説明

金属構成部品の製造方法

【課題】構成部品の幾何形状が複雑であっても、また構成部品材料の加工性が劣悪であっても、高級構成部品部分の精密加工を可能にする、金属構成部品の製造方法を提供することである。
【解決手段】材料の切削により、および/または材料の変形加工により形成された3次元形状を有する金属構成部品の製造方法であって、1つまたは複数の高級構成部品部分の精密加工が、電解液を作業領域に放出するノズル状カソードを用いた電気化学的加工によって行われ、前記カソードまたは金属構成部品が、マニピュレータエレメントによって空間内を自由に移動される製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の切削により、および/または材料の変形加工により形成された3次元形状を有する金属構成部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属構成部品は、所望の3次元形状を得るために種々の方法によって加工され、または成形される。材料切削加工方法、たとえばボーリング、旋盤、フライス盤、EDM(放電加工)およびECM(電解加工)、または材料変形加工方法、たとえば打ち抜き、プレスまたは鍛造が公知である。これらの方法は通例、粗い輪郭形成に用いられる。すなわちこれらの加工方法により、3次元構造が実質的に仕上げられる。しかし高級構成部品部分は、たとえばバリ、突起、エッジ等を切削し、角を丸めるなどするために後でさらに精密処理を施さなければならない。この精密加工は、多くの場合フライス盤によって行われる。このことは、金属構成部品が大きい場合には、精密加工すべき高級構成部品部分に接近できるのでしばしば簡単に可能であるが、とりわけ金属構成部品が小さい場合、または高級構成部品部分が非常に細いか、または構成部品形状に起因して接近するのが困難である場合、しばしば問題が生じる。なぜなら工具を所望の領域に案内することができないか、または部分的にしか案内することができないからである。別の問題が、金属構成部品の材料からしばしば生じる。とりわけ特殊適用分野では、しばしば合金、たとえばチタン合金またはニッケル合金が使用される。チタン合金製の構成部品はまだ十分な機械加工性を有しており、したがってたとえば満足のいくフライス加工をすることができるが、ニッケル合金製の構成部品の機械加工性は比較的悪い。複雑な幾何比率と関連して、そこからさらに大きな問題が精密加工の枠内で生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって本発明の基礎とする課題は、構成部品の幾何形状が複雑であっても、また構成部品材料の加工性が劣悪であっても、高級構成部品部分の精密加工を可能にする、金属構成部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この問題を解決するために、冒頭に記載した形式の方法において、1つまたは複数の高級構成部品部分の精密加工が、ノズル状のカソードを用いた電解加工によって行われ、このノズル状のカソードを介して電解液が作業領域に放出され、ここではカソードまたは金属構成部品がマニピュレータエレメントによって空間内を自由に運動される。
【0005】
本発明の方法では、高級構成部品領域(単数または複数)の精密加工が、たとえばエッジ、面移行部、バリ等の領域で、通常はECM(電解加工)と称される電気化学的加工により行われる。このためにノズル状のカソードが使用され、このカソードを介して電解液が作業領域に直接放出される。すなわち電解液がカソードに供給され、ノズル状カソードの先端で直接、精密加工すべき金属構成部品(ワークピース)に通電される。金属構成部品とカソードとの間に電気的作動電圧を印加することにより、材料切削に作用するプロセス電流が生じる。ここで金属構成部品自体はアノードに極付けられる。ノズル状カソードを介して、正確に規定された領域内でワークピースにおける材料切削を行うことができる、すなわち当てられる電解液噴射の侵襲領域でだけ材料切削が行われる。本発明の第1の択一形態によれば、カソード自体がマニピュレータエレメントに、好ましくは多軸、とりわけ少なくとも5つの運動軸を有するロボットに配置され、配設された制御装置により、このロボットを介してカソードが自由に(3次元で)空間内を運動することができる。すなわち、カソードは任意に運動することができ、したがって任意の幾何形状を走行することもできる。カソード自体は直径が数ミリメートルの非常に薄く細い構成部品であるから、したがってカソードはロボットを介して非常に細く狭い構成部品領域にも移動することができ、そこを走行することができる。このことにさらに、幾何形状が非常に複雑な構成部品であっても、通常はほとんど接近することのできない高品質の領域で、加工力なしで加工することができるようになる。本発明の第2の択一形態によれば、金属構成部品がマニピュレータエレメント、ここでも好ましくは多軸、とりわけ少なくとも5つの運動軸を有するロボットによって自由に(3次元で)空間内を運動することができる。すなわちここでは金属構成部品が薄いカソードに対して任意に運動される。この択一運動によっても、運動性が自由であるので複雑な幾何形状であっても加工することができる。したがって本発明の基礎とする技術思想は、カソードと金属構成部品との間に空間的な自由相対運動が存在しており、このことはマニピュレータエレメントによって実現されることである。
【0006】
電気化学的作業方法により、種々の材料、すなわち機械加工性が非常に悪いため、通常の作業方法によっては加工するのが非常に困難な材料であっても、簡単にECM法で加工できることを可能にする。したがって、カソードまたは金属構成部品の運動自由性、すなわち空間内の任意の運動性と結び付いて、本発明による方法は、任意の構成部品あるいは複雑な幾何形状を、使用される材料に関係なく精密加工することができる可能性を提供する。
【0007】
すでに述べたように、マニピュレータエレメントとして、好ましくは5つの運動軸を有すべきロボットが設けられているが、このロボットは6軸とすることもでき、これにより最終的にさらに大きな運動自由度が得られる。この多軸性によって、3つの空間方向内での並進運動も、空間方向を中心にする回転運動も可能になる。
【0008】
本発明のさらなる形態では、本発明の第1の択一形態のようにカソードだけに、または本発明の第2の択一形態のように金属構成部品だけに、運動が制限されていない。そうではなく(カソードの運動性が自由である場合には)金属構成部品も、または(金属構成部品の運動性が自由である場合には)カソードも追加で運動させることができる。すなわちたとえば1つまたは複数の空間軸に沿った並進運動を許容し、または1つまたは複数の空間軸を中心に場合により付加的に回転させることができる。すなわちそれぞれ別の中央作業エレメントにおいて存在する付加的な運動自由度が、マニピュレータエレメントによって得られる運動可能性に付け加えられる。
【0009】
カソードは既述のように、直径が数ミリメートルの薄い小管であり、その場合、カソードの断面は円形であり、丸い電解液噴射を放出する。その代わりに、幅よりも長い、擬似的に「潰した」カソードも、または他の任意の断面を備える中空カソードも使用することができる。電解液噴射の幾何形状に応じて作業領域の幾何形状が規定され、したがって加工すべき構成部品部分に応じて対応するカソード幾何形状が選択される。接近するのが困難なワークピース部分に良好に到達できるようにするため、湾曲した、または角度の付けられたカソード実施形態を使用することもできる。
【0010】
重要なプロセスパラメータは、カソードとワークピースとの間隔、作動電圧またはプロセス電流、カソードの被加工箇所上の滞在時間、またはこれと結び付いたカソードの金属構成部品に対する送り速度、ならびに電解液の組成と流量である。これらのパラメータを適切に選択することにより、材料切削を切削深度と切削速度に関して制御することができる。ここではパラメータの調節の際に、場合により本来の作業領域外での材料切削も引き起こしてしまう散乱電流の発生ができるだけ小さくなることに常に注意を払うべきである。たとえばカソードと金属構成部品との間に印加される作動電圧は典型的には5V〜200Vの間であり、またはそれらの間に流れるプロセス電流は一定であるか、またはパルス制御することができ、および/または電解液の流量は10〜100リットル/hとすることができる。
【0011】
ロボットの制御、すなわち加工すべき構成部材幾何形状へ走行するためのカソードの運動は、対応する制御プログラムを有する適切な制御装置を介して行われる。構成部品あるいは構成部品幾何形状のモデルが制御の基礎となり、このモデルは制御に用いられる適切なプログラムにファイルされている。運転時にはプログラムに基づいて、カソードまたは金属構成部品(どちらがマニピュレータエレメントによって運動されるかに応じて)が、加工すべき構成部品部分に沿って運動される。すでに述べたように材料切削は、調節されたプロセスパラメータ、とりわけカソードから構成部品表面までの間隔に最終的に依存するから、本発明の有利な改善形態では、作動電圧とプロセス電流の比から、カソードと金属構成部品の表面との間隔が求められ、および/またはこれに依存して上記のプロセスパラメータのうちの任意の1つ、たとえば送り速度を変化することによってプロセス経過が制御される。ここで送りは一定であるか、または間欠的であってよい。
【0012】
作動電圧とプロセス電流は検出され、電解液噴射の断面積、すなわち作業面積も既知である。これらのパラメータは、一義的に決定された公式関係においてオームの法則により、カソードと金属構成部品表面との間隔に一次近似で関連している。したがって切削深度および作業進行度は、前記のパラメータと一義的に結び付いている。これにより任意のパラメータ、たとえばカソードの金属構成部品表面上での滞在時間、または構成部品表面に沿ったカソードの送り速度を、連続的に求められたカソード間隔に依存して所望の作業結果が達成されるように調節することができる。
【0013】
本発明のさらなる形態では、電解液噴射を少なくとも部分的に、好ましくは側方で完全に包囲するガスカーテン、好ましくはエアカーテンを、カソードを介して吹き出す。すなわち、カソードを介して電解液噴射だけが放出されるのではなく、電解液噴射を好ましくは完全に包囲するガス流も放出される。これにより、電解液噴射が構成部品表面に集中的に放出され、作業領域の周囲からは「吹き出し」によって遠ざけられる。これにより、隣接する面に望ましくない侵襲が入り込むことが回避され、したがって散乱電流が隣接領域で望ましくない切削を生じさせることが回避される。したがってノズル自体は、内側電解液チャネルと、外側空気チャネルを備えるダブルウォールに実施されており、これらのチャネルは対応する供給管に接続されている。空気の他のガス、たとえば窒素またはヘリウムのような不活性ガスをガスカーテンの形成のために使用することもできる。
【0014】
すでに述べたように、本発明の方法は、とりわけ(金属および合金、耐高温)材料からなる構成部品を加工するのに適し、主にスチール、チタン合金、およびとりわけ極端に機械加工性の悪いニッケル合金製の金属構成部品の加工に役に立つ。
【0015】
本発明の方法によりとくに好適に加工される金属構成部品は、ターボ装置の構成部品、たとえばハウジング構成部品、あるいはとりわけブレード構成部品である。とりわけ非常に複雑な幾何形状を有する、製作の困難なブレード構成部品は、組み込みロータ(いわゆるブリスク)、案内ブレードクラスタまたは案内ブレードリングであり、これらはたとえばガスタービンの高圧圧縮機で使用される。このような組み込みロータ、案内ブレードクラスタまたは案内ブレードリングには極端な要求が課され、したがってこれらはチタン合金製、または耐高温スチール製、または好ましくはニッケル合金製である。とりわけ案内ブレードクラスタまたは案内ブレードリングは非常に複雑な幾何形状を有し、通常は2つのカバーベルトからなり、それらの間に捻られた案内ブレード片が伸長している。ブレード片の間隔は、数ミリメートルからセンチメートルの範囲である。これにより、ブレード片の間の領域に接近することが大きく制限されている。それにもかかわらず、コーナー/エッジあるいはそれら領域の移行面は本発明の精密加工を必要とする。そのような案内ブレードクラスタまたは案内ブレードリングが、中実材料からスピニング法または切削法によって作製される場合、必然的に著しい精密加工コストが、とりわけブレード片の間の領域に発生する。ブレード構成部品、とりわけ案内ブレードクラスタまたは案内ブレードリングを作製する場合でも、本発明の方法をとくに有利に、とりわけブレード片間隔またはカバーベルト間隔が非常に小さい場合には使用することができる。なぜなら本発明により、2つのブレード片の間の領域に存在するエッジと面を、および/またはブレード片自体を簡単に加工することができるからである。というのも、非常に薄く細いカソードが、これを空間内で任意に運動させるロボットを介して、これらの非常に狭い領域にも移動され、そこに高精度に位置決めすることができるからである。
【0016】
当該方法の他に本発明はさらにこの方法を実施するための装置に関するものである。この装置は多軸、好ましくは5軸または6軸のロボットの形のマニピュレータエレメントと、電解液を電解液タンクからカソードに供給する電解液供給機構と、カソードおよび金属構成部品と接続されたプロセスエネルギー源と、ならびに当該装置の動作を制御する制御装置とを含み、前記マニピュレータエレメントにはノズル状カソードの形のECM工具、または金属構成部品を保持するワークピースホルダが配置されている。ロボットにある対応のカソードホルダにもちろん交換可能に配置されているカソードは、円形、縦長、または他の任意の断面を有し、加工課題に応じて所望のカソード形状が使用される。接近するのが困難なワークピース部分に良好に到達できるようにするため、湾曲した、または角度の付けられたカソード実施形態が可能である。
【0017】
本発明のさらなる形態では、ガス供給機構を介して供給されるガス、好ましくは空気を放出するためのカソードは、カソードから流出する電解液噴射を少なくとも部分的に、好ましくは完全に側方で包囲するエアカーテンの形に構成することができる。これにより、作業領域に材料切削が集中し、隣接する領域の影響をさらに低減することができる。したがってノズル自体は、たとえば、内側電解液チャネルと、これを包囲する外側ガスチャネルを備えるダブルウォールに実施されており、これらのチャネルは対応する供給管に接続されている。
【0018】
有利なさらなる形態では、カソードがマニピュレータエレメントに配置されている場合には、ワークピースホルダが付加的に、好ましくは複数の空間軸に沿ってまたは中心にして可動であり、あるいはワークピースホルダがマニピュレータエレメントに配置されている場合には、カソードが付加的に、好ましくは同様に複数の空間軸に沿ってまたは中心にして可動である。言い替えると本発明の装置では2つの運動方式が設けられている。すなわち、一方ではカソード、または金属構成部品を含めたワークピースホルダを運動させるためのロボットであり、他方では追加のワークピースホルダまたはカソードであり、これによりそれぞれの適用事例に対して、カソード(工具)と金属構成部品(ワークピース)との間の適合された相対運動経過を調節することができる。
【0019】
最後にカソードから構成部品表面までの間隔を検出する手段が設けられている。このノズル間隔は、切削能力および切削深度に対する尺度であり、オームの法則を介してプロセスパラメータである作動電圧、プロセス電流および電解液噴射の断面と一次近似で明確に結び付いており、したがって作業結果を連続的に監視するためには間隔検出が有利である。これに関する手段は、間隔を検出する制御装置が適切である。必要であれば検出された間隔に基づき、任意のパラメータ、たとえばカソードの金属構成部品表面上での滞在時間、または構成部品表面に沿ったカソードの送り速度を、所望の作業結果が達成されるように調節することができる。しかし間隔検出は、1つまたは複数の間隔センサによって行うことができ、制御装置はさらに動作を、すなわち関連のプロセスパラメータをセンサ測定結果に対応して制御する。
【0020】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、以下に説明する実施例から、ならびに図面に基づいて明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の方法および本発明の装置により加工すべき案内ブレードクラスタの斜視図としての基本図である。
【図2】本発明の装置の基本図である。
【図3】作業領域であるカソード・金属構成部品の基本図である。
【図4】カソード運動の基本図である。
【図5】電解液噴射を側方で制限するガスカーテンを有するカソードの基本図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、案内ブレードクラスタ2の形の金属構成部品1を斜視図に示しており、この案内ブレードクラスタは完全なリングを形成するために、複数のこの種のクラスタとリング形状に組み立てられる。このような案内ブレードクラスタは、2つのカバーベルト3、4ならびにこれらの間に伸長する複数のブレード片5からなる。カバーベルト3、4とブレード片5は、スピニング加工方法および/または切削加工方法によって中実材料から仕上げられる。ブレード片5は複雑に捻れた幾何形状を有し、互いに非常に狭く離間している。すなわち個々のブレード片5の間には非常に狭い中間空間6しかない。幾何形状が複雑であるため、ブレード片5とカバーベルト3、4との間の移行部内で、またはカバーベルト3、4の面およびブレード片5自体の面においてエッジ領域ならびに面が湾曲しているので、金属構成部品1またはその部分領域(カバーベルト3、4、ブレード片5)を対応する作業方法を使用して前処理した後、それらを、本発明の方法を使用して精密加工しなければならない。
【0023】
このために、図2に基本図として示された装置が用いられる。この装置は、多軸、好ましくは少なくとも5軸のロボット8の形のマニピュレータエレメント7を含み、ロボットは、対応するワークピースホルダ10上に配置された金属構成部品1のECM加工に用いられるカソード9を担持する。カソード9はノズル状の細い管であり、この管はロボット8を介して空間内を任意に運動することができる。したがってこれにより、任意の3次元構造体を走行し、加工することができる。カソード9が運動する他に、ワークピースホルダ10も運動矢印が示すように、1つまたは複数の空間軸に沿って並進運動が、または1つまたは複数の空間軸を中心に回転運動が、あるいは並進運動と回転運動が可能である。
【0024】
カソード9を介して液状の電解液、たとえばNaCl溶液が作業領域に直接放出される。したがって電極9は、すでに述べたようにノズルまたは管として実施されている。この目的のために電解液タンク11が設けられており、電解液タンク15から電解液12が、制御されるポンプ13および適切な電解液供給管14を介してカソード9に供給される。ロボット8には対応する接続ケース15が設けられており、この接続ケース15には管路が開口し、カソード9も交換可能に収容されている。流量計16を介して電解液の流量を、圧力計17を介して流体圧を監視することができる。さらに電解液タンク11内には、電解液特性を対応して調節または監視することができるようにするため、温度測定装置18、ヒーター制御器19、ならびにpH測定機20とアドミタンス測定機21が設けられている。
【0025】
電解液フィードバック管23は、カソード9を介して放出された後に収集された電解液を再び電解液タンク11にフィードバックする。すなわち循環路が存在している。ロボット8ならびにワークピースホルダ10がハウジング24内に設けられている。すなわち装置は作業領域に関して閉鎖されている。
【0026】
装置はさらにプロセスエネルギー源26を有し、これを介して作動電圧ならびにプロセス電流を印加することができる。パラメータが、電流計27および電圧計28を介して対応して監視される。給電線29も接続ケース15まで延在しており、給電線29はカソード9と接触接続されている。給電戻り線22が、金属構成部品1からプロセスエネルギー源26に戻っている。プロセス中は、電解液噴射によって電流回路が閉じられる。
【0027】
最後にガス供給部が、ここに示された実施形態では圧縮空気供給部としてたとえばコンプレッサ30の形で設けられており、コンプレッサ30から空気供給管31が同様に接続ケース15に延在している。この空気供給管31も、ダブルウォール管として実施されたカソードと接続されている。中央チャネルでは電解液が供給され、外側チャネルでは供給された圧縮空気を介してエアカーテンを吹き出すことができ、このエアカーテンが電解液を包囲する。空気供給管31内には制御される絞り弁32ならびに流量計33が設けられており、流量計33を介して空気流を測定することができる。
【0028】
したがって大きく3つに区別することのできる領域が設けられている。すなわち領域A「プロセスエネルギー」、領域B「電解液供給部」、そして領域C「圧縮空気供給部」である。
【0029】
最後に制御装置34が設けられている。制御装置はロボット8の運転を制御する。すなわちカソード9が空間内を自由運動し、ワークピースホルダ10もそのように運動する。もちろん制御装置34を介して、図2の電解液供給およびガス供給のための装置のすべての部分コンポーネント、ならびにプロセスエネルギー源26(すなわち領域A、BおよびC)を制御し、監視することもできる。
【0030】
図3は、基本図としてカソード9の先端を断面で示す。管状かつノズル状のカソード9を通って電解液12が流れる。カソード9に対して離間して、アノードに極付けられた金属構成部品1、たとえば図1から既知の案内ブレードクラスタ2が配置されている。カソード9は、矢印線図によって示されるように、3つの空間方向内を並進運動することができ、3つの空間方向の各々を中心に回転運動することもできる。このためにロボット8が、制御装置34を介して対応して制御される。このため制御の基礎として、電極9が沿って運動するべき表面を規定する金属構成部品1のモデルがファイルされている。
【0031】
電解液12がノズル状または管状のカソード9を通って搬送され、金属構成部品1に放出されることが分かる。電解液噴射12内には電界36が形成される。局所的に制限された電気化学的金属切削が領域37で生じる。すなわち窪みが金属構成部品1内に形成される。選択されたプロセスパラメータに対応して、対応する切削深度が生じる。
【0032】
図4は、基本図としてカソード9の運動を示す。このカソード9は、たとえば円形の断面形状の場合、3ミリメートルの直径を有し、元々のワークピース表面までたとえば1ミリメートル離れている。矢印Pにより示されたカソード9の水平運動により、セル状の領域37を切削できることが分かる。図4には、1つの空間座標に沿った1つの運動しか図示されていないが、すでに述べたように、カソード9は空間内を任意に運動することができる。すなわち材料を所望の程度に切削するために、図1に示された案内ブレードクラスタの円形エッジ領域、または3次元に捻れたブレード片5等を簡単に走行することができる。
【0033】
最後に図5は、ダブルウォール管として実施されたカソード9の別の実施形態を示す。中央チャネル38内を電解液12が案内される。外側チャネル39では、図2には空気供給装置31として示されたガス供給装置を介して供給された圧縮空気が排出される。図5が示すように、電解液12を全面で包囲するガスカーテン40が形成される。これにより、隣接する金属構成部品表面への侵襲の低減が達成できる。
【0034】
図面には例として断面が円形のカソードが図示されているが、カソードはもちろん縦長または他の任意の断面を有することができる。カソードはたとえば、電解液チャネル内に10mmの長さと、3mmの幅を有することができ、これにより長いが、狭い領域を加工することができる。このことはとりわけ、大きな面を加工するために目的に適っている。ガスカーテンが存在する場合、対応するエアチャネルはもちろん対応する幾何形状を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の切削により、および/または材料の変形加工により形成された3次元形状を有する金属構成部品の製造方法であって、1つまたは複数の高級構成部品部分の加工が、電解液を作業領域に放出するノズル状カソードを用いた電気化学的加工によって行われ、前記カソードまたは金属構成部品が、マニピュレータエレメントによって空間内を自由に移動される製造方法。
【請求項2】
マニピュレータエレメントとして、複数の運動軸、好ましくは5つまたは6つの運動軸を有するロボットが使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
マニピュレータエレメントを介してカソードが運動される場合、加工中に、可動のワークピースホルダに配置された金属構成部品も運動されるか、またはマニピュレータエレメントを介して金属構成部品が運動される場合、加工中に、可動のホルダに配置されたカソードも運動されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
断面が実質的に円形の噴射として、または断面が任意の形状の噴射として電解液が、対応する断面形状を有するカソードから放出されることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
カソードと金属構成部品との間に印加される作動電圧、またはそれらの間に流れるプロセス電流は一定であるか、またはパルス制御され、および/または電解液の流量は10〜100リットル/hであることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
作動電圧とプロセス電流の比から、金属構成部品の表面までのカソードの間隔が求められ、および/またはそれに依存してプロセス経過が、任意のプロセスパラメータの変化によって制御されることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
電解液を少なくとも部分的に、好ましくは完全に側方で包囲するガスカーテンがカソードを介して吹き出されることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
加工すべき構成部品は、金属材料または合金材料、とりわけスチール、チタン合金またはニッケル合金からなることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
金属構成部品として、ターボ装置の構成部品、とりわけブレード構成部品が加工されることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
ターボ装置の構成部品は、ブレード構成部品、とりわけ案内ブレードクラスタまたは案内ブレードリングであることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
高級構成部品部分として、ブレード構成部品の2つのブレード片の間の領域のエッジと面、および/またはブレード構成部品自体のブレード片が加工されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項記載の方法を実施するための装置であって、多軸、好ましくは5軸または6軸のロボット(8)の形のマニピュレータエレメント(7)と、電解液(12)を電解液タンク(11)からカソード(9)に供給する電解液供給機構(11、13、14)と、カソード(9)および金属構成部品(1)と接続されたプロセスエネルギー源(26)と、ならびに当該装置の動作を制御する制御装置(34)とを含み、前記マニピュレータエレメント(7)にはノズル状カソード(9)の形のECM工具、または金属構成部品を保持するワークピースホルダ(10)が配置されている装置。
【請求項13】
カソード(9)は、円形または任意の形状の断面を有することを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】
ガス供給機構(30、31)を介して供給されるガス、とりわけ空気を放出するためのカソード(9)は、該カソードから流出する電解液噴射を少なくとも部分的に、好ましくは完全に側方で包囲するガスカーテン(40)の形に構成されていることを特徴とする請求項12または13記載の装置。
【請求項15】
カソードがマニピュレータエレメントに配置されている場合、ワークピースホルダ(10)が付加的に可動であり、またはワークピースホルダがマニピュレータエレメントに配置されている場合、カソードが付加的に可動であることを特徴とする請求項12から14までのいずれか一項記載の装置。
【請求項16】
カソード(9)から構成部品表面までの間隔を検出する手段が設けられていることを特徴とする請求項12から15までのいずれか一項記載の装置。
【請求項17】
前記手段は、作動電圧とプロセス電流との比に基づいて間隔を求め、場合によりそれに依存してプロセス経過を、任意のプロセスパラメータの変化によって制御する制御装置(34)であり、または
前記手段は少なくとも1つのセンサであり、
前記制御装置(34)は場合により、センサ検出結果に依存してプロセス経過を、任意のプロセスパラメータの変化によって制御することを特徴とする請求項16記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−30352(P2012−30352A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164016(P2011−164016)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(511182415)ライシュトリッツ トゥルボマシーネン テクニーク ゲーエエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】