメチレンアジパミド(6,6ナイロン)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(6,9ナイロン)、ポリヘキサメチレンセバカミド(6,10ナイロン)、ポリヘキサメチレンドデカノアミド(6,12ナイロン)、ポリビス(4‐アミノシクロヘキシル)メタンドデカン等の炭素原子数4〜12の有機ジカルボン酸と炭素原子数2〜13の有機ジアミンとの重縮合物、(ロ)ω−アミノウンデカン酸の重縮合物であるポリウンデカンアミド(11ナイロン)等のω−アミノ酸の重縮合物、(ハ)ε−アミノカプロラクタムの開環重合物であるポリカプラミド(6ナイロン)、ε−アミノラウロラクタムの開環重合物ポリラウリックラクタム(12ナイロン)等のラクタムの開環重合物を含む、アミノ酸ラクタム又はジアミンとジカルボン酸とから構成されるポリマー;
ホルムアルデヒドの単独重合体又はホルムアルデヒドとその他の成分との共重合体を含むポリアセタール系樹脂;
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ビスフェノール、2,2―ジメチル−1、3−プロパンジオール、スピログリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオール等のジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又はジフェニルカーボネート等の重縮合体であるポリカーボネート系樹脂;
ポリエステル、もしくは1分子中にポリエステル由来の成分だけでなく、その他のポリマー成分との共重合体を含むポリエステル系樹脂;
ポリフェニレンスルフィド、もしくは1分子中にポリフェニレンスルフィド由来の成分だけでなく、その他のポリマー成分との共重合体を含むポリフェニレンスルフィド系樹脂;主鎖に芳香環基とその結合基としてスルホン基を有するポリスルホンホモポリマー又は1分子中にポリスルホンホモポリマー由来の成分だけでなくその他のポリマー成分との共重合体を含むポリスルホン系樹脂;
ポリエーテルケトンポリマー又はその他のポリマー成分との共重合体を含むポリエーテルケトン系樹脂;
p−フエニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン等の芳香族ジアミンとピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水物等の酸無水物との反応において生成するポリイミド系樹脂;
テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ビニリデンフルオライド及びビニルフルオライドから選ばれるモノマーの重合体又は共重合体、あるいはこれらモノマーとエチレンの共重合体等のフッ素系樹脂;
アルキルポリシロキサン、パーフルオロアルキルシラン、フッ素化オレフィンテロマー、オルガノシラン等の疎水性シリコーン系樹脂;
尿素、チオ尿素、エチレン尿素等の尿素類、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン、フェニルアセトグアナミン、CTUグアナミン等のグアナミン類、グアニジン、ジシアンジアミド、パラトルエンスルホンアミド等のその他のアミノ化合物、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ビスフェノールA等のフェノール類との共縮合体であるメラミン系樹脂;
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等のような芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、並びにこれらの水添化物や臭素化物、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-メタ-ジオキサン、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、商品名「EHPE-3150」(軟化温度71℃、ダイセル化学工業社製)等のような脂環族エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9個(好ましくは2〜4個)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル等のような脂肪族エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル-p-オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル-グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’-ジグリシジル誘導体、p-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体、m-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体等のようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体、エポキシ化ポリブタジエン等のような共役ジエン化合物を主体とする重合体又はその部分水添物の重合体の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの、エポキシ化SBS等のような「ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック」と「共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック又はその部分水添物の重合体ブロック」とを同一分子内にもつブロック共重合体の、共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの、上記各種エポキシ基含有化合物にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂;
フェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の無置換のフェノール類、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール等の一置換フェノール類、キシレノール、メチルプロピルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノール、グアヤコール、グエトール等の二置換フェノール類、トリメチルフェノールに代表される三置換フェノール類、ナフトール、メチルナフトール等のナフトール類、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類等を単量体とする、芳香環に少なくとも1個のフェノール性水酸基を有する化合物であるノボラック型フェノール樹脂又はレゾール型フェノール樹脂等のフェノール系樹脂。
【0019】
これらの中でも、アクリル系樹脂、エチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、エポキシ系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂、エチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。オゾン処理を初めとする親水化処理によって親水性基を生じさせやすいからである。
【0020】
本発明において使用する疎水性樹脂基材は、上記の疎水性樹脂からなる基材であってもよいし、他の構成成分を含む複合材料であってもよい。疎水性樹脂からなる基材を使用する場合、1種類の単量体からなる樹脂を使用することもできるし、2種以上の単量体を含む樹脂を使用することもできる。
【0021】
複合材料としては、例えば、ガラス、シリコンウェハー、金属材料、プラスチック、木材、紙、布(繊維)等の他の材料からなる基材の面上に疎水性樹脂が積層されている構成又は疎水性樹脂基材の中にガラス、シリコンウェハー、金属材料、プラスチック、木材、紙、布(繊維)等が包含される構成であってもよい。
【0022】
本発明で使用する疎水性樹脂基材の形状は限定されず、使用目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、板状、シート状、フィルム状であってもよく、立方体、直方体、多角形柱、円柱、多角錘、円錐、球体、偏重楕円体であってもよい。また、大きさ、厚さ、質量等も限定されず、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0023】
(1−2)疎水性樹脂基材の親水化処理
本発明において疎水性樹脂の表面を親水化する方法としては、特には限定されない。例えば、オゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理等の公知の方法を使用することができる。
【0024】
オゾン処理とは、空気中の酸素に紫外線を当てることによってオゾンを発生させ、樹脂表面に親水性基を生成する方法である。当該方法は、例えば、SEN LIGHTS CORPORATION社製の光表面処理装置PL16−110等によって実施することができる。
【0025】
コロナ処理とは、コロナ放電を樹脂表面に施すことで物理的な表面改質と親水性基生成により化学的表面処理とを行う方法である。当該方法は、例えばナビタス社製のPolyDyne等によって実施することができる。
【0026】
プラズマ処理とは、気体分子にエネルギーを与えプラズマ状態になったものを樹脂表面に施すことで、親水性基生成により化学的表面処理を行う方法である。当該方法は、例えばMSR社製のMSRプラズマ等によって実施することができる。
【0027】
その他、プライマー処理のように化学的な処理を施すことにより、疎水性樹脂の表面に親水基を導入して親水化することもできる。
【0028】
このような親水化処理によって、疎水性樹脂表面にヒドロキシル基;アミノ基、アミド基、シアノ基等の窒素を含んだ官能基;カルボキシル基;カルボニル基等の親水性基を生成することができる。これらの親水性基の中でも、ヒドロキシル基、アミノ基がより好ましい。バイオミネラリゼーション反応を行いやすくなるからである。なお、樹脂基材の表面に形成されたこれらの官能基の含有率は限定されない。
【0029】
親水化の程度は、疎水性樹脂基材の種類、表面に形成される金属の種類、金属層の厚さ等に応じて適宜選択することができる。例えば、親水化処理後の樹脂基材の表面の水接触角を45°以下とすればよく、40°以下が好ましく、5°以上35°以下がより好ましい。水接触角を45°以下とすることにより、基材表面に金属層をより容易に又は確実に形成することができるからである。
【0030】
水接触角の測定方法としては限定されず、例えば、θ/2法、接線法、カーブフィッティング法のような公知の方法で測定することができる。本発明では、例えば協和界面科学社製のDropMasterを使用することによってθ/2法で簡便に測定することができる。
【0031】
(2)工程(1)で得られた樹脂基材(以下、「親水化樹脂基材」という。)を、金属及び水溶性有機高分子を含む溶液(以下、「結晶成長液」という。)に接触させる工程
次に、上記のようにして得られた親水化樹脂基材の表面に金属層を形成する。
【0032】
(2−1)金属
本発明において、金属とは金属だけでなく金属の塩も含まれる。親水化樹脂基材上に層を形成する金属(又は金属の塩)の種類は限定されず、基材の使用目的・用途等に応じて適宜選択することができる。
【0033】
例えば、1A族に属する金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr等)、2A族に属する金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra等)、3A族に属する金属(Sr、Y等)、4A族に属する金属(Ti、Zr等)、5A族に属する金属(V、Nb等)、6A族に属する金属(Cr、Mo、W等)、7A族に属する金属(Mn、Tc等)、8族に属する金属(Fe、Ru、Os等)、1B族に属する金属(Cu、Ag等)、2B族に属する金属(Zn、Cd等)、3B族に属する金属(Ga、In等)、4B族に属する金属(Si、Ge、Sn、Pb等)、5B族に属する金属(As、Sb等)、6B族に属する金属(Se、Te等)を使用することができる。
【0034】
これらの中でも、Mg、Ca、Sr、Y、Ba、Zn、Ga、In、Al、Ti、V、W、Si、Sn、Mn、Co、Zr、Pb、Ag等が好ましく、Ca、Mg、Zn、Fe、Ni、Sn、Mn、Pb、Cu、Ag等がより好ましい。これらの金属は、親水化樹脂基材上に層を形成しやすいからである。これらの金属は1種類を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0035】
これらの金属は、溶液中でイオンを形成するために金属塩として添加することが好ましい。イオンを形成して水溶性有機高分子と静電的に相互作用することにより、当該金属の樹脂基材上での結晶化が促進すると考えられるからである。
【0036】
金属と塩を形成する塩の種類は限定されず、金属の種類、溶媒の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、炭酸イオン、重炭酸イオン、水酸化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン等が挙げられる。
【0037】
結晶成長液中の金属の濃度は、金属又は金属の塩の種類や層の厚さ等に応じて適宜選択することができる。例えば、金属の濃度は0.005mM〜1M程度とすることができ、0.01mM〜500mMが好ましく、0.1mM〜200mMがより好ましい。0.005mM以上とするのは効率よく基材上に金属層を形成することができるからである。1M以下とするのはそれ以上濃度を高くしても飛躍的な効果が得られにくいからである。
【0038】
(2−2)水溶性有機高分子
結晶成長液に含まれる水溶性有機高分子としては、カルボキシル基を有する高分子及び/又は水酸基を有する高分子等を挙げることができる。
【0039】
カルボキシル基を有する高分子としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリアスコルビン酸、水溶性タンパク質等を使用することができる。水酸基を有する高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等を使用することができる。これらの高分子は1種類を単独で使用することもできるし、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。これらの中でもポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等が好ましい。
【0040】
水溶性有機高分子の重合度は特に限定されず、金属の種類や溶媒の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、水溶性有機高分子の重合度は重量平均分子量で100〜250000程度が好ましく、500〜120000程度がより好ましく、2000〜90000程度がさらに好ましい。水溶性有機高分子の重合度を100以上とすることにより、析出する金属塩がアモルファス化するのを抑止でき、均一な金属の層を形成することができる。水溶性有機高分子の重合度を250000以下とすることにより、水溶液の粘度が大きくなり金属層の形成が抑制されるのを避けることができる。
【0041】
溶液中の水溶性有機高分子の濃度は、その重合度や層を形成させる金属の種類等に応じて適宜選択することができる。水溶性有機高分子の濃度は、例えば0.01〜1000μM程度が好ましく、0.05〜500μM程度がより好ましく、0.1〜300μM程度が更に好ましく、0.5〜100μM程度が特に好ましい。0.01μM以上とすることにより、水溶液中にイオン化した陽イオンを静電的に結合するのに充分な量であり、基材上に金属層を形成することができる。また、1000μM以下とすることにより、水溶液中の粘度が上昇してイオンの拡散が充分に行われなくなるのを避けることができる。
【0042】
(2−3)溶媒
結晶成長液の溶媒の種類も、これらが十分に溶解して親水化樹脂基材上に金属層を形成させることができれば限定されず、金属の種類や水溶性高分子の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、水を使用することができる。
【0043】
(2−4)その他
本発明において、結晶成長液には、金属と水溶性有機高分子だけでなく、金属が樹脂基材上で層を形成するのを促進又は補助することができる塩又はイオンを添加することができる。
【0044】
このような塩としては、炭酸イオン、重炭酸イオン、水酸化物イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等を用いることができる。これらのイオンはカルシウム塩、ナトリウム塩等として溶媒に添加することができる。また、金属を含む結晶成長液に上記イオンを含むガス又は蒸気を吹き込むこともできる。結晶成長液中におけるこれらの塩の濃度は特には限定されず、金属の種類等に応じて適宜選択することができる。
【0045】
・好ましい態様例1
例えば、金属層としてカルシウム(又はカルシウムの塩)の層を形成させる場合、金属塩としては、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム等を使用することができる。
【0046】
カルシウムが樹脂基材上で層を形成するのを助けることができる塩としては、炭酸イオンまたは重炭酸イオンを供給できる材料、例えば、炭酸のアンモニウム塩やアミン塩を結晶成長液中に共存させればよい。炭酸塩の代わりに、炭酸ガスとアンモニアガス又はアミン蒸気を共存させてもよい。炭酸ガスを吹き込みつつ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等塩基性物質を滴下してpHの調節をおこなってもよい。
【0047】
・好ましい態様例2
例えば、金属層として亜鉛(又は亜鉛の塩)の塩の層を形成させる場合、金属塩としては、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、臭化亜鉛等を使用することができる。
【0048】
亜鉛が樹脂基材上で層を形成するのを助けることができる塩としては、炭酸イオンまたは重炭酸イオンを供給できる材料、例えば、炭酸のアンモニウム塩やアミン塩を結晶成長液中に共存させればよい。炭酸塩の代わりに、炭酸ガスとアンモニアガス又はアミン蒸気を共存させてもよい。炭酸ガスを吹き込みつつ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等塩基性物質を滴下してpHの調節をおこなってもよい。
【0049】
・好ましい態様例3
例えば、金属層としてマンガン(又はマンガンの塩)の層を形成させる場合、金属塩としては、塩化マンガン、酢酸マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン等を使用することができる。
【0050】
マンガンが樹脂基材上で層を形成するのを助けることができる塩としては、炭酸イオンまたは重炭酸イオンを供給できる材料、例えば、炭酸のアンモニウム塩やアミン塩を結晶成長液中に共存させればよい。炭酸塩の代わりに、炭酸ガスとアンモニアガス又はアミン蒸気を共存させてもよい。炭酸ガスを吹き込みつつ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等塩基性物質を滴下してpHの調節をおこなってもよい。
【0051】
(2−5)樹脂基材と結晶成長液との接触
親水化樹脂基材の表面に金属層を形成するには、工程(1)で得られた親水化樹脂基材を金結晶成長液に接触させればよい。
【0052】
接触させる方法は、親水化樹脂基材の所望の部分に金属層を形成することができれば限定されない。例えば、結晶成長液中に親水化樹脂基材全部又は一部を浸漬することもできるし、親水化樹脂基材に結晶成長液を塗布又は吹きかけることもできる。
【0053】
接触を行う場合の条件も限定されず、結晶成長液の種類や所望の金属層の厚さ等に応じて適宜選択することができる。例えば、結晶成長液の温度は4〜90℃が好ましく、10〜80℃がより好ましく、15〜60℃がさらに好ましい。4℃以上とするのは、結晶成長液中にイオンが析出するのを避けるためである。90℃以下とするのは、結晶成長液の溶媒が蒸発することによって金属や水溶性有機高分子等の濃度が変化するのを避けることができるからである。
【0054】
接触時間も限定されず、金属の種類や所望の層の厚さに応じて適宜選択することができる。例えば、接触時間は10秒〜1000時間が好ましく、1分〜100時間がより好ましく、10分〜48時間がさらに好ましい。
【0055】
(3)本発明で得られた樹脂基材
本発明で得られた金属層を有する樹脂基材(複合材料)は、必要に応じて水等で洗浄した後、所望の目的に使用することができる。
【0056】
本発明により得られた複合材料は、樹脂基材上に金属薄膜をコーティングしたものと同じなので、例えば、高い耐擦傷性を達成することができる。また、貝殻の構造と同じように、樹脂と金属薄膜の積層構造を作製した場合は、衝撃に強い複合材料とすることができる。さらに、金属が目的表面に堆積していくことを利用した、無電解めっき等への応用等が考えられる。金属イオンの種類によっては、透明電極や電材等の用途にも利用することができる。
【0057】
本発明で得られる複合材料は汎用性が高く、上述したもの以外にも様々な用途が考えられる。本発明で得られる複合材料は、例えば、光学材料、器、窓、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種ディスプレイ、蛍光灯、白熱電球、時計、玩具、装飾品、各種日用品、包装材料、ボトル、電子機器、家電製品、家具、小型機械、コンパクトディスク等のメディア、船舶、自動車等の内装、農業用フィルム、浴槽、タンク、建築材料、繊維原料等を挙げることができる。また、絶縁、封止、接着、接続用端子、各種センサー、光触媒、電子部品材料、導電膜、透明導電膜等に適用することもできる。さらに、本発明で得られる複合材料は、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、タッチパネル等の透明電極へ適用することができる。また、本発明で得られる複合材料は、反射防止膜に用いられる電磁波の遮蔽、静電気により埃がつかないようにするフィルム、熱遮断膜、熱線反射膜、紫外線反射膜へ適用も考えられる。多層膜を作製し、帯電防止膜等にも適用できる。
【0058】
また、炭酸カルシウム等は生体適合性に優れるため、本発明で得られる複合材料は生体材料に適用することも考えられる。炭酸カルシウム結晶は、一般に、結晶構造で分類すると、カルサイト、アラゴナイト、バテライト等に分けられ、これらの結晶構造のうち、アラゴナイト結晶は、天然の貝殻の真珠層において見られる構造である。本発明において金属としてカルシウムを使用した場合は、炭酸カルシウム薄膜は、製造条件を適宜調節することにより各種の結晶構造とすることができる。
【実施例】
【0059】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0060】
<実施例1〜3>
[炭酸カルシウム薄膜形成用結晶成長液の調整]
炭酸カルシウム結晶生成用結晶成長液として、CaCl・2HOを20mMとなるように、NaCOを20mMとなるように、500mLの水に溶解した。次いで、そこに種々の濃度の重量平均分子量が約5000のポリアクリル酸(PAA;和光純薬工業社製)を水溶性有機高分子として種々の濃度で添加した。PAAの結晶成長液中の濃度をそれぞれ、10μM(実施例1)、50μM(実施例2)、400μM(実施例3)とした。
【0061】
[疎水性樹脂基材の親水化]
ポリメタクリル酸メチル(PMMA:三菱レイヨン社製)板(50mm×100mm×3mm、水接触角は65°)に高圧水銀ランプ(西川計測社)によってオゾン処理を施した(ランプから10mmの距離にて12分間照射した)。
【0062】
その結果、水接触角(Contact Angle:CA)が30°の樹脂基材(親水化樹脂基材)が得られた。水接触角は、協和界面科学協和界面科学社製のDropMasterを用いて液適法によりで測定した。図1に示すように、親水化樹脂基材では、エステル結合(疎水性基)が大きく減少し、水酸基(親水性基)が増加していることが確認できた。
【0063】
[炭酸カルシウム薄膜の形成]
上記のようにして得られた親水化樹脂基材を、PAA濃度の異なる3種類の結晶成長液それぞれに浸漬し、室温で24時間静置した。その後、それぞれの結晶成長液から、各親水化樹脂基材を取り出し、純水で充分に洗浄後、乾燥した。純水で洗浄したのは、塩化カルシウムと炭酸ナトリウムを使用しているため、乾燥時に対イオンによってNaClが生成してしまうのを防ぐためである。
【0064】
実施例1(図2右上)及び実施例2(図2右中)で得られた複合材料は、十分に金属層が形成されていた。実施例3で得られた親水化樹脂基材上にも金属層が形成されていた(図2右下)。
【0065】
得られた複合材料の表面をSEM画像で確認したところ、複合材料の表面に多孔質なカルシウム結晶が見られ、複合材料の端面からも約10μm程度の厚みで炭酸カルシウムの層が形成されていることが分かった(図3)。
【0066】
<比較例1〜3>
ポリメタクリル酸メチル(PMMA:三菱レイヨン社製)板(50mm×100mm×3mm)の親水化を行わなかった以外は、実施例1〜3と同様に実験を行った。疎水性樹脂基材の水接触角は65°であった。親水化を行わない場合には、樹脂基材表面に金属層が形成されないことがわかった(図2左、図4)。
【0067】
<実施例4>
[亜鉛化合物結晶の薄膜形成用結晶成長液の調整]
亜鉛化合物結晶生成用結晶成長液として、ZnSOを20mMとなるように、NaCOを20mMとなるように、500mLの水に溶解した。次いで、そこに濃度が50μMとなるように重量平均分子量が約5000のポリアクリル酸(PAA;和光純薬工業社製)を水溶性有機高分子として種々の濃度で添加した。
【0068】
[亜鉛化合物薄膜の形成]
実施例1で使用したものと同様の親水化樹脂基材(水接触角は30°)を亜鉛化合物結晶生成用結晶成長液に浸漬し、室温で24時間静置した。その後、当該結晶成長液から親水化樹脂基材を取り出し、純水で充分に洗浄後、乾燥した。純水で洗浄したのは、結晶成長液中に硫酸亜鉛と炭酸ナトリウムを使用しているため、乾燥時に対イオンによってNaSOが生成してしまうのを防ぐためである。
【0069】
得られた基材は、十分に金属層が形成されており、樹脂基材表面のIRスペクトルより2300cm−1付近にCO2−のピークが確認された(図5)。樹脂基材の端面からも約80μm程度の厚みで炭酸亜鉛の層が形成されていることが分かった(図6)。
【0070】
<実施例5>
[マンガン化合物結晶の薄膜形成用結晶成長液の調整]
マンガン化合物結晶生成用結晶成長液として、MnCl・2HOを20mMとなるように、NaCOを20mMとなるように、500mLの水に溶解した。次いで、そこに濃度が50μMとなるように重量平均分子量が約5000のポリアクリル酸(PAA;和光純薬工業社製)を水溶性有機高分子として種々の濃度で添加した。
【0071】
[マンガン化合物薄膜の形成]
実施例1で使用したものと同様の親水化樹脂基材(水接触角は30°)を、PAA濃度50μMの結晶成長液それぞれに浸漬し、室温で24時間静置した。その後、当該結晶成長液から親水化樹脂基材を取り出し、純水で充分に洗浄後、乾燥した。純水で洗浄したのは、結晶成長液中に塩化マンガンと炭酸ナトリウムを使用しているため、乾燥時に対イオンによってNaClが生成してしまうのを防ぐためである。
【0072】
得られた基材は、十分に金属層が形成されており、板表面のIRスペクトルより2300cm−1付近にCO2−のピークが確認された(図5)。樹脂基材の端面からも約80μm程度の厚みで炭酸マンガンの層が形成されていることが分かった(図7)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)疎水性樹脂基材の表面を親水化する工程と、
(2)工程(1)で得られた樹脂基材を、金属及び水溶性有機高分子を含む溶液に接触させる工程と
を含む、金属層を有する疎水性樹脂基材の製造方法。
【請求項2】
親水化された樹脂基材表面の水接触角が45°以下である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水溶性有機高分子がカルボキシル基を有する化合物である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
カルボキシル基を有する化合物が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリアスコルビン酸及び水溶性タンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項3記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−91311(P2013−91311A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77395(P2012−77395)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】