説明

金属酸化物分散体及びそれを用いてなる樹脂組成物ならびに成形体

【課題】
ナノフィラーはその体積が小さくなること、表面積が大きくなることなどによりバルク粒子には無い特性を持つことが知られているが樹脂中に分散させることが非常に難しい。特別な分散機を新たに設置することなく金属酸化物を樹脂中に容易に均一に分散させ、高温でも安定性な金属酸化物分散体およびそれを含んでなる樹脂組成物やその製造方法を提供することにある。
【解決手段】
常温溶融塩とシラン系表面処理剤と一次粒子の少なくとも1辺が0.1〜100nmである金属酸化物からなることを特徴とする金属酸化物分散体、および前記金属酸化物分散体を含有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノサイズの金属酸化物を高濃度かつ高分散に含有した金属酸化物分散体及び該分散体を配合した樹脂組成物ならびに成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に100nmより小さなフィラーはナノフィラーと呼ばれる。ナノフィラーはナノ粒子化することで同じ化学的成分を持っているバルク状態にある物質とは異なった特性を発現しうることが知られている。新たな特性としては粒子の体積が小さくなることで発現した特性、例えば光の波長より小さくなることでバルク時の特性を保持したまま透明な材料を提供できるなど、また粒子の比表面積が増大し表面の活性が増大することで発現した特性、例えば表面原子の比率が内部原子の比率に対して無視できなくなるほど大きくなることで発現する表面プラズモン吸収により特定の光を吸収して金属の種類や粒子の大きさで色が異なって見える現象などがある。その他にもナノ粒子化することで磁区より小さくすることで一旦磁化させれば永久磁石のように磁化がとれなくしたりする技術、ナノフィラーをポリマーに少量分散させることで燃焼発熱量を押さえる技術、ポリマーの相溶化剤としてナノフィラーを用いる技術、ナノフィラーにすることで表面積を増大させバルク時の機能を効率的に発現させる技術など様々である。これらの特性からエレクトロニクス、エネルギー、化学、複合材料など様々な分野での応用が期待されている。
【0003】
しかし、ナノフィラーが一次粒子まで分散されないとその特性は十分に発揮されない。また、表面活性が高いため凝集しやすく、その分散が非常に困難である。特にプラスチック中への分散は非常に困難である。一般的なマイクロオーダー以上の金属酸化物で用いられている表面処理技術を用いると、その表面積から均一に表面処理がされず分散が不十分だったり、ナノフィラーの表面活性を抑えきれなかったりなどの不具合が生じた。また、一般的な顔料の分散方法であるワックスに分散させる方法をナノフィラーの分散に適用すると、特に、ナノフィラーが高濃度の場合、接触頻度が上がり凝集を起こしワックス中での分散安定性ができなかったり、表面積が上がることでの吸油率上昇による分散不良がおこったりなどの不具合があった。
従来、無機フィラーを樹脂中に分散させる技術としては、無機微粒子粒子へ3本ロールなどで粒子間凝集力相当以上の剪断応力を与え解砕されて微分散させる技術が知られている(特許文献1参照)。また、多価アルコールとオルガノポリシロキサンで被覆した微粒子弁柄をオキシカルボン酸金属塩と共に分散させる手法(特許文献2参照)、変性ポリマーをベースポリマーとは別に用いナノフィラーを分散させている技術(特許文献3、4参照)、ITOを可塑剤とアルコール系溶媒からなる溶媒へ分散させたものを樹脂へ練りこむ技術(特許文献5参照)などが知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術は3本ロールを使うことから加水分解するような樹脂は不向きであり、また洗浄性にも問題がある。特許文献2記載の技術は、あくまで色材としてのナノ粒子であり一次粒子までの分散を必要としていないため、その分散性が不十分である問題点がある。また特許文献3および4記載の技術は、ナノフィラーの種類(表面処理なども含む)やベースレジンによって変性ポリマーを変える必要があり汎用的に使えないことや、一般的な粒径の無機フィラーにも用いられる手法に近似しておりその分散性は不十分であるなどの問題があった。特許文献5の技術は可塑剤を用いており物性に悪影響を与える問題やアルコールを除去する必要性があるなどの加工面での問題もあった。
【特許文献1】特開2004−189814号公報
【特許文献2】特開2005−146233号公報
【特許文献3】特開2000−336278号公報
【特許文献4】特開2007−314667号公報
【特許文献5】特開2005−187226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はナノサイズの金属酸化物を高濃度かつ高分散に含有した金属酸化物分散体及び該分散体を配合した樹脂組成物ならびに成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は常温溶融塩とシラン系表面処理剤と一次粒子の少なくとも1辺が0.1〜100nmである金属酸化物からなることを特徴とする金属酸化物分散体に関する。
さらに本発明は常温溶融塩がイミダゾリウム系、ピリジニウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系、または、スルホニウム系イオン性液体から選ばれる1種又は2種以上からなることを特徴とする金属酸化物分散体に関する。
さらに本発明はシラン系表面処理剤がシランカップリング剤またはシリコーンオイルである金属酸化物分散体に関する。
【0007】
さらに本発明は金属酸化物が酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニア、シリカ、酸化インジウム錫、アンチモンドープ酸化錫のいずれかであることを特徴とする金属酸化物分散体に関する。
【0008】
さらに本発明は金属酸化物が金属酸化物分散体に対し1〜95重量%含有され、シラン系表面処理剤が金属酸化物に対し0.5〜25重量%含有される金属酸化物分散体に関する。
【0009】
さらに本発明は該金属酸化物分散体を熱可塑性樹脂100重量部に対し0.01〜200重量部添加してなることを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0010】
さらに本発明は該樹脂組成物からなる成形体に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により金属酸化物の予備分散と表面処理を同時に行うことがでた。さらに該金属酸化物分散体は高耐熱であり、これを用いることで樹脂への分散性、加工性が良好な樹脂組成物を得ることができ、それを用いてなる機能が付与された樹脂組成物およびそれを用いた成形体を得ることが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いられる常温溶融塩は、室温付近で液体である塩類の総称であり、室温付近の広い範囲において液体で、また、室温付近の蒸気圧が極めて低いという特徴を有するカチオンとアニオンからなる塩である。
【0013】
常温溶融塩のカチオンとしては、イミダゾリウム、ピリジニウム、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムであり、例えば、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルピリジニウム、トリアルキルピリジニウム、1−フルオロアルキルピリジニウム、1−フルオロトリアルキルピリジニウム、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、トリアルキルスルホニウムなどが挙げられる。
【0014】
さらに詳細な具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−テトラドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキサドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクタドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−エチルイミダゾリウム、1−エチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−エチル−3−ブチルイミダゾリウム、1−エチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、1−オクチル−3−エチルイミダゾリウム、1,2−ジエチル−3,4−ジメチルイミダゾリウム、1−フルオロピリジニウム、1−フルオロ−2,4,6−トリメチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム、1−プロピル3−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウム、1−ヘキシル−3−メチルピリジウム、1−オクチル−4−メチルピリジニウム、1−オクチル−3−メチルピリジニウム、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウム、1−ブチル−3,5−ジメチルピリジニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリメチルヘプチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチル(2−メトキシエチル)アンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘプチルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、ジメチルブチルエチルアンモニウム、ジメチルエチルペンチルアンモニウム、ジメチルエチルヘキシルアンモニウム、ジメチルエチルヘプチルアンモニウム、ジメチルエチルノニルアンモニウム、ジメチルエチルヘプタデシルアンモニウム、ジメチルジプロピルアンモニウム、ジメチルブチルプロピルアンモニウム、ジメチルプロピルペンチルアンモニウム、ジメチルヘキシルプロピルアンモニウム、ジメチルヘプチルプロピルアンモニウム、ジメチルブチルペンチルアンモニウム、ジメチルブチルヘキシルアンモニウム、ジメチルブチルヘプチルアンモニウム、ジメチルヘキシルペンチルアンモニウム、ジエチルヘプチルメチルアンモニウム、ジヘキシルジメチルアンモニウム、ジプロピルブチルヘキシルアンモニウム、ジヘキシルジプロピルアンモニウム、ジエチルメチルプロピルアンモニウム、ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウム、ジプロピルエチルメチルアンモニウム、ジエチルプロピルペンチルアンモニウム、ジエチルメチルペンチルアンモニウム、エチルメチルプロピルペンチルアンモニウム、ジプロピルメチルペンチルアンモニウム、ジブチルメチルペンチルアンモニウム、ジブチルヘキシルメチルアンモニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、トリイソブチルメチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリエチルスルホニウム等が挙げられる。
【0015】
常温溶融塩のアニオンとしては、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、メチルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミド、ビスシアノイミド、三酸化窒素、酢酸、トリフルオロメタンカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
常温溶融塩の具体例としては、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホン酸、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホン酸、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−メチルイミダゾリウムクロライド、1−メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ドデシル−3−イミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムナイトレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムオクチルサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトシレート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、4−(3−ブチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸トリフレート、4−(3−ブチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルフォネート、1−アリール−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフォネート、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム2−(2−メトキシエトキシ)−エチルサルフェート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリムヘキサフルオロホスフェート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンするフォネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、3−メチル−1−プロピルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロライド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、トリブチルメチルアンモニウムメチルサルフェート、メチル-トリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルフォネート、テトラブチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムチオサリチレート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムメタンスルフォネート、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルフォネート、テトラブチルアンモニウムヘプタデカフルオロオクタンスルフォネート、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラオクチルアンモニウムクロライド、テトラペンチルアンモニウムチオシアネート、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィネート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムブロミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムクロライド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムデカノエート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムジシアンアミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリイソブチルメチルホスホニウムトシレート、3−(トリフェニルホスホニオ)プロパン−1−スルホン酸、3−(トリフェニルホスホニオ)プロパン-1-スルフォネート、テトラブチルホスホニウム−p−トルエン」スルフォネート、トリエチルスルフォニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドが挙げられる。
【0017】
本発明に用いられるシラン系表面処理剤とはシランカップリング剤およびシリコーンオイルなどを指す。シランカップリング剤とは一分子中にアルコキシ基やハロゲン基などの加水分解基を持っているような化合物を示し、加水分解基が加水分解することでシラノール基となりフィラー表面の官能基と脱水縮合反応することで表面処理がなされる。また、各種合成樹脂などの有機質材料と化学結合する反応基を併せ持っているものが多く、反応基としてはビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプトキ、スルフィド基、イソシアネート基などが挙げられる。また、アルコキシ基を持つような非反応性基を有するものもある。
【0018】
シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン、テトラメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフェニルシラノール、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリフェノキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ペンチル・メチルジメトキシシラン、n−ペンチル・メチルジエトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジエトキシシラン、フェニル・メチルジメトキシシラン、フェニル・メチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−i−プロピルメトキシシラン、トリ−i−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリ−n−ペンチルメトキシシラン、トリ−n−ペンチルエトキシシラン、トリ−シクロヘキシルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリ−n−ヘキシルメトキシシラン、トリ−n−ヘキシルエトキシシラン、トリ−n−ヘプチルメトキシシラン、トリ−n−ヘプチルエトキシシラン、トリ−n−オクチルメトキシシラン、トリ−n−オクチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリデシルメトキシシラン、トリデシルエトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
また、シリコーンオイルとはシロキサン結合からなる直鎖状ポリマーであり、側鎖、末端がすべてメチル基であるジメチルシリコーンオイル、さらに側鎖の一部がフェニル基であるメチルフェニルシリコーンオイル、側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンオイルの3種類が総称してストレートシリコーンオイルと呼ばれている。また、側鎖、末端に有機基を導入したものが変性シリコーンオイルと呼ばれる。導入する有機基としてはアミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、カルビノール基、メタクリル基、ポリエーテル基、メルカプト基、カルボキシル基、フェノール基、シラノール基、メトキシ基、ジオール基、フェニル基、フルオロアルキル基、アラルキル基、長鎖アルキル基、水素などである。また、シリコーンオイルを共重合させたコポリマーを用いても構わない。
【0020】
本発明においてはシランカップリング剤、シリコーンオイルのどちらをシラン系表面処理剤として用いても構わない。マトリックス樹脂の種類によって最適な処理剤が選定される。処理剤の処理量としては金属酸化物に対し0.5〜25重量%であり、好ましくは金属酸化物に対し3〜20重量%である。処理量が0.5重量%を下回ると処理が不十分であり、25重量%を上回ると過剰であり樹脂へ添加した際に物性低下や成形不良などの悪影響を与える可能性が高い。
【0021】
本発明の金属酸化物は、一般にナノ粒子と呼ばれる少なくとも1辺が100nm以下の一次粒子径であり、形状は特に制限されないが球状、棒状、筒状、環状、板状、板状積層体、中空球状、ポーラス粒子などがあり、特に形状を変えることで新しい機能を発現しない限りは流動性に優れる球状であることが好ましい。また、金属酸化物の粒子の少なくとも1辺は0.5〜100nmで、好ましくは透明性と凝集性のバランスがとれた10〜40nmである。少なくとも1辺というのは、特に球状、中空球状以外の場合は縦×横×厚みで表される立体構造において、その一部が0.5nm〜100nmであれば良く、例えば棒状の場合には線長もしくは線径のどちらかが満足していれば良い。粒子の少なくとも1辺は0.5nm以下になると表面積は非常に大きくなり、活性および凝集性が大きくなりすぎてしまいポリマーへの添加が非常に難しくなる。また、100nmを上回るとナノフィラーの領域からはずれ本発明の手法を使わなくても分散可能であり、且つナノフィラー独特の機能を発現しなくなるため好ましくない。
【0022】
本発明において金属酸化物とは具体的には二酸化チタン、過酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化銀、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化第一コバルト、四三酸化コバルト、酸化第二コバルト、酸化第一ニッケル、酸化第二ニッケル、酸化トリウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、二酸化マンガン、三酸化マンガン、酸化ウラン、酸化トリウム、酸化ゲルマニウム、酸化第一錫、酸化第二錫、一酸化鉛、四三酸化鉛、二酸化鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三酸化ビスマス等が挙げられる。また、複合金属酸化物や天然鉱物などの金属酸化物を含む化合物も挙げられる。そして、目的に応じて選択され、例えば紫外線遮蔽機能が要求される場合は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄および酸化ジルコニウムが好ましく、また、赤外線遮蔽機能が要求される場合は、酸化錫微粒子が好ましい。これらは単独あるいは混合して使用する。
本発明の金属酸化物の製法にはバルクの粒子を機械粉砕させる方法、高速気流中で衝突させ方法、熱分解法、アトマイズ法、スプレー法、コロイド法、均一沈殿法、アルコキシド法、水熱合成法、マイクロエマルション法、溶媒蒸発法、ゾルゲル法、レーザーアブレーション法、CVD法、PVD法などがあるがどの方法で作成された無機フィラーを使用しても構わない。また表面に無機表面処理が施された金属酸化物を用いても構わない。無機表面処理としては酸化ケイ素などの金属酸化物で被覆する方法や、例えばAl、Mn、Cu、Zn、Zr、Ag、Cl、Ce、Eu、Tb、Er等の金属をドープさせる方法などが挙げられる。無機酸化物による表面処理は数種類のもので1層または何層か被覆しても構わないが、一般的には酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどで1または2層被覆される。特に樹脂での使用を考えると、酸化ケイ素または酸化アルミニウムによる表面処理が好ましい。また、金属をドープさせる方法はナノ粒子表面の活性を落とすのにも優れているが、新たな特性を付与する目的でも用いられる。例えば酸化亜鉛にアルミニウムをドープさせることで導電性を付与することが出来る。
【0023】
本発明の常温溶融塩とシラン系表面処理剤と金属酸化物からなる樹脂組成物に対し、金属酸化物の量は1〜95重量%であり、好ましくは20〜75重量%である。金属酸化物が1重量%以下であると樹脂へ常温溶融塩が多量に入るため物性を低下させてしまう。また、95重量%を超えて配合してしまうと分散性が低下してしまう。
【0024】
本発明では常温溶融塩を溶媒とシラン系表面処理剤と金属酸化物を混合することで金属酸化物に表面処理を施すことができる。その際、常温溶融塩は溶媒として作用しシラン系表面処理剤を効率的に金属酸化物と接触させることができる。また、常温溶融塩は耐熱性が高いため表面処理の反応が進行する温度下においても揮発することが無い。そのため、乾燥工程を必要としない湿式の表面処理を行うことが出来る。また、常温溶融塩は耐熱性が高いため押出加工でそのまま添加することができ、溶媒を除去する手間を省くことも出来た。このことで効率よく均一に表面処理が出来るものの乾燥・溶媒除去工程が必要なため高コスト、そして乾燥時に凝集を起こしやすかった湿式の表面処理の問題点を克服することが出来た。また、温度を制御できる3本ロール、2本ロール、ボールミルのような分散加工機上で表面処理と予備分散を同時に行うことにより、表面処理がなされた金属酸化物分散体を一工程で得ることができる。
また、常温溶融塩を金属酸化物表面へ付着させる表面処理剤のような使い方も出来る。方法としては乾式または湿式の一般的な表面処理方法を使用することができ、常温溶融塩はシラン系表面処理剤とは別に処理をしても同時に処理をしても構わない。必要に応じて処理品の粉砕を行っても良い。金属酸化物の表面へ常温溶融塩で被覆することで凝集を抑えることが出来る。なお、被覆させる量としては10%以下にすると粉状で得られるので好ましい。
【0025】
本発明において常温溶融塩とシラン系表面処理剤と金属酸化物を混合させる順序としては常温溶融塩とシラン系表面処理剤を予め混合したものに金属酸化物を添加しても、常温溶融塩に金属酸化物を予め分散させたものにシラン系表面処理剤を添加しても、常温溶融塩とシラン系表面処理剤と金属酸化物とを同時に混合しても構わない。また、メタノールのような溶媒で常温溶融塩とシラン系表面処理剤の一方または両方を希釈して用いても構わない。特に常温溶融塩とシラン系表面処理剤を予め混合したものに金属酸化物を添加する方法が金属酸化物の表面処理を均一に行える点から好ましい。
【0026】
常温溶融塩とシラン系表面処理剤と金属酸化物を混合するための装置としては、ディスパー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、乳鉢、インターナルミキサー、ニーダー、バンバリーミキサー、二軸混練機、サンドミル、ボールミル、ロールミル等がある。本発明において分散は加熱下に行っても良い。例えば、ロールミルのロールを電気ヒーターや蒸気で加熱し、加熱混練をすることも出来る。特に表面処理剤と金属酸化物を反応させる場合はその剤が反応を開始する温度で加工することが好ましい。
【0027】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アイオノマー樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレンアクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・EPDM・スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、メタクリル樹脂、エチレン・メチルメタクリレートコポリマー樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、ポリ3フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、ナイロン6,T、ナイロン9,T、芳香族ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリフロロアルコキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、生分解樹脂、バイオマス樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂2種以上を共重合させたものであっても良い。
【0028】
また、本発明に用いられる熱可塑性樹脂として、生分解樹脂、バイオマス樹脂も用いることができる。生分解樹脂は単にプラスチックがバラバラになることではなく、微生物の働きにより、分子レベルまで分解し、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質を持った樹脂であり、その原料は有機資源由来の物質ある必要性が無い樹脂を示す。一方、バイオマス樹脂とは有機資源由来の物質からなる樹脂で生分解性を有さなくても良い樹脂を示す。生分解樹脂、バイオマス樹脂の両方に属する樹脂も多い。具体的にはポリ乳酸、ポリカプロラクトン、または脂肪族ジカルボン酸と多価アルコールとを原料として得られる脂肪族ポリエステル系樹脂の他、微生物または植物より合成されたポリエステル樹脂等が挙げられる。特にポリ乳酸が好ましい。
【0029】
本発明における樹脂組成物の製造は特に限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂、金属酸化物分散体と、更に必要に応じて各種添加剤や着色剤等を加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合しニーダー,ロールミル,スーパーミキサー,ヘンシェルミキサー,シュギミキサー,バーティカルグラニュレーター,ハイスピードミキサー,ファーマトリックス,ボールミル,スチールミル,サンドミル,振動ミル,アトライター,バンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等で混合や溶融混練分散し、ペレット状、粉体状、顆粒状あるいはビーズ状等の形状の樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、金属酸化物分散体を比較的高濃度に含有し、成形時に被成形樹脂(ベース樹脂)で希釈されるマスターバッチであっても良いし、金属酸化物分散体の濃度が比較的低く、被成形樹脂で希釈せずにそのままの組成で成形に供されるコンパウンドであっても良い。
【0031】
本発明の成形品は、押出成形、射出成形、ブロー成形のいずれかの成形方法で得られるものでもよいし、樹脂組成物を粉砕して得られる粉体塗料でもよい。
【0032】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で必要に応じて適当な添加剤、例えば、耐酸化安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤等を配合してもよい。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を具体的に実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例においる常温溶融塩(A)、シラン系表面処理剤(B)、金属酸化物(C)と熱可塑性樹脂(D)それぞれの製造元と商品名を以下に示す。前記各成分の配合比は表1に示す。
【0034】
常温溶融塩(A−1):1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(日本カーリット社製、CIL−312)、常温溶融塩(A−2):1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート(アルドリッチ社製)、常温溶融塩(A−3):トリブチルメチルアンモニウムメチルフルフェート(アルドリッチ社製)、常温溶融塩(A−4):トリヘキシルテトラデシルホスホニウムテトラフルオロボレート(アルドリッチ社製)、常温溶融塩(A−5):トリエチルスルホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド(アルドリッチ社製)
シラン系表面処理剤(B−1):デシルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM−3103)、シラン系表面処理剤(B−2):メチルハイドロジェンシリコーンオイル(信越化学社製、KF99)、シラン系表面処理剤(B−3):ジメチルシリコーンオイル(信越化学社製、KF96−200cs)
金属酸化物(C−1):酸化亜鉛・20nm径(石原産業社製、FZO−50)、金属酸化物(C−2):酸化亜鉛・20nm径・SiO処理(堺化学工業社製、NANOFINE−50W)
金属酸化物(C−3):アンチモンドープ酸化スズ(石原産業社製、SN−100P)
熱可塑性樹脂(D−1):ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロンS3000)、熱可塑性樹脂(D−2):ポリ乳酸樹脂(三井化学社製、レイシア−H400)、熱可塑性樹脂(D−3):ポリスチレン樹脂(PSジャパン社製、PSJポリスチレン679)
[実施例1〜12、比較例1〜8]
1.金属酸化物分散体の製造
常温溶融塩(A)とシラン系表面処理剤(B)を予めディスパーで撹拌させ、そこへ金属酸化物(C)を加えたものを140℃に加熱した3本ロールにて練肉したところ3本ロールから金属酸化物分散体を得た。
2.樹脂組成物の製造
熱可塑性樹脂(D)を除湿乾燥機で乾燥後、これに上記金属酸化物分散体を所定量加えスーパーミキサーにて攪拌羽回転速度約300rpmで4分間、攪拌・混合した。これを熱可塑性樹脂(D)が変質しない適切な加工温度に設定した二軸押出機で溶融混練し樹脂組成物を作成した後、射出成形機(東芝機械(株)製IS−100F型)を用い成形を行った。
3.評価
得られた樹脂組成物の「成形加工性」「透明性」を次の手順に従って評価し表1に纏めた。
<成形加工性>
押出加工時の熱劣化等に伴うストランド外観または成形品表面の外観不良の目視検査。結果を表1に示す。
【0035】
良好:ストランド外観、成形品表面外観とも良好
不良:ストランド外観の凹凸、ストランド発泡、成形表面にフラッシュ、ボイド発生などの不良が発生
<透明性>
成形品(1mm厚)のヘイズ値および全光線透過率をASTM D 1003に準拠したBYK Gardner社製の測定機ヘイズガードプラスを用いて測定した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】



(A−1):1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニ
ル)イミド(日本カーリット社製、CIL−312)
(A−2):1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート(アル
ドリッチ社製)
(A−3):トリブチルメチルアンモニウムメチルフルフェート(アルドリッチ社製)
(A−4):トリヘキシルテトラデシルホスホニウムテトラフルオロボレート(アルド
リッチ社製)
(A−5):トリエチルスルホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド(アル
ドリッチ社製)
(B−1):デシルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM−3103)
(B−2):メチルハイドロジェンシリコーンオイル(信越化学社製、KF99)
(B−3):ジメチルシリコーンオイル(信越化学社製、KF96−200cs)
(C−1):酸化亜鉛(石原産業社製、FZO−50)
(C−2):酸化亜鉛(堺化学工業社製、NANOFINE-50W)
(C−3):アンチモンドープ酸化スズ(石原産業社製、SN−100P)
(D−1):ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユー
ピロンS3000)
(D−2):ポリ乳酸樹脂(三井化学社製、レイシア−H400)
(D−3):ポリスチレン樹脂(PSジャパン社製、PSJポリスチレン679)








【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温溶融塩とシラン系表面処理剤と一次粒子の少なくとも1辺が0.1〜100nmである金属酸化物からなることを特徴とする金属酸化物分散体。
【請求項2】
常温溶融塩がイミダゾリウム系、ピリジニウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系、およびスルホニウム系イオン性液体から選ばれる1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物分散体。
【請求項3】
シラン系表面処理剤がシランカップリング剤またはシリコーンオイルであることを特徴とする請求項1又は2記載の金属酸化物分散体。
【請求項4】
金属酸化物が酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニア、シリカ、酸化インジウム錫、アンチモンドープ酸化錫のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の金属酸化物分散体。
【請求項5】
金属酸化物が金属酸化物分散体に対し1〜95重量%含有され、シラン系表面処理剤が金属酸化物に対し0.5〜25重量%含有される請求項1〜4いずれか記載の金属酸化物分散体。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の金属酸化物分散体を熱可塑性樹脂100重量部に対し0.01〜200重量部添加してなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6記載の樹脂組成物からなる成形体。


【公開番号】特開2009−155435(P2009−155435A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334369(P2007−334369)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】