説明

金属線材フィラメントを含む不織布とその製造方法

金属線材フィラメント(2)を含む不織布(1)を製造する方法は、少なくとも次の工程を含んでいる:a)線材フィラメント(2)を含む層(3)を形成し、b)第1の接合方法によって金属線材フィラメント(2)の少なくとも一部の間で物質接合による第1の結合(4)を生成し、c)第2の接合方法によって金属線材フィラメント(2)の間で物質接合による第2の結合(5)を生成する。更に、これに対応する不織布や、例えば自動車の排ガス処理における有利な利用方法が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線材フィラメントを含む不織布の製造方法、少なくとも1つの不織布を有するハニカム体の製造方法、多数の金属線材フィラメントを備える不織布並びにこれによって形成されるハニカム体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属不織布は、例えば定置の内燃機関や持運び可能な内燃機関から出る排ガスのフィルタ材料として利用されており、特に排ガスに含まれる粒子(灰、煤等)を捕捉する役目を果し、これら粒子は少なくとも部分的に不織布に捕捉され、場合により触媒コンバータを用いた上で、化学的に変成される。特に、例えば車両やボート等の持運び可能な内燃機関の排ガスシステムでは、高温の負荷や動的負荷が不織布に生じるので、この不織布には耐久性に関し特別な要求事項が課せられ、特に耐久性の高い繊維の相互結合が必要である。
【0003】
このような不織布の製造は、例えば溶着や、線材フィラメントの間に焼結結合を形成することによって行われる。
【0004】
不織布の製造にあたり考慮すべきは、最終的に排ガス処理装置を構成すべく、状況により、更に別の構成部品をこれに添加せねばならないことである。そのため、場合により不織布に特定の形状を与えることが必要になる。しかし、繊維相互の接合が生じているために、希望する形状付与が妨げられ、このような排ガス処理ユニットの製造という観点からは、大量生産に際し著しい困難が生じる。例えば特別に構成した追加の取扱工具が必要であり、しかも、平滑な不織布は成形性が劣るため、こうした取扱工具には高い磨耗が発生する。その上、不織布が管理不能な形で様々な個所で裂ける危険があり、その場合、状況によっては繊維が後になって排ガスシステム内で解けてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来技術に関して上述した技術的問題を少なくとも部分的に緩和することである。特に排ガス処理装置の容易な大量生産をも可能にする金属不織布の製造方法を提供することにある。更に、ハニカム体の製造方法も提供し、そのために、大量生産の観点から正確な形状付与を行える金属不織布を利用する。最後に、ハニカム体ないし排ガス処理装置を簡単に製造できる不織布をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、請求項1の構成要件を備える不織布の製造方法、請求項6の構成要件を備えるハニカム体の製造方法、ならびに請求項9の構成要件を備える不織布によって解決される。本発明のその他の有利な実施形態は、これらに従属する請求項に記載してある。付記しておくと、各請求項に個別に記載されている構成要件は、技術的に有意義な任意の形で互いに組み合わせて、本発明の新たな実施態様を明示することができる。
【0007】
金属線材フィラメントを含む不織布を製造する本発明の方法は、少なくとも次の工程を含む。
a)線材フィラメントを含む層を形成し、
b)第1の接合方法によって金属線材フィラメントの少なくとも一部の間で物質接合による第1の結合を生成し、
c)第2の接合方法によって金属線材フィラメントの間で物質接合による第2の結合を生成する。
【0008】
用語「不織布」は、特に平面的な形成物を意味し、不織布を形成する線材フィラメントは互いに整然と、又は雑然と配置され得る。不織布の例として、織物、格子構造、編物、ランダムレイヤ等がある。不織布は、原則として、少なくとも1つの添加物質、例えば他の種類の不織布や粉末等を含み得る。この添加物質は、最終的に不織布と拘束的に結合される。不織布は、耐熱性で耐腐食性の材料からなる線材フィラメントで形成される。用語「線材フィラメント」とは、特に、長く延伸された素材を指し、特に線材状の素材や切屑状の素材と、これに類似する素材とを含む。金属線材フィラメントは、特に、基本的に鋼材を基本材料とする材料を含み、高い割合でクロム(例えば18〜21重量%)および/又はアルミニウム(例えば少なくとも4.5重量%、特に少なくとも5.5重量%)を含むとよい。原則的に、アルミニウムめっきした線材フィラメントも利用できる。この種金属線材フィラメントは、0.1〜50mm、特に1〜10mmのフィラメント長と、0.01〜0.1mm、特に0.02〜0.05mmのフィラメント直径とを有するとよい。かかる不織布の単位面積当り重量は750〜1500g/m2の範囲内にあると好適である。製造すべき不織布の気孔率は30〜80%、特に45〜0%の範囲内であるとよい。
【0009】
工程a)で、最初に、線材フィラメントを含む層を形成する。このことは、特に線材フィラメントが緩やかに結合しつつ相接し、又は相上下して配置されることを意味する。そのため、線材フィラメントを例えば下地上に雑然と又は整然と載せ、線材フィラメントが相互に接触するようにする。この際、希望する層厚、特定の層重量および/又は希望する気孔率が生じる程度まで層を形成する。即ち、この層は不織布のための出発部品であり、線材フィラメントの物質接合による結合はまだ生じていない。
【0010】
工程b)で、第1の接合方法により金属線材フィラメントの少なくとも一部の間で物質接合による第1の結合を生成する。この際物質接合による第1の結合は、不織布をまだ良好に成形可能であるように施し、特に、まだ螺旋状に巻きつけ、S字型に巻回させ、又はこれに類似する方法で成形加工できるように施工する。金属線材フィラメントの過半数、特に線材フィラメントの少なくとも80%を、第1の接合方法で既に相互に結合するとよい。更に、金属線材フィラメントの少なくとも一部が、隣接する線材フィラメントに対し物質接合による複数の第1の結合を有しているとよく、これは、特に線材フィラメントの少なくとも40%について当て嵌まると良い。物質接合による結合が、1本の金属線材フィラメントに関し、フィラメント長よりも明らかに短い線材フィラメントの部分領域でのみ形成される工程b)の実施が極めて好ましく、例えば物質接合による第1の結合は、フィラメント長の20%、特に5%よりも小さい部分領域でのみ形成される。
【0011】
物質接合による第1の結合をこのように形成すると、不織布を固化させる物質接合による結合ないし結合点が比較的少数しか生じないので、一方で、不織布を搬送可能である上に成形加工可能とし、他方で、線材フィラメントの主要割合の不十分な定着ないし固定に関する危険を回避できる。第1の接合方法は、溶接による接合と半田付けによる接合に関する製造方法の群の内の1つであるとよい。原則的に、添加材料を用い又は用いずに作業を行い得る。
【0012】
そして次の工程c)で、第2の接合方法によって金属線材フィラメント間に物質接合による第2の結合を形成する。換言すると、このことは特に、物質接合による第1および第2の結合の形成が、場所的および時間的に別々に行い得ることを意味する。第2の接合方法の実行中、不織布の更なる固化につながり、物質接合による追加の第2の結合ないし結合点が生ずる。特に工程b)の後、工程c)実施後の第2の曲げ剛性よりも明らかに低い第1の曲げ剛性(不織布(幅50mm)を20mmの自由な曲げ長さで90°の曲げ角度まで曲げたときに最大限生じる力)が生じており、第2の曲げ剛性は第1の曲げ剛性より少なくとも50%、特に100%だけ高いと好ましい。曲げ剛性の絶対値は、不織布の具体的な構成に左右されるので、ここではあくまで一例(不織布の厚さ0.3mm、フィラメント直径0.022mm、気孔率85%)を挙げて、曲げ剛性の値を掲げる。即ちその場合、第1の曲げ剛性は600〜1200mNであり、特に1000mNよりも低いのに対し、工程c)後、例えば少なくとも1500mNの第2の曲げ剛性が生じている。工程c)の後、全線材フィラメントの少なくとも90%が、物質結合による少なくとも1つの第1の結合および/又は少なくとも1つの第2の結合を有すると好ましい。
【0013】
ここで提案する方法により、構造的な一体性という観点から、希望する不織布特性の2段階の生起を行う。このことは、不織布をまず良好に成形可能な状態とし、次いで最終的な形状に成形加工し、最後に後続する接合方法で、最終的に希望される剛性を与えることを可能とする。この結果、例えば運搬可能な内燃機関の排ガスシステムでの高い動的および熱的な負荷に対し、最終的に恒久的に耐え得る構造化した不織布の製造を可能にする。
【0014】
更に、工程b)を実施するための第1の接合方法として溶接方法が適用できる。物質接合による第1の結合を形成すべく、抵抗溶接法を適用すると特に好ましい。この場合、少なくとも2つのロール状の電極を不織布の両側に配置した、所謂ローラシーム溶接が格別に適することが判明した。各電極に電圧を印加し、これらを線材フィラメント層と接触させることで、金属線材フィラメント相互の物質接合による結合を形成する。この溶接法の作用区域は空間的に限られているので、層ないし不織布の比較的局所に限られた部分領域だけで、物質接合による第1の結合が生ずる。その結果、不織布の以後の処理のために所望の不織布特性を的確に設定できる。
【0015】
本方法の更に別の実施形態では、工程c)を実施すべく、第2の接合方法として、焼結結合を形成するための不織布の高温処理を適用できる。この場合、不織布を800℃を超える温度、特に1100℃より高温に曝すとよい。この際不織布の周辺は、真空および/又は保護ガス雰囲気となし得る。物質接合による第2の結合は、特に表面拡散により金属線材フィラメント間に生じた、所謂焼結ネックにより特徴づけられる。通常、物質接合による第2の結合は、隣接して固定された線材フィラメントの接触領域に位置している。
【0016】
別の方法の実施形態では、工程b)は、少なくとも1つの異方性の不織布特性が生成されるような結合計画の作成を含む。ある特性の「異方性」の構成とは、特に、当該特性の特徴が不織布の異なる方向で有意に相違することを意味する。即ち、例えば不織布は工程b)の後、1つの方向では曲げ剛性を持ち、別の方向では曲げ柔軟性を持つように製作される。これを実現するために結合計画の作成が提案される。「結合計画」とは、物質接合による第1の結合の区域の所定の配置を意味する。この結合計画は、物質接合による第1の結合の、相互に定義して配置した複数の区域を含んでいてよく、そのため結合が一種のパターンを形成することになる。結合計画は、少なくとも部分的に互いに平行および/又は少なくとも部分的に交差する複数の区域を備えるように作成し得る。結合計画の明確な構造は、基本的に、その後にどのような種類の不織布の成形加工を施すかにより決まる。結合計画の様々に異なる作成により、特に曲げ剛性、強度、常温成形加工性、引張強さ等の不織布の特性を異方性に製作できる。
【0017】
本方法の別の実施形態では、工程b)と工程c)の間に、次の工程の少なくとも1つを実施する。即ち、
不織布の搬送、
不織布の成形加工および
不織布のコーティング。
【0018】
不織布の搬送に当り、不織布を例えば下地から取り外すか、又は下地と共に別の場所へと移す。この際、不織布を少なくとも部分的に弾性変形させたり、回転させたりすることもできる。不織布の成形加工は、例えば開口部の穿設、不織布の巻き付け、不織布の巻回および/又は構造化等を含む。不織布の成形加工に際し、平面状の形成物を恒常的に可塑的に永久変形し、例えば螺旋、円筒等の種類の、又は波形、ジグザグ形状等を有する一層複雑な形成物にするとよい。不織布のコーティングは添加物質の塗布を含み、該添加物質は一時的又は恒久的に不織布に固定される。一時的なコーティングは、例えば別の部品又は粉末(半田、フィルタ材料等)等を固定するための接着剤の塗布であってよい。恒久的なコーティングの一例は、不織布の表面へ少なくとも部分的に取り込まれる少なくとも1つの合金元素を含む添加材料の塗布であり、場合により工程c)の実施と同時に行える。
【0019】
本発明の更に別の態様は、多数の金属線材フィラメントを含む少なくとも1つの不織布を有するハニカム体の製造方法を提案し、この方法は少なくとも次の工程を含む。
w)線材フィラメントからなる層を形成し、
x)第1の接合方法によって金属線材フィラメントの少なくとも一部の間で物質接合による第1の結合を生成し、
y)ハニカム体を形成するように少なくとも1つの不織布を配置し、
z)第2の接合方法によって金属線材フィラメントの間で物質接合による第2の結合を生成する。
【0020】
ハニカム体は、特に少なくとも部分的に流体が貫流可能な、通常は互いに略平行に配置された多数の通路を備えるように製作したことを特徴とする。かかるハニカム体は、例えば持運び可能な内燃機関の排ガスから有害物質を取り除くために利用される。ハニカム体は、例えば触媒活性を持つコーティングの支持体および/又は粒子トラップとして働く。ハニカム構造を形成すべく、ここでは、多数の金属線材フィラメントを含む少なくとも1つの不織布を用意する。線材フィラメント不織布の製造(工程w)およびx))に関しては、工程a)およびb)についての上に記載した説明を参照されたい。
【0021】
そして、物質接合による第1の結合の形成後に、工程y)により、ハニカム体を形成すべく少なくとも1つの不織布を配置する方法工程を実行する。この配置は、例えば不織布の成形加工、ハニカム体の他の部品(例えば追加の薄板シート)に対する不織布の位置あわせ、ハウジングへの不織布の統合等を含む。工程y)は、少なくとも1つの不織布を含むハニカム体の希望する造形が生じるように実施し、工程z)で、最終的に不織布ないしハニカム体の希望する耐久性ないし剛性が得られるようにするとよい。
【0022】
この際、工程y)は、少なくとも1つの不織布と別の金属部品との組み合わせを含み、工程z)の間に、当該部品の少なくとも一部の間でも物質接合による結合が生ずると特に好ましい。ハニカム体の一部であり得る別の金属部品は、例えば金属ハウジング、少なくとも1つの(同じく通路を少なくとも部分的に仕切る)金属シート並びに、例えば複数の不織布相互の結合を可能としおよび/又はハニカム体の通路の少なくとも一部を閉止する金属製の結合部材であり得る。工程y)との関連で、特に平滑な不織布と波形の金属シートとの交互の積み重ねを意図しており、次いでこれを巻き付けおよび/又は巻回してハニカム体とする。次に、金属シートと不織布の複合体をハウジングに挿入し、この作業は、不織布と金属シートの複合体が一時的に固定されるような初期応力の下で行う。各部品をこのように相互配置してから、物質接合による第2の結合の形成を工程z)中に行う。
【0023】
上記との関連で、工程z)が、真空下800℃を上回る温度での半田付けプロセス(所謂「硬ろう付け」)を含んでいてもよい。この際、各部品の少なくとも部分領域に、各部品の少なくとも一部の間で更に別の物質接合による結合を形成する半田付け材料を施すとよい。それにより工程z)中に、一方で線材フィラメント相互の物質接合による第2の結合の形成によって不織布が硬化していき、それと同時に各部品の間の結合が生ずる。ここで説明した硬ろう付けプロセスは、1000℃を超える温度で行うのが好ましい。この方法によっても、結合の品質ないし強度が向上する。
【0024】
本発明の更に別の態様では、多数の金属線材フィラメントを含む不織布を提供する。線材フィラメントの一部は、結合計画に基づき物質接合により相互に結合されており、その結果、この不織布は少なくとも1つの異方性の不織布特性を示す。異方性に関しては、上記の説明を参照されたい。この少なくとも1つの不織布特性は、不織布の次の特性、即ち曲げ剛性、強度、常温成形加工性、引張強さの内の少なくとも1つを含む。
【0025】
ここでは特に、線材フィラメントは相互に雑然と配置されているものと想定している。整列した又は整然とした線材フィラメントを備えるように不織布を構成することも原則として可能であり、それにより、例えばその配置により既に異方性を与え得る。それでも、線材フィラメントを互いに雑然と配置し、特別に形成した物質接合による第1の結合により異方性が生じた不織布がここでは好ましい。それに応じて不織布は、特に、本発明に基づいて説明した上記の方法に従い製造できる。
【0026】
更に、複数の通路を含むハニカム体を提案する。これらの通路は、上記の種類の不織布によって少なくとも部分的に形成している。この場合、唯一の不織布が複数の通路を仕切る役目を果すとよく、ハニカム体が螺旋状に構成されていれば、唯一の不織布が、少なくとも部分的に全ての通路を部分的に仕切っていても差し支えない。
【0027】
更に、本発明に基づく種類の少なくとも1つの不織布を含み、本発明による方法で製造した少なくとも1つの不織布を含み、又は上述の種類の少なくとも1つのハニカム体を含む排ガスの処理装置も提案される。この装置は洗浄すべき排ガスが少なくとも部分的に貫流し、不織布の内部ないし表面で少なくとも部分的に固体粒子が蓄積される。この装置はフィルタないし粒子トラップとして製作すると好ましい。
【0028】
これに応じて、内燃機関を備えた車両を、上記の種類の少なくとも1つのこの種装置と組み合わせると格別に好ましい。この車両はトラックや乗用車であり、本装置はその排ガスシステムに組み込まれる。内燃機関は、例えばガソリンエンジン又はディーゼルエンジンである。
【0029】
本発明ならびに技術的な周辺状況について、図面を参照しながら詳しく説明する。各図面は本発明の特別に好ましい実施形態を示しているが、本発明はこれに限定されない。各図面は模式的なものであり、通常、大きさの比率を図示する役目を果していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は、多数の金属線材フィラメント2を備えるように製作された不織布1を模式的かつ外観的に図示する。不織布1は、共同で結合計画6を形成する、物質接合による第1の結合4を備える。図示の実施形態では、物質接合による第1の結合4の一部は平行線として、特に溶接継目として形成されており、この結合計画6は、物質接合による別の第1の結合4の「ジグザグ」形の構成と交差している。物質接合による第2の結合5をまだ形成していない状態の不織布に着目すると、不織布1は異方性の不織布特性を有している。この異方性は、特に、不織布厚み17の方向(方向z)又は平面(方向xおよび方向y)で異なるように創出されている。方向xとyに関し異方性を創出すると特に好ましく、それにより、不織布1は例えば方向xでは曲げ柔軟性を示し、方向yでは曲げ剛性を示す。図示した溶接継目は、最大で100mmの幅を有し、隣接する溶接継目の相互間隔は、溶接継目の幅よりも短く形成し得る。溶接継目とは、特に溶接工程の前後における層ないし不織布と比較して、物質接合による結合の数が多い区域を意味する。
【0031】
図2は、物質接合による第2の結合5を既に形成した時点での、図1の不織布の細部を示す。物質接合による第2の結合5は、線材フィラメント2の接触領域に形成した焼結結合として形成し得る。この際線材フィラメント2は、1〜10mmのフィラメント長16と、0.02〜0.05のフィラメント直径15とを有しているとよい。線材フィラメント2を相互に雑然と配置した結果、不織布1の通気性を可能にする気孔18が生ずる。不織布の気孔率は、例えば45〜60%である。物質接合による第1の結合4と物質接合による第2の結合5の形成後、以前にあった異方性は僅かにしか残存しておらず、又は有意ではなくなっている。原則的に、不織布特性は実際の不織布を対象としており、剛性に影響を及ぼす他の部品との複合体を対象とするのではないことをここで指摘しておく。
【0032】
図3は、不織布1を製造する方法の1つの実施態様を示す。ここでは線材フィラメント2が分配器19によって(場合によりコンベヤベルトとして施工された)下地35に塗布され、その結果線材フィラメント2を含む層3が生ずる。層3の希望する組成が成立すると、線材フィラメント2からなるこの緩やかな複合体に、次の工程で第1の接合方法によって物質接合による第1の結合が与えられ、不織布1が得られる。図示の実施態様では、この接合を溶接設備20により実施し、この略図の図面はロールシーム溶接プロセスを示している(抵抗溶接)。そして、異方性の不織布特性をもつ不織布1を形成した後で、例えばハニカム体を製造すべく、その他の様々な方法を実施することができ、それから最終的に、別の方法(図3の右側に図示)で物質接合による第2の結合5が生成される。これは図面では、例えば1000℃を超える温度が内部で生じている炉21により行い、この際線材フィラメント2の間で焼結結合が生ずる。
【0033】
図4は、不織布1を含むハニカム体7の1つの実施態様を示す。ハニカム体7は、排ガスにとって流動方向23へ貫流可能な多数の通路11を有する。通路11は、一方では不織布1で仕切られると共に、他方では金属シート9で仕切られている。金属シート9は、波の山25と谷26を備えるように構造化されて製作されている。排ガスないしその中に含まれる粒子22の流動方向23へ介入すべく、通路11の内部領域に突入する流動介入部24を設けている。それによって排ガスの一部が不織布1に向かって誘導され、粒子22が不織布1の線材フィラメント2に堆積する。
【0034】
図5は、所謂「ウォールフローフィルタ」としてのハニカム体7の更に別の構成を例示する。該ハニカム体7も同じく複数の通路11を含み、該通路は相互に閉止している。同じく通路11は少なくとも部分的に不織布1で構成され、排ガスは流動方向23へハニカム体7の内部領域に流入でき、端面36に結合部材10が配置されている結果として、不織布1へ全面的に浸透することを強いられる。その際に目詰まりを防止すべく、蓄積される粒子の割合が高いために不織布1が排ガスにとって高すぎる流動抵抗となった場合に、一種のバイパスとなる開口部27を不織布1に設けるとよい。このハニカム体7は金属ハウジング8の中に配置されており、これと半田付けされているのが好ましい。
【0035】
最後に図6は、不織布1ないしハニカム体7の好ましい利用目的の1つを示す。内燃機関14を備える自動車13を図示し、内燃機関14は排ガスを生じ、図示した排ガスシステム29によって、この排ガスが少なくとも部分的に清浄化される。そのために、排ガスはまず一次触媒コンバータ28を貫流する。次いで排ガスは酸化触媒コンバータ30を貫流し、ここでは粒子トラップ31として形成された排ガス処理装置12を貫流する。酸化触媒コンバータ30と粒子トラップ31の組み合わせは、酸化窒素の供給によって粒子トラップ31の継続的な再生を可能にするので、熱による再生即ち煤成分の燃焼を場合により省略できる。引き続いて、排ガスは更に消音装置32に向って流れてから、排ガスシステム29を出ていく。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】不織布の第1の実施態様を示す斜視図である。
【図2】図1に示す不織布の詳細図である。
【図3】不織布の第1の製造方法の進行手順である。
【図4】不織布を含むハニカム体を示す詳細図である。
【図5】不織布を含むハニカム体の更に別の実施態様である。
【図6】排ガス処理をする装置を備えた車両である。
【符号の説明】
【0037】
1 不織布、2 線材フィラメント、3 層、4、5 結合、6 結合計画、7 ハニカム体、8 ハウジング、9 金属シート、10 結合部材、11 通路、12 装置、13 車両、14 内燃機関、15 フィラメント直径、16 フィラメント長、17 不織布厚み、18 気孔、19 分配器、20 溶接設備、21 炉、22 粒子、23 流動方向、24 流動介入部、25 波の山、26 波の谷、27 開口部、28 一次触媒コンバータ、29 排ガスシステム、30 酸化触媒コンバータ、31 粒子トラップ、32 消音装置、33 幅、34 間隔、35 下地、36 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線材フィラメント(2)を含む不織布(1)を製造する方法において、
a)線材フィラメント(2)を含む層(3)を形成する工程と、
b)第1の接合方法によって金属線材フィラメント(2)の少なくとも一部の間で物質接合による第1の結合(4)を生成する工程と、
c)第2の接合方法によって金属線材フィラメント(2)の間で物質接合による第2の結合(5)を生成する工程とを少なくとも含む不織布の製造方法。
【請求項2】
前記工程b)を実施するために、前記第1の接合方法として溶接方法を使用する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程c)を実施するために、前記第2の接合方法として焼結結合を形成するための不織布(1)の高温処理を使用する請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記工程b)は結合計画(6)の作成を含み、該計画に従い少なくとも1つの異方性の不織布特性を生成させる請求項1から3の1つに記載の方法。
【請求項5】
前記工程b)と前記工程c)の間に、
不織布(1)を搬送する工程と、
不織布(1)を成形加工する工程と、
不織布(1)をコーティングする工程の内少なくとも1つの工程を実施する請求項1から4の1つに記載の方法。
【請求項6】
多数の金属線材フィラメント(2)を含む少なくとも1つの不織布(1)を有するハニカム体(7)を製造する方法において、
w)線材フィラメント(2)からなる層(3)を形成する工程と、
x)第1の接合方法によって金属線材フィラメント(2)の少なくとも一部の間で物質接合による第1の結合(4)を生成する工程と、
y)ハニカム体(7)を形成すべく少なくとも1つの不織布(1)を配置する工程と、
z)第2の接合方法によって金属線材フィラメント(2)の間で物質接合による第2の結合(5)を生成する工程とを少なくとも含むハニカム体の製造方法。
【請求項7】
前記工程y)が、少なくとも1つの不織布(1)と別の金属部品(8、9、10)との組み合わせを含み、前記工程z)の間に当該部品(1、8、9、10)の少なくとも一部の間で物質接合による結合を形成する請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記工程z)が、真空中での800℃を超える温度での半田付け工程を含む請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
多数の金属線材フィラメント(2)を含む不織布(1)において、前記線材フィラメント(2)の一部が結合計画(6)に基づいて互いに物質接合により結合されており、その結果前記不織布(1)は少なくとも1つの異方性の不織布特性を有する不織布。
【請求項10】
前記線材フィラメント(2)が互いに雑然と配置された請求項9に記載の不織布。
【請求項11】
複数の通路(11)を含むハニカム体(7)において、前記通路(11)は請求項9又は10に記載の不織布(1)で少なくとも部分的に構成されたハニカム体。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の少なくとも1つの不織布(1)、請求項1から8の1つに記載の方法に基づいて製造された少なくとも1つの不織布(1)、又は請求項11に記載の少なくとも1つのハニカム体(7)を含む排ガス処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の少なくとも1つの装置(12)と組み合わされた内燃機関(14)を含む車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−545891(P2008−545891A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511598(P2008−511598)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004483
【国際公開番号】WO2006/122719
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(500038927)エミテック ゲゼルシヤフト フユア エミツシオンス テクノロギー ミツト ベシユレンクテル ハフツング (156)
【Fターム(参考)】