説明

金属配合物

本発明は、少なくとも1つの硬質材料粉末および少なくとも2つのバインダー金属粉末を含有する配合物において、第一のバインダー金属粉末中にはコバルトが完全に含有されており、かつ第4周期の元素である元素の周期系の第3族〜第8族からの1つ以上の元素で予合金化されており、および元素粉末のFe、Ni、Al、Mn、Crまたはそれらを混合した合金の群からの少なくとも1つのさらなるバインダー金属粉末が含有されており、かつ、さらなるこのバインダー金属粉末は予合金化されなかった形のコバルトを含有しないことを特徴とする配合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
粉末状の硬質材料(Hartstoffe)および粉末状のバインダー金属とから成る配合物は、表面被覆のための、なかでも焼結された超硬合金または溶射粉末を製造するために工業的に使用される。炭化物として、炭化タングステンが断然頻繁な炭化物として使用され、例えば炭化チタン、炭化バナジウム、炭化クロム、炭化タンタルおよび炭化ニオブまたはそれら相互の混合炭化物または炭化タングステンとの混合炭化物のような他の炭化物が、たいてい添加物としてのみ使用される。窒化物も使用される。コバルトが断然頻繁に使用されるバインダー金属であるが、しかし、Fe、CoおよびNiからの2つまたは3つの元素を有するバインダー系も使用され、溶射粉末では、例えばMn、Al、Crも使用される。さらなる無機添加物として、金属粉末、例えばタングステン、モリブデン、しかし元素の炭素も考慮に入れられる。超硬合金が、炭化タングステンの代わりに炭窒化チタンを主成分として含有する場合、"サーメット"と呼ばれる。硬質材料として、ホウ化物も考慮に入れられる。
【0002】
超硬合金および溶射粉末におけるバインダー金属として、たいていコバルトが使用されるが、しかし、それとならんでニッケル、またはFe、CoおよびNiからの合金も使用される。いずれの場合も、バインダー相は、焼結または溶射後に、液相焼結もしくは溶融に際しての炭化物相との物質交換に基づき、硬質材料に由来する成分、例えばタングステン、クロム、モリブデンおよび炭素を含有する。粉末状のバインダー金属として、元素粉末、例えば鉄粉末、ニッケル粉末またはコバルト粉末、または一方で合金粉末のいずれかが使用される。
【0003】
溶射粉末は、バインダー相中の上記元素および無機添加物とならんで、なお他の元素、例えばAl、希土類元素、イットリウムも含有してよい。
【0004】
何十年と経過するうちに、超硬合金工業では、超硬合金を製造するために、粉塵状の超硬合金の取り扱いまたは粉塵状の配合物の取り扱いと関連付けられる、特定の症候を持つ肺線維症の発生が統計学的に著しく増大することが明らかになっていた。この疾病パターンは、"超硬合金肺"とも呼ばれ、かつ今も昔も多数の疫学的な研究および発表の対象である。粉末冶金学による製造法、すなわち粉末状の超硬合金配合物の圧縮および焼結を介した超硬合金の通常行われている製造の場合、方法に基づき、呼吸に適した粉塵が放出される。超硬合金の焼結された状態または予備焼結された状態で研削加工が適用され、同様に非常に微細な、呼吸に適した粉塵が発生する("研削粉塵")。
炭化物系溶射粉末の溶射に際しても、同様に非常に微細な粉塵が発生する("スプレーしぶき")。
約5年前から同様に知られている点は、超硬合金粉塵は、濃度が十分に高い場合、吸入により、付加的にラットに対して急性毒性作用も与えることである。正確な作用メカニズムは、これまで知られていなかった。2つの成分の炭化タングステンおよびコバルトとは、この作用をそれ自体単独ではとらない。それゆえ労働者保護の改善の意味において、該作用メカニズムの解明と、急性毒性作用を持たない代用物または急性毒性作用が強く軽減した代用物に強い興味が注がれている。
【0005】
本発明の課題は、吸入毒性を、配合物の溶射に際してのみならず、予備焼結された超硬合金の研削加工("生加工")および焼結された超硬合金の研削加工に際しても一様に低下させる配合物中でコバルトを提供することであった。この課題は、少なくとも1つの硬質材料粉末および少なくとも2つのバインダー金属粉末を含有する配合物において、第一のバインダー金属粉末中にはコバルトが完全に含有されており、かつ元素の周期系の第3族〜第8族からの1つ以上の元素で予合金化されており、および元素粉末のFe、Ni、Al、Mn、Crまたはそれらを混合した合金の群からの少なくとも1つのさらなるバインダー金属粉末が含有されており、かつ、さらなるこのバインダー金属粉末はコバルトを予合金化されなかった形で含有しないことを特徴とする配合物により解決される。
【0006】
意想外にも、炭化タングステンとコバルトとの粉塵状の配合物の急性毒性作用が、吸入によるコバルトの生物学的利用能の増大につながる電気化学的腐食現象に拠ることが発見された。
【0007】
さらになお意想外にも、超硬金属配合物中のバインダー金属としてのコバルトは、それが鉄または元素の周期系の第3族〜第8族(副族IIIa〜VIIIa)からの他の元素で予合金化されている場合(しかし、これらが合金化されずにコバルトとならんで存在する場合ではない)に、その吸入毒性を失う。原則的に、周期系においてコバルトの左側にあり、かつ好ましくは同じ周期にある全ての金属は、より卑な性質に基づいて、腐食傾向の軽減をもたらし、その一方で、より貴である元素、例えば銅は、逆の効果を有し、このことは異種相として存在する合金化された銅の場合において確認することができる。
【0008】
好ましくは、第一のバインダー金属粉末中のコバルトの合金相手は、周期系の第4周期および第3族〜第8族の元素である。殊に好ましくは、第一のバインダー金属粉末中のコバルトの合金相手は、Fe、Ni、Cr、Mn、TiおよびAlから成る群から選択される元素である。第一のバインダー金属粉末は、さらなる元素、例えばアルミニウムおよび/または銅も含有してよい。
【0009】
第一のバインダー金属粉末とならんで、たいていの場合、さらなるバインダー金属が必要とされる。とりわけ好ましくは、これらは鉄粉末、ニッケル粉末、FeNi−合金粉末、および予合金FeNi−合金粉末から成る群から選択されている。
【0010】
硬質材料は、たいていの場合、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化モリブデン、炭化タングステンまたはそれら相互の混合物である。それ以外に、これらの化合物は、酸素還元用触媒として、ひいては酸素還元のメカニズムに従った水性媒体中での金属の酸化用触媒として公知である:
Co+1/2 O2+H2O=Co(OH)2
溶射粉末の場合、少なくとも1つの、さらなる添加された金属粉末は、Fe、Niとならんで、例えばさらなる元素、例えばAl、Cr、Mn、Nb、Ta、Tiを含有するが、しかしながら、不可避的な、かつ意図されたものでない不純物の領域中を除いてコバルトを含有しない。
【0011】
有利には、第一の、コバルト含有の、かつ完全に合金化されたバインダー金属粉末は、コバルト10質量%〜50質量%を含有する。この場合、とりわけ有利には、鉄対コバルトの比は1:1またはそれより大きい。例えば適しているのは、FeCO 50/50、FeCoNi 90/5/5の組成物である。この粉末は、それとならんで鉄族のさらなる元素を含有してよい。
【0012】
さらなる、予合金化されなかった形のコバルトを含有しないバインダー金属粉末は、有利には鉄ベースまたはニッケルベースであり、すなわち、鉄およびニッケルの含量の合計は少なくとも50%である。さらなるこの粉末の残りの割合は、全体で少なくとも50%が鉄およびニッケルとから成る。さらなるこのバインダー金属粉末として好ましくは、組成物:例えばFe30%までを有するFeNi−粉末、FeNi 50/50、FeNi 95/5の合金粉末が使用され得る。
第一のバインダー金属粉末対さらなる粉末の質量比は、好ましくは1:10〜10:1、とりわけ有利には、しかし1:5〜5:1である。当業者は、必要な比を、所望の化学量論と、提供される合金粉末とに依存して選択することができる。
好ましくは、さらなるこのバインダー金属粉末は、0.3m2/gより大きい、好ましくは0.5m2/gより大きい、殊に1m2/gより大きいBET表面積を有する。
【0013】
超硬金属工業および溶射粉末工業において、Fe、Co、Niの群からの2つ以上の元素を含有し、かつ、これらの元素に関してのバインダー相の組成物を表す予合金粉末の使用は、配合物の製造のための2つまたは3つの元素粉末の使用と同様に従来技術である。後者の変形が毒性を低下させない一方で、該毒性は、バインダー系の完全な合金化によって低下または除去される。酸化物または他の化合物の水素還元からのこのような合金粉末は商業的に入手可能であるが、しかしながら、元素粉末と比べて、より高い酸素濃度および不十分な圧縮性といった著しい欠点を有する。殊にNi粉末およびFe粉末は、カルボニル法に従って製造することができ、かつ非常に低い酸素濃度を達成することができる。それと言うのも、一酸化炭素の還元電位は、通常、1m2/gより大きい比表面積を有する微細な合金粉末の製造のために使用される水素の還元電位より大きいからである。
【0014】
それゆえ好ましいのは、例えば、a)鉄/コバルトおよび鉄/ニッケル/コバルトから成る群から選択される少なくとも1つの予合金粉末;b)鉄およびニッケルから成る群から選択される少なくとも1つの元素粉末、または成分a)とは異なる、鉄/ニッケルから成る群から選択される少なくとも1つの予合金粉末;c)硬質材料粉末;(その際、成分a)およびb)を合わせた全体の組成物は、コバルト最大90質量%およびニッケル最大70質量%を含有する)の使用による超硬金属混合物の製造法によって得られる配合物である。鉄含量は、好ましくは少なくとも10質量%である。
本発明の好ましい一実施態様において、これは請求項1記載の超硬金属混合物の製造法であって、その際、バインダーの全体の組成物は、Co最大90質量%、Ni最大70質量%およびFe少なくとも10質量%であり、その際、鉄含量は、
不等式
【化1】

(Fe:質量%記載での鉄含量、%Co:質量%記載でのコバルト含量、%Ni:質量%記載でのニッケル含量)を満たし、その際、少なくとも2つのバインダー粉末が使用され、その際、一方のバインダー粉末は、バインダーの全体の組成物より鉄に乏しく、かつ他方のバインダー粉末は、バインダーの全体の組成物より鉄に富み、かつ、その際、少なくとも1つのバインダー粉末が予合金化されており、かつ、鉄、ニッケルおよびコバルトから成る群から選択される少なくとも2つの元素から使用される。
【0015】
焼結超硬合金を製造するための圧縮された配合物の溶射および液相焼結に際しても、バインダー相と炭化物相との間の化学平衡ならびにバインダー金属粉末の溶融粒子間の化学平衡が生じるので、材料の観点から元素粉末を使用することで十分であり、その一方で、上述の例に従った毒性の観点から、コバルト含量を、鉄、ニッケル、マンガン、クロムまたはチタンの最小含量と完全に予合金化し、かつバインダー金属相の所望の全体の組成物の残留する部分(それにより、例えば鉄含量および/またはニッケル含量またはさらなる金属の含量が調整される)を、相応する元素粉末または例えばFeNi−合金粉末に相応する形に作製することで十分である。そうして配合物の製造に際してのこの新規の手法は、両方の側面(毒物学および酸素含量もしくは焼結後の炭素含量の制御)を満たすことを可能にする。その際、それ以外に好ましい点は、予合金粉末を部分的にのみ使用することによって、予合金粉末をもっぱら使用することに比べて圧縮性が大幅に改善されることである。
【0016】
それゆえ、表1記載の配合物がとりわけ好ましく、その際、第一のバインダー金属粉末と、さらなるバインダー金属粉末とは、1:1の比で含有されている:
【表1−1】

【表1−2】

さらに有利なのは、表2および表3の配合物である。
表2:表2は、2.01〜2.54の番号を持つ54の配合物を示し、該配合物の第一のバインダー金属粉末、該配合物のさらなるバインダー金属粉末および第一のバインダー金属粉末の合金元素の比およびさらなるバインダー金属粉末の合金元素の比は、表1のものと同一であり、その際、第一のバインダー金属粉末と、さらなるバインダー金属粉末とは、1:2の比で含有されている。つまり、配合物2.01について、第一の合金粉末はFeCo 50/50であり、さらなる合金粉末はFeNi 30/70であり、かつFeCO対FeNiの比は1:2である。
【0017】
表3:表3は、3.01〜3.54の番号を持つ54の配合物を示し、該配合物の第一のバインダー金属粉末、該配合物のさらなるバインダー金属粉末および第一のバインダー金属粉末の合金元素の比およびさらなるバインダー金属粉末の合金元素の比は、表1のものと同一であり、その際、第一のバインダー金属粉末と、さらなるバインダー金属粉末とは、2:1の比で含有されている。つまり、配合物3.01について、第一の合金粉末はFeCo 50/50であり、さらなる合金粉末はFeNi 30/70であり、かつFeCO対FeNiの比は2:1である。
【0018】
それゆえ本発明は、少なくとも1つの硬質材料粉末および少なくとも2つのバインダー金属粉末を含有する金属配合物において、第一のバインダー金属粉末中にはコバルトが完全に含有されており、かつ第4周期の元素である元素の周期系の第3族〜第8族からの1つ以上の元素で予合金化されており、および元素粉末のFe、Ni、Al、Mn、Crまたはそれらを混合した合金の群からの少なくとも1つのさらなるバインダー金属粉末が含有されており、かつ、さらなるこのバインダー金属粉末は予合金化されなかった形のコバルトを含有しないことを特徴とする金属配合物;
または
少なくとも1つの硬質材料粉末および少なくとも2つのバインダー金属粉末を含有する金属配合物において、第一のバインダー金属粉末中にはコバルトが完全に含有されており、かつ元素の周期系の第3族〜第8族からの1つ以上の元素で予合金化されており、および元素粉末のFe、Ni、Al、Mn、Crまたはそれらを混合した合金の群からの少なくとも1つのさらなるバインダー金属粉末が含有されており、かつ、さらなるこのバインダー金属粉末は予合金化されなかった形のコバルトを含有せず、その際、硬質材料と第一のバインダー金属粉末との間の自由腐食電位は、空気飽和水中で標準圧力および室温にて測定して、0.300Vより小さく(好ましくは0.280Vより小さい)、その際、硬質材料は正極性を有することを特徴とする金属配合物;
または
少なくとも1つの硬質材料粉末および少なくとも2つのバインダー金属粉末を含有する金属配合物において、第一のバインダー金属粉末中にはコバルトが完全に含有されており、かつ元素の周期系の第3族〜第8族からの1つ以上の元素で予合金化されており、および鉄粉末、ニッケル粉末、FeNi−合金粉末および予合金FeNi−合金粉末から成る群から選択される少なくとも1つのさらなるバインダー金属粉末が使用され、かつ、さらなるこのバインダー金属粉末は予合金化されなかった形のコバルトを含有しないことを特徴とする金属配合物に関する。上述のこれら3つの全ての金属配合物中に、硬質材料として、好ましくは0.3m2/gより大きい、有利には0.5m2/gより大きい、とりわけ有利には1m2/gより大きいBET表面積を有する、殊に炭化チタン、炭化バナジウム、炭化モリブデンまたは炭化タングステンが含有されていてよい。
【0019】
本発明のさらなる一実施態様において、上述の金属配合物の場合、第一のバインダー金属粉末中のコバルトの合金相手は第4周期の元素であり;
または上述の金属配合物において、第一のバインダー金属粉末中のコバルトの合金相手は、Fe、Ni、Cr、Mn、TiおよびAlから成る群から選択される元素であり;
または
上述の金属配合物において、第一のバインダー金属粉末はさらなる元素を合金化して含有してよく、その際、さらなる元素として、アルミニウムおよび/または銅(Cu)を使用してよい。
【0020】
本発明のさらなる一実施態様において、上述の金属配合物中に、第一のバインダー金属粉末とならんで、鉄粉末、ニッケル粉末、FeNi合金粉末から成る群から選択される1つ以上のさらなるバインダー金属粉末および予合金FeNi−合金粉末が存在する。
【0021】
好ましくは、上述のこれら全ての金属配合物の場合、硬質材料と第一のバインダー金属粉末との間の自由腐食電位は、空気飽和水中で標準圧力および室温にて測定して、0.300Vであり、その際、硬質材料は正極性を有する。硬質材料として、好ましくは0.3m2/gより大きい、有利には0.5m2/gより大きい、とりわけ有利には1m2/gより大きいBET表面積を有する、殊に炭化チタン、炭化バナジウム、炭化モリブデンまたは炭化タングステンが含有されていてよい。
全てのこのような金属配合物中で、好ましくは、第一のバインダー金属粉末対さらなるバインダー金属粉末の質量比は1:10〜10:1である。
全てのこのような金属配合物は、好ましくは:a)鉄/コバルトおよび鉄/ニッケル/コバルトから成る群から選択される少なくとも1つの予合金粉末;b)鉄およびニッケルから成る群から選択される少なくとも1つの元素粉末、または成分a)とは異なる、鉄およびニッケルから成る少なくとも1つの予合金粉末;c)硬質材料粉末(その際、成分a)およびb)を合わせた全体の組成物は、コバルト最大90%およびニッケル最大70質量%を含有する)を含有してよい。そのような金属配合物の場合、好ましくは、鉄含量は少なくとも10質量%である。
そのような金属配合物の場合、好ましくは、バインダーの全体の組成物は、Co最大90質量%、Ni最大70質量%およびFe少なくとも10質量%であり、その際、鉄含量は、不等式
【化2】

(Fe:質量%記載での鉄含量、%Co:質量%記載でのコバルト含量、%Ni:質量%記載でのニッケル含量)を満たし、その際、少なくとも2つのバインダー粉末が使用され、それに関して、一方のバインダー粉末は、バインダーの全体の組成物より鉄に乏しく、かつ他方のバインダー粉末は、バインダーの全体の組成物より鉄に富み、かつ、その際、少なくとも1つのバインダー粉末は予合金化されており、かつ、鉄、ニッケルおよびコバルトから成る群から選択される少なくとも2つの元素から使用される。
【0022】
このような金属配合物は、様々な使用目的にとって好ましく、かつ、このような金属配合物は、焼結超硬金属の製造のために、または多孔性焼結凝集物(poroes gesinterten Agglomeraten)の製造のために使用することができる。
そのような多孔性凝集物は、上述の金属配合物の1つを圧縮せずに焼結させることによって得られる。
さらに適しているのは、上述の金属配合物の1つを圧縮せずに焼結させることによって得られ、かつAl、イットリウムおよび/または希土類元素を含有するような多孔性凝集物を含有する溶射粉末である。
【0023】
さらに本発明は、上述の金属配合物の1つ、好ましくは、表1〜3の中で挙げられている金属配合物を、焼結超硬合金または多孔性焼結凝集物の製造のために使用することを特徴とする、コバルト含有の金属配合物の毒性作用の制御法に関する。
【0024】
一般的に、本発明は、金属配合物中で、コバルトが元素の周期系の第3族〜第8族からの1つ以上の元素と予合金化されていることを特徴とする、コバルト含有の金属配合物の毒性作用の制御法を提供する。
【0025】
それゆえ本発明は、本発明による金属配合物、本発明による多孔性凝集物または本発明による溶射粉末を、成形部材またはコーティングの製造のために使用する、コバルト含有の金属配合物の毒性作用の制御法にも関する。コバルト含有の金属配合物の毒性作用の制御法において、毒物学的作用は、殊に肺線維症および/または超硬合金肺の疾病パターンを包含する。
【0026】
コバルトの高い生物学的利用能は電気化学的腐食現象に拠るので、本発明によれば、硬質材料と第一のバインダー金属粉末との間の自由腐食電位は、空気飽和水中で標準圧力、および室温にて測定して、0.380Vより小さく、好ましくは0.330Vより小さく、殊に0.300Vより小さく、および極めて好ましくは0.280Vより小さく、その際、炭化タングステンは正極性を有する。図1は概略的に、使用される実験セットアップを示す。符号1は、炭化タングステン(または他の硬質材料)からの正極を表し、符号2は、例えばコバルトまたは本発明によるバインダー金属配合物から成るバインダー金属からの負極を表し、符号3は、反応媒体、空気飽和水道水を表す。
しかしながら、意想外にも、鉄がコバルトより卑であるにも関わらず、コバルトが鉄と合金化される場合に接触電圧は下がる。この現象の理由は知られていない。降下する自由腐食電位によって、腐食現象を促進する力が下がるか、もしくはこれは比較的ゆっくりと進行し、かつ生物学的利用能も同様に下がる。それゆえ、例4の中で記載される自由腐食電位は、硬質材料−バインダー金属−配合物の予想されるべき吸入毒性のための指標として用いられ得る。予想されるべき吸入毒性のためのさらなる指標は、相応する接触要素が酸素の存在下で、定義された時間にわたって水と接触するのと同時に溶解するバインダー金属の溶解量である。
粉塵を吸い込んだ生物体の高度の相互作用からのみ説明することができる吸入毒性の現象の原因となるものは、両方の成分のコバルトおよび硬質材料の相乗作用でなければならない。それと言うのも、どちらもそれ単独ではこの挙動を示さず、このことは文献公知である。それに加えて、本発明において両方の成分が幾何学的な接触の強さに依存していることが発見されたので、腐食が原因で高まった生物学的利用能が毒物学的作用を説明する発端として出てくる。
超硬合金は、すでにずっと昔から接触−腐食要素として知られており、例えば、超硬合金の研削のために使用されるような水性ベースのクーラント液が、有利には超硬合金からのコバルトを溶出させることが知られている。Megedeによる学位論文(Universitaet Frankfurt a Main,1985)の中で、そのメカニズムが詳細に記載される:コバルトは、水と酸素の存在下で酸素還元の原理に従って腐食し、かつ不動態化作用を持つ水酸化物層を表面上に形成する。炭化タングステンは、水酸化物アニオンの形成に際して電子伝達を触媒するので、腐食は強く促進され、かつトポタクチックに進む。従って、水酸化物層の不動態化作用は徐々に衰える。これは同様に、何故、超硬合金肺の断面において、たしかに炭化タングステンは見つけられるものの、しかしながらコバルトはもはや見つけられないのかを根拠づける−コバルトは促進された形で腐食し、かつ吸収されてしまったものと考えられる。少ない吸収量/濃度でコバルトの生物学的利用能がそのように高められることで、慢性疾患(肺線維症または"超硬合金肺")につながり、高い濃度の場合には急性毒性徴候につながる。
コバルトの生物学的利用能は、これまで完全には解明されてこなかった負の作用を生物体に対して持つ。解明の試みるのに、DNAへのイオン性コバルトの付加、または錯体形成による、反応性酸素種、例えば超酸化物アニオンの安定化が含まれ、それに関してコバルトが公知である。
【0027】
超硬金属および炭化物系溶射粉末の場合、バインダーへの化学的作用によって定められる耐食性は、配合物のCr炭化物またはCr金属を添加することによって改善することができる。どちらの場合にも、Crは焼結もしくは溶射後に部分的にバインダー中で合金化されて存在する。バインダー中のCr濃度が十分に高い場合(これは炭素収支によってコントロール可能である)、その時、超硬合金もしくは溶射層は、より耐食性が著しく、このことから、そのような超硬金属の研削に際しての粉塵もしくはスプレーしぶきは、純粋なWC−Coと比較して明らかに毒性が低くなければならないという結論が導かれる。耐食性のさらなる改善法は、付加的に、コバルトを部分的にニッケルで置き換えることによって達成することができ、これは超硬金属の場合も同様に工業的に実施される。
【0028】
結論として、超硬合金粉塵の急性毒性作用は、水および酸素の存在下における腐食度に起因するものとみなすことができる。自由腐食電位は、コバルトと例えば鉄との合金化によって低下され得、それによってコバルトを含有する配合物(その際、コバルトは鉄と予合金化されている)は、少なくとも吸入急性毒性がより低くなっている。これを根拠付けるのは、そのバインダー層にコバルトおよび鉄を含有する焼結超硬金属が、空気の存在下で酸化性酸に対して、純粋にコバルトが結合したものより良好な耐食性を有するという発見にある(TU Wien,Dissertation Wittmann,2002)。
【0029】
超硬合金の製造に際して、いくつかの中間生成物がとりわけ吸入毒性を持つであろうことが予測され得、該製造には、殊に予備焼結された超硬合金の研削加工が含まれる("生加工")。この場合、焼結ブリッジを介して十分な機械的安定性を作り出し、その結果、焼結体を研削加工することができるように、配合物は圧縮され、かつ溶融共晶温度より低い温度で焼結される("予備焼結")。この段階において、該焼結体はなお多孔質であり、有機添加剤をもはや含有せず、かつ使用される粉末は組成物中でなお平衡状態にはないので、コバルトはなお大部分が元素の形で存在する。それゆえ、研削粉塵の多孔質構造と合わせて非常に高い吸入毒性が予想される。コバルト金属粉末とならんで鉄金属粉末も該配合物の製造のために使用した場合も、毒性の減少は期待されない。それと言うのも、予備焼結に際して実際にコバルト粒子と鉄粒子との間の相互拡散(合金形成)が生じないからである。
【0030】
粒状配合物から焼結された溶射粉末は、その大きさゆえに空気中に分散され得難いが、しかしながら、該粉末を取り扱う際に内部摩擦によって発生する、呼吸に適した微細成分は非常に毒性である(例1eを参照のこと)。
【0031】
本発明による配合物は、例えば焼結超硬金属または多孔質焼結凝集物の製造のために使用することができ、その際、該多孔質焼結凝集物は、好ましくは溶射粉末において使用することができる。殊にFeCoNiベースのバインダー系を有する超硬合金は、組成に応じて、多数の適用に関して、純粋にコバルトが結合した材料と比べて技術的利点を提供し、それゆえ本発明に従って好ましい。
【0032】
予合金粉末とは、本発明により、全ての粉末粒子において、Fe−、Co、およびNi含量に関するバインダーの組成物を、すでに呼吸に適したレベルにまで分散して含有する金属粉末である。本発明の意味における予合金粉末は、溶融物からノズル噴霧された合金粉末、または例えばUSーB−6554885、EP−A−1079950ならびに、その中で引用される文献に従った沈殿および還元によって得られる合金粉末であってよいか、または他の原則的に適した方法、例えばカルボニル法、プラズマ法、CVD法等に従って製造することができ、その際、US−B−6554885、EP−A−1079950ならびに、その中で引用される文献に従った沈殿および還元によって得られる合金粉末が好ましい。炭化物系溶射粉末の製造は、超硬金属の製造の粒状配合物の製造に至るまで一致しているが、しかしながら、該粒状物は圧縮されずに、それ自体、最も低い共晶温度より低い温度のみならず、それに少し高い温度でも焼結され、次いで分級される。含有される有機添加物は、その際に取り除かれる。そのようにして得られる粒子は、なお多孔質であり、かつバインダー金属層である粒子と硬質材料との間の焼結ネックを有する。
【0033】
溶射粉末は、バインダー相中で上述の元素および無機添加物の他にもなお、他の元素、例えばAl、希土類元素、イットリウムを含有してよい。
【0034】
超硬金属および溶射粉末を製造するための配合物は、上記の無機成分とならんで、たいていの場合、有機添加物、例えばパラフィン、ポリエチレングリコール、抑制剤を含有し、それらは、さらなる加工および取り扱いを軽減するが、しかし、焼結超硬金属中もしくは焼きなまし後の溶射粉末中にはもはや含有されていない。これらの配合物は、例えば噴霧乾燥によって粒状化されていてよい。連続鋳造に際して使用されるような可塑剤、例えばポリエチレンとならんでパラフィンワックス、およびカップリング剤、例えばカルボン酸および分散助剤も含有していてよい。
硬質材料およびバインダー金属とからの工業的に慣用の配合物は常に酸素も含有する。それと言うのも、粉末の表面は、空気中での取り扱い、水性液中での混合粉砕、および引き続く乾燥によって、水および水酸化物とでコーティングされることになるからである。含有される酸素は、後になってからの熱処理に際して、炭化物中または元素の形で配合物中に含まれる炭素と反応して一酸化炭素および二酸化炭素を形成し、そうして焼結体または溶射粉末の金属含量と炭素含量との正確に保たれるべき平衡を妨げる。一般に適用されるのは、配合物の酸素を、金属−/炭素平衡をより良好にコントロールすることができるように可能な限り少ない状態に保つことである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実験セットアップを示す図
【図2】死亡率に対するエアロゾル濃度がプロットされており、かつ本願例の分類を示す図
【実施例】
【0036】
全ての実施例は、本出願人の委託により、EEC(Annex II.5.2.3)に従った吸入研究として、Huntington Life Science Ltd.,Cambridge,GBが実施した。試験されるべき粉末をエアロゾルとして霧状化し、かつ、これを10匹のラットが存在するチャンバー中に吹き込んだ。
エアロゾル濃度はmg/lで記載し、平均粒度はμmで記載する。>7μmの割合をパーセントで記載し;時間はhと略した。粉塵濃度ならびにチャンバー中での粒子の粒度分布を測定した(Marple Cascade Impactor Mod.298,製造元 Graseby Andersen Inc,Atlanta,Georgia)。4h後、死んだラットまたは瀕死のラットの数を定め、かつ全体の数を死亡率として表示した。
【0037】
例1)WC/Co配合物の吸入毒性
a)炭化タングステン−コバルト複合材を、WO01/46484A1に従って製造した。それはコバルト10%を含有していた。この複合材は、コバルト粒子と炭化タングステン粒子との間の非常に緻密な接触を特徴とする。0.25mg/lの濃度の場合の吸入試験の結果は100%の死亡率であった。チャンバー中の平均粒度は2.5μmで、7μm未満の粒子は90%であった。
b)コバルト10質量%を含有する、炭化タングステンとコバルト金属粉末との混合物を製造し、かつ吸入試験を3種類の濃度において繰り返した:
【表2】

c)コバルト6%を含有する、コバルトと炭化タングステンとの混合物を製造した。吸入試験の結果は、0.26mg/lの有効濃度の場合:0%であったが、しかしながら、チャンバーにエアロゾルを導入し終えてから3日後に20%であった。平均粒度は3.8μmであり、全粒子の79%が<7μmであった。
d)コバルト10%を含有する、炭化タングステンとコバルトとの混合物を、分散液としてヘキサン中で4h混合粉砕した。粉砕を終える1h前にパラフィンワックスを添加し、その結果、固体含量に対して、配合物中で2%の質量割合のパラフィンが生じた。4hの混合粉砕後、ヘキサンを真空蒸留によって分離除去し、その結果、パラフィン含有粉末を得た。これを用いて、3種類のエアロゾル濃度において吸入試験を実施し、次の結果がもたらされた:
【表3】

e)コバルト17%および5〜30mmの間の調整された粒度分布を有する、多孔質焼結炭化タングステン−コバルト粉末を吸入テストにおいて試験し、次の結果がもたらされた:1.01から0.93mg/lの間で変動する有効エアロゾル濃度、死亡率60%、5.2から5,6μmの間で測定されたチャンバー中の平均粒度、<7μmの粒子が約20%。
【0038】
結果が示すのは、WC/Co配合物の吸入毒性が様々な有力要因に依存する点である。
【0039】
最も高い毒性は、例a)が示す。製造様式に基づき、コバルト粒子と炭化タングステン粒子との間の最高度の接触が存在する。
【0040】
粉末混合物として、コバルト粒子とWC粒子とのはるかに少ない接触を有する例b)は、より毒性が低い。
【0041】
例c)も同様に、一方でコバルト含量が減少された粉末混合物として、再び、より僅かな作用を示す。
【0042】
2種類の濃度で実施した例d)は、さらに減少された毒性作用を示す。アトライターミルによって、コバルト粒子と炭化タングステン粒子との間の接触は非常に集約的なものとなり得るので、毒性の低下は、含有されるパラフィンワックス(25体積%に相当する2質量%)による疎水化に起因するものとされる。
【0043】
例e)は、溶射のための典型的な粉末の毒性を示す。ここで顧慮されるべき点は、比較的粗大な粒子に基づいて部分的にしか肺に入り込まないにも関わらず、著しい死亡率が生じることである。
【0044】
例a)〜f)を比較して正当に評価した場合、肺への到達性および必要に応じた疎水化剤の含量とならんで、CoとWCとの接触の強さが、吸入毒性の度合いに対する主要パラメータである点が認識される。
【0045】
例2)WC/FeCo配合物の吸入毒性
a)超硬金属の仕上げ研削加工から生じる、70.6%の含量の炭化タングステン、14.8%のコバルトおよび12.2%の鉄を有する工業的に慣例の超硬合金研削粉塵は、吸入試験に際して70%の死亡率を示した。その際、有効エアロゾル濃度は0.28mg/lであり、平均粒度は4.3μmであった。全粒子の76%が<7μmであった。
b)炭化タングステン90%、鉄粉末5%およびコバルト金属粉末5%とから成る混合物を、例1の中で記載されるように、アトライター中で粉砕したが、しかしながら、パラフィンは添加しなかった。鉄およびコバルトは、粉砕によって生じる変形プロセスによって互いに鍛接し合っており、かつ部分的に機械的に互いにふさがれているが、しかしながら、互いに合金化して存在していない。この粉末を用いた2つの吸入試験の結果は次の通りであった:
【表4】

c)WO01/46484/A1に従って、鉄およびコバルトを各々5%ならびに炭化タングステン90%を有する複合材を製造した。この際、鉄およびコバルトは完全に互いに合金化して存在する。吸入試験において、次の結果が得られた:
【表5】

【0046】
例a)は、超硬金属の仕上げ加工からの工業的に慣例の研削粉塵として、比較的非常に高い毒性を示す。12%の鉄含量は、研削ディスクの摩耗およびそれ以外の汚れに基づくものであって、しかし、鉄含有バインダー系を有する超硬金属の仕上げ加工に基づくものではない。従って、この鉄分はコバルト分と予合金化されていない。この研削粉塵は、本発明の意味において配合物として見られるべきでない。それと言うのも、該粉塵は目的に合致して製造されておらず、かつコバルト分は鉄分と予合金化されていないからである。
【0047】
元素粉末FeおよびCoの使用下で製造された例b)は、さらなる添加物を含まずにCo5%を有するアトライター粉砕された配合物の毒性と類似したオーダーの毒性を示す。
【0048】
例c)は、この場合、WC粒子と、予合金化されたFeCo粒子との間の接触が例1a)と同じように強く、かつ該複合材は類似して製造されたにも関わらず、いかなる場合も毒性を示さず、5mg/lの場合ですら示さない。
【0049】
例3)WC/FeNi配合物の吸入毒性
10%の予合金FeNi 50/50および90%の炭化タングステンとからの混合物を用いて吸入試験を実施し、その際、0.53および5.22mg/lの有効濃度の場合にも死亡率は0%であった。
【0050】
この例が示すのは、急性吸入毒性が生じない点であり、この点はコバルトが欠けていることに起因するものとされる。
【0051】
例4):WC/CoおよびWC/FeCo接触要素の自由腐食電位
炭化タングステン粉末を、高温プレス法において2200℃で高温圧縮して、理論密度に相当する15.68g/cm3の密度を有する固体(massive Koerper)を得た。それに加えて、コバルト金属粉末および予合金化された鉄−コバルト金属粉末(コバルト含量 50%)を1000℃で完全に圧縮し、ほぼ理論密度である稠密な物体を得た。第一の試験において、炭化タングステン/コバルトのガルヴァーニ電池の接触電圧を、2つのそれぞれの固体片に、接触電圧の測定のための導出電極を備え付け、かつ、この装置を部分的に空気飽和水道水中に浸漬させることによって測定した。両方の固体が相互に接触しない場合、0.330Vの差が測定され、その際、コバルトは炭化タングステンに対して負極性を有していた。この差は自由腐食電位を表す。固体が相互に接触する場合(短絡)、0.04mVの差が測定され、その際、極性の反転が観察された。
測定を繰り返し、その際、該コバルト片は、FeCoから製造したものと置き換えた。その時、自由腐食電位の測定値は、極性を保持した場合に0.240Vであった。FeCOからの固体および炭化タングステンとが接触する場合、0.007mVの差が測定され、その際、極性の反転が起こった。
【0052】
例1)〜3)を互いに比較した場合、炭化タングステンと接触する元素のコバルトの存在が、吸入毒性を引き起こすための前提条件として必要不可欠であること、しかし、必要とされる濃度は、コバルトが鉄と同一分で予合金化されている場合、少なくとも20倍以上であることが明らかである。
【0053】
例4)は、WCとコバルトとの間の接触電圧または自由接触電位−当業者に公知の電気化学の法則に従って、水中の分子酸素の濃度に決定的に依存する−が相当な大きさになることを明確に示す。そのようにして測定された0.33Vは、超硬金属の電位差測定から得られる0.301〜0.384V(R&HM 21,135(2003))のMori他の値に匹敵する。しかしながら、意想外にも、コバルトが鉄と合金にされる場合、鉄がコバルトより卑であるにも関わらず、接触電圧は下がる。この現象の理由は知られていない。降下する自由腐食電位によって、腐食現象を促進する力が下がるか、もしくは、これは比較的ゆっくりと進行し、かつ生物学的利用能も同様に下がるということが容易に読み取られる。それゆえ、実施例4の中で記載される自由腐食電位は、硬質材料−バインダー金属−配合物の予想されるべき吸入毒性のための指標として用いることができる。予想されるべき吸入毒性のためのさらなる指標は、相応する接触要素が酸素の存在下で、定義された時間にわたって水と接触するのと同時に溶解するバインダー金属の溶解量である。
図2には、死亡率に対するエアロゾル濃度がプロットされており、かつ上記の例が分類されている。
【符号の説明】
【0054】
1 炭化タングステン(または他の硬質材料)からの正極、 2 コバルトまたは本発明によるバインダー金属配合物から成るバインダー金属からの負極、 3 反応媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの硬質材料粉末および少なくとも2つのバインダー金属粉末を含有する配合物において、第一のバインダー金属粉末中にはコバルトが完全に含有されており、かつ第4周期の元素である元素の周期系の第3族〜第8族からの1つ以上の元素で予合金化されており、および元素粉末のFe、Ni、Al、Mn、Crまたはそれらを混合した合金の群からの少なくとも1つのさらなるバインダー金属粉末が含有されており、かつ、さらなるこのバインダー金属粉末はコバルトを予合金化されなかった形で含有しないことを特徴とする配合物。
【請求項2】
少なくとも1つの硬質材料粉末および少なくとも2つのバインダー金属粉末を含有する配合物において、第一のバインダー金属粉末中にはコバルトが完全に含有されており、かつ元素の周期系の第3族〜第8族からの1つ以上の元素で予合金化されており、および元素粉末のFe、Ni、Al、Mn、Crまたはそれらを混合した合金の群からの少なくとも1つのさらなるバインダー金属粉末が含有されており、かつ、さらなるこのバインダー金属粉末はコバルトを予合金化されなかった形で含有せず、その際、硬質材料と第一のバインダー金属粉末との間の自由腐食電位が、空気飽和水中で標準圧力および室温にて測定して、0.300Vより小さく、その際、硬質材料は正極性を有することを特徴とする配合物。
【請求項3】
少なくとも1つの硬質材料粉末および少なくとも2つのバインダー金属粉末を含有する配合物において、第一のバインダー金属粉末中にはコバルトが完全に含有されており、かつ元素の周期系の第3族〜第8族からの1つ以上の元素で予合金化されており、および鉄粉末、ニッケル粉末、FeNi−合金粉末および予合金FeNi−合金粉末から成る群から選択される少なくとも1つのさらなるバインダー金属粉末が使用され、かつ、さらなるこのバインダー金属粉末はコバルトを予合金化されなかった形で含有しないことを特徴とする配合物。
【請求項4】
第一のバインダー金属粉末中のコバルトの合金相手が、第4周期の元素である、請求項2記載の配合物。
【請求項5】
第一のバインダー金属粉末中のコバルトの合金相手が、Fe、Ni、Cr、Mn、TiおよびAlから成る群から選択される元素である、請求項1または2記載の配合物。
【請求項6】
第一のバインダー金属粉末が、さらなる元素を合金の形で含有してよい、請求項1から5までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項7】
さらなる元素として、Alおよび/またはCuが使用される、請求項6記載の配合物。
【請求項8】
第一のバインダー金属粉末とならんで、鉄粉末、ニッケル粉末、FeNi合金粉末および予合金FeNi−合金粉末から成る群から選択される1つ以上のさらなるバインダー金属粉末が使用される、請求項1または2および4から7までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項9】
前記硬質材料と第一のバインダー金属粉末との間の自由腐食電位が、空気飽和水中で標準圧力および室温にて測定して、0.300Vより小さく、その際、前記硬質材料は正極性を有する、請求項1、3または5のいずれか1項記載の配合物。
【請求項10】
前記硬質材料が、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化モリブデンまたは炭化タングステンを含有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項11】
前記硬質材料が、0.3m2/gより大きい、有利には0.5m2/gより大きい、とりわけ有利には1m2/gより大きいBET表面積を有する、請求項10記載の配合物。
【請求項12】
第一のバインダー金属粉末対さらなるバインダー金属粉末の質量比が、1:10〜10:1である、請求項1から11までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項13】
a)鉄/コバルトおよび鉄/ニッケル/コバルトから成る群から選択される少なくとも1つの予合金粉末;b)鉄およびニッケルから成る群から選択される少なくとも1つの元素粉末、または成分a)とは異なる、鉄およびニッケルから成る少なくとも1つの予合金粉末;c)硬質材料粉末を含有し、その際、成分a)およびb)を合わせた全体の組成物は、コバルト最大90%およびニッケル最大70質量%を含有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項14】
鉄含量が少なくとも10質量%である、請求項13記載の配合物。
【請求項15】
前記バインダーの全体の組成物が、Co最大90質量%、Ni最大70質量%およびFe少なくとも10質量%であり、その際、鉄含量は、不等式
【化1】

(Fe:質量%記載での鉄含量、%Co:質量%記載でのコバルト含量、%Ni:質量%記載でのニッケル含量)を満たし、その際、少なくとも2つのバインダー粉末が使用され、該バインダー粉末に関して、一方のバインダー粉末は、前記バインダーの全体の組成物より鉄に乏しく、かつ他方のバインダー粉末は、前記バインダーの全体の組成物より鉄に富み、かつ、その際、少なくとも1つのバインダー粉末は予合金化されており、かつ、鉄、ニッケルおよびコバルトから成る群から選択される少なくとも2つの元素から使用される、請求項1記載の配合物。
【請求項16】
焼結超硬金属を製造するための、請求項1から15までのいずれか1項記載の配合物の使用。
【請求項17】
多孔質焼結凝集物を製造するための、請求項1から15までのいずれか1項記載の配合物の使用。
【請求項18】
請求項1から15までのいずれか1項記載の配合物を圧縮せずに焼結させることによって得られる、多孔質凝集物。
【請求項19】
請求項18記載の多孔質凝集物ならびにAl、イットリウムおよび/または希土類元素を含有する溶射粉末。
【請求項20】
コバルト含有金属配合物の毒性作用の制御法において、焼結超硬合金または多孔質焼結凝集物を製造するために、請求項1から15までのいずれか1項記載の金属配合物を使用することを特徴とする方法。
【請求項21】
コバルト含有金属配合物の毒性作用の制御法において、成形部材または被覆を製造するために、請求項1から15までのいずれか1項記載の金属配合物、請求項18記載の凝集物または請求項19記載の溶射粉末を使用することを特徴とする方法。
【請求項22】
コバルト含有金属配合物の毒性作用の制御法において、金属配合物中で、コバルトが元素の周期系の第3族〜第8族からの1つ以上の元素と予合金化されていることを特徴とする方法。
【請求項23】
毒物学的作用が、肺線維症および/または超硬合金肺の疾病パターンを包含する、請求項20から22までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−516896(P2010−516896A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546760(P2009−546760)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050845
【国際公開番号】WO2008/090208
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】