説明

金属酸化物セラミックス用前処理材

【課題】 金属酸化物セラミックスに重合性単量体を含む硬化性組成物を接着させるに際して、予め、該金属酸化物セラミックスの接着面に塗布しておく前処理材において、その接着性をさらに高め、この高い接着力が過酷な環境下でも長期的に維持できるものを開発すること。
【解決手段】 ジルコニウムカップリング剤、好適には、ジルコニウムに、下記式(1)
【化1】


で示される、有機官能性アルコキシ基が少なくとも一つ結合する化合物の有機溶液からなる金属酸化物セラミックス用前処理材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化アルミニウムや酸化ジルコニウム等の金属酸化物セラミックスに対する前処理材、詳しくはこれら金属酸化物セラミックスに、重合性単量体を含む硬化性組成物を接着させるに際して、予め、その接着面に塗布しておく前処理材に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科医療において、う蝕歯や欠損歯の修復を目的に、シリカを主成分としたセラミックス製歯科用補綴物を、レジンセメント等の歯科用セメントを用いて歯質に接合させることが行われている。その際には、該シリカを主成分としたセラミックスと歯科用レジンセメントとの接着性を高めるため、シランカップリング剤を主成分とする前処理材(セラミックス用プライマー)を用いるのが一般的である。
【0003】
例えば、シランカップリング剤と、分子内に少なくとも1個のラジカル重合可能なオレフィン性二重結合を有する酸性型有機リン化合物を含む歯科用前処理材が提案されている(特許文献1および2参照)。この前処理材は、上記酸性型有機リン化合物が、シランカップリング剤を活性化させ、セラミックス表面のシラノール基の縮合を促進する触媒として働いている。
【0004】
歯科用セラミックスの分野に着目した場合、より高強度な補綴物用素材として、酸化ジルコニウムや酸化アルミニウム等の金属酸化物セラミックスが普及しつつある。ところが、こうした金属酸化物セラミックス製の歯科用補綴物は、前記シランカップリング剤を主成分とする前処理材を用いて、歯科用レジンセメントにより歯質に接着させても接着性が十分ではなく、たとえ接着初期には強固に結合していたとしても、過酷な口腔内環境において長期に保持されると接着強度が急速に低下するものであった。これは、歯科用補綴物が、シリカ製である場合には、その表面には多数のシラノール基が存在しているため、前記前処理材に含まれるシランカップリング剤が高率に反応するのに対して、その素材が金属酸化物セラミックスになると、表面には斯様なシラノール基はほとんど存在しないため、該シランカップリング剤の反応性が大きく低減してしまうためと考えられる。
【0005】
また、こうしたシランカップリング剤を用いたもの以外の、金属酸化物セラミックス用前処理材として、ホスホン酸基含有(メタ)アクリレート系単量体を含むもの(特許文献3)や、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート等の特定の構造の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を含むもの(特許文献4)も提案されている。しかし、本発明者がそれぞれの接着力を評価したところ、これらも初期の接着力については高い強度が認められたものの、その耐久性が十分ではなく、歯科用補綴物における口腔内での長期使用を勘案すると、やはりさらなる接着力の向上が望まれるものであった。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−51308号公報
【特許文献2】特開平07−277913号公報
【特許文献3】特開2006−045179号公報
【特許文献4】特開2007−238498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の背景にあって本発明は、金属酸化物セラミックスに重合性単量体を含む硬化性組成物を接着させるに際して、予め、該金属酸化物セラミックスの接着面に塗布しておく前処理材において、その接着性をさらに高め、この高い接着力が過酷な環境下でも長期的に維持できるものを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を克服すべく鋭意検討を重ねたところ、前処理剤の有効成分としてジルコニウムカップリング剤を用いることにより、前記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、金属酸化物セラミックスに、重合性単量体を含む硬化性組成物を接着させるに際して、予め、該金属酸化物セラミックスの接着面に塗布しておく前処理材であって、ジルコニウムカップリング剤の有機溶液からなる金属酸化物セラミックス用前処理材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の前処理材を、予め、金属酸化物セラミックスの表面に塗布しておくことにより、その上で硬化させた硬化性組成物を強固に接着させることができ、この高い接着力は過酷な環境下でも長期的に維持できる。したがって、本発明の前処理剤を、金属酸化物セラミックス製歯科用補綴物に対する前処理剤として適用した場合には、歯科用レジンセメントを高い接着強度で接着でき、これに起因して、該歯科用補綴物と歯質とを長期的に強固に接合させることが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の前処理材は、ジルコニウムカップリング剤を含むことが必須である。ここで、ジルコニウムカップリング剤とは、ジルコニウムの有機官能性アルコキシドをいう。ここで、有機官能基としては、有機材料と反応結合する官能基であれば特に制限されるものではなく、例えば、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基等のラジカル重合性基が挙げられる。このような有機官能基を有するジルコニウムカップリング剤としては、例えば、アリルトリメトキシジルコニウム、アリルトリアセトキシジルコニウム、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシジルコニウム、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)ジルコニウム、ω−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメトキシジルコニウム、ビニルトリメトキシジルコニウム、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)ジルコニウム等が挙げられる。
【0012】
本発明においてジルコニウムカップリング剤は、その接着性の高さから、ジルコニウムに、下記式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
で示される、有機官能性アルコキシ基が少なくとも一つ結合する化合物からなるものが特に好適である。この上記式(1)で示される有機官能性アルコキシ基は、ジルコニウムの4価の結合手のすべてに結合していても良い。さらに、上記式(1)で示される有機官能性アルコキシ基は、斯様にジルコニウムに直接結合するものに加えて、ジルコニウムに結合する他の基において、その一部に含まれていても良い。このようなジルコニウムカップリング剤の具体例を示すと次のとおりである。
【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
本発明においてこれらのジルコニウムカップリング剤は、1種の化合物を単独で用いることができるが、2種以上の化合物を組合せて用いることも可能である。
【0018】
本発明の金属酸化物セラミックス用前処理材において、かかるジルコニウムカップリング剤の有機溶液中における濃度は特に限定されないが、接着強度及び過剰使用防止の観点から0.01〜20質量%の範囲内であることが好適である。上記ジルコニウムカップリング剤濃度のさらに好ましい濃度範囲は0.1〜10質量%である。
【0019】
本発明で使用する有機溶媒は、ジルコニウムカップリング剤を溶解するものであれば、一般の有機溶剤あるいは重合性単量体が何等制限なく使用できる。
【0020】
金属酸化物セラミックスに前処理した後気散させるのが容易であることから、有機溶剤は揮発性のものが好ましい。なお、ここで言う揮発性とは、760mmHgでの沸点が200℃以下であり、且つ20℃における蒸気圧が0.5KPa以上であることを言う。本発明で好適に使用できる上記揮発性の有機溶剤を具体的に例示すれば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル、蟻酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のハイドロカーボン系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒;トリフルオロエタノール等のフッ素系溶媒等が挙げられる。生体に対する毒性を考慮するとアセトン、エタノール、イソプロパノール等が特に好ましく使用される。
【0021】
また、本発明で有機溶媒として好適に使用できる重合性単量体は、例えばラジカル重合性を示すものである。好適に使用できる重合性単量体を具体的に例示すれば、メチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、トリエチレングリコールジメタクリレート等の重合性の高いアクリルまたはメタクリル系重合性単量体及びスチレン等が挙げられる。
【0022】
上記の有機溶媒は1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0023】
また、本発明の前処理材には、種々の目的で、前処理材としての性能を損なわない範囲で上記した成分以外のものを配合することが可能である。このような成分としてはジルコニウムカップリング剤以外のカップンリング材、重合開始剤、重合禁止剤、重合調整剤、紫外線吸収剤、金属塩、無機又は有機酸、水、充填材、増粘剤、染料、顔料、酸増殖剤、塩基増殖剤、抗菌剤等が例示される。
【0024】
本発明で任意成分として配合されるジルコニウムカップリング剤以外のカップリング剤としては公知のものが制限なく使用できる。例えば、シランカップリング剤類、チタネート系カップリング剤類、アルミニウム系カップリング剤類が挙げられる。これらジルコニウムカップリング剤以外のカップリング剤のなかでも、特に、接着性及び取扱い性の観点から、重合性基を有するシランカップリング剤が好適に使用される。ここで、重合性基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性のものが挙げられ、その重合性が高いことから(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0025】
本発明の前処理剤に、シランカップリング剤を加えた場合には、上記金属酸化物セラミックスだけでなく、シリカを主成分とするセラミックスに対しても、高い接着性を有するものになり好ましい。
【0026】
好適に使用される重合性基を有するシランカップリング剤を具体的に例示すると、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シラン、ω−メタクリロイロキシデシルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルペンタメチルジシロキサンが挙げられる。これらのカップリング剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0027】
本発明の前処理材において、ジルコニウムカップリング剤以外のカップリング剤の有機溶液中における濃度は特に限定されないが、接着強度の観点から0.01〜20質量%の範囲内であることが好適である。ジルコニウムカップリング剤以外のカップリング剤の濃度のさらに好ましい濃度範囲は0.1〜10質量%である。
【0028】
本発明の前処理材を調製する方法については特に制限はなく、前記の各成分を混合し、均一になるまで攪拌混合すればよい。
【0029】
本発明の前処理材は、金属酸化物セラミックスに、重合性単量体を含む硬化性組成物を接着させるに際して、予め、該金属酸化物セラミックスの接着面に塗布するものとして制限なく使用される。斯様に前処理しておくことにより、金属酸化物セラミックスと硬化性組成物の接着力は大きく向上し、該硬化性組成物が接着材である場合には、金属酸化物セラミックスと該接着材の被接合物とを長期に強固に接合できる。
【0030】
前処理の対象とする金属酸化物セラミックスとしては、酸素を酸化数−2の状態で含む酸素と金属元素からなる化合物が挙げられる。なお、酸化物を構成する上記金属元素には、半金属、例えばシリカの構成元素であるケイ素は含まれない。
【0031】
好適な金属元素を例示するならば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の1A族;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の2A族;イットリウム、ランタン等の3A族;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の4A族、およびアルミニウム、インジウム等の3B族が挙げられる。中でも、毒性が少ないことや本発明の前処理材の効果が高い点で、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の4A族、およびアルミニウム、インジウム等の3B族の金属元素を主成分とするものがより好ましく、酸化物とした時の強度が高い点で、ジルコニウム及びアルミニウムが最も好ましい。
【0032】
金属酸化物セラミックスは、上記金属元素から選ばれる、一種の酸化物であっても良いし、複数種の複合酸化物であっても良い。
【0033】
本発明の前処理材を塗布する対象物は、上記金属酸化物セラミックスを素材とするものであれば制限なく適用できるが、インレー、アンレー、クラウンなどの歯冠用修復物が最も実用的である。
【0034】
また、前処理剤と組合せて使用する硬化性組成物は、重合性単量体を含むものであり、通常は、重合開始剤が含有されている。重合性単量体としては、公知のものが制限なく適用でき、例えば、ビニル系重合性単量体、スチレン系重合性単量体、アリル系重合性単量体等であっても良いが、接着性の高さから(メタ)アクリル系重合性単量体が最も好ましい。この硬化性組成物に使用する(メタ)アクリル系重合性単量体としては、前記有機溶媒として使用可能なものとして例示したものを始めとした公知のものが制限なく使用できる。
【0035】
本発明の前処理材を適用する金属酸化物セラミックスが、前記した歯科用補綴物である場合には、上記(メタ)アクリル系重合性組成物は、歯科用レジンセメントが用いられる。該歯科用レジンセメントには、レジンセメントの他、レジン強化型グラスアイオノマーセメント、レジンアイオノマーセメント等が制限なく使用できる。該歯科用レジンセメントは、(メタ)アクリル系重合性単量体、重合開始剤、さらにフィラーを含有してなるものであり、フィラーの含有量は、(メタ)アクリル系重合性単量体100質量部に対して1〜10000質量部であるのが一般的であり、10〜2000質量部であるのがより好ましい。重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系重合性単量体100質量部に対して0.01〜20質量部であるのが一般的である。
【0036】
前処理剤の使用方法は、上記歯科用補綴物等からなる金属酸化物セラミックスの表面に塗布した後、有機溶媒を揮発させ、その後該金属酸化物セラミックス表面に、歯科用レジンセメント等の硬化性組成物を盛って、さらに該硬化性組成物が接着材である場合にはこれを歯質等の被接合物に接合して硬化させる方法が好適に採用できる。その塗布量は、特に制限されるものではないが、通常は、スポンジ等の塗布具を用いて一層塗布することにより実施すればよい。
【0037】
上記歯科用補綴物を歯質に接合させる態様においては、本発明の前処理材は、前記歯科用レジンセメントと組合せて、歯科用補綴物の歯質への接着用キットとするのが効率的である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこの実施例によって何等限定されるものではない。
【0039】
次に実施例中に使用した化合物の略称または構造を下に示す。
(1)略称または構造
a)ジルコニウムカップリング剤
NZ 33(商品名、KENRICH PETROCHEMICALS社製):ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリメタクリルジルコネイト
【0040】
【化4】

【0041】
KZ 55(商品名、KENRICH PETROCHEMICALS社製):テトラ(2,2ジアリロキシメチル)ブチル,ジ(ジトリデシル)ホスフェイトジルコネイト
【0042】
【化5】

【0043】
KZ TPP(商品名、KENRICH PETROCHEMICALS社製):シクロ[ジネオペンチル(ジアリル)]ピロホスフェイトジネオペンチル(ジアリル)ジルコネイト
【0044】
【化6】

【0045】
b)有機溶媒
b−1)有機溶剤
EtOH:エタノール
AC:アセトン
b−2)重合性単量体
NBM:2,2−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパンとトリエチレングリコールジメタクリレートが質量比で6:4の混合物
MMA:メチルメタクリレート
PM:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジエンホスフェートとビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジエンホスフェートが物質量比で1:2の混合物
AAEM:2−アセトアセトキシエチルメタクリレート
c)その他
MPS:γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン
(2)前処理材を用いた金属酸化物セラミックスに対する接着強さ
金属酸化物セラミックスとして酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウムを用い、これを#120の耐水研磨紙で研磨した。その後、サンドブラスト処理を行い、超音波洗浄し、自然乾燥した。その処理面に接合面積を固定するために3mmφの穴を開けた粘着テープを貼り付けた。接合面に実施例または比較例の前処理材をそれぞれ筆で塗布し、溶媒を風乾させた後、該接合面に歯科用接着性レジンセメント(ビスタイトII、(株)トクヤマデンタル社製)を用いて、予め研磨した8mmφ×18mmのSUS304製丸棒を接着した。全接着試験片12個を37℃水中に24時間浸漬し、6個の試験片についてはその状態で、残りの6個の試験片については4℃の冷水中と60℃の温水中に各々1分間ずつ浸漬するサーマルサイクルを3000回負荷した後に、島津製作所製オートグラフ(クロスヘッドスピード2mm/分)を用いて引張接着強さを測定した。各々6個の試験片の測定値を平均し、測定結果とした。また、上記接着強さを測定するのに併せて、引き剥がれた面も観察し、上記歯科用レジンセメントの凝集破壊率も求めた。
【0046】
実施例1
0.5gのジルコニウムカップリング剤「NZ 33」を99.5gの有機溶剤エタノールに溶解させ、これを前処理材とした。上記試験方法に従い、該前処理材の金属酸化物セラミックスに対する接着強度を調べた。その結果、酸化ジルコニウムに対して22.1MPa(セメント凝集破壊率100%)、酸化アルミニウムに対して20.0MPa(セメント凝集破壊率100%)の接着強度を示した。また、サーマルサイクル試験後は酸化ジルコニウムに対して17.5MPa(セメント凝集破壊率60%)、酸化アルミニウムに対して16.4MPa(セメント凝集破壊率50%)の接着強度を示した。
【0047】
実施例2〜10
表1に記載した組成の前処理材を作製し、それぞれ上記試験方法に従い、金属酸化物セラミックスに対する接着効果を調べた。それぞれ良好な接着性を有していることが明らかになった。
【0048】
比較例1〜3
ジルコニウムカップリング剤を用いなかった以外は、実施例1と同様に金属酸化物セラミックスに対する接着強度を測定した。それぞれ、実施例と比較して接着強度が低かった。
【0049】
比較例4
シリカ主成分のセラミックスに対する一般的な前処理材であるシランカップリング剤を用いて、金属酸化物セラミックスに対する接着強度を測定した。実施例と比較して接着強度が低かった。
【0050】
比較例5
金属酸化物セラミックスの前処理材であるAAEM(特許文献4)を用いて、表1に記載した組成の前処理材を作製して、金属酸化物セラミックスに対する接着強度を測定した。初期の接着強度は良好であったが、実施例と比較してTC3000回の接着強度が低かった。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物セラミックスに、重合性単量体を含む硬化性組成物を接着させるに際して、予め、該金属酸化物セラミックスの接着面に塗布しておく前処理材であって、ジルコニウムカップリング剤の有機溶液からなる金属酸化物セラミックス用前処理材。
【請求項2】
ジルコニウムカップリング剤が、ジルコニウムに、下記式(1)
【化1】

で示される、有機官能性アルコキシ基が少なくとも一つ結合する化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物セラミックス用前処理材。
【請求項3】
金属酸化物セラミックスが歯科用補綴物であり、硬化性組成物が歯科用レジンセメントである請求項1または請求項2に記載の金属酸化物セラミックス用前処理材。
【請求項4】
請求項1記載の金属酸化物セラミックス用前処理材および歯科用レジンセメントを含んでなる、金属酸化物セラミックスからなる歯科用補綴物の歯質への接着用キット。

【公開番号】特開2009−209109(P2009−209109A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55465(P2008−55465)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】