説明

金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物

【課題】 FRP素材表面に真空蒸着によって鏡面を形成するための、FRP素材との密着性、表面の平滑性及び耐熱性に優れる活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物を提供する。
【解決手段】 油長10〜50%、酸価10〜100の水溶性または水分散性アルキッド樹脂(A)、分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する単量体(B1)、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、カルボキシル基を有しない単量体(B2)、及び光重合開始剤(C)を含有することを特徴とするFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着性及び耐熱性に優れたFRP金属蒸着用活性エネルギー硬化型の水性アンダーコート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の反射鏡は、FRPを用いて成形体の形成がなされ、その表面にアルミニウム等の金属を真空蒸着することによって目的物が作製されている。しかしながら、FRP素材表面は平滑性に乏しく、また、アルミ等の蒸着層との密着性も不十分であり、直接アルミニウム等で真空蒸着することは困難である。
【0003】
そこで、FRP表面との密着性及び、アルミニウムとの密着性に優れるアンダーコート剤が必要とされる。アンダーコート剤には、第一に塗膜表面の平滑性と鏡面性が求められ、さらに、耐熱性も求められている。
【0004】
アンダーコート用組成物として、溶剤型のアミノ基を有する(メタ)アクリル系単量体と1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性単量体並びに光重合開始剤からなる組成物(例えば特許文献1参照)、溶剤型のアルキッド樹脂と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体、さらには光重合開始剤および必要に応じてアミノ樹脂からなる組成物(例えば特許文献2参照)等が提案されている。
【0005】
近年、VOC規制の強化や、作業環境改善の動きなどから、溶剤型塗料から水性型塗料への関心が高まっている。
【0006】
【特許文献1】特許第3266705号公報
【特許文献2】WO1995/032250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、FRP素材表面に真空蒸着によって鏡面を形成するための、FRP素材との密着性、表面の平滑性及び耐熱性に優れる活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記問題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明で特定するアルキッド樹脂、単量体および光重合開始剤を必須成分とする活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物が上記課題を有利に達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は第一に、油長10〜50%、酸価10〜100の水溶性または水分散性アルキッド樹脂(A)、分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する単量体(B1)、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、カルボキシル基を有しない単量体(B2)、および光重合開始剤(C)を含有し、前記したアルキッド樹脂(A)と、前記した単量体(B1)と(B2)の合計(B1+B2)の比率(A):(B1+B2)が、30:70〜70:30であり、前記した単量体(B1)と、単量体(B2)の比率、(B1):(B2)が、10:90〜60:40であることを特徴とするFRP金属蒸着用活性エネルギー線から選ばれる硬化型水性アンダーコート組成物を提供する。
【0010】
本発明は第二に、油長10〜50%、酸価10〜100の水溶性または水分散性アルキッド樹脂(A)、分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する単量体(B1)、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、カルボキシル基を有しない単量体(B2)、及び、光重合開始剤(C)を混合後に水を徐々に加え転相乳化させる工程を有することを特徴とするFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は第三に、自動車反射鏡用FRP成型体表面に、前記したFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物の硬化被膜層、真空蒸着により得られる金属薄膜層及びクリアーコート層をこの順に有することを特徴とする自動車反射鏡用FRP成型体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、FRP素材表面への密着性に優れ、硬化塗膜が平滑性を有し、アルミ蒸着時の外観に優れた鏡面を形成することができ、耐熱性にも優れる活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物について詳細に説明する。
【0014】
本発明の、FRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物に使用するアルキッド樹脂(A)は、油長10〜50%、酸価10〜100の水溶性または水分散性アルキッド樹脂である。
【0015】
本発明で使用するアルキッド樹脂(A)の製造方法は、特に制限はなく、油を原料とするエステル交換法、脂肪酸を原料とする脂肪酸法など公知の方法が利用できる。
【0016】
本発明で使用するアルキッド樹脂(A)の油成分としては、あまに油、(脱水)ひまし油、桐油、大豆油、サフラワー油、ひまわり油、米ぬか油、トール油、椰子油、パーム核油等がある。これらの油は単独または、2種以上併用して使用される。
【0017】
また、本発明で使用するアルキッド樹脂(A)の脂肪酸成分としては、上述の油成分の脂肪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等がある。これらの脂肪酸は単独または、2種以上併用して使用される。さらに、これらの脂肪酸のメチルエステル化合物も使用できる。
【0018】
他の一塩基酸としては、安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、アビエチン酸、水素添加アビエチン酸等も使用可能である。
【0019】
多塩基酸としては、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族二塩基酸、(無水)コハク酸、アルケニル(無水)コハク酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、(無水)ハイミック酸等の脂肪族二塩基酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)メチルシクロヘキセントリカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。これらの多塩基酸は単独または、2種以上併用して使用される。
【0020】
本発明に用いるアルキッド樹脂(A)で使用する多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ジペンタエリスリトール等の四価以上のアルコールがある。これらは単独または、2種以上併用して使用される。
【0021】
本発明に用いるアルキッド樹脂(A)の油長は10〜50%の範囲であり、好ましくは15〜40%の範囲である。油長が10%未満であると、平滑性が低下し、油長が50%を越えると硬化性が低下する傾向にある。
【0022】
本発明に用いるアルキッド樹脂(A)の酸価は、10〜100の範囲であり、好ましくは20〜70の範囲である。酸価が10未満であると、水性化が困難であり、100を越えると、耐水性に劣る傾向にある。
【0023】
本発明に用いるアルキッド樹脂(A)の数平均分子量は通常1,000〜10,000の範囲であり、好ましくは2,000〜8,000である。この範囲外であると、所定の効果が得られにくいことがある。
【0024】
本発明に使用される、分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する単量体(B1)は、活性エネルギー線硬化性成分であり、また塗料の安定性を向上させる。
【0025】
例えば、この単量体(B1)としては、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタル酸、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー等が挙げられる。これらは単独または、2種以上併用して使用される。
【0026】
本発明に使用される、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体(B2)は、活性エネルギー線硬化性成分であり、塗膜の架橋密度を高める。
【0027】
この単量体(B2)としては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、スピログリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキル型(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール型(メタ)アクリレート類;ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のエステル型(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等のトリメチロールプロパン型(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のペンタエリスリトール型(メタ)アクリレート類;イソシアヌール酸EO変性型ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸PO変性型トリ(メタ)アクリレート等のイソシアヌール酸型(メタ)アクリレート類;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の脂環型ジ(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビス(ヒドロキシプロピルジ(メタ)アクリレート)等の水酸基含有型(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
【0028】
塗膜の硬化性の観点から、上述の単量体(B2)のうち、分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有するものを少なくとも1種、又はそれ以上使用するのが好ましい。
【0029】
本発明に使用される光重合開始剤(C)としては、耐熱性、密着性、硬化性、耐黄変性から、ジェトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル-4′−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルフェニルグリオキシレート等のグリオキシエステル類等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
【0030】
本発明のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物においてアルキッド樹脂(A)と、単量体(B1)と(B2)の合計(B1+B2)の比率、(A):(B1+B2)は30:70〜70:30の範囲であり、好ましくは40:60〜60:40である。この範囲よりアルキッド樹脂(A)が多いと硬化性が低下する傾向があり、この範囲よりアルキッド樹脂(A)が少ないと塗膜の平滑性が低下する傾向にある。
【0031】
前記した分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する単量体(B1)と、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体(B2)の比率、(B1):(B2)は、10:90〜60:40の範囲であり、より好ましくは20:80〜40:60の範囲である。この範囲より単量体(B1)が多いと十分な硬化性が得られない場合があり、少ないと塗料安定性が劣る傾向にある。
【0032】
本発明のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物には、本発明の目的を達成する範囲において、公知慣用のその他の各種樹脂を混合して使用でき、例えば、本発明で使用できるアルキッド樹脂(A)以外のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アクリル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、あるいはこれらの変性樹脂等が挙げられる。
【0033】
また、本発明のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物には、本発明の目的を達成する範囲において、水以外の公知慣用のその他の溶剤を混合して使用できる。好ましくは、水溶性もしくは水親和性の溶剤であり、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノールの如き、アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルの如き、セロソルブ類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの如き、プロピレングリコールエーテル類等が挙げられる。これらの化合物はそれぞれ単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物には、必要に応じて公知の塗料用添加剤を使用できる。例えば、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、表面調整剤、滑剤、増粘剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、防カビ剤、抗菌剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0035】
本発明のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物の製造方法として、水溶性または水分散性アルキッド樹脂(A)、前記した分子内に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基をふくむ単量体(B1)、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、カルボキシル基を有しない単量体(B2)、及び、光重合開始剤(C)を混合後に水を徐々に加え転相乳化させることによって製造することができる。
【0036】
基材には、本発明のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物の密着性を更に向上させるための公知の表面処理を施すことも可能である。例えば、溶剤による脱脂、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせた処理を行ってもよい。
【0037】
本発明のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物をFRP基材に塗布する方法は、本発明の目的を損なわない限りにおいて特に問わず、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、静電塗布法等の公知の方法を用いることができる。このうち、スプレー塗布法が好ましい。塗布は一回で行っても、二回以上の多段階塗布で行ってもよい。
【0038】
本発明のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物のFRP基材上での乾燥膜厚はとくに制限はないが、通常5〜50μmの範囲で、好ましくは10〜40μmの範囲である。塗布後、水分等を蒸発させるため、常温もしくは加熱により乾燥させる。加熱乾燥は、通常50〜150℃の範囲で、好ましくは80〜120℃の範囲で、30秒〜30分、好ましくは3〜15分乾燥させればよい。
【0039】
上述のように塗膜を乾燥後、活性エネルギー線で硬化させる。例えば、紫外線硬化の場合は、公知の照射ランプである高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を用い、300〜5000mJ程度の総照射量で本発明の組成物を硬化させる。
【0040】
上記方法にて硬化させた後、アルミニウム等の金属を通常100〜1000(オングストローム)の厚みになるよう真空蒸着させ、さらにアクリル樹脂系等からなる熱硬化型クリヤー塗料を5〜10μmの乾燥膜厚になるよう、スプレー塗布等で塗装後、乾燥条件80〜140℃で10〜30分焼き付け乾燥させる。
【0041】
上述のように自動車反射鏡用FRP成型体表面に本発明で特定するFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物の硬化被膜層、真空蒸着により得られる金属薄膜層及びクリアーコート層をこの順に有することで自動車反射鏡用FRP成型体を得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下本発明の理解を容易にするため、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、各例中の部及び%は質量基準によるものである。
【0043】
(実施例1)
1官能単量体(B1−1)(ω−カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート;商品名 アロニックスM-5300 東亜合成(株)製)10部と酸価中和分のトリエチルアミン3.7部を撹拌混合した液に3官能基を有する単量体(B2−1)(ペンタエリスリトールトリアクリレート;商品名 アロニックスM−305 東亜合成(株)製)40部を加えて均一になるまで分散攪拌機にて撹拌混合する。これに光重合開始剤(C−1)(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;商品名 Irgacure184 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を4部添加し、均一になるまで撹拌する。さらに、アルキッド樹脂(A−1)(大豆油変性アルキッド樹脂、固形分:60%、油長:25%、酸価:40mgKOH/g)50部を混合し、均一になるまで撹拌する。次にイオン交換水を固形分が30%になるまで徐々に加え転相乳化させる。さらに、表面調整剤としてパーフルオロアルキル基含有ノニオンオリゴマー(商品名;メガファックF470 大日本インキ化学工業(株)製)を0.1部添加し、十分撹拌して、FRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物を得た。
【0044】
(実施例2〜22、比較例1〜6)
実施例1と同様にして、表1〜4に示した組成にてFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物を調整した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
表1に示す、Mnは数平均分子量を表す。表2〜5に示す単量体は以下を使用した。表中、配合は固形分比を示す。
(B1−2):アクリル酸ダイマー(商品名 アロニックスM−5600 東亜合成(株)製)、
(B1−3):2−アクリロイロキシエチルフタレート(商品名 アロニックスM−5400 東亜合成(株)製)、
(B2−2):ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(商品名;アロニックスM−408 東亜合成(株)製)、
(B2−3):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名;LUMICURE DPA−620 大日本インキ化学工業(株)製)、
(C−2):2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名;Irgacure907 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、
(Y−1):ポリエステル樹脂(水分散ポリエステルディスパージョン 不揮発分30% 分子量15,000 酸価 3mgKOH/g)、
(Y−2):アクリル樹脂(水分散アクリルディスパージョン 不揮発分35% 分子量10,000 酸価 10mgKOH/g)
【0051】
(評価)
実施例1〜22、比較例1〜6で得られたFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物について、塗膜外観、密着性、耐熱性を試験した。試験用塗膜作成および試験方法は次の通りである。
【0052】
(試験用塗膜作成)
脱脂処理を施した自動車用FRP成型品にエアー式ハンドガンを用いて乾燥膜厚が15〜20μmになるようスプレー塗装し、乾燥機にて100℃10分で乾燥させ水分等を除去する。次に120W/cmの高圧水銀灯を使用し、500mJ/cmの照射量で紫外線を照射し塗膜を硬化させた。その後、このアンダーコート塗膜の表面にアルミニウムを真空蒸着させ、最後に熱硬化性溶剤型アクリルメラミン塗料を乾燥膜厚が3〜5μmになるようスプレー塗装し、乾燥機にて120℃10分乾燥させた。
【0053】
(塗膜外観)
外観を目視判定し、クラック、フクレ、白化、虹等の欠陥の有無を検査し、欠陥がなく光沢のあるものを◎、欠陥のないものを○、わずかに欠陥があるものを△、欠陥のあるものを×とした。
【0054】
(密着性)
塗装面に1mm間隔でカットを入れ100個の碁盤目を作る。この上からカット部分にセロハン粘着テープ24mm幅を貼り、塗装面に垂直方向に急激に引き剥がすことによって、剥離しないで残った碁盤目の数で評価した。
◎:残った碁盤目数が、100/100
○:残った碁盤目数が、99/100〜91/100
△:残った碁盤目数が、51/100〜90/100
×:残った碁盤目数が、50/100以下
【0055】
(耐熱性)
熱風循環式乾燥炉の中に180℃、96時間の条件で放置後、外観及び密着性を上記方法にて評価した。
【0056】
(耐水性)
試験パネルを40℃の恒温水槽に30時間浸漬させ、取り出し後、外観および密着性を上述の方法と同様にして評価した。
【0057】
上記実施例、比較例について、各塗膜の評価結果を表6〜表8に示す。
【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物は優れた平滑性、密着性、耐熱性等を有している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油長10〜50%、酸価10〜100の水溶性または水分散性アルキッド樹脂(A)、分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する単量体(B1)、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、カルボキシル基を有しない単量体(B2)、及び光重合開始剤(C)を含有し、前記したアルキッド樹脂(A)と、前記した単量体(B1)と(B2)の合計(B1+B2)の比率、(A):(B1+B2)が、30:70〜70:30であり、前記した単量体(B1)と、単量体(B2)の比率、(B1):(B2)が、10:90〜60:40であることを特徴とするFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物。
【請求項2】
前記した単量体(B2)が、分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する単量体を少なくとも1種以上含有する請求項1に記載のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物。
【請求項3】
前記したアルキッド樹脂(A)の数平均分子量が、1,000〜10,000ある請求項1に記載のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物。
【請求項4】
油長10〜50%、酸価10〜100の水溶性または水分散性アルキッド樹脂(A)、分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する単量体(B1)、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、カルボキシル基を有しない単量体(B2)、及び、光重合開始剤(C)を混合後に水を徐々に加え転相乳化させる工程を有することを特徴とするFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物の製造方法。
【請求項5】
自動車反射鏡用FRP成型体表面に請求項1〜3の何れかに記載のFRP金属蒸着用活性エネルギー線硬化型水性アンダーコート組成物の硬化被膜層、真空蒸着により得られる金属薄膜層及びクリアーコート層をこの順に有することを特徴とする自動車反射鏡用FRP成型体。


【公開番号】特開2006−70169(P2006−70169A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255533(P2004−255533)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】