説明

金属蛇腹管付複合ホース

【課題】金属蛇腹管の疲労破断を抑制し、耐久寿命の高い金属蛇腹管付複合ホースを提供する。
【解決手段】ストレート形状部26を端部に有する金属蛇腹管14を内層とする金属蛇腹管付複合ホース10において、インサートパイプ29の外径をストレート形状部26のインサートパイプ29挿入前の内径よりも0.1mm以上大径として、インサートパイプ29をストレート形状部26のインサートパイプ29挿入前の拡径方向の塑性変形を伴ってその内部に圧入状態に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動車用燃料輸送用ホースや冷媒その他流体輸送用ホースとして好適な金属蛇腹管付複合ホースに関し、特に端部の締結構造に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の燃料輸送用等として振動吸収性,組付性等の良好な一般的なゴムホース、例えば耐ガソリン透過性の優れるNBR・PVC(アクリロニトリルブダジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド)等が用いられて来たが、自動車用燃料等の透過規制は地球環境保全の観点から厳しく、今後もその規制の一層の強化が予想され、他面では燃料電池で使用される水素ガスや炭酸ガス冷媒等の透過性の高い流体に対応する必要もあり、ゴムや樹脂といった有機材料のみで構成されたホースでは、要求性能を満足することが困難になると予想される。
【0003】
そこで、今後の低透過ホースの形態として、極めて高度の流体不透過性が期待できる、内層に金属蛇腹管を有するホースの使用が検討されている。
この金属蛇腹管付複合ホースの場合、燃料電池で使用される分子量の小さい水素ガスを用いた場合でも内層の金属蛇腹管によってガス透過を0とすること、即ちガス透過を完全防止することが可能である。
但し金属蛇腹管付複合ホースの場合、内層の金属蛇腹管が高い剛性を有していることから、シール性を確保した端部の締結構造が問題となる。
【0004】
従来、ホース端部については図7に示しているようにホース本体200内に剛性の金属製のインサートパイプ202を挿入した上、径方向内向きの鍔状部206を備えたソケット金具204を外嵌し、そしてそのソケット金具204を径方向内方にかしめ付けることによってホース本体200,インサートパイプ202及びソケット金具204を一体に締結固定し、併せてホース本体200の内面とインサートパイプ202との間をシールするようにしている。
【0005】
しかしながら金属蛇腹管付複合ホースの場合、金属蛇腹管とインサートパイプとの十分な密着性が得がたく、金属蛇腹管の内周面とインサートパイプの外周面との嵌合のみにてシールを行う場合には十分なシール性を確保することが困難である。
そこで本出願人は、軸方向に直状に延びる非蛇腹形状のストレート形状部を端部に有する金属蛇腹管を内層として、その外側に弾性層を有する外層を積層し且つストレート形状部の端部をその外層から延出させてホース本体を構成し、そしてホース本体のストレート形状部の内部に剛性のインサートパイプを挿入するとともに、ホース本体にスリーブ状のソケット金具を外嵌して、そのソケット金具を径方向にかしめ付け、ソケット金具の径方向内向きの鍔状の内周端とインサートパイプの外周面とでストレート形状部の延出部を狭圧して、インサートパイプに対するストレート形状部の固定とそれらの間のシールを行うようになした金属蛇腹管付複合ホースを案出し、先の特許願(下記特許文献1)においてこれを提案している。
【0006】
図8はその具体例を示している。
図において200はホース本体で、最内層に金属蛇腹管204を有しており、その外側に内側弾性層206,補強層208,外側弾性層210から成る外層が積層され且つそれらが一体に固着されている。
金属蛇腹管204は長手方向の略全体が蛇腹部212とされており、その蛇腹部212によって可撓性が付与されている。
この金属蛇腹管204には、蛇腹部212に続いて軸方向に直状に延びる非蛇腹形状且つ直管状のストレート形状部214が端部に設けられている。
ここでストレート形状部214はその端部が外層から露出して軸方向に延出している。図中216はその延出部を表している。
【0007】
222は剛性の(ここでは金属製)インサートパイプで、218はスリーブ状を成すソケット金具であり、軸方向端部に径方向内向きの鍔状部220を有している。
ここでは上記ストレート形状部214はインサートパイプ222との組付性を考慮して、その内径をインサートパイプ222の外径と同径となしてある。
【0008】
図8(A)はソケット金具218をかしめ付ける前の状態を表している。
図に示しているようにこの金属蛇腹管付複合ホースにおいては、金属蛇腹管204のストレート形状部214の内部にインサートパイプ222を挿入し、またホース本体200にソケット金具218を外嵌した状態としてこれを径方向にかしめ付け、ホース本体200の端部とインサートパイプ222及びソケット金具218を一体に締結する。
そしてこのソケット金具218のかしめ付けによって、図8(B)に示しているようにストレート形状部214の延出部216を鍔状部220の内周端とインサートパイプ222の外周面とで挟圧し、インサートパイプ222に対するストレート形状部214の固定と、それらの間のシールを同時に行う。
【0009】
特にこの例では、インサートパイプ222の外周面に環状の係入溝213を設けて、ソケット金具218のかしめ付けの際に鍔状部220の内周端部をその係入溝213により塑性変形させつつ係入溝213に係入させて、係入溝213に沿った形状の係入部221(図8(B)の部分拡大図参照)を形成し、その係入部221と係入溝213とを、係入溝213内部に嵌り込む状態に変形した延出部216を介して互いに噛み合せ、ストレート形状部214のインサートパイプ222に対する固定と、それらの間のシールとを行うようにしている。
尚図8(B)に示しているように、ここではソケット金具218のかしめ付けが段かしめとされている。詳しくは軸方向の複数のかしめ位置P,P,P,Pにおいてソケット金具218を径方向内方に部分的にかしめ付けている。
【0010】
しかしながらこの金属蛇腹管付複合ホースにあっては、ストレート形状部214の耐久寿命が十分でない問題のあることがその後判明した。
詳しくは、この金属蛇腹管付複合ホースに対し内圧を繰り返し加える耐久試験を行ったところ、ストレート形状部214の部分で軸方向に破断を生じる問題のあることが判明した。
【0011】
そこで本発明者がその原因の追究を行ったところ、以下の事実が判明した。
即ちこの金属蛇腹管付複合ホースにあっては、ソケット金具218の鍔状部220とインサートパイプ222の外周面とによる延出部216の狭圧によってシールが行われているものの、鍔状部220よりも図中右側の部分では、ストレート形状部214の内周面とインサートパイプ222の外周面との間にクリアランス(隙間)が生じるなどして密着力が低く、そのため金属蛇腹管付複合ホースに対して内圧がかかったときに、内部流体がストレート形状部214の内周面とインサートパイプ222の外周面との間に侵入して、ストレート形状部214に対しても内圧が繰り返し作用し、その結果ストレート形状部214のある部分が径方向への膨出変形と収縮変形とを繰り返して、その変形部分で金属疲労を起こし、ストレート形状部214が同部分で軸方向に破断するものとの結論を得た。
【0012】
またその破断箇所は、ソケット金具218における隣接するかしめ位置とかしめ位置との間の部分で特に生じ易いことも、併せて判明した。
この現象は次のように考えることができる。
即ちソケット金具218をP,P,P,Pの位置でかしめたときに、外側弾性層210が、ソケット金具218のかしめ位置とかしめ位置との間の内側の凹部224へと逃げ込むように変形する。即ちそこに大きなボリューム移動が生ずる。
【0013】
このときストレート形状部214もまた、外側弾性層210の移動に伴う補強層208,内側弾性層206の移動によって軸方向に押され、そしてかしめ位置とかしめ位置との間の部分が図9に示しているように径方向外方に部分的に膨らみ変形し、そこにしわが寄ったような状態となる。
この部分は内部の流体の圧力が作用し易い箇所となり、その結果同部分が内圧の繰り返し付加によって、より大きく膨出変形及び収縮変形を繰り返すようになり、そこに大きな局部的な歪み、伸びが発生して、最終的に金属疲労によりそこから軸方向に破断する現象を生じるものと考えられる。
【0014】
本発明はこのような知見のもとになされたものである。
尚、このようにソケット金具の鍔状部とインサートパイプの外周面とで金属蛇腹管のストレート形状部、詳しくはその延出部を径方向に狭圧して固定とシールを行うものについては、上記以外に下記特許文献2,下記特許文献3に開示されている。
【0015】
【特許文献1】特開2004−52811号公報
【特許文献2】特開2004−190702号公報
【特許文献3】特開2004−190704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、金属蛇腹管の疲労破断を抑制し、耐久寿命の高い金属蛇腹管付複合ホースを提供することを目的として成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1のものは、軸方向に直状に延びる非蛇腹形状のストレート形状部を端部に有する金属蛇腹管を内層として、その外側に弾性層を有する外層を積層し且つ該ストレート形状部の端部を該外層から延出させて成るホース本体の、該ストレート形状部の内部に剛性のインサートパイプを挿入するとともに、該ホース本体に外嵌したスリーブ状のソケット金具を径方向にかしめ付け、該ソケット金具の径方向内向きの鍔状部の内周端と前記インサートパイプの外周面とで前記ストレート形状部の延出部を挟圧して、該インサートパイプに対する該ストレート形状部の固定と、該インサートパイプの外周面及び該ストレート形状部の内周面間のシールを行うようになした金属蛇腹管付複合ホースにおいて、前記インサートパイプの外径を前記ストレート形状部の該インサートパイプ挿入前の内径よりも0.1mm以上大径として、該インサートパイプを該ストレート形状部の拡径方向の塑性変形を伴って該ストレート形状部の内部に圧入状態に挿入してあることを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記ソケット金具のかしめ付けが軸方向の複数のかしめ位置で部分かしめを行う段かしめであって、隣接するかしめ位置とかしめ位置との間の位置で前記ホース本体を外周面から径方向内方に押圧する押え部が径方向内方に突出する形態で前記ソケット金具の内周面に設けてあることを特徴とする。
【0019】
請求項3のものは、請求項1において、前記かしめ付けが、前記ソケット金具を所定長全体に亘って径方向内方に縮径させる平かしめであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0020】
上記のように本発明は、インサートパイプの外径を、ストレート形状部のインサートパイプ挿入前の内径よりも0.1mm以上大径として、インサートパイプをストレート形状部の拡径方向の塑性変形を伴ってその内部に圧入状態に挿入し、組み付けるようになしたもので、かかる本発明では、ストレート形状部の内周面がインサートパイプの外周面に強固に隙間なく密着した状態となる。
【0021】
そのため金属蛇腹管付複合ホースに繰り返し内圧が加わった場合においても、ストレート形状部の内周面とインサートパイプの外周面との間への内部流体の侵入は生じず、従って内部流体の侵入によりストレート形状部に内圧が繰り返し作用するのが防止される。
このため繰り返し内圧が加わっても、ストレート形状部が所定部分で金属疲労を生じて軸方向に破断する現象が良好に抑制され、金属蛇腹管付複合ホースの耐久寿命が向上する。
尚金属蛇腹管におけるストレート形状部の内径、更にはインサートパイプの外径は製造上のばらつきが生じるが、この請求項1ではインサートパイプの外径の公差の下限値を、ストレート形状部の内径の公差の上限値よりも0.1mm以上大径としておく。
またインサートパイプの外径とストレート形状部の内径との差は、蛇腹ストレート形状部の内径加工精度、インサートパイプの加工精度および、蛇腹管ストレート部強度から0.7mm以下となしておくのが望ましい。
【0022】
請求項2は、ソケット金具のかしめを段かしめ(俵かしめ)となすとともに、かしめ位置とかしめ位置との間の位置でホース本体を外周面から径方向内方に押圧する押え部を、ソケット金具の内周面に突出する形態で設けたものである。
この請求項2によれば、ソケット金具のかしめ付けの際にホース本体の弾性層が、ソケット金具のかしめ位置とかしめ位置との間の部分の内側の凹部に逃げ込むように変形するのが抑制される。即ちかしめ付けの際に、かしめ位置の部分からかしめ位置の間の部分に弾性層がボリューム移動するのが抑制される。
その結果、ストレート形状部の所定部分、詳しくはかしめ位置とかしめ位置との間の部分が、しわが寄ったように径方向外方に膨らみ変形するのが抑制される。
【0023】
従ってこの膨らみ変形した部分に対して内圧が繰り返し作用することにより同部分がより大きく膨らみ変形し、或いは収縮変形することによる疲労破断を抑制でき、金属蛇腹管付複合ホースの耐久性をより一層向上せしめることができる。
ここで上記の押え部は、かしめ位置とかしめ位置との間隔が、5mm以上のときに付加しておくと効果的である。
【0024】
次に請求項3は、ソケット金具を段かしめとせずに、所定軸方向長全体に亘って径方向内方に縮径させる平かしめとなしたもので、この場合においても、ソケット金具のかしめ付けの際にホース本体の弾性層の軸方向の移動によって金属蛇腹管のストレート形状部の特定部分がしわが寄ったように膨らみ変形するのを防止できる。
従って請求項3によっても効果的に金属蛇腹管付複合ホースの耐久寿命を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1,図2において、10は金属蛇腹管付複合ホース(以下単にホースとする)で、12はホース本体である。
ホース本体12は金属蛇腹管14を最内層に有し、その径方向外側に弾性充填材層としてのゴム充填材層16,硬質の樹脂層18,補強層20及び外側ゴム層(カバーゴム層)22から成る外層が積層され且つそれらが一体に固着されている。
金属蛇腹管14は軸方向の略全体が蛇腹部24とされており、この蛇腹部24によって可撓性が付与されている。
金属蛇腹管14には、蛇腹部24に続いて軸方向に直状に延びる非蛇腹形状のストレート形状部26が端部に一体に形成されている。
【0026】
このストレート形状部26は、その端部がホース本体12の外層から露出して軸方向に延出している。図中28はその延出部を表している。
最内層の金属蛇腹管14は、輸送流体に対する透過バリア層としてのもので、その材質については鉄鋼,アルミニウム又はアルミニウム合金,銅又は銅合金,ニッケル又はニッケル合金,チタニウム又はチタニウム合金等を用いることができ、それらの中から輸送流体に対する耐性や振動,圧力による耐久性,金属管加工性等から適宜選択されるが、特にステンレス鋼を好適に用いることができる。
またその厚みについては求められる柔軟性,可撓性から0.5mm以下とすることが望ましい。一方で金属管加工の加工性から0.1mm以上とすることが望ましい。この実施形態では金属蛇腹管14の厚みは0.23mmとされている。
【0027】
ゴム充填材層(非発泡材のソリッドゴムの層)16は、蛇腹部24における隣接した山部と山部との間の外周側の谷間空間を埋めて、蛇腹部24の内圧作用時の膨張変形を抑制する層である。
この実施形態において、ゴム充填材層16は山部の頂きに至るまで谷間空間を完全充填する状態で、またその山部の頂きと硬質の樹脂層18との間の厚みが0.3mm以下の厚みで設けられている。
一方補強層20の内側の樹脂層18は、蛇腹部24における山部と山部との間の外周側の谷間空間に充填されたゴム充填材層16をその谷間空間に閉じ込め、金属蛇腹管14の変形時にそのゴム充填材層16が谷間空間から径方向外方にはみ出すのを防止する働きをなす。
【0028】
この樹脂層18は、求められる機能上ホース内圧によって発生する応力で変形しない剛性を有すること、またそのための必要な肉厚を有することが望ましい。その意味において肉厚は0.15mm以上としておくことが望ましい。
またその材質としてはPA6/EPDMのアロイ材,PE,PP,PA6,PA11,PA12,PET,PBT,PBN,PVDF,ETFE,PTFE,PPS,ABS,EVA等の樹脂を用いることができる。
【0029】
補強層20は耐圧確保のための層で、この補強層20は繊維補強層とすることも、また金属ワイヤから成るワイヤ補強層とすることもできる。またこの補強層20は繊維若しくはワイヤをブレード編組して構成しておくことができる。
外側ゴム層22は、内側の各層を保護(外部からの液や衝撃等に対する保護)する観点から設けられているもので、その肉厚としては0.2〜2mm程度が望ましい。
またその材質については隣接層との接着性,柔軟性,使用条件(外部からの液や衝撃)等に対する耐性,加工性等から適宜選択される。
【0030】
例えばこの外側ゴム層22の材質としては天然ゴム系,スチレン・ブタジエンゴム系,ブタジエンゴム系,イソプレンゴム系,クロロプレンゴム系,ブチルゴム系,ニトリルゴム系,エチレン・プロピレンゴム系,ハイパロンゴム系,アクリルゴム系,ウレタンゴム系,シリコンゴム系,フッ素ゴム系,ポリスルフィドゴム系,エピクロルヒドリンゴム系,プロピレンオキシドゴム系,アルフィンゴム系等から適宜選択して用いることができる。
また場合によって熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
本実施形態では、この外側ゴム層22としてEPDMが用いられている。
【0031】
図2において、29は金属製の剛性のインサートパイプで、外周面が軸方向のストレート形状の面とされている。
このインサートパイプ29の外周面には、係入溝30が周方向に沿って環状に形成されている。
【0032】
図3,図4に示しているように、係入溝30は溝底面30aが軸方向に延びる面とされており、また前側(図中左側)の溝側面30bがこれに対して直角に起立する面とされている。
また後側(図中右側)の溝側面30cが、角度(軸直角方向に対する角度)θで傾斜するテーパ面とされている。
溝底面30aには、径方向外向きに突出する、断面形状が略半円形状の突出部32が設けられている。
尚図4において、dは溝底面30aの軸方向の寸法を、dは係入溝30の溝深さを、dは突出部32の突出高さを、dは突出部32の軸方向の寸法をそれぞれ表している。
この実施形態においてθ=60°であり、dは3.2mm、dは約1mm、dは0.2mm、dは0.4mmである。
【0033】
図2において、34はスリーブ状のソケット金具で、前側(図中左側)の軸端部に径方向内向きの鍔状部36を有している。
このソケット金具34は、軸方向の複数のかしめ位置、P,P,P,Pで径方向内方にかしめつけられている。即ちこの実施形態ではソケット金具34は段かしめとされ、その段かしめによってホース本体12の端部がソケット金具34とインサートパイプ29にて径方向に挟圧される状態に、それらインサートパイプ29及びソケット金具34に対し一体に締結固定されている。
【0034】
この実施形態において、ソケット金具34はインサートパイプ29よりも低硬度材が用いられており、かしめ付けによって鍔状部36の内周端部が係入溝30により塑性変形させられ、内部に係入している。
図2中42はその係入部を表しており、この係入部42は塑性変形によって係入溝30に噛合った状態となっている。
詳しくはかしめ付けにより変形し、係入部42内部に嵌り込んだストレート形状部26の延出部28を介して係入部42が係入溝30に噛合っている。
【0035】
そしてその噛合いに基づいて係入部42が、延出部28の係入溝30に嵌り込んだ部分を前側の溝側面30bとで軸方向に挟圧し、また溝底面30aとの間でその嵌り込んだ部分を径方向に挟み込んでいる。
但し後側の溝側面30cについては角度θのテーパ面とされている結果、係入部42は、延出部28の係入溝30に嵌り込んだ部分を溝側面30cとの間で軸方向に挟圧しておらず、延出部28の溝側面30cに沿った部分は(軸方向に)非拘束とされている。
【0036】
尚、図2の部分拡大図に示しているように溝底面30aに設けられた突出部32は、かしめ付けの際に鍔状部36の内周端面に食込んだ状態となって、その内周端面に凹陥部44を形成し、この凹陥部44と突出部32とが延出部28を軸直角方向に挟み込んでいる。
【0037】
本実施形態では、ソケット金具34の内周面に且つかしめ位置,P,とPとの間、更にかしめ位置PとPとの間の位置において径方向内方に突出する押え部40が一体的に設けられている。
図2中dはかしめ位置PとP及びPとPとの間隔を表しており、またdは押え部40の軸方向寸法を、dは押え部40の軸直角方向寸法をそれぞれ表している。
この実施形態においてdは8mmであり、dは3mm、dは0.5mmである。
またソケット金具34のかしめ率は35%である。
【0038】
図3はインサートパイプ29を金属蛇腹管14のストレート形状部26内部に挿入する前の状態を表している。
この状態においてストレート形状部26の内径dに対し、インサートパイプ29の外径dは大径をなしており、ストレート形状部26の内径dとインサートパイプ29の外径dとの間にΔdの寸法差が生じている。
【0039】
この実施形態では、ストレート形状部26の内径よりも外径が大径をなすインサートパイプ29を、ストレート形状部26の拡径方向の塑性変形を伴ってその内部に圧入により挿入を行い、その後にソケット金具34を径方向にかしめ付けて全体の組付けを行っている。
尚本実施形態においてdは8.15mm,dは8.35mmで、寸法差Δdは0.1mmである。
【0040】
以上のような本実施形態では、ストレート形状部26の内周面がインサートパイプ29の外周面に強固に隙間なく密着した状態となる。
そのためホース10に内圧が加わった場合においても、ストレート形状部26の内周面とインサートパイプ29の外周面との間への内部流体の侵入は生じず、従ってその内部流体の侵入に伴う内圧の繰り返し作用によりストレート形状部26が所定部分で金属疲労を生じて軸方向に破断する現象を良好に抑制でき、ホース10の耐久寿命を向上させることができる。
【0041】
またソケット金具34のかしめを段かしめとし、かしめ位置とかしめ位置との間の位置でホース本体12を外周面から径方向内方に押圧する押え部40をソケット金具34の内周面に突出する形態で設けていることから、ソケット金具34のかしめ付けの際にホース本体12の外側ゴム層22が、ソケット金具34のかしめ位置とかしめ位置との間の部分の内側の凹部に逃げ込むように変形するのが抑制される。
その結果、ストレート形状部26の所定部分、詳しくはかしめ位置とかしめ位置との間の部分がしわが寄ったように径方向外方に膨らみ変形するのが抑制され、従ってこの膨らみ変形の部分に対して内圧が繰り返し作用することにより生ずる疲労破断を抑制でき、ホース10の耐久性をより一層向上させることができる。
【0042】
[実施例]
表1に示す構成の金属蛇腹管付複合ホース10を製造し、これを図5に示すU字状に曲げて、以下に示す条件で内圧の繰り返し加圧による耐久試験を実施した。その結果が表1に併せて示してある。
【0043】
<耐久試験条件>
曲げR(半径):70mm
温 度:130℃
圧 力:0⇔22.5MPa
周波数:30cpm
【0044】
【表1】

【0045】
尚、実施例1のものはソケット金具34の内周面に上記押え部40を設けた例であり、また実施例2は実施例1に対して押え部40を設けない場合の例である。
また比較例はインサートパイプとして外径が蛇腹金属管14におけるストレート形状部26の内径と等しい8.15mmのものを用い、更にソケット金具として押え部40を設けないものを用いた場合の例である。
【0046】
表1の結果から実施例1,実施例2は何れも目標とする繰返回数10万回以上でも破断を生じていないのに対し、比較例のものは繰返数3万回程度で破断に至っており、本実施例のものは耐久性が向上していることがわかる。
【0047】
上記の例は、ソケット金具34を段かしめした場合の例であるが、図6に示しているようにソケット金具34を平かしめ、即ちソケット金具34を所定の軸方向長に亘って全体的に径方向内方に縮径させる平かしめとなしても良い。
図6(B)中2点鎖線はかしめ前の形状を、実線はかしめ後の形状を表している。
【0048】
このようにソケット金具34を段かしめとせず、平かしめとした場合においても、ソケット金具34のかしめ付けの際に、金属蛇腹管14のストレート形状部26の特定部分が膨らみ変形するのを防止でき、ホース10の耐久寿命を効果的に向上させることができる。
【0049】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これがあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態の金属蛇腹管付複合ホースを示した斜視図である。
【図2】同実施形態の金属蛇腹管付複合ホースの要部断面図である。
【図3】同実施形態の金属蛇腹管付複合ホースをインサートパイプ挿入前の状態で示した図である。
【図4】同実施形態の金属蛇腹管付複合ホースをソケット金具のかしめ付け前の状態で示した図である。
【図5】耐久試験の際のホースの曲げ形状を示した図である。
【図6】本発明の他の実施形態の金属蛇腹管付複合ホースの図である。
【図7】従来のホース端部の締結構造の断面図である。
【図8】従来の金属蛇腹管付複合ホースの図である。
【図9】図8の金属蛇腹管付複合ホースの不具合の説明図である。
【符号の説明】
【0051】
10 金属蛇腹管付複合ホース
12 ホース本体
14 金属蛇腹管
22 外側ゴム層
26 ストレート形状部
28 延出部
29 インサートパイプ
34 ソケット金具
36 鍔状部
40 押え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に直状に延びる非蛇腹形状のストレート形状部を端部に有する金属蛇腹管を内層として、その外側に弾性層を有する外層を積層し且つ該ストレート形状部の端部を該外層から延出させて成るホース本体の、該ストレート形状部の内部に剛性のインサートパイプを挿入するとともに、該ホース本体に外嵌したスリーブ状のソケット金具を径方向にかしめ付け、該ソケット金具の径方向内向きの鍔状部の内周端と前記インサートパイプの外周面とで前記ストレート形状部の延出部を挟圧して、該インサートパイプに対する該ストレート形状部の固定と、該インサートパイプの外周面及び該ストレート形状部の内周面間のシールを行うようになした金属蛇腹管付複合ホースにおいて、
前記インサートパイプの外径を前記ストレート形状部の該インサートパイプ挿入前の内径よりも0.1mm以上大径として、該インサートパイプを該ストレート形状部の拡径方向の塑性変形を伴って該ストレート形状部の内部に圧入状態に挿入してあることを特徴とする金属蛇腹管付複合ホース。
【請求項2】
請求項1において、前記ソケット金具のかしめ付けが軸方向の複数のかしめ位置で部分かしめを行う段かしめであって、隣接するかしめ位置とかしめ位置との間の位置で前記ホース本体を外周面から径方向内方に押圧する押え部が径方向内方に突出する形態で前記ソケット金具の内周面に設けてあることを特徴とする金属蛇腹管付複合ホース。
【請求項3】
請求項1において、前記かしめ付けが、前記ソケット金具を所定長全体に亘って径方向内方に縮径させる平かしめであることを特徴とする金属蛇腹管付複合ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−255675(P2007−255675A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84330(P2006−84330)
【出願日】平成18年3月25日(2006.3.25)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】