説明

金属微粉化腐食耐性が向上された高性能合金

金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物が、本発明によって提供される。また、炭素過飽和の環境に暴露される金属表面における金属微粉化を防止するための方法が提供される。合金組成物には、合金(PQR)、および合金(PQR)の表面上の多層酸化物膜が含まれる。合金(PQR)には、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属(P)、Cr、Mn、およびAl、Si、またはAl/Siのいずれかを含む合金化金属(Q)、並びに合金化元素(R)が含まれる。合金化金属(Q)にAlが含まれる場合には、合金の表面上の多層酸化物膜には、少なくとも三層の酸化物層が含まれる。合金化金属(Q)にSiが含まれる場合には、合金(PQR)の表面上の多層酸化物膜には、少なくとも四層の酸化物層が含まれる。合金化金属(Q)にAlおよびSiが含まれる場合には、合金(PQR)の表面上の多層酸化物膜には、少なくとも三層の酸化物層が含まれる。多層酸化物膜は、合金組成物を炭素過飽和の金属微粉化環境中で用いる際に、現場で形成される。開示の合金組成物によって示される利点には、比較的低い酸素分圧を有する炭素過飽和の環境における、高温時の金属微粉化腐食耐性の向上が含まれる。開示の合金組成物は、反応器系および製油所装置における内側表面として用いるのに適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素転化プロセスで用いられる物質の分野に関する。より詳しくは、本発明は、腐食性反応体および炭素過飽和の環境に暴露される物質に関する。更により詳しくは、本発明は、合金組成物、並びに高い炭素活性および比較的低い酸素活性に暴露される反応器系および製油所装置における金属微粉化腐食の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの炭化水素転化プロセス、例えばメタンのシンガスへの転化においては、高い炭素活性および比較的低い酸素活性を有する環境に直面する。これらのプロセスで用いられる高温の反応器物質および熱交換器物質は、運転中に、金属微粉化として知られる非常に攻撃的な形態の腐食によって劣化することがある。金属微粉化は、高温腐食の有害な形態である。これは、Fe、Ni、およびCoベースの合金によって、比較的低い酸素分圧(約10−10〜約10−20気圧)を有する炭素過飽和の環境(炭素活性>1)中、温度350〜1050℃で起こる。この形態の腐食は、バルク金属が粉末または微粉へ崩壊されることを特徴とする。
【0003】
多くの高温合金は、酸化クロム(Cr)の表面膜を、現場で、低い酸素分圧の環境で形成するように設計されるものの、この酸化物の核形成および成長の動力学は、しばしば、1超の炭素活性を有する高度に還元性の炭素リッチ環境においては、炭素の侵入を防止するのに十分に迅速でない。更に、Cr膜の形成は、炭素の侵入に対して、初期に保護する。合金は、炭素が酸化物膜を通って移行しない程度に、炭素の侵入から保護される。しかし、合金および酸化物の間における欠陥および示差熱収縮が、酸化物膜の成長中に存在することから、酸化物膜の破断をもたらし得る応力が、引き起こされることがあるであろう。酸化物膜のこれらの局部的な破断は、鋼鉄中への炭素の侵入を導くであろう。
【0004】
金属微粉化腐食を制御するための、文献に記載される方法には、表面被覆およびガス状防止剤(例えばHS)の使用が含まれる。被覆は、被覆成分の合金基体中への内部拡散によって劣化されることがある。従って、被覆は、短期間の保護には実行可能な提案であるものの、それらは、一般に、20年以上の長期間の運転寿命には得策でない。HSによる防止はまた、二つの欠点を有する。一つは、HSが、炭化水素転化プロセスで用いられる殆どの触媒を被毒する傾向があることである。第二に、HSは、出口ストリームから除去されなければならない。これは、実質的に、プロセスコストを増大し得る。
【0005】
特許文献1(ラマナラヤナン(Ramanarayanan)ら)には、金属微粉化に耐性がある組成物、および炭素過飽和の環境に暴露される金属表面上の金属微粉化の防止方法が記載される。組成物は、(a)合金、および(b)合金上の保護酸化物被覆を含む。合金は、合金化金属およびベース金属を含む。その際、合金化金属は、クロムおよびマンガンの混合物を含み、ベース金属は、鉄、ニッケル、およびコバルトを含む。特許文献1は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0006】
低い酸素分圧(約10−10〜約10−20気圧)、および炭素過飽和の環境(炭素活性>1)で金属微粉化腐食に耐性がある高度合金組成物が必要とされている。理想的には、これらの高度合金組成物は、外側の保護酸化物膜を迅速に形成して、炭素の移動が遮断され、一方接着性不活性酸化物膜をゆっくり成長させて、炭素の侵入に対する拡散障壁として作用されることができるであろう。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,692,838号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に従って、金属微粉化腐食に耐性がある有利な合金組成物は、a)表面を有する合金(PQR)[ここで、Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、Qは、Cr、Mn、およびAlを含む合金化金属であり、Rは、合金化元素である]、およびb)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜[ここで、前記多層酸化物膜は、少なくとも三層の酸化物層を含み、第一の酸化物層は、酸化マンガン、クロム酸マンガン、酸化クロム、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ第三の酸化物層に隣接して配置され、第二の酸化物層は、酸化アルミニウムを含み、かつ前記合金(PQR)の表面および前記第三の酸化物層の間に配置され、前記第三の酸化物層は、酸化アルミニウムマンガンを含み、かつ前記第一の酸化物層および前記第二の酸化物層の間に配置される]を含む。
【0009】
本開示の更なる態様は、金属微粉化腐食に耐性がある有利な合金組成物に関し、前記合金組成物は、a)表面を有する合金(PQR)[ここで、Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、Qは、Cr、Mn、およびSiを含む合金化金属であり、Rは、合金化元素である]、およびb)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜[ここで、前記多層酸化物膜は、少なくとも四層の酸化物層を含み、第一の酸化物層は、酸化マンガンを含み、かつ第二の酸化物層に隣接して配置され、前記第二の酸化物層は、クロム酸マンガン、酸化クロム、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ前記第一の酸化物層および第四の酸化物層の間に配置され、第三の酸化物層は、酸化ケイ素を含み、かつ前記第四の酸化物層および前記合金(PQR)の間に配置され、前記第四の酸化物層は、酸化ケイ素マンガンを含み、かつ前記第二の酸化物層および前記第三の酸化物層の間に配置される]を含む。
【0010】
本開示の更なる態様は、金属微粉化腐食に耐性がある有利な合金組成物に関し、前記合金組成物は、a)表面を有する合金(PQR)[ここで、Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、Qは、Cr、Mn、Al、およびSiを含む合金化金属であり、Rは、合金化元素である]、およびb)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜[ここで、前記多層酸化物膜は、少なくとも三層の酸化物層を含み、第一の酸化物層は、酸化マンガン、クロム酸マンガン、酸化クロム、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ第三の酸化物層に隣接して配置される外側層であり、第二の酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素の固溶体、並びにそれらの混合物を含み、かつ前記合金(PQR)の表面および前記第三の酸化物層の間に配置され、前記第三の酸化物層は、酸化アルミニウムマンガン、酸化ケイ素マンガン、およびそれらの混合物を含み、かつ前記第一の酸化物層および前記第二の酸化物層の間に配置される]を含む。
【0011】
本開示の更なる態様は、炭素過飽和の環境に暴露される金属表面の金属微粉化を防止する有利な方法に関し、前記方法は、金属表面に、金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物を提供する工程を含み、その際前記合金組成物は、a)表面を有する合金(PQR)[ここで、Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、Qは、Cr、Mn、およびAlを含む合金化金属であり、Rは、合金化元素である]、およびb)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜[ここで、前記多層酸化物膜は、少なくとも三層の酸化物層を含み、第一の酸化物層は、酸化マンガン、クロム酸マンガン、酸化クロム、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ第三の酸化物層に隣接して配置され、第二の酸化物層は、酸化アルミニウムを含み、かつ前記合金(PQR)の表面および前記第三の酸化物層の間に配置され、前記第三の酸化物層は、酸化アルミニウムマンガンを含み、かつ前記第一の酸化物層および前記第二の酸化物層の間に配置される]を含む。
【0012】
本開示の他の態様は、炭素過飽和の環境に暴露される金属表面の金属微粉化を防止する有利な方法に関し、前記方法は、金属表面に、金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物を提供する工程を含み、その際前記組成物は、a)表面を有する合金(PQR)[ここで、Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、Qは、Cr、Mn、およびSiを含む合金化金属であり、Rは、合金化元素である]、およびb)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜[ここで、前記多層酸化物膜は、少なくとも四層の酸化物層を含み、第一の酸化物層は、酸化マンガンを含み、かつ第二の酸化物層に隣接して配置され、前記第二の酸化物層は、クロム酸マンガン、酸化クロム、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ前記第一の酸化物層および第四の酸化物層の間に配置され、第三の酸化物層は、酸化ケイ素を含み、かつ前記第四の酸化物層および前記合金(PQR)の間に配置され、前記第四の酸化物層は、酸化ケイ素マンガンを含み、かつ前記第二の酸化物層および前記第三の酸化物層の間に配置される]を含む。
【0013】
本開示の他の態様は、炭素過飽和の環境に暴露される金属表面の金属微粉化を防止する有利な方法に関し、前記方法は、金属表面に、金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物を提供する工程を含み、その際前記組成物は、a)表面を有する合金(PQR)[ここで、Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、Qは、Cr、Mn、Al、およびSiを含む合金化金属であり、Rは、合金化元素である]、およびb)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜[ここで、前記多層酸化物膜は、少なくとも三層の酸化物層を含み、第一の酸化物層は、酸化マンガン、クロム酸マンガン、酸化クロム、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ第三の酸化物層に隣接して配置される外側層であり、第二の酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素の固溶体、並びにそれらの混合物を含み、かつ前記合金(PQR)の表面および前記第三の酸化物層の間に配置され、前記第三の酸化物層は、酸化アルミニウムマンガン、酸化ケイ素マンガン、およびそれらの混合物を含み、かつ前記第一の酸化物層および前記第二の酸化物層の間に配置される]を含む。
【0014】
数多くの利点は、金属微粉化腐食に耐性がある有利な合金組成物、および従ってその使用/適用に起因する。その際、前記合金組成物は、a)合金(PQR)、およびb)合金(PQR)の表面上の多層酸化物膜を含む。これは、本明細書に記載される。
【0015】
例えば、本開示の例示的実施形態においては、合金(PQR)、および合金の表面上の多層酸化物膜を含む開示の合金組成物は、比較的低い酸素分圧を有する炭素過飽和の環境において、高温での金属微粉化腐食耐性を向上する。
【0016】
本開示の更なる例示的実施形態においては、合金(PQR)、および合金の表面上の多層酸化物膜を含む開示の合金組成物は、外側酸化物膜を迅速に形成して、炭素移動が遮断され、一方密着性不活性酸化物膜をゆっくり成長させて、炭素の侵入に対する拡散障壁として作用される能力を示す。
【0017】
本開示の更なる例示的実施形態においては、合金(PQR)、および合金(PQR)の表面上の多層酸化物膜を含む開示の合金組成物は、炭化水素転化プロセスで用いられる殆どの触媒を被毒しない。
【0018】
本開示の更なる例示的実施形態においては、合金(PQR)の表面上の開示の多層酸化物膜は、合金が、金属微粉化の環境に、低い酸素分圧で暴露される場合に形成する。
【0019】
本開示の更なる例示的実施形態においては、合金(PQR)の表面上の開示の多層酸化物膜は、合金を炭素過飽和の環境で用いる際に、現場で形成する。
【0020】
本開示の更なる例示的実施形態においては、合金(PQR)の表面上の開示の多層酸化物膜は、使用前に、合金を炭素過飽和の環境に暴露することによって形成する。
【0021】
合金(PQR)、および合金(PQR)の表面上の多層酸化物膜を含む合金組成物の他の利点は、保護表面酸化物膜が、合金を炭素過飽和の環境で用いる際に亀裂を生じる場合に、保護表面酸化物膜が、亀裂内に形成して、酸化物層が補修され、それにより合金が、使用中に金属微粉化から保護されるであろうことである。
【0022】
合金(PQR)、および合金の表面上の多層酸化物膜を含む開示の合金組成物は、使用中のいかなる時点においても炭素過飽和の環境と接触する装置および反応器系で適用される。これには、反応器、熱交換器、およびプロセス配管が含まれる。
【0023】
合金(PQR)、および合金の表面上の多層酸化物膜を含む開示の合金組成物は、金属微粉化の環境に暴露される装置の表面を構築するのに用いられるか、または別に、その装置の表面に被覆されてもよい。
【0024】
本開示の合金(PQR)、および合金の表面上の多層酸化物膜を含む開示の合金組成物のこれらおよび他の利点、特徴、および特質、並びにそれらの有利な適用および/または使用は、特に本明細書に添付される図面に関連して読取る場合には、次の詳細な説明から明らかであろう。
【0025】
当業者が、本明細書の主題を作製し、およびそれを使用するのに資するためには、添付の図面が参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明には、金属微粉化に耐性がある合金組成物材が含まれる。これは、(a)炭素過飽和の環境に暴露される場合に、保護表面酸化物膜をその表面上に形成することができる合金組成物、および(b)合金表面上の保護表面酸化物を含む。本開示の合金組成物は、炭素過飽和の環境に暴露される金属表面上の金属微粉化に対する保護被覆として使用する際に、先行技術の合金組成物と比べて実質的な利点を提供する。本開示の合金組成物は、次の点で先行技術と区別可能である。即ち、Cr、Mn、並びにAl、Si、またはAlおよびSiの組み合わせのいずれかを含む合金化金属を、炭素過飽和の金属微粉化環境に低酸素分圧で暴露される場合に、少なくとも三層の酸化物層を含む多層酸化物膜を使用中の現場で形成する(合金中の)濃度で含む点である。開示される合金組成物の有利な特性および/または特徴は、少なくとも幾分かは、合金組成物の表面上に形成される多層酸化物膜の構造に基づく。これには、とりわけ、金属微粉化腐食耐性の向上、炭化水素転化プロセスで用いられる触媒を被毒する傾向の低減、炭素過飽和の環境に暴露される場合の前、およびその場合の使用中に形成する容易性の向上が含まれる。
【0027】
保護表面酸化物膜をその表面上に形成することができる合金組成物は、式(PQR)によって表される。合金組成物(PQR)においては、Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択されるベース金属である。合金組成物においては、合金化金属Qは、Cr、Mn、並びにAl、Si、またはAlおよびSiの組み合わせのいずれかを含む。合金化元素Rは、B、C、N、Al、Si、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。合金金属Qおよび合金化元素Rは、金属微粉化腐食耐性を高める。限定しない例として、合金化元素R(Sc、La、Y、およびCeなど)は、現場で形成される表面酸化物膜の密着性を向上する。これは、スポーリング耐性を向上する。合金化元素R(Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuなど)は、これらの元素が表面の炭素移動反応に触媒作用を有しないことから、炭素の析出を低減する。
【0028】
本明細書に開示される合金組成物の三つの好ましい実施形態を、次に、更に詳細に記載する。これは、次のいずれかを含む合金化金属(Q)を含む。即ち、(1)Cr、Mn、およびAl、(2)Cr、Mn、およびSi、または(3)Cr、Mn、Al、およびSiである。
【0029】
アルミニウムを含む合金化金属との合金組成物
合金組成物(PQR)においては、ベース金属Pは、合金の全重量を基準として、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。合金化金属Qの内、Crの量は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%である。Mnの量は、合金の全重量を基準として、少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも5.0重量%、より好ましくは少なくとも7.5重量%であり、Alの量は、少なくとも2.0重量%、好ましくは少なくとも3.0重量%、より好ましくは少なくとも4.0重量%である。好ましい一実施形態においては、合金化金属Qの組み合わせ量は、合金の全重量を基準として、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%である。合金組成物(PQR)においては、合金化元素Rは、合金の全重量を基準として、約0.01重量%〜約5.0重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5.0重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約5.0重量%である。合金の金属微粉化耐性を高める合金化金属Qを用いることが好ましい。これらの合金化金属の一例には、MnおよびAlが、Mn/Alの質量比約1/2で含まれる。Crと共に、Mn/Alのこの質量比は、保護表面酸化物膜内のMnAl層の現場での形成を促進する。
【0030】
合金化金属Qに、Alが含まれる場合には、本発明の合金の適切な種類は、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択されるベース金属P少なくとも40重量%を含む。合金化金属Qには、Cr少なくとも10重量%、Mn少なくとも2.5重量%、およびAl少なくとも2.0重量%が含まれる。その際、Cr、Mn、およびAlの全量は、合金の少なくとも20重量%である。加えて、合金化元素Rは、合金の約0.01重量%〜約5.0重量%であり、B、C、N、Si、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。これらの合金の限定しない例を、次の表1に示す。表1は、アルミン酸マンガン表面酸化物膜を形成することができる高度な金属微粉化耐性合金の一覧である。
【0031】
【表1】

【0032】
保護表面酸化物膜は、合金表面上に少なくとも二層を含み、より好ましくは三層が、合金表面上に形成される。保護表面酸化物膜は、合金が金属微粉化の環境に低酸素分圧で暴露される場合に形成される。本発明による三層の保護表面酸化物膜の例示的断面構造を、図1に示す。
【0033】
第一の酸化物層とも呼ばれる外側層(炭素過飽和の環境に接触するか、または合金から最も離れている層)は、熱力学的に安定な酸化物から構成され、合金表面を迅速に被覆し、合金中への炭素の侵入を遮断することができる。第一の酸化物層の組成は、形成される合金の組成による。第一の酸化物層は、酸化マンガン(MO)、クロム酸マンガン(M)、酸化クロム(M)、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物である。その際、Mは、主にMnであり、更に、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rの元素を含んでもよい。
【0034】
第一の酸化物層の下に、第二の層(本明細書では第二の酸化物層と呼ばれる)が、第一の酸化物層の形成と同時か、またはそれに続くかのいずれかで形成する。第二の酸化物層は、最も熱力学的に安定な酸化物膜である。これは、第一の酸化物層の下に確立され、第一の酸化物層に密着する。第二の酸化物層の限定しない例は、酸化アルミニウム(Al)である。第二の酸化物層の組成は、形成される合金の組成による。それは、一般に、Mとして記載されることができる。その際、Mは、主にAlであり、更に、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rの元素を含んでもよい。
【0035】
第一の酸化物層および第二の酸化物層の間に、第三の層(本明細書では第三の酸化物層と呼ばれる)が、第二の酸化物層の形成と同時か、またはそれに続くかのいずれかで形成する。第三の酸化物層は、第一の酸化物層および第二の酸化物層の間の反応によって確立される酸化物膜である。反応が進行するにつれて、第一および第二の両酸化物層は、使い果たされてもよい。この場合には、第三の酸化物層が、金属微粉化腐食に対する長期間の耐性を提供する。第三の酸化物層の限定しない例は、酸化アルミニウムマンガン(MnAl)である。第三の酸化物層の組成は、形成される合金の組成による。それは、一般に、MM’として記載されることができる。その際、Mは、主にMnであり、M’は、主にAlである。しかし、MおよびM’はいずれも、更に、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rの元素を含んでもよい。
【0036】
本発明の合金組成物は、金属微粉化腐食に耐性があり、(a)合金、および(b)合金上の保護表面酸化物膜を含む。保護表面酸化物膜は、少なくとも二層の酸化物層、好ましくは三層の酸化物層を含む。第一の酸化物層は、酸化マンガン(MO)、クロム酸マンガン(M)、酸化クロム(M)、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物であり、第二の酸化物層は、酸化アルミニウム(M)であり、第三の酸化物層は、酸化アルミニウムマンガン(MM’)である。合金は、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rを含む。金属Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される。合金化金属Qは、Cr、Mn、およびAlを含む。合金化元素Rは、B、C、N、Si、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。金属Pは、合金の全重量を基準として、濃度少なくとも約40重量%で合金中に存在する。合金化元素Rは、合金の全重量を基準として、濃度約0.01重量%〜約5.0重量%で合金中に存在する。合金化金属Qにおいては、Crは、濃度少なくとも約10重量%で合金中に存在し、Mnは、濃度少なくとも約2.5重量%で合金中に存在し、Alは、濃度少なくとも約2.0重量%で合金中に存在する。その際、Cr、Mn、およびAlの組み合わせ量は、合金の20重量%以上である。
【0037】
保護表面酸化物膜は、合金を炭素過飽和の環境で用いる際に、現場で形成されるか、または合金を用いる前に、合金を炭素過飽和の環境に暴露することによって調製されてもよい。本発明の更なる利点は、保護表面酸化物膜が、合金を炭素過飽和の環境で用いる際に亀裂を生じる場合に、保護表面酸化物膜が、亀裂中に形成して、酸化物層が補修され、それにより合金が、使用中に金属微粉化から保護されるであろうことである。
【0038】
炭素過飽和の環境に暴露される金属表面の金属微粉化を防止するための方法が、本発明で開示される。金属微粉化を防止するための方法は、金属微粉化耐性の合金組成物(PQR)の金属表面を構築する工程、それを従来の鋼鉄またはニッケルベース合金上に共押出し加工する工程、または金属表面を金属微粉化耐性の合金組成物(PQR)で被覆する工程を含む。金属Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される。合金化金属Qは、Cr、Mn、およびAlを含む。合金化金属Rは、B、C、N、Si、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。金属Pは、合金の全重量を基準として、濃度少なくとも約40重量%で合金中に存在する。合金化元素Rは、合金の全重量を基準として、濃度約0.01重量%〜約5.0重量%で合金中に存在する。合金化金属Qにおいては、Crは、濃度少なくとも約10重量%で合金中に存在し、Mnは、濃度少なくとも約2.5重量%であり、Alは、濃度少なくとも約2.0重量%である。その際、Cr、Mn、およびAlの組み合わせ量は、20重量%以上である。
【0039】
金属表面は、合金で構築されるか、合金と共押出し加工されるか、合金で被覆されるか、またはその三つの組み合わせであってもよい。上記される保護表面酸化物膜は、装置を炭素過飽和の環境で運転する際に、現場で形成されるであろう。本発明は、更に、少なくとも二層の酸化物層、好ましくは三層の酸化物層を含む保護表面酸化物被覆を含む。その際、第一の酸化物層は、酸化マンガン(MO)、クロム酸マンガン(M)、酸化クロム(M)、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物であり、第二の酸化物層は、酸化アルミニウム(M)であり、第三の酸化物層は、酸化アルミニウムマンガン(MM’)である。第一の酸化物層は、合金から最も離れて配置される層であり、第二の酸化物層は、合金表面に隣接して配置される層である。
【0040】
ケイ素を含む合金化金属との合金組成物
合金組成物(PQR)においては、ベース金属Pは、合金の全重量を基準として、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。合金化金属Qの内、Crの量は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%である。Mnの量は、合金の全重量を基準として、少なくとも6.0重量%、好ましくは少なくとも8.0重量%であり、Siの量は、少なくとも2.0重量%、好ましくは少なくとも3.0重量%、より好ましくは少なくとも4.0重量%である。好ましい一実施形態においては、合金化金属Qの組み合わせ量は、合金の全重量を基準として、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%である。合金組成物(PQR)においては、合金化元素Rは、合金の全重量を基準として、約0.01重量%〜約5.0重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5.0重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約5.0重量%である。合金の金属微粉化耐性を高める合金化金属Qを用いることが好ましい。これらの合金化金属の一例には、MnおよびSiが、Mn/Siの質量比約2/1で含まれる。Crと共に、Mn/Siのこの質量比は、保護表面酸化物膜内のMnSiO層の現場での形成を促進する。
【0041】
合金化金属QにSiが含まれる場合には、本発明の合金の適切な種類は、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択されるベース金属P少なくとも40重量%を含む。合金化金属Qには、Cr少なくとも10重量%、Mn少なくとも6.0重量%、およびSi少なくとも2.0重量%が含まれる。その際、Cr、Mn、およびSiの全量は、合金の少なくとも20重量%である。加えて、合金化元素Rは、合金の約0.01重量%〜約5.0重量%であり、B、C、N、Al、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。これらの合金の限定しない例を、次の表2に示す。表2は、ケイ酸マンガン表面酸化物膜を形成することができる高度な金属微粉化耐性合金の一覧である。
【0042】
【表2】

【0043】
保護表面酸化物膜は、合金表面上に少なくとも三層、より好ましくは合金表面上に四層を含む。保護膜は、合金が、金属微粉化の環境に低酸素分圧で暴露される場合に形成される。本発明による四層保護表面酸化物膜の例示的断面構造を、図2に示す。
【0044】
第一の酸化物層とも呼ばれる外側層(炭素過飽和の環境に接触するか、または合金から最も離れている層)は、熱力学的に安定な酸化物から構成され、合金表面を迅速に被覆し、合金中への炭素の侵入を遮断することができる。第一の酸化物層は、熱力学的に安定な酸化マンガン(MnO)であり、過飽和の環境で炭素より早く形成し、かつ合金の表面に侵入することができる。酸化マンガンは、急速形成層と呼ばれる。第一の酸化物層の組成は、形成される合金の組成による。それは、一般に、MOとして記載されることができる。その際、Mは、主にMnであり、更に、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rの元素を含んでもよい。
【0045】
酸化マンガン層の下に、第二の層(本明細書では第二の酸化物層と呼ばれる)が、酸化マンガン層の形成と同時か、またはそれに続くかのいずれかで形成する。第二の酸化物層は、酸化物膜であり、酸化マンガン層の下に確立され、酸化マンガン層に密着する。第二の酸化物層の限定しない例は、クロム酸マンガン(MnCr)および酸化クロム(Cr)である。第二の酸化物層の組成は、形成される合金の組成による。それは、一般に、MおよびMとして記載されることができる。その際、Mは、主にMnおよびCrであり、更に、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rの元素を含んでもよい。従って、第二の酸化物層は、クロム酸マンガン(M)、酸化クロム(M)、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物である。
【0046】
第二の酸化物層の下に、第三の層(本明細書では第三の酸化物層と呼ばれる)が、第二の酸化物層の形成と同時か、またはそれに続くかのいずれかで形成する。第三の酸化物層は、最も熱力学的に安定な酸化物膜であり、第二の酸化物層の下に確立され、第二の酸化物層に密着する。第三の酸化物層の限定しない例は、酸化ケイ素(SiO)である。第三の酸化物層の組成は、形成される合金の組成による。それは、一般に、MOとして記載されることができる。その際、Mは、主にSiであり、更に、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rの元素を含んでもよい。
【0047】
第二の酸化物層および第三の酸化物層の間に、第四の層(本明細書では第四の酸化物層と呼ばれる)が、第三の酸化物層の形成と同時か、またはそれに続くかのいずれかで形成する。第四の酸化物層は、第二の酸化物層および第三の酸化物層の間の反応によって確立される酸化物膜である。反応が進行するにつれて、第二および第三の両酸化物層は、使い果たされてもよい。この場合には、第四の酸化物層が、金属微粉化腐食に対する長期間の耐性を提供する。第四の酸化物層の限定しない例は、酸化ケイ素マンガン(MnSiO)である。第四の酸化物層の組成は、形成される合金の組成による。それは、一般に、MM’Oとして記載されることができる。その際、Mは、主にMnであり、M’は、主にSiである。しかし、MおよびM’のいずれも、更に、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rの元素を含んでもよい。
【0048】
本発明の合金組成物は、金属微粉化腐食に耐性があり、(a)合金、および(b)合金上の保護表面酸化物膜を含む。保護表面酸化物膜は、少なくとも三層の酸化物層、好ましくは四層の酸化物層を含む。その際、第一の酸化物層は、酸化マンガン(MO)であり、第二の酸化物層は、クロム酸マンガン(M)、酸化クロム(M)、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物であり、第三の酸化物層は、酸化ケイ素(MO)であり、第四の酸化物層は、酸化ケイ素マンガン(MM’O)である。合金は、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rを含む。金属Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される。合金化金属Qは、Cr、Mn、およびSiを含む。合金化元素Rは、B、C、N、Al、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。金属Pは、合金の全重量を基準として、濃度少なくとも約40重量%で合金中に存在する。合金化元素Rは、合金の全重量を基準として、濃度約0.01重量%〜約5.0重量%で合金中に存在する。合金化金属Qにおいては、Crは、濃度少なくとも約10重量%で合金中に存在し、Mnは、濃度少なくとも約6.0重量%で合金中に存在し、Siは、濃度少なくとも約2.0重量%で合金中に存在する。その際、Cr、Mn、およびSiの組み合わせ量は、20重量%以上である。
【0049】
保護表面酸化物膜は、合金を炭素過飽和の環境で用いる際に、現場で形成されるか、または合金を用いる前に、合金を炭素過飽和の環境に暴露することによって調製されてもよい。本発明の更なる利点は、保護表面酸化物膜が、合金を炭素過飽和の環境で用いる際に亀裂を生じる場合に、保護表面酸化物膜が、亀裂中に形成して、酸化物層が補修され、それにより合金が、使用中に金属微粉化から保護されるであろうことである。
【0050】
炭素過飽和の環境に暴露される金属表面の金属微粉化を防止するための方法がまた、本発明で開示される。金属微粉化を防止するための方法は、金属微粉化耐性合金組成物(PQR)の金属表面を構築する工程、それを従来の鋼鉄またはニッケルベース合金上に共押出し加工する工程、または金属表面を金属微粉化耐性合金組成物(PQR)で被覆する工程を含む。ベース金属Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される。合金化金属Qは、Cr、Mn、およびSiを含む。合金化元素Rは、B、C、N、Al、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。金属Pは、合金の全重量を基準として、濃度少なくとも約40重量%で合金中に存在する。合金化元素Rは、合金の全重量を基準として、濃度約0.01重量%〜約5.0重量%で合金中に存在する。合金化金属Qにおいては、Crは、濃度少なくとも約10重量%で合金中に存在し、Mnは、濃度少なくとも約6.0重量%であり、Siは、濃度少なくとも約2.0重量%である。その際、Cr、Mn、およびSiの組み合わせ量は、20重量%以上である。
【0051】
金属表面は、合金で構築されるか、合金と共押出し加工されるか、または合金で被覆されてもよい。上記される保護表面酸化物膜は、装置を炭素過飽和の環境で運転する際に、現場で形成されるであろう。本発明は、更に、少なくとも三層の酸化物層、好ましくは四層の酸化物層を含む保護表面酸化物被覆を含む。その際、第一の酸化物層は、酸化マンガン(MO)であり、第二の酸化物層は、クロム酸マンガン(M)、酸化クロム(M)、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物であり、第三の酸化物層は、酸化ケイ素(MO)であり、第四の酸化物層は、酸化ケイ素マンガン(MM’O)である。第一の酸化物層は、合金から最も離れて配置される層であり、第三の酸化物層は、合金表面に隣接して配置される。
【0052】
アルミニウムおよびケイ素を含む合金化金属との合金組成物
合金組成物(PQR)においては、ベース金属Pは、合金の全重量を基準として、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。合金化金属Qの内、Crの量は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%である。Mnの量は、少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも5.0重量%、より好ましくは少なくとも7.5重量%である。Alの量は、少なくとも2.0重量%、好ましくは少なくとも3.0重量%、より好ましくは少なくとも4.0重量%である。Siの量は、合金の全重量を基準として、少なくとも2.0重量%、好ましくは少なくとも3.0重量%、より好ましくは少なくとも4.0重量%である。好ましい一実施形態においては、合金化金属Qの組み合わせ量は、合金の全重量を基準として、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%である。合金組成物(PQR)においては、合金化元素Rは、合金の全重量を基準として、約0.01重量%〜約5.0重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5.0重量%、より好ましくは約1.0重量%〜約5.0重量%である。
【0053】
合金化金属QにAlおよびSiが含まれる場合には、本発明の合金の適切な種類は、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択されるベース金属P少なくとも40重量%を含む。合金化金属Qには、Cr少なくとも10重量%、Mn少なくとも2.5重量%、Al少なくとも2.0重量%、およびSi少なくとも2.0重量%が含まれる。その際、Cr、Mn、Al、およびSiの全量は、合金の少なくとも20重量%である。加えて、合金化元素Rは、合金の約0.01重量%〜約5.0重量%であり、B、C、N、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。
【0054】
保護表面酸化物膜は、合金表面上に少なくとも二層、より好ましくは合金表面上に三層を含む。第一の酸化物層とも呼ばれる外側層(炭素過飽和の環境に接触するか、または合金から最も離れている層)は、熱力学的に安定な酸化物から構成される。これは、合金表面を迅速に被覆し、合金中への炭素の侵入を遮断することができる。第一の酸化物層の組成は、形成される合金の組成による。第一の酸化物層は、酸化マンガン(MO)、クロム酸マンガン(M)、酸化クロム(M)、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物である。その際、Mは、主にMnであり、更に、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rの元素を含んでもよい。
【0055】
第一の酸化物層の下に、第二の層(本明細書では第二の酸化物層と呼ばれる)が、第一の酸化物層の形成と同時か、またはそれに続くかのいずれかで形成する。第二の酸化物層は、最も熱力学的に安定な酸化物膜であり、第一の酸化物層の下に確立され、第一の酸化物層に密着する。第二の酸化物層の限定しない例は、酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)、並びに酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素の両方の固溶体(例えば、ムライト、3Al−2SiO)である。第二の酸化物層の組成は、形成される合金の組成による。それは、一般に、Mとして記載されることができる。その際、Mは、主にAlおよびSiであり、更に、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rの元素を含んでもよい。
【0056】
第一の酸化物層および第二の酸化物層の間に、第三の層(本明細書では第三の酸化物層と呼ばれる)が、第二の酸化物層の形成と同時か、またはそれに続くかのいずれかで形成する。第三の酸化物層は、第一の酸化物層および第二の酸化物層の間の反応によって確立される酸化物膜である。反応が進行するにつれて、第一および第二の両酸化物層は、使い果たされてもよい。この場合には、第三の酸化物層が、金属微粉化腐食に対する長期間の耐性を提供する。第三の酸化物層の限定しない例は、酸化アルミニウムマンガン(MnAl)および酸化ケイ素マンガン(MnSiO)である。第三の酸化物層の組成は、形成される合金の組成による。それは、一般に、MM’として記載されることができる。その際、Mは、主にMnであり、M’は、主にAlおよびSiである。しかし、MおよびM’のいずれも、更に、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rの元素を含んでもよい。
【0057】
本発明の合金組成物は、金属微粉化腐食に耐性があり、(a)合金、および(b)合金上の保護表面酸化物膜を含む。保護表面酸化物膜は、少なくとも二層の酸化物層、好ましくは三層の酸化物層を含む。その際、第一の酸化物層は、酸化マンガン、クロム酸マンガン、酸化クロム、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ第三の酸化物層に隣接して配置される外側層であり、第二の酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素の固溶体、並びにそれらの混合物を含み、かつ前記合金(PQR)の表面および前記第三の酸化物層の間に配置され、前記第三の酸化物層は、酸化アルミニウムマンガン、酸化ケイ素マンガン、およびそれらの混合物を含み、かつ前記第一の酸化物層および前記第二の酸化物層の間に配置される。
【0058】
合金は、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rを含む。金属Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される。合金化金属Qは、Cr、Mn、AlおよびSiを含む。合金化元素Rは、B、C、N、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。金属Pは、合金の全重量を基準として、濃度少なくとも約40重量%で合金中に存在する。合金化元素Rは、合金の全重量を基準として、濃度約0.01重量%〜約5.0重量%で合金中に存在する。合金化金属Qにおいては、Crは、濃度少なくとも約10重量%で合金中に存在し、Mnは、濃度少なくとも約2.5重量%で合金中に存在し、Alは、濃度少なくとも約2.0重量%で合金中に存在し、Siは、濃度少なくとも約2.0重量%で合金中に存在する。その際、Cr、Mn、AlおよびSiの組み合わせ量は、20重量%以上である。
【0059】
保護表面酸化物膜は、合金を炭素過飽和の環境で用いる際に、現場で形成されるか、または合金を用いる前に、合金を炭素過飽和の環境に暴露することによって調製されてもよい。本発明の更なる利点は、保護表面酸化物が、合金を炭素過飽和の環境で用いる際に、亀裂を生じる場合に、保護表面酸化物膜が、亀裂中に形成して、酸化物層が補修され、それにより合金が、使用中の金属微粉化から保護されるであろうことである。
【0060】
炭素過飽和の環境に暴露される金属表面の金属微粉化を防止するための方法がまた、本発明で開示される。金属微粉化を防止するための方法は、金属微粉化耐性合金組成物(PQR)の金属表面を構築する工程、それを従来の鋼鉄またはニッケルベース合金上に共押出し加工する工程、または金属表面を金属微粉化耐性合金組成物(PQR)で被覆する工程を含む。金属微粉化耐性合金組成物(PQR)は、ベース金属P、合金化金属Q、および合金化元素Rを含む。ベース金属Pは、Fe、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択される。合金化金属Qは、Cr、Mn、AlおよびSiを含む。合金化元素Rは、B、C、N、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、およびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。金属Pは、合金の全重量を基準として、濃度少なくとも約40重量%で合金中に存在する。合金化元素Rは、合金の全重量を基準として、濃度約0.01重量%〜約5.0重量%で合金中に存在する。合金化金属Qにおいては、Crは、濃度少なくとも約10重量%で合金中に存在し、Mnは、濃度少なくとも約2.5重量%であり、Alは、濃度少なくとも約2.0重量%であり、Siは、濃度少なくとも約2.0重量%である。その際、Cr、Mn、およびSiの組み合わせ量は、20重量%以上である。金属表面は、合金から構築されるか、合金と共押出し加工されるか、または合金で被覆されてもよく、上記される保護表面酸化物膜は、装置を炭素過飽和の環境で運転する際に、現場で形成されるであろう。
【0061】
合金組成物の使用および適用方法
本明細書に記載される多層組成物の合金は、金属微粉化の環境に暴露される装置の表面を構築するのに利用されてもよい。別に、本発明の多層組成物の合金は、従来の鋼鉄またはニッケルベース合金と、当業者に知られる鋼鉄の共押出し加工技術を用いて共押出し加工されてもよい。共押出し加工された構造体は、二層以上を含んでもよい。その際、外側層は、本発明の合金組成物を含む。加えて、金属微粉化に敏感な既存の装置表面は、本発明の多層組成物の合金で、当業者に知られる被覆技術を用いて被覆されてもよい。金属を、本明細書に記載される合金組成物で被覆するのに適切な例示的被覆技術には、限定されることなく、溶射、プラズマ溶着、化学蒸着、およびスパッタリングが含まれる。従って、製油所装置は、本明細書に記載される多層組成物の合金から構築されるか、それと共押出し加工されるか、またはそれで被覆されるかのいずれであってもよく、その際保護表面酸化物膜は、装置の使用中に形成されるか、または装置の使用前に形成される。
【0062】
既存の表面上の被覆として利用される場合には、被覆の厚さは、約10〜約200ミクロン、好ましくは約50〜約100ミクロンの範囲であってもよい。
【0063】
本発明の合金組成物から恩恵を受けるであろう表面には、使用中のいかなる時点においても、炭素過飽和の環境と接触している装置および反応器系が含まれる。これらの装置および反応器系には、限定されることなく、反応器、熱交換器、およびプロセス配管が含まれる。
【0064】
本明細書に記載される合金の表面上の保護被覆または膜は、合金を50CO:50H混合物などの金属微粉化の環境に暴露することによって、合金表面上に形成される。従って、保護被覆は、合金を(それらが金属微粉化の環境に暴露される反応条件下で)使用する前またはその後に、形成されてもよい。好ましい温度範囲は、約350℃〜約1050℃、好ましくは約550℃〜約1050℃である。典型的な暴露時間は、約1時間〜約200時間、好ましくは約1時間〜約100時間の範囲であることができる。
【0065】
出願人は、妥当に予知されることができるであろう開示の主題について、全ての実施形態および適用を開示することを試みた。しかし、均等物として残る予知できない非実質的な変更があってもよい。本発明は、その特定の例示的実施形態と関連して記載されているものの、多くの改変、変更、および変型は、前記の説明に照らして、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者に明らかであろうことは明白である。従って、本開示は、上記の詳細な説明の全てのこれらの改変、変更、および変型を包含するものである。
【0066】
次の実施例により、本発明、およびそれに対する利点が、その範囲を限定することなく説明される。
【0067】
試験方法
表面酸化物膜および合金中の元素重量%の決定を、標準的なEDXS分析によって決定した。商業的に入手可能な合金について、長方形の試料(0.5インチ×0.25インチ×0.06インチ)を、合金シートから調製した。優れた金属微粉化耐性を有する高性能合金(EM−36、EM−37、およびEM−38)(異なる濃度のFe、Cr、Mn、およびAlを含む)をアーク溶融によって調製した。アーク溶融された合金を、厚さ約1/8インチの薄いシートに圧延した。シートを、不活性のアルゴン雰囲気中1100℃で終夜焼鈍し、室温へ炉冷した。長方形の試料(0.5インチ×0.25インチ)を、シートから切取った。試料面を、600グリット仕上げまたはリンデB(0.05マイクロメーターのアルミナ粉末)仕上げのいずれかに研磨し、アセトンで洗浄した。種々の合金試験片について、腐食の動力学を、試験片を50CO:50H(体積%)の環境に、試験温度550℃〜950℃で160時間暴露することによって検討した。カーン[Cahn]1000電気天秤を用いて、試験片の炭素付着量が測定された。炭素付着量は、金属微粉化腐食の指標である。試験片の表面の断面をまた、SEMを用いて調べた。
【実施例】
【0068】
アルミニウムを合金化金属に用いる合金組成物の実証例
次の表3は、これらの実験で用いられる合金の一覧表である。
【0069】
【表3】

【0070】
上記される試験方法に従って、次の合金の試料を試験した。即ち、インコネル600、KHR−45A、インコロイ800H、ヘインズ(Hayenes)214、EM−36、EM−37、およびEM−38である。重量測定の結果を表4に示す。表4には、50CO−50Hガス混合物中650℃で160時間の反応後の、リンデB仕上げ合金上の炭素析出による重量増(金属微粉化の尺度)が示される。
【0071】
【表4】

【0072】
EM−38合金について、50CO−50H中650℃で160時間の反応後に、酸化物膜が、外側のMおよび内側の非晶質Al層から構成される。図3の表面および断面のSEM画像は、M/Al表面酸化物膜を表す。その際、Mは、主にMnであるが、更に、Cr、Al、およびFeを含んでなる。従って、本発明により形成される二つの酸化物層が、金属微粉化耐性を合金に提供する。
【0073】
EM−38合金を、50CO−50H中で、より高い温度950℃160時間で試験した。より複雑な層構造が得られた。これは、内側のMM’/Al層および外側のM層を含む。その際、Mは、主にMnであるが、更に、Cr、Al、およびFeを含んでなる。M’は、主にAlであるが、更に、Cr、Fe、およびMnを含んでなる。これを、図4(表面SEM画像、および断面SEM画像)に示す。従って、本発明により形成される三つの酸化物層が、金属微粉化耐性を合金に提供する。
【0074】
選択された合金(インコロイ800H、インコネル601、ヘインズ[Haynes]214、EM−36、EM−37、およびEM−38)をまた、試験片を50CO−50Hガス環境に、550℃で160時間暴露することによって、金属微粉化について試験した。金属微粉化暴露の後、試料の表面は、炭素で被覆された。これは、常に、金属微粉化腐食を伴う。金属微粉化腐食に対する感受性を、腐食表面の光学顕微鏡および断面SEM検査によって検討した。表面上に観察される腐食痕の平均直径および数を、金属微粉化腐食の尺度として用いる。これらの結果を表5に要約する。これは、50CO−50Hガス混合物中550℃で160時間の反応後の、リンデB仕上げ合金上の痕直径(μm)、および痕数/単位面積(25mm)を示す。
【0075】
【表5】

【0076】
EM−36、EM−37、およびEM−38を除く全ての合金は、表5に示されるように、強度の金属微粉化攻撃を受けた。EM合金の金属微粉化耐性は、本発明に記載されるように、合金中への組み合わせCr、Mn、およびAlの添加、並びに引続く表面酸化物膜の形成に起因される。
【0077】
ケイ素を合金化金属として用いる合金組成物の実証例
次の表6は、これらの実験で用いられる合金の一覧表である。
【0078】
【表6】

【0079】
上記される手順に従って、次の合金の試料を試験した。即ち、インコネル600、KHR−45A、およびEM−200である。重量測定の結果を表7に示す。これは、50CO−50Hガス混合物中650℃で160時間の反応後の、リンデB仕上げ合金上の炭素析出による重量増(金属微粉化の尺度)を示す。
【0080】
【表7】

【0081】
EM−200合金について、50CO−50H中650℃で160時間の反応後に、酸化物膜が、外側のMnOおよび内側のMnCr層および連続非晶質シリカ副層から構成される。図5aの断面SEM画像は、二層のMnO/MnCr構造を表す。図5b(明視野TEM画像)は、酸化物/合金境界における非晶質シリカ副層を示す。従って、この本発明により形成される三つの酸化物層は、合金の金属微粉化耐性を提供する。
【0082】
EM−200合金を、50CO−50H中で、より高い温度950℃で160時間試験した。より複雑な層構造が得られた。これは、内側のSiO/MnSiO層および外側のCr/MnCr二重層を、表面のMnO結晶と共に含む。これを、図6(断面SEM画像)に示す。従って、この本発明により形成される三つの酸化物層は、金属微粉化耐性を合金に提供する。
【0083】
選択された合金(304SS、310SS、インコロイ800H、インコネル600、KHR−45A、およびEM−200)をまた、試験片を50CO−50Hガス環境に550℃で160時間未満暴露することによって、金属微粉化について試験した。金属微粉化暴露の後、試料の表面は、炭素で被覆された。これは、常に、金属微粉化腐食を伴う。金属微粉化腐食に対する感受性を、腐食表面の光学顕微鏡および断面SEM検査によって検討した。表面上に観察される腐食痕の平均直径および数を、金属微粉化腐食の尺度として用いる。これらの結果を表8に要約する。これは、50CO−50Hガス混合物中550℃で160時間の反応後の、リンデB仕上げ合金上の痕直径(μm)および痕数/単位面積(25mm)を示す。
【0084】
【表8】

【0085】
EM−200を除く全ての合金は、表8に示されるように、強度の金属微粉化攻撃を受けた。EM−200合金の金属微粉化腐食耐性は、本発明に記載されるように、合金中への組み合わせCr、Mn、およびSiの添加、並びに引続く表面酸化物膜の形成に起因される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】アルミニウムを本発明による合金化金属に用いる保護表面酸化物膜について、断面構造の概略図を表す。
【図2】ケイ素を本発明による合金化金属に用いる保護表面酸化物膜について、断面構造の概略図を表す。
【図3】EM−38合金を50CO−50H中650℃で160時間反応させた後の、M/Al表面酸化物膜を示す表面および断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を表す。ここで、Mは、主にMnであるが、更に、Cr、Al、およびFeを含む。
【図4】EM−38合金を50CO−50H中950℃で160時間反応させた後の、M/MM’/Al表面酸化物膜を示す表面および断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を表す。ここで、Mは、主にMnであるが、更に、Cr、Al、およびFeを含み、M’は、主にAlであるが、更に、Cr、Fe、およびMnを含む。
【図5】50CO−50H中650℃で160時間反応させた後の、(a)二層のMnO/MnCr構造を示す走査電子顕微鏡(SEM)画像、および(b)連続非晶質シリカ副層の更なる詳細を示す透過電子顕微鏡(TEM)画像を表す。
【図6】50CO−50H中950℃で160時間反応させた後の、内側SiO/MnSiO層および外側Cr/MnCrの二重層を含む複合層構造を示すSEM画像を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物であって、
a)式(PQR):
(式中、
Pは、Fe、Ni、Coおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、
Qは、Cr、MnおよびAlを含む合金化金属であり、
Rは、合金化元素である)
で表される、表面を有する合金;および
b)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜
を含み、
前記多層酸化物膜は、少なくとも第一〜第三の三層の酸化物層を含み、
前記第一の酸化物層は、酸化マンガン、クロム酸マンガン、酸化クロムおよびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ前記第三の酸化物層に隣接して配置される外側層であり、
前記第二の酸化物層は、酸化アルミニウムを含み、かつ前記合金(PQR)の表面と前記第三の酸化物層の間に配置され、
前記第三の酸化物層は、酸化アルミニウムマンガンを含み、かつ前記第一の酸化物層と前記第二の酸化物層の間に配置される
ことを特徴とする合金組成物。
【請求項2】
前記金属Pは、前記合金(PQR)の少なくとも40重量%を構成することを特徴とする請求項1に記載の合金組成物。
【請求項3】
前記合金化金属Qは、前記合金(PQR)の少なくとも20重量%を構成することを特徴とする請求項1に記載の合金組成物。
【請求項4】
前記合金化金属Qは本質的に、前記合金(PQR)に対して、濃度少なくとも10重量%のCr、濃度少なくとも2.5重量%のMnおよび濃度少なくとも2.0重量%のAlからなることを特徴とする請求項3に記載の合金組成物。
【請求項5】
前記合金化元素Rは、B、C、N、Si、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Auおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の合金組成物。
【請求項6】
前記合金化元素Rは、前記合金(PQR)の0.01重量%〜5.0重量%を構成することを特徴とする請求項5に記載の合金組成物。
【請求項7】
前記多層酸化物膜は、前記金属P、前記合金化金属Q、前記合金化元素Rおよびそれらの混合物からなる群から選択される一種以上の元素を更に含むことを特徴とする請求項6に記載の合金組成物。
【請求項8】
前記金属Pは、前記合金(PQR)に対して、少なくとも60重量%を構成し、前記合金化金属Qは、少なくとも30重量%を構成し、前記合金化元素Rは、1.0重量%〜5.0重量%を構成することを特徴とする請求項5に記載の合金組成物。
【請求項9】
前記合金化金属Qは本質的に、前記合金(PQR)に対して、濃度少なくとも20重量%のCr、濃度少なくとも7.5重量%のMnおよび濃度少なくとも4.0重量%のAlからなることを特徴とする請求項8に記載の合金組成物。
【請求項10】
金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物であって、
a)式(PQR):
(式中、
Pは、Fe、Ni、Coおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、
Qは、Cr、MnおよびSiを含む合金化金属であり、
Rは、合金化元素である)
で表される、表面を有する合金;および
b)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜
を含み、
前記多層酸化物膜は、少なくとも第一〜第四の四層の酸化物層を含み、
前記第一の酸化物層は、酸化マンガンを含み、かつ前記第二の酸化物層に隣接して配置される外側層であり、
前記第二の酸化物層は、クロム酸マンガン、酸化クロムおよびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ前記第一の酸化物層と前記第四の酸化物層の間に配置され、
前記第三の酸化物層は、酸化ケイ素を含み、かつ前記第四の酸化物層と前記合金(PQR)の間に配置され、
前記第四の酸化物層は、酸化ケイ素マンガンを含み、かつ前記第二の酸化物層と前記第三の酸化物層の間に配置される
ことを特徴とする合金組成物。
【請求項11】
前記金属Pは、前記合金(PQR)の少なくとも40重量%を構成することを特徴とする請求項10に記載の合金組成物。
【請求項12】
前記合金化元素Qは、前記合金(PQR)の少なくとも20重量%を構成することを特徴とする請求項10に記載の合金組成物。
【請求項13】
前記合金化金属Qは本質的に、前記合金(PQR)に対して、濃度少なくとも10重量%のCr、濃度少なくとも6.0重量%のMnおよび濃度少なくとも2.0重量%のSiからなることを特徴とする請求項12に記載の合金組成物。
【請求項14】
前記合金化元素Rは、B、C、N、Al、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Auおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の合金組成物。
【請求項15】
前記合金化元素Rは、前記合金(PQR)の0.01重量%〜5.0重量%を構成することを特徴とする請求項14に記載の合金組成物。
【請求項16】
前記多層酸化物膜は、前記金属P、前記合金化金属Q、前記合金化元素Rおよびそれらの混合物からなる群から選択される一種以上の元素を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の合金組成物。
【請求項17】
前記金属Pは、前記合金(PQR)に対して、少なくとも60重量%を構成し、前記合金化金属Qは、少なくとも30重量%を構成し、前記合金化元素Rは、1.0重量%〜5.0重量%を構成することを特徴とする請求項14に記載の合金組成物。
【請求項18】
前記合金化金属Qは本質的に、前記合金(PQR)に対して、濃度少なくとも20重量%のCr、濃度少なくとも8.0重量%のMnおよび濃度少なくとも4.0重量%のSiからなることを特徴とする請求項17に記載の合金組成物。
【請求項19】
金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物であって、
a)式(PQR):
(式中、
Pは、Fe、Ni、Coおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、
Qは、Cr、Mn、AlおよびSiを含む合金化金属であり、
Rは、合金化元素である)
で表される、表面を有する合金;および
b)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜
を含み、
前記多層酸化物膜は、少なくとも第一〜第三の三層の酸化物層を含み、
前記第一の酸化物層は、酸化マンガン、クロム酸マンガン、酸化クロムおよびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ前記第三の酸化物層に隣接して配置される外側層であり、
前記第二の酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムと酸化ケイ素の固溶体およびそれらの混合物を含み、かつ前記合金(PQR)の表面と前記第三の酸化物層の間に配置され、
前記第三の酸化物層は、酸化アルミニウムマンガン、酸化ケイ素マンガンおよびそれらの混合物を含み、かつ前記第一の酸化物層と前記第二の酸化物層の間に配置される
ことを特徴とする合金組成物。
【請求項20】
前記金属Pは、前記合金(PQR)の少なくとも40重量%を構成することを特徴とする請求項19に記載の合金組成物。
【請求項21】
前記合金化金属Qは、前記合金(PQR)の少なくとも20重量%を構成することを特徴とする請求項19に記載の合金組成物。
【請求項22】
前記合金化金属Qは本質的に、前記合金(PQR)に対して、濃度少なくとも10重量%のCr、濃度少なくとも2.5重量%のMn、濃度少なくとも2.0重量%のAlおよび濃度少なくとも2.0重量%のSiからなることを特徴とする請求項21に記載の合金組成物。
【請求項23】
前記合金化元素Rは、B、C、N、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Auおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の合金組成物。
【請求項24】
前記合金化元素Rは、前記合金(PQR)の0.01重量%〜5.0重量%を構成することを特徴とする請求項23に記載の合金組成物。
【請求項25】
前記多層酸化物膜は、前記金属P、前記合金化金属Q、前記合金化元素Rおよびそれらの混合物からなる群から選択される一種以上の元素を更に含むことを特徴とする請求項24に記載の合金組成物。
【請求項26】
前記合金(PQR)に対して、前記金属Pは、少なくとも60重量%を構成し、前記合金化金属Qは、少なくとも30重量%を構成し、前記合金化元素Rは、1.0重量%〜5.0重量%を構成することを特徴とする請求項23に記載の合金組成物。
【請求項27】
前記合金化金属Qは本質的に、前記合金(PQR)に対して、濃度少なくとも20重量%のCr、濃度少なくとも6重量%のMn、濃度少なくとも4.0重量%のAlおよび濃度少なくとも4.0重量%のSiからなることを特徴とする請求項26に記載の合金組成物。
【請求項28】
炭素過飽和の環境に暴露される金属表面の金属微粉化を防止する方法であって、金属表面に、金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物を提供する工程を含み、
前記合金組成物は、
a)式(PQR):
(式中、
Pは、Fe、Ni、Coおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、
Qは、Cr、MnおよびAlを含む合金化金属であり、
Rは、合金化元素である)
で表される、表面を有する合金;および
b)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜
を含み、
前記多層酸化物膜は、少なくとも第一〜第三の三層の酸化物層を含み、
前記第一の酸化物層は、酸化マンガン、クロム酸マンガン、酸化クロムおよびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ前記第三の酸化物層に隣接して配置される外側層であり、
前記第二の酸化物層は、酸化アルミニウムを含み、かつ前記合金(PQR)の表面と前記第三の酸化物層の間に配置され、
前記第三の酸化物層は、酸化アルミニウムマンガンを含み、かつ前記第一の酸化物層と前記第二の酸化物層の間に配置される
ことを特徴とする金属微粉化の防止方法。
【請求項29】
前記金属Pは、前記合金(PQR)に対して、少なくとも40重量%を構成し、前記合金化金属Qは、少なくとも20重量%を構成し、前記合金化元素Rは、0.01重量%〜5.0重量%を構成することを特徴とする請求項28に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項30】
前記合金化金属Qは本質的に、前記合金(PQR)に対して、濃度少なくとも10重量%のCr、濃度少なくとも2.5重量%のMnおよび濃度少なくとも2.0重量%のAlからなることを特徴とする請求項29に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項31】
前記合金化元素Rは、B、C、N、Si、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Auおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項30に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項32】
前記多層酸化物膜は、前記金属P、前記合金化金属Q、前記合金化元素Rおよびそれらの混合物からなる群から選択される一種以上の元素を更に含むことを特徴とする請求項31に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項33】
金属表面に、金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物を提供する前記工程は、
a)金属微粉化腐食に耐性がある前記合金組成物の前記金属表面を構築する工程;
b)金属微粉化腐食に耐性がある前記合金組成物を有する前記金属表面を、鋼鉄またはニッケルベース合金の一層以上の他の層と、外側層として共押出し加工する工程;
c)前記金属表面を、金属微粉化腐食に耐性がある前記合金組成物で被覆する工程;および
d)前記工程a)、b)およびc)の組み合わせ
からなる群から選択される工程を含むことを特徴とする請求項28に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項34】
前記被覆工程c)は、溶射、プラズマ溶着、化学蒸着およびスパッタリングからなる群から選択されることを特徴とする請求項33に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項35】
前記合金組成物は、厚さ10〜200ミクロンであることを特徴とする請求項34に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項36】
前記多層酸化物膜は、前記合金組成物を炭素過飽和の金属微粉化環境で用いる際に、現場で形成されることを特徴とする請求項28に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項37】
前記合金組成物は、炭素過飽和の環境に暴露される製油所装置および反応器系の内側表面を構成することを特徴とする請求項28に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項38】
炭素過飽和の環境に暴露される金属表面の金属微粉化を防止する方法であって、金属表面に、金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物を提供する工程を含み、
前記組成物は、
a)式(PQR):
(式中、
Pは、Fe、Ni、Coおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、
Qは、Cr、MnおよびSiを含む合金化金属であり、
Rは、合金化元素である)
で表される、表面を有する合金;および
b)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜
を含み、
前記多層酸化物膜は、少なくとも第一〜第四の四層の酸化物層を含み、
前記第一の酸化物層は、酸化マンガンを含み、かつ前記第二の酸化物層に隣接して配置される外側層であり、
前記第二の酸化物層は、クロム酸マンガン、酸化クロムおよびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ前記第一の酸化物層と前記第四の酸化物層の間に配置され、
前記第三の酸化物層は、酸化ケイ素を含み、かつ前記第四の酸化物層と前記合金(PQR)の間に配置され、
前記第四の酸化物層は、酸化ケイ素マンガンを含み、かつ前記第二の酸化物層と前記第三の酸化物層の間に配置される
ことを特徴とする金属微粉化の防止方法。
【請求項39】
前記金属Pは、前記合金(PQR)に対して、少なくとも40重量%を構成し、前記合金化金属Qは、少なくとも20重量%を構成し、前記合金化元素Rは、0.01重量%〜5.0重量%を構成することを特徴とする請求項38に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項40】
前記合金化元素Qは本質的に、前記合金(PQR)に対して、濃度少なくとも10重量%のCr、濃度少なくとも6.0重量%のMnおよび濃度少なくとも2.0重量%のSiからなることを特徴とする請求項38に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項41】
前記合金化元素Rは、B、C、N、Al、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Auおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項38に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項42】
前記多層酸化物膜は、前記金属P、前記合金化金属Q、前記合金化元素Rおよびそれらの混合物からなる群から選択される一種以上の元素を更に含むことを特徴とする請求項41に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項43】
金属表面に、金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物を提供する前記工程は、
a)金属微粉化腐食に耐性がある前記合金組成物の前記金属表面を構築する工程;
b)金属微粉化腐食に耐性がある前記合金組成物を有する前記金属表面を、鋼鉄またはニッケルベース合金の一層以上の他の層と、外側層として共押出し加工する工程;
c)前記金属表面を、金属微粉化腐食に耐性がある前記合金組成物で被覆する工程;および
d)前記工程a)、b)およびc)の組み合わせ
からなる群から選択される工程を含むことを特徴とする請求項38に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項44】
前記被覆工程c)は、溶射、プラズマ溶着、化学蒸着およびスパッタリングからなる群から選択されることを特徴とする請求項43に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項45】
前記合金組成物は、厚さ10〜200ミクロンであることを特徴とする請求項44に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項46】
前記多層酸化物膜は、前記合金組成物を炭素過飽和の金属微粉化環境で用いる際に、現場で形成されることを特徴とする請求項38に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項47】
前記合金組成物は、炭素過飽和の環境に暴露される製油所装置および反応器系の内側表面を構成することを特徴とする請求項38に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項48】
炭素過飽和の環境に暴露される金属表面の金属微粉化を防止する方法であって、金属表面に、金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物を提供する工程を含み、
前記組成物は、
a)式(PQR):
(式中、
Pは、Fe、Ni、Coおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属であり、
Qは、Cr、Mn、AlおよびSiを含む合金化金属であり、
Rは、合金化元素である)
で表される、表面を有する合金;および
b)前記合金(PQR)の前記表面上の多層酸化物膜
を含み、
前記多層酸化物膜は、少なくとも第一〜第三の三層の酸化物層を含み、
前記第一の酸化物層は、酸化マンガン、クロム酸マンガン、酸化クロムおよびそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含み、かつ前記第三の酸化物層に隣接して配置される外側層であり、
前記第二の酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムと酸化ケイ素の固溶体およびそれらの混合物を含み、かつ前記合金(PQR)の表面と前記第三の酸化物層の間に配置され、
前記第三の酸化物層は、酸化アルミニウムマンガン、酸化ケイ素マンガンおよびそれらの混合物を含み、かつ前記第一の酸化物層と前記第二の酸化物層の間に配置される
ことを特徴とする金属微粉化の防止方法。
【請求項49】
前記金属Pは、前記合金(PQR)に対して、少なくとも40重量%を構成し、前記合金化金属Qは、少なくとも20重量%を構成し、前記合金化元素Rは、0.01重量%〜5.0重量%を構成することを特徴とする請求項48に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項50】
前記合金化元素Qは本質的に、前記合金(PQR)に対して、濃度少なくとも10重量%のCr、濃度少なくとも2.5重量%のMn、濃度少なくとも2.0重量%のAlおよび濃度少なくとも2.0重量%のSiからなることを特徴とする請求項48に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項51】
前記合金化元素Rは、B、C、N、P、Ga、Ge、As、In、Sn、Sb、Pb、Sc、La、Y、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Auおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項48に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項52】
前記多層酸化物膜は、前記金属P、前記合金化金属Q、前記合金化元素Rおよびそれらの混合物からなる群から選択される一種以上の元素を更に含むことを特徴とする請求項51に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項53】
金属表面に、金属微粉化腐食に耐性がある合金組成物を提供する前記工程は、
a)金属微粉化腐食に耐性がある前記合金組成物の前記金属表面を構築する工程;
b)金属微粉化腐食に耐性がある前記合金組成物を有する前記金属表面を、鋼鉄またはニッケルベース合金の一層以上の他の層と、外側層として共押出し加工する工程;
c)前記金属表面を、金属微粉化腐食に耐性がある前記合金組成物で被覆する工程;および
d)前記工程a)、b)およびc)の組み合わせ
からなる群から選択される工程を含むことを特徴とする請求項48に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項54】
前記被覆工程c)は、溶射、プラズマ溶着、化学蒸着およびスパッタリングからなる群から選択されることを特徴とする請求項53に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項55】
前記合金組成物は、厚さ10〜200ミクロンであることを特徴とする請求項54に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項56】
前記多層酸化物膜は、前記合金組成物を炭素過飽和の金属微粉化環境で用いる際に、現場で形成されることを特徴とする請求項48に記載の金属微粉化の防止方法。
【請求項57】
前記合金組成物は、炭素過飽和の環境に暴露される製油所装置および反応器系の内側表面を構成することを特徴とする請求項48に記載の金属微粉化の防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−540842(P2008−540842A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511125(P2008−511125)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/013515
【国際公開番号】WO2006/121561
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】