説明

金属条材の曲げ加工装置、首折れ防止用支持クランプ装置、および曲部を備えた金属条材の製造方法

【課題】作業の労力・危険を軽減回避し、良好な生産性を確保しつつ曲げ加工時の首折れを防ぐ。
【解決手段】金属条材を加熱する手段と、金属条材を推進させる手段と、金属条材を把持すると共に金属条材の推進に伴い支軸を中心として旋回して金属条材に曲げモーメントを加えるクランプアームとを備えた金属条材の曲げ加工装置で、クランプアームよる把持部より後側の近接位置において金属条材の表面に当接して金属条材の首折れ変形を阻止する支持クランプを備える。支持クランプは、金属条材の曲げ外周側の表面に当接する閉成状態と、当該曲げ外周側表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な外爪と、金属条材の曲げ内周側の表面に当接する閉成状態と、当該曲げ内周側表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な内爪を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属条材の曲げ加工装置、首折れ防止用支持クランプ装置、並びに曲部を備えた金属条材の製造方法に係り、特に、鋼管のような金属条材を曲げ加工するときに生じることがある当該条材の折れ曲がり変形(いわゆる首折れ)を防ぐことが可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
石油やガス・各種液体などの流体を搬送するパイプとしてプラントや工場、発電所などの産業施設において、あるいは橋梁やスタジアム屋根など土木建築物の骨組構造材として金属条材が今日広く用いられている。これら金属条材のひとつである鋼管(金属管)は、規格化され予め所定形状になされた管(直管又はエルボ・ベンド等の異形管)が使用される一方で、施工対象に応じて直線状の管を曲げ加工した管(以下「曲げ管」と言う)も、様々な曲率・管路形状への要求に柔軟に対応できることから広範に使用されている。
【0003】
かかる曲げ管を製造する加工装置は、一般に、加工対象である金属管の一部を環状に加熱する誘導加熱コイルと、誘導加熱コイルに向け金属管を推進させる推進機構と、金属管を把持し支軸を中心として旋回することにより金属管の進路を弧状に規制するクランプアームとを備えている。加工にあたっては、クランプアームによって金属管の誘導加熱コイルより前端側(管先端側)を把持しながら誘導加熱コイルに向けて金属管を押し進める。クランプアームは、金属管の推進に伴い支軸を中心として旋回するが、これにより誘導加熱コイルによる金属管の加熱部に曲げモーメントが加わり、当該金属管を連続的に塑性変形させて弧を描くように曲げることが出来る。
【0004】
また、曲げ管を製造する場合、素材となる直管を単純に曲げただけでは、曲管部分の外周側の管厚(肉厚)が薄くなり、当該管に対する所要の強度・仕様を満たさなくなるおそれがある。そこで、上記曲げモーメントに加え、クランプアームを引き戻す方向へ力をかけることで管軸方向へ圧縮力を加え、肉厚の減少(減肉)を防ぐ加工処理が行われることがある。なお、前述のように圧縮力をかけずにクランプアームによる曲げモーメントのみによって直管を単純に曲げる加工が「単純曲げ」と称されるのに対し、このように圧縮力をかけながら行う曲げ加工は「圧縮曲げ」と称されることがある。
【0005】
一方、上記のような曲げ加工においては、加工対象である金属条材が、クランプアームにより把持された部分の近くで折れ曲がるように変形する、いわゆる首折れが生じることがある。この首折れは、金属条材を推進させる推力や圧縮曲げにおける圧縮力に起因して生じるもので、クランプアームによる把持部分の近くに大きな曲げモーメントがかかることから特に、曲げ角度が大きくなる(例えば90°に曲げるなど)につれ発生しやすく、単純曲げに比べ圧縮曲げにおいて生じやすい。
【0006】
このため、従来から上記のような首折れを防ぐ様々な提案がなされている(下記特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−245841号公報
【特許文献2】特開2011−125907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の首折れ防止技術では、加工時の作業効率(曲げ管の生産性)や作業時の危険性回避の点で未だ改良の余地を残している。
【0009】
具体的には、前記特許文献1の技術は、加工対象である金属条材の外周面に当接するアタッチメントをクランプアーム(先行側クランプ48)に装着することにより首折れを防ぐものであるが、このアタッチメントは曲げ加工の途中で加工中に手作業で装着するものであるから、作業効率が良好であるとは言えず、生産性の点から更なる技術の提供が望まれる。また、このアタッチメントは、数十トンにも及ぶ推進力に起因する首折れ変形に抵抗できる高い剛性が必要であることから軽量化にも限度があり、特に管径が数十センチメートルから数メートルにもなればこれに応じてアタッチメントのサイズも大きくなるから装着作業も重労働となる。さらに、曲げ加工中は金属管を高温に加熱する誘導加熱コイルは作動状態にあり、金属管を冷却する冷却水も噴射状態にあり、アタッチメントを装着するときの作業環境は厳しく安全性に十分な配慮が必要となる。
【0010】
一方、前記特許文献2の技術は、加工対象である金属管の内面に当接する器具(管内挿入拡径機構)を金属管の先端から管内に挿入し、金属管を内側から支持することにより首折れを防ぐものである。ところが、この器具によっても、基本的に曲げ加工の途中で作業員が金属管に近づいて器具(ハンドル51)を操作する必要がある。また、当該器具は金属管の先端に被せるように装着するものであるから、一定の区間を曲げた後にクランプアームによるクランプを持ち替えて(把持し直して)当該金属管を異なる方向へ更に曲げるような場合(所謂S字曲げや立体曲げのように曲げの方向を途中で変えるような場合)にこれに対応することが出来ない難がある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、作業の労力及び危険性を軽減回避し、良好な生産性を確保しながら曲げ加工における首折れの発生を防止するとともに、クランプの持ち替えを伴う曲げ加工にも対応可能な首折れ防止手段を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る金属条材の曲げ加工装置は、曲げ加工対象である金属条材の推進方向を前、当該推進方向と逆の方向を後とそれぞれした場合に、前記金属条材の一部を環状に加熱する加熱手段と、当該加熱手段に向け前記金属条材を推進させる推進手段と、前記金属条材の前記加熱手段による加熱部より前側を把持すると共に、支軸により旋回可能に支持され、前記推進手段による前記金属条材の推進に伴い前記支軸を中心として旋回して前記金属条材に曲げモーメントを加えるクランプアームとを備えた金属条材の曲げ加工装置であって、前記クランプアームよる把持点より後側の近接位置において前記金属条材の表面に当接して当該金属条材の首折れ変形を阻止する支持クランプを備えた。
【0013】
本発明の曲げ加工装置では、上記加熱手段により金属条材の一部を環状に加熱しつつ当該条材を推進させ、同時に、クランプアームによって加熱手段を通過した金属条材が弧を描いて湾曲するように案内する。具体的には、前記加熱手段により加熱される部分(加熱部)より前側の部分をクランプアームによって把持する。このクランプアームは、支軸を中心として回動可能に設置してあり、上記推進手段による金属条材の推進に伴って回動し、これに伴い、クランプアームによる金属条材の把持部分は当該支軸を中心に旋回することとなって金属条材の加熱部に曲げモーメントが加わり、これにより金属条材を連続的に塑性変形させて弧を描くように金属条材を曲げることが出来る。
【0014】
一方、本発明では、曲げ加工中に前記支持クランプにより金属条材の変形を規制し、折れ曲がりを防ぐ。すなわち、当該支持クランプはクランプアームよる把持部分より後側(金属条材の基端側)のクランプアームに近い位置において金属条材の表面に当接するもので、この支持クランプによって金属条材の不所望な変形を抑え、金属条材の首折れ変形を阻止する。
【0015】
支持クランプの具体的構造としては、金属条材の曲げ外周側の表面に当接する閉成状態と、金属条材の当該曲げ外周側表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な外爪を備え、この外爪を金属条材の曲げ外周側表面に押し当てて金属条材の変形を防ぐ。また本発明の典型的な態様では、この外爪に加えて、金属条材の曲げ内周側の表面に当接する閉成状態と当該曲げ内周側表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な内爪をさらに備え、これら外爪と内爪とで金属管を把持することにより同様に金属条材の変形を抑える。なお、曲げ加工に伴い、曲げの外周側は引張力がかかるためこれを「テンション側」又は「引張側」と、曲げ内周側は圧縮力がかかるためこれを「コンプレッション側」又は「圧縮側」とそれぞれ称することがある。
【0016】
曲げ加工における首折れは、前記特許文献において記載したように金属条材の前側を把持するクランプ(後述の前方クランプ)の後方側の近接位置で金属条材が折れ曲がるように変形することにより生じるが、上記本発明の支持クランプ構造によれば、当該変形が生じやすい前方クランプの後方側近接位置を外爪によって支えることが出来るから、このような首折れ変形を良好に抑えることが可能となる。さらに、内爪も備える装置では外爪と内爪とによって金属条材を掴み、金属条材を包み込むように把持することが出来るから、加工中の当該金属条材の断面強度を増加させ、より確実に首折れ変形を防ぐことが出来るとともに管の扁平化を防ぐことも可能となる。
【0017】
また、上記支持クランプにおいて外爪や内爪は、例えば油圧シリンダや電動機等の駆動手段により開閉できるようにすることが可能であり、従来のように首折れ防止用アタッチメントの装着作業の煩雑さ及び作業効率の悪さを解消することができ、作業時の危険性を回避することが出来る。さらに、本発明の支持クランプは金属条材の表面(側面)に当接させるものであり、従来の首折れ防止器具のように金属条材の先端に装着しなければならないようなものではないから、所謂S字曲げや立体曲げのようなクランプアームの持ち替えを伴う曲げ加工にも対応することが可能である。
【0018】
なお、支持クランプは、加工中常に使用する(金属条材に当接させておく)必要は必ずしも無く(加工中常に使用しても勿論良いが)、例えば、曲げ角度が小さく首折れが生じ難い曲げの初期段階では開放状態として使用しなくても良い。また、例えば管の肉厚が大きい場合や曲げ角度が小さい場合、曲げ半径が大きい場合など首折れが生じ難い場合には、内爪は使用せず(開放状態とし)外爪のみを使用して加工を行うことも可能である。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記加熱手段がクランプアームに向け前後方向に移動可能であり、前記外爪(内爪を備える態様では内爪についても/以下同様)は、前記開閉動作を可能とするため基端部に備えた回動支軸を中心として回動可能に支持され、前記支持クランプは、開放状態において、当該支持クランプと金属条材との間に前記加熱手段を収容できるように外爪(又は外爪および内爪)ならびに回動支軸と、金属条材との間に隙間が形成されるように設置する。なお、外爪と内爪を備える装置では、典型的に同一の(単一の)回動支軸によって両爪を支持するが、外爪と内爪が別々の回動支軸によってそれぞれ支持されていても構わない。
【0020】
上記のように開放状態において支持クランプと金属条材との間に加熱手段を収容可能な隙間が形成される構造とするのは、クランプアームの後側に配置する支持クランプが加熱手段の邪魔にならないように(クランプアームに近い位置に加熱手段を配置できるように)するとともに、加工開始時にクランプアームに近接した位置にまで加熱手段を前方へ移動できるようにするためであり、このような構造によればグラデーション曲げと称される次のような曲げ加工が可能となる。
【0021】
曲げ加工の最初から最後まで一定の曲率で金属条材を曲げていくのではなく、曲げの最初と最後で曲げ半径を次第に変えるグラデーション曲げを行えば首折れが生じ難くなることが知られている。このグラデーション曲げは、(1)曲げ加工の初期(曲げ始め)には曲げ半径を無限大(直線)から所定の曲げ半径(クランプアームの旋回中心である支軸から金属管のクランプ点までの距離である旋回半径によって決まる曲げ半径/以下この半径を「定常曲げ半径」と言う)になるまで次第に小さくしていき、(2)加工の中間期(定常曲げ)では一定の曲げ半径(定常曲げ半径)を維持し、(3)曲げ加工の終期(曲げ終り)には定常曲げ半径から次第に曲げ半径を大きくしていくもので、このような曲げ方法によれば、当該金属条材両端の直線部分(前方クランプによる把持部分、並びに、金属条材後部の未加工部分)から所定曲率の曲部へ次第に曲率が変わる滑らかな曲げ条材(金属管であれば管路)を形成することが出来る。
【0022】
ここで、上記態様を採用すれば、開放状態において支持クランプと金属条材との間に加熱手段を収容可能な隙間が形成されるから、曲げ始めにおいて加熱手段をクランプアーム(前方クランプ)の近接位置まで移動させることができ、クランプアーム近接位置に当接可能な支持クランプを備えるにも拘らず、当該クランプアーム近接位置まで加熱して曲げ加工を行うことが出来る。なお、首折れは、金属条材の推力によってクランプアームによる把持部分(クランプ部)の後方側直近位置に曲げモーメントがかかることにより生じるが、この曲げモーメント(「クランプ際モーメント」と称する)は加工が進行するほど大きくなり曲げ始めには比較的小さいから、加工の初期段階において上記のように支持クランプを開放状態にしておいても問題は生じない。
【0023】
また、推力による曲げモーメントは一定であるが、上記クランプ際モーメントは、(1)ベンディングポイントPと前方クランプ36(後述の図1参照)との間の距離が大きいほど、また(2)上記のように加工が進行して曲げ角度が増すほど(特に45°以上になると)、また(3)減肉率が小さく零%に近づくほど、それぞれ大きくなり、首折れが発生しやすくなる。なお、本発明はグラデーション曲げを必須とするものではなく、加工の前後にグラデーション曲げにおける上記処理を行わない通常の曲げ加工を行っても勿論構わない。
【0024】
また上記態様では、外爪を支持する回動支軸を、金属条材の装填位置より上方に配置するとともに、支持クランプの開放状態において外爪が金属条材の装填位置より上方に位置する構造とすることが好ましい。
【0025】
加工終了後に(あるいはS字曲げや立体曲げを行うような場合には一定区間の曲げが終了した後に)、金属条材を加工装置から取り出しやすくするためである。上記のような好ましい態様によれば、外爪とこれを支える回動支軸が共に金属条材より上方位置に配置されるから、外爪と回動支軸が金属条材の取出作業の邪魔になることがなく、金属条材を外方へ(クランプアームの先端側へ(支軸と反対方向へ))水平に移動させて取り出すことが出来る。
【0026】
また、支持クランプとして外爪と内爪の双方を含む装置では、内爪は外爪より前後方向の幅が狭く、内爪の前面と外爪の前面とが前後方向について略同位置となるように且つ内爪の後面が外爪の後面より前方に位置するように、内爪と外爪とを構成することが好ましい。
【0027】
曲げ内周側(コンプレッション側)では、金属条材の表面が曲げ中心に向け盛り上がる(例えば金属管の場合には増肉/管厚の増加により支軸側に向かって管表面がせり出す/膨らむ)ことがあるが、このようなコンプレッション側の変形を逃がし、変形分を収容できる余裕を持たせるためである。
【0028】
また同様の理由から、金属条材に当接する面である前記内爪の内面に、後方に行くにつれ次第に金属条材表面から遠ざかるように傾斜するテーパ面を形成しても良い。なお、このテーパ面の形成は、前後方向に関する外爪と内爪の幅および後面位置が同じ構造に対して適用しても良いし、上記のように当該外爪と内爪の幅および後面位置を異ならせた構造において行っても構わない。
【0029】
さらに、閉成状態において外爪の先端部を閉成方向に押し付けて外爪の開放方向への回動を阻止する押圧ストッパを備えても良い。当該押圧ストッパにより首折れ変形をより確実に防ぐためである。なお、この押圧ストッパとしては、例えば油圧シリンダを使用することが出来る。
【0030】
また、上記押圧ストッパを備える場合には、これを金属条材の装填位置より下方に配置することが好ましい。前述のように金属条材を外方へ取り出すときに当該押圧ストッパが邪魔にならないようにするためである。
【0031】
また、閉成状態において外爪の先端部が当接し、閉成方向への外爪の過度な回動を阻止する圧潰防止ストッパをさらに備えても良い。首折れ変形に抗する大きな支持力を必要とする外爪が、加工対象の金属条材に不所望な変形を加えるおそれを排除するためである。このような圧潰防止ストッパを備えれば、外爪の過度な(必要以上の)回動が阻止され、首折れ変形に対抗する必要十分な支持力を金属条材に対して付与することが出来る。
【0032】
また、本発明の加工装置は、クランプアームの旋回角度を検出する曲げ角度検出手段と、当該曲げ角度検出手段により検出された旋回角度を予め定められた値と比較して当該旋回角度が当該予め定められた値となった場合に前記外爪を閉成状態とする制御部とをさらに備えても良い。
【0033】
このような装置構成によれば、金属条材が所定の曲げ角度になったときに人手を介することなく制御部が支持クランプの駆動部(例えば油圧シリンダ)を介して支持クランプを作動させ、外爪を閉じて首折れを防ぐことが可能となる。なお、上記予め定められた値は、加工対象である金属条材の材質や径、肉厚、要求される減肉率等に対応して首折れを防ぐことが出来るように予め設定しておけば良い。
【0034】
本発明に係る加工装置では、金属条材の推進に伴うクランプアームの旋回方向とは逆方向にクランプアームを引き戻す引戻力をクランプアームに加えて金属条材に圧縮力を作用させる圧縮手段をさらに備える場合がある。単純曲げに比べて圧縮曲げを行う場合に首折れが生じやすいことは既に述べたとおりであるが、本発明は上記のような圧縮手段を備えた加工装置に好ましく適用することが可能であり、圧縮曲げで生じやすい首折れを効果的に防ぐことが出来る。
【0035】
また、本発明に係る首折れ防止用支持クランプ装置は、曲げ加工対象である金属条材の一部を環状に加熱する加熱手段と、当該加熱手段に向け金属条材を推進させる推進手段と、金属条材の前記加熱手段による加熱部より前側を把持すると共に支軸により旋回可能に支持されて前記推進手段による金属条材の推進に伴い前記支軸を中心として旋回して金属条材に曲げモーメントを加えるクランプアームとを備えた曲げ加工装置に装着可能なクランプ装置であって、前記クランプアームよる把持点より後側の近接位置において金属条材の曲げ外周側の表面に当接する閉成状態と、当該金属条材の曲げ外周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な外爪と、当該外爪を前記クランプアームに固定する固定手段とを備えた。
【0036】
本発明に係る支持クランプ装置は、前記本発明の曲げ加工装置に備えた支持クランプと同様の機能を有するものであるが、上記固定手段によって曲げ加工装置に装着することが可能であり、本発明が意図する首折れを防ぐ機能を既存の(従来の)曲げ加工装置に付加することが出来る。
【0037】
また上記支持クランプ装置では、前記クランプアームよる把持点より後側の近接位置において金属条材の曲げ内周側の表面に当接する閉成状態と当該金属条材の曲げ内周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な内爪をさらに備えて良く、この場合、上記固定手段は外爪とともに当該内爪を前記クランプアームに固定することを可能とする。
【0038】
さらに、本発明に係る曲部を備えた金属条材の製造方法は、前記本発明の曲げ加工装置並びに支持クランプ装置と同様の特徴を備えるものであり、金属条材の一部を環状に加熱すると共に、当該加熱部に曲げモーメントを加えて金属条材の少なくとも一部を湾曲状態に塑性変形させる金属条材の製造方法であって、前記金属条材の加熱部近傍位置を把持すると共にこの把持部から一定距離隔てた支軸を中心として旋回可能なクランプアームによって金属条材を把持すると共に、金属条材を材軸方向へ推進させることにより前記クランプアームによる把持部を旋回させ金属条材の少なくとも一部が弧を描いて湾曲するように案内する一方、金属条材の推進方向を前、当該推進方向と逆の方向を後とそれぞれした場合に、前記クランプアームによる金属条材の案内中に、前記クランプアームによる金属条材の把持部より後側の近接位置において支持クランプを金属条材の少なくとも曲げ外周側の表面に当接させ、これにより首折れ変形を防ぎながら金属条材の曲げ加工を行うものである。
【0039】
またこの製造方法においても、金属条材の曲げ外周側の表面に当接する閉成状態と、金属条材の曲げ外周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な外爪を支持クランプに含め、クランプアームが予め定められた角度旋回したときに、外爪を閉成状態として金属条材の曲げ外周側表面に当接させるようにすることが出来る。
【0040】
さらに、上記支持クランプに、金属条材の曲げ内周側の表面に当接する閉成状態と、金属条材の曲げ内周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な内爪を含め、前記クランプアームが予め定められた角度旋回したときに、当該内爪を閉成状態として金属条材の曲げ内周側表面に当接させるようにすることも可能である。
【0041】
本発明において加工対象となる金属条材は、典型的には金属製の中空管であるが、これに限定されず、例えば中実管であっても良いし、H鋼や山形鋼その他の長尺の部材であっても構わない。なお、後に説明する実施形態は断面円形の金属管を対象としており、したがって、クランプアーム(前方クランプ)や支持クランプの把持部の形状を当該金属管の形状に合わせたものとしてあるが、加工対象である金属条材が他の断面形状を有する場合には、当該加工対象の形状に合わせてクランプアーム(前方クランプ)や後方クランプ、支持クランプの把持部の形状を適宜変更すれば良い。
【0042】
また、金属条材の材料および寸法(外径・内径・肉厚寸法等)についても特定のものに限られない。例えば、典型的に本発明は、鉄を主体とした材料からなる管(例えば鋼管やステンレス管、特殊鋼管など)を加工対象とするが、他の金属材料を主体とする管や他の金属合金を材料とする管であっても構わない。さらに、本発明において曲げ加工する部分(曲部ないし曲管部)は、当該条材の全長の一部であっても全体であっても良い。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る金属条材の曲げ加工装置によれば、作業の労力及び危険性を軽減回避し、良好な生産性を確保しながら曲げ加工における首折れの発生を防止することが出来る。
【0044】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置を概念的に示す平面図(後述の図4〜図7を正面とすると反時計回りに90°回転させた状態で示している)である。
【図2】図2は、前記実施形態に係る曲げ加工装置の加工中の状態を前記図1と同様に概念的に示す平面図である。
【図3】図3は、前記実施形態に係る曲げ加工装置の前端部(クランプアーム部分)を概念的に示す斜視図である。
【図4】図4は、前記実施形態に係る曲げ加工装置のクランプアーム部分(前方クランプを閉じた状態)を示す正面図である。
【図5】図5は、前記実施形態に係る曲げ加工装置のクランプアーム部分(前方クランプを開いた状態)を示す正面図である。
【図6】図6は、前記実施形態に係る曲げ加工装置の首折れ防止用支持クランプ部分を示す正面図(図1及び図3のX1−X1から見た図)であり、支持クランプを閉じた状態を示している。
【図7】図7は、前記実施形態に係る曲げ加工装置の首折れ防止用支持クランプ部分を示す正面図(図6と同様に図1及び図3のX1−X1から見た図)であり、支持クランプを開いた状態を示している。
【図8】図8は、前記実施形態に係る曲げ加工装置の首折れ防止用支持クランプ部分(図6のX2−X2から見た状態)を示す側面図である。
【図9】図9は、前記実施形態に係る曲げ加工装置の首折れ防止用支持クランプ部分(図6のX3−X3から見た状態)を示す側面図である。
【図10】図10は、前記支持クランプ(内爪は図示せず)の概略構成を示す斜視図である。
【図11】図11は、前記実施形態の加工装置による曲げ始めの工程を概念的に示す平面図であり、支持クランプを開放状態として誘導加熱コイルをクランプアームに近接させた状態を示している。
【図12】図12は、前記実施形態の加工装置による加工中(支持クランプを閉成)の状態を概念的に示す平面図である。
【図13】図13は、前記実施形態に係る加工装置の支持クランプの変形例を図11〜図12と同様に示す平面図である。
【図14】図14は、前記実施形態のクランプアーム及び支持クランプによる把持部近傍位置における金属管の断面状態(管厚の状態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置は、加工対象の金属条材として金属管11を曲げ加工する装置で、図1から図3に示すように、加工対象である金属管11の一部を環状に加熱する誘導加熱コイル12(以下単に「コイル」と称することがある)と、誘導加熱コイル12に向け金属管11を推進する推進機構14と、金属管11の前方部分を把持して金属管11の推進に伴い支軸35,35aを中心として回動することにより金属管11に曲げモーメントを付与するクランプアーム31と、金属管11を把持することにより首折れ変形を防ぐ支持クランプ51と、金属管11の推進と反対方向の力である引戻力Dを発生して金属管11に圧縮力を付与する圧縮機構21とを備え、これらを装置フレーム25(図3参照)に搭載したものである。
【0047】
なお、図1および図3に前後左右上下の方向を示しており、以下の実施形態の説明はこれらの方向に基づいて行う。また、図中の符号Pは、定常曲げのときの誘導加熱コイル12の配置位置(以下「定常位置」と言う)を示しており、この位置で金属管11が曲げられることからこの位置を「ベンディングポイント」と称する。
【0048】
装置フレーム25は、図3に示すように底板状の本体フレーム26と、本体フレーム26から垂直上方に立ち上がる柱状フレーム27を備えており、柱状フレーム27にクランプアーム31を回動可能に設置する。
【0049】
具体的には、クランプアーム31は、加工対象である金属管11の推進方向A(前方)に直交する方向である左右方向に且つ互いに平行に延びるように上下に配した2本のアームロッド32,33と、上下方向に延在して両アームロッド32,33を繋ぐ支柱部34と、誘導加熱コイル12の前方位置で金属管11を把持する前方クランプ36とを有する。なお、2本のアームロッド32,33のうち、上側のアームロッド32を「上部ロッド」、下側のアームロッド33を「下部ロッド」とそれぞれ称する。
【0050】
上部ロッド32は支軸35を介して柱状フレーム27に、下部ロッド33は支軸35aを介して本体フレーム26にそれぞれ回動可能に取り付けてあり、前方クランプ36に把持した金属管11が前方へ推進されると(矢印A参照)、この推進力を受けてクランプアーム31は支軸35,35aを中心として水平に回動し(矢印B参照)、金属管11を把持している前方クランプ36は支軸35,35aを中心として弧を描くように旋回する。これに伴い、前方クランプ36により把持された金属管11には曲げモーメントが加わり、コイル12によって加熱された部分が(ベンディングポイントPにおいて)次々と曲げられて金属管11が弧状に曲げ加工される(図2参照)。
【0051】
一方、下部ロッド33にはスプロケット24を固定してあり、このスプロケット24はクランプアーム31の支軸35aを中心としてクランプアーム31(下部ロッド33)と一緒に回転する(矢印C参照)。スプロケット24は、これと噛み合うチェーン23、並びに、チェーン23を金属管11の推進方向と逆方向(後方)へ引っ張る引戻力Dを発生する圧縮駆動部22とともに前記圧縮機構21を構成する。金属管11の推進に伴うクランプアーム31の回動により、スプロケット24は回転してチェーン23を巻き取るが、これに抗する力(後方への引戻力)Dを圧縮駆動部22によってチェーン23及びスプロケット24を介してクランプアーム31にかけることにより、減肉を防ぐ圧縮力を金属管11に作用させる。これにより圧縮曲げが可能となる。圧縮駆動部22は、例えば油圧シリンダにより構成すれば良い。
【0052】
また、図面では、支柱部34とアームロッド32,33とを一体の連続した構造物として描いているが、支柱部34は、アームロッド32,33に対して相対移動できるように、すなわち、アームロッド32,33に沿ってクランプアーム31の長さ方向に(左右方向へ)位置変更できるように設置することが可能であり(当該移動機構は図示せず)、このような装置構造によれば、支柱部34に固定された前方クランプ36及び支持クランプ51を支柱部34と共にクランプアーム31に沿って左右へ移動させ、支軸35,35aに近づけ又は遠ざけることによって様々な曲げ半径で金属管を曲げ加工することが可能となる。なおこの場合、後述の押圧ストッパ56及び圧潰防止ストッパ57についても、これらが支持クランプ51(支柱部34)と一緒に移動されるように、支柱部34と一体となるように固定しておく。
【0053】
金属管11を推進させる推進機構14は、金属管11の後部を把持する後方クランプ15と、この後方クランプ15を通じて金属管11に前方への推進力Aを付与する推進駆動部16とを有する。推進駆動部16は、前記圧縮駆動部22と同様に、例えば油圧シリンダにより構成する。
【0054】
なお、これら推進機構14および圧縮機構21は、特定の構造に特に限定されるものではなく、本発明における推進機構14は金属管11を推進可能なものであれば、また、圧縮機構21は金属管11に対して減肉を抑制する圧縮力を付与可能なものあれば、それぞれ如何なるものであっても良く、図示した本実施形態の構造に何ら限定されない。
【0055】
金属管11を加熱する誘導加熱コイル12は、クランプアーム31の後方に配置し、不図示の駆動部によって駆動する。この駆動部は、コイル12に電力を供給する電源と、コイル12を移動させる移動機構とを含んでおり、当該駆動部によりコイル12を金属管11の軸方向に沿って前後方向に移動させることが可能である。また、曲げ加工直後に金属管を冷却できるように冷却水を噴射可能な冷却機構(冷却機構自体は図示しないが、当該冷却機構から噴射される冷却水を図2及び図12において符号10で示した)を誘導加熱コイル12と一体に設けてあり、加工時にはコイル12の直ぐ前方の金属管の表面に向け冷却水10を吹き付け、加熱され曲げられた金属管を冷却する。なお、図中符号13は、金属管11を案内するガイドローラを示している。
【0056】
図4〜図5も参照して前方クランプ36は、クランプアーム31の支柱部34の側面に形成した金属管11を受ける管受部37と、この管受部37に対して相対回動可能に設けた把持爪38とを有し、これら管受部37と把持爪38とで金属管11を挟む(掴む)ように把持できるようにしてある。把持爪38は、金属管11の上方近傍位置に設けた支軸39によって回動可能に支持してあり、図4〜図5に示すように油圧シリンダ41により開閉(回動)することが出来る。なお、前方クランプ36は、金属管11をより確実に把持するため、閉成時に把持爪38の先端部(下端部)を閉成方向に向かって(管受部37に向け)押圧する油圧シリンダ40を備えている。
【0057】
また、前方クランプ36(後方クランプ15も同様)には、金属管への当接面である管受部37の内面および把持爪38の内面にそれぞれライナーを装着できるようにしておくことが好ましい。このライナーは、当該当接面に装着され、金属管をクランプしたときに管受部37の内面と金属管との間、ならびに把持爪38の内面と金属管との間に介在されるもので、このようなライナーを金属管の径方向に複数枚重ねるように管受部37の内面ならびに把持爪38の内面に装着できるようにしておくことにより、様々な外径の金属管を加工可能とすることが出来る。なお、支持クランプ51(外爪52および内爪62の各内面)についても同様のライナーを装着できるようにしておけば良い。
【0058】
前方クランプ36の後側近接位置には、図1〜図2並びに図6〜図10に示すように(図3では支柱部34及び前方クランプ36の背後に隠れて見えない)支持クランプ51を備える。この支持クランプ51は、クランプアーム31の支柱部34の後面に固定し、前方クランプ36の管受部37と同様に金属管11の内周側(コンプレッション側)表面に当接する内爪62と、前方クランプ36の把持爪38と同様に金属管11の外周側(テンション側)表面に当接する外爪52とを備えている。
【0059】
ここで、内爪62の内側には金属管11のコンプレッション側の表面にフィットするよう円弧状に湾曲した当接面63を形成する一方、外爪52の内側には金属管11のテンション側の表面にフィットするよう円弧状に湾曲した当接面53を形成してある。したがって、支持クランプ51を閉じると、内爪62の当接面63が金属管11のコンプレッション側の表面に、また、外爪52の当接面53が金属管11のテンション側の表面にそれぞれ当接し、これにより、内爪62と外爪52により金属管11を挟む(掴む)ように把持して金属管11の変形を規制することが出来る。
【0060】
また、内爪62および外爪52は共に、金属管11の上方位置に設けた支軸54を中心として回動可能に支持してあり、それぞれ油圧シリンダ64,55により開閉(回動)することが可能である。これらの油圧シリンダ64,55のうち外爪52の開閉を行う油圧シリンダ55は、外爪52の側面(外側)と、クランプアーム31に設置した固定板61との間を連結するように設けてあり、これら外爪52の側面と固定板61との間を伸縮するように動作して外爪52の開閉を行う。同様に、内爪62の開閉を行う油圧シリンダ64は、内爪62の側面(外側)と固定板61との間を連結するように設けてあり、内爪62の側面と固定板61との間を伸縮するように動作して内爪62を開閉する。
【0061】
さらに、支持クランプ51(内爪62および外爪52)の支軸54は、図6および図8にΔhで示すように、前記前方クランプ36(把持爪38)の支軸39より上方に配置してある。これは、支持クランプ51が誘導加熱コイル12の邪魔にならないようにすると共に誘導加熱コイル12を前方クランプ36の近くまで移動することを可能とし、前方クランプ36による把持部の近傍位置から曲げ加工(グラデーション曲げ)を行うことを可能とするためである。
【0062】
具体的に述べれば、図7に示すように内爪62と外爪52を開いた状態では、支持クランプ51(これら内爪62および外爪52ならびに支軸54)と金属管11との間に隙間が形成される。この隙間は、コイル12の邪魔になることがなくクランプアームの後面に支持クランプ51を設置することを可能とするもので、この隙間を利用してコイル12を前方クランプ36の近くまで移動させることが出来る。
【0063】
一方、グラデーション曲げは、前に述べたように、(1)曲げ始め、(2)曲げ中間期(定常曲げ)および(3)曲げ終り、の3つの期間に分けられ、(1)曲げ始めには、誘導加熱コイル12を前方クランプ36に出来るだけ近づけた位置まで移動させ、誘導加熱と金属管11の推進を開始する。
【0064】
図11〜図12はこの操作を示すものであるが、図11に示すように曲げ加工を開始するにあたってコイル12を前方へ移動させてクランプアーム31(前方クランプ36)に近づける。このとき、前記図7及び図11に示すように支持クランプ51の内爪62と外爪52は開いた状態であり、図11に示すようにクランプアーム31の近接位置までコイル12を移動させることが出来る。そして、この位置でコイル12に電力を供給し加工を開始する。
【0065】
加工開始により金属管11は推進機構14によって前方へ推し進められるが、このとき同時にコイル12を後方へ移動させていく。そして、コイル12を定常位置(図12に示すコイル12の位置)まで移動させて曲げ始めの期間を終了し、定常曲げに入る。なお、加工開始から定常曲げに入るまでの当該曲げ始めの期間では金属管11の推進速度を徐々に増加させ、定常曲げに入った段階で推進速度を一定にする。また、定常曲げに入り、曲げ角度が予め定められた角度(例えば45°又は60°等)となったら、支持クランプ51を閉じて外爪52と内爪62を金属管11の表面に当接させ、これらの爪52,62(特に外爪52)によって金属管11を支えることにより首折れ変形を防ぐようにすれば良い。また、曲げ終りにもコイル12を移動させながら加工を行って良いが、この曲げ終りのときには支持クランプ51はクランプアーム31と共に回動してベンディングポイントPから離れているから(図2参照)、支持クランプ51がコイル12の移動の邪魔になることはない。
【0066】
支持クランプ51についてさらに詳しく述べれば、首折れは、クランプアーム31による把持部の直ぐ後方部分(金属管11の管軸に沿って金属管11の基端側の近傍部分)が金属管11の推進力に起因する曲げモーメントによって外方へ折れ曲がるように変形することにより生じる。これに対し、上記本実施形態の装置では当該部分を支持クランプ51で把持することにより変形を阻止することが出来る。
【0067】
また、支持クランプ51に付随する構成として、本実施形態の装置では、押圧ストッパ56と圧潰防止ストッパ57を備える。押圧ストッパ56は、クランプアーム31の下部ロッド33に設置した油圧シリンダからなり、図6に示すように閉成状態の外爪52の先端部を閉成方向に(内爪62ないしクランプアームの支柱部34に向かって)押し付け、外爪52の開放方向への回動を阻止する。このように支持クランプ51の閉成時に押圧ストッパ56により外爪52を押さえ付けることにより、首折れ変形をより確実に防ぐことが出来る。
【0068】
また、この押圧ストッパ56は、金属管11の装填位置より下方に配置してある。図7に矢印Eで示すように、金属管11を取り出すときに押圧ストッパ56が邪魔にならないようにするためである。なお、前記前方クランプ36の把持爪38を閉成方向に押さえる油圧シリンダ40も同じ理由から、当該押圧ストッパ56と同様に金属管11の装填位置より下方に配置してある(前記図5参照)。
【0069】
一方、圧潰防止ストッパ57は、閉成状態において外爪52の先端部が当接するようにクランプアーム31の支柱部34に固定してあり、閉成方向への外爪52の過度な回動を阻止するものである。このストッパ57を備えることにより、首折れ変形に対抗する大きな支持力を必要とする外爪52が閉成方向に回動し過ぎて金属管11に必要以上の力を加え変形させるおそれを排除することが出来る。
【0070】
さらに図8〜図9に示すように、内爪62はその幅W1を外爪52の幅W2に比べて小さく、内爪62の前面と外爪52の前面とは前後方向について同位置であるが内爪62の後面は外爪52の後面より前方に位置するようにしてある。これは、内爪62はコンプレッション側の変形を抑制することが出来るものであるが、減肉率(圧縮力を大きさ)によってはコンプレッション側の管表面が支軸側へ隆起することがあり(後述の図14参照)、これを逃がすことが出来るようにするためである。
【0071】
同様の理由から、図13に示すように内爪62の金属管11への当接面に、後方へ向かうにつれ当該当接面の内径が大きくなるように(即ち金属管11の表面から離れるような)テーパ面(傾斜面)63aを形成しても良い。この場合、図13に示すように内爪62の幅を外爪52の幅と等しくしておいても良いし、前述のように内爪62の幅W1を外爪52の幅W2より小さくしたうえで当該テーパ面63aを形成しても構わない。
【0072】
図14は支持クランプ近傍位置の金属管の断面状態を示すものであるが、内爪62の金属管11への当接面に上記テーパ面63aを形成することで、コンプレッション側の隆起を逃がすことが出来る様子が分かる。
【0073】
さらに本実施形態では、支持クランプによる首折れ防止処理を自動化することが可能である。前記図4〜図7を参照して、本実施形態の加工装置は、クランプアーム31の支軸35にクランプアーム31の回動角度を計測する角度カウンタ(角度センサ)101を備えることができ、この角度カウンタ101によるカウント値(クランプアームの回動角度)が加工制御部102に入力される。
【0074】
加工制御部102は、曲げ加工を行うための装置各部、すなわち、金属管11を推進させる推進駆動部(推進用油圧シリンダ)16や金属管11に圧縮力を付与する圧縮駆動部(圧縮用油圧シリンダ)22、誘導加熱コイル12の駆動部(電源やコイル12を移動させる前記移動機構)、金属管11に冷却水10を噴射する前記冷却機構等を制御するものであるが、これらの制御に加えて、支持クランプ51の開閉を制御する。
【0075】
具体的には、加工制御部102は、角度カウンタ101から出力される角度検出信号を受け、クランプアーム31の回動角を予め設定された値(設定値)と比較し、当該クランプアーム31の回動角が当該設定値となった場合に、支持クランプ51を閉成させる作動信号を油圧シリンダ55,64および押圧ストッパ56へ出力する。この作動信号を受信した各油圧シリンダ55,64は外爪52と内爪62とをそれぞれ閉じ、各爪52,62を金属管11に当接させる。また押圧ストッパ56は、外爪52を閉成方向にロックする。なお、上記設定値は、前述のように加工すべき金属素管(曲げ加工前の金属管)の材質や径、肉厚、減肉率等に応じて加工開始前に適当な入力手段(図示せず)を介して加工制御部102に入力しておけば良い。
【0076】
また、上述した支持クランプ51の駆動にあたっては、加工(金属管11の推進)を中断する必要はなく、従来のようにアタッチメントを手作業で装着する必要もなく、本実施形態の装置によれば、連続的な加工処理により安定した品質管理と良好な生産性を実現することができ、金属素管(金属管11)を本装置にセットすれば曲げ加工の完了までの全工程を自動化することも可能となる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0078】
11 金属管
12 誘導加熱コイル
13 ガイドローラ
14 推進機構
15 後方クランプ
16 推進駆動部(油圧シリンダ)
21 圧縮機構
22 圧縮駆動部(油圧シリンダ)
23 チェーン
24 スプロケット
25 装置フレーム
26 本体フレーム
27 柱状フレーム
31 クランプアーム
32 アームロッド(上部ロッド)
33 アームロッド(下部ロッド)
34 支柱部
35,35a 支軸
36 前方クランプ
37 管受部
38 把持爪
39 把持爪の回動支軸
40 把持爪押圧用油圧シリンダ
41 把持爪開閉用油圧シリンダ
51 首折れ防止用支持クランプ
52 外爪
53,63 金属管への当接面
54 外爪および内爪の回動支軸
55 外爪開閉用油圧シリンダ
56 押圧ストッパ
57 圧潰防止ストッパ
61 固定板
62 内爪
63a テーパ面
64 内爪開閉用油圧シリンダ
101 角度カウンタ
102 加工制御部
P ベンディングポイント(定常曲げ時の誘導加熱コイルの位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ加工対象である金属条材の推進方向を前、当該推進方向と逆の方向を後とそれぞれした場合に、
前記金属条材の一部を環状に加熱する加熱手段と、
当該加熱手段に向け前記金属条材を推進させる推進手段と、
前記金属条材の前記加熱手段による加熱部より前側を把持すると共に、支軸により旋回可能に支持され、前記推進手段による前記金属条材の推進に伴い前記支軸を中心として旋回して前記金属条材に曲げモーメントを加えるクランプアームと
を備えた金属条材の曲げ加工装置であって、
前記クランプアームよる把持部より後側の近接位置において前記金属条材の表面に当接して当該金属条材の首折れ変形を阻止する支持クランプを備え、
当該支持クランプは、前記金属条材の曲げ外周側の表面に当接する閉成状態と、当該金属条材の曲げ外周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な外爪を含む
ことを特徴とする金属条材の曲げ加工装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記クランプアームに向け前後方向に移動可能であり、
前記外爪は、前記開閉動作を可能とするため基端部に備えた回動支軸を中心として回動可能に、且つ、前記開放状態において前記支持クランプと前記金属条材との間に前記加熱手段を収容できるように前記開放状態において当該外爪および回動支軸と前記金属条材との間に隙間が形成されるように設置してある
請求項1に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項3】
前記外爪の回動支軸を、前記金属条材の装填位置より上方に配置するとともに、
前記開放状態において前記外爪が前記金属条材の装填位置より上方に位置するように前記外爪を設置した
請求項2に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記閉成状態において、前記外爪の先端部を閉成方向に押し付けて前記外爪の開放方向への回動を阻止する押圧ストッパ
をさらに備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項5】
前記押圧ストッパを、前記金属条材の装填位置より下方に配置した
請求項4に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項6】
前記閉成状態において、前記外爪の先端部が当接し、閉成方向への前記外爪の過度な回動を阻止する圧潰防止ストッパ
をさらに備えた請求項1から5のいずれか一項に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項7】
前記クランプアームの旋回角度を検出する曲げ角度検出手段と、
当該曲げ角度検出手段により検出された前記旋回角度を予め定められた値と比較して当該旋回角度が当該予め定められた値となった場合に前記外爪を閉成状態とする制御部と
をさらに備えた請求項1から6のいずれか一項に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項8】
前記支持クランプは、
前記金属条材の曲げ内周側の表面に当接する閉成状態と、当該金属条材の曲げ内周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な内爪
をさらに含む請求項1から7のいずれか一項に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項9】
前記加熱手段は、前記クランプアームに向け前後方向に移動可能であり、
前記内爪は、前記開閉動作を可能とするため基端部に備えた回動支軸を中心として回動可能に、且つ、前記開放状態において前記支持クランプと前記金属条材との間に前記加熱手段を収容できるように前記開放状態において当該内爪および回動支軸と前記金属条材との間に隙間が形成されるように、設置してあり、
これにより、加工開始時に前記クランプアームに近接した位置にまで前記加熱手段を前方へ移動できるようにした
請求項8に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項10】
前記内爪は、前記外爪より前後方向の幅が狭く、
前記内爪の前面と前記外爪の前面とが前後方向について略同位置となるように且つ前記内爪の後面が前記外爪の後面より前方に位置するように、前記内爪と前記外爪とを配置した
請求項8または9に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項11】
前記金属条材に当接する面である前記内爪の内面に、後方に行くにつれ次第に前記金属条材表面から遠ざかるように傾斜するテーパ面を形成した
請求項8から10のいずれか一項に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項12】
前記クランプアームの旋回角度を検出する曲げ角度検出手段と、
当該曲げ角度検出手段により検出された前記旋回角度を予め定められた値と比較して当該旋回角度が当該予め定められた値となった場合に前記内爪を閉成状態とする制御部と
をさらに備えた請求項8から11のいずれか一項に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項13】
前記金属条材の推進に伴う前記クランプアームの旋回方向とは逆方向に前記クランプアームを引き戻す引戻力を前記クランプアームに加えて前記金属条材に圧縮力を作用させる圧縮手段
をさらに備えた請求項1から12のいずれか一項に記載の金属条材の曲げ加工装置。
【請求項14】
曲げ加工対象である金属条材の一部を環状に加熱する加熱手段と、当該加熱手段に向け前記金属条材を推進させる推進手段と、前記金属条材の前記加熱手段による加熱部より前側を把持すると共に支軸により旋回可能に支持されて前記推進手段による前記金属条材の推進に伴い前記支軸を中心として旋回して前記金属条材に曲げモーメントを加えるクランプアームとを備えた曲げ加工装置に装着可能な首折れ防止用支持クランプ装置であって、
前記クランプアームよる把持部より後側の近接位置において前記金属条材の曲げ外周側の表面に当接する閉成状態と、当該金属条材の曲げ外周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な外爪と、
当該外爪を前記クランプアームに固定する固定手段と
を備えたことを特徴とする首折れ防止用支持クランプ装置。
【請求項15】
前記クランプアームよる把持部より後側の近接位置において前記金属条材の曲げ内周側の表面に当接する閉成状態と、当該金属条材の曲げ内周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な内爪をさらに備え、
前記固定手段はさらに、当該内爪を前記クランプアームに固定可能である
請求項14に記載の首折れ防止用支持クランプ装置。
【請求項16】
金属条材の一部を環状に加熱すると共に、当該加熱部に曲げモーメントを加えて当該金属条材の少なくとも一部を湾曲状態に塑性変形させる、曲部を備えた金属条材の製造方法であって、
前記金属条材の加熱部近傍位置を把持すると共にこの把持部から一定距離隔てた支軸を中心として旋回可能なクランプアームによって当該金属条材を把持すると共に、
当該金属条材を材軸方向へ推進させることにより前記クランプアームによる把持部を旋回させ前記金属条材の少なくとも一部が弧を描いて湾曲するように案内する一方、
前記金属条材の推進方向を前、当該推進方向と逆の方向を後とそれぞれした場合に、前記クランプアームによる前記金属条材の案内中に、前記クランプアームによる金属条材の把持部より後側の近接位置において支持クランプを前記金属条材の少なくとも曲げ外周側の表面に当接させ、これにより首折れ変形を防ぎながら前記金属条材の曲げ加工を行う
ことを特徴とする曲部を備えた金属条材の製造方法。
【請求項17】
前記支持クランプは、前記金属条材の曲げ外周側の表面に当接する閉成状態と、当該金属条材の曲げ外周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な外爪を含み、
前記クランプアームが予め定められた角度旋回したときに、前記外爪を閉成状態として前記金属条材の曲げ外周側表面に当接させる
請求項16に記載の曲部を備えた金属条材の製造方法。
【請求項18】
前記支持クランプは、前記金属条材の曲げ内周側の表面に当接する閉成状態と、当該金属条材の曲げ内周側の表面から離間する開放状態との間で開閉動作可能な内爪をさらに含み、
前記クランプアームが予め定められた角度旋回したときに、前記内爪を閉成状態として前記金属条材の曲げ内周側表面に当接させる
請求項17に記載の曲部を備えた金属条材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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