説明

金属粒子製造装置、金属粒子製造方法およびこの方法によって製造された金属粒子

【課題】不純物の混入がなく、製造時に熱衝撃がなく、均一な組織、例えば均一な組織の金属間化合物、あるいは合金とするに充分な溶融時間を確保することができるようにする。
【解決手段】密閉容器の内部または外部に配置された光源を有し、該光源からの光で金属素材に集中して光加熱を行う光加熱部分を形成して、光加熱で金属素材を溶融させ、該溶融した金属を隣接する溶融金属保持部分で回転保持し、非接触で、重力によって金属粒子として滴下する大きさになるまで保持を継続し、滴下する金属粒子で溶融粒子状体を形成する光加熱溶融滴下手段が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粒子製造装置、金属粒子製造方法およびこの方法によって製造された金属粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粒子を製造する従来技術としては回転電極法がある。この方法は回転させた円柱状の金属素材電極をアーク放電によって溶融し、飛散させて金属粒子を製造するものである。
【0003】
金属粒子を製造する他の従来技術としては溶融滴下法がある。この方法はるつぼ中で溶融した金属をノズルから滴下させて金属粒子を製造するものである。
【0004】
金属粒子を製造する他の従来技術としては成形造粒方法がある。この方法は金型の圧縮成形によって金属粒子を製造するものである。
【0005】
金属粒子を製造する他の従来技術としては誘導加熱による溶融方法がある。この方法は誘導加熱用コイルによって金属を一方向に除々に溶融させて金属粒子を製造するものである。
【0006】
特許文献1には、複合ワイヤを供給し、レーザビームで溶融し、不活性ガスを噴射して粉体を形成、金属間化合物を固化させるチタン−アルミニウム金属間化合物の粉体形成方法が記載されている。
【0007】
特許文献2には、レーザ光線をパラボラミラーで収れんし、レーザ光線の焦点に向けて、上記ミラーに設けた穴からワイヤを送給するとともに、ワイヤと同軸にガスを流し、レーザ光線で溶融した上記のワイヤの先端部を上記ガスによって吹きとばすことによって、上記ワイヤの溶融部を微粒化するレーザによる微粉末の製造装置が記載されている。
【0008】
特許文献3には、レーザ光線による微粉末の製造方法が記載されている。
【0009】
特許文献4には、2種類以上の直径5mm以下の金属細線を目的組成の重量比に束ね、一体化して直径10mm以上の複合棒材とし、この複合棒材を不活性ガス雰囲気中においてその軸を中心に1000rpm以上で回転させながら、該複合棒材の一端を電子ビームの照射により加熱溶融するか、又は該一端と対向した電極との間のアーク放電によるアーク熱により溶融させ、粒子として飛散させることを特徴とする金属間化合物粉末の製造方法が記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平10−1767号公報
【特許文献2】特開昭62−177107号公報
【特許文献3】特開平3−13510号公報
【特許文献4】特開平1−222002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
核融合炉ブランケットにおける中性子増倍材料、あるいは航空・宇宙・自動車などの軽量耐熱材料として用いられる金属粒子には、不純物の混入のない金属粒子であって、製作された金属粒子が金属間化合物あるいは合金で形成され、製造時の熱衝撃が小さいことによって均一状の組織を呈する金属粒子が求められる場合がある。しかも、これらの金属粒子の製造に当っては始発金属素材調整が容易であって量産性のあることが求められる。
【0012】
従来法の回転電極法による金属粒子製造にあっては、ロッド状電極が必要とされ、この電極に金属間化合物を使用しようとする場合、電極製作が困難であるという問題がある。また、アーク放電で溶融させるために、熱衝撃が大きいという問題がある。従来法の溶融滴下法による金属粒子製造にあっては、るつぼで溶融した金属をノズルから滴下させるため、融点の高い金属間化合物のような材料を製造する場合、るつぼ材料との反応により不純物が混入されることになる。
【0013】
従来法の成形造粒方法による金属粒子製造にあっては、始発金属材料として合金粉末を製造することが必要であり、また製造された金属粒子の均一性に問題がある。
【0014】
従来法の誘導加熱による溶融方法による金属粒子製造にあっては、浮遊帯溶融法としての利点としての非接触であるために不純物混入が生じないという利点があるが、温度勾配が付けにくく、加熱部分が広くなって加熱調整が困難であり、均一な金属間化合物あるいは合金を製造するには難があった。
【0015】
更に、特許文献1に示される製造装置にあっては、レーザビームを使用しているが、微粉末を製造するものであるので、不活性ガスを噴射して粉体を形成しており、均一化された組織の金属粒子を製造するには困難である。
【0016】
本発明は、かかる点に鑑みて不純物の混入がなく、製造時に熱衝撃がなく、均一な組織、例えば均一な組織の金属間化合物、あるいは合金とするに充分な溶融温度と溶融時間を確保することができ、しかも始発金属素材調整が容易で量産性に適した金属粒子製造装置、金属粒子製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、密閉容器と、該密閉容器に供給されるワイヤあるいは細長状ロッド状の金属素材を加熱して溶融させる加熱装置とを備えた金属粒子製造装置において、
金属素材を回転しながら前記密封容器に供給する金属素材供給装置を備え、
前記密閉容器内は真空状態もしくは不活性ガス雰囲気とされ、
前記密閉容器の内部または外部に配置された光源を有し、該光源からの光で前記金属素材に集中して光加熱を行う光加熱部分を形成して、光加熱で金属素材を溶融させ、該溶融した金属を隣接する溶融金属保持部分で回転保持して溶融金属の均一化を行い、非接触で、重力によって金属粒子として滴下する大きさになるまで保持を継続し、滴下する金属粒子で溶融粒子状体を形成する光加熱溶融滴下手段を備えて構成されること
を特徴とする金属粒子製造装置を提供する。
【0018】
本発明は、また、前記光加熱溶融滴下手段が、金属素材の溶融温度を制御する加熱制御手段を備えることを特徴とする金属粒子製造装置を提供する。
【0019】
本発明は、また、前記加熱溶融滴下手段は、ランプと該ランプから発せられた光を集光する集光ミラーとから、もしくはレーザ光源によって構成されることを特徴とする金属粒子製造装置を提供する。
【0020】
本発明は、また、前記滴下する金属粒子を落下中に冷却する金属粒子冷却部および該金属粒子冷却部に接続された金属粒子集積部を備え、前記金属粒子冷却部は、その内部は傾斜して落下する金属粒子を衝突する傾斜部を有して形成されることを特徴とする金属粒子製造装置を提供する。
【0021】
本発明は、密閉容器と、該密閉容器に供給されるワイヤあるいは細長状ロッド状の金属素材を加熱して溶融滴下させる加熱装置とを備えた金属粒子製造装置による金属粒子製造方法において、
金属素材供給装置によって、金属素材を前記密封容器に供給し、前記密閉容器内を真空状態もしくは不活性ガス雰囲気となし、前記密閉容器の内部または外部に、配置された光源からの光で前記金属素材を光加熱し、非接触で、粒子状に溶融して滴下する光加熱溶融滴下手段を用い、該光加熱溶融滴下手段による光加熱によって、前記金属素材に集中して光加熱を行う光加熱部分を形成して、光加熱で金属素材を溶融させ、該溶融した金属を集中した光加熱のなされない隣接する溶融金属保持部分で回転保持して溶融金属を均一化し、溶融した金属が非接触で、重力で滴下するに充分な大きさになるまで保持を継続するようにしたこと
を特徴とする金属粒子製造方法を提供する。
【0022】
本発明は、また、前記金属素材を、金属元素単体、合金もしくは異種の金属元素が組合わされた組み合わせ体で構成し、または前記金属素材を、同一金属素材の粉体か、もしくは異なる金属元素の粉体を所定の組成割合、化学量論比で混合し、加熱状態で加圧圧縮あるいは焼結してロッド状に成形、もしくは成形したロッドを所定の形状に切り出し加工した加工体で構成し、前記密閉容器内に連続的または断続的に供給することを特徴とする金属粒子製造方法を提供する。
【0023】
本発明は、また、前記金属素材を、異なる金属元素のワイヤを縒り合わせた構造に形成し、この際に金属元素のワイヤを融点の低い金属元素は太く、融点の高い金属元素は細くすることで、融点の違いによる溶融状態の違いを調整するようにしたことを特徴とする金属粒子製造方法を提供する。
【0024】
本発明は、また、前記光過熱溶融滴下手段による光加熱制御によって、粒子状に溶融滴下する金属粒子の径を制御し、以って製造された金属粒子の径を調整するようにしたことを特徴とする金属粒子製造方法を提供する。
【0025】
本発明は、また、前記いずれかの金属粒子製造方法に製造されたことを特徴とする金属粒子を特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記したように金属素材に集中して光加熱部分を形成して、光加熱で金属素材を溶融させ、該溶融した金属を隣接する溶融金属保持部分で回転保持して溶融金属の加熱温度を均一化し、非接触で、重力によって金属粒子として滴下する大きさになるまで保持を継続するようにしているので、溶融した金属に不純物の混入がなく、光集中加熱のための熱衝撃がなく、均一な組織例えば均一な組織の金属間化合物、あるいは合金とするに充分な溶融温度と溶融時間を保持確保することができる。
【0027】
しかも、上述したような溶融温度と溶融時間の保持確保を行うことができるために始発金属素材としてワイヤあるいは細長状のロッドを供給すれば済み、始発素材調整が容易で量産性に適した金属粒子製造装置あるいは金属粒子製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の1実施例を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施例の金属粒子製造装置の構成を示す。図1において、金属粒子製造装置100は密封容器としての、かつ他の密封容器が接続可能なガラス管2、ガラス管2に外部で近接配置されたランプ3、ランプ3の周囲に形成された集光ミラー4から構成される。ガラス管2の上端には貫通孔29が形成され、該貫通孔29から金属素材1がガラス管2の内部へと供給される。金属素材1は金属素材をゆっくりと回転させる金属素材供給装置(図示せず)によってゆっくりと回転させられる。そして、金属素材1は当該供給装置によって、連続して、もしくは断続的に供給される。ここで、ゆっくりと金属素材を回転させることは、後述する金属粒子の組織の均一化に有効に作用することになる。
【0030】
集光ミラー4は、傾き装置(図示せず)によって傾きが調整できるように構成されている。ランプ3から発せられた光は集光ミラー4で集光され、加熱光5となって、予め定められた個所に照射される。この照射個所に加熱範囲が設定される。上部から供給された金属素材1は、この加熱範囲に到達して集中した光によって光加熱がなされる。このようにして、ランプ集光加熱手段10が形成される。
【0031】
ガラス管2の内部は、真空状態もしくは不活性ガス雰囲気とされる。不活性ガスを用いる場合、不活性ガスがゆっくりと流れるようにしてもよい。ゆっくりとは、後述する金属粒子の滴下に影響を与えない程度という意味である。
【0032】
図1に示す例では、ランプ3および集光ミラー4をガラス管2の外部に設けているが、ガラス管2の一部を拡大するなりして内部に設けるようにしてもよい。また、この例では透明なガラス管2を開いて、視覚によって溶融状態を確認できるようにしているが、他の手段によって溶融状態を確認するようにして、他の部材、ただし溶出の生じない材料で構成するようにしてもよい。
金属素材1は集中した光による光加熱によって溶融し、非接触で、噴射ガスを用いることなく重力によって金属粒子として滴下するに充分な大きさに成長する金属粒子となる。金属粒子として滴下するに充分な大きさに成長した金属粒子は噴射ガスの力を借りることなく重力で滴下、すなわち落下するに至る。
【0033】
このように、ランプ集光加熱手段10を用いて、集光加熱調整を行うようにして光加熱溶融滴下手段11が形成される。
【0034】
図2は、この光加熱溶融滴下手段11の機能および作用を示す。
図2において、金属素材1には、光端部に光加熱部分12とこれに隣接して溶融した金属で形成される溶融金属保持部分13とが形成される。光加熱部分12は光による光集中加熱によって金属素材1の光端部が溶融した部分である。光集中加熱のよって溶融した金属は非接触で、他の手段の力を借りることなく、非接触で、溶融した状態で隣接する溶融金属保持部分によって滴下することなく保持される。この保持によって加熱温度、すなわち溶融温度の均一化が十分に図られるこの保持は、他の何等の手段に対して非接触で、重力によって金属粒子として滴下するに充分な大きさ(重さ)になるまで継続される。この滴下に当っては他の手段、例えば噴射ガスによる噴射による補助を必要としないし、設けない方が望ましい。光集中加熱による温度調整によって保持時間および保持時間に依存した金属粒子の大きさが設定される。いずれにしても、溶融した金属を隣接した溶融部分による保持力によって予め定めた時間を保持するようにすることが重要であり、この溶融状態の保持維持によって金属は組織が回転状態で均一化され、例えば均一化された金属間化合物、合金の生成がなされる。
【0035】
このように、密封容器の内部または外部に配置された光源を有し、この光源からの光で供給された金属素材1に集中して光加熱を行う光加熱部分を形成して、光加熱で金属素材を溶融させ、この溶融した金属を集中した光加熱のなされない隣接する溶融金属保持部分でその保持力で保持し、非接触で、噴射ガスを用いることなく重力によって金属粒子を滴下するに充分な大きさになるので回転保持を継続し、以って組織の均一化を図るようにした光加熱溶融滴下手段11が構成される。
【0036】
そして、この光加熱溶融滴下手段11を用いて、光加熱調整によって、溶融した金属を金属素材1の光端部に上述した保持力によって保持し、保持継続することを行い、組織の均一化を行い、組織が均一化された状態で滴下する金属粒子の大きさを調整し、所期の大きさの金属粒子を落下させ、固化させて所望の大きさの金属粒子を形成する。
【0037】
本実施例において、所望の大きさの金属粒子とは0.2〜5mm程度であり、使用目的に対応して望ましくは0.2〜0.5mmあるいは1〜3mmとされる。
【0038】
本実施例にあっては紛体あるいは微粒子を形成することを目的とするものではないので、生成した溶融金属を噴射ガスであるいは、他の手段によって生成直後に金属素材から分離することは行わない。
【0039】
図3は、他の例を示す。図1,図2に示す例と基本的に同じであり、同一の構成については同一の数字が付してある。先の例と異なる点は、ランプ集光加熱手段10に代えてレーザ加熱手段10´が用いられていることにある。レーザ加熱手段10´は、レーザ光源3Aを備え、加熱光5が生成される。
【0040】
この例によっても密閉容器の内部または外部に、配置された光源を有し、該光源からの光で金属素材に集中して光加熱を行う光加熱部分を形成して、光加熱で金属素材を溶融させ、該溶融した金属を隣接する溶融金属保持部分で保持し、溶融金属部分の加熱温度の均一化を行い、非接触で、重力によって金属粒子として滴下する大きさになるまで保持を継続し、滴下する金属粒子で溶融粒子状体を形成する光加熱溶融滴下手段11が構成される。
【0041】
図4に示す例は、図1および図2に示す例を用いて、ガラス管2の下部に他の密封容器として金属粒子収集部21を接続したものである。金属粒子収集部21は金属粒子冷却部22および金属粒子集積部23から構成される。金属粒子冷却部22はガラス管2の下部に接続され、一方方向(図では左方向)に曲げられ、傾斜する構造とされこの間で滴下した金属粒子6の冷却がなされる。そして、金属粒子6の落下部分が衝撃を低減さるように傾斜して構成される。この落下部分に衝突して速度が落ちた金属粒子6は金属粒子集積部23で製品としての金属粒子24として回収される。
【0042】
以上のように、本実施例による光学的加熱浮遊帯溶融装置および方法が構成される。供給すれる金属素材1としてワイヤや細長状のロッドを用いることができ、量産性を高めることができる。金属粒子の組織の均一化および粒子径制御は、金属素材供給速度に対応した加熱温度に依存した光学的加熱条件および金属素材の形状によってなされるが、金属素材の形状、供給速度を一定とした場合には加熱温度に依存して制御される。
【0043】
そして、この加熱温度に対応して光加熱部分12としての保持継続時間が決定される。供給されるワイヤあるいは細長状ロッド状の金属素材1として、金属元素単独のもの、合金、もしくは所望の金属粒子組成割合となるよう異種の金属元素を組み合わせて加工したものも用いることができる。
【0044】
図5は、使用される金属素材を示す。図5(a)は金属元素単独で構成された金属素材31を示す。
【0045】
図5(b)は2種の金属元素からなる同径の金属素材32,33を組み合わせて1つの金属素材34とした例を示す。図5(c)は2種の金属元素からなる異径の金属素材35,36を組み合わせて、中央部に金属素材36を配置した金属素材37を示す。図5(d)は金属元素粒子を成形して構成した金属素材38を示す。
【0046】
本実施例にあってはこれらの金属素材を使用し得るが、これらの金属素材に限定されない。
【0047】
金属素材が、所望の金属粒子組成割合となるよう異なる金属元素のワイヤを縒り合わせた構造であって、金属元素のワイヤを相対的に融点の低い金属元素は太く、融点の高い金属元素は細くすることで、融点の違いによる溶融状態の違いを調整可能なようにしてもよい。
【0048】
また、金属素材が、金属元素粒子単体、合金粒子、もしくは所望の金属粒子組成割合となるよう異種の金属元素粒子を組み合わせてワイヤや、ロッド状に加工するようにしてもよい。
【0049】
すなわち、金属素材を金属元素単体、合金もしくは異種の金属元素が組み合わされた組み合わせ体で、または金属素材を、同一金属素材の粉体か、もしくは異なる金属元素の粉体を所望の組成・割合・化学量論比で所望の組成割合・化学量論比となるように混合し、加熱状態で加圧圧縮あるいは焼結してロッド状に成形、もしくは成形したロッドを所定の形状に切り出し加工した加工体で構成することができる。
【0050】
上述の例では、AlTiの金属粒子の製造手段、方法を示したが、本実施例によれば、Al系金属間化合物(アルミナイド)ではAlFe、A13Nb、A13Ni2、AlNi、AlZr3等、Si系金属間化合物(シリサイド)ではSI2Cr、Si2Mo、Si2Nb、Si2Ta、Si2Ti等、他にNiTi、NiSn、Ni7Zr2について適用することができる。
【0051】
また、Be系金属間化合物(ベリライド)では、Be12Ti、Be17Ti2、Be3Ti、Be2Ti、Be12V、Be2V、Be12Cr、Be2Cr、Be12Mn、Be13Ba、Be12Fe、Be11Fe、Be7Fe、Be22Ni4、Be21Ni5、BeNi3、Be13Zr、Be17Zr2、Be5Zr、Be27r、Be12Nb、Be17Nb2、Be3Nb、Be2Nb、Be2Nb3、Be12Ta、Be17Ta2、Be3Ta、Be2Ta、Be2Ta3、BeTa2、Be22Mo、Be12Mo、Bw2Mo、BeMo3、Be22W、Be12W、Be2W、Be13Yについて適用することができる。
【0052】
また、本法を用いることにより、2元系を含め、3元系以上の合金の合成が可能である。
【実施例1】
【0053】
φ2mmのAlTi(Al/Ti=35/65重量%)合金ワイヤを金属素材として用い、Arガス流量20sccm、ロッド回転数20rpmで回転させながら、光源にハロゲンランプを使用して金属素材を昇温速度100℃/minにて1600℃まで加熱し溶融滴下させ、温度1600℃一定に保つようにランプ出力を調整しながら10mm/minの速度で金属素材を加熱部分に連続的に供給し、この温度で溶融金属を所定の時間回転保持し、非接触で、噴射ガスを用いることなく自己の重力で溶融滴下させ、平均粒子径3mmの金属粒子を作製した。図6は金属素材、図7は作製した金属粒子の2θ/θスキャンX線回折(XRD)結果であり、AlTi金属素材がそのままの構造で、金属粒子となっていることを示す。図8には作製したペブルの写真を示す。
【実施例2】
【0054】
φ0.5mmのAlワイヤ(純度99.9%以上)と、φ0.5mmのTiワイヤ(純度99.9%以上)を使用し、各ワイヤを8本ずつ縒り合わせた金属素材(Al/Ti=37.5/62.5重量%)を用い、Arガス流量20sccm、ロッド回転数20rpm、ハロゲンランプを使用して金属素材を昇温速度100℃/minにて1200℃まで加熱後、初期の低融点元素であるAlのみの溶融滴下を防ぐために5分間、温度保持後に、1800℃まで加熱して、金属素材を溶融滴下させ、その後、温度1800℃一定に保つようにランプ出力を調整しながら1mm/minの速度で金属素材を加熱部分に連続的に供給し、この温度で溶融金属を所定の時間回転保持し、非接触で、噴射ガスを用いることなく自己の重力で溶融滴下させ、図8と同様な平均粒子径3mmの金属粒子を得た。図9は、作製したペブルのX線回折結果であり、AlTi合金ワイヤを用いた場合の図7と同様であり、実施例1と同様な金属粒子が出来ていることを示す。金属粒子断面を3000倍に拡大した場合の走査型電子顕微鏡(SEM)写真と、エネルギー分散型X線分析(EDX)による面分析の結果(AlとTiの元素分布)を図10(図10(a)はSEM写真、図10(b)はEDX−Al元素分布、図10(c)はEDX−Ti元素分布)に、そして、EDX面分析で同定された元素のピークプロファイルと、その結果から求めたAlとTiの存在比を図11に示す。これらの結果から、Al及びTiの元素分布に偏析等は認められず、均一に溶解された化合物の粒子が出来ていることが示された。
【実施例3】
【0055】
φ2mmのTiワイヤ(純度99.9%以上)を金属素材として使用し、実施例1と同様な条件にて1800℃まで加熱し、溶融滴下させ、その後、温度1800℃一定に保つようにランプ出力を調整しながら10mm/minの速度で金属素材を加熱部分に連続的に供給し、この温度で溶融金属を所定の時間回転保持し、非接触で、噴射ガスを用いることなく図12に示すTi金属粒子写真のような平均粒子径3mmの組織が均一化された金属粒子を得た。図13,14は、Tiワイヤ金属素材と、作製したペブルのX線回折結果であるが、同様なピークとなりTiワイヤ金属素材と同様な金属粒子が出来ていることを示す。
【0056】
図15は、本発明の実施例のフロ−を示す。
金属素材に集中した光加熱を行い、光加熱部分の形成を行う(S1)。光加熱で金属素材を溶融させ(S2)、この時に隣接する溶融金属保持部分で溶融金属を保持する(S3)。溶融金属の加熱温度、すなわち溶融温度の均一化を図る(S4)。ついで、非接触で、噴射ガスを用いることなく金属粒子として重力で滴下するに充分な大きさまで保持継続する(S5)。生成した金属粒子を非接触で、噴射ガスを用いることなく重力で滴下させ(S6)、冷却して(S7)、溶融粒子状体を形成し(S8)、回収する(S9)。
【0057】
本実施例によれば、るつぼ等の溶融容器を用いない浮遊帯溶融法を用いるため、金属粒子製造時に溶融容器などからの不純物混入を防ぐことができ、かつ、溶融雰囲気も制御できることから、高純度の均一化された組織の金属粒子の製造が可能であり、また、溶融時に外部から観察も可能なため、溶融状態制御も容易となる。特に金属間化合物粒子のような耐熱性粒子を作製する場合でも、調整が難しい合金化した金属素材だけでなく、必要とする金属粒子組成比となる様に金属元素のワイヤ等を縒り合わせた金属素材や、金属元素の粒子を成形した金属素材を用いることが可能になるため、量産性の高い製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例の構成を示す図。
【図2】本発明の実施例の機能,作用を説明する図。
【図3】本発明の他の実施例の構成を示す図。
【図4】本発明の他の実施例の構成を示す図。
【図5】本実施例で用いる金属素材の例を示す図。
【図6】AlTi金属素材XRD結果を示す図。
【図7】AlTi金属粒子XRD結果を示す図。
【図8】AlTi金属粒子写真で示される図。
【図9】AlTi金属粒子XRD結果を示す図。
【図10】AlTi金属粒子SEM、EDX結果を示す図。
【図11】EDX面分析による分析結果を示す図。
【図12】Ti金属粒子写真で示される図。
【図13】Ti金属素材XRD結果を示す図。
【図14】Ti金属粒子XRD結果を示す図。
【図15】本発明の実施例のフローチャート図。
【符号の説明】
【0059】
1…金属素材、2…ガラス管(密閉容器)、3…ランプ、3A…レーザ光源、4…集光ミラー、5…加熱光、6…滴下金属粒子、10…ランプ集光加熱手段、10´…レーザ加熱手段、11…光加熱溶融滴下手段、12…光加熱部分、13…隣接する溶融金属保持部分、21…金属粒子収集部、22…金属粒子冷却部、23…金属粒子集積部、24…製品としての金属粒子、29…貫通孔、100…金属粒子製造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、該密閉容器に供給されるワイヤあるいは細長状ロッド状の金属素材を加熱して溶融させる加熱装置とを備えた金属粒子製造装置において、
金属素材を回転しながら前記密封容器に供給する金属素材供給装置を備え、
前記密閉容器内は真空状態もしくは不活性ガス雰囲気とされ、
前記密閉容器の内部または外部に配置された光源を有し、該光源からの光で前記金属素材に集中して光加熱を行う光加熱部分を形成して、光加熱で金属素材を溶融させ、該溶融した金属を隣接する溶融金属保持部分で回転保持して溶融金属の均一化を行い、非接触で、重力によって金属粒子として滴下する大きさになるまで保持を継続し、滴下する金属粒子で溶融粒子状体を形成する光加熱溶融滴下手段を備えて構成されること
を特徴とする金属粒子製造装置。
【請求項2】
請求項1において、前記光加熱溶融滴下手段が、金属素材の溶融温度を制御する加熱制御手段を備えることを特徴とする金属粒子製造装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記加熱溶融滴下手段は、ランプと該ランプから発せられた光を集光する集光ミラーとから、もしくはレーザ光源によって構成されることを特徴とする金属粒子製造装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかにおいて、滴下する金属粒子を落下中に冷却する金属粒子冷却部および該金属粒子冷却部に接続された金属粒子集積部を備え、前記金属粒子冷却部は、その内部は傾斜して落下する金属粒子を衝突する傾斜部を有して形成されることを特徴とする金属粒子製造装置。
【請求項5】
密閉容器と、該密閉容器に供給されるワイヤあるいは細長状ロッド状の金属素材を加熱して溶融滴下させる加熱装置とを備えた金属粒子製造装置による金属粒子製造方法において、
金属素材供給装置によって、金属素材を前記密封容器に供給し、前記密閉容器内を真空状態もしくは不活性ガス雰囲気となし、前記密閉容器の内部または外部に、配置された光源からの光で前記金属素材を光加熱し、非接触で、粒子状に溶融して滴下する光加熱溶融滴下手段を用い、該光加熱溶融滴下手段による光加熱によって、前記金属素材に集中して光加熱を行う光加熱部分を形成して、光加熱で金属素材を溶融させ、該溶融した金属を集中した光加熱のなされない隣接する溶融金属保持部分で回転保持して溶融金属を均一化し、溶融した金属が非接触で、重力で滴下するに充分な大きさになるまで保持を継続するようにしたこと
を特徴とする金属粒子製造方法。
【請求項6】
請求項5において、前記金属素材を、金属元素単体、合金もしくは異種金属元素で同径または異径の素材が組合わされた組み合わせ体で構成し、または前記金属素材を、同一金属素材の粉体か、もしくは異なる金属元素の粉体を所定の組成割合、化学量論比で混合し、加熱状態で加圧圧縮あるいは焼結してロッド状に成形、もしくは成形したロッドを所定の形状に切り出し加工した加工体で構成し、前記密閉容器内に連続的または断続的に供給することを特徴とする金属粒子製造方法。
【請求項7】
請求項5において、前記光過熱溶融滴下手段による光加熱制御によって、粒子状に溶融滴下する金属粒子の径を制御し、以って製造された金属粒子の径を調整するようにしたことを特徴とする金属粒子製造方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかの金属粒子製造方法に製造されたことを特徴とする金属粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−111938(P2010−111938A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288240(P2008−288240)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】