説明

金属酸化物微粒子分散液の製造方法、及び金属酸化物微粒子分散液

【課題】従来技術では(メタ)アクリルモノマー中に分散し難い金属酸化物微粒子でも、簡便な方法によって、(メタ)アクリルモノマー中に均一に分散させることが可能となる、金属酸化物微粒子分散液の製造方法および金属酸化物微粒子分散液を提供する。
【解決手段】表面処理剤によって表面が処理された金属酸化物微粒子を(メタ)アクリルモノマーからなる分散媒中に導入する工程、リン、または硫黄を含むオキソ酸を加える工程、を有することを特徴とする金属酸化物微粒子分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、機械特性、熱特性に優れた有機−無機ナノコンポジット材料を得るための、金属酸化物微粒子が(メタ)アクリルモノマーに均一に分散した金属酸化物微粒子分散液の製造方法および金属酸化物微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機高分子の特徴である透明性、柔軟性、軽量性、易成形性などと、無機化合物の特徴である高屈折率、高強度、高弾性率、耐熱性、電気特性などを併せ持つ、有機−無機コンポジット材料の開発が盛んに行われている。中でも、無機化合物がナノサイズレベル(無機微粒子)である、いわゆる有機−無機ナノコンポジット材料は、単なる有機高分子と無機化合物の混合物では実現できない物性を向上させることができることがわかってきた。具体的には、有機高分子の弾性率、熱変形温度、ガスバリアー性、ガラス転移点、結晶化度、線膨張などの物性を向上させることができることがわかってきた。また、コンポジットした無機微粒子がナノサイズレベルであると、その散乱はレイリー散乱が主となり、可視光波長の1/4以下の粒径の場合に高い透明性を得ることができる。その結果、透明性を保持したままで上述したような物性を有する有機−無機ナノコンポジット材料を作製することが可能となる。このような材料は、各種光学材料への展開が期待されている。具体的には、光ファイバや光配線基板等に設けられる導光路、イメージセンサ、カメラ、複写機等の各種機器の部品、光学レンズ、各種ディスプレイ材料、プリント基板、発光ダイオードなどの光半導体素子の封止用樹脂組成物などである。
【0003】
上述したように、有機−無機ナノコンポジット材料では、無機微粒子のナノオーダーレベルでの分散が物性向上の大きなポイントである。しかし、無機化合物のサイズがナノレベルになると、表面エネルギーが増大するため凝集し易くなり、無機化合物が均一に分散したコンポジット体の作製が困難になる。この凝集の問題に対しては、例えば、Journal of Nanoparticle Research 4: 319−323, 2002(非特許文献1)および特開2006−193339号公報(特許文献1)に問題解決のための技術が例示されている。これら非特許文献および特許文献によれば、無機微粒子の表面を表面処理剤によって適切に処理することで、凝集を防ぎつつ高分子との親和性を高め、無機化合物のナノオーダーでの分散を維持することが可能となる。
【0004】
無機微粒子を有機高分子にコンポジットする方法としては、無機微粒子を樹脂に混合する方法や、無機微粒子を樹脂やモノマー中で対応する前駆体から製造する方法などがある。しかし、一般的には無機微粒子をUVまたは熱硬化性の液体モノマーに均一に分散させ、その後に重合反応をおこなって有機−無機ナノコンポジット体を得る方法が採用される場合が多い。UVまたは熱硬化性のモノマーの中でも、(メタ)アクリルモノマーは、光学特性、機械特性、熱特性、汎用性、コスト、取扱いやすさの点から、最も使用されうるUVまたは熱硬化性モノマーの一つである。しかし、非特許文献1および特許文献1に例示されている方法で作製された無機微粒子は、(メタ)アクリルモノマーに相溶性が悪く、均一に分散させることが難しい。また、特開2006−273709号公報(特許文献2)には表面処理剤に特別な官能基を導入することによって、無機微粒子を(メタ)アクリルモノマーに分散させる方法が記載されているが、煩雑な工程を経なければならずコストも増大するという欠点があった。
【非特許文献1】Journal of Nanoparticle Research 4: 319−323, 2002
【特許文献1】特開2006−193339号公報
【特許文献2】特開2006−273709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術では(メタ)アクリルモノマー中に分散し難い金属酸化物微粒子でも、簡便な方法によって、(メタ)アクリルモノマー中に均一に分散させることが可能となる、金属酸化物微粒子分散液の製造方法および金属酸化物微粒子分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、
表面処理剤によって表面が処理された金属酸化物微粒子を(メタ)アクリルモノマーからなる分散媒中に導入する工程、
リン、または硫黄を含むオキソ酸を加える工程、
を有することを特徴とする金属酸化物微粒子分散液の製造方法を見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表面処理剤に(メタ)アクリルモノマーへの分散性を向上させる特別な官能基を導入するといった煩雑な工程を経ることなく、任意の表面処理剤を用い、簡便な方法で金属酸化物微粒子をモノマー中へ均一に分散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の金属酸化物微粒子分散液の製造方法は、表面処理剤により表面修飾した粒子に対して、その後、リン、または硫黄を含むオキソ酸を加える。つまり、表面処理剤等の添加剤を2段階で添加する点に特徴を有する。以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
(金属酸化物微粒子の表面処理方法)
本発明の目的とする(メタ)アクリルモノマーに分散した金属酸化物微粒子分散液を得るには、まず金属酸化物微粒子表面が表面処理剤で処理された金属酸化物微粒子を準備する。なお、金属酸化物微粒子分散液は、「金属酸化物微粒子分散体」ということもある。
金属酸化物微粒子は周期律表における第2族〜第5族、第13族、及び第14族元素から選択された金属の酸化物微粒子が挙げられ、1種類、または2種類以上を混合して用いることができる。また、1種類の酸化物微粒子に他の酸化物を被覆した、いわゆるコア−シェル型金属酸化物微粒子を使用することもできる。
これらの金属酸化物微粒子の中で好ましいのは、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウムであり、特に好ましくは、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウムである。
また、前記金属酸化物微粒子の平均一次粒子径は、有機−無機コンポジット材料の透明性を犠牲にすることなく所望の物性を得るという観点から100nm以下であることが好ましい。
【0009】
前記金属酸化物微粒子を表面処理剤を用いて表面処理する方法としては、前記金属酸化物微粒子または金属酸化物微粒子ゾルを有機溶媒などに添加するとともに、前記表面処理剤を添加し、前記金属酸化物微粒子表面と化学結合を形成させ行うことができる。このとき、金属酸化物部粒子は有機溶媒中に抽出される。ここで用いる金属酸化物微粒子は固体の状態でも、液体に分散した、いわゆるゾルの状態のものでも構わない。また、表面処理は超音波、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル、撹拌などの手法を用いることができる。
【0010】
前記表面処理剤は前記金属酸化物微粒子表面と化学結合を形成しうる官能基を有する化合物である。ここで、「化学結合」とは、例えば、共有結合、イオン結合、配位結合、および水素結合等が挙げられる。化学結合を形成しうる官能基としては、酸性基、塩基性基、共有結合性基、水素結合または配位結合性基のいずれも使用することができるが、好ましくはリン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、アルコキシシリル基からなる群より選択された少なくとも一つを含む化合物であり、より好ましくはリン酸基、スルホン酸基からなる群より選択された少なくとも一つを含む化合物である。さらにより好ましくは、
式(1) R−A
(Rは、炭素数4以上30以下の置換または無置換の炭化水素であり、環構造を含んでも良い。Aは、リン酸基、またはスルホン酸基である。)で例示される化合物から選択された少なくとも一つを含む化合物である。特に好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルリン酸である。
【0011】
前記有機溶媒としては、金属酸化物微粒子の分散性と表面処理剤の溶解性とが良好な溶媒を用いることが望ましい。金属酸化物微粒子の分散性や表面処理剤の溶解性の低い溶媒を用いると金属酸化物微粒子の凝集や表面処理剤の分離が生じる。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒、クロロホルム、1,2−ジクロルエタン、塩化メチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラクロロエタン、プロモベンゼンなどのハロゲン系溶媒などを挙げることができる。
【0012】
上述のようにして作製した表面処理された金属酸化物微粒子の分散液は、そのまま次の工程に用いることも可能であるが、必要に応じて、金属酸化物微粒子表面に化学結合して表面処理に寄与していない遊離している前記表面処理剤を除去して精製する工程を加えることもできる。
前記表面処理剤を除去して精製する方法は特に限定されるものではないが、例えば限外濾過法、遠心分離法、再沈法等を挙げることができる。
また、表面処理された金属酸化物微粒子の分散液は、溶媒を除去し金属酸化物微粒子として次の工程に用いても構わない。
【0013】
(メタアクリルモノマーからなる分散媒中に導入する工程)
上述の操作で得られた表面処理された金属酸化物微粒子を(メタ)アクリルモノマーに分散させる為には、(i)表面処理された金属酸化物微粒子、(ii)(メタ)アクリルモノマー、および(iii)リン、または硫黄を含むオキソ酸を混合させる。(i)、(ii)、および(iii)を加える順序は特に限定されない。また、(i)、(ii)、および(iii)を混合する際には、必要ならば撹拌、加温、超音波処理を行う。
【0014】
前記リン、または硫黄を含むオキソ酸としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基からなる群より選択された少なくとも一つを含む化合物であり、好ましくはリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基からなる群より選択された少なくとも一つを含む化合物である。さらにより好ましくは、
式(2) R−B
(Rは、炭素数4以上30以下の置換または無置換の炭化水素であり、環構造を含んでも良い。Bは、リン酸基、ホスホン酸基、またはスルホン酸基である。)で例示される化合物から選択された少なくとも一つを含む化合物である。特に好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェニルホスホン酸、またはヘキシルリン酸である。
【0015】
前記(メタ)アクリルモノマーは、メタアクリレートのみならずアクリレートも含まれ、例えば、分子内に分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、2個以上の1個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。
【0016】
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートを挙げることが出来る。
【0017】
好ましくは、一般式(3)で表される化合物
【化2】

(式中、Rは水素原子または炭素数1以上4以下の置換または無置換の炭化水素であり、Rは炭素数1以上20以下の置換または無置換の炭化水素であり、環構造を含んでも良い。)で例示され、より好ましくは、メチルメタクリレート、またはイソオクチルアクリレートである。
以上のようにして、表面処理された金属酸化物微粒子分散液、または表面処理された金属酸化物微粒子を(メタ)アクリルモノマーに均一に分散させることが可能となる。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を挙げるが、本発明はこれに制限されるものではない。
(全光線透過率の測定法)
全光線透過率は、各金属酸化物微粒子の5wt%MMA溶液を調製し、日本電色工業株式会社製濁度計NDH−2000を用いて測定した。セルは光路長1cmの石英セルを用いた。
(実施例1)
表面処理剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(以下DBSA)2.0部を用い、これをトルエン50部に加え激しく撹拌した。そこへ、水に分散した酸化チタン微粒子ゾル(平均粒径13nm、固形分濃度20wt%)10部を加えた。3時間後、撹拌を止め、減圧下エバポレーターを用いて、溶液が均一になるまで、ある程度の水を留去した。得られた溶液を遠心分離機(4万G×10分)にかけ、上澄み液を濾紙を用いて濾過した。得られた濾液を減圧下エバポレーターを用いて濃縮し、そこへ多量のアセトンを加え、固体を析出させた。遠心分離(1万G×10分)により固体を沈降させ、上澄み液を取り除いた後、さらに新しいアセトンを加え超音波処理を30分行った。再び、遠心分離(1万G×10分)により固体を沈降させ、上澄み液を取り除いた。得られた固体を真空乾燥機にて乾燥し、DBSAで表面処理された酸化チタン微粒子を1.2部得た。続いて、得られたDBSA表面処理酸化チタン微粒子0.1部をメチルメタクリレート(以下、MMAと記す。)1.8部に導入し、そこへオキソ酸としてDBSA0.1部を加えた。酸化チタン微粒子はMMAに分散し、沈殿物のない均一な酸化チタン微粒子分散液が得られた。この分散液の全光線透過率は83%であった。
【0019】
(実施例2)
実施例1において、オキソ酸をフェニルホスホン酸(表1に、PhPAと記す。)に代えた以外は同様の操作を行った。酸化チタン微粒子はMMAに均一に分散し、この分散液の全光線透過率は85%であった。
(実施例3)
実施例1において、オキソ酸をヘキシルリン酸(表1に、HexPAと記す。)に、MMAをイソオクチルアクリレート(表1に、iOcAと記す。)に代えた以外は同様の操作を行った。酸化チタン微粒子はイソオクチルアクリレートに均一に分散し、この分散液の全光線透過率は80%であった。
【0020】
(実施例4)
実施例1において、表面処理剤をオクタデシルリン酸(表1に、ODPAと記す。)に代えた以外は同様の操作を行った。酸化チタン微粒子はMMAに均一に分散し、この分散液の全光線透過率は71%であった。
(実施例5)
実施例4において、オキソ酸をフェニルホスホン酸に代えた以外は同様の操作を行った。酸化チタン微粒子はMMAに均一に分散し、この分散液の全光線透過率は77%であった。
(実施例6)
実施例4において、オキソ酸をヘキシルリン酸に、MMAをイソオクチルアクリレートに代えた以外は同様の操作を行った。酸化チタン微粒子はイソオクチルアクリレートに均一に分散し、この分散液の全光線透過率は66%であった。
【0021】
(実施例7)
実施例1において、水分散酸化チタンゾルの代わりに、水分散アルミナゾル(粒径15nm、固形分濃度10wt%)20部を用いた以外は同様の操作を行った。得られたアルミナ微粒子はMMAに均一に分散し、この分散液の全光線透過率は63%であった。
(実施例8)
実施例7において、オキソ酸をフェニルホスホン酸に代えた以外は同様の操作を行った。アルミナ微粒子はMMAに均一に分散し、この分散液の全光線透過率は91%であった。
(実施例9)
実施例7において、オキソ酸をヘキシルリン酸に、MMAをイソオクチルアクリレートに代えた以外は同様の操作を行った。アルミナ微粒子はイソオクチルアクリレートに均一に分散し、この分散液の全光線透過率は50%であった。
【0022】
(比較例1)
実施例1において、オキソ酸としてDBSAを加えない以外は同様の操作を行った。酸化チタン微粒子はMMAに分散することなく沈降し、全光線透過率を測定することはできなかった。
(比較例2)
実施例3において、オキソ酸としてヘキシルリン酸を加えない以外は同様の操作を行った。酸化チタン微粒子はイソクチルアクリレートに分散することなく沈降し、全光線透過率を測定することはできなかった。
(比較例3)
実施例1において、表面処理剤としてDBSAを6.0部加え、オキソ酸としてDBSAを加えない以外は同様の操作を行った。酸化チタン微粒子はMMAに分散することなく沈降し、全光線透過率を測定することはできなかった。
【0023】
(比較例4)
実施例4において、オキソ酸としてDBSAを加えない以外は同様の操作を行った。酸化チタン微粒子はMMAに分散することなく沈降し、全光線透過率を測定することはできなかった。
(比較例5)
実施例6において、オキソ酸としてヘキシルリン酸を加えない以外は同様の操作を行った。酸化チタン微粒子はイソクチルアクリレートに分散することなく沈降し、全光線透過率を測定することはできなかった。
(比較例6)
実施例1において、表面処理剤としてオクタデシルリン酸を6.0部加え、オキソ酸としてDBSAを加えない以外は同様の操作を行った。酸化チタン微粒子はMMAに分散することなく沈降し、全光線透過率を測定することはできなかった。
【0024】
(比較例7)
実施例7において、オキソ酸としてDBSAを加えない以外は同様の操作を行った。アルミナ微粒子はMMAに分散することなく沈降し、全光線透過率を測定することはできなかった。
(比較例8)
実施例9において、オキソ酸としてヘキシルリン酸を加えない以外は同様の操作を行った。アルミナ微粒子はイソクチルアクリレートに分散することなく沈降し、全光線透過率を測定することはできなかった。
(比較例9)
実施例7において、表面処理剤としてDBSAを6.0部加え、オキソ酸としてDBSAを加えない以外は同様の操作を行った。アルミナ微粒子はMMAに分散することなく沈降し、全光線透過率を測定することはできなかった。
以上の実施例、比較例のデータを表1にまとめた。
【0025】

【表1】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明で得た金属酸化物微粒子分散液は、光学材料、電子部品材料、記録材料などの分野に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理剤によって表面が処理された金属酸化物微粒子を(メタ)アクリルモノマーからなる分散媒中に導入する工程、
リン、または硫黄を含むオキソ酸を加える工程、
を有することを特徴とする金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記製造方法において、
金属酸化物微粒子、または金属酸化物微粒子ゾル対し、有機溶媒とともに表面処理剤を加えることで、有機溶媒中に前記金属酸化物微粒子を抽出する工程、
前記金属酸化物微粒子と結合し得ていない前記表面処理剤を除去する工程、
を有することを特徴とする請求項1記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
前記表面処理剤が、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、およびアルコキシシリル基からなる群より選択された少なくとも一つを含む化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
前記表面処理剤が、リン酸基、およびスルホン酸基からなる群より選択された少なくとも一つを含む化合物であることを特徴とする請求項3記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
前記表面処理剤が、下記一般式(1)からなる化合物から選択された少なくとも一つを含む化合物であることを特徴とする請求項4記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
式(1) R−A
(Rは、炭素数4以上30以下の置換または無置換の炭化水素であり、環構造を含んでも良い。Aは、リン酸基、またはスルホン酸基である。)
【請求項6】
前記表面処理剤がドデシルベンゼンスルホン酸、またはオクタデシルリン酸であることを特徴とする請求項5記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
前記リン、または硫黄を含むオキソ酸が、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、およびスルホン酸基からなる群より選択された少なくとも一つを含む化合物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項8】
前記リン、または硫黄を含むオキソ酸が、リン酸基、ホスホン酸基、およびスルホン酸基からなる群より選択された少なくとも一つを含む化合物であることを特徴とする請求項7記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項9】
前記リン、または硫黄を含むオキソ酸が、下記一般式(2)からなる化合物から選択された少なくとも一つを含む化合物であることを特徴とする請求項8記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
式(2) R−B
(Rは、炭素数4以上30以下の置換または無置換の炭化水素であり、環構造を含んでも良い。Bは、リン酸基、ホスホン酸基、またはスルホン酸基である。)
【請求項10】
前記リン、または硫黄を含むオキソ酸が、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェニルホスホン酸、またはヘキシルリン酸であることを特徴とする請求項9記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項11】
前記(メタ)アクリルモノマーが、下記一般式(3)で表される化合物から選択された少なくとも一つを含む化合物であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【化1】

(式中、Rは水素原子または炭素数1以上4以下の置換または無置換の炭化水素であり、Rは炭素数1以上20以下の置換または無置換の炭化水素であり、環構造を含んでも良い。)
【請求項12】
前記(メタ)アクリルモノマーが、メチルメタクリレート、またはイソオクチルアクリレートであることを特徴とする請求項11記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項13】
前記金属酸化物微粒子が、酸化チタン、およびアルミナからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法
【請求項14】
前記金属酸化物微粒子の平均一次粒子径は100nm以下であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の金属酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の方法で作成した、(メタ)アクリルモノマーに分散した金属酸化物微粒子分散液。


【公開番号】特開2010−95679(P2010−95679A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269812(P2008−269812)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】