説明

金属材料の余寿命評価方法及び変形量評価方法

【課題】材料寿命及び変形量を広範囲にわたり、高精度で安定して評価可能な金属材料の余寿命評価方法及び変形量評価方法を提供する。
【解決手段】試験材料の材料寿命の進行度に対する結晶方位分布を結晶方位分布計測手段が計測し、結晶方位分布を結晶方位分布定量化手段が定量化して、定量化した結晶方位分布と材料寿命の進行度との関係を表す第1のマスターカーブをマスターカーブ導出手段が導出してデータベースに格納する。続いて、試験材料と同じ材料からなる、余寿命評価を行う調査材料の結晶方位分布を結晶方位分布計測手段が計測し、結晶方位分布を結晶方位分布定量化手段が定量化する。続いて、データベースに格納した第1のマスターカーブのデータを余寿命判定手段が読み出して、第1のマスターカーブに、定量化した調査材料の結晶方位分布を当てはめて、調査材料の余寿命を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガスタービンなどの機器部品を構成する金属材料の余寿命を評価する余寿命評価方法、変形量を評価する変形量評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービンなどの機器部品を構成する金属材料としては、耐熱鋼やNi基耐熱合金などが用いられている。このような金属材料の余寿命を評価する方法としては、例えば、クリープ過程で生成する粒界上のボイドを評価するAパラメータ法、析出物の形態変化から余寿命を評価する金属組織学的手法、機器部品の一部からクリープ試験片を採取してクリープ試験を行い評価する機械試験法、材料の硬さの変化から評価する硬さ法、電気抵抗の変化から評価する電気抵抗法などがある。
【0003】
しかし、上述した評価方法では、以下に示すような問題がある。
【0004】
Aパラメータ法は、クリープボイドが発生、成長する寿命の最終段階でしか適用できず、クリープボイドの生じにくい材料では適用できない。金属組織学的手法は、析出物の形態変化が起こりにくい環境(析出物の形態変化がほとんど起こらない温度域)で使用されている材料については適用できず、急激に組織変化する環境(その材料にとって十分に高い温度域)で使用されている材料では計測誤差が大きくなり、さらには、析出物の生じない材料には適用できない。機械試験法は、試験に長時間を要し、機器部品からの試験片の採取は形状的な制約が多く、クリープ損傷が最も激しい部位からの試験片の採取が困難な場合がある。硬さ法は、材料の変形量に対する硬さの変化が小さい材料では計測誤差が大きくなる。電気抵抗法は、抵抗値の変化に敏感でノイズに左右されやすく、測定誤差が大きくなりやすい。
【0005】
そこで、近年、例えば特許文献1に示すような余寿命評価方法が提案されている。この評価方法は、まず、事前に、特定材料の試験材料の材料寿命の加速試験(例えば疲労試験)を行い、一定の材料寿命の進行度に対する結晶方位差のデータを事前に採取し、材料寿命の進行度と結晶方位差との関係を表すマスターカーブを作成しておく。現実に材料寿命の進行が生じた試験材料と同種の調査材料の結晶方位差を測定し、この値を前記マスターカーブに代入して、調査材料の材料寿命の進行度を予測して、破断に至るまでの余寿命を予測する。
【0006】
この評価方法は、結晶粒内における結晶方位差をEBSP(Electron Back-Scatter Diffraction Pattern:後方散乱電子回折像)法を用いて計測し、その値から導出されるKAM(Kernel Average Misorientation)値を材料寿命の進行度と関連付ける方法である。
【0007】
しかしながら、粒内の任意の2点間における結晶方位の角度差は、寿命末期の材料においても数度程度しかないため、材料の寿命末期でしか十分な評価精度が得られないばかりか、計測誤差の影響を受けやすく、データの安定性と信頼性の確保が難しい。
【特許文献1】特開2004−3922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、材料寿命及び変形量を広範囲にわたり、高精度で安定して評価可能な金属材料の余寿命評価方法及び変形量評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る金属材料の余寿命評価方法は、試験材料の材料寿命の進行度に対する結晶方位分布を結晶方位分布計測手段が計測し、計測された結晶方位分布を結晶方位分布定量化手段が定量化して、この定量化した結晶方位分布と材料寿命の進行度との関係を表す第1のマスターカーブをマスターカーブ導出手段が導出してデータベースに格納する格納ステップと、前記試験材料と同じ材料からなる、余寿命評価を行う調査材料の結晶方位分布を前記結晶方位分布計測手段が計測し、計測された結晶方位分布を結晶方位分布定量化手段が定量化する計測ステップと、前記格納ステップで格納した前記第1のマスターカーブのデータを余寿命判定手段がデータベースから読み出して、読み出した第1のマスターカーブに、前記計測ステップで定量化した前記調査材料の結晶方位分布を当てはめて、前記調査材料の余寿命を判定する判定ステップと、を具備することを特徴としている。
【0010】
本発明の一態様に係る金属材料の変形量評価方法は、試験材料の変形量に対する結晶方位分布を結晶方位分布計測手段が計測し、計測された結晶方位分布を結晶方位分布定量化手段が定量化して、この定量化した結晶方位分布と試験材料の変形量との関係を表す第1のマスターカーブをマスターカーブ導出手段が導出してデータベースに格納する格納ステップと、前記試験材料と同じ材料からなる、変形量評価を行う調査材料の結晶方位分布を前記結晶方位分布計測手段が計測し、計測された結晶方位分布を結晶方位分布定量化手段が定量化する計測ステップと、前記格納ステップで格納した前記第1のマスターカーブのデータを変形量判定手段がデータベースから読み出して、読み出した第1のマスターカーブに、前記計測ステップで定量化した前記調査材料の結晶方位分布を当てはめて、前記調査材料の変形量を判定する判定ステップと、を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、材料寿命及び変形量を広範囲にわたり、高精度で安定して評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では本発明の実施形態を図面に基づいて述べるが、それらの図面は図解のために提供されるものであり、本発明はそれらの図面に限定されるものではない。
【0013】
金属材料の結晶方位は、EBSP法によって計測することができる。EBSP法は、SEMの反射電子回折における菊池線のパターンを解析して、金属材料の任意の点における結晶方位を計測する方法である。この方法を利用した結晶方位の全自動解析システムとしてOIM(ORIENTATION IMAGING MICROSCOPY)システムが開発されている。OIMシステムは、金属材料の数μm間隔で規則的に配置された多数の測定点(通常、数万点〜数十万点)の結晶方位を計測するシステムである。これにより、観察面全体の結晶方位の情報を面情報として得ることができる。このOIMシステムを利用し、面心立方構造の固溶強化型Ni基耐熱超合金(ハステロイX、ハステロイは登録商標)を使って、クリープ損傷の進行と結晶方位分布の変化との関係を図1に示す。
【0014】
図1は、クリープ寿命消費率が0%の試験材(新材)、クリープ寿命消費率が100%の試験材(クリープ破断材)及びそれらの間の寿命消費率の試験材(クリープ中断材)について、応力軸方向から見た逆極点図である。3つの各試験材について、評価対象部位から試験片を切り出し、研磨仕上げをしてSEMに配置し、OIMシステムで応力軸方向から見た結晶方位分布をそれぞれ計測したものである。クリープ寿命消費率は、破断寿命に対するクリープ時間の比から算出される。
【0015】
図1に示すように、新材、クリープ中断材、クリープ破断材の順にクリープ損傷が進行するにつれて、結晶方位分布が変化している。具体的には、応力軸方向に対して<101>の結晶方位をもつ結晶粒の比率が減少し、<111>の結晶方位をもつ結晶粒の比率が増加し、<001>の結晶方位をもつ結晶粒の比率が増加している。この結晶方位分布の変化は、シュミット因子と関係している。<101>近傍の結晶方位をもつ結晶粒は、変形に伴って結晶が回転し、その結果シュミット因子が増加して、さらに変形していく。この変形にともない、<101>近傍の結晶方位をもつ結晶粒は、優先的に変形して結晶方位が変化して、<101>近傍の結晶方位をもつ結晶粒が減少していく。
【0016】
本発明者らは、このようなクリープ損傷の進行にともなう結晶方位分布の変化を定量化するパラメータとして、結晶方位分布パラメータP<u v w>, xを考案した。全測定点の数に対して、応力軸と特定の結晶方位<uvw>とのなす角度がX°以内である測定点の数の比率を結晶方位分布パラメータP<u v w>, xと定義する。
【0017】
ここで、応力軸方向に対する結晶方位が<101>の場合の結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, xを、クリープ寿命消費率に対してプロットしたグラフを図2に示す。
【0018】
図2は、結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, xと、クリープ寿命消費率との相関関係を示すマスターカーブである。図2と、シュミット因子の分布から、結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, xにおける角度Xは15°前後であることが好ましい。以下、本実施形態では、角度Xを15°とする。
【0019】
よって、事前に、試験材料の材料寿命の消費試験を行い、クリープ損傷の進行にともなう結晶方位分布の変化を結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15で定量化し、この結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープ寿命消費率(材料寿命の進行度)との相関関係を示すマスターカーブを予め作成しておけば、現実に材料寿命の進行が生じた測定すべき調査材料の結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15を計測して、これを前記マスターカーブに当てはめることで、調査材料のクリープ寿命消費率を推定し、材料の余寿命を予測することができる。
【0020】
[金属材料の余寿命評価方法]
以下、本実施形態に係る余寿命評価方法について説明するが、ここで、この評価方法で使用する余寿命評価装置について説明する。
【0021】
図3は、本実施形態に係る余寿命評価方法で用いる余寿命評価装置である。
【0022】
余寿命評価装置10は、プログラムデータベース20に格納されたプログラムを制御手段30により実行するコンピュータ等によって構成される。
【0023】
制御手段30は、内部での種々の演算処理を実行するCPU等の演算手段、システム情報等が記憶されたROM等の不揮発性メモリや更新可能に情報を記憶するRAM等の半導体メモリで構成された記憶手段、および内部での種々の動作や外部との情報授受を司る制御手段等を有する。また、制御手段30は、入出力インターフェース40からの入力やインストールされたプログラムの内容等に応じて様々な情報処理を実行するものとなっており、後述の動作における各種演算の処理を実行したり、各構成部を制御する中核を担う。
【0024】
また、余寿命評価装置10は、コンピュータ等が一般に備えられるキーボードやポインティング・デバイス等で構成される、使用者等による文字入力や選択入力等を受け付けて制御手段30等へ供給する入出力インターフェース40を備えている。さらに、余寿命評価装置10は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等で構成される、制御手段30による制御の下で所定の情報表示をする表示手段60を備えている。また、余寿命評価装置10は、ハードディスク等の記憶手段で構成される、プログラムデータベース20や演算データベース50等を備えている。
【0025】
演算データベース50は、寿命評価に係る演算を実行するために必要なデータを収納し、例えば、後述するマスターカーブ導出手段24で導出された各種マスターカーブに関するデータ(例えば、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すデータなど)を格納している。なお、演算データベース50に収納されるデータはこれら以外のデータも必要に応じて収納することができる。
【0026】
そして、上記した各構成部は、システムバス70で接続されている。
【0027】
次に、プログラムデータベース20に格納された各種機能手段について説明する。
【0028】
プログラムデータベース20には、機能手段として、結晶方位分布計測手段21、GAM値計測手段22、結晶方位分布定量化手段23、マスターカーブ導出手段24、余寿命判定手段25が格納されている。
【0029】
結晶方位分布計測手段21は、試験材料や調査材料の結晶方位分布を計測するものであり、EBSP法を利用したOIMシステムを備えている。SEMで取得した観察面全体の結晶方位の情報に基づいて、応力軸方向から見た特定の結晶方位<uvw>について結晶方位分布を計測する。
【0030】
GAM値計測手段22は、試験材料や調査材料のGAM(Grain Average Misorientation)値を計測するものである。なお、通常、EBSP法を用いた計測機器においては、GAM値計測手段22もOIMシステムを備えている。よってGAM値計測手段22は、結晶方位分布計測手段21によって置き換えることもできる。
【0031】
結晶方位分布定量化手段23は、結晶方位分布計測手段21によって計測された結晶方位分布を結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15で定量化するものである。
【0032】
マスターカーブ導出手段24は、結晶方位分布定量化手段23で定量化された結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15に基づいて、各種マスターカーブを導出するものであり、例えば、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すマスターカーブ、GAM値とクリープ寿命消費率との相関関係を表すマスターカーブを導出する。
【0033】
余寿命判定手段25は、演算データベース50から、目的に応じたマスターカーブのデータ(例えば、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すデータなど)を読み出して、このマスターカーブのデータと、結晶方位分布定量化手段23で定量化された調査材料の結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とに基づいて、調査材料のクリープ寿命消費率を推定し、余寿命を判定するものである。
【0034】
なお、上記した余寿命評価装置10における各種機能手段は、上記したように、メモリやHDD(Hard Disk Drive)などの適宜なプログラムデータベース20等の記憶装置に格納したプログラムとして実現してもよいし、ハードウェアとして実現してもよい。プログラムとして実現する場合には、余寿命評価装置10の制御手段30がプログラム実行に合わせてプログラムデータベース20より該当するプログラムを制御手段30のメモリ等に読み出して、これを実行することとなる。
【0035】
この余寿命評価装置10を用いて、本発明の一実施形態に係る金属材料の余寿命評価方法について図4を参照して説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る余寿命評価方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0036】
まず、試験材料として、面心立方構造の固溶強化型Ni基耐熱超合金(ハステロイX、ハステロイは登録商標)からなる新材、クリープ中断材、クリープ破断材を用意する。新材、クリープ中断材、クリープ破断材の各試験材について、評価対象部位から試験片をそれぞれ切り出し、研磨仕上げをして、SEMに配置し、観察面全体の結晶方位の情報を入出力インターフェース40に入力する。
【0037】
続いて、余寿命評価装置10は、制御手段30によって結晶方位分布計測手段21を機能させ、結晶方位分布計測手段21が、入出力インターフェース40から取得した観察面全体の結晶方位の情報に基づいて、結晶方位分布を計測する(ステップS101)。図1で説明したように、応力軸方向に対して<101>の結晶方位をもつ結晶粒の比率が減少し、<111>の結晶方位をもつ結晶粒の比率が増加し、<001>の結晶方位をもつ結晶粒の比率が増加していることから、応力軸方向に対する結晶方位として<101>、<111>、<001>を選定する。
【0038】
余寿命評価装置10は、制御手段30によって結晶方位分布定量化手段23を機能させ、結晶方位分布定量化手段23が、3方位(<101>、<111>、<001>)の結晶方位分布を結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, 15、結晶方位分布パラメータP<1 1 1>, 15、結晶方位分布パラメータP<0 0 1>, 15でそれぞれ定量化する(ステップS102)。
【0039】
続いて、マスターカーブ導出手段24が、結晶方位分布定量化手段23によって定量化された結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, 15、結晶方位分布パラメータP<1 1 1>, 15、結晶方位分布パラメータP<0 0 1>, 15に基づいて、クリープ寿命消費率との相関関係を示すマスターカーブ(図5、図6、図7参照)を導出する(ステップS103)。図5は、結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すグラフである。図6は、結晶方位分布パラメータP<1 1 1>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すグラフである。図7は、結晶方位分布パラメータP<0 0 1>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すグラフである。マスターカーブは、<101>、<111>、<001>のうち、少なくとも一つ以上について導出すればよいが、本実施形態のように、3方位全てのマスターカーブを導出しておくことが好ましい。マスターカーブ導出手段24で導出された結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すデータ、結晶方位分布パラメータP<1 1 1>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すデータ、結晶方位分布パラメータP<0 0 1>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すデータは、演算データベース50に格納される(ステップS104)。
【0040】
次に、上述した試験材料と同種の材料からなり、現実に材料寿命が進行している測定すべき調査材料の評価対象部位から試験片を切り出し、この試験片を樹脂(例えば導電性のSEM観察用樹脂)に埋め込み、研磨仕上げをして、SEMに配置して観察し、観察面全体の結晶方位の情報を入出力インターフェース40に入力する。評価対象部位から試験片を切り出す際には、主たる応力軸方向に対して垂直な面が観察面となるように切り出すことが好ましい。試験片の形状は、制限されず、例えば円筒状、直方体状、楔状のいずれでもよく、観察面として数mm×数mm程度の面積を備えていればよい。試験片の観察面が小さすぎると、計測対象となる結晶粒の個数が少なすぎて、計測したデータのばらつきが生じやすい。また、試験片に研磨仕上げをした場合、研磨時に試験片表面に与えるひずみが、結晶粒内に微小な結晶方位のずれを発生させる場合があるため、研磨した後に、試験片表面を酸などで溶出させることが好ましい。
【0041】
続いて、試験材料と同様にして、結晶方位分布計測手段21が、結晶方位分布を計測する(ステップS105)。試験材料と同様に、応力軸方向に対する結晶方位として、<101>、<111>、<001>を選定する。
【0042】
続いて、試験材料と同様にして、結晶方位分布定量化手段23が、結晶方位分布計測手段21によって計測された調査材料の結晶方位分布を結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, 15、結晶方位分布パラメータP<1 1 1>, 15、結晶方位分布パラメータP<0 0 1>, 15で定量化する(ステップS106)。
【0043】
次に、余寿命判定手段25が、演算データベース50から、結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すデータ、結晶方位分布パラメータP<1 1 1>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すデータ、結晶方位分布パラメータP<0 0 1>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すデータを取得し、これらマスターカーブに結晶方位分布定量化手段23によって定量化された調査材料の結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, 15、結晶方位分布パラメータP<1 1 1>, 15、結晶方位分布パラメータP<0 0 1>, 15をそれぞれ代入して、余寿命を判定する(ステップS107)。本実施形態では、<101>、<111>、<001>の3方位についてそれぞれマスターカーブを導出しているため、マスターカーブ上で、クリープ寿命消費率との相関が最もよいマスターカーブを1つ選んで、調査材料のクリープ寿命消費率を推定する。もしくは、相関の程度がいずれのマスターカーブも同程度の場合には、各マスターカーブから得られたクリープ寿命消費率を平均して推定する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る金属材料の余寿命評価方法は、EBSP法を用いて結晶方位分布を計測し、これを結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15で定量化して、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すマスターカーブから、調査材料の材料寿命の進行度を推定するものである。
【0045】
この評価方法によれば、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15は、寿命初期から中期においてクリープ寿命消費率との相関がよいため、寿命初期から中期の広範囲において、精度のよい余寿命を予測することができる。
【0046】
また、調査材料の評価対象部位が複雑形状や薄肉部位であっても、試験片は数mm程度の大きさがあればよいため、試験片の採取は容易であり、材料の局所的な損傷状態も本発明の評価方法で評価することができる。
【0047】
なお、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を示すマスターカーブ(図5〜7参照)を用いて、調査材料の余寿命を評価したが、以下に示すように、GAM値を用いて評価することもできる。
【0048】
図8は、GAM値とクリープ寿命消費率との相関関係を表すマスターカーブである。GAM値は、下記式:で定義される。
【数1】

【0049】
式中、Bkはk番目の結晶粒に含まれる全隣接2点間の方位差の平均値を表し、Akはk番目の結晶粒の面積を表し、Aは測定領域の全結晶粒の面積(ΣAk)を表し、mは結晶粒の数を表す。
【0050】
GAM値は、寿命中期から末期においてクリープ寿命消費率との相関がよく、寿命中期から末期において、高精度で余寿命を推定することができる。
【0051】
上述したように、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15は、寿命初期から中期においてクリープ寿命消費率との相関がよいため、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とGAM値とを組み合わせることで、より広範囲の寿命範囲について高精度で評価できる。
【0052】
以下に、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とGAM値とを用いた余寿命評価方法について、図3の余寿命評価装置を使用し、図4を参照して説明する。結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15を用いた余寿命評価方法については、上述したとおりであるので、ここでは簡略もしくは一部省略して説明する。
【0053】
まず、試験材料として、新材、クリープ中断材、クリープ破断材を用意し、評価対象部位から試験片をそれぞれ切り出し、研磨仕上げをして、SEMに配置し、観察面全体の結晶方位の情報を入出力インターフェース40に入力する。
【0054】
続いて、結晶方位分布計測手段21が、入出力インターフェース40から取得した観察面全体の結晶方位の情報に基づいて、結晶方位分布を計測する(ステップS101)。応力軸方向に対する結晶方位として<101>、<111>、<001>を選定する。
【0055】
これら3方位の結晶方位をもつ結晶粒について、結晶方位分布定量化手段23が結晶方位分布を結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15で定量化し(ステップS102)、マスターカーブ導出手段24が結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を示すマスターカーブ(図5〜図7参照)を導出する(ステップS103)。<uvw>は、<101>、<111>、<001>に対応している。
【0056】
続いて、GAM値計測手段22が、試験材料の試験片のGAM値を計測し、マスターカーブ導出手段24がGAM値とクリープ寿命消費率との相関関係を示すマスターカーブ(図8参照)を導出する。
【0057】
結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を表すデータと、GAM値とクリープ寿命消費率との相関関係を表すデータは、演算データベース50に格納される(ステップS104)。
【0058】
次に、調査材料の評価対象部位から試験片を切り出し、この試験片を樹脂(例えば導電性のSEM観察用樹脂)に埋め込み、研磨仕上げをして、SEMに配置し、観察面全体の結晶方位の情報を入出力インターフェース40に入力する。
【0059】
続いて、試験材料と同様にして、結晶方位分布計測手段21が結晶方位分布を計測し(ステップS105)、結晶方位分布定量化手段23が結晶方位分布を結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15で定量化する(ステップS106)。
【0060】
続いて、試験材料と同様にして、GAM値計測手段22が調査材料のGAM値を計測する。
【0061】
次に、余寿命判定手段25が、演算データベース50から、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープ寿命消費率との相関関係を示すマスターカーブのデータ(図5〜図7参照)と、GAM値とクリープ寿命消費率との相関関係を示すマスターカーブのデータ(図8参照)を取得し、これらマスターカーブに結晶方位分布定量化手段23によって定量化された調査材料の結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15と、GAM値計測手段22で計測された調査材料のGAM値をそれぞれ代入して、調査材料のクリープ寿命消費率を推定し、余寿命を判定する(ステップS107)。調査材料を計測して得られた結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15が、予め作成した結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープ寿命消費率との相関を示すマスターカーブ(図5〜図7参照)上で、クリープ寿命消費率との相関が低い領域に位置した場合、GAM値とクリープ寿命消費率との相関を示すマスターカーブ(図8参照)で補完する。これによって、より広い寿命範囲での高精度の余寿命評価が可能となる。
【0062】
[金属材料の変形量評価方法]
次に、本発明の一実施形態に係る金属材料の変形量評価方法について、図9の変形量評価装置を用いて説明する。図9の変形量評価装置100は、図3に示す余寿命評価装置とは、余寿命判定手段の代わりに、変形量判定手段26を備えた点以外は、図3とほぼ同様の構成であり、同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を簡略化または省略する。
【0063】
マスターカーブ導出手段24は、ここでは、結晶方位分布定量化手段23で定量化された結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15に基づいて、例えば、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープひずみ量との相関関係を表すマスターカーブ、GAM値とクリープひずみ量との相関関係を表すマスターカーブを導出する。
【0064】
変形量判定手段26は、演算データベース50から、目的に応じたマスターカーブのデータ(例えば、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープひずみ量との相関関係を表すデータなど)を読み出して、このマスターカーブのデータと、結晶方位分布定量化手段23で定量化された調査材料の結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とに基づいて、調査材料の変形量を判定するものである。
【0065】
この変形量評価装置100を用いた変形量評価方法について図10を参照して説明する。図10は、本発明の一実施形態に係る変形量評価方法の一例を説明するためのフローチャートである。変形量評価方法は、上述した余寿命評価方法とは、クリープ寿命消費率の代わりにクリープひずみ量を用いる点と、余寿命を評価する代わりに変形量を評価する点以外は、余寿命評価方法とほぼ同様であるため、同じ部分についてはその説明を簡略化または省略する。
【0066】
まず、試験材料として、新材、クリープ中断材、クリープ破断材を用意し、評価対象部位から試験片をそれぞれ切り出し、研磨仕上げをしてSEMに配置し、観察面全体の結晶方位の情報を入出力インターフェース40に入力する。
【0067】
続いて、結晶方位分布計測手段21が、入出力インターフェース40から取得した観察面全体の結晶方位の情報に基づいて、結晶方位分布を計測する(ステップS201)。応力軸方向に対する結晶方位として<101>、<111>、<001>を選定する。
【0068】
これら3方位の結晶方位について、結晶方位分布定量化手段23が結晶方位分布を結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15で定量化し(ステップS202)、マスターカーブ導出手段24が結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープひずみ量との相関関係を示すマスターカーブ(図11、図12、図13参照)を導出する(ステップS203)。<uvw>は、<101>、<111>、<001>に対応する。
【0069】
結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープひずみ量との相関関係を示すデータは、演算データベース50に格納される(ステップS204)。
【0070】
次に、上述した試験材料と同種の材料からなる調査材料の評価対象部位から、試験片を切り出し、この試験片を樹脂(例えば導電性のSEM観察用樹脂)に埋め込み、研磨仕上げをして、SEMに配置し、観察面全体の結晶方位の情報を入出力インターフェース40に入力する。
【0071】
続いて、試験材料と同様にして、結晶方位分布計測手段21が調査材料の結晶方位分布を計測し(ステップS205)、結晶方位分布定量化手段23が結晶方位分布を結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15で定量化する(ステップS206)。
【0072】
次に、変形量判定手段26が、演算データベース50から、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープひずみ量との相関関係を示すマスターカーブのデータ(図11、図12、図13参照)を取得し、これらマスターカーブに結晶方位分布定量化手段23によって定量化された調査材料の結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15を代入して、調査材料のクリープひずみ量を推定し、変形量を判定する(ステップS207)。
【0073】
本実施形態では、<101>、<111>、<001>の3方位についてそれぞれマスターカーブを導出しているため、マスターカーブ上で、クリープひずみ量との相関が最もよいマスターカーブを選んで、調査材料のクリープひずみ量を推定する。もしくは、相関の程度がいずれのマスターカーブも同程度の場合には、各マスターカーブから得られたクリープひずみ量を平均して推定する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る金属材料の変形量評価方法は、結晶方位分布の変化を結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15で定量化し、この結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープひずみ量との相関関係を示すマスターカーブを予め作成しておき、調査材料の結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15を計測して、これを前記マスターカーブに当てはめることで、調査材料の変形量を推定するものである。この評価方法によれば、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15は、高ひずみ域を除いた範囲でクリープひずみ量との相関がよいため、このような広い範囲で精度よく変形量を予測することができる。
【0075】
なお、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープひずみ量との相関を示すマスターカーブ(図11〜図13参照)を用いて、変形量を評価したが、これに加えて、以下に示すように、GAM値を用いて評価することもできる。
【0076】
図14は、GAM値とクリープひずみ量との相関関係を示す図である。GAM値は高ひずみ域においてクリープひずみ量との相関がよい。一方、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15は、上述したように、高ひずみ域を除いた範囲でクリープひずみ量との相関がよい。このため、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とGAM値とを組み合わせることで、より広範囲について高精度で変形量を評価できる。
【0077】
以下に、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とGAM値とを用いた変形量評価方法について図10を参照して説明する。結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15を用いた変形量評価方法については、上述したとおりであるので、ここでは簡略もしくは一部省略して説明する。
【0078】
まず、試験材料として、新材、クリープ中断材、クリープ破断材を用意し、評価対象部位から試験片をそれぞれ切り出し、研磨仕上げをしてSEMに配置し、観察面全体の結晶方位の情報を入出力インターフェース40に入力する。
【0079】
続いて、結晶方位分布計測手段21が、結晶方位分布を計測する(ステップS201)。応力軸方向に対する結晶方位として<101>、<111>、<001>を選定する。
【0080】
これら3方位の結晶方位について、結晶方位分布定量化手段23が結晶方位分布を結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15で定量化し(ステップS202)、マスターカーブ導出手段24が結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープひずみ量との相関関係を示すマスターカーブ(図11〜図13参照)を導出する(ステップS203)。<uvw>は、<101>、<111>、<001>に対応する。
【0081】
続いて、GAM値計測手段22が、試験材料の試験片のGAM値を計測し、マスターカーブ導出手段24がGAM値とクリープひずみ量との相関関係を示すマスターカーブ(図14参照)を導出する。
【0082】
結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープひずみ量との相関関係を示すデータ(図11〜図13参照)と、GAM値とクリープひずみ量との相関関係を示すデータ(図14参照)は、演算データベース50に格納される(ステップS204)
【0083】
次に、調査材料の評価対象部位から、試験片を切り出し、この試験片を樹脂(例えば導電性のSEM観察用樹脂)に埋め込み、研磨仕上げをして、SEMに配置し、観察面全体の結晶方位の情報を入出力インターフェース40に入力する。
【0084】
続いて、試験材料と同様にして、結晶方位分布計測手段21が結晶方位分布を計測し(ステップS205)、結晶方位分布定量化手段23が結晶方位分布を結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15で定量化する(ステップS206)。
【0085】
続いて、試験材料と同様にして、GAM値計測手段22が調査材料のGAM値を計測する。
【0086】
続いて、変形量判定手段26が、演算データベース50から、結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープひずみ量との相関関係を示すマスターカーブのデータ(図11〜図13参照)と、GAM値とクリープひずみ量との相関関係を示すマスターカーブのデータ(図14参照)を取得し、これらマスターカーブに結晶方位分布定量化手段23によって定量化された調査材料の結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15と、GAM値計測手段22で計測された調査材料のGAM値をそれぞれ代入して、調査材料のクリープひずみ量を判定する(ステップS207)。調査材料を計測して得られた結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15が、予め作成した結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15とクリープひずみ量との相関を示すマスターカーブ(図11〜図13参照)上で、クリープひずみ量との相関が低い領域に位置した場合、GAM値とクリープひずみ量との相関を示すマスターカーブ(図14参照)で補完する。これによって、より広い範囲で、高精度で変形量評価が可能となる。
【0087】
以上、本発明の金属材料の余寿命評価方法、変形量評価方法で説明したのは、材料の変形方向が既に知られているものであるが、調査材料の変形方向が不明である場合は、図15に示すような極点図を用いて変形方向を判定できる。この場合、図3の余寿命評価装置、もしくは図9の変形量評価装置において、プログラムデータベース20に機能手段として変形方向判定手段を加えて変形方向の判定に使用する。変形方向判定手段は、結晶方位分布計測手段21によって計測された結晶方位分布に基づいて、図15の極点図を導出し、この極点図から、調査材料の主たる変形方向を判定するものである。
【0088】
図15は、新材、クリープ破断材における{001}、{011}および{111}についての極点図である。ハステロイX(ハステロイは登録商標)からなる新材、クリープ破断材を用意し、評価対象部位から試験片をそれぞれ切り出し、研磨仕上げをしてSEMに配置し、観察面全体の結晶方位の情報を入出力インターフェース40に入力する。入出力インターフェース40から取得した観察面全体の結晶方位の情報に基づいて、結晶方位分布計測手段21が結晶方位分布を計測し、この結晶方位分布に基づいて、変形方向判定手段が図15に示すような極点図を導出する。図15のクリープ破断材において、{011}の強度が低く、{111}および{001}の強度が高い。このような方向は、極点図内のRD方向であり、この方向が主たるクリープ変形方向と判定できる。
【0089】
図15では、極点図内に顕著な分布が認められるが、このような分布が認められず、かつ、GAM値が小さい場合には、変形が少ないと推定できる。一方、GAM値が大きいにもかかわらず、{011}、{111}および{011}などの極点図内に顕著な分布が認められない場合は、多軸的な変形であると推定できる。ここでは、クリープ変形を例に挙げて説明したが、これ以外に、塑性変形(引張、圧縮、曲げなど)においても同様に適用できる。
【0090】
調査材料の変形方向が不明な場合に、調査材料の変形方向を推定することで、その方向に対する結晶方位分布を計測でき、これを定量化した結晶方位分布パラメータP<u v w>, 15の導出が可能となる。これにより、上述した余寿命評価方法、変形量評価方法を適用すれば、材料寿命の進行度や変形量を予測することができる。
【0091】
次に他の実施形態にかかる金属材料の余寿命評価方法について説明する。この実施形態では、前述した実施形態における評価精度をさらに向上させることが可能となる。図3で示した、結晶方位分布とクリープ損傷の相関データについて、計測視野内で比較的大きな結晶粒と小さな結晶粒それぞれを抽出してデータ評価した結果を図16に示す。図16において、実線が大きな結晶粒の場合、点線が小さな結晶粒の場合を示している。この図16に示されるように、大きな結晶粒の方が、パラメータPがクリープ損傷に対して敏感に変化している。
【0092】
したがって、前述した実施形態において、ある特定の大きさの結晶粒のデータのみ(この場合、所定の大きさ以上の大きさの大きな結晶粒のデータのみ)を抽出してデータを評価することで、クリープ余寿命の評価精度を向上させることができる。前述のとおり、結晶方位分布の変化はシュミット因子に基づく特定のすべり系の活動に起因していると考えられるが、各結晶粒の変形は試験片全体の形状に起因した拘束(隣接する粒による形状的拘束)を受けており、必ずしもシュミット因子から決定される理想的なすべり系のみが活動するわけではない。ところで、発明者らの実施した研究結果では、比較的大きい結晶粒の方が、シュミット因子から決定される理想的なすべり系での変形が生じやすいことが判明した。このため、このケースでは、大きな結晶粒のデータを抽出してデータを評価することが望ましい。
【0093】
なお、図16では<101>の例を示したが、<001>および<111>についても同様に大きな結晶粒の方がパラメータPがクリープ損傷に対して敏感に変化する結果が得られた。また、クリープひずみとの相関においても同様に大きな結晶粒の方がパラメータPがクリープひずみに対して敏感に変化した。したがって、クリープひずみ量から変形量を評価する場合においても、ある特定の大きさの結晶粒のデータのみを抽出して評価することで、評価精度を向上させることができる。
【0094】
また、前述したように、GAM値から金属材料の余寿命評価、金属材料の変形量評価を行う場合も、以下のようにして評価精度を向上させることが可能となる。
【0095】
図8に示した、GAM値とクリープ寿命消費率の相関データについて、計測視野内で比較的大きな結晶粒と小さな結晶粒とそれぞれを抽出してデータ評価した結果を図17に示す。図17において、実線が小さな結晶粒の場合、点線が大きな結晶粒の場合を示している。この図16に示されるように、本例においては小さな結晶粒の方が、大きな結晶粒に比べて全体的に大きなGAM値を示していた。前述のとおりGAM値は絶対値が比較的小さく、計測誤差に影響を受け易い。従って、GAM値が大きくなる特定の大きさの結晶粒だけを抽出してデータを評価すれば、GAMの絶対値が大きくなる分相対的に誤差の影響が小さくなり、評価精度を向上させることができる。GAM値は粒内の微小な方位差の程度を示す指標であり、粒内方位差は転位などの格子欠陥の増加に起因していると考えられる。ところで、粒界近傍は転位の発生源であるとともに転位の蓄積し易い領域でもある。従って、小さい結晶粒の方が結晶粒面積に対する粒界近傍面積の比率が高くなるため、GAM値も大きくなるものと考えられる。すなわち、このケースでは、小さな結晶粒のデータを抽出してデータを評価することが望ましい。
【0096】
なお、図17ではクリープ余寿命評価について示したが、クリープひずみの評価においても同様に小さな結晶粒の方がGAM値が大きくなり誤差の影響を小さくできるので、前述したように、GAM値から金属材料の変形量評価を行う場合も、ある特定の大きさの結晶粒のデータのみ(この場合、所定の大きさ以下の大きさの小さな結晶粒のデータのみ)を抽出してデータを評価することで、金属材料の変形量評価の評価精度を向上させることができる。
【0097】
次に、さらに他の実施形態について説明する。この実施形態は、粒内方位差の線分析を用いて変形方向を推測するものである。図18に模式的に示すように、直線状に並んだ計測点(図中黒い丸印で示す。)において、各結晶粒内における全ての隣接2点間での方位差を平均したものをMlineと定義する。発明者らは、ハステロイX(ハステロイは登録商標)材のクリープ中断試験材においてMlineと変形方向とのなす各θを図19のように定義して、クリープ損傷材におけるMlineとθの関係を評価した結果、図20のような関係を見出した。
【0098】
図20に示す関係を用いて、主たるクリープ変形方向を推定する方法の例を以下に示す。ハステロイX(ハステロイは登録商標)材からなる評価対象機器部品の、評価対象部位から試験片を切り出して、EBSPによってMlineを評価する。このときEBSP試料のSEM内での方向と、当該試料が切り出される前の評価対象機器部品内での方向との関係を見失わないように留意する必要がある。この試料においてMlineを複数の方向について評価し、Mlineが最も高い方向を見出せば、すなわちそれが観察面内における主たるクリープ変形方向である。このようにして、変形方向を推測することができるので、前述した金属材料の余寿命評価方法及び変形量評価において調査材料の変形方向が不明である場合に、上記の工程を加えることにより、調査材料の変形方向を知ることができる。
【0099】
次に、他の実施形態について説明する。図8に示した、GAMとクリープ寿命消費率の相関データについて、応力軸に対してそれぞれ<101>、<001>および<111>近傍の結晶方位をもつ結晶粒を抽出してデータ評価した結果を図21に示す。図21に示した例においては、<001>近傍に比べて<101>および<111>近傍の結晶粒を抽出して評価したGAM値の方が、クリープ寿命消費率がより小さい範囲から、クリープ寿命消費率と良い相関を示している。すなわち、このケースでは、<101>および<111>近傍の結晶粒を抽出してデータを評価することで、より広い寿命消費率範囲でのクリープ余寿命評価が可能になる。
【0100】
なお、図21ではクリープ余寿命評価について示したが、クリープひずみの評価においても同様に<001>近傍に比べて<101>および<111>近傍の結晶粒の方がGAM値とクリープひずみが、より広い範囲で相関するようになるので、前述したように、GAM値から金属材料の変形量評価を行う場合も、ある特定の結晶方位を持つ結晶粒のデータのみを抽出してデータを評価することで、より広い範囲での金属材料の変形量評価を行うことが可能となる。
【0101】
ところで、前述した各実施形態における結晶方位分布の評価では、EBSP法を用いて評価する場合について説明した。このEBSP法では微小で済むものの機器部品からのサンプル採取が必要である。一方、このような結晶方位分布の評価を、X線回折法にて行えば、非破壊での結晶方位分布の計測が可能となり、前述した各実施形態を非破壊で行うことが可能となる。
【0102】
なお、上述した各余寿命評価方法及び変形量評価方法では、面心立方構造の多結晶金属材料(ハステロイX)を用いて説明したが、体心立方構造や六方最密構造においても、これら評価方法を適用することができる。また、例えば単結晶材料や一方向凝固合金材料、内圧クリープのような多軸応力場における材料についても、結晶方位分布の変化が生じるものであれば、同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】新材、クリープ中断材およびクリープ破断材における応力軸方向から見た逆極点図。
【図2】結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, xとクリープ寿命消費率との関係を示すグラフ。
【図3】本発明の一実施形態に係る金属材料の余寿命評価装置の主要な構成を示す機能ブロック図。
【図4】本発明の一実施形態に係る余寿命評価方法の一例を説明するためのフローチャート。
【図5】結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, 15とクリープ寿命消費率との関係を示すグラフ。
【図6】結晶方位分布パラメータP<1 1 1>, 15とクリープ寿命消費率との関係を示すグラフ。
【図7】結晶方位分布パラメータP<0 0 1>, 15とクリープ寿命消費率との関係を示すグラフ。
【図8】GAM値とクリープ寿命消費率との関係を示すグラフ。
【図9】本発明の一実施形態に係る金属材料の変形量評価装置の主要な構成を示す機能ブロック図。
【図10】本発明の一実施形態に係る変形量評価方法の一例を説明するためのフローチャート。
【図11】結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, 15とクリープひずみ量との関係を示すグラフ。
【図12】結晶方位分布パラメータP<1 1 1>, 15とクリープひずみ量との関係を示すグラフ。
【図13】結晶方位分布パラメータP<0 0 1>, 15とクリープひずみ量との関係を示すグラフ。
【図14】GAM値とクリープひずみ量との関係を示すグラフ。
【図15】新材およびクリープ破断材における極点図。
【図16】結晶方位分布パラメータP<1 0 1>, 15のクリープ寿命消費率との相関における結晶粒径の影響を示すグラフ。
【図17】GAM値のクリープ寿命消費率との相関における結晶粒径の影響を示すグラフ。
【図18】粒内結晶方位差の線分析パラメータMlineの評価方法を説明するための模式図。
【図19】Mlineの評価方向とクリープ試験応力軸との為す角θの定義を説明するための模式図。
【図20】クリープ損傷材におけるMlineとθの相関を示すグラフ。
【図21】GAM値のクリープ寿命消費率との相関における結晶方位の影響を示すグラフ。
【符号の説明】
【0104】
10……余寿命評価装置、21……結晶方位分布計測手段、22……GAM値計測手段、23……結晶方位分布定量化手段、24……マスターカーブ導出手段、25……余寿命判定手段、26……変形量判定手段、100……変形量評価装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験材料の材料寿命の進行度に対する結晶方位分布を結晶方位分布計測手段が計測し、計測された結晶方位分布を結晶方位分布定量化手段が定量化して、この定量化した結晶方位分布と材料寿命の進行度との関係を表す第1のマスターカーブをマスターカーブ導出手段が導出してデータベースに格納する格納ステップと、
前記試験材料と同じ材料からなる、余寿命評価を行う調査材料の結晶方位分布を前記結晶方位分布計測手段が計測し、計測された結晶方位分布を前記結晶方位分布定量化手段が定量化する計測ステップと、
前記格納ステップで格納した前記第1のマスターカーブのデータを余寿命判定手段がデータベースから読み出して、読み出した第1のマスターカーブに、前記計測ステップで定量化した前記調査材料の結晶方位分布を当てはめて、前記調査材料の余寿命を判定する判定ステップと、
を具備することを特徴とする金属材料の余寿命評価方法。
【請求項2】
前記結晶方位分布計測手段が、EBSP(Electron Back-Scatter Diffraction Pattern)法を備えることを特徴とする請求項1に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項3】
前記結晶方位分布定量化手段が、全測定点の数に対して、応力軸と所定の結晶方位とのなす角度が所定の範囲である測定点の数の比率から結晶方位分布を定量化することを特徴とする請求項1または2に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項4】
前記結晶方位分布の代わりに、GAM(Grain Average Misorientation)値計測手段によって計測されたGAM値を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項5】
前記格納ステップのあとに、前記試験材料の材料寿命の進行度に対するGAM値をGAM値計測手段が計測して、GAM値と材料寿命の進行度との関係を表す第2のマスターカーブをマスターカーブ導出手段が導出してデータベースに格納するステップをさらに具備し、
前記計測ステップのあとに、前記調査材料のGAM値を前記GAM値計測手段が計測するステップをさらに具備し、
前記判定ステップが、前記第2のマスターカーブのデータを前記寿命判定手段がデータベースから読み出して、読み出した第2のマスターカーブに、計測した前記調査材料のGAM値を当てはめて、前記調査材料の余寿命を判定することをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項6】
試験材料の変形量に対する結晶方位分布を結晶方位分布計測手段が計測し、計測された結晶方位分布を結晶方位分布定量化手段が定量化して、この定量化した結晶方位分布と試験材料の変形量との関係を表す第1のマスターカーブをマスターカーブ導出手段が導出してデータベースに格納する格納ステップと、
前記試験材料と同じ材料からなる、変形量評価を行う調査材料の結晶方位分布を前記結晶方位分布計測手段が計測し、計測された結晶方位分布を結晶方位分布定量化手段が定量化する計測ステップと、
前記格納ステップで格納した前記第1のマスターカーブのデータを変形量判定手段がデータベースから読み出して、読み出した第1のマスターカーブに、前記計測ステップで定量化した前記調査材料の結晶方位分布を当てはめて、前記調査材料の変形量を判定する判定ステップと、
を具備することを特徴とする金属材料の変形量評価方法。
【請求項7】
前記結晶方位分布計測手段が、EBSP(Electron Back-Scatter Diffraction Pattern)法を備えることを特徴とする請求項6に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項8】
前記結晶方位分布定量化手段が、全測定点の数に対して、応力軸と所定の結晶方位とのなす角度が所定の範囲である測定点の数の比率から結晶方位分布を定量化することを特徴とする請求項6又は7に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項9】
前記結晶方位分布の代わりに、GAM(Grain Average Misorientation)値計測手段によって計測されたGAM値を用いることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項10】
前記格納ステップのあとに、前記試験材料の変形量に対するGAM値をGAM値計測手段が計測して、GAM値と試験材料との関係を表す第2のマスターカーブをマスターカーブ導出手段が導出してデータベースに格納するステップをさらに具備し、
前記計測ステップのあとに、前記調査材料のGAM値を前記GAM値計測手段が計測するステップをさらに具備し、
前記判定ステップが、前記第2のマスターカーブのデータを前記変形量判定手段がデータベースから読み出して、読み出した第2のマスターカーブに、計測した前記調査材料のGAM値を当てはめて、前記調査材料の変形量を判定することをさらに含むことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項11】
前記結晶方位分布計測手段は、試験材料の材料寿命の進行度に対する結晶方位分布を計測するとともに、さらに、計測された結晶方位に関して極点図を作成し、作成された極点図に基づいて主たる変形方向を判定する変形方向判定手段を有することを特徴とする請求項2に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項12】
前記結晶方位分布計測手段は、試験材料の材料寿命の進行度に対する結晶方位分布を計測するとともに、さらに、計測された結晶方位に関して極点図を作成し、作成された極点図に基づいて主たる変形方向を判定する変形方向判定手段を有することを特徴とする請求項7に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項13】
前記結晶方位分布計測手段により結晶方位分布を計測し、計測された結晶方位分布を前記結晶方位分布定量化手段により定量化する際に、
計測視野内における大きさが特定の大きさの結晶粒の結晶方位分布のデータのみを抽出することを特徴とする請求項1、2、3、5のいずれか1項に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項14】
前記特定の大きさの結晶粒が、計測視野内における大きさが所定の大きさ以上の結晶粒であることを特徴とする請求項13に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項15】
前記GAM値計測手段によるGAM値の計測において、計測視野内における大きさが特定の大きさの結晶粒のデータのみを抽出することを特徴とする請求項4又は5に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項16】
前記特定の大きさの結晶粒が、計測視野内における大きさが所定の大きさ以下の結晶粒であることを特徴とする請求項15に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項17】
前記GAM値計測手段によるGAM値の計測において、特定の方位を持つ結晶粒のデータのみを抽出することを特徴とする請求項4又は5に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項18】
前記特定の方位を持つ結晶粒が、主たる変形方向に対して<101>近傍の方位を持つ結晶粒であることを特徴とする請求項17に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項19】
前記特定の方位を持つ結晶粒が、主たる変形方向に対して<111>近傍の方位を持つ結晶粒であることを特徴とする請求項17に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項20】
前記晶方位分布計測手段により結晶方位分布を計測し、計測された結晶方位分布を前記結晶方位分布定量化手段により定量化する際に、
計測視野内における大きさが特定の大きさの結晶粒の結晶方位分布のデータのみを抽出することを特徴とする請求項6乃至8、10、12のいずれか1項に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項21】
前記特定の大きさの結晶粒が、計測視野内における大きさが所定の大きさ以上の結晶粒であることを特徴とする請求項20に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項22】
前記GAM値計測手段によるGAM値の計測において、計測視野内における大きさが特定の大きさの結晶粒のデータのみを抽出することを特徴とする請求項9又は10に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項23】
前記特定の大きさの結晶粒が、計測視野内における大きさが所定の大きさ以下の結晶粒であることを特徴とする請求項22に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項24】
前記GAM値計測手段によるGAM値の計測において、特定の方位を持つ結晶粒のデータのみを抽出することを特徴とする請求項9又は10に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項25】
前記特定の方位を持つ結晶粒が、主たる変形方向に対して<101>近傍の方位を持つ結晶粒であることを特徴とする請求項24に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項26】
前記特定の方位を持つ結晶粒が、主たる変形方向に対して<111>近傍の方位を持つ結晶粒であることを特徴とする請求項24に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項27】
変形が生じた金属材料からなる試験材料の各結晶粒内の直線状に並んだ複数の計測点のうち隣接する2点間での方位差を平均した値であるMlineと、前記試験材料の変形方向と前記直線状に並んだ複数の計測点の方向との為す角との相関を表す相関データを予め求める工程と、
前記試験材料と同じ材料からなる調査材料のMlineを、前記直線状に並んだ複数の計測点の方向を変えて複数回計測する工程と、
前記調査材料のMlineの計測結果を前記相関データに当てはめて、前記調査材料の変形方向を評価する工程と
を更に具備したことを特徴とする請求項1乃至5、13乃至19のいずれか1項に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項28】
前記Mlineの計測にEBSP法を用いることを特徴とする請求項27に記載の金属材料の余寿命評価方法。
【請求項29】
変形が生じた金属材料からなる試験材料の各結晶粒内の直線状に並んだ複数の計測点のうち隣接する2点間での方位差を平均した値であるMlineと、前記試験材料の変形方向と前記直線状に並んだ複数の計測点の方向との為す角との相関を表す相関データを予め求める工程と、
前記試験材料と同じ材料からなる調査材料のMlineを、前記直線状に並んだ複数の計測点の方向を変えて複数回計測する工程と、
前記調査材料のMlineの計測結果を前記相関データに当てはめて、前記調査材料の変形方向を評価する工程と
を更に具備したことを特徴とする請求項6乃至10、20乃至26のいずれか1項に記載の金属材料の変形量評価方法。
【請求項30】
前記Mlineの計測にEBSP法を用いることを特徴とする請求項29に記載の金属材料の変形量評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−92652(P2009−92652A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233497(P2008−233497)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】