説明

金属空気電池およびその製造方法

【課題】電池特性の劣化を抑制し得る平板状に拘束した金属空気電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】正極2、負極3、電解質層4、前記正極に積層されている酸素拡散層5、前記の正極と負極とセパレータと酸素拡散層とを収容するためのラミネートフィルム6、前記正極に酸素を取り込むための複数の酸素孔7が設けられている酸素孔設置基材8、および電池不使用時には酸素孔からの酸素の取り入れを阻止し電池使用時に酸素孔を開孔するために配置されているシール基材9が積層された金属空気電池1であって、前記電池が前記ラミネートフィルムの外側に設けた拘束装置13により平板状に拘束されていて、該拘束装置は拘束板11および拘束治具を12備えていて、拘束した状態で前記酸素孔は開孔され得る電池、およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池に関し、さらに詳しくは特定の構造を有することによって電解液を用いる場合も拘束による電解液移動が抑制されて電解質保持状態の向上を実現し得て、電池特性の劣化を抑制し得る金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放電できる電気容量が大きく小型化や軽量化が容易であり、外部からの酸素を用いるため資源的な制約が少なく環境負荷も従来のリチウム電池に比べて小さい金属空気電池が注目され、様々な研究が行われている。
この金属空気電池は、外部からの酸素を用いこれを正極活物質とする電池であり、主要な構成材として正極、電解質、負極、酸素拡散層および外装材を含むものである。
【0003】
そして、このような金属空気電池としては、空気の導入を可能とし電池の性能を維持し得るものでなければならず、様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、正極および負極の間に非水電解質層を挟んでなる発電部と、発電部を内部に収容し正極に酸素を取り込む空気孔が形成されたラミネートフィルムなどの外装材と、空気孔を覆うように外装材の外表面に接着された第1の被覆材と、前記第1の被覆材表面に配置され、空気孔近傍において第1の被覆材に接着された第2の被覆材とを具備する非水電解質空気電池が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、カーボンを主体とするガス拡散型酸素電極を正極とし、金属リチウム又はリチウム含有化合物を負極とし、正極と負極との間に非水電解質が配置された構造を有し、セル固定用ねじでセル全体を固定したリチウム空気電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−17143号公報
【特許文献2】特開2011−14478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの従来技術によれば安定的な充放電を実現するために電池を平板状に拘束しようとすると、前者の電池ではラミネート中又はラミネート封入後にシール部からの漏液、拘束による電解液移動などが生じて平板状に拘束した電池を得ることが困難であるとか、後者においては平板状に拘束することが困難である。
このため、前記の従来技術によれば拘束による電解液移動を抑制することが容易ではなく、電解液保持状態の改善を図れて、電池特性の劣化を抑制し得る平板状に拘束した金属空気電池を得ることは困難であった。
従って、本発明の目的は、電解質層保持状態の向上を実現し得る平板状に拘束した金属空気電池を提供することである。
また、本発明の目的は、前記の金属空気電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、正極、負極、電解質層、前記正極に積層されている酸素拡散層、前記の正極と負極と電解質層と酸素拡散層とを収容するためのラミネートフィルム、前記正極に酸素を取り込むための複数の酸素孔が設けられている酸素孔設置基材、および電池不使用時には酸素孔からの酸素の取り入れを阻止し電池使用時に酸素孔を開孔するために配置されているシール基材が積層された金属空気電池であって、前記電池が前記ラミネートフィルムの外側に設けた拘束装置により平板状に拘束されていて、該拘束装置は拘束板および拘束治具を備えていて、拘束した状態で前記酸素孔は開孔され得る、前記電池に関する。
【0008】
また、本発明は、金属空気電池の製造方法であって、正極、負極、電解質層および前記正極に積層されている酸素拡散層をラミネートフィルムによって収容し、さらに前記正極に酸素を取り込むための複数の酸素孔が設けられている酸素孔設置基材および電池不使用時には酸素孔からの酸素の取り入れを阻止し電池使用時に酸素孔を開孔するために配置されるシール基材を積層し、前記ラミネートフィルムの外側に拘束板および拘束治具を備えた拘束装置を設けて前記電池を平板状に拘束し、拘束した状態で前記酸素孔が開孔され得る、前記方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電解質層保持状態の向上を実現し得る平板状に拘束した金属空気電池を得ることができる。
また、本発明によれば、前記の金属空気電池を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1の実施態様の金属空気電池の部分拡大模式図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施態様の金属空気電池の部分拡大模式図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施態様の金属空気電池の部分拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に、本発明において、以下の実施態様を挙げることができる。
1)前記酸素孔設置基材が、拘束板の一部によって構成されている前記金属空気電池。
2)前記酸素孔設置基材が、ラミネートフィルムの一部によって構成されている前記金属空気電池。
3)前記拘束装置が、さらに、前記酸素孔を開孔するための開孔用部材を備えてなる前記金属空気電池。
4)前記シール基材が、シールテープ又は薄板である前記金属空気電池。
5)前記ラミネートフィルムが、2層の熱融着性プラスチックフィルムの間に金属箔を積層したフィルムである前記金属空気電池。
6)前記酸素拡散層が、酸素透過膜である前記金属空気電池。
7)前記負極が、Liを含有している前記金属空気電池。
【0012】
本発明においては、正極、負極、電解質層、前記正極に積層されている酸素拡散層、前記の正極と負極と電解質層と酸素拡散層とを収容するためのラミネートフィルム、前記正極に酸素を取り込むための複数の酸素孔が設けられている酸素孔設置基材、および電池不使用時には酸素孔からの酸素の取り入れを阻止し電池使用時に酸素孔を開孔するために配置されているシール基材が積層された金属空気電池であって、前記電池が前記ラミネートフィルムの外側に設けた拘束装置により平板状に拘束されていて、該拘束装置は拘束板および拘束治具を備えていて、拘束した状態で前記酸素孔は開孔され得る金属空気電池であることが必要であり、これによって電解液を用いる場合には電解液漏れの防止や電解液保持状態の改善を図り、電池特性の劣化を抑制し得る平板状に拘束した金属空気電池であり得る。
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳説する。
本発明の第1の実施態様の金属空気電池1は、図1に示すように、正極2、負極3、電解質を含むセパレータからなる電解質層4、前記正極2に積層されている酸素拡散層5、前記の正極と負極と電解質層と酸素拡散層とを収容する(ラミネート封止構造は図示されていない)ためのラミネートフィルム6、前記正極2に酸素を取り込むための複数の酸素孔7が設けられている酸素孔設置基材8、および電池不使用時には酸素孔からの酸素の取り入れを阻止し電池使用時に酸素孔を開孔するために配置されているシール基材9が積層されていて、前記電池が前記ラミネートフィルム6の外側に設けた拘束板11および拘束治具12を備えた拘束装置13により平板状に拘束されていて、拘束した状態で前記酸素孔が開孔され得るものである。
そして、前記第1の実施態様における前記酸素孔設置基材8は、拘束板の一部である酸素拡散層5の上に位置する拘束板11によって構成されている。
【0014】
前記第1の実施態様の金属空気電池の製造は、前記正極、負極、電解質層、酸素拡散層の各部材をラミネート封入し複数の酸素孔がシールされた拘束板(酸素孔設置基材)および拘束治具を備えた拘束装置を設けて平板状に拘束することによって実施し得る。
また、前記第1の実施態様の金属空気電池を使用する際には、前記シール基材を剥がして酸素孔を開孔することによって実施し得る。
【0015】
本発明の第2の実施態様の金属空気電池1は、図2に示すように、正極2、負極3、電解質を含むセパレータからなる電解質層4、前記正極2に積層されている酸素拡散層5、前記の正極と負極と電解質層と酸素拡散層とを収容する(ラミネート封止構造は図示されていない)ためのラミネートフィルム6、前記正極2に酸素を取り込むための複数の酸素孔7が設けられている酸素孔設置基材8、および電池不使用時には酸素孔からの酸素の取り入れを阻止し電池使用時に酸素孔を開孔するために配置されているシール基材9が積層されていて、前記電池が前記ラミネートフィルム6の外側に設けた拘束板11および拘束治具12を備えた拘束装置13により平板状に拘束されていて、拘束した状態で前記酸素孔は開孔され得るものである。
そして、前記第2の実施態様における前記酸素孔設置基材8は、ラミネートフィルムの一部である酸素拡散層5の上に位置するラミネートフィルム6によって構成されている。
【0016】
前記第2の実施態様の金属空気電池の製造は、前記正極、負極、電解質層、酸素拡散層、シール基材の各部材を複数の酸素孔がシールされたラミネートフィルム(酸素孔設置基材)によってラミネート封入し、次いで拘束板および拘束治具を備えた拘束装置を設けて平板状に拘束することによって実施し得る。
また、前記前記第2の実施態様の金属空気電池を使用する際には、シール基材を剥がして酸素孔を開孔することによって実施し得る。
【0017】
本発明の第3の実施態様の金属空気電池1は、図3に示すように、正極2、負極3、電解質を含むセパレータからなる電解質層4、前記正極2に積層されている酸素拡散層5、前記の正極と負極と電解質層と酸素拡散層とを収容する(ラミネート封止構造は図示されていない)ためのラミネートフィルム6、前記正極2に酸素を取り込むための複数の酸素孔7が設けられている酸素孔設置基材8、および電池不使用時には酸素孔からの酸素の取り入れを阻止し電池使用時に酸素孔を開孔するために配置されているシール基材9が積層されていて、前記電池が前記ラミネートフィルム6の外側に設けた拘束板11および拘束治具12を備えた拘束装置13により平板状に拘束されていて、拘束した状態で前記酸素孔は開孔され得るものである。
そして、前記第3の実施態様における前記基材8は、拘束板の一部である酸素拡散層5の上に位置する拘束板11によって構成され、拘束装置13には酸素孔を開孔するための開孔用部材14が備えられている。
【0018】
前記第3の実施態様の金属空気電池の製造は、前記正極、負極、電解質層、酸素拡散層、開孔用部材の各部材を複数の酸素孔がシールされた拘束板(固定部材)とともにラミネート封入し、次いで拘束板および拘束治具を備えた拘束装置により平板状に拘束することによって実施し得る。前記の開孔用部材としては、切り刃およびバネが挙げられる。
また、前記第3の実施態様の金属空気電池を使用する際には、拘束装置に備えた前記酸素孔を開孔するための開孔用部材、例えば切り刃およびバネを用いて実施し得る。この場合、酸素孔を介したガス加圧により、切り刃(開口用部材14)がシール基材9を開孔する。
【0019】
前記本発明の第1〜第3の実施態様の金属空気電池において、通常、正極2に接続された正極端子15および、負極3に接続された負極端子16が、それぞれラミネート封止構造体(図示せず)の外部に突出されている。
前記本発明の第1〜第3の実施態様の金属空気電池によれば、ラミネート中又はラミネート封入後にシール部からの漏液、拘束による電解液移動などが生じることがないか実質的に抑制し得て、電池特性の劣化を抑制し得る平板状に拘束した金属空気電池を得ることができる。
【0020】
本発明における正極は、導電性材料を有する正極層を備えたものであり得る。
前記正極は、通常、触媒およびバインダーの少なくとも一方、好適には両成分を含有し得る。
前記の導電材料としては、カーボン材料が挙げられる。カーボン材料は、多孔質材料であってもよくそうでなくともよいが、好適には1mL/g以上の高い細孔容積を有するものであり得る。正極層におけるカーボン材料の割合は10〜99質量%の範囲であり得る。
【0021】
また、前記の正極における触媒としては、特に制限はなく、例えばMnO、CeOなどの無機材料や、Coフタロシアニン、Feポルフィリンなどの有機材料、Au、Pt、Agなどの貴金属材料などが挙げられる。正極層における触媒の割合は1〜90質量%の範囲であり得る。
また、前記の正極におけるバインダーとしては、PTFE、PVdF、SBRなどのそれ自体周知の材料を挙げることができる。正極層におけるバインダーの割合は1〜40質量%の範囲であり得る。
【0022】
本発明における前記正極は、例えば集電体、例えば多孔質構造体、例えばカーボンペーパー、カーボンクロス、金属メッシュなどや、非多孔質体、例えば金属箔に、前記の導電性材料、触媒およびバインダーを溶媒に分散させたスラリーを塗工し、乾燥、切断することによって得ることができる。
前記のスラリーを調製する際の溶媒としては、沸点が200℃以下の有機化合物、例えばアセトン、NMPなどを用い得る。
また、前記のスラリーを塗工する際には、ドクターブレード法、インクジェット法などを用い得る。
【0023】
本発明における負極は、負極材料種として金属を含有する負極活物質を有する負極層を備えたものであり得る。
前記負極材料種としては、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Zn、Feなど、エネルギー密度の高い電池が得られることから好適にはLiが挙げられる。
そして、Liの場合、Li金属やLi炭素質物、Li酸化物、Li硫化物、Li窒化物などが挙げられる。
本発明における前記負極は、集電体、例えばSUS、Niなどの任意の金属箔を用いてそれ自体周知の技術によって調製し得る。
【0024】
本発明における電解質層は、電解質とセパレータとを含むものであり得る。
前記のセパレータとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PP製の1層〜3層構造の多孔膜、樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布が挙げられる。
前記の電解質は、負極層および正極層の間で金属イオンの伝導を行うためのものである。この電解質としては、負極金属種に応じたイオン伝導性を示す材料であれば、液体、ゲル、ポリマー、無機固体を問わず任意の材料であり得る。特に、電解質が液体の場合は、有機溶媒とリチウム塩とを加えたものであり得る。また、固体電解を用いる場合はセパレータは不要である。
【0025】
前記のリチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClOおよびLiAsF等の無機リチウム塩;およびLiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等が挙げられる。
また、前記有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシメタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびこれらの混合物やイオン液、例えばP13−TFSI、PP13−TFSI、PP13−TFSA、THMA−TFSI等を挙げることができる。前記有機溶媒として、特に酸素ラジカル耐性の高いものが好適である。
【0026】
本発明における酸素拡散層は、前記正極に積層されていて外部から酸素孔を通じて取り込まれた酸素を正極に拡散させる機能を有するもので、例えば酸素透過膜から構成され得る。
前記酸素透過膜として、空孔率が5%以上60%以下にするのが好ましい。空孔率が5%より小さい場合、酸素分子が拡散することができる細孔空間が不十分となり、酸素の透過速度が著しく低下してしまう。空孔率が60%より大きい場合、膜の強度が著しく低下してしまう。より最適な空孔率の範囲は、8%以上50%以下であり得る。
【0027】
前記の本発明の酸素拡散層は、高分子材料、例えばポリエチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ナイロン6、ナイロン66、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、酢酸セルロース、ポリイミドなど、好適にはポリテトラフルオロエチレン、ポリジメチルシロキサンから形成され得る。
【0028】
本発明におけるラミネートフィルムは、本発明における前記の正極、負極、電解質を含むセパレータ、および前記正極に積層されている酸素拡散層を収容するための基材である。前記ラミネートフィルムは電解質の散逸を防止し、また外装基材として機能し得る。
また、前記の本発明の第2の実施態様においては、ラミネートフィルムは正極に酸素を取り込むための複数の酸素孔が設けられる酸素孔設置基材としての機能をも有し得る。
【0029】
前記ラミネートフィルムとしては、少なくとも1層が熱融着性ポプラスチックフィルムであるものが挙げられ、例えば、単一の熱融着性プラスチックフィルム、少なくとも1層には金属箔が積層された熱融着性プラスチックフィルム、好適には2層の熱融着性プラスチックフィルムの間に金属箔を積層したフィルムが挙げられる。
前記の熱融着性プラスチックフィルムとしては、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリアミドフィルム、熱可塑性ポリイミドフィルムなどが挙げられる。また、前記の金属箔としては、Al箔、SUS箔、Ni箔などが挙げられる。熱融着性プラスチックフィルムと金属箔との積層は熱融着あるいは接着剤を用いてなされ得る。
【0030】
本発明においては、正極に酸素を取り込むために複数の酸素孔(空気孔ともいう)が設けられている酸素孔設置基材が積層されている。
前記の酸素孔は、通常直径0.1〜3mmの範囲、好適には0.3〜1mmの範囲、例えば直径0.5mmの貫通孔を可能な限り多い複数個、例えば5〜10個程度の貫通孔を酸素孔設置基材に設けられ得る。
前記の固定基材は、前記ラミネートフィルムの一部であり得るか、あるいは前記拘束板の一部であり得る。前記の一部とは、酸素拡散層に対面している面の一部、好適には可能な限り多くの面部分であり得る。
【0031】
本発明においては、電池使用時に酸素孔を開孔するためにシール基材が積層されている。このシール基材は、電池の不使用時には前記空気孔を覆って外部からの酸素の取り込みを阻止し、電池使用時には酸素孔を開孔させる機能を有するものである。
前記のシール基材としては、シールテープ又は薄板であり得る。
前記のシール基材として、プラスチックシート、例えばポリ塩化ビニルシートを用い得る。シール基材の厚みは、0.01〜0.5mm程度であり得る。
【0032】
本発明におけるシール基材は、図1に示すように拘束板に設けられた酸素孔をシールするために拘束板に積層されてもよく、図2に示すようにラミネートフィルムに設けられた酸素孔をシールするためにラミネートフィルムに積層されてもよく、あるいは図3に示すように拘束板に設けられた酸素孔を開孔用部材によって開孔されるまで外部からの酸素の取り込みを防止するためにラミネートフィルムに積層されてもよい。
前記の開孔部材による開孔は、例えば切り刃およびバネによって実施し得る。
【0033】
本発明の金属酸素電池においては、電池をラミネートフィルムの外側に設けた拘束板および拘束治具を備えた拘束装置により平板状に拘束され、拘束した状態で酸素孔を開孔し得ることが必要である。
本発明における前記拘束治具とは、広義の拘束手段を意味し、狭義の拘束治具である拘束ロッド以外に、ガスや溶液による拘束であってもよい。拘束治具の材料は拘束圧によって任意に選択し得る。
前記の拘束板および拘束ロッドの材料としては、セラミック材料や熱変形温度が200℃以下のプラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、などが挙げられる。
【0034】
前記の拘束装置を構成する拘束板および拘束治具は、例えば、図1〜図3に示すように、電池の底部で各部材を収容しているラミネートフィルムの底部を支える拘束板と、各部材を収容しているラミネートフィルムを平板状に拘束する上部側の拘束板と両側部で電池を拘束していて拘束板と一体化している拘束ロッドからなり得る。
前記拘束板および拘束治具は、図1〜図3に示すように、ナット(図示せず)あるいはボルト(図示せず)により、あるいは拘束板に拘束治具を貫通させて相互に一体化されている。
【0035】
本発明の金属空気電池は、前記の各部材を熱融着又は接着剤、例えば熱硬化型接着剤、例えばエポキシ接着剤や熱可塑型接着剤、例えばポリアミド系接着剤などを用いて積層し、組立てて作製し得るものであるが、さらに外部からの水分の導入を阻止するために撥水膜が積層されていてもよい。
また、本発明の金属空気電池において、導入される酸素は乾燥された空気中の酸素であってもよいが好適には純酸素であり得る。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を示す。
以下の実施例は単に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0037】
実施例1
下記の材料を用い、下記の工程で、図1に略図を示す金属空気電池の作製を行った。
1−1−1 正極、電解質リザーブ層の形成
カーボンブラック(SuperP:TIMCAL製)、MnO触媒(三井金属鉱山社)およびPVdF−HFPバインダー(Kynar2801Alkema)を質量比にして25:42:33となるようにアセトン溶媒を用いて混合、攪拌してスラリーを調製した。
得られたスラリーをカーボンペーパー集電体(東レ社、TGP−H−90)にドクターブレード法により塗工、乾燥、切断した。
1−1−2 電解質の用意
電解液には、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム・ビストリフルオロメタンスルフォニルアミド(PP13TFSA、関東化学社)にLiTFSA(リチウムビストリフルオロメタンスルフォニルアミド、キシダ化学社)を0.32mol/kgの濃度となるようにAr雰囲気下で一晩攪拌混合溶解させたものを用いた。
1−1−3 セパレータ
ポリプロピレン製不織布を用いた。
1−1−4 負極の作製
金属Li(本城金属社)を用い、Ni箔(ニラコ社)を集電体として貼り付けて作製した。
1−1−5 セル/容器
昭和電工パッケージング社製のAlラミネートに、正極側に酸素取り込み孔である酸素孔を有するラミネート体、拘束板としてPTFE板を、拘束治具としてPTFEボルトを、シール基材としてポリ塩化ビニル板を用い、雰囲気ガスとして純酸素を用いて、図1に示す構造の電池形状のセルを作製した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によって、ラミネート中又はラミネート封入後にシール部からの漏液、拘束による電解液移動などが生じることがないか実質的に抑制し得て、電池特性の劣化を抑制し得る平板状に拘束した金属空気電池を得ることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 本発明の実施態様の金属空気電池
2 正極
3 負極
4 電解質を含むセパレータからなる電解質層
5 酸素拡散層
6 ラミネートフィルム
7 酸素孔
8 酸素孔設置基材
9 シール基材
11 拘束板
12 拘束治具
13 拘束装置
14 開孔用部材
15 正極端子
16 負極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、電解質層、前記正極に積層されている酸素拡散層、前記の正極と負極と電解質層と酸素拡散層とを収容するためのラミネートフィルム、前記正極に酸素を取り込むための複数の酸素孔が設けられている酸素孔設置基材、および電池不使用時には酸素孔からの酸素の取り入れを阻止し電池使用時に酸素孔を開孔するために配置されているシール基材が積層された金属空気電池であって、前記電池が前記ラミネートフィルムの外側に設けた拘束装置により平板状に拘束されていて、該拘束装置は拘束板および拘束治具を備えていて、拘束した状態で前記酸素孔は開孔され得る、前記電池。
【請求項2】
前記酸素孔設置基材が、拘束板の一部によって構成されている請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項3】
前記酸素孔設置基材が、ラミネートフィルムの一部によって構成されている請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項4】
前記拘束装置が、さらに、前記酸素孔を開孔するための開孔用部材を備えてなる請求項1又は2に記載の金属空気電池。
【請求項5】
前記シール基材が、シールテープ又は薄板である請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属空気電池。
【請求項6】
前記ラミネートフィルムが、2層の熱融着性プラスチックフィルムの間に金属箔を積層したフィルムである請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属空気電池。
【請求項7】
前記酸素拡散層が、酸素透過膜である請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属空気電池。
【請求項8】
前記負極が、Liを含有している請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属空気電池。
【請求項9】
金属空気電池の製造方法であって、正極、負極、電解質層および前記正極に積層されている酸素拡散層をラミネートフィルムによって収容し、さらに前記正極に酸素を取り込むための複数の酸素孔が設けられている酸素孔設置基材および電池不使用時には酸素孔からの酸素の取り入れを阻止し電池使用時に酸素孔を開孔するために配置されるシール基材を積層し、前記ラミネートフィルムの外側に拘束板および拘束治具を備えた拘束装置を設けて前記電池を平板状に拘束し、拘束した状態で前記酸素孔が開孔され得る、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−37935(P2013−37935A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173821(P2011−173821)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】