金属錯体を含むキャリア輸送層を有する有機発光デバイス
【課題】OLEDの作製用の新規材料を提供する。
【解決手段】1種又は複数の金属錯体を含む電荷輸送層を有する発光デバイスを提供する。より詳細には、少なくとも1種の金属錯体を含む正孔輸送層を含むデバイスを開示する。本発明のデバイスは効率を向上させるための電子阻止層をさらに含むことができる。
【解決手段】1種又は複数の金属錯体を含む電荷輸送層を有する発光デバイスを提供する。より詳細には、少なくとも1種の金属錯体を含む正孔輸送層を含むデバイスを開示する。本発明のデバイスは効率を向上させるための電子阻止層をさらに含むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年8月29日出願の米国仮出願第60/315,527号及び2001年9月5日出願の出願第60/317,541号に関する特典を請求する。本出願は、同日に出願の同時係属中の米国仮出願第60/317,540号に関連するものであり、その全体を参照により本明細書に取り込むものとする。
【0002】
米国政府は本発明の支払済み実施権を有し、かつ、限定的な状況において、DARPAによって裁定された契約条件番号____によって規定された妥当な条件で、他者に実施権を許諾することを特許権者に要求する権利を有するものとする。
【0003】
本発明は、効率と安定性が改善されている金属錯体を組み込んだ発光デバイスを対象とする。
【背景技術】
【0004】
電子ディスプレイは現在、迅速な情報提供のための主要な手段である。テレビ、コンピュータ用モニター、計器用ディスプレイパネル、電卓、プリンター、携帯電話、ハンドヘルドコンピュータなどは、速さ、汎用性及びこの媒体の特徴である対話性を適切に実証している。既知の電子ディスプレイ技術の中で、多くのテレビやコンピュータモニターで現在依然として使用されているかさ高いブラウン管を陳腐化させる可能性のある、フルカラーのフラットパネルディスプレイ装置の開発において、有機発光デバイス(OLED)はその潜在的な役割に多大な関心がもたれている。
【0005】
一般に、OLEDは複数の有機層を備えていて、その層の少なくとも1つは、デバイスに電圧を印加することによってエレクトロルミネセンスを示すように作製される(例えば、Tangら、Appl.Phys.Lett.1987年、第51巻、913頁、及びBurroughesら、Nature、1990年、第347巻、359頁を参照)。デバイスに電圧を印加すると陰極は隣接する有機層を効果的に還元し(すなわち、電子を注入する)、同時に陽極は隣接する有機層を効果的に酸化する(すなわち、正孔を注入する)。正孔と電子は、それぞれその反対に帯電した電極の方へデバイスを横切って移動する。正孔と電子が同一分子上で出会うと再結合が起こるとされており、エキシトンが形成される。正孔と電子の再結合が放射線の放出を伴って、それによってエレクトロルミネセンスをもたらすことが好ましい。
【0006】
正孔と電子のスピン状態に応じて、正孔と電子の再結合によって得られるエキシトンは三重項か又は一重項のスピン状態を有することができる。一重項エキシトンからのルミネセンスは蛍光発光をもたらし、他方三重項エキシトンからのルミネセンスはリン光をもたらす。OLEDで一般に使用される有機材料に関しては、統計的にエキシトンの約4分の1は一重項であり、残りの4分の3は三重項である(例えば、Baldoら、Phys.Rev.B、1999年、第60巻、14422頁を参照)。最大100%の理論的量子効率を有する(すなわち、三重項と一重項の両方のすべてを収穫する)実用的な電界リン光OLEDを作製するのに使用できるある種のリン光性材料が存在するということが発見されるまで、最も効率的なOLEDは一般に蛍光を発する材料に基づいてきた。三重項の基底状態への遷移は形式的にはスピン禁止プロセスであるので、これらの材料は最大で25%の理論的量子効率(ここで、OLEDの量子効率は正孔と電子がその効率で再結合しルミネセンスを発生することを指す)でしか蛍光を発しない。電界リン光OLEDは、電子蛍光OLEDと比べて、優れた総括的デバイス効率を有していることが現在分かっている(例えば、Baldoら、Nature、1998年、第395巻、151頁及びBaldoら、APPL.Phys.Lett.1999年、第75巻、第3号、4頁参照)。
【0007】
一般にOLEDは、インジウムスズ酸化物(ITO)、Zn−In−SnO2、SbO2などの酸化物物質を含む正孔注入陽極層と、Mg、Mg:Ag又はLiF:Alなどの金属層を含む電子注入陰極層との間に、複数の薄い有機層を備えている。正電荷(すなわち正孔)を伝導するその傾向により、陽極層に近接して位置する有機層を通常「正孔輸送層」(HTL)と称する。HTL材料として種々の化合物が使用されてきた。最も一般的な材料は、高い正孔移動性を示す種々のトリアリールアミンからなる。同様に、負電荷(すなわち電子)を伝導するその傾向により、陰極層に近接して位置する有機層を「電子輸送層」(ETL)と称する。HTLに比べると、OLEDで使用されるETL材料ではある程度変化に富んでいる。一般的なETL材料はアルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノラート)(Alq3)である。ETLとHTLはまとめてキャリア層と称されることが多い。場合によって、電極からHTL又はETLへの、それぞれ正孔又は電子の注入を増進させるために追加の層を存在させてもよい。これらの層は、しばしば正孔注入層(HIL)又は電子注入層(EIL)と称される。HILは、4,4’,4”−トリス(30メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)などの小さい分子、又はポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリマー材料からできていてよい。EILは銅フタロシアニン(CuPc)などの小さい分子材料からできていてよい。多くのOLEDはさらに、ETLとHTLとの間に位置する発光層(EL)、あるいは別の用語では、ルミネッセエントな層を備えており、そこでエレクトロルミネセンスが発生する。種々の発光性材料を用いて発光層をドーピングすることによって、広範囲の色を有するOLEDの作製が可能になった。
【0008】
電極、キャリア層及び発光層に加えて、OLEDには、効率最大化の助けとなる1個又は複数の阻止層も設けられている。これらの層は正孔、電子及び/又はエキシトンが移動してデバイスの不活性領域に侵入するのを防止するのに役立つ。例えば、正孔を発光層に閉じ込める阻止層は、正孔が光放出事象となる可能性を効率的に増大させる。正孔阻止層は、深い(すなわち低い)HOMOエネルギーレベル(酸化しにくい材料の特徴)を有することが望ましく、逆に、電子阻止材料は一般に高いLUMOエネルギーレベルを有する。エキシトン阻止材料もデバイス効率を増大させることが分かっている。比較的寿命の長い三重項エキシトンは約1500〜2000Å移動でき、この距離がデバイス全体の幅より大きいこともある。広幅バンド・ギャップを特徴とする材料を含むエキシトン阻止層は、デバイスの非放出領域への、エキシトンの損失を防止する助けとなりうる。
【0009】
より高い効率を求めて、発光金属錯体を含む層を有するデバイスが実験的に作製されている。トリス(2,2’;−ビピリジン)ルテニウム(II)錯体又はそのポリマー誘導体からなる発光層を有する機能性OLEDが、Gaoら、J.Am.Chem.Soc.、2000年、第122巻、7426頁、Wuら、J.Am.Chem.Soc.、1999年、第121巻、4883頁、Lyonsら、J.Am.Chem.Soc.、1998年、第120巻、12100頁、Elliotら、J.Am.Chem.Soc.、1998年、第120巻、6781頁及びManessら、J.Am.Chem.Soc.、1997年、第119巻、3987頁に報告されている。イリジウムをベースとした金属及び他の金属を含有する発光材料が、例えばBaldoら、Nature、1998年、第395巻、151頁;Baldoら、Appl.Phys.Lett.、1999年、第75巻、4頁;Adachiら、Appl.Phys.Lett.、2000年、第77巻、904頁;Adachiら、Appl.Phys.Lett.、2001年、第78巻、1622頁;Adachiら、Bull.Am.Phys.Soc.、2001年、第46巻、863頁、Wangら、Appl.Phys.Lett.、2001年、第79巻、449頁並びに米国特許第6,030,715号、同6,045,930号及び同6,048,630号に報告されている。ホスト材料として(5−ヒドロキシ)キノキサリン金属錯体を含む発光層も米国特許第5,861,219号に記載されている。効率的なマルチカラーのデバイス及びディスプレイも米国特許第5,294,870号及び国際特許出願第WO98/06242号に記載されている。
【0010】
金属含有阻止層も報告されている。具体的には、Watanabeらの「Ir錯体を用いた有機LEDデバイスの駆動寿命持続性の最適化(Optimization of driving lifetime durability in organic LED devices using Ir complex)」Kafafi編、「有機光発光材料及びデバイスIV(Organic Light Emitting Materials and DevicesIV)」、Proceedings of SPIE、第4105巻、175頁(2001年)の報告において、(1,1’−ビフェニル)−4−オラート)ビス(2−メチル−8−キノリノラートN1,O8)アルミニウム(BAlq)が、OLEDでの阻止層として使用されている。
【0011】
OLEDは電子ディスプレイにおける新規技術として約束されているが、分解、短い寿命及び経時的な効率性のロスが問題となることが多い。有機層は、デバイスが通常受ける高温への恒常的な暴露によって不可逆的に損傷を受ける可能性がある。多数の酸化及び還元事象も有機層に損傷を与える原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,030,715号明細書
【特許文献2】米国特許第6,045,930号明細書
【特許文献3】米国特許第6,048,630号明細書
【特許文献4】米国特許第5,861,219号明細書
【特許文献5】米国特許第5,294,870号明細書
【特許文献6】国際公開WO98/06242号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Tangら,Appl.Phys.Lett.,1987年,第51巻,913頁
【非特許文献2】Burroughesら,Nature,1990年,第347巻,359頁
【非特許文献3】Baldoら,Phys.Rev.B,1999年,第60巻,14422頁
【非特許文献4】Baldoら,Nature,1998年,第395巻,151頁
【非特許文献5】Baldoら,APPL.Phys.Lett.1999年,第75巻,第3号,4頁
【非特許文献6】Gaoら,J.Am.Chem.Soc.,2000年,第122巻,7426頁
【非特許文献7】Wuら,J.Am.Chem.Soc.,1999年,第121巻,4883頁
【非特許文献8】Lyonsら,J.Am.Chem.Soc.,1998年,第120巻,12100頁
【非特許文献9】Elliotら,J.Am.Chem.Soc.,1998年,第120巻,6781頁
【非特許文献10】Manessら,J.Am.Chem.Soc.、1997年、第119巻、3987頁
【非特許文献11】Adachiら,Appl.Phys.Lett.,2000年,第77巻,904頁
【非特許文献12】Adachiら,Appl.Phys.Lett.,2001年,第78巻,1622頁
【非特許文献13】Adachiら,Bull.Am.Phys.Soc.,2001年,第46巻,863頁
【非特許文献14】Wangら,Appl.Phys.Lett.,2001年,第79巻,449頁
【非特許文献14】Watanabeらの「Ir錯体を用いた有機LEDデバイスの駆動寿命持続性の最適化(Optimization of driving lifetime durability in organic LED devices using Ir complex)」Kafafi編、「有機光発光材料及びデバイスIV(Organic Light Emitting Materials and DevicesIV)」、Proceedings of SPIE、第4105巻、175頁(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、OLEDの作製用の新規材料の開発が必要である。酸化と還元の両方に対して安定であり、高いTg値を有し、かつ容易にガラス状の薄膜を形成する化合物が望ましい。以下に述べる本発明は、これら及びその他の必要性を実現する助けとなるものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は少なくとも1種の金属錯体を含む正孔輸送層を含む発光デバイスを提供する。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は本質的に1種又は複数の前記金属錯体からなる。他の実施形態では、正孔輸送層は1種又は複数の前記金属錯体でドープされた有機マトリックスを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、金属錯体は配位的に飽和されており、好ましくは金属錯体は配位数4又は6を有する。いくつかの実施形態では、前記金属錯体の金属は第1、第2又は第3系列の遷移金属でよい遷移金属である。いくつかの実施形態では、前記金属錯体の金属はFe、Co、Ru、Pd、OsもしくはIr、又はこれらの任意のサブコンビネーションである。
【0017】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、少なくとも1個の金属錯体は式I又はIIのうちの1つを有する。
【化1】
[式中、M’及びM’’’はそれぞれ独立に金属原子であり、
R10、R13、R20及びR21はそれぞれ独立にN又はCHであり、
R11及びR12はそれぞれ独立にN、CH、O又はSであり、
環系A、B、G、K及びLはそれぞれ独立に、任意選択で最大5個のヘテロ原子を含んでいてもよい単環、二環もしくは三環の縮合脂肪族又は芳香族環系であり、
ZはC1〜C6アルキル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルキニル、又は結合であり、
QはBH、N又はCHである]
【0018】
いくつかの実施形態では、金属錯体は式Iを有し、環系A及び環系Bはそれぞれ単環である。他の実施形態では、金属錯体は式Iを有し、環系Aは5員のヘテロアリール単環であり、環系Bは6員のアリール又はヘテロアリール単環である。
【0019】
他のいくつかの実施形態では、R10及びR11はNであり、R13はCHである。他の実施形態では環Aはピラゾールを形成する。さらに他の実施形態では環Bはフェニルを形成する。
【0020】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、少なくとも1種の金属錯体の金属はd0、d1、d2、d3、d4、d5又はd6の金属である。金属錯体が式Iを有するいくつかの実施形態では、M’は遷移金属である。他の実施形態ではM’はFe、Co、Ru、Pd、Os又はIrである。他の実施形態ではM’はFe又はCoである。他の実施形態ではM’はFeであり、さらに他の実施形態ではM’はCoである。
【0021】
金属錯体が式Iを有する本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、金属錯体はCo(ppz)3である。
【0022】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、少なくとも1種の金属錯体は式IIを有する。少なくとも1種の金属錯体が式IIを有する本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、環系G、K及びLはそれぞれ5員又は6員の単環である。他の実施形態では環系G、KはLそれぞれ5員ヘテロアリール単環である。さらに他の実施形態ではR21及びR22はそれぞれNである。
【0023】
少なくとも1種の金属錯体が式IIを有する本発明の発光デバイスの他の実施形態では、環系G、K及びLはそれぞれピラゾールを形成する。他の実施形態ではM’’’はd5/6又はd2/3金属である。
【0024】
少なくとも1種の金属錯体が式IIを有する本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、M’’’は遷移金属である。他の実施形態ではM’’’はFe、Co、Ru、Pd、Os又はIrである。他の実施形態ではM’’’はFe又はCoである。他の実施形態ではM’’’はFeである。
【0025】
いくつかの実施形態では金属錯体はFeTp’2である。
【0026】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、発光デバイスはさらに、有機電子阻止材料、金属錯体、又はその両方を含むことができる電子阻止層を含む。いくつかの実施形態では、有機電子阻止材料はトリアリールアミン又はベンジデンから選択される。いくつかの実施形態では、電子阻止層は本質的に金属錯体からなる。他の実施形態では、電子阻止層は前記金属錯体でドープされたマトリックスを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、電子阻止層は前記正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルと近似したHOMOエネルギーレベルを有する。他の実施形態では、電子阻止層は前記正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルより高いHOMOエネルギーレベルを有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、電子阻止層の金属錯体はGa、In、Sn、又は8、9もしくは10族遷移金属から選択される金属を含む。いくつかの実施形態では前記電子阻止層の金属錯体はGaを含む。他の実施形態では電子阻止層の金属錯体は多座配位子を含む。いくつかの実施形態では多座配位子はN及びPから選択される橋懸け原子を有する。他の実施形態では多座配位子はメシチル架橋部分を有する。他の実施形態では、多座配位子は最大3個の単環、二環もしくは三環のヘテロ芳香族部分を含む。
【0029】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、電子阻止層は式III
【化2】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
AはCH、CX’、N、P、P(=O)、アリール又はヘテロアリールであり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロである、又は
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであり、
nは1〜5である]
を有する化合物を含む。
【0030】
電子阻止層が式IIIを有するいくつかの実施形態では、Mは三価の金属原子であり、XはCH又はNであり、AはN又は1,3,5−フェニルであり、R1及びR2はそれぞれHである、あるいはR1及びR2はそれらが連結する炭素原子と一緒に結合してフェニル基を形成し、R3はHであり、nは1又は2である。電子阻止層は式IIIを有する他の実施形態では、MはGaである。
【0031】
他の実施形態では、電子阻止層はGa(pma)3を含む。
【0032】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、前記正孔輸送層の金属錯体はCo(ppz)3である。本発明の発光デバイスの他の実施形態では、前記正孔輸送層の金属錯体はFeTp’2である。
【0033】
本発明の発光デバイスの他の実施形態では、電子阻止層はGa(pma)3を含み、前記正孔輸送層の金属錯体はCo(ppz)3である。
【0034】
本発明の発光デバイスの他の実施形態では、電子阻止層はGa(pma)3を含み、前記正孔輸送層の金属錯体はFeTp’2である。
【0035】
本発明は、前記EL、HTL及びEBLのそれぞれが少なくとも1種の金属錯体を含む部分構造HTL/ELもしくはHTL/EBL/ELを含む発光デバイスも提供する。
【0036】
本発明はまた、前記EL、HTL又はEBLのどれもが有機分子だけからなるものではない、部分構造HTL/ELもしくはHTL/EBL/ELを含む発光デバイスも提供する。
【0037】
本発明はさらに、複数の層を有する発光デバイスであって、有機分子だけからなる層を含まないデバイスも提供する。いくつかの実施形態では、前記層のそれぞれは少なくとも1種の金属錯体を含有する。
【0038】
本発明は、正孔輸送層、発光層及び阻止層を含む発光デバイスであって、
前記正孔輸送層が第1のHOMOエネルギーを有し、前記正孔輸送層が、少なくとも1種の金属錯体を含み、
前記発光層が電子を輸送できる少なくとも1種の材料を含み、前記材料が第2のHOMOエネルギーを有し、且つ
前記阻止層が、前記第1と第2のHOMOエネルギーの間にあるHOMOエネルギーを有する材料を含むデバイスも提供する。
【0039】
いくつかの実施形態では、阻止層は前記正孔輸送層と前記発光層との間に存在する。他の実施形態では、必ずではないが、阻止層はトリアリールアミン又はベンジデンから選択できる有機電子阻止材料を含む。さらに他の実施形態では電子阻止層は金属錯体を含む。
【0040】
本発明は、発光デバイス中での正孔輸送を容易にする方法であって、前記発光デバイスが正孔輸送層と発光層を含み、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含みかつ第1のHOMOエネルギーを有し、前記発光層が電子を輸送できる少なくとも1種の材料を含み、前記材料が前記正孔輸送層の前記HOMOエネルギーより高い第2のHOMOエネルギーを有し、前記方法が前記正孔輸送層と前記発光層との間に阻止層を配置するステップを含み、前記阻止層が前記第1と第2のHOMOエネルギーとの中間であるHOMOエネルギーレベルを有する材料を含む方法も提供する。
【0041】
上記方法のいくつかの実施形態では、前記正孔輸送層の金属錯体は上記式I又はIIの錯体である。いくつかの実施形態では正孔輸送層の金属錯体はCo(ppz)3又はFeTp’2である。他の実施形態では阻止層は少なくとも1種の金属錯体を含む。いくつかの実施形態では前記阻止層の金属錯体は上記式IIIを有する化合物である。他の実施形態では阻止層の金属錯体はGa(pma)3である。他の実施形態では正孔輸送層はCo(ppz)3又はFeTp’2を含み、前記バリア層はGa(pma)3を含む。
【0042】
本発明は発光デバイスを作製する方法であって、前記方法が、正孔輸送層を発光層と電気的に接触するように配置することを含み、前記正孔輸送層が上記の式I又はIIの化合物を含む方法も提供する。いくつかの実施形態では発光デバイスはさらに電子阻止層を含む。他の実施形態では電子阻止層は上記の式IIIを有する化合物を含む。他の実施形態では電子阻止層はGa(pma)3を含む。他の実施形態では、前記化合物は式Iの化合物であり、そしてCo(ppz)3又はFeTp’2である。他の実施形態では化合物はCo(ppz)3でもある。
【0043】
本発明は、また発光デバイスの正孔輸送層中で正孔を輸送する方法であって、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含み、前記方法が前記デバイスに電圧を印加することを含む方法も提供する。
【0044】
本発明は本明細書で説明するデバイスを含む画素及びディスプレイも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】構造ITO/NPD(500Å)/Alq3(600Å)/MgAg及びITO/Co(ppz)3(500Å)/Alq3(600Å)/MgAgのデバイスの量子効率対電流密度のプロットを比較する図である。
【図2】構造ITO/NPD(500Å)/Alq3(600Å)/MgAg及びITO/Co(ppz)3(500Å)/Alq3(600Å)/MgAgのデバイスの電流密度対電圧のプロットを比較する図である。
【図3】構造IPO/NPD(500Å)/Alq3(600Å)/MgAg及びITO/Co(ppz)3(500Å)/Alq3(600Å)/MgAgのデバイスの電流密度対電圧のプロットを比較する図である。
【図4A】Co(ppz)3を含むデバイスの量子効率対電流密度のプロットを比較する図である。
【図4B】Co(ppz)3を含むデバイスの量子効率対電流密度のプロットを比較する図である。
【図4C】Co(ppz)3を含むデバイスの量子効率対電流密度のプロットを比較する図である。
【図5】Co(ppz)3を含むデバイスの電流密度対電圧のプロットを比較する図である。
【図6A】Ga(pma)3の電子スペクトルを示す図である。
【図6B】Ga(pma)3の電子スペクトルを示す図である。
【図7】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/Ga(pma)3(100Å)/Alq3(500Å)/MgAg(1000Å)/Agを有するデバイスの電流密度対電圧のプロットを示す図である。
【図8】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/Ga(pma)3(100Å)/Alq3(500Å)/MgAg(1000Å)/Agのデバイスの輝度対電圧のプロットを示す図である。
【図9】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/Ga(pma)3(100Å)/Alq3(500Å)/MgAg(1000Å)/Agのデバイスの外部量子効率対電圧のプロットを示す図である。
【図10】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/Ga(pma)3(100Å)/Alq3(500Å)/MgAg(1000Å)/Agのデバイスの外部量子効率対電流密度のプロットを示す図である。
【図11A】構造ITO/HTL(500Å)/CBP:Irppy(6%)(200Å)/BCP(150Å)Alq3(200Å)/LiF/Alを有するデバイスの電流密度対電圧のプロットを示す図である。
【図11B】構造ITO/HTL(500Å)/CBP:Irppy(6%)(200Å)/BCP(150Å)Alq3(200Å)/LiF/Alを有するデバイスの輝度対電圧のプロットを示す図である。
【図12A】構造ITO/HTL(500Å)/CBP:Irppy(6%)(200Å)/BCP(150Å)Alq3(200Å)/LiF/Alを有するデバイスの量子効率対電流密度のプロットを示す図である。
【図12B】構造ITO/HTL(500Å)/CBP:Irppy(6%)(200Å)/BCP(150Å)Alq3(200Å)/LiF/Alを有するデバイスの発光スペクトルのプロットを示す図である。
【図13】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/NPD(100Å)/Alq3(500Å)/Mg:Ag(1000Å)/Ag(400Å)のデバイスの電流対電圧のプロットを示す図である。
【図14】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/NPD(100Å)/Alq3(500Å)/Mg:Ag(1000Å)/Ag(400Å)のデバイスの輝度対電圧のプロットを示す図である。
【図15A】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/NPD(100Å)/Alq3(500Å)/Mg:Ag(1000Å)/Ag(400Å)のデバイスの量子効率対電圧のプロットを示す図である。
【図15B】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/NPD(100Å)/Alq3(500Å)/Mg:Ag(1000Å)/Ag(400Å)のデバイスの量子効率対電流密度のプロットを示す図である。
【図16】いくつかの正孔輸送材料を示す図である。
【図17】本発明のデバイスの層に適したいくつかの金属錯体を示す図である。
【図18】キャリアの移動の様相を示す図である。
【図19】本発明のデバイスに適した金属錯体の化学合成を示す図である。
【図20】本発明のデバイスに適した複数のCo化合物の吸収スペクトルを示す図である。
【図21】本発明のデバイスに適したCo錯体のサイクリックボルタモグラムを示す図である。
【図22】Co化合物を含むデバイスの特性を例示する図である。
【図23】Co(ppz)3とNPD電子阻止層を含むデバイスの特性を例示する図である。
【図24】Ga(pma)3の光物理的特性を例示する図である。
【図25】有機性のものだけの層を含まないデバイスの特性を例示する図である。
【図26】有機性のものだけの層を含まないデバイスの特性を例示する図である。
【図27】NPDを含むデバイスの特性と、NPDの代わりにCo及びGa金属錯体を含むデバイスの特性との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書では、分子軌道エネルギーに関して、「低い」及び「深い」という用語は互換的に使用する。より低い、及びより深いということは一般に、分子軌道がより低い、すなわち、より安定なエネルギーレベルにあることを表す。より深い軌道からの電子の電離はより浅い、すなわち、より高い軌道での電子の電離より大きいエネルギーを必要とする。したがって、より深い軌道はより低いと称されるが、これらは数値的にはしばしばより大きい数で表される。例えば、5.5eVに位置する分子軌道は、2.5eVに位置する分子軌道より低い(より深い)。同様に、軌道エネルギーレベルに関して、「浅い」及び「高い」という用語は、より安定でないエネルギーレベルの軌道を表す。これらの用語は当分野の技術者によく知られている。
【0047】
本明細書では、「隣接する」という用語は、発光デバイスの層に関して、接触している側面を有する層を示す。例えば、互いに隣接する第1層及び第2層は、例えば、一方の層の片側が他方の層の片側と接触している接触した層を表す。
【0048】
本明細書では、「ギャップ」又は「バンド・ギャップ」という用語は一般に、例えばHOMOとLUMOとの間などのエネルギーの差を表す。「より広いギャップ」とは、「より狭いギャップ」又は「より小さいギャップ」より大きなエネルギーの差を表す。「キャリアギャップ」は、キャリアのHOMOとLUMOとの間のエネルギー差を表す。
【0049】
本発明は、とりわけ、少なくとも1種の金属錯体を含有する1つ又は複数の層を含む発光デバイスを対象とする。そうしたデバイスは、従来の有機阻止層を有するデバイスと比較して、より高い効率とより高い安定性を有することができる。
【0050】
本発明の発光デバイスは一般に、デバイスに電圧が印加されるとエレクトロルミネセンスを示す積層化された構造である。典型的なデバイスは、1つ又は複数の層が、正孔注入陽極層と電子注入陰極層との間に挟まれるように構築される。その挟まれた層は、一方が陽極に面し他方が陰極に面した2つの側面を有している。これらの側面はそれぞれ陽極側と陰極側と称される。層は一般にガラスなどの基板上に蒸着される。基板上に陽極層又は陰極層のどちらがあってもよい。いくつかの実施形態では、陽極層は基板と接触している。多くの場合、例えば基板が導体又は半導体材料を含む場合、電極層と基板の間に絶縁材料を挿入することができる。一般的な基板材料は剛性、柔軟性、透明又は不透明であってよく、それにはガラス、ポリマー、石英、サファイアなどが含まれる。
【0051】
電子の輸送を容易にするために、陽極層に隣接して正孔輸送層を配置する。いくつかの実施形態では、正孔注入増進層と称されることがある、正孔注入を増進させるための正孔注入層を、陽極とHTLとの間に、陽極に隣接して配置することができる。HTLに適した材料には、当分野の技術者に知られているそのように機能する任意の材料が含まれる。適切な材料は、一般に酸化し易いもので、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)1−1’ビフェニル−4,4’ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(I−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(β−NPD)などのトリアリールアミンが含まれる。HTLに金属錯体を使用することもできる。いくつかの適切な金属錯体が、例えば2001年4月13日出願の出願第60/283,814号に記載されており、その全体を参照により本明細書に取り込むものとする。同様に、電子の輸送を容易にするために、ETLを陰極層に隣接して配置する。電子注入増進層を、任意選択でETL又は陰極層に隣接して配置することができる。ETLに適した材料には、当分野の技術者に知られているそうした機能をもつ任意の材料が含まれる。典型的なETL材料は、比較的還元し易いもので、例えばアルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノラート)(Alq3)、カルバゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チオフェン、オリゴチオフェンなどが含まれる。HTL及びETLキャリア層は、約100〜約1000Åの厚さを有することができる。EL層は、一般にそれがエキシトンの生成と発光の部分であるので、HTLとETLの間のどこかであることが好ましい。ELは任意選択でHTL及びETLの1つ又は両方に接触していてよい、あるいは1つ又は複数の阻止層が横付けになっていてもよい。EL材料には例えば染料をドープしたAlq3などを含んでよい。いくつかの実施形態では、何も加えていない(ドープしていない)発光性材料のフィルムを発光層として使用することができる。さらに、層は二重の機能の働きをすることができる。例えば、ETL又はHTLは、ELとしても機能することができる。
【0052】
本発明によるいくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも1種の金属錯体を含有する少なくとも1つの電荷輸送層(すなわちキャリア層)、例えばHTL、ETL、正孔注入層又は電子注入層など、を含む。キャリア層は、金属錯体又は金属錯体でドープされた有機マトリックスから本質的になる薄膜でよい。いくつかの好ましい実施形態では、本発明のデバイスは少なくとも1種の金属錯体を含有する正孔阻止層を含む。したがって、いくつかの実施形態では、HTLの金属錯体としては、そのHOMOエネルギーレベルが正孔輸送を助けるようなものを選択することができる。すなわち、いくつかの実施形態では、約7〜4.5eVの範囲のHOMOエネルギーレベル及び約2〜約4eVの範囲のLUMOエネルギーレベルを有する金属錯体を選択することが好ましい。
【0053】
この機能を容易にする特性をベースにして、デバイスで使用する電荷輸送層に適した金属錯体を選択することができる。例えば、正孔輸送材料は一般に1電子酸化を受ける。したがって、1電子酸化プロセスに対して安定である金属錯体は正孔輸送体として適し得る。同様に、1電子還元に対して安定である金属錯体は電子輸送材料として適し得る。安定した酸化及び還元プロセスは更に後述されるサイクリックボルタンメトリーなどの電気化学的方法によって確認することができる。他に考慮すべきことは電荷移動性である。例えば、高い正孔移動性を有する材料は一般に良好な正孔輸送体として機能することができる。電荷移動性は、レドックスプロセスの再配合エネルギー(reorganizational energy(ies))が低いこととしばしば対応する。したがって、例えば酸化もしくは還元された場合にほとんど構造的な差を示さない金属錯体は一般に、酸化又は還元に伴うエネルギーバリア(再配合エネルギー)が比較的小さい。当技術分野でよく知られており、さらに以下に後述するように、電子配置などのある種の金属特性は再配合バリアに影響を及ぼす可能性がある。さらに、配位座数(denticity)などのある種の配位子特性は、金属錯体中でのレドックス事象の再配合バリアに影響を及ぼす可能性があり、その詳細も以下でさらに考察する。
【0054】
いくつかの実施形態では、デバイスの1つ又は複数の層が1つ又は複数のドーパントを含むことが望ましい。効率及び色調整可能性を向上させるために、例えばELなどの少なくとも1つの層中に、発光ドーパント(すなわち光放出分子、発光材料)を含有させることができる。ドープされた層は通常、大部分を占めるホスト材料と少量部分であるドーパントを含む。ホスト材料(マトリックスとも称される)は一般に、非放射性プロセスを経てエキシトンを発光ドーパント材料に輸送し、次いでこれが、ホストというよりはむしろドーパントの波長特性の光を放出する。
【0055】
ドーパントは電荷を捕捉する働きもする。例えば、ドーパントのLUMOレベルがホストのLUMOレベルより低くなるようにホスト及びドーパントのLUMOレベルを調整し、その結果ドーパント分子が電子捕捉体として作用できるようにすることができる。同様に、ドーパントのHOMOレベルがホストのHOMOレベルより高くなるようにホスト及びドーパントのHOMOレベルを調整し、その結果ドーパント分子が正孔捕捉体として作用するようにすることができる。ホストから発光ドーパントへのエネルギー輸送を容易にするために、さらに輸送ドーパントと称される1つ又は複数のドーパントを使用することができる。例えば、1つ又は複数の輸送ドーパントを通って、ホスト分子から発光ドーパントへのエキシトンの非放射性輸送を引き起こす、カスケードドーピングを使用することができる。これらの中間輸送は、結果的に輸送ドーパント又は発光ドーパントでのエキシトンの生成をもたらす、フェルスター(Foerster)輸送、デクスター(Dexter)輸送、正孔捕捉又は電子捕捉によるものであってよく、あるいは適切な他の任意のメカニズムによってもよい。
【0056】
ドーパントはホスト材料中に例えば約0.1〜約50%、約1〜約20%、又は1〜約10重量%の範囲の量で存在してよい。ホスト材料中の発光ドーパントは約1重量%のレベルのドーピングが好ましい。あるいは、いくつかの実施形態では、ドーパントのレベルは、およそドーパントのフェルスター半径、例えば約20〜約40Å又は約25〜約35Å、又は約30Åである、ドーパント分子同士の間の平均分子間距離という結果となる。発光ドーパントには光放出が可能な任意の化合物が含まれる。発光ドーパントには、レーザー染料などの当技術分野で公知公用の蛍光有機染料が含まれる。好ましい発光ドーパントには、1997年12月1日出願の出願第08/980,986号、2001年6月18日出願の同09/883,734号及び2001年4月13日出願の同60/283,814号に開示されている、Ir、Pt及び他の重金属錯体などのリン光性金属錯体が含まれる。それぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明のデバイスは少なくとも1つの阻止層を含む。阻止層(BL)は正孔、電子及び/又はエキシトンを発光デバイスの特定の領域に閉じ込めるように機能する。例えば、エキシトンがELに閉じ込められた場合、及び/又は正孔と電子がELから移動するのを妨げられた場合、デバイス効率の増大が可能である。阻止層は1つ又は複数の阻止機能の働きをすることができる。例えば、正孔阻止層はエキシトン阻止層としての働きもすることができる。いくつかの実施形態では、本発明のデバイスで、正孔阻止層は同時に発光層として働くことはない。阻止層は放出が可能である化合物を含むことができるが、放出は別の発光層で発生することができる。したがって、好ましい実施形態では阻止層はルミネセンスを示さない。阻止層はキャリア層より薄くすることができる。典型的な阻止層は、約50〜約1000Å又は約50〜約750Å、又は約50〜約500Åの範囲の厚さを有する。さらに、阻止層はBAlq以外の化合物を含むことが好ましい。
【0058】
正孔阻止層(HBL)は一般に正孔を獲得しにくい材料を含む。例えば、正孔阻止材料は比較的酸化されにくい。ほとんどの場合、正孔阻止材料は、輸送正孔からの酸化を隣接する層より受けにくい。酸化するのが他の材料より困難な材料は一般により低いHOMOエネルギーレベルを有する。例えば、ELに隣接した材料の阻止層をデバイスの陰極側に配置することによって、陽極から発生してELに移動する正孔が、EL(陰極側で)を励起することを効果的に阻止することができる。阻止層はELのHOMOエネルギーレベルより低いHOMOエネルギーレベルを有することが好ましい。HOMOエネルギーレベルの差が大きいことが、より良好な正孔阻止能力に対応する。阻止層の材料のHOMOは、少なくとも約50、100、200、300、400,500meV(ミリ電子ボルト)、あるいは正孔がその中に閉じ込められる隣接した層のHOMOレベルより深いことが好ましい。いくつかの実施形態では、阻止層の材料のHOMOは正孔がその中に閉じ込められる隣接した層のHOMOレベルより少なくとも約200meV深い。
【0059】
本発明のいくつかのデバイスでは、正孔が閉じ込められる層は、ホスト材料(マトリックス)及びドーパントなどの2つ以上の材料を含むことができる。この場合、HBLは、正電荷の大部分を運ぶ隣接した層の材料(すなわち最も高い(最も浅い)HOMOエネルギーレベルを有する材料)より低い(より深い)HOMOエネルギーレベルを有することが好ましい。例えば、発光層は、ドーパントより深いHOMOエネルギーレベルを有するホスト材料を含むことができる。この場合、ドーパントは正孔のための捕捉体として作用し、発光層の主要な正孔輸送体であることができる。したがって、そうした実施形態では、正孔阻止層を選択する際、ドーパントのHOMOエネルギーを考慮する。したがって、いくつかの実施形態では、HBLのHOMOエネルギーレベルは、ホスト材料より高くかつドーパントのレベルより低くてよい。
【0060】
正孔阻止層は好ましくは良好な電子注入体でもある。したがって、HBLのLUMOエネルギーレベルは、正孔が閉じ込められる層のLUMOエネルギーレベルに近似していることが好ましい。いくつかの実施形態では、2つの層間のLUMOエネルギーレベルの差は約500meV、200meV、100meV、50meV未満、あるいはそれ以下でもよい。良好な電子注入体でもある正孔阻止層は一般に、正孔の漏出に対するより電子注入に対してより小さいエネルギーバリアを有している。したがって、HBLと、正孔がその中に閉じ込められる(電子注入エネルギーバリアに相当する)層のLUMOエネルギーの差は、それらのHOMOエネルギーの差(すなわち正孔阻止エネルギーバリア)より小さい。
【0061】
逆に、電子阻止層(EBL)は、電子を獲得しにくい(すなわち比較的還元しにくい)材料を含む。発光デバイスという点では、EBLは、電子が移動する隣接層よりも還元されにくいことが好ましい。他の材料より還元しにくい材料は一般により高いLUMOエネルギーレベルを有している。例として、阻止層がそこでELのLUMOエネルギーレベルより高いLUMOエネルギーレベルを有するELの陽極側に隣接した阻止層を配置することによって、陰極から発生しEL層へ移動する電子がELを励起するのを阻止することができる(陽極側で)。LUMOエネルギーレベルの差がより大きいことは、電子阻止能力がより良好であることに相当する。阻止層の材料のLUMOは、正孔が閉じ込められる隣接層のLUMOレベルより、少なくとも約50meV、100meV、200meV、300meV、400meV、500meV、あるいはそれ以上高い(より浅い)ことが好ましい。いくつかの実施形態では、阻止層の材料のLUMOは、正孔が閉じ込められる隣接層のLUMOレベルより、少なくとも約200meV高く(より浅く)てよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、電子が閉じ込められる層は、ホスト材料(マトリックス)及びドーパントなどの2つ以上の材料を含むことができる。この場合EBLは、負電荷の大部分を運ぶ隣接した層(例えば最も低いLUMOエネルギーレベルを有するホストか、又はドーパント)の材料より高いLUMOエネルギーレベルを有することが好ましい。例えば、発光層はドーパントより深いLUMOエネルギーレベルを有するホスト材料を含むことができる。この場合、ホストは発光層の主要な電子輸送体であってよい。このような実施形態では、EBLのLUMOエネルギーレベルは、ホスト材料より高く、ドーパントのレベルより低くてよい。同様に、ドーパントが電子の主要なキャリアとして働く場合、EBLはドーパントより高いLUMOを有することが好ましい。
【0063】
電子阻止層は良好な正孔注入体でもあることが好ましい。したがって、EBLのHOMOエネルギーレベルは、電子が閉じ込められる層のHOMOエネルギーレベルに近似していることが好ましい。いくつかの実施形態では、2つの層の間のHOMOエネルギーレベルの差は、約500meV、200meV、100meV、50meV未満、あるいはそれ以下であってよい。良好な正孔注入体でもある電子阻止層は一般に、電子の漏出に対するより正孔注入に対して、より小さいエネルギーバリアを有している。したがって、EBLと、電子が閉じ込められる層(正孔注入エネルギーバリアに相当する)との間のHOMOエネルギー差は、これらのLUMOエネルギー差より小さい(例えば電子阻止エネルギーバリア)。
【0064】
ELからデバイスの他の部分へのエキシトンの移動は、エキシトンを獲得しにくい材料で阻止することができる。その受け入れ側の材料が、エキシトンを供与する材料より広い(より大きい)光学的ギャップを有する場合、1つの材料から他の材料へのエキシトンの移動を防止することができる。例えば、EL層に隣接して、EL層を含む材料より広い光学的ギャップを有するエキシトン阻止層を配置することによって、デバイスのEL層にエキシトンを実質的に閉じ込めることができる。エキシトン阻止層はELのどちらか一方の側に配置してもよい。隣接する層のものと比較したエキシトン阻止材料のHOMO又はLUMOのエネルギーレベルに従って、エキシトン阻止層はHBL又はEBLとしても働くことができる(上記に考察したように)。さらに、エキシトン阻止層のHOMOエネルギーレベルかLUMOエネルギーレベルのどちらかが、隣接する層のそれぞれのHOMOエネルギーレベルかLUMOエネルギーレベルに、エネルギー的に近似している場合、エキシトン阻止層は良好な電子又は正孔注入体でありうる。例えば、エキシトン阻止層及び発光層を有するデバイスでは、エキシトン阻止層は、前記発光層のHOMOエネルギーレベルより約500、200、又は100meV低いHOMOエネルギーレベルを有することができる。逆に、エキシトン阻止層は前記発光層のLUMOエネルギーレベルより約500、200、100meV低いLUMOエネルギーレベルを有することができる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態によれば、阻止層はドーパントも含むことができる。例として、阻止層は、より少ないバンド・ギャップドーパントでドープされた広幅バンド・ギャップマトリックス(ホスト)材料から構成されることができる。マトリックスとドーパントの組合せによっては、ドーパントの存在によって、阻止層の有効なLUMOエネルギーを下げることができ、その結果、正孔阻止層の電子伝導性と注入特性を向上させることができる。逆に、ドーパントの存在によって阻止層の有効なHOMOエネルギーを上昇させることができ、それによって正孔注入特性を向上させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、HBLは、より小さいバンド・ギャップ材料でドープされた広幅バンド・ギャップマトリックスを含み、そこでは、マトリックスの深いHOMOエネルギーレベルは正孔の輸送を防止する働きをし、ドーパントの比較的浅いLUMOレベルは電子注入に好都合である。本発明のいくつかの実施形態では、マトリックスは、オクタフェニルシクロオクタテトラエン(OPCOT)、ヘキサフェニルなどのオリゴフェニレン、及び広幅バンド・ギャップを有する他の同様の物質などの実質的に共役している有機分子を含むことができる。適切なマトリックスバンド・ギャップ値は少なくとも約3eVであってよいが、少なくとも約2.5eV、3.0eV、3.3eV、3.5eV、あるいはそれ以上であってもよい。ドーパントは金属錯体であることが好ましい。ドーピングレベルは、重量%で、約1〜約50%、より好ましくは約5〜約20%、さらにより好ましくは約10〜約15%の範囲でよい。阻止層用のドーパントとして使用される適切な金属錯体の例は、ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2’)イリジウム(III)ピコリナート(FIrpic)である。金属錯体でドープされたマトリックスを含む正孔阻止層の例は、15重量%のFIrpic(OPCOT:FIrpic(15%))でドープされたOPCOTである。例えば、OPCOT:FIrpicは、OPCOTのHOMOがIrppyのHOMOより低く、FIrpicのLUMOがCBPのLUMOより高いので、Ir(ppy)3(トリス(2−フェニルピリジル−N,C2’)イリジウム(III),Irppy)でドープされたCBPを含む発光層に正孔を効果的に閉じ込めることができる。
【0066】
本発明のデバイスで使用する金属錯体には、少なくとも1種の金属原子と少なくとも1個の配位子を含有する金属配位錯体が含まれる。金属錯体は荷電していても荷電していなくてもよいが、荷電していない錯体は、OLEDの製作で使用される薄膜蒸着技術になじみ易い。金属錯体は、1電子酸化及び1電子還元プロセスの両方に対して安定であることが好ましい。レドックス安定錯体は、例えばサイクリックボルタンメトリーによって同定することができる(例えば、可逆的レドックス事象の特定)。さらにそうした金属錯体はしばしば、酸化及び還元に伴う低い再配合エネルギーバリアを有している。したがって、低い再配合エネルギーバリアを有する錯体は、休止状態、酸化状態及び還元状態の間で構造的な差をほとんど示さない。一般に、低い再配合エネルギーバリアを有することを特徴とする金属錯体はd0、d1、d2、d3、d4、d5及びd6の電子配置を有する錯体を含む。例えば、d3又はd6金属を有する八面体錯体は典型的には、一般に低い再配合エネルギーバリアを有している。酸化又は還元での配位子セットに構造的な変化がほとんど見られないので、レドックス事象が支配的に非結合分子軌道(八面体遷移金属錯体におけるt2gセットなど)に影響を及ぼす金属錯体は一般に低い再配合エネルギーバリアを有している。レドックス事象に伴う再配合エネルギーは配位子セットによって調節することもできる。例えば、金属錯体中で多座配位子は、ある種の配位幾何配置を構造的に賦課する。レドックス事象が顕著な構造的再結合をもたらさないように、比較的柔軟性のない三座、四座、六座などの配位子が配位幾何配置を束縛することができる。さらに、酸化又は還元に付随する顕著な構造変化がもたらされる可能性の小さい、六配位錯体などの配位的に飽和した金属錯体も好ましい。四配位錯体も適しており、四面体及び平面正方形の錯体並びにその他を含むことができる。ガラス状フィルムを形成する傾向があるので八面体錯体も適している。芳香族配位子を含む金属錯体は、好ましくはレドックス事象が配位子に大部分集中している場合、レドックスプロセスを容易にする助けとなることができる。さらに、そのより高い熱安定性のため、重金属を含む金属錯体は、より軽い金属を有するものより好ましい。例えば、第2及び第3系列の遷移金属を含む錯体が好ましい。
【0067】
典型、遷移金属、ランタニド、アクチニド、アルカリ土類及びアルカリ金属を含む任意の金属原子が、利用できる任意のその酸化状態で、金属錯体に適している。遷移金属には、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au及びHgが含まれる。典型金属には、Al、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Tl、Pb、Bi及びPoが含まれる。いくつかの実施形態では、約13、36又は54より大きい原子番号を有する金属が好ましい。
【0068】
金属錯体は適切な任意の配位子系を含むことができる。適切な配位子は、単座、二座、多座配位、π結合、有機、無機、荷電、非荷電の各型であってよい。さらに、配位子はそれを介して金属原子が配位される1種又は複数のヘテロ原子を含むことが好ましいが、配位炭素を含む有機金属性化合物も適しており、これも金属錯体と考えられる。配位子の配位ヘテロ原子には酸素、窒素、イオウ、リンなどを含んでよい。窒素含有配位子には、アミン、ナイトレン、アジド、ジアゼン、トリアゼン、一酸化窒素、ポリピラゾリルボラート、2,2’−ビピリジン(bpy)、1,10−フェナントロリン、ターピリジン(trpy)、ピリダジン、ピリミジン、プリン、ピラジン、ピリジン、1,8−ナフチリジン、ピラゾラート、イミダゾラート、並びに共役π系を有する及び有しないものを含む大環状物等のようなヘテロ環を含むことができる。リン含有配位子は一般にホスフィンなどを含む。酸素含有配位子には、水、水酸化物、オキソ、超酸化物、過酸化物、アルコキシド、アルコール、アリールオキサイド、エーテル、ケトン、エステル、カルボキシレート、クラウンエーテル、β−ジケトン、カーバメート、ジメチルスルホキサイド、並びに炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、シュウ酸塩及び関連したグループ等のオキソアニオンなどが含まれる。イオウ含有配位子には、硫化水素、チオール、チオラート、硫化物、ジスルフィド、チオエーテル、二酸化硫黄、ジチオカーバメート、1,2−ジチオレンなどを含むことができる。配位炭素原子を含む配位子には、シアン化物、二硫化炭素、アルキル、アルケン、アルキン、カーバイド、シクロペンタジエニドなどを含むことができる。ハロゲン化物も配位子として働くことができる。これらやその他の配位子を含む金属錯体は、Cotton and Wilkinson、Advanced Inorganic Chemistry、第四版、John Wiley & Sons、New York、1980年に詳細に記載されている。その全体を参照により本明細書に取り込むものとする。別の適切な配位子が、2001年4月13日出願の出願第60/283,814号及び2001年6月18日出願の同09/883,734号に記載されている。それぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。
【0069】
金属錯体の金属原子に付随する任意の正の形式電荷を、全体的に又は部分的に中和するために、配位子、特に中性配位子はさらにアニオン基を含む1種又は複数の置換基で誘導化されていてよい。適切なアニオン置換基には、炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩などを含むことができる。
【0070】
正孔輸送層での使用に適した金属錯体の例には、とりわけ、例えばFe、Co、Ru、Pd、Os及びIrを含む第1、第2又は第3系列の遷移金属を有する遷移金属錯体などが含まれる。他の例には、配位的に飽和した錯体及び六配位もしくは四配位である錯体が含まれる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態では、デバイスは少なくとも1種の式I又はIIの金属錯体
【化3】
[式中、M’及びM’’’はそれぞれ独立に金属原子であり、
R10、R13、R20及びR21はそれぞれ独立にN又はCHであり、
R11及びR12はそれぞれ独立にN、CH、O又はSであり、
環系A、B、G、K及びLはそれぞれ独立に、任意選択で最大5個のヘテロ原子を含んでいてもよい単環、二環もしくは三環の縮合脂肪族又は芳香族環系であり、
ZはC1〜C6アルキル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルキニル、又は結合であり、
QはBH、N又はCHである]
を含む正孔阻止層を含む。
【0072】
特に好ましい上記式Iの化合物はCo(ppz)3であり、その構造を以下に示す。
【0073】
【化4】
【0074】
特に適切な上記式IIの他の化合物は鉄トリスピラゾリルボラート(FeTp’2)であり、その構造を以下に示す。
【0075】
【化5】
【0076】
正孔阻止層に適した金属錯体には、1997年12月1日出願の出願第08/980,986号、2001年6月18日出願の同09/883,734号及び2001年4月13日出願の同60/283,814号に記載のものを含み、とりわけ、Os、Ir、Pt及びAuの錯体を含むことができ、それぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。正孔阻止層に適している金属錯体の例は、ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2’)イリジウム(III)ピコリナート(FIrpic)で、その構造を以下に示す。
【0077】
【化6】
ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2’)イリジウム(III)ピコリナート(FIrpic)
【0078】
電子阻止層に適した金属錯体には、比較的還元しにくい(すなわち高いLUMOエネルギーレベル)ものが含まれる。適切な金属錯体には以下の式
【化7】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
AはCH、CX’、N、P、P(=O)、アリール又はヘテロアリールであり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、若しくはハロであり、又は
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであり、
nは1〜5である]
の金属錯体が含まれる。
【0079】
いくつかの好ましい実施形態では、MはAl又はGaなどの三価の金属である。可変であるAはCR3又はNが好ましいこともある。いくつかの実施形態では、R1及びR2は結合してフェニル又はピリジルなどの縮合芳香族環を形成する。上記式の中で特に適している化合物は以下に示す、ガリウム(III)トリス[2−(((ピロール−2−イル)メチリデン)アミノ)エチル]アミン(Ga(pma)3)である。
【0080】
【化8】
【0081】
他の適切な金属錯体は以下の式
【化9】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、若しくはハロであり、又は
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロである]
を有していてよい。
【0082】
本発明の開示を通して表すところでは、アルキル基は任意選択で置換された直鎖状及び分枝脂肪族基を含む。シクロアルキルは、例えば、シクロヘキシル及びシクロペンチル、並びにピラニル及びフラニル基などのヘテロシクロアルキル基を含む環状アルキル基を示す。シクロアルキル基は任意選択で置換されていてよい。アルケニル基は置換されていてもいなくてもよく、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む。アルキニル基は置換されていてもいなくてもよく、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む。アリール基は、例えば、フェニル及びナフチルを含む、約3〜約50個の炭素原子を有する芳香族及び置換芳香族基である。ヘテロアリール基は、約3〜約50個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1種のヘテロ原子を含む芳香族又は置換芳香族基である。ヘテロアリール基の例には、ピリジル及びイミダゾリル基が含まれる。アラルキル基は置換されていてもいなくてもよく、約3〜約30個の炭素原子を含み、例えばベンジルを含む。ヘテロアラルキルは少なくとも1種のヘテロ原子を含むアラルキル基を含む。ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを含む。置換された基は1個又は複数の置換基を含むことができる。適切な置換基には、例えばH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ハロ、アミノ、アジド、ニトロ、カルボキシル、シアノ、アルデヒド、アルキルカルボニル、アミノカルボニル、ヒドロキシル、アルコキシなどが含まれる。置換基は電子求引基でも電子供与基でもよい。本明細書では、「ヘテロ」という用語は、N、O、又はSなどの非炭素原子を表すものとする。
【0083】
エキシトン阻止層に適した金属錯体には比較的広い光学的ギャップを有するものが含まれる。正孔阻止層の調製に適した金属錯体には高いエネルギー吸収体及び青色発光材料などの発光材料が含まれる。好ましい金属錯体には、金属が、閉じた原子価殻(不対電子がない)を有するものが含まれる。その結果、その光学的ギャップエネルギーが可視領域外になるので、エキシトン阻止層調製用に好ましい金属錯体の多くは無色である。さらに、重金属を有する錯体が好ましい。例えば、第2及び第3列の遷移系列の重金属は、より強い配位子場のため、より大きい光学的ギャップを有する傾向がある。エキシトン阻止層に適した金属錯体の例には、1997年12月1日出願の出願第08/980,986号、2001年6月18日出願の同09/883,734号及び2001年4月13日出願の同60/283,814号に記載されているものなどの、とりわけ、Os、Ir、Pt及びAuの錯体が含まれ、それぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。いくつかの実施形態では、エキシトン阻止層に適した金属錯体にはFIrpic、Ga(pma)3及び関連化合物が含まれる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態によれば、デバイスは、少なくとも1種の金属錯体を含む正孔輸送層を含むことができ、またいくつかの実施形態では、例えば有機材料、金属錯体、又はその両方を含む電子阻止層を含むことができる。適切な有機材料には例えば、トリアリールアミン又はベンジデンなどの当技術分野で知られている任意の有機電子阻止材料が含まれる。いくつかの実施形態では、電子阻止層はHTLとELの間に存在する。したがって、電子阻止層は、電子阻止層のHOMOエネルギーレベルが、HTLとELのHOMOエネルギーレベルとの間に入るように選択することができる。他の実施形態では、電子阻止層のHOMOエネルギーレベルは正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルに近似している。例えば、電子阻止層と正孔輸送層とのHOMOエネルギーレベル差の大きさは約500、200、100、50meV又はそれ以下であってよい。電子阻止層に適した金属錯体の例にはGa、In、Sn、又は8、9、もしくは10族の遷移金属などの遷移金属を有する錯体が含まれる。適切な金属錯体の他の例には、多座配位子を有する錯体が含まれる。特に適切な金属錯体はGa(pma)3である。
【0085】
本明細書に記載の金属錯体含有HTLの金属錯体は、電荷−輸送及び/又は阻止機能を付与することができるが、この金属錯体は本発明のデバイスの熱安定性を増大させる他の利点も提供する。このことはOLED及び同様の発光デバイスは長時間高温に曝され、そうした暴露がこのようなデバイスの寿命の制限因子であると考えられるから重要なことである。したがって、例えば第2及び第3系列の遷移金属並びに第4及び第5系列の典型金属などの重金属の錯体を含む本発明のデバイスはデバイスの寿命の点で利益をもたらすと予想される。
【0086】
OLED材料のHOMO及びLUMOエネルギーレベルは、当技術分野で知られているいくつかの方法で測定もしくは推定することができる。HOMOエネルギーレベルの推定のための2つの一般的な方法にはサイクリックボルタンメトリーなどの溶液電気化学法、及び紫外光電子分光法(UPS)が含まれる。LUMOレベルの推定のための2つの方法には溶液電気化学及び逆光放出分光法が含まれる。上記で考察したように、隣接する層のHOMO及びLUMOエネルギーレベルの調節によって、2つの層の間の正孔と電子の通過を制御することができる。
【0087】
サイクリックボルタンメトリーは化合物の酸化及び還元電位を測定するための最も一般的な方法の1つである。この技術は当分野の技術者によく知られているものであり、この方法を簡単に説明すると以下の通りである。試験化合物を高濃度の電解液で溶解する。電極を挿入し、電圧を(酸化又は還元が行われるのに応じて)正の方向か又は負の方向にスキャンする。セルを通して流れる電流によってレドックス反応の存在が示される。次いで電圧スキャンを逆にするとレドックス反応が逆転する。標準はAg/AgCl又はSCEなどの外部電極でよいか、あるいは、既知の酸化電位を有するフェロセンなどの内部電極でもよい。通常の参照電極は水をベースとしているので、有機溶媒には後者が好ましいことが多い。サイクリックボルタンメトリーで得られる有用なパラメータはキャリアギャップである。還元及び酸化がどちらも可逆的である場合、正孔と電子の間のエネルギー差(すなわち、HOMOからの電子の引き抜き対LUMOへの電子の押し込み)を決めることができる。この値は、十分定義されたHOMOエネルギーから、LUMOエネルギーを決めるために使用することができる。サイクリックボルタンメトリーを用いたレドックス事象のレドックス電位や可逆性の決定する方法は当技術分野でよく知られている。
【0088】
UPSは固体中の絶対結合エネルギーを決めるための別の技術である。溶液電気化学は、一般的にほとんどの化合物に、また相対的レドックス電位を得るのに適しているが、溶液相中でとった測定値が固相中での値と異なる可能性がある。固体中のHOMOエネルギーの好ましい推定方法はUPSである。これは、固体にUV光子を照射する光電子的測定法である。光子のエネルギーが徐々に増大し、そして光によって発生した電子が観察される。電子の放出が開始するとHOMOのエネルギーがもたらされる。そのエネルギーでの光子は、充填されたレベルの頂部から電子を放出するのに十分なエネルギーを有している。UPSは真空を基準にしたeVでHOMOエネルギーレベル値を提供し、これは電子の結合エネルギーに相当する。
【0089】
LUMOエネルギーレベルを直接推定するために逆光放出を用いることができる。この技術ではサンプルの予備還元を含み、次いで充填状態をプローブしてLUMOエネルギーを推定する。より具体的には、材料に電子を注入し、それによって次いで非占有状態へ崩壊し、光を放出する。入ってくる電子のエネルギーや入射光線の角度を変化させることによって、材料の電子的構造を検討することができる。逆光放出を用いたLUMOエネルギーレベルの測定方法は当分野の技術者によく知られている。
【0090】
光学的ギャップ値は正規化吸収と発光スペクトルの交差から決定することができる。基底状態から励起状態へ移るのに構造的再配列がほとんどなく、その結果吸収と放出のλmax値の間のギャップが比較的小さい分子の場合、交差エネルギーは光学的ギャップ(0−0遷移エネルギー)を推定するのに好都合である。したがって、光学的ギャップは概略HOMO−LUMOギャップに相当し、このような推定は理想系に妥当なものである。しかし、吸収と放出の最大値間のシフトが大きい場合(ストークスシフト)、光学的ギャップを決めることはより困難になる。例えば、励起状態で構造的再配列がある、あるいは測定した吸収が最も低いエネルギー励起状態を表さない場合、相当な誤差が起きる可能性がある。したがって、潜在的なエキシトン阻止材料の選択のためには、その光学的ギャップの値を得るために、材料の吸収バンドのエッジを用いることが好ましい。この方法では、隣接する層の場合より高い吸収バンドエネルギーを有する材料を含むデバイス層は、効果的なエキシトン阻止層として働くことができる。例えば、エキシトンを含む材料より高いエネルギー吸収エッジを有するデバイス中で、エキシトンが層に接近する場合、エキシトンがより高いエネルギー材料へ輸送される確率は低い。三重項励起状態から放出する分子では、項間交差が非常に大きなストークスシフトをもたらすので、吸収エッジは光学的ギャップを推定するのに好ましい。
【0091】
本発明の発光デバイスは当分野の技術者によく知られている様々な技術によって作製することができる。中性金属錯体からなるものを含む小さい分子の層は、1997年11月17日出願の出願第08/972,156号(その全体を参照により本明細書に取り込むものとする)に開示されているような、真空蒸着法、有機気相蒸着法(OVPD)、あるいはスピンコーティングなどの溶液処理によって調製することができる。ポリマーフィルムをスピンコーティング及びCVDで蒸着させることができる。荷電金属錯体の塩などの荷電した化合物の層は、スピンコーティングなどの溶液法、あるいは米国特許第5,554,220号(その全体を参照により本明細書に取り込むものとする)に開示されているOVPD法によって調製することができる。層蒸着は一般に、必ずそうであるということではないが、陽極から陰極への方向に進め、一般に陽極は基板上に置く。金属錯体を含む阻止層を既存の層上に蒸着させることを含む、そうしたデバイスの作製方法も本発明に包含する。既存層には阻止層と接触するように設計された任意の層が含まれる。いくつかの実施形態では、既存層は発光層又はHTLであってよい。その作製のための装置及び技術は、文献や例えば米国特許第5,703,436号、同5,986,401号、同6,013,982号、同6,097,147号及び同6,166,489号に記載されている。発光が実質的にデバイスの底部(すなわち基板側)の外に向けられるものであるデバイスに関して、ITOなどの透明な陽極材料を基底電子として使用することができる。このようなデバイスの頂部電極は透明である必要がないので、一般に陰極であるそうした頂部電極は、高い電気伝導度を有する厚い反射性金属層でできていてよい。これとは対照的に、透明もしくは頂部発光デバイス用には、米国特許第5,703,436号及び同5,707,745号(それぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。)に開示されているような透明陰極を使用することができる。頂部発光デバイスは、デバイスの頂部から光が十分に発生するような不透明な及び/又は反射性の基板を有してよい。デバイスは、頂部と底部の両方から放出する、完全に透明なものであってもよい。
【0092】
頂部発光デバイスで使用するものなどの透明陰極は、少なくとも約50%の光学的透過率を有するデバイスのような、光学的透過特性を有することが好ましいが、より低い光学的透過率も用いることができる。いくつかの実施形態では、デバイスには、デバイスが少なくとも約70%、85%又はそれ以上の光学的透過率をもつことを可能にする光学的特性を有する透明陰極が含まれる。米国特許第5,703,436号及び同5,707,745号に記載されているものなどの透明陰極は、一般に例えば約100Å未満の厚さを有するMg:Agなどの金属の薄い層を含む。Mg:Ag層は透明で電気伝導性のあるスパッター蒸着したITO層でコーティングすることができる。このような陰極は化合物陰極あるいはTOLED(透明OLED)陰極と称されることが多い。化合物陰極のMg:Ag及びITO層の厚さをそれぞれ調節して、高い光学的透過率と高い電気伝導度、例えば約30〜100Ω/□の総括陰極抵抗率で反射される電気伝導度の両方の所望の組合せをもたらすことができる。しかし、ある種の応用分野ではそうした比較的低い抵抗率が許容されるが、このような抵抗率は、各画素に電力を供給する電流が化合物陰極の細いストリップを通してアレイ全体に伝導する必要がある、受動マトリックスアレイOLED画素に対して、なお幾分高過ぎる。
【0093】
本発明はさらに、発光デバイス中での正孔輸送を容易にする方法であって、発光デバイスが好ましくは正孔輸送層と発光層とを含み、正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含む方法を含む。前記方法の好ましい実施形態によれば、デバイスは、発光層が正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルより高いHOMOエネルギーレベルを有するように設計される。いくつかの実施形態では、前記方法はHTLとELとの間に電子阻止層を配置することを含み、電子阻止層のHOMOエネルギーレベルはHTLとELのHOMOエネルギーレベルの間のHOMOエネルギーレベルを有する。
【0094】
本発明はさらに、発光デバイスの正孔輸送層で正孔を輸送する方法であって、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含み、その構造のデバイスに電圧を印加することを含む方法を含む。
【0095】
発光デバイスの構造は、スラッシュで仕切った層材料の順次列挙で表すことが多い。例えば、陽極層が正孔輸送層に隣接し、それが発光層に隣接し、それが電子阻止層に隣接し、それが陰極層に隣接する層を有するデバイスは、陽極/HTL/EL/ETL/陰極と表すことができる。そうした本発明のデバイスは、部分構造のHTL/EL/HBL、HTL/EBL/EL、HTL/EBL/ETL、その他を含むことができる。いくつかの好ましい本発明の構造には陽極/HTL/EL/HBL/ETL/陰極及び陽極/HTL/EBL/EL/ETL/陰極が含まれる。他の実施形態では、EL、HTL及びEBLのそれぞれが少なくとも1種の金属錯体を含む、あるいはEL、HTL又はEBLのどれもが、有機分子だけを含むものではない、部分構造HTL/ELもしくはHTL/EBL/ELを有するデバイスが含まれる。他の実施形態では、複数の層を有し、有機分子だけからなる層を含まないデバイス、又は各層が少なくとも1種の金属錯体を含む複数の層を有するデバイスが含まれる。
【0096】
本発明の発光デバイスはディスプレイ用の画素に使用することができる。実際には任意のタイプのディスプレイに本発明のデバイスを組み込むことができる。ディスプレイにはコンピュータモニター、テレビ、パーソナルデジタルアシスタント、プリンター、計器パネル、広告板などを含めることができる。使用しない場合実質的に透明であるので、特に、本発明のデバイスはヘッドアップ型(heads−up)ディスプレイに使用できる。
【0097】
当分野の技術者が理解するように、本発明の趣旨を逸脱しないで、本発明の好ましい実施形態に多くの変更や修正を加えることができる。そうした変更形態のすべては本発明の範囲に包含されるものとする。
【0098】
本明細書を通して、化合物の構成可変要素及び様々な関連部分のグループを便宜的に説明するために、様々なグルーピングを用いている。本明細書を通して特に、そうしたグループの出現のそれぞれに、グループの個々のメンバーを含む、グループのメンバーからなる可能な下位組合せがすべて包含されるものとする。
【0099】
本特許明細書で言及した特許、出願及び出版物のそれぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。
【実施例1】
【0100】
トリス(1−フェニルピラゾール−C2,N’)コバルト(III)Co(ppz)3)の合成
THF(3ml)中の1−フェニルピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0101】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗(coarse fritted funnel)に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物は、fac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例2】
【0102】
トリス(1−(4−トリルフェニル)ピラゾール−C2,N’)コバルト(III)(CoMPPZ)の合成
配位子合成(4−トリルフェニルピラゾール):250mlフラスコに、マグネチックスターラー、4−トリルホウ酸(16ミリモル、2.0当量)、ピラゾール(8ミリモル、1.0当量)、無水酢酸銅(12ミリモル、1.5ミリモル)、活性4Åモレキュラーシーブ6g、ピリジン(16ミリモル、2.0当量)及びジクロロメタン96mlを加えた。緩くキャップをしたフラスコ中で、反応物を空気下、周囲温度で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、水で洗浄してシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:7)で精製した。
【0103】
錯体合成:THF(3ml)中の4−トリルピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に、臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0104】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物はfac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例3】
【0105】
トリス(1−(4−メトキシフェニル)ピラゾール−C2,N’)コバルト(III)(CoMOPPZ)の合成
配位子合成(4−メトキシフェニルピラゾール):250mlフラスコに、マグネチックスターラー、4−メトキシホウ酸(16ミリモル、2.0当量)、ピラゾール(8ミリモル、1.0当量)、無水酢酸銅(12ミリモル、1.5ミリモル)、活性4Åモレキュラーシーブ6g、ピリジン(16ミリモル、2.0当量)、及びジクロロメタン96mlを加えた。緩くキャップをしたフラスコ中で、反応物を空気下、周囲温度で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、水で洗浄してシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:7)で精製した。
【0106】
錯体合成:THF(3ml)中の4−メトキシピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に、臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0107】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物はfac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例4】
【0108】
トリス(1−(4,5−ジフルオロフェニル)ピラゾール−C2,N’)コバルト(III)(CodFPPZ)の合成
配位子合成(4,5−ジフルオロフェニルピラゾール):250mlフラスコに、マグネチックスターラー、4,5−ジフルオロホウ酸(16ミリモル、2.0当量)、ピラゾール(8ミリモル、1.0当量)、無水酢酸銅(12ミリモル、1.5ミリモル)、活性4Åモレキュラーシーブ6g、ピリジン(16ミリモル、2.0当量)、及びジクロロメタン96mlを加えた。緩くキャップをしたフラスコ中で、反応物を空気下、周囲温度で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、水で洗浄してシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:7)で精製した。
【0109】
錯体合成:THF(3ml)中の4,5−ジフルオロピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0110】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物はfac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例5】
【0111】
トリス(1−(4−フルオロフェニル)ピラゾール−C2,N’)コバルト(III)(COFPPZ)の合成
配位子合成(4−フルオロフェニルピラゾール):250mlフラスコに、マグネチックスターラー、4−フルオロホウ酸(16ミリモル、2.0当量)、ピラゾール(8ミリモル、1.0当量)、無水酢酸銅(12ミリモル、1.5ミリモル)、活性4Åモレキュラーシーブ6g、ピリジン(16ミリモル、2.0当量)、及びジクロロメタン96mlを加えた。緩くキャップをしたフラスコ中で、反応物を空気下、周囲温度で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、水で洗浄してシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:7)で精製した。
【0112】
錯体合成:THF(3ml)中の4−フルオロピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に、臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0113】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物はfac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例6】
【0114】
トリス(1−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾール−C2,N’)コバルト(III)(CoBPPZ)の合成
配位子合成(4−tert−フェニルピラゾール):250mlフラスコに、マグネチックスターラー、4−tert−ホウ酸(16ミリモル、2.0当量)、ピラゾール(8ミリモル、1.0当量)、無水酢酸銅(12ミリモル、1.5ミリモル)、活性4Åモレキュラーシーブ6g、ピリジン(16ミリモル、2.0当量)、及びジクロロメタン96mlを加えた。緩くキャップをしたフラスコ中で、反応物を空気下、周囲温度で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、水で洗浄してシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:7)で精製した。
【0115】
錯体合成:THF(3ml)中の4−tert−ピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に、臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0116】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物はfac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例7】
【0117】
Ga(III)トリス[2−(((ピロール−2−イル)メチリデン)アミノ)エチル]アミン(Ga(pma)3)の合成
トリス(2−アミノエチル)アミン(0.720g、5ミリモル、10mL)のメタノール溶液に、ピロール−2−カルボキシアルデヒド(1.430g、15ミリモル、100mL)のメタノール溶液を加えて配位子[(((ピロール−2−イル)メチリデン)アミノ)エチル]アミンを調製した。得られた黄色の溶液を室温で30分間攪拌した。硝酸ガリウム(III)水和物(1.280g、5ミリモル、150mL)のメタノール溶液を配位子溶液に加え室温で30分間攪拌した。溶液をろ過し、周囲温度で静置して結晶化させた。次いで粗生成物を235℃で昇華させた。
【実施例8】
【0118】
本発明のデバイス
Co(ppz)3をHTLとして使用した構造ITO/HTL/Alq3/MgAgを用いて機能性OLEDを作製した。これらのデバイスは、HTLがトリアリールアミンから成る比較デバイスより低い効率を有した。NPDの薄層をCo(ppz)3層とAlq3層との間に挿入した場合、これらのデバイスで高い効率が達成された。NPDとCo(ppz)3のHOMOレベルはどちらも類似したエネルギー(NPDで5.5eV、Co(ppz)3で5.4eV)である。図13〜15を参照されたい。
【実施例9】
【0119】
本発明の実施形態によるデバイス
Co(ppz)3正孔輸送層、Ga(pma)3電子阻止層及びAlq3発光層を用いて機能性OLEDを作製した。作動電圧は約3.5V(この電圧での外部輝度=Cd/m2)で、ピーク効率は1.2%より大きかった。図7〜10を参照されたい。
【実施例10】
【0120】
本発明の実施形態によるデバイス
Co(ppz)3/Ga(pma)3正孔輸送層及びドープされたCBP発光層を用いて機能性OLEDを作製した。NPD正孔輸送層を用いて類似のデバイスも作製した。全体として、Co(ppz)3/Ga(pma)3デバイスは、NPD層を用いたデバイスより良好な性能であった。Co(ppz)3/Ga(pma)3では、低い電圧電流はより低く、スペクトルは青色発光(400nm未満)を示していない。Co(ppz)3/Ga(pma)3ベースのデバイスでは、NPDベースのデバイスの場合より、作動電圧は若干高く、量子効率はより低かった。これらのパラメータはどちらもデバイス最適化によって改善されると予想される。図11〜12を参照されたい。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年8月29日出願の米国仮出願第60/315,527号及び2001年9月5日出願の出願第60/317,541号に関する特典を請求する。本出願は、同日に出願の同時係属中の米国仮出願第60/317,540号に関連するものであり、その全体を参照により本明細書に取り込むものとする。
【0002】
米国政府は本発明の支払済み実施権を有し、かつ、限定的な状況において、DARPAによって裁定された契約条件番号____によって規定された妥当な条件で、他者に実施権を許諾することを特許権者に要求する権利を有するものとする。
【0003】
本発明は、効率と安定性が改善されている金属錯体を組み込んだ発光デバイスを対象とする。
【背景技術】
【0004】
電子ディスプレイは現在、迅速な情報提供のための主要な手段である。テレビ、コンピュータ用モニター、計器用ディスプレイパネル、電卓、プリンター、携帯電話、ハンドヘルドコンピュータなどは、速さ、汎用性及びこの媒体の特徴である対話性を適切に実証している。既知の電子ディスプレイ技術の中で、多くのテレビやコンピュータモニターで現在依然として使用されているかさ高いブラウン管を陳腐化させる可能性のある、フルカラーのフラットパネルディスプレイ装置の開発において、有機発光デバイス(OLED)はその潜在的な役割に多大な関心がもたれている。
【0005】
一般に、OLEDは複数の有機層を備えていて、その層の少なくとも1つは、デバイスに電圧を印加することによってエレクトロルミネセンスを示すように作製される(例えば、Tangら、Appl.Phys.Lett.1987年、第51巻、913頁、及びBurroughesら、Nature、1990年、第347巻、359頁を参照)。デバイスに電圧を印加すると陰極は隣接する有機層を効果的に還元し(すなわち、電子を注入する)、同時に陽極は隣接する有機層を効果的に酸化する(すなわち、正孔を注入する)。正孔と電子は、それぞれその反対に帯電した電極の方へデバイスを横切って移動する。正孔と電子が同一分子上で出会うと再結合が起こるとされており、エキシトンが形成される。正孔と電子の再結合が放射線の放出を伴って、それによってエレクトロルミネセンスをもたらすことが好ましい。
【0006】
正孔と電子のスピン状態に応じて、正孔と電子の再結合によって得られるエキシトンは三重項か又は一重項のスピン状態を有することができる。一重項エキシトンからのルミネセンスは蛍光発光をもたらし、他方三重項エキシトンからのルミネセンスはリン光をもたらす。OLEDで一般に使用される有機材料に関しては、統計的にエキシトンの約4分の1は一重項であり、残りの4分の3は三重項である(例えば、Baldoら、Phys.Rev.B、1999年、第60巻、14422頁を参照)。最大100%の理論的量子効率を有する(すなわち、三重項と一重項の両方のすべてを収穫する)実用的な電界リン光OLEDを作製するのに使用できるある種のリン光性材料が存在するということが発見されるまで、最も効率的なOLEDは一般に蛍光を発する材料に基づいてきた。三重項の基底状態への遷移は形式的にはスピン禁止プロセスであるので、これらの材料は最大で25%の理論的量子効率(ここで、OLEDの量子効率は正孔と電子がその効率で再結合しルミネセンスを発生することを指す)でしか蛍光を発しない。電界リン光OLEDは、電子蛍光OLEDと比べて、優れた総括的デバイス効率を有していることが現在分かっている(例えば、Baldoら、Nature、1998年、第395巻、151頁及びBaldoら、APPL.Phys.Lett.1999年、第75巻、第3号、4頁参照)。
【0007】
一般にOLEDは、インジウムスズ酸化物(ITO)、Zn−In−SnO2、SbO2などの酸化物物質を含む正孔注入陽極層と、Mg、Mg:Ag又はLiF:Alなどの金属層を含む電子注入陰極層との間に、複数の薄い有機層を備えている。正電荷(すなわち正孔)を伝導するその傾向により、陽極層に近接して位置する有機層を通常「正孔輸送層」(HTL)と称する。HTL材料として種々の化合物が使用されてきた。最も一般的な材料は、高い正孔移動性を示す種々のトリアリールアミンからなる。同様に、負電荷(すなわち電子)を伝導するその傾向により、陰極層に近接して位置する有機層を「電子輸送層」(ETL)と称する。HTLに比べると、OLEDで使用されるETL材料ではある程度変化に富んでいる。一般的なETL材料はアルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノラート)(Alq3)である。ETLとHTLはまとめてキャリア層と称されることが多い。場合によって、電極からHTL又はETLへの、それぞれ正孔又は電子の注入を増進させるために追加の層を存在させてもよい。これらの層は、しばしば正孔注入層(HIL)又は電子注入層(EIL)と称される。HILは、4,4’,4”−トリス(30メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)などの小さい分子、又はポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリマー材料からできていてよい。EILは銅フタロシアニン(CuPc)などの小さい分子材料からできていてよい。多くのOLEDはさらに、ETLとHTLとの間に位置する発光層(EL)、あるいは別の用語では、ルミネッセエントな層を備えており、そこでエレクトロルミネセンスが発生する。種々の発光性材料を用いて発光層をドーピングすることによって、広範囲の色を有するOLEDの作製が可能になった。
【0008】
電極、キャリア層及び発光層に加えて、OLEDには、効率最大化の助けとなる1個又は複数の阻止層も設けられている。これらの層は正孔、電子及び/又はエキシトンが移動してデバイスの不活性領域に侵入するのを防止するのに役立つ。例えば、正孔を発光層に閉じ込める阻止層は、正孔が光放出事象となる可能性を効率的に増大させる。正孔阻止層は、深い(すなわち低い)HOMOエネルギーレベル(酸化しにくい材料の特徴)を有することが望ましく、逆に、電子阻止材料は一般に高いLUMOエネルギーレベルを有する。エキシトン阻止材料もデバイス効率を増大させることが分かっている。比較的寿命の長い三重項エキシトンは約1500〜2000Å移動でき、この距離がデバイス全体の幅より大きいこともある。広幅バンド・ギャップを特徴とする材料を含むエキシトン阻止層は、デバイスの非放出領域への、エキシトンの損失を防止する助けとなりうる。
【0009】
より高い効率を求めて、発光金属錯体を含む層を有するデバイスが実験的に作製されている。トリス(2,2’;−ビピリジン)ルテニウム(II)錯体又はそのポリマー誘導体からなる発光層を有する機能性OLEDが、Gaoら、J.Am.Chem.Soc.、2000年、第122巻、7426頁、Wuら、J.Am.Chem.Soc.、1999年、第121巻、4883頁、Lyonsら、J.Am.Chem.Soc.、1998年、第120巻、12100頁、Elliotら、J.Am.Chem.Soc.、1998年、第120巻、6781頁及びManessら、J.Am.Chem.Soc.、1997年、第119巻、3987頁に報告されている。イリジウムをベースとした金属及び他の金属を含有する発光材料が、例えばBaldoら、Nature、1998年、第395巻、151頁;Baldoら、Appl.Phys.Lett.、1999年、第75巻、4頁;Adachiら、Appl.Phys.Lett.、2000年、第77巻、904頁;Adachiら、Appl.Phys.Lett.、2001年、第78巻、1622頁;Adachiら、Bull.Am.Phys.Soc.、2001年、第46巻、863頁、Wangら、Appl.Phys.Lett.、2001年、第79巻、449頁並びに米国特許第6,030,715号、同6,045,930号及び同6,048,630号に報告されている。ホスト材料として(5−ヒドロキシ)キノキサリン金属錯体を含む発光層も米国特許第5,861,219号に記載されている。効率的なマルチカラーのデバイス及びディスプレイも米国特許第5,294,870号及び国際特許出願第WO98/06242号に記載されている。
【0010】
金属含有阻止層も報告されている。具体的には、Watanabeらの「Ir錯体を用いた有機LEDデバイスの駆動寿命持続性の最適化(Optimization of driving lifetime durability in organic LED devices using Ir complex)」Kafafi編、「有機光発光材料及びデバイスIV(Organic Light Emitting Materials and DevicesIV)」、Proceedings of SPIE、第4105巻、175頁(2001年)の報告において、(1,1’−ビフェニル)−4−オラート)ビス(2−メチル−8−キノリノラートN1,O8)アルミニウム(BAlq)が、OLEDでの阻止層として使用されている。
【0011】
OLEDは電子ディスプレイにおける新規技術として約束されているが、分解、短い寿命及び経時的な効率性のロスが問題となることが多い。有機層は、デバイスが通常受ける高温への恒常的な暴露によって不可逆的に損傷を受ける可能性がある。多数の酸化及び還元事象も有機層に損傷を与える原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,030,715号明細書
【特許文献2】米国特許第6,045,930号明細書
【特許文献3】米国特許第6,048,630号明細書
【特許文献4】米国特許第5,861,219号明細書
【特許文献5】米国特許第5,294,870号明細書
【特許文献6】国際公開WO98/06242号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Tangら,Appl.Phys.Lett.,1987年,第51巻,913頁
【非特許文献2】Burroughesら,Nature,1990年,第347巻,359頁
【非特許文献3】Baldoら,Phys.Rev.B,1999年,第60巻,14422頁
【非特許文献4】Baldoら,Nature,1998年,第395巻,151頁
【非特許文献5】Baldoら,APPL.Phys.Lett.1999年,第75巻,第3号,4頁
【非特許文献6】Gaoら,J.Am.Chem.Soc.,2000年,第122巻,7426頁
【非特許文献7】Wuら,J.Am.Chem.Soc.,1999年,第121巻,4883頁
【非特許文献8】Lyonsら,J.Am.Chem.Soc.,1998年,第120巻,12100頁
【非特許文献9】Elliotら,J.Am.Chem.Soc.,1998年,第120巻,6781頁
【非特許文献10】Manessら,J.Am.Chem.Soc.、1997年、第119巻、3987頁
【非特許文献11】Adachiら,Appl.Phys.Lett.,2000年,第77巻,904頁
【非特許文献12】Adachiら,Appl.Phys.Lett.,2001年,第78巻,1622頁
【非特許文献13】Adachiら,Bull.Am.Phys.Soc.,2001年,第46巻,863頁
【非特許文献14】Wangら,Appl.Phys.Lett.,2001年,第79巻,449頁
【非特許文献14】Watanabeらの「Ir錯体を用いた有機LEDデバイスの駆動寿命持続性の最適化(Optimization of driving lifetime durability in organic LED devices using Ir complex)」Kafafi編、「有機光発光材料及びデバイスIV(Organic Light Emitting Materials and DevicesIV)」、Proceedings of SPIE、第4105巻、175頁(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、OLEDの作製用の新規材料の開発が必要である。酸化と還元の両方に対して安定であり、高いTg値を有し、かつ容易にガラス状の薄膜を形成する化合物が望ましい。以下に述べる本発明は、これら及びその他の必要性を実現する助けとなるものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は少なくとも1種の金属錯体を含む正孔輸送層を含む発光デバイスを提供する。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は本質的に1種又は複数の前記金属錯体からなる。他の実施形態では、正孔輸送層は1種又は複数の前記金属錯体でドープされた有機マトリックスを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、金属錯体は配位的に飽和されており、好ましくは金属錯体は配位数4又は6を有する。いくつかの実施形態では、前記金属錯体の金属は第1、第2又は第3系列の遷移金属でよい遷移金属である。いくつかの実施形態では、前記金属錯体の金属はFe、Co、Ru、Pd、OsもしくはIr、又はこれらの任意のサブコンビネーションである。
【0017】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、少なくとも1個の金属錯体は式I又はIIのうちの1つを有する。
【化1】
[式中、M’及びM’’’はそれぞれ独立に金属原子であり、
R10、R13、R20及びR21はそれぞれ独立にN又はCHであり、
R11及びR12はそれぞれ独立にN、CH、O又はSであり、
環系A、B、G、K及びLはそれぞれ独立に、任意選択で最大5個のヘテロ原子を含んでいてもよい単環、二環もしくは三環の縮合脂肪族又は芳香族環系であり、
ZはC1〜C6アルキル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルキニル、又は結合であり、
QはBH、N又はCHである]
【0018】
いくつかの実施形態では、金属錯体は式Iを有し、環系A及び環系Bはそれぞれ単環である。他の実施形態では、金属錯体は式Iを有し、環系Aは5員のヘテロアリール単環であり、環系Bは6員のアリール又はヘテロアリール単環である。
【0019】
他のいくつかの実施形態では、R10及びR11はNであり、R13はCHである。他の実施形態では環Aはピラゾールを形成する。さらに他の実施形態では環Bはフェニルを形成する。
【0020】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、少なくとも1種の金属錯体の金属はd0、d1、d2、d3、d4、d5又はd6の金属である。金属錯体が式Iを有するいくつかの実施形態では、M’は遷移金属である。他の実施形態ではM’はFe、Co、Ru、Pd、Os又はIrである。他の実施形態ではM’はFe又はCoである。他の実施形態ではM’はFeであり、さらに他の実施形態ではM’はCoである。
【0021】
金属錯体が式Iを有する本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、金属錯体はCo(ppz)3である。
【0022】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、少なくとも1種の金属錯体は式IIを有する。少なくとも1種の金属錯体が式IIを有する本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、環系G、K及びLはそれぞれ5員又は6員の単環である。他の実施形態では環系G、KはLそれぞれ5員ヘテロアリール単環である。さらに他の実施形態ではR21及びR22はそれぞれNである。
【0023】
少なくとも1種の金属錯体が式IIを有する本発明の発光デバイスの他の実施形態では、環系G、K及びLはそれぞれピラゾールを形成する。他の実施形態ではM’’’はd5/6又はd2/3金属である。
【0024】
少なくとも1種の金属錯体が式IIを有する本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、M’’’は遷移金属である。他の実施形態ではM’’’はFe、Co、Ru、Pd、Os又はIrである。他の実施形態ではM’’’はFe又はCoである。他の実施形態ではM’’’はFeである。
【0025】
いくつかの実施形態では金属錯体はFeTp’2である。
【0026】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、発光デバイスはさらに、有機電子阻止材料、金属錯体、又はその両方を含むことができる電子阻止層を含む。いくつかの実施形態では、有機電子阻止材料はトリアリールアミン又はベンジデンから選択される。いくつかの実施形態では、電子阻止層は本質的に金属錯体からなる。他の実施形態では、電子阻止層は前記金属錯体でドープされたマトリックスを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、電子阻止層は前記正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルと近似したHOMOエネルギーレベルを有する。他の実施形態では、電子阻止層は前記正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルより高いHOMOエネルギーレベルを有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、電子阻止層の金属錯体はGa、In、Sn、又は8、9もしくは10族遷移金属から選択される金属を含む。いくつかの実施形態では前記電子阻止層の金属錯体はGaを含む。他の実施形態では電子阻止層の金属錯体は多座配位子を含む。いくつかの実施形態では多座配位子はN及びPから選択される橋懸け原子を有する。他の実施形態では多座配位子はメシチル架橋部分を有する。他の実施形態では、多座配位子は最大3個の単環、二環もしくは三環のヘテロ芳香族部分を含む。
【0029】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、電子阻止層は式III
【化2】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
AはCH、CX’、N、P、P(=O)、アリール又はヘテロアリールであり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロである、又は
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであり、
nは1〜5である]
を有する化合物を含む。
【0030】
電子阻止層が式IIIを有するいくつかの実施形態では、Mは三価の金属原子であり、XはCH又はNであり、AはN又は1,3,5−フェニルであり、R1及びR2はそれぞれHである、あるいはR1及びR2はそれらが連結する炭素原子と一緒に結合してフェニル基を形成し、R3はHであり、nは1又は2である。電子阻止層は式IIIを有する他の実施形態では、MはGaである。
【0031】
他の実施形態では、電子阻止層はGa(pma)3を含む。
【0032】
本発明の発光デバイスのいくつかの実施形態では、前記正孔輸送層の金属錯体はCo(ppz)3である。本発明の発光デバイスの他の実施形態では、前記正孔輸送層の金属錯体はFeTp’2である。
【0033】
本発明の発光デバイスの他の実施形態では、電子阻止層はGa(pma)3を含み、前記正孔輸送層の金属錯体はCo(ppz)3である。
【0034】
本発明の発光デバイスの他の実施形態では、電子阻止層はGa(pma)3を含み、前記正孔輸送層の金属錯体はFeTp’2である。
【0035】
本発明は、前記EL、HTL及びEBLのそれぞれが少なくとも1種の金属錯体を含む部分構造HTL/ELもしくはHTL/EBL/ELを含む発光デバイスも提供する。
【0036】
本発明はまた、前記EL、HTL又はEBLのどれもが有機分子だけからなるものではない、部分構造HTL/ELもしくはHTL/EBL/ELを含む発光デバイスも提供する。
【0037】
本発明はさらに、複数の層を有する発光デバイスであって、有機分子だけからなる層を含まないデバイスも提供する。いくつかの実施形態では、前記層のそれぞれは少なくとも1種の金属錯体を含有する。
【0038】
本発明は、正孔輸送層、発光層及び阻止層を含む発光デバイスであって、
前記正孔輸送層が第1のHOMOエネルギーを有し、前記正孔輸送層が、少なくとも1種の金属錯体を含み、
前記発光層が電子を輸送できる少なくとも1種の材料を含み、前記材料が第2のHOMOエネルギーを有し、且つ
前記阻止層が、前記第1と第2のHOMOエネルギーの間にあるHOMOエネルギーを有する材料を含むデバイスも提供する。
【0039】
いくつかの実施形態では、阻止層は前記正孔輸送層と前記発光層との間に存在する。他の実施形態では、必ずではないが、阻止層はトリアリールアミン又はベンジデンから選択できる有機電子阻止材料を含む。さらに他の実施形態では電子阻止層は金属錯体を含む。
【0040】
本発明は、発光デバイス中での正孔輸送を容易にする方法であって、前記発光デバイスが正孔輸送層と発光層を含み、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含みかつ第1のHOMOエネルギーを有し、前記発光層が電子を輸送できる少なくとも1種の材料を含み、前記材料が前記正孔輸送層の前記HOMOエネルギーより高い第2のHOMOエネルギーを有し、前記方法が前記正孔輸送層と前記発光層との間に阻止層を配置するステップを含み、前記阻止層が前記第1と第2のHOMOエネルギーとの中間であるHOMOエネルギーレベルを有する材料を含む方法も提供する。
【0041】
上記方法のいくつかの実施形態では、前記正孔輸送層の金属錯体は上記式I又はIIの錯体である。いくつかの実施形態では正孔輸送層の金属錯体はCo(ppz)3又はFeTp’2である。他の実施形態では阻止層は少なくとも1種の金属錯体を含む。いくつかの実施形態では前記阻止層の金属錯体は上記式IIIを有する化合物である。他の実施形態では阻止層の金属錯体はGa(pma)3である。他の実施形態では正孔輸送層はCo(ppz)3又はFeTp’2を含み、前記バリア層はGa(pma)3を含む。
【0042】
本発明は発光デバイスを作製する方法であって、前記方法が、正孔輸送層を発光層と電気的に接触するように配置することを含み、前記正孔輸送層が上記の式I又はIIの化合物を含む方法も提供する。いくつかの実施形態では発光デバイスはさらに電子阻止層を含む。他の実施形態では電子阻止層は上記の式IIIを有する化合物を含む。他の実施形態では電子阻止層はGa(pma)3を含む。他の実施形態では、前記化合物は式Iの化合物であり、そしてCo(ppz)3又はFeTp’2である。他の実施形態では化合物はCo(ppz)3でもある。
【0043】
本発明は、また発光デバイスの正孔輸送層中で正孔を輸送する方法であって、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含み、前記方法が前記デバイスに電圧を印加することを含む方法も提供する。
【0044】
本発明は本明細書で説明するデバイスを含む画素及びディスプレイも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】構造ITO/NPD(500Å)/Alq3(600Å)/MgAg及びITO/Co(ppz)3(500Å)/Alq3(600Å)/MgAgのデバイスの量子効率対電流密度のプロットを比較する図である。
【図2】構造ITO/NPD(500Å)/Alq3(600Å)/MgAg及びITO/Co(ppz)3(500Å)/Alq3(600Å)/MgAgのデバイスの電流密度対電圧のプロットを比較する図である。
【図3】構造IPO/NPD(500Å)/Alq3(600Å)/MgAg及びITO/Co(ppz)3(500Å)/Alq3(600Å)/MgAgのデバイスの電流密度対電圧のプロットを比較する図である。
【図4A】Co(ppz)3を含むデバイスの量子効率対電流密度のプロットを比較する図である。
【図4B】Co(ppz)3を含むデバイスの量子効率対電流密度のプロットを比較する図である。
【図4C】Co(ppz)3を含むデバイスの量子効率対電流密度のプロットを比較する図である。
【図5】Co(ppz)3を含むデバイスの電流密度対電圧のプロットを比較する図である。
【図6A】Ga(pma)3の電子スペクトルを示す図である。
【図6B】Ga(pma)3の電子スペクトルを示す図である。
【図7】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/Ga(pma)3(100Å)/Alq3(500Å)/MgAg(1000Å)/Agを有するデバイスの電流密度対電圧のプロットを示す図である。
【図8】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/Ga(pma)3(100Å)/Alq3(500Å)/MgAg(1000Å)/Agのデバイスの輝度対電圧のプロットを示す図である。
【図9】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/Ga(pma)3(100Å)/Alq3(500Å)/MgAg(1000Å)/Agのデバイスの外部量子効率対電圧のプロットを示す図である。
【図10】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/Ga(pma)3(100Å)/Alq3(500Å)/MgAg(1000Å)/Agのデバイスの外部量子効率対電流密度のプロットを示す図である。
【図11A】構造ITO/HTL(500Å)/CBP:Irppy(6%)(200Å)/BCP(150Å)Alq3(200Å)/LiF/Alを有するデバイスの電流密度対電圧のプロットを示す図である。
【図11B】構造ITO/HTL(500Å)/CBP:Irppy(6%)(200Å)/BCP(150Å)Alq3(200Å)/LiF/Alを有するデバイスの輝度対電圧のプロットを示す図である。
【図12A】構造ITO/HTL(500Å)/CBP:Irppy(6%)(200Å)/BCP(150Å)Alq3(200Å)/LiF/Alを有するデバイスの量子効率対電流密度のプロットを示す図である。
【図12B】構造ITO/HTL(500Å)/CBP:Irppy(6%)(200Å)/BCP(150Å)Alq3(200Å)/LiF/Alを有するデバイスの発光スペクトルのプロットを示す図である。
【図13】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/NPD(100Å)/Alq3(500Å)/Mg:Ag(1000Å)/Ag(400Å)のデバイスの電流対電圧のプロットを示す図である。
【図14】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/NPD(100Å)/Alq3(500Å)/Mg:Ag(1000Å)/Ag(400Å)のデバイスの輝度対電圧のプロットを示す図である。
【図15A】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/NPD(100Å)/Alq3(500Å)/Mg:Ag(1000Å)/Ag(400Å)のデバイスの量子効率対電圧のプロットを示す図である。
【図15B】構造ITO/Co(ppz)3(400Å)/NPD(100Å)/Alq3(500Å)/Mg:Ag(1000Å)/Ag(400Å)のデバイスの量子効率対電流密度のプロットを示す図である。
【図16】いくつかの正孔輸送材料を示す図である。
【図17】本発明のデバイスの層に適したいくつかの金属錯体を示す図である。
【図18】キャリアの移動の様相を示す図である。
【図19】本発明のデバイスに適した金属錯体の化学合成を示す図である。
【図20】本発明のデバイスに適した複数のCo化合物の吸収スペクトルを示す図である。
【図21】本発明のデバイスに適したCo錯体のサイクリックボルタモグラムを示す図である。
【図22】Co化合物を含むデバイスの特性を例示する図である。
【図23】Co(ppz)3とNPD電子阻止層を含むデバイスの特性を例示する図である。
【図24】Ga(pma)3の光物理的特性を例示する図である。
【図25】有機性のものだけの層を含まないデバイスの特性を例示する図である。
【図26】有機性のものだけの層を含まないデバイスの特性を例示する図である。
【図27】NPDを含むデバイスの特性と、NPDの代わりにCo及びGa金属錯体を含むデバイスの特性との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書では、分子軌道エネルギーに関して、「低い」及び「深い」という用語は互換的に使用する。より低い、及びより深いということは一般に、分子軌道がより低い、すなわち、より安定なエネルギーレベルにあることを表す。より深い軌道からの電子の電離はより浅い、すなわち、より高い軌道での電子の電離より大きいエネルギーを必要とする。したがって、より深い軌道はより低いと称されるが、これらは数値的にはしばしばより大きい数で表される。例えば、5.5eVに位置する分子軌道は、2.5eVに位置する分子軌道より低い(より深い)。同様に、軌道エネルギーレベルに関して、「浅い」及び「高い」という用語は、より安定でないエネルギーレベルの軌道を表す。これらの用語は当分野の技術者によく知られている。
【0047】
本明細書では、「隣接する」という用語は、発光デバイスの層に関して、接触している側面を有する層を示す。例えば、互いに隣接する第1層及び第2層は、例えば、一方の層の片側が他方の層の片側と接触している接触した層を表す。
【0048】
本明細書では、「ギャップ」又は「バンド・ギャップ」という用語は一般に、例えばHOMOとLUMOとの間などのエネルギーの差を表す。「より広いギャップ」とは、「より狭いギャップ」又は「より小さいギャップ」より大きなエネルギーの差を表す。「キャリアギャップ」は、キャリアのHOMOとLUMOとの間のエネルギー差を表す。
【0049】
本発明は、とりわけ、少なくとも1種の金属錯体を含有する1つ又は複数の層を含む発光デバイスを対象とする。そうしたデバイスは、従来の有機阻止層を有するデバイスと比較して、より高い効率とより高い安定性を有することができる。
【0050】
本発明の発光デバイスは一般に、デバイスに電圧が印加されるとエレクトロルミネセンスを示す積層化された構造である。典型的なデバイスは、1つ又は複数の層が、正孔注入陽極層と電子注入陰極層との間に挟まれるように構築される。その挟まれた層は、一方が陽極に面し他方が陰極に面した2つの側面を有している。これらの側面はそれぞれ陽極側と陰極側と称される。層は一般にガラスなどの基板上に蒸着される。基板上に陽極層又は陰極層のどちらがあってもよい。いくつかの実施形態では、陽極層は基板と接触している。多くの場合、例えば基板が導体又は半導体材料を含む場合、電極層と基板の間に絶縁材料を挿入することができる。一般的な基板材料は剛性、柔軟性、透明又は不透明であってよく、それにはガラス、ポリマー、石英、サファイアなどが含まれる。
【0051】
電子の輸送を容易にするために、陽極層に隣接して正孔輸送層を配置する。いくつかの実施形態では、正孔注入増進層と称されることがある、正孔注入を増進させるための正孔注入層を、陽極とHTLとの間に、陽極に隣接して配置することができる。HTLに適した材料には、当分野の技術者に知られているそのように機能する任意の材料が含まれる。適切な材料は、一般に酸化し易いもので、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)1−1’ビフェニル−4,4’ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(I−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(β−NPD)などのトリアリールアミンが含まれる。HTLに金属錯体を使用することもできる。いくつかの適切な金属錯体が、例えば2001年4月13日出願の出願第60/283,814号に記載されており、その全体を参照により本明細書に取り込むものとする。同様に、電子の輸送を容易にするために、ETLを陰極層に隣接して配置する。電子注入増進層を、任意選択でETL又は陰極層に隣接して配置することができる。ETLに適した材料には、当分野の技術者に知られているそうした機能をもつ任意の材料が含まれる。典型的なETL材料は、比較的還元し易いもので、例えばアルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノラート)(Alq3)、カルバゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チオフェン、オリゴチオフェンなどが含まれる。HTL及びETLキャリア層は、約100〜約1000Åの厚さを有することができる。EL層は、一般にそれがエキシトンの生成と発光の部分であるので、HTLとETLの間のどこかであることが好ましい。ELは任意選択でHTL及びETLの1つ又は両方に接触していてよい、あるいは1つ又は複数の阻止層が横付けになっていてもよい。EL材料には例えば染料をドープしたAlq3などを含んでよい。いくつかの実施形態では、何も加えていない(ドープしていない)発光性材料のフィルムを発光層として使用することができる。さらに、層は二重の機能の働きをすることができる。例えば、ETL又はHTLは、ELとしても機能することができる。
【0052】
本発明によるいくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも1種の金属錯体を含有する少なくとも1つの電荷輸送層(すなわちキャリア層)、例えばHTL、ETL、正孔注入層又は電子注入層など、を含む。キャリア層は、金属錯体又は金属錯体でドープされた有機マトリックスから本質的になる薄膜でよい。いくつかの好ましい実施形態では、本発明のデバイスは少なくとも1種の金属錯体を含有する正孔阻止層を含む。したがって、いくつかの実施形態では、HTLの金属錯体としては、そのHOMOエネルギーレベルが正孔輸送を助けるようなものを選択することができる。すなわち、いくつかの実施形態では、約7〜4.5eVの範囲のHOMOエネルギーレベル及び約2〜約4eVの範囲のLUMOエネルギーレベルを有する金属錯体を選択することが好ましい。
【0053】
この機能を容易にする特性をベースにして、デバイスで使用する電荷輸送層に適した金属錯体を選択することができる。例えば、正孔輸送材料は一般に1電子酸化を受ける。したがって、1電子酸化プロセスに対して安定である金属錯体は正孔輸送体として適し得る。同様に、1電子還元に対して安定である金属錯体は電子輸送材料として適し得る。安定した酸化及び還元プロセスは更に後述されるサイクリックボルタンメトリーなどの電気化学的方法によって確認することができる。他に考慮すべきことは電荷移動性である。例えば、高い正孔移動性を有する材料は一般に良好な正孔輸送体として機能することができる。電荷移動性は、レドックスプロセスの再配合エネルギー(reorganizational energy(ies))が低いこととしばしば対応する。したがって、例えば酸化もしくは還元された場合にほとんど構造的な差を示さない金属錯体は一般に、酸化又は還元に伴うエネルギーバリア(再配合エネルギー)が比較的小さい。当技術分野でよく知られており、さらに以下に後述するように、電子配置などのある種の金属特性は再配合バリアに影響を及ぼす可能性がある。さらに、配位座数(denticity)などのある種の配位子特性は、金属錯体中でのレドックス事象の再配合バリアに影響を及ぼす可能性があり、その詳細も以下でさらに考察する。
【0054】
いくつかの実施形態では、デバイスの1つ又は複数の層が1つ又は複数のドーパントを含むことが望ましい。効率及び色調整可能性を向上させるために、例えばELなどの少なくとも1つの層中に、発光ドーパント(すなわち光放出分子、発光材料)を含有させることができる。ドープされた層は通常、大部分を占めるホスト材料と少量部分であるドーパントを含む。ホスト材料(マトリックスとも称される)は一般に、非放射性プロセスを経てエキシトンを発光ドーパント材料に輸送し、次いでこれが、ホストというよりはむしろドーパントの波長特性の光を放出する。
【0055】
ドーパントは電荷を捕捉する働きもする。例えば、ドーパントのLUMOレベルがホストのLUMOレベルより低くなるようにホスト及びドーパントのLUMOレベルを調整し、その結果ドーパント分子が電子捕捉体として作用できるようにすることができる。同様に、ドーパントのHOMOレベルがホストのHOMOレベルより高くなるようにホスト及びドーパントのHOMOレベルを調整し、その結果ドーパント分子が正孔捕捉体として作用するようにすることができる。ホストから発光ドーパントへのエネルギー輸送を容易にするために、さらに輸送ドーパントと称される1つ又は複数のドーパントを使用することができる。例えば、1つ又は複数の輸送ドーパントを通って、ホスト分子から発光ドーパントへのエキシトンの非放射性輸送を引き起こす、カスケードドーピングを使用することができる。これらの中間輸送は、結果的に輸送ドーパント又は発光ドーパントでのエキシトンの生成をもたらす、フェルスター(Foerster)輸送、デクスター(Dexter)輸送、正孔捕捉又は電子捕捉によるものであってよく、あるいは適切な他の任意のメカニズムによってもよい。
【0056】
ドーパントはホスト材料中に例えば約0.1〜約50%、約1〜約20%、又は1〜約10重量%の範囲の量で存在してよい。ホスト材料中の発光ドーパントは約1重量%のレベルのドーピングが好ましい。あるいは、いくつかの実施形態では、ドーパントのレベルは、およそドーパントのフェルスター半径、例えば約20〜約40Å又は約25〜約35Å、又は約30Åである、ドーパント分子同士の間の平均分子間距離という結果となる。発光ドーパントには光放出が可能な任意の化合物が含まれる。発光ドーパントには、レーザー染料などの当技術分野で公知公用の蛍光有機染料が含まれる。好ましい発光ドーパントには、1997年12月1日出願の出願第08/980,986号、2001年6月18日出願の同09/883,734号及び2001年4月13日出願の同60/283,814号に開示されている、Ir、Pt及び他の重金属錯体などのリン光性金属錯体が含まれる。それぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明のデバイスは少なくとも1つの阻止層を含む。阻止層(BL)は正孔、電子及び/又はエキシトンを発光デバイスの特定の領域に閉じ込めるように機能する。例えば、エキシトンがELに閉じ込められた場合、及び/又は正孔と電子がELから移動するのを妨げられた場合、デバイス効率の増大が可能である。阻止層は1つ又は複数の阻止機能の働きをすることができる。例えば、正孔阻止層はエキシトン阻止層としての働きもすることができる。いくつかの実施形態では、本発明のデバイスで、正孔阻止層は同時に発光層として働くことはない。阻止層は放出が可能である化合物を含むことができるが、放出は別の発光層で発生することができる。したがって、好ましい実施形態では阻止層はルミネセンスを示さない。阻止層はキャリア層より薄くすることができる。典型的な阻止層は、約50〜約1000Å又は約50〜約750Å、又は約50〜約500Åの範囲の厚さを有する。さらに、阻止層はBAlq以外の化合物を含むことが好ましい。
【0058】
正孔阻止層(HBL)は一般に正孔を獲得しにくい材料を含む。例えば、正孔阻止材料は比較的酸化されにくい。ほとんどの場合、正孔阻止材料は、輸送正孔からの酸化を隣接する層より受けにくい。酸化するのが他の材料より困難な材料は一般により低いHOMOエネルギーレベルを有する。例えば、ELに隣接した材料の阻止層をデバイスの陰極側に配置することによって、陽極から発生してELに移動する正孔が、EL(陰極側で)を励起することを効果的に阻止することができる。阻止層はELのHOMOエネルギーレベルより低いHOMOエネルギーレベルを有することが好ましい。HOMOエネルギーレベルの差が大きいことが、より良好な正孔阻止能力に対応する。阻止層の材料のHOMOは、少なくとも約50、100、200、300、400,500meV(ミリ電子ボルト)、あるいは正孔がその中に閉じ込められる隣接した層のHOMOレベルより深いことが好ましい。いくつかの実施形態では、阻止層の材料のHOMOは正孔がその中に閉じ込められる隣接した層のHOMOレベルより少なくとも約200meV深い。
【0059】
本発明のいくつかのデバイスでは、正孔が閉じ込められる層は、ホスト材料(マトリックス)及びドーパントなどの2つ以上の材料を含むことができる。この場合、HBLは、正電荷の大部分を運ぶ隣接した層の材料(すなわち最も高い(最も浅い)HOMOエネルギーレベルを有する材料)より低い(より深い)HOMOエネルギーレベルを有することが好ましい。例えば、発光層は、ドーパントより深いHOMOエネルギーレベルを有するホスト材料を含むことができる。この場合、ドーパントは正孔のための捕捉体として作用し、発光層の主要な正孔輸送体であることができる。したがって、そうした実施形態では、正孔阻止層を選択する際、ドーパントのHOMOエネルギーを考慮する。したがって、いくつかの実施形態では、HBLのHOMOエネルギーレベルは、ホスト材料より高くかつドーパントのレベルより低くてよい。
【0060】
正孔阻止層は好ましくは良好な電子注入体でもある。したがって、HBLのLUMOエネルギーレベルは、正孔が閉じ込められる層のLUMOエネルギーレベルに近似していることが好ましい。いくつかの実施形態では、2つの層間のLUMOエネルギーレベルの差は約500meV、200meV、100meV、50meV未満、あるいはそれ以下でもよい。良好な電子注入体でもある正孔阻止層は一般に、正孔の漏出に対するより電子注入に対してより小さいエネルギーバリアを有している。したがって、HBLと、正孔がその中に閉じ込められる(電子注入エネルギーバリアに相当する)層のLUMOエネルギーの差は、それらのHOMOエネルギーの差(すなわち正孔阻止エネルギーバリア)より小さい。
【0061】
逆に、電子阻止層(EBL)は、電子を獲得しにくい(すなわち比較的還元しにくい)材料を含む。発光デバイスという点では、EBLは、電子が移動する隣接層よりも還元されにくいことが好ましい。他の材料より還元しにくい材料は一般により高いLUMOエネルギーレベルを有している。例として、阻止層がそこでELのLUMOエネルギーレベルより高いLUMOエネルギーレベルを有するELの陽極側に隣接した阻止層を配置することによって、陰極から発生しEL層へ移動する電子がELを励起するのを阻止することができる(陽極側で)。LUMOエネルギーレベルの差がより大きいことは、電子阻止能力がより良好であることに相当する。阻止層の材料のLUMOは、正孔が閉じ込められる隣接層のLUMOレベルより、少なくとも約50meV、100meV、200meV、300meV、400meV、500meV、あるいはそれ以上高い(より浅い)ことが好ましい。いくつかの実施形態では、阻止層の材料のLUMOは、正孔が閉じ込められる隣接層のLUMOレベルより、少なくとも約200meV高く(より浅く)てよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、電子が閉じ込められる層は、ホスト材料(マトリックス)及びドーパントなどの2つ以上の材料を含むことができる。この場合EBLは、負電荷の大部分を運ぶ隣接した層(例えば最も低いLUMOエネルギーレベルを有するホストか、又はドーパント)の材料より高いLUMOエネルギーレベルを有することが好ましい。例えば、発光層はドーパントより深いLUMOエネルギーレベルを有するホスト材料を含むことができる。この場合、ホストは発光層の主要な電子輸送体であってよい。このような実施形態では、EBLのLUMOエネルギーレベルは、ホスト材料より高く、ドーパントのレベルより低くてよい。同様に、ドーパントが電子の主要なキャリアとして働く場合、EBLはドーパントより高いLUMOを有することが好ましい。
【0063】
電子阻止層は良好な正孔注入体でもあることが好ましい。したがって、EBLのHOMOエネルギーレベルは、電子が閉じ込められる層のHOMOエネルギーレベルに近似していることが好ましい。いくつかの実施形態では、2つの層の間のHOMOエネルギーレベルの差は、約500meV、200meV、100meV、50meV未満、あるいはそれ以下であってよい。良好な正孔注入体でもある電子阻止層は一般に、電子の漏出に対するより正孔注入に対して、より小さいエネルギーバリアを有している。したがって、EBLと、電子が閉じ込められる層(正孔注入エネルギーバリアに相当する)との間のHOMOエネルギー差は、これらのLUMOエネルギー差より小さい(例えば電子阻止エネルギーバリア)。
【0064】
ELからデバイスの他の部分へのエキシトンの移動は、エキシトンを獲得しにくい材料で阻止することができる。その受け入れ側の材料が、エキシトンを供与する材料より広い(より大きい)光学的ギャップを有する場合、1つの材料から他の材料へのエキシトンの移動を防止することができる。例えば、EL層に隣接して、EL層を含む材料より広い光学的ギャップを有するエキシトン阻止層を配置することによって、デバイスのEL層にエキシトンを実質的に閉じ込めることができる。エキシトン阻止層はELのどちらか一方の側に配置してもよい。隣接する層のものと比較したエキシトン阻止材料のHOMO又はLUMOのエネルギーレベルに従って、エキシトン阻止層はHBL又はEBLとしても働くことができる(上記に考察したように)。さらに、エキシトン阻止層のHOMOエネルギーレベルかLUMOエネルギーレベルのどちらかが、隣接する層のそれぞれのHOMOエネルギーレベルかLUMOエネルギーレベルに、エネルギー的に近似している場合、エキシトン阻止層は良好な電子又は正孔注入体でありうる。例えば、エキシトン阻止層及び発光層を有するデバイスでは、エキシトン阻止層は、前記発光層のHOMOエネルギーレベルより約500、200、又は100meV低いHOMOエネルギーレベルを有することができる。逆に、エキシトン阻止層は前記発光層のLUMOエネルギーレベルより約500、200、100meV低いLUMOエネルギーレベルを有することができる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態によれば、阻止層はドーパントも含むことができる。例として、阻止層は、より少ないバンド・ギャップドーパントでドープされた広幅バンド・ギャップマトリックス(ホスト)材料から構成されることができる。マトリックスとドーパントの組合せによっては、ドーパントの存在によって、阻止層の有効なLUMOエネルギーを下げることができ、その結果、正孔阻止層の電子伝導性と注入特性を向上させることができる。逆に、ドーパントの存在によって阻止層の有効なHOMOエネルギーを上昇させることができ、それによって正孔注入特性を向上させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、HBLは、より小さいバンド・ギャップ材料でドープされた広幅バンド・ギャップマトリックスを含み、そこでは、マトリックスの深いHOMOエネルギーレベルは正孔の輸送を防止する働きをし、ドーパントの比較的浅いLUMOレベルは電子注入に好都合である。本発明のいくつかの実施形態では、マトリックスは、オクタフェニルシクロオクタテトラエン(OPCOT)、ヘキサフェニルなどのオリゴフェニレン、及び広幅バンド・ギャップを有する他の同様の物質などの実質的に共役している有機分子を含むことができる。適切なマトリックスバンド・ギャップ値は少なくとも約3eVであってよいが、少なくとも約2.5eV、3.0eV、3.3eV、3.5eV、あるいはそれ以上であってもよい。ドーパントは金属錯体であることが好ましい。ドーピングレベルは、重量%で、約1〜約50%、より好ましくは約5〜約20%、さらにより好ましくは約10〜約15%の範囲でよい。阻止層用のドーパントとして使用される適切な金属錯体の例は、ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2’)イリジウム(III)ピコリナート(FIrpic)である。金属錯体でドープされたマトリックスを含む正孔阻止層の例は、15重量%のFIrpic(OPCOT:FIrpic(15%))でドープされたOPCOTである。例えば、OPCOT:FIrpicは、OPCOTのHOMOがIrppyのHOMOより低く、FIrpicのLUMOがCBPのLUMOより高いので、Ir(ppy)3(トリス(2−フェニルピリジル−N,C2’)イリジウム(III),Irppy)でドープされたCBPを含む発光層に正孔を効果的に閉じ込めることができる。
【0066】
本発明のデバイスで使用する金属錯体には、少なくとも1種の金属原子と少なくとも1個の配位子を含有する金属配位錯体が含まれる。金属錯体は荷電していても荷電していなくてもよいが、荷電していない錯体は、OLEDの製作で使用される薄膜蒸着技術になじみ易い。金属錯体は、1電子酸化及び1電子還元プロセスの両方に対して安定であることが好ましい。レドックス安定錯体は、例えばサイクリックボルタンメトリーによって同定することができる(例えば、可逆的レドックス事象の特定)。さらにそうした金属錯体はしばしば、酸化及び還元に伴う低い再配合エネルギーバリアを有している。したがって、低い再配合エネルギーバリアを有する錯体は、休止状態、酸化状態及び還元状態の間で構造的な差をほとんど示さない。一般に、低い再配合エネルギーバリアを有することを特徴とする金属錯体はd0、d1、d2、d3、d4、d5及びd6の電子配置を有する錯体を含む。例えば、d3又はd6金属を有する八面体錯体は典型的には、一般に低い再配合エネルギーバリアを有している。酸化又は還元での配位子セットに構造的な変化がほとんど見られないので、レドックス事象が支配的に非結合分子軌道(八面体遷移金属錯体におけるt2gセットなど)に影響を及ぼす金属錯体は一般に低い再配合エネルギーバリアを有している。レドックス事象に伴う再配合エネルギーは配位子セットによって調節することもできる。例えば、金属錯体中で多座配位子は、ある種の配位幾何配置を構造的に賦課する。レドックス事象が顕著な構造的再結合をもたらさないように、比較的柔軟性のない三座、四座、六座などの配位子が配位幾何配置を束縛することができる。さらに、酸化又は還元に付随する顕著な構造変化がもたらされる可能性の小さい、六配位錯体などの配位的に飽和した金属錯体も好ましい。四配位錯体も適しており、四面体及び平面正方形の錯体並びにその他を含むことができる。ガラス状フィルムを形成する傾向があるので八面体錯体も適している。芳香族配位子を含む金属錯体は、好ましくはレドックス事象が配位子に大部分集中している場合、レドックスプロセスを容易にする助けとなることができる。さらに、そのより高い熱安定性のため、重金属を含む金属錯体は、より軽い金属を有するものより好ましい。例えば、第2及び第3系列の遷移金属を含む錯体が好ましい。
【0067】
典型、遷移金属、ランタニド、アクチニド、アルカリ土類及びアルカリ金属を含む任意の金属原子が、利用できる任意のその酸化状態で、金属錯体に適している。遷移金属には、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au及びHgが含まれる。典型金属には、Al、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Tl、Pb、Bi及びPoが含まれる。いくつかの実施形態では、約13、36又は54より大きい原子番号を有する金属が好ましい。
【0068】
金属錯体は適切な任意の配位子系を含むことができる。適切な配位子は、単座、二座、多座配位、π結合、有機、無機、荷電、非荷電の各型であってよい。さらに、配位子はそれを介して金属原子が配位される1種又は複数のヘテロ原子を含むことが好ましいが、配位炭素を含む有機金属性化合物も適しており、これも金属錯体と考えられる。配位子の配位ヘテロ原子には酸素、窒素、イオウ、リンなどを含んでよい。窒素含有配位子には、アミン、ナイトレン、アジド、ジアゼン、トリアゼン、一酸化窒素、ポリピラゾリルボラート、2,2’−ビピリジン(bpy)、1,10−フェナントロリン、ターピリジン(trpy)、ピリダジン、ピリミジン、プリン、ピラジン、ピリジン、1,8−ナフチリジン、ピラゾラート、イミダゾラート、並びに共役π系を有する及び有しないものを含む大環状物等のようなヘテロ環を含むことができる。リン含有配位子は一般にホスフィンなどを含む。酸素含有配位子には、水、水酸化物、オキソ、超酸化物、過酸化物、アルコキシド、アルコール、アリールオキサイド、エーテル、ケトン、エステル、カルボキシレート、クラウンエーテル、β−ジケトン、カーバメート、ジメチルスルホキサイド、並びに炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、シュウ酸塩及び関連したグループ等のオキソアニオンなどが含まれる。イオウ含有配位子には、硫化水素、チオール、チオラート、硫化物、ジスルフィド、チオエーテル、二酸化硫黄、ジチオカーバメート、1,2−ジチオレンなどを含むことができる。配位炭素原子を含む配位子には、シアン化物、二硫化炭素、アルキル、アルケン、アルキン、カーバイド、シクロペンタジエニドなどを含むことができる。ハロゲン化物も配位子として働くことができる。これらやその他の配位子を含む金属錯体は、Cotton and Wilkinson、Advanced Inorganic Chemistry、第四版、John Wiley & Sons、New York、1980年に詳細に記載されている。その全体を参照により本明細書に取り込むものとする。別の適切な配位子が、2001年4月13日出願の出願第60/283,814号及び2001年6月18日出願の同09/883,734号に記載されている。それぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。
【0069】
金属錯体の金属原子に付随する任意の正の形式電荷を、全体的に又は部分的に中和するために、配位子、特に中性配位子はさらにアニオン基を含む1種又は複数の置換基で誘導化されていてよい。適切なアニオン置換基には、炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩などを含むことができる。
【0070】
正孔輸送層での使用に適した金属錯体の例には、とりわけ、例えばFe、Co、Ru、Pd、Os及びIrを含む第1、第2又は第3系列の遷移金属を有する遷移金属錯体などが含まれる。他の例には、配位的に飽和した錯体及び六配位もしくは四配位である錯体が含まれる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態では、デバイスは少なくとも1種の式I又はIIの金属錯体
【化3】
[式中、M’及びM’’’はそれぞれ独立に金属原子であり、
R10、R13、R20及びR21はそれぞれ独立にN又はCHであり、
R11及びR12はそれぞれ独立にN、CH、O又はSであり、
環系A、B、G、K及びLはそれぞれ独立に、任意選択で最大5個のヘテロ原子を含んでいてもよい単環、二環もしくは三環の縮合脂肪族又は芳香族環系であり、
ZはC1〜C6アルキル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルキニル、又は結合であり、
QはBH、N又はCHである]
を含む正孔阻止層を含む。
【0072】
特に好ましい上記式Iの化合物はCo(ppz)3であり、その構造を以下に示す。
【0073】
【化4】
【0074】
特に適切な上記式IIの他の化合物は鉄トリスピラゾリルボラート(FeTp’2)であり、その構造を以下に示す。
【0075】
【化5】
【0076】
正孔阻止層に適した金属錯体には、1997年12月1日出願の出願第08/980,986号、2001年6月18日出願の同09/883,734号及び2001年4月13日出願の同60/283,814号に記載のものを含み、とりわけ、Os、Ir、Pt及びAuの錯体を含むことができ、それぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。正孔阻止層に適している金属錯体の例は、ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2’)イリジウム(III)ピコリナート(FIrpic)で、その構造を以下に示す。
【0077】
【化6】
ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2’)イリジウム(III)ピコリナート(FIrpic)
【0078】
電子阻止層に適した金属錯体には、比較的還元しにくい(すなわち高いLUMOエネルギーレベル)ものが含まれる。適切な金属錯体には以下の式
【化7】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
AはCH、CX’、N、P、P(=O)、アリール又はヘテロアリールであり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、若しくはハロであり、又は
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであり、
nは1〜5である]
の金属錯体が含まれる。
【0079】
いくつかの好ましい実施形態では、MはAl又はGaなどの三価の金属である。可変であるAはCR3又はNが好ましいこともある。いくつかの実施形態では、R1及びR2は結合してフェニル又はピリジルなどの縮合芳香族環を形成する。上記式の中で特に適している化合物は以下に示す、ガリウム(III)トリス[2−(((ピロール−2−イル)メチリデン)アミノ)エチル]アミン(Ga(pma)3)である。
【0080】
【化8】
【0081】
他の適切な金属錯体は以下の式
【化9】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、若しくはハロであり、又は
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロである]
を有していてよい。
【0082】
本発明の開示を通して表すところでは、アルキル基は任意選択で置換された直鎖状及び分枝脂肪族基を含む。シクロアルキルは、例えば、シクロヘキシル及びシクロペンチル、並びにピラニル及びフラニル基などのヘテロシクロアルキル基を含む環状アルキル基を示す。シクロアルキル基は任意選択で置換されていてよい。アルケニル基は置換されていてもいなくてもよく、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む。アルキニル基は置換されていてもいなくてもよく、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む。アリール基は、例えば、フェニル及びナフチルを含む、約3〜約50個の炭素原子を有する芳香族及び置換芳香族基である。ヘテロアリール基は、約3〜約50個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1種のヘテロ原子を含む芳香族又は置換芳香族基である。ヘテロアリール基の例には、ピリジル及びイミダゾリル基が含まれる。アラルキル基は置換されていてもいなくてもよく、約3〜約30個の炭素原子を含み、例えばベンジルを含む。ヘテロアラルキルは少なくとも1種のヘテロ原子を含むアラルキル基を含む。ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを含む。置換された基は1個又は複数の置換基を含むことができる。適切な置換基には、例えばH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ハロ、アミノ、アジド、ニトロ、カルボキシル、シアノ、アルデヒド、アルキルカルボニル、アミノカルボニル、ヒドロキシル、アルコキシなどが含まれる。置換基は電子求引基でも電子供与基でもよい。本明細書では、「ヘテロ」という用語は、N、O、又はSなどの非炭素原子を表すものとする。
【0083】
エキシトン阻止層に適した金属錯体には比較的広い光学的ギャップを有するものが含まれる。正孔阻止層の調製に適した金属錯体には高いエネルギー吸収体及び青色発光材料などの発光材料が含まれる。好ましい金属錯体には、金属が、閉じた原子価殻(不対電子がない)を有するものが含まれる。その結果、その光学的ギャップエネルギーが可視領域外になるので、エキシトン阻止層調製用に好ましい金属錯体の多くは無色である。さらに、重金属を有する錯体が好ましい。例えば、第2及び第3列の遷移系列の重金属は、より強い配位子場のため、より大きい光学的ギャップを有する傾向がある。エキシトン阻止層に適した金属錯体の例には、1997年12月1日出願の出願第08/980,986号、2001年6月18日出願の同09/883,734号及び2001年4月13日出願の同60/283,814号に記載されているものなどの、とりわけ、Os、Ir、Pt及びAuの錯体が含まれ、それぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。いくつかの実施形態では、エキシトン阻止層に適した金属錯体にはFIrpic、Ga(pma)3及び関連化合物が含まれる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態によれば、デバイスは、少なくとも1種の金属錯体を含む正孔輸送層を含むことができ、またいくつかの実施形態では、例えば有機材料、金属錯体、又はその両方を含む電子阻止層を含むことができる。適切な有機材料には例えば、トリアリールアミン又はベンジデンなどの当技術分野で知られている任意の有機電子阻止材料が含まれる。いくつかの実施形態では、電子阻止層はHTLとELの間に存在する。したがって、電子阻止層は、電子阻止層のHOMOエネルギーレベルが、HTLとELのHOMOエネルギーレベルとの間に入るように選択することができる。他の実施形態では、電子阻止層のHOMOエネルギーレベルは正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルに近似している。例えば、電子阻止層と正孔輸送層とのHOMOエネルギーレベル差の大きさは約500、200、100、50meV又はそれ以下であってよい。電子阻止層に適した金属錯体の例にはGa、In、Sn、又は8、9、もしくは10族の遷移金属などの遷移金属を有する錯体が含まれる。適切な金属錯体の他の例には、多座配位子を有する錯体が含まれる。特に適切な金属錯体はGa(pma)3である。
【0085】
本明細書に記載の金属錯体含有HTLの金属錯体は、電荷−輸送及び/又は阻止機能を付与することができるが、この金属錯体は本発明のデバイスの熱安定性を増大させる他の利点も提供する。このことはOLED及び同様の発光デバイスは長時間高温に曝され、そうした暴露がこのようなデバイスの寿命の制限因子であると考えられるから重要なことである。したがって、例えば第2及び第3系列の遷移金属並びに第4及び第5系列の典型金属などの重金属の錯体を含む本発明のデバイスはデバイスの寿命の点で利益をもたらすと予想される。
【0086】
OLED材料のHOMO及びLUMOエネルギーレベルは、当技術分野で知られているいくつかの方法で測定もしくは推定することができる。HOMOエネルギーレベルの推定のための2つの一般的な方法にはサイクリックボルタンメトリーなどの溶液電気化学法、及び紫外光電子分光法(UPS)が含まれる。LUMOレベルの推定のための2つの方法には溶液電気化学及び逆光放出分光法が含まれる。上記で考察したように、隣接する層のHOMO及びLUMOエネルギーレベルの調節によって、2つの層の間の正孔と電子の通過を制御することができる。
【0087】
サイクリックボルタンメトリーは化合物の酸化及び還元電位を測定するための最も一般的な方法の1つである。この技術は当分野の技術者によく知られているものであり、この方法を簡単に説明すると以下の通りである。試験化合物を高濃度の電解液で溶解する。電極を挿入し、電圧を(酸化又は還元が行われるのに応じて)正の方向か又は負の方向にスキャンする。セルを通して流れる電流によってレドックス反応の存在が示される。次いで電圧スキャンを逆にするとレドックス反応が逆転する。標準はAg/AgCl又はSCEなどの外部電極でよいか、あるいは、既知の酸化電位を有するフェロセンなどの内部電極でもよい。通常の参照電極は水をベースとしているので、有機溶媒には後者が好ましいことが多い。サイクリックボルタンメトリーで得られる有用なパラメータはキャリアギャップである。還元及び酸化がどちらも可逆的である場合、正孔と電子の間のエネルギー差(すなわち、HOMOからの電子の引き抜き対LUMOへの電子の押し込み)を決めることができる。この値は、十分定義されたHOMOエネルギーから、LUMOエネルギーを決めるために使用することができる。サイクリックボルタンメトリーを用いたレドックス事象のレドックス電位や可逆性の決定する方法は当技術分野でよく知られている。
【0088】
UPSは固体中の絶対結合エネルギーを決めるための別の技術である。溶液電気化学は、一般的にほとんどの化合物に、また相対的レドックス電位を得るのに適しているが、溶液相中でとった測定値が固相中での値と異なる可能性がある。固体中のHOMOエネルギーの好ましい推定方法はUPSである。これは、固体にUV光子を照射する光電子的測定法である。光子のエネルギーが徐々に増大し、そして光によって発生した電子が観察される。電子の放出が開始するとHOMOのエネルギーがもたらされる。そのエネルギーでの光子は、充填されたレベルの頂部から電子を放出するのに十分なエネルギーを有している。UPSは真空を基準にしたeVでHOMOエネルギーレベル値を提供し、これは電子の結合エネルギーに相当する。
【0089】
LUMOエネルギーレベルを直接推定するために逆光放出を用いることができる。この技術ではサンプルの予備還元を含み、次いで充填状態をプローブしてLUMOエネルギーを推定する。より具体的には、材料に電子を注入し、それによって次いで非占有状態へ崩壊し、光を放出する。入ってくる電子のエネルギーや入射光線の角度を変化させることによって、材料の電子的構造を検討することができる。逆光放出を用いたLUMOエネルギーレベルの測定方法は当分野の技術者によく知られている。
【0090】
光学的ギャップ値は正規化吸収と発光スペクトルの交差から決定することができる。基底状態から励起状態へ移るのに構造的再配列がほとんどなく、その結果吸収と放出のλmax値の間のギャップが比較的小さい分子の場合、交差エネルギーは光学的ギャップ(0−0遷移エネルギー)を推定するのに好都合である。したがって、光学的ギャップは概略HOMO−LUMOギャップに相当し、このような推定は理想系に妥当なものである。しかし、吸収と放出の最大値間のシフトが大きい場合(ストークスシフト)、光学的ギャップを決めることはより困難になる。例えば、励起状態で構造的再配列がある、あるいは測定した吸収が最も低いエネルギー励起状態を表さない場合、相当な誤差が起きる可能性がある。したがって、潜在的なエキシトン阻止材料の選択のためには、その光学的ギャップの値を得るために、材料の吸収バンドのエッジを用いることが好ましい。この方法では、隣接する層の場合より高い吸収バンドエネルギーを有する材料を含むデバイス層は、効果的なエキシトン阻止層として働くことができる。例えば、エキシトンを含む材料より高いエネルギー吸収エッジを有するデバイス中で、エキシトンが層に接近する場合、エキシトンがより高いエネルギー材料へ輸送される確率は低い。三重項励起状態から放出する分子では、項間交差が非常に大きなストークスシフトをもたらすので、吸収エッジは光学的ギャップを推定するのに好ましい。
【0091】
本発明の発光デバイスは当分野の技術者によく知られている様々な技術によって作製することができる。中性金属錯体からなるものを含む小さい分子の層は、1997年11月17日出願の出願第08/972,156号(その全体を参照により本明細書に取り込むものとする)に開示されているような、真空蒸着法、有機気相蒸着法(OVPD)、あるいはスピンコーティングなどの溶液処理によって調製することができる。ポリマーフィルムをスピンコーティング及びCVDで蒸着させることができる。荷電金属錯体の塩などの荷電した化合物の層は、スピンコーティングなどの溶液法、あるいは米国特許第5,554,220号(その全体を参照により本明細書に取り込むものとする)に開示されているOVPD法によって調製することができる。層蒸着は一般に、必ずそうであるということではないが、陽極から陰極への方向に進め、一般に陽極は基板上に置く。金属錯体を含む阻止層を既存の層上に蒸着させることを含む、そうしたデバイスの作製方法も本発明に包含する。既存層には阻止層と接触するように設計された任意の層が含まれる。いくつかの実施形態では、既存層は発光層又はHTLであってよい。その作製のための装置及び技術は、文献や例えば米国特許第5,703,436号、同5,986,401号、同6,013,982号、同6,097,147号及び同6,166,489号に記載されている。発光が実質的にデバイスの底部(すなわち基板側)の外に向けられるものであるデバイスに関して、ITOなどの透明な陽極材料を基底電子として使用することができる。このようなデバイスの頂部電極は透明である必要がないので、一般に陰極であるそうした頂部電極は、高い電気伝導度を有する厚い反射性金属層でできていてよい。これとは対照的に、透明もしくは頂部発光デバイス用には、米国特許第5,703,436号及び同5,707,745号(それぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。)に開示されているような透明陰極を使用することができる。頂部発光デバイスは、デバイスの頂部から光が十分に発生するような不透明な及び/又は反射性の基板を有してよい。デバイスは、頂部と底部の両方から放出する、完全に透明なものであってもよい。
【0092】
頂部発光デバイスで使用するものなどの透明陰極は、少なくとも約50%の光学的透過率を有するデバイスのような、光学的透過特性を有することが好ましいが、より低い光学的透過率も用いることができる。いくつかの実施形態では、デバイスには、デバイスが少なくとも約70%、85%又はそれ以上の光学的透過率をもつことを可能にする光学的特性を有する透明陰極が含まれる。米国特許第5,703,436号及び同5,707,745号に記載されているものなどの透明陰極は、一般に例えば約100Å未満の厚さを有するMg:Agなどの金属の薄い層を含む。Mg:Ag層は透明で電気伝導性のあるスパッター蒸着したITO層でコーティングすることができる。このような陰極は化合物陰極あるいはTOLED(透明OLED)陰極と称されることが多い。化合物陰極のMg:Ag及びITO層の厚さをそれぞれ調節して、高い光学的透過率と高い電気伝導度、例えば約30〜100Ω/□の総括陰極抵抗率で反射される電気伝導度の両方の所望の組合せをもたらすことができる。しかし、ある種の応用分野ではそうした比較的低い抵抗率が許容されるが、このような抵抗率は、各画素に電力を供給する電流が化合物陰極の細いストリップを通してアレイ全体に伝導する必要がある、受動マトリックスアレイOLED画素に対して、なお幾分高過ぎる。
【0093】
本発明はさらに、発光デバイス中での正孔輸送を容易にする方法であって、発光デバイスが好ましくは正孔輸送層と発光層とを含み、正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含む方法を含む。前記方法の好ましい実施形態によれば、デバイスは、発光層が正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルより高いHOMOエネルギーレベルを有するように設計される。いくつかの実施形態では、前記方法はHTLとELとの間に電子阻止層を配置することを含み、電子阻止層のHOMOエネルギーレベルはHTLとELのHOMOエネルギーレベルの間のHOMOエネルギーレベルを有する。
【0094】
本発明はさらに、発光デバイスの正孔輸送層で正孔を輸送する方法であって、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含み、その構造のデバイスに電圧を印加することを含む方法を含む。
【0095】
発光デバイスの構造は、スラッシュで仕切った層材料の順次列挙で表すことが多い。例えば、陽極層が正孔輸送層に隣接し、それが発光層に隣接し、それが電子阻止層に隣接し、それが陰極層に隣接する層を有するデバイスは、陽極/HTL/EL/ETL/陰極と表すことができる。そうした本発明のデバイスは、部分構造のHTL/EL/HBL、HTL/EBL/EL、HTL/EBL/ETL、その他を含むことができる。いくつかの好ましい本発明の構造には陽極/HTL/EL/HBL/ETL/陰極及び陽極/HTL/EBL/EL/ETL/陰極が含まれる。他の実施形態では、EL、HTL及びEBLのそれぞれが少なくとも1種の金属錯体を含む、あるいはEL、HTL又はEBLのどれもが、有機分子だけを含むものではない、部分構造HTL/ELもしくはHTL/EBL/ELを有するデバイスが含まれる。他の実施形態では、複数の層を有し、有機分子だけからなる層を含まないデバイス、又は各層が少なくとも1種の金属錯体を含む複数の層を有するデバイスが含まれる。
【0096】
本発明の発光デバイスはディスプレイ用の画素に使用することができる。実際には任意のタイプのディスプレイに本発明のデバイスを組み込むことができる。ディスプレイにはコンピュータモニター、テレビ、パーソナルデジタルアシスタント、プリンター、計器パネル、広告板などを含めることができる。使用しない場合実質的に透明であるので、特に、本発明のデバイスはヘッドアップ型(heads−up)ディスプレイに使用できる。
【0097】
当分野の技術者が理解するように、本発明の趣旨を逸脱しないで、本発明の好ましい実施形態に多くの変更や修正を加えることができる。そうした変更形態のすべては本発明の範囲に包含されるものとする。
【0098】
本明細書を通して、化合物の構成可変要素及び様々な関連部分のグループを便宜的に説明するために、様々なグルーピングを用いている。本明細書を通して特に、そうしたグループの出現のそれぞれに、グループの個々のメンバーを含む、グループのメンバーからなる可能な下位組合せがすべて包含されるものとする。
【0099】
本特許明細書で言及した特許、出願及び出版物のそれぞれのその全体を参照により本明細書に取り込むものとする。
【実施例1】
【0100】
トリス(1−フェニルピラゾール−C2,N’)コバルト(III)Co(ppz)3)の合成
THF(3ml)中の1−フェニルピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0101】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗(coarse fritted funnel)に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物は、fac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例2】
【0102】
トリス(1−(4−トリルフェニル)ピラゾール−C2,N’)コバルト(III)(CoMPPZ)の合成
配位子合成(4−トリルフェニルピラゾール):250mlフラスコに、マグネチックスターラー、4−トリルホウ酸(16ミリモル、2.0当量)、ピラゾール(8ミリモル、1.0当量)、無水酢酸銅(12ミリモル、1.5ミリモル)、活性4Åモレキュラーシーブ6g、ピリジン(16ミリモル、2.0当量)及びジクロロメタン96mlを加えた。緩くキャップをしたフラスコ中で、反応物を空気下、周囲温度で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、水で洗浄してシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:7)で精製した。
【0103】
錯体合成:THF(3ml)中の4−トリルピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に、臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0104】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物はfac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例3】
【0105】
トリス(1−(4−メトキシフェニル)ピラゾール−C2,N’)コバルト(III)(CoMOPPZ)の合成
配位子合成(4−メトキシフェニルピラゾール):250mlフラスコに、マグネチックスターラー、4−メトキシホウ酸(16ミリモル、2.0当量)、ピラゾール(8ミリモル、1.0当量)、無水酢酸銅(12ミリモル、1.5ミリモル)、活性4Åモレキュラーシーブ6g、ピリジン(16ミリモル、2.0当量)、及びジクロロメタン96mlを加えた。緩くキャップをしたフラスコ中で、反応物を空気下、周囲温度で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、水で洗浄してシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:7)で精製した。
【0106】
錯体合成:THF(3ml)中の4−メトキシピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に、臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0107】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物はfac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例4】
【0108】
トリス(1−(4,5−ジフルオロフェニル)ピラゾール−C2,N’)コバルト(III)(CodFPPZ)の合成
配位子合成(4,5−ジフルオロフェニルピラゾール):250mlフラスコに、マグネチックスターラー、4,5−ジフルオロホウ酸(16ミリモル、2.0当量)、ピラゾール(8ミリモル、1.0当量)、無水酢酸銅(12ミリモル、1.5ミリモル)、活性4Åモレキュラーシーブ6g、ピリジン(16ミリモル、2.0当量)、及びジクロロメタン96mlを加えた。緩くキャップをしたフラスコ中で、反応物を空気下、周囲温度で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、水で洗浄してシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:7)で精製した。
【0109】
錯体合成:THF(3ml)中の4,5−ジフルオロピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0110】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物はfac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例5】
【0111】
トリス(1−(4−フルオロフェニル)ピラゾール−C2,N’)コバルト(III)(COFPPZ)の合成
配位子合成(4−フルオロフェニルピラゾール):250mlフラスコに、マグネチックスターラー、4−フルオロホウ酸(16ミリモル、2.0当量)、ピラゾール(8ミリモル、1.0当量)、無水酢酸銅(12ミリモル、1.5ミリモル)、活性4Åモレキュラーシーブ6g、ピリジン(16ミリモル、2.0当量)、及びジクロロメタン96mlを加えた。緩くキャップをしたフラスコ中で、反応物を空気下、周囲温度で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、水で洗浄してシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:7)で精製した。
【0112】
錯体合成:THF(3ml)中の4−フルオロピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に、臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0113】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物はfac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例6】
【0114】
トリス(1−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾール−C2,N’)コバルト(III)(CoBPPZ)の合成
配位子合成(4−tert−フェニルピラゾール):250mlフラスコに、マグネチックスターラー、4−tert−ホウ酸(16ミリモル、2.0当量)、ピラゾール(8ミリモル、1.0当量)、無水酢酸銅(12ミリモル、1.5ミリモル)、活性4Åモレキュラーシーブ6g、ピリジン(16ミリモル、2.0当量)、及びジクロロメタン96mlを加えた。緩くキャップをしたフラスコ中で、反応物を空気下、周囲温度で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、水で洗浄してシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:7)で精製した。
【0115】
錯体合成:THF(3ml)中の4−tert−ピラゾール(1.0当量モル、6.93ミリモル)の溶液に、臭化エチルマグネシウム(1.1当量モル、7.6ミリモル)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間還流させ、次いでドライアイス/アセトン浴中で冷却した。次いで、THF(8ml)中の臭化コバルト(II)(0.5当量モル、3.47ミリモル)の溶液を徐々にグリニャール試薬に加えた。反応混合物は直ちに黒変した。浴を取り外し、混合物を2日間撹拌した。
【0116】
反応混合物をNH4Cl水溶液(10g/リットル、75ml)とCH2Cl2(75ml)を入れた分液漏斗に移して振とうさせた。得られた濃厚なエマルジョンを、2層が分離する助けとなる粗目ガラスフィルター付き漏斗に通した。有機層を単離し、水層をCH2Cl2(75ml)でさらに2回抽出した。CH2Cl2溶液を一緒にしてMgSO4上で乾燥し、減圧下でろ過して濃縮した。黒色/黄色の濃縮物にヘキサンを加えると、生成物は暗黄色の固体として沈殿した。1H NMR分析によって、粗生成物はfac型異性体とmer型異性体の混合物、並びに少量の不純物であることが判明した。シリカゲルと1:1のCH2Cl2:トルエン溶離液を用いたカラムクロマトグラフィーによって2つの異性体と不純物の分離を試みた。fac型異性体だけはカラムから流出したが、mer型異性体はシリカに張り付き、そのすぐ後に紫色に変色した。
【実施例7】
【0117】
Ga(III)トリス[2−(((ピロール−2−イル)メチリデン)アミノ)エチル]アミン(Ga(pma)3)の合成
トリス(2−アミノエチル)アミン(0.720g、5ミリモル、10mL)のメタノール溶液に、ピロール−2−カルボキシアルデヒド(1.430g、15ミリモル、100mL)のメタノール溶液を加えて配位子[(((ピロール−2−イル)メチリデン)アミノ)エチル]アミンを調製した。得られた黄色の溶液を室温で30分間攪拌した。硝酸ガリウム(III)水和物(1.280g、5ミリモル、150mL)のメタノール溶液を配位子溶液に加え室温で30分間攪拌した。溶液をろ過し、周囲温度で静置して結晶化させた。次いで粗生成物を235℃で昇華させた。
【実施例8】
【0118】
本発明のデバイス
Co(ppz)3をHTLとして使用した構造ITO/HTL/Alq3/MgAgを用いて機能性OLEDを作製した。これらのデバイスは、HTLがトリアリールアミンから成る比較デバイスより低い効率を有した。NPDの薄層をCo(ppz)3層とAlq3層との間に挿入した場合、これらのデバイスで高い効率が達成された。NPDとCo(ppz)3のHOMOレベルはどちらも類似したエネルギー(NPDで5.5eV、Co(ppz)3で5.4eV)である。図13〜15を参照されたい。
【実施例9】
【0119】
本発明の実施形態によるデバイス
Co(ppz)3正孔輸送層、Ga(pma)3電子阻止層及びAlq3発光層を用いて機能性OLEDを作製した。作動電圧は約3.5V(この電圧での外部輝度=Cd/m2)で、ピーク効率は1.2%より大きかった。図7〜10を参照されたい。
【実施例10】
【0120】
本発明の実施形態によるデバイス
Co(ppz)3/Ga(pma)3正孔輸送層及びドープされたCBP発光層を用いて機能性OLEDを作製した。NPD正孔輸送層を用いて類似のデバイスも作製した。全体として、Co(ppz)3/Ga(pma)3デバイスは、NPD層を用いたデバイスより良好な性能であった。Co(ppz)3/Ga(pma)3では、低い電圧電流はより低く、スペクトルは青色発光(400nm未満)を示していない。Co(ppz)3/Ga(pma)3ベースのデバイスでは、NPDベースのデバイスの場合より、作動電圧は若干高く、量子効率はより低かった。これらのパラメータはどちらもデバイス最適化によって改善されると予想される。図11〜12を参照されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正孔輸送層を含む発光デバイスであって、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含む上記デバイス。
【請求項2】
前記正孔輸送層が本質的に前記金属錯体からなる請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記正孔輸送層が前記金属錯体でドープされた有機マトリックスを含む請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記金属錯体が、配位的に飽和されている請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記金属錯体が配位数6を有する請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記金属錯体が配位数4を有する請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記金属錯体の前記金属が遷移金属である請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記遷移金属が第1系列の遷移金属である請求項7に記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記遷移金属が第2又は第3系列の遷移金属である請求項7に記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記金属錯体の金属がFe、Co、Ru、Pd、Os又はIrである請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項11】
前記金属錯体の金属がFe又はCoである請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項12】
前記金属錯体の金属がFeである請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項13】
前記金属錯体の金属がCoである請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項14】
前記金属錯体が式I又はII
【化1】
[式中、M’及びM’’’はそれぞれ独立に金属原子であり、
R10、R13、R20及びR21はそれぞれ独立にN又はCHであり、
R11及びR12はそれぞれ独立にN、CH、O又はSであり、
環系A、B、G、K及びLはそれぞれ独立に、任意選択で最大5個のヘテロ原子を含んでいてもよい単環、二環もしくは三環の縮合脂肪族又は芳香族環系であり、
ZはC1〜C6アルキル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルキニル、又は結合であり、
QはBH、N又はCHである]
のうちの1つを有する請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項15】
前記金属錯体が式Iを有する請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項16】
前記金属錯体が式Iを有し、環系A及び環系Bがそれぞれ単環である請求項15に記載の発光デバイス。
【請求項17】
前記金属錯体が式Iを有し、環系Aが5員のヘテロアリール単環であり、環系Bが6員のアリールもしくはヘテロアリール単環である請求項16に記載の発光デバイス。
【請求項18】
RI0及びR11がNであり、R13がCHである請求項17に記載の発光デバイス。
【請求項19】
環Aがピラゾールを形成する請求項17に記載の発光デバイス。
【請求項20】
環Bがフェニルを形成する請求項17に記載の発光デバイス。
【請求項21】
前記金属がd0、d1、d2、d3、d4、d5又はd6の金属である請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項22】
M’が遷移金属である請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項23】
M’がFe、Co、Ru、Pd、Os又はIrである請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項24】
M’がFe又はCoである請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項25】
M’がCoである請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項26】
M’がFeである請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項27】
前記金属錯体がCo(ppz)3である請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項28】
前記金属錯体が式IIを有する請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項29】
前記金属原子錯体が式IIを有し、環系G、K及びLがそれぞれ5員もしくは6員の単環である請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項30】
環系G、K及びLがそれぞれ5員のヘテロアリール単環である請求項29に記載の発光デバイス。
【請求項31】
R21及びR22がそれぞれNである請求項30に記載の発光デバイス。
【請求項32】
環系G、K及びLがそれぞれピラゾールを形成する請求項31に記載の発光デバイス。
【請求項33】
M’’’がd5/6又はd2/3の金属である請求項28に記載の発光デバイス。
【請求項34】
M’’’が遷移金属である請求項28に記載の発光デバイス。
【請求項35】
M’’’がFe、Co、Ru、Pd、Os又はIrである請求項28に記載の発光デバイス。
【請求項36】
M’’’がFe又はCoである請求項28に記載の発光デバイス。
【請求項37】
M’’’がFeである請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項38】
前記金属錯体がFeTp’2である請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項39】
電子阻止層をさらに含む請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項40】
前記電子阻止層が有機電子阻止材料を含む請求項39に記載の発光デバイス。
【請求項41】
前記有機電子阻止材料がトリアリールアミン又はベンジデンから選択される請求項40に記載の発光デバイス。
【請求項42】
前記電子阻止層が金属錯体を含む請求項39に記載の発光デバイス。
【請求項43】
前記電子阻止層が本質的に前記金属錯体からなる請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項44】
前記電子阻止層が前記金属錯体でドープされたマトリックスを含む請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項45】
前記電子阻止層が前記正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルに近似したHOMOエネルギーレベルを有する請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項46】
前記電子阻止層が前記正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルより高いHOMOエネルギーレベルを有する請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項47】
前記電子阻止層の前記金属錯体がGa、In、Sn、又は8、9もしくは10族の遷移金属から選択される金属を含む請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項48】
前記電子阻止層の前記金属錯体がGaを含む請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項49】
前記電子阻止層の前記金属錯体が多座配位子を含む請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項50】
前記多座配位子がN及びPから選択される橋懸け原子を有する請求項49に記載の発光デバイス。
【請求項51】
前記多座配位子がメシチル架橋部分を有する請求項49に記載の発光デバイス。
【請求項52】
前記多座配位子が最大3つの単環、二環もしくは三環のヘテロ芳香族部分を含む請求項49に記載の発光デバイス。
【請求項53】
以下の式を有する化合物
【化2】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
AはCH、CX’、N、P、P(=O)、アリール又はヘテロアリールであり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであるか、あるいは
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであり、
nは1〜5である]
を含む電子阻止層をさらに含む請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項54】
Mが3価の金属原子であり、
XがCH又はNであり、
AがN又は1,3,5−フェニルであり、
R1及びR2がそれぞれHであるか、あるいはR1及びR2が、これらを結合している炭素原子と共に、連結してフェニル基を形成し、
R3がHであり、
nが1又は2である
請求項53に記載の発光デバイス。
【請求項55】
MがGaである請求項53に記載の発光デバイス。
【請求項56】
前記電子阻止層がGa(pma)3を含む請求項53に記載の発光デバイス。
【請求項57】
前記正孔輸送層の前記金属錯体がCo(ppz)3である請求項53に記載の発光デバイス。
【請求項58】
前記正孔輸送層の前記金属錯体がFeTp’2である請求項53に記載の発光デバイス。
【請求項59】
部分構造HTL/EL又はHTL/EBL/ELを含む発光デバイスであって、前記EL、HTL及びEBLのそれぞれが少なくとも1種の金属錯体を含む上記デバイス。
【請求項60】
部分構造HTL/EL又はHTL/EBL/ELを含む発光デバイスであって、前記EL、HTL又はEBLのどれもが、有機性分子だけからなるものではない上記デバイス。
【請求項61】
複数の層を有する発光デバイスであって、前記デバイスが有機性分子だけからなる層を含まない上記デバイス。
【請求項62】
前記層のそれぞれが少なくとも1種の金属錯体を含む請求項61に記載の発光デバイス。
【請求項63】
正孔輸送層、発光層及び阻止層を含む発光デバイスであって、
前記正孔輸送層が第1のHOMOエネルギーを有し、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含み、且つ
前記発光層が電子を輸送できる少なくとも1種の材料を含み、前記材料が第2のHOMOエネルギーを有し、且つ
前記阻止層が、前記第1と第2のHOMOエネルギーの間にあるHOMOエネルギーを有する材料を含む
上記デバイス。
【請求項64】
前記阻止層が前記正孔輸送層と前記発光層との間に存在する請求項63に記載のデバイス。
【請求項65】
前記阻止層が有機電子阻止材料を含む請求項63に記載のデバイス。
【請求項66】
前記有機電子阻止材料がトリアリールアミン又はベンジデンから選択される請求項65に記載の発光デバイス。
【請求項67】
前記電子阻止層が金属錯体を含む請求項63に記載のデバイス。
【請求項68】
発光デバイス中での正孔輸送を促進する方法であって、前記発光デバイスが正孔輸送層と発光層を含み、
前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含み、かつ第1のHOMOエネルギーを有し、
前記発光層が電子を輸送できる少なくとも1種の材料を含み、前記材料が前記正孔輸送層の前記HOMOエネルギーより高い第2のHOMOエネルギーを有し、
前記正孔輸送層と前記発光層との間に阻止層を配置するステップを含み、前記阻止層が前記第1と第2のHOMOエネルギーとの間にあるHOMOエネルギーレベルを有する材料を含む
上記方法。
【請求項69】
前記正孔輸送層の前記金属錯体が式I又はIIの錯体
【化3】
[式中、M’及びM’’’はそれぞれ独立に金属原子であり、
R10、R13、R20及びR21はそれぞれ独立にN又はCHであり、
R11及びR12はそれぞれ独立にN、CH、O又はSであり、
環系A、B、G、K及びLはそれぞれ独立に、任意選択で最大5個のヘテロ原子を含む単環、二環もしくは三環の縮合脂肪族又は芳香族環系であり、
ZはC1〜C6アルキル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルキニル、又は結合であり、
QはBH、N又はCHである]
である請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記正孔輸送層の前記金属錯体がCo(ppz)3又はFeTp’2である請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記阻止層が少なくとも1種の金属錯体を含む請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記阻止層の前記金属錯体が以下の式
【化4】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
AはCH、CX’、N、P、P(=O)、アリール又はヘテロアリールであり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであるか、あるいは
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであり、
nは1〜5である]
を有する化合物である請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記阻止層の前記金属錯体がGa(pma)3である請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記正孔輸送層がCo(ppz)3又はFeTp’2を含み、前記バリア層がGa(pma)3を含む請求項68に記載の方法。
【請求項75】
発光デバイスの作製方法であって、正孔輸送層を発光層と電気的に接触するように配置することを含み、前記正孔輸送層が式I又はIIの化合物
【化5】
[式中、
M’及びM’’’はそれぞれ独立に金属原子であり、
R10、R13、R20及びR21はそれぞれ独立にN又はCHであり、
R11及びR12はそれぞれ独立にN、CH、O又はSであり、
環系A、B、G、K及びLはそれぞれ独立に、任意選択で最大5個のヘテロ原子を含んでいてもよい単環、二環もしくは三環の縮合脂肪族又は芳香族環系であり、
ZはC1〜C6アルキル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルキニル、又は結合であり、
QはBH、N又はCHである]
を含む方法。
【請求項76】
前記発光デバイスがさらに電子阻止層を含む請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記電子阻止層が以下の式
【化6】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
AはCH、CX’、N、P、P(=O)、アリール又はヘテロアリールであり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであるか、あるいは
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであり、
nは1〜5である]
を有する化合物を含む請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記電子阻止層がGa(pma)3を含む請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記化合物がCo(ppz)3又はFeTp’2である請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記化合物がCo(ppz)3である請求項75に記載の方法。
【請求項81】
発光デバイスの正孔輸送層中で正孔を輸送する方法であって、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含み、前記デバイスに電圧を印加することを含む上記方法。
【請求項82】
請求項1に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項83】
請求項14に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項84】
請求項27に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項85】
請求項38に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項86】
請求項53に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項87】
請求項63に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項88】
請求項1に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【請求項89】
請求項14に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【請求項90】
請求項27に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【請求項91】
請求項38に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【請求項92】
請求項53に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【請求項93】
請求項63に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【請求項1】
正孔輸送層を含む発光デバイスであって、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含む上記デバイス。
【請求項2】
前記正孔輸送層が本質的に前記金属錯体からなる請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記正孔輸送層が前記金属錯体でドープされた有機マトリックスを含む請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記金属錯体が、配位的に飽和されている請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記金属錯体が配位数6を有する請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記金属錯体が配位数4を有する請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記金属錯体の前記金属が遷移金属である請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記遷移金属が第1系列の遷移金属である請求項7に記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記遷移金属が第2又は第3系列の遷移金属である請求項7に記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記金属錯体の金属がFe、Co、Ru、Pd、Os又はIrである請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項11】
前記金属錯体の金属がFe又はCoである請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項12】
前記金属錯体の金属がFeである請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項13】
前記金属錯体の金属がCoである請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項14】
前記金属錯体が式I又はII
【化1】
[式中、M’及びM’’’はそれぞれ独立に金属原子であり、
R10、R13、R20及びR21はそれぞれ独立にN又はCHであり、
R11及びR12はそれぞれ独立にN、CH、O又はSであり、
環系A、B、G、K及びLはそれぞれ独立に、任意選択で最大5個のヘテロ原子を含んでいてもよい単環、二環もしくは三環の縮合脂肪族又は芳香族環系であり、
ZはC1〜C6アルキル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルキニル、又は結合であり、
QはBH、N又はCHである]
のうちの1つを有する請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項15】
前記金属錯体が式Iを有する請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項16】
前記金属錯体が式Iを有し、環系A及び環系Bがそれぞれ単環である請求項15に記載の発光デバイス。
【請求項17】
前記金属錯体が式Iを有し、環系Aが5員のヘテロアリール単環であり、環系Bが6員のアリールもしくはヘテロアリール単環である請求項16に記載の発光デバイス。
【請求項18】
RI0及びR11がNであり、R13がCHである請求項17に記載の発光デバイス。
【請求項19】
環Aがピラゾールを形成する請求項17に記載の発光デバイス。
【請求項20】
環Bがフェニルを形成する請求項17に記載の発光デバイス。
【請求項21】
前記金属がd0、d1、d2、d3、d4、d5又はd6の金属である請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項22】
M’が遷移金属である請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項23】
M’がFe、Co、Ru、Pd、Os又はIrである請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項24】
M’がFe又はCoである請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項25】
M’がCoである請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項26】
M’がFeである請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項27】
前記金属錯体がCo(ppz)3である請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項28】
前記金属錯体が式IIを有する請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項29】
前記金属原子錯体が式IIを有し、環系G、K及びLがそれぞれ5員もしくは6員の単環である請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項30】
環系G、K及びLがそれぞれ5員のヘテロアリール単環である請求項29に記載の発光デバイス。
【請求項31】
R21及びR22がそれぞれNである請求項30に記載の発光デバイス。
【請求項32】
環系G、K及びLがそれぞれピラゾールを形成する請求項31に記載の発光デバイス。
【請求項33】
M’’’がd5/6又はd2/3の金属である請求項28に記載の発光デバイス。
【請求項34】
M’’’が遷移金属である請求項28に記載の発光デバイス。
【請求項35】
M’’’がFe、Co、Ru、Pd、Os又はIrである請求項28に記載の発光デバイス。
【請求項36】
M’’’がFe又はCoである請求項28に記載の発光デバイス。
【請求項37】
M’’’がFeである請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項38】
前記金属錯体がFeTp’2である請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項39】
電子阻止層をさらに含む請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項40】
前記電子阻止層が有機電子阻止材料を含む請求項39に記載の発光デバイス。
【請求項41】
前記有機電子阻止材料がトリアリールアミン又はベンジデンから選択される請求項40に記載の発光デバイス。
【請求項42】
前記電子阻止層が金属錯体を含む請求項39に記載の発光デバイス。
【請求項43】
前記電子阻止層が本質的に前記金属錯体からなる請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項44】
前記電子阻止層が前記金属錯体でドープされたマトリックスを含む請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項45】
前記電子阻止層が前記正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルに近似したHOMOエネルギーレベルを有する請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項46】
前記電子阻止層が前記正孔輸送層のHOMOエネルギーレベルより高いHOMOエネルギーレベルを有する請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項47】
前記電子阻止層の前記金属錯体がGa、In、Sn、又は8、9もしくは10族の遷移金属から選択される金属を含む請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項48】
前記電子阻止層の前記金属錯体がGaを含む請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項49】
前記電子阻止層の前記金属錯体が多座配位子を含む請求項42に記載の発光デバイス。
【請求項50】
前記多座配位子がN及びPから選択される橋懸け原子を有する請求項49に記載の発光デバイス。
【請求項51】
前記多座配位子がメシチル架橋部分を有する請求項49に記載の発光デバイス。
【請求項52】
前記多座配位子が最大3つの単環、二環もしくは三環のヘテロ芳香族部分を含む請求項49に記載の発光デバイス。
【請求項53】
以下の式を有する化合物
【化2】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
AはCH、CX’、N、P、P(=O)、アリール又はヘテロアリールであり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであるか、あるいは
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであり、
nは1〜5である]
を含む電子阻止層をさらに含む請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項54】
Mが3価の金属原子であり、
XがCH又はNであり、
AがN又は1,3,5−フェニルであり、
R1及びR2がそれぞれHであるか、あるいはR1及びR2が、これらを結合している炭素原子と共に、連結してフェニル基を形成し、
R3がHであり、
nが1又は2である
請求項53に記載の発光デバイス。
【請求項55】
MがGaである請求項53に記載の発光デバイス。
【請求項56】
前記電子阻止層がGa(pma)3を含む請求項53に記載の発光デバイス。
【請求項57】
前記正孔輸送層の前記金属錯体がCo(ppz)3である請求項53に記載の発光デバイス。
【請求項58】
前記正孔輸送層の前記金属錯体がFeTp’2である請求項53に記載の発光デバイス。
【請求項59】
部分構造HTL/EL又はHTL/EBL/ELを含む発光デバイスであって、前記EL、HTL及びEBLのそれぞれが少なくとも1種の金属錯体を含む上記デバイス。
【請求項60】
部分構造HTL/EL又はHTL/EBL/ELを含む発光デバイスであって、前記EL、HTL又はEBLのどれもが、有機性分子だけからなるものではない上記デバイス。
【請求項61】
複数の層を有する発光デバイスであって、前記デバイスが有機性分子だけからなる層を含まない上記デバイス。
【請求項62】
前記層のそれぞれが少なくとも1種の金属錯体を含む請求項61に記載の発光デバイス。
【請求項63】
正孔輸送層、発光層及び阻止層を含む発光デバイスであって、
前記正孔輸送層が第1のHOMOエネルギーを有し、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含み、且つ
前記発光層が電子を輸送できる少なくとも1種の材料を含み、前記材料が第2のHOMOエネルギーを有し、且つ
前記阻止層が、前記第1と第2のHOMOエネルギーの間にあるHOMOエネルギーを有する材料を含む
上記デバイス。
【請求項64】
前記阻止層が前記正孔輸送層と前記発光層との間に存在する請求項63に記載のデバイス。
【請求項65】
前記阻止層が有機電子阻止材料を含む請求項63に記載のデバイス。
【請求項66】
前記有機電子阻止材料がトリアリールアミン又はベンジデンから選択される請求項65に記載の発光デバイス。
【請求項67】
前記電子阻止層が金属錯体を含む請求項63に記載のデバイス。
【請求項68】
発光デバイス中での正孔輸送を促進する方法であって、前記発光デバイスが正孔輸送層と発光層を含み、
前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含み、かつ第1のHOMOエネルギーを有し、
前記発光層が電子を輸送できる少なくとも1種の材料を含み、前記材料が前記正孔輸送層の前記HOMOエネルギーより高い第2のHOMOエネルギーを有し、
前記正孔輸送層と前記発光層との間に阻止層を配置するステップを含み、前記阻止層が前記第1と第2のHOMOエネルギーとの間にあるHOMOエネルギーレベルを有する材料を含む
上記方法。
【請求項69】
前記正孔輸送層の前記金属錯体が式I又はIIの錯体
【化3】
[式中、M’及びM’’’はそれぞれ独立に金属原子であり、
R10、R13、R20及びR21はそれぞれ独立にN又はCHであり、
R11及びR12はそれぞれ独立にN、CH、O又はSであり、
環系A、B、G、K及びLはそれぞれ独立に、任意選択で最大5個のヘテロ原子を含む単環、二環もしくは三環の縮合脂肪族又は芳香族環系であり、
ZはC1〜C6アルキル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルキニル、又は結合であり、
QはBH、N又はCHである]
である請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記正孔輸送層の前記金属錯体がCo(ppz)3又はFeTp’2である請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記阻止層が少なくとも1種の金属錯体を含む請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記阻止層の前記金属錯体が以下の式
【化4】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
AはCH、CX’、N、P、P(=O)、アリール又はヘテロアリールであり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであるか、あるいは
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであり、
nは1〜5である]
を有する化合物である請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記阻止層の前記金属錯体がGa(pma)3である請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記正孔輸送層がCo(ppz)3又はFeTp’2を含み、前記バリア層がGa(pma)3を含む請求項68に記載の方法。
【請求項75】
発光デバイスの作製方法であって、正孔輸送層を発光層と電気的に接触するように配置することを含み、前記正孔輸送層が式I又はIIの化合物
【化5】
[式中、
M’及びM’’’はそれぞれ独立に金属原子であり、
R10、R13、R20及びR21はそれぞれ独立にN又はCHであり、
R11及びR12はそれぞれ独立にN、CH、O又はSであり、
環系A、B、G、K及びLはそれぞれ独立に、任意選択で最大5個のヘテロ原子を含んでいてもよい単環、二環もしくは三環の縮合脂肪族又は芳香族環系であり、
ZはC1〜C6アルキル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C8モノ−もしくはポリアルキニル、又は結合であり、
QはBH、N又はCHである]
を含む方法。
【請求項76】
前記発光デバイスがさらに電子阻止層を含む請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記電子阻止層が以下の式
【化6】
[式中、
Mは金属原子であり、
XはN又はCX’(式中、X’はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルケニル、C2〜C40モノ−もしくはポリアルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はハロである)であり、
AはCH、CX’、N、P、P(=O)、アリール又はヘテロアリールであり、
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであるか、あるいは
R1及びR2は、これらを結合している炭素原子と共に、連結して縮合したC3〜C8シクロアルキル又はアリール基を形成し、
R3はH、C1〜C20アルキル、C2〜C40アルケニル、C2〜C40アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はハロであり、
nは1〜5である]
を有する化合物を含む請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記電子阻止層がGa(pma)3を含む請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記化合物がCo(ppz)3又はFeTp’2である請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記化合物がCo(ppz)3である請求項75に記載の方法。
【請求項81】
発光デバイスの正孔輸送層中で正孔を輸送する方法であって、前記正孔輸送層が少なくとも1種の金属錯体を含み、前記デバイスに電圧を印加することを含む上記方法。
【請求項82】
請求項1に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項83】
請求項14に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項84】
請求項27に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項85】
請求項38に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項86】
請求項53に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項87】
請求項63に記載の発光デバイスを含む画素。
【請求項88】
請求項1に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【請求項89】
請求項14に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【請求項90】
請求項27に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【請求項91】
請求項38に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【請求項92】
請求項53に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【請求項93】
請求項63に記載の発光デバイスを含む電子ディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2010−10691(P2010−10691A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−170165(P2009−170165)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【分割の表示】特願2003−525558(P2003−525558)の分割
【原出願日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願人】(599032589)ザ トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシテイ (3)
【出願人】(502023332)ザ ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170165(P2009−170165)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【分割の表示】特願2003−525558(P2003−525558)の分割
【原出願日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願人】(599032589)ザ トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシテイ (3)
【出願人】(502023332)ザ ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (20)
【Fターム(参考)】
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