説明

金属箔検知装置

【課題】ホログラム2を有する媒体を取り扱う媒体処理装置において、ホログラム2のような箔状で薄い金属の場合であっても、偽造を精度よく検出できるようにする。
【解決手段】ホログラム2の検知用コイル53に矩形波を印加し、検知用コイル53の出力を微分し、当該微分波形に基づきホログラム2の偽造を検出するようにした。或いは、検知用コイル62の形状を、媒体搬送方向に短くした矩形形状とし、或いはさらに空芯コイルとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム等の紙葉類に存在する金属箔を検知する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ホログラム等の金属箔を検知する方法としては、光の反射、透過を用いて光学パタンを読み取って検知する方法が一般的であった。しかしながら、近年の光検知技術や印刷技術の発達により、高精度な読み取りが可能なスキャナや、ホログラムと同等の光学特性を有する印刷が可能な高性能な印刷装置が市販されており、前記ホログラムを読み取って、これを印刷すれば、容易にホログラムの偽造ができてしまう。
【0003】
また、紙幣等の偽造防止のために、製造過程において細長い金属片を入れて置きこれを検知する技術として、永久磁石の磁束路内に設けられる磁気抵抗素子により、前記金属片が当該磁束路内を通過する際、その磁界の変化により生じる磁気抵抗素子の抵抗値変化を検知する技術はあった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
或いは、さらに精度よく前記金属片を検知する方法として、2つのコイルに正弦波を印加し、金属片検知面から離れた位置に設けたコイルと、金属片検知面に設けたコイルの出力差によって金属片を検知する技術があった。
【0005】
図7は、金属片を検知する従来の金属箔検知装置のブロック図である。同図に示したように、1は紙幣であり、2は紙幣に設けられたホログラムである。100は検知用コイルであり、101は励磁用コイルであり、102はコアである。
【0006】
103は正弦波発生器であり、104は検知用コイル100の信号を全波整流する整流回路であり、105は励磁用コイル101の信号を全波整流する整流回路であり、106は整流回路104と整流回路105の信号の差分を増幅する差動増幅回路である。
【0007】
107は差動増幅回路106の信号を正弦波発生器103の頂点のタイミングでA/D変換するA/Dコンバータであり、108はA/Dコンバータ107から得られた値により金属の有無を判定するCPUである。109はCPUを動作させるプログラムと基準値等を記憶するROMであり、110はCPUが演算した結果などを一時的に書き込むRAMである。
【0008】
以上の構成により、従来の金属箔検知装置は、金属が検知用コイル100の上を通過すると、検知用コイル100のインピーダンスが変化して検知用コイル100の出力は下がるが、励磁用コイル101の出力は変化しないので、検知用コイル100と励磁用コイル101から得られた信号を整流回路104および105により全波整流した後に差分をとった信号により金属の有無を検知することができる。
【特許文献1】特開昭58−2994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の構成の金属箔検知装置のうち、光学的な偽造検知では、高精度に偽造が行われると当該偽造を検知することができず、前記従来の金属検知の方法では、ホログラムのような箔状で非常に薄い金属ではインピーダンスの変化が小さく、当該偽造検知を精度よく行うことができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の課題を解決するために次の手段を採用する。すなわち、本発明は、紙葉類に存在する金属箔を検知する検知装置において、金属箔を検知する検知用コイルに矩形波を印加する矩形波生成手段と、前記検知用コイルの出力を微分する微分手段と、前記微分手段の出力信号に基づいて前記金属箔を検知する手段を具備するようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属箔検知装置によれば、金属箔を検知する検知用コイルに矩形波を印加する矩形波生成手段と、前記検知用コイルの出力を微分する微分手段とを設け、前記微分手段の出力信号に基づいて金属箔を検知するようにしたので、精度よく金属箔を検知することができ、偽造の検知ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態例を、図面を用いて説明する。なお、本発明の金属箔検知装置としては、鉄道の切符や定期券、航空券、入場券、勝馬投票券等のチケット、証券、商品券、紙幣等を取扱うものがあるが、以下に示す実施例においては、一般的な紙幣の偽造を検知する金属箔検知装置をその一例として説明する。また、偽造検知を行うものとして、媒体に設けられた一般的なホログラムを例にして以下説明するが、ホログラムに限らず、媒体に設けられた金属箔や微小な金属片等であっても本発明を適用することができる。
【実施例1】
【0013】
実施例1の金属箔検知装置は、検知用コイルに矩形波を印加し、検知用コイルの出力を微分し、当該微分波形の特徴に基づき、ホログラムの偽造を検知するようにしたものである。
【0014】
(構成)
図1は実施例1の金属箔検知装置のブロック図、図2は当該斜視図、図3は当該正面図である。
【0015】
図1において、1は紙幣であり、2は紙幣1に設けられたホログラムである。53は検知用コイルであり、61は当該コアであり、検知用コイル53はホログラム2の全域を検知できる構造となっている。54は矩形波発信器であり、55は53の信号を微分する微分回路であり、56は微分回路55から得られた信号を全波整流する整流回路である。
【0016】
57は矩形波発信器の頂点にてA/D変換するA/Dコンバータであり、58はA/Dコンバータから得られた値によりホログラムを検知するCPUであり、59はCPUを動作させるプログラムとリファレンスなどを内蔵するROMであり、60はCPUが演算した結果を書き込むRAMである。
【0017】
図2、図3において、4は搬送ローラであり、検知用コイル53は搬送ローラ4と所定のギャップが設けられて固定されている。前記ギャップは紙幣1が通過するに十分であり、かつ検知用コイル53の出力に影響を与えない距離となっている。
【0018】
5はベアリング等で構成された従動ローラであり、6は従動ローラ5と回動自在に固定されたシャフト(図3)であり、7は従動ローラ5を搬送ローラ4側に押圧する方向の力を有するスプリングであり、紙幣1が走行する際にスプリング7により所定の荷重にて搬送ローラ4側に付勢するようになっている。
【0019】
搬送ローラ4は図示せぬ装置のフレームに回動自在に固定され、図示せぬ駆動モータからの動力により、紙幣1搬送方向に回転する。12、13はガイドであり、コイル53に影響を与えない材料、例えばプラスチック等で構成される。
【0020】
(動作)
以上の構成により実施例1の金属箔検知装置は、以下のように動作する。この動作を前述図1ないし図3および図4の金属箔検知装置の動作説明図を用いて説明する。
【0021】
実施例1の金属箔検知装置は、同図に示したように、まず、紙幣1が金属箔検知装置を走行する際、紙幣1に設けられたホログラム2は、箔状のものであるため、図4に示したように検知用コイル53を通過する際に、検知用コイル53の出力の振幅を変えるほど影響はなく変化はないが、矩形波の立ち上がりおよび立ち下がりが鈍る。
【0022】
従って、検知用コイル53の出力を微分回路55により変化分として抽出すると、図1に示した信号aのように振幅の変化として抽出できる。この信号aを整流回路56によって全波整流し信号bを生成し、A/Dコンバータ57によりデジタル化しCPU58にて当該電圧の変化を読み取る。
【0023】
前述の信号aおよび信号bのピーク電圧の変化は、材質、厚み、面積により大きく変化するので、ホログラムが偽造され、材質、厚み等が変化すると、前記信号aおよび信号bのピーク電圧が大きく変化する。
【0024】
実施例1の金属箔検知装置では、偽造により前記ピーク電圧の変化を検出するために、紙幣1に設けたホログラム2を検知する際の基準データとしてあらかじめ変動する範囲を求め、ROM部59に記憶して置く。そして、当該記憶した基準データと前記信号bとを比較することにより、偽造紙幣であるかを判定する。
【0025】
その判定方法としては、信号bのそれぞれのピーク電圧の比較をし、差分を加算して、所定の差以上の場合は、偽造と判定してもよいし、ピーク電圧の最大値若しくは最小値またはその両方を用いて偽造判定をしてもよい。或いは、信号bの波形について、基準データとマッチングし、その差分を抽出するようにしてもよい。
【0026】
以上の説明では、全波整流した信号の基づきホログラムの検知を行うように説明したが、やや精度は低下するが、整流前の波形に基づきホログラムの検知を行うようにしてもよい。また、光学的な検知結果を以上述べた検知結果と組合せて偽造を判定するようにしてもよい。また、以上の説明では、検知用コイル53に矩形波を印加するように説明したが、微分波形の振幅は低くなるが、矩形波ではなく、三角波などを印加するようにしてもよい。
【0027】
(実施例1の効果)
以上のように実施例1の金属箔検知装置によれば、検知用コイルに矩形波を印加し、検知用コイル出力を微分した信号に基づきホログラムの偽造を検出するようにしたので、偽造によりホログラムの材質、厚さ或いは大きさが変化したことを精度よく検知することができ、偽造を検出することができる。
【実施例2】
【0028】
実施例2の偽造防止装置は、検知用コイルを、搬送方向を短くした矩形形状とし、或いはさらに空芯コイルとしたものである。
【0029】
(構成)
実施例2の偽造防止装置は、図6に示したように、検知用コイル62を、媒体搬送方向を短くした矩形形状とし、或いはさらに図5のブロック図に示したように検知用コイル62を、コア61を設けず空芯コイルとしている。その他の構成は、実施例1の偽造防止装置の構成と同様であるので、簡略化のためにその説明を省略する。
【0030】
(動作)
以上の構成により実施例2の偽造防止装置は、以下のように動作する。なお、検知用コイル62の形状を変えたことにより検出時間は短くなるが振幅値が増加すること、および空芯コイル62による検知となること以外は実施例1の動作と同様であるので、同様の部分については簡略化のためにその説明を省略する。
【0031】
実施例2の偽造防止装置は、図6に示したように、検知用コイル62を、搬送方向を短くした矩形形状とすることにより、微分波形すなわち信号aの立ち上がりが急峻となり、これを全波整流すると信号bのようにピーク電圧の高い信号を得ることができる。
【0032】
そして、上述のように急峻な信号を得ることができるので、検知用コイル53にコア61を設けなくても十分な検出信号を得ることができる。
【0033】
一方、実施例1の金属箔検知装置と同様に、ホログラム2を検知する際の基準データとしてあらかじめ変動する範囲を求めてROM59に記憶して置き、当該記憶した基準データと前記信号bとを比較することにより、偽造紙幣であるかを判定する。
【0034】
その判定方法としては、信号bのそれぞれのピーク電圧の比較をし、差分を加算して、所定の差以上の場合は、偽造と判定してもよいし、ピーク電圧の最大値若しくは最小値またはその両方を用いて偽造判定をしてもよい。或いは、信号bの波形について、基準データとマッチングし、その差分を抽出するようにしてもよいことは実施例1と同様である。
【0035】
以上の実施例の説明では、コア61を設けない構成として説明したが、重量の増加、コストのアップはあるが、コア61を設けた構成としてもよい。この場合、コア61を設けることによりさらにインピーダンスの変化を大きくすることができるので、さらにホログラムの検知精度を向上することができる。
【0036】
(実施例2の効果)
以上のように、実施例2の偽造防止装置によれば、検知用コイルを、搬送方向を短くした矩形形状としたので、インピーダンスの変化をより大きくすることができ、検知精度を向上することができる。また、インピーダンスの変化をより大きくすることができるので、空芯コイルとすることもでき、コストの低減および重量の削減等をも可能とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上述べたように、本発明は、ホログラム等の金属箔を有する媒体の偽造を検出して媒体を取り扱う媒体処理装置等に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1の金属箔検知装置のブロック図である。
【図2】実施例1の金属箔検知装置の斜視図である。
【図3】実施例1の金属箔検知装置の正面図である。
【図4】実施例1の金属箔検知装置の動作説明図である。
【図5】実施例2の金属箔検知装置のブロック図である。
【図6】実施例2の金属箔検知装置の動作説明図である。
【図7】従来の金属箔検知装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
1 紙幣
2 ホログラム
53、62、100 検知用コイル
54 矩形波発信器
55 微分回路
56 整流回路
57 A/Dコンバータ
58 CPU
59 ROM
60 RAM
61 コア
101 励磁用コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類に存在する金属箔を検知する検知装置において、
金属箔を検知する検知用コイルに矩形波を印加する矩形波生成手段と、
前記検知用コイルの出力を微分する微分手段と、
前記微分手段の出力信号に基づいて前記金属箔を検知する手段を具備したことを特徴とする金属箔検知装置。
【請求項2】
前記微分手段の出力を全波整流する整流手段を設け、
前記整流手段の出力信号に基づき前記金属箔を検知するようにしたことを特徴とする請求項1記載の金属箔検知装置。
【請求項3】
前記検知用コイルを、搬送方向を短くした矩形形状とし、或いはさらに空芯コイルとしたことを特徴とする請求項1および請求項2記載の金属箔検知装置。
【請求項4】
前記金属箔は、ホログラムであることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか記載の金属箔検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−310671(P2007−310671A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139328(P2006−139328)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】