説明

金属錯体及び該金属錯体を含む有機電子素子

【課題】非極性溶媒への溶解性が高く、その結果、塗布法による成膜が容易である金属錯体の提供。
【解決手段】式(1):


[式中、Mは、セリウムイオン、プラセオジムイオン、イッテルビウムイオン又はルテチウムイオンを表し、Lは下記式(2):


(式中、A1、A2及びA3は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基、又は、直接結合を表し、L1、L2及びL3は、水素原子又は配位基を表す。但し、L1、L2及びL3の少なくとも1個は、配位基として、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表す。)で表される配位子を表し、Xは、対イオンを表し、L’は、単座又は2座の配位子を表し、aは正の数であり、b及びcは、0以上の数である。]で表される金属錯体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体及び該金属錯体を含む有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に用いられる発光材料として、sp3炭素原子の割合が19.6%であり、かつ、ベンゾイミダゾリル基を含む4座の配位子を用いたセリウム錯体が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Xiang−Li Zheng,Cheng−Yong Su et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,46,7399−7403(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記セリウム錯体は、非極性溶媒への溶解性が乏しく、塗布法による成膜が困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、非極性溶媒への溶解性が高く、その結果、塗布法による成膜が容易である金属錯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は第一に、下記組成式(1):
【0008】
【化1】

[式(1)中、
Mは、セリウムイオン、プラセオジムイオン、イッテルビウムイオン又はルテチウムイオンを表し、
Lは下記式(2):
【0009】
【化2】

(式(2)中、
1、A2及びA3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基、又は、直接結合を表し、
1、L2及びL3は、それぞれ独立に、水素原子又は配位基を表す。但し、L1、L2及びL3の少なくとも1個は、配位基として、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表す。)
で表される配位子を表し、
Xは、対イオンを表し、
L’は、単座又は2座の配位子を表し、
aは正の数であり、b及びcは、それぞれ独立に、0以上の数である。
L、X及びL’が複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
で表される金属錯体であって、
該金属錯体の全質量に対して、該金属錯体に含まれるsp3炭素原子の割合が22質量%以上である金属錯体を提供する。
【0010】
本発明は第二に、上記金属錯体と、電荷輸送材料と、を含む組成物を提供する。
【0011】
本発明は第三に、上記金属錯体を含む有機薄膜、及び、上記金属錯体を含む有機電子素子を提供する。
【0012】
本発明は第四に、下記式(5)で表される化合物を提供する。
【0013】
【化3】

[式(5)中、
9、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヒドロカルビル基、又は、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヘテロシクリル基を表し、
12、R13及びR14は、それぞれ独立に、−O-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、又は、リン酸基(−OP(=O)(OH)で表される基を表す。以下同様。)を表し、
15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、
m、n及びpはそれぞれ独立に0〜2の整数である。
mが2である場合、2個のR12は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
nが2である場合、2個のR13は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
pが2である場合、2個のR14は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。]
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属錯体は、非極性溶媒への溶解性が高く、その結果、塗布法による成膜が容易である金属錯体である。従って、本発明の金属錯体は、塗布法による有機電子素子の製造に有用である。また、本発明の金属錯体は、磁気材料、生体プローブ、造影剤、添加剤、改質剤、触媒等の材料としても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、説明する。
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、その直後に記載された化合物又は基を構成する水素原子が、無置換である場合、及び、該水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方を意味する。
【0016】
本明細書において、「置換基」とは、特に説明がない場合、以下の意味で用いられる。
炭素原子に結合する置換基としては、例えば、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、ヘテロシクリル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、イミド基、非置換又は置換のシリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルコキシホスホリル基、非置換又は置換のホスフィノ基、非置換又は置換のホスフィンオキシド基、非置換又は置換のアミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、亜リン酸基、ニトロ基、−NH-、−O-、−S-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、−H2PO3-が挙げられ、
好ましくは、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、ヘテロシクリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、及び、リン酸基であり、
より好ましくは、ヒドロカルビル基である。
窒素原子に結合する置換基としては、例えば、ヒドロカルビル基が挙げられる。
【0017】
上記置換基が、炭素原子を含み、かつ、芳香環を含まない基である場合には、炭素原子数は、通常1〜30であり、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である。
【0018】
上記置換基が、炭素原子を含み、かつ、芳香環を含む基である場合には、炭素原子数は、通常2〜36であり、好ましくは3〜26であり、より好ましくは6〜16である。
【0019】
ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、及び、コロニル基が挙げられ、
好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、及び、2−ナフチル基であり、
より好ましくは、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、ビニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、及び、4−トリル基であり、
更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基、及び、ビニル基である。
【0020】
ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、オクチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、及び、2−ナフチルオキシ基が挙げられ、
好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、及び、3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、
より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、及び、1−プロピルオキシ基である。
【0021】
ヒドロカルビルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、1−アダマンチルチオ基、2−アダマンチルチオ基、ノルボルニルチオ基、ベンジルチオ基、α,α−ジメチルベンジルチオ基、2−フェネチルチオ基、1−フェネチルチオ基、フェニルチオ基、オクチルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、及び、2−ナフチルチオ基が挙げられ、
好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、及び、3,7−ジメチルオクチルチオ基であり、
より好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基、及び、1−プロピルチオ基である。
【0022】
ヘテロシクリル基とは、複素環式化合物の環を構成する炭素原子または窒素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味し、炭素原子数は、通常2〜30(該炭素原子数に、置換基の炭素原子数は含まれない)である。ヘテロシクリル基の中では、金属錯体における金属と配位原子間の化学結合がより安定となるので、ヘテロアリール基(上記複素環式化合物が芳香族複素環式化合物である場合)が好ましい。
ヘテロシクリル基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を1個又は2個以上含有する基が挙げられる。このような基としては、例えば、フェナジニル基、モルホリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、アクリジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ピリダジニル基、キノキサリニル基、ベンゾフリル基、フリル基、ベンゾチエニル基、チエニル基、ベンゾピロリル基、ピロリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、オキサジアゾリル基、キノリル基、及び、ピリジル基が挙げられ、
好ましくは、ベンゾフリル基、フリル基、ベンゾチエニル基、チエニル基、ベンゾピロリル基、ピロリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリル基、キノリル基、及び、ピリジル基であり、
より好ましくは、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリル基、キノリル基、及び、ピリジル基であり、
更に好ましくは、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、及び、ピリジル基である。
【0023】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、フッ素原子、及び、塩素原子である。
【0024】
アミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられ、好ましくは、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、及び、ベンズアミド基である。
【0025】
イミド基は、イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる基である。
イミド基としては、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基、及び、ベンゾフェノンイミド基が挙げられ、好ましくは、N−フタルイミド基である。
【0026】
置換のシリル基は、シリル基における水素原子の1〜3個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されているシリル基である。
非置換又は置換のシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、又はジメチルフェニルシリル基であり、好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、及び、トリプロピルシリル基である。
【0027】
アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられ、好ましくは、アセチル基、及び、ベンゾイル基である。
【0028】
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、及び、ドデシルオキシカルボニル基が挙げられ、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、及び、イソブトキシカルボニル基である。
【0029】
アルコキシスルホニル基としては、例えば、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、プロピルオキシスルホニル基、イソプロピルオキシスルホニル基、ブトキシスルホニル基、イソブトキシスルホニル基、sec−ブトキシスルホニルル基、tert−ブトキシスルホニルル基、ペンチルオキシスルホニル基、ヘキシルオキシスルホニル基、ヘプチルオキシスルホニル基、オクチルオキシスルホニル基、2−エチルヘキシルオキシスルホニル基、ノニルオキシスルホニル基、デシルオキシスルホニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシスルホニル基、及び、ドデシルオキシスルホニル基が挙げられ、好ましくは、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、プロピルオキシスルホニル基、イソプロピルオキシスルホニル基、ブトキシスルホニル基、及び、イソブトキシスルホニル基である。
【0030】
アルコキシホスホリル基としては、例えば、ジメトキシホスホリル基、ジエトキシホスホリル基、ジプロピルオキシホスホリル基、ジイソプロピルオキシホスホリル基、ジブトキシホスホリル基、及び、エチレンジオキシホスホリル基が挙げられ、好ましくは、ジメトキシホスホリル基である。
【0031】
置換のホスフィノ基は、ホスフィノ基における水素原子の1個又は2個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1個又は2個の基で置換されているホスフィノ基である。
非置換又は置換のホスフィノ基としては、例えば、フェニルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルホスフィノ基、ジメチルホスフィノ基、エチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、プロピルホスフィノ基、ジプロピルホスフィノ基、ブチルホスフィノ基、及び、ジブチルホスフィノ基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルホスフィノ基、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジプロピルホスフィノ基、及び、ジブチルホスフィノ基である。
【0032】
置換のホスフィンオキシド基は、ホスフィンオキシド基における水素原子の1個又は2個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1個又は2個の基で置換されているホスフィンオキシド基である。
非置換又は置換のホスフィンオキシド基としては、例えば、フェニルホスフィンオキシド基、ジフェニルホスフィンオキシド基、メチルホスフィンオキシド基、ジメチルホスフィンオキシド基、エチルホスフィンオキシド基、ジエチルホスフィンオキシド基、プロピルホスフィンオキシド基、ジプロピルホスフィンオキシド基、ブチルホスフィンオキシド基、及び、ジブチルホスフィンオキシド基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルホスフィンオキシド基、ジメチルホスフィンオキシド基、ジエチルホスフィンオキシド基、ジプロピルホスフィンオキシド基、及び、ジブチルホスフィンオキシド基である。
【0033】
置換のアミノ基は、アミノ基における水素原子の1〜3個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されているアミノ基である。
非置換又は置換のアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、及び、ジブチルアミノ基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、及び、ジブチルアミノ基である。
【0034】
置換基が、−NH-、−O-、−S-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、又は、−H2PO3-である場合には、対イオンを有していてもよい。対イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、及び、アンモニウムイオンが挙げられ、好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び、アンモニウムイオンである。
【0035】
<金属錯体>
本発明の金属錯体は、上記組成式(1)で表される金属錯体であって、該金属錯体の全質量に対して、該金属錯体に含まれるsp3炭素原子の割合が22質量%以上である。この金属錯体に含まれるsp3炭素原子の割合が22質量%未満である場合、非極性溶媒への溶解性が悪くなり、均一な膜を形成することが困難である。一方、この金属錯体に含まれるsp3炭素原子の割合は、金属錯体の溶解性が優れるので、好ましくは22〜90質量%であり、より好ましくは22.5〜80質量%であり、更に好ましくは25〜70質量%であり、特に好ましくは25〜60質量%である。なお、sp3炭素原子とは、sp3混成軌道を有する炭素原子のことである。
【0036】
本発明の金属錯体において、非極性溶媒への溶解性がより優れるので、上記sp3炭素原子の少なくとも1個は、3級又は4級の炭素原子であることが好ましい。更に、上記sp3炭素原子の総数に対して、3級又は4級の炭素原子の合計個数の割合が、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることが更に好ましい。
【0037】
上記組成式(1)中、Mは、容易に入手できるので、セリウムイオン、又は、プラセオジムイオンであることが好ましく、セリウムイオンであることがより好ましい。また、Mで表される金属イオンの価数は、3価が好ましい。
【0038】
上記組成式(1)中、Xで表される対イオンは、カチオンであってもアニオンであってもよい。
カチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオンが挙げられる。
アニオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンが挙げられる。
Xで表される対イオンとしては、好ましくは、フッ化物イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、及び、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンであり、
より好ましくは、塩化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、及び、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンであり、
更に好ましくは、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、及び、テトラフェニルボレートイオンであり、
特に好ましくは、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、及び、テトラフェニルボレートイオンである。
【0039】
上記組成式(1)中、L’で表される単座又は2座の配位子としては、通常、酸素原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む原子団であり、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、トリアリールホスフィンオキシド、トリアルキルホスフィンオキシド、ピリジン、キノリン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、ビピリジン、ビキノリン、ターピリジン、フェナントロリン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、トリアルキルアミンが挙げられる。
【0040】
上記組成式(1)中、aは、好ましくは1〜3の数であり、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは2である。
【0041】
上記組成式(1)中、bは、好ましくは0〜4の数であり、より好ましくは0〜3の数である。
【0042】
上記組成式(1)中、cは、好ましくは0〜6の数であり、より好ましくは0〜3の数であり、更に好ましくは0である。
【0043】
上記組成式(1)中、a及びcの組み合わせは、金属錯体の安定性が向上するので、特に好ましくは、aが2であり、かつ、cが0である。
【0044】
上記組成式(1)中、Lは、上記式(2)で表される配位子を表す。この配位子の配位座数(即ち、配位原子の数)は、通常3座以上であり、好ましくは3〜12座であり、より好ましくは3〜8座であり、更に好ましくは4〜8座であり、特に好ましくは4座である。
【0045】
本発明の金属錯体において、Lは、非極性溶媒への溶解性がより優れるので、sp3炭素原子を15〜200個含むことが好ましく、18〜170個含むことがより好ましく、21〜120個含むことが更に好ましく、24〜100個含むことが特に好ましく、27〜80個含むことがとりわけ好ましい。
【0046】
本発明の金属錯体において、Lは、非極性溶媒への溶解性がより優れるので、Lの全質量に対して、sp3炭素原子を30〜95質量%含むことが好ましく、32.5〜85質量%含むことがより好ましく、35〜75質量%含むことが更に好ましく、37.5〜65質量%含むことが特に好ましい。
【0047】
上記式(2)中、A1、A2及びA3で表される置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基(ヒドロカルビレン基といわれることがある。)は、炭素原子数が、通常1〜30であり、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である。
このヒドロカーボンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、オクチレン基、メチルエチレン基、メチルプロピレン基、エチルエチレン基、エチルプロピレン基、メチルブチレン基、エチルヘキシレン基、ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンタンジイル基、ノルボルナンジイル基、フェニレンメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ジフェニルビニレン基、フェニルビニレン基、フェニルプロペニレン基、フェニレン基、メチルフェニレン基、ビフェニルジイル基、ターフェニルジイル基、テトラフェニルフェニレン基、(2,2−ジフェニルビニル)フェニレン基、(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、フルオレンジイル基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、及び、ピレンジイル基が挙げられ、
好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基、メチルプロピレン基、エチルエチレン基、エチルプロピレン基、メチルブチレン基、エチルヘキシレン基、フェニレンメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、及び、フェニレン基であり、
より好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基、メチルプロピレン基、ビニレン基、又はプロペニレン基であり、
更に好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基、及び、メチルプロピレン基である。
【0048】
上記式(2)中、L1、L2及びL3は、全て配位基であることが好ましい。
1、L2及びL3で表される配位基とは、孤立電子対を有する窒素原子、又は、孤立電子対を有する酸素原子を含む基を意味する。
1、L2及びL3で表される配位基の炭素原子数は、通常0〜50であり、好ましくは0〜40であり、より好ましくは0〜20である。
1、L2及びL3で表される配位基としては、例えば、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基、置換基を有していてもよいアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、及び、ニトロ基、−O-、−COO-、−SO3-、及び、−HPO4-が挙げられ、
好ましくは、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基、置換基を有していてもよいアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、−O-、−COO-、−SO3-、及び、−HPO4-であり、
より好ましくは、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基、置換基を有していてもよいアミノ基、−COO-、−SO3-、及び、−HPO4-であり、
更に好ましくは、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基である。
【0049】
上記式(2)中、L1、L2及びL3は、少なくとも1個は、配位基として、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表すが、本発明の金属錯体の発光強度が優れるので、全てが、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表すことが好ましい。
【0050】
上記配位基となり得るヘテロシクリル基とは、ヘテロ原子として、孤立電子対を有する窒素原子又は孤立電子対を有する酸素原子を含む基を意味するが、孤立電子対を有する窒素原子を含む基が好ましい。
このヘテロシクリル基としては、例えば、ピロリニル基、ピロリジニル基、モルホリノ基、キヌクリジニル基、ジオキソラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ピペラジル基、ピペリジル基、フリル基、フェナジニル基、ピリダジニル基、キノキサリニル基、チアジアゾリル基、オキサジアゾリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、アクリジニル基、ピリジル基、キノリル基、トリアジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ビピリジニル基、ビキノリル基、ターピリジル基、フェナントロリニル基、ピリジン−N−オキシド基、ピラジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、及び、ベンズチアゾリル基が挙げられ、
好ましくは、フェナジニル基、ピリダジニル基、キノキサリニル基、チアジアゾリル基、オキサジアゾリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、アクリジニル基、ピリジル基、キノリル基、トリアジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ビピリジニル基、ビキノリル基、ターピリジル基、フェナントロリニル基、ピリジン−N−オキシド基、ピラジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、及び、ベンズチアゾリル基であり、
より好ましくは、ピリジル基、キノリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、及び、トリアジニル基であり、
更に好ましくは、イミダゾリル基、及び、ベンゾイミダゾリル基である。
【0051】
上記配位基となり得るアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、及び、ジブチルアミノ基が挙げられ、好ましくは、フェニルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、及び、ブチルアミノ基である。
【0052】
上記配位基となり得るヒドロカルビルオキシ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルコキシホスホリル基、及び、ホスフィンオキシド基の具体例及び好ましい例は、「置換基」の項で説明したものと同じである。
【0053】
上記配位基が、−O-、−COO-、−SO3-、又は、−HPO4-である場合には、対イオンを有していてもよい。対イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、及び、アンモニウムイオンが挙げられ、好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び、アンモニウムイオンである。
【0054】
1、L2及びL3は、本発明の金属錯体の発光強度が優れるので、少なくとも1個が、下記式(3)又は(4)で表される基であることが好ましく、下記式(3)で表される基であることがより好ましい。
【0055】
【化4】

[式(3)中、
6は、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表し、
7は、−O-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、又は、リン酸基を表し、
jは0〜2の整数である。
6が結合する窒素原子とR7が結合する炭素原子とが互いに隣接位にある場合、R6及びR7は互いに結合して、それぞれが結合する窒素原子及び炭素原子とともに環を形成していてもよい。
jが2であり、2個のR7が互いに隣接する炭素原子に結合している場合、2個のR7は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
jが2である場合、2個のR7は、同一であっても異なっていてもよい。]
【0056】
【化5】

[式(4)中、
8は、−O-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、又は、リン酸基を表し、
kは0〜3の整数である。
kが2又は3であり、複数のR8が互いに隣接する炭素原子に結合している場合、複数のR8は結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
kが2又は3ある場合、複数のR8は、同一であっても異なっていてもよい。]
【0057】
上記式(3)中、R6は、好ましくは、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R6で表される、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、及び、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基の具体例及び好ましい例は、「置換基」の項で説明したものと同じである。
【0058】
上記式(3)及び(4)中、R7及びR8は、好ましくは、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、及び、リン酸基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R7及びR8で表される、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基の具体例及び好ましい例は、「置換基」の項で説明したものと同じである。
【0059】
上記式(3)及び(4)中、R6、R7及びR8に含まれるsp3炭素原子の合計数は、好ましくは12〜150個である。また、R6、R7及びR8に含まれるsp3炭素原子は、各々、好ましくは4〜50個であり、より好ましくは5〜40個であり、更に好ましくは6〜33個であり、特に好ましくは7〜33個であり、とりわけ好ましくは8〜33個である。
【0060】
上記式(3)中、jは0〜2の整数であり、0又は2が好ましい。jが2の場合、2個のR7が互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していることが好ましい。形成する環としては、非極性溶媒への溶解性が高く、かつ製造が容易である観点から置換基を有していてもよいベンゼン環が好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロカルビル基、及び、ヒドロカルビルオキシ基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、1−プロピル基、及び、ヘキシル基がより好ましい。
【0061】
上記式(4)中、kは0〜3の整数であり、0〜2の整数が好ましく、0〜1の整数がより好ましい。
【0062】
本発明の金属錯体の発光強度が優れるので、Lは、下記式(5)で表される配位子であることが好ましい。
【0063】
【化6】

[式(5)中、
9、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヒドロカルビル基、又は、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヘテロシクリル基を表し、
12、R13及びR14は、それぞれ独立に、−O-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、又は、リン酸基を表し、
15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、m、n及びpはそれぞれ独立に0〜2の整数である。
mが2である場合、2個のR12は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
nが2である場合、2個のR13は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
pが2である場合、2個のR14は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。]
【0064】
上記式(5)中、R9、R10及びR11は、好ましくは、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R9、R10及びR11で表される、置換基を有していてもよくsp3炭素原子を4個以上含むヒドロカルビル基、及び、置換基を有していてもよくsp3炭素原子を4個以上含むヘテロシクリル基の具体例は、「置換基」の項で説明したものと同じである。
【0065】
上記式(5)中、R9、R10及びR11で表される、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヒドロカルビル基としては、好ましくは、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、α,α−ジメチル−3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ビニル基、4−メチルペンチル基、3,5−ビス−(3−メチルブトキシ)ベンジル基、2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル基、3−(4−tert−ブチルフェニル)プロピル基であり、
より好ましくは、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル基、2,2−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ビニル基、4−メチルペンチル基、3,5−ビス−(3−メチルブトキシ)ベンジル基、3−(4−tert−ブチル−フェニル)プロピル基であり、
更に好ましくは、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4−メチルペンチル基である。
【0066】
上記式(5)中、R9、R10及びR11で表される、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヘテロシクリル基としては、好ましくは、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン−4−イル基、4,6−ジ−tert−ブチルピリジン−2−イル基、3,6−ジ−tert−ブチルキノリン−8−イル基、2,7−ジ−tert−ブチルキノリン−5−イル基、モルホリノ基、キヌクリジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ピペラジル基、ピペリジル基であり、より好ましくは、モルホリノ基、キヌクリジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ピペラジル基、ピペリジル基であり、更に好ましくはテトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基である。
【0067】
上記式(5)中、R12、R13及びR14は、好ましくは、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、又は、リン酸基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。12、R13及びR14で表される、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、及び、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基の具体例及び好ましい例は、「置換基」の項で説明したものと同じである。
【0068】
上記式(5)中、R15、R16、R17、R18、R19及びR20で表される置換基の具体例及び好ましい例は、「置換基」の項で説明したものと同じである。
【0069】
上記式(5)中、R9、R10及びR11に含まれるsp3炭素原子の数は、各々、好ましくは4〜50個であり、より好ましくは5〜40個であり、更に好ましくは6〜33個であり、特に好ましくは7〜33個であり、とりわけ好ましくは8〜33個である。
【0070】
上記式(5)中、mは0〜2の整数であり、0又は2が好ましい。mが2の場合、2個のR12が互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していることが好ましい。
【0071】
上記式(5)中、nは0〜2の整数であり、0又は2が好ましい。nが2の場合、2個のR13が互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していることが好ましい。
【0072】
上記式(5)中、pは0〜2の整数であり、0又は2が好ましい。pが2の場合、2個のR14が互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していることが好ましい。
【0073】
上記式(5)中、m、n及びpは、同じ値であることが好ましい。
【0074】
本発明の金属錯体の発光強度が優れるので、Lは、下記式(6)で表される配位子であることが好ましい。
【0075】
【化7】

[式(6)中、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヒドロカルビル基、又は、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヘテロシクリル基を表す。]
【0076】
上記式(6)中、R21、R22及びR23は、好ましくは、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R21、R22及びR23で表される、置換基を有していてもよくsp3炭素原子を4個以上含むヒドロカルビル基、及び、置換基を有していてもよくsp3炭素原子を4個以上含むヘテロシクリル基の具体例は、「置換基」の項で説明したものと同じである。
【0077】
上記式(6)中、R21、R22及びR23で表される置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヒドロカルビル基としては、好ましくは、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、α,α−ジメチル−3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ビニル基、4−メチルペンチル基、3,5−ビス−(3−メチルブトキシ)ベンジル基、2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル基、3−(4−tert−ブチル−フェニル)プロピル基であり、
より好ましくは、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル基、2,2−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ビニル基、4−メチルペンチル基、3,5−ビス−(3−メチルブトキシ)ベンジル基、3−(4−tert−ブチル−フェニル)プロピル基であり、
更に好ましくは、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4−メチルペンチル基である。
【0078】
上記式(6)中、R21、R22及びR23で表される置換基を有していてもよくsp3炭素原子を4個以上含むヘテロシクリル基としては、好ましくは、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン−4−イル基、4,6−ジ−tert−ブチルピリジン−2−イル基、3,6−ジ−tert−ブチルキノリン−8−イル基、2,7−ジ−tert−ブチルキノリン−5−イル基、モルホリノ基、キヌクリジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ピペラジル基、ピペリジル基であり、
より好ましくは、モルホリノ基、キヌクリジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ピペラジル基、ピペリジル基であり、
更に好ましくはテトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基である。
【0079】
上記式(6)中、R21、R22及びR23に含まれるsp3炭素原子の数は、各々、好ましくは4〜50個であり、より好ましくは5〜40個であり、更に好ましくは6〜33個であり、特に好ましくは7〜33個であり、とりわけ好ましくは8〜33個である。
【0080】
上記Lで表される配位子としては、例えば、下記式(A−1)〜(A−17)、(A−1−2)、(A−2−2)、(A−3−2)、(A−5−2)で表される配位子が挙げられ、本発明の金属錯体の発光強度が優れるので、好ましくは、下記式(A−8)〜(A−17)で表される配位子であり、より好ましくは、下記式(A−12)〜(A−17)で表される配位子である。
【0081】
【化8】

【0082】
【化9】

【0083】
【化10】

【0084】
【化11】

【0085】
【化12】

【0086】
本発明の金属錯体としては、例えば、下記式(B−1)〜(B−12)で表される金属錯体が挙げられ、発光強度が優れるので、好ましくは、下記式(B−6)〜(B−12)で表される金属錯体であり、より好ましくは、下記式(B−7)〜(B−12)で表される金属錯体である。
【0087】
【化13】

【0088】
【化14】

【0089】
【化15】

【0090】
【化16】

【0091】
【化17】

【0092】
<配位子となる化合物の製造方法>
上記配位子となる化合物は、如何なる方法で製造してもよいが、以下で説明する製造方法によれば容易に製造することができる。ここでは、上記配位子となる化合物として、上記式(5)で表される配位子(本発明の化合物に該当する。)、及び、上記式(6)で表される配位子(本発明の化合物に該当する。)を一例に説明する。なお、上記式(5)で表される配位子または上記式(6)で表される配位子としては、上記式(A−8)〜(A−17)で表される配位子が好ましく、上記式(A−8)、(A−12)〜(A−17)で表される配位子がより好ましく、上記式(A−12)〜(A−17)で表される配位子がさらに好ましい。
【0093】
上記式(5)で表される配位子は、例えば、置換又は無置換の3,3',3''−ニトリロトリ酢酸をジアミノ化合物と加熱して縮合し、これを溶媒中、塩基又はアルカリ金属の
存在下で、ハロゲン化物と反応させることによって得られるし、また、置換又は無置換の3,3',3''−ニトリロトリ酢酸を、N置換されたジアミノ化合物と共に、加熱して縮合することによっても得られる。
【0094】
上記式(6)で表される配位子は、3,3',3''−ニトリロトリ酢酸を、1,2−ジアミノベンゼンと共に、加熱して縮合し、これを溶媒中、塩基又はアルカリ金属の存在下で、ハロゲン化物と反応させることによって得られるし、また、3,3',3''−ニトリロトリ酢酸を、N置換された1,2−ジアミノベンゼンと共に、加熱して縮合することによっても得られる。
【0095】
<金属錯体の製造方法>
本発明の金属錯体は、如何なる方法で製造してもよいが、上記配位子となる化合物、及び、金属塩を、溶媒中、室温下で混合させ、その結果、得られた沈殿を回収することにより、或いは、反応液から溶媒を留去することにより、容易に製造することができる。
【0096】
上記金属塩としては、例えば、塩化セリウム(III)、硝酸セリウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸セリウム(III)等のセリウム塩;塩化プラセオジム(III)、硝酸
プラセオジム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸プラセオジム(III)等のプラセオジム塩;塩化イッテルビウム(III)、硝酸イッテルビウム(III)トリフルオロメタンス
ルホン酸イッテルビウム(III)等のイッテルビウム塩;塩化ルテチウム(III)、硝酸ルテチウム(III)トリフルオロメタンスルホン酸ルテチウム(III)等のルテチウム塩が挙
げられる。
【0097】
上記金属塩の使用量は、上記配位子となる化合物100質量部に対して、通常、5〜80質量部であり、好ましくは、10〜70質量部であり、より好ましくは、20〜60質量部である。
【0098】
上記混合の際に用いられる溶媒としては、緩衝液等の水系溶媒、及び、有機溶媒が挙げられるが、有機溶媒が好ましい。なお、溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0099】
有機溶媒としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられ、ジクロロメタン及びアセトニトリルが好ましい。
【0100】
<組成物>
本発明の金属錯体は、そのまま用いることも、電荷輸送材料と混合して組成物として用いることもできる。この組成物は、25℃において、液状又は固形状である。
【0101】
上記電荷輸送材料とは、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「発光素子」ということがある。)等の有機電子素子において電荷の運搬を担う材料を言い、具体的には、正孔輸送材料及び電子輸送材料である。電荷輸送材料は、低分子有機化合物及び高分子有機化合物(例えば、高分子化合物、オリゴマー)に分類できる。高分子有機化合物である高分子化合物及びオリゴマーは、共役系であることが好ましい。
【0102】
上記正孔輸送材料としては、フルオレン及びその誘導体、芳香族アミン及びその誘導体、カルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体等の、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送材料として公知の材料を使用することができる。
【0103】
上記電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、並びに、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体等の、有機エレクトロルミネッセンス素子の電子輸送材料として公知の材料を使用することができる。
【0104】
本発明の組成物において、本発明の金属錯体の含有量は、発光強度が優れるので、電荷輸送材料100質量部に対して、好ましくは0.01〜80質量部であり、より好ましくは0.1〜60質量部である。
【0105】
本発明の組成物において、本発明の金属錯体及び上記電荷輸送材料は、各々、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0106】
<有機薄膜>
本発明の有機薄膜は、本発明の金属錯体を含む。本発明の有機薄膜は、例えば、本発明の金属錯体と溶媒とを混合してなる溶液を用いて、インクジェット印刷法等の塗布法により、容易に成膜することができる。
【0107】
本発明の有機薄膜は、発光性薄膜、導電性薄膜、及び、有機半導体薄膜として使用できる。
【0108】
本発明の有機薄膜の厚さは、好ましくは1〜500nmであり、より好ましくは5〜200nmである。
【0109】
<有機電子素子>
本発明の有機電子素子は、本発明の金属錯体を含む。本発明の有機電子素子としては、例えば、本発明の金属錯体を含む機能層を備える発光素子、スイッチング素子、光電変換素子が挙げられる。
【0110】
[発光素子]
発光素子は、通常、陽極及び陰極からなる電極間に、発光層を有する。この発光素子は、発光効率及び耐久性を向上させるために、発光層以外の層を含んでいてもよい。発光層以外の層としては、例えば、電荷輸送層、電荷阻止層、電荷注入層及びバッファ層が挙げられる。なお、各層は、一層からなるものでも二層以上からなるものでもよい。
【0111】
発光層は、発光する機能を有する層である。
正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層と正孔輸送層とを総称して電荷輸送層と言う。
電荷阻止層は、正孔又は電子を発光層に閉じ込める機能を有する層であり、その中でも、電子を輸送し正孔を閉じ込める層を正孔阻止層と言い、正孔を輸送し電子を閉じ込める層を電子阻止層と言う。
【0112】
バッファ層としては、例えば、陽極に隣接して導電性高分子化合物を含む層が挙げられる。
【0113】
発光素子の構造としては、以下のa)〜q)の構造が挙げられる。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/発光層/正孔阻止層/陰極
e)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
f)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
g)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
i)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
j)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
l)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
o)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
q)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
(ここで、「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。なお、発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。)
【0114】
電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、発光素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、一般に電荷注入層と呼ばれる。電荷注入層を備える発光素子としては、例えば、陰極に隣接して電荷注入層を備える発光素子、及び、陽極に隣接して電荷注入層を備える発光素子が挙げられる。
【0115】
発光素子では、電極との密着性向上のために、又は、電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して絶縁層を設けてもよい。上記絶縁層に用いる材料としては、例えば、金属フッ化物、金属酸化物、及び、有機絶縁材料が挙げられる。絶縁層の厚さは、通常、2nm以下である。絶縁層を備える発光素子としては、例えば、陰極に隣接して上記絶縁層を備える発光素子、及び、陽極に隣接して上記絶縁層を備える発光素子が挙げられる。
【0116】
発光層は、本発明の金属錯体、又は、本発明の組成物を含む層であることが好ましい。この発光層には、その他の発光材料を含んでいてもよい。その他の発光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、及びシアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、並びに、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体が挙げられる。
【0117】
正孔輸送層に用いる材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンピニレン)及びその誘導体、並びに、ポリ(2,5−チエニレンピニレン)及びその誘導体が挙げられる。
【0118】
正孔輸送層の厚さは、発光効率又は光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0119】
電子輸送層に用いる材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びに、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0120】
電子輸送層の厚さは、発光効率又は光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0121】
各層は隣接する層又は基板上に形成される。形成方法としては、例えば、真空蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等)、スパッタリング法、LB法、分子積層法、塗布法が挙げられ、製造プロセスを簡略化できるので、塗布法が好ましい。
【0122】
塗布法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、及び、インクジェット印刷法が挙げられ、ロールコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法、及び、インクジェット印刷法が好ましい。
【0123】
発光素子は、通常、基板を用いて形成される。基板の一方の面には電極が形成され、他方の面に素子の各層を形成する。上記基板としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フイルム、シリコン等の材質の基板が挙げられる。
【0124】
通常、発光素子に含まれる陽極及び陰極は、透明又は半透明のものであるが、陽極が透明又は半透明のものであることが好ましい。
【0125】
陽極に用いる材料としては、例えば、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜、有機の透明導電膜が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体(インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等)、アンチモン・スズ・オキサイド、NESA、金、白金、銀、銅、ポリアニリン及びその誘導体、並びに、ポリアミノフェン及びその誘導体である。
【0126】
陽極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及び、メッキ法が挙げられる。
【0127】
陽極の厚さは、光の透過性と電気伝導度とを考慮して設定され、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、より好ましくは40nm〜500nmである。
【0128】
陰極に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属;それらの金属からなる群から選ばれる2つ以上の金属の合金;それらの金属からなる群から選ばれる1個以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、及び錫からなる群から選ばれる1個以上の金属との合金;グラファイト;グラファイト層間化合物が挙げられる。
【0129】
陰極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及び、金属薄膜を熱圧着するラミネート法が挙げられる。また、2層以上の積層構造の陰極を形成してもよい。
【0130】
陰極の厚さは、電気伝導度と耐久性とを考慮して設定され、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、より好ましくは50nm〜500nmである。
【0131】
発光素子では、素子を外部から保護して長期安定的に使用するために、陰極形成後、発光素子を保護する保護層又は保護カバーを形成していてもよい。
【0132】
電荷注入層としては、例えば、導電性高分子を含む層、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、及び、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層が挙げられる。
【0133】
電荷注入層に用いる材料としては、例えば、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン、並びに、カーボンが挙げられる。
【0134】
電荷注入層の厚さは、通常、1nm〜100nmであり、好ましくは1nm〜50nmであり、より好ましくは1nm〜10nmである。
【0135】
発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置のバックライト、照明等に有用である。
【0136】
[光電変換素子]
光電変換素子は、通常、陽極、陰極、及び、電荷分離層を有する。電荷分離層は、陽極と陰極との間に位置する。光電変換素子は、陽極と陰極との間に、電荷分離層以外の任意の層を有していてもよい。上記金属錯体又は上記組成物を含む層は、電荷分離層に含まれていてもよいし、電荷分離層以外の任意の層に含まれていてもよく、好ましくは電荷分離層に含まれる。
【0137】
陰極及び陽極の材料や具体例は、発光素子の項で説明したものと同じである。陽極及びは陰極の形状は、限定されず、櫛型であってもよい。陽極及び陰極は、透明又は半透明のいずれでもよい。
【0138】
光電変換素子の電荷分離層には、通常、電子供与性化合物と電子受容性化合物とが含まれている。
電子供与性化合物としては、例えば、共役高分子化合物が挙げられる。共役高分子化合物としては、例えば、チオフェンジイル基を含む共役高分子化合物及びフルオレンジイル基を含む共役高分子化合物が挙げられる。
電子受容性化合物としては、例えば、フラーレン及びフラーレン誘導体が挙げられる。
【0139】
光電変換素子は、通常、基板上に形成される。基板の具体例及び好ましい例は、発光素子の項で説明したものと同じである。
【0140】
光電変換素子は、太陽電池であることが好ましい。
【実施例】
【0141】
以下、本発明について、実施例を用いて詳細に説明する。
【0142】
以下、H NMR、及び、13C NMR測定には、Varian社製300MHzNMRスペクトロメーターを、DART−MS測定には日本電子製のThe AccuTOF TLC(JMS−T100TD)を用いて測定した。
紫外可視吸収スペクトルは、吸収分光光度計(Varian社製、Cary5E)で測定した。
発光スペクトルは、励起波長を363nmとして、蛍光分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:FP−6500)で測定した。
発光量子収率は、標準試料硫酸キニーネ1N硫酸水溶液中における発光量子収率(55%)と比較して算出した。
励起寿命は、蛍光分光光度計(JOBINYVON−SPEX社製、商品名:Fluorolog−Tau3)により、発光スペクトルの発光ピーク波長における励起寿命を求めた。
sp3炭素原子の含有率(質量基準)は、金属錯体中のsp3炭素原子の個数に、炭素原子の原子量を掛け、それを金属錯体の分子量で割ることにより求めた。
【0143】
<合成例1>
トリス(2−ベンゾイミダゾリルメチル)アミンは、Inorganica Chimica Acta 231、109−114(1995)の記載に従って合成した。具体的には、o-フェニレンジアミン、ニトリロ三酢酸、及び、プロピレングリコールを、144〜154℃で24時間加熱して還流させることにより、トリス(2−ベンゾイミダゾリルメチル)アミンを得た。
【0144】
<実施例1>
フラスコ内をアルゴンガス雰囲気下とし、トリス(2−ベンゾイミダゾリルメチル)アミン (200 mg, 0.49 mmol)、3,5-ジ-tert-ブチルベンジルブロミド (626 mg, 2.21 mmol)、及び、粉砕した水酸化カリウム (247 mg, 4.42 mmol) をフラスコに加えた後、乾燥ジメチルスルホキシド (5 mL)を添加し、室温下で2時間撹拌した。その後、反応液を水に注いだところ、沈澱が得られた。この沈殿をクロロホルムにて3回抽出した。得られた抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、エバポレーターで有機溶媒を留去して黄色粘性液体を得た。この黄色粘性液体をアルミナクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:クロロホルム=1:1(体積比)〜1:2(体積比))で精製することにより、上記式(A−16)で表される配位子(化合物)が粘性固体物質として得られた (155 mg、収率:31%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ(ppm) = 7.56 (3H, m), 7.00-7.26 (12H, m), 6.66 (6H, s), 5.21 (6H, s), 4.30 (6H, s), 1.01-1.37 (54H, m).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ(ppm) = 151.5, 142.7, 135.8, 135.7, 123.0, 122.3, 121.8, 120.7, 120.5, 120.0, 110.7, 50.9, 47.6, 35.0, 31.6.
DART-MS 1014.76 Da (calcd. as [M+H]+ 1014.70 Da).
【0145】
<実施例2>
フラスコ内をアルゴンガス雰囲気下とし、トリス(2−ベンゾイミダゾリルメチル)アミン (8.0 g, 19.6 mmol)のテトラヒドロフラン (250 mL) 懸濁液を加え、ついで金属カリウム(2.3 g, 58.9 mmol)を複数回に分けて添加した後、反応液をゆっくり昇温し、還流下で2時間撹拌した。その後、2-エチルヘキシルヨージド(15.5 g, 64.5 mmol)を10分間かけて滴下し、還流下で3時間撹拌した。反応終了後、反応液を冷却し、水を加え、分液した。水層をトルエンで抽出し、全有機層を集めて、減圧濃縮した。得られた濃縮物にトルエンを加え濃縮する操作を数回繰り返した後、残渣をアルミナクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=3:1(体積比)〜1:1(体積比))で精製することにより、上記式(A−17)で表される配位子(化合物)が黄色油状物質として得られた(5.7 g、収率:39%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ(ppm) = 7.74 (3H, m), 7.23 (9H, m), 4.03-4.34 (6H, m), 3.24-3.43 (6H, m), 1.52 (3H, m), 0.26-1.06 (42H, m).
13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ(ppm) = 151.5, 143.0, 135.6, 123.1, 122.5, 120.3, 110.3, 50.7, 48.0, 39.1, 30.5, 29.1, 24.0, 23.0, 14.2, 11.1.
DART-MS 744.59 Da (calcd. as [M+H]+ 744.66 Da).
【0146】
<実施例3>
上記式(A−16)で表される配位子(84 mg, 0.083 mmol)、及び、トリフルオロメタンスルホン酸セリウム(III)(24 mg, 0.041 mmol)をフラスコに加えた後、フラスコ内をアルゴンガス雰囲気下とし、乾燥エタノール(2 mL)を添加し、室温下で2.5時間撹拌したところ、沈澱が得られた。この沈殿を吸引ろ過して回収し、ジクロロメタンとヘキサンで再結晶することにより、上記式(B−11)で表される金属錯体(43 mg、収率:40%)を白色固体物質として得た。
元素分析
Found(%) C: 64.05, H: 6.74, N: 7.31, S: 3.85. Calcd for C141H174CeF9N14O9S3 1H2O (%) C: 64.29, H: 6.73, N: 7.44, S: 3.65.
【0147】
上記式(B−11)で表される金属錯体は、紫外線励起(365nm)により、固体粉末状態でも、溶液状態(アセトニトリル、エタノール、メタノール、キシレン、トルエン、クロロホルム)でも、青色に発光した。アセトニトリル中での発光スペクトルは、436nmにピークを持ち、その発光量子収率は53%であり、励起寿命は53.8nsであった。
【0148】
<実施例4>
上記式(A−17)で表される配位子(750 mg, 1.01 mmol)、及び、トリフルオロメタンスルホン酸セリウム(III)(289 mg, 0.49 mmol)をフラスコに加えた後、フラスコ内をアルゴンガス雰囲気下とし、乾燥エタノール(10 mL)を添加し、室温下で2.5時間撹拌した。反応液をヘキサンに注いだところ、沈澱が得られた。この沈殿を回収したところ、上記式(B−12)で表される金属錯体(926 mg、収率:91%)を白色固体物質として得た。
元素分析
Found(%) C: 57.02, H: 6.59, N: 9.40, S: 4.98. Calcd for C99H138CeF9N14O9S3 (%) C: 57.29, H: 6.70, N: 9.45, S: 4.63.
【0149】
上記式(B−12)で表される金属錯体は、紫外線励起(365nm)により、固体粉末状態でも、溶液状態(アセトニトリル、エタノール、メタノール、キシレン、トルエン、クロロホルム)でも、青色に発光した。アセトニトリル中での発光スペクトルは437nmにピークを持ち、その発光量子収率は50%であり、励起寿命は58.9nsであった。
【0150】
<比較例1>
下記式(C−1):
【0151】
【化18】

で表される金属錯体を、Angew.Chem.Int.Ed.46,7399−7403(2007)の記載に従って合成した。
【0152】
[溶解性試験]
上記式(B−11)で表される金属錯体、上記式(B−12)で表される金属錯体、又は、上記式(C−1)で表される金属錯体1mgを、表1に示す有機溶媒0.5mLにそれぞれ添加して、室温で速やかに溶解しない金属錯体は、該有機溶媒の沸点付近まで加熱しながら撹拌後、室温に戻すことで、溶解性を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0153】
【表1】

【0154】
[評価]
A:易溶(金属錯体が速やかに溶解し、溶け残りが無いと認められる。)
B:可溶(金属錯体が完全に溶解するには時間を要するが、溶け残りが無いと認められる。)
C:難溶(金属錯体が一部溶けるが溶け残りが残ると認められる。)
D:不溶(金属錯体がまったく溶けないと認められる。)
【0155】
表1によれば、実施例3、4で合成した金属錯体は、非極性溶媒であるクロロホルム、トルエン、及び、キシレンに対して、高い溶解性を示したのに対して、比較例1で合成した金属錯体は、これらの非極性溶媒に対して、低い溶解性しか示さなかった。
更に、実施例3、4で合成した金属錯体は、極性溶媒であるエタノール、及び、アセトニトリルに対して、高い溶解性を示した。
【0156】
<実施例5>
上記式(B−11)で表される金属錯体1mgにクロロホルムを添加し、該金属錯体をクロロホルムに溶解させ、上記式(B−11)で表される金属錯体の0.5質量%溶液を調製した。この溶液を用い、ガラス基板上にスピンコート法により1000rpmの速度で成膜した。得られた膜を触針式の膜厚計(ビーコ社製DEKTAK)で測定することにより、約50nmの均一な薄膜が得られたことを確認した。
【0157】
<実施例6>
上記式(B−11)で表される金属錯体1mgにクロロホルムを添加し、該金属錯体をクロロホルムに溶解させ、上記式(B−11)で表される金属錯体の1質量%溶液を調製した。この溶液を用い、ガラス基板上にスピンコート法により1000rpmの速度で成膜した。得られた膜を触針式の膜厚計(ビーコ社製DEKTAK)で測定することにより、約250nmの均一な薄膜が得られたことを確認した。
【0158】
<実施例7>
上記式(B−12)で表される金属錯体1mgに、クロロホルムと1,2−ジクロロエタンとの質量比2/1の混合溶液を添加し、該金属錯体を溶解させ、上記式(B−12)で表される金属錯体の1質量%溶液を調製した。この溶液を用い、ガラス基板上にスピンコート法により1000rpmの速度で成膜した。得られた膜を触針式の膜厚計(ビーコ社製DEKTAK)で測定することにより、約120nmの均一な薄膜が得られたことを確認した。
【0159】
<実施例8>
上記式(B−12)で表される金属錯体及びポリビニルカルバゾール(質量比2/3)計2.5mgに、クロロホルムと1,2−ジクロロエタンとの質量比2/1の混合溶液を添加し、該金属錯体及びポリビニルカルバゾールを該混合溶液に溶解させ、上記式(B−12)で表される金属錯体及びポリビニルカルバゾールの0.5質量%混合溶液を調製した。この溶液を用い、ガラス基板上にスピンコート法により1000rpmの速度で成膜した。得られた膜を触針式の膜厚計(ビーコ社製DEKTAK)で測定することにより、約40nmの均一な薄膜が得られたことを確認した。
【0160】
<比較例2>
上記式(C−1)で表される金属錯体1mgにクロロホルムを添加し、上記式(C−1)で表される金属錯体の1質量%溶液を調製しようとしたところ、懸濁液が得られた。この懸濁液を用い、ガラス基板上にスピンコート法により1000rpmの速度で成膜した。この膜を触針式の膜厚計(ビーコ社製DEKTAK)で測定しようとしたが、不均一でムラが多い膜であったため、正確な膜厚を求めることができなかった。
【0161】
<実施例9>
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を形成したガラス基板に、窒素雰囲気下、実施例6と同様にして、上記式(B−11)で表される金属錯体の薄膜を約50nmの厚さで作製し、次いで、フッ化リチウムを約0.5nm、アルミニウムを約80nm蒸着して陰極とし、発光素子を作製した。この発光素子に紫外光(365nm)を照射したところ、採光面から均一な青色発光が観測された。
【0162】
<実施例10>
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を形成したガラス基板に、窒素雰囲気下、実施例7と同様にして、上記式(B−12)で表される金属錯体及びポリビニルカルバゾールの薄膜を約40nmの厚さで作製し、次いで、フッ化リチウムを約0.5nm、アルミニウムを約80nm蒸着して陰極とし、発光素子を作製した。この発光素子に紫外光(365nm)を照射したところ、採光面から均一な青色発光が観測された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式(1):
【化1】

[式(1)中、
Mは、セリウムイオン、プラセオジムイオン、イッテルビウムイオン又はルテチウムイオンを表し、
Lは下記式(2):
【化2】

(式(2)中、
1、A2及びA3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基、又は、直接結合を表し、
1、L2及びL3は、それぞれ独立に、水素原子又は配位基を表す。但し、L1、L2及びL3の少なくとも1個は、配位基として、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表す。)
で表される配位子を表し、
Xは、対イオンを表し、
L’は、単座又は2座の配位子を表し、
aは正の数であり、b及びcは、それぞれ独立に、0以上の数である。
L、X及びL’が複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
で表される金属錯体であって、
該金属錯体の全質量に対して、該金属錯体に含まれるsp3炭素原子の割合が22質量%以上である金属錯体。
【請求項2】
1、L2及びL3の少なくとも1個が、下記式(3)又は(4)で表される基である、請求項1に記載の金属錯体。
【化3】

[式(3)中、
6は、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表し、
7は、−O-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、又は、リン酸基を表し、
jは0〜2の整数である。
6が結合する窒素原子とR7が結合する炭素原子とが互いに隣接位にある場合、R6及びR7は互いに結合して、それぞれが結合する窒素原子及び炭素原子とともに環を形成していてもよい。
jが2であり、2個のR7が互いに隣接する炭素原子に結合している場合、2個のR7は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
jが2である場合、2個のR7は、同一であっても異なっていてもよい。]
【化4】

[式(4)中、
8は、−O-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、又は、リン酸基を表し、
kは0〜3の整数である。
kが2又は3であり、複数のR8が互いに隣接する炭素原子に結合している場合、複数のR8は結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
kが2又は3ある場合、複数のR8は、同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項3】
1、L2及びL3が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基である、請求項1又は2に記載の金属錯体。
【請求項4】
Lが、sp3炭素原子を15〜200個含む配位子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項5】
Lが、下記式(5)で表される配位子である、請求項3又は4に記載の金属錯体。
【化5】

[式(5)中、
9、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヒドロカルビル基、又は、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヘテロシクリル基を表し、
12、R13及びR14は、それぞれ独立に、−O-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、又は、リン酸基を表し、
15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、
m、n及びpはそれぞれ独立に0〜2の整数である。
mが2である場合、2個のR12は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
nが2である場合、2個のR13は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
pが2である場合、2個のR14は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。]
【請求項6】
Lが、下記式(6)で表される配位子である、請求項5に記載の金属錯体。
【化6】

[式(6)中、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヒドロカルビル基、又は、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヘテロシクリル基を表す。]
【請求項7】
Mがセリウムイオンである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項8】
aが2であり、かつ、cが0である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属錯体と、電荷輸送材料と、を含む組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属錯体を含む有機薄膜。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属錯体を含む有機電子素子。
【請求項12】
下記式(5)で表される化合物。
【化7】

[式(5)中、
9、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヒドロカルビル基、又は、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヘテロシクリル基を表し、
12、R13及びR14は、それぞれ独立に、−O-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、又は、リン酸基を表し、
15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、
m、n及びpはそれぞれ独立に0〜2の整数である。
mが2である場合、2個のR12は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
nが2である場合、2個のR13は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
pが2である場合、2個のR14は、同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。]
【請求項13】
下記式(6)で表される、請求項12に記載の化合物。
【化8】

[式(6)中、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヒドロカルビル基、又は、置換基を有していてもよいsp3炭素原子を4個以上含むヘテロシクリル基を表す。]

【公開番号】特開2012−207018(P2012−207018A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58381(P2012−58381)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】