説明

金属製バイポーラプレート用接着剤結合部

【課題】 接着剤結合を改善した燃料電池用導電性エレメント(例えばバイポーラプレート)(56)に関する。
【解決手段】 導電性エレメントは、一般的には、互いに向き合った表面を各々有する第1及び第2の導電性シート(58、60)を含む。互いに向き合った表面には、腐蝕保護を提供する導電性プライマーコーティング(110)が被せてある。このコーティングは、第1及び第2のシートが互いに接触する領域で前記第1及び第2のシートの夫々に対する接触抵抗が低い。コーティングを施した第1及び第2の表面は、前記シートのコーティングを施した前記第1及び第2の表面を接触領域で接着する導電性接着剤(112)によって互いに接合される。更に、本発明は、導電性エレメントにこのような改良された結合部を形成するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPEM燃料電池に関し、更に詳細には金属製セパレータープレート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車及び他の用途の電源として燃料電池が提案されてきた。一つの周知の燃料電池はPEM(即ち陽子交換膜)燃料電池であり、これは、薄い中実のポリマー膜電極を含むいわゆる「膜−電極アッセンブリ」を含む。ポリマー膜電極は、その一方の面にアノードを有し、反対側の面にカソードを有する。アノード及びカソードは、代表的には、微細なカーボン粒子を含み、非常に微細な触媒粒子がカーボン粒子の内面及び外面に支持されており、陽子伝導材料が触媒粒子及びカーボン粒子と混合してある。
【0003】
膜−電極アッセンブリは、アノード及びカソード用の電流コレクタとして役立つ一対の導電性接触エレメント間に挟んである。これらの接触エレメントには、燃料電池のガス状反応体(即ちH及び酸素/O)をアノード及びカソードの夫々の表面に亘って分配するための適当なチャンネル及び開口部が設けられていてもよい。
【0004】
バイポーラ燃料電池は、電気的に直列に互いに積み重ねられており且つバイポーラプレート又はセパレータープレート又は隔膜として周知の不透過性導電性接触エレメントによって互いから分離された複数の膜−電極アッセンブリを含む。セパレータープレート又はバイポーラプレートは、一方のセルのアノードと向き合った作用面及びスタックの次の隣接したセルのカソードと向き合った作用面の二つの作用面を有し、各バイポーラプレートは、電流を隣接したセル間で電気的に伝達する。スタックの端部にある接触エレメントは、端プレート、ターミナルプレート、又はコレクタプレートと呼ばれる。これらのターミナルコレクタは、ターミナルバイポーラプレートとターミナルコレクタプレートとの間に挟まれた導電性エレメントと接触する。導電性エレメントは、二つの隣接したセル間で導電性セパレーターエレメントとして役立ち、代表的には、その両外面に反応体ガス流れ場を有し、一方のセルのアノードとスタックの次の隣接したセルのカソードとの間に電流を流し、スタックから熱を除去するためにクーラントを流す内部通路を備えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PEM燃料電池環境は非常に腐食性であり、従って、その組み立てに使用されるバイポーラプレート及び材料は耐蝕性及び導電性の両方を備えていなければならない。バイポーラプレートは、一般的には二つの別々の導電性シートから製造され、導電性金属又は複合材料で形成されていてもよい。これらの個々のプレートは、接合部で互いに接合しなければならず、接合部は燃料電池の過酷な条件に耐えると同時に電圧損失を低減するために高い導電性を提供し、重量効率を向上するために重量が低く、長期に亘る作動効率のために丈夫でなければならない。燃料電池の独立した構成要素を含む導電性エレメントの結合を最適化し、効率及び対費用効果をできるだけ高める必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1表面を有する導電性第1シートを含む燃料電池用導電性エレメントを提供する。第1表面は、導電性第2シートの第2表面と向き合っている。第1及び第2の表面には、腐蝕保護及び第1及び第2のシートの夫々の前後のターゲット接触即ち界面抵抗を提供する導電性プライマーコーティングが被せてある。コーティングを施した第1及び第2の表面は、一つ又はそれ以上の接触領域のところで導電性接着剤によって互いに接合される。導電性接着剤は、プライマーとともに、目標ボンド部抵抗を提供する。ボンド部抵抗という用語は、界面接触抵抗にバルク接着剤抵抗を加えた抵抗に関する。本発明のボンド部抵抗は、所与の圧縮圧力で、プライマーなしの接着剤の比較的ボンド部抵抗よりもかなり低い。更に、本発明の接触抵抗及びボンド部抵抗は、上述の比較的ボンド部抵抗で得られるよりもかなり長時間に亘って維持される。
【0007】
本発明の別の好ましい実施例は、PEM燃料電池用導電性接触エレメントに関する。このエレメントは、導電性接着剤プライマーコーティングを被せた第1接触面を持つ第1シート、及び導電性接着剤プライマーコーティングを被せた第2接触面を持つ第2シートを有する。一つ又はそれ以上の結合領域が第1接触面と第2接触面とを接合する。結合領域の電気抵抗は、燃料電池作動状態での500時間の作動後に5mΩcm2 以下である。
【0008】
本発明の好ましい実施例の別の態様では、導電性接触エレメントは、導電性接着剤プライマーコーティングを被せた第1接触面を持つ第1シート、及び導電性接着剤プライマーコーティングを被せた第2接触面を持つ第2シートを有する。導電性接着剤が第1接触面と第2接触面との間に電気的接触領域に配置されている。導電性接着剤プライマーコーティングは、グラファイト、カーボンブラック、及びポリマーバインダーを含み、母材中に存在するグラファイト及びカーボンの組み合わせ総重量は約10重量%以下である。
【0009】
本発明は、更に、複数の燃料電池、及び燃料電池のアノードとカソードとの間に挟まれた一つの導電性エレメントを含む燃料電池スタックに関する。燃料電池スタックの導電性エレメントは、アノードと向き合った表面及び第1熱交換面を持つ導電性第1シート及びカソードと向き合った表面及び第2熱交換面を持つ導電性第2シートを含み、第1及び第2の熱交換面には、複数の導電性第1粒子が耐蝕性ポリマー中に分散されたプライマーコーティングが施してある。第1及び第2のの熱交換面は、液体クーラントを受け入れるようになったクーラント流れ通路をその間に画成し、複数の場所で導電性接着剤を介して互いに電気的に連結されるように互いに向き合っている。導電性で熱伝導性の接着剤は、接着性を持つポリマー中に分散された複数の導電性第2粒子を含む。プライマーコーティング及び導電性で熱伝導性の接着剤が、一緒になって、第1及び第2のシート間に導電性で熱伝導性の経路を画成する。この導電経路の前後の電気抵抗及び熱抵抗は十分に低く、アノード及びカソードが発生した電流は、この経路から、クーラント及び膜電極アッセンブリ(MEA)の過熱を阻止するのに十分な量で伝達される。
【0010】
本発明の別の好ましい実施例では、燃料電池の導電性エレメントの結合の丈夫さを向上する方法が提供される。この方法は、第1シートの第1表面及び第2シートの第2表面を導電性接着剤プライマーでコーティングする工程を含む。コーティングを施した第1及び第2の表面間に導電性接着剤が配置され、コーティングを施した第1及び第2の表面を互いに接合する。接着剤は、第1及び第2の表面に適用した接着剤プライマーとの密封結合を維持するように選択される。
【0011】
本発明のこの他の適用分野は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明及び特定の例は、本発明の好ましい実施例を示すけれども、単に例示を目的としたものであって、本発明の範囲を限定しようとするものではないということは理解されるべきである。
【0012】
本発明は、詳細な説明及び添付図面から更に完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
好ましい実施例の以下の説明は単なる例示であって、本発明、その適用及び使用を限定しようとするものではない。本発明は、接着剤結合性を改善した燃料電池用導電性エレメント(例えばバイポーラプレート)に関する。導電性エレメントは、一般的には、第1及び第2の導電性シートを有し、これらのシートの各々は、互いに向き合った表面を有する。互いに向き合ったこれらの表面は、腐蝕保護体を提供し且つ第1及び第2のシートが互いに接触した領域で第1及び第2のシートの夫々に対して低い接触抵抗を提供する導電性プライマーコーティングが被せてある。コーティングを施した第1及び第2の表面は、導電性接着剤で互いに接合される。導電性接着剤は、コーティングを施したシートの第1及び第2の表面を接触領域のところで接着する。更に、本発明は、改良されたこのような結合部を導電性エレメントに形成する方法に関する。最初に、本発明を良好に理解するため、例示の燃料電池スタックを説明する。
【0014】
本発明を更に良く理解するため、本発明を使用できる例示の燃料電池を図1に示す。この図には、二つの個々の陽子交換膜(PEM)燃料電池が示してあり、これらの燃料電池は、導電性液冷式バイポーラセパレータープレート導電エレメント8によって互いから分離された一対の膜電極アッセンブリ(MEA)4、6を持つスタックを形成するように連結されている。スタック内で直列に連結されていない個々の燃料電池は、電気的に活性の一つの側を持つセパレータープレート8を有する。スタックでは、好ましいバイポーラセパレータープレート8は、代表的には、電気的に活性の二つの側部20、21をスタック内に有し、これらの活性側部20、21の夫々が逆の電荷の別々のMEA4、6に面している。これらのMEAは分離されており、従って、いわゆる「バイポーラ」プレートである。本明細書中に説明するように、燃料電池スタックは、導電性バイポーラプレートを持つものとして説明するが、本明細書は、単一の燃料電池しか含まないスタックにも等しく適用できる。
【0015】
MEA4、6及びバイポーラプレート8をステンレス鋼製のクランプターミナルプレート10、12及び端部接触流体分配エレメント14、16の間で一緒に積み重ねる。端部流体分配エレメント14、16並びにバイポーラプレート8の両作用面即ち側部20、21には、燃料及び酸化体ガス(即ちH及びO)をMEA4、6に分配するため、作用面18、19、20、21、22、及び23に設けられた溝又はチャンネルと隣接した複数のランドが設けられている。不導性ガスケット即ちシール26、28、30、32、33、及び35は、燃料電池スタックの幾つかの構成要素間にシール及び電気絶縁を提供する。ガス透過性導電性拡散媒体34、36、38、40がMEA4、6の電極面に押し付けられる。追加の導電性媒体層43、45が端部接触流体分配エレメント14、16とターミナルコレクタプレート10、12との間に配置されており、通常の作動条件中にスタックを圧縮したとき、その間に導電経路を提供する。端部接触流体分配エレメント14、16は、拡散媒体34、43及び40、45に夫々押し付けられる。
【0016】
酸素は、適当な供給配管42を介して貯蔵タンク46から燃料電池スタックのカソード側に供給されるのに対し、水素は、適当な供給配管44を介して貯蔵タンク48から燃料電池のアノード側に供給される。別の態様では、空気を周囲からカソード側に供給し、水素をメタノール又はガソリンの改質器等からアノード側に供給してもよい。MEAのH側及びO/空気側の両方の排気配管41もまた設けられている。クーラントを貯蔵領域52からバイポーラプレート8及び端プレート14、16を通して循環し、出口配管54から出す追加の配管50が設けられている。
【0017】
本発明は、図2に示す液冷式バイポーラプレート56等の燃料電池の導電性エレメントに関する。このエレメントは、PEM燃料電池スタックの隣接したセルを分離し、スタックの隣接したセル間で電流を伝達し、スタックを冷却する。バイポーラプレート56は、金属製第1外シート58及び金属製第2外シート60を含む。これらのシート56、60は金属、合金、又は複合材料から形成されていてもよく、好ましくは導電性である。適当な金属、合金、又は複合材料は、燃料電池内の導電性エレメントのシートとして機能する上で十分な耐久性及び剛性を備えている。プレート本体の材料を選択する上で配慮される追加の設計上の特性には、ガス透過性、導電性、密度、熱伝導性、耐蝕性、型押し性、熱及びパターンの安定性、機械加工性、価格、及び入手容易性が含まれる。利用可能な金属及び合金には、チタニウム、プラチナ、ステンレス鋼、ニッケルを基材とした合金、及びこれらの組み合わせが含まれる。複合材料は、ポリマー母材中にグラファイト、グラファイトホイル、導電性粒子(例えばグラファイト粉体)を含んでいてもよく、カーボンファイバペーパー及びポリマー積層体、金属コアを持つポリマープレート、導電体でコーティングしたポリマープレート、及びこれらの組み合わせを含む。
【0018】
金属製外シート58、60は、できるだけ薄く(例えば、約0.005−0.5mm即ち0.002インチ乃至0.02インチ)作られる。これらのシート58、60は、機械加工、型成形、切断、曲げ、型押し、フォトリソグラフィックマスク等を通した光エッチング、又は任意の他の適当な設計、製造プロセスを含む、当該技術分野で周知の任意の方法によって形成されてもよい。シート102、104は、平らなシート及び一連の外流体流れチャンネルを持つ追加のシートを含む積層構造を備えていてもよい。
【0019】
外シート58は、膜−電極アッセンブリ(図示せず)のアノードと向き合った第1作用面59をその外側に有する。この第1作用面には、燃料電池の反応体ガス(即ちH及びO)がバイポーラプレートの一方の側68から他方の側70まで曲がりくねった経路を通って流れる「流れ場」として周知の複数の溝66を間に画成する複数のランド64を提供するように形成されている。燃料電池を完全に組み立てたとき、ランド64がカーボン/グラファイトペーパー(図1の36又は38)に押し付けられ、MEA(図1の4又は6)に押し付けられる。図面を簡略化するため、図2には、ランド64及び溝66の二つのアレイしか示してない。実際には、ランド及び溝64、66は、金属シート58、60の外面全体に亘って設けられており、カーボン/グラファイトペーパーと係合する。反応体ガスは、燃料電池の一方の側68に沿って設けられたヘッダ即ちマニホールドから溝66に供給され、燃料電池の反対側70と隣接して設けられた別のヘッダ/マニホールドを介して溝66を出る。
【0020】
図3に最もよく示すように、シート58の下側には複数の押縁76が設けられており、燃料電池の作動中にクーラントが通過する複数のチャンネル78が押縁間に画成される。図3に示すように、クーラントチャンネル78が各ランド64の下にあるのに対し、反応体ガス溝66は各押縁76の下にある。別の態様では、シート58が平らであり、流れ場が別の材料シートに形成されていてもよい。シート60はシート58と同様である。これに関し、クーラントがバイポーラプレートの一方の側69から他方の側71まで流れる複数のチャンネル93を間に画成する複数の押縁80が示してある。第1及び第2のシート58、60の熱交換(クーラント側)面90、92は互いに向き合っており、液体クーラントを受け入れるようになったクーラント流れ通路93をその間に画成する。第1及び第2のシートは、複数の接合部即ち接触領域で互いに電気的に接続される。シート58と同様に、及び図3に最もよく示すように、シート60の外側には、別のMEAのカソードに面する作用面63が設けられている。この作用面は、反応体ガスが通過する複数の溝86を画成する複数のランド84を有する。
【0021】
クーラントは、シート58、60の夫々が形成するチャンネル93の間を流れ、これにより層流境界層を壊し、乱流を発生し、外シート58、60の夫々の内側面90、92との熱交換を高める。当業者には理解されるように、本発明の電流コレクタは、例えば流れ場の形体、流れ送出マニホールドの数及び配置、及びクーラント循環システム等において、上文中に説明したものと形態が異なっていてもよいが、電流コレクタの表面及び本体を通して電流を流す機能は、全ての設計の間で同様に機能する。本発明の好ましい実施例では、丈夫さが優れた導電経路が接触領域100を通して形成される。接触領域100の前後の電気抵抗が高過ぎる場合には、接触領域100でかなりの量の熱が発生し、これがクーラントに伝達される。導電経路の前後の電気抵抗は、クーラントが過熱しないようにするのに十分低いのが好ましい。更に、導電経路の前後の電気抵抗が高いと、スタックの電圧(電力)損が生じる。
【0022】
図4は図3の一部の拡大図であり、第1シート58の押縁76及び第2シート60の押縁80が接触領域100で互いに連結され、セパレーターエレメント56の構造上の一体性を確保することを示す。金属製第1シート58は、接触領域100のところで、接触領域100の複数の導電性接合部を介して直接的(即ち中間スペーサシートなしで)に金属製第2シート60に接合される。接触領域100は、バイポーラプレートエレメントが電流コレクタとして機能する上で必要な導電経路を提供する。接触領域100は、多くの場合、「ボンド部」又は「ボンドライン」と呼ばれる。
【0023】
第1及び第2のプレート58、60を接触領域100のところで取り付ける従来の方法では、金属の鑞付け及び溶接(金属シートの場合)又は導電性接着剤(金属及び複合材料のシートの両方について)が用いられる。シート58、60を互いに連結するのに接着剤を使用する場合、ボンド部即ち接触領域100の前後の電気抵抗は、製造後直ぐに計測した場合には、所望の範囲内にある。しかしながら、長期間使用した後では、結合部が接触領域100のところで劣化してしまう場合がある。例えばポリマー接着剤と金属シートとの間の様々な材料間の熱伝導率の不一致、並びに燃料電池の過酷な環境に長期間曝されたことにより、ボンド部の劣化が生じ、劣化が進む。ボンド部の劣化は、長期間に亘る作動(即ち500時間以上の作動)後、金属シートと接着剤との接合部に沿って物理的に分離することにより、接触領域100の前後の接触(ボンド部)抵抗を許容不能なレベルまで大きくしてしまう。
【0024】
本発明は、更に、燃料電池内で互いに接合される任意の導電性エレメントに適用できる。第1及び第2のシート58、60は、バイポーラプレートアッセンブリ56で図4に示すように本発明に従って互いに直接的に接着されていてもよいが、第1及び第2のシート58、60は、別の態様では、クーラント流路93を分ける別個の中間セパレーター導電性シート101(図5参照)に接着されていてもよい。中間セパレーターシート101は、クーラントが小さなクーラント流路93間で移動できるように、有孔シートであってもよい。このような実施例では、セパレーターシート101は、本発明に従って、セパレーターシート101の接触面103を第1及び第2の導電性シート58、60の夫々に接着することによって処理される。セパレーターシート101は、クーラント流路93内に複数のクーラントチャンネル105を形成するように波形をなしていてもよく、又は例えば外シートを波形にすることによって複数のクーラント流れチャンネルが各々に形成された第1及び第2の外シートに接合された平らなシートであってもよい。
【0025】
外シート58、60の互いに接触する領域100は全て、クーラント通路93がシールされるように、好ましくはクーラント漏れが起こらないように液密の密封係合を維持し、隣接したセル間に低抵抗の導電部を提供するように、互いに接着される。密封係合の維持は、好ましくは500作動時間以上であり、最も好ましくは6000作動時間以上である。液密シールは、接触領域100のところに形成されるシールであり、流体及びガスがこのシールを通過しないようにするか或いは少なくとも流体及びガスの通過を妨げる。導電性接着剤は、更に、シートの凹凸によるシール58、60間の隙間を埋めるための導電性充填物として役立つ。本発明は、更に、スタックの端部に設けられた冷却及び電流収集を行う導電性ターミナルエレメント(例えば図1の14、16)に適用できる。
【0026】
本発明は、図4に示すように、第1シート58及び第2シート60の夫々の互いに向き合った表面90、92の両方に沿って接触領域100のところでこれらのシートに被せた導電性接着剤プライマー110を含む、燃料電池内の導電性エレメントを提供する。プライマー110が適用された第1及び第2の表面90、92の間に導電性接着剤112を配置し、接触領域100のところに形成された結合部の長期に亘る丈夫さを高め、500作動時間以上に亘って接触抵抗(ボンド部)を維持する。本発明の部分として、ボンド部の接着剤プライマー110及び接着剤112を通したシート58、60間の電気抵抗をできるだけ小さくするため、プライマー110が適用されるべき場所100で、詳細には接触領域100で、金属シートの表面90、92から全ての金属酸化物を除去するのが好ましい。非金属シート(例えば、ポリマー複合材料又はグラファイト)は酸化物の除去を必要としないが、サンド掛けや、成形中に形成されるポリマー分が多いシート表面の絶縁性フィルムを除去することが必要とされる。
【0027】
本発明の好ましい実施例の導電性接着剤プライマーコーティング110は、下側のシートに対する耐蝕性、高い熱伝導性、低い電気抵抗、及び接着剤ポリマーに関する適合性を提供する。接着剤プライマー110は、ポリマー樹脂バインダー中に分散した複数の導電性粒子でできた母材を含む。導電性粒子は、金、プラチナ、銀、及びパラジウムを含む貴金属並びにニッケル、錫、グラファイト、カーボンブラック、及びこれらの混合物を含んでいてもよい。接着剤プライマーコーティング110は、選択された導電性粒子の夫々の相対的導電性に応じて、導電性粒子を約5重量%乃至約75重量%含んでいてもよい。
【0028】
本発明の好ましい実施例によれば、導電性粒子はグラファイト、カーボンブラック、及びコーティングの所望の総カーボン含有量を提供する量のバインダーポリマーを含む。好ましい実施例では、総カーボン量は75重量%以下であり、更に詳細には約10重量%以下である。好ましい接着剤バインダー配合剤の一例が、2002年11月11日に本発明と同じ譲受人が出願した米国特許出願第10/292,407号に記載されている。同特許出願に触れたことにより、この特許出願に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。コーティングの総カーボン量は、主に、コーティング中のグラファイト及びカーボンブラックの夫々の量による。一実施例では、コーティングは、グラファイト及びカーボンブラックを2:1の重量比で含有する。特にコーティング中のグラファイトの量を参照すると、一実施例では、コーティングはグラファイトを約3.3重量%乃至約50重量%で含有してもよい。特にコーティング中のカーボンブラックの量を参照すると、コーティングはカーボンブラックを約1.7重量%乃至約20重量%で含有してもよい。
【0029】
様々な種類のグラファイトが、特に、プライマーコーティング110で使用する上で好ましい。グラファイトは、膨張グラファイト、グラファイト粉体、及びグラファイトフレークから選択してもよい。グラファイトは、粒径が約5μm乃至約90μmであることを特徴とする。グラファイトは、嵩密度が低くてもよく、嵩密度は、一般的には、1.6g/cm3 であり、更に詳細には約0.3g/cm3 以下である。固有密度は、1.4g/cm3 乃至約2.2g/cm3 の範囲内にあってもよい。グラファイトは純度が比較的高く汚染物を実質的に含まない。上述の特徴のうちの任意の特徴を持つ、本発明によるコーティングで使用するための膨張グラファイトは、任意の適当な方法で製造できる。一実施例では、シグリ・グレート・レイクス社からシグリフレックス(Sigriflex)の商標で入手できる適当なグラファイト材料を使用してもよい。
【0030】
更に、コーティングで使用する上で様々な種類のカーボンブラックが適している。単なる例として及び限定でなく、カーボンブラックは、アセチレン黒、ケジェン(ケジェン(Ketjen)は登録商標である)黒、バルカン黒、リーガル(Regal)は登録商標である)、ファーネス黒、黒パール、及びこれらの組み合わせから選択されてもよい。カーボンブラックは、粒径が約0.05μm乃至約0.2μmであることを特徴とする。カーボンブラックは、一般的には、不純物を幾分含む。
【0031】
グラファイト及びカーボンブラックの量を変えることに加え、接着剤プライマーコーティング110は、バインダーポリマーの量が異なっていてもよい。バインダーの量は、コーティングで使用された導電性粒子の量に応じて変化する。一般的には、接着性、耐蝕性、及び適用における流れを高めるためには、バインダー含有量が高いのが望ましい。一実施例では、接着剤プライマーコーティング110は、母材中にバインダーを約1重量%乃至95重量%、更に詳細には約90重量%含有する。コーティングで使用する上で多くの種類のバインダーが適している。一実施例では、バインダーはポリマー樹脂を含む。適当なポリマー樹脂には、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリビニルエステル、及びこれらの組み合わせが含まれる。これらのバインダーに対する適当な顔料には、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、キシレン、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これに限定されない。
【0032】
本発明では、様々な異なるコーティング組成物が考えられる。一実施例では、プライマーコーティングは、ゲルの形態である。詳細には、一つの好ましい実施例では、コーティングは、粒径が約5μm乃至約90μmの膨張グラファイトを約6.7重量%、粒径が約0.05μm乃至約0.2μmのアセチレン黒を約3.3重量%、ポリアミドイミドバインダーを約90重量%含む。
【0033】
接着剤プライマーコーティング110で使用する上で多くの種類のバインダーが適している。一つの好ましい実施例では、バインダーはポリマー樹脂を含む。適当なポリマー樹脂には、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリビニルエステル、及びこれらの組み合わせが含まれる。バインダー用の適当な顔料には、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、キシレン、及びこれらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。
【0034】
更に、コーティング110は、金属汚染物が200ppm以下であるように製造されてもよい。一実施例では、コーティングは170kPa乃至1400kPa(25psi乃至200psi)の接触圧力で約5mΩcm2 乃至約60mΩcm2 (1平方センチ当たりミリオーム)の接触抵抗を示す。最も好ましい実施例では、プライマーコーティング110は、約1400kPa(200psi)又はそれ以上の圧縮圧力で約10mΩcm2 以下の接触抵抗を示す。プライマーコーティング110の全抵抗は、シート58、60の前後の、接触領域100又はボンド部を通る導電性を高めるため、約1400kPa(200psi)を越える圧縮圧力で約20mΩcm2 以下である。
【0035】
プライマーコーティング100の母材の導電性粒子としてグラファイト及びカーボンブラックを使用する好ましい実施例では、膨張グラファイトとカーボンブラックとの間に相乗作用が存在する。総カーボン含有量が低い場合には、接触抵抗は20mΩcm2 と低いままである。「相乗作用」は、接触抵抗を、グラファイト又はカーボンブラックのいずれかを同じ総カーボン含有量で単独で使用する場合よりも低くするグラファイト及びカーボンブラックの組み合わせに関する。かくして、好ましい実施例では、プライマーコーティング110はグラファイト及びカーボンブラックの両方を含む。しかしながら、比較的低い接触抵抗を示す、プライマーコーティング110の母材での導電性粒子とバインダーとの他の組み合わせもまた、本発明に適している。
【0036】
プライマーコーティング110は、本発明によれば、当業者に周知の従来の手段によって導電性エレメントのシートに被せられ又はこれをコーティングするように調製されていてもよい。このような調製の一例は、導電性粒子及びバインダーを互いに攪拌する工程を含む。攪拌は、好ましくは、約1時間乃至20時間に亘って、及び好ましくは約2時間又はそれ以下に亘って行われる。プライマーコーティング110の攪拌時間等の攪拌条件は、コーティングで使用された材料及びコーティング110の所望の特性に応じて変化させることができる。
【0037】
調製後、導電性第1シート58の表面90に接着剤プライマーコーティング110を適用し、これを向き合った導電性シート60の他方の表面92に連結する。特定の導電性シート配合物(例えば金属)により、本発明による接着剤プライマーコーティング110の接着性を良好にするため、導電性シート58、60の表面90、92のクリーニングを行い(例えば研磨及び/又は化学的エッチングによって)、接着剤プライマーコーティング110が適用されるべき領域から全ての表面酸化物及び他の汚染物を除去する。かくして、金属製の導電性シート58、60の場合、(1)メチル−エチル−ケトンによって油脂分を除去し、及び(2)(a)40%硝酸、(b)2%乃至5%の弗化水素酸、(c)1.057g/・(4g/ガロン)の弗化水素アンモニウム、及び水を含む溶液中で2分乃至5分に亘って酸洗いすることによって表面90、92を化学的にクリーニングすることができる。別の態様では、導電性シート58、60の表面90、92は、100グリット乃至220グリットの研磨剤による表面研磨後にアセトンによるクリーニング及び油脂分除去を行うことによって、又は金属クリーニング電解質が存在する状態で基材を陰極クリーニングすることによって物理的にクリーニングしてもよい。
【0038】
図4に示す実施例では、導電性接着剤プライマー110を第1シート58のクーラント側第1接触面90及び第2シート60のクーラント側第2接触面92の両方に適用し、かくして、コーティング110を適用する前にこれらの表面90、92の両方のクリーニングを行う。導電性接着剤プライマー110は、腐蝕保護を提供するために導電性シート58、60の表面90、92全体をコーティングするのに使用されてもよく、又は別の態様では、電気的及び物理的接触点である別個の領域(即ち接触領域100)に適用されてもよい。接着剤プライマー110は、積層(熱間ローリング)、ブラシ、スプレー、塗り拡げ(ドクターブレード等による)、コイルコーティング、シルクスクリーン、粉体コーティング、及びスクリーン印刷等の任意の適当な方法によって適用されてもよい。一実施例では、接着剤プライマーコーティング110を導電性シート58、60にスプレーし、多数のコートを形成する。これらのコートは、導電性シート58、60の表面90、92に沿って導電性プライマーコーティング110を形成する。接着剤プライマー110を接着剤112と接触する別個の領域100の表面に適用する場合、接着剤プライマー110を接触領域100だけに適用できるように、穴が形成されたマスクを表面90、92に適用してもよい。
【0039】
本発明によれば、導電性シート58、60の表面90、92に被せられた接着剤プライマー110は、硬化して母材内のポリマー樹脂を架橋する。このような硬化は、一実施例では、接着剤プライマー110が接着剤112と接触し、組み立てられる前に完全に硬化させることによって行ってもよい。別の好ましい実施例では、ポリマー樹脂は2段階で硬化してもよく、先ず最初に予備硬化を行う。接着剤112との接触後(両側の導電性シートは接着剤プライマー110のコーティングを備えている)、接着剤プライマー110が部分的に硬化したアッセンブリ全体を一緒に(接着剤112を含む)硬化させて硬化の最終段階を行う。接着剤プライマー110コーティングの硬化が接着剤112との接触前に行われるか或いは段階的硬化方法が接着剤プライマー110バインダー樹脂及び接着剤112自体の性質で決まるのかのいずれかを以下に更に詳細に説明する。二段階硬化プロセスの一つの特徴的な利点は、大量生産プロセスに適合できるということであり、この場合、接着剤プライマー110をコイルコーティングプロセスで適用し、部分的に硬化し、次いで続くプロセスを行う。反応体流れ場(例えば64、66、84、86)は、材料特性に応じて、接着剤プライマー110の適用前又は後のいずれかで導電性シート58、60に形成できる。
【0040】
一実施例では、接着剤プライマー110の硬化を、続いて行われる組み立て又は加工に先立って行い、コーティングが施されたシート58、60を約150℃乃至約300℃の温度で、更に詳細には約260℃の温度で硬化する。コーティングが施されたプレート本体58、60を約10分間乃至約30分間に亘って、更に詳細には約15分間に亘って硬化する。
【0041】
別の好ましい実施例では、部分的に硬化させた接着剤プライマー110を導電性第1シート58に被せた後、部分的に硬化させた接着剤プライマー110を備えた別の反対側の導電性シート60と、これらの間に接着剤112を挟んで組み立てる。次いで、接着剤プライマー110が接着剤ポリマー112と接触した組み立てた導電性シート58、60を最終的に硬化させる。このような「二段階」硬化プロセスでは、導電性シート58、60の材料及び接着剤ポリマー112と適合性であり且つこれらの材料に付着する二段階ポリマー樹脂を選択する。このような二段階硬化樹脂は当該技術分野で周知であり、バインダーの部分を形成するため、接着剤プライマー110配合物に加えられる。かくして、接着剤プライマーコーティング110は、比較的低温で加熱することによって「段階A」レベル(即ち部分硬化レベル)まで硬化させ、取り扱い及び加工を行う上での強度をコーティング110に与えることができる。こうした硬化温度は、代表的には、約70℃乃至110℃である。次いで、部分的に硬化させた接着剤プライマーコーティング110を接着剤に実質的に接合する。接着剤プライマー110を被せた導電性シート表面90、92を適当な位置に置き、ここで接着剤112を適用する。接着剤プライマー110及び接着剤112を互いに連結できる。特に好ましい実施例では、接着剤プライマー110の接着剤112との合一を容易にするため、低い熱(即ち60℃乃至90℃)を加えることを使用できる。
【0042】
予め選択された適当な接触領域100で接着剤プライマー110を接着剤112と接触させた後、熱、及び随意であるが圧力を加え、接着剤プライマー110母材内のバインダー樹脂を「段階B」レベル(即ち完全硬化レベル)まで硬化させる。接着剤プライマー110バインダー樹脂の量は、導電性シート58、60の表面90、92、及び接着剤112の両方の間に強固な界面を形成する上で十分であるのが好ましい。第2段階Bレベル硬化についての好ましい温度範囲は、約100℃乃至約300℃である。かくして、二段階プロセスでは、温度が比較的高い第2段階を適用したときに接着剤112を完全に硬化させることができ、又は第2段階の温度範囲内で部分的にだけ硬化させてもよく、かくして所望のガラス転移温度を維持する。このような硬化は、当業者には理解されるように、選択された実際のポリマーで決まり、硬化システム及びこれらのポリマーの個々の性質に基づいて変化してもよい。更に、変形例では、接着剤ポリマー112及び接着剤プライマー110の両方が二段階プロセスで硬化するようにこれらの両方に二段階硬化樹脂が加えられると考えられる。
【0043】
本発明によれば、接着剤プライマーコーティング110を塗布した導電性第1シートと接着剤プライマーコーティング110を塗布した導電性第2シートとの間に接着剤112が適用される。接着剤112は、本発明によれば導電性であり、燃料電池内での第1シートの第2シートに対する結合性を高める所定の粘着性又は接着性を有する。本発明による好ましい接着剤112は、接着剤ポリマー112及びこのポリマー中に分配された複数の導電性粒子を含むポリマー母材である。導電性接着剤は当該技術分野で周知であり、商業的に入手できる。かくして、接着剤ポリマー112は、高い電位に耐えることができ、第1シートを第2シートに連結することによって形成されるクーラント流れチャンネル内を流れるクーラントに露呈されることに耐えることができるように選択されなければならない。
【0044】
接着剤112は、シート自体と同様に、シート58と60との間を流れるクーラントで実質的に不溶性であり、接着剤中の導電性粒子は溶解せず金属イオンを放出することがない。金属イオンは、、溶解しない場合には実質的に誘電性(即ち抵抗が約200000Ωcm以上)のクーラントを過度に導電性にしてしまう。クーラントが導電性になると、迷走電流がスタックを通ってクーラントを介して流れ、短絡、電蝕、及びクーラントの電気分解を生じる。導電性粒子は、これらの粒子がクーラントに経時的に溶融することによってクーラントの抵抗を約200000Ωcm以下にすることがない場合には、実質的に不溶性であると考えられる。従って、クーラントとして水を使用した場合、銅、アルミニウム、錫、亜鉛、及び鉛を回避しなければならず、又は接着剤112樹脂に完全に埋封しなければならない。特に好ましい実施例では、接着剤112は、水素及び緩酸(pHが3乃至4の弗化水素)に対する抵抗が高く、100℃の脱イオン水、エチレン、及びメタノール等の溶剤に対して不活性(即ちイオンを放出しない)である。かくして、導電性粒子及び接着剤ポリマー112の選択は、燃料電池内で使用されるクーラントとの適合性に応じて行われる。
【0045】
本発明の好ましい実施例によれば、導電性接着剤112は、粒径が約10μm乃至約50μmで変化する導電性充填体粒子を約5重量%乃至約30重量%含む。これらの導電性粒子は、金、プラチナ、パラジウム、銀を含む貴金属、並びにニッケル、錫、グラファイト、カーボンブラック、及びこれらの混合物からなる群から選択される。接着剤112の電気的接触抵抗は、配合物の接着性を最大にするために粒子の実際の量を最少にしながら、約20mΩcm2 以下に維持されるのが好ましい。かくして、好ましい接着剤母材112配合物は、母材中に導電性粒子を約5重量%乃至約15重量%含有する。接着剤ポリマー母材112中のカーボンブラック導電性充填体粒子のグラファイトは、比較的高価な貴金属粒子よりも好ましい。
【0046】
本発明による好ましい接着剤ポリマー112は、エラストマー、感圧接着剤、熱硬化性接着剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される。上文中に論じたように、本発明による好ましい接着剤ポリマー112は、第1及び第2の導電性シートを互いに接着し連結するため、必須の粘着性を有する。接着剤ポリマー112は、ポリアミドイミド、エポキシ、フェノール樹脂、及びアクリレート等のガラス転移温度が高い接着剤充填を含んでもよい。
【0047】
本発明による特に好ましいポリマー接着剤112は、ガラス転移温度(Tg)が低く、約−20℃以下のTgを有する。接着剤ポリマー110のガラス転移温度が低いポリマーとの適合性により、接触領域100に亘って強固な結合が提供され、更に、連結された材料の収縮及び膨張による熱サイクル中の可撓性が提供されるということがわかった。このようなボンド部の丈夫さにより、結合部は、劣化を伴わずに即ち接触抵抗を許容不能なレベルまで増大することなく、何時間にも及ぶ燃料電池の作動及び温度変動に耐える。本発明によるガラス転移温度が低い接着剤112を使用することにより、燃料電池システムの寿命が延び、作動効率が維持される。本発明についての適当な低ガラス転移温度は、エチレン、プロピレン、ブチレン、エチレンプロピレン二量体(EPDM)、エチレンプロピレンモノマー(EPM)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、イソブチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ナイトライドゴム、エポキシ、ウレタン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ポリメチルメタクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択された接着剤ポリマー112を含む。
【0048】
導電性接着剤112は、接着剤プライマー110でコーティングしたシートの表面にブラシ付け、軽く塗り付け、スプレー、スクリーン印刷、シルクスクリーン、又はロール付けされてもよいが、シート間の接触が生じる場所100に限って接着剤112を付けるのが好ましい。特に好ましい実施例では、接着剤112は、第1シートの第1接触面及び第2シートの第2接触面の両方に付けてもよい。変形例では、接着剤112をシート58、60のいずれかの一方の表面90又は92だけに付けてもよい。好ましい実施例では、先ず最初に、コーティングが施されたシート58、60にマスクを適用する。このマスクには、接触領域100又は接着が行われる場所に置かれる開口部が設けられている。次いで、マスクの開口部を通して接着剤112を適用する。導電性接着剤112は、約0.0254mm乃至約0.0508mm(約0.001インチ乃至約0.002インチ)の厚さまで適用される。シート58、60は、これらのシートに亘って均等な圧力を加える適当なジグで互いに挟まれる。特定の実施例では、接着剤112は感圧接着剤112であり、接触領域に沿って圧力を加えることによって接着剤プライマー110に十分に接着する。他の実施例では、接着剤ポリマー112は部分的に硬化してもよいし完全に硬化してもよい。本発明の特に好ましい実施例によれば、接着剤112自体に構造的粘着性を与えるため、接着剤112を部分的に硬化させる。部分的に又は完全に硬化させることにより、クーラント流れチャンネル93内を循環するクーラントによって接着剤112が侵蝕されたり洗い流されたりすることがないようにする。かくして、接着剤ポリマー112を硬化させることを必要とする実施例では、挟んだシート58、60を高温のプレスで圧力を加えながら加熱し、ポリマー母材材料(これは、接着剤プライマー110の硬化の第2段階と一致してもよい)を硬化させ、アッセンブリを形成する。正確な硬化温度及び時間は、接着剤ポリマー母材112材料の化学的組成に応じて変化する。
【0049】
本発明を例として更に詳細に説明する。本発明はこれらの例によって限定されないということは理解されるべきである。
例1
陰極クリーニングした二つのチタニウム金属シートに導電性接着剤プライマーコーティングを施す。コーティングは、カリフォルニア州ヴァレンシアのSGIポリカーボン社が製造しているEG15膨張グラファイト(グラファイト粒子の90%が70μm以下である)6.7重量%を、3.3重量%のアセチレンカーボンブラック(カボット社XC72Rという婦負賞のインサート会社が製造している)と、日本国のトウヨウボウ社から商業的に入手できるポリアミドイミド樹脂90重量%中で2時間に亘って混合することによって調製される。結果的に得られたコーティングの総カーボン量は10重量%以下である。接着剤プライマーをチタニウムシートにスプレーし、260℃で15分間に亘って硬化する。
【0050】
アケソン(Acheson)EB−011A/EB−011B(二部)として商業的に入手できるガラス転移温度が高いエポキシポリマー樹脂95容量%、EG−15として商業的に入手できる膨張グラファイト5容量%、及びスプレーキャスティングを行うための溶剤としてのアセトン20容量%をミキサー内で60分間に亘って混合することによって導電性接着剤ポリマー母材を調製する。接着剤ポリマーを第1シートの接着剤プライマーコーティングにスプレーする。接着剤プライマーを備えた第1シートに接着剤ポリマーを被せ、接着剤プライマーコーティングを付けた第2シートと接触させる。アッセンブリを100℃のオーブンで1時間に亘って加熱し、接着剤ポリマーを硬化させる。
【0051】
例2
陰極クリーニングした二つの316Lステンレス鋼金属シートに導電性プライマー接着剤コーティングを施す。このコーティングは、例1に説明した接着剤プライマーコーティングと同様に調製される。接着剤プライマーを316Lシートにスプレーし、260℃で15分間に亘って硬化する。
【0052】
導電性接着剤ポリマー母材を例1と同様に形成する。接着剤ポリマーを第1シートの接着剤プライマーコーティングにスプレーする。接着剤プライマーを備えた第1シートに接着剤ポリマーを被せ、接着剤プライマーコーティングを付けた第2シートと接触させる。アッセンブリを100℃のオーブンで1時間に亘って加熱し、接着剤ポリマーを硬化させる。
【0053】
例3
陰極クリーニングした二つの316L金属シートに導電性プライマー接着剤コーティングを施す。このコーティングは、例1に説明した接着剤プライマーコーティングと同様に調製される。接着剤プライマーを316Lステンレス鋼シートにスプレーし、260℃で15分間に亘って硬化する。
【0054】
ヴァンチコアラルダイト(Vantico Araldite)CV5749(40CTg)として商業的に入手できるガラス転移温度が低いエポキシポリマー樹脂95容量%、EG−15として商業的に入手できる膨張グラファイト5容量%、及びスプレーキャスティングを行うための溶剤としてのアセトン20容量%をミキサー内で120分間に亘って混合することによって導電性接着剤ポリマー母材を調製する。
【0055】
接着剤ポリマーを第1シートの接着剤プライマーコーティングにスプレーする。接着剤プライマーを備えた第1シートに接着剤ポリマーを被せ、接着剤プライマーコーティングを付けた第2シートと接触させる。アッセンブリを100℃のオーブンで15分間に亘って加熱し、接着剤ポリマーを部分的に硬化する。
【0056】
本発明に従って調製した試料を従来の試料と比較し、ボンド部の一体性及び安定性を以下の表1で確認する。接着剤結合部に加わる応力をシミュレートするため、試料を90℃の水浴中で所定の持続時間に亘って圧縮力を加えない状態で試験する。燃料電池における代表的な状態には、90℃及び100%の相対湿度での圧縮荷重が1400kPa(200psi)の状態が含まれ、かくして圧縮力が接触領域100での一般的な「剥離」即ち接着剤結合部の劣化を補償する。シミュレートした状態に圧縮力が含まれていないと剥離状態が加速し、燃料電池の500作動時間乃至6000作動時間に亘る長期間の全体としての結合安定性を予測する。
【0057】
図6に示す装置で試料を試験する。接着剤プライマーでコーティングした表面の間に接着剤を挟んだ、導電性シートを含む導電性エレメントアッセンブリのボンド部の抵抗の計測値を図6に示すように計測する。試験装置は、金でコーティングしたプラテン202、及び第1及び第2の導電性活性炭ぺーパー媒体204、206を含むカーバー(carver)プレス200を有する。ぺーパー媒体は、夫々、試料208と金でコーティングしたプラテン202との間でプレスされる。直流電源によって加えられる1A/cm2 の電流を使用して6.45cm2 の表面領域を試験する。四点法を使用して抵抗を計測し、計測された電圧降下及び加えられた周知の電流、及び試料208の寸法から計算を行う。バルク抵抗を無視できる金属試料について、試料表面210、210の接着剤ボンド部の前後の電圧降下(接触抵抗及びバルク接着剤抵抗)を計測する。図6に示すように、試料208は、好ましくは、二つのシート210が互いに連結された導電性エレメント(例えばバイポーラプレート)を含む。ボンド部抵抗の結合値は、170kPa(25psi)、670kPa(100psi)、及び1400kPa(200psi)の圧力で加えられた増分力に関し、ボンド部の前後の電位としてmV単位で計測される。
【0058】
導電性カーボンぺーパー204、206の接触抵抗は、一般的に周知の値であり、金属プレート210だけの接触抵抗を得るため、計測値から差し引くことができるということに着目すべきである。試料の試験中、第1及び第2のカーボンぺーパー媒体204、206について1mm厚のトウレカーボンぺーパー(トウレ社からTGP−H−0.1Tとして商業的に入手できる)を使用した。しかしながら、多くの場合において、導電性ぺーパー204、206の接触抵抗は無視でき、接触抵抗値に加わったこのような小さな増分値をこれを差し引く必要はない。本明細書中で言及した値は、試料208の前後のバルク接触抵抗である。表1では、試料1は、本発明に従って例1に説明したように調製された導電性エレメントである。対照標準1は、従来の手段によって、即ち例1に開示した接着剤配合剤だけを使用して互いに接着された、プレートのいずれの表面にも接着剤プライマーが付けられていないバイポーラプレートである。わかるように、対照標準1は、最初、3.2mVで許容可能な抵抗値を有するが、90℃の水浴中で1日間に亘って浸漬しただけで、1400kPa(200psi)乃至170kPa(25psi)の加えられた圧力の範囲に亘って69mV乃至96mVの許容不能な高い抵抗レベルに達する。8日間に亘って浸漬した後の別の計測値は、ボンド部の前後の非常に高い抵抗を示す(1400kPa(200psi)乃至170kPa(25psi)で109mV乃至258mV)。これもまた、結合部の破損及び劣化による。これとは対照的に、試料1を8日間に亘って試験した。ここでは、抵抗値が比較的安定していることが示され、最大計測値が15.5mVである。これは、目標ボンド部抵抗(5mΩcm2 以下)以上であるが、比較的現実的な燃料電池条件(即ち、1400kPa乃至2800kPa(200psi乃至400psi)の圧縮荷重)で目標と合致するものと考えられる。更に、抵抗の計測値は、結合部が安定しており且つ無傷である場合には、加えられた圧力とは無関係であるということに着目すべきである。接着剤結合部の剥離や劣化が起こり始めた場合、抵抗は加えられた圧力の関数となり、抵抗の計測値は圧力の上昇に従って減少する。
【0059】
【表1】

【0060】
本発明の様々な実施例に従って調製した燃料電池で使用するための導電性エレメントは、燃料電池環境で良好な接着性及び長期に亘る丈夫さを持つ改良結合部を提供する。更に、本発明による導電性流体分配プレートは、接触領域の前後で結合部に沿って長期に亘って低い接触抵抗を提供し、燃料電池スタックの作動効率を向上し、燃料電池スタックの寿命を延ばすために低い圧縮圧力を使用できるようにする。
【0061】
結合部の熱伝導性が結合部の導電性と直接的に関連しているため、MEAクーラントの過熱を阻止し、又は過熱の発生を少なくとも減少する。本発明により、結合部の前後での過度の電圧降下によるスタックの電力損失が改善される。ボンド部抵抗によるスタックの電圧損失は、スタックが発生する電力の10%以下であり、望ましくは5%又はそれ以下であり、好ましくは1%程度又はそれ以下である。更に、ボンド部の劣化が阻止される。
【0062】
本発明をその特定の実施例に関して説明したが、これらの実施例に限定しようとするものではなく、むしろ、特許請求の範囲に記載した範囲に限定するものである。本発明の説明は単なる例示であり、及びかくして本発明の要旨の範疇の変更は本発明の範囲内に含まれる。このような変更は、本発明の精神及び範囲を逸脱するものとは考えられない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】液冷式PEM燃料電池スタックの二つのセルの概略図である。
【図2】本発明の好ましい実施例を示す、例示の導電性セパレーターエレメントの斜視図である。
【図3】本発明の好ましい実施例の導電性エレメントを示す、図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】図3に示す接触領域の拡大図である。
【図5】中間セパレータープレートが導電性エレメントの第1及び第2のシート間に配置された、本発明の接触領域の変形例の拡大図である。
【図6】試料の接触抵抗を計測するのに使用される例示の試験装置の図である。
【符号の説明】
【0064】
4、6 膜電極アッセンブリ(MEA)
8 バイポーラセパレータープレート
10、12 クランプターミナルプレート
14、16 端部接触流体分配エレメント
18、19 作用面
20、21 活性側部
22、23 作用面
26、28、30、32、33、35 不導性ガスケット即ちシール
34、36、38、40 ガス透過性導電性拡散媒体
41 排気配管
42 供給配管
43 導電性媒体層
44 供給配管
45 導電性媒体層
46 貯蔵タンク
48 貯蔵タンク
52 貯蔵領域
50 配管
54 出口配管
56 液冷式バイポーラプレート
58 金属製第1外シート
60 金属製第2外シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用導電性エレメントにおいて、
第1表面を有する導電性第1シートであって、前記第1表面が導電性第2シートの第2表面と向き合った導電性第1シートを有し、
前記第1及び第2の表面には、腐蝕保護を提供する導電性プライマーコーティングが被覆され、
前記コーティングが施された前記第1及び第2の表面は、少なくとも一つの接触領域において導電性接着剤によって互いに接合され、前記導電性接着剤は、前記プライマーコーティングとともに、前記第1及び第2のシートの間に目標ボンド部抵抗を提供し、前記目標ボンド部抵抗は、前記プライマーコーティングが無い場合の前記接着剤の比較接触抵抗よりも低く、かつ前記比較接触抵抗が維持される持続時間よりも長い持続時間にわたって維持される、燃料電池用導電性エレメント。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性エレメントにおいて、前記目標ボンド部抵抗は、前記第1及び第2のシートの前後で前記接着剤及び前記プライマーを通して計測され、500時間以上の燃料電池作動状態後に20mΩcm2 以下である、導電性エレメント。
【請求項3】
請求項1に記載の導電性エレメントにおいて、前記目標ボンド部抵抗は、前記第1及び第2のシートの前後で前記接着剤及び前記プライマーを通して計測され、6000時間以上の燃料電池作動状態後に5mΩcm2 以下である、導電性エレメント。
【請求項4】
請求項1に記載の導電性エレメントにおいて、前記第1及び第2の導電性シートは、導電性金属を含む、導電性エレメント。
【請求項5】
請求項1に記載の導電性エレメントにおいて、前記第1及び第2の導電性シートは、導電性ポリマー複合材料を含む、導電性エレメント。
【請求項6】
請求項1に記載の導電性エレメントにおいて、前記導電性プライマーコーティングの接触抵抗は、約1400kPaの圧縮力が作用した状態で約20mΩcm2 又はそれ以下である、導電性エレメント。
【請求項7】
請求項1に記載の導電性エレメントにおいて、前記プライマーコーティングは、バインダー及び複数の導電性粒子でできた母材を含む、導電性エレメント。
【請求項8】
請求項7に記載の導電性エレメントにおいて、前記バインダーはポリマー樹脂であり、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリビニルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、導電性エレメント。
【請求項9】
請求項1に記載の導電性エレメントにおいて、前記プライマーコーティングを硬化させる、導電性エレメント。
【請求項10】
請求項7に記載の導電性エレメントにおいて、前記プライマーコーティングの前記導電性粒子は、金、プラチナ、ニッケル、錫、銀、パラジウム、貴金属、グラファイト、カーボンブラック、及びこれらの混合物からなる群から選択される、導電性エレメント。
【請求項11】
請求項10に記載の導電性エレメントにおいて、前記導電性粒子は、グラファイト及びカーボンブラックを含む、導電性エレメント。
【請求項12】
請求項11に記載の導電性エレメントにおいて、前記グラファイトは、膨張グラファイト、グラファイト粉体、及びグラファイトフレーク、及びこれらの混合物からなる群から選択される、導電性エレメント。
【請求項13】
請求項11に記載の導電性エレメントにおいて、前記母材中に存在するグラファイト及びカーボンの総量は約10重量%以下である、導電性エレメント。
【請求項14】
請求項1に記載の導電性エレメントにおいて、前記導電性接着剤は部分的に硬化される、導電性エレメント。
【請求項15】
請求項1に記載の導電性エレメントにおいて、前記導電性接着剤は、接着剤ポリマー及び複数の導電性粒子を含む、導電性エレメント。
【請求項16】
請求項15に記載の導電性エレメントにおいて、前記接着剤ポリマーはポリアミドイミドを含む、導電性エレメント。
【請求項17】
請求項15に記載の導電性エレメントにおいて、前記接着剤ポリマーは、エラストマー、感圧接着剤、熱硬化性接着剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される、導電性エレメント。
【請求項18】
請求項15に記載の導電性エレメントにおいて、前記接着剤ポリマーのガラス転移温度(Tg)は約−20℃以下である、導電性エレメント。
【請求項19】
請求項18に記載の導電性エレメントにおいて、前記接着剤ポリマーは、エチレン、プロピレン、ブチレン、エチレンプロピレン二量体(EPDM)、エチレンプロピレンモノマー(EPM)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、イソブチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ナイトライドゴム、エポキシ、ウレタン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ポリメチルメタクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される、導電性エレメント。
【請求項20】
請求項15に記載の導電性エレメントにおいて、前記導電性接着剤の前記導電性粒子は、金、プラチナ、ニッケル、錫、銀、パラジウム、貴金属、グラファイト、カーボンブラック、及びこれらの混合物からなる群から選択される、導電性エレメント。
【請求項21】
請求項1に記載の導電性エレメントにおいて、コーティングを施した前記第1及び第2の表面は、液密シールを形成する導電性接着剤によって前記一つ又はそれ以上の接触領域で互いに接合される、導電性エレメント。
【請求項22】
PEM燃料電池用導電性接触エレメントにおいて、
導電性接着剤プライマーコーティングが被覆された第1接触面を持つ第1シートと、
導電性接着剤プライマーコーティングが被覆された第2接触面を持つ第2シートと、
前記第1接触面及び前記第2接触面を接合する少なくとも一つの結合領域と
を備え、
前記結合領域は、燃料電池の500時間の作動後において、5mΩcm2 以下の電気抵抗を有する、PEM燃料電池用導電性接触エレメント。
【請求項23】
導電性接触エレメントにおいて、
導電性接着剤プライマーコーティングが被覆された第1接触面を持つ第1シートと、
導電性接着剤プライマーコーティングが被覆された第2接触面を持つ第2シートと、
電気的接触領域において前記第1接触面と前記第2接触面との間に配置された導電性接着剤と
を備え、
前記導電性接着剤プライマーコーティングは、グラファイト、カーボンブラック、及びポリマーバインダーを含み、前記プライマーコーティング中に存在するグラファイト及びカーボンの組み合わせ総量は約10重量%以下である、導電性接触エレメント。
【請求項24】
複数の燃料電池と、隣接した燃料電池のアノードとカソードとの間に挟まれた導電性エレメントとを含む燃料電池スタックにおいて、
アノードと向き合う表面及び第1熱交換面を持つ導電性第1シートと、
カソードと向き合う表面及び第2熱交換面を持つ導電性第2シートと
を備え、
前記第1及び第2の熱交換面には、耐蝕性ポリマー中に分散した複数の第1の導電性粒子を含むプライマーコーティングが被覆され、
前記第1及び第2の熱交換面は、液体クーラントを受け入れるようにされたクーラント流通路を画成するように互いに対向して配置され、かつ、導電性接着剤を介して複数箇所において互いに電気的に連結され、
前記導電性接着剤は、接着性を持つポリマー中に分散した複数の第2の導電性粒子を含み、
前記プライマーコーティング及び前記導電性接着剤は、前記第1及び第2のシート間に導電経路を形成する、燃料電池スタック。
【請求項25】
請求項24に記載の燃料電池スタックにおいて、前記導電経路の前後の電気抵抗は、アノード及びカソードによって発生された電流が前記クーラントを過熱しないのに十分な量で伝達されるのに十分に低い、燃料電池スタック。
【請求項26】
請求項25に記載の燃料電池スタックにおいて、前記導電経路の前後の電気抵抗は、ボンド部抵抗によるスタック電圧損失が、前記スタックが発生する電力の5%以下であるように、十分に低い、燃料電池スタック。
【請求項27】
請求項24に記載の燃料電池スタックにおいて、前記プライマーコーティングの接触抵抗は、1400kPa(200psi)で20mΩcm2 以下である、燃料電池スタック。
【請求項28】
請求項24に記載の燃料電池スタックにおいて、前記接着剤及び前記プライマーコーティングが一緒になって流体密シールを形成する、燃料電池スタック。
【請求項29】
燃料電池の導電性エレメントのボンド部の耐久性を向上させる方法において、
第1シートの第1表面及び第2シートの第2表面を導電性接着剤プライマーでコーティングする工程と、
コーティングを施した前記前記第1及び第2の表面の間に導電性接着剤を配置し、これにより、前記コーティングを施した前記第1及び第2の表面を互いに接合する工程と
を含み、
前記接着剤として、前記第1及び第2の表面にコーティングされた前記接着剤プライマーと緊密に接触した状態を保持するものが選択される、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法において、前記接着剤は、前記第1及び第2の表面間に流体密シールを提供するのに十分な量で配置される、方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法において、前記接合後、前記接着剤を硬化する、方法。
【請求項32】
請求項29に記載の方法において、前記接合後、前記接着剤を部分的に硬化する、方法。
【請求項33】
請求項29に記載の方法において、前記配置前に前記接着剤プライマーを硬化する、方法。
【請求項34】
請求項29に記載の方法において、前記コーティングは、ブラシ、スプレー、塗り拡げ、積層、スクリーン印刷、又は粉体コーティングによって行われる、方法。
【請求項35】
請求項29に記載の方法において、前記配置は、前記第1表面をコーティングすることによって行われる、方法。
【請求項36】
請求項29に記載の方法において、前記配置は、前記第1及び第2の表面をコーティングすることによって行われる、方法。
【請求項37】
請求項29に記載の方法において、前記配置は、前記第1表面又は前記第2表面のいずれか又は前記表面の両方に接着剤をブラシ付け、軽く塗り付け、スプレー、又はロール付けすることによって行われる、方法。
【請求項38】
請求項29に記載の方法において、前記接合は、間に接着剤を配置した前記コーティングを施した前記第1及び第2の表面に圧力を加えることによって行われる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−501500(P2007−501500A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522604(P2006−522604)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/024226
【国際公開番号】WO2005/018032
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(590001407)ゼネラル・モーターズ・コーポレーション (118)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL MOTORS CORPORATION
【Fターム(参考)】