金属缶
【課題】意匠性の高い金属缶を提供する。
【解決手段】金属缶10の缶胴11の外周面11aに1つ又は複数の単位エンボス模様1Aが設けられている。単位エンボス模様1Aは、単位エンボス模様1Aの外周縁に形成されるとともに単位エンボス模様1Aを区画する最外周折曲線2と、最外周折曲線2の内側の中央部に缶胴11の基準外周面11zと略平行に配置された第1セル面3と、第1セル面3の外周縁に形成された第1折曲線4と、最外周折曲線2の内側における第1折曲線4の外側に、第1セル面3を包囲する状態に第1セル面3の周方向に並んで配置された複数の第2セル面5と、を備える。複数の第2セル面5は、互いに隣接する第2セル面5,5同士が、該両第2セル面5,5間の境界に形成された第2折曲線6を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。
【解決手段】金属缶10の缶胴11の外周面11aに1つ又は複数の単位エンボス模様1Aが設けられている。単位エンボス模様1Aは、単位エンボス模様1Aの外周縁に形成されるとともに単位エンボス模様1Aを区画する最外周折曲線2と、最外周折曲線2の内側の中央部に缶胴11の基準外周面11zと略平行に配置された第1セル面3と、第1セル面3の外周縁に形成された第1折曲線4と、最外周折曲線2の内側における第1折曲線4の外側に、第1セル面3を包囲する状態に第1セル面3の周方向に並んで配置された複数の第2セル面5と、を備える。複数の第2セル面5は、互いに隣接する第2セル面5,5同士が、該両第2セル面5,5間の境界に形成された第2折曲線6を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶胴の外周面に1つ又は複数の単位エンボス模様が設けられた金属缶、金属缶の製造装置、及び金属缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料(例:清涼飲料、ビール)等を充填する金属缶(例:スチール缶、アルミニウム缶)の缶胴の外周面には、金属缶を店頭に並べた際に消費者の購入意欲をそそるようにするため、様々なエンボス模様がエンボス加工により付形されている。
【0003】
例えば、特開平10−328772号公報(特許文献1)には、缶胴の周方向及び軸方向に並んだ複数の矩形の平坦凹面の上下にそれぞれ三角形の傾斜面を平坦凹面と隣接して形成し、これにより、六角形の凹面を複数形成することが開示されている。
【0004】
特許第4206754号公報(特許文献2)には、多数の三角形の傾斜面の内側を複数に塗り分けることにより、光沢のある部分と光沢のない部分とを作ることが開示されている。
【0005】
このようなエンボス模様を成形するエンボス加工は、一般に次のような方法で行われる。
【0006】
すなわち、互いに回転軸が平行に配置された一対の内型ロール及び外型ロールを用い、内型ロールを缶胴の内側に配置するともに外型ロールを缶胴の外側に配置し、次いで、内型ロール及び外型ロールで缶胴を挟んで内外両型ロールを互いに逆方向に回転させることにより、缶胴の外周面にエンボス加工を施す。
【0007】
なお、型ロールを用いたエンボス加工は、缶胴の他に、例えば金属板に対して行われることもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−328772号公報
【特許文献2】特許第4206754号公報
【特許文献3】特開平11−244960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
而して、このような金属缶では、消費者の購入意欲を掻き立てるとともに他社製品との差別化を図るため、高い意匠性が要求されている。
【0010】
そこで本発明は、高い意匠性を有する金属缶、その製造装置、及び金属缶の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1] 缶胴の外周面に1つ又は複数の単位エンボス模様が設けられた金属缶であって、
前記単位エンボス模様は、
単位エンボス模様の外周縁に形成されるとともに単位エンボス模様を区画する最外周折曲線と、
前記最外周折曲線の内側の中央部に前記缶胴の基準外周面と略平行に配置された第1セル面と、
前記第1セル面の外周縁に形成された第1折曲線と、
前記最外周折曲線の内側における前記第1折曲線の外側に、前記第1セル面を包囲する状態に第1セル面の周方向に並んで配置された複数の第2セル面と、を備え、
前記複数の第2セル面は、互いに隣接する第2セル面同士が、該両第2セル面間の境界に形成された第2折曲線を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲していることを特徴とする金属缶。
【0013】
[2] 前記複数の第2セル面の少なくとも一部は、前記第1折曲線を介して前記第1セル面と隣接し且つ前記第1セル面に対して相対的に折曲している前項1記載の金属缶。
【0014】
[3] 前記最外周折曲線の内側における前記複数の第2セル面の外側に、前記複数の第2セル面を包囲する状態に第3セル面が配置されるとともに、
前記第3セル面と前記複数の第2セル面との境界に形成された第3折曲線を介して、前記第3セル面が前記複数の第2セル面に対して相対的に折曲している前項1又は2記載の金属缶。
【0015】
[4] 前記単位エンボス模様の外周輪郭線の正面形状と前記第1セル面の外周輪郭線の正面形状とが互いに略相似形状である前項1〜3のいずれかに記載の金属缶。
【0016】
[5] 前項1〜4のいずれかに記載の金属缶の製造装置であって、
缶胴の内側に配置される内型と、缶胴の外側に配置されるとともに前記内型との間で缶胴を挟む外型と、を備え、
前記内型の表面に成形凸部及び凹部のいずれか一方が設けられるとともに、前記外型の表面に他方が設けられ、
前記成形凸部及び前記凹部は、成形凸部が缶胴を介して凹部内に嵌め込まれることにより、缶胴の外周面に単位エンボス模様を成形するものであり、
前記成形凸部は、単位エンボス模様の成形時に缶胴を介して前記凹部内に嵌め込まれた状態のもとで、前記凹部の底面と前記成形凸部の先端面との間から前記凹部の内周面と前記成形凸部の外周面との間までの領域に亘って、缶胴の肉厚よりも大きなクリアランスが生じる大きさに形成されており、
前記凹部の開口周縁は、最外周折曲線を成形する最外周成形縁として機能しており、
前記成形凸部の先端面には、第1セル面を成形する第1成形面と、前記第1成形面の外周縁に形成されるとともに第1折曲線を成形する第1稜線と、前記第1稜線の外側に配置されるとともに複数の第2セル面を成形する複数の第2成形面と、が設けられるとともに、
前記複数の第2成形面は、互いに隣接する第2成形面同士が、該両第2成形面間の境界に形成されるとともに第2折曲線を成形する第2稜線を介して、互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲していることを特徴とする金属缶の製造装置。
【0017】
[6] 前記複数の第2成形面の少なくとも一部は、前記第1稜線を介して前記第1成形面と隣接し且つ前記第1成形面に対して相対的に折曲している前項5記載の金属缶の製造装置。
【0018】
[7] 前記金属缶は、
前記最外周折曲線の内側における前記複数の第2セル面の外側に、前記複数の第2セル面を包囲する状態に第3セル面が配置されるとともに、
前記第3セル面と前記複数の第2セル面との境界に形成された第3折曲線を介して、前記第3セル面が前記複数の第2セル面に対して相対的に折曲したものであり、
金属缶の製造装置は、
前記成形凸部の外周面又は前記成形凸部の先端面における前記複数の第2成形面の外側に、単位エンボス模様の成形時に缶胴と接触しない非接触面が配置されるとともに、
前記非接触面と前記複数の第2成形面との境界に形成されるとともに第3折曲線を成形する第3稜線を介して、前記非接触面が前記複数の第2成形面に対して相対的に折曲している前項5又は6記載の金属缶の製造装置。
【0019】
[8] 前記凹部の開口周縁で囲まれた内側領域の正面形状と前記第1成形面の外周輪郭線の正面形状とが互いに略相似形状である前項5〜7のいずれかに記載の金属缶の製造装置。
【0020】
[9] 前項5〜8のいずれかに記載の金属缶の製造装置を用いて前項1〜4のいずれかに記載の金属缶を製造することを特徴とする金属缶の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明は以下の効果を奏する。
【0022】
[1]の発明では、缶胴の外周面に設けられた単位エンボス模様は、単位エンボス模様の外周縁に形成されるとともに単位エンボス模様を区画する最外周折曲線を備えているので、単位エンボス模様を最外周折曲線によって明瞭化することができる。
【0023】
さらに、単位エンボス模様は、最外周折曲線の内側の中央部に缶胴の基準外周面と略平行に配置された第1セル面を備えているので、最外周折曲線の内側に缶胴の半径外向きに尖った頂点部が配置されたものに比べて傷が付きにくい。さらに、第1セル面の外周縁に第1折曲線が形成されているので、第1セル面を第1折曲線によって明瞭化することができる。
【0024】
さらに、単位エンボス模様は、最外周折曲線の内側における第1折曲線の外側に、第1セル面を包囲する状態に第1セル面の周方向に並んで配置された複数の第2セル面を備えるとともに、複数の第2セル面は、互いに隣接する第2セル面同士が、該両第2セル面間の境界に形成された第2折曲線を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲しているので、複数の第2セル面によって第1セル面を包囲した状態で光を乱反射させてキラキラ感を出すことができるし、第1セル面を更に明瞭化することができるし、単位エンボス模様を更に明瞭化することができる。これにより、高い意匠性を有する金属缶を得ることができる。
【0025】
[2]の発明では、複数の第2セル面の少なくとも一部は、第1折曲線を介して、第1セル面と隣接し且つ第1セル面に対して相対的に折曲しているので、第1セル面を更に一層明瞭化することができる。
【0026】
[3]の発明では、最外周折曲線の内側における複数の第2セル面の外側に、複数の第2セル面を包囲する状態に第3セル面が配置されるとともに、第3セル面と複数の第2セル面との境界に形成された第3折曲線を介して、第3セル面が複数の第2セル面に対して相対的に折曲しているので、複数の第2セル面と更に第3セル面とによって第1セル面を包囲した状態でキラキラ感を増大させることができる。
【0027】
[4]の発明では、単位エンボス模様の外周輪郭線の正面形状と第1セル面の外周輪郭線の正面形状とが互いに略相似形状であることにより、第1セル面が浮き上がったように見せることができる。これにより、金属缶の意匠性を更に高めることができる。
【0028】
[5]の発明によれば、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の金属缶の製造装置を提供できる。
【0029】
さらに、[5]の発明は、従来の装置に比べて優れた次の効果を奏する。
【0030】
缶胴の外周面に三次元形状のエンボス模様をエンボス加工により成形する従来の装置では、内型ロール及び外型ロールのいずれか一方に、三次元形状を成形する成形凸部が設けられるとともに、他方に成形凸部に対応する成形凹部が設けられる。成形凸部と成形凹部は、互いに転写した形状となっている。このような内外両型ロールを備えた従来の装置では、エンボス模様の成形時に缶胴が成形凸部と成形凹部とに密着して挟まれるので、エンボス加工面にゆがみや細かいシワが発生し易かった。
【0031】
これに対して、[5]の発明では、成形凸部は、単位エンボス模様の成形時に缶胴を介して凹部内に嵌め込まれた状態のもとで、凹部の底面と成形凸部の先端面との間から凹部の内周面と成形凸部の外周面との間までの領域に亘って、缶胴の肉厚よりも大きなクリアランスが生じる大きさに形成されているので、エンボス加工面にゆがみや細かいシワが発生するのを防止することができる。これにより、キラキラ感を確実に出すことができ、もって高い意匠性を有する金属缶を確実に得ることができる。
【0032】
[6]の発明では、上記[1]〜[4]のうち特に[2]に記載の金属缶の製造装置を提供できる。
【0033】
[7]の発明では、成形凸部の外周面又は先端面における複数の第2成形面の外側に、単位エンボス模様の成形時に缶胴と接触しない非接触面が配置されるとともに、非接触面と複数の第2成形面との境界に形成された第3稜線を介して、非接触面が複数の第2成形面に対して相対的に折曲しているので、第3稜線によって第3折曲線を成形することができるし、最外周折曲線の内側における複数の第2セル面の外側に第3折曲線を介して第3セル面を成形することができる。したがって、上記[1]〜[4]のうち特に[3]に記載の金属缶の製造装置を提供できる。
【0034】
さらに、第3セル面は、凹部の内周面と成形凸部の非接触面との間のクリアランスの領域で成形されるので、第3セル面にゆがみや細かいシワが発生するのを確実に防止することができる。
【0035】
[8]の発明では、上記[1]〜[4]のうち特に[4]に記載の金属缶の製造装置を提供できる。
【0036】
[9]の発明では、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の金属缶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る金属缶の斜視図である。
【図2】図2は、同金属缶の単位エンボス模様の正面図である。
【図3】図3は、図2中のX−X線断面図である。
【図4】図4は、同単位エンボス模様の成形時の断面図である。
【図5】図5は、図4の要部拡大断面図である。
【図6A】図6Aは、内型ロールの成形凸部の拡大斜視図である。
【図6B】図6Bは、外型ロールの凹部の拡大斜視図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態に係る金属缶の斜視図である。
【図8】図8は、同金属缶の上側の単位エンボス模様の正面図である。
【図9】図9は、図8中のX−X線断面図である。
【図10】図10は、上側の単位エンボス模様の成形時の要部拡大断面図である。
【図11A】図11Aは、内型ロールの成形凸部の拡大斜視図である。
【図11B】図11Bは、外型ロールの凹部の拡大斜視図である。
【図12】図12は、同金属缶の下側の単位エンボス模様の正面図である。
【図13】図13は、図12中のX−X線断面図である。
【図14】図14は、下側の単位エンボス模様の成形時の要部拡大断面図である。
【図15A】図15Aは、内型ロールの成形凸部の拡大斜視図である。
【図15B】図15Bは、外型ロールの凹部の拡大斜視図である。
【図16】図16は、本発明の第3実施形態に係る単位エンボス模様の正面図である。
【図17】図17は、図16中のX−X線断面図である。
【図18】図18は、単位エンボス模様の成形時の要部拡大断面図である。
【図19】図19は、本発明の第4実施形態に係る単位エンボス模様の正面図である。
【図20】図20は、図19中のX−X線断面図である。
【図21】図21は、単位エンボス模様の成形時の断面図である。
【図22】図22は、図21の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0039】
図1〜6Bは、本発明の第1実施形態を説明する図である。図1に示すように、本第1実施形態に係る金属缶10は、内容物としてビールや清涼飲料等の液体が充填されるものである。さらに、この金属缶10は、例えばアルミニウム缶又はスチール缶であり、詳述すると金属光沢のあるアルミニウム(その合金を含む。以下同じ。)製であり、より金属光沢を出すためにDI(Drawing and Ironing)加工により製造されたものであることが望ましい。
【0040】
この金属缶10は、有底円筒状の缶胴11と、該缶胴11の上側開口を閉塞する円板状の天蓋15とを備えている。
【0041】
缶胴11の外周面11aには、上下方向に間隔をおいて並んだ複数(本第1実施形態では3つ)の単位エンボス模様1Aがエンボス加工によって形成されている。これらの単位エンボス模様1Aは互いに同一形状及び同一寸法である。
【0042】
単位エンボス模様1Aは、図2及び3に示すように、該単位エンボス模様1Aの外周縁に形成された谷折り状の最外周折曲線2を備えている。この最外周折曲線2は、図3に示すように、缶胴11の一点鎖線で示した基準外周面11zよりも缶胴11の内側に配置されている。さらに、この最外周折曲線2は、缶胴11の外周面11aにおいて単位エンボス模様1Aを区画するものであり、すなわち単位エンボス模様1Aの外周輪郭線を構成する線である。この最外周折曲線2で囲まれた内側領域、即ち単位エンボス模様1Aは、最外周折曲線2の位置に対して缶胴11の半径外方向に突出した凸状に形成されている。さらに、当該内側領域の正面形状、即ち、最外周折曲線2が作る単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の正面形状は、多角形状であり、詳述すると方形状(更に詳述すると正方形状)である。単位エンボス模様1Aの一辺の長さは例えば3〜20mmである。缶胴11の外周面11aにおける最外周折曲線2の外側近傍は、最外周折曲線2に向かってなだらかに凹んでいる。
【0043】
最外周折曲線2の内側の中央部には第1セル面3が形成されている。この第1セル面3は、図3に示すように、缶胴11の基準外周面11zと平行に配置されており、本第1実施形態では詳述すると缶胴11の基準外周面11zと同一面内に配置されている。
【0044】
第1セル面3の外周縁には該外周縁に沿って山折り状の第1折曲線4が形成されている。第1折曲線4が作る第1セル面3の外周輪郭線の正面形状は、多角形状であり、詳述すると方形状(更に詳述すると正方形状)である。したがって、第1セル面3の外周輪郭線の正面形状は、単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の正面形状に対して相似形状である。さらに、正面視において第1セル面3の外周輪郭線の角部の向きと単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の角部の向きは互いに一致している。
【0045】
最外周折曲線2の内側における第1折曲線4の外側には、第1セル面3を包囲する状態に第1セル面3の周方向に並んだ複数の第2セル面5が形成されている。本第1実施形態では、第2セル面5の数は4つである。複数の第2セル面5は互いに同一正面形状及び同一寸法である。第2セル面5の正面形状は台形状である。
【0046】
複数の第2セル面5は、それぞれ第1折曲線4を介して第1セル面3と隣接し且つ第1セル面3に対して缶胴11の半径内方向に折曲している。これにより、複数の第2セル面5はそれぞれ第1セル面3に対して傾斜している。
【0047】
さらに、複数の第2セル面5は、互いに隣接する第2セル面5、5同士が、該両第2セル面5、5間の境界に形成された山折り状の第2折曲線6を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。第2折曲線6は、第1折曲線4の角部から最外周折曲線2の角部側に向かって延びている。
【0048】
最外周折曲線2の内側における複数の第2セル面5の外側には、複数の第2セル面5を包囲する状態に第3セル面7が形成されている。本第1実施形態では、第3セル面7は複数であり、詳述すると4つである。複数の第3セル面7は、複数の第2セル面5の周方向に並んで配置されている。さらに、複数の第3セル面7は互いに同一正面形状及び同一寸法である。第3セル面7の正面形状は台形状である。
【0049】
複数の第3セル面7と複数の第2セル面5との境界には山折り状の第3折曲線8が形成されている。そして、複数の第3セル面7は、それぞれ第3折曲線8を介して第2セル面5と隣接し且つ第2セル面5に対して缶胴11の半径内方向へ折曲している。これにより、複数の第3セル面7はそれぞれ第1セル面3及び第2セル面5に対して傾斜している。第3折曲線8が作る複数の第2セル面5の外周輪郭線の正面形状は、方形状(詳述すると正方形状)であり、したがって第1セル面3の外周輪郭線の正面形状と単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の正面形状とに対して相似形状である。さらに、正面視において複数の第2セル面5の外周輪郭線の角部の向きと第1セル面3の外周輪郭線の角部の向きと単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の角部の向きは互いに一致している。
【0050】
さらに、複数の第3セル面7は、互いに隣接する第3セル面7、7同士が、該両第3セル面7、7間の境界に形成された山折り状の第4折曲線9を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。第4折曲線9は、第3折曲線8の角部から最外周折曲線2の角部に向かって延びている。
【0051】
そして、複数の第3セル面7の外周縁に該外周縁に沿って最外周折曲線2が形成されている。
【0052】
最外周折曲線2、第2折曲線6、第3折曲線8及び第4折曲線9は、いずれも、缶胴11の基準外周面11zよりも缶胴11の内側に配置されている。また、これらの折曲線2、6、8、9のうち最外周折曲線2が缶胴11の内側に最も深く配置されている。缶胴11の基準外周面11zの位置に対する最外周折曲線2の深さは例えば0.05〜1mmである。
【0053】
本第1実施形態の金属缶10は次の利点がある。
【0054】
金属缶10の缶胴11の外周面11aに設けられた単位エンボス模様1Aは、単位エンボス模様1Aの外周縁に形成されるとともに単位エンボス模様1Aを区画する最外周折曲線2を備えているので、単位エンボス模様1Aを最外周折曲線2によって明瞭化することができる。
【0055】
さらに、単位エンボス模様1Aは、最外周折曲線2の内側の中央部に缶胴11の基準外周面11zと平行に配置された第1セル面3を備えているので、最外周折曲線2の内側に缶胴11の半径外向きに尖った頂点部が配置されたものに比べて傷が付きにくい。さらに、第1セル面3の外周縁に第1折曲線4が形成されているので、第1セル面3を第1折曲線4によって明瞭化することができる。
【0056】
なお本発明では、第1セル面3は、本第1実施形態のように缶胴11の基準外周面11zと同一面内に配置されるか、あるいは缶胴11の基準外周面11zよりも缶胴11の内側に配置されることが特に望ましい。こうすることにより、金属缶10の輸送時にその振動で第1セル面3が擦れて傷が付く不具合を防止できるし、更に、金属缶10を収容する段ボールケースのサイズの変更を行う必要がないという効果を奏する。
【0057】
さらに、単位エンボス模様1Aは、最外周折曲線2の内側における第1折曲線4の外側に、第1セル面3を包囲する状態に第1セル面3の周方向に並んで配置された複数の第2セル面5を備えるとともに、複数の第2セル面5は、互いに隣接する第2セル面5、5同士が、該両第2セル面5、5間の境界に形成された第2折曲線6を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲しているので、複数の第2セル面5によって光を乱反射させてキラキラ感を出すことができるし、第1セル面3を更に明瞭化することができるし、単位エンボス模様1Aを更に明瞭化することができる。これにより、缶胴11の外周面に高い意匠性を有するエンボス模様が形成された金属缶10を得ることができる。
【0058】
さらに、複数の第2セル面5は、第1折曲線4を介して、第1セル面3と隣接し且つ第1セル面3に対して相対的に折曲しているので、第1セル面3を更に一層明瞭化することができる。
【0059】
さらに、最外周折曲線2の内側における複数の第2セル面5の外側に、複数の第2セル面5を包囲する状態に複数の第3セル面7が配置されるとともに、第3セル面7と第2セル面5との境界に形成された第3折曲線8を介して、第3セル面7が第2セル面5に対して相対的に折曲しているので、複数の第2セル面5と更に第3セル面7とによってキラキラ感を増大させることができる。
【0060】
しかも、単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の正面形状と第1セル面3の外周輪郭線の正面形状とが互いに相似形状であるので、第1セル面3が浮き上がったように見せることができる。これにより、金属缶10の意匠性を更に高めることができる。
【0061】
次に、本第1実施形態の金属缶10の製造方法を以下に説明する。
【0062】
まず、DI加工等によって有底円筒状に形成された缶胴11を準備する。そして、図4及び5に示すように、この缶胴11の外周面11aに単位エンボス模様1Aをエンボス加工により成形する。その際に用いられるエンボス加工装置20は、内型としての内型ロール21と、外型としての外型ロール22とを備えている。
【0063】
内型ロール21と外型ロール22は、それぞれ、軸線Pを中心に回転可能なものである。そして、内型ロール21と外型ロール22は、互いに対向して配置されるとともに、内外両型ロール21、22間に缶胴11(詳述すると缶胴11の周壁)を挟んで内型ロール21と外型ロール22とを互いに逆方向に回転させることにより、缶胴11の外周面11aに所望する単位エンボス模様1Aを形成するものである。Rは、各ロール21、22の回転方向を示している。
【0064】
内型ロール21は缶胴11の内側に配置されており、外型ロール22は缶胴11の外側に内型ロール21と対向して配置されている。
【0065】
内型ロール21の表面(詳述すると外周面)には成形凸部30が設けられている。一方、外型ロール22の表面(詳述すると外周面)には成形凸部30に対応する凹部40が設けられている。成形凸部30及び凹部40は、成形凸部30が缶胴11(詳述すると缶胴11の周壁)を介して凹部40内に嵌め込まれることにより、缶胴11の外周面11aに単位エンボス模様1Aを成形するものである。
【0066】
図5に示すように、成形凸部30は、単位エンボス模様1Aの成形時に缶胴11を介して凹部40内に嵌め込まれた状態のもとで、凹部40の底面40aと成形凸部30の先端面30aとの間から凹部40の内周面40bと成形凸部30の外周面30bとの間までの領域に亘って、缶胴11(詳述すると缶胴11の周壁)の肉厚tよりも大きなクリアランスCが生じるような大きさに形成されている。
【0067】
ここで説明の便宜上、凹部40の底面40aと成形凸部30の先端面30aとの間のクリアランスCを特に「第1クリアランスC1」、凹部40の内周面40bと成形凸部30の外周面30bとの間のクリアランスCを特に「第2クリアランスC2」という。
【0068】
第1クリアランスC1及び第2クリアランスC2の寸法は、上述したようにいずれも缶胴11の肉厚tよりも大きく設定されている。特に第2クリアランスC2の寸法は缶胴11の肉厚tに対して1.5〜10倍の範囲内に設定されるのが望ましい。
【0069】
図5に示すように、凹部40の開口周縁42は、単位エンボス模様1Aの最外周折曲線2を成形する最外周成形縁として機能している。凹部40の開口周縁42の断面角度θ1は90°又は90°未満に設定されている。
【0070】
図5及び6Aに示すように、成形凸部30の先端面30aの中央部には、第1セル面3を成形する第1成形面33が設けられている。この第1成形面33は、缶胴11の基準外周面11zと平行に形成されている。さらに、成形凸部30の先端面30aにおける第1成形面33の外周縁には第1折曲線4を成形する第1稜線34が設けられており、さらに、第1稜線34の外側には複数の第2セル面5を成形する複数の第2成形面35が第1成形面33を包囲する状態に第1成形面33の周方向に並んで設けられている。さらに、複数の第2成形面35は、互いに隣接する第2成形面35、35同士が、該両第2成形面35、35間の境界に形成された第2稜線36を介して、互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。第2稜線36は第2折曲線6を成形するものである。
【0071】
さらに、複数の第2成形面35は、それぞれ第1稜線34を介して第1成形面33と隣接し且つ第1成形面33に対して相対的に折曲している。
【0072】
さらに、成形凸部30の外周面30b、又は成形凸部30の先端面30bにおける複数の第2成形面35の外側には、単位エンボス模様1Aの成形時に缶胴11と接触しない非接触面37が形成されている。本第2実施形態では、非接触面37は成形凸部30の外周面30bに形成されており、詳述すると成形凸部30の外周面30bから構成されている。この非接触面37と複数の第2成形面35との境界には、第3稜線38が形成されている。第3稜線38は第3折曲線8を成形するものである。そして、非接触面37は、この第3稜線38を介して複数の第2成形面35と隣接し且つ複数の第2成形面35に対して相対的に折曲している。内型ロール21の表面と非接触面37との間のなす角度θ2は例えば約90°である。
【0073】
また、凹部40の開口周縁42で囲まれた内側領域の正面形状と、第1稜線34が作る第1成形面33の外周輪郭線の正面形状とは、それぞれ方形状(詳述すると正方形状)であり、即ち互いに相似形状である。
【0074】
上記内型ロール21及び外型ロール22を備えたエンボス加工装置20を用いた単位エンボス模様1Aの成形方法では、図4に示すように、内外両型ロール21、22間に缶胴11を挟んで内型ロール21と外型ロール22とを互いに逆方向に回転させることで、成形凸部30を缶胴11を介して凹部40内に嵌め込む。これにより、図5に示すように、缶胴11の外周面11aに所望する単位エンボス模様1Aが成形される。
【0075】
すなわち、缶胴11の外周面11aに凹部40の開口周縁42によって最外周折曲線2が成形される。最外周折曲線2の内側の中央部に第1成形面33によって第1セル面3が成形される。第1成形面33の外周縁に第1稜線34によって第1折曲線4が成形される。最外周折曲線2の内側における第1折曲線4の外側に、複数の第2成形面35によって複数の第2セル面5が成形される。互いに隣接する第2セル面5、5同士間の境界には第2稜線36によって第2折曲線6が成形される。最外周折曲線2の内側における複数の第2セル面5(第3折曲線8)の外側に、凹部40の内周面40bと成形凸部30の非接触面37との間のクリアランスC(即ち第2クリアランスC2)の領域によって複数の第3セル面7が成形されると同時に、第3稜線38によって第3折曲線8が成形され、更に、互いに隣接する第3セル面7、7同士間の境界に第3折曲線8の角部と最外周折曲線2の角部とを繋ぐように第4折曲線9が生じる。
【0076】
このように缶胴11の外周面11aに単位エンボス模様1Aを成形し、缶胴11の上側開口部を縮径加工したのち、缶胴11の上端開口部に天蓋15が常法に従って取り付けられることで、缶胴11の上側開口が天蓋15で閉塞される。
【0077】
以上の金属缶10の製造方法には、次の利点がある。
【0078】
成形凸部30は、単位エンボス模様1Aの成形時に缶胴11を介して凹部40内に嵌め込まれた状態のもとで、缶胴11の肉厚tよりも大きなクリアランスCが生じる大きさに形成されており、特に凹部40の底面40aと成形凸部30の先端面30aとの間に缶胴11の肉厚tよりも大きな第1クリアランスC1が形成されているので、エンボス加工面にゆがみや細かいシワが発生するのを防止することができる。これにより、キラキラ感を確実に出すことができ、もって高い意匠性を有する金属缶10を確実に製造することができる。
【0079】
さらに、成形凸部30の先端面30aにおける複数の第2成形面35の外側に、単位エンボス模様1Aの成形時に缶胴11と接触しない非接触面37が配置されるとともに、非接触面37と複数の第2成形面35との境界に形成された第3稜線38を介して非接触面37が複数の第2成形面35に対して相対的に折曲しているので、第3稜線38によって第3折曲線8を成形することができるし、最外周折曲線2の内側における複数の第2セル面5の外側に第3折曲線8を介して第3セル面7を成形することができる。
【0080】
さらに、第3セル面7は、凹部40の内周面40bと成形凸部30の非接触面37との間のクリアランスC(即ち第2クリアランスC2)の領域で成形することができる。
【0081】
図7〜15Bは、本発明の第2実施形態を説明する図である。図7に示すように、本第2実施形態に係る金属缶10では、その缶胴11の外周面11aの上部及び下部にそれぞれ単位エンボス模様1B、1Cが形成されている。上側の単位エンボス模様1Bは、複数、缶胴11の周方向に並んで形成されており、下側の単位エンボス模様1Cもまた、複数、缶胴11の周方向に並んで形成されている。
【0082】
図8〜11Bは、上側の単位エンボス模様1Bを説明する図である。図12〜15Bは、下側の単位エンボス模様1Cを説明する図である。これらの図には、上記第1実施形態と同じ要素に同一の符号が付されている。以下では、本第2実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
【0083】
上側の単位エンボス模様1Bでは、図8及び9に示すように、上側の単位エンボス模様1Bの最外周折曲線2で囲まれた内側領域の正面形状、即ち下側の単位エンボス模様1Bの外周輪郭線の正面形状は、ハート形である。第1折曲線4が作る第1セル面3の外周輪郭線の正面形状は、八角形状である。第2セル面5の数は8つである。これらの第2セル面5の正面形状は同一ではなく、略四角形状又は略扇形状である。第2折曲線6は、第1折曲線4の角部から最外周折曲線2側に向かって延びている。第3折曲線8が作る複数の第2セル面5の外周輪郭線の正面形状は、ハート形である。
【0084】
内型ロール21及び外型ロール22のそれぞれの表面の上部には、上側の単位エンボス模様1Bを成形する成形凸部30及び凹部40が、複数、周方向に並んで設けられている。この成形凸部30及び凹部40は、図11A及び11Bに示すような形状である。また図10に示すように、成形凸部30は、第1実施形態と同じく、上側の単位エンボス模様1Bの成形時に缶胴11を介して凹部40内に嵌め込まれた状態のもとで、凹部40の底面40aと成形凸部30の先端面30aとの間から凹部40の内周面40bと成形凸部30の外周面30bとの間までの領域に亘って、缶胴11の肉厚tよりも大きなクリアランスCが生じるような大きさに形成されている。
【0085】
なお、上述したように図8〜11Bには上記第1実施形態と同じ要素に同一の符号が付されていることから、当業者であれば、上側の成形凸部30及び凹部40の構成、並びに、上側の単位エンボス模様1Bの成形方法について容易に理解できるであろう。
【0086】
下側の単位エンボス模様1Cでは、図12及び13に示すように、下側の単位エンボス模様1Cの最外周折曲線2で囲まれた内側領域の正面図、即ち下側の単位エンボス模様1Cの外周輪郭線の正面形状は、円形状である。第1折曲線4が作る第1セル面3の外周輪郭線の正面形状は正八角形状である。第2セル面5の数は24個である。第2セル面5の正面形状は三角形状、四角形状及び略扇形状である。これらの第2セル面5はそれぞれ第1セル面3に対して折曲しており、更にこれらの第2セル面5のうちうち8個は、第1折曲線4を介して第1セル面3と隣接している。第2折曲線6は、第1折曲線4の角部から最外周折曲線2側に向かって延びている。第3折曲線8が作る複数の第2セル面5の外周輪郭線の正面形状は円形状である。第3セル面7は、最外周折曲線2の内側における複数の第2セル面5(第2折曲線6)の外側に複数の第2セル面5を包囲する状態に形成されているが、第4折曲線は形成されていない。したがって、この第3セル面7は第4折曲線で分割されておらず、即ち第3セル面7の数は1つである。
【0087】
内型ロール21及び外型ロール22のそれぞれの表面の下部には、下側の単位エンボス模様1Cを成形する成形凸部30及び凹部40が、複数、周方向に並んで設けられている。この成形凸部30及び凹部40は、図15A及び15Bに示すような形状である。また図14に示すように、成形凸部30は、第1実施形態と同じく、下側の単位エンボス模様1Cの成形時に缶胴11を介して凹部40内に嵌め込まれた状態のもとで、凹部40の底面40aと成形凸部30の先端面30aとの間から凹部40の内周面40bと成形凸部30の外周面30bとの間までの領域に亘って、缶胴11の肉厚tよりも大きなクリアランスCが生じるような大きさに形成されている。
【0088】
このような内型ロール21及び外型ロール22を備えたエンボス加工装置を用いて上側の単位エンボス模様1B及び下側の単位エンボス模様1Cが缶胴11の外周面11aに同時に成形される。
【0089】
なお、上述したように図12〜15Bには上記第1実施形態と同じ要素に同一の符号が付されていることから、当業者であれば、下側の成形凸部30及び凹部40の構成、並びに、下側の単位エンボス模様1Cの成形方法について容易に理解できるであろう。
【0090】
図16〜18は、本発明の第3実施形態に係る単位エンボス模様1Dを説明する図である。これらの図には、上記第1実施形態と同じ要素に同一の符号が付されている。以下では、本第3実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
【0091】
本第3実施形態の単位エンボス模様1Dは、図16及び17に示すように、上記第1実施形態の単位エンボス模様1Aから第3折曲線8及び第3セル面7が除去された形状になっている。一方、図18に示すように、この単位エンボス模様1Dを成形する内型ロール21及び外型ロール22は、上記第1実施形態の内型ロール21及び外型ロール22と同じ構成である。
【0092】
本第3実施形態では、図18に示すように、成形凸部30は、単位エンボス模様1Dの成形時に缶胴11を介して凹部40内に上記第1実施形態(図5参照)よりも浅く嵌め込まれる。これにより、最外周折曲線2の内側における第1折曲線4の外側に成形凸部30の第3稜線38が押し付けられず、その結果、単位エンボス模様1Dに第3折曲線8及び第3セル面7が成形されていない。
【0093】
このように、成形凸部30の凹部40内への嵌め込み深さを変化させることにより、第1実施形態の単位エンボス模様1Aと第3実施形態の単位エンボス模様1Dとをそれぞれ成形することができる。言い換えれば、本第3実施形態の単位エンボス模様1Dを成形する場合には、例えば図5において、第1セル面3に対する第2セル面5の傾斜角度と第3セル面7の傾斜角度とが互いに同じになるように、それぞれの傾斜角度と成形凸部30の凹部40内への嵌め込み深さとを適宜設定すれば良い。
【0094】
図19〜22は、本発明の第4実施形態に係る単位エンボス模様1Eを説明する図である。これらの図には、上記第1実施形態と同じ要素に同一の符号が付されている。本第4実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
【0095】
本第4実施形態の単位エンボス模様1Eの最外周折曲線2は、図19及び20に示すように、缶胴11の基準外周面11zと同一面内に配置されるとともに、缶胴11の外周面11aに山折り状に形成されている。この最外周折曲線2で囲まれた内側領域、即ち単位エンボス模様1Eは、上記第1実施形態の単位エンボス模様1Aを凸状から凹状に変更したものであり、即ち最外周折曲線2の位置に対して缶胴11の半径内方向に凹んだ凹状に形成されている。
【0096】
単位エンボス模様1Eの第1セル面3は、缶胴11の基準外周面11zの位置よりも内側において缶胴11の基準外周面11zと略平行に配置されている。この第1セル面3の外周縁に該外周縁に沿って谷折り状の第1折曲線4が形成されている。
【0097】
単位エンボス模様1Eの複数の第2セル面5は、それぞれ第1折曲線4を介して第1セル面3と隣接し且つ第1セル面3に対して缶胴11の半径外方向へ折曲している。これにより、複数の第2セル面5はそれぞれ第1セル面3に対して傾斜している。
【0098】
さらに、複数の第2セル面5は、互いに隣接する第2セル面5、5同士が、該両第2セル面5、5間の境界に形成された谷折り状の第2折曲線6を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。
【0099】
単位エンボス模様1Eの複数の第3セル面7と複数の第2セル面5との境界には谷折り状の第3折曲線8が形成されている。そして、複数の第3セル面7は、それぞれ第3折曲線8を介して第2セル面5と隣接し且つ第2セル面5に対して缶胴11の半径外方向へ折曲している。これにより、複数の第3セル面7はそれぞれ第1セル面3及び第2セル面5に対して傾斜している。
【0100】
さらに、複数の第3セル面7は、互いに隣接する第3セル面7、7同士が、該両第3セル面7、7間の境界に形成された谷折り状の第4折曲線9を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。そして、複数の第3セル面7の外周縁に最外周折曲線2が形成されている。
【0101】
缶胴11の外周面11aに本第4実施形態の単位エンボス模様1Eを成形するエンボス加工装置20では、図21及び22に示すように、内型ロール21の表面に凹部40が設けられるとともに、外型ロール22の表面に成形凸部30が設けられている。成形凸部30及び凹部40は、図6A及び6Bに示した成形凸部30及び凹部40と同じ構成である。
【0102】
このような内型ロール21及び外型ロール22を備えたエンボス加工装置20を用い、図21に示すように、内外両型ロール21、22間に缶胴11を挟んで内型ロール21と外型ロール22とを互いに逆方向に回転させることで、成形凸部30を缶胴11を介して凹部40内に嵌め込む。これにより、図22に示すように、缶胴11の外周面11aに第4実施形態の単位エンボス模様1Eが成形される。
【0103】
以上で本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、様々に変更可能である。例えば、本発明では、単位エンボス模様は、これらの実施形態を二つ以上組み合わせて構成されたものであっても良い。さらに本発明では、金属缶10の缶胴11の外周面11aに設けられる単位エンボス模様の数は1つであっても良いし、単位エンボス模様が複数、缶胴11の外周面11aの全面に設けられていても良い。
【0104】
また本発明では、第1セル面3の外周輪郭線の正面形状は、上記実施形態のように多角形であっても良いし、あるいは円形状などであっても良い。
【0105】
また本発明では、単位エンボス模様は、最外周折曲線2の内側における第3セル面7の外側に、第3セル面7の外周縁に形成された折曲線を介して1つ又は複数の第4セル面が第3セル面7を包囲する状態に形成されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、缶胴の外周面に意匠性を高めるための1つ又は複数の単位エンボス模様が設けられた金属缶、その製造装置、及び金属缶の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1A〜1E:単位エンボス模様
2:最外周折曲線
3:第1セル面
4:第1折曲線
5:第2セル面
6:第2折曲線
7:第3セル面
8:第3折曲面
9:第4折曲線
10:金属缶
11:缶胴
11a:缶胴の外周面
21:内型ロール(内型)
22:外型ロール(外型)
30:成形凸部
30a:成形凸部の先端面
30b:成形凸部の外周面
33:第1成形面
34:第1稜線
35:第2成形面
36:第2稜線
37:非接触面
38:第3稜線
40:凹部
40a:凹部の底面
40b:凹部の内周面
42:凹部の開口周縁
C:クリアランス
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶胴の外周面に1つ又は複数の単位エンボス模様が設けられた金属缶、金属缶の製造装置、及び金属缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料(例:清涼飲料、ビール)等を充填する金属缶(例:スチール缶、アルミニウム缶)の缶胴の外周面には、金属缶を店頭に並べた際に消費者の購入意欲をそそるようにするため、様々なエンボス模様がエンボス加工により付形されている。
【0003】
例えば、特開平10−328772号公報(特許文献1)には、缶胴の周方向及び軸方向に並んだ複数の矩形の平坦凹面の上下にそれぞれ三角形の傾斜面を平坦凹面と隣接して形成し、これにより、六角形の凹面を複数形成することが開示されている。
【0004】
特許第4206754号公報(特許文献2)には、多数の三角形の傾斜面の内側を複数に塗り分けることにより、光沢のある部分と光沢のない部分とを作ることが開示されている。
【0005】
このようなエンボス模様を成形するエンボス加工は、一般に次のような方法で行われる。
【0006】
すなわち、互いに回転軸が平行に配置された一対の内型ロール及び外型ロールを用い、内型ロールを缶胴の内側に配置するともに外型ロールを缶胴の外側に配置し、次いで、内型ロール及び外型ロールで缶胴を挟んで内外両型ロールを互いに逆方向に回転させることにより、缶胴の外周面にエンボス加工を施す。
【0007】
なお、型ロールを用いたエンボス加工は、缶胴の他に、例えば金属板に対して行われることもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−328772号公報
【特許文献2】特許第4206754号公報
【特許文献3】特開平11−244960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
而して、このような金属缶では、消費者の購入意欲を掻き立てるとともに他社製品との差別化を図るため、高い意匠性が要求されている。
【0010】
そこで本発明は、高い意匠性を有する金属缶、その製造装置、及び金属缶の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1] 缶胴の外周面に1つ又は複数の単位エンボス模様が設けられた金属缶であって、
前記単位エンボス模様は、
単位エンボス模様の外周縁に形成されるとともに単位エンボス模様を区画する最外周折曲線と、
前記最外周折曲線の内側の中央部に前記缶胴の基準外周面と略平行に配置された第1セル面と、
前記第1セル面の外周縁に形成された第1折曲線と、
前記最外周折曲線の内側における前記第1折曲線の外側に、前記第1セル面を包囲する状態に第1セル面の周方向に並んで配置された複数の第2セル面と、を備え、
前記複数の第2セル面は、互いに隣接する第2セル面同士が、該両第2セル面間の境界に形成された第2折曲線を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲していることを特徴とする金属缶。
【0013】
[2] 前記複数の第2セル面の少なくとも一部は、前記第1折曲線を介して前記第1セル面と隣接し且つ前記第1セル面に対して相対的に折曲している前項1記載の金属缶。
【0014】
[3] 前記最外周折曲線の内側における前記複数の第2セル面の外側に、前記複数の第2セル面を包囲する状態に第3セル面が配置されるとともに、
前記第3セル面と前記複数の第2セル面との境界に形成された第3折曲線を介して、前記第3セル面が前記複数の第2セル面に対して相対的に折曲している前項1又は2記載の金属缶。
【0015】
[4] 前記単位エンボス模様の外周輪郭線の正面形状と前記第1セル面の外周輪郭線の正面形状とが互いに略相似形状である前項1〜3のいずれかに記載の金属缶。
【0016】
[5] 前項1〜4のいずれかに記載の金属缶の製造装置であって、
缶胴の内側に配置される内型と、缶胴の外側に配置されるとともに前記内型との間で缶胴を挟む外型と、を備え、
前記内型の表面に成形凸部及び凹部のいずれか一方が設けられるとともに、前記外型の表面に他方が設けられ、
前記成形凸部及び前記凹部は、成形凸部が缶胴を介して凹部内に嵌め込まれることにより、缶胴の外周面に単位エンボス模様を成形するものであり、
前記成形凸部は、単位エンボス模様の成形時に缶胴を介して前記凹部内に嵌め込まれた状態のもとで、前記凹部の底面と前記成形凸部の先端面との間から前記凹部の内周面と前記成形凸部の外周面との間までの領域に亘って、缶胴の肉厚よりも大きなクリアランスが生じる大きさに形成されており、
前記凹部の開口周縁は、最外周折曲線を成形する最外周成形縁として機能しており、
前記成形凸部の先端面には、第1セル面を成形する第1成形面と、前記第1成形面の外周縁に形成されるとともに第1折曲線を成形する第1稜線と、前記第1稜線の外側に配置されるとともに複数の第2セル面を成形する複数の第2成形面と、が設けられるとともに、
前記複数の第2成形面は、互いに隣接する第2成形面同士が、該両第2成形面間の境界に形成されるとともに第2折曲線を成形する第2稜線を介して、互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲していることを特徴とする金属缶の製造装置。
【0017】
[6] 前記複数の第2成形面の少なくとも一部は、前記第1稜線を介して前記第1成形面と隣接し且つ前記第1成形面に対して相対的に折曲している前項5記載の金属缶の製造装置。
【0018】
[7] 前記金属缶は、
前記最外周折曲線の内側における前記複数の第2セル面の外側に、前記複数の第2セル面を包囲する状態に第3セル面が配置されるとともに、
前記第3セル面と前記複数の第2セル面との境界に形成された第3折曲線を介して、前記第3セル面が前記複数の第2セル面に対して相対的に折曲したものであり、
金属缶の製造装置は、
前記成形凸部の外周面又は前記成形凸部の先端面における前記複数の第2成形面の外側に、単位エンボス模様の成形時に缶胴と接触しない非接触面が配置されるとともに、
前記非接触面と前記複数の第2成形面との境界に形成されるとともに第3折曲線を成形する第3稜線を介して、前記非接触面が前記複数の第2成形面に対して相対的に折曲している前項5又は6記載の金属缶の製造装置。
【0019】
[8] 前記凹部の開口周縁で囲まれた内側領域の正面形状と前記第1成形面の外周輪郭線の正面形状とが互いに略相似形状である前項5〜7のいずれかに記載の金属缶の製造装置。
【0020】
[9] 前項5〜8のいずれかに記載の金属缶の製造装置を用いて前項1〜4のいずれかに記載の金属缶を製造することを特徴とする金属缶の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明は以下の効果を奏する。
【0022】
[1]の発明では、缶胴の外周面に設けられた単位エンボス模様は、単位エンボス模様の外周縁に形成されるとともに単位エンボス模様を区画する最外周折曲線を備えているので、単位エンボス模様を最外周折曲線によって明瞭化することができる。
【0023】
さらに、単位エンボス模様は、最外周折曲線の内側の中央部に缶胴の基準外周面と略平行に配置された第1セル面を備えているので、最外周折曲線の内側に缶胴の半径外向きに尖った頂点部が配置されたものに比べて傷が付きにくい。さらに、第1セル面の外周縁に第1折曲線が形成されているので、第1セル面を第1折曲線によって明瞭化することができる。
【0024】
さらに、単位エンボス模様は、最外周折曲線の内側における第1折曲線の外側に、第1セル面を包囲する状態に第1セル面の周方向に並んで配置された複数の第2セル面を備えるとともに、複数の第2セル面は、互いに隣接する第2セル面同士が、該両第2セル面間の境界に形成された第2折曲線を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲しているので、複数の第2セル面によって第1セル面を包囲した状態で光を乱反射させてキラキラ感を出すことができるし、第1セル面を更に明瞭化することができるし、単位エンボス模様を更に明瞭化することができる。これにより、高い意匠性を有する金属缶を得ることができる。
【0025】
[2]の発明では、複数の第2セル面の少なくとも一部は、第1折曲線を介して、第1セル面と隣接し且つ第1セル面に対して相対的に折曲しているので、第1セル面を更に一層明瞭化することができる。
【0026】
[3]の発明では、最外周折曲線の内側における複数の第2セル面の外側に、複数の第2セル面を包囲する状態に第3セル面が配置されるとともに、第3セル面と複数の第2セル面との境界に形成された第3折曲線を介して、第3セル面が複数の第2セル面に対して相対的に折曲しているので、複数の第2セル面と更に第3セル面とによって第1セル面を包囲した状態でキラキラ感を増大させることができる。
【0027】
[4]の発明では、単位エンボス模様の外周輪郭線の正面形状と第1セル面の外周輪郭線の正面形状とが互いに略相似形状であることにより、第1セル面が浮き上がったように見せることができる。これにより、金属缶の意匠性を更に高めることができる。
【0028】
[5]の発明によれば、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の金属缶の製造装置を提供できる。
【0029】
さらに、[5]の発明は、従来の装置に比べて優れた次の効果を奏する。
【0030】
缶胴の外周面に三次元形状のエンボス模様をエンボス加工により成形する従来の装置では、内型ロール及び外型ロールのいずれか一方に、三次元形状を成形する成形凸部が設けられるとともに、他方に成形凸部に対応する成形凹部が設けられる。成形凸部と成形凹部は、互いに転写した形状となっている。このような内外両型ロールを備えた従来の装置では、エンボス模様の成形時に缶胴が成形凸部と成形凹部とに密着して挟まれるので、エンボス加工面にゆがみや細かいシワが発生し易かった。
【0031】
これに対して、[5]の発明では、成形凸部は、単位エンボス模様の成形時に缶胴を介して凹部内に嵌め込まれた状態のもとで、凹部の底面と成形凸部の先端面との間から凹部の内周面と成形凸部の外周面との間までの領域に亘って、缶胴の肉厚よりも大きなクリアランスが生じる大きさに形成されているので、エンボス加工面にゆがみや細かいシワが発生するのを防止することができる。これにより、キラキラ感を確実に出すことができ、もって高い意匠性を有する金属缶を確実に得ることができる。
【0032】
[6]の発明では、上記[1]〜[4]のうち特に[2]に記載の金属缶の製造装置を提供できる。
【0033】
[7]の発明では、成形凸部の外周面又は先端面における複数の第2成形面の外側に、単位エンボス模様の成形時に缶胴と接触しない非接触面が配置されるとともに、非接触面と複数の第2成形面との境界に形成された第3稜線を介して、非接触面が複数の第2成形面に対して相対的に折曲しているので、第3稜線によって第3折曲線を成形することができるし、最外周折曲線の内側における複数の第2セル面の外側に第3折曲線を介して第3セル面を成形することができる。したがって、上記[1]〜[4]のうち特に[3]に記載の金属缶の製造装置を提供できる。
【0034】
さらに、第3セル面は、凹部の内周面と成形凸部の非接触面との間のクリアランスの領域で成形されるので、第3セル面にゆがみや細かいシワが発生するのを確実に防止することができる。
【0035】
[8]の発明では、上記[1]〜[4]のうち特に[4]に記載の金属缶の製造装置を提供できる。
【0036】
[9]の発明では、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の金属缶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る金属缶の斜視図である。
【図2】図2は、同金属缶の単位エンボス模様の正面図である。
【図3】図3は、図2中のX−X線断面図である。
【図4】図4は、同単位エンボス模様の成形時の断面図である。
【図5】図5は、図4の要部拡大断面図である。
【図6A】図6Aは、内型ロールの成形凸部の拡大斜視図である。
【図6B】図6Bは、外型ロールの凹部の拡大斜視図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態に係る金属缶の斜視図である。
【図8】図8は、同金属缶の上側の単位エンボス模様の正面図である。
【図9】図9は、図8中のX−X線断面図である。
【図10】図10は、上側の単位エンボス模様の成形時の要部拡大断面図である。
【図11A】図11Aは、内型ロールの成形凸部の拡大斜視図である。
【図11B】図11Bは、外型ロールの凹部の拡大斜視図である。
【図12】図12は、同金属缶の下側の単位エンボス模様の正面図である。
【図13】図13は、図12中のX−X線断面図である。
【図14】図14は、下側の単位エンボス模様の成形時の要部拡大断面図である。
【図15A】図15Aは、内型ロールの成形凸部の拡大斜視図である。
【図15B】図15Bは、外型ロールの凹部の拡大斜視図である。
【図16】図16は、本発明の第3実施形態に係る単位エンボス模様の正面図である。
【図17】図17は、図16中のX−X線断面図である。
【図18】図18は、単位エンボス模様の成形時の要部拡大断面図である。
【図19】図19は、本発明の第4実施形態に係る単位エンボス模様の正面図である。
【図20】図20は、図19中のX−X線断面図である。
【図21】図21は、単位エンボス模様の成形時の断面図である。
【図22】図22は、図21の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0039】
図1〜6Bは、本発明の第1実施形態を説明する図である。図1に示すように、本第1実施形態に係る金属缶10は、内容物としてビールや清涼飲料等の液体が充填されるものである。さらに、この金属缶10は、例えばアルミニウム缶又はスチール缶であり、詳述すると金属光沢のあるアルミニウム(その合金を含む。以下同じ。)製であり、より金属光沢を出すためにDI(Drawing and Ironing)加工により製造されたものであることが望ましい。
【0040】
この金属缶10は、有底円筒状の缶胴11と、該缶胴11の上側開口を閉塞する円板状の天蓋15とを備えている。
【0041】
缶胴11の外周面11aには、上下方向に間隔をおいて並んだ複数(本第1実施形態では3つ)の単位エンボス模様1Aがエンボス加工によって形成されている。これらの単位エンボス模様1Aは互いに同一形状及び同一寸法である。
【0042】
単位エンボス模様1Aは、図2及び3に示すように、該単位エンボス模様1Aの外周縁に形成された谷折り状の最外周折曲線2を備えている。この最外周折曲線2は、図3に示すように、缶胴11の一点鎖線で示した基準外周面11zよりも缶胴11の内側に配置されている。さらに、この最外周折曲線2は、缶胴11の外周面11aにおいて単位エンボス模様1Aを区画するものであり、すなわち単位エンボス模様1Aの外周輪郭線を構成する線である。この最外周折曲線2で囲まれた内側領域、即ち単位エンボス模様1Aは、最外周折曲線2の位置に対して缶胴11の半径外方向に突出した凸状に形成されている。さらに、当該内側領域の正面形状、即ち、最外周折曲線2が作る単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の正面形状は、多角形状であり、詳述すると方形状(更に詳述すると正方形状)である。単位エンボス模様1Aの一辺の長さは例えば3〜20mmである。缶胴11の外周面11aにおける最外周折曲線2の外側近傍は、最外周折曲線2に向かってなだらかに凹んでいる。
【0043】
最外周折曲線2の内側の中央部には第1セル面3が形成されている。この第1セル面3は、図3に示すように、缶胴11の基準外周面11zと平行に配置されており、本第1実施形態では詳述すると缶胴11の基準外周面11zと同一面内に配置されている。
【0044】
第1セル面3の外周縁には該外周縁に沿って山折り状の第1折曲線4が形成されている。第1折曲線4が作る第1セル面3の外周輪郭線の正面形状は、多角形状であり、詳述すると方形状(更に詳述すると正方形状)である。したがって、第1セル面3の外周輪郭線の正面形状は、単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の正面形状に対して相似形状である。さらに、正面視において第1セル面3の外周輪郭線の角部の向きと単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の角部の向きは互いに一致している。
【0045】
最外周折曲線2の内側における第1折曲線4の外側には、第1セル面3を包囲する状態に第1セル面3の周方向に並んだ複数の第2セル面5が形成されている。本第1実施形態では、第2セル面5の数は4つである。複数の第2セル面5は互いに同一正面形状及び同一寸法である。第2セル面5の正面形状は台形状である。
【0046】
複数の第2セル面5は、それぞれ第1折曲線4を介して第1セル面3と隣接し且つ第1セル面3に対して缶胴11の半径内方向に折曲している。これにより、複数の第2セル面5はそれぞれ第1セル面3に対して傾斜している。
【0047】
さらに、複数の第2セル面5は、互いに隣接する第2セル面5、5同士が、該両第2セル面5、5間の境界に形成された山折り状の第2折曲線6を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。第2折曲線6は、第1折曲線4の角部から最外周折曲線2の角部側に向かって延びている。
【0048】
最外周折曲線2の内側における複数の第2セル面5の外側には、複数の第2セル面5を包囲する状態に第3セル面7が形成されている。本第1実施形態では、第3セル面7は複数であり、詳述すると4つである。複数の第3セル面7は、複数の第2セル面5の周方向に並んで配置されている。さらに、複数の第3セル面7は互いに同一正面形状及び同一寸法である。第3セル面7の正面形状は台形状である。
【0049】
複数の第3セル面7と複数の第2セル面5との境界には山折り状の第3折曲線8が形成されている。そして、複数の第3セル面7は、それぞれ第3折曲線8を介して第2セル面5と隣接し且つ第2セル面5に対して缶胴11の半径内方向へ折曲している。これにより、複数の第3セル面7はそれぞれ第1セル面3及び第2セル面5に対して傾斜している。第3折曲線8が作る複数の第2セル面5の外周輪郭線の正面形状は、方形状(詳述すると正方形状)であり、したがって第1セル面3の外周輪郭線の正面形状と単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の正面形状とに対して相似形状である。さらに、正面視において複数の第2セル面5の外周輪郭線の角部の向きと第1セル面3の外周輪郭線の角部の向きと単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の角部の向きは互いに一致している。
【0050】
さらに、複数の第3セル面7は、互いに隣接する第3セル面7、7同士が、該両第3セル面7、7間の境界に形成された山折り状の第4折曲線9を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。第4折曲線9は、第3折曲線8の角部から最外周折曲線2の角部に向かって延びている。
【0051】
そして、複数の第3セル面7の外周縁に該外周縁に沿って最外周折曲線2が形成されている。
【0052】
最外周折曲線2、第2折曲線6、第3折曲線8及び第4折曲線9は、いずれも、缶胴11の基準外周面11zよりも缶胴11の内側に配置されている。また、これらの折曲線2、6、8、9のうち最外周折曲線2が缶胴11の内側に最も深く配置されている。缶胴11の基準外周面11zの位置に対する最外周折曲線2の深さは例えば0.05〜1mmである。
【0053】
本第1実施形態の金属缶10は次の利点がある。
【0054】
金属缶10の缶胴11の外周面11aに設けられた単位エンボス模様1Aは、単位エンボス模様1Aの外周縁に形成されるとともに単位エンボス模様1Aを区画する最外周折曲線2を備えているので、単位エンボス模様1Aを最外周折曲線2によって明瞭化することができる。
【0055】
さらに、単位エンボス模様1Aは、最外周折曲線2の内側の中央部に缶胴11の基準外周面11zと平行に配置された第1セル面3を備えているので、最外周折曲線2の内側に缶胴11の半径外向きに尖った頂点部が配置されたものに比べて傷が付きにくい。さらに、第1セル面3の外周縁に第1折曲線4が形成されているので、第1セル面3を第1折曲線4によって明瞭化することができる。
【0056】
なお本発明では、第1セル面3は、本第1実施形態のように缶胴11の基準外周面11zと同一面内に配置されるか、あるいは缶胴11の基準外周面11zよりも缶胴11の内側に配置されることが特に望ましい。こうすることにより、金属缶10の輸送時にその振動で第1セル面3が擦れて傷が付く不具合を防止できるし、更に、金属缶10を収容する段ボールケースのサイズの変更を行う必要がないという効果を奏する。
【0057】
さらに、単位エンボス模様1Aは、最外周折曲線2の内側における第1折曲線4の外側に、第1セル面3を包囲する状態に第1セル面3の周方向に並んで配置された複数の第2セル面5を備えるとともに、複数の第2セル面5は、互いに隣接する第2セル面5、5同士が、該両第2セル面5、5間の境界に形成された第2折曲線6を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲しているので、複数の第2セル面5によって光を乱反射させてキラキラ感を出すことができるし、第1セル面3を更に明瞭化することができるし、単位エンボス模様1Aを更に明瞭化することができる。これにより、缶胴11の外周面に高い意匠性を有するエンボス模様が形成された金属缶10を得ることができる。
【0058】
さらに、複数の第2セル面5は、第1折曲線4を介して、第1セル面3と隣接し且つ第1セル面3に対して相対的に折曲しているので、第1セル面3を更に一層明瞭化することができる。
【0059】
さらに、最外周折曲線2の内側における複数の第2セル面5の外側に、複数の第2セル面5を包囲する状態に複数の第3セル面7が配置されるとともに、第3セル面7と第2セル面5との境界に形成された第3折曲線8を介して、第3セル面7が第2セル面5に対して相対的に折曲しているので、複数の第2セル面5と更に第3セル面7とによってキラキラ感を増大させることができる。
【0060】
しかも、単位エンボス模様1Aの外周輪郭線の正面形状と第1セル面3の外周輪郭線の正面形状とが互いに相似形状であるので、第1セル面3が浮き上がったように見せることができる。これにより、金属缶10の意匠性を更に高めることができる。
【0061】
次に、本第1実施形態の金属缶10の製造方法を以下に説明する。
【0062】
まず、DI加工等によって有底円筒状に形成された缶胴11を準備する。そして、図4及び5に示すように、この缶胴11の外周面11aに単位エンボス模様1Aをエンボス加工により成形する。その際に用いられるエンボス加工装置20は、内型としての内型ロール21と、外型としての外型ロール22とを備えている。
【0063】
内型ロール21と外型ロール22は、それぞれ、軸線Pを中心に回転可能なものである。そして、内型ロール21と外型ロール22は、互いに対向して配置されるとともに、内外両型ロール21、22間に缶胴11(詳述すると缶胴11の周壁)を挟んで内型ロール21と外型ロール22とを互いに逆方向に回転させることにより、缶胴11の外周面11aに所望する単位エンボス模様1Aを形成するものである。Rは、各ロール21、22の回転方向を示している。
【0064】
内型ロール21は缶胴11の内側に配置されており、外型ロール22は缶胴11の外側に内型ロール21と対向して配置されている。
【0065】
内型ロール21の表面(詳述すると外周面)には成形凸部30が設けられている。一方、外型ロール22の表面(詳述すると外周面)には成形凸部30に対応する凹部40が設けられている。成形凸部30及び凹部40は、成形凸部30が缶胴11(詳述すると缶胴11の周壁)を介して凹部40内に嵌め込まれることにより、缶胴11の外周面11aに単位エンボス模様1Aを成形するものである。
【0066】
図5に示すように、成形凸部30は、単位エンボス模様1Aの成形時に缶胴11を介して凹部40内に嵌め込まれた状態のもとで、凹部40の底面40aと成形凸部30の先端面30aとの間から凹部40の内周面40bと成形凸部30の外周面30bとの間までの領域に亘って、缶胴11(詳述すると缶胴11の周壁)の肉厚tよりも大きなクリアランスCが生じるような大きさに形成されている。
【0067】
ここで説明の便宜上、凹部40の底面40aと成形凸部30の先端面30aとの間のクリアランスCを特に「第1クリアランスC1」、凹部40の内周面40bと成形凸部30の外周面30bとの間のクリアランスCを特に「第2クリアランスC2」という。
【0068】
第1クリアランスC1及び第2クリアランスC2の寸法は、上述したようにいずれも缶胴11の肉厚tよりも大きく設定されている。特に第2クリアランスC2の寸法は缶胴11の肉厚tに対して1.5〜10倍の範囲内に設定されるのが望ましい。
【0069】
図5に示すように、凹部40の開口周縁42は、単位エンボス模様1Aの最外周折曲線2を成形する最外周成形縁として機能している。凹部40の開口周縁42の断面角度θ1は90°又は90°未満に設定されている。
【0070】
図5及び6Aに示すように、成形凸部30の先端面30aの中央部には、第1セル面3を成形する第1成形面33が設けられている。この第1成形面33は、缶胴11の基準外周面11zと平行に形成されている。さらに、成形凸部30の先端面30aにおける第1成形面33の外周縁には第1折曲線4を成形する第1稜線34が設けられており、さらに、第1稜線34の外側には複数の第2セル面5を成形する複数の第2成形面35が第1成形面33を包囲する状態に第1成形面33の周方向に並んで設けられている。さらに、複数の第2成形面35は、互いに隣接する第2成形面35、35同士が、該両第2成形面35、35間の境界に形成された第2稜線36を介して、互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。第2稜線36は第2折曲線6を成形するものである。
【0071】
さらに、複数の第2成形面35は、それぞれ第1稜線34を介して第1成形面33と隣接し且つ第1成形面33に対して相対的に折曲している。
【0072】
さらに、成形凸部30の外周面30b、又は成形凸部30の先端面30bにおける複数の第2成形面35の外側には、単位エンボス模様1Aの成形時に缶胴11と接触しない非接触面37が形成されている。本第2実施形態では、非接触面37は成形凸部30の外周面30bに形成されており、詳述すると成形凸部30の外周面30bから構成されている。この非接触面37と複数の第2成形面35との境界には、第3稜線38が形成されている。第3稜線38は第3折曲線8を成形するものである。そして、非接触面37は、この第3稜線38を介して複数の第2成形面35と隣接し且つ複数の第2成形面35に対して相対的に折曲している。内型ロール21の表面と非接触面37との間のなす角度θ2は例えば約90°である。
【0073】
また、凹部40の開口周縁42で囲まれた内側領域の正面形状と、第1稜線34が作る第1成形面33の外周輪郭線の正面形状とは、それぞれ方形状(詳述すると正方形状)であり、即ち互いに相似形状である。
【0074】
上記内型ロール21及び外型ロール22を備えたエンボス加工装置20を用いた単位エンボス模様1Aの成形方法では、図4に示すように、内外両型ロール21、22間に缶胴11を挟んで内型ロール21と外型ロール22とを互いに逆方向に回転させることで、成形凸部30を缶胴11を介して凹部40内に嵌め込む。これにより、図5に示すように、缶胴11の外周面11aに所望する単位エンボス模様1Aが成形される。
【0075】
すなわち、缶胴11の外周面11aに凹部40の開口周縁42によって最外周折曲線2が成形される。最外周折曲線2の内側の中央部に第1成形面33によって第1セル面3が成形される。第1成形面33の外周縁に第1稜線34によって第1折曲線4が成形される。最外周折曲線2の内側における第1折曲線4の外側に、複数の第2成形面35によって複数の第2セル面5が成形される。互いに隣接する第2セル面5、5同士間の境界には第2稜線36によって第2折曲線6が成形される。最外周折曲線2の内側における複数の第2セル面5(第3折曲線8)の外側に、凹部40の内周面40bと成形凸部30の非接触面37との間のクリアランスC(即ち第2クリアランスC2)の領域によって複数の第3セル面7が成形されると同時に、第3稜線38によって第3折曲線8が成形され、更に、互いに隣接する第3セル面7、7同士間の境界に第3折曲線8の角部と最外周折曲線2の角部とを繋ぐように第4折曲線9が生じる。
【0076】
このように缶胴11の外周面11aに単位エンボス模様1Aを成形し、缶胴11の上側開口部を縮径加工したのち、缶胴11の上端開口部に天蓋15が常法に従って取り付けられることで、缶胴11の上側開口が天蓋15で閉塞される。
【0077】
以上の金属缶10の製造方法には、次の利点がある。
【0078】
成形凸部30は、単位エンボス模様1Aの成形時に缶胴11を介して凹部40内に嵌め込まれた状態のもとで、缶胴11の肉厚tよりも大きなクリアランスCが生じる大きさに形成されており、特に凹部40の底面40aと成形凸部30の先端面30aとの間に缶胴11の肉厚tよりも大きな第1クリアランスC1が形成されているので、エンボス加工面にゆがみや細かいシワが発生するのを防止することができる。これにより、キラキラ感を確実に出すことができ、もって高い意匠性を有する金属缶10を確実に製造することができる。
【0079】
さらに、成形凸部30の先端面30aにおける複数の第2成形面35の外側に、単位エンボス模様1Aの成形時に缶胴11と接触しない非接触面37が配置されるとともに、非接触面37と複数の第2成形面35との境界に形成された第3稜線38を介して非接触面37が複数の第2成形面35に対して相対的に折曲しているので、第3稜線38によって第3折曲線8を成形することができるし、最外周折曲線2の内側における複数の第2セル面5の外側に第3折曲線8を介して第3セル面7を成形することができる。
【0080】
さらに、第3セル面7は、凹部40の内周面40bと成形凸部30の非接触面37との間のクリアランスC(即ち第2クリアランスC2)の領域で成形することができる。
【0081】
図7〜15Bは、本発明の第2実施形態を説明する図である。図7に示すように、本第2実施形態に係る金属缶10では、その缶胴11の外周面11aの上部及び下部にそれぞれ単位エンボス模様1B、1Cが形成されている。上側の単位エンボス模様1Bは、複数、缶胴11の周方向に並んで形成されており、下側の単位エンボス模様1Cもまた、複数、缶胴11の周方向に並んで形成されている。
【0082】
図8〜11Bは、上側の単位エンボス模様1Bを説明する図である。図12〜15Bは、下側の単位エンボス模様1Cを説明する図である。これらの図には、上記第1実施形態と同じ要素に同一の符号が付されている。以下では、本第2実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
【0083】
上側の単位エンボス模様1Bでは、図8及び9に示すように、上側の単位エンボス模様1Bの最外周折曲線2で囲まれた内側領域の正面形状、即ち下側の単位エンボス模様1Bの外周輪郭線の正面形状は、ハート形である。第1折曲線4が作る第1セル面3の外周輪郭線の正面形状は、八角形状である。第2セル面5の数は8つである。これらの第2セル面5の正面形状は同一ではなく、略四角形状又は略扇形状である。第2折曲線6は、第1折曲線4の角部から最外周折曲線2側に向かって延びている。第3折曲線8が作る複数の第2セル面5の外周輪郭線の正面形状は、ハート形である。
【0084】
内型ロール21及び外型ロール22のそれぞれの表面の上部には、上側の単位エンボス模様1Bを成形する成形凸部30及び凹部40が、複数、周方向に並んで設けられている。この成形凸部30及び凹部40は、図11A及び11Bに示すような形状である。また図10に示すように、成形凸部30は、第1実施形態と同じく、上側の単位エンボス模様1Bの成形時に缶胴11を介して凹部40内に嵌め込まれた状態のもとで、凹部40の底面40aと成形凸部30の先端面30aとの間から凹部40の内周面40bと成形凸部30の外周面30bとの間までの領域に亘って、缶胴11の肉厚tよりも大きなクリアランスCが生じるような大きさに形成されている。
【0085】
なお、上述したように図8〜11Bには上記第1実施形態と同じ要素に同一の符号が付されていることから、当業者であれば、上側の成形凸部30及び凹部40の構成、並びに、上側の単位エンボス模様1Bの成形方法について容易に理解できるであろう。
【0086】
下側の単位エンボス模様1Cでは、図12及び13に示すように、下側の単位エンボス模様1Cの最外周折曲線2で囲まれた内側領域の正面図、即ち下側の単位エンボス模様1Cの外周輪郭線の正面形状は、円形状である。第1折曲線4が作る第1セル面3の外周輪郭線の正面形状は正八角形状である。第2セル面5の数は24個である。第2セル面5の正面形状は三角形状、四角形状及び略扇形状である。これらの第2セル面5はそれぞれ第1セル面3に対して折曲しており、更にこれらの第2セル面5のうちうち8個は、第1折曲線4を介して第1セル面3と隣接している。第2折曲線6は、第1折曲線4の角部から最外周折曲線2側に向かって延びている。第3折曲線8が作る複数の第2セル面5の外周輪郭線の正面形状は円形状である。第3セル面7は、最外周折曲線2の内側における複数の第2セル面5(第2折曲線6)の外側に複数の第2セル面5を包囲する状態に形成されているが、第4折曲線は形成されていない。したがって、この第3セル面7は第4折曲線で分割されておらず、即ち第3セル面7の数は1つである。
【0087】
内型ロール21及び外型ロール22のそれぞれの表面の下部には、下側の単位エンボス模様1Cを成形する成形凸部30及び凹部40が、複数、周方向に並んで設けられている。この成形凸部30及び凹部40は、図15A及び15Bに示すような形状である。また図14に示すように、成形凸部30は、第1実施形態と同じく、下側の単位エンボス模様1Cの成形時に缶胴11を介して凹部40内に嵌め込まれた状態のもとで、凹部40の底面40aと成形凸部30の先端面30aとの間から凹部40の内周面40bと成形凸部30の外周面30bとの間までの領域に亘って、缶胴11の肉厚tよりも大きなクリアランスCが生じるような大きさに形成されている。
【0088】
このような内型ロール21及び外型ロール22を備えたエンボス加工装置を用いて上側の単位エンボス模様1B及び下側の単位エンボス模様1Cが缶胴11の外周面11aに同時に成形される。
【0089】
なお、上述したように図12〜15Bには上記第1実施形態と同じ要素に同一の符号が付されていることから、当業者であれば、下側の成形凸部30及び凹部40の構成、並びに、下側の単位エンボス模様1Cの成形方法について容易に理解できるであろう。
【0090】
図16〜18は、本発明の第3実施形態に係る単位エンボス模様1Dを説明する図である。これらの図には、上記第1実施形態と同じ要素に同一の符号が付されている。以下では、本第3実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
【0091】
本第3実施形態の単位エンボス模様1Dは、図16及び17に示すように、上記第1実施形態の単位エンボス模様1Aから第3折曲線8及び第3セル面7が除去された形状になっている。一方、図18に示すように、この単位エンボス模様1Dを成形する内型ロール21及び外型ロール22は、上記第1実施形態の内型ロール21及び外型ロール22と同じ構成である。
【0092】
本第3実施形態では、図18に示すように、成形凸部30は、単位エンボス模様1Dの成形時に缶胴11を介して凹部40内に上記第1実施形態(図5参照)よりも浅く嵌め込まれる。これにより、最外周折曲線2の内側における第1折曲線4の外側に成形凸部30の第3稜線38が押し付けられず、その結果、単位エンボス模様1Dに第3折曲線8及び第3セル面7が成形されていない。
【0093】
このように、成形凸部30の凹部40内への嵌め込み深さを変化させることにより、第1実施形態の単位エンボス模様1Aと第3実施形態の単位エンボス模様1Dとをそれぞれ成形することができる。言い換えれば、本第3実施形態の単位エンボス模様1Dを成形する場合には、例えば図5において、第1セル面3に対する第2セル面5の傾斜角度と第3セル面7の傾斜角度とが互いに同じになるように、それぞれの傾斜角度と成形凸部30の凹部40内への嵌め込み深さとを適宜設定すれば良い。
【0094】
図19〜22は、本発明の第4実施形態に係る単位エンボス模様1Eを説明する図である。これらの図には、上記第1実施形態と同じ要素に同一の符号が付されている。本第4実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
【0095】
本第4実施形態の単位エンボス模様1Eの最外周折曲線2は、図19及び20に示すように、缶胴11の基準外周面11zと同一面内に配置されるとともに、缶胴11の外周面11aに山折り状に形成されている。この最外周折曲線2で囲まれた内側領域、即ち単位エンボス模様1Eは、上記第1実施形態の単位エンボス模様1Aを凸状から凹状に変更したものであり、即ち最外周折曲線2の位置に対して缶胴11の半径内方向に凹んだ凹状に形成されている。
【0096】
単位エンボス模様1Eの第1セル面3は、缶胴11の基準外周面11zの位置よりも内側において缶胴11の基準外周面11zと略平行に配置されている。この第1セル面3の外周縁に該外周縁に沿って谷折り状の第1折曲線4が形成されている。
【0097】
単位エンボス模様1Eの複数の第2セル面5は、それぞれ第1折曲線4を介して第1セル面3と隣接し且つ第1セル面3に対して缶胴11の半径外方向へ折曲している。これにより、複数の第2セル面5はそれぞれ第1セル面3に対して傾斜している。
【0098】
さらに、複数の第2セル面5は、互いに隣接する第2セル面5、5同士が、該両第2セル面5、5間の境界に形成された谷折り状の第2折曲線6を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。
【0099】
単位エンボス模様1Eの複数の第3セル面7と複数の第2セル面5との境界には谷折り状の第3折曲線8が形成されている。そして、複数の第3セル面7は、それぞれ第3折曲線8を介して第2セル面5と隣接し且つ第2セル面5に対して缶胴11の半径外方向へ折曲している。これにより、複数の第3セル面7はそれぞれ第1セル面3及び第2セル面5に対して傾斜している。
【0100】
さらに、複数の第3セル面7は、互いに隣接する第3セル面7、7同士が、該両第3セル面7、7間の境界に形成された谷折り状の第4折曲線9を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲している。そして、複数の第3セル面7の外周縁に最外周折曲線2が形成されている。
【0101】
缶胴11の外周面11aに本第4実施形態の単位エンボス模様1Eを成形するエンボス加工装置20では、図21及び22に示すように、内型ロール21の表面に凹部40が設けられるとともに、外型ロール22の表面に成形凸部30が設けられている。成形凸部30及び凹部40は、図6A及び6Bに示した成形凸部30及び凹部40と同じ構成である。
【0102】
このような内型ロール21及び外型ロール22を備えたエンボス加工装置20を用い、図21に示すように、内外両型ロール21、22間に缶胴11を挟んで内型ロール21と外型ロール22とを互いに逆方向に回転させることで、成形凸部30を缶胴11を介して凹部40内に嵌め込む。これにより、図22に示すように、缶胴11の外周面11aに第4実施形態の単位エンボス模様1Eが成形される。
【0103】
以上で本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、様々に変更可能である。例えば、本発明では、単位エンボス模様は、これらの実施形態を二つ以上組み合わせて構成されたものであっても良い。さらに本発明では、金属缶10の缶胴11の外周面11aに設けられる単位エンボス模様の数は1つであっても良いし、単位エンボス模様が複数、缶胴11の外周面11aの全面に設けられていても良い。
【0104】
また本発明では、第1セル面3の外周輪郭線の正面形状は、上記実施形態のように多角形であっても良いし、あるいは円形状などであっても良い。
【0105】
また本発明では、単位エンボス模様は、最外周折曲線2の内側における第3セル面7の外側に、第3セル面7の外周縁に形成された折曲線を介して1つ又は複数の第4セル面が第3セル面7を包囲する状態に形成されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、缶胴の外周面に意匠性を高めるための1つ又は複数の単位エンボス模様が設けられた金属缶、その製造装置、及び金属缶の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1A〜1E:単位エンボス模様
2:最外周折曲線
3:第1セル面
4:第1折曲線
5:第2セル面
6:第2折曲線
7:第3セル面
8:第3折曲面
9:第4折曲線
10:金属缶
11:缶胴
11a:缶胴の外周面
21:内型ロール(内型)
22:外型ロール(外型)
30:成形凸部
30a:成形凸部の先端面
30b:成形凸部の外周面
33:第1成形面
34:第1稜線
35:第2成形面
36:第2稜線
37:非接触面
38:第3稜線
40:凹部
40a:凹部の底面
40b:凹部の内周面
42:凹部の開口周縁
C:クリアランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴の外周面に1つ又は複数の単位エンボス模様が設けられた金属缶であって、
前記単位エンボス模様は、
単位エンボス模様の外周縁に形成されるとともに単位エンボス模様を区画する最外周折曲線と、
前記最外周折曲線の内側の中央部に前記缶胴の基準外周面と略平行に配置された第1セル面と、
前記第1セル面の外周縁に形成された第1折曲線と、
前記最外周折曲線の内側における前記第1折曲線の外側に、前記第1セル面を包囲する状態に第1セル面の周方向に並んで配置された複数の第2セル面と、を備え、
前記複数の第2セル面は、互いに隣接する第2セル面同士が、該両第2セル面間の境界に形成された第2折曲線を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲していることを特徴とする金属缶。
【請求項2】
前記複数の第2セル面の少なくとも一部は、前記第1折曲線を介して前記第1セル面と隣接し且つ前記第1セル面に対して相対的に折曲している請求項1記載の金属缶。
【請求項3】
前記最外周折曲線の内側における前記複数の第2セル面の外側に、前記複数の第2セル面を包囲する状態に第3セル面が配置されるとともに、
前記第3セル面と前記複数の第2セル面との境界に形成された第3折曲線を介して、前記第3セル面が前記複数の第2セル面に対して相対的に折曲している請求項1又は2記載の金属缶。
【請求項4】
前記単位エンボス模様の外周輪郭線の正面形状と前記第1セル面の外周輪郭線の正面形状とが互いに略相似形状である請求項1〜3のいずれかに記載の金属缶。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の金属缶の製造装置であって、
缶胴の内側に配置される内型と、缶胴の外側に配置されるとともに前記内型との間で缶胴を挟む外型と、を備え、
前記内型の表面に成形凸部及び凹部のいずれか一方が設けられるとともに、前記外型の表面に他方が設けられ、
前記成形凸部及び前記凹部は、成形凸部が缶胴を介して凹部内に嵌め込まれることにより、缶胴の外周面に単位エンボス模様を成形するものであり、
前記成形凸部は、単位エンボス模様の成形時に缶胴を介して前記凹部内に嵌め込まれた状態のもとで、前記凹部の底面と前記成形凸部の先端面との間から前記凹部の内周面と前記成形凸部の外周面との間までの領域に亘って、缶胴の肉厚よりも大きなクリアランスが生じる大きさに形成されており、
前記凹部の開口周縁は、最外周折曲線を成形する最外周成形縁として機能しており、
前記成形凸部の先端面には、第1セル面を成形する第1成形面と、前記第1成形面の外周縁に形成されるとともに第1折曲線を成形する第1稜線と、前記第1稜線の外側に配置されるとともに複数の第2セル面を成形する複数の第2成形面と、が設けられるとともに、
前記複数の第2成形面は、互いに隣接する第2成形面同士が、該両第2成形面間の境界に形成されるとともに第2折曲線を成形する第2稜線を介して、互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲していることを特徴とする金属缶の製造装置。
【請求項6】
前記複数の第2成形面の少なくとも一部は、前記第1稜線を介して前記第1成形面と隣接し且つ前記第1成形面に対して相対的に折曲している請求項5記載の金属缶の製造装置。
【請求項7】
前記金属缶は、
前記最外周折曲線の内側における前記複数の第2セル面の外側に、前記複数の第2セル面を包囲する状態に第3セル面が配置されるとともに、
前記第3セル面と前記複数の第2セル面との境界に形成された第3折曲線を介して、前記第3セル面が前記複数の第2セル面に対して相対的に折曲したものであり、
金属缶の製造装置は、
前記成形凸部の外周面又は前記成形凸部の先端面における前記複数の第2成形面の外側に、単位エンボス模様の成形時に缶胴と接触しない非接触面が設けられるとともに、
前記非接触面と前記複数の第2成形面との境界に形成されるとともに第3折曲線を成形する第3稜線を介して、前記非接触面が前記複数の第2成形面に対して相対的に折曲している請求項5又は6記載の金属缶の製造装置。
【請求項8】
前記凹部の開口周縁で囲まれた内側領域の正面形状と前記第1成形面の外周輪郭線の正面形状とが互いに略相似形状である請求項5〜7のいずれかに記載の金属缶の製造装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の金属缶の製造装置を用いて請求項1〜4のいずれかに記載の金属缶を製造することを特徴とする金属缶の製造方法。
【請求項1】
缶胴の外周面に1つ又は複数の単位エンボス模様が設けられた金属缶であって、
前記単位エンボス模様は、
単位エンボス模様の外周縁に形成されるとともに単位エンボス模様を区画する最外周折曲線と、
前記最外周折曲線の内側の中央部に前記缶胴の基準外周面と略平行に配置された第1セル面と、
前記第1セル面の外周縁に形成された第1折曲線と、
前記最外周折曲線の内側における前記第1折曲線の外側に、前記第1セル面を包囲する状態に第1セル面の周方向に並んで配置された複数の第2セル面と、を備え、
前記複数の第2セル面は、互いに隣接する第2セル面同士が、該両第2セル面間の境界に形成された第2折曲線を介して互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲していることを特徴とする金属缶。
【請求項2】
前記複数の第2セル面の少なくとも一部は、前記第1折曲線を介して前記第1セル面と隣接し且つ前記第1セル面に対して相対的に折曲している請求項1記載の金属缶。
【請求項3】
前記最外周折曲線の内側における前記複数の第2セル面の外側に、前記複数の第2セル面を包囲する状態に第3セル面が配置されるとともに、
前記第3セル面と前記複数の第2セル面との境界に形成された第3折曲線を介して、前記第3セル面が前記複数の第2セル面に対して相対的に折曲している請求項1又は2記載の金属缶。
【請求項4】
前記単位エンボス模様の外周輪郭線の正面形状と前記第1セル面の外周輪郭線の正面形状とが互いに略相似形状である請求項1〜3のいずれかに記載の金属缶。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の金属缶の製造装置であって、
缶胴の内側に配置される内型と、缶胴の外側に配置されるとともに前記内型との間で缶胴を挟む外型と、を備え、
前記内型の表面に成形凸部及び凹部のいずれか一方が設けられるとともに、前記外型の表面に他方が設けられ、
前記成形凸部及び前記凹部は、成形凸部が缶胴を介して凹部内に嵌め込まれることにより、缶胴の外周面に単位エンボス模様を成形するものであり、
前記成形凸部は、単位エンボス模様の成形時に缶胴を介して前記凹部内に嵌め込まれた状態のもとで、前記凹部の底面と前記成形凸部の先端面との間から前記凹部の内周面と前記成形凸部の外周面との間までの領域に亘って、缶胴の肉厚よりも大きなクリアランスが生じる大きさに形成されており、
前記凹部の開口周縁は、最外周折曲線を成形する最外周成形縁として機能しており、
前記成形凸部の先端面には、第1セル面を成形する第1成形面と、前記第1成形面の外周縁に形成されるとともに第1折曲線を成形する第1稜線と、前記第1稜線の外側に配置されるとともに複数の第2セル面を成形する複数の第2成形面と、が設けられるとともに、
前記複数の第2成形面は、互いに隣接する第2成形面同士が、該両第2成形面間の境界に形成されるとともに第2折曲線を成形する第2稜線を介して、互いに異なる方向に傾斜した状態に折曲していることを特徴とする金属缶の製造装置。
【請求項6】
前記複数の第2成形面の少なくとも一部は、前記第1稜線を介して前記第1成形面と隣接し且つ前記第1成形面に対して相対的に折曲している請求項5記載の金属缶の製造装置。
【請求項7】
前記金属缶は、
前記最外周折曲線の内側における前記複数の第2セル面の外側に、前記複数の第2セル面を包囲する状態に第3セル面が配置されるとともに、
前記第3セル面と前記複数の第2セル面との境界に形成された第3折曲線を介して、前記第3セル面が前記複数の第2セル面に対して相対的に折曲したものであり、
金属缶の製造装置は、
前記成形凸部の外周面又は前記成形凸部の先端面における前記複数の第2成形面の外側に、単位エンボス模様の成形時に缶胴と接触しない非接触面が設けられるとともに、
前記非接触面と前記複数の第2成形面との境界に形成されるとともに第3折曲線を成形する第3稜線を介して、前記非接触面が前記複数の第2成形面に対して相対的に折曲している請求項5又は6記載の金属缶の製造装置。
【請求項8】
前記凹部の開口周縁で囲まれた内側領域の正面形状と前記第1成形面の外周輪郭線の正面形状とが互いに略相似形状である請求項5〜7のいずれかに記載の金属缶の製造装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の金属缶の製造装置を用いて請求項1〜4のいずれかに記載の金属缶を製造することを特徴とする金属缶の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−71868(P2012−71868A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218472(P2010−218472)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000186854)昭和アルミニウム缶株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000186854)昭和アルミニウム缶株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
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