説明

金属検出装置

【課題】 微小金属を検出できる感度を有する金属検出装置を提供する。
【解決手段】 被検体中の金属を検出する金属検出装置であって、磁力センサと、磁化装置と、被検体の搬送路と、を備え、前記磁化装置が、異なる磁極が対向するように前記搬送路を挟んで配置された一対の磁石であって、この磁石が、検出対象金属を飽和磁化可能な磁力を有し、前記磁力センサが、前記磁化装置よりも搬送路下流側の前記磁石の磁力を検出しない位置に配置された金属検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の金属を検出する金属検出装置であって、例えば、テープやフィルム等の薄膜状の被検体中に含まれる被検金属片を、磁力センサにて検出するに際し、被検体中に含まれる被検金属片を、飽和磁化させることにより検出感度を向上させる金属検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属検出装置としては、例えば、特許文献1に、検出感度向上させる磁化装置である励磁コイルあるいは、永久磁石により被検体中の金属を磁化させる金属検出装置が記載されている。
【特許文献1】特開2003−66156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1には、検出感度向上について、磁化させる磁束の方向と検出コイルの配置について記載されているだけであり、検出感度向上に必要な、励磁コイルあるいは永久磁石の、磁化条件である磁力条件が記載されていない。特許文献1に記載の装置では、直径100μm程度の金属しか検出できず、微小金属を検出するには、感度が不十分であった。
【0004】
そこで、本発明においては、微小金属を検出できる感度を有する金属検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
検出感度向上のため鋭意検討の結果、被検体中に含まれる被検金属を、飽和磁化させることにより、更に検出感度を向上できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下に関する。
(1)被検体中の金属を検出する金属検出装置であって、磁力センサと、磁化装置と、被検体の搬送路と、を備え、前記磁化装置が、異なる磁極が対向するように前記搬送路を挟んで配置された一対の磁石であって、この磁石が、検出対象金属を飽和磁化可能な磁力を有し、前記磁力センサが、前記磁化装置よりも搬送路下流側の前記磁石の磁力を検出しない位置に配置された金属検出装置。
(2)項(1)において、磁石の磁力が4000〜10000ガウスである金属検出装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明の金属検出装置によれば、被検体が磁化装置に設置された、検体磁化用の対向配置された一対の磁石の間を通過することにより、被検体中の被検金属が飽和磁化されて、被検金属の有する磁力が大きくなり、磁力センサにおける検出能力が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を用いて、本発明を詳細に説明する。
図1には、本発明の金属検出装置の一例を示す。金属検出装置は、被検体中の金属を検出する金属検出部3と、磁化装置1とを備えている。金属検出部3は、磁力センサ5を備えており、この磁力センサ5が、磁力を有するものを検出する。また、磁力センサ5は、後述する磁化装置1の磁石2a、2bの磁力を検出しない、搬送路4の下流に位置させている。磁化装置1は、異なる磁極が対向するように、搬送路4を挟んで上下に一対の磁石2a、2bが配置されている。磁石2a、2bは、検出対象金属を飽和磁化可能な磁力を有している。
ここで、「飽和磁化」とは、磁性金属の磁束密度を、印加磁界を変化させることにより変化させ、飽和磁束密度にすることをいう。
【0008】
磁性金属は、図2のグラフに示すような磁化曲線を示す。グラフの横軸は、印加磁界Hを示し、縦軸は、磁性金属中の磁束密度Bを示す。
磁性金属は、磁性金属の外部から加えられる印加磁界Hが大きくなるに従って、印加磁界がゼロの点であるa点からb点へと移り、物質中の磁束密度Bが大きくなり、飽和磁束密度Bs付近で、ほぼ一定値となる。
続けて、印加磁界Hを取り除くと、b点からc点に移る。c点の状態は、印加磁界がゼロの際の磁束密度であり、残留磁束密度Brといい、磁力印加前であるa点での磁束密度よりも、大きな値となる。つまり磁性金属の有する磁力が大きくなる。
同様に、a点から印加磁界Hを磁性金属が飽和磁化する印加磁界Hbよりも小さい値であるHb’迄大きくした後に、印加磁界をゼロに戻した場合、a点−b’点−c’点を通る曲線を描く。この際、磁界印加後の磁性金属の磁束密度は、c>c’となり、飽和磁化させることにより、残留磁束密度は最大となる。(例えば、株式会社マグネテックジャパン技術報告、“MJ 技報,Vol.2(1),第2巻 春号”、平成16年3月1日参照)
【0009】
磁化装置に使用する磁石に必要な磁力としては、検出を目的とする被検金属の種類、材質、組成、不純物等により異なるが、例えば、鉄の検知を目的とした場合、鉄を飽和磁化させるために必要な磁力は、組成、不純物の種類等により異なるものの、図3に示す鉄の磁化曲線に示されるように、飽和磁力が約4000ガウスであることから、4000ガウス以上の磁力を有する磁石を使用することが望ましい。
種々の各金属を飽和磁化させるために必要な磁力は、例えば、株式会社マグネテックジャパン技術報告、“MJ 技報,Vol.2(1),第2巻 春号”、平成16年3月1日、に記載されている。
また、磁力の上限値は、特に制限されるものではないが、磁力センサへの影響度及び操作性の観点から、10000ガウス以下が望ましい。
【0010】
本発明にて使用する磁力センサは、被検金属の磁力を検知するタイプのセンサを使用する。
被検金属の磁力を検知するタイプのセンサとしては、検出感度の観点から、図4に示すような、磁気抵抗素子を用いたセンサ等が望ましい。
磁気抵抗素子は、抵抗値が磁界の強さによって変化する特徴を持つ。磁気抵抗素子を使用した磁力センサの測定原理は、以下の通りである。
【0011】
図4に示すように、特性のそろった第1の磁気抵抗素子7aと、第2の磁気抵抗素子7bとを直列につなぐ。次に、2つの磁気抵抗素子7a、7bに、磁石6で均等な磁界をかけると、2つの磁気抵抗素子7a、7bの接続部に設けた出力端子に電圧が表れ、これが出力電圧となる。
磁気抵抗素子7a、7bの両端に電圧Vを加えると、前記出力電圧は、電圧Vのおおよそ半分になる。この電圧を中点電圧と呼ぶ。2つの磁気抵抗素子7a、7bに、それぞれ異なる強さの磁界が与えられた場合には、素子の抵抗値は異なるので、出力電圧が中点電圧とは異なる値となる。例えば、第1の磁気抵抗素子7aに強い磁界が加われば、第2の磁気抵抗素子7bよりも、その抵抗値は増大するので、出力電圧は中点電圧より小さくなり、逆に、第2の磁気抵抗素子7bに強い磁界が加わると、中点電圧より大きくなる。
【0012】
図4に示すように、第2の磁気抵抗素子7bに、鉄片のような磁性金属8が近づけば、この磁性金属8に向かって磁力線が偏り、第2の磁気抵抗素子7bには、第1の磁気抵抗素子7aよりも大きな磁界が加わるため、第2の磁気抵抗素子7bの抵抗値が増大し、出力電圧が大きくなる。この出力値の変化を測定することにより、磁性金属の検出が可能となる。
【0013】
磁化装置に設置する磁石としては、永久磁石、電磁石等が挙げられ、中でも、電源を必要としないことから、永久磁石を用いることが望ましい。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
本発明の実施例にて用いる効果検証テストにおける装置は、前述した図1に示す構成とした。磁化装置1の搬送路4の上面に磁石2aのS極が、搬送路4の下面に磁石2bのN極が向くように磁石2a,2bを設置した。
使用する磁石2a、2bの磁力は、鉄が飽和磁化に必要な磁力を有する、5000ガウスの磁石とした。
金属検出部3は、先に原理を説明した磁気抵抗素子を用いた、磁力センサ5を使用した。
金属検出部3は、磁力センサ5が、フィルム等の評価対象サンプル表面を、図7に示すように移動し、金属を検出する機構とした。
測定に使用するサンプルは、図6に示す、パーマロイ(軟質磁性合金)製、縦:50μm×横:50μm×厚み:6μmの、磁性金属サンプル9とした。
図7に示すように、磁力センサ5の高さ位置を、磁性金属サンプル9の上面から、0.5mmに設定した。
磁性金属サンプル9を磁化装置1の搬送路4を通過させ飽和磁化させた。
飽和磁化させた磁性金属サンプル9を金属検出部3の測定台10に乗せ磁力センサ5で検出出力値を測定した。この際、磁力センサ5の移動経路は、図5に示すように、磁性金属サンプル9の上面を、直線状に移動させ、測定開始位置から、0.5mmピッチの複数直線上で測定を行った。
下記表1に、磁力センサ5にて検出された電圧を示す。尚、測定は、3回実施した。
【0015】
【表1】

【0016】
(比較例1)
磁化装置1の磁石2a、2bの磁力が、鉄の飽和磁化に必要な磁力以下である、400ガウスとしたこと以外は、実施例1と同様にして測定を行った。
下記表2に測定結果を示す。
【0017】
【表2】

【0018】
実施例1及び比較例1より、飽和磁化の有無による検出出力値の差を比較した結果、5000ガウスにて飽和磁化させた検査サンプルの検出出力値は、400ガウスにて磁化させた検査サンプルの検出出力値よりも、14%大きい値となった。
上記実施例1及び比較例1より、検査サンプルを飽和磁化させることにより、検出感度が向上することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例である磁化装置と金属検出部を示す概略構成図である。
【図2】金属の磁力特性である磁化曲線グラフを示す。
【図3】鉄の飽和磁化に必要な磁力を示す磁化曲線グラフである。
【図4】磁気抵抗素子を使用した磁力センサの原理を示す。
【図5】本発明の実施例での磁力センサ測定移動経路を示す。
【図6】本発明の実施例での測定サンプル形状を示す。
【図7】本発明の実施例での測定サンプルと磁気センサの距離を示す。
【符号の説明】
【0020】
1…磁化装置、2a、2b…磁石、3…金属検出部、4…搬送路、5…磁力センサ、6…磁石、7a…第1の磁気抵抗素子、7b…第2の磁気抵抗素子、8…磁性金属、9…磁性金属サンプル、10…測定台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体中の金属を検出する金属検出装置であって、磁力センサと、磁化装置と、被検体の搬送路と、を備え、前記磁化装置が、異なる磁極が対向するように前記搬送路を挟んで配置された一対の磁石であって、この磁石が、検出対象金属を飽和磁化可能な磁力を有し、前記磁力センサが、前記磁化装置よりも搬送路下流側の前記磁石の磁力を検出しない位置に配置された金属検出装置。
【請求項2】
請求項1において、磁石の磁力が4000〜10000ガウスである金属検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−107287(P2010−107287A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278093(P2008−278093)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】