説明

金属箔積層体の搬送用ケース

【課題】平面視四角形状の金属箔が複数積層されて形成された金属箔積層体を搬送する際に、金属箔の変形を防止することができる金属箔積層体の搬送用ケースを提供する。
【解決手段】ケース40は、底体1と中敷き板20と蓋体10とを備える。底体は、平面視略四角形状の底板2を有するとともに、底板の四辺のうち隣接する二辺2b、2cにのみそれぞれ側板3B、3Cが底板に対して立ち上がり状に一体に設けらている。中敷き板は、金属箔積層体50の下に敷かれた状態で底板上に載置される平面視略四角形状のものである。蓋体は、平面視略四角形状の天板12を有するとともに、天板の四辺のうち少なくとも底板の四辺における残りの二辺2a,2cに対応する二辺12a、12dにそれぞれ側板3A、3Dが天板に対して垂れ下がり状に一体に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム箔等の金属箔が複数枚積層されて形成された金属箔積層体を搬送する際に用いられる金属箔積層体の搬送用ケース、及び該ケースを用いた金属箔積層体の搬送方法に関する。
【0002】
なお本明細書において、「アルミニウム」の語は純アルミニウムとアルミニウム合金の双方を含む意味で用いられる。また、「アルミ」とはアルミニウムを略記したものである。
【背景技術】
【0003】
金属箔として例えばアルミニウム箔は様々な製品に用いられている。例えば、特開2006−15385号公報及び特開2008−201951号公報は、プレス成形用アルミ箔を開示している。さらに、アルミ箔は電池やキャパシターの電極等に用いられる。一般に、アルミ箔の表面には、その用途に応じて所定の表面処理が施されている。
【0004】
このような用途に用いられるアルミ箔を搬送する場合には、従来では、長尺なアルミ箔をロール状に巻いて搬送していた。そして、搬送後において長尺なアルミ箔をその使用現場で所定形状・サイズに裁断して用いられていた。この場合、廃棄物が多く発生するという難点があった。
【0005】
そこで、近年では、予め平面視略四角形状に裁断したアルミ箔を多数枚積層して積層体を形成しこの積層体を搬送する方式が主流になりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−15385号公報
【特許文献2】特開2008−201951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、アルミ箔は、薄いため、搬送時に不慮に変形し易い。アルミ箔が変形すると、該アルミ箔を加工して得られる製品の不良率が高くなる。特に、アルミ箔が電池やキャパシターの電極に用いられる場合には、箔の表面、端面及び角部の変形は致命傷となる。
【0008】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、平面視略四角形状の金属箔が複数枚積層されて形成された金属箔積層体を搬送する際に、金属箔の変形を防止することができる金属箔積層体の搬送用ケース及び該ケースを用いた金属箔積層体の搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1] 平面視略四角形状の金属箔が複数枚積層されて形成された金属箔積層体を収容する、金属箔積層体の搬送用ケースであって、
平面視略四角形状の底板を有するとともに、該底板の四辺のうち隣接する二辺にのみそれぞれ側板が底板に対して立ち上がり状に一体に設けられた底体と、
金属箔積層体の下に敷かれた状態で前記底板上に載置される平面視略四角形状の中敷き板と、
平面視略四角形状の天板を有するとともに、該天板の四辺のうち少なくとも前記底板の四辺における残りの二辺に対応する二辺にそれぞれ側板が天板に対して垂れ下がり状に一体に設けられた蓋体と、
を備えていることを特徴とする金属箔積層体の搬送用ケース。
【0011】
[2] 前記底体の両側板間の角部が切り欠かれて、該両側板の隣接する側端同士が離間している前項1記載の金属箔積層体の搬送用ケース。
【0012】
[3] 前記底体に対して前記蓋体が被せられた状態のもとで、全ての側板における隣接する二つの側板間の各角部が切り欠かれて、各角部において二つの側板の隣接する側端同士が離間している前項2記載の金属箔積層体の搬送用ケース。
【0013】
[4] 前記底板には、金属箔積層体の端部の一部が露出し得る積層体掴み用切欠き部が、底板の少なくとも一辺の一部から底板の中央側に向かって切り欠かれて形成されている前項1〜3のいずれかに記載の金属箔積層体の搬送用ケース。
【0014】
[5] 金属箔積層体の上に載置された状態で前記天板の下側に配置される中押さえ板を備えている前項1〜4のいずれかに記載の金属箔積層体の搬送用ケース。
【0015】
[6] 前記中敷き板には、中敷き板上に載置された金属箔積層体の有無を検出するための検出窓が設けられている前項1〜5のいずれかに記載の金属箔積層体の搬送用ケース。
【0016】
[7] 前項1〜6のいずれかに記載のケース内に金属箔積層体を収容して搬送することを特徴とする金属箔積層体の搬送方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以下の効果を奏する。
[1]の発明では、金属箔積層体の搬送用ケースは、底体と中敷き板と蓋体とを備えている。しがたって、ケース内に金属箔積層体を入れる際には、底体の底板上に中敷き板を載置ておき、中敷き板上に金属箔を底体の両側板間の角部に向かって1枚ずつ滑らせて載置していくことにより、金属箔の端部を揃えることができるし、金属箔の角部が折れ曲がることもない。
【0018】
そして、中敷き板上の金属箔が所要の枚数に達したら、蓋体を金属箔積層体上に被せる。これにより、金属箔積層体が底体の底板と蓋体の天板との間で挟まれ、且つ、底体の二つの側板と蓋体の少なくとも二つの側板とで金属箔積層体の前後左右方向への位置ずれが防止される。そのため、搬送中の振動により金属箔積層体の整列状態が乱される虞もないし、金属箔の変形も生じない。したがって、金属箔積層体を整列状態を維持して搬送することができるし、搬送中に生じることのある金属箔の変形を防止することができる。
【0019】
[2]の発明では、底体の両側板間の角部が切り欠かれて、該両側板の隣接する側端同士が離間しているので、両側板間の角部に金属箔積層体の対応する角部が衝合することにより生じる金属箔積層体の角部の変形を未然に防止することができる。
【0020】
[3]の発明では、底体に対して蓋体が被せられた状態のもとで、全ての側板における隣接する二つの側板間の各角部が切り欠かれて、各角部において両側板の隣接する側端同士が離間している。そのため、金属箔積層体の全ての角部について両側板間の角部への衝合による変形を防止することができる。
【0021】
[4]の発明では、底板に積層体掴み用切欠き部が形成されているので、ケース内から金属箔積層体を取り出す際に、金属箔積層体における切欠き部からの露出部分を掴むことができる。そのため、金属箔積層体の取り出し時における金属箔の変形を防止することができるし、取り出し作業を容易に行うことができる。
【0022】
[5]の発明では、ケースは中押さえ板を備えているので、金属箔積層体の上に中押さえ板を載置することにより、ケース内に金属箔積層体を入れる際やケース内から金属箔積層体を取り出す際に金属箔積層体の最上位の金属箔が不慮に捲れ上がるのを中押さえ板で押さえて防止することができる。そのため、金属箔の変形を更に確実に防止することができる。
【0023】
[6]の発明では、中敷き板に検出窓が形成されているので、中敷き板上に載置された金属箔積層体の有無を検出することができる。
【0024】
[7]の発明では、金属箔積層体の梱包時、搬送時、取り出し時等において金属箔の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るアルミニウム箔積層体の搬送用ケースの分解斜視図である。
【図2】図2は、同ケースによりアルミニウム箔積層体を収容した状態の斜視図である。
【図3】図3は、図2中のX−X線断面図とA1及びA2部分の拡大図である。
【図4】図4は、図3中のY−Y線断面図とB1及びB2部分の拡大図である。
【図5】図5は、同ケースによりアルミニウム箔積層体を収容し更に結束用粘着テープでケースの底体と蓋体を結束した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0027】
本実施形態に係る金属箔積層体の搬送用ケース40は、金属箔積層体としてのアルミニウム箔積層体50を搬送する際に収容するものである。
【0028】
アルミ箔積層体50は、多数枚の同形・同寸のアルミ箔51が上下方向に整列して積層されて形成されたものである。
【0029】
アルミ箔51は、本実施形態では電池やキャパシターの電極に用いられるものであり、アルミ箔51の表面には、カーボンコート等の所定の表面処理が施されている。さらに、アルミ箔51は、平面視で四角形状に形成されており、詳述すると方形状(即ち正方形又は長方形)に形成され、更に詳述すると長方形状に形成されている。アルミ箔51の各辺の長さは、例えば100〜500mmの範囲内に設定されている。アルミ箔51の厚さは、例えば100μm以下に設定されており、詳述すると例えば15〜80μmの範囲内に設定されており、具体的に例示すると50μmに設定されている。このアルミ箔51が多数枚積層されることでアルミ箔積層体50が形成されている。アルミ箔積層体50の厚さは、例えば10〜50mmの範囲内である。
【0030】
次に、本実施形態のケース40の構成について説明する。
【0031】
本実施形態のケース40は、図1に示すように、互いに別体の、底体1、中敷き板20、中押さえ板30及び蓋体10を備えている。
【0032】
底体1は、厚さが例えば1.0〜4.0mmの一枚の金属平板から所定形状に屈曲形成されたものであり、底板2を有している。底板2上にはアルミ箔積層体50が中敷き板20を介して載置される。本実施形態では、金属平板として、ケース40の軽量化等を図るため、厚さが例えば1.5mmのアルミニウム平板が用いられている。
【0033】
底板2は、平面視で、アルミ箔51の平面視形状及び寸法に対応した形状及び寸法であり、すなわち長方形状である。底板2の各辺の長さは、アルミ箔51の各辺の長さに対応して設定されており、詳述するとアルミ箔51の各辺の長さと同じか又は若干長く設定されている。
【0034】
ここで、ケース40の構成を理解し易くするため、便宜上、ケース40の前後左右方向を次のように定める。すなわち、図1及び2に示すように、底体1の底板2の四辺のうち二つの長辺をそれぞれ前辺2a及び後辺2bとし、二つの短辺をそれぞれ左辺2c及び右辺2dとする。ただし本発明は、ケース40の前後左右方向は任意に決定されるものであり、本実施形態で定めた方向に限定されるものではない。
【0035】
図1に示すように、底板2の四辺2a、2b、2c、2dのうち一組の隣接する二辺としての後辺2b及び左辺2cには、それぞれ後側板3B及び左側板3Cが底板2に対して立ち上がり状に一体に設けられており、詳述すると後側板3B及び左側板3Cが屈曲形成されている。また、各側板3B、3Cは底板2に対して直角をなして立ち上がっている。一方、底板2の残りの二辺としての前辺2a及び右辺2dにはそのような側板は設けられていない。各側板3B、3Cの高さは、アルミ箔積層体50の厚さに対応して設定されており、詳述するとアルミ箔積層体50の厚さと同じか若干大きく設定されている。
【0036】
後側板3B及び左側板3Cは、それぞれ、底板2上に載置されたアルミ箔積層体50の後端面及び左端面に面接触状態に当接することでアルミ箔積層体50の後側及び左側への位置ずれを防止するものである。
【0037】
さらに、底板2の前辺2a側の端部(即ち前端部)及び後辺2b側の端部(即ち後端部)における長手方向中間部には、それぞれ、前辺2a側及び後辺2b側に向けて開口した平面視略コ字状の積層体摘み用前切欠き部4及び後切欠き部4が形成されている。すなわち、前切欠き部4は、底板2の前辺2aの長手方向中間部から底板2の中央側に向かって平面視略コ字状に切り欠かれて形成されている。後切欠き部4は、後側板3Bの上辺の長手方向中間部から底板2の後辺2bの長手方向中間部を通過して底板2の中央側に向かって平面視略コ字状に切り欠かれて形成されている。この後切欠き部4によって後側板3Bがその長手方向中間部で二つに分割されている。
【0038】
底板2の前後各切欠き部4、4は、ケース40内に収容されたアルミ箔積層体50を取り出す際にアルミ箔積層体50を掴み得るようにするためのものであり、ケース40内にアルミ箔積層体50が収容されると、アルミ箔積層体50における各切欠き部4、4に対応する部分が各切欠き部4、4から外部に露出される(図2及び3参照)。図1に示すように、切欠き部4の切欠き幅eは、例えば50〜150mmの範囲内に設定されており、具体的に例示すると約80mmに設定されている。切欠き部4の底板2中央側への切欠き長さfは、例えば10〜50mmの範囲内に設定されており、具体的に例示すると約25mmに設定されている。
【0039】
さらに、後側板3Bと左側板3Cとの間の角部(即ち、後側板3Bと左側板3Cとが作る後左角部)が切り欠かれて、該両側板3B、3Cの隣接する側端3Bc、3Cb同士(即ち、後側板3Bの左側端3Bcと左側板3Cの後側端3Cb)が離間している。すなわち、後側板3Bの左端側が例えば切欠き幅g約20mmで後側板3Bの上辺から下辺まで切り欠かれるとともに、左側板3Cの後端側が例えば切欠き幅h約20mmで左側板3Cの上辺から下辺まで切り欠かれており、これにより、後側板3Bと左側板3Cとの間の角部が存在しなくなっている。なお、両側板3B、3C間の角部に対応する底板2の角部(即ち、底板2の後左角部)は切り欠かれておらず、直角状に形成されており、これにより、アルミ箔積層体50の後左角部が不慮に屈曲しないように後左角部を底板2で確実に受け得るものとなされている。
【0040】
中敷き板20は、厚さが例えば0.5〜3.0mmの一枚の金属平板から形成されたものである。本実施形態では、金属平板として厚さが例えば1.5mmのアルミニウム平板が用いられている。この中敷き板20は、アルミ箔積層体50の下に敷かれた状態で底板2上に載置されるものであり、アルミ箔積層体50をケース40内に入れる時やケース40内から取り出す時等に生じることのあるアルミ箔積層体50の自重による撓み変形を防止するため、更にはアルミ箔積層体50の最下位のアルミ箔51の裏面を保護するためなどを目的とするものである。
【0041】
中敷き板20は、平面視で、アルミ箔51の平面視形状及び寸法に対応した形状及び寸法であり、すなわち長方形状である。中敷き板20の各辺の長さは、アルミ箔51の各辺の長さに対応して設定されており、詳述するとアルミ箔51の各辺の長さと同じか又は若干短く設定されている。
【0042】
中敷き板20の右辺側の端部(即ち右端部)及び左辺側の端部(即ち左端部)における短手方向中間部には、それぞれ、右辺側及び左辺側に向けて開口した平面視略コ字状の検出窓21、21が形成されている。すなわち、各検出窓21は、中敷き板20の右辺又は左辺の短手方向中間部から中敷き板20の中央側に向かって平面視略コ字状に切り欠かれて形成されている。各検出窓21の切欠き幅iは、例えば10〜30mmの範囲内に設定されおり、具体的に例示すると約20mmに設定されている。各検出窓21の中敷き板20中央側への切欠き長さjは、例えば5〜20mmの範囲内に設定されており、具体的に例示すると約10mmに設定されている。
【0043】
この検出窓21は、中敷き板20上に載置されたアルミ箔積層体50の有無を検出するためのものである。すなわち、例えば、アルミ箔積層体50の有無を検出するセンサが透過型や反射型フォトセンサである場合には、中敷き板20上に載置されたアルミ箔積層体50のアルミ箔51表面に向けてセンサの発光部から検出光が照射されたときに、中敷き板20上にアルミ箔積層体50が存在していないにも拘わらず検出光が中敷き板20で遮断されると、アルミ箔積層体50が中敷き板20上に存在していると誤認識を招くことから、そのような誤認識を未然に防止するため、本実施形態では、検出光のアルミ箔51への照射位置に対応する中敷き板20の部分に検出窓21が形成されている。
【0044】
中押さえ板30は、厚さが例えば0.5〜3.0mmの一枚の金属平板から形成されたものである。本実施形態では、金属平板として厚さが例えば1.5mmのアルミニウム平板が用いられている。この中押さえ板30は、アルミ箔積層体50の上に載置された状態で蓋体10の後述する天板12の下側に配置されるものであり、ケース40内にアルミ箔積層体50を入れる際やケース40内からアルミ箔積層体50を取り出す際にアルミ箔積層体50の最上位のアルミ箔51が不慮に捲れ上がるのを中押さえ板30で押さえて防止するため、更にはアルミ箔積層体50の最上位のアルミ箔51の表面を保護するためなどを目的とするものである。
【0045】
この中押さえ板30は、平面視で、アルミ箔51の平面視形状及び寸法に対応した形状及び寸法であり、すなわち長方形状である。中押さえ板30の各辺の長さは、アルミ箔51の各辺の長さに対応して設定されており、詳述するとアルミ箔51の各辺の長さと同じか又は若干短く設定されている。本実施形態では、中押さえ板30は、中敷き板20と同形及び同寸に形成されている。これにより、中敷き板20と中押さえ板30とを区別しないで用いることができる。したがって、中押さえ板30の右辺側の端部(即ち右端部)及び左辺側の端部(即ち左端部)における短手方向中間部には、それぞれ、中敷き板20と同様に、検出窓21、21が形成されている。さらに、中敷き板20と中押さえ板30は、それぞれ、左右を反対にしても使用することができる。
【0046】
蓋体10は、厚さが例えば1.0〜4.0mmの一枚の金属平板から所定形状に屈曲形成されたものであり、天板12を有している。本実施形態では、金属平板として厚さが例えば1.5mmのアルミニウム平板が用いられている。
【0047】
天板12は、平面視で、アルミ箔51の平面視形状及び寸法に対応した形状及び寸法であり、すなわち長方形状である。天板12の各辺の長さは、アルミ箔51の各辺の長さに対応して設定されており、詳述するとアルミ箔51の各辺の長さと同じか又は若干長く設定されている。
【0048】
図1に示すように、天板12の四辺12a、12b、12c、12dのうち隣接する二辺としての前辺12a及び右辺12dには、それぞれ前側板3A及び右側板3Dが天板12に対して垂れ下がり状に一体に設けられており、詳述すると前側板3A及び右側板3Dが屈曲形成されている。また、各側板3A、3Dは天板12に対して直角をなして垂れ下がっている。一方、天板12の残りの二辺としての後辺12b及び左辺12cにはそのような側板は設けられていない。各側板3A、3Dの高さは、アルミ箔積層体50の厚さに対応して設定されており、詳述するとアルミ箔積層体50の厚さと同じか若干大きく設定されている。
【0049】
前側板3A及び右側板3Dは、それぞれ、底板2上に載置されたアルミ箔積層体50の前端面及び右端面に面接触状態に当接することでアルミ箔積層体50の前側及び右側への位置ずれを防止するものである。
【0050】
さらに、天板12の前辺12a側の端部(即ち前端部)及び後辺12b側の端部(即ち後端部)における長手方向中間部には、それぞれ、前辺12a側及び後辺12b側に向けて開口した平面視略コ字状の積層体摘み用前切欠き部14及び後切欠き部14が形成されている。すなわち、前切欠き部14は、前側板3Aの下辺の長手方向中間部から天板12の前辺12aの長手方向中間部を通過して天板12の中央側に向かって平面視略コ字状に切り欠かれて形成されている。この前切欠き部に14よって前側板3Aがその長手方向中間部で二つに分割されている。後切欠き部14は、天板12の後辺12bの長手方向中間部から天板12の中央側に向かって平面視略コ字状に切り欠かれて形成されている。
【0051】
天板12の前後各切欠き部14,14は、底板2の前後各切欠き部4、4と同じく、ケース40内に収容されたアルミ箔積層体50を取り出す際にアルミ箔積層体50を掴み得るようにするためのものであり、ケース40内にアルミ箔積層体50が収容されると、アルミ箔積層体50における各切欠き部14、14に対応する部分が各切欠き部14、14から外部に露出される(図2及び3参照)。天板12の各切欠き部14の切欠き幅及び切欠き長さは、それぞれ、底板2の各切欠き部4の切欠き幅及び切欠き長さと同じに設定されている。
【0052】
さらに、前側板3Aと右側板3Dとの間の角部(即ち、前側板3Aと右側板3Dとが作る前右角部)が切り欠かれて、該両側板3A、3Dの隣接する側端3Ad、3Da同士(即ち、前側板3Aの右側端3Adと右側板3Dの前側端3Da)が離間している。すなわち、前側板3Aの右端側が例えば切欠き幅約20mmで前側板3Aの下辺から上辺まで切り欠かれるとともに、右側板3Dの前端側が例えば切欠き幅約20mmで右側板3Dの下辺から上辺まで切り欠かれており、これにより、前側板3Aと右側板3Dとの間の角部が存在しなくなっている。なお、両側板3A、3D間の角部に対応する天板12の角部(即ち、天板12の前右角部)は切り欠かれておらず、直角状に形成されており、これにより、アルミ箔積層体50の前右角部が不慮に屈曲しないように前右端部が天板12で確実に押さえられている。
【0053】
さらに、底体1の左側板3Cの前端側と蓋体10の前側板3Aの左端側とがそれぞれ切欠き幅約20mmで切り欠かれており、また同じく、底体1の後側板3Bの右端側と蓋体10の右側板3Dの後端側とがそれぞれ切欠き幅約20mmで切り欠かれている。
【0054】
したがって、本実施形態のケース40では、底体1に対して蓋体10が被せられた状態のもとで、全ての側板3A、3B、3C、3Dにおける隣接する二つの側板(3A、3C)(3A、3D)(3B、3C)(3B、3D)間の各角部が切り欠かれて、各角部において二つの側板の隣接する側端(3Aa、3Ca)(3Ad、3Da)(3Bc、3Cb)(3Bd、3Db)同士が離間している。なお、底板2の全ての角部は切り欠かれておらず、直角状に形成されており、また同じく天板12の全ての角部は切り欠かれておらず、直角状に形成されている。
【0055】
さらに、本実施形態では、蓋体10は、その側板3A、3Dの位置が底体1の側板3B、3Cの位置と異なることを除いて、底体1と同形及び寸法に形成されている。これにより、底体1と蓋体10を天地を逆にしても使用することができる。
【0056】
また、底体1の底板2の上面と蓋体10の天板12の下面とには、それぞれアルマイト層等の陽極酸化層が形成されていることが望ましく、こうすることにより、これらの面について耐摩耗性を向上させることができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、底体1と蓋体10は、側板の位置が異なるだけで全体形状は類似しているので、両者をセットで使用する際にいちいち位置を確認する手間を要する。そこで、この難点を解消するため、着色アルマイト等の方法により、底体1と蓋体10のどちらか一方に着色を施しておくことが望ましく、こうすることにより、着色の有無の判別により底体1と蓋体10のセット使用を分かり易くすることができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、底体1の各側板3B、3Cにおける各側端3Bc、3Bd、3Ca、3Cbと底板2の辺との間のコーナー部、及び、蓋体10の各側板3A、3Dにおける各側端3Aa、3Ad、3Da、3Ddと天板12の辺との間のコーナー部には、それぞれ、小さな略欠円状の切込み孔mが形成されており、これにより、各側板3A、3B、3C、3Dを底板2又は天板12に対して容易に且つ確実に直角に屈曲させることができるものとなされている。
【0059】
次に、本実施形態のケース40を用いてアルミ箔積層体50を収容する方法を、ケース40の利点と共に以下に説明する。
【0060】
まず、底体1の底板2上に中敷き板20を載置する。次いで、中敷き板20上にアルミ箔51を底板2の右斜め前側から後側板3Bと左側板3Cとの間の角部に向かって1枚ずつ滑らせて載置していく。このアルミ箔51の載置方法によれば、アルミ箔51の端部を揃えることができるし、アルミ箔51の角部が折れ曲がることもない。そして、中敷き板20上に載置されたアルミ箔51が所要の枚数に達したら、中押さえ板30をアルミ箔積層体50上に載置する。これにより、アルミ箔積層体50の最上位のアルミ箔51が不慮に捲れ上がるのを中押さえ板30で押さえて防止することができる。なお本発明では、中押さえ板30をアルミ箔積層体50上に載置することは必須ではない。
【0061】
あるいは、アルミ箔51を予め所要枚数積層して形成したアルミ箔積層体50の下に中敷き板20を敷き、この状態のままで、アルミ箔積層体50を中敷き板20と一緒に底体1の底板2上に載置しても良い。ただし、この方法はあまり現実的ではない。
【0062】
次いで、蓋体10をアルミ箔積層体50上に被せることにより、図2に示すようにケース40内にアルミ箔積層体50を収容する。これにより、アルミ箔積層体50の上方への曲がり変形を蓋体10の天板12で防止することができる。また、蓋体10を被せる際において、蓋体10の天板12の前辺12a及び右辺12dにのみそれぞれ側板3A、3Dが設けられていることから、天板12の後辺12b側及び左辺12c側から蓋体10をアルミ箔積層体50上に被ることにより、蓋体10の側板3A、3Dにアルミ箔積層体50が干渉しない。そのため、蓋体10の被せ時においてアルミ箔51の側板との干渉による変形を防止することができるし、蓋体10の被せ作業を容易に行うことができる。
【0063】
次いで、図5に示すように、結束バンドとして例えば結束用粘着テープ60によってケース40の底体1と蓋体10を結束する。この状態にしてからケース40を搬送する。この搬送時において、アルミ箔積層体50は、底体1の底板2と蓋体10の天板12との間で挟まれ、且つ、前後左右の四側板3A、3B、3C、3Dで前後左右方向への位置ずれが防止されているので、搬送中の振動によりアルミ箔積層体50の整列状態が乱される虞もないし、アルミ箔51の変形も生じない。したがって、アルミ箔積層体50を整列状態を維持して搬送することができるし、搬送中に生じることのあるアルミ箔51の変形を防止することができる。
【0064】
ここで一般に、アルミ箔積層体50はその全ての部位のうち特に各角部が変形し易く、もしケース40の全ての側板3A、3B、3C、3Dにおける隣接する二つの側板間の各角部にアルミ箔積層体50(アルミ箔51)の対応する角部が衝合した場合には、当該角部が比較的簡単に変形する虞がある。しかるに、本実施形態のケース40は、ケース40内にアルミ箔積層体50が収容された状態において、ケース40の全ての側板3A、3B、3C、3Dにおける隣接する二つの側板(3A、3C)(3A、3D)(3B、3C)(3B、3D)間の各角部が切りか欠かれて、各角部において両側板の隣接する側端(3Aa、3Ca)(3Ad、3Da)(3Bc、3Cb)(3Bd、3Db)同士が離間している。そのため、アルミ箔積層体50の全ての角部について両側板間の角部への衝合による変形を防止することができる。
【0065】
一方、ケース40内からアルミ箔積層体50を取り出す場合には、結束用粘着テープ60をケース40から引き剥がし、底体1と蓋体10との結束を解除する。そして、蓋体10を取り外す。このとき、蓋体10の天板12の四辺のうち前辺12a及び右辺12dにのみそれぞれ側板3A、3Dが一体に設けられていることから、天板12の後辺12b側及び左辺12c側から蓋体10を取り外すことにより、蓋体10の側板3A、3Dにアルミ箔積層体50が干渉しない。そのため、蓋体10の取り外し時においてアルミ箔51の側板3A、3Dとの干渉による変形を防止することができるし、取り外し作業を容易に行うことができる。さらに、アルミ箔積層体50上に中押さえ板30が載置されているので、蓋体10の取り外し動作によりアルミ箔積層体50の最上位のアルミ箔51が不慮に捲れ上がるのを中押さえ板30により防止することができる。
【0066】
次いで、アルミ箔積層体50上に中押さえ板30が載置され且つ該積層体50の下に中敷き板20が敷かれた状態のままで、アルミ箔積層体50における積層体掴み用前後各切欠き部4、4からの露出部分をそれぞれ片手で掴み、持ち上げる。これにより、底体1からアルミ箔積層体50が取り出される。このとき、底体1の底板2の四辺のうち前辺2a及び右辺2dに側板が設けられていないので、アルミ箔積層体50を真上に持ち上げずに前側や右側に少しずれて持ち上げてもアルミ箔積層体50は側板に干渉しない。そのため、アルミ箔積層体50の取り出し時において、アルミ箔51の側板3B、3Cとの干渉による変形を防止することができる。
【0067】
そして、アルミ箔積層体50を所定のアルミ箔加工用装置のアルミ箔積層体用配置部にセットする。このとき、アルミ箔積層体50上に中押さえ板30が載置され且つ該積層体50の下に中敷き板20が敷かれているので、アルミ箔積層体50の取り出し時及び配置部へのセット時に、アルミ箔積層体50の最上位のアルミ箔51が捲れ上がるのを防止できるし、アルミ箔積層体50の自重による撓み変形を防止することができる。次いで、中押さえ板30をアルミ箔積層体50上から取り外す。
【0068】
アルミ箔加工用装置は、アルミ箔積層体用配置部にセットされた中敷き板20上にアルミ箔積層体50が存在しているか否かを検出するセンサ、すなわち中敷き板20上に載置されたアルミ箔積層体50を有無を検出するセンサを備えている。このセンサは、アルミ箔積層体50の表面における検出窓21に対応する部分にセンサの発光部から検出光を照射することで、アルミ箔積層体50の有無を検出する方式のものである。
【0069】
次いで、センサによりアルミ箔積層体50の有無を検出しながらアルミ箔加工用装置によりアルミ箔積層体50の上側からアルミ箔51を一枚ずつ取り出してアルミ箔51を一枚ずつ加工する。そして、中敷き板20上にアルミ箔積層体50(アルミ箔51)が存在しなくなったことをセンサにより検出したら、中敷き板20を配置部から取り出して新たにアルミ箔積層体50を配置部にセットする。ここで、センサによりアルミ箔積層体50の有無を検出するときには、中敷き板20に検出窓21が形成されていることから、中敷き板20上にアルミ箔積層体50が存在していない場合、センサの検出光は中敷き板20で遮蔽されずに検出窓21を通過するので、センサの誤認識を防止することができ、これにより、中敷き板20上にアルミ箔積層体50が存在しているか否かを確実に検出することができる。
【0070】
さらに、底体1、中敷き板20、中押さえ板30及び蓋体10がいずれもアルミニウム板で形成されているので、ケース40の軽量化を図ることができるし、また加工性も良好である。
【0071】
以上で本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に示したものであることに限定されるものではなく、様々に変更可能であることは言うまでもない。
【0072】
また本発明では、上記実施形態のケース40のようにケース40は中押さえ板30を備えているのが望ましいが、中押さえ板30を必ずしも備えていなくても良い。
【0073】
さらに本発明では、外部からケース内への水分浸入を嫌う場合などには、乾燥剤シート(図示せず)を金属箔積層体と一緒にケース内に収容しても良い。乾燥剤シートは、通常、金属箔と略同じ形状である。さらに、極端に水分浸入を嫌う場合などには、バリア性のある袋(例:アルミ箔ラミネート袋)内にケースを入れて真空包装(即ち、真空引きした後、ヒートシール密封)することが望ましい。この際、本発明のケースを用いているので、形状が安定しており、形状維持性が優れている。
【0074】
さらに本発明では、上記実施形態のケース40のように蓋体10の天板12の前辺12a及び右辺12dにのみそれぞれ側板3A、3Dが設けられていることが望ましいが、更に、天板12の後辺12b及び左辺12cのうち一方又は両方にも側板が設けられることを排除するものではない。
【0075】
さらに本発明では、上記実施形態のケース40のように蓋体10の天板12に積層体掴み用切欠き部14が設けられていることが望ましいが、天板12にそのような切欠き部が必ずしも設けられていなくても良い。
【0076】
さらに本発明では、上記実施形態のケース40のように全ての部材がアルミニウム板で製作されることが軽量化及び加工性の観点から望ましいが、その他に、例えば、ステンレス鋼板で製作されていても良いし、プラスチック製であっても良い。ただし、プラスチック製である場合には、底体の側壁の底板に対する立ち上がり角度や、蓋体の側板の天板に対する垂れ下がり角度を直角に設定することが困難であるため、上記実施形態のように加工性が良好なアルミニウム板で製作するのが望ましい。
【0077】
また本発明では、金属箔はアルミ箔であることに限定されるものではなく、その他の金属箔であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、アルミニウム箔等の金属箔が複数枚積層されて形成された金属箔積層体を搬送する際に用いられる金属箔積層体の搬送用ケース、及び金属箔積層体の搬送方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1:底体
2:底板
3B:後側板(側板)
3C:左側板(側板)
4:積層体掴み用切欠き部
10:蓋体
12:天板
3A:前側板(側板)
3D:右側板(側板)
20:中敷き板
21:検出窓
30:中押さえ板
40:ケース
50:アルミニウム箔積層体(金属箔積層体)
51:アルミニウム箔(金属箔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視略四角形状の金属箔が複数枚積層されて形成された金属箔積層体を収容する、金属箔積層体の搬送用ケースであって、
平面視略四角形状の底板を有するとともに、該底板の四辺のうち隣接する二辺にのみそれぞれ側板が底板に対して立ち上がり状に一体に設けられた底体と、
金属箔積層体の下に敷かれた状態で前記底板上に載置される平面視略四角形状の中敷き板と、
平面視略四角形状の天板を有するとともに、該天板の四辺のうち少なくとも前記底板の四辺における残りの二辺に対応する二辺にそれぞれ側板が天板に対して垂れ下がり状に一体に設けられた蓋体と、
を備えていることを特徴とする金属箔積層体の搬送用ケース。
【請求項2】
前記底体の両側板間の角部が切り欠かれて、該両側板の隣接する側端同士が離間している請求項1記載の金属箔積層体の搬送用ケース。
【請求項3】
前記底体に対して前記蓋体が被せられた状態のもとで、全ての側板における隣接する二つの側板間の各角部が切り欠かれて、各角部において二つの側板の隣接する側端同士が離間している請求項2記載の金属箔積層体の搬送用ケース。
【請求項4】
前記底板には、金属箔積層体の端部の一部が露出し得る積層体掴み用切欠き部が、底板の少なくとも一辺の一部から底板の中央側に向かって切り欠かれて形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の金属箔積層体の搬送用ケース。
【請求項5】
金属箔積層体の上に載置された状態で前記天板の下側に配置される中押さえ板を備えている請求項1〜4のいずれかに記載の金属箔積層体の搬送用ケース。
【請求項6】
前記中敷き板には、中敷き板上に載置された金属箔積層体の有無を検出するための検出窓が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の金属箔積層体の搬送用ケース。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のケース内に金属箔積層体を収容して搬送することを特徴とする金属箔積層体の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−51599(P2011−51599A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200186(P2009−200186)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(501428187)昭和電工パッケージング株式会社 (110)
【Fターム(参考)】