説明

金属管の熱間曲げ加工方法

【課題】内面に耐食性メッキが施された金属管を塑性変形可能温度に加熱して曲げ加工する場合に、金属管の使用時に水分が溜まり易く十分な耐食性が必要な金属管内面の下側のメッキ層が薄くならないようにする。
【解決手段】内面に耐食性メッキが施された金属管Tを塑性変形可能温度に加熱して曲げ加工する金属管Tの熱間曲げ加工方法において、金属管Tの使用時に下側となる部分Bを下側にして前記金属管Tを加熱する。金属管Tの加熱時にメッキが溶融して金属管Tの内面に沿って下方に流動したときに、金属管Tの製品としての使用時に水分が溜まり易く十分な耐食性が必要な金属管内面の下側Bのメッキ層が厚くなり薄くなることがなく、耐食性メッキの耐食性が不足する不具合が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属管、特に、内面に耐食性メッキが施された金属管の熱間曲げ加工方法に関し、金属加工の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属管を塑性変形可能温度に加熱して曲げ加工する熱間曲げ加工技術が知られている。一般に、熱間加工は、材料を再結晶温度以上に加熱して塑性加工する技術であり、例えば鋼では概ね850℃以上の温度で行われるのが通例である。
【0003】
一方、特許文献1には、金属管の曲げ加工方法として、予め内面にメッキが施された金属管を曲げ加工することが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−328726(段落0036)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、予め金属管の内面に亜鉛メッキ等の耐食性メッキが施された金属管を熱間曲げ加工することも考えられるが、一般に、耐食性メッキの融点(例えば純亜鉛メッキで419℃)が金属管の加熱温度(例えば800℃程度)よりも低いことが多いので、金属管の加熱時にメッキが溶融して金属管の内面に沿って下方に流動し、その結果、金属管の内面の上側でメッキ層が薄くなり、内面の下側でメッキ層が厚くなる現象が起きる。そして、金属管が製品として使用されるときに、金属管の内面において水分が溜まり易く腐食が発生し易い金属管内面の下側にメッキ層の薄い部分が位置すると、耐食性メッキの耐食性が不足する不具合が生じる。
【0006】
この問題に対しては、熱間曲げ加工する前に金属管の内面にメッキを施すのではなく、熱間曲げ加工した後に金属管の内面にメッキを施すことが提案される。しかし、それでは、湾曲した金属管の内面にメッキ層を形成しなければならず、メッキ層を良好に形成することが容易でなくなる。
【0007】
特に、金属管の内面が、図7に例示するように、例えば強度補強のため部分的に重合しているような場合は、たとえ電気メッキ法を用いても、該重合部にメッキを施すことが困難となる。このような場合は、平板状の金属材の片面にメッキを施し、このメッキを施した面が内面となるように平板材を管に成形すると、たとえ重合部があっても、該重合部にメッキ層を形成することが容易となる。そして、そうすると、結果的に、予め内面にメッキが施された金属管を熱間曲げ加工することになるのである。
【0008】
本発明は、このような問題に対処するもので、内面に耐食性メッキが施された金属管を塑性変形可能温度に加熱して曲げ加工する場合に、金属管の使用時に水分が溜まり易く十分な耐食性が必要な金属管内面の下側のメッキ層が薄くならないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明では次のような手段を用いる。なお、以下の手段の開示において、後述する発明の実施形態で相当する符号を参考までに付記した。
【0010】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、内面に耐食性メッキPが施された金属管Tを塑性変形可能温度に加熱して曲げ加工する金属管Tの熱間曲げ加工方法であって、前記加熱を、金属管Tの使用時に下側となる部分Bを下側にして行うことを特徴とする。
【0011】
ここで、曲げ加工の手法は、特に限定されず、回転引曲げ、圧縮曲げ、ロール曲げ、プレス曲げ、引張り曲げ、押し通し曲げ等、従来一般に行われるものがいずれも適用可能である。
【0012】
また、耐食性メッキの組成も、特に限定されず、純亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム合金等が好ましく用いられ、メッキ法も、溶融メッキ、電気メッキ等、従来知られているものが支障なく採用可能である。
【0013】
次に、本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の金属管Tの熱間曲げ加工方法であって、前記曲げ加工は、前記金属管Tを固定治具12及び可動治具15に通し、両治具12,15の間で前記金属管Tを局部的に塑性変形可能温度に加熱13し、可動治具15を固定治具12の金属管送給方向に対して傾動させることにより行い、前記金属管Tを固定治具12及び可動治具15に通すときに、金属管Tの使用時に下側となる部分Bを下側にして通すことにより、前記加熱13を、金属管Tの使用時に下側となる部分Bを下側にして行うことを特徴とする。
【0014】
次に、本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の金属管Tの熱間曲げ加工方法であって、前記加熱13は、金属管Tの塑性変形可能かつ焼入れ可能温度に加熱し、前記加熱13の直後に前記金属管Tを急冷14することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
まず、請求項1に記載の発明によれば、内面に耐食性メッキが施された金属管を塑性変形可能温度に加熱して曲げ加工する場合に、曲げ加工後に金属管を使用するときに下側となる部分を下側にして前記金属管を加熱するようにしたから、金属管の加熱時にメッキが溶融して金属管の内面に沿って下方に流動したときに、金属管の製品としての使用時に水分が溜まり易く十分な耐食性が必要な金属管内面の下側のメッキ層が厚くなり薄くなることがなく、したがって、耐食性メッキの耐食性が不足する不具合が回避される。
【0016】
次に、請求項2に記載の発明によれば、曲げ加工の手法として押し通し曲げを適用した場合に、金属管を局部的に加熱するようにしたから、金属管を効率よく、確実、容易に熱間曲げ加工することができる。
【0017】
また、金属管の使用時に下側となる部分を下側にして金属管を固定治具及び可動治具に通すことにより、確実に金属管の使用時に下側となる部分を下側にして金属管を加熱することが可能となる。
【0018】
次に、請求項3に記載の発明によれば、同じく曲げ加工の手法として押し通し曲げを適用した場合に、金属管を塑性変形可能かつ焼入れ可能温度に加熱した直後に該金属管を急冷するようにしたから、曲げ加工と同時に金属管を焼入れして該金属管の強度を高めることが可能となる。以下、発明の最良の実施の形態を通して本発明をさらに詳しく説述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の最良の実施の形態に係る金属管Tの熱間曲げ加工装置1の全体構成を示す斜視図である。
【0020】
この熱間曲げ加工装置1は、曲げ加工の手法として押し通し曲げを適用するもので、水平方向に延びる金属管Tの終端部を保持する金属管保持装置10を有する。保持装置10は軌道11の上を移動自在に構成されている。保持装置10の前方には、上流側から、固定ローラ12…12、誘導加熱コイル13、冷却水噴射装置14、及び可動ローラ15,15がこの順に配設されている。
【0021】
固定治具としての固定ローラ12…12は、前後2段階に金属管Tを両側から挟み付けて金属管Tの送給方向を決定する。
【0022】
加熱装置としての誘導加熱コイル13は、金属管Tを取り囲む形状で、取り囲んだ範囲及びその周辺において金属管Tを局部的に所定温度(金属管Tの塑性変形可能かつ焼入れ可能温度)に加熱する。
【0023】
急冷装置としての冷却水噴射装置14は、金属管Tを取り囲む形状で、取り囲んだ範囲及びその周辺においてノズルから金属管Tに冷却水を局部的に噴射して金属管Tを急冷する。
【0024】
可動治具としての可動ローラ15,15は、ハウジング16に収容されて金属管Tを両側から挟み付ける。そして、前記固定ローラ12…12の金属管送給方向と同じ方向(x軸方向)に移動自在、前記固定ローラ12…12の金属管送給方向と水平方向に直行する方向(y軸方向)に移動自在、前記固定ローラ12…12の金属管送給方向と垂直方向に直行する方向(z軸方向)に移動自在、y軸周りに回動自在、及びz軸周りに回動自在に構成されている。そして、これらの動きが組み合わされて、可動ローラ15,15は、固定ローラ12…12の金属管送給方向に対して傾動し、これにより金属管Tに曲げ応力を与えて、該金属管Tを誘導加熱コイル13で加熱された部位(後述するように曲げ加工部位R)において曲げ加工する。
【0025】
なお、図1において、金属管Tの上面に符号Aを付し、金属管Tの下面に符号Bを付してある(図2、図5及び図6においても同じ)。
【0026】
図2は、この熱間曲げ加工装置1で曲げ加工する金属管Tの内面上側(金属管Tの上面Aの内面)及び内面下側(金属管Tの下面Bの内面)における耐食性メッキPの層の厚みを比較して示す拡大図であって、(a)は図1に符号アで例示するように曲げ加工前のもの、(b)は図1に符号イで例示するように曲げ加工後のものである。
【0027】
図2(a)のように、曲げ加工前、すなわち誘導加熱コイル13により加熱される前は、耐食性メッキPが予め金属管Tの内面に施され、耐食性メッキPの層の厚みは、金属管Tの内面上側及び内面下側において均一である。
【0028】
一方、図2(b)のように、曲げ加工後、すなわち誘導加熱コイル13により加熱された後は、耐食性メッキPの層の厚みは、金属管Tの内面上側において薄く、内面下側において厚くなっている。
【0029】
これは、耐食性メッキPの融点が、誘導加熱コイル13による金属管Tの加熱温度よりも低いので、金属管Tの加熱時にメッキPが溶融して金属管Tの内面に沿って下方に流動したからである。
【0030】
ここで、耐食性メッキPの組成は、特に限定されず、純亜鉛(Zn)、亜鉛合金、アルミニウム合金等が好ましく用いられる。亜鉛合金としては、Zn−5%Al、Zn−10%Ni、Zn−10%Fe等が含まれる。アルミニウム合金としては、Al−10%Si等が含まれる。
【0031】
その場合に、耐食性メッキPの融点は、純亜鉛で419℃、Zn−5%Alで382℃、Zn−10%Niで800℃、Zn−10%Feで950℃、Al−10%Siで577℃である。
【0032】
これに対し、誘導加熱コイル13による金属管Tの加熱温度(金属管Tの塑性変形可能かつ焼入れ可能温度)は、後に詳しく述べるが、800℃〜1050℃程度であり、総じて、耐食性メッキPの融点が金属管Tの加熱温度よりも低くなっている。
【0033】
また、耐食性メッキPの層の厚みは、期待する耐食性持続期間や対費用効果の観点から、20〜120g/m程度が好ましい。
【0034】
また、耐食性メッキPのメッキ法としては、溶融メッキ法、電気メッキ法等、従来知られているものが支障なく採用可能である。
【0035】
図3は、この熱間曲げ加工装置1で曲げ加工した金属管Tが製品として使用され得る車両部品の例を示す斜視図である。例示したように、この熱間曲げ加工装置1で曲げ加工した金属管Tは、車両のフロントサイドフレーム、リヤサイドフレーム、バンパーレインフォースメント、ダッシュクロスメンバ、ショットガン、ルーフサイドレインフォースメント等、車両のフレーム部材や骨格部材に使用され得る。
【0036】
ここで、金属管Tの曲げ加工形状及び車両への組み付け姿勢が予め決定しており、したがって、金属管Tのどの面が車両への組み付け時に上面Aになるか下面Bになるかが判った状態で、前記熱間曲げ加工装置1により該金属管Tを熱間曲げ加工することができる。
【0037】
図4は、この熱間曲げ加工装置1の制御システム図である。この曲げ加工装置1は、前記保持装置10を軌道11上で移動させるための(換言すれば金属管Tを送給するための)金属管送給アクチュエータ21、前記誘導加熱コイル13、前記冷却水噴射装置14、前記可動ローラ15,15をx軸方向、y軸方向、z軸方向に移動させるためのアクチュエータ22,23,24、及びy軸周り、z軸周りに回動させるためのアクチュエータ25,26に制御信号を出力して、この曲げ加工装置1が行う金属管Tの熱間曲げ加工動作(金属管Tの熱間曲げ加工方法)を統括制御するコントロールユニット20を備えている。
【0038】
図5は、この熱間曲げ加工装置1が行う金属管Tの熱間曲げ加工動作(金属管Tの熱間曲げ加工方法)の具体的1例を(a),(b),(c),(d)の順に示す工程図である。
【0039】
まず、図5(a)に示すように、金属管Tは、車両への組み付け時に上面Aになる面を上に(下面Bになる面を下に)向けた状態で、固定ローラ12…12及び可動ローラ15,15を通過して送給される。そして、その送給に伴い、予め決定された金属管Tの曲げ加工部位(Rとする)が誘導加熱コイル13に近づいて来る。
【0040】
そして、図5(b)に示すように、曲げ加工部位Rの前端部が誘導加熱コイル13に入ると、誘導加熱コイル13が作動して、該曲げ加工部位Rだけが、局部的に、金属管Tの塑性変形可能かつ焼入れ可能温度に加熱される(図中ドットを施した部分)。
【0041】
なお、曲げ加工部位Rの前端部が誘導加熱コイル13に入ったことの判定は、コントロールユニット20のメモリ(図示せず)に予め登録された曲げ加工部位Rの金属管Tにおける位置、誘導加熱コイル13の位置、及び金属管Tの送給速さ等に基き判定される。あるいは、曲げ加工部位Rの前端部を金属管Tの表面にマーキングしておき、該マーキングを適宜センサで直接検出するようにしてもよい。
【0042】
そして、誘導加熱コイル13による曲げ加工部位Rの加熱が開始すると、図5(c)に示すように、可動ローラ15が固定ローラ12の金属管送給方向に対して傾動する。これにより、金属管Tに曲げ応力が加えられて、誘導加熱コイル13で加熱された部位、すなわち曲げ加工部位Rにおいて金属管Tが曲げ加工される。
【0043】
しかも、同じく図5(c)に示すように、誘導加熱コイル13による曲げ加工部位Rの加熱が開始し、可動ローラ15による曲げ加工が開始すると、冷却水噴射装置14が作動して、加熱され曲げ加工された曲げ加工部位Rが、局部的に、冷却される。これにより、曲げ加工部位Rが焼入れされて、曲げ加工と同時に金属管Tの強度が高められることになる。
【0044】
そして、図5(d)に示すように、曲げ加工部位Rの後端部が誘導加熱コイル13から出た後は、誘導加熱コイル13の作動、可動ローラ15の傾動、及び冷却水噴射装置14の作動が停止して、金属管Tの曲げ加工及び焼入れが終了することとなる。
【0045】
なお、曲げ加工部位Rの後端部が誘導加熱コイル13から出たことの判定も、コントロールユニット20のメモリ(図示せず)に予め登録された曲げ加工部位Rの金属管Tにおける位置、誘導加熱コイル13の位置、及び金属管Tの送給速さ等に基き判定される。あるいは、曲げ加工部位Rの後端部を金属管Tの表面にマーキングしておき、該マーキングを適宜センサで直接検出するようにしてもよい。
【0046】
図6は、この熱間曲げ加工装置1で曲げ加工した金属管Tが製品として使用されるときの姿勢に応じて、図5に例示した曲げ加工時の金属管Tの姿勢が異なることを示す説明図である。この実施形態においては、金属管Tは、前後2箇所で反対方向に曲げ加工され、S字状の製品に仕上げられる。
【0047】
図6(a)は、金属管Tの非湾曲面が、車両への組み付け時に上面A及び下面Bとなる場合の曲げ加工時の1例を示す平面図である。これは、前記図1及び図5の図例と同様であって、例えば図3のバンパーレインフォースメントが該当する。
【0048】
図6(b)は、金属管Tの湾曲面が、車両への組み付け時に上面A及び下面Bとなる場合の曲げ加工時の1例(前方部より後方部の位置が高い製品の例)を示す側面図である。これは、例えば図3のリヤサイドフレームが該当する。
【0049】
図6(c)は、金属管Tの湾曲面が、車両への組み付け時に上面A及び下面Bとなる場合の曲げ加工時の別の例(前方部より後方部の位置が低い製品の例)を示す側面図である。これは、例えば図3のフロントサイドフレームが該当する。
【0050】
いずれの場合も、金属管Tの使用時に上面Aになる面を上に向け、下面Bになる面を下に向けた状態で、前記金属管Tを熱間曲げ加工している。
【0051】
なお、以上において、加熱装置13による加熱温度としては、金属管Tにも依るが、特に、鉄系材料の場合、曲げ加工温度及び焼入れ温度共に、800℃〜1050℃等が好ましく、850℃程度がより好ましい。
【0052】
800℃以下では、焼入れ効果が十分に現れず、成形品における引張強度の向上が不十分となる。一方、1050℃を超えて加熱すると、引張強度の向上が飽和し又は却って低下傾向となり(理由は過度の高温化に伴う金属結晶の粗大化によって結晶組織の結び付きが却って粗くなるためと考えられる)、エネルギコストの割には実益に乏しい。
【0053】
急冷装置14による焼入れの入る冷却速度としては、A1変態点以下に冷却することが好ましい。A1変態点とは、残留オーステナイト等を除いて、冷却時にオーステナイトからのパーライト変態がおよそ終了する温度である。なお、鋼管の冷却方法及び冷却条件としては特に限定されず、一般的な冷却方法及び冷却条件を採用することが可能である。
【0054】
また、冷却液としては、水、特に防錆剤を含有した水等の冷媒が好ましい。
【0055】
さらに、金属管Tの送給速さとしては、150mm/秒程度以下の速さが曲げ加工の精度の点から好ましい。
【0056】
以上のように、この実施形態によれば、内面に耐食性メッキPが施された金属管Tを塑性変形可能温度に加熱して曲げ加工する場合に、図6に例示したように、曲げ加工後に金属管Tを使用するときに下側となる部分Bを下側にして前記金属管Tを加熱するようにしたから、金属管Tの加熱時にメッキPが溶融して金属管Tの内面に沿って下方に流動したときに(図2(b)参照)、金属管Tの製品としての使用時に水分が溜まり易く十分な耐食性が必要な金属管内面の下側Bのメッキ層が厚くなり薄くなることがなく、したがって、耐食性メッキPの耐食性が不足する不具合が回避される。
【0057】
また、曲げ加工の手法として、図1及び図5に示したように、押し通し曲げを適用し、金属管Tを誘導加熱コイル13で局部的に加熱するようにしたから、金属管Tを効率よく、確実、容易に熱間曲げ加工することができる。
【0058】
また、金属管Tの使用時に下側となる部分Bを下側にして金属管Tを固定ローラ12及び可動ローラ15に通すことにより、確実に金属管Tの使用時に下側となる部分Bを下側にして金属管Tを加熱することが可能となる。
【0059】
また、金属管Tを誘導加熱コイル13で塑性変形可能かつ焼入れ可能温度に加熱した直後に、該金属管Tを冷却水噴射装置14で急冷するようにしたから、曲げ加工と同時に金属管Tを焼入れして該金属管Tの強度を高めることが可能となる。
【0060】
なお、金属管Tとしては、角柱状に限らず、円柱状やその他の形状でもよい。また、強度や板厚等の特性が相異なる複数の異種の金属材同士をつなぎ合わせたテーラードチューブでもよい。また、金属管Tの製品としての用途は、車両部品に限らず、建築資材やその他の用途でもよい。
【0061】
また、曲げ加工の手法としては、押し通し曲げに限らず、回転引曲げ、圧縮曲げ、ロール曲げ、プレス曲げ、引張り曲げやその他の手法でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、内面に耐食性メッキが施された金属管を塑性変形可能温度に加熱して曲げ加工する場合に、金属管の使用時に水分が溜まり易く十分な耐食性が必要な金属管内面の下側のメッキ層が薄くなることを回避できる技術であるから、金属加工の技術分野において広範な産業上の利用可能性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の最良の実施の形態に係る金属管の熱間曲げ加工装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】前記熱間曲げ加工装置で曲げ加工する金属管の内面上側及び内面下側における耐食性メッキ層の厚みを比較して示す拡大図であって、(a)は図1に符号アで例示するように曲げ加工前のもの、(b)は図1に符号イで例示するように曲げ加工後のものである。
【図3】前記熱間曲げ加工装置で曲げ加工した金属管が製品として使用され得る車両部品の例を示す斜視図である。
【図4】前記熱間曲げ加工装置の制御システム図である。
【図5】前記熱間曲げ加工装置が行う熱間曲げ加工動作(熱間曲げ加工方法)の具体的1例を(a),(b),(c),(d)の順に示す工程図である。
【図6】前記熱間曲げ加工装置で曲げ加工した金属管が製品として使用されるときの姿勢に応じて曲げ加工時の金属管の姿勢が異なることを示す説明図であって、(a)は金属管の非湾曲面が金属管使用時の上面及び下面となる場合の曲げ加工時の1例を示す平面図、(b)は金属管の湾曲面が金属管使用時の上面及び下面となる場合の曲げ加工時の1例(前方部より後方部の位置が高い製品の例)を示す側面図、(c)は同じく金属管の湾曲面が金属管使用時の上面及び下面となる場合の曲げ加工時の別例(前方部より後方部の位置が低い製品の例)を示す側面図である。
【図7】金属管の内面に重合部があると、たとえ電気メッキ法を用いても該重合部にメッキを施すことが困難となることの説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 金属管の熱間曲げ加工装置
10 金属管保持装置
11 軌道
12 固定治具(固定ローラ)
13 加熱装置(誘導加熱コイル)
14 急冷装置(冷却水噴射装置)
15 可動治具(可動ローラ)
16 可動治具ハウジング
20 コントロールユニット
A 金属管の上面
B 金属管の下面
P 耐食性メッキ
T 金属管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に耐食性メッキが施された金属管を塑性変形可能温度に加熱して曲げ加工する金属管の熱間曲げ加工方法であって、
前記加熱を、金属管の使用時に下側となる部分を下側にして行うことを特徴とする金属管の熱間曲げ加工方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の金属管の熱間曲げ加工方法であって、
前記曲げ加工は、前記金属管を固定治具及び可動治具に通し、両治具の間で前記金属管を局部的に塑性変形可能温度に加熱し、可動治具を固定治具の金属管送給方向に対して傾動させることにより行い、
前記金属管を固定治具及び可動治具に通すときに、金属管の使用時に下側となる部分を下側にして通すことにより、前記加熱を、金属管の使用時に下側となる部分を下側にして行うことを特徴とする金属管の熱間曲げ加工方法。
【請求項3】
前記請求項2に記載の金属管の熱間曲げ加工方法であって、
前記加熱は、金属管の塑性変形可能かつ焼入れ可能温度に加熱し、
前記加熱の直後に前記金属管を急冷することを特徴とする金属管の熱間曲げ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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