説明

金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を含む固体酸化物燃料電池

【課題】優れた気孔性を持ち、強度に優れるとともに支持体層の厚さを減らすことができる金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を含む固体酸化物燃料電池を提供する。
【解決手段】金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体25重量%〜75重量%、及び金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体75重量%〜25重量%でなる金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を燃料極層または燃料極層の支持体層として採用した固体酸化物燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を含む固体酸化物燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)は酸素または水素イオン伝導性を有する固体酸化物を電解質として使用するため、燃料電池の中で最高温度(700〜1000℃)で作動し、すべての構成要素が固体でなっているため、他の燃料電池に比べ、構造が簡単で、電解質の損失及び補充と腐食の問題がなく、貴金属触媒が不要であり、直接内部改質による燃料供給が容易な利点がある。また、高温のガスを排出するため、廃熱を用いる熱複合発電が可能であるという利点も持っている。このような利点のため、固体酸化物燃料電池に関する研究は21世紀初に商業化を目標として
アメリカ、日本などの先進国を中心に活発に行われている。
【0003】
一般的な固体酸化物燃料電池は酸素イオン伝導性の緻密な電解質層と、その両面に位置する多孔性の空気極(cathode)層及び燃料極(anode)層とからなっている。
固体酸化物燃料電池(SOFC)の基本的な動作原理を説明すれば、固体酸化物燃料電池は基本的に水素及び一酸化炭素の酸化反応によって発電する装置で、燃料極層及び空気極層では下記の反応式1のような電極反応が進む。
【0004】
(反応式1)
燃料極層:H2+O2−→H2O+2e−、CO+O2−→CO2+2e−
空気極層:O2+4e−→2O2
全反応:H2+CO+O2→H2O+CO2
【0005】
すなわち、多孔性の空気極層を酸素が透過して電解質に至り、酸素の還元反応によって生成された酸素イオンの緻密な電解質層を通じて燃料極層に移動し、さらに多孔性の燃料極層に供給された水素と反応することで水を生成することになる。この際、燃料極層では電子が生成され、空気極層では電子が消耗されるので、二つの電極を互いに連結すれば電気が流れることになるものである。
このような燃料電池は、酸素と水素が透過する多孔性の空気極層と燃料極層の気孔率を高めてガス透過率を高めることにより燃料電池の効率を向上させることが重要である。しかし、燃料極層は気孔率に比例して電極の強度が減少する問題がある。このような燃料極層の強度減少は燃料電池の機械的寿命を短縮させるため、40000万時間以上の長期耐久性を確保しなければならない燃料電池単位セルにおいて解決すべき問題点として認識されている。
【0006】
また、従来の固体酸化物燃料電池(SOFC)は、強度及び経済的な面で燃料極支持体タイプを多く使用している。そして、このような燃料極支持体タイプの固体酸化物燃料電池は、電気化学反応が電解質層との界面で90%程度発生するため、燃料極層においても機能的な部分を担当する層(機能層)と支持体としての部分を担当する層(支持体層)に分けられる。
この際、支持体層は、電気伝導性及び気孔率を一定水準以上に維持するため、その材料として8mol%のイットリア(Y2O3)が添加されたイットリア安定化ジルコニアを使用した。一方、支持体層の強度を一定水準以上に維持するために支持体層の厚さが厚くなった。これは、8mol%のイットリアが添加されたイットリア安定化ジルコニアは酸素イオン伝導性には優れるが、3mol%のイットリアが添加されたイットリア安定化ジルコニアに比べて強度が1/4倍程度低いからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は前記のような問題点を解決するためになされたもので、固体酸化物燃料電池において燃料極層または燃料極層の支持体層を担当する材料として、既存のイットリア安定化ジルコニア材料と同等な優れた気孔性を持ち、強度に優れるとともに支持体層の厚さを減らすことができる金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を提供することをその目的とする。
このような金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、固体酸化物燃料電池の燃料極層または燃料極層の支持体層として使用可能であり、従来の燃料極層を構成する8mol%のイットリア(Y2O3)が添加されたイットリア安定化ジルコニアの強度を改善するために、酸素イオン伝導性は低いが機械的強度が優れた3mol%のイットリア(Y2O3)が添加されたイットリア安定化ジルコニアを一定成分比で構成する。
【0008】
また、本発明は優れた強度と酸素イオン伝導性を持つ金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を燃料極層または燃料極層の支持体層として採用した固体酸化物燃料電池を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一面によれば、金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体25重量%〜75重量%;及び金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体75重量%〜25重量%;を含む、金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体が提供される。
前記金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、前記金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体が45重量%〜55重量%であり、前記金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体が55重量%〜45重量%であってもよい。
前記金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、金属酸化物がニッケル酸化物または銅酸化物であってもよい。
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の他の面によれば、燃料ガスが透過するもので、金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体25重量%〜75重量%、及び金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体75重量%〜25重量%でなる金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を含む燃料極層;前記燃料極層上に形成される電解質層;及び前記電解質層上に形成され、酸素ガスが透過する空気極層;を含む、固体酸化物燃料電池が提供される。
前記燃料極層の前記金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、前記金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体が45重量%〜55重量%であり、前記金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体が55重量%〜45重量%であってもよい。
前記燃料極層の前記金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、金属酸化物がニッケル酸化物または銅酸化物であってもよい。
【0011】
前記燃料極層は、支持体層、及び前記支持体層上に形成され、前記電解質層に接触する機能層を含み、前記支持体層は、金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体25重量%〜75重量%及び金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体75重量%〜25重量%でなる金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体でなり、前記機能層は金属酸化物−イットリアが安定化ジルコニアでなることができる。
前記支持体層の前記金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、前記金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体が45重量%〜55重量%であり、前記金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体55重量%〜45重量%であってもよい。
【0012】
本発明の特徴及び利点は添付図面に基づいた以降の詳細な説明からより明らかになるであろう。
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び請求範囲に使用された用語や単語は通常的で辞書的な意味に解釈されてはいけなく、発明者がその自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されなければならない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、気孔率及び酸素イオン伝導性に優れ、薄型化が可能であるとともに強度にすぐれる。
また、本発明による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を燃料極層または燃料極層の支持体層として採用した固体酸化物燃料電池は、同じ強度を持っていても薄型の構成が可能であり、燃料電池を長期間使用しても酸素イオン伝導性を維持しながら燃料極層の強度を維持することができるので、固体酸化物燃料電池の機械的寿命が延びる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体のSEMイメージである。
【図2】本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体のSEMイメージである。
【図3】本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体のSEMイメージである。
【図4】イットリア安定化ジルコニア複合体のイットリアモル%によるバンディング強度を示すグラフである。
【図5】本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体において、金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体と金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体の重量%によるバンディング強度を示すグラフである。
【図6】本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体において、金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体と金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体の重量%による破壊靱性を示すグラフである。
【図7】本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を燃料極層として採用した固体酸化物燃料電池を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を燃料極層の支持体層で採用した固体酸化物燃料電池を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的、特定の利点及び新規の特徴は添付図面を参照する以下の詳細な説明及び好適な実施例から一層明らかに理解可能であろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるにあたり、同じ構成要素がたとえ他の図面に図示されていても、できるだけ同じ符号を付けることにする。また、本発明の説明において、関連した公知の技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不要にあいまいにすることができると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
図1〜図3は本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体のSEMイメージである。
以下、同図に基づいて本発明の金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体について説明する。
本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体を25重量%〜75重量%含み、金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体を75重量%〜25重量%含む。
【0017】
図1〜図3に示す金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア(以下、MO−3YSZ)と金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア(以下、MO−8YSZ)が所定の重量比を持つ。図1に示す金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、MO−3YSZとMO−8YSZが75重量%:25重量%の重量比を持ち、図2及び図3はそれぞれ50重量%:50重量%、25重量%:75重量%の重量比を持つ。
図1には単斜相(monoclinic phase)のMO−3YSZが高い割合を占めており、立方相(cubicphase)のMO−8YSZは低い割合で形成されている。また、図2及び図3に行くほど立方相(cubicphase)のMO−8YSZの割合が高くなることが分かる。
【0018】
図1〜図3に示す金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、固体酸化物燃料電池の燃料極層または燃料極層の支持体層(以下、燃料極)として採用できる。
特に、燃料極支持体形固体酸化物燃料電池に採用される場合、燃料極層は多層構造単電池の支持体の役目をしなければならないため機械的物性を持たなければならなく、同時に燃料の酸化反応のための電気化学的物性を満足させなければならない。また、電気伝導性やガス透過性に優れなければならなく、燃料の酸化反応の際に生成される水蒸気をなだらかに排出させなければならないため、気孔を含む多孔性構造を持たなければならない。本発明の金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニアと金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニアが所定の重量比を持って前記のような特徴を満足させる。
【0019】
本発明による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、金属酸化物(MO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)でなる。
金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は多孔性構造を持ち、金属酸化物(MO)は燃料に対して触媒活性と電子伝導性を持ち、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)は酸化物で、イオン伝導性を持つ。この際、金属酸化物は遷移金属酸化物を採用することが好ましく、特に電子伝導性が高いニッケル酸化物または銅酸化物を採用することがより好ましい。
一方、前記複合体において、金属酸化物(MO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の組成重量比は、機械的強度、熱膨張係数、電気伝導性及びガス透過性を考慮して調節できる。例えば、金属酸化物(MO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の重量比は70重量%:30重量%〜50重量%:50重量%を持つことが好ましい。
【0020】
そして、本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、金属酸化物(MO)とイットリア安定化ジルコニアの重量比が同一(または同等な重量比を持つ)であるが、イットリア安定化ジルコニア(以下、YSZ)に添加されたイットリア(Y2O3)のモル%が他の二つの金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア(MO−YSZ)の複合体である。
【0021】
このような二つの金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア(MO−YSZ)はそれぞれ3モル%イットリア安定化ジルコニア(以下、3YSZ)と8モル%イットリア安定化ジルコニア(以下、8YSZ)を採用する。
すなわち、本発明による複合体は、金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア(以下、MO−3YSZ)と金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア(以下、MO−8YSZ)の複合体である。
一方、YSZの酸素イオン伝導性は酸素空孔(empty hole)濃度に起因し、強度はYSZに添加されたイットリアのモル%の変化によって発生するYSZの体積増加に起因する。例えば、単斜相(monoclinic phase)から正方相(tetragonal phase)に変態するとき、体積は約4.5%増加して強度は減少する。
【0022】
ここで、図4に基づいてYSZのイットリアモル%によるバンディング強度に対して検討する。図4に示すように、3YSZと8YSZの中間組成でバンディング強度が直線的に減少することが分かる。これは、YSZに添加されたイットリアの含量が約4モル%〜6モル%の場合、t'−form正方相YSZが大部分をなすからである。
【0023】
正方相のYSZはイットリアのモル%によって違う形態として存在する。イットリアのモル%が増加するにつれてt−form、t'−form、t"−formの形態として存在する。t−formは'変態可能な正方相YSZと呼ばれ、3モル%イットリアが添加されたYSZまで存在し、t'−formは'変態しにくい正方相YSZと呼ばれ、6.5モル%イットリアが添加されたYSZまで存在し、t"−formは立方相に近い正方相YSZであって、7モル%イットリアが添加されたYSZで存在する。
前記のように、広い範囲で正方相として存在するYSZは強度が低下する。一方、イットリアが8モル%以下では正方相と立方相が混在し、8モル%以上では立方相として存在する。
一方、イットリアのモル%が増加するにつれて酸素空孔の濃度が増加してイオン伝導性は増加する。よって、本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、3YSZを含むMO−3YSZが複合体の強度を増加させ、8YSZを含むMO−8YSZはイオン伝導性を向上させる。
【0024】
これにより、本発明の金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、薄い厚さを持っても一定水準以上の強度を持ち、イオン伝導性は向上する。
この際、金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体の強度とイオン伝導性は3YSZと8YSZの重量比によって違う。これは図5に基づいて説明する。
【0025】
図5は本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体において、3YSZと8YSZの重量%によるバンディング強度を示すグラフである(これはMO−3YSZとMO−8YSZのバンディング強度とその割合が非常に類似である)。
3YSZが100重量%を占める場合、バンディング強度は1000MPaである。しかし、8YSZの含量が0%であるため、イオン伝導性は非常に低い。
3YSZが75重量%で、8YSZが25重量%である金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は相対的に強度が維持され、イオン伝導性が向上する。そして、3YSZが25重量%で、8YSZが75重量%である金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は8YSZが100重量%を占める場合に比べて強度は向上し、イオン伝導性は同等に維持される。
【0026】
この際、3YSZが45重量%〜55重量%で、8YSZが55重量%〜45重量%である金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体が最も好ましい。このような金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、3YSZが75重量%で、8YSZが25重量%である金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体に比べ、バンディング強度は約50MPa減少するがイオン伝導性は非常に向上する。
【0027】
図6は本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体において、3YSZと8YSZの重量%による破壊靱性を示すグラフである(これはMO−3YSZとMO−8YSZの破壊靱性とその割合が非常に類似である)。
図6に示すグラフを参照すれば、図5に示すグラフから得た結果と非常に類似の結果を得ることになる。よって、イオン伝導性対比破壊靱性の面でも3YSZが45重量%〜55重量%であり、8YSZが55重量%〜45重量%である金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体が最も好ましい。
【0028】
前述した金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体の製造方法について検討する。MO−3YSZとMO−8YSZが所定の重量比で混合された粉末をジルコニアジャー(jar)でエタノールとともに24時間乾燥する。次に、金型モールド(例えばバー(bar)形態)に前記過程を経た混合粉末を満たし、75MPa圧力の条件で金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体のグリーンボディー(green body)を製作する。その後、1400℃で3時間焼結すると、本発明による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体が製造される。
【0029】
図7は本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を燃料極層として採用した固体酸化物燃料電池を概略的に示す断面図である。以下、同図に基づいて本発明の好適な実施例による固体酸化物燃料電池を説明する。
【0030】
図7に示すように、固体酸化物燃料電池1は、燃料ガスが透過する燃料極層10、電解質層20、及び酸素ガスが透過する空気極層30を含む。
燃料極層10は、図1〜図6に基づいて前述した金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体が採用される。前記複合体を採用すれば、イオン伝導性は維持しながら強度を向上させるので、固体酸化物燃料電池を長期間使っても燃料極層10の不良を防止することができ、固体酸化物燃料電池に含まれた単位セルの厚さを減少させることができる。特に、燃料極支持体形固体酸化物燃料電池に適する。
【0031】
ここで、電解質層20は燃料極層10上に形成される。電解質層10は固体酸化物電解質層で、水溶液や溶融塩のような液体電解質に比べてイオン伝導率が低いので、抵抗分極による電圧降下を減少させるため、できるだけ薄く形成されることが好ましい。このような電解質層20の材料は一般的に燃料極層10に使用されるイオン伝導性酸化物と同様な素材が採用でき、8YSZが採用されることが好ましく、サマリウム(Sm)またはガドリニウム(Gd)が添加されたセリア(Ceria)が採用できる。ただ、これらに制限されるものではない。
そして、空気極層30は電解質層20上に形成され、酸素ガスが透過する。一般に、空気極層30はペロブスカイト構造(ABO3、A=希土類及びアルカリ土類金属、B=遷移金属、O=酸素)を持つストロンチウム(Sr)が添加されたランタン(La)マンガン(Mn)オキサイド(La1−xSrxMnO3:以下LSMと略称)またはLSM/YSZ複合体が採用できる。ただ、これらに制限されるものではない。
【0032】
一方、本発明による固体酸化物燃料電池1は前述した燃料極層10、電解質層20、及び空気極層30を含み、平板型、円筒形などの多様な形態に製作でき、特定形態の燃料電池に限定されない。
【0033】
図8は本発明の好適な実施例による金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を燃料極層の支持体層として採用した固体酸化物燃料電池を概略的に示す断面図である。以下、同図に基づいて固体酸化物燃料電池を説明する。ただ、図7に示す構成要素と同一構成要素についての説明は省略する。
【0034】
図8に示す固体酸化物燃料電池1'は、燃料極層10が支持体層10−1と機能性層10−2を含む。
支持体層10−1は、例えば多層構造単電池において支持体の役目をしなければならないため、機械的物性を持たなければならなく、燃料の酸化反応のための電気化学的物性を満足させなければならない。よって、支持体層10−1としては、図1〜図6に基づいて前述した金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体が採用される。
【0035】
機能層10−2は支持体層10−1上に形成され、前記電解質層20に接触する。すなわち、機能層10−2は支持体層10−1と電解質層20との間に形成される。機能層10−2は金属酸化物−イットリア安定化ジルコニアが採用でき、特に金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)が採用されることが好ましい。
燃料極層10をなす支持体層10−1と機能層10−2は役目を分担し、相互に補完する。この際、電気化学的活性は低下しても気体透過性が向上した気孔率を持つ支持体層10−1を採用してイオンを電解質層に近くに早く移動させ、支持体層で減少した電気化学的な活性を確保するために、支持体層10−1と電解質層20との間に機能層10−2を採用して電解質層20との活性を向上させる。
【0036】
本発明は前述したような実施例に限定されるものではなく、本発明の思想及び範囲を逸脱しない多様な修正及び変形が可能であることが当該技術分野での通常の知識を持った者に明らかである。よって、そのような変形例または修正例は本発明の特許請求範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0037】
100−1 金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体
100−2 金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体
100−3 金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体
1、1' 固体酸化物燃料電池
10 燃料極層
10−1 支持体層
10−2 機能層
20 電解質層
30 空気極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスが透過するもので、金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体25重量%〜75重量%、及び金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体75重量%〜25重量%でなる金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体を含む燃料極層;
前記燃料極層上に形成される電解質層;及び
前記電解質層上に形成され、酸素ガスが透過する空気極層;
を含むことを特徴とする、固体酸化物燃料電池。
【請求項2】
前記燃料極層の前記金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、前記金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体が45重量%〜55重量%であり、前記金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体が55重量%〜45重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項3】
前記燃料極層の前記金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、金属酸化物がニッケル酸化物または銅酸化物であることを特徴とする、請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項4】
前記燃料極層は、支持体層、及び前記支持体層上に形成され、前記電解質層に接触する機能層を含み、
前記支持体層は、金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体25重量%〜75重量%及び金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体75重量%〜25重量%でなる金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体でなり、
前記機能層は金属酸化物−イットリアが安定化ジルコニアでなることを特徴とする、請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項5】
前記支持体層の前記金属酸化物−イットリア安定化ジルコニア複合体は、前記金属酸化物−3モル%イットリア安定化ジルコニア複合体が45重量%〜55重量%であり、前記金属酸化物−8モル%イットリア安定化ジルコニア複合体55重量%〜45重量%であることを特徴とする、請求項4に記載の固体酸化物燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−209266(P2012−209266A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−144194(P2012−144194)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2010−142457(P2010−142457)の分割
【原出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】